説明

精米装置

【課題】 機械負担を減らしつつ、効率的に搗精室内を冷却することができ、もって白米の変質による品質低下を完全に防止することが可能な精米装置の提供を図る。
【解決手段】 本発明にかかる精米装置は、地中熱交換装置1と、精米室30と、から構成されている。地中熱交換装置1は、孔明きコンクリートブロック10の複数を、その孔がつづら折りに連結されて一方端部から他方端部に通じるつづら折り通風路12が形成されるように積み重ねて地下に埋設して成る。精米室30は、強制冷却ターボファン31と、冷却装置32と、精米機40と、糠吸引ファン50と、糠室51と、が備えられ、夫々が適宜連結されている。そして、強制冷却ターボファン31並びに糠吸引ファン50の共同作用によって、地中熱交換装置1により一次冷却及び含湿された冷却空気並びに前記冷却装置32により二次冷却された冷却空気を搗精ロール44へ送気して、搗精室42内を冷却する構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米装置に関し、詳しくは、玄米を低温状態で精米するための冷却機構を備えた精米装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコイン精米所における精米装置においては、玄米を搗精する時、搗精による摩擦熱により米粒は50℃を越えることとなる。かかる搗精時に米粒が50℃を越えると、含まれている蛋白質が変質し白米が白濁するとともに、加熱された精米を常温に戻す際にその過程において水分が蒸発することで、精米の含有水分が乾燥されて過乾燥状態となる。そのような白米のご飯は、元々美味しい品質であっても風味が大幅に低下する。そのため、美味いご飯を得るためには、少なくとも40℃以下で精米することが必要である。
【0003】
しかし、これまでのコイン精米所における精米装置は、連続稼動しているうちに搗精による摩擦熱によって搗精ロールの温度が上昇し、搗精室内が夏場では約80〜90℃にも上昇することがある。そこで、搗精ロールの回転シャフトを中空にしてそのシャフト内に外気を送ることにより、搗精ロールを冷却しようとする装置が提案されている。しかし、この冷却装置でも、取込む外気が夏場では30℃〜40℃になっていて、搗精ロールをそれ以下に冷却することはできず、摩擦熱で上昇した温度の大幅低下をもたらすに至らず、白濁米の発生等、温度による変質を完全に防止することはできなかった。
【0004】
上記問題点に鑑み、本願出願人は、過去に、精米装置における搗精室内を冷却し、気温の高い夏場でも搗精室内の温度を38℃以下に抑え、搗精中の白米の変質による品質低下を防止できる「搗精室冷却装置」なる発明を提案し、特許を取得している(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−254529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる「搗精室冷却装置」なる発明は、当初の目的達成のために多大な貢献をしたものの、新たな問題を提起することとなった。すなわち、従来の精米装置においては、冷却空気を搗精室内に送り込むための送気について、糠吸引ファンによる糠の吸引力を活用して、糠の吸引と同時に冷却空気を吸引することで、搗精室内に冷却空気を吸引する方式が採られていた。この方式によると、糠吸引ファンの負荷が大きくなり、機械故障の原因となっており、また、冷却空気の吸引量にも限界が生じて、結果として冷却効率が悪いという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、機械負担を減らしつつ、効率的に搗精室内を冷却することができ、もって白米の変質による品質低下を完全に防止することが可能な精米装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、地中熱交換装置と、精米室と、から成る精米装置であって、前記地中熱交換装置は、孔明きコンクリートブロックの複数を、その孔がつづら折りに連結されて一方端部から他方端部に通じるつづら折り通風路が形成されるように積み重ねて地下に埋設し、前記つづら折り通風路の一方端部は通風路を介して外気吸入口に連結されるとともに、他方端部は通風路を介して前記精米室内の強制冷却ターボファンに連結されており、前記精米室は、強制冷却ターボファンと、冷却装置と、精米機と、糠吸引ファンと、糠室と、を備え、強制冷却ターボファンと冷却装置とが通風路を介して連結され、また、冷却装置と精米機における搗精室内に装着されているロール面に通気孔を有する中空シャフト型搗精ロールの中空シャフト基端部とが通風路を介して連結され、さらに、精米機における搗精室と糠吸引ファンとが送糠路を介して連結され、そして、糠吸引ファンと糠室とが送糠路を介して連結されており、前記強制冷却ターボファン並びに糠吸引ファンの共同作用によって、前記地中熱交換装置により一次冷却及び含湿された空気並びに前記冷却装置により二次冷却された空気を搗精ロールへ送気することで、搗精室内を冷却して低温精米を行う構成となっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる精米装置によれば、強制冷却ターボファン並びに糠吸引ファンの共同作用によって冷却空気を搗精室内に送気するため、機械負担の減少に資するとともに、大容量の冷却空気を送気することができるため、糠切れが格段に向上し、かつ、より効率的に搗精室内を冷却することが可能となり、結果として精米される白米について、変質による品質低下を完全に防止することができるという、今までにない優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる精米装置の実施形態を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、冷却空気を送気して搗精室42内を冷却するに際し、送気用の強制冷却ターボファン31と吸引用の糠吸引ファン50との共同作用で行うことにより、機械負担の軽減並びに冷却効率化を実現したことを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる精米装置の実施形態を、図面に基づき説明する。
【0012】
なお、本発明にかかる精米装置は、以下に述べる実施例や図示した構造に限定されるものではなく、本発明の趣旨・構成に逸脱しない範囲で適宜変更することができるものである。
【0013】
図1は、本発明にかかる精米装置を示す模式的説明図である。
すなわち、本発明にかかる精米装置は、地中熱交換装置1と、精米室30と、から構成されている。
【0014】
地中熱交換装置1は、外気吸入口20から吸入した外気を一次的に冷却及び含湿するためのものであって、孔明きコンクリートブロック10を、複数積み重ねて地下に埋設して成る。孔明きコンクリートブロック10とは、例えば、鉄筋を差し込んだり軽量化する目的で形成した孔を有する、塀などに使用されている市販の孔明きコンクリートブロック10である。地下に縦穴を掘り、その穴の中に、該孔明きコンクリートブロック10を、孔が横向きに連結され連続するように積み重ねる。そして、その連続した孔の両端を、上下の孔同士を連通可能とするように陥没溝形成コンクリート品11で蓋をし、一方端部から他方端部に通じるつづら折り通風路12が形成されるようにする。
【0015】
前記つづら折り通風路12の一方端部は、通風路22を介して外気吸入口20に連結されている。また、前記つづら折り通風路12の他方端部は通風路22を介して前記精米室30内の強制冷却ターボファン31に連結されている。そして、積み重ねられた孔明きコンクリートブロック10が納められた縦穴は、埋められる。
【0016】
精米室30は、強制冷却ターボファン31と、冷却装置32と、精米機40と、糠吸引ファン50と、糠室51と、を備えて成る。
強制冷却ターボファン31は、前記地中熱交換装置1により一次冷却及び含湿された冷却空気を冷却装置32を介して強制的に搗精室42内に送気するためのものであって、すなわち、強制冷却ターボファン31と冷却装置32とは通風路22を介して連結されている。
なお、該強制冷却ターボファン31の送気量について、特に限定するものではないが、例えば毎分1.5t以上の送気量を有することが好ましい。
【0017】
冷却装置32は、前記地中熱交換装置1により一次冷却及び含湿された冷却空気をさらに強制的に二次冷却するためのものであって、その冷却方式については特に限定はなく、空冷式や水冷式のものが考え得る。なお、空冷式であれば、一般的な家庭用若しくは業務用エアコンをそのまま使用して、送気の冷却に利用することも考えられる。また、水冷式であれば、使用する冷水として、夏場でも14〜17℃程度に安定して得られるは地下水を使用したり、あるいは、約20℃程度の水道水を使用することが考えられる。このとき、かかる冷水をそのまま流し込んで、送気の冷却に利用することも可能であり、あるいは、自動車などに一般的に使用されている水冷式のラジエターを殆どそのまま使用する態様も考え得る。
【0018】
精米機40は、玄米を投入する玄米ホッパー41と、搗精室42、そして白米排出口48とを備えて成る。また搗精室42は、米粒よりも小さいメッシュでできた金網筒43内に、モーター49により回転する搗精ロール44が備えられて成る。そして搗精ロール44は、中空シャフト型であって、そのロール面45に通気孔46を有する構造となっている。
【0019】
前記搗精ロール44における中空シャフト基端部47は、前記冷却装置32と通風路22を介して連結されており、該冷却装置32によって二次冷却された冷却空気は、前記搗精ロール44のロール面45に備えられた通気孔46を介して、搗精室42内に送気されることとなる。
【0020】
糠吸引ファン50は、精米の工程において発生する米糠を吸引するためのものであって、送糠路52を介して搗精室42と連結されている。なお、該糠吸引ファン50は、その吸引作用によって搗精室42内を減圧することから、前記冷却空気を搗精室42内に引き込むようにも作用することとなる。
なお、該糠吸引ファン50の吸引量については、特に限定するものではないが、例えば毎分0.5t程度とする。
そして、糠吸引ファン50と糠室51とが送糠路52を介して連結されており、該糠吸引ファン50によって吸引された米糠は、送糠路52を介して糠室51へと送られる。
【0021】
なお、精米機40による玄米の精米工程については、玄米ホッパー41から玄米が搗精室42の金網筒43内に導かれ、該金網筒43内で搗精ロール44がモーター49により回転することで玄米の搗精が行われる。玄米の搗精により、できた白米は白米排出口48から排出されるとともに、発生した米糠は金網筒43のメッシュを潜り抜けて糠吸引ファン50により吸引され、糠室51へと送られる。
