説明

精製微生物リパーゼの顆粒を有する医薬組成物ならびに消化器疾患を予防又は治療する方法

本発明は、少なくとも1つの組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを含有する顆粒を有する医薬組成物、膵外分泌機能不全症のような特定の疾患又は障害を予防又は治療するための医薬品を製造するための前記医薬組成物の使用ならびに前記医薬組成物を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを有する医薬組成物、障害及び疾患、例えば、消化器疾患を予防又は治療するための前記医薬組成物の使用、前記医薬組成物を、それを必要とするホ乳類、特にヒトに投与することによる疾患及び障害を予防又は治療する方法、医薬組成物を製造する方法ならびに前記方法により得られる医薬組成物に関する。
【0002】
リパーゼを含む酵素は、様々な工業的用途、例えば、洗浄剤又は食品工業において公知である。酵素顆粒又は酵素ペレットのような粒子の形で工業的酵素を調製する一般的な理由には、活性化合物が放出される時まで、潜在的に敵対する周囲環境から酵素を保護することが含まれる。更なる理由は、潜在的に毒性のダストの減少に関し、これは取り扱いに際して酵素から生じ得る。
【0003】
米国特許第4689297号明細書には、洗濯洗剤で使用するための粒子を含有するダストフリーの酵素を製造する方法が開示されている。粒子含有の酵素は、水和性コア粒子を酵素でコーティングすることにより製造される。
【0004】
文献WO 91/06638には、酵素含有の発酵液体培地から特に洗浄剤及び食品用のドライかつダストフリーの酵素顆粒を製造する方法が開示されている。通常、発酵液体培地は、微生物法により製造される酵素が得られる液体である。これは通常、生産される粒状酵素の他に副生成物として無数のオリゴ糖及び多糖類を含有する。
【0005】
より精巧な調製物は、通常は製剤学的使用のための酵素に利用される。膵酵素サプリメントの形の幾つかの市販の医薬品は、ホ乳類、例えばヒトでの消化酵素の欠乏症により生じる疾患又は障害を治療することは公知である。これらの製品の活性成分は、特定の消化酵素、すなわちアミラーゼ、リパーゼ及びプロテアーゼであり、これらは通常膵臓で製造され、かつ小腸の上部で排出される。
【0006】
このような医薬品で使用される酵素は、しばしばホ乳類の膵臓腺から、通常はウシ又ブタの膵臓から排出される。
【0007】
欧州特許第0583726B1号には、ミクロペレット含有のパンクレアチンを生産する押出法ならびに該方法により得られるミクロペレットが教示されている。
【0008】
WO 2007/02026012には、押出し法により生産される腸溶コーティングに適切なパンクレアチンミクロペレットコアが記載されている。
【0009】
US4079125には、特にリパーゼを含有していてもよい消化酵素組成物の調製法が開示されている。該組成物は、ノンパレイル・シードを有していてもよい。
【0010】
文献WO 93/07263には、洗浄剤で使用するための顆粒の酵素組成物が開示されていて、かつダストを形成する傾向や残留物を出す傾向が減少している。顆粒組成物は、コア、酵素層及び外側のコーティング層を有する。
【0011】
製剤学的用途のための消化酵素を有する調製物の二者択一的な製法は、例えば、US4447412に開示されている。
【0012】
微生物法に由来する酵素又は酵素混合物、例えば、リゾプス・オリザエ由来のリパーゼ、コウジ菌由来のプロテーゼ及びコウジ菌由来のアミラーゼを含有する製品Nortase(R)も公知である。
【0013】
特定の微生物リパーゼの製剤学的使用は、その製法と精製法と共にWO2006/136159A2に記載されている。
【0014】
医薬品の登録プロセスは極めて厳格であるため、それら全ての活性成分ならびに分解生成物のような副生成物に関しても安全データが提供されなくてはならない。従って、高純度で、高い含有量の活性成分を有し、かつ副生成物、例えば活性成分の分解から生じる副生成物を含有する可能性が最も低い医薬品を生産するのが好ましい。精製リパーゼ、特に組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、特定の注意を払って加工し、製剤学的投与型、例えば製剤学的に使用するための顆粒のようなものにすることが見出された。例えば、通常の押出し法により加工し精製したリパーゼ、特に組換えにより製造された精製した微生物リパーゼは、得られる製品中にペプチド不純物の形成を生じ、ひいては使用される組換えにより製造された精製微生物リパーゼにおいてタンパク質純度の損失を生じる。このようなペプチド不純物は、例えば、押出法の際の機械応力により、例えば、組換えにより製造精製微生物リパーゼそれ自体の分解から生じる。本明細書内で使用されている"ペプチド不純物"という用語は、組換えにより製造された精製微生物リパーゼそれ自体の分解生成物の全体を意味し、かつ更に特定のサンプルもしくは製品において他の全てのペプチド及び/又はタンパク質に誘導される副生成物を含む。
【0015】
このように、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを有する溶液を、製剤学的に認容性の適切なコア粒子にコーティングする本明細書内で記載されたような製法が、組換えにより製造された精製微生物リパーゼの特に高いタンパク質純度の顆粒から成る完成した医薬組成物を生じることは予想外であった。
【0016】
本発明のもう1つの対象は、組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを高い含有量で、高いタンパク質純度で有し、かつ副生成物の含有量が可能な限り最も低い医薬品を提供することであった。
【0017】
従って、本発明の1つの態様は、顆粒を有する医薬組成物に関し、前記顆粒は次のもの:
a)製剤学的に認容性のコア粒子、及び
b)コア粒子上にコーティングされた少なくとも1つのコーティング層、前記コーティング層は、組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを有する、
を含有するか、もしくはこれらから成り、その際、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは少なくとも90面積%(w/w)のタンパク質純度と、少なくとも60%(w/w)のタンパク質含有量を有する。
【0018】
本明細書中に記載されている"顆粒"は、通常は球又は殆ど球の形の粒子として得られ、この形は主に関連する製法による。顆粒の大きさは、広範囲で変化するが、しかし特に顆粒が製剤学的用途の場合には、通常は少なくとも100ミクロメーター、有利には少なくとも200ミクロメーターの直径が使用される。製剤学的用途には、200〜4000ミクロメーター、より有利には300〜3000ミクロメーター、更に有利には400〜2000ミクロメーターの直径の顆粒が更に有利である。
【0019】
本明細書内で記載されているような医薬組成物に有利な製剤学的用途は、消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病の予防又は治療である。
【0020】
本明細書内で記載されているような医薬組成物の"コア粒子"は、それ自体が通常は製剤学的に不活性であり、かつ医薬組成物の活性な製剤学的成分、すなわち、組換えにより製造された精製微生物リパーゼに担体として機能するだけである。このような目的で、当該分野で公知である製剤学的に認容性のどのタイプのコア粒子、例えば、"中性ペレット"又は"スターターペレット"とも称されるいわゆる"ノンパレイル・シード"を使用してもよい。コア粒子は、本明細書内で記載されているような顆粒を製造する方法の状況に適合する製剤学的に認容性の有機又は無機材料から、又は前記材料の混合物から成っていてもよい。コア粒子に適切な無機材料は、例えば、二酸化ケイ素、特に粗いグレードの二酸化ケイ素である。コア粒子に適切な有機材料は、例えば、セルロース、特に微結晶性セルロース("MCC")、澱粉、及び/又は炭水化物、例えば、スクロース又はラクトースである。有機材料、特にセルロースはコア粒子に有利である。MCCが最も有利である。一般に、球又は殆ど球の形であり、かつ様々な大きさのコア粒子が使用される。製剤学的用途には、少なくとも50ミクロメーターの直径、例えば、50〜2000ミクロメーター、有利には150〜1500ミクロメーター、例えば、200〜700ミクロメーターのコア粒子が使用される。
【0021】
本明細書内で記載されているような医薬組成物の顆粒は、少なくとも1つの"コーティング層"を有する。コーティング層は、組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを有するが、しかし2つ以上の前記リパーゼ("組換えにより製造された精製微生物リパーゼのコーティング層")を有してもよい。1つのコーティング層あたり、1種類の組換えにより製造された精製微生物リパーゼを有するのが有利である。更に、本明細書内で記載されているようなコーティング層又は他のエレメントは、場合により下記のような酵素安定剤及び/又は結合剤を有していてもよい。更に、本明細書内で記載されているような医薬組成物のコーティング層又は他のエレメントは、場合により、更に下記のような通常の製剤学的助剤及び/又は付形剤を有してもよい。通常のコーティング材料をコーティング層に使用してもよい。コーティング層の厚さは、広範囲で変化してもよく、かつ例えば、50〜4000ミクロメーター、有利には100〜3000ミクロメーター、より有利には200〜2000ミクロメーターであってよい。コーティング層は、慣習的なコーティング方法により通常はコア粒子に塗布され、かつ当該分野で公知のように幾つかの、例えば、2層、3層、4層、5層以上の層の形で塗布されてもよい。1層の組換えにより製造された精製微生物リパーゼコーティング層が有利である。
【0022】
本明細書内で記載されているような医薬組成物の顆粒は、"組換えにより製造された精製微生物リパーゼコーティング層"の他に、更に1つ以上(すなわち、2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、10層以上)の付加的なコーティング層を有していてもよい。1層、2層以上の組換えにより製造された精製微生物リパーゼコーティング層が1つの顆粒の中に含有されている場合には、この顆粒は場合により1つ以上の付加的なコーティング層を有していてもよく、これは例えば組換えにより製造された精製微生物リパーゼコーティング層を、コア粒子の表面から及び/又は他の組換えにより製造された精製微生物リパーゼコーティング層から分離("分離層")するため、又は組換えにより製造された精製微生物リパーゼコーティング層の表面上に塗布されたトップコートを提供し、これを周囲環境と直接に接触することから保護するため("トップコート層")である。本発明の有利な実施態様では、トップコート層は、機能的コーティング(例えば、腸溶コーティング)を有するか、又はこれから成ることができる。他の実施態様では、トップコート層は、非機能的コーティングを有するか、又はこれから成ることができる。本明細書に記載されたような医薬組成物の顆粒中に2つ以上のコーティング層が含まれる場合には、2つ以上のコーティング層がi)互いに直接に接触して、又はii)1つ以上の付加的なコーティング層を塗布することにより互いに分離してもよい(すなわち、分離層)。1つ以上のコーティング層を含有する顆粒を製造する種々の方法がある。1つの任意選択は、顆粒を段階的にコーティングすることである。すなわち、第一のコーティング層を顆粒に加え、次に第二のコーティング層を前記顆粒に加える。各コーティング工程の後に、コーティングした顆粒を乾燥する必要があるかもしれない。2つ以上のコーティング層が必要な場合には、更なるコーティング層が同じように、又は似た方法で段階的に加えられる。
【0023】
通常の付加的なコーティング層及び当該分野で公知の方法、例えば、文献DK200200473、DK200101930、WO89/08694、WO 89/08695及び/又はWO 00/01793に記載されているようなものを使用してもよい。通常のコーティング材料の他の例は、US 4106991、EP 170360、EP 304332、EP 304331、EP 458849、EP 458845、WO 97/39116、WO 92/12645A、WO 89/08695、WO 89/08694、WO 87/07292、WO 91/06638、WO 92/13030、WO 93/07260、WO 93/07263、WO 96/38527、WO 96/16151、WO 97/23605、WO 01/25412、WO 02/20746、WO 02/28369、US 5879920、US 5324649、US 4689297、US 6348442、EP 206417、EP 193829、DE 4344215、DE 4322229A、DE 263790、JP 61162185A及び/又はJP 58179492に見出すことができ、これらの文献全ての開示内容を参照して本明細書に取り入れることにする。
