精子活性度評価器
【課題】 精液の一部を採取し、これを所定の受容部に収納することで精液内の精子の活性度を簡単に定量評価することができる簡易型の精子活性度評価器を提供する。
【解決手段】 基板1の上面部に精液受容部2が形成され、この中に精液の一部が入れられる。精液受容部2の側壁部にはビーム光線発生光源3、その対向位置にビーム状の光線を受光する光センサー4と設置されている。光路にあたる精液内の微弱な状態変化、即ち、精液内の精子が光路内で動き回り、その動きに対応する光路内での光の散乱が生じるため、この微弱な散乱光を光センサー4で検出する。この検出された信号は、精子の数あるいは活性度を示す信号として、信号演算部5で増幅、パルス信号化され、規定時間計数計測され、予め設定された精子の受精能力を段階的に表す基準値と比較され、被験者の精子の活性度を評価判定する。判定結果は表示部6に表示される。
【解決手段】 基板1の上面部に精液受容部2が形成され、この中に精液の一部が入れられる。精液受容部2の側壁部にはビーム光線発生光源3、その対向位置にビーム状の光線を受光する光センサー4と設置されている。光路にあたる精液内の微弱な状態変化、即ち、精液内の精子が光路内で動き回り、その動きに対応する光路内での光の散乱が生じるため、この微弱な散乱光を光センサー4で検出する。この検出された信号は、精子の数あるいは活性度を示す信号として、信号演算部5で増幅、パルス信号化され、規定時間計数計測され、予め設定された精子の受精能力を段階的に表す基準値と比較され、被験者の精子の活性度を評価判定する。判定結果は表示部6に表示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精液内の精子の数、及びその動きなどの活性度を定量的に評価することができる精子活性度評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不妊の要因は男性側あるいは女性側、または双方に存在する場合があるが、従来は主に女性側にその要因があるとして医療診察が行われてきた。近年、不妊の要因が男性側にもあることが明らかになり、男性も医療診察により受精機能の診断を受けるようになっている。男性の場合、医療診察受診における受精能力の診断は、採取された被験者の精液をプレパラート上に塗布し、これを顕微鏡で観察し、精子の活動状況の観察及び単位面積内の精子の数を計測し、これらの精子の活性状況から診療医が受精能力についての診断を下してきた。(たとえば、特許文献1参照)これまで妊娠に関しては女性の尿から妊娠の有無を判定する簡易式判定手法があるが、被験者(男性)の精子の活性度すなわち受精させる能力(以下単に受精能力という)を被験者自身が定量的に自己判定し得る簡易式評価装置は存在していない。
【特許文献1】特開2001−242168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
男性は一般的には自己の精子の受精能力について医療機関を訪れ受診を受けることを嫌う傾向がある。また、男性の受精能力を自分で簡略に検査する機器も開発されていない。そのため、男性側に不妊の原因があるにもかかわらず子供の出生を願いつつ、子供に恵まれない夫婦が多く存在してきた。
本発明は男性自らが自己の精子の活性度を簡単に検査し、受精能力を評価できる簡易式評価器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が提供する精子活性度評価器は、上記課題を解決するために、採取した精液を受容する容器部と、その容器部内の精液に光を透過させる光学系と、透過した光を受光し精子の活性度情報を含む信号を出力する検出器と、この検出器からの信号を演算処理して精子の活性度をあらわす値を出力する計測手段と、計測手段からの出力を表示する表示器を備えたものである。したがって男性被検者自らが容易かつ迅速に自己の精子の活性状況を評価できる。
【発明の効果】
【0005】
