説明

粘着性ワイピングクロス及びワイパー

【課題】 特に砂塵の捕集性に優れるとともに、清掃の作業性に優れ且つ清掃対象物を汚すことのない粘着性のワイピングクロス、及びそのワイピングクロスを取付けてなるワイパーを提供する。
【解決手段】 平均繊度が3.5〜50デシテックスの不織布に粘着性物質が塗布されてなるワイピングクロスであって、前記粘着性物質は粘着剤と接着剤を99:1〜65:35の重量比率で含んでおり、前記接着剤のガラス転移温度は0℃を超えるとともに前記粘着剤のガラス転移温度よりも高い粘着性ワイピングクロス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砂塵や塵埃などを捕捉するために用いる粘着性のワイピングクロスに関し、特に砂塵などの比較的大きな径を有する粒子を効率的に清拭、捕捉することが可能なワイピングクロスに関し、また柄とヘッドとを有するワイパーのヘッドに取付けて用いるに好適なワイピングクロス、及びそのワイピングクロスを取付けたワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からテーブルや床を清拭するため、砂塵や塵埃を捕捉するに好適な粘着性を有するワイピングクロスに関して、種々の技術が提案されている。その一例として、特許文献1では、織布、不織布または編製物からなる基布に、添加剤の混入された粘着性を有する樹脂が含浸されてなる清拭磨き布であって、粘着性を有する樹脂は、アクリル系の樹脂のエマルジョン、酢酸ビニル系の樹脂のエマルジョンおよびアクリル酢酸ビニル共重合体系の樹脂のエマルジョンの内のいずれか一種または二種以上を組み合わせたものであり、上記添加剤は、アルコール類、可塑剤およびロジンエステルの内のいずれか一種または二種以上を組み合わせたものである清拭磨き布が知られている。
【0003】
この特許文献1によれば、上記各エマルジョンは水に可溶であるため、従来のようにトリクロロエタンのような有害な有機溶剤を用いることなく、上記エマルジョン中に基布を浸漬することによって容易に粘着性を有する樹脂を基布に含浸させることができるという効果が示されている。また、上記三種類のエマルジョンを混合して混合エマルジョンにすることにより、アクリル系の優れた粘着性が維持された状態で水分が揮散しても表面に被膜が形成されることはなく、酢酸ビニル系のコロイド状樹脂の水中での団塊形成が抑止され、かつ、アクリル酢酸ビニル共重合体系の樹脂によって基布への含浸性が向上されるという三者混合による相乗作用が得られることが示されている。すなわち、三者混合の相乗作用による粘着性の向上効果が示されている。
【0004】
しかし、このような粘着性を向上させた樹脂を基布に含浸させて得られるワイピングクロスでは、砂塵や塵埃を捕捉する効果は優れているものの、その反面、ワイピングクロスとテーブルや床などの清掃対象物との間の摩擦抵抗が大きくなり、清掃の作業性が悪くなるという問題があった。また、粘着性の樹脂が清掃対象物に付着するという問題があった。また、捕捉することが難しいとされている比較的大きな径を有する砂塵を効率的に捕捉する場合には、これらの問題は特に大きな問題となっていた。
【0005】
そこで、粘着性を有するワイピングクロスにおいて、特に砂塵の捕集性に優れるとともに、清掃の作業性に優れ且つ清掃対象物を汚すことのない粘着性のワイピングクロスが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−204147号公報([特許請求の範囲]、[0012]、[0025])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決して、特に砂塵の捕集性に優れるとともに、清掃の作業性に優れ且つ清掃対象物を汚すことのない粘着性のワイピングクロス、及びそのワイピングクロスを取付けてなるワイパーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、平均繊度が3.5〜50デシテックスの不織布に粘着性物質が塗布されてなるワイピングクロスであって、前記粘着性物質は粘着剤と接着剤を99:1〜65:35の重量比率で含んでおり、前記接着剤のガラス転移温度は0℃を超えるとともに前記粘着剤のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする粘着性ワイピングクロスである。この粘着性ワイピングクロスによって、特に砂塵の捕集性に優れるとともに、清掃の作業性に優れ且つ清掃対象物を汚すことのない粘着性のワイピングクロスを提供することが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記粘着性物質は粘着剤と接着剤を88:12〜70:30の重量比率で含んでいることを特徴とする請求項1に記載の粘着性ワイピングクロスであり、特に砂塵の捕集性に優れるとともに、清掃の作業性に優れるという利点がある。
【0010】
請求項3に係る発明では、柄と前記柄の先端に設けられたヘッドとからなるアプリケーターの前記ヘッドに、請求項1または2に記載の粘着性ワイピングクロスを取付けてなることを特徴とするワイパーである。このワイパーは、特に砂塵の捕集性に優れるとともに、清掃の作業性に優れ且つ清掃対象物を汚すことのないワイパーを提供することが可能となる。また、本発明の粘着性のワイピングクロスを取付けているので、操作性にも優れるという利点がある。
【発明の効果】
【0011】
特に砂塵の捕集性に優れるとともに、清掃の作業性に優れ且つ清掃対象物を汚すことのない粘着性のワイピングクロス、及びそのワイピングクロスを取付けてなるワイパーを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のワイパー
【図2】本発明のワイパーを構成するアプリケーター