【0024】
本明細書内に記載されているようなコーティング層と一緒に、又は医薬組成物の他のエレメントと一緒に使用する適切な"酵素安定剤"は、非還元剤、特に非還元炭水化物であってもよい。有利な酵素安定剤は、スクロース、トレハロース及びマルチトールから成る群から選択される。通常は、酵素安定剤は、精製リパーゼの質量あたり0〜100%(w/w)の量、有利には10〜100%(w/w)の量で使用される。酵素安定剤はコーティング層と一緒に使用するのが有利である。
【0025】
本明細書内に記載されているようなコーティング層と一緒に、又は医薬組成物の他のエレメントと一緒に使用する適切な"結合剤"は、例えば高い融点を有するか、又は融点を全く有さない、場合によりノンワックスの性質の薬剤であってよい。例えば、セルロース誘導体、特にヒドロキシプロピル−メチルセルロース("ヒプロメロース")、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースを適切な結合剤として使用してもよい。更に、適切な結合剤は、ポリビニルピロリドン("PVP");デキストリン;及びポリビニルアルコールから選択されてもよい。一般に、結合剤は組換えにより製造された精製微生物リパーゼの質量当たり0〜20%(w/w)の量、有利には2.5〜10%(w/w)の量で使用される。結合剤をコーティング層で使用するのが有利である。
【0026】
本明細書内で記載されたような"組換えにより製造された精製微生物リパーゼ"を本発明による医薬組成物の顆粒と一緒に使用する際に、通常は少なくとも90面積%、91面積%、92面積%、93面積%、94面積%、95面積%、96面積%、97面積%、98面積%、99面積%、有利には少なくとも99.1面積%、99.2面積%、99.3面積%、99.4面積%、99.5面積%、99.6面積%、99.7面積%、99.8面積%、99.9面積%のタンパク質純度を有する。本明細書内で記載されたように、"タンパク質純度"という用語は、特定のサンプル又は製品中、例えば、組換えにより製造された精製微生物リパーゼの特定のサンプル中に存在するタンパク質の全質量に対する、組換えにより製造された精製微生物リパーゼのタンパク質の質量のパーセンテージとして解釈される。本明細書内に記載されたような組換えにより製造された精製微生物リパーゼのタンパク質純度は、クロマトグラフ法により測定できる。得られたクロマトグラフのピークは、面積%法により定量され、かつリパーゼのピークの面積%は検出された全てのピークの全体の面積のパーセンテージとして表示される。有利には、タンパク質純度は高性能逆層液体クロマトグラフィー("RP-HPLC")により測定され、より有利にはグラジエントRP-HPLCにより測定される。グラジエントRP-HPLCは、適切な溶剤を用いて、有利にはアセトニトリル、水及びトリフルオロ酢酸("TFA")から成る溶剤を用いて実施される。
【0027】
適切なHPLCカラム、有利にはYMCタンパク質RP、S−5μmカラム、125×3mm I.D.(YMC Europe GmbH, Schermbeck、ドイツ)において、適切な時間内で、有利には50分以内に、適切な流量で、有利には1.0ml/分の流量で、適切なグラジエントを通すことにより、有利には0〜90%アセトニトリル/TFA0.05%のグラジエントを通すことにより分離が実施される。検出は、適切な波長で、有利には214nmの波長で実施すべきである。試験すべきサンプルは適切な溶剤、有利には塩化ナトリウム2%(w/w)の水溶液中に溶かされる。カラムは、適切な温度で、有利には40℃で運転される。例えば、本発明による医薬組成物の顆粒を製造する出発材料として使用する場合には、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、少なくとも90面積%、かつ99.9面積%の高さのタンパク質純度を有する。このタンパク質純度は、通常は製造工程の際に減少するが、減少の度合いは適用される製造工程による。本明細書内で記載したような、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを有する顆粒を製造する工程の際の極めて緩い条件により、前記調製工程の際のタンパク質純度の損失は極めて低く、例えば0.5%未満である。本明細書内で記載したような、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを有する顆粒を製造するためのプロセスで、例えば、99.9面積%のタンパク質純度を有する組換えにより製造された精製微生物リパーゼが出発材料として使用される場合には、結果として生じる顆粒中の、組換えにより製造された精製微生物リパーゼのタンパク質純度は、通常は99.6面積%の高さである。
【0028】
有利な実施態様では、本明細書内で記載したような組換えにより製造された精製微生物リパーゼの比活性は、その最大の比活性の少なくとも80%である(下記のように)。他の有利な実施態様では、本明細書内で記載したような、組換えにより製造された精製微生物リパーゼの比活性は、それぞれその最大の比活性の少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96又は97%である。酵素(ここではリパーゼ)の"比活性"は、酵素タンパク質の全質量に対しての酵素活性(ここではタンパク質分解活性)である。
【0029】
更に有利な他の実施態様では、本明細書内で記載したような、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは固体の形で、例えば、粉末、結晶、微結晶又はそのようなものの形で使用される。
【0030】
"タンパク質の全質量"という用語は、組換えにより製造された精製微生物リパーゼタンパク質及びペプチド及び/又はタンパク質に誘導される不純物(組換えにより製造された精製微生物リパーゼの分解生成物を含める)の合計であると解釈される。タンパク質の全質量は、他の酵素(ノンプロテアーゼ)、ペプチド付形剤及び/又はタンパク質に誘導される付形剤のように添加されたタンパク質を有さない。
【0031】
組換えにより製造された精製微生物リパーゼの所望のタンパク質純度は、以下に詳細に記載したように達成することができる。
【0032】
本明細書内で記載されたような組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、少なくとも60%(w/w)、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%又は95%のタンパク質含有量を有する。
【0033】
本明細書で記載されたように、"タンパク質含有量"という用語はリパーゼ調製物の全質量に対するリパーゼタンパク質の質量のパーセンテージとして解釈される。リパーゼ調製物には、リパーゼタンパク質及び非ペプチド成分、例えば、オリゴ糖、多糖類、塩、残留水などのようなものが含まれる。組換えにより製造された精製微生物リパーゼを得るための原材料のリパーゼ調製物は、通常は発酵液体培地から公知の方法で得られ、引き続き更なる精製及び/又は乾燥工程が所望もしくは必要な場合には実施される。60%(w/w)又はそれ以上のタンパク質含有量を有する組換えにより製造された精製微生物リパーゼ調製物を所望する場合には、リパーゼ調製物は発酵液体培地から回収された後に、通常は乾燥される。1実施態様では、乾燥すべきリパーゼ調製物は液体リパーゼ濃縮物であることができる。乾燥は、通常は噴霧乾燥又は凍結乾燥として実施される。噴霧乾燥が好ましい。例えば、本発明による医薬組成物の顆粒を製造するための出発材料として使用する場合には、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは少なくとも60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%(それぞれの場合w/w)のタンパク質含有量を有する、又は少なくとも80%(w/w)のタンパク質含有量を有する。有利な実施態様では、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは少なくとも80%(w/w)のタンパク質含有量を有する。本発明による医薬組成物が関わる場合には、その中で決定されたタンパク質含有量は、本発明による医薬組成物の顆粒を製造するための出発材料として使用された組換えにより製造された精製微生物リパーゼ中に存在するタンパク質含有量よりも通常は低い。これは、医薬組成物の顆粒中の、製剤学的助剤及び/又は付形剤のような付加的な物質による。
【0034】
タンパク質含有量は、"外標準法(external standard method)"により決定できる。すなわち、"リパーゼタンパク質参照標準法"("LRS")の解決法を基準として、独立に決定すべき特定のリパーゼのアミノ酸組成物に対する定義付けられたタンパク質含有量を用いて決定できる(詳細に関しては例6を参照のこと)。"分析的手法と方法の確証"(米国FDAにより提供されるガイダンス、2000年8月)によれば、米国薬局方(USP)/国民医薬品集(NF)からの参照標準及びその他の公的情報源は更なる特徴付けを必要としない。公的情報源から得られない参照標準は、適正な作業により得られる最も高い純度のものであるべきであり、かつこれは徹底的に特徴付けられて、その相同性、強度、品質、純度及び効力を明確にすべきである。
【0035】
参照標準を特徴付けるために使用される定性及び定量分析法は、薬剤物質又は薬剤製品の相同性、強度、品質、純度及び効力をコントロールするために使用されるものとは異なり、かつより広範囲にわたると予想される。しかし、例えば新規の分子成分の薬剤用途には、国際もしくは国内標準が利用可能ではないようである。従って、生産には適切に特徴付けられた工場内の一次参照材料を確立すべきである。生産ロットのテストで使用される工場内の参照材料は、この一次参照材料に対してキャリブレートされるのがよい。酵素の分野では、参照標準は入手可能な最も高い純度(例えば、99.9%よりも高い)を有することにより特徴付けられる。その極めて高い純度により、酵素参照標準の比活性は、該特異的酵素に利用可能な標準条件下に決定する場合には、この特異的酵素の"最大の比活性"を示すか、又は殆ど最大の比活性を示す。ここで、最大の比活性と殆ど最大の比活性の間の数値が極めて低い偏差であるので、実用的な目的のために最大の比活性と等しくさせてある。
【0036】
精製リパーゼ、特に組換えにより製造された精製微生物リパーゼの所望のタンパク質含有量は、下記に詳説するように達成できる。
【0037】
有利な実施態様では、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、少なくとも1Mio U/gの比活性を有する。リパーゼの比活性は、例えば例8に記載されているように決定することができる。リパーゼ活性の単位"U/g"は、"酵素タンパク質1グラム当たりの単位"として解釈される。1単位"U"は、滴定可能な脂肪酸1μ当量を、一定の条件下で37℃、pH7.0で1分以内に加水分解する酵素活性として定義される。リパーゼ活性(同異義語として使用される表現は"酵素活性"、"酵素力"及び"脂肪分解活性")は、例7で定義されたような単位時間当たりに変換されるモルとして解釈される。
【0038】
本発明の目的に関して、"リパーゼ"とはカルボン酸エステル加水分解酵素EC 3.1.1.−を意味し、これはEC 3.1.1.3トリアシルグリセロールリパーゼ、EC 3.1.1.4ホスホリパーゼA1、EC 3.1.1.5リゾホスホリパーゼ、EC 3.1.1.26ガラクトリパーゼ、EC 3.1.1.32ホスホリパーゼA1、EC 3.1.1.73フェルロイルエステラーゼのような活性を含む。特定の実施態様では、リパーゼはEC3.1.1.3トリアシルグリセロールリパーゼである。ECのナンバーは、酵素命名法1992(NC-IUBMB、Academic Press, San Diego, Calofornia)を意味する。これには、それぞれEur. J. 25 Biochem. 1994, 223, 1-5;Eur. J. Biochem. 1995, 232, 1-6;Eur. J. Biochem. 1996, 237, 1-5;Eur. J. Biochem, 1997, 250, 1-6;及びEur. J. Biochem. 1999, 264, 610-650に発行されている別冊1〜5も含まれる。命名法は通常は補足かつデータ更新される;例えば、http://www.chem.qmw.ac.uk/inbmb/enzyme/index.html.を参照のこと。