【0022】
ところで、以上の通り構成される本発明にかかる精米装置において、図面に示すように、精米室30内に溜まった熱気を排出するための排気扇60を備える態様が望ましい。
【0023】
以上の通り構成される本発明にかかる精米装置について、以下、その作用効果について説明する。
例えば夏場の気温の高い外気は、強制冷却ターボファン31の作用により、外気吸入口20から吸入された後、地中熱交換装置1における孔明きコンクリートブロック10のつづら折り通風路12内を通過することで、約20℃前後にまで冷却されるとともに、湿度が約70〜80%前後へと含湿される(一次冷却)。
一次冷却された冷却空気は、通風路22を介して強制冷却ターボファン31そして冷却装置32へと導かれる。該冷却装置32において、一次冷却された冷却空気が更に強制的に冷却され、具体的には約5〜10℃前後へと冷却されることとなる(二次冷却)。
【0024】
二次冷却された冷却空気は、強制冷却ターボファン31による送気作用及び糠吸引ファン50による吸引作用の共同作用により、通風路22を通って搗精ロール44の中空シャフトに導かれ、搗精ロール44のロール面45に設けられた通気孔46から搗精室42内に冷却空気が侵入する。これにより、搗精によって摩擦熱を生じる搗精ロール44のロール面45が冷却されるとともに、搗精室42内全体も冷却される。このときロール面45の温度は摩擦熱をもって多少上昇するが、白米は夏場であっても最大で38℃を越えることはない。このために米の温度による変質が全く起こらない。
【0025】
ところで、搗精室42に投入される玄米の含水率はおおよそ14.5%前後であるが、従来の装置による精米工程によると、夏場では搗精時に60℃にも上昇してしまうため、その高温の白米を常温(約30℃)に下げるために陰干し(自然冷却)が一般的に行われることとなる。この陰干しを行うことで、白米が乾燥されて含水率が11%以下にまで低下する。これは所謂「過乾燥」と呼ばれる状態であり、過乾燥米となると、そのご飯の食味が大きく低下する。
【0026】
これに対し、本発明にかかる精米装置によれば、搗精時の温度が最大38℃を越えることはなくなるため、精米後の白米を陰干しする必要が全くなく、玄米の14.5%ある含水率がそのまま維持される。このため、白米が過乾燥状態になることなく、本来の食味が保持される利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明による精米装置は、前記強制冷却ターボファン31並びに糠吸引ファン50の共同作用によって、前記地中熱交換装置1により一次冷却及び含湿された冷却空気並びに前記冷却装置32により二次冷却された冷却空気を搗精ロール44へ送気する構成を採ることで、送気のための機械的負担の軽減に資するとともに、大容量の冷却空気を送気することが可能となるため、冷却効率の向上にも資することとなり、結果として温度変質のないより美味しい白米を提供することが可能であって、本発明に関する精米装置の産業上の利用可能性は極めて高いものと思料する。
【符号の説明】
【0028】
1 地中熱交換装置
10 孔明きコンクリートブロック
11 陥没溝形成コンクリート品
12 つづら折り通風路
20 外気吸入口
22 通風路
30 精米室
31 強制冷却ターボファン
32 冷却装置
40 精米機
41 玄米ホッパー
42 搗精室
43 金網筒
44 搗精ロール
45 ロール面
46 通気孔
47 中空シャフト基端部
48 白米排出口
49 モーター
50 糠吸引ファン
51 糠室
52 送糠路
60 排気扇

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中熱交換装置と、精米室と、から成る精米装置であって、
前記地中熱交換装置は、孔明きコンクリートブロックの複数を、その孔がつづら折りに連結されて一方端部から他方端部に通じるつづら折り通風路が形成されるように積み重ねて地下に埋設し、前記つづら折り通風路の一方端部は通風路を介して外気吸入口に連結されるとともに、他方端部は通風路を介して前記精米室内の強制冷却ターボファンに連結されており、
前記精米室は、強制冷却ターボファンと、冷却装置と、精米機と、糠吸引ファンと、糠室と、を備え、強制冷却ターボファンと冷却装置とが通風路を介して連結され、また、冷却装置と精米機における搗精室内に装着されているロール面に通気孔を有する中空シャフト型搗精ロールの中空シャフト基端部とが通風路を介して連結され、さらに、精米機における搗精室と糠吸引ファンとが送糠路を介して連結され、そして、糠吸引ファンと糠室とが送糠路を介して連結されており、
前記強制冷却ターボファン並びに糠吸引ファンの共同作用によって、前記地中熱交換装置により一次冷却及び含湿された冷却空気並びに前記冷却装置により二次冷却された冷却空気を搗精ロールへ送気することで、搗精室内を冷却して低温精米を行うことを特徴とする精米装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−255328(P2011−255328A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132768(P2010−132768)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(599034653)
【Fターム(参考)】