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る粘着性ワイピングクロス及びワイパーの好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明の粘着性ワイピングクロスは、構成繊維の平均繊度が3.5〜50デシテックスである不織布に、粘着性物質が塗布されている。前記不織布としては、カード機やエアレイ機などを用いる乾式法により繊維ウエブを形成した後、熱硬化性の樹脂や熱可塑性樹脂からなるバインダーを繊維ウエブに含浸またはスプレーにより塗布して繊維を結合することにより形成することが可能である。なお、他の結合方法である繊維の融着性を利用して結合する方法や、水流やニードルによって絡合する方法も可能であり、これらの方法を適宜組み合わせることによって形成することも可能である。これらの中でも、バインダーをスプレーにより塗布して結合する方法であると、嵩高な状態で繊維ウエブを接着できるため、嵩高性に優れた粘着性ワイピングクロスを形成できるという利点がある。また、繊維ウエブを形成した後ニードルによって絡合しておき、その後バインダーをスプレーにより塗布して結合する方法であれば、より強度が高まり、変形しにくくなり、耐久性に優れた粘着性ワイピングクロスを形成できるという利点がある。
【0015】
また、繊維ウエブを熱硬化性樹脂によって結合することにより、耐久性に優れた粘着性ワイピングクロスを形成できるという利点がある。この点について更に説明すると、本発明では、繊維ウエブに熱硬化性の樹脂や熱可塑性樹脂からなるバインダーを含浸またはスプレーにより塗布した後加熱することにより繊維を結合して形成される不織布に、後述するように粘着性物質を含む液を含浸またはスプレーにより塗布した後加熱して、乾燥させることにより粘着性物質を固定する。この粘着性物質の固定の際に、繊維を結合している樹脂が熱硬化性樹脂であれば、加熱によってこの熱硬化性樹脂が再溶融しないため、粘着性物質中にこの熱硬化性樹脂が混入することはない。その結果、繊維の結合が弱まりワイピングクロスの強度が低下するような問題は生じないという利点がある。これに対して、繊維を結合している樹脂が熱可塑性樹脂であれば、塗布条件や加熱条件にもよるが、加熱によってこの熱可塑性樹脂が再溶融して、粘着性物質中にこの熱可塑性樹脂が混入する結果、繊維の結合が弱まり粘着性ワイピングクロスの強度が低下する場合がある。
【0016】
前記不織布を構成する繊維の材質は、廃棄処理の点から有機質繊維であることが好ましく、有機質繊維としては、例えば、レーヨンなどの再生繊維、綿、羊毛などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維などの合成繊維である。これらの中でも合成繊維であることが好ましく、得られる粘着性ワイピングクロスは、強度に優れ、耐久性にも優れるという利点がある。
【0017】
また、前記不織布は熱接着性の繊維を含むことも可能であり、このような熱接着性の繊維としては、例えば他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる単一樹脂成分からなる繊維や、他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる低融点成分を繊維表面に有する複合繊維がある。このような複合繊維には、その横断面形状が例えば、低融点成分を繊維表面に有する芯鞘型やサイドバイサイド型等の複合繊維があり、またその材質は例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルなどの繊維形成性重合体の組み合わせからなる複合繊維がある。
【0018】
前記不織布は、構成繊維の平均繊度が3.5〜50デシテックスである限り繊維組織の形態は特に限定されず、例えば繊維組織が二層以上の多層構造となっている場合であっても、全体の構成繊維の平均繊度が3.5〜50デシテックスであれば本発明に含まれる。本発明ではこのような比較的高い値の繊度を有することにより、繊維の剛性に優れ、嵩高性と反発性に特に優れるので、その結果、特に砂塵の捕集性に優れるとともに、清掃の作業性にも優れる粘着性ワイピングクロスとなり得る。また、前記平均繊度は3.5〜25デシテックスであることがより好ましく、3.5〜17デシテックスであることが更に好ましい。3.5デシテックス未満であると繊維組織が緻密になりすぎて、砂塵の捕集性に劣るという問題があり、50デシテックスを超えると繊維組織が粗くなりすぎて、繊維ウエブの強度が低下し、繊維ウエブの形成が困難になるという問題がある。
【0019】
なお、構成繊維の平均繊度の計算方法としては、構成繊維に含まれる各繊維の繊度をaデシテックス、bデシテックス、cデシテックス・・・として、各繊維の含有割合をそれぞれa’質量%、b’質量%、c’質量%・・・とすると、(a’/a)+(b’/b)+(c’/c)・・・=(100/x)の関係式が成り立ち、この関係式から平均繊度xを求めることができる。
【0020】
また、前記不織布の面密度は20〜250g/mであることが好ましく、30〜150g/mであることがより好ましく、35〜100g/mであることが更に好ましい。面密度が20g/m未満であると、強度が劣り、耐久性に劣るとともに砂塵の捕集性にも劣る場合がある。また、面密度が250g/mを超えると、粘着性ワイピングクロスにおいて、砂塵の捕集性に関与しない中間層が厚くなりすぎて、コストに見合う捕集性能が得られなくなる場合がある。
【0021】
本発明の粘着性ワイピングクロスは、前記不織布に粘着性物質が塗布されている。この粘着性物質は、粘着剤と接着剤を99:1〜65:35の重量比率で含んでいる。ここで、粘着剤とは、常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質のことであり、接着剤とは、物体の間に介在することによって物体を結合することのできる物質のことである。
【0022】
