精細な装飾紋様を有する樹脂シート
【課題】複数の線画からなる精細な装飾紋様を有する樹脂シートを提供する。
【解決手段】精細な装飾紋様を有する樹脂シートは、透明樹脂シートの上に三次元硬化樹脂層を積層したものであり、この三次元硬化樹脂層に装飾紋様が形成されたことを特徴とする。この樹脂シートは、三次元硬化樹脂層面に、ミラーインクによるシルク印刷にて文字、数字を透明印刷するか、又は金属蒸着後、レーザ加工により文字を除去加工する。装飾紋様を有する樹脂シートは、装飾紋様を施した金属板、三次元硬化塗料及び透明樹脂シートを重ねて、透明樹脂シートの上方から紫外線や放射線等の励起線を照射し、又は、加熱することにより三次元硬化塗料を硬化し、その後、金属板から剥離することにより製造することができる。
【解決手段】精細な装飾紋様を有する樹脂シートは、透明樹脂シートの上に三次元硬化樹脂層を積層したものであり、この三次元硬化樹脂層に装飾紋様が形成されたことを特徴とする。この樹脂シートは、三次元硬化樹脂層面に、ミラーインクによるシルク印刷にて文字、数字を透明印刷するか、又は金属蒸着後、レーザ加工により文字を除去加工する。装飾紋様を有する樹脂シートは、装飾紋様を施した金属板、三次元硬化塗料及び透明樹脂シートを重ねて、透明樹脂シートの上方から紫外線や放射線等の励起線を照射し、又は、加熱することにより三次元硬化塗料を硬化し、その後、金属板から剥離することにより製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精細な装飾紋様を有する樹脂シートに関する。精細な紋様を有する樹脂シートは、その外観が美観を起こさせるものであり、デザイン性を拡張し、商品価値やその利用価値を高めるものである。精細な装飾紋様を有する樹脂シートは、例えば、自動車計器板、電気・電子機器等の表示板、電気・電子機器等の筐体、時計の表示板、広告看板等に好適に使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、計器板、表示板、機器の筐体、広告看板等に使用される樹脂シートは、精細な装飾紋様を形成して、その美観を高めることが考えられている。ここで樹脂シートなる語は、いわゆる板状のものからフィルム状のものを含めた広い意味に使用している。通常シートとフィルムとはその厚さで区別される。一般的には、0.2mm以上をシート、0.2mm以下をフィルムと呼ばれている(高分子学会編 プラスチック加工の基礎 1982年)。また、精細な装飾紋様というのは、例えば、木目紋様、文字模様、スピン紋様やヘアライン紋様を含む線画紋様等の細かな装飾用の紋様、模様のことであり、特に、紋様を構成する線や要素の間隔が5mmよりも狭い木目細かい紋様を意味する。このような精細な装飾紋様は、金属等からなるシート素材の場合には、機械加工により、容易かつ工業規模で装飾紋様を形成することができる。しかしながら、樹脂シートに、精細な装飾紋様を機械的加工により形成することは基本的に困難である。
【0003】
装飾紋様を施すには、通常、機械的加工が適用される。即ち、ドリルの先端に円形状の砥石を固定して、ドリルを高速に回転させ、ドリルに装着された砥石を高速回転させながら、砥石を板、シートに一定の圧力で押し付けることにより、板、シートの表面上に、精細な装飾紋様を形成する方法が取られる。事実、金属シートに機械的加工を適用し装飾紋様を形成することは、通常行われているものである。しかしながら、樹脂シートにこの方法を適用した場合、砥石により削り取られたヒゲ状の削りかすが残存するという問題がある。このヒゲ状削りかすは、除去するのに実際上多大な労力を必要とし、簡単な操作では除去できない。また、機械的加工では、樹脂シートの透明性が失われるという問題もある。透明性を失うと、印刷した場合、色の再現性が劣るという問題が起こる。
【0004】
模様を彫った金型を使用し、射出成形又は押出成形等により、模様が形成された樹脂板を得る方法が知られている(例えば、特開2003−1705号公報)。しかし、この方法では、木目細かい紋様の場合は、紋様を正確に樹脂に付与できないという問題がある。成形時の樹脂の粘度が比較的高いため、木目細かい紋様を付与するには、射出成形又は押出成形等の方法は適しないとされている。また、金型の製作費が一般的に高くつくという問題もある。従って、射出成形又は押出成形等は、限られた簡単な模様を形成する場合に適用されている。更に、射出成形又は押出成形等により模様を形成した樹脂表面は、ハードコートされてないので、形成された紋様に傷が付きやすいという問題がある。
【0005】
また、ガラス基板上に凹凸を予め形成し、この上に紫外線硬化塗料及びポリカーボネートなどの樹脂板を積層し、ガラス面又は樹脂面から紫外線を照射し、ガラス基板上の凹凸を紫外線硬化塗料に転写する方法がある(特開平8−99327号公報)。しかしながら、簡単な凹凸については転写可能であるが、ガラスに精細な装飾紋様を形成することが困難であるため、精細な装飾紋様を形成したい場合にはガラスを基板に用いる方法は適用できない。更に、ガラス基板を使用する場合には、紫外線硬化塗料を硬化させた後、樹脂板を剥離する際などに、ガラス基板が割れるという問題もある。
【0006】
更に、(a)樹脂基材の一方の面に紫外線硬化型樹脂層を塗布する工程、(b)フィルム基材上に転写シートを作製する工程と、(c)上記工程(a)で作製された紫外線硬化型樹脂層と上記工程(b)で作製された転写シートとを加えて重ね合わせ、前記転写シート側から、紫外線を照射して、前記樹脂層を硬化せしめると同時に該樹脂層を介して樹脂板と転写シートを積層する工程と、(d)前記転写シートを剥離する工程から製造されるディスプレイ等の光学部材の前面に使用される、反射防止、防汚、帯電防止効果を有する樹脂板の製造方法が特開2000−158599号公報に記載されている。しかしながら、この方法は、光の反射を促進する凹凸を、フィルム面から転写するもので、精細な装飾紋様を転写するものではない。
【0007】
