説明

粘膜表面および身体組織に付与可能な薬学的ゲル調製物

【課題】付与すると粘膜表面および身体組織に接着してフィルムを形成し、付与部位、周辺身体組織、および体液の保護および薬剤の送達を提供する、非水溶性薬学的キャリアゲルに関する。
【解決手段】ゲルは、揮発性または拡散性の非水溶媒、および少なくとも1種の非水溶性アルキルセルロールまたはヒドロキシアルキルセルロースを含む。生体接着重合体もまた添加され得る。ゲルは使用しやすさとともに有効な滞留時間を提供する。滞留時間はキャリアの侵食速度を調整するように働く成分を添加することによって調整され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、薬理学的に適合性の有機溶媒に可溶化されたフィルム形成水不溶性重合体、生体接着重合体、および活性薬剤から作製された薬学的調製物、ならびにそれらの使用方法に関する。粘膜表面または身体組織への付与に際して、調製物は処置部位への薬物送達を提供すると同時に、実質的な治療生産(product)層を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
身体組織、疾患、負傷の、局所的処置は、迅速に処理するために、特別な薬学的成分が処置部位に有効な時間、維持されることが必要である。自然の体液が局所的に付与した薬学的成分をすぐに洗い流す性質を持つとすれば、湿った粘膜組織の局所的処置には問題がある。口内では唾液、粘膜組織の自然の置換、および食物、飲み物の摂取や会話時の動きが、薬学的キャリアの効果及び滞留時間を制限するという問題があった。
【0003】
生体接着キャリアは、当該分野で公知であり、ゲル、ペースト物、錠剤、およびフィルムを含む。しかし、これらの製品は効果的、かつ市販的に適切な薬学的送達デバイスとしての好ましい特性のひとつ、あるいはいくつかを欠落し得る。生体接着キャリアの使用者によって好ましい幾つかの特性の中には、水侵食性、処置部位への取扱いと付与が容易であること、使用が容易であること、異物感が最小限であることが含まれている。粘膜表面の処置のために効果的、かつ使用者に負担がかからないような他の好ましい特性としては、薬学的に認可された成分、または材料の使用;付与時の粘膜表面上への即時的な接着;患部組織の保護、または薬学的成分の送達のための滞留時間が増加できること;および患部組織からの送達デバイスの除去が容易かまたは送達部位での送達デバイスの自然溶解が含まれる。
【0004】
粘膜組織、およびとりわけ口腔での付与に使用される生体接着ゲルは当該分野で公知である。一例として、特許文献1では、ナトリウムカルボキシメチルセルロースとキサンタンガムの調合物から製造された生体接着性の歯発生(teething)ゲルが記載されている。このゲルは、口腔潰瘍傷や熱性疱疹、および痔疾の処置にも使用可能性を有し得る。しかし、この種類の薬学的キャリアは唾液のような体液がそれを処置部位からすぐに洗い流すとすれば、非常に限られた滞留時間しか有さない。生体接着ゲルについては特許文献2、3および4にも記載がある。これらの特許に記載されているゲルは、水性または油性の媒体と、異なるタイプの生体接着剤とゲル化薬剤を使用している。
【0005】
義歯を固定するためのペーストは別のタイプの当該分野で公知の生体接着製品である。しかし、これらの調製物は、組織の保護や薬物の局所的送達よりも、局所麻酔薬のような薬剤は、歯肉痛を軽減するために、このペースト中に使用され得るが、義歯をガムに固定するために接着性が主として使用される。特許文献5および6は義歯を固定するペーストを記載している。特許文献7にはナトリウムカルボキシメチルセルロースとポリエチレングリコール中のポリエチレンオキシドとの組合せが記載されている。
【0006】
ペーストは、フィルム状保護材として、および薬物送達システムとしても使用されている。フィルム形成および接着特性を持っている一例は、商品名Orabase(登録商標)-Bで市販の製品であり、これは口内の痛みを軽減するための濃いゲル状またはペースト状である。成分はグアルゴム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、トラガカントゴムおよびペクチンを含む。それは、適用領域にしびれを与えるにも関わらず、そのフィルム形成能と生体接着性は続かない。従って、この製品には限られた滞留時間しかない。
【0007】
生体接着錠剤は特許文献8に記載がある。このデバイスで用いられる水溶性の生体接着物質はキサンタンガムまたはペクチンをポリオールのように接着性を促進させる物質と組合わせて使用している。生体接着錠剤を用いることにより滞留時間は改善されるが、それらは特に口腔での使用の場合、錠剤の堅さ、サイズが大きいこと、および遅い溶解時間のために不快感を与え、使用者に都合が悪い。生体接着錠剤は、特許文献9〜11にも記載され、平均厚さが0.2から2.5mmの単層、または二層のデバイスである。これらの特許に記載の生体接着錠剤は、セルロースエーテルのような非接着性の成分、ポリアクリル酸、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンのような生体接着成分、および錠剤化のための結合剤を使用している。セルロース誘導体は水溶性であり得るか、または、水溶性でない。特許文献12で請求されるセルロース材料は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0008】
より薄く可撓性であり、従って異物感が減少する包帯、あるいは生体接着性の積層フィルムの使用が、特許文献13および14に記載されている。これらの製品は、皮膚または粘膜を経て薬剤を送達するのに使用される。積層フィルムは通常、接着性の層、蓄積層、裏張り層を含む。所定の速度で一定時間の間皮膚を通して薬剤を放出するように設計された生体接着性のデバイスは、通常、水溶性でなく、それゆえに体液によって溶解されないか洗い流されない。
【0009】
