説明

精製水タンクおよび自動分析装置

【課題】分析装置内で分注装置の分注圧力伝達水等に使用される精製水中の細菌の増殖を抑制しうる精製水タンクおよび自動分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかるイオン交換水タンク30は、検体と試薬との反応を光学的に分析する自動分析装置1で使用される、分注装置の分注圧力伝達水、反応容器の洗浄水、または洗浄液の希釈水としてのイオン交換水LWを貯留するイオン交換水タンク30であって、イオン交換水LWが供給される配管32と前記イオン交換水タンク30とを密閉して接続する貫通部35aと、前記分注圧力伝達水の戻り配管33と前記イオン交換水タンク30とを密閉して接続する貫通部35bと、を備えることにより、イオン交換水タンク30内を密閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分注装置の分注圧力伝達水等として使用される精製水の貯留タンクおよび当該タンクを備える自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、血液や尿などの多数の検体に対する分析処理を同時に行い、さらに、多成分を迅速に、かつ、高精度で分析できるため、免疫学検査、生化学検査、輸血検査などさまざまな分野での検査に用いられている。
【0003】
ところで、このような分析装置は、検体や試薬の分注圧力伝達、各部材の洗浄などのためにイオン交換水などの精製水を用いており、分析装置内に精製水を保持するタンクを設けた構造を有する。しかしながら、精製水内に菌がいない状態で精製水が精製された場合であっても、精製水が空気に触れることで精製水内に細菌や微生物が混入してしまい、時間の経過やメンテナンス不足にともなって細菌や微生物が増殖し、精製水が汚染されることがあった。この細菌による精製水の汚染により、精製水中に混入したALPが増加することがあり、反応系にALPを使用する免疫学検査装置では水質汚染による影響を受けやすく、イオン交換水などの精製水の水質汚染は分析結果に大きな影響を及ぼしていた。
【0004】
上記のような水質や容器汚染を抑制する発明として、下記特許文献1では、試料液中および採水器中の有機汚れや細菌類の繁殖を抑制するために、抗菌作用を有する次亜塩素酸ナトリウムなどを収容した防菌性気体供給部を備えた水質分析計が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−83829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の採水器では、次亜塩素酸ナトリウムなどを収容した容器から穴を通じて気化した抗菌性の気体を供給することにより、容器内部への有機汚れや細菌類の成長を抑制するものであり、次亜塩素酸ナトリウムは抗菌作用を有し細菌類の増殖抑制に効果を有するものの、水に溶解するため、気体としての接触であっても使用は好ましくない。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、分析装置内で分注装置の分注圧力伝達水等に使用される精製水中の細菌の増殖を抑制しうる精製水タンクおよび自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる精製水タンクは、検体と試薬との反応を光学的に分析する自動分析装置で使用される、分注装置の分注圧力伝達水、反応容器および分注プローブの洗浄水、または洗浄液の希釈水としての精製水を貯留する精製水タンクであって、精製水が供給される配管と前記精製水タンクとを密閉して接続する供給配管接続手段と、前記分注圧力伝達水の戻り配管と前記精製水タンクとを密閉して接続する戻り配管接続手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる精製水タンクは、上記の発明において、前記供給配管接続手段および前記戻り配管接続手段は、螺着されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる精製水タンクは、上記の発明において、暗色に着色される本体部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる精製水タンクは、上記の発明において、当該精製水タンク内の圧力を調整する圧力調整手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる精製水タンクは、上記の発明において、前記圧力調整手段は抗菌フィルターを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、検体と試薬との反応を光学的に分析する自動分析装置であって、上記のいずれか一つに記載の精製水タンクを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記精製水タンクを冷却する冷却手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、精製水が供給される配管と前記精製水タンクとを密閉して接続する供給配管接続手段と、前記分注圧力伝達水の戻り配管と前記精製水タンクとを密閉して接続する戻り配管接続手段と、を備えることにより、精製水タンク内での外部空気との接触を低減することができ、精製水中の細菌の発生を抑制する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である自動分析装置について、血液などの液体検体をサンプルとして分析する自動分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。