説明

糖化アルブミン測定試薬

【課題】糖化アルブミンをプロテアーゼで分解し、遊離した糖化アミノ酸に糖化アミノ酸オキシダーゼを作用させ、生成する過酸化水素を測定する糖化アルブミンの測定方法において、プロテアーゼ使用量が少なく、濁りの影響を受けない糖化アルブミン測定方法及び糖化アルブミン測定試薬を提供する。
【解決手段】第4級アンモニウム塩であるトリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を含有させることにより、反応溶液中の濁りの発生を抑制し、プロテアーゼ使用量を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の糖化アルブミン量の測定方法及び測定試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
糖化アルブミンは、アルブミンが非酵素的にグリコシル化された蛋白質であり、糖、すなわちアルドース(アルデヒド基を潜在的に有する単糖及びその誘導体)側のアルデヒド基と、蛋白質側のアミノ基が非酵素的に共有結合した結果、生成したものである。
糖化アルブミンは、生体内の血液などの生体試料中に含有されている。血液中に存在する糖化アルブミンの濃度は、血清中に溶解しているグルコースなどの糖類の濃度に強く依存している。糖尿病状態では糖化アルブミンの生成が亢進しており、血清中の糖化アルブミンの濃度は、過去の一定期間の平均血糖値を反映している。糖化アルブミンを測定することは、糖尿病の診断や病状管理に重要となっている。
【0003】
従来、糖化アルブミンを測定する方法として、高速液体クロマトグラフィーを用いる方法(例えば、非特許文献1参照)、抗原抗体反応を利用する方法(例えば、非特許文献2参照)が知られている。
現在では、上記方法よりも、操作が簡単で、安価に、短時間で精度よく糖化アルブミンを測定する方法として、酵素的測定方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
この酵素的測定方法とは、糖化アルブミンをプロテアーゼで分解し、遊離した糖化アミノ酸に糖化アミノ酸オキシダーゼを作用させ、生成する過酸化水素を測定する方法である。
【0004】
しかし、この酵素的測定方法では、使用するプロテアーゼの濃度が1,000U/mL以上と、非常に高濃度となってしまうという欠点が存在する。
すなわち、現在の臨床診断測定試験においては複数の臨床診断マーカーを同時にひとつの分析機器で測定することが通常であり、1,000U/mL以上の高濃度のプロテアーゼを一旦使用すると、通常の洗浄ではプロテアーゼを分析機器の測定系から完全に除去することができず、通常の洗浄では除去しきれずに残存するプロテアーゼが、他の臨床診断測定試験の酵素反応に影響を与える。他の臨床診断測定試験の酵素反応に影響を与えないプロテアーゼの使用量は、1,000U/mL未満にできるだけ低減化する必要がある。
現状では、この残存するプロテアーゼの影響を回避するため、糖化アルブミン測定後の分析機器の洗浄回数を増やし、又は他の測定試験項目と同時測定を避け、糖化アルブミン測定のみを別に測定を行っている。そのため、臨床診断測定において、迅速な測定の実施に影響を与えている。
【0005】
プロテアーゼ使用量を1,000U/mL未満にできるだけ低減化し、プロテアーゼの活性自体が増強された、残存プロテアーゼの影響が少ない糖化アルブミン測定試薬が求められている。しかし、プロテアーゼ使用量を抑制するためには、反応液中に占める試料の添加量を減らす、又はプロテアーゼ反応を促進させる物質を別途添加する必要がある。前者では、反応の感度低下の原因となり、測定の正確性が失われる。後者では、添加する物質により、反応液が濁り、測定に影響を及ぼす問題が起こる等の課題がある。
【0006】
従来、糖化蛋白質の測定において、第4級アンモニウム塩である塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジル-n-ブチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(アルキル基の炭素数12)又はラウリルジメチルアミンオキサイドを添加すると、グロブリン成分及びアスコルビン酸の影響を回避することができ、プロテアーゼを安定化できることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、これらの第4級アンモニウム塩を用いた場合でも、前述のような、反応液の濁りを十分には回避できず、また、プロテアーゼ使用量を1,000U/mL未満に低減させることはできない。
【0007】
【特許文献1】特公平05−33997号公報
【特許文献2】特開平11−127895号公報
【特許文献3】国際公開第97/013872号パンフレット
【特許文献4】国際公開第02/061119号パンフレット
【非特許文献1】Chromatogr.sci.,1979年 10巻, p659
【非特許文献2】日本臨床検査自動化学会誌,1993年 18巻, p620
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、プロテアーゼの使用量を低減させ、反応溶液中に濁りが発生しない糖化アルブミンの測定方法及び測定試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
糖化アルブミンの測定において、第4級アンモニウム塩であるトリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を共存させることにより、反応溶液中の濁りの発生を抑制し、プロテアーゼ使用量を低減させることを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の糖化アルブミンの測定方法及び当該測定方法を用いた糖化アルブミン測定試薬に関する。