皮膚を通しての薬剤の送達のためのフィルムシステムに加えて、粘膜表面上の使用のためのフィルム送達システムがまた、公知である。これらのタイプのシステムは、水に不溶性で通常、積層、押し出しまたは多層のフィルムであり、特許文献15,16,17,18および19に記載がある。特許文献15には、薬剤層、低水溶性の層、および中間層を含む少なくとも3つの層からなる膜接着性フィルムの記載と請求がある。薬剤層は、薬剤、ならびにヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されたセルロース誘導体を含む。低水溶性の層は、低水溶性の脂肪酸と一種類以上のセルロース誘導体とを組合せて作られ、そして中間層はセルロース誘導体から作られる。特許文献16は頬側送達用の軟質フィルムに関し、これは水溶性タンパク質、ポリオール、および多価アルコール(例えばセルロース、および多糖類)の組合わせ使用によって作られ、そしてまた、着色料や香料を用いることを教示している。特許文献17には、40〜95%の水溶性のヒドロキシプロピルセルロース、5〜60%の水不溶性のエチレンオキシド、0〜10%の水不溶性のエチルセルロース、プロピルセルロース、ポリエチレンまたはポリプロピレンと、医薬とから製造される単層または多層の、生体接着性の薄いフィルムの記載がある。記載されているフィルムは、3層の積層体であり、生体接着層、蓄積層、および水不溶性である外側の保護層を含む。特許文献19では全身的な薬剤を含有し、そして水に不溶性の酢酸ビニルホモポリマー、アクリル酸ポリマー、およびセルロース誘導体の混合物を含む口内の粘膜に適用できる軟質の接着性フィルムを教示している。最後に、特許文献18では、アクリル酸ポリマー、水に不溶性のセルロース誘導体、および薬物調製物の混合物を含む接着層、ならびに水に不溶性または難溶性の裏張り層を有する、口腔内での使用のためのデバイスの記載がある。接着層は薬剤を含有し、そして粘膜表面への適用に際して薬物を送達する。
【0010】
前出の例は、固形投与形態または水溶性/水性媒体キャリアのずれかを利用する。非水性キャリアの使用もまた公知である。特許文献20は、タンニン酸、サリチル酸、およびホウ酸のエタノール懸濁液を記載している。この組合わせは、ヘルペスウイルス感染の処置のために使用される。エタノールが「成分と反応してそれらの効果を減少させず、かつ皮膚に刺激を与えない液体」であるとすれば、キャリアとして、そして成分を保全するために作用する。濃縮剤またはゲル化剤は、この調製物に組み込まれていない。特許文献21および22は、ヒドロキシプロピルセルロース、非毒性揮発性溶媒、溶媒には溶解性であるが体液、水、に体温では溶解性ではないエステル化剤、および医薬成分から作られる組成物を記載している。架橋剤もまた使用され得る。続く適用および空気乾燥により、インサイチュでフィルムが形成する。特許文献22に記載されるように、組成物およびインサイチュで身体組織上にフィルムを形成する方法に関して、「アルキルまたはヒドロキシアルキル置換セルロースは、ヒドロキシプロピルセルロースの置換に適さない」(第2欄、第28〜31行)。
【0011】
特許文献23は、錠剤の創成によるコーティング層中の薬用層の不均等な分配を含む調製物を記載している。コーティング層は粘膜に接着し、セルロースエーテル、またはアクリル酸ポリマーもしくはその塩を含有する。薬用層は、脂質および油、ワックス、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、多価アルコールまたはグリセロールエステルのような水不溶性物質を含む軟膏のベースを含んでいる。界面活性剤と活性構成成分も薬用層に含まれる。
【特許文献1】米国特許第5,192,802号
【特許文献2】米国特許第5,314,915号
【特許文献3】米国特許第5,298,258号
【特許文献4】米国特許第5,642,749号
【特許文献5】米国特許第4,894,232号
【特許文献6】米国特許第4,518,721号
【特許文献7】米国特許第4,518,721号
【特許文献8】米国特許第4,915,948号
【特許文献9】米国特許第4,226,848号
【特許文献10】米国特許第4,292,299号
【特許文献11】米国特許第4,250,163号
【特許文献12】米国特許第4,292,299号
【特許文献13】米国特許第3,996,934号
【特許文献14】米国特許第4,286,592号
【特許文献15】米国特許第4,517,173号
【特許文献16】米国特許 第4,572,832号
【特許文献17】米国特許第4,713,243号
【特許文献18】米国特許第4,900,554号
【特許文献19】米国特許第5,137,729号
【特許文献20】米国特許第4,381,296号
【特許文献21】米国特許第5,081,157号
【特許文献22】米国特許第5,081,158号
【特許文献23】特開昭56-100714号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、揮発性または分散性溶媒および非水溶性重合体を利用し、そして活性薬学的成分を輸送する、粘膜表面および身体組織への付与のための非水溶性粘膜接着ゲルに関する。典型的には、組成物は、少なくとも1種の水不溶性アルキルセルロールまたはヒドロキシアルキルセルロース、揮発性非水溶媒、および少なくとも1種の活性薬剤を有する。生体接着重合体もまた添加され得る。付与に際して、ゲルは接着フィルムを形成し、処置部位の保護と付与部位、周辺身体組織および体液への薬剤の送達とを提供する。粘膜表面または身体組織の保護方法および薬剤の局所的送達方法もまた提供される。ゲルは有効な滞留時間を提供し、かつ付与および使用しやすい。侵食性(erodable)薬学的キャリアを所望する場合、侵食性(erodability)の速度を調整するように働く成分が、滞留時間を変えるために添加され得る。
【0013】
したがって、本願は以下を提供する。
【0014】
1.粘膜表面および身体組織に接着し、かつ薬剤の処置部位への局所的送達を提供する、薬学的キャリアとして作用する非水溶性フィルム形成ゲルであって、上記薬学的キャリアは、少なくとも1種の水不溶性アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシプロピルセルロースを例外とする);非水溶媒;および少なくとも1種の活性薬学的成分を含む、ゲル。
