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糖化ヘモグロビンの測定方法、および測定キット
説明

糖化ヘモグロビンの測定方法、および測定キット

【課題】再現性、正確性を有し、かつ保存安定性に優れた糖化ヘモグロビン量を比色定量するための測定方法を提供する。
【解決手段】少なくともプロテアーゼが含有された前処理液(a)と少なくとも糖化アミノ酸オキシダーゼが担持された高分子基材からなる試験片(b)とを用い、測定試料と前処理液(a)とを体積比率1:1〜1:15で混合させる工程、および測定試料と前処理液(a)との混合液を、試験片(b)に点着させる工程を含む、糖化ヘモグロビンの測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断の現場で正確、簡便かつ迅速に測定試料中の糖化ヘモグロビン量を比色定量するための測定方法、および測定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の診断、予防、および治療を行う上で、糖化タンパク質の測定は非常に重要である。糖化タンパク質は、生体内でグルコースと血中タンパク質のアミノ基(主に、末端アミノ酸のα−アミノ基、リジン残基のγ−アミノ基)とが非酵素的に反応して生成する。タンパク質の糖化の程度は血中グルコース濃度(以下、血糖値という。)に直接比例するため、糖化タンパク質の測定により、例えば糖化ヘモグロビンの場合は約2〜3カ月間、糖化アルブミンの場合は約2〜3週間の血糖コントロール状態を把握することができる。特に糖化ヘモグロビンの一種であるヘモグロビンA1cは、糖尿病の診断に際して最も重要であるとされている。
【0003】
前記糖化タンパク質の測定法としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、免疫法、および酵素法などが知られている。従来は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、および免疫法が大部分を占めていたが、近年では大量検体を迅速、大量、正確、安価に測定できることから酵素法も多用され始めている。
【0004】
酵素法については、例えば、以下の工程を経て糖化タンパク質を比色定量する技術が知られている。(例えば、特許文献1〜4参照)
(1)測定試料中の赤血球を溶血させ、糖化ヘモグロビンを取り出す工程。
(2)前記糖化ヘモグロビンとプロテアーゼを反応させ、糖化ヘモグロビンの糖化されたβ鎖N末端から糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドを切り出す工程。
(3)前記糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドと糖化アミノ酸オキシダーゼを反応させ、過酸化水素を生成する工程。
(4)ペルオキシダーゼ存在下で、前記過酸化水素と酸化還元系発色試薬を反応させ、発色させる工程。
(5)前記発色から測定試料中の糖化ヘモグロビン量を比色定量する工程。
【0005】
しかし、かかる従来技術は、測定試料を希釈し、液体状態の試薬を添加し、反応容器内で反応させ、反応液の吸光度を測定する方法であり、生化学自動分析装置を用いた方法が主流であるが、前記生化学自動分析装置は大型かつ高価である、取扱いには熟練した検査技師が必要である、採血から結果報告までの時間が長い、といった問題点があり、POCT:point of care testing(すなわち、臨床現場即時検査)への適用は困難であった。
【0006】
一方、前記問題点を解消すべく、試薬を乾燥状態で基材に担持させ、そこに液体状態の測定試料を添加することで、測定試料中の水分を溶媒として反応を進行させる方法(いわゆる、ドライケミストリー)を利用した糖化タンパク質測定用試験片の発明がなされた。(例えば、特許文献5)かかる発明は、装置が小型で安価である、取扱いが簡便である、採血から結果報告までが短時間で可能である という点では改良されたものの、生化学自動分析装置を用いた方法に比べ再現性、正確性に劣るという点が問題であった。また、実用に耐えうる保存安定性を得られないという点も問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2002−006519号
【特許文献2】特開2004−222570号公報
【特許文献3】特開2007−181466号公報
【特許文献4】特開2010−148515号公報
【特許文献5】特開2004−333452号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Clinical Chemistry 43:12 2390−2396(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、診断の現場で正確、簡便かつ迅速に測定試料中の糖化ヘモグロビン量を比色定量するための測定方法、および測定キットを提供することにある。さらに詳しくは、生化学自動分析装置を用いた方法と同等の再現性、正確性を有し、かつ保存安定性に優れた糖化ヘモグロビン量を比色定量するための測定方法、および測定キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはドライケミストリーを利用した糖化タンパク質測定用試験片の再現性、正確性低下の原因は、高分子基材に担持されたプロテアーゼの反応不足にあることを見出した。
また、測定試料が全血検体の場合は、ヘモグロビン由来のスペクトルと色素由来のスペクトルが重なるため、再現性、正確性が低下することを見出した。
さらに、プロテアーゼと糖化アミノ酸オキシダーゼがそれぞれ同一の前処理液または試験片に含有または担持されると、保存中にプロテアーゼによる糖化アミノ酸オキシダーゼの失活・分解が生じ、保存安定性が著しく低下することを見出した。
【0011】
そこで、本発明者らは、前処理液にプロテアーゼを含有させ、試験片に糖化アミノ酸オキシダーゼを担持させた。また、測定試料を前記試験片に点着させる前に、測定試料と前記前処理液とを最適な混合比率で混合することとした。これにより、プロテアーゼの反応性が著しく向上し、かつヘモグロビン由来のスペクトルの影響も軽減するため、測定の再現性、正確性が向上することを見出し、本発明に至った。加えて、プロテアーゼと糖化アミノ酸オキシダーゼをそれぞれ異なる前処理液または試験片に含有または担持させることにより、糖化アミノ酸オキシダーゼの保存安定性を向上させることも同時に成功し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1. 測定試料中のヘモグロビン量および/または糖化ヘモグロビン量を比色定量する糖化ヘモグロビンの測定方法であって、
少なくとも下記前処理液(a)と下記試験片(b)とを用い、かつ少なくとも下記工程(i)から(iv)を経ることを特徴とする測定方法。
前処理液(a):少なくともプロテアーゼが含有された水溶液
試験片(b):少なくとも糖化アミノ酸オキシダーゼが担持された高分子基材
工程(i):測定試料と前処理液(a)とを体積比率1:1〜1:15で混合させる工程
工程(ii):測定試料と前処理液(a)との混合液を、試験片(b)に点着させる工程
工程(iii):反射光を用いて、試験片(b)の反射率および/または吸光度を測定する工程
工程(iv):得られた反射率および/または吸光度から、ヘモグロビン量、糖化ヘモグロビン量、糖化ヘモグロビン量のヘモグロビン量に対する割合からなる群より選ばれた1つ以上を算出する工程
2. 工程(i)が、測定試料と前処理液(a)とを体積比率1:1〜1:10で混合さ せる工程であることを特徴とする1.の測定方法。
3. さらに、前処理液(a)と試験片(b)との少なくとも一方に、ペルオキシダーゼおよび酸化還元系発色試薬がそれぞれ含有または担持されることを特徴とする1.または2.の測定方法。
4. さらに、前処理液(a)と試験片(b)との少なくとも一方に、界面活性剤が含有または担持されることを特徴とする1.から3.のいずれかの測定方法。
5. プロテアーゼが、少なくともバチルス(Bacillus)由来プロテアーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼ、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼ、およびトリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼからなる群より選ばれた1種以上であることを特徴とする1.から4.のいずれかの測定方法。
6. 酸化還元系発色試薬が、極大吸収波長が600〜800nmのロイコ型色素であることを特徴とする1.から5.のいずれかの測定方法。
7. 界面活性剤が、親水親油バランス(Hydrophile Lipophile Balance:HLB)が10〜20の非イオン性界面活性剤であることを特徴とする1.から6.のいずれかの測定方法。
8. 測定試料が全血検体であることを特徴とする1.から7.のいずれかの測定方法。
9. 1.から8.のいずれかの前処理液(a)と下記試験片(b)とからなる測定キット。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、診断の現場で正確、簡便かつ迅速に測定試料中の糖化ヘモグロビン量を比色定量するための測定方法、および測定キットを提供することができる。さらに詳しくは、生化学自動分析装置を用いた方法と同等の再現性、正確性を有し、かつ保存安定性に優れた、糖化ヘモグロビン量を比色定量するための測定方法、および測定キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例において使用した、試験片を上下から挟んで固定するための板状の治具である。本治具には、2つの穿孔を設けている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳述する。