(1)糖化アルブミンをプロテアーゼで分解し、遊離した糖化アミノ酸に糖化アミノ酸オキシダーゼを作用させ、生成する過酸化水素を測定する糖化アルブミン測定試薬において、トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を含有することを特徴とする糖化アルブミン測定試薬。
(2)トリメチルアンモニウム塩が、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の糖化アルブミン測定試薬。
(3)ジメチルアンモニウム塩が、臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムであることを特徴とする上記(1)に記載の糖化アルブミン測定試薬。
(4)トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩の使用濃度が1〜5g/Lの範囲であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の糖化アルブミン測定試薬。
(5)糖化アミノ酸オキシダーゼが糸状菌由来の酵素、アスペルギルス属由来の酵素又はコリネバクテリウム属由来の酵素である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の糖化アルブミン測定試薬。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.糖化アルブミン測定試薬
糖化アルブミン測定試薬は、糖化アミノ酸オキシダーゼ、プロテアーゼ、及びトリメチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩からなる。また、必要によりエチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、Triton−X100;ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ等の酵素;4−アミノアンチピリン、フェノール、TOOS、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム塩(DA−67)、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム塩(DA−64)等の過酸化水素検出試薬;1−Methoxy PMSやWST−8(ホルマザン試薬)等の酸化還元系発色試薬;トリス、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、MES、BES、HEPES、TES、ビシン、トリシン、グリシン、ホウ酸、Bis−Tris propane、イミダゾール等の緩衝剤;FAD、NAD、NADP、NADH、NADPH等の補酵素;塩化ナトリウム、塩化カリウム、アジ化ナトリウム等の各種無機塩;デキストラン等の多糖類;ウシ血清アルブミン(BSA);グリセロール;アミノ酸;界面活性剤;抗生物質、サルファ剤等の化学療法剤等のいずれか1つ以上を含有させることもできる。
また、上記試薬は、液状でも、また、必要により凍結乾燥や噴霧乾燥し、使用時に溶解させてもよい。
本発明の方法によれば、第4級アンモニウム塩であるトリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を用いることで、試薬と試料の混合による濁り発生を抑制するとともに、プロテアーゼ使用量を1,000U/mL未満に低減させた糖化アルブミン測定試薬を調製することができる。
【0012】
2.糖化アミノ酸オキシダーゼ
本発明に用いられる「糖化アミノ酸オキシダーゼ」は、糖化アミノ酸を酸素存在下で酸化して、及び過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素であり、如何なる起源のものでも用いることができる。微生物、植物又は動物などの生産する糖化アミノ酸オキシダーゼのいずれであってもよく、特に制限されない。例えば、ギベレラ(Gibberella)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、カンジダ(Candida)属、ペニシリウム(Penicillium)属、フサリウム(Fusarium)属、アクレモニウム(Acremonium)属又はデバリオマイゼス(Debaryomyces)属由来の酵素が挙げられ、好ましくは糸状菌由来の酵素、アスペルギルス属由来の酵素又はコリネバクテリウム属由来の酵素が用いられる。さらに具体的には、市販の糖化アミノ酸オキシダーゼ FAOD−E(キッコーマン社製)が好ましく用いられる。
また、糖化アミノ酸オキシダーゼの濃度は、例えば、溶液の場合、0.05〜1,000U/ml、好ましくは0.2〜100U/mlである。糖化アミノ酸オキシダーゼの濃度が0.05U/ml未満では、酵素反応が不十分となり、1,000U/mlを超えるとコストがかかるため好ましくない。
【0013】
3.プロテアーゼ
共存させるプロテアーゼとしては、バチルス属、アスペルギルス属、ストレプトマイセス属などの微生物由来のプロテアーゼが挙げられる。その他、セリンプロテアーゼも好ましい。プロテアーゼ使用量は、他の臨床診断測定試験の酵素反応に影響を与えない程度である1,000U/mL未満に低減されていることが望ましい。
【0014】
4.第4級アンモニウム塩
第4級アンモニウム塩は、NH4のHを4つ炭化水素基に置換した化合物である。トリメチルアンモニウム塩は、親油基の主鎖となるアルキル基を1つ、メチル基(CH)を3つ有したアンモニウム構造に塩素や臭素等のアニオンを対イオンとするアンモニウム塩である。ジメチルアンモニウム塩は、親油基となる主鎖を2つ、メチル基を2つ有するアンモニウム塩である。