また、微細凹凸パターンが成形された成形型上に紫外線硬化樹脂溶液を塗布し、塗膜層をスムージングロールにより平坦化処理した後、透光性基板を積層し、紫外線露光して紫外線硬化樹脂を硬化させる光学部品の製造方法が知られている(特開2004−255583号公報)。しかしながら、この方法では、フレネルレンズ等の光学部品であるため、ハードコートされておらず、また、精細な紋様の装飾性を際立たせることを考慮していない。
先に述べた様に、樹脂シートに精細な装飾紋様を形成することは極めて困難であり、公知の方法では、精細な装飾紋様を樹脂シートに形成することは極めて困難である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】装飾紋様を有する樹脂シートの構成の例を示す図である
【図2】装飾紋様を有する樹脂シートを製造するための装置の一例を示す図である
【図3】図2における断面を示す図である
【図4】装飾紋様の例を示す図である(スピン紋様)
【図5】装飾紋様の他の例を示す図である(ヘアライン紋様)
【図6】装飾紋様の他の例を示す図である(文字紋様)
【図7】装飾紋様の他の例を示す図である(木目模様)
【図8】本発明を自動車計器板に使用した例を示す図である
【図9】本発明を自動車計器板に使用した他の例を示す図である
【図10】本発明を自動車計器板に使用した他の例を示す図である
【図11】多角形における各辺を直線で描いた線画紋様の例を示す図である
【図12】多角形における各辺を外向き円弧で描いた線画紋様の例を示す図である
【図13】多角形における各辺を内向き円弧で描いた線画紋様の例を示す図である
【図14】本発明を携帯電話機の表示板周辺に使用した例を示す図である
【図15】本発明をエアコンの筐体に使用した例を示す図である
【図16】本発明を電話機の筐体に使用した例を示す図である
【図17】本発明を携帯電話機のボタン表示板に使用した例を示す図である
【図18】本発明をロゴマークに使用した例を示す図である
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、アルミニウム板、銅板、ステンレススチール板、鉄板等の金属板に樹脂シートに転写したい精細な装飾紋様を形成する。即ち、例えば、アルミニウム板の表面にマシン油を全面に塗布して、ドリルの先端に円形状の砥石を固定、ドリルに装着した砥石を高速回転させながら、アルミニウム板の表面上に一定の圧力で砥石を押し付ける。砥石が押し付けられた部分のみ、例えば、微細な曲線状のスピン紋様が形成される。多数の紋様を形成するには、アルミニウム板をスライドさせ、アルミニウム板の全面に多数のスピン紋様を形成させる。銅板、ステンレススチール板、鉄板等の他の金属板にも装飾紋様を形成しうることは言うまでもない。このように精細な装飾紋様を付した金属板を使用し、樹脂シートに転写して得られた精細な装飾紋様を形成した樹脂シートの構成例を図1に示した。図1は側面図と平面図を示している。側面図から明らかなように、本発明の樹脂シートは、透明樹脂シート2の上に形成された三次元硬化樹脂層3とから構成され、その三次元硬化樹脂層の表面に精細な装飾紋様7が付与されている。図1においては、三次元硬化樹脂層の表面にスピン紋様が描かれている。
【0022】
精細な紋様の例として、図4にスピン紋様を、図5にヘアライン紋様を、図6に文字紋様を及び図7に木目紋様を示した。線画紋様は、複数の線で描かれた紋様である。従来代表的なものとして、スピン紋様(図4参照)やヘアライン紋様(図5参照)がある。本発明においては、スピン紋様やヘアライン紋様以外の線画紋様も形成することができる。なかでも、複数の線で描かれた相似な図形からなる線画紋様が好適に形成することができる。この複数の相似な図形からなる線画紋様は、その相似な図形の基本形が、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、多角形、星形等の閉じた線画形状であるものが好ましい。そして、これら三角形、四角形、五角形、多角形、星形等の閉じた線画形状において、各辺が直線、外向き円弧又は内向き円弧で描かれた線画とすることができる。
【0023】
例えば、12角形で例示的に説明する。図11に、12角形における各辺を直線で描いた線画紋様の例を示した。この場合の12角形は、通常の12角形である。図12には、12角形における各辺を外向き円弧で描いた線画紋様の例を示した。各辺は12角形の外側に向かって膨らんだ曲線、即ち、外向き円弧で描いたものとなっている。図13には、12角形における各辺を内向き円弧で描いた線画紋様の例を示した。各辺は12角形の内側に向かって膨らんだ曲線、即ち、内向き円弧で描いたものとなっている。図11〜13には12角形の例を示したが、他の形状、三角形、四角形、五角形、多角形、星形等においても同様である。
【0024】
本発明の線画紋様においては、微細な線画紋様を描くために、線画紋様における線溝深さを20nm〜5μmとするのが好ましい。特に、線溝深さを20nm〜5μmで描く線画紋様は、押出成形や射出成形等では実現困難なものであり、本発明により初めて実現できるものである。
【0025】
本発明の精細な紋様を付した樹脂シートは、様々な用途に利用することができる。計器板、表示板等に好適に使用することができる。特に、自動二輪車、自動車、電気・電子機器等に搭載された計器板、表示板に好適に使用することができる。本発明の精細な装飾紋様を付した樹脂シートを自動車計器板に使用した例を図8〜図10に示した。図8ではスピン紋様、図9はヘアライン紋様、図10は木目紋様である。また、電気・電子機器等の筐体、時計の表示板、広告看板等にも使用することができる。電気・電子機器の例として携帯電話機の筐体に使用した例を図14、図17に示した。更に、図11〜13に示した12角形の線画紋様は、時計の表示板に好適に使用できるものである。ロゴマークの表示にも、例えば、図18に示したように、使用することができる。
【0026】
