説明

精製方法、高純度材料の作製方法、蒸着用基板の作製方法、および発光装置の作製方法

【課題】化合物の純度を向上させる新たな精製方法を提供することを目的の一とする。
【解決手段】耐熱温度の高い化合物と、化合物の耐熱温度より低い昇華温度の不純物と、を含む材料を、減圧された不活性ガス雰囲気において耐熱温度以下で加熱して、昇華温度の低い不純物を雰囲気中に拡散させ、材料における不純物の含有率と比較して、不純物の含有率を低減させる。ここで、耐熱温度の高い化合物は、ポリマー、オリゴマー、またはデンドリマーのいずれかであることが望ましい。減圧された不活性ガス雰囲気は、100Pa以下に減圧された不活性ガス雰囲気であることが望ましい。不活性ガス雰囲気は、希ガス雰囲気、窒素雰囲気、またはこれらの混合雰囲気であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の一態様は、耐熱温度の高い化合物を含む材料の精製方法、当該精製方法を利用した高純度材料の作製方法に関する。または、上記高純度材料を用いた発光装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の物質を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光が得られる。
【0003】
上述の発光素子は自発光型であるため、これを用いた表示装置は、視認性に優れ、バックライトが不要である等の利点を有する。さらに、薄型軽量に作製でき、応答速度が高いなどの利点も有する。
【0004】
また、薄膜を積層して発光素子を形成することが可能であるため、大面積化が容易である。つまり、面光源の製造も容易である。上述の大面積という特徴は、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難いものであり、利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光性の物質が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大別される。発光性の物質に有機化合物を用いる場合の発光メカニズムは次の通りである。
【0006】
まず、発光素子に電圧を印加する。これにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、発光性の有機化合物が励起状態を形成する。そして、励起状態が基底状態に戻る際のキャリア(電子および正孔)の再結合により発光する。
【0007】
上述のメカニズムから、このような発光素子は電流励起型の発光素子と呼ばれる。なお、有機化合物が形成する励起状態には、一重項励起状態と三重項励起状態が存在し、一重項励起状態(S)からの発光は蛍光、三重項励起状態(T)からの発光は燐光と呼ばれている。また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、S:T=1:3であると言われている。
【0008】
上記有機化合物を含む層を形成する方法としては、例えば、蒸着法がある。蒸着法は、蒸着材料を加熱して気体状とし、当該気体状の蒸着材料を被形成表面に付着、堆積させることで薄膜を形成する方法である。
【0009】
蒸着法では、蒸着材料を気体状とするため、蒸着材料の利用効率が低いという問題がある。例えば、発光素子を構成する有機化合物を含む層を蒸着法で形成する場合には、蒸着材料の利用効率は数パーセント以下である。
【0010】
この問題に対して、有機化合物を含む層を形成するための新たな技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される技術は、蒸着材料とバインダ材料の混合物でなる材料層を一の基板上に設け、これを加熱して、別の基板上に有機化合物を含む層を形成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−291352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の技術(以下、熱転写技術ともいう)では、蒸着材料とバインダ材料の混合物を用いることになるため、蒸着材料に対してのみならず、バインダ材料に対しても高い純度が要求されることになる。バインダ材料の不純物の濃度が高い場合には、形成される有機化合物を含む層にも不純物が混入し、その特性が悪化するおそれがあるためである。
【0013】
熱転写技術に用いるバインダ材料としては、耐熱温度の高い高分子化合物などが好んで用いられる。熱によって容易に変質する材料では、加熱時に蒸着材料のみを気体状にすることが困難となり、バインダ材料として求められる機能を発揮することができないためである。なお、このような高分子化合物の精製方法としては、再沈殿法と呼ばれる方法が一般的である。
【0014】
再沈殿法は、精製対象の材料を少量の良溶媒に溶解させて溶液とし、大量の貧溶媒にこの溶液を少しずつ加えることで精製された材料を沈殿として得る方法、または、この溶液に大量の貧溶媒を加えることで精製された材料を沈殿として得る方法、である。再沈殿法では、不純物が、上記良溶媒に対して不溶(つまり、不純物に関しては貧溶媒)、または、上記貧溶媒に対して可溶(つまり、不純物に関しては良溶媒)の場合には、当該不純物を除去することが可能である。一方で、上記良溶媒に対して可溶(つまり、不純物に関しても良溶媒)であり、上記貧溶媒に対して不溶(つまり、不純物に関しても貧溶媒)である場合には、当該不純物を除去することができない。
【0015】
このため、再沈殿法を用いて精製された材料に残存する不純物の昇華温度が、蒸着材料の昇華温度より低い場合には、形成される有機化合物を含む層に不純物が混入することになってしまう。
【0016】
上述の問題に鑑み、開示する発明の一態様では、化合物の純度を向上させる新たな精製方法を提供することを目的の一とする。または、高純度材料の新たな製造方法を提供することを目的の一とする。または、高純度材料を用いた発光装置の新たな作製方法を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
開示する発明では、耐熱温度の高い化合物と、昇華温度が低い不純物とを含む材料を加熱して、材料中の不純物の含有率を低減させる。ここで、上記化合物の耐熱温度は、不純物の昇華温度より高い温度(不純物の昇華温度は、化合物の耐熱温度より低い温度)であることが望ましい。なお、本明細書等において、耐熱温度は、熱による化学変化が生じる温度とみるのが好適であるが、昇華が生じる材料の場合には、その昇華温度としても良い。また、「耐熱温度が高い」とは、上述の通り、不純物の昇華温度との関係のみを示す相対的なものであり、何らかの絶対的な値を意味するものではない。また、一般に、昇華温度は固体から気体への状態変化が生じる温度をいうが、本明細書等において不純物が液体である場合には、液体から気体への状態変化が生じる温度を含む意味で用いる。つまり、本明細書等において、昇華温度には、液体の蒸発温度(すなわち沸点)が含まれる場合がある。