(測定対象物)
本発明における測定対象物は、糖化ヘモグロビンであり、糖尿病診断への応用の観点から、ヘモグロビンのβ鎖N末端が糖化されたヘモグロビンA1c(以下、HbA1cともいうことがある。)が好ましい。
【0016】
(測定試料)
本発明における測定試料としては、全血、血球、血漿、血清、髄液、汗、尿、涙液、唾液、皮膚、粘膜、毛髪等の生体試料(すなわち生体から採取された試料)や、飲料水、調味料等の食品類が挙げられる。また、生体試料はヒト由来に限らず、イヌ、ネコ、ウシ等の哺乳類動物由来の生体試料も対象である。これら中でも、糖尿病診断への応用の観点から、全血または血球が好ましく、POCTの観点から、前処理として血球/血漿または血清分離を行わない全血がより好ましい。
【0017】
本発明における測定試料の量は、特に限定されないが、例えば0.1〜20μLが好ましく、0.1〜10μLがより好ましく、0.1〜5μLがさらに好ましい。測定試料量が0.1μLより少ないと、測定試料と前処理液との混合体積比率が不正確になり、測定値の誤差が大きくなる恐れがある。さらには、発色斑が生じる恐れもある。一方、測定試料量が20μLより多いと、例えば測定試料が血液の場合、患者の負担が大きくなるため好ましくない。
【0018】
(測定原理)
本発明における糖化ヘモグロビンの測定原理は酵素反応を、測定試料と前処理液との混合液中の水分によって行う(いわゆる、ドライケミストリー)ことで試験片を呈色させ、その呈色の程度を反射光測定によって検知する方法(いわゆる、酵素比色法)によって行なわれる。前記測定原理を用いることで、装置の小型・軽量・低価格化が可能となる。また、正確、簡便かつ迅速な測定が可能となる。
以下に赤血球中の糖化ヘモグロビン量を測定する場合の反応について説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
(1)測定試料中の赤血球を溶血させ、糖化ヘモグロビンを取り出す工程。
(2)前記糖化ヘモグロビンとプロテアーゼを反応させ、糖化ヘモグロビンの糖化されたβ鎖N末端から糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドを切り出す工程。
(3)前記糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドと糖化アミノ酸オキシダーゼを反応させ、過酸化水素を生成する工程。
(4)ペルオキシダーゼ存在下で、前記過酸化水素と酸化還元系発色試薬を反応させ、発色させる工程。
(5)前記発色から測定試料中の糖化ヘモグロビン量を比色定量する工程。
【0019】
(前処理液)
本発明における前処理液とは、例えば測定試料が血球または全血検体の場合は、測定試料中の赤血球を溶血させ、糖化ヘモグロビンを取り出し、糖化ヘモグロビンの糖化されたβ鎖N末端から糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドを切り出すために、測定試料と混合する液体を意味する。測定試料を試験片に点着させる前に、測定試料と前処理液とを混合することで、プロテアーゼを十分反応させるとともに、測定試料の希釈によりヘモグロビン由来のスペクトルの影響を軽減することができる。
【0020】
本発明における測定試料と前処理液との混合体積比率は、1:1〜1:15であることが必要であり、1:1〜1:10であることが好ましい。混合体積比率が、1:15より大きいと、測定試料中の糖化ヘモグロビン濃度が低くなり、すなわち色素の発色強度も低くなるため、検出が困難になる恐れがある。一方、混合体積比率が、1:1より小さいと、測定試料が十分希釈されず、ヘモグロビン由来のスペクトルの影響で、測定値に誤差が生じる恐れがある。なお、マイクロピペット、スポイト、キャピラリー等を用いて採取した測定試料を、所定量の前処理液へ添加することで、所定の体積比率で混合することが可能である。
【0021】
(試験片)
本発明の試験片は、1以上の高分子基材(以下、層ともいうことがある。)からなる。
前記試験片の層数は、実施形態に合わせて変化し得るが、1〜5層が好ましく、1〜4層がより好ましく、1〜3層がさらに好ましい。なお、層数には、本発明に必要な試薬が担持された高分子基材に加え、血液を展開するための展開層や透明支持層なども含む。層数が5層より多いと、最上層から最下層まで展開するのに必要な測定試料量が多くなるため、好ましくない。
【0022】
前記試験片は、任意の手順を用いて作製することができる。典型的には、複数の層を別個に、一種以上の試薬溶液に浸漬し、乾燥する慣用の手順を用いることにより作製し、次いで最終的な試験片に組み立てることができる。
【0023】
(高分子基材)
本発明の試験片を構成する高分子基材としては、本発明に必要な試薬を必要量担持でき、かつ測定試料を水平方向および垂直方向に適切に展開できれば、いかなる形態、組成のものを用いてもよい。以下に高分子基材の形態、組成の具体例を示すが、本発明を何ら限定するものではない。
【0024】
(形態)
前記高分子基材の形態としては、ろ紙、繊維構造体、多孔質膜(メンブレンフィルター)、フィルム等の自立可能なものや、高分子ゲル等の自立不可能なものが挙げられる。なお、高分子ゲル等の自立不可能なものを用いる際は、ろ紙、繊維構造体、多孔質膜(メンブレンフィルター)、フィルム等の自立可能なものを支持体として設けるのが好ましい。
【0025】
(組成)
前記高分子基材の組成としては、ポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等、オレフィン樹脂であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン等、ビニル樹脂であるポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル等、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、フッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂であるポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)等、ポリアミド樹脂であるナイロン、アラミド等、セルロース類であるセルロースアセテート、ニトロセルロース、再生セルロース等が挙げられる。
【0026】
前記高分子基材の形状は、特に限定されないが、例えば正方形、長方形、円形、楕円形等の薄板状が挙げられる。
前記高分子基材の面積は、装置の小型・軽量・低価格化の観点から小さければ小さいほどよいが、例えば1〜1000mm2が好ましく、2〜500mm2がより好ましく、5〜200mm2がさらに好ましい。
前記高分子基材の(1層の)厚みは、測定試料の展開性、および酵素(プロテアーゼ、糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ)反応性の観点から、例えば10〜2000μmが好ましく、20〜1000μmがより好ましく、50〜500μmがさらに好ましい。
【0027】
(構成)
本発明は、前処理液と試験片とからなる。前処理液としては、少なくともプロテアーゼが含有された水溶液であり、試験片としては、少なくとも糖化アミノ酸オキシダーゼが担持された高分子基材である。プロテアーゼを前処理液に含有させず試験片に担持させると、プロテアーゼ反応が不十分となり、再現性、正確性が低下する恐れがある。
また、プロテアーゼと糖化アミノ酸オキシダーゼがそれぞれ異なる前処理液または試験片に含有または担持されることが必要である。プロテアーゼと糖化アミノ酸オキシダーゼがそれぞれ同一の前処理液または試験片に含有または担持されると、プロテアーゼによる糖化アミノ酸オキシダーゼの失活・分解が生じる恐れがある。以下に本発明の具体例を示すが、本発明を何ら限定するものではない。
【0028】
本発明は前処理液として少なくともプロテアーゼが含有された水溶液、試験片として少なくとも糖化アミノ酸オキシダーゼが担持された高分子基材である以下の構成が挙げられる。
1.『前処理液:プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ、試験片:糖化アミノ酸オキシダーゼ、酸化還元系発色試薬』
2.『前処理液:プロテアーゼ、酸化還元系発色試薬、試験片:糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ』
3.『前処理液:プロテアーゼ、試験片:糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬』
4.『前処理液:プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬、試験片:糖化アミノ酸オキシダーゼ』
【0029】
これらの中でも、さらに溶液状態で不安定な(すなわち、自己発色を生じる恐れのある)酸化還元系発色試薬を前処理液中に含有しない以下の構成が好ましい。
1.『前処理液:プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ、試験片:糖化アミノ酸オキシダーゼ、酸化還元系発色試薬』
3.『前処理液:プロテアーゼ、試験片:糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬』
【0030】
前記前処理液と前記試験片との少なくとも一方に、さらに界面活性剤が含有または担持されるが好ましい。