先に述べたように、本発明の精細な紋様を付した樹脂シートは、各種計器板、表示板等に好適に使用することができる。これら計器板、表示板として使用するために、樹脂シートに文字、数字等を印刷し、更には、着色する。そのために、本発明では、三次元硬化樹脂層の面にミラーインクによるシルク印刷にて文字、数字等を透明印刷するか又は金属蒸着を施してレーザ加工にて文字、数字等を透明加工する。透明印刷は、字、数字は透明で、これ以外の部分を、銀色又は金色のミラーインクで着色することである。この透明印刷により、表示板のデザイン性の拡張、商品価値やその利用価値の高揚に効果がある。
【0027】
前記のシルク印刷では、ミラーインクを用いる。ミラーインク以外のインクで透明印刷又は着色した場合は、三次元硬化樹脂層に形成した精細な装飾紋様が印刷インクにより見えなくなるので好ましくない。また、三次元硬化樹脂層に透明印刷を施した場合は、透明樹脂シート面を表面(おもてめん)として使用することになる。即ち、例えば、計器板等の文字等を透明樹脂シートの面から見ることになる。これに対して、一般的な方法として精細な装飾紋様を有する樹脂シートの透明樹脂シート面に透明印刷、着色を施した場合は、例えば、計器板等の文字等を三次元硬化樹脂層面から見ることになる。この場合は、透明樹脂シート面が表面(おもてめん)となり、表面が傷つきやすいので、透明樹脂シートの面にハードコートを施し表面を保護するのが好ましい。ハードコートは、先に述べたように、三次元硬化塗料を塗布し、塗料を硬化させることにより施すことができる。
【0028】
シルク印刷の代わりに、透明シートの裏面に金属蒸着を施すこともできる。金属蒸着により、装飾模様が形成されたチタン色調やステンレス色調の外観が得られる。この場合は、シルク印刷とは異なり、文字、数字等を透明にすることは困難である。文字、数字等を透明にするために、金属蒸着後にレーザ加工等により、文字、数字等を透明加工する。即ち、文字や数字等が透明になるように、文字や数字等の部分にレーザ光を当てて、蒸着された金属膜を除去するのである。その結果、文字や数字が透明加工される。
【0029】
計器板や表示板に於いては、文字、数字を透明印刷し、この樹脂シート裏面側から光を当てることにより、樹脂シート上に文字、数字を浮かび上がらせることができる。例えば、図8〜図10において、数字は透明のままにして他の部分を銀色に印刷することにより、数字0、20・・・・・180等が、光によって、計器板上に浮かび上がらせることができる。図8〜図10に示した計器板は、自動車等に好適に使用できるスピードメータである。スピードメータの樹脂シートに、スピン紋様(図8)、ヘアライン紋様(図9)や木目紋様(図10)を描いたものである。
【0030】
精細な装飾紋様は、さまざまなデザイン紋様がある。例えば、木目紋様、文字模様等の装飾紋様の他に例えば、スピン紋様、ヘアライン紋様の様な線画紋様がある。このようにして装飾紋様を形成した例えば、アルミニウム板等の金属板を用いて、樹脂シートにスピン紋様等の精細な装飾紋様を転写、形成する。図2又は図3に基づいて、精細な装飾紋様を有する樹脂シートの製造方法を以下説明する。図2は、例としてスピン紋様を紫外線硬化樹脂層に形成させる場合の装置の例を示している。図3に、この装置の断面を示した。表面に精細な装飾紋様を形成した例えば、アルミニウム板等の金属板4を、機械加工台6に固定し、そのアルミニウム板等の金属板4の表面に、三次元硬化塗料3を斑なく塗布する。この三次元硬化塗料3の上に透明な樹脂シート2を配置する。この三次元硬化塗料は、金属板に接着せず、樹脂シートに接着する硬化塗料を選定する。装飾紋様を付した金属板4、硬化塗料3及び透明樹脂シート2を重ね合わせて、平均に一定の圧力をかける。そして、一定の圧力をかけた状態で、透明樹脂シート2の上面より、励起線例えば、紫外線ランプ1で紫外線を照射する。紫外線を照射することにより、硬化塗料は、硬化する。硬化した樹脂に、アルミニウム板に機械加工で形成した装飾紋様が写し取られる。硬化塗料が硬化したら、アルミニウム板より、樹脂シートを剥離する。前述したように、硬化塗料は、金属板には接着せず、樹脂シートに接着して、樹脂シート上に精細な装飾紋様が形成されることになる。透明樹脂シートとして、アクリルシート、ポリカーボネートシート、ポリエステルシート、ポリスチレンシート等を使用することができる。金属板としては、アルミニウム板、銅板、ステンレススチール板、鉄板等の金属板が使用できることは、既に述べたとおりである。
【0031】
三次元硬化塗料は、紫外線や放射線の照射で硬化するもの、熱で硬化するものを適宜使用することができる。なかでも、紫外線硬化塗料が好適に使用することができる。三次元硬化塗料としては、オリゴマー、ポリマー、モノマーや多官能性モノマーを混合した無溶媒型のものがよい。エポキシ樹脂、ポリウレタン等の重付加、付加重合等の反応により生成する重合体が使用できる。
【0032】
本発明に使用する紫外線硬化塗料としては、無溶媒型のもので、紫外線により三次元硬化する塗料を使用することができる。特に、適度のポットライフを有し、かつ、硬化時間の短い紫外線硬化型の塗料で無溶媒型のものが好ましい。具体的には、分子中に2個以上のアクリロイル基やメタクリロイル基を有するモノマーやオリゴマーで、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等のポリオールアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、エステルアクリレートオリゴマー等の反応性オリゴマー、シクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート等のモノマー及びベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2.2−ジメトキシ−2フェニルアセトフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、p−イソプロピルフェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等の光重合開始剤からなるものが挙げられる。
【0033】