前記粘着性物質が接着剤を1%未満含み、実質的に粘着剤のみからなる場合は、砂塵の捕集性は有するもののワイピングクロスとテーブルや床などの清掃対象物との間の摩擦抵抗が大きくなり、清掃の作業性が悪くなるという問題がある。また、粘着性の樹脂が清掃対象物に付着するという問題がある。そこで本発明では、粘着剤に接着剤を混入することで清掃対象物との間の摩擦抵抗を減少させて、清掃の作業性を向上させると共に、粘着剤が清掃対象物に付着して清掃対象物を汚すことも防止する効果があることを見出し本発明に至った。粘着剤に接着剤を混入することによるこのような効果が生じる原因についてはよく分からないが、接着剤が粘着剤を不織布に固定する作用と粘着剤の粘着性を適度に抑制する作用が相乗的に生じることによるものではないかと推測される。すなわち、砂塵などをワイピングクロスへ付着させるという粘着特性は確保しながら、粘着剤がワイピングクロスから他の物体へ移動して付着するという粘着特性は抑制するという作用が生じるものと考えられる。このように、互いに作用の異なる粘着剤と接着剤とが特定の比率で混合されていることで、本発明による効果が得られるのである。
【0023】
このように、本発明では、前記粘着性物質が粘着剤と接着剤を99:1〜65:35の重量比率で含んでいることが必要であり、粘着剤と接着剤の重量比率は好ましくは、88:12〜70:30である。粘着剤の重量比率が99%を超えると、砂塵の捕集性は優れるもののワイピングクロスと清掃対象物との間の摩擦抵抗が大きくなり、清掃の作業性が悪くなるという問題がある。また、粘着性の樹脂が清掃対象物に付着するという問題がある。また、粘着剤の重量比率が65%未満であると、ワイピングクロスと清掃対象物との間の摩擦抵抗が少なく、清掃の作業性は良好であるが、砂塵の捕集性が低下するという問題がある。また、前記粘着性物質は粘着剤と接着剤以外にも、分散剤、酸化防止剤、安定剤などの薬剤を含むことが可能である。なお、架橋剤を含むと、粘着剤と接着剤の両方に架橋剤が働き、砂塵の捕集性向上効果と清掃対象物との間の摩擦抵抗の低下効果の両方の効果を得ることができなくなる場合があるので、架橋剤についてはこれを含まないことが望ましい。
【0024】
本発明では、前記接着剤のガラス転移温度は0℃を超えるとともに前記粘着剤のガラス転移温度よりも高いことが必要である。0℃を超えることによって、本発明としての上述の効果が有効になるとともに、環境温度による接着剤への影響を少なくして、粘着性物質としての効果を安定化することができるという効果がある。これに対して、接着剤のガラス転移温度が0℃以下であると、接着剤としての作用が低下して、ワイピングクロスと清掃対象物との間の摩擦抵抗が大きくなり、清掃の作業性が悪くなるという問題が生じる。より具体的には、前記接着剤のガラス転移温度は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましい。10℃以上であることにより、環境温度による接着剤への影響を少なくして、粘着性物質としての効果をより安定化することができるという効果がある。
【0025】
また、前記粘着剤のガラス転移温度は、0℃以下であることが好ましく、−15℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがより好ましく、−45℃以下であることが更に好ましい。0℃以下であることにより、砂塵の捕集性により優れるという効果がある。また、環境温度による粘着剤への影響を少なくして、粘着性物質としての効果を安定化することができるという効果がある。
【0026】
前述のように、本発明では、前記接着剤のガラス転移温度は前記粘着剤のガラス転移温度よりも高いことが必要であるが、これに対して、接着剤のガラス転移温度が粘着剤のガラス転移温度以下であると、接着剤としての作用が現れず、ワイピングクロスと清掃対象物との間の摩擦抵抗を減少させる効果が生ぜず、清掃の作業性の向上効果が得られないという問題が生じる。なお、前記接着剤のガラス転移温度は前記粘着剤のガラス転移温度よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましく、30℃以上高いことが更に好ましい。このように、接着剤のガラス転移温度と粘着剤のガラス転移温度との差が大きくなるにしたがって粘着剤としての本来の役割と、接着剤としての付加的な役割との役割分担が明確となり、本発明としての前述の効果をより顕著に得ることができる。
【0027】
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などを適用することができる。これらの粘着剤は、水系(又はエマルジョン系)、溶剤系等のいずれの形態でも適用可能である。なかでも、塗布作業性に優れ、安価である水系粘着剤が好ましい。これらの粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、溶剤可溶性の粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が好ましく用いられる。
【0028】
アクリル系粘着剤としては、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含んでいる。アクリル系ポリマーの原料となる単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
なお、前記接着剤のガラス転移温度が前記粘着剤のガラス転移温度よりも高い限りにおいては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を主モノマーとし、これと共重合可能な他の単量体とを併用することも可能である。このような共重合可能な単量体の代表的な例として、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらの中でもアクリル酸が好適である。なお、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体は重合体に架橋結合を生じさせる成分であるため、本発明で用いる粘着剤としては、このような架橋結合を生じさせる成分を有していないことが好ましい。