【0031】
(検出)
反応の検出には、発色した試験片に対して光(入射光)をあて、その反射光を検出することが最も簡便であるが、これ以外の方法を用いても良い。光源としては、特に限定されないが、例えばUVランプ、キセノンランプ、クリプトンランプ、水銀ランプ、重水素ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、レーザー等が挙げられる。これらの中でも、光波長の制御の容易さ、および装置の小型・軽量・低価格化の観点から、発光ダイオード(LED)が好ましい。前記入射光の角度(入射角)は、特に限定されず、任意の角度を用いることができる。一方、反射光の検出は、特に限定されないが、検出面に対して垂直が好ましい。なお、検出には、フォトダイオードや積分球等を用いれば簡便に行う事ができる。
【0032】
(プロテアーゼ)
本発明に用いるプロテアーゼとしては、糖化ヘモグロビンの糖化されたβ鎖N末端に作用して糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドを切り出すものであれば、いかなる種類のプロテアーゼを用いてもよく、例えば動物、植物、微生物由来のプロテアーゼ等が挙げられる。以下にプロテアーゼの具体例を示すが、本発明を何ら限定するものではない。
【0033】
(動物由来プロテアーゼ)
動物由来のプロテアーゼとしては、ファクターXa(factorXa)、プラスミン(plasmin)、スロンビン(thrombin)、ペプシン(pepsin)、ロイシンアミノペプチダーゼ(leucinaminopeptidase)、パンクレアチン(pancreatin)、エラスターゼ(elastase)、トリプシン(trypsin)、キモトリプシンA(chymotrypsinA)、アミノペプチダーゼM(aminopeptidaseM)、カルボキシペプチダーゼA(carboxypeptidaseA)、カルボキシペプチダーゼB(carboxypeptidaseB)、カルパイン(calpain)、カテプシンB(cathepsinB)、カテプシンC(cathepsinC)、カテプシンD(cathepsinD)、エンドプロテイナーゼArg−C(endoproteinaseArg−C)等が挙げられる。
【0034】
(植物由来プロテアーゼ)
植物由来のプロテアーゼとしては、カルボキシペプチダーゼW(carboxypeptidaseW)、カリクレイン(kallikrein)、フィシン(ficin)、パパイン(papain)、キモパパイン(chimopapain)、ブロメライン(bromelain)等が挙げられる。
【0035】
(微生物由来プロテアーゼ)
微生物由来のプロテアーゼとしては、ズブチリシン(subtilisin)、サーモリシン(thermolysin)、ディスパーゼ(dispase)、プロテイナーゼN(proteinaseN)等に代表されるバチルス(Bacillus)由来プロテアーゼ、IP酵素等に代表されるアスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼ、プロナーゼ(pronase)等に代表されるストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼ、プロテイナーゼK(proteinaseK)等に代表されるトリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼ、ペプチダーゼR(peptidaseR)等に代表されるリゾバス(Rhizopus)由来プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼP、(carboxypeptidaseP)、PD酵素等に代表されるペニシリウム(Penicillium)由来プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼGlu−C(endoproteinaseGlu−C)等に代表されるスタフィロコッカス(Staphylococcus)由来プロテアーゼ、クロストリパイン(clostripain)等に代表されるクロストリジウム(Clostridium)由来プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼLys−C(endoproteinaseLys−C)等に代表されるリソバクター(Lysobacter)由来プロテアーゼ、メタロエンドペプチダーゼ(metalloendopeputidase)等に代表されるグリフォラ(Grifola)由来プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼY(carboxypeptidaseY)、プロテイナーゼA(proteinaseA)等に代表される酵母(Yeast)由来プロテアーゼ、アミノペプチダーゼT(aminopeptidaseT)等に代表されるサーマス(Thermus)由来プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼAsp−N(endoproteinaseAsp−N)等に代表されるシュードモナス(Pseudomonus)由来プロテアーゼ、リジルエンドペプチダーゼ(lysylendopeputidase)、アクロモペプチダーゼ(achromopeputidase)等に代表されるアクロモバクター(Achromobacter)由来プロテアーゼ等が挙げられる
【0036】
これらの中でも、安定性、反応性(ヘモグロビンの切断速度)、入手の容易性、価格等の理由から、微生物由来のプロテアーゼが好ましく、バチルス(Bacillus)由来プロテアーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼ、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼ、およびトリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼからなる群より選ばれた1種以上であることがより好ましい。市販品としては、バチルス(Bacillus)由来プロテアーゼのトヨチームNEP(東洋紡績社製)、Type−X(シグマ社製)、Type−XXIV(シグマ社製)、サーモリシン(大和化成社製)、サモアーゼPC10(大和化成社製)、アスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼのType−XIII(シグマ社製)、Type−XXIII(シグマ社製)、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼのType−XIV、トリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼのプロテイナーゼK(ロシュ社製)等が好適に用いられる。
【0037】
これらの中でも、ヘモグロビンA1c測定の観点から、バチルス(Bacillus)由来プロテアーゼのトヨチームNEP(東洋紡績社製)、Type−X(シグマ社製)、Type−XXIV(シグマ社製)、サーモリシン(大和化成社製)、サモアーゼPC10(大和化成社製)、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼのType−XIVがより好適に用いられる。
【0038】
前記プロテアーゼは、目的とする活性が発現すれば精製物であっても粗精製物であってもよい。また、遺伝子操作により作られたものでもよく、化学修飾の有無も問わない。さらに、前記プロテアーゼは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
前記プロテアーゼの濃度は、特に限定されないが、1〜100000U/mLであることが好ましく10〜10000U/mLがより好ましい。プロテアーゼ濃度が1U/mLより少ないと、反応性の低下により測定時間が長くなるため好ましくない。一方、プロテアーゼ濃度が100000U/mLより多いと、バッククラウンドの上昇や、高価格化の恐れがある。
【0040】
前記プロテアーゼの反応を行う際のpHは、無調整でもよいが、使用するプロテアーゼの至適pHとなるよう適当なpH調整剤、例えば下記の緩衝剤によって調整するのが好ましい。
【0041】
(糖化アミノ酸オキシダーゼ)
本発明に用いる糖化アミノ酸オキシダーゼ(以下、FAODともいうことがある。)は、公知文献では「フルクトシルアミンオキシダーゼ」「フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ」「フルクトシルペプチドオキシダーゼ」「フルクトシルアミン酸化酵素」「フルクトシルアミノ酸酸化酵素」「フルクトシルペプチド酸化酵素」「糖化アミンオキシダーゼ」「糖化アミノ酸オキシダーゼ」「糖化ペプチドオキシダーゼ」「糖化アミン酸化酵素」「糖化アミノ酸酸化酵素」「糖化ペプチド酸化酵素」「アマドリアーゼ」「ケトアミンオキシダーゼ」「ケトアミン酸化酵素」等、種々の名称で呼ばれている。
【0042】
本発明に用いる糖化アミノ酸オキシダーゼとしては、糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドに特異的に作用し、過酸化水素を生成する酵素であれば、いかなる種類の酵素を用いてもよい。以下に糖化アミノ酸オキシダーゼの具体例を示すが、本発明を何ら限定するものではない。
【0043】