市販の表面硬化用の紫外線硬化塗料の内、無溶媒型のものが好適に使用できる。このような塗料は、装飾紋様を形成したアルミニウム板、銅板、ステンレススチール板、鉄板等の金属板にフローコート、ロールコート、捌け塗り等の方法で塗布し、この上にポリカーボネートシート、アクリルシート、ポリエステルシート、ポリスチレンシート等の透明な樹脂シートを置き、圧着する。このようにして、紫外線硬化塗料を金属板と透明樹脂シートの間に、均一厚みになるように押し広げた後、紫外線を照射して、硬化する。紫外線照射は、透明樹脂シートの側より行う。硬化が完了したら、金属板より樹脂シートを剥離する。このようにして、精細な装飾紋様を有する樹脂シートを得ることができる。
【実施例】
【0034】
[車両用計器板]
スピン紋様を付した車両用計器板の実施例について説明する(図8に相当)。アルミニウム板としてアルミニウム板A1050H/1.0t厚みを使用し、このアルミニウム板に、車両用計器板の所定寸法にスピン模様を機械的に施した。この際、スピン紋様の同心円の溝の線幅は0.2mm以下、深さ5μm以下になるようにした。特に溝の深さは、三次元硬化樹脂に対する転写に重要な影響を与える。溝の深さが5μmを超えるようになった場合は、転写加工時に気泡発生の問題が生じ好ましくない。前述した図2、図3の装置を用いて、スピン紋様を付した樹脂シートを作成する。まず、スピン模様を施したアルミニウム板上に、紫外線硬化塗料を斑なく塗布した。ここでは、紫外線硬化塗料は(株)セイコーアドバンス製のウレタンアクリレート系を主剤としたUVA9117を使用した。斑なく塗布した紫外線硬化塗料の上に、厚み0.4mmの透明ポリカーボネート樹脂シートを配置した。スピン紋様を付したアルミニウム板、紫外線硬化塗料及び透明ポリカーボネート樹脂シートを重ねて、5Kgの荷重で平均的に圧力をかけ、透明ポリカーボネート樹脂シート側より、コンベアー式空冷UV乾燥機2灯型を使用し、紫外線を照射した。照射条件は、コンベアー速度4m/min、出力120W、積算光量600mJ/cm2であった。硬化後、アルミニウム板を、樹脂シートから剥離した。このようにして、アルミニウム板の装飾紋様を紫外線硬化樹脂層に転写した、精細な装飾紋様(スピン紋様)を有する樹脂シートを得た。転写された紋様は、紫外線硬化樹脂層に形成され、その紫外線硬化樹脂層はポリカーボネート樹脂シートに接着しているので、結果として、ポリカーボネート樹脂シートと三次元硬化樹脂層からなる樹脂シートにスピン模様が形成される。
【0035】
[携帯電話機]
携帯電話機の表示板周辺に使用した例を図14に示した。車両用計器板用と同様にして得たヘアライン紋様を付した樹脂シートを、携帯電話機の表示面の周囲に使用した。この際、シルク印刷により銀色又は黒色に着色したヘアライン紋様を付した樹脂シートとした。これらの装飾紋様を有する樹脂シートは、比較的厚みのある所謂樹脂板の状態で、機器の筐体自身を形成することもできるし、前もって別の樹脂シート(板)で筐体を形成しておいて、その上に装飾紋様を有する樹脂シートを貼りつけてもよい。
【0036】
[エアコン・電話機]
同様にして、電気・電子機器等の筐体用の装飾紋様を形成した樹脂シートを製造することができる。図15にはエアコンに使用した例、図16には電話機に使用した例を示す。これらは、同様に、比較的厚みのある装飾紋様を有する樹脂シート(板)で、機器の筐体自身を形成することもできるし、前もって別の樹脂シート(板)で筐体を形成しておいて、その上に装飾紋様を有する樹脂シートを貼りつけてもよい。
【0037】
[携帯電話機のボタン表示板]
同様にして、スピン紋様を形成した樹脂シートを使用した携帯電話のボタン表示板を製造することができる。図17は、携帯電話のボタン表示板にスピン紋様を施した例を示した。スピン紋様が転写された樹脂シートのポリカーボネート板の裏側に、意匠文字等が透明になるように、シルク印刷を施した。ここでは、意匠文字以外は鏡面になるように、鏡面インキ(ミラーインク)を使用し、シルク印刷を施した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、樹脂シート表面に精細な装飾紋様を形成することができるものである。精細な紋様を形成した樹脂シートは、各種計器板、表示板、特に自動二輪車、自動車、電気・電子機器等に搭載される計器板、表示板に、また、電気・電子機器の筐体、時計の表示板、広告看板等に広く利用できるものである。これらの精細な装飾紋様を有する樹脂シートは、傷が付きにくく、軽量で割れにくいという特徴も合わせ持つものであり、産業の広い分野で利用できるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、精細な装飾紋様を有する樹脂シートに関する。精細な紋様を有する樹脂シートは、その外観が美観を起こさせるものであり、デザイン性を拡張し、商品価値やその利用価値を高めるものである。精細な装飾紋様を有する樹脂シートは、例えば、自動車計器板、電気・電子機器等の表示板、電気・電子機器等の筐体、時計の表示板、広告看板等に好適に使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、計器板、表示板、機器の筐体、広告看板等に使用される樹脂シートは、精細な装飾紋様を形成して、その美観を高めることが考えられている。ここで樹脂シートなる語は、いわゆる板状のものからフィルム状のものを含めた広い意味に使用している。通常シートとフィルムとはその厚さで区別される。一般的には、0.2mm以上をシート、0.2mm以下をフィルムと呼ばれている(高分子学会編 プラスチック加工の基礎 1982年)。また、精細な装飾紋様というのは、例えば、木目紋様、文字模様、スピン紋様やヘアライン紋様を含む線画紋様等の細かな装飾用の紋様、模様のことであり、特に、紋様を構成する線や要素の間隔が5mmよりも狭い木目細かい紋様を意味する。このような精細な装飾紋様は、金属等からなるシート素材の場合には、機械加工により、容易かつ工業規模で装飾紋様を形成することができる。しかしながら、樹脂シートに、精細な装飾紋様を機械的加工により形成することは基本的に困難である。
