説明

糖化蛋白質測定方法

本発明は、試料中の糖化蛋白質、例えばヘモグロビンA1cを測定する方法に関する。本発明の方法は、前記試料を一定量のフルクトシルアミンの存在下でフルクトシルアミン酸化触媒と接触させ、前記触媒により酸化されたフルクトシルアミンの量を測定することにより、前記糖化蛋白質の量を測定することを特徴とする。フルクトシルアミン酸化触媒としては、イミダゾール基を有する分子、フルクトシルアミン酸化酵素等を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は臨床検査の分野で糖尿病診断のマーカとして利用されている糖化蛋白質ならびにヘモグロビンA1cの測定方法に関する。より詳細には、本発明は、糖化蛋白質およびヘモグロビンA1cがフルクトシルアミン酸化触媒によるフルクトシルアミンの酸化反応を拮抗的に阻害することに基づいて、糖化蛋白質ならびにヘモグロビンA1cの定量を行う方法に関する。さらに、本発明は本発明の方法に基づき構築された糖化蛋白質ならびにヘモグロビンA1c測定用キットならびにセンサーに関する。
【背景技術】
蛋白質主鎖および側鎖のアミノ基はグルコースなどの還元糖の還元末端と非酵素的に結合して、アマドリ化合物すなわち糖化蛋白質を生ずる。血中においては、ヘモグロビンが糖化されて糖化ヘモグロビン(グリコヘモグロビン;HbA1c)を生ずることが知られている。糖尿病患者では健常人に比べてヘモグロビンに対するHbA1cの存在比率が高いこと、およびHbA1cの血中濃度は過去数週間の血糖値を反映することから、HbA1c血中濃度は糖尿病の診断および糖尿病患者の血糖コントロールの指標として、臨床試験において極めて重要である。
これまでに、種々の菌株からアマドリ化合物に対して作用する酵素、フルクトシルアミン酸化酵素が単離されており、これらの酵素を用いて糖化アルブミンやHbA1cなどの糖化蛋白質の加水分解産物を分析しうることが示唆されている(特開昭61−268178、特開昭61−280297、特開平3−155780、特開平5−192193、特開平7−289253、特開平8−154672、Agric.Biol.Chem.,53(1),103−110,1989、Agric.Biol.Chem.,55(2),333−338,1991、J.Biol.Chem.,269(44),27297−27302,1994、Appl.Environ.Microbiol.,61(12),4487−4489,1995、Biosci.Biotech.Biochem.,59(3),487−491,1995、J.Biol.Chem.,270(1),218−224,1995、J.Biol.Chem.,271(51),32803−32809,1996、J.Biol.Chem.,272(6),3437−3443,1997)。
また、フルクトシルアミンを酸化する触媒作用を有する種々の合成高分子が合成されており、これらの触媒を用いて糖化アルブミンやHbA1cなどの糖化蛋白質の加水分解産物を分析しうることが示唆されている(WO01/90735 WO02/22698)、Anal.Chim.Acta 435,151−156,2001)。
しかし、これまでに報告されているフルクトシルアミン酸化触媒は、加水分解されていない糖化蛋白質を基質として酸化することはできない。このため、まず糖化蛋白質の加水分解を行い、その結果生じる低分子量化した糖化ペプチドあるいはフルクトシルアミンをフルクトシルアミン酸化触媒を用いて酸化することにより、糖化蛋白質を測定していた。したがって、当該技術分野においては、糖化蛋白質を分解せずに測定する方法が望まれていた。
本発明は糖化蛋白質ならびにヘモグロビンA1cを加水分解せずにその濃度を測定する新規な糖化蛋白質の測定方法を提供することを目的とする。より詳細には本発明は臨床検査などの分野で利用される糖化蛋白質、特にヘモグロビンA1c(HbA1c)や糖化アルブミンの測定方法、ならびにその方法に基づき構築される測定用試薬ならびにセンサーを提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者は、糖化蛋白質がフルクトシルアミン酸化触媒によるフルクトシルアミン酸化反応を拮抗的に阻害しうることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、試料中の糖化蛋白質を測定する方法であって、前記試料を一定量のフルクトシルアミンの存在下でフルクトシルアミン酸化触媒と接触させ、前記触媒により酸化されたフルクトシルアミンの量を測定することにより、前記糖化蛋白質の量を測定することを特徴とする方法を提供する。本発明にしたがえば、糖化蛋白質を加水分解することなく、糖化蛋白質によるフルクトシルアミン酸化触媒の拮抗阻害を指標として糖化蛋白質を測定することが可能となる。