糖化アミノ酸オキシダーゼとしては、ギベレラ(Gibberella)由来酵素、アスペルギルス(Aspergillus)由来酵素、ペニシリウム(Penicillium)由来酵素、フサリウム(Fusarium)由来酵素、コリネバクテリウム(Corynebacterium)由来酵素、コニオカエタ(Coniochaeta)由来酵素、ユウペニシリウム(Eupenicillium)由来酵素、アカエトミエラ(Achaetomiella)由来酵素、カエトミウム(Chaetomium)由来酵素、大腸菌由来酵素、酵母属デバリオマイゼス(Debaryomyces)由来酵素、カーブラリア(Curvularia)由来酵素、ネオコスモスポラ(Neocosmospora)由来酵素、クリプトコッカス(Cryptococcus)由来酵素、ファエオスフェリア(Phaeosphaeria)由来酵素、カンジダ(Candida)由来酵素、アクレモニウム(Acremonium)由来酵素等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、安定性、反応性(糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドの酸化速度)、入手の容易性、価格等の理由から、コニオカエタ(Coniochaeta)由来酵素、ユウペニシリウム(Eupenicillium)由来酵素、カーブラリア(Curvularia)由来酵素、ネオコスモスポラ(Neocosmospora)由来酵素、アスペルギルス(Aspergillus)由来酵素、クリプトコッカス(Cryptococcus)由来酵素、ファエオスフェリア(Phaeosphaeria)由来酵素からなる群より選ばれた1種以上であることが好ましく、コニオカエタ(Coniochaeta)由来酵素、アスペルギルス(Aspergillus)由来酵素、クリプトコッカス(Cryptococcus)由来酵素、ファエオスフェリア(Phaeosphaeria)由来酵素からなる群より選ばれた1種以上であることがより好ましい。
【0045】
これらの中でも、ヘモグロビンA1c測定の観点から、コニオカエタ(Coniochaeta)由来酵素、ファエオスフェリア(Phaeosphaeria)由来酵素からなる群より選ばれた1種以上であることがさらに好ましい。
【0046】
前記糖化アミノ酸オキシダーゼは、目的とする活性が発現すれば精製物であっても粗精製物であってもよい。また、遺伝子操作により作られたものでもよく、化学修飾の有無も問わない。さらに、前記糖化アミノ酸オキシダーゼは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
前記糖化アミノ酸オキシダーゼの濃度は、特に限定されないが、0.01〜1000U/cm2であることが好ましく、0.1〜100U/cm2がより好ましい。糖化アミノ酸オキシダーゼ濃度が0.01U/cm2より少ないと、反応性の低下により測定時間が長くなるため好ましくない。一方、糖化アミノ酸オキシダーゼ濃度が1000U/cm2より多いと、バッククラウンドの上昇や、高価格化の恐れがある。
【0048】
前記糖化アミノ酸オキシダーゼの反応を行う際のpHは、無調整でもよいが、使用する糖化アミノ酸オキシダーゼの至適pHとなるよう適当なpH調整剤、例えば下記の緩衝剤によって調整するのが好ましい。
【0049】
(ペルオキシダーゼ)
本発明に用いるペルオキシダーゼとしては、過酸化水素と酸化還元系発色試薬との反応を触媒する酵素であれば、いかなる種類の酵素を用いてもよく、例えば植物由来、細菌由来、担子菌由来のペルオキシダーゼが挙げられる。これらの中でも、純度、入手の容易性、価格等の理由から、西洋ワサビ、イネ、大豆由来のペルオキシダーゼが好ましく、西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼがより好ましい。市販品としては、PEO−131(東洋紡績社製)、PEO−301(東洋紡績社製)、PEO−302(東洋紡績社製)等が好適に用いられる。
【0050】
前記ペルオキシダーゼの濃度は、特に限定されないが、0.01〜1000U/cm2または0.1〜10000U/mLであることが好ましく、0.1〜100U/cm2または1〜1000U/mLがより好ましい。ペルオキシダーゼ濃度が0.01U/cm2または0.1U/mLより少ないと、反応性の低下により測定時間が長くなるため好ましくない。一方、ペルオキシダーゼ濃度が1000U/cm2または10000U/mLより多いと、バッククラウンドの上昇や、高価格化の恐れがある。
【0051】
前記ペルオキシダーゼの反応を行う際のpHは、無調整でもよいが、使用するペルオキシダーゼの至適pHとなるよう適当なpH調整剤、例えば下記の緩衝剤によって調整するのが好ましい。
【0052】
(酸化還元系発色試薬)
本発明に用いる酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー、ロイコ体等が挙げられる。なお、水素供与体とカップラーを用いた代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法である。
以下に酸化還元系発色試薬の具体例を示すが、本発明を何ら限定するものではない。
【0053】
(水素供与体)
水素供与体としては、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリン(ALPS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOPS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(ADPS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン(ALOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(TOOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N’−アセチルエチレンジアミン、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N’−サクシニルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−2,5−ジメチルアニリン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−スルホプロピルアニリン、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン等が挙げられる。
【0054】
(カップラー)
カップラーとしては、4−アミノアンチピリン(4AA)、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等が挙げられる。
【0055】
(ロイコ体)
ロイコ体としては、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体、ジフェニルアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、4,4’−ベンジリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、4,4’−ビス[N−エチル−N−(3−スルホプロピルアミノ)−2,6−ジメチルフェニル]メタン、1−(エチルアミノチオカルボニル)−2−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)イミダゾール、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン塩(DA64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩(DA67)等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、モル吸光係数、極大吸収波長等の理由から、ロイコ体が好ましく、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン塩(DA64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩(DA67)がより好ましい。
【0057】
前記酸化還元系発色試薬の極大吸収波長は、600〜800nmであることが好ましく、650〜750nmがより好ましい。ヘモグロビンA1c測定の観点から、極大吸収波長が600nmより低波長側であると、酸化還元系発色試薬の発色スペクトルとヘモグロビンのスペクトルとが重なるため、感度が低下する恐れがある。一方、極大吸収波長が800nmより高波長側であると、検出機器が大型化する恐れがある。
【0058】
前記酸化還元系発色試薬の濃度は、特に限定されないが、0.0001〜10mg/cm2または0.001〜100mg/mLであることが好ましく0.001〜1mg/cm2または0.01〜10mg/mLがより好ましい。酸化還元系発色試薬濃度が0.0001mg/cm2または0.001mg/mLより少ないと、感度が低下する恐れがある。一方、酸化還元系発色試薬濃度が10mg/cm2または100mg/mLより多いと、バッククラウンドの上昇や、高価格化の恐れがある。
【0059】
(界面活性剤)
本発明に用いる界面活性剤としては、溶血剤および/またはプロテアーゼ反応促進剤として作用すれば、いかなる種類の界面活性剤を用いてもよいが、溶血剤およびプロテアーゼ反応促進剤として作用する界面活性剤が好ましい。
