説明

精製緑茶抽出物

【課題】高濃度のカテキン類を含み、かつ不快な収斂味を低減させた精製緑茶抽出物を提供すること。
【解決手段】本発明の精製緑茶抽出物は、次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類
(B)ルチン
を含有し、(B)ルチンと、(A)非重合体カテキン類との含有質量比[(B)/(A)]が0.03以下であり、かつ(A)非重合体カテキン類中のガレート体率が0.01〜70質量%であることを特徴するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製緑茶抽出物及び該精製緑茶抽出物を配合した飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶抽出物の濃縮物などの茶抽出物を利用して、カテキン類を飲料などの飲食品に添加する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、緑茶抽出物の濃縮物を液体に溶かして非重合体カテキン類を高濃度で摂取しようとした場合、カテキン類が苦味及び渋味を呈するだけでなく、緑茶抽出物の濃縮物に含まれるその他の成分により苦味、渋味、収斂味、エグ味、雑味が増強されてしまう。
【0004】
このような不快な苦味や渋味の低減には茶抽出物からカフェインやポリフェノール類等の夾雑物を取り除くことが有効である。その方法として、吸着法(特許文献1〜3)、抽出法(特許文献4〜5)等が知られている。
一方、茶に含まれるルチンは、テアフラビンと同様に紅茶の品質を支える成分として知られているに過ぎない(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−153910号公報
【特許文献2】特開平8―109178号公報
【特許文献3】特開2002−335911号公報
【特許文献4】特開平1−289447号公報
【特許文献5】特開昭59−219384号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Agric. Food. Chem. 2005, 53, 5377-5384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カテキン類による生理効果を有効に発現させるためには、カテキン類を長期間継続して摂取することが不可欠である。上記従来の方法によれば苦味や渋味は改善されるが、不快な収斂味が十分低減されているとは言い難い。したがって、高濃度のカテキン類を含み、かつ不快な収斂味を低減して継続的に摂取可能な精製緑茶抽出物とするには、改善する余地がある。
本発明の課題は、高濃度のカテキン類を含み、かつ不快な収斂味を低減させた精製緑茶抽出物、及び該精製緑茶抽出物を含有する飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、高濃度の非重合体カテキン類を含み、かつ長期間継続摂取可能な飲食品の開発を意図して、当該飲食品に配合される精製緑茶抽出物の不快な収斂味について検討したところ、精製緑茶抽出物の収斂味の要因が精製緑茶抽出物に含まれるルチンにあることを見出した。本発明者は更に検討を進めたところ、ルチンは単独では不快な収斂味を呈しないが、精製緑茶抽出物中で高濃度の非重合体カテキン類と共存すると不快な収斂味が強く感じられるとの知見を得た。そして、不快な収斂味の抑制は、精製緑茶抽出物中の非重合体カテキン類とルチンとの含有質量比を特定範囲内に低減することで実現できることを見出した。また、このような精製緑茶抽出物では、併せて色相が良くなるという予期せぬ効果が奏されることも見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類
(B)ルチン
を含有し、(B)ルチンと、(A)非重合体カテキン類との含有質量比[(B)/(A)]が0.03以下であり、かつ(A)非重合体カテキン類中のガレート体率が0.01〜70質量%である、精製緑茶抽出物を提供するものである。
本発明はまた、上記精製緑茶抽出物を配合した食品又は飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにも拘らず、不快な収斂味が低減されるとともに、色相に優れた精製緑茶抽出物を提供することができる。したがって、本発明の精製緑茶抽出物は、飲食品へ配合すれば幅広い用途展開が可能であり、また長期間継続摂取することが可能であるから非重合体カテキン類による生理効果を十分に期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において「(A)非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を合わせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0012】