本発明が提供する精子活性度評価器は、医療機関で強制的に精液の採取をするというものではなく、夫婦間の性交渉後に、あるいは男性自身が独自で射精行為を行った後の精液の一部を本容器に採取するだけで、その時の精子の活性状態を知ることができる。採取される精子の活性度は射出する男性のその時の体調に依存することがあるが、本発明の精子活性度評価器は繰り返し定期的に使用することが可能であり、所定の期間における精子の活性度を経時的に観察することも可能であり、男性の受精能力向上について自己管理することができる。また、上記したように、自己採取した精液で被検者自身が簡単に採取時の受精能力の目処を自己判定できることで、医療機関で受診する精神的肉体的苦痛を取り除くとともに、経時的に精子に関わる体調を意思制御することで受精能力を高めるための手段として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、医療機関に赴くことなく個人的に男性自身の受精能力を自己診断できる精子活性度評価器を提供する。具体的には、精子の動きを乱反射する光の信号として検出し、この散乱光を電気信号に変換・検出し、単位時間内に検出されたパルス数を予め設定されている基準値と比較することで、精液採取時の精子の活性状態を定量的に判定できる精子活性度評価器を提供する。
【0007】
本発明の精子活性度評価器は、精子の動きをその動きに相応する散乱光として検出し、これを電気信号に変換し、この電気信号をパルス信号に変換した後、計数回路で規定時間計測し、規定時間内に計測されたパルス数を受精能力に関連付け評価できるようにしたものである。これは計測されたパルス数を予め定めた、すなわち医学的、または生理的に通常の標準的な男性の値として設定した受精能力値と比較することで判定信号を表示する。
【0008】
精子の動きが活発であるということは、その精子の活性度が高く、受精能力が大きいことを示している。そこで本発明は、この精子の活性度を光の変化に換え、具体的には光の散乱の度合いに変換しようとするものである。すなわち、精液に光源から発せられたビーム状の光線を照射し、精子の動きに比例する散乱光を発生させる。この散乱光を光センサーで受光し、精子の数あるいは活性度の強弱を電気信号として検出する。これらの電気信号を計数処理することにより受精に必要な精子の活性度を評価できる。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明が提供する精子活性度評価器を図面に示す実施例にしたがって説明する。本発明の精子活性度評価器の構成を図1に示す。図1は精子活性度評価器全体の斜視図であり、図2は図1のA−A‘部の縦断面である。図3は精液受容部2に精液Lを受容した状態を示す。基板1には採取した精液Lの一部を受容するための凹部形状の精液受容部2が設けられている。さらに精液受容部2には精子活動状態計測用容器部13を収納できる構造をもち、精液受容部2に受容される精液Lを透過するためのビーム光線を発する光源3と、精液Lを透過してきたビーム光を受光して電気信号に変換するための光センサー4が一対となって対向設置されている。図4は光源3からのビーム光を照射した状態における精液L内の精子Mの動きを一部拡大的に示したものである。光センサー4は図4に示す精子Mの活動を微弱な電気信号として検出し、その電気信号は図5に示す信号演算部5に伝達される。精子活動状態計測用容器部13はビーム上の光線を照射する光源部3とその光線をその対向線上で受光する光センサー部に接する箇所のみ透明化された箱形でその容器内を遮光するため開閉を可能にする蓋11で構成されている。精子活動状態計測用容器部13は計測終了後洗浄可能なように着脱可能に設計されている。
【0010】
本発明が提供する精子活性度評価器の電気系ブロック線図を図5に示す。21は前段増幅器で光センサー4からの信号を初期増幅する機能を有している。前段増幅器21の出力信号の波形を図8、図13および図18に示す。22はフィルターで、前段増幅器21からの出力信号を受け信号内の直流分をカットし交流信号にする機能を有す。その出力波形を以下の3つの例を示す、精子の動きが活発な例を図9に、精子の動きが若干化活発な例を図14、精子の動きが全く不活発な例を図19に示す。23はフィルター22からの出力信号を増幅するための増幅器であり、検出信号は交流信号として増幅される。24は波形整形器で増幅器23からの出力信号を整流回路を通し予め決められた設定値以上の電圧レベルの波形信号のみを図10,図15、図20に示すようなパルス波形に整形するための機能を有している。25は図11、図16,図21に示す予め設定された時間内のみ増幅器24からの出力パルスをカウントするための計測時間制御回路、26はカウンター回路で、波形整形器24からのパルス出力信号を計測時間制御回路25で設定された時間パルスカウントする機能を有している。図12,図17,図22にカウントされるパルスの状態を示す。27は診断判定回路でカウンター回路26の出力値を受け、この出力値を予め設定された値と比較して受精能力の判定を行う機能を有している。これらにより信号演算部5が構成されている。
【0011】