【0015】
2.少なくとも1種の生体接着性を有する重合体をさらに含む、項目1に記載の薬学的キャリア。
【0016】
3.上記アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースが、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、またはエチルヒドロキシエチルセルロースを、単独または組合わせて含む、項目1に記載の薬学的キャリア。
【0017】
4.上記溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エトキシジグリコール、1-メチル-2-ピロリドン、揮発性シリコーン、フルオロカーボン、ジメチルエーテル、ヒドロクロロフルオロカーボン-22、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、または1,1,1-トリフルオロ-2-フルオロエタンを、単独または組合わせて含む、項目1に記載の薬学的キャリア。
【0018】
5.上記溶媒が、10〜50部の95%エタノールおよび0〜5部の水の混合物を含む、項目1に記載の薬学的キャリア。
【0019】
6.上記生体接着性を有する重合体が、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースを、単独または組合わせて含む、項目1に記載の薬学的キャリア。
【0020】
7.透過促進剤をさらに含む、項目1に記載の薬学的キャリア。
【0021】
8.上記活性薬学的成分が、抗炎症鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒剤、血管収縮剤、止血剤、化学療法剤、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ薬、抗高血圧薬、気管支拡張薬、抗コリン作用薬(anticholigernic)、抗貧血(antimenimic)化合物、ホルモン、高分子、ペプチド、タンパク質、またはワクチンを、単独または組合わせて含む、項目1に記載の薬学的キャリア。
【0022】
9.キャリアの侵食速度を調整するように働く成分をさらに含む、項目1に記載の薬学的キャリア。
【0023】
10.上記キャリアの侵食速度を調整するように働く成分が、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、およびそれらの混合物を含む、項目9に記載の薬学的キャリア。
【0024】
11.付与すると粘膜表面または身体組織に接着し、そしてフィルムを形成する薬学的キャリアとして作用する非水溶性ゲルであって、上記薬学的キャリアはエチルセルロース、エタノール、ポリアクリル酸、および少なくとも1種の活性薬剤を含む、薬学的キャリア。
【0025】
12.上記薬学的キャリアが、該組成物の1重量%〜20重量%のエチルセルロースを含み、該エタノールが該組成物の50〜80重量%で含まれ;該ポリアクリル酸が該組成物の0〜10重量%で含まれ;および該活性薬剤が該組成物の0.1〜25重量%で含まれる、項目11に記載の薬学的キャリア。
【0026】
13.上記活性薬剤が、抗炎症鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒剤、血管収縮剤、止血剤、化学療法剤、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、またはレトロウイルス薬を、単独または組合わせて含む、項目11に記載の薬学的キャリア。
【0027】
14.キャリアの侵食速度を調整するように働く成分をさらに含む、項目11に記載の薬学的キャリア。
【0028】
15.上記キャリアの侵食速度を調整するように働く成分が、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、およびそれらの混合物を含む、項目14に記載の薬学的キャリア。
【0029】
16. 粘膜表面または身体組織に接着し、かつ薬剤の処置部位への局所的送達を提供する、フィルム形成薬学的キャリアとして作用する非水溶性ゲルであって、上記薬学的キャリアは、少なくとも1種の水不溶性アルキルセルロースまたは水不溶性ヒドロキシアルキルセルロース;非水溶媒;ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースのような、少なくとも1種の生体接着性を有する重合体;および少なくとも1種の活性薬学的成分を含む、薬学的キャリア。
【0030】
17.上記アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースが、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、またはエチルヒドロキシエチルセルロースを、単独または組合わせて含む、項目16に記載の薬学的キャリア。
【0031】
18.上記溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エトキシジグリコール、1-メチル-2-ピロリドン、揮発性シリコーン、フルオロカーボン、ジメチルエーテル、ヒドロクロロフルオロカーボン-22、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、または1,1,1-トリフルオロ-2-フルオロエタンを、単独または組合わせて含む、項目16に記載のゲル。
【0032】
19.上記溶媒が、10〜50部の95%エタノールおよび0〜5部の水の混合物を含む、項目16に記載のゲル。
【0033】
20.上記活性薬学的成分が、抗炎症鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒剤、血管収縮剤、止血剤、化学療法剤、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、またはレトロウイルス薬を、単独または組合わせて含む、項目16に記載のゲル。
【0034】