【0003】
装飾紋様を施すには、通常、機械的加工が適用される。即ち、ドリルの先端に円形状の砥石を固定して、ドリルを高速に回転させ、ドリルに装着された砥石を高速回転させながら、砥石を板、シートに一定の圧力で押し付けることにより、板、シートの表面上に、精細な装飾紋様を形成する方法が取られる。事実、金属シートに機械的加工を適用し装飾紋様を形成することは、通常行われているものである。しかしながら、樹脂シートにこの方法を適用した場合、砥石により削り取られたヒゲ状の削りかすが残存するという問題がある。このヒゲ状削りかすは、除去するのに実際上多大な労力を必要とし、簡単な操作では除去できない。また、機械的加工では、樹脂シートの透明性が失われるという問題もある。透明性を失うと、印刷した場合、色の再現性が劣るという問題が起こる。
【0004】
模様を彫った金型を使用し、射出成形又は押出成形等により、模様が形成された樹脂板を得る方法が知られている(例えば、特開2003−1705号公報)。しかし、この方法では、木目細かい紋様の場合は、紋様を正確に樹脂に付与できないという問題がある。成形時の樹脂の粘度が比較的高いため、木目細かい紋様を付与するには、射出成形又は押出成形等の方法は適しないとされている。また、金型の製作費が一般的に高くつくという問題もある。従って、射出成形又は押出成形等は、限られた簡単な模様を形成する場合に適用されている。更に、射出成形又は押出成形等により模様を形成した樹脂表面は、ハードコートされてないので、形成された紋様に傷が付きやすいという問題がある。
【0005】
また、ガラス基板上に凹凸を予め形成し、この上に紫外線硬化塗料及びポリカーボネートなどの樹脂板を積層し、ガラス面又は樹脂面から紫外線を照射し、ガラス基板上の凹凸を紫外線硬化塗料に転写する方法がある(特開平8−99327号公報)。しかしながら、簡単な凹凸については転写可能であるが、ガラスに精細な装飾紋様を形成することが困難であるため、精細な装飾紋様を形成したい場合にはガラスを基板に用いる方法は適用できない。更に、ガラス基板を使用する場合には、紫外線硬化塗料を硬化させた後、樹脂板を剥離する際などに、ガラス基板が割れるという問題もある。
【0006】
更に、(a)樹脂基材の一方の面に紫外線硬化型樹脂層を塗布する工程、(b)フィルム基材上に転写シートを作製する工程と、(c)上記工程(a)で作製された紫外線硬化型樹脂層と上記工程(b)で作製された転写シートとを加えて重ね合わせ、前記転写シート側から、紫外線を照射して、前記樹脂層を硬化せしめると同時に該樹脂層を介して樹脂板と転写シートを積層する工程と、(d)前記転写シートを剥離する工程から製造されるディスプレイ等の光学部材の前面に使用される、反射防止、防汚、帯電防止効果を有する樹脂板の製造方法が特開2000−158599号公報に記載されている。しかしながら、この方法は、光の反射を促進する凹凸を、フィルム面から転写するもので、精細な装飾紋様を転写するものではない。
【0007】
また、微細凹凸パターンが成形された成形型上に紫外線硬化樹脂溶液を塗布し、塗膜層をスムージングロールにより平坦化処理した後、透光性基板を積層し、紫外線露光して紫外線硬化樹脂を硬化させる光学部品の製造方法が知られている(特開2004−255583号公報)。しかしながら、この方法では、フレネルレンズ等の光学部品であるため、ハードコートされておらず、また、精細な紋様の装飾性を際立たせることを考慮していない。
先に述べた様に、樹脂シートに精細な装飾紋様を形成することは極めて困難であり、公知の方法では、精細な装飾紋様を樹脂シートに形成することは極めて困難である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】装飾紋様を有する樹脂シートの構成の例を示す図である
【図2】装飾紋様を有する樹脂シートを製造するための装置の一例を示す図である
【図3】図2における断面を示す図である
【図4】装飾紋様の例を示す図である(スピン紋様)
【図5】装飾紋様の他の例を示す図である(ヘアライン紋様)
【図6】装飾紋様の他の例を示す図である(文字紋様)
【図7】装飾紋様の他の例を示す図である(木目模様)
【図8】本発明を自動車計器板に使用した例を示す図である
【図9】本発明を自動車計器板に使用した他の例を示す図である
【図10】本発明を自動車計器板に使用した他の例を示す図である
【図11】多角形における各辺を直線で描いた線画紋様の例を示す図である
【図12】多角形における各辺を外向き円弧で描いた線画紋様の例を示す図である
【図13】多角形における各辺を内向き円弧で描いた線画紋様の例を示す図である
【図14】本発明を携帯電話機の表示板周辺に使用した例を示す図である
【図15】本発明をエアコンの筐体に使用した例を示す図である
【図16】本発明を電話機の筐体に使用した例を示す図である
【図17】本発明を携帯電話機のボタン表示板に使用した例を示す図である
【図18】本発明をロゴマークに使用した例を示す図である
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、アルミニウム板、銅板、ステンレススチール板、鉄板等の金属板に樹脂シートに転写したい精細な装飾紋様を形成する。即ち、例えば、アルミニウム板の表面にマシン油を全面に塗布して、ドリルの先端に円形状の砥石を固定、ドリルに装着した砥石を高速回転させながら、アルミニウム板の表面上に一定の圧力で砥石を押し付ける。砥石が押し付けられた部分のみ、例えば、微細な曲線状のスピン紋様が形成される。多数の紋様を形成するには、アルミニウム板をスライドさせ、アルミニウム板の全面に多数のスピン紋様を形成させる。銅板、ステンレススチール板、鉄板等の他の金属板にも装飾紋様を形成しうることは言うまでもない。このように精細な装飾紋様を付した金属板を使用し、樹脂シートに転写して得られた精細な装飾紋様を形成した樹脂シートの構成例を図1に示した。図1は側面図と平面図を示している。側面図から明らかなように、本発明の樹脂シートは、透明樹脂シート2の上に形成された三次元硬化樹脂層3とから構成され、その三次元硬化樹脂層の表面に精細な装飾紋様7が付与されている。図1においては、三次元硬化樹脂層の表面にスピン紋様が描かれている。