【0018】
課題を解決する手段の例として、以下のものを挙げることができる。
【0019】
開示する発明の一態様は、耐熱温度の高い化合物と、耐熱温度の高い化合物の耐熱温度より低い昇華温度の不純物と、を含む材料を、減圧された不活性ガス雰囲気において耐熱温度以下で加熱して、昇華温度の低い不純物を雰囲気中に拡散させ、材料における不純物の含有率と比較して、不純物の含有率を低減させる精製方法である。なお、熱転写技術に用いる材料を精製する目的で上記精製方法を用いるのであれば、熱転写技術によって形成される層(蒸着層とも呼ぶ)の原料となる蒸着材料の昇華温度と比較して、低い昇華温度の不純物を除去できればよいから、上記の加熱温度は、蒸着材料の昇華温度(±20℃の範囲を含む)としても構わない。
【0020】
上記において、耐熱温度の高い化合物は、ポリマー、オリゴマー、またはデンドリマーのいずれかであることが望ましい。また、減圧された不活性ガス雰囲気は、100Pa以下に減圧された不活性ガス雰囲気であることが望ましい。また、不活性ガス雰囲気は、希ガス雰囲気、窒素雰囲気、またはこれらの混合雰囲気であることが望ましい。
【0021】
なお、再沈殿による精製の前後に、上記精製方法を用いると、さらに不純物の含有率を低減させることができるため好適である。ここで、再沈殿とは、精製対象の材料を少量の良溶媒に溶解させて溶液とし、大量の貧溶媒にこの溶液を少しずつ加えることで精製された材料を沈殿として得る方法をいう。または、この溶液に大量の貧溶媒を加えることで精製された材料を沈殿として得る方法をいう。
【0022】
開示する発明の別の一態様は、上記精製方法を用いて不純物の含有率を5重量%以下、望ましくは3重量%以下とする、高純度材料の作製方法である。
【0023】
また、開示する発明の別の一態様は、上記方法で作製された高純度材料に蒸着材料を分散させて混合材料を作製し、所定の波長の光を透過する第1の基板の一表面上に、混合材料でなる材料層を形成する、蒸着用基板の作製方法である。ここで、第1の基板と材料層との間には、反射層、断熱層、および光吸収層を形成しても良い。なお、上記「所定の波長」とは、蒸着の際に、上記蒸着用基板に照射することになる光の波長を言うものとする。
【0024】
また、開示する発明の別の一態様は、上記方法で作製された蒸着用基板における第1の基板の一表面側に、第2の基板を配置し、一表面とは異なる表面から第1の基板に光を入射させ、第1の基板を透過した光によって材料層を加熱し、第2の基板上に蒸着材料を付着、堆積させて、蒸着層を形成する発光装置の作製方法である。
【0025】
なお、本明細書等において「上」の文言は直上であることを限定するものではない。例えば、「基板上に有機化合物層を形成する」とは、基板上と有機化合物層との間に他の構成要素を形成する場合を含む。また、「上」「下」の文言は説明の便宜のために用いる表現に過ぎず、特に言及する場合を除き、上下の関係を入れ替えたものも含む。
【発明の効果】
【0026】
材料中の化合物の耐熱温度と、不純物の昇華温度との差を利用して、加熱により雰囲気中に不純物を拡散させることで、材料の純度を容易に高めることができる。
【0027】
すなわち、開示する発明により、耐熱性の高い化合物の純度を向上させるための新たな精製方法が提供される。
【0028】
また、上記精製方法を用いた、高純度材料の新たな製造方法が提供される。
【0029】
また、上記高純度材料を用いた、発光装置の新たな作製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】精製方法および高純度材料の製造方法を示す図
【図2】精製および高純度材料の製造に用いられる装置の一例を示す図
【図3】精製方法および高純度材料の製造方法を示す図
【図4】発光装置の作製方法について示す図
【図5】蒸着用基板の作製方法について示す図
【図6】発光装置の構成について示す図
【図7】発光装置の構成について示す図
【図8】発光装置を用いた電子機器の例を説明する図
【図9】発光装置を用いた電子機器の例を説明する図
【図10】発光装置を用いた電子機器の例を説明する図
【図11】発光装置を用いた照明装置の例を説明する図
【図12】発光装置を用いた照明装置の例を説明する図
【図13】発光装置を用いた照明装置の例を説明する図
【図14】TG−DTAの測定結果を示す図
【図15】ToF−SIMSの測定結果を示す図
【図16】発光装置のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図
【図17】発光素子の輝度−電流効率特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の実施の形態について図面を用いて以下に説明する。ただし、発明は、その技術的範囲を逸脱することなく、形態および詳細をさまざまに変更し得る。したがって、開示される発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0032】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明に係る精製方法および高純度材料の製造方法の一例について、図1および図2を用いて説明する。
【0033】
はじめに、精製の対象たる化合物100を含む材料を用意する(図1(A)参照)。当該材料には、化合物100の他に、不純物102が含まれている。化合物100の耐熱温度は、不純物102の昇華温度より高い温度(不純物の昇華温度は、化合物の耐熱温度より低い温度)であることが望ましい。このような化合物としては、ポリマー、オリゴマー、またはデンドリマーなどを挙げることができる。なお、本明細書等において、耐熱温度は、熱による化学変化が生じる温度とみるのが好適であるが、昇華が生じる材料の場合には、その昇華温度としても良い。
【0034】
次に、上記材料を、化合物100の耐熱温度以下で加熱して不純物102を昇華させ、材料中の不純物102を除去する、または、材料中の不純物102の含有率を低減する(図1(A)参照)。なお、熱転写技術に用いる材料を精製する目的で当該精製方法を用いるのであれば、熱転写技術によって形成される層の原料となる蒸着材料の昇華温度と比較して、低い昇華温度の不純物を除去できればよいから、上記の加熱温度は、蒸着材料の昇華温度(±20℃の範囲を含む)としても構わない。
【0035】
熱処理の雰囲気としては、減圧された不活性ガス雰囲気を採用することが望ましい。減圧雰囲気とすることで、不純物102の昇華温度を低下させることができ、不純物102の除去が容易になるためである。また、不活性ガス雰囲気とすることで、化合物に悪影響を与えることなく、不純物102を除去、低減することができるためである。なお、雰囲気の圧力などに応じて、材料の昇華温度は変化するから、特に言及しない場合には、「昇華温度」は、処理雰囲気における昇華温度をいうものとする。
【0036】