【0030】
また、前記共重合可能な単量体として、例えば、スチレンなどのスチレン系モノマー、アクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー、環状又は非環状の(メタ)アクリルアミド類等のアクリル系感圧性接着剤の改質用モノマーとして知られる各種のモノマーの何れも使用可能であるが、本発明で用いる粘着剤としては、このような改質用モノマーとして架橋結合を生じさせる成分を有していないことが好ましい。
【0031】
上記単量体成分の種類や組み合わせを適宜選択し、慣用の方法で重合させることにより、優れた粘着性と安定性を有するアクリル系ポリマーを得ることができる。代表的なアクリル系粘着剤としては、例えば、ガンツ化成株式会社製の商品名「ウルトラゾール NV−608」を挙げることができる。
【0032】
前記接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤などを適用することができる。これらの接着剤は、水系(又はエマルジョン系)、溶剤系等のいずれの形態でも適用可能である。なかでも、塗布作業性に優れ、安価である水系接着剤が好ましい。これらの接着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、溶剤可溶性の接着剤としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤等が好ましく用いられる。また、前記接着剤が3次元架橋構造を有していることが好ましく、このような3次元架橋構造により、本発明のワイピングクロスが環境温度に対してより安定した接着性を呈すると共に清掃の作業性により優れ且つ清掃対象物を汚すことのない特性により優れるという利点がある。
【0033】
アクリル系接着剤としては、前記粘着剤と同様に、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含んでいる。アクリル系ポリマーの原料となる単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を主モノマーとし、これと共重合可能な他の単量体とを併用することも可能である。このような共重合可能な単量体の代表的な例として、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらの中でもアクリル酸が好適である。なお、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体は重合体に架橋結合を生じさせる成分であるため、本発明で用いる接着剤として、このような架橋結合を生じさせる成分を有していることが好ましい。
【0035】
また、前記共重合可能な単量体として、例えば、スチレンなどのスチレン系モノマー、アクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー、環状又は非環状の(メタ)アクリルアミド類等のアクリル系接着剤の改質用モノマーとして知られる各種のモノマーの何れも使用可能であり、このような改質用モノマーとして架橋結合を生じさせる成分を有していることが好ましい。
【0036】
また本発明においては、前記粘着性物質の環境温度に対する安定性を向上させる目的で、さらに多官能モノマーを共重合することが可能である。多官能モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の6官能(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル化合物などが挙げられる。なかでも、2〜3官能(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0037】
上記単量体成分の種類や組み合わせを適宜選択し、慣用の方法で重合させることにより、優れた接着性を有するアクリル系ポリマーを得ることができる。代表的なアクリル系接着剤としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の商品名「LX−851F」、「LX−857X2」などを挙げることができる。
【0038】
本発明では、前記粘着剤と前記接着剤とは同種の系の樹脂であることが好ましい。例えば、前記粘着剤と前記接着剤とが共にアクリル系樹脂であることが好ましい。このように、同種の系の樹脂であることによって、相溶性に優れるという利点がある。また前記接着剤が前記粘着剤を不織布に固定し易くなるという利点がある。また、前記不織布の構成繊維を樹脂(以下、結合樹脂と称することがある。)によって結合している場合は、この結合樹脂と前記接着剤が同種の系の樹脂、或いは同じ成分の樹脂であることが可能である。
【0039】
また、本発明の粘着性ワイピングクロスに含まれる前記粘着性物質の重量は、0.8〜30g/mであることが好ましく、1〜20g/mであることがより好ましく、1〜15g/mであることが更に好ましい。0.8g/m未満であると、砂塵の捕集性に劣る場合があり、30g/mを超えると、砂塵の捕集性に不要の量が多くなり過ぎて無駄が多くなる場合がある。また、ワイピングクロスとテーブルや床などの清掃対象物との間の摩擦抵抗が大きくなり、清掃の作業性が悪くなる場合があり、また粘着性の樹脂が清掃対象物に付着する場合がある。
【0040】
また、前記粘着性物質が不織布に塗布されている形態としては、不織布の片面のみに塗布されていることも、不織布の両面に塗布されていることも可能であるが、不織布の両面に塗布されている形態が望ましい。このような形態とするには、後述するスプレー塗布により塗布することが好ましい。
【0041】