【0039】
リパーゼは植物由来又は動物、特にホ乳類、真菌又は細菌由来のものであってよい。例えば、次のものに限定されるわけではないが、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発及び析出を含む通常の方法により微生物リパーゼを発酵液体培地から回収し、かつホ乳類リパーゼをブタの膵臓又はウシの抽出物から回収してもよい。
【0040】
本発明によれば、製剤学的用途に適切な組換えにより製造されたどの精製微生物リパーゼを使用してもよい。特に本発明に関して使用されるリパーゼは、疾患及び障害、有利には消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病を予防又は治療するために適切であるべきである。
【0041】
組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、組換えDNA−テクノロジーにより製造される酵素であり、リパーゼは微生物起源である。すなわち、真菌類又は菌類から得られる。本発明に関して、適切なリパーゼは比較的に低いpHで脂肪分解活性を有する組換えにより製造された精製微生物リパーゼであるのが有利である。組換えにより製造された微生物リパーゼは、酵素変異体又は機能的に同等の突然変異を受けた酵素であるか、又は天然に存在するリパーゼと構造的に似た特徴を有する。酵素変異体又は突然変異を受けた酵素は、親遺伝子又はその誘導体のDNA配列の変性により得られる。酵素変異体又は突然変異を受けた酵素は、個々の酵素をコードするDNAヌクレオチド配列が適切な宿主生物内の適切なベクターに挿入される場合に発現され、かつ生産される。宿主生物は必ずしも親遺伝子の起源となる生物と同一である必要はない。遺伝子に突然変異を引き起こす方法は、当業者に周知であり、例えば、EP0407225を参照されたい。
【0042】
本発明の目的のための、組換えにより製造された有利な微生物リパーゼは、真菌類、例えば、ヒュミコーラ(Humicola)、クモノスカビ、リゾープス属、ゲオトリクム属又はカンジダ種、特にヒュミコーラ・ラヌギノーサ(サーモミセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa))、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、リゾプス・ジャバニクス(Rhizopus javanicus)、リゾプス・アルヒズス(Rhizopus arrhizus)、リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・デラマール(Rhizopus delamar) 、カンジダ・シリンドラシア(Candida cylindracea)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)又はゲオトリクム・カンジダム(Geotrichum candidum)由来のリパーゼであるか、又は細菌、例えばシュードモナス、バークホルデリア又はバチルス種、特にバークホルデリア由来のリパーゼである。ヒュミコーラ・ラヌギノーサ(サーモミセス・ラヌギノーサ)又はリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)の菌株由来のリパーゼがより有利である。ヒュミコーラ・ラヌギノーサ(サーモミセス・ラヌギノーサ)の菌株由来のリパーゼが最も有利である。
【0043】
本発明に関して使用できる微生物由来のリパーゼならびに例えば組換え技法によるそれらの生産は、例えばEP文献No. 0600868、0238023、0305216、0828509、0550450、1261368、0973878及び0600868(US 561489)に記載されている。前記刊行物を参照して本明細書に取り入れることとする。EP刊行物0600868(US5614189)には、特にヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼを膵臓の酵素置換治療において使用することが記載されている。前記リパーゼは、ヒュミコーラ・ラヌギノーサDSN 4109由来であり、かつSEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目のアミノ酸配列を有する。
【0044】
本発明の特定の実施態様では、SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目に少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を有するヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼを、組換えにより製造された精製リパーゼを製造するために使用してもよい使用してもよい。
【0045】
更に本発明の特定の実施態様では、SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目に少なくとも80%の相同性を有するヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼを、組換えにより製造された精製リパーゼを製造するために使用してもよい。
【0046】
本発明のもう1つの特定の実施態様では、SEQ ID No.2のアミノ酸を有するヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼを、組換えにより製造された精製リパーゼを製造するために使用してもよい。
【0047】
特に、WO 2006/136159及び/又は国際特許出願WO 2008/079685(PCT/US07/87168)に開示されているような医薬品として使用するリパーゼ、有利には、それぞれの請求項に記載されているようなものを本発明により使用してもよい。文献WO 2006/136159とWO 2008/079685両方の開示内容を全体を参照して本明細書に取り入れることとする。
【0048】
従って、本発明に関して、特定の実施態様で使用すべき組換えにより製造された精製リパーゼは、
(a)SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目の配列に少なくとも50%の相同性、有利には60%、70%、80%又は90%の相同性を有し、
(b)リパーゼ活性を有し、かつ
(c)場合により、SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目の配列と比べて、
(d)場合により、SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目の配列と比べて、
(i)置換T231R及びN233R;又は
(ii)置換N33Q、T231R及びN233R;又は
(ii)置換N33Q、T231R及びN233R;ならびに以下のものから選択される少なくとも1つの更なる置換を有する:

【0049】
本発明に関して特定の実施態様で使用すべき組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目に少なくとも90%の相同性を有する。SEQ ID NO.1は、二重の置換T231R+N233Rにより、SEQ ID No.2の1〜269番目のアミノ酸が異なっている。SEQ ID NO.1での"二重の置換T231R+N233R"という表現は、変異体SEQ ID No.1が、231番目の位置のスレオニン残基(Thr又はT)と、233番目の位置のアスパラギン残基(Asp又はN)が、アルギニン残基(Arg又はR)により置換されているSEQ ID NO.2の変異体であることを意味する。"位置"という用語は、配列表のSEQ ID NO.1中、プラスのアミノ酸残基の数を意味する。これらの2個の置換は下記に定義するように保守的ではない(なぜならば、これらは2個の塩基性アミノ酸を2個の極性アミノ酸で置換するからである)。
【0050】
本発明の更に有利な実施態様では、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、SEQ ID No.1に少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%相同性である。
【0051】
特定の実施態様では、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは
a)SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目を有する、又は
b)SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目の変異体である、ここで変異体は、25個以下のアミノ酸によりSEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目とは異なる:かつその際、
(i)変異体は、SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目と比べて1つ以上のアミノ酸の少なくとも1つの保守的な置換及び/又は挿入を有する;及び/又は
(ii)変異体は、SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目と比べて少なくとも1つの僅かな欠失を有する;及び/又は
(iii)変異体は、SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目と比べて、少なくとも1つの僅かなN−末端もしくはC−末端延長を有する;及び/又は
(iv)変異体は、SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目を有するリパーゼの断片である。
【0052】
SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目と比べて保守的な置換、挿入、欠失、N−末端延長及び/又はC−末端延長を有するリパーゼ、ならびにリパーゼ断片は、当該分野で公知の方法、例えば部位特異的突然変異、ランダム突然変異、コンセンサス誘導法(EP 897985)及び遺伝子シャッフリング(WO 95/22625、WO 96/00343)などにより、この分子から調製できる。このようなリパーゼは、ハイブリッド又はキメラ酵素であってもよい。
【0053】
本発明のこの実施態様で使用すべき変異体リパーゼは、当然ながらリパーゼ活性を有する。特定の実施態様では、変異体リパーゼの比活性はSEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目を有するリパーゼの比活性の少なくとも50%である。更なる特定の実施態様では、変異体リパーゼの比活性は、SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目を有するリパーゼの比活性の少なくとも60、70、80、85、90又は95%であり、この比活性は、本明細書内に記載されているような例8のリパーゼアッセイを用いて、又はWO2006/136159の例1に記載されているようなリパーゼアッセイを用いて測定してもよい。有利には、この比較のために、WO2006/136159の例1のLU−アッセイを用いた酵素タンパク質(U/mg)において測定され、かつWO2006/136159の例5に記載されているようにアミノ酸分析により酵素タンパク質含有量が決定される。
【0054】
SEQ ID No.1のリパーゼ変異体に可能なアミノ酸の変化は、マイナーな性質のものである。すなわちタンパク質のフォールディング及び/又は活性に著しい影響を与えない保守的なアミノ酸置換又は挿入であり、有利にはこのような僅かな数の置換又は挿入、僅かな欠失、アミノ末端メチオニン残基のようなアミノ末端又はカルボキシル末端の僅かな延長、僅かなリンカーペプチド、又は実効電荷もしくは他の機能、例えばポリヒスチジン経路、抗原性エピトープ、又は結合ドメインのようなものを変えることにより精製を容易にする僅かな延長である。