前記界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(Triton(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、溶血剤としての反応性(溶血の速度)、プロテアーゼ反応促進剤としての作用性、価格等の理由からポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(Triton(登録商標)系界面活性剤等)が好ましい。市販品としては、TritonX(登録商標)−100(ナカライテスク社製)、TritonX(登録商標)−114(ナカライテスク社製)、Nonidet(登録商標)P−40(ナカライテスク社製)等が好適に用いられる。また、前記界面活性剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
前記界面活性剤の親水親油バランス(Hydrophile Lipophile Balance:HLB)は、10〜20であることが好ましく、12〜20がより好ましく、14〜20がさらに好ましい。HLB値が10より小さいと、十分な溶血効果、およびプロテアーゼ反応促進効果が得られない恐れがある。一方、HLB値が20より大きい界面活性剤は、HLBの定義上存在しない。
【0061】
前記界面活性剤の濃度は、特に限定されないが、0.0001〜10mg/cm2または0.001〜100mg/mLであるとこが好ましく0.001〜1mg/cm2または0.01〜10mg/mLがより好ましい。界面活性剤濃度が0.0001mg/cm2または0.001mg/mLより少ないと、十分な溶血効果、およびプロテアーゼ反応促進効果が得られない恐れがある。一方、界面活性剤濃度が10mg/cm2または100mg/mLより多くしても、効果の向上は見られない。
【0062】
(緩衝剤)
本発明に用いることができる緩衝剤としては、目的とするpH範囲において充分な緩衝能力を有していれば、いかなる種類の緩衝剤を用いてもよく、例えば、トリス、リン酸、フタル酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、ホウ酸、酒石酸、酢酸、炭酸、グッドバッファー(MES、ADA、PIPES、ACES、コラミン塩酸、BES、TES、HEPES、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン)等が挙げられる。
【0063】
これらの中でも、本発明に用いるプロテアーゼ、糖化アミノ酸オキシダーゼ、およびペルオキシダーゼの至適pH範囲である6.0〜8.5(好ましくは6.0〜7.5)において充分な緩衝能力を有する等の理由から、トリス、リン酸、MES、PIPES、TES、HEPESが好ましく、MES、PIPESがより好ましい。
【0064】
前記緩衝剤の濃度は、特に限定されないが、50〜100mM程度が好ましい。
【0065】
(その他試薬)
本発明では前記試薬(界面活性剤、プロテアーゼ、糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬等)の他、必要に応じてヘモグロビンの酸化剤(フェロシアン化物、アジ化物、亜硝酸塩、硝酸塩等)、酵素反応を妨害するイオンを捕捉するキレート試薬(エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸、フェナントロリン、ポルフィリン、クラウンエーテル等)、過酸化水素の定量の妨害物質であるアスコルビン酸を消去するアスコルビン酸オキシダーゼ、塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等)、酵素安定化剤(単糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール、グリセロール、グルコン酸塩、アミノ酸類、アルブミン類、グロブリン類、繊維性タンパク質等)、酸化還元系発色試薬安定化剤(シクロデキストリン類、還元性チオアルコール類、還元性硫酸塩類等)を添加してもよい。これらは、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、明細書中の評価法は以下の通りである。
[各種評価法]
【0067】
<1.プロテアーゼの活性測定>
プロテアーゼの活性は、Folin−Ciocalteu試薬を用いたカゼインフォリン法により算出した。ここで、プロテアーゼの至適pHで、37℃−1分あたり、カゼインを加水分解し、1.0μmolのチロシンに相当する呈色を生ずる酵素量を1Uと定義した。
【0068】
<2.糖化アミノ酸オキシダーゼの活性測定>
糖化アミノ酸オキシダーゼの活性は、ペルオキシダーゼ存在下で、糖化バリルヒスチジンと糖化アミノ酸オキシダーゼとの反応で生成した過酸化水素と酸化還元系発色試薬を反応させ、その吸光度変化から算出した。ここで、糖化アミノ酸オキシダーゼの至適pH(pH=6.5)で、37℃−1分あたり、糖化バリルヒスチジンを加水分解し、1.0μmolの過酸化水素を生成する酵素量を1Uと定義した。
【0069】
<3.ペルオキシダーゼの活性測定>
ペルオキシダーゼの活性は、ペルオキシダーゼ存在下で、過酸化水素とピロガロール(Pyrogallol)とを反応させ、生成したプルプロガリン(Purpurogallin)に由来する吸光度の変化から算出した。ここで、ペルオキシダーゼの至適pH(pH=6.0)で、20℃−20秒あたり、1.0mgのプルプロガリン(Purpurogallin)に相当する呈色を生ずる酵素量を1Uと定義した。
【0070】
<4.親水親油バランス(Hydrophile Lipophile Balance:HLB)の測定>
HLB値は、グリフィン法を用い、HLB値=20×(親水部の式量の総和/分子量)で算出した。なお、界面活性剤の混合物のHLB値は、各成分のHLB値の加重平均で表す。
【0071】
<5.プロテアーゼの反応性>
(前処理液にプロテアーゼが含有されている場合)
100g/Lのヘモグロビン ヒト H7379(シグマ社製)水溶液 10μLと本発明の前処理液 50μLとを混合し(体積比率=1:5)、恒温水槽 TM−1(アズワン社製)にて37℃−0、5、10、15、30、60分間インキュベートした。次いで、前記混合液 12μLと下記試薬1 1000μLとを混合した後、マイクロコン−3(ミリポア社製)にて14000Gで遠心濃縮し、分子量3000以下の低分子量成分(界面活性剤、酸化還元系発色試薬等)を除去し、200μLの濃縮液を得た。次いで、前記濃縮液 25μLと蒸留水25μLとLaemmliサンプルバッファー(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)47.5μLと2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)2.5μLとを混合し、95℃−5分間ボイルすることで、サンプル溶液1〜6を得た。
【0072】
(試験片にプロテアーゼが担持されている場合)
100g/Lのヘモグロビン ヒト H7379(シグマ社製)水溶液 10μLと本発明の前処理液 50μLとを混合した(体積比率=1:5)。次いで、前記混合液 12μLを本発明の試験片に点着し、プログラム低温恒温器 IN604(ヤマト科学社製)にて37℃−0、5、10、15、30、60分間インキュベートした。次いで、マイクロチューブ内に前記試験片と下記試薬1 1000μLとを添加し、ボルテックスミキサー(エムエス機器社製)で1分間攪拌することで、試験片中の界面活性剤、プロテアーゼ、糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬を抽出した。次いで、前記抽出液をマイクロコン−3(ミリポア社製)にて14000Gで遠心濃縮し、分子量3000以下の低分子量成分(界面活性剤、酸化還元系発色試薬等)を除去し、200μLの濃縮液を得た。次いで、前記濃縮液 25μLと蒸留水25μLとLaemmliサンプルバッファー(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)47.5μLと2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)2.5μLとを混合し、95℃−5分間ボイルすることで、サンプル溶液1〜6を得た。
<試薬1>
100mM PIPES(同仁化学研究所社製) pH6.5
100倍希釈 プロテアーゼ阻害剤カクテル 一般用、100倍濃縮(ナカライテスク社製)
【0073】
得られたサンプル溶液1〜6を、電気泳動ベストパッケージ レディーゲル用(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)を用い、下記条件1でSDS−PAGEを実施した。なお、サンプル溶液1〜6は、同一ゲルの別レーンに流した。
<条件1>
プレキャストゲル : レディーゲルJ 10%T、12well
電気泳動システム : ミニプロティアンTetraセル
パワーサプライ : パワーパックBasic
スタンダード : プレシジョンPlusデュアルスタンダード
泳動バッファー : プレミックスバッファー トリス/グリシン/SDS
スタンダード量 : 10μL
泳動試料量 : 20μL
泳動条件 : 100V定電圧−90分
温度 : 25℃
【0074】
次いで、タイトボックス NO.3(アズワン社製)に泳動後のゲルと、蒸留水 200mLとを添加し、ロッキングミキサー RM−80(アズワン社製)で5分間振とう後、蒸留水を除去するという洗浄作業を3回行なった。次いで、染色液 Bio−Safe CBB G−250ステイン(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)50mLを添加し、前記ロッキングミキサーで1時間振とう後、前記染色液を除去した。最後に、蒸留水 200mLを添加し、前記ロッキングミキサーで1時間振とう後、蒸留水を除去することで、泳動像が得られた。
【0075】