前記粘着性物質を前記不織布に塗布して固定する方法としては、例えば前記粘着性物質の水溶液(または水分散液)を作成しておき、この水溶液を前記不織布に含浸させる方法、またはこの水溶液をスプレー塗布して、乾燥させ、必要に応じてさらに架橋処理する方法がある。
【0042】
また、不織布の製造ライン上で塗布する方法も可能であり、例えば、カードなどで形成した繊維ウエブを搬送コンベアー上に載置して、必要に応じてニードルパンチ機に送り、絡合処理する。この繊維ウエブまたは絡合された繊維ウエブの片面に、架橋性成分を有した繊維結合樹脂の水溶液(エマルジョン液)をスプレーにより塗布した後、ドライヤーへ移送して、乾燥と架橋処理を行うことにより繊維同士を結合して不織布を形成する。次いで、この不織布を反転させて別の搬送コンベアー上に載置して、この繊維ウエブの他面に、前記粘着性物質の水溶液(または水分散液)をスプレーにより塗布した後、ドライヤーへ移送して、乾燥処理し、この粘着性物質を不織布に塗布することで、粘着性ワイピングクロスを1工程で製造する方法を採用することが可能である。なお、不織布を構成する繊維の平均繊維径が比較的大きいため、繊維ウエブの構造は粗い構造となっており、このため繊維ウエブの片面のみにスプレーにより塗布した場合でも、水溶液の一部は、反対面まで到達し、繊維ウエブ全体の繊維に対して塗布を行なうことができる。
【0043】
なお、本発明では繊維ウエブがニードルパンチにより絡合していることが好ましい。ニードルパンチにより絡合していることによって、前述のように、強度が高まり、変形しにくくなり、耐久性に優れた粘着性ワイピングクロスを形成できるという利点があるが、それに加えて下記の利点がある。すなわち、ニードルパンチによる絡合に伴い、繊維ウエブが厚み方向に配向するため、清掃の際に砂塵が繊維ウエブ内部まで取り込みやすくなり、捕集量が向上するという効果がある。また、ニードルパンチによる絡合に伴い、粘着性ワイピングクロスの表面に適度な凹凸が形成されるため、清掃の際に床面との接触面積が低下して操作性が向上するという効果がある。なお、絡合の度合いを針密度で表すと、1cm当たり20本以上であることが好ましく、30本以上であることがより好ましい。20本未満の針密度では、繊維の絡合度が低くなり、十分な絡合効果が得られない場合がある。
【0044】
本発明の粘着性ワイピングクロスは、テーブルや床を清拭するためのワイピングクロスとして使用することができる。この場合、図1及び図2に例示するように、柄3と柄3の先端に設けられたヘッド2とからなるアプリケーター4のヘッド2に、本発明の粘着性ワイピングクロス1を取付けて用いることが好ましい。また、本発明の粘着性ワイピングクロスは、直接手に持って使用することも可能であり、アプリケーター4のヘッド2に、本発明の粘着性ワイピングクロス1を取付けて、壁や天井の清掃に使用することも可能である。なお、壁や天井に付着した砂塵や塵埃などを清拭する場合、砂塵や塵埃などが周囲にまき散らかされる場合があるが、本願発明の粘着性ワイピングクロスであれば、その粘着特性によって砂塵や塵埃などを周囲にまき散らかさずに、空気を汚すことなく清拭することが可能である。また、壁や天井に粘着性の樹脂が付着して、壁や天井を汚すことがなく、本願発明の粘着性ワイピングクロスはこのような用途にも好適に用いることができる。
【0045】
本発明のワイパーは、図1及び図2に例示するように、柄3と前記柄3の先端に設けられたヘッド2とからなるアプリケーター4の前記ヘッド2に、前記粘着性ワイピングクロス1を取付けてなることを特徴としている。図1及び図2は、床を清拭するためのワイパーとして好適な形態であるが、柄の長さを短くしてテーブルや壁などを清拭できるようにすることも可能である。ヘッドの形状や寸法は長方形または角に丸みのある略長方形、または、台形など、通常アプリケーターとして使用されている形状や寸法を適用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0047】
(塵埃の捕集性試験)
予め塵埃等を清掃清浄化した、アクリル系ワックスで被膜された塩ビシートからなる床面に、下記に示す試験粉体2.00gを40cm幅×1m長さになるように帯状に散布する。次いで、市販のワイパー用アプリケーター『ボンドポルベックアプリケーター P−45』(コニシ株式会社製の商品名、ワイパーの拭取面に相当する装着面寸法は、上辺420mm×下辺375mm×高さ87mmの台形、柄の長さは1300mm)のヘッドに各試験片を装着し、試験粉体が散布された床面が中央部になるようにして900mm×2200mmの床面内を8の字状に25往復して拭き取る。捕集量は、測定前後のサンプル重量から算出する。

・試験粉体 :JIS一種試験用粉体(中位径185〜200μm、砂塵相当)
・アクリル系ワックス :(株)リンレイ製 製品名 オール、成分 アクリル系
【0048】
(ワイパー操作性−摩擦性試験)
市販のワイパー用アプリケーター『ボンドポルベックアプリケーター P−60』(コニシ株式会社製の商品名、ワイパーの拭取面に相当する装着面寸法は、上辺560mm×下辺515mm×高さ87mmの台形、柄の長さは1300mm)のヘッドに各試験片を装着する。次いで、予め塵埃等を清掃清浄化した、アクリル系ワックスで被膜された塩ビシートからなる床面に、試験片が接するようにして、アプリケーターのヘッドの上に合計6Kgの重りを載せ、さらに、アプリケーターの柄の先端にバネ秤を取り付ける。次いで、このバネ秤を引張ることで、このアプリケーターを引張り、床面上で約2mの距離を1移動させ、引張っている時のバネ秤の値を読み取り、その平均値を求め、静摩擦力(kg)とした。

・アクリル系ワックス :ペンギンワックス(株)製 製品名 スーパーコアU、成分 ウレタン含有アクリル系エマルジョン
・アプリケーターと床面の接触面積 :470cm
・床面に加わる荷重 :6.5kg(重り6kg+アプリケーター自重0.5kg)
・アプリケーターの柄を床面に対して約30°の角度になるようにして引張る。
【0049】
(ワイパー操作性−官能試験)