【0055】
上記に関連して、"僅かな"という用語は、それぞれ25個までのアミノ酸残基の数を意味する。有利な実施態様では、"僅かな"という用語は、独立に24、23、22、21又は20個までのアミノ酸残基を意味する。更に有利な実施態様では、"僅かな"という用語は、独立に19、18、17、16、15、14、13、12、11又は10個までのアミノ酸残基を意味する。更に有利な実施態様では、"僅かな"という用語は、独立に9、8、7、6、5、4、3、2又は1個までのアミノ酸残基を意味する。二者択一的な実施態様では、"僅かな"という用語は、独立に40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27又は26個までのアミノ酸残基を意味する。
【0056】
有利な実施態様では、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12又は11個以下のアミノ酸がSEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目とは異なるアミノ酸配列を有するか、又はこれは10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個以下のアミノ酸によりSEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目とは異なるが、どちらの場合にも、上記のようなSEQ ID No.1の二重の置換R231T+R233Nを除くのが有利である。二者択一的な実施態様では、本発明に関して使用すべきリパーゼは、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27又は26個以下のアミノ酸がSEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目とは異なるアミノ酸配列を有し、上記のようなSEQ ID No.1の二重の置換R231T+R233Nを除くのが有利である。
【0057】
保守的な置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン及びアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)及び僅かなアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン及びメチオニン)の群の範囲内である。一般に比活性を変えないアミノ酸の置換は当業者に周知であり、かつ例えば、H. Neurath and R. L. Hillにより、 The Proteins(1979, Academic Press, New York)に記載されている。最も一般に生じる置換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu及びAsp/Glyである。
【0058】
本発明に関して使用できる変異体リパーゼの他の有利な例には、保守的置換(1つの極性アミノ酸が他の極性アミノ酸に変換)が含まれ、これはSEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目の変異体Asn33Gln(N33Q)である。これはグリコシル化されていない変異体であり、本発明のためにSEQ ID No.1と同等に効率的である。また本発明はこの変異体リパーゼそれ自体としての使用、ならびにSEQ ID No.1のアミノ酸−5〜269、−4〜269、−3〜269及び2〜269番目が相応して置換された変異体に関する。
【0059】
有利な実施態様では、組換えにより製造された精製微生物リパーゼの変異体リパーゼ中でのそれぞれの置換は保守的である。
【0060】
本発明で使用できる変異体リパーゼの例には、N−末端の僅かな延長が含まれ、これはSEQ ID No.1のアミノ酸−5〜269(−5から+269)、−4〜269(−4から+269)、−3〜269(−3から+269)番目である。すなわち、それぞれSPI..、PIR..、及びIRR..のN−末端を有する(例11参照)。
【0061】
本発明で使用できる変異体リパーゼの例は、SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目の断片であり、これはSEQ ID No.1のアミノ酸2〜269(+2〜+269)番目のアミノ酸配列を有する変異体である。すなわち、VSQのN−末端を有する(例11参照)。
【0062】
以下のアミノ酸配列を有するリパーゼは、本発明に関して使用すべき精製リパーゼの有利な例である:(i)SEQ ID No.1のアミノ酸+1〜+269、(ii)SEQ ID No.1の−5〜+269、(iii)SEQ ID No.1のアミノ酸−4〜+269、(iv)SEQ ID No.1のアミノ酸−3〜+269、(v)SEQ ID No.1のアミノ酸−2〜+269;(vi)SEQ ID No.1のアミノ酸−1〜+269、(vii)SEQ ID No.1のアミノ酸+2〜+269ならびに(viii)(i)〜(vii)のリパーゼの2つ以上の混合物。特定の実施態様では、本発明により使用するためのリパーゼは、(i)、(ii)のリパーゼ及び(i)と(ii)の混合物から選択される。(i)と(ii)の有利な混合物は、(i)のリパーゼを少なくとも5%、有利には少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は少なくとも95%有し、パーセンテージは例11に記載されているようなエドマン法によりN−末端のシーケンシングにより決定される。他の有利な混合物は、(a)組成物:リパーゼ(ii)を35〜75%、有利には40〜70%、より有利には45〜65%有する;(b)組成物:リパーゼ(i)を20〜60%、有利には25〜55%、より有利には30〜50%、最も有利には35〜47%有する;(c)組成物:リパーゼ(vii)を30%まで、有利には25%まで、更に有利には20%まで、最も有利には16%まで有する;(d)は(a)、(b)及び/又は(c)のいずれかの組合せ、例えば、リパーゼ(ii)を45〜65%、リパーゼ(i)を35〜47%、及びリパーゼ(vii)を16%まで有する組成物である。
【0063】
本発明に関して使用される組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、SEQ ID No.1のアミノ酸1〜269番目を有するリパーゼの断片であってもよい。従って、前記断片はリパーゼ活性を有する。断片という用語は、ここでは、SEQ ID No.1のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端から削除された1つ以上のアミノ酸、有利にはその成熟部分(アミノ酸1〜269番目)から削除された1つ以上のアミノ酸を有するポリペプチドとして定義される。有利には、僅かな数のアミノ酸は削除されていて、僅かな数とは先に説明した通りに定義される。より有利には、断片は少なくとも244、245、246、247、248、249又は少なくとも250個のアミノ酸残基を含有する。最も有利には、前記断片は少なくとも251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267又は268個のアミノ酸残基を有する。二者択一的な実施態様では、前記断片は少なくとも239、240、241、242又は少なくとも243個のアミノ酸残基を有する。
【0064】
他の有利な実施態様で、本発明に関して組換えにより製造された精製微生物リパーゼとして使用すべきリパーゼは、未公開の国際特許出願PCT/US 07/87168に開示されているような親リパーゼの変異体であり、これは
(a)SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目の配列に少なくとも50%の相同性を有し;
(b)リパーゼ活性を有し;かつこれは
(c)SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目の配列と比べて、置換N33Q、T231R及びN233Rを有し、ならびに以下のものから選択される少なくとも1つの更なる置換を有する:
【0065】

【0066】
他の有利な実施態様で、本発明に関して組換えにより製造された精製微生物リパーゼとして使用すべきリパーゼは親リパーゼの変異体であり、これは
(a)SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目の配列に少なくとも50%の相同性を有し;
(b)リパーゼ活性を有し;かつこれは
(c)SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目の配列と比べて、以下のものから選択される1セットの置換を有する:
【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】

【0083】

【0084】
他の有利な実施態様では、本発明に関して組換えにより製造された精製微生物リパーゼとして使用すべきリパーゼは、親リパーゼの変異体であり、これは
(a)SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目に少なくとも50%の相同性を有し、
(b)リパーゼ活性を有し、かつ
(c)次の置換:

から選択される少なくとも1つの置換を有し、その際、各位置はSEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目の位置に相応する。
【0085】
もう1つの他の有利な実施態様では、本発明に関して組換えにより製造された精製微生物リパーゼとして使用すべきリパーゼは、親リパーゼの変異体であり、これは
(a)SEQ ID No.2のアミノ酸1〜269番目に少なくとも50%の相同性を有し、
(b)リパーゼ活性を有し、かつ
(c)SEQ ID No.2の配列と比べて、次のもの:

【0086】

【0087】

から選択される1セットの置換を有する。
【0088】
本発明では、Voet & Voet、生化学、第三版(John Wiley & Sons Inc)に記載されているように、アミノ酸は一文字表記(例えば、S、P、l、Rなど)及び/又は三文字表記(例えば、Ser、Pro、Ile、Argなど)を用いて省略される。
【0089】
"対立遺伝子変異体"及び2つのアミノ酸配列の間の関連性を説明するパラメーターである"相同性"という用語は、国際特許出願PCT/DK2006/00352(WO2006/136159として掲載)に記載されているような定義に従って本明細書内で使用される。
【0090】
本明細書内で記載したような組換えにより製造された精製微生物リパーゼを達成するための、リパーゼの単離、精製及び濃縮は通常の方法により実施してもよい。例えば、本明細書内で記載したような組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、第一の工程で組換えにより製造された微生物リパーゼを、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は析出を含むが、これらに限定されない通常の方法により発酵液体培地から回収し、この後に第二の工程で回収した組換えにより製造された微生物リパーゼを当該分野で公知の1つ以上の精製法により精製することで製造することができる。適切な精製法は、例えば、クロマトグラフィー法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング及びゲル濾過クロマトグラフィー)、電気泳動法(例えば、分取等電集束法)、示差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈殿法)、SDS-PAGE、結晶化法、抽出法(例えば、Protein Purification, J. C. Janson and Lars Ryden、編者、VCH出版社、New York、1989年を参照)から、ならびに前記の精製技法もしくは方法の組合せから選択できる。結晶化法及び/又はクロマトグラフィー法は、市場規模の調製に有利である。結晶化は最も有利である。
【0091】