6は表示部で、基板1内に設置され診断判定回路27から伝達された受精能力診断結果が表示される。8は電気回路を作動させるためのバッテリーであり、このバッテリー8を収納するためバッテリー収納庫7が基板1の内設されている。9は電気回路の駆動をオン/オフするための電源スイッチであり、10は精液受容部2に採取した精液Lを受容した後、受精能力診断を開始するための診断指令スイッチである。本発明の精子活性度評価器は上記の各機能要素から構成されている。
【0012】
ここで精液受容部2に入れる被測定精液の採取と採取した精液の一部を精液受容部2に充填するための手段について、図6および図7で具体的に説明をする。
精液Lの採取は、予め準備しておく精液採取ビーカ31内に射精する。精液採取ビーカ31は形状、大きさに特に指定されるものではなく、射精精液を捕集できるものであればどのようなものでもよい。精液は、自慰による採取でも、性交射精時膣外射精により捕集してもよい。本稿では精液捕集器は精液採取ビーカ31として説明を行う。図6は精液採取ビーカ31内に採取された精液Lと、採取された精液Lの一部を吸い取り、本発明が提供する精子活性度評価器の精液受容部2に充填させるためのスポイド32を示す。
【0013】
スポイド32で採取された精液は図7に示すように精液受容部に滴下される。精液受容部2は前述したように精子活動状態計測用容器部13とその容器内を外部光から遮光するための蓋11から構成され、洗浄可能で繰り返し使用が可能な構成になっている。図6および図7に示すように精液採取ビーカ31からスポイド32により精液Lの一部を精液受容部2内に図3あるいは図4に示すレベル、即ち光源3および光センサー4の設置高さを超える高さまで滴下する。このレベルまで精液Lを充填した後、精子活動状態計測用容器部13の蓋11を閉じ、精液受容部2内を外部光から完全に遮光する。蓋11は外部光による計測ノイズを完全に除去し、光源3から発せられたビーム光内で動く精子の活動状況を光センサー4でS/N比(被計測信号とノイズとの比)良く検出するためのものである。また、射精された精液の濃度が濃く、光の透過度が悪い場合、射精された液体を中性液で2〜3倍に希釈して精液受容部2に滴下する。また、希釈なしで計測する場合、光源3と光センサー4の対向位置の間隔を狭めた精液受容部2を使用することでビーム光の透過度を上げることができる。
【0014】
さて、本発明が提供する精子活性度評価器は以上のような個別機能の集成で構成され、これらを基板1内にまとめることで持ち運び及び使用に便利である。以下、実際の使用について本発明の特徴を説明する。
男性性器から射出された精液の一部を採取して基板1の精液受容部2に充填する。精液Lが精液受容部2に充填された状態での基板1の断面図を図3に示す。この状態で電源スイッチ9をオンにして光源3からビーム状の光線を光センサー4に向けて照射すると、光路にあたる精液L内の精子の微弱な状態変化を光センサー4で検出することができる。
【0015】
図4は精液L内で活動する精子Mの状態を模式的に拡大したものである。個々の精子Mは図4に示すように頭部と尾部よりなり、尾部の蠕動運動により動き回る。活性度の高い精子ほどその動きが活発である。精子Mが光路を横切るとき、あるいは光路内で動き回るとき、その頭部が光路を遮る状態となるため、光路内で光の散乱が生ずる。この微弱な散乱光を光センサー4で検出し電気信号に変換する。即ち、精子Mの動きで生じる光の散乱を電気信号として検出するが、この検出信号は精液L内の精子密度と、精子個々の活性度に関連する。このように光センサー4で精子Mの動きに連動した電気信号を経時的に検出し、且つ前段増幅器21及び増幅器23などにより信号増幅され拡大波形が得られる。
【0016】
図8、図13及び図18は光センサー4で検出した信号を前段増幅器21で増幅した後の出力波形を示す。図8は精液L内の精子Mの動きが極めて活発な状態を示し、受精能力が極めて高い精子活性状態を示している。図13は図8の状態に比較し、精液L内の精子Mの動きが若干不活発な状態を示し、受精能力が低下している精子活性状態を示している。但し、この状態は受精能力が欠落してしる状態ではなく、チェック時の体調により精子の活発度が異なることもしばしばある。図18は図8及び図18の精子活性状態に比較し、精液L内の精子Mの動きが全く不活発な状態を示し、受精能力が欠落している精子活性状態を示す。
【0017】