市販のワイパー用アプリケーター『ボンドポルベックアプリケーター P−60』(コニシ株式会社製の商品名、ワイパーの拭取面に相当する装着面寸法は、上辺560mm×下辺515mm×高さ87mmの台形、柄の長さは1300mm)のヘッドに各試験片を装着する。次いで、予め塵埃等を清掃清浄化した、アクリル系ワックスで被膜された塩ビシートからなる床面に、試験片が接するようにする。次いで、このアプリケーターを引張り、アプリケーターが動き始める際に、手に伝わる抵抗感を調べ、アプリケーターが床に引っ掛かる感じを受けなかった場合を○で表し、若干引っ掛かる感じを受けた場合を△で表し、引っ掛かる感じを受けた場合を×で表した。

・アクリル系ワックス :ペンギンワックス(株)製 製品名 スーパーコアU、成分 ウレタン含有アクリル系エマルジョン
・アプリケーターと床面の接触面積 :470cm
【0050】
(清掃対象物への付着性試験)
平均繊度2.2デシテックスのポリエステル繊維からなる面密度60g/mの水流絡合不織布に、40μ厚さのLDPEをラミネートして形成した複合不織布を判定布として準備する。また、5cm巾×20cm長さの試験片を準備する。
次いで、JIS L0823に規定される学振型磨耗試験機に、予め重量を測定した試験片を取り付け、さらに摩擦子側に判定布を取り付け、摩擦子を20回往復させる。その後、判定布の重量を測定して判定布の重量増加分を粘着剤の付着量(mg)とする。また、判定布に付着した粘着性物質を手で触り、ベトツキが感じられない場合を○、ベトツキがやや感じられる場合を△、ベトツキが感じられる場合を×で表した。なお、各試験片に対してこの試験を5回行い、ベトツキについてはその平均値で評価し、付着量については5回の合計の付着量で評価した。

・荷重 : 200g
・試験片と判定布が接触する面積 : 4cm
・単位面積当たりの荷重 : 50g/cm
なお、この荷重の値は、清掃の際にアプリケーターの1部分に応力が集中した場合を想定している。
【0051】
(繊維結合用接着剤L1の準備)
日本ゼオン株式会社製の変性アクリル酸エステル共重合体を主成分とする水性エマルジョン『LX−857X2(固形分45重量%)、ガラス転移温度(Tg):43℃(計算値)、自己架橋性重合体』37重量%と、水63重量%とを混合し、繊維結合用接着剤液L1を調製した。
【0052】
(粘着性物質Aの準備)
ガンツ化成株式会社製のアクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体を主成分とする水性エマルジョン『ウルトラゾール NV―608(固形分60重量%)、ガラス転移温度(Tg):−52℃(計算値)』と、日本ゼオン株式会社製の変性アクリル酸エステル共重合体を主成分とする水性エマルジョン『LX−851F(固形分45重量%)、ガラス転移温度(Tg):15℃(計算値)、自己架橋性重合体』と、必要に応じて水とを混合して粘着性物質塗布液A0〜A5を調製した。これらの粘着性物質塗布液には、NV―608からなる粘着剤とLX−851Fからなる接着剤が下記の重量(固形分)比率で含まれていた。なお、各粘着性物質塗布液の濃度は、この各粘着性物質塗布液が繊維ウエブの重量に対して200%付着するように、水の量を加減することで調整した。
A0:粘着剤(NV―608)100% 接着剤(LX−851F)0%
A1:粘着剤(NV―608)90% 接着剤(LX−851F)10%
A2:粘着剤(NV―608)88% 接着剤(LX−851F)12%
A3:粘着剤(NV―608)80% 接着剤(LX−851F)20%
A4:粘着剤(NV―608)70% 接着剤(LX−851F)30%
A5:粘着剤(NV―608)68% 接着剤(LX−851F)32%
【0053】
(粘着性物質Bの準備)
ウルトラゾール NV―608と、日本ゼオン株式会社製の変性アクリル酸エステル共重合体を主成分とする水性エマルジョン『LX−857X2(固形分45重量%)、ガラス転移温度(Tg):43℃(計算値)、自己架橋性重合体』と、必要に応じて水とを混合して粘着性物質塗布液B1〜B6を調製した。これらの粘着性物質塗布液には、NV―608からなる粘着剤とLX−857X2からなる接着剤が下記の重量(固形分)比率で含まれていた。なお、各粘着性物質塗布液の濃度は、この各粘着性物質塗布液が繊維ウエブの重量に対して200%付着するように、水の量を加減することで調整した。
B1:粘着剤(NV―608)90% 接着剤(LX−857X2)10%
B2:粘着剤(NV―608)88% 接着剤(LX−857X2)12%
B3:粘着剤(NV―608)80% 接着剤(LX−857X2)20%
B4:粘着剤(NV―608)70% 接着剤(LX−857X2)30%
B5:粘着剤(NV―608)68% 接着剤(LX−857X2)32%
B6:粘着剤(NV―608)60% 接着剤(LX−857X2)40%
【0054】
(実施例1)
ポリエステル繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:51mm)70重量%と、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:3.3デシテックス、繊維長:64mm)30重量%とを混合して、さらにカード機により繊維フリースに形成し、この繊維フリースを交差させるようにして複数枚積層して、最終的な粘着性ワイピングクロスにおいて面密度40g/mになるように繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブに針密度40本/cmの条件でニードルパンチ処理を行い、さらにこの繊維ウエブの片面に、繊維結合用接着剤L1の準備で得た接着剤液L1を固形分付着が面密度10g/mになるようにスプレー塗布して、150℃に加熱したドライヤーにより5分間、乾燥処理と架橋処理を行った。次いで、繊維ウエブの反対面に、粘着性物質Aの準備で得た粘着性物質塗布液A1を固形分付着が面密度6.0g/mになるようにスプレー塗布して、150℃に加熱したドライヤーにより5分間、乾燥処理と架橋処理を行い、厚さ4.4mmで面密度56g/mの粘着性ワイピングクロスを得た。なお、厚さは1cm当たり0.5gの荷重時の厚さで表している。
この粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤を90:10の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、平均繊度7.6デシテックスの構成繊維が結合していた。この粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表1に示す。
【0055】
(実施例2〜5)
実施例1において、粘着性物質Aの準備で得た粘着性物質塗布液A2〜A5を固形分付着がそれぞれ面密度6.0g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ厚さ4.4mmで面密度56g/mの粘着性ワイピングクロスを得た。
実施例2〜5の粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤をそれぞれ88:12(実施例2)、80:20(実施例3)、70:30(実施例4)、68:32(実施例5)の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、それぞれ平均繊度7.6デシテックスの構成繊維が結合していた。これらの粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表1に示す。
【0056】
(実施例6〜10)
実施例1において、粘着性物質Bの準備で得た粘着性物質塗布液B1〜B5を固形分付着がそれぞれ面密度6.0g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ厚さ4.4mmで面密度56g/mの粘着性ワイピングクロスを得た。
実施例6〜10の粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤をそれぞれ90:10(実施例6)、88:12(実施例7)、80:20(実施例8)、70:30(実施例9)、68:32(実施例10)の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、それぞれ平均繊度7.6デシテックスの構成繊維が結合していた。これらの粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表2に示す。
【0057】
(比較例1〜3)
実施例1において、粘着性物質Aの準備で得た粘着性物質塗布液A0を固形分付着がそれぞれ面密度2.0g/m、4.0g/m、8.0g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ厚さ4.4mmで、面密度52g/m(比較例1)、54g/m(比較例2)、58g/m(比較例3)の粘着性ワイピングクロスを得た。
比較例1〜3の粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤をそれぞれ100:0の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、それぞれ平均繊度7.6デシテックスの構成繊維が結合していた。これらの粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表3に示す。
【0058】
(実施例11〜15)
実施例1において、粘着性物質Bの準備で得た粘着性物質塗布液B3を固形分付着がそれぞれ面密度2.0g/m、4.0g/m、8.0g/m、10.0g/mになるようにスプレー塗布したこと、又は粘着性物質Aの準備で得た粘着性物質塗布液A3を固形分付着が面密度4.0g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ厚さ4.4mmで、面密度52g/m(実施例11)、54g/m(実施例12)、58g/m(実施例13)、60g/m(実施例14)、54g/m(実施例15)である粘着性ワイピングクロスを得た。
実施例11〜15の粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤をそれぞれ80:2の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、それぞれ平均繊度7.6デシテックスの構成繊維が結合していた。これらの粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表4に示す。
【0059】
(比較例4〜5)
実施例1において、粘着性物質Bの準備で得た粘着性物質塗布液B6を固形分付着がそれぞれ面密度4.0g/m、8.0g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ厚さ4.4mmで、面密度54g/m(比較例4)、58g/m(比較例5)の粘着性ワイピングクロスを得た。
比較例4〜5の粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤をそれぞれ60:40の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、それぞれ平均繊度7.6デシテックスの構成繊維が結合していた。これらの粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表3に示す。
【0060】
(実施例16)