【0015】
糖化アミノ酸オキシダーゼと前記トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を同一の試薬内に予め混合し、共存する形で用いることができる。また、糖化アミノ酸オキシダーゼによる反応が進行するときに前記トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩が存在していればよいので、糖化アミノ酸オキシダーゼを含有する試薬(試薬A)と前記トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を含有する試薬(試薬B)をそれぞれ別途調製し、試薬Aと試薬Bを適宜混合して、前記トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩存在下で糖化アミノ酸オキシダーゼ反応を進行させることもできる。
【0016】
本発明において、反応液の濁りを解消させるために共存させるトリメチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩は、具体的には、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムが挙げられる。本発明においては、上記トリメチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩は、それぞれ単独でも複数組み合わせても用いることが可能である。
【0017】
糖化アミノ酸オキシダーゼと共存させる前記トリメチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩の溶液中の濃度については、反応液の濁りの解消効果が発揮され、かつ、酵素を含む試薬を取り扱う上で不都合のない範囲内であれば特に限定されず、各化合物について適切な濃度で添加することができる。例えば、トリメチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩の濃度は、好ましくは1〜5g/Lの濃度で用いられる。
トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を、1〜5g/L共存させれば、濁りの発生が抑制されるとともに、プロテアーゼの使用量を1,000U/mL未満に低減化させた測定が可能となる。
【0018】
5.反応pH及び緩衝剤
一般に酵素は、保存時のpHによりその安定性が大きく影響を受けるため、安定なpH域の種々の緩衝液を併用することが好ましい。本発明の反応系の濁り解消において用いられる緩衝液としては、pH6.0〜8.0の間で緩衝能を有することが望ましい。この様な緩衝液として、汎用的なトリス緩衝液やリン酸緩衝液を挙げることもできるし、酢酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸系緩衝液、2−Morpholinoethanesulfonic acid(MES)、BES、HEPES、TES、ビシン、トリシン等のグッドバッファー、グリシン−NaOH等のアミノ酸系緩衝液、ホウ酸緩衝液、Bis−Tris propane緩衝液、イミダゾール緩衝液等を使用することもできる。
【0019】
酵素を保存する際の緩衝液の濃度については、好ましくは5〜500mM、さらに好ましくは20〜200mMである。本発明のトリメチルアンモニウム塩及び/若しくはジメチルアンモニウム塩を緩衝液に添加する場合は、直接添加するか、又はpH5.0〜10.0、好ましくはpH6.0〜8.0、特に好ましくはpH6.0〜7.5に調整したそれらの水溶液を添加すればよい。トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を添加することにより、pHが目的とする範囲から外れるときは、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等の添加により、pHが目的の範囲内となるように調整することができる。
【0020】
6.糖化アルブミンの測定方法
糖化アルブミンの測定検体は、尿、血清、血漿等が挙げられる。測定検体中に含まれる糖化アルブミンの濃度については、適宜検体を希釈し、測定に適当な濃度、例えば、2.5g/dL程度にあることが好ましい。
作用させるpHは、pH5.0〜10.0、好ましくはpH6.0〜9.0、特に好ましくはpH6.0〜7.5であり、糖化アミノ酸オキシダーゼの酵素反応に用いられる通常のpH領域を適宜選択することができる。
pHの調整法は、汎用的なトリス緩衝液やリン酸緩衝液を用いて調整することができ、酢酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸系緩衝液、MES、BES、HEPES、TES、ビシン、トリシン等のグッドバッファー、グリシン−NaOHなどのアミノ酸系緩衝液、ホウ酸緩衝液、Bis−Tris propane緩衝液、イミダゾール緩衝液なども使用することができる。この際、糖化アミノ酸オキシダーゼの安定化剤であるトリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩、キレート試薬、基質特異性改良剤である界面活性剤が適宜存在していてもよい。
【0021】
糖化アミノ酸オキシダーゼの濃度は、終濃度が0.1〜50U/ml、好ましくは1〜10U/mlとなるように添加すればよい。
糖化アミノ酸オキシダーゼの作用時間は、30秒〜120分間、好ましくは1〜30分間である。作用温度は、例えば、20〜45℃であり、通常の酵素反応に用いられる温度を適宜選択することができる。
【0022】
試料に添加する糖化アミノ酸オキシダーゼ溶液には、必要により、塩化ナトリウム、塩化カリウム、アジ化ナトリウム等の各種無機塩、デキストラン等の多糖類、BSA、グリセロール、アミノ酸を共存させてもよい。この液状の製剤を凍結乾燥や噴霧乾燥してもよい。