したがって、動きの活発な精子Mが多ければ多いほど、光センサー4が検出する変動波形の数は図8にしめすように多くなる。精子Mは微小なものであり、光センサー4で検出する波形信号は微弱であるが、この信号は信号演算部5の中の前段増幅器21で増幅され、さらにフィルター22で交流信号に変換される。この交流信号の波形を図9、図14及び図19に示す。この信号は増幅器23で増幅される。増幅器23の出力波形は、予め設定された閾値(電圧レベル)を超えた信号は波形整形器24にて整流後、図10、図15及び図20に示されるようなパルス波形に整形され、カウンター回路26に入力される。図20は閾値を超えた信号が全くない状態の図である。
【0018】
診断指令スイッチ10を作動させると診断指令信号が計測時間制御回路25に伝達され、計測時間制御回路25は、図11、図16及び図21に示すような計測時間制御信号で、カウンター回路26を制御する。カウンター回路26は計測時間制御回路25から指示された計測時間内に入る波形整形器24からのパルス波形信号を計数する。図12では設定時間内に8個のパルスを計測することを示し、図17では計測時間内に2個のパルス計測を示し、図22では1個のパルスも計測していないことを示している。カウンター回路26で計数された値は診断判定回路27に伝達される。診断判定回路27は、この入力した値を予め設定された値と比較し、精子Mの活性度を数字あるいは段階区切りにした情報として表示部6に伝達する。
【0019】
表示部6は精子の活性度を図12、図17あるいは図22の計測結果で示す数段階に分けたレベルでの数字表示の他、「活性度 高」、「活性度 中」、「活性度 低」のような表示、「正常」、「要再検査」、「異常」のような文字表示、また、正常状態を緑色、再検査状態を黄色、活性度が非常に低い場合は赤色表示するなど、数字、文字あるいは色表示により被験者の精子の活性度を表示することができる。
【0020】
本発明が提供する精子活性度評価器は以上詳述したとおりであるが、発明の構成は上記あるいは図示例に示される構成に限定されるものではなく、種々の変形例をも包含する。例えば光学系については、超小型レーザ器の使用や、LEDなどの利用が考えられる。そして光センサーも光源の種類により、あるいは精子による散乱光をとらえる有効な受光用センサーを選択するべきである。精液受容部にねじ式の開閉蓋を設け、外部からの遮光をより完全にすることで測定時の効率アップや精液の流出防止を図るなどの工夫も可能である。本文でも説明したように精液内の精子分布濃度を調整するための希釈液を準備することも本発明の応用例として考察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による精子活性度評価器の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の斜視図のうちA−A‘部の縦断面図である。
【図3】精液受容部に精液を受容した状態図である。
【図4】精液受容部内での精子の活動状況を示す精子の一部拡大模式図である。
【図5】本発明における精子活性度評価器の電気回路を示す系統図である。
【図6】精液採取ビーカに採取した精液の一部をスポイドで採取中の状態図である。
【図7】スポイドで採取した精液を精液受容部に滴下している状態図である。
【図8】受精能力が極めて活発な精子活性状態での前段増幅器21の出力信号波形で示す。
【図9】受精能力が極めて活発な精子活性状態でのフィルター22の出力信号波形で示す。
【図10】受精能力が極めて活発な精子活性状態での波形整形器24の出力信号波形で示す。
【図12】受精能力が極めて活発な精子活性状態時に計測時間制御回路25の出力時間内に計測されるパルスの状態を示す。
【図13】受精能力が若干不活発な精子活性状態での前段増幅器21の出力信号波形を示す。
【図14】受精能力が若干不活発な精子活性状態でのフィルター22の出力信号波形で示す。
【図15】受精能力が若干不活発な精子活性状態での波形整形器24の出力信号波形で示す。
【図17】受精能力が若干不活発な精子活性状態を計測時間制御回路25の出力時間内に計測されるパルスの状態を示す。
【図18】受精能力の全く無い異常な精子活性状態での前段増幅器21の出力信号波形を示す。
【図19】受精能力の全く無い異常な精子活性状態でのフィルター22の出力信号波形で示す。
【図20】受精能力の全く無い異常な精子活性状態での波形整形器24の出力信号波形で示す。
【図22】受精能力の全く無い異常な精子活性状態を計測時間制御回路25の出力時間内に計測されるパルスの状態を示す。パルス出力が全くない。
【符号の説明】
1 基板
2 精液受容部
3 光源
4 光センサー
5 信号演算部
6 表示部
7 バッテリー収納庫
8 バッテリー
9 電源スイッチ
10 診断指令スイッチ
11 蓋
13 精子活動状態計測用容器