21.粘膜表面または身体組織の保護および薬剤の局所的送達のための方法であって:
非水溶性フィルム形成薬学的キャリアを、噴霧、浸漬、または指もしくは綿棒による直接付与によって、上記粘膜表面または身体組織に付与する工程であって、ここで上記薬学的キャリアが、水不溶性アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロース;非水溶媒;および活性薬学的成分を含む、工程を包含する、方法。
【0035】
22.上記薬学的キャリアが、少なくとも1種の生体接着性を有する重合体をさらに含む、項目21に記載の方法。
【0036】
23.上記アルキルセルロースがエチルセルロースを含み;上記非水溶媒が95%のエタノールおよび水の混合物を含み;上記生体接着性を有する重合体がポリアクリル酸を含み;そして上記活性薬学的成分が局所麻酔剤を含む、項目21に記載の方法。
【0037】
24.上記薬学的キャリアが、デバイスの侵食速度を調整するように働く成分をさらに含む、項目21に記載の方法。
【0038】
25.上記キャリアの侵食速度を調整するように働く成分が、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、およびそれらの混合物を含む、項目24に記載の方法。
【0039】
26.粘膜表面または身体組織の保護および薬剤の局所的送達のための方法において使用するための非水溶性フィルム形成薬学的キャリアであって、上記方法は、上記非水溶性フィルム形成薬学的キャリアを、噴霧、浸漬、または指もしくは綿棒による直接付与によって、上記粘膜表面または身体組織に付与する工程を含み、ここで上記薬学的キャリアが、水不溶性アルキルセルロースまたは水不溶性ヒドロキシアルキルセルロース;非水溶媒;および活性薬学的成分を含む、キャリア。
【0040】
27.上記薬学的キャリアが、少なくとも1種の生体接着性を有する重合体をさらに含む、項目26に記載のキャリア。
【0041】
28.上記アルキルセルロースがエチルセルロースを含み;上記非水溶媒が95%のエタノールおよび水の混合物を含み;上記生体接着性を有する重合体がポリアクリル酸を含み;そして上記活性薬学的成分が局所麻酔剤を含む、項目26に記載のキャリア。
【0042】
29.上記薬学的キャリアが、デバイスの侵食速度を調整するように働く成分をさらに含む、項目26に記載のキャリア。
【0043】
30.上記成分が、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、およびそれらの混合物を含む、項目29に記載のキャリア。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用される、用語「水侵食性(water-erodable)」は、粘膜組織のような水性媒体中で経時的に侵食される成分またはキャリアを意味する。水中でのそのような侵食は、溶解、分散、摩擦、重力などのような因子によるものであり得る。
【0045】
本明細書中で使用される、用語「侵食性(erodability)の速度」または「侵食速度」は、薬剤のキャリアからの放出の時間調整(放出プロファイル)ならびに経時的なキャリア自身の侵食の時間調整(キャリアの寿命または滞留時間)を意味する。本明細書中に記載されるように、侵食性の速度は、キャリア中の成分のタイプおよび量、ならびにキャリア中の添加物または賦形剤のような因子に基づく。キャリアの成分が非常に水溶性である場合において、成分の侵食性の速度はその溶解速度とほとんど等しい。
【0046】
本発明において、薬学的キャリアとして作用し、かつ粘膜表面および身体組織に接着する新規非水溶性ゲルが提供される。1種以上の薬学的化合物がゲル中に組み込まれ得る。本発明は、特に粘膜表面および皮膚のような身体組織の局所的処置における使用を提供する。粘膜表面または皮膚への付与および接着に際して、揮発性または非水溶媒が蒸発し、拡散し、または周辺組織に侵入し、そしてフィルムが形成される。フィルムは、処置部位、周辺身体組織、および体液の効果的な薬物送達もまた提供しながら、処置部位の保護を提供する。経時的に、フィルムは侵食されて無くなる。
【0047】
侵食時間は、キャリアの侵食性の速度を調整するように働く成分を添加することにより調整調整可能である。有用な成分は、ゲル媒体に溶解性であるがしかし水に溶解する物質である。しばしばそのような物質は、水性媒体または体液の存在下で有利に生分解性である。この様式において、キャリアは自然に分解され、そしてキャリアの滞留時間は、所望の付与に依存して調整される。適切な成分は、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ならびにそれらの誘導体および混合物を含む。
【0048】
本発明の所望の性質が、少なくとも1種の水不溶性の、薬理学的に認可された、または食用の、アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースと、揮発性または非水溶性の薬理学的に認可された溶媒との組合わせで達成される。生体接着性を有することが知られている1種以上の重合体もまた、調製物に添加され得る。水不溶性であるが水性媒体中で分解されることが知られている1種以上の重合体もまた、調製物に添加され得る。そのような重合体は、例えば、ラクチド-グリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、酢酸セルロース、酢酸ビニルポリマー、およびポリイソブチレンである。組合わせにより、粘膜および皮膚に接着可能な非水溶性ゲルが得られる。増粘剤(thickening)、着色剤、香料、または可塑剤もまた使用され得る。付与に際して、溶媒が蒸発し、拡散し、または周辺組織に侵入し、そしてフィルムが形成される。唾液のような体液がゲルを処置部位から洗い流す傾向を与えるとすれば、非常に限られた滞留時間を有する、当該分野で公知の生体接着ゲルおよびペーストとは異なり、本発明は、そのフィルム性粘稠性(consistency)およびその非水性組成により増加した滞留時間を提供する。例えば、Orabase(登録商標)ゲルは水ベースの系であり、そして結果として、付与に際して形成されたフィルムは、約数秒ですばやく洗い流される。'