図1は、本実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる自動分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器5にそれぞれ分注し、分注した反応容器5内で生じる反応を光学的に測定する測定機構40と、測定機構40を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構40における測定結果の分析を行う制御機構50とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を自動的に行う。
【0017】
測定機構40は、大別して、第1および第2試薬テーブル2、3と、反応テーブル4と、第1および第2試薬分注装置6、7と、検体容器移送機構8と、ラック9と、分析光学系11と、洗浄機構12と、第1および第2攪拌装置13、14と、検体分注装置20とを備えている。
【0018】
第1試薬テーブル2は、図1に示すように、第1試薬を収容する試薬容器2aが周方向に複数配置され、駆動手段(図示せず)により回転されて試薬容器2aを周方向に搬送する。複数の試薬容器2aは、検査項目に応じた試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類、ロット及び有効期限等の情報を記録した情報記録媒体(図示せず)が付加されている。ここで、第1試薬テーブル2の外周には、試薬容器2aに付加した情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取り、制御部15へ出力する読取装置(図示せず)が設置されている。第1試薬テーブル2の上方には、試薬の蒸発や変性を抑制するため、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられており、第1試薬テーブル2の下方には試薬冷却用の恒温槽(図示せず)が設けられている。
【0019】
第2試薬テーブル3は、図1に示すように、第2試薬を収容する試薬容器3aが周方向に複数配置され、第1試薬テーブル2と同様に、駆動手段(図示せず)により回転されて試薬容器3aを周方向に搬送する。複数の試薬容器3aは、検査項目に応じた試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類、ロット及び有効期限等の情報を記録した情報記録媒体(図示せず)が付加されている。ここで、第2試薬テーブル3の外周には、試薬容器3aに付加した情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取り、制御部15へ出力する読取装置(図示せず)が設置されている。第2試薬テーブル3の上方には、試薬の蒸発や変性を抑制するため、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられており、第2試薬テーブル3の下方には試薬冷却用の恒温槽(図示せず)が設けられている。
【0020】
第1試薬分注装置6は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム6aを備える。このアーム6aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうプローブ6bが取り付けられている。第1試薬分注装置6は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。第1試薬分注装置6は、上述した第1試薬テーブル2上の所定位置に移送された試薬容器2aの中からプローブ6bによって第1試薬を吸引し、アーム6aを図中時計回りに旋回させ、反応容器5に第1試薬を吐出して分注を行なう。
【0021】
第2試薬分注装置7は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム7aを備える。このアーム7aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうプローブ7bが取り付けられている。第2試薬分注装置7は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。第2試薬分注装置7は、上述した第2試薬テーブル3上の所定位置に移送された試薬容器3aの中からプローブ7bによって第2試薬を吸引し、アーム7aを図中反時計回りに旋回させ、反応容器5に第2試薬を吐出して分注を行なう。
【0022】
反応テーブル4は、図1に示すように、複数の反応容器5が周方向に沿って配列されており、第1および第2試薬テーブル2、3を駆動する駆動手段とは異なる駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転されて反応容器5を周方向に移動させる。反応テーブル4は、光源11aと分光部11bとの間に配置され、反応容器5を保持する保持部4aと光源11aが出射した光束を分光部11bへ導く円形の開口からなる光路4bとを有している。保持部4aは、反応テーブル4の外周に周方向に沿って所定間隔で配置され、保持部4aの内周側に半径方向に延びる光路4bが形成されている。反応テーブル4の上方には、図示しない開閉自在な蓋が、下方には検体と試薬の反応を促進させるための恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0023】