より具体的には、減圧された雰囲気として、100Pa以下に減圧された雰囲気を適用することが望ましい。また、不活性ガス雰囲気は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス雰囲気、窒素雰囲気、またはこれらの混合雰囲気とすることが望ましい。例えば、10Paのアルゴン雰囲気を適用することができる。
【0037】
熱処理の時間について、特に制限はないが、不純物102を十分に除去できる程度の時間とするのが好適である。例えば、1分以上10時間以下(望ましくは、10分以上1時間以下)とすることができる。
【0038】
上記の熱処理は、例えば、図2に示すような装置を用いて行うことができる。図2に示す装置は、処理室110および加熱装置112を有する。また、処理室110には、材料を乗せたボート114が設置されている。ボート114は、熱処理に耐え、化合物100を変質させないようなものであればどのような材質のものであっても良い。例えば、石英ボートを用いることができる。
【0039】
処理室110には、不活性ガスが供給されている。また、処理室110は、真空ポンプなどによって排気が行われ、所定の圧力にまで減圧されている。加熱装置112としては、いわゆるヒーターを用いることができる。もちろん、開示する発明の一態様に係る加熱装置112をヒーターに限る必要はない。例えば、不活性ガスを所定の温度にまで加熱して供給することで、熱処理を行うことができる。また、赤外線〜紫外線の波長の光を照射することで熱処理を行っても良い。
【0040】
なお、化合物が吸収する光の波長と、不純物が吸収する光の波長に相違がある場合、これを利用して、熱処理を行うこともできる。例えば、主に不純物が吸収する波長の光を照射して、不純物を選択的に加熱し、不純物を昇華、除去することが可能である。このような場合、化合物自体には大きな熱が加えられないため、化合物の変質を防ぎ、良好な特性の材料を得ることが容易となる。
【0041】
なお、ここでは、処理室および加熱装置112を有する比較的簡単な構成の装置について説明したが、開示する発明の一態様に用いることができる装置はこれに限られない。
【0042】
以上の方法によって、材料中における不純物の含有率を5重量%以下(望ましくは3重量%以下)にまで低減することができる(図1(A)参照)。また、当該方法を用いて、高純度材料を製造することが可能である。
【0043】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0044】
(実施の形態2)
本実施の形態では、開示する発明に係る精製方法および高純度材料の製造方法の別の一例について、図3を用いて説明する。なお、本実施の形態において開示する発明は、先の実施の形態において示した方法と、再沈殿による精製とを組み合わせて、より高純度な材料を得ようとするものである。ここで、再沈殿とは、精製対象の材料を少量の良溶媒に溶解させて溶液とし、これに大量の貧溶媒を加えることで、精製された材料を沈殿として得る方法をいう。または、大量の貧溶媒に溶液を少しずつ加えることで精製された材料を沈殿として得る方法をいう。
【0045】
はじめに、精製の対象たる化合物100を含む材料を用意する(図3(A)参照)。当該材料には、化合物100の他に、不純物102および不純物104が含まれている。化合物100の耐熱温度は、不純物102の昇華温度より高い温度(不純物の昇華温度は、化合物の耐熱温度より低い温度)であることが望ましい。詳細については、先の実施の形態を参酌することができる。また、不純物104は、再沈殿によって除去することができる不純物であることが望ましい。
【0046】
次に、上記材料を、化合物100についての良溶媒に溶解させて溶液とし、これに大量の貧溶媒を加える。または、大量の貧溶媒に対して、上記溶液を僅かに加える。これにより、不純物104が除去、低減され、主として化合物100と不純物102で構成された沈殿が得られる。当該沈殿は、ろ過などの方法によって不純物104が溶解した溶液と分離される(図3(B)参照)。
【0047】
次に、上記沈殿から得られた材料を、化合物100の耐熱温度以下で加熱して不純物102を昇華させ、不純物102を除去する、または、不純物102の含有率を低減する(図3(C)参照)。詳細については、先の実施の形態を参酌することができる。
【0048】
以上の方法によって、不純物の含有率を、より低減した材料を得ることができる(図3(D)参照)。また、当該方法を用いて、高純度材料を製造することが可能である。
【0049】
材料中に、複数の種類の不純物が含まれる場合、熱処理による精製のみでは、その除去、低減が困難な場合がある。例えば、不純物104の昇華温度が比較的高い場合には、不純物104を上述の方法のみで除去することは困難である。このような場合には、再沈殿と組み合わせて用いることで、化合物100の純度を高めることが可能である。
【0050】
また、熱処理による精製を用いることで、再沈殿のみでは除去できない不純物102の除去が可能である。
【0051】
このように、再沈殿による精製には、熱処理による精製を補完する効果があり、これらを併せて用いることで、発明の効果をより高めることができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、再沈殿によって不純物104を除去、低減した後に、熱処理によって不純物102を除去、低減する構成を採用しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。熱処理によって不純物102を除去、低減した後に、再沈殿によって不純物104を除去、低減しても良い。
【0053】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0054】
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す方法で作製される高純度材料を用いた発光装置の作製方法の一例について、図4および図5を用いて説明する。
【0055】
〈発光装置の作製方法〉
はじめに、蒸着用基板を用意する(図4(A)参照)。図4(A)に示す蒸着用基板は、支持基板である第1の基板201、反射層203、断熱層205、光吸収層207、蒸着材料を含む材料層209、を有する。第1の基板201上には、反射層203および断熱層205が積層されており、反射層203および断熱層205には開口が設けられている。また、第1の基板201上には、第1の基板201の表面、反射層203、断熱層205などを覆うように、光吸収層207が設けられている。また、光吸収層207上には、蒸着材料を含む材料層209が設けられている。ここで、材料層209は、蒸着材料および先の実施の形態に示す方法で作製された高純度材料が含まれる。つまり、材料層209は、バインダ材料に蒸着材料を分散させた構成のものに相当する。このような材料層209を用いる場合、複数の材料(例えば、発光層におけるホスト材料およびゲスト材料など)を含む蒸着材料を均一に蒸着させることができるというメリットがある。
【0056】