本明細書において、「フルクトシルアミン酸化触媒」とは、フルクトシルアミンの酸化反応を触媒し、かつその反応が糖化蛋白質の存在下で濃度依存的に阻害される触媒を表す。フルクトシルアミン酸化触媒の例としては、フルクトシルアミン酸化酵素、および電子受容体の存在下でフルクトシルアミンの酸化を触媒するポリマー、例えばイミダゾール基含有ポリマーが挙げられる。
好ましい態様においては、本発明は上記記載のフルクトシルアミン酸化触媒がイミダゾール基を有する分子であることを特色とする糖化蛋白質の測定方法を提供する。また好ましい態様においては、本発明は上記記載のフルクトシルアミン酸化触媒がフルクトシルアミン酸化酵素であることを特色とする糖化蛋白質の測定方法を提供する。より好ましくは、フルクトシルアミン酸化触媒はフルクトシルバリンに選択的である。
好ましくは、本発明の方法において、フルクトシルアミンの量を測定する工程は、フルクトシルアミンの酸化に伴って還元された電子受容体の量を分光学的に測定することにより行われる。また好ましくは、本発明の方法において、フルクトシルアミンの量を測定する工程は、フルクトシルアミンの酸化に伴って還元された電子受容体の量を電極を用いて電気化学的に測定することにより行われる。
さらに本発明は上記記載の糖化蛋白質がヘモグロビンA1cであることを特色とする糖化蛋白質の測定方法を提供する。
また本発明は上記記載の原理に基づく糖化蛋白質測定キットを提供する。好ましくは、このキットは、フルクトシルアミン酸化触媒およびフルクトシルアミンを含む。本発明はまた上記記載の原理に基づくヘモグロビンA1c測定キットを提供する。
さらに本発明は上記記載の原理に基づく糖化蛋白質測定用センサーを提供する。本発明はまた、上記記載の原理に基づくヘモグロビンA1c測定用センサーを提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は実施例2で構築したセンサーシステムである。
図2は実施例2で構築したセンサーシステムに、HbA1c試料を添加したときの定常電流値の減少を示す。
図3は実施例2で示したセンサーにフルクトシルバリン存在下でさまざまな蛋白質やHbA1cを添加したときの、定常電流値の減少の各々の試料濃度依存性を示す。
図4は実施例2で作成したセンサーシステムを用いたHbA1cを計測した結果である。
図5は実施例5で作成したセンサーシステムを用いたHbA1cを計測した結果である。
発明の詳細な説明
本発明の糖化蛋白質の測定方法は、糖化蛋白質がフルクトシルアミン酸化触媒によるフルクトシルアミン酸化反応を拮抗的に阻害しうるという発見に基づく。すなわち、糖化蛋白質を含む試料を一定量のフルクトシルアミンの存在下でフルクトシルアミン酸化触媒と接触させると、フルクトシルアミン酸化触媒により酸化されるフルクトシルアミンの量は、糖化蛋白質の濃度に依存して変化する。したがって、酸化されたフルクトシルアミンの量または酸化速度を測定することにより、試料中の糖化蛋白質の濃度を決定することができる。
フルクトシルアミン酸化触媒としては、たとえばイミダゾール基を有する合成高分子あるいはフルクトシルアミン酸化酵素を用いることができるが、フルクトシルアミンの酸化活性があり、かつ糖化蛋白質による拮抗阻害を受ける触媒であれば限定されるものではない。たとえば、イミダゾールに限らず、一般塩基触媒の機能を果たす官能基、たとえばピリジンを含むビピリジルを含むモノマーを用いて重合されたポリマーを用いることができる。
本発明の方法はHbA1cの測定に特に有用である。HbA1cはその分子内にフルクトシルバリン部分を有しており、フルクトシルバリンに選択的なフルクトシルアミン酸化触媒に対して拮抗的に作用するため、本発明の方法にしたがってこれを特異的に定量することができる。このような触媒としては、たとえばイミダゾール基を有する合成高分子を重合時にフルクトシルバリンを鋳型として存在させることにより合成した触媒ポリマー、あるいはフルクトシルバリンに選択的なフルクトシルアミン酸化酵素を用いることができるが、フルクトシルバリンの酸化活性があり、かつHbA1cによる拮抗阻害を受ける触媒であれば限定されるものではない。たとえば、フルクトシルバリンに限らず、類似体であるメチルバリンを鋳型として合成されたイミダゾール基を有する触媒ポリマーも触媒として用いることができる。