296号特許において記載されているヘルペスウイルス感染の処置のための非水性ゲルは、タンニン酸、サリチル酸、およびホウ酸のエタノール懸濁液を記載している。使用された成分の化学反応に依存するこの処方物とは異なり、本発明は、ポリマーの所望の接着および/または適切な溶媒でのフィルム形成能により選択されたポリマーの特定の組合わせに依存している。最後に、'157号および'158号特許において記載されている、ヒドロキシプロピルセルロール、非毒性揮発性溶媒、およびサリチル酸またはタンニン酸のようなエステル化剤から作られるフィルム形成ゲルは、その成分の間の化学反応に依存している;本発明は依存しない。重要なことは、'157号および'158号特許は、「フィルム形成の機構はヒドロキシプロピルセルロースに特異的である」と記述して、ヒドロキシプロピルセルロース以外のアルキルセルロース誘導体の使用を避けて教示していることである。メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシブチルセルロースのような、密接に関連したアルキルまたはヒドロキシアルキル置換セルロースは、HPCの置換に適していない。」(第2欄、26〜31行)。この避けられた教示にもかかわらず、本発明は実際、ヒドロキシプロピルセルロース以外のアルキルセルロース誘導体を、非毒性揮発性溶媒中、エステル化剤を必要とせずにフィルム形成成分として利用する。
【0049】
また、固形性、かさ高さ、および遅い溶解時間により、有効な滞留時間を提供するが、使用者の不快感および口腔での異物感という短所もまた有する、当該分野で公知の生体接着錠剤とも異なり、本発明は異物感が非常に限られ、そしてほとんど存在しないゲルである。
【0050】
溶媒の散逸に際して形成されるフィルムの滞留時間は、いくつかの要因(付与されたゲルの量、ならびに組成物を作製するために使用された成分とその相対的割合とを含む)に依存する。異なる分子量を有する、または異なる化学的反応性のポリマーの使用は、例えば、フィルムの溶解速度に影響を及ぼし得る。本発明により達成され得る滞留時間は、特定の処方に依存して、数分から1日まで、そして好ましくは15分〜数時間までの範囲である。有効な薬物送達のための所望の滞留時間は、特定の薬物の特徴に依存するが、しかし通常は少なくとも20〜30分から数時間である。薬物放出の速度は、キャリアゲルおよびその成分の相対的割合の特徴、ゲルに組み込まれた薬剤の総量、特定の付与部位、ならびに特定の薬物または薬物の組合わせの物理的および化学的特徴のような因子に依存する。
【0051】
上記で記述のように、本発明の組成物は、少なくとも1種の水不溶性、薬理学的に認可された、アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースを含む。本発明で使用するアルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロース重合体は、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、およびエチルヒドロキシエチルセルロースを、単独または組合わせて含む。エチルセルロース重合体についての、好ましい特徴は、42〜52%のエトキシル含有量、そしてより好ましくは44〜50%のエトキシル含有量、および80/20トルエン/エタノール溶液中5重量%のポリマー、2〜500cpsの粘度、そしてより好ましくは4〜400cpsの粘度を含む。さらに、可塑化剤または架橋剤が、重合体の特性を改変するために使用され得る。例えば、エステル(フタル酸ジブチルまたはフタル酸ジエチルなど)、アミド(ジエチルジフェニル尿素など)、植物油、脂肪酸およびアルコール(オレイン酸およびミリスチン酸など)が、セルロース誘導体との組合わせにおいて使用され得る。
【0052】
本発明で使用するための、揮発性、非水性の薬理学的に認可された溶媒は、良好な浸透特徴を有する。いくつかの例は、低級アルキルアルコール(メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコールなど)、エトキシジグリコール、および1 メチル-2ピロリジン、揮発性シリコーンまたはエアロゾル噴射剤(フルオロカーボン、ジメチルエーテル、ヒドロクロロフルオロカーボン-22、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、および1,1,1-トリフルオロ-2-フルオロエタンなど)を、単独または組合わせて含む。本発明で使用するための好適な溶媒は、10〜50部の95%エタノールおよび0〜5部の水の混合物であり、そしてより好ましくは10〜15部の95%エタノールおよび1〜3部の水の混合物である。
【0053】
本発明の薬学的成分は、単独薬剤、もしくは薬剤の組合わせを包含する。単独、もしくは組合わせて使用され得る薬剤には、抗炎症鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔薬、殺菌剤および消毒剤、血管収縮剤、止血剤、化学療法剤、抗生物質、角質溶解剤、焼灼剤、抗ウイルス剤、抗リウマチ薬、抗高血圧薬、気管支拡張薬、抗コリン作用薬(anticholigernic)、抗貧血(antimenimic)化合物、ホルモンおよび高分子、ペプチド、タンパク質、およびワクチンを包含する。
【0054】
抗炎症鎮痛剤の例には、アセトアミノフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナク、クリダナク、フルルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェキサマック、ピロキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、チアラミド塩酸塩などが挙げられ、ステロイド性抗炎症剤の例には、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、デキサメサゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニソロン、メチルプレドニソロン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルメタゾン、フルオロメトロン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フルオシノニドなどが挙げられる。