本発明において「非重合体カテキン類のガレート体」とは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートを合わせての総称である。また、「非重合体カテキン類中のガレート体率」とは、これら4種の総和質量の非重合体カテキン類8種の総和質量に対する百分率で表した数値である。
【0013】
ルチンは、フラボノイドの一種であり、クエルセチンの3位の酸素原子にβ−ルチノース(6−O−α−L−ラムノシル−D−β−グルコース)が結合した配糖体である。
本発明の精製緑茶抽出物は、ルチンの含有量が顕著に低減されていることを特徴とするものである。具体的には、(B)ルチンの含有量は、(A)非重合体カテキン類に対する質量比[(B)/(A)]で0.03以下であるが、収斂味抑制の観点から、0.025以下、更に0.02以下、更に0.015以下、特に0.010以下であることが好ましい。なお、質量比[(B)/(A)]の下限値は実質的にルチンを含有せず0であってもよいが、精製効率の観点から、0.0001以上、更に0.005以上であることが好ましい。ここで、本発明において「実質的にルチンを含有しない」とは、後掲の実施例の「ルチンの測定」においてルチン量が検出限界以下であることをいう。
【0014】
また、本発明の精製緑茶抽出物は、非重合体カテキン類中のガレート体率が0.01〜70質量%であるが、苦味抑制の観点から、0.1〜60質量%、更に1〜55質量%、更に1〜50質量%、更に1〜45質量%、特に1〜40質量%であることが好ましい。
本発明の精製緑茶抽出物は、大量の非重合体カテキン類を簡便に継続摂取するために、固形分中に非重合体カテキン類を25〜95質量%含有することが好ましく、36〜95質量%、更に40〜90質量%、特に50〜80質量%含有することが好ましい。ここで、「固形分」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して得た乾燥残分をいう。
【0015】
本発明の精製緑茶抽出物は、(C)カフェインと(A)非重合体カテキン類との含有質量比[(C)/(A)]が低いほど好ましく、具体的には、質量比[(C)/(A)]が0.17以下、更に0.15以下、特に0.13以下であることが好ましい。この範囲内であれば、非重合体カテキン類の摂取に際してカフェインが過多にならず、苦味及び渋味の抑制の点でも好ましい。なお、質量比[(C)/(A)]の下限値はカフェインを実質的に含有せず0であってもよいが、精製効率の観点から、0.001以上、更に0.01以上であることが好ましい。ここで、「実質的にカフェインを含有しない」とは、後掲の実施例の「カフェインの測定」においてカフェイン量が検出限界以下であることをいう。
【0016】
さらに、本発明の精製緑茶抽出物は、色相が0.8以下、更に0.7以下、更に0.6以下、特に0.5以下であることが好ましい。これにより、より一層色相に優れた精製緑茶抽出物とすることができる。なお、本発明において「色相」は、後掲の実施例に記載の方法によりOD400を測定した値である。
【0017】
精製に使用する緑茶抽出物としては、例えば、緑茶葉から得られた抽出液が挙げられる。抽出に使用する緑茶葉としては、Camellia属、例えばC.sinensis及びC.assamica、やぶきた種又はそれらの雑種等から得られる茶葉から製茶された緑茶葉が挙げられる。製茶された茶葉には、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等がある。また、超臨界状態の二酸化炭素接触処理を施した緑茶葉を用いてもよい。
茶を抽出する方法としては、例えば、攪拌抽出、カラム法、ドリップ抽出等の従来の方法を採用することができる。また、抽出用水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。更に、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。このようにして得られた抽出液は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本発明に使用できる。緑茶抽出物の形態としては、例えば、液体、スラリー、半固体、固体等が挙げられる。
【0018】
また、緑茶抽出物として、緑茶葉から抽出した抽出液の代わりに、緑茶抽出液の濃縮物を水又は有機溶媒に溶解又は希釈したものを使用してもよく、また緑茶葉から抽出した抽出液と緑茶抽出液の濃縮物を併用してもよい。ここで、緑茶抽出液の濃縮物とは、茶葉から水及び/又は親水性有機溶媒により抽出された抽出液から溶媒の少なくとも一部を除去したものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法により調製することができる。緑茶抽出液の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林社製の「ポリフェノン」、伊藤園社製の「テアフラン」、太陽化学社製の「サンフェノン」等が挙げられる。