【0023】
糖化アミノ酸オキシダーゼの反応による生成物は、いかなる方法により測定してもよい。例えば、生成する過酸化水素は、ペルオキシダーゼ及び適当な発色試薬、発光試薬を用いる酵素的測定法、又は酵素電極を用いる電気的方法で測定することができる。
例えば、酵素を用いる反応生成物の検出試薬には、トリス、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、MES、BES、HEPES、TES、ビシン、トリシン、グリシン、ホウ酸、Bis−Tris propane、イミダゾール等の緩衝剤、FAD、NAD、NADP、NADH、NADPH等の補酵素、ペルオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン、フェノール、TOOS、DA−67等の過酸化水素検出試薬、1−Methoxy PMSやWST−8(ホルマザン試薬)等の酸化還元系発色試薬、カタラーゼ等の酵素のいずれか1つ以上を含有させることができる。
また、必要により、塩化ナトリウム、塩化カリウム、アジ化ナトリウム等の各種無機塩、デキストラン等の多糖類、BSA、グリセロール、アミノ酸を共存させてもよい。
【0024】
7.濁りの評価方法
濁りの評価は、一般的に試薬の影響が少ない600nm以上の波長を測定することで確認することができる。具体的には、使用する発色剤の最大吸収波長以上で600nm以上の波長を選択する。例えば、過酸化水素検出試薬のDA−67を用いる場合は、DA−67の最大吸収波長が666nmであるため、濁りの評価には694nmの波長を使用する。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0025】
1.第4級アンモニウム塩を用いた糖化アルブミンの測定
本発明の第4級アンモニウム塩を用いて糖化アルブミンを測定するため、以下の試薬を調製した。
<試薬>
試薬1(R1):
50mM MES緩衝液(pH7.0)
15mM KCl
0.06% Triton X100
0.05% EGTA
5U/mL ペルオキシダーゼ(キッコーマン社製)
5U/mL 糖化アミノ酸オキシダーゼ(FAOD−E キッコーマン社製)
試薬2(R2):
150mM MES緩衝液(pH6.5)
0.09% アジ化ナトリウム
0.05mM DA−67
3.0g/L 塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム (CH(CH15N(CH)Cl又はヨウ化フェニルトリメチルアンモニウム(ナカライ社製)
375U/mL プロテアーゼ(シグマ社製)
<試料>
生理食塩水、ヒト血清を実験試料として用いた。糖化アルブミン測定の対照試薬としては、ルシカGA-Lキャリブレーター(旭化成ファーマ社製)を用いた。
<使用測定機器>
生化学自動分析機(商品名JCA−BM1650:日本電子社製)
【0026】
<反応手順>
37℃にインキュベートされた、R1 78μLに、試料3μL(生化学自動分析機(商品名JCA−BM1650:日本電子社製)における標準希釈した検体)を添加し、37℃で反応を開始し、正確に5分間反応させた後に、R2 26μLを添加した。R2添加前及び添加5分後の主波長658nm、副波長805nmの吸光度を測定した。
糖化アルブミン測定の対照試薬として、ルシカGA-Lキャリブレーターを用いた。
<測定結果>
第4級アンモニウム塩として塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いて、ヒト血清中の糖化アルブミンを測定した結果、添加するプロテアーゼが375U/mLと、1,000U/ml未満に低減させたにもかかわらず、良好な反応性(図1)が認められた。また、対照試薬であるルシカGA-Lとの良好な相関も認められた(図2)。これにより、トリメチルアンモニウム塩である塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム及びヨウ化フェニルトリメチルアンモニウムを使用できることが確認され、特に塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが有用であることが確認された。
【実施例2】
【0027】
2.第4級アンモニウム塩として臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムを用いた糖化アルブミンの測定
<試薬>
試薬1(R1):
実施例1と同様とした。
試薬2(R3):
150mM MES緩衝液(pH6.5)
0.09% アジ化ナトリウム
0.05mM DA−67
1.0g/L 臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウム (C2044BrN)
375U/mL プロテアーゼ(シグマ社製)
【0028】
<反応手順>
R2の代わりにR3を用いた以外は、実施例1と同様とした。
<測定結果>
第4級アンモニウム塩として臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムを使用することにより、実施例1と同等な反応性(図3)及び対照試薬であるルシカGA-Lとの良好な相関(図4)が得られた。これにより、ジメチルアンモニウム塩である臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムも使用できることが確認された。
【実施例3】
【0029】
3.第4級アンモニウム塩の違いによる濁りの発生の有無についての確認
<試薬>
試薬1(R1):
実施例1と同様とした。
試薬2(R4)