なお、蒸着用基板の構成は、図4(A)に示すものに限られない。例えば、開口に相当する領域に光吸収層207をパターン形成して、反射層203および断熱層205に重畳する領域の光吸収層207を除去しても良い。このようにすることで、光吸収層207内における熱伝導を防止し、形成されるパターンの精度を向上させることができる。
【0057】
次に、材料層209が形成された面(第1の基板201の表面)に対向する位置に、被成膜基板である第2の基板211を配置する(図4(B)参照)。蒸着用基板と、被成膜基板とは、所定の距離dだけ離れた位置に配置される。例えば、距離dは、材料層209の表面と、被成膜基板の表面との距離で定義することができる。被成膜基板上に何らかの層(例えば、電極として機能する導電層や隔壁として機能する絶縁層など)が形成されている場合には、距離dは、材料層209の表面と、被成膜基板上に形成された層の表面との距離で定義することができる。
【0058】
上述の距離dは、0mm以上2mm以下とするのが望ましい。距離dを十分に小さくすることで、蒸着材料の利用効率を向上させることができるためである。また、形成されるパターンの精度を向上させることができるためである。もちろん、上記の距離dは、望ましい範囲の一例に過ぎないから、距離dを上記に限定する必要はない。なお、蒸着用基板と被成膜基板とは、接触状態(つまり、距離dが0mm)にあっても良い。
【0059】
図4(B)において、第2の基板211は、第1の電極層213を有している。ここで、第1の電極層213の端部は絶縁物215で覆われていることが好ましい。本実施の形態において、第1の電極層213は、発光素子の陽極あるいは陰極となる電極に相当する。
【0060】
上述のように第1の基板201と第2の基板211を配置した後には、図4(C)に示すように、材料層209が形成された面とは反対の面(第1の基板201の裏面)から光を照射する。照射された光は、反射層203が形成された領域においては反射し、反射層203に設けられた開口においては透過して、開口と重なる領域の光吸収層207に吸収される。光吸収層207に吸収された光が熱エネルギーへと変換されることで、対応する領域の材料層209が加熱され、材料層209中の蒸着材料が昇華する。昇華した蒸着材料は第1の電極層213上に付着、堆積され、これによって所定のパターンの蒸着層217が形成される。なお、蒸着層217は、発光装置におけるEL層などとして機能するものである。
【0061】
なお、第1の基板201に光を照射すると、光吸収層207で発生する熱が第1の基板201の表面方向に伝導して、光吸収層207に接する反射層203が加熱されることがある。また、反射率が十分に高い(例えば、反射率が85%以上)の材料を用いて反射層203を形成する場合であっても、照射する光の強度によってはある程度の熱の発生が考えられる。しかしながら、反射層203と材料層209との間に、熱伝導率の低い材料によって形成された断熱層205を設けることで、反射層203からの熱を遮断することができる。これによって、蒸着層217のパターン精度を向上させることができる。
【0062】
光源としては、種々のものを用いることができる。例えば、キセノンランプ、メタルハライドランプのような放電灯、ハロゲンランプ、タングステンランプのような発熱灯を用いることができる。また、これらの光源をフラッシュランプ(例えばキセノンフラッシュランプ、クリプトンフラッシュランプなど)として用いても良い。フラッシュランプは短時間(0.1ミリ秒乃至10ミリ秒)に強度の高い光を照射することが可能であり、大面積に照射することもできるため好適である。また、フラッシュランプは寿命が長く、発光待機時の消費電力が小さいため、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0063】
光源としてレーザー発振器を用いてもよい。例えば、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザーなどの気体レーザー、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、多結晶のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOなどに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taなどが添加された物質を用いたレーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザー、金蒸気レーザーなどのレーザー発振器を用いることができる。
【0064】
なお、照射する光の波長は、800nm以上(いわゆる赤外光)であることが望ましい。赤外光を用いることにより、光吸収層207における熱への変換が効率よく行われ、蒸着材料を効率よく昇華させることができるためである。
【0065】
また、上記蒸着層217の形成は、減圧雰囲気で行うことが望ましい。ここで、減圧雰囲気の圧力は、5×10−3Pa以下、望ましくは1×10−6Pa以上1×10−4Pa以下とする。
【0066】
以上の工程により、第2の基板211上に、所定のパターンの蒸着層217が形成される。
【0067】
〈蒸着基板の作製方法〉
次に、図4(A)に示した蒸着用基板の作製方法について、図5を参照して簡単に説明する。
【0068】
まず、第1の基板201上に反射率の高い層を形成した後、熱伝導率の低い層を形成する。そして、これらに開口を形成することで反射層203および断熱層205を形成する(図5(A)参照)。
【0069】
第1の基板201は、反射層203、断熱層205、光吸収層207、などの支持基板であり、その用途から、光を透過する特性を有する必要がある。例えば、第1の基板201として、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板などを用いることができる。
【0070】
反射層203は、発光装置の作製工程において、反射層203と重畳する領域の光吸収層207に光を吸収させないための層である。反射層203は、照射される光に対して、反射率が85%以上の高い反射率を有する材料で形成されていることが望ましい。例えば、800nm乃至2500nmの赤外領域の光を照射する場合には、反射層203の材料として、アルミニウム、銀、金、白金、銅、アルミニウムを含む合金、銀を含む合金、などを用いることができる。特に、アルミニウム−チタン合金、アルミニウム−ネオジム合金、銀−ネオジム合金は、赤外領域の光(波長800nm以上)に対して高い反射率を有するため、反射層203の材料として好適である。なお、反射層203は単層構造に限らず、積層構造としても良い。
【0071】
反射層203の元となる反射率の高い層は、各種成膜法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法などの方法を用いて形成することができる。また、その膜厚は、概ね100nm以上2μm以下とすることが望ましい。100nm以上とすることにより、照射した光が反射層203を透過して光吸収層207に到達することを抑制できる。