本発明における糖化蛋白質の測定は、フルクトシルアミン酸化触媒によるフルクトシルアミンの酸化にともなって還元される電子受容体の量あるいは還元速度を計測することによって容易に行うことができる。例えば、一定量のフルクトシルアミン酸化触媒およびフルクトシルアミン、ならびに電子受容体を含む溶液に試料を加え、フルクトシルアミンの酸化にともなって還元される電子受容体の量あるいは還元速度を測定し、試料の非存在下における電子受容体の量あるいは還元速度と比較することにより、試料中の糖化蛋白質の測定を行うことができる。電子受容体の測定方法としては、電子受容体の還元状態の特徴的なスペクトルに基づき分光学的手法により計測する方法、あるいは還元状態の電子受容体を電極上で再酸化することに基づき得られる電流を計測することによる電気化学的手法などを用いることができる。
電子受容体としてフェナジンメトスルフェート(PMS)とジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)を用いて、基質としてフルクトシルバリンを用いたとき、時間とともにフルクトシルバリンが酸化され、PMSを介してDCIPが還元され退色していくことが観測される。このDCIPの退色の速度は存在するフルクトシルバリンの濃度に比例する。したがって、例えば、HbA1cが存在するときには、フルクトシルバリンの酸化が拮抗的に阻害され、結果としてDCIPの退色速度が減少する。この退色速度の減少の割合を指標にHbA1cの濃度を測定することができる。すなわち、本発明の方法にしたがえば、電子受容体としてPMSとDCIPの存在下で未知濃度のHbA1cを10nM以下の感度で定量できる。さらに種々の人工電子受容体を利用してもよい。電子受容体としては、フェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体などを用いることができる。
一方、触媒としてフルクトシルアミン酸化酵素を用いるときには、上記電子受容体の他、酸素を電子受容体として用いることができる。この場合には酸素の減少量・減少速度、あるいは生成する過酸化水素の生成量・生成速度を指標として、該酵素の糖化蛋白質による阻害を計測し、糖化蛋白質濃度を計測することができる。
アッセイキット
別の観点においては、本発明は、本発明の原理を用いた測定方法を含む、HbA1cあるいは糖化アルブミン等の糖化蛋白質の測定キットを特徴とする。本発明の糖化蛋白質測定キットは、本発明に従うフルクトシルアミン酸化触媒、フルクトシルアミンならびに電子受容体を、少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、フルクトシルアミン酸化触媒とpH6.0〜10に調整された緩衝液、適当なメディエーター、キャリブレーションカーブ作製のための糖化蛋白質もしくはその誘導体の標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明に従う糖化蛋白質分析キットは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
センサー
別の観点においては、本発明は、糖化アルブミン、HbA1c等の糖化蛋白質を計測するためのセンサーを特徴とする。本発明の糖化蛋白質センサーは、フルクトシルアミン酸化触媒によりフルクトシルアミンが酸化されるのにともなって還元されるメディエータを電極上で電気化学的に酸化し、このときの電流値を測定する。糖化蛋白質の存在下では、糖化蛋白質の濃度に依存して酸化反応が拮抗的に阻害されるため、種々の濃度の糖化蛋白質の存在下で電流値を測定して標準曲線を作成し、これをもとに試料中の糖化蛋白質濃度を決定することができる。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上にフルクトシルアミン酸化触媒を固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーを用いる方法などがあり、これらを組み合わせて用いてもよい。
本発明の測定原理に従い、以下のようにHbA1c計測用センサーが構築できる。カーボン電極、金電極、白金電極などを用いてアンペロメトリック系で測定する場合には、作用電極としてフルクトシルアミン酸化触媒を固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)とともに、メディエーターを含む緩衝液中に挿入して一定温度に保持する。作用電極に一定の電圧を印加し、一定量のフルクトシルアミンおよび試料を加えて電流の増加値を測定する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。