実施例1において、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:3.3デシテックス、繊維長:64mm)を用いずに、ポリエステル繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:51mm)100重量%を用いたこと、並びに実施例1において、粘着性物質Bの準備で得た粘着性物質塗布液B3を固形分付着が面密度8.0g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ4.8mmで、面密度58g/mの粘着性ワイピングクロスを得た。
この粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤をそれぞれ80:20の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、17デシテックスの構成繊維が結合していた。この粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表5に示す。
【0061】
(実施例17〜19)
実施例1において、ポリエステル繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:51mm)50重量%と、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:3.3デシテックス、繊維長:64mm)50重量%とを混合したこと(実施例17)、又はポリエステル繊維40重量%とポリエチレンテレフタレート繊維60重量%とを混合したこと(実施例18)、又はポリエステル繊維20重量%とポリエチレンテレフタレート繊維80重量%とを混合したこと(実施例19)、並びに実施例1において、粘着性物質Bの準備で得た粘着性物質塗布液B3を固形分付着がそれぞれ面密度8.0g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ厚さ4.3mm(実施例17)、4.3mm(実施例18)、4.2mm(実施例19)で、面密度58g/mの粘着性ワイピングクロスを得た。
実施例17〜19の粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤をそれぞれ80:20の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、それぞれ平均繊度5.5デシテックス(実施例17)、4.9デシテックス(実施例18)、3.9デシテックス(実施例19)の構成繊維が結合していた。これらの粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表5に示す。
【0062】
(比較例6)
実施例1において、ポリエステル繊維(繊度:17デシテックス、繊維長:51mm)を用いずに、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:3.3デシテックス、繊維長:64mm)100重量%を用いたこと、並びに実施例1において、粘着性物質Bの準備で得た粘着性物質塗布液B3を固形分付着が面密度8.0g/mになるようにスプレー塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ4.1mmで、面密度58g/mの粘着性ワイピングクロスを得た。
この粘着性ワイピングクロスには、粘着剤と接着剤をそれぞれ80:20の重量比率で含んだ粘着性物質が塗布されており、3.3デシテックスの構成繊維が結合していた。この粘着性ワイピングクロスについて、塵埃の捕集性試験、ワイパー操作性−摩擦性試験およびワイパー操作性−官能試験を行った結果を表5に示す。
【0063】
(比較例7)
実施例1において、ポリエステル繊維(繊度:55デシテックス、繊維長:51mm)100重量%を用いてカード機により繊維フリースを形成しようとしたが、繊維ウエブの組織が粗すぎて、強度のある繊維ウエブを形成することができなかった。
【0064】
(表1)

【0065】
(表2)

【0066】
(表3)

【0067】
(表4)

【0068】
(表5)

【0069】
表1〜5から明らかなように、実施例1〜19では、砂塵の捕集性に優れる(捕集量の値が大きい)とともに、清掃の作業性に優れ(静摩擦力の値が小さい)且つ清掃対象物を汚すことのない(粘着性物質が付着しない)粘着性ワイピングクロスが得られた。これに対して、比較例1〜3のワイピングクロスは、清掃の作業性に劣り(静摩擦力の値が大きく)且つ清掃対象物を汚す(粘着性物質が付着する)ことが分かった。また、比較例4〜6のワイピングクロスは、砂塵の捕集性に劣る(捕集量の値が小さい)ことが分かった。
【符号の説明】
【0070】
1 粘着性ワイピングクロス
2 ヘッド
3 柄
4 アプリケーター
10 ワイパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊度が3.5〜50デシテックスの不織布に粘着性物質が塗布されてなるワイピングクロスであって、前記粘着性物質は粘着剤と接着剤を99:1〜65:35の重量比率で含んでおり、前記接着剤のガラス転移温度は0℃を超えるとともに前記粘着剤のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする粘着性ワイピングクロス。
【請求項2】
前記粘着性物質は粘着剤と接着剤を88:12〜70:30の重量比率で含んでいることを特徴とする請求項1に記載の粘着性ワイピングクロス。
【請求項3】
柄と前記柄の先端に設けられたヘッドとからなるアプリケータの前記ヘッドに、請求項1または2に記載の粘着性ワイピングクロスを取付けてなることを特徴とするワイパー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−236100(P2010−236100A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81764(P2009−81764)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】