反応容器5は、分析光学系11から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する光学的に透明な素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレン等によって四角筒状に成形されたキュベットと呼ばれる容器である。反応容器5は、近傍に設けた第1および第2試薬分注装置6、7によって第1および第2試薬テーブル2、3の試薬容器2a、3aから試薬が分注される。ここで、第1および第2試薬分注装置6、7は、それぞれ水平面内を回動すると共に、上下方向に昇降されるアーム6a、7aに試薬を分注する分注プローブ6b、7bが設けられ、洗浄水によってノズル6b、7bを洗浄する洗浄槽(図示せず)を有している。
【0024】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、配列された複数のラック9を矢印方向に沿って1つずつ歩進させながら移送する。ラック9は、検体を収容した複数の検体容器9aを保持している。ここで、検体容器9aは、収容した検体の情報を記録したバーコード等が貼付され、検体容器移送機構8によって移送されるラック9の歩進が停止するごとに、検体分注装置20によって検体が各反応容器5へ分注される。検体分注装置20は、水平面内を回動すると共に、上下方向に昇降されるアーム20aに試薬を分注する分注プローブ20bが設けられる。ここで、ラックの外周には、検体容器9aに貼付された情報記録媒体(図示せず)に記録された、検体情報や検体容器9aの容器情報を読み取り、制御部15へ出力する読取装置(図示せず)が設置されている。
【0025】
検体分注装置20は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム20aを備える。このアーム20aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうプローブ20bが取り付けられている。検体分注装置20は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注装置20は、上述した検体移送機構8上の所定位置に移送された検体容器9aの中からプローブ20bによって検体を吸引し、アーム20aを図中時計回りに旋回させ、反応容器5に検体を吐出して分注を行なう。
【0026】
分析光学系11は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体試料に分析光(340〜800nm)を透過させて分析するための光学系であり、光源11a、分光部11b及び受光部11cを有している。光源11aから出射された分析光は、反応容器5内の液体試料を透過し、分光部11bと対向する位置に設けた受光部11cによって受光される。
【0027】
洗浄機構12は、ノズルによって反応容器5内の液体試料を吸引して排出した後、ノズルによって洗剤や洗浄水等の洗浄液等を繰り返し注入し、吸引することにより、分析光学系11による分析が終了した反応容器5を洗浄する。この洗浄された反応容器5は再利用されるが、検査内容によっては1回の測定終了後に反応容器5を廃棄してもよい。
【0028】
第1および第2攪拌装置13、14は、分注された検体と試薬とを攪拌棒13a、14aによって攪拌し、反応を促進させる。
【0029】
つぎに、制御機構50について説明する。制御機構50は、制御部15と、入力部16と、出力部17と、分析部18と、記憶部19とを備える。制御部15は、測定機構40および制御機構50が備える各部と接続される。これら各部の作動を制御するため、制御部15には、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部15は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0030】
入力部16は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。出力部17は、プリンタ、通信機構等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。分析部18は、分析光学系11から取得した測定結果に基づいて吸光度等を演算し、検体の成分分析等を行う。記憶部19は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部19は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0031】
以上のように構成された自動分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器5に対して、第1試薬分注装置6が試薬容器2a中の第1試薬を分注した後、検体分注機構20が検体容器9a中の検体を分注し、さらに第2試薬分注装置7が試薬容器3a中の第2試薬を分注して、分析光学系11が検体と試薬とを反応させた状態の試料の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部18が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄機構12が分析光学系11による測定が終了した後に搬送される反応容器5を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0032】