【0019】
質量比[(B)/(A)]が上記範囲内にある精製緑茶抽出物とするには、ルチンの絶対量を低減する必要がある。その方法として、例えば、下記の(i)又は(ii)の方法が挙げられる。
(i)緑茶抽出物を疎水性有機溶媒で分相し、得られた有機層から疎水性有機溶媒を留去した後、水を添加して水溶液を調製し、活性炭と少なくとも1回接触処理する方法。
(ii)緑茶抽出物に親水性有機溶媒と水と混合して生成した沈殿を分離し、次いで得られた溶液を25℃以下(好ましくは5〜20℃)の温度で遠心分離し析出物を分離し、次いで親水性有機溶媒水溶液中又は水中で活性炭と少なくとも2回接触処理する方法。
なお、緑茶抽出物として、タンナーゼ活性を有する酵素で処理したものを用いてもよく、その処理方法としては、例えば、特開2004−321105号公報に記載の方法を採用することができる。
【0020】
緑茶抽出物の精製に使用する疎水性有機溶媒としては有機層と水層に分液できれば特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン、トルエン等の炭化水素、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステルが例示される。中でも、飲食品への使用の点から、エステル、特に酢酸エチル好ましい。疎水性有機溶媒の使用量は、精製効率の点から、緑茶抽出物の質量(乾燥質量)に対して、1〜50倍量、特に10〜40倍量であることが好ましい。この場合、緑茶抽出物として、緑茶葉を水若しくは熱水で抽出して得られた緑茶抽出液、又は緑茶抽出液の濃縮物を水で希釈したものが好適に使用される。
一方、親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトン等のケトンが例示される。中でも、飲食品への使用の点から、アルコール、特にエタノールが好ましい。親水性有機溶媒と水との混合質量比は60/40〜97/3、更に60/40〜95/5、特に85/15〜95/5であることが好ましい。また、その親水性有機溶媒水溶液を、緑茶抽出物の質量(乾燥質量)に対して、2〜8倍、特に3〜6倍の質量比率で使用することが、非重合体カテキン類の抽出効率、緑茶抽出物の精製効率等の点で好ましい。
【0021】
接触処理に用いる活性炭としては、一般に工業レベルで使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ZN−50(北越炭素社製)、クラレコールGLC、クラレコールPK−D、クラレコールPW−D(クラレケミカル社製)、白鷲AW50、白鷲A、白鷲M、白鷲C(武田薬品工業社製)等の市販品を用いることができる。
活性炭の使用量は、水又は親水性有機溶媒水溶液100質量部に対して0.01〜8質量部、更に0.02〜5質量部、特に0.02〜3質量部添加することが、カフェイン除去効率、ろ過工程におけるケーク抵抗が小さい点で好ましい。
処理時間は、10〜180分程度の熟成時間を設けることが好ましく、これらの処理は10〜60℃、更に10〜50℃、特に10〜40℃で行うことが好ましい。
なお、精製緑茶抽出物の質量比[(C)/(A)]は、活性炭の使用量を増量して接触処理するか、あるいは接触処理を複数回実施することで上記範囲内に調整することができる。活性炭との接触処理を複数回実施する場合、各処理工程間でろ過工程を設けることが好ましい。
【0022】
また、遠心分離機は冷却可能であれば特に限定されるものではなく、分離板型、円筒型、デカンター型等の一般的な機器を使用することができる。遠心分離条件としては、温度は25℃以下であるが、5〜20℃、更に10〜15℃であることが好ましい。また、回転数と時間は、所望の色相になるように調整された条件であることが望ましく、例えば、分離板型の場合、3000〜10000rpm、更に5000〜10000rpm、特に6000〜10000rpmで、0.2〜30分、更に0.2〜20分、特に0.2〜15分であることが好ましい。
【0023】
濾過に使用するメンブランフィルターは、例えば、孔径が0.01〜10μm、更に0.1〜0.5μmであることが好ましく、またその材質はニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等であることが好ましい。
【0024】