【0022】
精細な紋様の例として、図4にスピン紋様を、図5にヘアライン紋様を、図6に文字紋様を及び図7に木目紋様を示した。線画紋様は、複数の線で描かれた紋様である。従来代表的なものとして、スピン紋様(図4参照)やヘアライン紋様(図5参照)がある。本発明においては、スピン紋様やヘアライン紋様以外の線画紋様も形成することができる。なかでも、複数の線で描かれた相似な図形からなる線画紋様が好適に形成することができる。この複数の相似な図形からなる線画紋様は、その相似な図形の基本形が、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、多角形、星形等の閉じた線画形状であるものが好ましい。そして、これら三角形、四角形、五角形、多角形、星形等の閉じた線画形状において、各辺が直線、外向き円弧又は内向き円弧で描かれた線画とすることができる。
【0023】
例えば、12角形で例示的に説明する。図11に、12角形における各辺を直線で描いた線画紋様の例を示した。この場合の12角形は、通常の12角形である。図12には、12角形における各辺を外向き円弧で描いた線画紋様の例を示した。各辺は12角形の外側に向かって膨らんだ曲線、即ち、外向き円弧で描いたものとなっている。図13には、12角形における各辺を内向き円弧で描いた線画紋様の例を示した。各辺は12角形の内側に向かって膨らんだ曲線、即ち、内向き円弧で描いたものとなっている。図11〜13には12角形の例を示したが、他の形状、三角形、四角形、五角形、多角形、星形等においても同様である。
【0024】
本発明の線画紋様においては、微細な線画紋様を描くために、線画紋様における線溝深さを20nm〜5μmとするのが好ましい。特に、線溝深さを20nm〜5μmで描く線画紋様は、押出成形や射出成形等では実現困難なものであり、本発明により初めて実現できるものである。
【0025】
本発明の精細な紋様を付した樹脂シートは、様々な用途に利用することができる。計器板、表示板等に好適に使用することができる。特に、自動二輪車、自動車、電気・電子機器等に搭載された計器板、表示板に好適に使用することができる。本発明の精細な装飾紋様を付した樹脂シートを自動車計器板に使用した例を図8〜図10に示した。図8ではスピン紋様、図9はヘアライン紋様、図10は木目紋様である。また、電気・電子機器等の筐体、時計の表示板、広告看板等にも使用することができる。電気・電子機器の例として携帯電話機の筐体に使用した例を図14、図17に示した。更に、図11〜13に示した12角形の線画紋様は、時計の表示板に好適に使用できるものである。ロゴマークの表示にも、例えば、図18に示したように、使用することができる。
【0026】
先に述べたように、本発明の精細な紋様を付した樹脂シートは、各種計器板、表示板等に好適に使用することができる。これら計器板、表示板として使用するために、樹脂シートに文字、数字等を印刷し、更には、着色する。そのために、本発明では、三次元硬化樹脂層の面にミラーインクによるシルク印刷にて文字、数字等を透明印刷するか又は金属蒸着を施してレーザ加工にて文字、数字等を透明加工する。透明印刷は、字、数字は透明で、これ以外の部分を、銀色又は金色のミラーインクで着色することである。この透明印刷により、表示板のデザイン性の拡張、商品価値やその利用価値の高揚に効果がある。
【0027】
前記のシルク印刷では、ミラーインクを用いる。ミラーインク以外のインクで透明印刷又は着色した場合は、三次元硬化樹脂層に形成した精細な装飾紋様が印刷インクにより見えなくなるので好ましくない。また、三次元硬化樹脂層に透明印刷を施した場合は、透明樹脂シート面を表面(おもてめん)として使用することになる。即ち、例えば、計器板等の文字等を透明樹脂シートの面から見ることになる。これに対して、一般的な方法として精細な装飾紋様を有する樹脂シートの透明樹脂シート面に透明印刷、着色を施した場合は、例えば、計器板等の文字等を三次元硬化樹脂層面から見ることになる。この場合は、透明樹脂シート面が表面(おもてめん)となり、表面が傷つきやすいので、透明樹脂シートの面にハードコートを施し表面を保護するのが好ましい。ハードコートは、先に述べたように、三次元硬化塗料を塗布し、塗料を硬化させることにより施すことができる。
【0028】
シルク印刷の代わりに、透明シートの裏面に金属蒸着を施すこともできる。金属蒸着により、装飾模様が形成されたチタン色調やステンレス色調の外観が得られる。この場合は、シルク印刷とは異なり、文字、数字等を透明にすることは困難である。文字、数字等を透明にするために、金属蒸着後にレーザ加工等により、文字、数字等を透明加工する。即ち、文字や数字等が透明になるように、文字や数字等の部分にレーザ光を当てて、蒸着された金属膜を除去するのである。その結果、文字や数字が透明加工される。
【0029】
計器板や表示板に於いては、文字、数字を透明印刷し、この樹脂シート裏面側から光を当てることにより、樹脂シート上に文字、数字を浮かび上がらせることができる。例えば、図8〜図10において、数字は透明のままにして他の部分を銀色に印刷することにより、数字0、20・・・・・180等が、光によって、計器板上に浮かび上がらせることができる。図8〜図10に示した計器板は、自動車等に好適に使用できるスピードメータである。スピードメータの樹脂シートに、スピン紋様(図8)、ヘアライン紋様(図9)や木目紋様(図10)を描いたものである。
【0030】