第4級アンモニウム塩として、下記の第4級アンモニウム塩(1.0g/L)を使用し、反応性の比較及び濁りの発生の有無について確認した。
臭化フェニルトリメチルアンモニウム
臭化ラウリルトリメチルアンモニウム
臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム
臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム
臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム
ヨウ化フェニルトリメチルアンモニウム
【0030】
<反応手順>
R2で使用した第4級アンモニウム塩の代わりにR4記載のトリメチルアンモニウム塩を用いた以外は、実施例1と同様とした。濁りの発生の有無についての確認のため、694nmにおける吸光度の確認を行った。
【0031】
<測定結果>
第4級アンモニウム塩として、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム又はヨウ化フェニルトリメチルアンモニウムを含有させるよりも(図5)、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は臭化オクタデシルトリメチルアンモニウムを含有させるほうが、反応性が良好であることが確認された(図6)。
反応性が良好であった第4級アンモニウム塩である臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウムについて、さらに濁りの発生の有無についての確認を行った(図7)。
これらの結果より、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウムを含有させるよりも、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム又は臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを含有させることで濁りの影響をより受けにくい条件で糖化アルブミンを測定できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】トリメチルアンモニウム塩を含有しない場合、トリメチルアンモニウム塩である塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又はヨウ化フェニルトリメチルアンモニウムを含有するときの、ルシカGA-Lキャリブレーターに対する反応性を示すグラフである。
【図2】塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを含有するときの、ルシカGA-Lとの相関を示すグラフである。
【図3】ジメチルアンモニウム塩である臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムを含有するときの、ルシカGA-Lキャリブレーターに対する反応性を示すグラフである。
【図4】臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムを含有するときの、ルシカGA-Lとの相関を示すグラフである。
【図5】臭化フェニルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム又はヨウ化フェニルトリメチルアンモニウムを含有するときの、ルシカGA-Lキャリブレーターに対する反応性を示すグラフである。
【図6】臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は臭化オクタデシルトリメチルアンモニウムを含有するときの、ルシカGA-Lキャリブレーターに対する反応性を示すグラフである。
【図7】臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は臭化オクタデシルトリメチルアンモニウムを含有するときの、反応溶液中の濁りの状況を波長694nmにおける吸光度により示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖化アルブミンをプロテアーゼで分解し、遊離した糖化アミノ酸に糖化アミノ酸オキシダーゼを作用させ、生成する過酸化水素を測定する糖化アルブミン測定試薬において、トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩を含有することを特徴とする糖化アルブミン測定試薬。
【請求項2】
トリメチルアンモニウム塩が、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の糖化アルブミン測定試薬。
【請求項3】
ジメチルアンモニウム塩が、臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の糖化アルブミン測定試薬。
【請求項4】
トリメチルアンモニウム塩及び/又はジメチルアンモニウム塩の使用濃度が1〜5g/Lの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の糖化アルブミン測定試薬。
【請求項5】
糖化アミノ酸オキシダーゼが糸状菌由来の酵素、アスペルギルス属由来の酵素又はコリネバクテリウム属由来の酵素である、請求項1〜4のいずれかに記載の糖化アルブミン測定試薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−295305(P2008−295305A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141465(P2007−141465)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】