31 精液採取ビーカ
32 スポイド
L 精液
M 精子
【技術分野】
【0001】
本発明は、精液内の精子の数、及びその動きなどの活性度を定量的に評価することができる精子活性度評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不妊の要因は男性側あるいは女性側、または双方に存在する場合があるが、従来は主に女性側にその要因があるとして医療診察が行われてきた。近年、不妊の要因が男性側にもあることが明らかになり、男性も医療診察により受精機能の診断を受けるようになっている。男性の場合、医療診察受診における受精能力の診断は、採取された被験者の精液をプレパラート上に塗布し、これを顕微鏡で観察し、精子の活動状況の観察及び単位面積内の精子の数を計測し、これらの精子の活性状況から診療医が受精能力についての診断を下してきた。(たとえば、特許文献1参照)これまで妊娠に関しては女性の尿から妊娠の有無を判定する簡易式判定手法があるが、被験者(男性)の精子の活性度すなわち受精させる能力(以下単に受精能力という)を被験者自身が定量的に自己判定し得る簡易式評価装置は存在していない。
【特許文献1】特開2001−242168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
男性は一般的には自己の精子の受精能力について医療機関を訪れ受診を受けることを嫌う傾向がある。また、男性の受精能力を自分で簡略に検査する機器も開発されていない。そのため、男性側に不妊の原因があるにもかかわらず子供の出生を願いつつ、子供に恵まれない夫婦が多く存在してきた。
本発明は男性自らが自己の精子の活性度を簡単に検査し、受精能力を評価できる簡易式評価器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が提供する精子活性度評価器は、上記課題を解決するために、採取した精液を受容する容器部と、その容器部内の精液に光を透過させる光学系と、透過した光を受光し精子の活性度情報を含む信号を出力する検出器と、この検出器からの信号を演算処理して精子の活性度をあらわす値を出力する計測手段と、計測手段からの出力を表示する表示器を備えたものである。したがって男性被検者自らが容易かつ迅速に自己の精子の活性状況を評価できる。
【発明の効果】
【0005】
本発明が提供する精子活性度評価器は、医療機関で強制的に精液の採取をするというものではなく、夫婦間の性交渉後に、あるいは男性自身が独自で射精行為を行った後の精液の一部を本容器に採取するだけで、その時の精子の活性状態を知ることができる。採取される精子の活性度は射出する男性のその時の体調に依存することがあるが、本発明の精子活性度評価器は繰り返し定期的に使用することが可能であり、所定の期間における精子の活性度を経時的に観察することも可能であり、男性の受精能力向上について自己管理することができる。また、上記したように、自己採取した精液で被検者自身が簡単に採取時の受精能力の目処を自己判定できることで、医療機関で受診する精神的肉体的苦痛を取り除くとともに、経時的に精子に関わる体調を意思制御することで受精能力を高めるための手段として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、医療機関に赴くことなく個人的に男性自身の受精能力を自己診断できる精子活性度評価器を提供する。具体的には、精子の動きを乱反射する光の信号として検出し、この散乱光を電気信号に変換・検出し、単位時間内に検出されたパルス数を予め設定されている基準値と比較することで、精液採取時の精子の活性状態を定量的に判定できる精子活性度評価器を提供する。
【0007】
本発明の精子活性度評価器は、精子の動きをその動きに相応する散乱光として検出し、これを電気信号に変換し、この電気信号をパルス信号に変換した後、計数回路で規定時間計測し、規定時間内に計測されたパルス数を受精能力に関連付け評価できるようにしたものである。これは計測されたパルス数を予め定めた、すなわち医学的、または生理的に通常の標準的な男性の値として設定した受精能力値と比較することで判定信号を表示する。
【0008】