精細な装飾紋様は、さまざまなデザイン紋様がある。例えば、木目紋様、文字模様等の装飾紋様の他に例えば、スピン紋様、ヘアライン紋様の様な線画紋様がある。このようにして装飾紋様を形成した例えば、アルミニウム板等の金属板を用いて、樹脂シートにスピン紋様等の精細な装飾紋様を転写、形成する。図2又は図3に基づいて、精細な装飾紋様を有する樹脂シートの製造方法を以下説明する。図2は、例としてスピン紋様を紫外線硬化樹脂層に形成させる場合の装置の例を示している。図3に、この装置の断面を示した。表面に精細な装飾紋様を形成した例えば、アルミニウム板等の金属板4を、機械加工台6に固定し、そのアルミニウム板等の金属板4の表面に、三次元硬化塗料3を斑なく塗布する。この三次元硬化塗料3の上に透明な樹脂シート2を配置する。この三次元硬化塗料は、金属板に接着せず、樹脂シートに接着する硬化塗料を選定する。装飾紋様を付した金属板4、硬化塗料3及び透明樹脂シート2を重ね合わせて、平均に一定の圧力をかける。そして、一定の圧力をかけた状態で、透明樹脂シート2の上面より、励起線例えば、紫外線ランプ1で紫外線を照射する。紫外線を照射することにより、硬化塗料は、硬化する。硬化した樹脂に、アルミニウム板に機械加工で形成した装飾紋様が写し取られる。硬化塗料が硬化したら、アルミニウム板より、樹脂シートを剥離する。前述したように、硬化塗料は、金属板には接着せず、樹脂シートに接着して、樹脂シート上に精細な装飾紋様が形成されることになる。透明樹脂シートとして、アクリルシート、ポリカーボネートシート、ポリエステルシート、ポリスチレンシート等を使用することができる。金属板としては、アルミニウム板、銅板、ステンレススチール板、鉄板等の金属板が使用できることは、既に述べたとおりである。
【0031】
三次元硬化塗料は、紫外線や放射線の照射で硬化するもの、熱で硬化するものを適宜使用することができる。なかでも、紫外線硬化塗料が好適に使用することができる。三次元硬化塗料としては、オリゴマー、ポリマー、モノマーや多官能性モノマーを混合した無溶媒型のものがよい。エポキシ樹脂、ポリウレタン等の重付加、付加重合等の反応により生成する重合体が使用できる。
【0032】
本発明に使用する紫外線硬化塗料としては、無溶媒型のもので、紫外線により三次元硬化する塗料を使用することができる。特に、適度のポットライフを有し、かつ、硬化時間の短い紫外線硬化型の塗料で無溶媒型のものが好ましい。具体的には、分子中に2個以上のアクリロイル基やメタクリロイル基を有するモノマーやオリゴマーで、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等のポリオールアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、エステルアクリレートオリゴマー等の反応性オリゴマー、シクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート等のモノマー及びベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2.2−ジメトキシ−2フェニルアセトフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、p−イソプロピルフェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等の光重合開始剤からなるものが挙げられる。
【0033】
市販の表面硬化用の紫外線硬化塗料の内、無溶媒型のものが好適に使用できる。このような塗料は、装飾紋様を形成したアルミニウム板、銅板、ステンレススチール板、鉄板等の金属板にフローコート、ロールコート、捌け塗り等の方法で塗布し、この上にポリカーボネートシート、アクリルシート、ポリエステルシート、ポリスチレンシート等の透明な樹脂シートを置き、圧着する。このようにして、紫外線硬化塗料を金属板と透明樹脂シートの間に、均一厚みになるように押し広げた後、紫外線を照射して、硬化する。紫外線照射は、透明樹脂シートの側より行う。硬化が完了したら、金属板より樹脂シートを剥離する。このようにして、精細な装飾紋様を有する樹脂シートを得ることができる。
【実施例】
【0034】
[車両用計器板]
スピン紋様を付した車両用計器板の実施例について説明する(図8に相当)。アルミニウム板としてアルミニウム板A1050H/1.0t厚みを使用し、このアルミニウム板に、車両用計器板の所定寸法にスピン模様を機械的に施した。この際、スピン紋様の同心円の溝の線幅は0.2mm以下、深さ5μm以下になるようにした。特に溝の深さは、三次元硬化樹脂に対する転写に重要な影響を与える。溝の深さが5μmを超えるようになった場合は、転写加工時に気泡発生の問題が生じ好ましくない。前述した図2、図3の装置を用いて、スピン紋様を付した樹脂シートを作成する。まず、スピン模様を施したアルミニウム板上に、紫外線硬化塗料を斑なく塗布した。ここでは、紫外線硬化塗料は(株)セイコーアドバンス製のウレタンアクリレート系を主剤としたUVA9117を使用した。斑なく塗布した紫外線硬化塗料の上に、厚み0.4mmの透明ポリカーボネート樹脂シートを配置した。スピン紋様を付したアルミニウム板、紫外線硬化塗料及び透明ポリカーボネート樹脂シートを重ねて、5Kgの荷重で平均的に圧力をかけ、透明ポリカーボネート樹脂シート側より、コンベアー式空冷UV乾燥機2灯型を使用し、紫外線を照射した。照射条件は、コンベアー速度4m/min、出力120W、積算光量600mJ/cm2であった。硬化後、アルミニウム板を、樹脂シートから剥離した。このようにして、アルミニウム板の装飾紋様を紫外線硬化樹脂層に転写した、精細な装飾紋様(スピン紋様)を有する樹脂シートを得た。転写された紋様は、紫外線硬化樹脂層に形成され、その紫外線硬化樹脂層はポリカーボネート樹脂シートに接着しているので、結果として、ポリカーボネート樹脂シートと三次元硬化樹脂層からなる樹脂シートにスピン模様が形成される。
【0035】
[携帯電話機]
携帯電話機の表示板周辺に使用した例を図14に示した。車両用計器板用と同様にして得たヘアライン紋様を付した樹脂シートを、携帯電話機の表示面の周囲に使用した。この際、シルク印刷により銀色又は黒色に着色したヘアライン紋様を付した樹脂シートとした。これらの装飾紋様を有する樹脂シートは、比較的厚みのある所謂樹脂板の状態で、機器の筐体自身を形成することもできるし、前もって別の樹脂シート(板)で筐体を形成しておいて、その上に装飾紋様を有する樹脂シートを貼りつけてもよい。