この自動分析装置1においては、検体や試薬の分注圧力伝達、各部材の洗浄用などのために精製水としてイオン交換水を用いている。そこで、図2を参照して、イオン交換水が使用される各機構について説明する。なお、精製水として、イオン交換水のほか、蒸留水、超ろ過水またはこれらの組み合わせも使用しうる。
【0033】
図2に示すように、図1に示す自動分析装置1は、イオン交換水LWを保持するイオン交換水タンク30を有する。イオン交換水LWは、制御部15の制御によって、配管32に設けられた給水弁34が開けられたときに、矢印Y1に示すように、配管32を介して、イオン交換水LWを供給する給水源からイオン交換水タンク30内に供給される。
【0034】
イオン交換水タンク30にはイオン交換水LWを各部に供給する配管47が接続されている。配管47には、イオン交換水タンク30内のイオン交換水LWをイオン交換水タンク30から検体分注装置20、試薬分注装置6、7および洗浄機構12に送出する給水ポンプ36が設けられている。制御部15の制御によって、給水ポンプ36が駆動した場合には、矢印Y2に示すように、イオン交換水タンク30内のイオン交換水LWが配管47を介して各部に供給される。
【0035】
また、配管47はターミナル37aに接続され、ターミナル37aから検体分注装置20に接続する配管51、第1試薬分注装置6に接続する配管52、第2試薬分注装置7に接続する配管53、および洗浄機構12に接続する配管54に分岐する。配管51は、途中で配管51aと配管51bに分岐し、配管51aは、シリンジポンプ38および配管51bを介して検体プローブ20bに接続する。制御部15の制御のもと、検体分注が行なわれる場合には、ターミナル37aの配管51が開状態とされ、図示しないプランジャー駆動部の駆動によってプランジャー38bをシリンダー38a内を往復動させることにより検体を吸引・吐出する。たとえば矢印Y2aに示すように、イオン交換水タンク30から、配管47、51、51aおよび51bを介してイオン交換水LWが移動することによって、検体プローブ20bに検体分注に要する圧力が伝達され、検体プローブ20bによる検体分注処理が行なわれる。そして、圧力伝達のため検体分注装置20内を移動したイオン交換水LWは、配管51a、51cおよびターミナル37bを介して、矢印Y3aに示すように、配管33内に戻される。
【0036】
また、配管47からターミナル37aを介して第1試薬分注装置6に接続する配管52は、途中で配管52aと配管52bに分岐し、配管52aは、シリンジポンプ39および配管52bを介して試薬第1分注プローブ6bに接続する。制御部15の制御のもと、第1試薬分注が行なわれる場合には、ターミナル37aの配管52が開状態とされ、図示しないプランジャー駆動部の駆動によってプランジャー39bをシリンダー39a内を往復動させることにより第1試薬を吸引・吐出する。たとえば矢印Y2bに示すように、イオン交換水タンク30から、配管47、52、52aおよび52bを介してイオン交換水LWが移動することによって、第1試薬分注プローブ6bに第1試薬分注に要する圧力が伝達され、第1試薬分注プローブ6bによる第1試薬分注処理が行なわれる。そして、圧力伝達のため第1試薬装置6内を移動したイオン交換水LWは、配管52a、52cおよびターミナル37bを介して、矢印Y3bに示すように、配管33内に戻される。
【0037】
また、配管47からターミナル37aを介して第2試薬分注装置7に接続する配管53は、途中で配管53aと配管53bに分岐し、配管53aは、シリンジポンプ41および配管53bを介して試薬第2分注プローブ7bに接続する。制御部15の制御のもと、第2試薬分注が行なわれる場合には、ターミナル37aの配管53が開状態とされ、図示しないプランジャー駆動部の駆動によって、プランジャー41bを、シリンダー41a内を往復動させることにより第2試薬を吸引・吐出する。たとえば矢印Y2cに示すように、イオン交換水タンク30から、配管47、53、53aおよび53bを介してイオン交換水LWが移動することによって、第2試薬分注プローブ7bに第2試薬分注に要する圧力が伝達され、第2試薬分注プローブ7bによる第2試薬分注処理が行なわれる。そして、圧力伝達のため第2試薬装置7内を移動したイオン交換水LWは、配管53a、53cおよびターミナル37bを介して、矢印Y3cに示すように、配管33内に戻される。
【0038】
また、配管47からターミナル37aを介して洗浄機構12に接続する配管54は、途中で配管54aと配管54bに分岐し、配管54aは、シリンジポンプ42および配管54bを介して洗浄ノズル12a〜12fに接続する。制御部15の制御のもと、反応容器5の洗浄が行なわれる場合には、ターミナル37aの配管54が開状態とされ、図示しないプランジャー駆動部の駆動によって、プランジャー42bを、シリンダー42a内を往復動させることにより反応容器内の反応液等を吸引し、洗浄剤または洗浄液を吐出する。
【0039】