精子の動きが活発であるということは、その精子の活性度が高く、受精能力が大きいことを示している。そこで本発明は、この精子の活性度を光の変化に換え、具体的には光の散乱の度合いに変換しようとするものである。すなわち、精液に光源から発せられたビーム状の光線を照射し、精子の動きに比例する散乱光を発生させる。この散乱光を光センサーで受光し、精子の数あるいは活性度の強弱を電気信号として検出する。これらの電気信号を計数処理することにより受精に必要な精子の活性度を評価できる。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明が提供する精子活性度評価器を図面に示す実施例にしたがって説明する。本発明の精子活性度評価器の構成を図1に示す。図1は精子活性度評価器全体の斜視図であり、図2は図1のA−A‘部の縦断面である。図3は精液受容部2に精液Lを受容した状態を示す。基板1には採取した精液Lの一部を受容するための凹部形状の精液受容部2が設けられている。さらに精液受容部2には精子活動状態計測用容器部13を収納できる構造をもち、精液受容部2に受容される精液Lを透過するためのビーム光線を発する光源3と、精液Lを透過してきたビーム光を受光して電気信号に変換するための光センサー4が一対となって対向設置されている。図4は光源3からのビーム光を照射した状態における精液L内の精子Mの動きを一部拡大的に示したものである。光センサー4は図4に示す精子Mの活動を微弱な電気信号として検出し、その電気信号は図5に示す信号演算部5に伝達される。精子活動状態計測用容器部13はビーム上の光線を照射する光源部3とその光線をその対向線上で受光する光センサー部に接する箇所のみ透明化された箱形でその容器内を遮光するため開閉を可能にする蓋11で構成されている。精子活動状態計測用容器部13は計測終了後洗浄可能なように着脱可能に設計されている。
【0010】
本発明が提供する精子活性度評価器の電気系ブロック線図を図5に示す。21は前段増幅器で光センサー4からの信号を初期増幅する機能を有している。前段増幅器21の出力信号の波形を図8、図13および図18に示す。22はフィルターで、前段増幅器21からの出力信号を受け信号内の直流分をカットし交流信号にする機能を有す。その出力波形を以下の3つの例を示す、精子の動きが活発な例を図9に、精子の動きが若干化活発な例を図14、精子の動きが全く不活発な例を図19に示す。23はフィルター22からの出力信号を増幅するための増幅器であり、検出信号は交流信号として増幅される。24は波形整形器で増幅器23からの出力信号を整流回路を通し予め決められた設定値以上の電圧レベルの波形信号のみを図10,図15、図20に示すようなパルス波形に整形するための機能を有している。25は図11、図16,図21に示す予め設定された時間内のみ増幅器24からの出力パルスをカウントするための計測時間制御回路、26はカウンター回路で、波形整形器24からのパルス出力信号を計測時間制御回路25で設定された時間パルスカウントする機能を有している。図12,図17,図22にカウントされるパルスの状態を示す。27は診断判定回路でカウンター回路26の出力値を受け、この出力値を予め設定された値と比較して受精能力の判定を行う機能を有している。これらにより信号演算部5が構成されている。
【0011】
6は表示部で、基板1内に設置され診断判定回路27から伝達された受精能力診断結果が表示される。8は電気回路を作動させるためのバッテリーであり、このバッテリー8を収納するためバッテリー収納庫7が基板1の内設されている。9は電気回路の駆動をオン/オフするための電源スイッチであり、10は精液受容部2に採取した精液Lを受容した後、受精能力診断を開始するための診断指令スイッチである。本発明の精子活性度評価器は上記の各機能要素から構成されている。
【0012】
ここで精液受容部2に入れる被測定精液の採取と採取した精液の一部を精液受容部2に充填するための手段について、図6および図7で具体的に説明をする。
精液Lの採取は、予め準備しておく精液採取ビーカ31内に射精する。精液採取ビーカ31は形状、大きさに特に指定されるものではなく、射精精液を捕集できるものであればどのようなものでもよい。精液は、自慰による採取でも、性交射精時膣外射精により捕集してもよい。本稿では精液捕集器は精液採取ビーカ31として説明を行う。図6は精液採取ビーカ31内に採取された精液Lと、採取された精液Lの一部を吸い取り、本発明が提供する精子活性度評価器の精液受容部2に充填させるためのスポイド32を示す。
【0013】