さらにカーボン電極、金電極、白金電極などを用いてアンペロメトリック系で測定する方法として、固定化電子メディエータを用いる系がある。すなわち、作用電極としてフルクトシルアミン酸化触媒およびフェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体、フェナジンメトサルフェートなどの電子メディエータを吸着あるいは共有結合法により高分子マトリックスに固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)とともに、緩衝液中に挿入して一定温度に保持する。作用電極に一定の電位を印加し、一定量のフルクトシルアミンおよび試料を加えて電流の増加値を測定する。
いずれの電極を用いる場合にも、種々の濃度の糖化蛋白質の溶液を用いて作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中の糖化蛋白質の濃度を求めることができる。
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。また,本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2002−319040号の明細書および図面に記載の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。
【実施例】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが,これらの実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
1−ビニルイミダゾール1.6mmol、4−ビニルフェニルボロン酸0.8mmol、架橋試薬としてエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2mmol、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.06mmolを混合し、鋳型分子としてフルクトシルバリン0.2mmolを加え、溶媒として522μlのメタノールと174μlの水を加えて、アルゴン置換した後、45℃で12時間重合反応を行った。ここで得られたポリマー触媒をBI−MIPとよぶ。このポリマーを乳鉢にてすりつぶし、ふるいによって粒子径40μmのポリマーを調製した。また鋳型分子であるフルクトシルバリンを添加しないで、上記と全く同じ操作を行うことによりコントロールポリマーであるBI−CPを合成した。これらのポリマーをメタノール:酢酸(7:2)で2回、アセトニトリル:酢酸(9:1)で2回、アセトニトリルで1回、メタノールで1回、それぞれ洗浄した。
【実施例2】
カーボンペースト50mgに対して実施例1で作成したポリマー触媒を20mg混合し、カーボンペースト電極に充填した。この電極を1mM 1−メトキシフェナジンメトスルフェート(mPMS)を含む10mMリン酸緩衝化食塩水(pH7.4)の溶液に浸漬し、印加電圧を100mV(vs.Ag/AgCl)とし、基質にフルクトシルバリンを添加したときの応答を観測した。さらにここにHbA1cを添加したときの応答値の変化を観察するセンサーシステムを構築した(図1)。フルクトシルバリンを添加することにより、ポリマー触媒によりフルクトシルバリンが酸化され、それに伴って溶液中のmPMSが還元される。還元体mPMSがカーボンペースト電極に印加された電位により酸化されるため、電流の増加が観察される。この酸化還元反応ならびに電極反応は溶液中のフルクトシルバリン濃度に依存して一定の定常電流値を与える。ここへ一定量のHbA1cを滴下すると、定常電流値が低下する(図2)。これはHbA1cによるポリマー触媒の拮抗的阻害に基づく。さらに定常電流値に達した時点でHbA1cを滴下すると、さらに定常電流値が低下する。すなわち、HbA1c濃度に依存して、ポリマー触媒によるフルクトシルバリンの酸化反応が阻害されて電流値が低下することが示された。
【実施例3】
本センサーの選択性を調べることを目的として、本センサーシステムに種々の蛋白質を添加したときのセンサー応答の変化を観察した(図3)。比較対象として用いた蛋白質はHbA0,牛血清アルブミン、糖化アルブミンである。いずれの蛋白質を加えた場合もある程度の応答の低下がみられたが、これはHbA1cを加えた時の低下と比較して無視しうる程度であった。
【実施例4】
実施例3に基づき、本センサーシステムにおいてみられるフルクトシルバリンへの応答の阻害を指標にHbA1cの計測をおこなった。すなわち、本センサーシステムにおいて、添加するHbA1c濃度の増加にしたがい、HbA1c非存在下でのフルクトシルバリン0.1mMに対する応答電流値が低下する。このフルクトシルバリン0.1mMに対する応答電流値から、種々の蛋白質存在下で観測された非特異的な応答値の低下を差し引き、フルクトシルバリン0.1mMに対する応答電流値とした。この値に対して、種々の濃度のHbA1c存在下で観測されるフルクトシルバリン0.1mMに対する応答電流値を差し引き、その差のHbA1c非存在下でのフルクトシルバリン0.1mMに対する応答電流値に対する比を阻害率とした。この阻害率を縦軸にとり、HbA1cの計測を行なった結果を図4に示す。このように、本センサーを用いて、HbA1cを変性あるいは加水分解することなく、10nMの感度で検出することができた。