【0072】
断熱層205は、発光装置の作製工程において、反射層203と重畳する領域の材料層209の加熱を抑制するための層である。断熱層205は、反射層203や光吸収層207と比較して熱伝導率の低い材料を用いて形成することができる。具体的には、例えば、酸化チタン、酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化ジルコニウム、炭化チタンなどを用いることができる。
【0073】
断熱層205の元となる熱伝導率の低い層は、各種成膜法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、CVD法などにより形成することができる。また、その膜厚は、10nm以上2μm以下、望ましくは100nm以上600nm以下とする。断熱層205を10nm以上2μm以下の膜厚で設けることにより、反射層203が加熱された場合でも、反射層203の上の材料層209に熱が伝導するのを防止できる。
【0074】
開口の形成は、例えば、エッチング処理によって行うことができる。エッチング処理としては、ウェットエッチング処置、ドライエッチング処理のいずれを用いても良いが、微細なパターンを形成する場合には、ドライエッチング処理を適用するのが好適である。
【0075】
なお、ここでは、反射層203と断熱層205のパターン形成を一度に行っているが、反射層203のパターン形成と、断熱層205のパターン形成とを異なる工程で行っても良い。
【0076】
次に、断熱層205上に光吸収層207を形成する(図5(B)参照)。
【0077】
光吸収層207は発光装置の作製工程において、照射された光を吸収して熱へと変換する層である。光吸収層207は、照射される光に対して、高い吸収率を有する材料を用いて形成することが望ましい。また、光吸収層207は、それ自体が熱によって変化しないように、耐熱性に優れた材料を用いて形成されていることが好ましい。
【0078】
光吸収層207に好適な材料は、照射される光の波長により異なる。例えば、波長800nmの光に対しては、モリブデン、窒化タンタル、チタン、タングステンなどが好適である。また、波長1300nmの光に対しては、窒化タンタル、チタンなどが好適である。
【0079】
光吸収層207は、各種成膜法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法などの方法を用いて形成することができる。また、その膜厚は、100nm以上2μm以下とすることが望ましい。特に、光吸収層207の膜厚を200nm以上600nm以下とすることで、照射される光を効率良く吸収して熱に変換することができる。なお、光吸収層207は単層構造に限らず、積層構造としても良い。
【0080】
次に、光吸収層207上に、蒸着材料を含む材料層209を形成する(図5(C)参照)。
【0081】
材料層209は、蒸着材料とバインダ材料を含む混合物である。蒸着材料としては、蒸着に用いる様々な材料を用いることができる。蒸着材料は、有機化合物であっても良いし、無機化合物であっても良いし、無機化合物と有機化合物との混合材料であっても良い。バインダ材料としては、先の実施の形態において精製し、または作製した化合物を用いる。
【0082】
材料層209は、単層構造としてもよいし、積層構造としても良い。異なる蒸着材料を含む層の積層構造とすることにより、共蒸着も可能である。なお、蒸着材料を含む層を複数積層する場合には、第1の基板201側に分解温度が低い蒸着材料を含むように積層することが望ましい。または、第1の基板201側に蒸着温度が低い蒸着材料を含むように積層することが好ましい。このような構成とすることにより、蒸着材料を効率良く昇華させることができる。なお、本明細書において「蒸着温度」とは、蒸着材料が昇華する温度を示す。また、「分解温度」とは、熱の作用によって、材料を示す化学式の少なくとも一部に変化が生じる温度を示す。
【0083】
材料層209は、種々の方法により形成することができる。例えば、乾式法として、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いることができる。また、湿式法として、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、印刷法などを用いることができる。
【0084】
なお、第2の基板211上に形成される蒸着層217の膜厚は、支持基板である第1の基板201上に形成された材料層209に依存する。このため、材料層の膜厚を制御することで、蒸着層217の膜厚を制御することができる。なお、蒸着層217の膜厚および均一性が保たれるのであれば、材料層は必ずしも均一の層である必要はない。例えば、微細な島状に形成されていてもよいし、凹凸を有する層状に形成されていてもよい。
【0085】
〈効果〉
バインダ材料としての化合物を、先の実施の形態に示す方法で精製または作製することで、再沈殿法のみでは除去しきれない不純物を除去することが可能になる。このように、高純度化された材料を用いて蒸着用基板を作製することで、不純物濃度が低い材料層を有する蒸着用基板が得られる。そして、当該蒸着用基板を用いることで、蒸着層(EL層などを含む)への不純物の混入を抑制することが可能であり、優れた特性を有する発光装置が得られる。
【0086】
なお、本実施の形態に示す発光装置の作製方法(熱転写技術と呼んでも良い)に用いる材料を精製する目的で、先の実施の形態に示す方法を用いるのであれば、形成される層の原料となる蒸着材料の昇華温度と比較して、低い昇華温度の不純物を除去できればよいことになる。よって、先の実施の形態における加熱温度は、蒸着材料の昇華温度(±20℃の範囲を含む)としても良い。
【0087】
なお、本実施の形態において示す方法においても、いわゆる熱転写技術のメリットを享受できることは言うまでもない。例えば、形成される層の膜厚やパターンの制御が容易であり、また、蒸着材料の有効利用を図ることができるため、生産性の向上、製造コストの低減につながる。蒸着用基板の再利用も可能である。また、本実施の形態において示す方法では、バインダ材料に蒸着材料を分散させる方法を採用しているため、複数の材料(例えば、発光層におけるホスト材料およびゲスト材料など)を含む蒸着材料を均一に蒸着させることができるというメリットがある。
【0088】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0089】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態などに示す方法を用いて作製することができる発光装置の構成例について、図6および図7を参照して説明する。
【0090】
先の実施の形態などに示す方法を用いることにより、例えば、図6(A)や図6(B)に示す発光装置を作製することができる。図6(A)に示す発光装置は、基板300上の第1の電極層302、発光層304、第2の電極層306を有する。ここで、発光層304を、EL層308と呼ぶこともできる。