得られた泳動像中の16kDa付近のヘモグロビン サブユニット由来のバンド太さ(泳動方向のバンド寸法)および濃さ(バンドの吸光度)を、GS−800 Calibrated Densitometer(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)で通法に従い測定した。得られた37℃−0〜60分インキュベート後のバンド太さから下式(1)のバンド消失率1を、37℃−0〜60分インキュベート後のバンド濃さから下式(2)のバンド消失率2をそれぞれ算出し、バンド消失率1およびバンド消失率2が90%以上となる時間(以下、バンド消失時間ともいうことがある。)が、0分<バンド消失時間≦5分を◎(Excellent)、5分<バンド消失時間≦10分を○(Good)、10分<バンド消失時間≦15分を△(Not Bad)、15分<バンド消失時間を×(Bad)として、プロテアーゼの反応性を評価した。
[数1]
バンド消失率1(%)
={1−(バンド太さ(0〜60分)/バンド太さ(0分))}×100 式(1)
[数2]
バンド消失率2(%)
={1−(バンド濃さ(0〜60分)/バンド濃さ(0分))}×100 式(2)
【0076】
<6.糖化アミノ酸オキシダーゼの保存安定性>
(前処理液に糖化アミノ酸オキシダーゼが含有されている場合)
下記ブランク試薬を、加速試験として、恒温水槽 TM−1(アズワン社製)にて37℃−5時間インキュベートした。次いで、前記ブランク試薬 10μLと前記試薬1 1000μLとを混合した後、マイクロコン−3(ミリポア社製)にて14000Gで遠心濃縮し、200μLの濃縮液を得た。次いで、前記濃縮液 50μLとLaemmliサンプルバッファー(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)47.5μLと2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)2.5μLとを混合し、95℃−5分間ボイルすることで、ブランク溶液を得た。
<ブランク試薬>
100mM PIPES(同仁化学研究所社製) pH6.5
500U/mL 糖化アミノ酸オキシダーゼ FPO−301(東洋紡績社製)
【0077】
他方、本発明の前処理液を、加速試験として、恒温水槽 TM−1(アズワン社製)にて37℃−5時間インキュベートした。次いで、前記前処理液 10μLと前記試薬1 1000μLとを混合した後、マイクロコン−3(ミリポア社製)にて14000Gで遠心濃縮し、分子量3000以下の低分子量成分(界面活性剤、酸化還元系発色試薬等)を除去し、200μLの濃縮液を得た。次いで、前記濃縮液 50μLとLaemmliサンプルバッファー(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)47.5μLと2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)2.5μLとを混合し、95℃−5分間ボイルすることで、サンプル溶液を得た。
【0078】
(試験片に糖化アミノ酸オキシダーゼが担持されている場合)
8mmφの桐山ろ紙 NO.5A(東京硝子器械社製)に、前記ブランク試薬を10μL滴下し、遮光デシケーター 3909−04(東京硝子器械社製)にて25℃−2時間乾燥させ、ブランク試験片を作製した。次いで、ブランク試験片を、加速試験として、プログラム低温恒温器 IN604(ヤマト科学社製)にて37℃−5時間インキュベートした。次いで、マイクロチューブ内に前記ブランク試験片と前記試薬1 1000μLとを添加し、ボルテックスミキサー(エムエス機器社製)で1分間攪拌することで、ブランク試験片中の糖化アミノ酸オキシダーゼを抽出した。次いで、前記抽出液をマイクロコン−3(ミリポア社製)にて14000Gで遠心濃縮し、200μLの濃縮液を得た。次いで、前記濃縮液 50μLとLaemmliサンプルバッファー(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)47.5μLと2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)2.5μLとを混合し、95℃−5分間ボイルすることで、ブランク溶液を得た。
【0079】
他方、本発明の試験片を、加速試験として、プログラム低温恒温器 IN604(ヤマト科学社製)にて37℃−5時間インキュベートした。次いで、マイクロチューブ内に前記試験片と前記試薬1 1000μLとを添加し、ボルテックスミキサー(エムエス機器社製)で1分間攪拌することで、試験片中の界面活性剤、プロテアーゼ、糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬を抽出した。次いで、前記抽出液をマイクロコン−3(ミリポア社製)にて14000Gで遠心濃縮し、分子量3000以下の低分子量成分(界面活性剤、酸化還元系発色試薬等)を除去し、200μLの濃縮液を得た。次いで、前記濃縮液 50μLとLaemmliサンプルバッファー(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)47.5μLと2−メルカプトエタノール(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)2.5μLとを混合し、95℃−5分間ボイルすることで、サンプル溶液を得た。
【0080】
得られたブランク溶液、およびサンプル溶液を、電気泳動ベストパッケージ レディーゲル用(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)を用い、前記条件1でSDS−PAGEを実施した。なお、ブランク溶液、およびサンプル溶液は、同一ゲルの別レーンに流した。
【0081】
次いで、タイトボックス NO.3(アズワン社製)に泳動後のゲルと、蒸留水 200mLとを添加し、ロッキングミキサー RM−80(アズワン社製)で5分間振とう後、蒸留水を除去するという洗浄作業を3回行なった。次いで、染色液 Bio−Safe CBB G−250ステイン(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)50mLを添加し、前記ロッキングミキサーで1時間振とう後、前記染色液を除去した。最後に、蒸留水 200mLを添加し、前記ロッキングミキサーで1時間振とう後、蒸留水を除去することで、泳動像が得られた。
【0082】
得られた泳動像中の50kDa付近の糖化アミノ酸オキシダーゼ由来のバンド太さ(泳動方向のバンドの寸法)および濃さ(バンドの吸光度)を、GS−800 Calibrated Densitometer(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社製)で通法に従い測定した。得られたブランクおよびサンプルのバンド太さから下式(3)のバンド保持率1を、ブランクおよびサンプルのバンド濃さから下式(4)のバンド保持率2をそれぞれ算出し、バンド保持率1およびバンド保持率2≧90%を◎(Excellent)、バンド保持率1およびバンド保持率2<90%を×(Bad)として、糖化アミノ酸オキシダーゼの保存安定性(つまり、耐分解性)を評価した。
[数3]
バンド保持率1(%)=(サンプルバンド太さ/ブランクバンド太さ)×100 式(3)
[数4]
バンド保持率2(%)=(サンプルバンド濃さ/ブランクバンド濃さ)×100 式(4)
【0083】
<7.酸化還元系発色試薬の感度、相関性>
100g/Lのヘモグロビン ヒト H7379(シグマ社製)水溶液に、合成したフルクトシルバリルヒスチジン(以下、F−VHともいうことがある。)を、0、50、100、250、500μMとなるよう溶解させ、5水準の測定試料を調整した。次いで、前記測定試料 10μLと本発明の前処理液 50μLとを混合した(体積比率=1:5)。他方、本発明の試験片を、治具(図1参照)で上下から挟んで固定し、前記混合液 10μLを点着し、室温−1分間インキュベート後、測定試料点着面とは反対面の反射率を、下記条件2で測定した。
<条件2>
測定試料:ヘモグロビン ヒト H7379 100g/L
F−VH 0、50、100、250、500μM
装置名:分光光度計 UV−2450(島津製作所社製)
付属装置名:積分球 ISR−2200(島津製作所社製)
標準白板:硫酸バリウム標準白板
測定波長:666nm(DA67)、727nm(DA64)、555nm(TOOS)、630nm(MAOS)
入射角:0°
スリット幅:2.0nm
光束寸法:3mm×5mm
温度:25℃
【0084】
得られたF−VH 0〜500μMでの反射率から、下式(5)のKubelka−Munk変換により、F−VH 0〜500μMでのK/S値を得た。得られたF−VH 0μMでのK/S値と、F−VH 500μMでのK/S値から、下式(6)のK/S変動率を算出し、K/S変動率≧1.5を◎(Excellent)、K/S変動率<1.5を×(Bad)として、酸化還元系発色試薬の感度を評価した。なお、式(5)中の%Rは反射率を意味し、式(6)中のK/S値(0μM)はF−VH 0μMでのK/S値を、K/S値(500μM)はF−VH 500μMでのK/S値をそれぞれ意味する。
[数5]
K/S値=(1−%R)2/(2×%R) 式(5)
[数6]
K/S変動率=K/S値(500μM) / K/S値(0μM) 式(6)
【0085】
また、得られたK/S値とF−VH濃度とのピアソン相関係数:rを算出し、r>0.95を◎(Excellent)、0.95≦r<0.90を○(Good)、0.90≦r<0.85を△(Not Bad)、r≦0.85を×(Bad)として、相関性を評価した。
【0086】
<8.ヘモグロビンA1c値検量線の作成>