このようにして得られる本発明の精製緑茶抽出物は、高濃度で非重合体カテキン類を含有するにも拘らず、不快な収斂味が低減されているため幅広い用途展開が可能であり、例えば、本発明の精製緑茶抽出物をそのまま食品又は飲料に配合して使用することができる。その場合、減圧濃縮、薄膜濃縮などの方法により溶媒を除去してもよい。また、精製緑茶抽出物の製品形態として粉体が望ましい場合は、噴霧乾燥や凍結乾燥等の方法により粉体化することができる。精製緑茶抽出物中の含水率は、10質量%以下、更に8質量%以下、特に5質量%以下であることが好ましく、他方下限値は0.1質量%、更に1質量%、特に3質量%であることが好ましい。これにより、精製緑茶抽出物の腐敗や着色等が防止され非重合体カテキン類の安定性を高めることが可能になり、また飲料を調製する際に濁りを生ずることなく水溶解性を向上させることができる。なお、精製緑茶抽出物中の含水率は、後掲の実施例に記載の方法により測定した値である。
【0025】
本発明においては、精製緑茶抽出物が色相に優れることから、精製緑茶抽出物を飲料に使用することが好ましい。
本発明の飲料としては、例えば、茶飲料、非茶系飲料が挙げられる。茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料が挙げられる。また、非茶系飲料としては、清涼飲料(例えば、果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツ飲料、アイソトニック飲料)、コーヒー飲料、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の非アルコール飲料、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等のアルコール飲料が挙げられる。
また、食品としては、例えば、菓子類(例えば、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット等の焼菓子、チューインガム、チョコレート、キャンデー)、デザート類(例えば、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム)、レトルト食品、調味料(例えば、ソース、スープ、ドレッシング、マヨネーズ、クリーム)が挙げられる。なお、飲食品の形態は特に限定されず、摂取しやすい形態であれば、固形、粉末、液体、ゲル状、スラリー状等のいずれであってもよい。
【0026】
本発明の精製緑茶抽出物を用いた食品又は飲料は、非重合体カテキン類の濃度を0.05〜0.5質量%、好ましくは0.06〜0.5質量%、更に0.08〜0.5質量%、更に好ましくは0.092〜0.4質量%、殊更に好ましくは0.11〜0.3質量%、特に好ましくは0.12〜0.3質量%に調整すると、深みがあり、不快な収斂味がなく良好な風味の食品又は飲料が得られる点で好ましい。
【0027】
本発明の飲料には、酸化防止剤、香料、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独で、あるいは併用して配合してもよい。
【0028】
本発明の飲料のpH(25℃)は2〜7、好ましくは2〜6.5とすることが呈味及び非重合体カテキン類の安定性の点で好ましい。
【0029】
また、本発明の飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填した容器詰飲料として提供することができる。
また、容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造することができる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【実施例】
【0030】
(1)非重合体カテキン類及びカフェインの測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラディエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。なお、グラディエント条件は以下の通りである。
【0031】
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 97% 3%
5 97% 3%
37 80% 20%
43 80% 20%
43.5 0% 100%
48.5 0% 100%
49 97% 3%
60 97% 3%
【0032】
(2)ルチンの測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式Waters2695、WATERS製)を用い、カラム(Shimpach VP ODS、150×4.6mmI.D.)を装着し、カラム温度40℃でグラディエント法により行った。移動相C液はリン酸を0.05質量%含有する蒸留水溶液、D液はメタノール溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は368nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0033】