例えば、SEQ ID No.2の微生物リパーゼは、例えば米国特許第5869438号明細書(ここで、SEQ ID No.1は本明細書で定義したようにSEQ ID No.2のリパーゼをコードするDNA配列である)に基づいて、すなわち前記米国特許のSEQ ID No.1のDNA配列を適切な宿主細胞中で組換え発現することにより調製してもよい。
【0092】
例えば、SEQ ID No.1のリパーゼは、例えば、米国特許第5869438号明細書(ここで、SEQ ID No.1は、231と233の位置のアミノ酸だけが異なる類似したリパーゼをコードするDNA配列である)に基づいて、すなわち2つのアミノ酸の違いを反映する前記米国特許のSEQ ID No.1の変種であるDNA配列を適切な宿主細胞中で組換え発現することにより調製してもよい。
【0093】
例えば、本明細書内で有利に使用されるSEQ ID No.1及び/又はSEQ ID No.2の微生物リパーゼ変異体は、例えば、米国特許第5869438号明細書(ここで、SEQ ID No.1は本明細書で定義したようにSEQ ID No.2のリパーゼをコードするDNA配列である)に基づいて、すなわち適切な宿主細胞中でDNA配列(このDNA配列は前記米国特許のSEQ ID No.1の変種であり、該変種は、所望のリパーゼ変異体とSEQ ID No.2のリパーゼの間のアミノ酸の違いを反映している)を組換え発現することにより調製してもよい。該変種は、当業者に公知のように部位特異的突然変異により作成できる。
【0094】
特定の実施態様では、SEQ ID No.1及び/又はSEQ ID No.2の微生物リパーゼ変異体は、リパーゼ変異体をコードするDNAを、米国特許第5869438号明細書の例22に記載されている方法を用いてコウジ菌菌株ToC1512(WO2005070962A1に記載されている)中で形質転換することにより調製される。但し、AMDS選択の代わりにPyrG選択(WO2004069872A1に記載されている)が用いられている。コウジ菌宿主の胞子は、寒天斜面から取り出され、かつ10mlYPMの移植に使用される(10g酵母抽出液、Difco+20gペプトン、Difco、水を加えて1リットルにしてオートクレーブし、無菌化濾過したマルトールを加えて2%(w/w)にする)。殺菌したチューブをNew Brunswick Scientific Innova 2300の振盪器中、180rpmにて30℃で3日間インキュベートした。ミラクロス(Mira-Cloth)(Calbiochem社)で濾過し、次に0.45μm(ミクロメーター)のフィルターで無菌化濾過することにより上澄液を回収した。米国特許第5869438号明細書の例23に一般に記載されているようにリパーゼ変異体を更に精製した。
【0095】
特定の実施態様では、組換えにより製造した精製微生物リパーゼの濃縮固体又は液体調製物をそれぞれ調製した。
【0096】
更に特定の実施態様では、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを固体濃縮物の形で使用した。組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、当該分野で公知の様々な方法により固体の状態にすることができる。例えば、固体の状態は結晶質(リパーゼ分子は高度に規則的な形で配列されている)又は析出物(リパーゼ分子はあまり規則的ではない、又は無秩序な形で配列されている)であることができる。硫酸アンモニウム及び/又は硫酸ナトリウムのような塩での析出、エタノール及び/又はイソプロパノールのような有機溶剤、又はPEG(ポリエチレングリコール)のようなポリマーでの析出を含めて様々な析出が当該分野では公知である。二者択一的に、当該分野で公知の様々な方法により、例えば、凍結乾燥、蒸発(例えば、減圧にて)、フリーズドライ及び/又は噴霧乾燥により、溶媒(通常は水)を除去することにより溶液から析出することができる。
【0097】
有利な実施態様では、結晶化はリパーゼを精製し、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを得る方法として使用できる。結晶化は、EP691982に記載されているように、例えばリパーゼの等電点("Pl")に近いpH及び低い導電率、例えば10mS/cm以下で実施してもよい。特定の実施態様では、本発明により使用するためのリパーゼは結晶質リパーゼであり、これはEP600868B1の例1に記載されているように調製できる。更にリパーゼ結晶は、WO2006/044529に記載されているように架橋していてもよい。
【0098】
1実施態様では、リパーゼの固体濃縮物は固体濃縮物の全体のタンパク質含有量に対して、少なくとも50%(w/w)の活性酵素タンパク質のタンパク質純度を有する。更なる特定の実施態様では、活性酵素タンパク質のタンパク質純度は、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90又は少なくとも95%(w/w)である。タンパク質純度は、当該分野で公知のように、例えばクーマシー染色したSDS−PAGEの濃度計スキャンニングにより、また例えば、BIO-RAD社のキャリブレートしたGS-800濃度計を用いて、市販のキット、例えばRoche社により市販されているProtein Assay ESL(注文番号1767003)を用いることにより、又はWO01/58276の例8に記載されている方法に基づいて測定できる。有利には、リパーゼ酵素タンパク質は、クーマシー染色したSDS-PAGEの濃度計のスキャンニングにより測定して、本発明により使用する固体リパーゼ濃縮物のタンパク質スペクトルの少なくとも50%、より有利には少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、92、94、95、96又は少なくとも97%を構成する。このような酵素は、"単離"、"精製"又は"精製かつ単離"した酵素又はポリペプチドと称しても良い。アスペルギルス属で発現し、かつWO2006/136159の例5で説明されているようにSEQ ID NO.1の種々の形のN−末端の混合物を有するリパーゼでは、SDS-PAGEゲル上において関連するバンドは、34〜40kDaの分子量に相当する場所に位置する。SEQ ID No.1のグルコシル化されていない変異体(N33Q)では、関連するバンドは約30kDaに位置する。
【0099】
有利な実施態様では、組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、組換えにより製造された精製微生物リパーゼから、特にヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼから生産される。このために、組換えにより製造された精製微生物リパーゼ、特にヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼは、上記のように通常の方法により発酵液体培地から回収され、かつ液体リパーゼ濃縮物として得られる。固体のリパーゼ濃縮物は、通常の析出又は乾燥法により、有利には噴霧乾燥により前記液体リパーゼ濃縮物から得られる。ヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼを使用する場合には、上記方法により得られた固体リパーゼ濃縮物は、一般に約50%(w/w)のタンパク質含有量と約95面積%のタンパク質純度を有する。前記固体リパーゼ濃縮物は、所望の場合に又は必要な場合には更に通常の方法により精製してもよい。
【0100】
ヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼを使用する場合には、上記のように結晶化により固体リパーゼ濃縮物を更に精製するのが有利である。例えば、ヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来の固体リパーゼ濃縮物は、精製するためにそのplに近いpHでかつ低い導電率で適切な結晶化緩衝液中で結晶化することができる。次に結晶化したリパーゼは、通常の分離方法により、有利には遠心分離により結晶化緩衝液から分離し、かつより高いpHで再び溶解させてもよい。所望の場合には、特定もしくは所望のタンパク質純度及び/又はタンパク質含有量を達成するために、更なる精製方法サイクルを実施してもよい。次に、このように得られた精製した液体リパーゼ濃縮物を、通常の析出法又は乾燥法、有利には噴霧乾燥により、精製固体リパーゼ濃縮物に変えることができる。固体リパーゼ濃縮物及び精製した固体リパーゼ濃縮物は、タンパク質含有量及び/又はタンパク質純度に応じて、それら自体が本発明による精製リパーゼとして適切である。
【0101】
本発明により使用される組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、通常の方法、有利にはUS6355461に記載されているようなカール・フィッシャーの方法により測定して、便宜的に1%〜7%の残留する含水量を有し得る。
【0102】
60%(w/w)未満、例えば約50%(w/w)のタンパク質含有量を有する組換えにより製造された精製微生物リパーゼを通常の押出法により加工しても、使用される精製リパーゼのタンパク質純度を著しく損失せずに適切な製剤学的投与型にできることが見出された。しかし、少なくとも60%(w/w)のように高いタンパク質含有量、例えば、80%(w/w)のタンパク質含有量を有する組換えにより製造された精製微生物リパーゼを使用する場合には、通常の押出法により加工すると加工後にタンパク質純度を著しく損失せずにこれらを適切な製剤学的投与型にすることができない。
【0103】
本発明では極めて高い純度を示すリパーゼの参照標準を使用した。有利な実施態様では入手可能な最も高い純度及び殆ど最大の比活性(又は近似の比活性、上記参照)を示すものを使用し、更に有利な実施態様では個々のリパーゼに関して最大の比活性を示した。組換えにより製造された精製微生物リパーゼそれぞれに関して、リパーゼ参照標準を調製した。その際、リパーゼ参照標準のアミノ酸配列は組換えにより製造された精製微生物リパーゼと同じものである。すなわち、両方とも同じリパーゼであるが、しかし異なる方法により精製されたものである:
a)組換えにより製造された精製微生物リパーゼの製造
精製されていないリパーゼ(例えば、発酵により得られるようなもの)を、本明細書内で記載されたような定義付けられたpH値で結晶化法により精製した。
b)リパーゼ参照標準の製造
精製されていないリパーゼ(例えば、発酵により得られるようなもの)を、現在当該分野で公知の最も効率的な精製法を用いて精製した。有利な実施態様では、リパーゼをクロマトグラフィー法により精製し、更に有利な実施態様では疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過クロマトグラフィー(SEC)から成る3種を組み合わせた方法を用いて精製した。更に有利な実施態様では、第一の工程でHICにより、第二の工程でイオン交換クロマトグラフィーにより、かつ第三の工程でSECによる精製を用いて極めて高い純度のリパーゼを達成した。更に有利な実施態様では、入手可能な最大の純度のリパーゼが達成した。
【0104】
有利な実施態様では、リパーゼ参照標準は以下の方法により調製される:
出発材料を適切な液体、有利には水、より有利には定義したpH、好ましくはpH6に調節した水に懸濁させる。定義付けられた量の緩衝培地、有利には定義づけられた量のコハク酸/NaOH溶液及び溶解させた定義付けられた量の浸透活性剤、有利には定義付けられた量のNaCl溶液を加え、かつpHを適切なpHに、有利にはpH6に調節する。この後に、適切な濾過装置を通して、有利には0.22μmの濾過装置を通して混合物を濾過する。定義付けられた量の濾液を適切な分離カラムに、有利には適切な疎水性クロマトグラフィー分離カラムに、より有利には、適切なpHを有する適切な平衡化緩衝液中で、有利にはコハク酸NaOH/溶液の溶液中で、適切なpH、有利にはpH6を有するNaCl中で平衡化されたアセチル化デシルアミン−アガロース(decyl-agarose)カラムにかける。カラムを平衡化緩衝液で洗浄する。引き続き、適切なpHを有する適切な溶出液で、有利には適切なpH、有利にはpH9を有するイソプロパノール含有のH3BO3/NaOH溶液でカラムを段階的に溶出する。この工程は定義づけられた回数だけ、有利には19回(全部で20回)繰り返される。全ての溶出液を合わせ、かつ定義付けられた量の適切な液体、有利には水で希釈される。希釈されたリパーゼを適切な分離カラム、有利には適切なイオン交換クロマトグラフィーカラム、更に有利にはQ−セファロースFFカラムにかけ、適切な平衡化緩衝液、有利には適切なpHを有する、好ましくはpH9を有するH3BO3/NaOH溶液中で平衡化される。カラムを平衡化緩衝液で洗浄する。引き続き、適切な溶出液で、より有利には線状グラジエントの液体、より有利にはNaCl線状グラジエント(0→0.5M)で、適切な数のカラム体積にわたり、有利には3つのカラム体積にわたり溶出する。