HbA1c測定性能評価用試料 QRM HbA1c 2007−1(一般社団法人 検査医学標準物質機構社製)と本発明の前処理液とを体積比率1:1、1:2、1:5、1:10、1:15、1:20、1:50にて混合し、恒温水槽 TM−1(アズワン社製)にて37℃−5分間インキュベートした。他方、本発明の試験片を、治具(図1参照)で上下から挟んで固定し、前記混合液 10μLを点着し、プログラム低温恒温器 IN604(ヤマト科学社製)にて37℃−5分間インキュベート後、測定試料点着面とは反対面の反射率を、下記条件3で測定した。
<条件3>
測定試料:HbA1c測定性能評価用試料 QRM
LEVEL1、2、3、4、5
装置名:分光光度計 UV−2450(島津製作所社製)
付属装置名:積分球 ISR−2200(島津製作所社製)
標準白板:硫酸バリウム標準白板
測定波長:480nm、666nm
入射角:0°
スリット幅:2.0nm
光束寸法:3mm×5mm
温度:25℃
【0087】
得られた480nmでの反射率、および666nmでの反射率から、上式(5)のKubelka−Munk変換により480nmでのK/S値、および666nmでのK/S値を得た。次いで、得られた480nmでのK/S値と、666nmでのK/S値から、下式(7)のK/S比を算出した。なお、K/S比とヘモグロビンA1c値が比例することは公知である。(非特許文献1参照)また、式中のK/S値(480nm)は480nmでのK/S値を、K/S値(666nm)は666nmでのK/S値をそれぞれ意味する。
[数7]
K/S比=K/S値(666nm) / K/S値(480nm) 式(7)
【0088】
得られたK/S比と、HbA1c測定性能評価用試料 QRMで規定されているHbA1c値(LEVEL1=4.67%、LEVEL2=5.29%、LEVEL3=6.96%、LEVEL4=9.08%、LEVEL5=10.79%)とのピアソン相関係数:rを算出し、r>0.95を◎(Excellent)、0.95≦r<0.90を○(Good)、0.90≦r<0.85を△(Not Bad)、r≦0.85を×(Bad)として、相関性を評価した。
【0089】
<9.ヘモグロビンA1c値の測定>
健常者全血、または糖尿病患者全血と本発明の前処理液とを体積比率1:1、1:2、1:5、1:10、1:15、1:20、1:50にて混合し、恒温水槽 TM−1(アズワン社製)にて37℃−5分間インキュベートした。他方、本発明の試験片を、治具(図1参照)で上下から挟んで固定し、前記混合液 10μLを点着し、プログラム低温恒温器 IN604(ヤマト科学社製)にて37℃−5分間インキュベート後、測定試料点着面とは反対面の反射率を、下記条件4で測定した。なお、健常者血液、および糖尿病患者血液は、市販の自動分析機:日立自動分析機 7180(日立ハイテク社製)、市販のヘモグロビンA1c測定試薬:ノルディアN HbA1c(積水メディカル社製)を用いて、通法に従い測定を実施し、ヘモグロビンA1c値を算出した。
<条件4>
測定試料:健常者血液 5水準、糖尿病患者血液 5水準
装置名:分光光度計 UV−2450(島津製作所社製)
付属装置名:積分球 ISR−2200(島津製作所社製)
標準白板:硫酸バリウム標準白板
測定波長:480nm、666nm
入射角:0°
スリット幅:2.0nm
光束寸法:3mm×5mm
温度:25℃
【0090】
得られた480nmでの反射率、および666nmでの反射率から、上式(5)のKubelka−Munk変換により480nmでのK/S値、および666nmでのK/S値を得た。次いで、得られた480nmでのK/S値と、666nmでのK/S値から、上式(7)のK/S比を算出した。得られたK/S比と、前項で得られた検量線から、ヘモグロビンA1c値を算出した。得られたヘモグロビンA1c値のn=10でのCVを算出し、0%≦CV<1%を◎(Excellent)、1%≦CV<3%を○(Good)、3%≦CV<5%を△(Not Bad)、5%≦CVを×(Bad)として、ばらつきを評価した。
[試験片の作成]
[実施例1]
【0091】
前処理液として下記前処理液1を作製した。他方、8mmφの桐山ろ紙 NO.5A(東京硝子器械社製)に、下記試薬2を10μL滴下し、遮光デシケーター 3909−04(東京硝子器械社製)にて25℃−2時間乾燥させ、試験片を作製した。以下、特記がない限り、前処理液に含有された界面活性剤濃度は5.0mg/mL、プロテアーゼ濃度は50U/mL、糖化アミノ酸オキシダーゼ濃度は50U/mL、ペルオキシダーゼ濃度は200U/mL、酸化還元系発色試薬濃度は0.5mg/mLであり、試験片に担持された界面活性剤濃度は0.1mg/cm2、プロテアーゼ濃度は10U/cm2、糖化アミノ酸オキシダーゼ濃度は10U/cm2、ペルオキシダーゼ濃度は40U/cm2、酸化還元系発色試薬濃度は0.1mg/cm2であるとする。
得られた前処理液および試験片の詳細を表1に示す。なお、表中のNP40はNonidet(登録商標)P−40が、NEPはトヨチームNEPが、FPOは糖化アミノ酸オキシダーゼ FPO−301が、PEOはペルオキシダーゼ PEO−302が、DA67はDA67がそれぞれ各層に担持されていること意味する。以下、同様である。
<前処理液1>
100mM PIPES(同仁化学研究所社製) pH6.5
5.0mg/mL Nonidet(登録商標)P−40(ナカライテスク社製)
50U/mL トヨチームNEP(東洋紡績社製)
<試薬2>
100mM PIPES(同仁化学研究所社製) pH6.5
5.0mg/mL Nonidet(登録商標)P−40(ナカライテスク社製)
500U/mL 糖化アミノ酸オキシダーゼ FPO−301(東洋紡績社製)
2000U/mL ペルオキシダーゼ PEO−302(東洋紡績社製)
5.0mg/mL DA67(和光純薬工業社製)
[実施例2〜4]
【0092】
界面活性剤、プロテアーゼ、糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬が含有または担持される箇所が異なる以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
得られた前処理液および試験片の詳細を表1に示す。
【0093】
【表1】


[比較例1〜7]
【0094】
界面活性剤、プロテアーゼ、糖化アミノ酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化還元系発色試薬が含有また担持される箇所が異なる以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
得られた前処理液および試験片の詳細を表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
<プロテアーゼの反応性>
実施例1〜4、比較例1〜7の前処理液および試験片を用い、プロテアーゼの反応性を評価した。
得られた評価結果を表3、4に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
プロテアーゼ反応性の評価結果より、プロテアーゼを試験片に担持させた場合はプロテアーゼ反応が不十分となる。以上の結果より、プロテアーゼは前処理液に含有させることが必要である。
【0100】
<糖化アミノ酸オキシダーゼの保存安定性>
実施例1〜4、比較例1〜7の前処理液および試験片を用い、糖化アミノ酸オキシダーゼの保存安定性を評価した。
得られた評価結果を表5、6に示す。
【0101】
【表5】

【0102】
【表6】

【0103】
糖化アミノ酸オキシダーゼの保存安定性の評価結果より、プロテアーゼと糖化アミノ酸オキシダーゼを前処理液に含有させると、プロテアーゼによる糖化アミノ酸オキシダーゼの失活・分解が生じ、保存安定性は著しく低下した。他方、プロテアーゼと糖化アミノ酸オキシダーゼを試験片に含有させても、同様に、プロテアーゼによる糖化アミノ酸オキシダーゼの失活・分解が生じ、保存安定性は著しく低下した。なお、糖化アミノ酸オキシダーゼの失活・分解により、測定不能となる恐れがある。
以上の結果より、プロテアーゼと糖化アミノ酸オキシダーゼがそれぞれ異なる前処理液または試験片に含有または担持されることが必要である。
[実施例5〜8]
【0104】
プロテアーゼをトヨチームNEP(東洋紡績社製)の代わりに、Type−XIV(シグマ社製)、Type−X(シグマ社製)、プロテイナーゼK(ロシュ社製)、Type−XIII(シグマ社製)とする以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
得られた前処理液および試験片の詳細を表7に示す。なお、表中のXIVはType−XIVが、XはType−Xが、KはプロテイナーゼKが、XIIIはType−XIIIがそれぞれ各層に担持されていること意味する。
[比較例8]
【0105】
プロテアーゼをType−XIV(シグマ社製)の代わりに、Type−I(シグマ社製)とする以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
得られた前処理液および試験片の詳細を表7に示す。なお、表中のIはType−Iが各層に担持されていること意味する。
【0106】
【表7】

【0107】
<プロテアーゼの反応性>
実施例1、5〜8、比較例8の前処理液および試験片を用い、プロテアーゼの反応性を評価した。
得られた評価結果を表8に示す。
【0108】
【表8】

【0109】
プロテアーゼ反応性の評価結果より、プロテアーゼとしては、バチルス(Bacillus)由来プロテアーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼ、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼ、およびトリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼからなる群より選ばれた1種以上であることが好ましい。