【0036】
[エアコン・電話機]
同様にして、電気・電子機器等の筐体用の装飾紋様を形成した樹脂シートを製造することができる。図15にはエアコンに使用した例、図16には電話機に使用した例を示す。これらは、同様に、比較的厚みのある装飾紋様を有する樹脂シート(板)で、機器の筐体自身を形成することもできるし、前もって別の樹脂シート(板)で筐体を形成しておいて、その上に装飾紋様を有する樹脂シートを貼りつけてもよい。
【0037】
[携帯電話機のボタン表示板]
同様にして、スピン紋様を形成した樹脂シートを使用した携帯電話のボタン表示板を製造することができる。図17は、携帯電話のボタン表示板にスピン紋様を施した例を示した。スピン紋様が転写された樹脂シートのポリカーボネート板の裏側に、意匠文字等が透明になるように、シルク印刷を施した。ここでは、意匠文字以外は鏡面になるように、鏡面インキ(ミラーインク)を使用し、シルク印刷を施した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、樹脂シート表面に精細な装飾紋様を形成することができるものである。精細な紋様を形成した樹脂シートは、各種計器板、表示板、特に自動二輪車、自動車、電気・電子機器等に搭載される計器板、表示板に、また、電気・電子機器の筐体、時計の表示板、広告看板等に広く利用できるものである。これらの精細な装飾紋様を有する樹脂シートは、傷が付きにくく、軽量で割れにくいという特徴も合わせ持つものであり、産業の広い分野で利用できるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂シート上に三次元硬化樹脂層が積層された樹脂シートであって、該三次元硬化樹脂層に凹凸による複数の線画で描かれた精細な装飾紋様が形成されており、かつ、前記三次元硬化樹脂層面に銀及び/又は金のミラーインクでシルク印刷にて透明印刷を施したか又は金属蒸着を施しレーザ加工により意匠文字を除去加工したことを特徴とする精細な装飾紋様を有する樹脂シート。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂シートの透明樹脂シート面に、三次元硬化樹脂塗料を塗布し硬化させたハードコートを施したことを特徴とする樹脂シート。
【請求項3】
前記線画紋様が線溝の深さが20nm〜5μmの複数の線で描かれた微細な線画紋様であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂シートを、三次元硬化樹脂層を貼付面として計器板表面に貼り付け、計器板の裏面から光を当てて、透明印刷またはレーザ加工した意匠文字を読み取ることを可能としたことを特徴とする計器板。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂シートを、三次元硬化樹脂層を貼付面として表示板表面に貼り付け、表示板の裏面から光を当てて、透明印刷またはレーザ加工した意匠文字を読み取ることを可能としたことを特徴とする表示板。
【請求項1】
透明樹脂シート上に三次元硬化樹脂層が積層された樹脂シートであって、該三次元硬化樹脂層に凹凸による複数の線画で描かれた精細な装飾紋様が形成されており、かつ、前記三次元硬化樹脂層面に銀及び/又は金のミラーインクでシルク印刷にて透明印刷を施したか又は金属蒸着を施しレーザ加工により意匠文字を除去加工したことを特徴とする精細な装飾紋様を有する樹脂シート。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂シートの透明樹脂シート面に、三次元硬化樹脂塗料を塗布し硬化させたハードコートを施したことを特徴とする樹脂シート。
【請求項3】
前記線画紋様が線溝の深さが20nm〜5μmの複数の線で描かれた微細な線画紋様であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂シートを、三次元硬化樹脂層を貼付面として計器板表面に貼り付け、計器板の裏面から光を当てて、透明印刷またはレーザ加工した意匠文字を読み取ることを可能としたことを特徴とする計器板。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂シートを、三次元硬化樹脂層を貼付面として表示板表面に貼り付け、表示板の裏面から光を当てて、透明印刷またはレーザ加工した意匠文字を読み取ることを可能としたことを特徴とする表示板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−214546(P2009−214546A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115189(P2009−115189)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【分割の表示】特願2006−552401(P2006−552401)の分割
【原出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(505138130)
【出願人】(594162537)株式会社ハイテック (6)
【出願人】(500501247)カーリング クリエイティブ コンサル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【分割の表示】特願2006−552401(P2006−552401)の分割
【原出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(505138130)
【出願人】(594162537)株式会社ハイテック (6)
【出願人】(500501247)カーリング クリエイティブ コンサル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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