【0105】
溶出したリパーゼのピークを、適切な分離カラム、有利にはゲル濾過クロマトグラフィー分離カラム、より有利にはsephadex G25カラムにおいて緩衝液の交換により、適切なpHを有する、有利にはpH7を有する適切な溶液、有利にはHEPES/NaOH、NaCl溶液、CaCl2溶液に移した。緩衝液を交換したリパーゼを適切な濾過装置を通して、有利には0.22μmの濾過装置を通して濾過する。この方法により得られたリパーゼ溶液はリパーゼ参照標準として使用される。このリパーゼ参照標準は、タンパク質純度、タンパク質含有量及び比活性を有することに特徴付けられる。この精製方法により得られたリパーゼ参照標準は高いもしくは極めて高い純度を示し、更に有利な実施態様では99.9%よりも高い純度(すなわち0.1%未満の不純物)を示した。
【0106】
本発明の他の実施態様は、組換えにより製造された精製微生物リパーゼ、及び場合により更なる通常の製剤学的助剤及び/又は付形剤を含有する顆粒を有する医薬組成物に関する。前記医薬組成物に関しては、精製リパーゼを有する顆粒を単独で使用するか、又は適切な通常の製剤学的助剤及び/又は付形剤、有利には通常の担体、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、又はジャガイモデンプン;付形剤、例えば、結晶セルロース又は微結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチン;錠剤分解物質、例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、又はナトリウムカルボキシメチルセルロースナトリウム;滑剤、例えば、カルナウバ蝋、白蝋、セラック、無水コロイドシリカ、1500〜20000のポリエチレングリコール(PEGs、マクロゴールという名称でも公知)、特にPEG4000、PEG6000、PEG8000、ポビドン、タルク、モノレイン、又はステアリン酸ナトリウムと組み合わせて使用できる。所望の場合には、更なる助剤及び/又は付形剤、例えば、希釈剤、補助剤、緩衝剤、湿潤剤、メチルパラヒドロキシベンゾエート(E218)のような防腐剤、二酸化チタン(E171)のような着色剤、及び/又はサッカリン、オレンジオイル、レモンオイル及び/又はバニリンのようなフレーバー剤と組み合わせて使用できる。本発明による更なる通常製剤学的助剤及び/又は付形剤は、(i)1つ以上の担体及び/又は付形剤;又は(ii)1つ以上の担体、付形剤、希釈剤及び/又は補助剤から選択される。
【0107】
一般に、当該の医療指示に応じて、本発明の医薬組成物を腸内投与(消化管を通す)及び経口投与を含めた当業者に公知の全ての投与方法用に設計してもよい。経口投与型が有利である。従って、医薬組成物は一般に固体型、例えば、カプセル、顆粒、ミクロペレット、ミクロタブレット、ペレット、丸剤、粉末、ミクロスフェア及び/又はタブレットである。カプセル、顆粒、ミクロタブレット、丸剤、粉末及び/又はタブレットが有利である。本発明の目的で、"ミクロ"という接頭辞は、経口投与型の直径又はその寸法の全て(長さ、高さ、幅)が5mm以下である場合の経口投与型を意味するために使用される。医師は最も適切な投与経路を選択し、かつ潜在的に危険であるか又は不利な投与経路を回避することを理解している。
【0108】
本発明の更に有利な実施態様によれば、本発明の医薬組成物を場合により、サッシェ、ブリスター又はボトルから成る群から選択される1つ以上のパッケージに導入してもよい。
【0109】
本発明の有利な実施態様では、経口投与型は、本発明の顆粒から成る医薬組成物を含有しているカプセルである。これらの顆粒は、次のもの:
(1)組換えにより製造された精製微生物リパーゼ10〜90質量%、
(2)スクロース1〜50質量%、
(3)ヒプロメロース0〜25質量%、及び
(4)微結晶セルロースから成るノンパレイルビーズ10〜90質量%、
から成る。特に、ミクロペレット又はミクロスフェアは、
(1)組換えにより製造された精製微生物リパーゼ20〜50質量%、
(2)スクロース5〜25質量%、
(3)ヒプロメロース0〜5質量%、及び
(4)微結晶セルロースから成るノンパレイルビーズ30〜60質量%、
から成る。
【0110】
医薬組成物中の、組換えにより製造された精製微生物リパーゼの量は、本発明に関して使用するために適切なリパーゼの群内で変化してもよい。一般に、結果として生じる本発明の医薬組成物又は医薬品中の、組換えにより製造された精製微生物リパーゼの量は、疾患又は障害、有利には消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病から成るグループから選択される疾患又は障害を予防又は治療するために治療学的に効率的でなくてはならない。期待される1日の臨床学的用量の例は、以下の通りである(全て、体重1kg当たりの、精製リパーゼタンパク質(mg)で示されている):0.01〜1000、0.05〜500、0.1〜250、0.5〜100又は1.0〜50mg/kg体重。
【0111】
更に本発明の他の実施態様は、医薬品として、特に疾患及び障害を予防又は治療するための医薬品として使用するための、有利には消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病を治療するための医薬品として使用するための、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを含有する顆粒を有する新規医薬組成物に関する。
【0112】
本発明の更なる実施態様は、治療学的に有効量のi)少なくとも90面積%(w/w)のタンパク質純度、及び少なくとも60%(w/w)のタンパク質含有量を有する組換えにより製造された精製微生物リパーゼ、又はii)本明細書内で記載したような医薬組成物を、これを必要とするホ乳類、特にヒトに投与することにより、疾患及び障害、有利には消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病を予防又は治療するための方法に関する。
【0113】
微生物に由来する酵素の使用は、それぞれの酵素の個々の投与を可能にする。それぞれの酵素に適切な装置を使用することにより、特定の患者、患者の母集団又は患者の部分母集団の必要性に投与量を合わせることができる。例えば、所定の患者の生理学的状態が大量のリパーゼ活性の投与を必要とする場合には、より多くのリパーゼを含有する顆粒を投薬できるのに対して、投与されるプロテアーゼ及び/又はアミラーゼを含有する顆粒の数(従ってプロテアーゼ及び/又はアミラーゼ活性)は同じままである。有利な実施態様では、適切な装置は、投与向けの装置である。更に有利な実施態様では、適切な装置は製剤学的用途の一般的な計量分配装置である。
【0114】
本発明によれば、顆粒、特にコア粒子とコーティング層の顆粒を有する本発明の医薬組成物の有利な実施態様も、医薬組成物に利用可能である。
【0115】
本発明の更なる実施態様は、精製リパーゼを含有する顆粒を有する新規医薬組成物を製造する方法に関し、該方法は下記の工程:
a)製剤学的に認容性のコア粒子を用意し、
b)少なくとも90面積%の純度と、少なくとも60%(w/w)のタンパク質含有量を有する組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを有するコーティング溶液を用意し、
c)工程a)のコア粒子を、工程b)のコーティング溶液で1回以上コーティングし、組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを含有する顆粒を得て、
d)場合により工程c)の顆粒を適切な医薬組成物に導入する
から成る。
【0116】
工程a)のプロセスでは、上記のように製剤学的に認容性のコア粒子が用意される。
【0117】
工程b)のコーティング溶液は、有利には組換えにより製造された精製微生物リパーゼの固体型を、この目的に適切な溶媒、有利には水、より有利には精製した(医薬グレードの)水に分散もしくは溶解することにより得られる。有利には、方法工程b)では、1種類だけの組換えにより製造された精製微生物リパーゼが使用される。上記のような1つ以上の酵素安定化剤及び/又は1つ以上の結合剤を、懸濁液又は溶液に加えてもよい。所望の場合には、付加的な製剤学的助剤及び/又は付形剤を添加してもよい。必要な場合には、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを有するコーティング溶液を低温で貯蔵し、酵素活性がマイナスに影響しないように、かつ微生物の成長を抑えてもよい。有利には、コーティング溶液は約0℃〜10℃、より有利には約2℃〜8℃、より有利には約5℃で貯蔵される。
【0118】
製造方法の有利な実施態様では、コーティング工程c)は、コーティング室、有利には流動床装置内で実施される。流動床塗布機が使用される場合には、これは例えばWurster装置であることができる。流動床塗布機は、二流体ノズルを備えているのが有利である。次に、必要な又は所望の量のコア粒子が計量され、かつ自体公知の方法で反応室に置かれ、かつコア粒子はコーティングに適切な温度まで予備加熱される。
【0119】
次に工程b)からの、組換えにより製造された微生物リパーゼをコア粒子上に噴霧することにより、工程c)でコア粒子がコーティングされる。それにより、組換えにより製造された微生物リパーゼを有する溶液の温度は、酵素活性がマイナスに影響しない温度又は温度範囲内に保持されるのが有利である。すなわち、この温度は一般に100℃未満、有利には90℃未満に保持されるのが有利である。
【0120】
コーティングされた顆粒の生成物温度は、組換えにより製造された微生物リパーゼの酵素活性がマイナスに影響しない温度を超えないようにコントロールするのが有利である。従って、コーティングされた顆粒の温度は、約30℃〜90℃の範囲内、有利には約45℃〜70℃の温度範囲、有利には約49℃を超えないようにコントロールされる。生成物温度は、自体公知の方法により、例えば、空気の温度を乾燥させることによりコントロールしてもよい。
【0121】
工程b)の組換えにより製造された微生物リパーゼを有する所望のコーティング溶液の全てが一旦コア粒子に噴霧されると、反応室の加熱エレメントが消され、かつプロセスが止まる。必要な場合には、生じた顆粒を引き続き通常の方法で乾燥させることができる。所望の場合には、コーティングプロセスを1回以上繰り返して、1つ以上の付加的なコーティング層をコア粒子の上に設けてもよい。付加的なコーティング層は、同種又は異種の、組換えにより製造された微生物リパーゼを有していてもよい。有利な実施態様では、付加的なコーティング層は、同種の組換えにより製造された微生物リパーゼを有する。所望の厚さのコーティング層を達成するために、コーティングプロセスは連続的に又は不連続的に行ってもよい。
【0122】
更なる実施態様では、本発明は組換えにより製造された微生物リパーゼを有するか、又はこれから成る医薬組成物に関し、前記医薬組成物は、本明細書で記載されたように新規医薬組成物を製造する方法により得ることができる。
【0123】
本明細書内で記載かつ請求される本発明は、本明細書中で開示された特定の実施態様に限定されるわけではない。それというのも、これらの実施態様は本発明の幾つかの態様を説明する目的でしかないからである。同等の実施態様も本発明の範囲内にあることとする。実際に、本明細書内で示され、かつ記載されたものの他に、本発明の様々な変法も前記の説明から当業者には明らかになるであろう。このような変法も追記する請求項の範囲内に相当することとする。矛盾する場合には、概念規定を含めた本開示も調整される。
【0124】
本発明に様々な参考文献を記載したが、その内容開示を全て参照して本明細書に取り入れることとする。
【0125】
実施例:
1.組換えにより製造された微生物リパーゼの回収と精製
a)ヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼの回収