【実施例5】
作用極として白金電極、対極として白金線、参照極としてAg/AgCl電極を用いるセンサーシステムを用いて、試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)とヘモグロビンAo(HbAo)との比率を測定した。この測定の原理は、HbA1cがフルクトシルアミン酸化酵素(FAOD)によるフルクトシルバリンの酸化作用を濃度依存的に阻害することに基づく。
FAOD20mU、HbA1c/HbAo混合物(ヘモグロビンとして合計0.47μmol)を600μlの50mMリン酸カリウム緩衝液に加え、8℃で30分間インキュベートした後、作用極に600mV vs.Ag/AgClの電位を印加し、25℃で20分間インキュベートした。次に、0.1mmolのフルクトシルバリンを加え(全量650μl)、応答電流値(IC)の測定を行った。増加電流値をHbA1c濃度に対してプロットした結果を図5に示す。添加している試料であるHbA1c/HbAo混合物におけるHbA1c/HbAoの混合比を種々変化させ、本測定をおこなった。図から明らかなように、本試料中のHbA1c濃度増加にともない、フルクトシルバリンに対する応答電流値が低下する。この応答電流値の低下を指標として、FAODを用いて0−800nMのHbA1cを検出することができた。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の糖化蛋白質を測定する方法であって、前記試料を一定量のフルクトシルアミンの存在下でフルクトシルアミン酸化触媒と接触させ、前記触媒により酸化されたフルクトシルアミンの量を測定することにより、前記糖化蛋白質の量を測定することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、フルクトシルアミン酸化触媒がイミダゾール基を有する分子であることを特色とする糖化蛋白質の測定方法。
【請求項3】
請求項1において、フルクトシルアミン酸化触媒がフルクトシルアミン酸化酵素であることを特色とする糖化蛋白質の測定方法。
【請求項4】
請求項1から3において、フルクトシルアミン酸化触媒がフルクトシルバリンに選択的であることを特色とする糖化蛋白質の測定方法。
【請求項5】
請求項1から4において、フルクトシルアミンの量を測定する工程が、フルクトシルアミンの酸化に伴って還元された電子受容体の量を分光学的に測定することにより行われることを特色とする糖化蛋白質の測定方法。
【請求項6】
請求項1から4において、フルクトシルアミンの量を測定する工程が、フルクトシルアミンの酸化に伴って還元された電子受容体の量を電極を用いて電気化学的に測定することにより行われることを特色とする糖化蛋白質の測定方法。
【請求項7】
請求項1から6において、糖化蛋白質がヘモグロビンA1cであることを特色とする糖化蛋白質の測定方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法を実施するための糖化蛋白質測定キット。
【請求項9】
フルクトシルアミン酸化触媒およびフルクトシルアミンを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法を実施するための糖化蛋白質測定キット。
【請求項10】
糖化蛋白質がヘモグロビンA1cである、請求項8または9に記載の測定キット。
【請求項11】
請求項1から4ならびに6に記載の方法を実施するための糖化蛋白質測定用センサー。
【請求項12】
請求項1から4ならびに6に記載の方法を実施するためのヘモグロビンA1c測定用センサー。

【国際公開番号】WO2004/029613
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【発行日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539527(P2004−539527)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012232
【国際出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(596153357)
【Fターム(参考)】