時間(分) C液濃度(体積%) D液濃度(体積%)
0 95% 5%
20 80% 20%
40 30% 70%
41 0% 100%
46 0% 100%
47 95% 5%
60 95% 5%
【0034】
(3)硫酸キニーネ法(等価濃度試験法)による苦味の評価
硫酸キニーネ2水和物を表1に記載の苦味強度に対応した濃度に調整した。各実施例及び比較例で得られた精製緑茶抽出物を、非重合体カテキン類濃度0.2質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、評価パネラー4名による官能試験を行った。官能試験は、評価サンプルを試飲して標準苦味溶液のどのサンプルと苦味の強さが等しいかを協議により判断した。
【0035】
【表1】

【0036】
(4)収斂味の評価
各実施例及び比較例で得られた精製緑茶抽出物を、非重合体カテキン類濃度0.2質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、評価パネラー4名による官能試験を行った。官能試験は、下記の基準で飲用直後の不快な収斂味を評価し、その後協議により最終スコアを決定した。
【0037】
評点5:収斂味が強い。
4:収斂味がわずかに強い。
3:収斂味がわずかに弱い。
2:収斂味がやや弱い。
1:収斂味が弱い。
【0038】
(5)色相(OD400)の測定
非重合体カテキン類濃度0.2質量%となるよう調整した試料溶液を、分光光度計(U2810形、日立製作所製)で400nmの吸光度を測定した。
【0039】
(6)含水率の測定
精製緑茶抽出物の含水率は、常圧加熱乾燥法により測定した。すなわち、試料約1gを秤量し、105℃で3時間乾燥し、乾燥後の試料を秤量した。乾燥前後の試料の質量から固形分当たりの含水率(質量%)を算出した。
【0040】
製造例1:「緑茶抽出物1」
緑茶葉(ケニア産、大葉種)3kgに88℃の熱水45kgを添加し、60分間攪拌してバッチ抽出した。次いで、100メッシュ金網で粗ろ過後、抽出液中の微粉を除去する為に遠心分離操作を行い、「緑茶抽出液」36.8kg(pH5.3)を得た(緑茶抽出液中の非重合体カテキン類濃度=0.88質量%、非重合体カテキン類中のガレート体率=51.6質量%、カフェイン=0.17質量%)。緑茶抽出液の一部を凍結乾燥し、緑茶抽出液の濃縮物である「緑茶抽出物1」を得た。「緑茶抽出物1」中の非重合体カテキン類濃度=32.8質量%、非重合体カテキン類中のガレート体率=51.6質量%、カフェイン/非重合体カテキン類比=0.193であった。
【0041】
製造例2:「緑茶抽出物2」
緑茶葉(ケニア産、大葉種)3kgに88℃の熱水45kgを添加し、60分間攪拌してバッチ抽出した。次いで、100メッシュ金網で粗ろ過後、抽出液中の微粉を除去する為に遠心分離操作を行い、「緑茶抽出液」36.8kg(pH5.3)を得た(緑茶抽出液中の非重合体カテキン類濃度=0.88質量%、非重合体カテキン類中のガレート体率=51.6質量%、カフェイン=0.17質量%)。この緑茶抽出液を温度15℃に保持し、タンナーゼ(キッコーマン社製タンナーゼKTFH、500U/g)を緑茶抽出液に対して430ppmとなる濃度で添加し、55分間保持し、90℃に溶液を加熱して、2分間保持し酵素を失活させ、反応を止めた(pH5.2)。次いで70℃、6.7kpaの条件下で減圧濃縮によりBrix濃度20%まで濃縮処理を行い、更に噴霧乾燥して粉末状の抽出液の濃縮物である「緑茶抽出物2」1.0kgを得た。得られた「緑茶抽出物2」は非重合体カテキン類濃度=30.5質量%、非重合体カテキン類中のガレート体率=31.6質量%、カフェイン/非重合体カテキン類比=0.183であった。
【0042】
実施例1
「緑茶抽出物1」5.0gをイオン交換水100gに溶解した後、酢酸エチル100mLを添加し、混合した。静置による分層後、水層を除去した後、エバポレータにより酢酸エチルを留去し、水を添加し、得られた水溶液を活性炭(太閤SGP、フタムラ化学株式会社製)0.025gと接触させ、続けて0.2μmメンブランフィルターによって濾過を行った。その後、93.3Pa、25℃の条件で凍結乾燥して「精製緑茶抽出物1」を得た。その分析値を表2に示す。
【0043】
実施例2
「緑茶抽出物1」5.0gに換えて、「緑茶抽出物2」5.0gを用いた以外は実施例1と同様にして「精製緑茶抽出物2」を得た。その分析値を表2に示す。
【0044】
実施例3