洗浄処理のうち反応容器5内の液体を排出する処理が行なわれる場合には、制御部15の制御のもと、ターミナル37a、および弁44a〜44fが開状態とされ、シリンジポンプ42が駆動される。この結果、たとえば矢印Y2dに示すように、イオン交換水タンク30から配管47、54、54a、54bを介してイオン交換水LWが移動することによって、反応容器5内の排出対象である液体を吸引する圧力が洗浄ノズル12a〜12fに伝達され、洗浄ノズル12a〜12fによる排液吸引処理が行なわれる。圧力伝達のため洗浄機構12内を移動したイオン交換水LWは、配管54a、54cおよびターミナル37bを介して、矢印Y3dに示すように、配管33内に戻される。そして、洗浄処理のうち反応容器5内に精製水を供給する処理が行なわれる場合、制御部15の制御のもと、ターミナル37a、および弁44c〜44fが開けられ、洗浄液のうち洗浄水であるイオン交換水LWを供給する洗浄ノズル12c〜12fから、洗浄対象である反応容器5内に精製水が注入される。なお、洗浄処理のうち反応容器5内に洗剤を供給する処理が行なわれる場合、洗剤タンクに接続する配管を介して、洗剤を供給する洗浄ノズル12a、12bに洗剤が供給され、洗浄ノズル12a、12bから、洗浄対象である反応容器5内に洗剤が注入される。また、配管47を介して、検体または試薬分注後の検体プローブ20bまたは分注プローブ6b、7bを洗浄する洗浄槽(図示しない)に洗浄水としてイオン交換水LWが供給され、洗浄槽内のイオン交換水LWは、プローブ洗浄後に排水される。なお、洗浄ノズル12a〜12fは、吸引専用のノズルと液体注入専用のノズルをそれぞれ有する。
【0040】
イオン交換水タンク30は上部が蓋31により密閉され、当該蓋31には、イオン交換水供給用の配管32と、圧力伝達水の戻り配管33とを接続するための貫通部35a、35bを有する。配管32と配管33には外表面に雄ネジが形成され、貫通部35a、35b内部には雌ネジが形成されることにより、両者はそれぞれネジ締結される。配管32、配管33と貫通部35a、35bが夫々ネジにより密閉されることにより、空中落下菌の混入を防止することが可能となる。なお、本発明の実施の形態では、蓋31と、イオン交換水供給用の配管32および圧力伝達水の戻り配管33とは、着脱等を考慮して、貫通部35a、35bによる螺着密閉としているが、蓋31と、イオン交換水供給用の配管32および圧力伝達水の戻り配管33とを密閉して接続できればよく、螺着に限定されるものではない。また、本発明の実施の形態では、メンテナンス性等を考慮して、蓋31が本体部30aから着脱可能としているが、密閉性という点では、イオン交換水タンク30は一体として形成して、イオン交換水タンク30の上面部に貫通部35a、35bを設置するのが好ましい。
【0041】
次に、イオン交換水等のサンプルの保存環境を変更した場合の、サンプルの汚染度について試験した結果を示す。当該試験結果により、保存する環境によりイオン交換水筒のサンプルの汚染度が大きく影響されることが確認された。
【0042】
試験は、15ml用の各プラスチック試験管に、試験サンプル(イオン交換水、汚染水)を入れ、パラメータとして温度(室温(約25℃)、冷蔵(約4℃))、大気環境(密閉、開放)、光(遮光あり、なし)などの条件を変えて、約2ケ月の間、経日的なサンプルの水質チェックを行なった。水質チェックは、サンプル中の細菌増殖の指標となるALP量(標識酵素)について、基質液添加後の発光量をカウントすることにより行なった。表1に結果を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
試験番号1は、リファレンスとしてのイオン交換水のカウント値であり、カウント値が6000以下である場合には、分析データのバックグラウンド値を押し上げることがなく、分析値が低濃度の数値である場合でも許容できる分析結果を得ることが可能となる。また、イオン交換水を室温・開放保存した場合(試験番号6)、4日程度はカウント値6000を満たすものの、4日を臨界点として急激に細菌増殖していることが確認され、一定期間経過後はイオン交換水タンクおよび配管内のメンテナンスが必要となる。
【0045】
試験番号2および3は、イオン交換水を冷蔵・密閉保存した場合であり、約2ケ月間カウント値役6000程度を維持し、水質的に装置内の分注圧力伝達水や洗浄水として問題なく使用できる清浄度を保つことが確認された。試験番号3は、遮光保存も条件としているが、遮光なし(試験番号2)よりカウント値が低く、わずかであるが効果が認められる。
【0046】
試験番号4は、イオン交換水を室温・密閉保存した場合であるが、イオン交換水のカウント値は一時的に1万程度まで増加し、その後減少に転じることが確認された。カウント値減少は、測定するALPがアルカリサイドで活性な酵素であり、試験の経過日数と共にイオン交換水が二酸化炭素を吸収し、pHが酸性側に近づきALPが失活したものと考えられる。また、試験番号5は、イオン交換水を冷蔵・開放保存した場合であるが、開放により細菌の混入はあるものの、40日程度までは環境温度の低さゆえ細菌増殖は緩やかであるが、その後爆発的に細菌増殖することが確認された。
【0047】
また、すでに細菌により汚染された汚染水(試験番号7〜10)についても、同様に保存条件を変更して試験を行なったが、汚染水の冷蔵・密閉保存(試験番号7および8)によりカウント値が減少し、汚染水であっても冷蔵・密閉による細菌増殖防止の効果が確認された。
【0048】
上記のように、イオン交換水を密閉、冷蔵または遮光保存することにより、イオン交換水内に存在する細菌の増殖を防止し、イオン交換水の清浄度を保持できることが明らかであり、これによりイオン交換水タンクや配管内の洗浄等のメンテナンスにかかる労力を軽減することが可能となる。
【0049】
表1の結果より、図2に示すイオン交換水タンク30は、イオン交換水供給用の配管32および圧力伝達水の戻り配管33を、夫々貫通部35a、35bによりネジ締結することにより、イオン交換水タンク30内を外部から遮断して密閉することができるため、空中からの細菌混入を防止するとともに、細菌増殖を抑制するという効果も奏する。
【0050】
なお、イオン交換水タンク30内は、イオン交換水の供給源からのイオン交換水供給量と、各分注装置のプローブ洗浄および洗浄機構12の洗浄水の使用量を同等に保つことにより、タンク内の圧力を調整できる。また、イオン交換水供給量と洗浄水使用量のバランスを保つことが困難な場合には、別途圧力調整用の空気孔を設けてもよいが、外部からの細菌混入を抑制するために、当該空気孔は抗菌性のフィルターを備えることが好ましい。
【0051】
また、表1の結果より、イオン交換水を冷却することにより細菌増殖を防止できるので、冷却液が流通する冷却配管をイオン交換水タンク30内に設置してイオン交換水タンク30内を冷却してもよく、またはイオン交換水タンク30自体をそのまま冷却する冷蔵庫を設置するのも好ましい。図3は、イオン交換水タンクの冷却装置の断面を模式的に示した断面図である。冷却装置41は、内部にイオン交換水タンク30の冷却容器43を備え、冷却容器43は外部に設置される冷却器42と配管44を介して接続される。冷却器42で冷却された冷却液が、配管44を介して冷却容器43内を流通することにより冷却装置41内は冷却される。
【0052】
さらに、イオン交換水保存の際、遮光によっても細菌増殖は抑制されるため、図4に示すように、イオン交換水タンク30Aの本体部30aを、黒色、褐色等の暗色に着色することにより、細菌増殖を抑制することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明にかかる実施の形態1の自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す自動分析装置においてイオン交換水が使用される各機構について説明する図である。
【図3】イオン交換水タンクの冷却装置の断面を模式的に示した断面図である。
【図4】実施の形態1の変形例にかかるイオン交換水タンクの斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 自動分析装置
2、3 第1および第2試薬テーブル
2a、3a 試薬容器
4 反応テーブル
4a 保持部
4b 光路
5 反応容器
6、7 第1および第2試薬分注装置
6a、7a 分注アーム
6b、7b 分注プローブ
8 検体容器移送機構
9 ラック
9a 検体容器
11 分析光学系
12 洗浄機構
12a〜12f 洗浄ノズル
13、14 第1および第2攪拌装置
15 制御部
16 入力部
17 出力部
18 分析部
19 記憶部
20 検体分注装置
20a 分注アーム
20b 分注プローブ
30、30A イオン交換水タンク
30a 本体部
31 蓋
32、33、47、51、51a、51b、51c、52、52a、52b、52c、53、53a、53b、53c、54、54a、54b、54c 配管
34 給水弁
35a、35b 貫通部
36 給水ポンプ
37a、37b ターミナル
38、39、41、42 シリンジポンプ
38a、39a、41a、42a シリンダー
38b、39b、41b、42b プランジャー
40 測定機構
41 冷却装置
42 冷却器
43 冷却容器
44 配管
44a〜44f 弁
50 制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬との反応を光学的に分析する自動分析装置で使用される、分注装置の分注圧力伝達水、反応容器および分注プローブの洗浄水、または洗浄液の希釈水としての精製水を貯留する精製水タンクであって、
精製水が供給される配管と前記精製水タンクとを密閉して接続する供給配管接続手段と、
前記分注圧力伝達水の戻り配管と前記精製水タンクとを密閉して接続する戻り配管接続手段と、
を備えることを特徴とする精製水タンク。
【請求項2】
前記供給配管接続手段および前記戻り配管接続手段は、螺着されることを特徴とする請求項1に記載の精製水タンク。
【請求項3】
暗色に着色される本体部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の精製水タンク。
【請求項4】
前記精製水タンク内の圧力を調整する圧力調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の精製水タンク。
【請求項5】
前記圧力調整手段は抗菌フィルターを備えることを特徴とする請求項4に記載の精製水タンク。
【請求項6】
検体と試薬との反応を光学的に分析する自動分析装置であって、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の精製水タンクを備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
前記精製水タンクを冷却する冷却手段を備えることを特徴とする、請求項6に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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