【0091】
図6(A)に示す発光装置において、第1の電極層302および第2の電極層306の一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。例えば、第1の電極層302を陽極、第2の電極層306を陰極とすることができる。発光装置において、陽極から注入される正孔および陰極から注入される電子が発光層304で再結合することにより、発光が生じる。
【0092】
図6(B)に示す発光素子は、図6(A)に示す構成に、正孔注入層312、正孔輸送層314、電子輸送層316、電子注入層318が付加されたものである。ここで、正孔注入層312、正孔輸送層314、発光層304、電子輸送層316、電子注入層318などを含めて、EL層308と呼ぶこともできる。
【0093】
正孔注入層312および正孔輸送層314は、陽極(第1の電極層302)と発光層304との間に設けられる。一方、電子輸送層316および電子注入層318は、発光層304と陰極(第2の電極層306)との間に設けられる。なお、正孔注入層312、正孔輸送層314、電子輸送層316、電子注入層318のすべてを設ける必要はなく、必要とされる機能に応じて適宜取捨すればよい。
【0094】
発光層304において生じた光は、第1の電極層302または第2の電極層306を通じて外部に取り出される。このため、第1の電極層302または第2の電極層306には、透光性が求められる。第1の電極層302のみが透光性を有する場合、光は第1の電極層302を通じて基板300から取り出される。この場合には、基板300にも透光性が求められることになる。また、第2の電極層306のみが透光性を有する場合、光は第2の電極層306を通じて取り出される。第1の電極層302および第2の電極層306がいずれも透光性を有する場合、光は第1の電極層302および第2の電極層306を通じて取り出される。この場合にも、基板300は透光性を有するのが好適である。
【0095】
なお、図6では、陽極として機能する第1の電極層302を基板300側に設けた構成について示したが、図7(A)に示すように、基板300上に、陰極として機能する第2の電極層306、発光層304、陽極として機能する第1の電極層302、を順に有する構成としても良い。また、図7(B)に示すように、基板300上に、陰極として機能する第2の電極層306、電子注入層318、電子輸送層316、発光層304、正孔輸送層314、正孔注入層312、陽極として機能する第1の電極層302、を順に有する構成としても良い。
【0096】
EL層308の形成には、先の実施の形態において示した方法を適用することができる。高純度化された材料を用いて作製された蒸着用基板を用いることで、EL層308(蒸着層とも呼ぶ)への不純物の混入を抑制することが可能であり、優れた特性を有する発光装置が得られる。
【0097】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0098】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した発光装置を一部に含む電子機器の例を示す。
【0099】
開示する発明の一態様に係る発光装置を用いた電子機器としては、カメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末、画像再生装置などが挙げられる。これら電子機器の具体例を、図8に示す。
【0100】
図8(A)はテレビジョン装置であり、筐体501、支持台502、表示部503、スピーカー504、ビデオ入力端子505等を含む。当該テレビジョン装置において、表示部503には、発光領域をマトリクス状に配列した発光装置が用いられる。開示する発明の一態様により、良好な特性の発光装置を備えたテレビジョン装置が提供される。
【0101】
図8(B)はコンピュータであり、本体511、筐体512、表示部513、キーボード514、外部接続ポート515、ポインティングデバイス516等を含む。当該コンピュータにおいて、表示部513には、発光領域をマトリクス状に配列した発光装置が用いられる。開示する発明の一態様により、良好な特性の発光装置を備えたコンピュータが提供される。
【0102】
図8(C)はカメラであり、本体521、筐体522、表示部523、外部接続ポート524、リモコン受信部525、受像部526、バッテリー527、音声入力部528、操作キー529等を含む。当該カメラにおいて、表示部523には、発光領域をマトリクス状に配列した発光装置が用いられる。開示する発明の一態様により、良好な特性の発光装置を備えたカメラが提供される。
【0103】
図8(D)は携帯電話機であり、本体531、筐体532、表示部533、音声入力部534、音声出力部535、操作キー536、外部接続ポート537、アンテナ538等を含む。当該携帯電話機において、表示部533には、発光領域をマトリクス状に配列した発光装置が用いられる。開示する発明の一態様により、良好な特性の発光装置を備えた携帯電話機が提供される。
【0104】
図9には、図8(D)とは異なる構成の携帯電話の一例を示す。図9(A)が正面図、図9(B)が背面図、図9(C)が2つの筐体をスライドさせたときの正面図である。携帯電話600は、筐体601と筐体602の二つの筐体で構成されている。携帯電話600は、携帯電話と携帯情報端末の双方の機能を備えており、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な所謂スマートフォンである。
【0105】
筐体601においては、表示部603、スピーカー604、マイクロフォン605、操作キー606、ポインティングデバイス607、表面カメラ用レンズ608、外部接続端子ジャック609およびイヤホン端子610等を備え、筐体602においては、キーボード611、外部メモリスロット612、裏面カメラ613、ライト614等により構成されている。また、アンテナは筐体601に内蔵されている。
【0106】
また、携帯電話600には、上記の構成に加えて、非接触型ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
【0107】
重なり合った筐体601と筐体602(図9(A)に示す)は、スライドさせることが可能であり、スライドさせることで図9(C)のように展開する。表示部603には、発光領域をマトリクス状に配列した発光装置が用いられる。携帯電話600は、表示部603と表面カメラ用レンズ608を同一の面に備えているため、テレビ電話としての使用が可能である。
【0108】
スピーカー604およびマイクロフォン605を用いることで、携帯電話600は、音声記録装置(録音装置)または音声再生装置として使用することができる。また、操作キー606により、電話の発着信操作、電子メール等の簡単な情報入力操作、表示部に表示する画面のスクロール操作、表示部に表示する情報の選択等を行うカーソルの移動操作等が可能である。