【0055】
抗ヒスタミン剤の例としては、ジフェンヒドラミン塩酸塩、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸イソチペンジル塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、メスジラジン塩酸塩などを包含する。局所麻酔薬の例としては、ジブカイン塩酸塩、ジブカイン、リドカイン塩酸塩、リドカイン、ベンゾカイン、p-ブチル(buthyl)アミノ安息香酸-2-(ジ(die)-エチルアミノ)エチルエステル塩酸塩、プロカイン塩酸塩、テトラカイン、テトラカイン塩酸塩、クロロプロカイン塩酸塩、オキシプロカイン塩酸塩、メピバカイン、コカイン塩酸塩、ピペロカイン塩酸塩、ジクロニン、ジクロニン塩酸塩などが挙げられる。
【0056】
殺菌剤及び消毒剤の例には、チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、塩酸セチルピリジニウム、オイゲノール、臭化トリメチルアンモニウムなどが挙げられる。血管収縮剤の例には、硝酸ナファゾリン、テトラヒドロゾリン塩酸塩、オキシメタゾリン塩酸塩、フェニルエフェリン塩酸塩、トラマゾリン塩酸塩などを包含する。止血剤の例には、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバゾクロム硫酸ナトリウム、ルチン、ヘスペリジンなどを包含する。
【0057】
化学療法剤の例には、スルファミン、スルファチアゾール、スルファジアジン、ホモスルファミン、スルフィソキサゾール、スルフィソミジン、サルファメチゾール、ニトロフラゾンなどが挙げられる。抗生物質の例には、ペニシリン、メチシリン、オキサシリン、セファロチン、セファロリジン(cefalordin)、エリスロマイシン(erythromcycin)、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロロ(chlor)テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン、シクロセリンなどが挙げられる。
【0058】
角質溶解剤の例には、サリチル酸、ポドフィルム樹脂、ポドリフォックス(podolifox)、およびカンタリジンが挙げられる。焼灼剤の例は、クロロ酢酸、および硝酸銀が挙げられる。抗ウイルス剤の例には、プロテアーゼ阻害剤、チミジン(thymadine)キナーゼ阻害剤、糖もしくは糖タンパク質合成阻害剤、構造タンパク質合成阻害剤、接着および吸着阻害剤、およびヌクレオシド類似体(例えば、アシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル)が挙げられる。
【0059】
タンパク質、ペプチド、ワクチン、遺伝子などの例には、ヘパリン、インスリン、LHRH、インターフェロン、オリゴヌクレオチド、カルシトニン、およびオクテオトリド(octeotride)を包含する。
【0060】
さらに、1種以上の生体接着性を有することが知られている重合体が組成物に組み込まれ得る。重合体は薬理学的に認可されるか、または食用成分として許容されるべきである。接着が特定の薬物もしくは薬物内容、特異的な付与部位、または特異的粘膜組織による理由のために特に有効であるべきである場合に、生体接着重合体の使用はフィルムの接着性を強化する。本発明における使用のための生体接着性を有するいくつかの重合体は、ポリアクリル酸、架橋されたまたはされていないポリビニルピロリドン、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムを、単独でまたは組合わせて含む。さらに、ゲルの侵食が望ましい場合、水性媒体または体液中で生分解性(bioderodable)である物質が用いられる。適切な物質は、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ならびにそれらの誘導体および混合物を含む。
【0061】
透過促進剤もまた、処置部位における薬物の吸収を改善するために使用され得る。本発明において使用するための透過促進剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、アゾン(azone)、EDTA、コール酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸ナトリウム、および他の当該分野で公知のものを含む。
【0062】
本発明の成分材料の相対的割合は、薬物または薬物の組合わせの型、特定の標的処置部位、溶媒、および使用される特定の重合体に依存して、変化し得る。好ましくは、溶媒または溶媒の組合わせは、組成物の50〜80重量%の間からなる。より好ましくは、溶媒は60〜70重量%の間からなる。フィルム形成ポリマーまたはポリマーの組合わせは、好ましくは組成物の4〜20重量%の間で、そしてより好ましくは、6〜12重量%の間からなる。活性薬剤または薬剤の組合わせは、0.1〜25重量%の間で、より好ましくは、0.2〜20重量%の間からなる。必要に応じて、生体接着重合体が使用され得、そして0〜10重量%の間で、より好ましくは1〜8重量%の間からなるべきである。生分解性物質が用いられる場合、代表的には、それは組成物全体の約0〜約10重量%、好ましくは約1〜約8重量%からなる。任意の香料、着色剤、または濃縮剤および/または透過促進剤が、0〜3重量%の間で、より好ましくは0.5〜2.5重量%の間からなるべきである。
【0063】