スポイド32で採取された精液は図7に示すように精液受容部に滴下される。精液受容部2は前述したように精子活動状態計測用容器部13とその容器内を外部光から遮光するための蓋11から構成され、洗浄可能で繰り返し使用が可能な構成になっている。図6および図7に示すように精液採取ビーカ31からスポイド32により精液Lの一部を精液受容部2内に図3あるいは図4に示すレベル、即ち光源3および光センサー4の設置高さを超える高さまで滴下する。このレベルまで精液Lを充填した後、精子活動状態計測用容器部13の蓋11を閉じ、精液受容部2内を外部光から完全に遮光する。蓋11は外部光による計測ノイズを完全に除去し、光源3から発せられたビーム光内で動く精子の活動状況を光センサー4でS/N比(被計測信号とノイズとの比)良く検出するためのものである。また、射精された精液の濃度が濃く、光の透過度が悪い場合、射精された液体を中性液で2〜3倍に希釈して精液受容部2に滴下する。また、希釈なしで計測する場合、光源3と光センサー4の対向位置の間隔を狭めた精液受容部2を使用することでビーム光の透過度を上げることができる。
【0014】
さて、本発明が提供する精子活性度評価器は以上のような個別機能の集成で構成され、これらを基板1内にまとめることで持ち運び及び使用に便利である。以下、実際の使用について本発明の特徴を説明する。
男性性器から射出された精液の一部を採取して基板1の精液受容部2に充填する。精液Lが精液受容部2に充填された状態での基板1の断面図を図3に示す。この状態で電源スイッチ9をオンにして光源3からビーム状の光線を光センサー4に向けて照射すると、光路にあたる精液L内の精子の微弱な状態変化を光センサー4で検出することができる。
【0015】
図4は精液L内で活動する精子Mの状態を模式的に拡大したものである。個々の精子Mは図4に示すように頭部と尾部よりなり、尾部の蠕動運動により動き回る。活性度の高い精子ほどその動きが活発である。精子Mが光路を横切るとき、あるいは光路内で動き回るとき、その頭部が光路を遮る状態となるため、光路内で光の散乱が生ずる。この微弱な散乱光を光センサー4で検出し電気信号に変換する。即ち、精子Mの動きで生じる光の散乱を電気信号として検出するが、この検出信号は精液L内の精子密度と、精子個々の活性度に関連する。このように光センサー4で精子Mの動きに連動した電気信号を経時的に検出し、且つ前段増幅器21及び増幅器23などにより信号増幅され拡大波形が得られる。
【0016】
図8、図13及び図18は光センサー4で検出した信号を前段増幅器21で増幅した後の出力波形を示す。図8は精液L内の精子Mの動きが極めて活発な状態を示し、受精能力が極めて高い精子活性状態を示している。図13は図8の状態に比較し、精液L内の精子Mの動きが若干不活発な状態を示し、受精能力が低下している精子活性状態を示している。但し、この状態は受精能力が欠落してしる状態ではなく、チェック時の体調により精子の活発度が異なることもしばしばある。図18は図8及び図18の精子活性状態に比較し、精液L内の精子Mの動きが全く不活発な状態を示し、受精能力が欠落している精子活性状態を示す。
【0017】
したがって、動きの活発な精子Mが多ければ多いほど、光センサー4が検出する変動波形の数は図8にしめすように多くなる。精子Mは微小なものであり、光センサー4で検出する波形信号は微弱であるが、この信号は信号演算部5の中の前段増幅器21で増幅され、さらにフィルター22で交流信号に変換される。この交流信号の波形を図9、図14及び図19に示す。この信号は増幅器23で増幅される。増幅器23の出力波形は、予め設定された閾値(電圧レベル)を超えた信号は波形整形器24にて整流後、図10、図15及び図20に示されるようなパルス波形に整形され、カウンター回路26に入力される。図20は閾値を超えた信号が全くない状態の図である。
【0018】
診断指令スイッチ10を作動させると診断指令信号が計測時間制御回路25に伝達され、計測時間制御回路25は、図11、図16及び図21に示すような計測時間制御信号で、カウンター回路26を制御する。カウンター回路26は計測時間制御回路25から指示された計測時間内に入る波形整形器24からのパルス波形信号を計数する。図12では設定時間内に8個のパルスを計測することを示し、図17では計測時間内に2個のパルス計測を示し、図22では1個のパルスも計測していないことを示している。カウンター回路26で計数された値は診断判定回路27に伝達される。診断判定回路27は、この入力した値を予め設定された値と比較し、精子Mの活性度を数字あるいは段階区切りにした情報として表示部6に伝達する。
【0019】
表示部6は精子の活性度を図12、図17あるいは図22の計測結果で示す数段階に分けたレベルでの数字表示の他、「活性度 高」、「活性度 中」、「活性度 低」のような表示、「正常」、「要再検査」、「異常」のような文字表示、また、正常状態を緑色、再検査状態を黄色、活性度が非常に低い場合は赤色表示するなど、数字、文字あるいは色表示により被験者の精子の活性度を表示することができる。