92質量%エタノール水溶液800g中に、「緑茶抽出物1」200gを投入し、室温のまま約3時間の攪拌を続けた。その後、生成している沈殿を2号ろ紙で濾過した。得られたろ液にイオン交換水を417g添加し、15℃、100rpm攪拌条件下で約5分間攪拌を行った。その混合溶液を、小型冷却遠心分離機(日立工機社製)を用い、操作温度15℃で析出した濁り成分を分離した(6000rpm、5分)。得られた溶液を活性炭(クラレコールGLC、クラレケミカル社製)30gと接触させ、続けて0.2μmメンブランフィルターによってろ過を行った。次に、エバポレータにてアルコールを留去し、得られた溶液を活性炭(太閤SGP、フタムラ化学株式会社製)1gと接触させ、続けて0.2μmメンブランフィルターによって濾過を行なった。その後、93.3Pa、25℃の条件で凍結乾燥して「精製緑茶抽出物3」を得た。その分析値を表2に示す。
【0045】
実施例4
「緑茶抽出物1」200gに換えて、「緑茶抽出物2」200gを用いた以外は実施例3と同様にして「精製緑茶抽出物4」を得た。その分析値を表2に示す。
【0046】
比較例1
92質量%エタノール水溶液800g中に、「緑茶抽出物1」200gを投入し、室温のまま約3時間の攪拌を続けた。その後、生成している沈殿を2号ろ紙で濾過した。得られたろ液にイオン交換水を417g添加し、15℃、100rpm攪拌条件下で約5分間攪拌を行った。その混合溶液を、小型冷却遠心分離機(日立工機社製)を用いて操作温度15℃で析出した濁り成分を分離した(6000rpm、5分)。次に、得られた溶液をエバポレータにてアルコール留去し、その後93.3Pa、25℃の条件で凍結乾燥して「緑茶抽出物a」を得た。その分析値を表2に示す。
【0047】
比較例2
「緑茶抽出物1」200gに換えて「緑茶抽出物2」200gを用いた以外は比較例1と同様にして「緑茶抽出物b」を得た。その分析値を表2に示す。
【0048】
比較例3
三井農林社製ポリフェノンHGを用いた。その分析値を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2から、(B)ルチン/(A)非重合体カテキン類の質量比及びガレート体率を特定範囲内とすることで、高濃度で非重合体カテキン類を含有するにも拘らず、不快な収斂味が抑制されて風味が良好であるとともに、色相に優れる精製緑茶抽出物が得られることが判った。特に実施例4のように、非重合体カテキン類中のガレート体率を26質量%以下に低減することで、苦味と収斂味がより一層改善された精製緑茶抽出物が得られることが判った。
【0051】
<含水率と濁度の測定>
実施例1〜4の精製緑茶抽出物の凍結乾燥品と、実施例2及び実施例3において凍結乾燥せずにそのまま凍結したものについて、含水率と下記条件における濁度(NTU)を測定した。その結果を表3に示す。
なお、濁度は上記凍結乾燥品と上記凍結品とを、それぞれBrix12になるようにイオン交換水で溶解し、その水溶液の濁度を測定した。ここで、濁度測定には、濁度計(Turbidimeter/TN-100 EUTECH INSTRUMENTS社製)を使用し、含水率は前述の方法で測定した。また、凍結品は、25℃、10分の解凍条件で解凍後、測定を実施した。
【0052】
【表3】

【0053】
表3から、精製緑茶抽出物の含水率を低下させると、溶解時の濁度が低下することが判った。この結果から、精製緑茶抽出物は、含水率を10質量%以下に低下させることが溶解性向上に有効であることが判った。
また、保存時の外観観察から、精製緑茶抽出物中の含水率が10質量%以下であれば、25℃においても精製緑茶抽出物の腐敗を防ぐことができ、また含水率の下限値が0.1質量%以上であれば、空気酸化等による保存時の着色を防止できる。
【0054】
実施例5
実施例1〜4の精製緑茶抽出物を用い、表4に記載の割合で各成分を配合して非重合カテキン類濃度が0.11質量%の飲料を調製した。次いで、得られた飲料を食品衛生法に基づく殺菌処理及びホットパック充填を行って容器詰飲料とした。得られた容器詰飲料は、不快な収斂味がなく、飲みやすい飲料であった。
【0055】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類
(B)ルチン
を含有し、
(B)ルチンと、(A)非重合体カテキン類との含有質量比[(B)/(A)]が0.03以下であり、かつ
(A)非重合体カテキン類中のガレート体率が0.01〜70質量%である、
精製緑茶抽出物。
【請求項2】
(C)カフェインと(A)非重合体カテキン類との含有質量比[(C)/(A)]が0.17以下である、請求項1記載の精製緑茶抽出物。
【請求項3】
色相が0.8以下である、請求項1又は2記載の精製緑茶抽出物。
【請求項4】
当該精製緑茶抽出物中の含水率が10質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の精製緑茶抽出物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の精製緑茶抽出物を配合した食品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の精製緑茶抽出物を配合した飲料。
【請求項7】
容器詰飲料である、請求項6項記載の飲料。