ゲルの付与に際して形成されるフィルムの特性(厚さ、引張り強さ、および侵食速度など)は、ゲルが付与される組織の性質、付与されるゲルの量、処置部位または周辺範囲の唾液または他の体液の量、接触表面、および他の生理学的な因子のような因子に大きく依存し得ることを考慮して、記載されない。これらの生理学的要因の多くは再現不可能であるために、エキソビボまたはインビトロで得られたフィルムの機械的特性はインサイチュで得られたものと非常に異なっており、そして未だに特徴づけられていない。しかしながら、インビボで得られたフィルムの特性はゲルの処方を介して、ならびに可塑化剤の添加、架橋剤の使用、または残留する溶媒の量によって、調整され得る。
【0064】
本発明のゲルを作成するために、種々の成分が選択された溶媒に溶解される。1種以上の成分が溶液中に存在しない可能性により、懸濁液もまた形成され得る。ゲル化の工程は、どの時点においてでも行われ得、そして例えば、特別な成分の添加、pHの変化、温度の変化、または経時によって、引き起され得る。エアロゾル噴霧剤については、処方物は容器中では溶液であり得、調剤時にゲル化する。
【0065】
溶液およびゲルは、ゲルが実質的に均一である限り、すなわち薬剤がゲル媒体内で実質的に均一に分配される限り、当該分野で公知の種々の方法により調製され得る。当業者に明らかなように、エアロゾル噴射剤が用いられる場合、適切な圧、割合、および容器が必要である。調製に際して、ゲルは噴霧、浸漬(dipping)、または指、綿棒、もしくは任意の型の付与器による直接の付与によって処置部位へ付与される。
【0066】
本発明の薬学的キャリアを使用する、粘膜表面および身体組織の処置方法もまた提供される。1つの実施態様において、粘膜表面または身体組織の保護方法および薬剤の局所的送達方法は、少なくとも1種の水不溶性アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースと、揮発性非水溶媒と、少なくとも1種の活性薬学的成分とを有する、非水溶性フィルム形成薬学的キャリアを調製する工程;および噴霧、塗布、または指もしくは綿棒による直接の付与によって粘膜表面または身体組織へ薬学的キャリアを付与する工程、を含む。別の実施態様において、この方法は、薬学的キャリアの調製において、少なくとも1種の生体接着性を有する重合体の使用をさらに含む。好適な実施態様において、この方法は、エチルセルロース、95%エタノールおよび水の混合物;ポリアクリル酸;および局所麻酔剤の使用をさらに含む。
【実施例】
【0067】
実施例1
以下の成分を使用してエチルアルコールベースのゲルを調製した:65重量%の95%エチルアルコール;0.8重量%のミント香料;8重量%のエチルセルロース;2.2重量%のポリアクリル酸;5重量%の水(米国薬局方(USP));15%のベンゾカイン(米国薬局方);および4重量%のメントール(米国薬局方)。透明な、黄色がかった、フィルム形成能を有するゲルが形成された。
【0068】
実施例2
以下の成分を使用してエチルアルコール/エトキシジグリコールベースのゲルを調製した:55重量%の95%エチルアルコール;1重量%のミント香料;8重量%のエチルセルロース;2重量%のポリアクリル酸;15重量%のエトキシジグリコール;15%のベンゾカイン(米国薬局方);および4重量%のメントール(米国薬局方)。ここで、2つの混合性溶媒の混合物はフィルムが形成する時間に影響を与えた。95%エチルアルコールおよび水の混合物を溶媒として使用した実施例1と比較して、このゲルのフィルム形成速度はより遅かった。
【0069】
実施例3
以下の成分を使用してエチルアルコールベースのゲルを調製した:75重量%のエチルアルコール;1重量%のミント香料;4重量%の、80/20トルエン/エタノール溶液中25℃で8cpsと12cpsとの間の粘度を有するエチルセルロースMw;4重量%の、80/20トルエン/エタノール溶液中25℃で90cpsと110cpsとの間の粘度を有するエチルセルロースMw;3%のポリアクリル酸;9重量%のエトキシジグリコール;および4重量%のジクロニン。ここで、実施例1のゲルと比較して、2つの異なるエチルセルロースグレードの使用は、より固くそしてより濃厚なコンシステンシーを有するゲルを生成した。これはわずかに異物感を増加させた。
【0070】
実施例4
以下の成分を使用してエチルアルコール/1-メチル-2-ピロリドンベースのゲルを調製した:55重量%の95%エチルアルコール;1.5重量%のミント香料;26重量%の1-メチル-2-ピロリドン;6重量%のエチルセルロース;2.5重量%のポリアクリル酸;5重量%の水;および4重量%のメタノール(米国薬局方)。メチルピロリドンの使用が風味を悪くしたために、風味を隠すためにより高い割合いの香料を使用しなければならなかった。実施例1のゲルと比較して、このゲルは、与えられた風味のために、使用者に受け入れられにくかった。しかしながら、このゲルの拡散速度は適切であり、そして良好なフィルムの形成を可能にした。
【0071】
実施例5
生体接着重合体としてポリビニルピロリドンを使用して、エチルアルコールベースのゲルを調製した。使用した成分は以下のとおりである:65重量%の95%エチルアルコール;0.8重量%のミント香料;6.2重量%のエチルセルロース;4重量%のポリビニルピロリドン;5重量%の水(米国薬局方);15重量%のベンゾカイン(米国薬局方);および4重量%のメントール(米国薬局方)。ここで、生体接着重合体として、ポリアクリル酸のかわりにポリビニルピロリドンを使用したことで、良好なフィルムを形成したが、しかし接着性はポリアクリル酸を使用して得られたものよりも弱くなったようであった。
【0072】
実施例6
生体接着重合体としてカルボキシメチルセルロースナトリウムを使用して、エチルアルコールベースのゲルを調製した。使用した成分は以下のとおりである:75重量%の95%エチルアルコール;1重量%のミント香料;8重量%のエチルセルロース;4重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム;8重量%の水(米国薬局方);および4重量%のメタノール(米国薬局方)。ここで、カルボキシメチルセルロースナトリウムが、ポリアクリル酸がエタノールに溶解するのと同じ程度にはエタノールに溶解せず、そして部分的に懸濁液が形成されてゲルの接着特性を変えると考えて、ポリアクリル酸のかわりにカルボキシメチルセルロースナトリウムを使用したことで、接着性がより弱くなった。