【0020】
本発明が提供する精子活性度評価器は以上詳述したとおりであるが、発明の構成は上記あるいは図示例に示される構成に限定されるものではなく、種々の変形例をも包含する。例えば光学系については、超小型レーザ器の使用や、LEDなどの利用が考えられる。そして光センサーも光源の種類により、あるいは精子による散乱光をとらえる有効な受光用センサーを選択するべきである。精液受容部にねじ式の開閉蓋を設け、外部からの遮光をより完全にすることで測定時の効率アップや精液の流出防止を図るなどの工夫も可能である。本文でも説明したように精液内の精子分布濃度を調整するための希釈液を準備することも本発明の応用例として考察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による精子活性度評価器の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の斜視図のうちA−A‘部の縦断面図である。
【図3】精液受容部に精液を受容した状態図である。
【図4】精液受容部内での精子の活動状況を示す精子の一部拡大模式図である。
【図5】本発明における精子活性度評価器の電気回路を示す系統図である。
【図6】精液採取ビーカに採取した精液の一部をスポイドで採取中の状態図である。
【図7】スポイドで採取した精液を精液受容部に滴下している状態図である。
【図8】受精能力が極めて活発な精子活性状態での前段増幅器21の出力信号波形で示す。
【図9】受精能力が極めて活発な精子活性状態でのフィルター22の出力信号波形で示す。
【図10】受精能力が極めて活発な精子活性状態での波形整形器24の出力信号波形で示す。
【図12】受精能力が極めて活発な精子活性状態時に計測時間制御回路25の出力時間内に計測されるパルスの状態を示す。
【図13】受精能力が若干不活発な精子活性状態での前段増幅器21の出力信号波形を示す。
【図14】受精能力が若干不活発な精子活性状態でのフィルター22の出力信号波形で示す。
【図15】受精能力が若干不活発な精子活性状態での波形整形器24の出力信号波形で示す。
【図17】受精能力が若干不活発な精子活性状態を計測時間制御回路25の出力時間内に計測されるパルスの状態を示す。
【図18】受精能力の全く無い異常な精子活性状態での前段増幅器21の出力信号波形を示す。
【図19】受精能力の全く無い異常な精子活性状態でのフィルター22の出力信号波形で示す。
【図20】受精能力の全く無い異常な精子活性状態での波形整形器24の出力信号波形で示す。
【図22】受精能力の全く無い異常な精子活性状態を計測時間制御回路25の出力時間内に計測されるパルスの状態を示す。パルス出力が全くない。
【符号の説明】
1 基板
2 精液受容部
3 光源
4 光センサー
5 信号演算部
6 表示部
7 バッテリー収納庫
8 バッテリー
9 電源スイッチ
10 診断指令スイッチ
11 蓋
13 精子活動状態計測用容器
31 精液採取ビーカ
32 スポイド
L 精液
M 精子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取した精液を受容する容器部と、その容器部内の精液に光を透過させる光学系と、透過した光を受光し精子の活性度情報を含む信号を出力する検出器と、この検出器からの信号を演算処理して精子の活性度をあらわす値を出力する計測手段と、計測手段からの出力を表示する表示器を備えた精子活性度評価器。
【請求項1】
採取した精液を受容する容器部と、その容器部内の精液に光を透過させる光学系と、透過した光を受光し精子の活性度情報を含む信号を出力する検出器と、この検出器からの信号を演算処理して精子の活性度をあらわす値を出力する計測手段と、計測手段からの出力を表示する表示器を備えた精子活性度評価器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−17417(P2007−17417A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224650(P2005−224650)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(591123540)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(591123540)
【Fターム(参考)】
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