SEQ ID No.1のリパーゼをコウジ菌内で発現させ、かつUS5869438の例22と23に記載されているように発酵液体培地から精製した。リパーゼは、約30kDaの主要なタンパク質バンドとして同定された。クーマシー染色したSDS-PAGEゲルの濃度計スキャンニングにより、このバンドはタンパク質スペクトル92〜97%から成っていることが分かった。この濃度計は、BIO-RAD社製のキャリブレートしたGS-800濃度計である。このタンパク質バンドの特徴付けは、例11に記載されているように実施した。
【0126】
得られた液体リパーゼ濃縮物を噴霧乾燥し、固体リパーゼ濃縮物を得た。
【0127】
回収した固体リパーゼ濃縮物の比活性は、例8に記載されているように決定できる。これは少なくとも1MioU/gである。
【0128】
回収した固体リパーゼ濃縮物のタンパク質含有量は、例6に記載されているように決定した。タンパク質含有量は少なくとも50%(w/w)である。
【0129】
回収した固体リパーゼ濃縮物のタンパク質純度は、例10に記載されているように決定した。タンパク質純度は約94面積%である。
【0130】
b)ヒュミコーラ・ラヌギノーサ由来のリパーゼの精製
上記工程a)で得られたリパーゼを乾燥させる前にそのplに近いpH及び低い導電率で結晶化した。結晶を遠心分離により繰り返し単離し、緩衝溶液で洗浄し、かつ再び遠心分離(全部で2〜3回)により単離した。NaOHを添加し、リパーゼ結晶を溶解させることでpHは増大し、所望の場合には得られた精製液体リパーゼ濃縮物を濾過した。
【0131】
得られた精製液体リパーゼ濃縮物を噴霧乾燥し、精製した固体リパーゼ濃縮物を得た。
【0132】
回収した精製固体リパーゼ濃縮物のタンパク質含有量は例6に記載されているように決定した。タンパク質含有量は約80%(w/w)であった。
【0133】
回収した精製固体リパーゼ濃縮物のタンパク質純度は例10に記載されているように決定した。タンパク質純度は約99面積%であった。
【0134】
2.組換えにより製造された精製微生物リパーゼからの、本発明による顆粒の調製
スクロース900gとヒプロメロース150gを計量し、かつ精製水17kg中に撹拌しながら加えた。例1から得られたような組換えにより製造された精製微生物リパーゼ(=精製固体リパーゼ濃縮物)の3kg−フラクションを0.71mm篩いを用いて篩いにかけ、かつ調製したスクロース/ヒプロメロース溶液中に撹拌しながら加えた。二流体ノズルとWurster装置を備えた流動床塗布機を約50℃まで予備加熱した。平均直径500μmの微結晶セルロースペレット3kgの量を計量し、かつ流動床塗布機中に置き、かつ約50℃の生成物温度まで予備加熱した。このペレットは、ペレット上に精製リパーゼの溶液を自体公知の方法で噴霧することによりコーティングした。噴霧の際に、組換えにより製造された精製微生物リパーゼの溶液を5±3℃で保持した。生成物温度が55℃を越えないようにコントロールし、有利には乾燥空気温度をコントロールすることにより約49℃にした。一旦、組換えにより製造された精製微生物リパーゼの全ての溶液がペレット上に噴霧された場合に、流動床乾燥器のヒーターを止め、かつ更に5分後にプロセスを止めた。生成物を詰め、かつ試験した。
【0135】
3.組換えにより製造された精製微生物リパーゼ(50mg)でコーティングしたペレットのカプセル封入
カプセルに充填すべき、組換えにより製造された精製微生物リパーゼでコーティングされた必要量のペレット(顆粒の形で生じる)を以下の式に従って計算した:
充填量=50mg×1000/顆粒のリパーゼタンパク質含有量(mg/g)
計算した量のペレットをサイズ2の硬質ゼラチンカプセルに封入した。生成物をパックし、かつ試験した。例12又は13によりコーティングした顆粒でカプセルを充填することもできる。
【0136】
4.本発明によらない押出法による、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを含有するペレットの製造
例1からの組換えにより製造された精製微生物リパーゼ(=精製された固体リパーゼ濃縮物)750gと、微結晶セルロース750gを混合器中で乾燥させて予備混合した。イソプロパノール1171gを加えた後に、質量の70%を混合し、かつ通常の押出機を用いて、直径0.8mmのホールを有する押出ダイを通して押し出し、円柱状のペレットにした。プレスの際に床温度が50℃を越えないようにした。必要量のイソプロピルアルコール(70%)を加えることにより、通常の整粒機(spheronizer)を用いて製造された押出物に丸みを付けた。真空乾燥器中で、ペレットを約40℃の供給温度で乾燥させた(生成物温度は45℃を超えない)。乾燥させたペレットの分離は、0.7と1.4mmスクリーンを有する篩い分け機を用いて機械的に行った。0.7mm以上と1.4mm以下の篩いフラクションを更に加工するために集めた。過大と過小のペレットを除去し、かつ更に使用するために保存した。
【0137】
5.本発明による顆粒と本発明によらないペレットの比較
i)組換えにより製造された精製微生物リパーゼを含有する、押出法によるペレット(本発明によらない)及びii)コア粒子をコーティングすることによる、組換えにより製造された精製微生物リパーゼを含有する顆粒(本発明による)を製造した場合の比較実験を行い、得られたリパーゼ活性とタンパク質純度を決定した。
【0138】
押出法を用いて組換えにより製造された精製微生物リパーゼを含有するペレットを製造した(例4に記載したように)。コア粒子をコーティングすることにより組換えにより製造された精製微生物リパーゼを含有する顆粒を製造した(例2に記載されているように)。組換えにより製造された精製微生物リパーゼの活性は、例7に記載されているようにそれぞれのペレットと顆粒で決定した。組換えにより製造された精製微生物リパーゼのタンパク質純度を例10に記載されているように決定した。
【0139】
表1:本発明によらないペレットと、本発明による顆粒におけるリパーゼ活性とタンパク質純度の比較
【表1】

【0140】
表1から分かるように、本発明による方法により製造された組換えにより製造された精製微生物リパーゼの顆粒は、本発明によらない押出法により製造した組換えにより製造された精製微生物リパーゼのペレットと比べて高い活性と高い純度を示した。
【0141】
6.RP-HPLCを用いる組換えにより製造された精製微生物リパーゼのタンパク質含有量の決定
例1からの組換えにより製造された精製微生物リパーゼのタンパク質含有量を、214nmの検出波長でアセトニトリル/水/TFAを用いてグラジエントRP-HLPCにより決定した。分離は、0〜90%アセトニトリル/TFA0.05%のグラジエントを50分以内に1.0ml/分の流量で通すことにより、YMCタンパク質RP、S-5μmカラム、125×3mmI.D.(YMC Europe GmbH、シェルムベック、ドイツ)において行った。試験すべきサンプルを塩化ナトリウム2%w/wの水溶液に溶かした。カラムは40℃で運転した。リパーゼタンパク質含有量のアッセイは、外標準法により行った。タンパク質含有量が独立にアミノ酸分析により決定された場合に、優れて特徴付けられたリパーゼ参照標準を参照として使用した。(誘導化の後に、加水分解後にアミノ酸の含有量をHPLCによりアッセイした)。全てのピークの定量化は、面積%法により行い、かつリパーゼピークの面積%を全体の面積のパーセンテージとして表現した。
【0142】
7.リパーゼ活性の決定
リパーゼ活性は、リパーゼによるオリーブ油の加水分解及び放出された脂肪酸の滴定に基づく酵素アッセイにより以下のように決定した。
【0143】
酵素アッセイ用の基質として、ブレンダー中で、オリーブ油(175g)をアラビアガムの溶液630ml(水4000ml中、アラビアガム474.6g、塩化カルシウム64g)と15分間混合してエマルションを得た。室温まで冷却した後に、4M NaOHを用いてpHを6.8〜7.0に調節した。測定のために、エマルション19mlと胆汁酸塩溶液10ml(胆汁酸塩492mgを水に溶かし、かつ500mlまで満たす)を反応容器中で混合し、かつ36.5〜37.5℃まで加熱した。酵素溶液1.0mlの添加により反応を開始した。0.1M水酸化ナトリウムの添加により、pH7.0にて放出された酸を自動的に滴定した。1分と5分の間の滴定曲線の傾きから活性を計算した。検量線を作成するために、3つの異なるレベルの活性で標準を測定した。1μ当量の酸を37℃にてpH7.0で1分間以内に加水分解する酵素活性として1単位を定義する場合には、参照標準は定義づけられた絶対活量を有する。
【0144】
8.組換えにより製造された精製微生物リパーゼの比活性の決定
比活性は、HPLC(例6参照)により決定したリパーゼ中のタンパク質含有量(U/g)に対する滴定により決定した脂肪分解活性(例7参照)の比から計算した。
【0145】
9.組成物の全質量に対する酵素活性の決定
本発明の医薬組成物を含有する顆粒(例2に記載した通りに製造)の全質量に対する、又は通常の方法により決定したような押出しペレット(例4に記載した通りに製造)の全質量に対する滴定により決定した脂肪分解活性(例7参照)の比から酵素活性を計算した。
【0146】
10.タンパク質純度の決定
リパーゼ調製物又は組換えにより製造された精製微生物リパーゼのタンパク質純度をクロマトグラフ法により決定した。このために、タンパク質含有量(例6参照)をアッセイしたのと同じHPLC法を用いてペプチド不純物のパーセンテージをアッセイした。ペプチド不純物を主要化合物のリパーゼから分離し、かつピーク面積%を計算した。
【0147】
11.組換えにより製造された精製微生物リパーゼの特徴付け
以下に挙げた存在度により、SEQ ID No:1の僅かに異なるN−末端の形をこの主要タンパク質バンドのN−末端シーケンシング(例1参照)により同定した。エドマン分解の第一のサイクルで、種々の形の初期収率を比較することにより、様々な形の量をN−末端シーケンシングにより決定した。
#1SPIRREVSQDLF…(SEQ ID No:1のアミノ酸−5−269)45〜65%
#2EVSQDLF… (SEQ ID No:1のアミノ酸1−269)35〜47%
#3VSQDLF… (SEQ ID No:1のアミノ酸2−269)<1%〜16%
#4PIRREVSQDLF… (SEQ ID No:1のアミノ酸−4−269)<1%
#5IRREVSQDDLF… (SEQ ID No:1のアミノ酸−3−269)<1%
【0148】
2つの主要な#1型と#2型は、全てのバッチで見つかり、#3型は、幾つかのバッチで見つかったが全てではなく、#4型と#5型は極めて少量で幾つかのバッチで見つかった(検出限界に近いか又は下回る)。
【0149】
これらの変種は、内因性のアスペルギルス属宿主のプロテアーゼの開裂の結果形成されえたと考えられている。例えば、#2は、KexBプロテアーゼによる#1の開裂により形成され、#3はKexBで、かつその後にアミノペプチダーゼによる開裂により形成され、かつ#4と#5はアミノペプチダーゼによる開裂により形成され得る。
【0150】
N−末端シーケンシングをベースとした当量化は、エレクトロスプレーイオン化質量分析法("ESI-MS")により確証され、これは質量強度の一致を示した。
【0151】
#1と#2及び#3の間の違いは、それぞれ5.45、5.11、5.23の理論的pl値の違いを生じる。従って、これらの3つの形はIEF(等電点電気泳動)により、すなわちpH3〜7のIEFゲルにおいて分離した。バンドは、IEFゲルのN−末端シーケンシングにより確証された。従ってIEFは、SEQ ID NO:1の#1型、#2型及び#3型を検出かつ定量化するための容易でかつ迅速な方法である。
【0152】
SEQ ID NO:1の#1型と#2型は、LU/g酵素タンパク質において同じ比活性を有することが見出された。特異的なリパーゼ活性は、例7と例8に記載されているように決定した。
【0153】
アミノ酸分析("AAA")/(mg/ml):リパーゼサンプルのペプチド結合に酸加水分解を行い、続いて製造者の指示に従い、Biochrom 20プラスアミノ酸分析機(Bie & Berntsen A/S, Sandbaekvej 5-7、DK-2610 Roedovre、デンマークから市販されている)において放出されたアミノ酸の分離と定量化を行った。個々のアミノ酸の量をニンヒドリンとの反応により決定した。
【0154】
種々のリパーゼバッチのESI-MSデータは複雑なグリコシル化パターンを明らかに示し、その際、これは1つのヘキソースに相当する分子量によって分けられた多数の質量ピークを有する高マンノースグリコシル化に相応する。
【0155】