【0109】
また、書類の作成、携帯情報端末としての使用等、取り扱う情報が多い場合は、キーボード611を用いると便利である。更に、重なり合った筐体601と筐体602(図9(A))をスライドさせることで、図9(C)のように展開させることができる。携帯情報端末として使用する場合には、キーボード611およびポインティングデバイス607を用いて、円滑な操作でマウスの操作が可能である。外部接続端子ジャック609はACアダプタおよびUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電およびパーソナルコンピュータ等とのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット612に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存および移動が可能になる。
【0110】
筐体602の裏面(図9(B))には、裏面カメラ613およびライト614を備え、表示部603をファインダーとして静止画および動画の撮影が可能である。
【0111】
また、上記の機能構成に加えて、赤外線通信機能、USBポート、テレビワンセグ受信機能、非接触ICチップまたはイヤホンジャック等を備えたものであってもよい。
【0112】
図10は、音響再生装置の一例であるデジタルオーディオプレーヤーを示している。図10に示すデジタルオーディオプレーヤーは、本体710、表示部711、メモリ部712、操作部713、イヤホン714等を含んでいる。なお、イヤホン714の代わりにヘッドホンや無線式イヤホンなどを用いることもできる。表示部711には、発光領域をマトリクス状に配列した発光装置が用いられる。開示する発明の一態様により、良好な特性の発光装置を備えたデジタルオーディオプレーヤーが提供される。
【0113】
以上のように、開示する発明の一態様である発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に使用することができる。
【0114】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0115】
(実施の形態6)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した発光装置を用いた照明装置の例を示す。
【0116】
図11は、照明装置の一例である電気スタンドである。図11に示す電気スタンドは、筐体801と、光源802を有する。当該電気スタンドにおいて、光源802には、先の実施の形態にて示した発光装置が用いられる。開示する発明の一態様により、良好な発光特性を有する電気スタンドが提供される。
【0117】
図12には、照明装置の一例として、室内用の照明装置901を示す。開示する発明の一態様に係る発光装置は大面積化が容易であるため、照明装置として好適である。また、良好な発光特性が得られる点においても好ましい。
【0118】
図13には、照明装置を液晶表示装置のバックライトとして用いる例を示す。当該液晶表示装置は、筐体1001、液晶パネル1002、バックライト1003、筐体1004を有し、液晶パネル1002は、ドライバIC1005と接続されている。バックライト1003には、先の実施の形態にて示した発光素子または発光装置が用いられ、端子1006より電力が供給されている。開示する発明の一態様に係る発光装置は大面積化が容易であるため、液晶表示装置のバックライトとして好適である。また、良好な発光特性が得られる点においても好ましい。
【0119】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0120】
本実施例では、開示する発明に係る精製方法の効果を確認した。具体的には、開示する発明に係る精製方法を用いた材料と、用いない材料に関して、TG−DTA(示差熱・熱重量同時測定)、熱転写技術によって形成した蒸着層中のToF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)、作製した発光装置(発光素子)の特性の確認、などを行った。以下、図14〜図17を参照して詳細に説明する。
【0121】
はじめに、開示する発明に係る精製方法を用いた材料と場合と用いない材料に関してのTG−DTA(示差熱・熱重量同時測定)の測定について説明する。TG−DTAにおいては、サンプルとして、精製を行ったポリビニルカルバゾール(PVK)と精製を行っていないポリビニルカルバゾール(PVK)を用いた。サンプルの精製は、開示する発明の加熱による精製方法を用いて行った。熱処理の条件はアルゴン雰囲気、260℃、10Paであった。
【0122】
TG−DTAの測定結果を図14に示す。横軸は温度(℃)を表し、縦軸は初期重量(加熱前)に対する重量百分率(%)を表す。また、図14では、細線が精製なしのサンプル、太線が精製ありのサンプルを示している。精製ありのPVKでは、300℃における重量減少は1%程度なのに対して、精製なしのPVKでは、300℃における重量減少は20%にまで達する。これは、精製なしのPVKには、20重量%前後の不純物(低分子のPVKを含む)が存在していることを示唆するものである。一方で、精製ありのPVKでは、300℃における重量減少は1%程度であるから、不純物は十分に低減されているといえる。
【0123】
次に、ToF−SIMSの測定について説明する。ToF−SIMSにおいては、精製を行ったPVKにCzPA(9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール)と2PCAPA(N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン)とを分散させた蒸着用基板(PVK:CzPA:2PCAPA=5.0:1.0:0.05)を用いて作製したCzPA:2PCAPA層(厚さ30nm)、および、精製を行わないPVKにCzPAと2PCAPAとを分散させた蒸着用基板(PVK:CzPA:2PCAPA=5.0:1.0:0.05)を用いて作製したCzPA:2PCAPA層(厚さ30nm)、をサンプルとして用いた。PVKの精製は、開示する発明の加熱による精製方法を用いて行った。また、熱処理の条件はアルゴン雰囲気、260℃、10Paであった。
【0124】
精製を行ったPVKを用いたサンプルに関するToF−SIMSの測定結果を図15(A)に、精製を行わないPVKを用いたサンプルに関するToF−SIMSの測定結果を図15(B)に、それぞれ示す。なお、図15中、横軸は分子量に相当し、縦軸は検出強度に相当する。
【0125】
精製ありのサンプルでは、分子量が194に相当する分子の信号はごく僅かであるが、精製なしのサンプルでは、分子量が194に相当する分子の信号が非常に大きい。このことから、精製を行わない材料を用いて蒸着を行うと、蒸着材料以外の材料(すなわち不純物)が蒸着層中に混入するのに対して、精製を行った材料を用いて蒸着を行うことにより、蒸着層中の不純物濃度を大きく低減されることが理解される。なお、分子量194は、N−ビニルカルバゾールのモノマーに相当する分子量である。