[実施例9]
【0110】
酸化還元系発色試薬をDA67(和光純薬工業社製):λmax=666nmの代わりに、DA64(和光純薬工業社製):λmax=727nmとする以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
得られた前処理液および試験片の詳細を表9に示す。なお、表中のDA64はDA64が各層に担持されていること意味する。
[比較例9、10]
【0111】
酸化還元系発色試薬をDA67(和光純薬工業社製):λmax=666nmの代わりに、4AA(ナカライテスク社製)とTOOS(同仁化学研究所社製):λmax=555nm、4AA(ナカライテスク社製)とMAOS(同仁化学研究所社製):λmax=630nmとする以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。なお、担持された4AA濃度は0.06mg/cm2、TOOS濃度は0.09mg/cm2、MAOS濃度は0.09mg/cm2である。
得られた前処理液および試験片の詳細を表9に示す。なお、表中の4AAは4−アミノアンチピリンが、TOOSはTOOSが、MAOSはMAOSがそれぞれ各層に担持されていること意味する。
【0112】
【表9】

【0113】
<酸化還元系発色試薬の感度、相関性>
実施例1、9、比較例9、10の前処理液および試験片を用い、酸化還元系発色試薬の感度、相関性を評価した。
得られた評価結果を表10に示す。
【0114】
【表10】

【0115】
酸化還元系発色試薬の感度、相関性の評価結果より、酸化還元系発色試薬としては、モル吸光係数が高く、かつヘモグロビン由来のスペクトルの影響を受けにくい650〜800nmに極大吸収波長を持つロイコ型色素が好ましい。
[実施例10〜12]
【0116】
界面活性剤をNonidet(登録商標)P−40(ナカライテスク社製):HLB値=17.6の代わりに、Triton(登録商標)X−100(ナカライテスク社製):HLB値=13.5、Tween(登録商標)20(和光純薬工業社製):HLB値=16.7、Brij(登録商標)35(和光純薬工業社製):HLB値=16.9とする以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
得られた前処理液および試験片の詳細を表11に示す。なお、表中のTX100はTriton(登録商標)X−100が、Tw20はTween(登録商標)20が、Br35はBrij(登録商標)35がそれぞれ各層に担持されていること意味する。
[比較例11、12]
【0117】
界面活性剤をNonidet(登録商標)P−40(ナカライテスク社製):HLB値=17.6の代わりに、DKエステル(登録商標)F50(第一工業製薬社製):HLB値=6.0、DKエステル(登録商標)F70(第一工業製薬社製):HLB値=8.0とする以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
得られた前処理液および試験片の詳細を表11に示す。なお、表中のF50はDKエステル(登録商標)F50(第一工業製薬社製)が、F70はDKエステル(登録商標)F70がそれぞれ各層に担持されていること意味する。
【0118】
【表11】

【0119】
<プロテアーゼの反応性>
実施例1、10〜12、比較例11、12の前処理液および試験片を用い、プロテアーゼの反応性を評価した。
得られた評価結果を表12に示す。
【0120】
【表12】

【0121】
プロテアーゼ反応性の評価結果より、界面活性剤としては、プロテアーゼ反応促進効果に優れる、HLB値が10〜20の非イオン性界面活性剤が好ましい。
[実施例13〜16]
【0122】
前処理液中のプロテアーゼ濃度が50U/mLの代わりに、250U/mL、125U/mL、25U/mL、16.7U/mLとする以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
[比較例13、14]
【0123】
前処理液中のプロテアーゼ濃度が50U/mLの代わりに、12.5U/mL、5U/mLとする以外は、実施例1と同様にして、前処理液および試験片を作製した。
【0124】
<ヘモグロビンA1c値検量線の作成>
実施例1、13〜16、比較例1、13、14の前処理液および試験片を用い、HbA1c値の検量線を作成し、相関性を評価した。
得られた評価結果を表13に示す。
【0125】
【表13】

【0126】
<ヘモグロビンA1c値の測定>
実施例1、13〜16、比較例1、13、14の前処理液および試験片を用い、前項で得られたHbA1c値の検量線を用い、HbA1c値を算出した。
得られた評価結果を表14に示す。
【0127】
【表14】

【0128】
以上の結果より、本発明の前処理液および試験片を用い、かつ測定試料を前記試験片に点着させる前に、測定試料と前記前処理液とを体積比率1:1〜1:15で混合させることで測定したヘモグロビンA1c値は、生化学自動分析装置を用いて測定したヘモグロビンA1c値とよく一致した。なおかつ、本発明の前処理液および試験は、生化学自動分析装置を用いた方法と同等の再現性、正確性を有し、かつ保存安定性に優れていることから、本発明の前処理液および試験片を用いることで、正確、簡便かつ迅速に測定試料中の糖化ヘモグロビン量を比色定量することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の測定方法、および測定キットを用いることにより、診断の現場で正確、簡便かつ迅速に測定試料中の糖化ヘモグロビン量を比色定量することができ、さらには生化学自動分析装置を用いた方法と同等の再現性、正確性を有し、かつ保存安定性にも優れることから、予防医学に基づく臨床検査分野、診断医療分野、製薬分野および保健医学分野をはじめ、生命科学分野の産業界に大きく寄与することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料中のヘモグロビン量および/または糖化ヘモグロビン量を比色定量する糖化ヘモグロビンの測定方法であって、
少なくとも下記前処理液(a)と下記試験片(b)とを用い、かつ少なくとも下記工程(i)から(iv)を経ることを特徴とする測定方法。
前処理液(a):少なくともプロテアーゼが含有された水溶液
試験片(b):少なくとも糖化アミノ酸オキシダーゼが担持された高分子基材
工程(i):測定試料と前処理液(a)とを体積比率1:1〜1:15で混合させる工程
工程(ii):測定試料と前処理液(a)との混合液を、試験片(b)に点着させる工程
工程(iii):反射光を用いて、試験片(b)の反射率および/または吸光度を測定する工程
工程(iv):得られた反射率および/または吸光度からヘモグロビン量、糖化ヘモグロビン量、糖化ヘモグロビン量のヘモグロビン量に対する割合からなる群より選ばれた1つ以上を算出する工程
【請求項2】
工程(i)が、測定試料と前処理液(a)とを体積比率1:1〜1:10で混合させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
さらに、前処理液(a)と試験片(b)との少なくとも一方に、ペルオキシダーゼおよび酸化還元系発色試薬がそれぞれ含有または担持されることを特徴とする請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
さらに、前処理液(a)と試験片(b)との少なくとも一方に、界面活性剤が含有または担持されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の測定方法。
【請求項5】
プロテアーゼが、少なくともバチルス(Bacillus)由来プロテアーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)由来プロテアーゼ、ストレプトマイセス(Streptomyces)由来プロテアーゼ、およびトリチラチウム(Tritirachium)由来プロテアーゼからなる群より選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の測定方法。
【請求項6】
酸化還元系発色試薬が、極大吸収波長が600〜800nmのロイコ型色素であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の測定方法。
【請求項7】
界面活性剤が、親水親油バランス(Hydrophile Lipophile Balance:HLB)が10〜20の非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の測定方法。
【請求項8】
測定試料が全血検体であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の測定方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の前処理液(a)と下記試験片(b)とからなる測定キット。

【図1】
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【公開番号】特開2013−108872(P2013−108872A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254862(P2011−254862)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】