SEQ ID No:1には、推定のN−グリコシル化部位(NIT)(NはSEQ ID No:1の33個の残基数である)が含まれる。真菌類宿主の発現では、翻訳後修飾の結果、N−アセチルグルコサミン残基がNIT−配列中のN−残基に結合し、次に多くのマンノースモノマー(5〜21個)がN−アセチルグルコサミン残基に結合する。この事が個々のグリコシル化分子の分子量に多くのバリエーションを導く。ESI-MSにより、分子量は約30〜34kDaの範囲内に及ぶ。グリコシル化タンパク質全長の一般的なイソ型(N-アセチルヘキソース2個+ヘキソース8個)の分子量は、ESI-MSにより31721Daと決定された。グリコシル化されていない#1#2の理論的分子量は、それぞれ30.2kDaと29.6kDaであった。これは、グリコシル化されない宿主内で発現した場合に、SDS-PAGEゲル上の主要バンドがより狭くなり、かつ約30kDaの分子量に相応することを意味する。脱グリコシル化タンパク質全長の分子量はESI-MSにより30015Daと決定された。
【0156】
SEQ ID No:1の変異体N33Q(保存的置換)は、真菌宿主において発現したとしてもグリコシル化されないであろう。SEQ ID No:1のグリコシル化されていないN33Q変異体は、in vivoリパーゼスクリーニング試験においてSEQ ID No.1と類似した効率を示した。
【0157】
12.組換えにより製造された精製微生物リパーゼを有する顆粒の電気コーティング
アセトン14030gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55)1623.2g、クエン酸トリエチル90.2g、セチルアルコール34.3g及びジメチコーン1000 38.9gを室温で撹拌しながら加えることによりコーティング溶液(A)を調製した。
【0158】
顆粒5025g(例2に記載されたような方法と同様に調製)を市販の流動床被覆機に供給し、かつコーティングの所望のフィルム厚が達成されるまで、上記のように調製したコーティング溶液を噴霧速度50〜100g/分及び圧力1.5〜2.5barで噴霧コーティングした。
【0159】
リパーゼペレットの生成物温度は適温のセンサーでモニターし、かつコーティングの際に37℃〜49℃の間の範囲内に保持した。結果として生じたリパーゼペレットを35℃〜50℃の間の範囲内で市販の真空乾燥器(Voetsch型)中、12時間乾燥させた。
【0160】
13.組換えにより製造された精製微生物リパーゼを有する顆粒の非機能的コーティング
顆粒500g(例2に記載されたような方法と同様に調製)を市販の流動床被覆機に供給し、かつコーティング溶液(A)の噴霧速度で噴霧コーティングした。前記コーティング溶液は、精製水363.2g中に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース29.4g(HPMC E3 Premium LV)を室温で撹拌しながら加えることにより調製した。
【0161】
3〜6g/分及び0.8〜1.2barの空気圧で、コーティングの所望のフィルム厚が達成されるまで、上記のように調製したコーティング溶液を噴霧コーティングした。
【0162】
リパーゼペレットの生成物温度は、適温のセンサーでモニターし、かつコーティングの際に40℃〜50℃の間の範囲内に保持した。
【0163】
14.リパーゼ参照標準(LRS)
(i)リパーゼ参照標準(LRS)の製造
例1で記載されたように得られた固形リパーゼ濃縮物(20g)を出発材料として使用した。出発材料を脱イオン水(pHは20%酢酸でpH6.0に調節した)180ml中に懸濁させた。10mMコハク酸/NaOH溶液200mlと2.0M NaCl溶液を加え、かつpHをpH6.0に調節し、殆ど透明な溶液が生じた。次に0.22μm濾過装置を通して混合物を濾過した。濾液20mlをアセチル化したデシルアミンアガロース(decyl-agarose)カラム20mlにかけ(疎水性相互作用クロマトグラフィー、HICによる分離)、10mMコハク酸/NaOH、2.0M NaCl溶液(pH6.0)の溶液中で平衡化した。カラムを平衡化緩衝液で完全に洗った後に、30%イソプロパノール含有のH3BO3/NaOH溶液(pH9.0)でカラムを段階的に溶出した。デシルアガロース工程を19回(全部で20回)繰り返した。全ての溶出液を合わせ(250ml)、かつ脱イオン水15リットルで希釈した。希釈したリパーゼを400mlQ−セファロースFFカラム(イオン交換クロマトグラフィーによる分離)にかけ、50mM H3BO3/NaOH溶液(pH9.0)中で平衡化した。カラムを完全に洗浄し、かつNaCl線状グラジエント(0→0.5M)で、3本のカラム体積にわたりカラムを溶出した。溶出したリパーゼピーク(200ml)は、1.4リットルsephadexG25カラム(ゲル濾過クロマトグラフィー、SECによる分離)において緩衝液を交換することにより20mM HEPES/NaOH、100mM NaCl溶液、1mM CaCl2溶液(pH7.0)に移動した。緩衝液を交換したリパーゼ(300ml)を0.22μm濾過装置(=最終生成物、290ml)において濾過し、かつ分割量を凍結させた(5×50ml、1×30ml、1×10ml)。
【0164】
この方法により得られたリパーゼ溶液をリパーゼ参照標準(LRS)として使用した。
(ii)特徴付け
a)同定
リパーゼ参照標準の同定は、無傷でかつ脱グリコシル化されたタンパク質のESI-MSならびにPMF (ESI-MS/MSを含む)により確証した。これは、N−末端プロセシングとグリコシル化に関して一般的なリパーゼの変異体を網羅するリシルエンドプロテアーゼ(LysC)による開裂を用いる。更に、ジスルフィド架橋の結合度をLC/MSによる断片の同定と一緒に、還元かつ還元的アルキル化をせずにタンパク質の消化により確証した。
b)タンパク質純度
リパーゼ参照標準のタンパク質純度は、例6に記載したように決定した。リパーゼ参照標準は0.1%未満の量の不純物だけを示した。
c)含有量
リパーゼ参照標準の含有量は、十分な真空下に110℃で16時間、6N HCl溶液で加水分解した後に、アミノ酸分析により決定した。ポストカラム誘導体化(ニンヒドリン)を用いてイオン交換クロマトグラフィーにより分離を実施した。
d)比活性
リパーゼ参照標準の比活性を例8に記載したように決定した。
【0165】
15.リパーゼ参照標準の比活性との比較による、組換えにより製造され精製微生物リパーゼの比活性
例1に記載したように得られた固形リパーゼ濃縮物(20g)を出発材料として使用した。
a)組換えにより製造された精製微生物リパーゼ
組換えにより製造された精製微生物リパーゼは、例1に記載したように製造した。組換えにより製造され精製微生物リパーゼのリパーゼ活性と比活性の決定は例7と8に記載したように行った。
b)リパーゼ参照標準の製造と特徴付け
リパーゼ参照標準を例14に記載したように製造し、かつ特徴付けた。
c)比較
精製リパーゼバッチの結果は表2に示されている。リパーゼ参照標準(LRS)の比活性は1821000単位/gであった。
【0166】
表2:組み換えにより製造された種々の精製微生物リパーゼバッチの結果
【表2】

(1):%LRS=100*組み換えにより製造された精製微生物リパーゼの比活性/LRSの比活性
【0167】
組換えにより製造され精製微生物リパーゼバッチの比活性は、リパーゼ参照標準の比活性の少なくとも80%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒を有する医薬組成物であって、前記顆粒は:
a)製剤学的に認容性のコア粒子と、
b)コア粒子上にコーティングされた少なくとも1つのコーティング層と、
を含有し、前記コーティング層が、組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを有する前記医薬組成物において、前記の組換えにより製造された精製微生物リパーゼが少なくとも90面積%(w/w)のタンパク質純度と、少なくとも60%(w/w)のタンパク質含有量を有する、顆粒を有する医薬組成物。
【請求項2】
精製微生物リパーゼの比活性が、その最大の比活性の少なくとも80%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
コーティング層又は層b)が、更に1つ以上の酵素安定剤を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
酵素安定剤が、非還元炭水化物である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
非還元炭水化物が、スクロース、トレハロース及びマルチトールから成る群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
コーティング層又は層b)が、更に1つ以上の結合剤を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
結合剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストリン及びポリビニルアルコールから成る群から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの精製微生物リパーゼが、ヒュミコーラ・ラヌギノーサ(Humicula lanuginosa)由来のリパーゼである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
更に、慣用の製剤学的助剤及び/又は付形剤を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
経口投与に適切な投与形である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
カプセル剤、顆粒剤、ミクロタブレット剤、丸剤、粉剤、サッシェ剤及び/又はタブレット剤の形である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病を予防又は治療するための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病を予防又は治療するための医薬品を製造するための、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病を予防又は治療するための方法であって、これを必要とするホ乳類に、少なくとも90面積%(w/w)のタンパク質純度、及び少なくとも60%(w/w)のタンパク質含有量を有する治療学的に有効量の組換えにより製造された精製微生物リパーゼを投与することにより行う前記方法。
【請求項15】
消化器疾患、膵外分泌機能不全症、膵臓炎、嚢胞性線維症、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病を予防又は治療するための方法であって、これを必要とするホ乳類に、請求項1に記載の医薬組成物の治療学的に有効量を投与することにより行う前記方法。
【請求項16】
次の工程:
a)製剤学的に認容性のコア粒子を用意する工程、
b)少なくとも90面積%の純度と、少なくとも60%(w/w)のタンパク質含有量を有する組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを有するコーティング溶液を用意する工程、
c)工程a)の1つ以上のコア粒子を、工程b)のコーティング溶液で1回以上コーティングして、組換えにより製造された少なくとも1つの精製微生物リパーゼを含有する顆粒を得る工程、及び
d)場合により工程c)の顆粒を適切な医薬組成物に導入する工程
を有する、医薬組成物を製造する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法により得られる医薬組成物。

【公表番号】特表2011−508755(P2011−508755A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541061(P2010−541061)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050010
【国際公開番号】WO2009/083607
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(510185745)アボット プロダクツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Products GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20, D−30173 Hannover, Germany
【Fターム(参考)】