【0126】
次に、作製した発光装置(発光素子)の特性について説明する。発光装置の構造としては、陽極として酸化珪素とインジウム錫酸化物の化合物を、正孔注入層としてNPB:酸化モリブデン(4)(1.0:0.25、厚さ50nm)を、正孔輸送層としてNPB(厚さ10nm)を、発光層として主発光層CzPA:2PCAPA(1.0:0.05、厚さ30nm)と、副発光層Alq:DPQd(1.0:0.005、厚さ10nm)の積層構造を、電子輸送層としてBPhen(厚さ20nm)を、電子注入層としてLiF(厚さ1nm)を、陰極としてAlを、それぞれ用いたものを採用した。
【0127】
ここで、主発光層(CzPA:2PCAPA)は、精製を行ったPVKにCzPAと2PCAPAとを分散させた蒸着用基板(PVK:CzPA:2PCAPA=5.0:1.0:0.05)、または、精製を行わないPVKにCzPAと2PCAPAとを分散させた蒸着用基板(PVK:CzPA:2PCAPA=5.0:1.0:0.05)、のいずれかを用いて作製した。なお、PVKの精製は、開示する発明の加熱による精製方法を用いて行った。熱処理の条件はアルゴン雰囲気、260℃、10Paであった。
【0128】
発光装置のエレクトロルミネッセンススペクトルを図16に示す。横軸は波長(nm)を表し、縦軸は規格化されたEL強度を表す。また、図16では、細線が精製なしのサンプル、太線が精製ありのサンプルを示している。精製なしのサンプルでは、副発光層中のDPQdからの強い発光が観察される。これは、主発光層(CzPA:2PCAPA)における不純物により、注入された正孔が主発光層を通り抜けてしまうことに起因するものと考察される。
【0129】
発光装置の輝度−電流効率特性を図17に示す。横軸は輝度(cd/m)を表し、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、図17では、三角印が精製なしのサンプル、丸印が精製ありのサンプルを示している。精製なしのサンプルと比較して、精製ありのサンプルでは、電流効率が大きく向上していることが確認できる。
【0130】
以上、本実施例によって、開示する発明の有効性が確認された。つまり、開示する発明の一態様によって高純度材料を得ることが可能であり、これを用いることで、優れた特性の発光装置を作製することができるといえる。
【符号の説明】
【0131】
100 化合物
102 不純物
104 不純物
110 処理室
112 加熱装置
114 ボート
201 基板
203 反射層
205 断熱層
207 光吸収層
209 材料層
211 基板
213 電極層
215 絶縁物
217 蒸着層
300 基板
302 電極層
304 発光層
306 電極層
308 EL層
312 正孔注入層
314 正孔輸送層
316 電子輸送層
318 電子注入層
501 筐体
502 支持台
503 表示部
504 スピーカー
505 ビデオ入力端子
511 本体
512 筐体
513 表示部
514 キーボード
515 外部接続ポート
516 ポインティングデバイス
521 本体
522 筐体
523 表示部
524 外部接続ポート
525 リモコン受信部
526 受像部
527 バッテリー
528 音声入力部
529 操作キー
531 本体
532 筐体
533 表示部
534 音声入力部
535 音声出力部
536 操作キー
537 外部接続ポート
538 アンテナ
600 携帯電話
601 筐体
602 筐体
603 表示部
604 スピーカー
605 マイクロフォン
606 操作キー
607 ポインティングデバイス
608 表面カメラ用レンズ
609 外部接続端子ジャック
610 イヤホン端子
611 キーボード
612 外部メモリスロット
613 裏面カメラ
614 ライト
710 本体
711 表示部
712 メモリ部
713 操作部
714 イヤホン
801 筐体
802 光源
901 照明装置
1001 筐体
1002 液晶パネル
1003 バックライト
1004 筐体
1005 ドライバIC
1006 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱温度の高い化合物と、前記化合物の前記耐熱温度より低い昇華温度の不純物と、を含む材料を、
減圧された不活性ガス雰囲気において前記耐熱温度以下で加熱して、前記昇華温度の低い不純物を前記雰囲気中に拡散させ、
前記材料における前記不純物の含有率と比較して、前記不純物の含有率を低減させる精製方法。
【請求項2】
前記耐熱温度の高い化合物は、ポリマー、オリゴマー、またはデンドリマーのいずれかである、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
前記減圧された不活性ガス雰囲気は、100Pa以下に減圧された不活性ガス雰囲気である、請求項1または請求項2に記載の精製方法。
【請求項4】
前記不活性ガス雰囲気は、希ガス雰囲気、窒素雰囲気、またはこれらの混合雰囲気である、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の精製方法。
【請求項5】
再沈殿による精製の後に、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の精製方法を用いる精製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の精製方法を用いて前記不純物の含有率を5重量%以下とする、高純度材料の作製方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法で作製された高純度材料に蒸着材料を分散させて混合材料を作製し、
所定の波長の光を透過する第1の基板の一表面上に、前記混合材料でなる材料層を形成する、蒸着用基板の作製方法。
【請求項8】
前記第1の基板と前記材料層との間には、反射層、断熱層、および光吸収層を形成する、請求項7に記載の蒸着用基板の作製方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の方法で作製された蒸着用基板における前記第1の基板の前記一表面側に、第2の基板を配置し、
前記一表面とは異なる表面から前記第1の基板に光を入射させ、前記第1の基板を透過した前記光によって前記材料層を加熱し、前記第2の基板上に前記蒸着材料を付着、堆積させて、蒸着層を形成する発光装置の作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−111568(P2011−111568A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270669(P2009−270669)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】