【0073】
実施例7
以下の成分を使用してエチルアルコールベースのゲルを調製した:78重量%の95%エチルアルコール;1重量%のミント香料;8重量%のエチルセルロース;3重量%のポリアクリル酸;6重量%の水(米国薬局方);0.1重量%のラウリル硫酸ナトリウム;および3.9重量%のジクロニン(米国薬局方)。ここで、形成されたゲルは実施例1のゲルと似ていた。しかしながら、異なる麻酔剤(ベンゾカインの代わりにジクロニン)を使用したことで、麻痺効果が弱くなった。
【0074】
実施例8
実施例1において提供された処方によるゲルを調製し、そして8人の健康なボランティアに投与した。参加者にごく少量のゲルを1本の指の先端に付与してもらい、次いで口腔内の1箇所にゲルをつけそして素早く広げて/こすりつけてもらった。ボランティアに0〜3のスケール(ここで3は非常に良い、2は良い、1は並み、0は劣っている)で、ゲルの扱いやすさ、およびその麻痺効果を記述してもらった。ボランティアに、付与した部位でのフィルムの形成に必要な時間、ならびにその滞留時間、および異物感を感じたか否かについてもまた記述してもらった。さらに、ボランティアに、ゲルの風味および全体的な効果についての彼等の印象、ならびにゲルについての彼等の全体的な印象を、正(+)または負(−)で記述してもらった。
【0075】
結果を以下の表1に示す。
【0076】
【表1】

結果は、実施例1の処方物が、使用者に最小限度の異物感しか与えずに、付与しやすく、かつ素早くフィルムを形成することを実証する。フィルムは、処置部位および周辺組織の有効な麻痺をまた提供しながら、有効な薬物送達を提供するのに十分に長くしかるべき場所に留まる。
【0077】
実施例9
市販の製品、Anbesol(登録商標)、Orabase-B(登録商標)、Oragel(登録商標)、およびZilactin-B(登録商標)を、実施例1の処方物と比較して、その滞留時間、ならびに侵食および溶解のパターンを含むフィルム特性について評価した。各製品を、ミクロスライド上にセットした1/4インチ直径マスクに塗り広げた。ミクロスライドのセットを、室温で一晩放置して乾燥させた。翌日、マスクを除去し、乾燥したフィルムを得た。次いで、各ミクロスライドを300rpmで一定に撹拌した蒸留水の入ったビーカーに入れ、それによりフィルムを完全に浸した。
【0078】
水に浸している間、ミクロスライド上のフィルムを観察した;結果を以下の表2に記載する:
【0079】
【表2】

【0080】
結果は、Orabase(登録商標)およびOragel(登録商標)のような水ベースのゲルが容易に水と混合する傾向を有し、従ってフィルムまたは薬物蓄積所(depot)としてのそれらの存在を有意に制限することを実証する。Anbesol(登録商標)のようなアルコールベースのゲルは、良好なフィルム形成能または滞留時間を有さない。これはその成分が水溶性でありフィルム形成しないからであり得る。このことは、フィルムの小片がスライドから剥がれ落ちることを観察したことによって、急速なパターンの侵食および溶解を説明し得る。
【0081】
Zilactin-B(登録商標)は良好な接着および滞留時間を示し、おそらくその調製において架橋により形質転換されるフィルム形成材料の使用の結果であることを示した。しかしながら、侵食は遅かったがフィルムの小片は経時的に剥がれ落ちることが観察されたことを考慮すると、フィルムはわずかに不均一であるようである。本発明の実施例1の処方物の場合において、フィルムは小片になって剥がれ落ちずに、むしろ均一なディスクのままであり、これは、フィルムのスライドガラスへの接着が弱まることで、水がゆっくりと表面にそって流れた後にスライドから剥がれ落ちた。
【0082】
この実施例における水の使用が唾液のような体液の組成物を全体的には模倣ししておらず、そしてミクロスライドの表面が粘膜表面または身体組織物質を模倣し得ないことを考慮して、この実施例はインビボでの滞留時間の測定の代替であることを意味しない。この実施例はインビトロで異なる製品を比較するために計画された。基質としてのミクロスライドの使用が、標準的な身体の動きおよび体液がおそらく乏しいフィルム形成能とともに組成物の侵食を促進する、インビボでの状況のように、組成物の機械的な支持を提供したことに注意することもまた重要である。
【0083】
実施例10
エアロゾル噴霧物を、40重量%のエタノールと40重量%のDYMEL 152Aとを混合することによって調製する。この溶液に、4重量%のエチルセルロース、0.2重量%のオレイン酸、および水を加えた。噴霧に際して、この処方物は直ちに皮膚または粘膜組織に接着するフィルムを誘発する。
【0084】
特定の実施態様が例示され記載されたが、種々の改変および変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく成され得ることを、当業者は認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘膜表面または身体組織の保護および薬剤の局所的送達のための方法であって:
非水溶性フィルム形成薬学的キャリアを、噴霧、浸漬、または指もしくは綿棒による直接付与によって、該粘膜表面または身体組織に付与する工程であって、ここで該薬学的キャリアが、水不溶性アルキルセルロースまたは水不溶性ヒドロキシアルキルセルロース;非水溶媒;および活性薬学的成分を含む、工程を包含する、方法。

【公開番号】特開2007−211030(P2007−211030A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139731(P2007−139731)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【分割の表示】特願平10−519468の分割
【原出願日】平成9年10月16日(1997.10.16)
【出願人】(505236908)ビロテックス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】