説明

糖尿病性血管疾患を治療するための化合物および方法

糖尿病性血管疾患、例えば、糖尿病性神経障害、腎症および網膜症を治療するための、式(I)の化合物およびこれらの塩を使用する組成物ならびに方法を記載する。前記化合物の置換基は、本出願の中でさらに詳述する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および糖尿病性腎症を含む糖尿病性血管疾患を治療するための化合物、組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病(diabetes)は、糖尿病(diabates mellitus)とも呼ばれ、インスリン分泌および/またはインスリン作用の絶対的または相対的欠陥に起因する高血糖を特徴とする症候群である(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,17th Ed,Section 2,Chapter 13; Berkow,R.,Beers,M.H.,and Burs,M.,Eds.; John Wiley & Sons,1999)。この疾患は、I型糖尿病(DM−1;インスリン依存性DM、IDDM)、またはインスリン非依存性糖尿病としても知られているII型糖尿病(DM−2)のいずれかとして、さらに分類される。一般に、I型DMは、高血糖、および糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を発現する傾向を臨床的特徴とする、30歳未満の者の間で最も一般的なタイプの糖尿病として分類され、この場合、膵臓は、殆どまたは全くインスリンを生産しない。II型DMも高血糖およびインスリン抵抗性を特徴とし、これは、内臓/腹部の肥満を随伴することが多く、ケトアシドーシスへの傾向をほとんどまたは全く有さず、典型的に30歳より高齢の患者において診断され、ならびに血漿グルコースレベルを基準にして有意ではあるが可変的なインスリン分泌レベルを有する。
【0003】
糖尿病からの主な長期合併症は、糖尿病性血管疾患である。糖尿病性細小血管症は、小血管に影響し、また影響を受ける器官に依存して様々な病変を生じさせる。最も多く報告されている問題としては、神経障害、腎症および網膜症が挙げられる(Donnelly,R.ら,British Med Journal 320:pp 1062−1066(2000))。
【0004】
患者の網膜症の程度は糖尿病の期間と非常に相関することが判明した(Merck Manual,Ch.99,pp.729−731)。糖尿病網膜症には、一般に、30歳から70歳の年齢群の者が罹患する(Aiello,L.P.ら,Diabetes Care 21:pp 143−156(1998))。網膜症が現れるか、現れないかは、主として、この患者が糖尿病を有していた期間の長さ、ならびにこの患者が保持している代謝制御度に依存する。実際、30歳より前に糖尿病と診断される人のすべてが、この診断から20年以内に糖尿病性網膜症を発現すると報告されている(Ferris,F.L.ら,New Engl J Med,341:pp.667−678(1999))。さらに、糖尿病と診断されるときまでに、この診断時に30歳またはこれより高齢である全患者の約5%には糖尿病網膜症が既に存在している。インスリンを使用している患者の場合、この数字が80%に上昇する。インスリンを必要としない患者についてはこの約20%しか糖尿病性網膜症を示さないことが判明した(Neely,K.A.ら,Med Clin North Am,82:pp.847−876(1998))。
【0005】
糖尿病のこれらの合併症の高い罹患率のほかに、これらの重症性は、さらにもっと深刻な問題を生む:未治療の増殖性網膜症を有する全患者の50%が、網膜症発症の5年以内に失明するであろう(Ferris,F.L.ら,New Engl J Med 341:pp.667−678(1999))。さらに、網膜症が全糖尿病全患者における失明の唯一の原因ではないとはいえ、全DM−1患者の3.6%および全DM−2患者の1.6%が、最終的に盲目になると統計的に予測されることが報告された(Cunha−Vaz,J.G.,Ophthalmologica,214:pp.3777−3780(2000))。
【0006】
糖尿病性網膜症に対する現行治療アプローチは、外科手術的方法、例えば網膜の病変のレーザー光凝固術から、より化学療法系のアプローチに変わってきた。レーザー光凝固術を受けた患者のまるまる50%において網膜症の進行が継続するため、レーザー治療は不十分であると一般に認識されている(Arch Ophthalmol,103:pp.1796−1806(1985))。従って、糖尿病性網膜症の発生率が増加するにつれ、この疾病の予防および/または治療に対する様々なアプローチも増えてきた(Jose Pedro De la Cruz,M.D.ら,Diabetes Metab Res Rev.,20:pp.91−113(2004))。これらの治療的アプローチの殆どが、糖尿病網膜症の生理病理における3つ期[高血糖によって生じる生化学的変化(第1期);抗血栓機能の変化、血流調節の変化および成長因子の制御メカニズムの変化をはじめとする内皮機能不全(第2期);ならびに形態学的変質、例えば網膜血管機能不全(第3期)]のうちの1つ以上に合わせて作られている。
【0007】
糖尿病性網膜症の第1期をターゲットにした介入、特に、持続性高血糖に起因する生化学的障害をターゲットにするものは、この疾病の予防および治療における第一アプローチの1つである。これらの治療的処置は、幾つかのアプローチに分けることができる:ポリオール経路の阻害、ジアシルグリセロール−プロテインキナーゼC(DAG−PKC)経路の阻害、AGEの阻害、および抗酸化薬での酸化ストレスの抑制。
【0008】
アルドースレダクターゼ(AR)は、ポリオール形成に重要な酵素である。細胞グルコース取り込みにインスリンを必要としない組織(例えば、網膜および内皮細胞)では、糖分解経路が、糖尿病性網膜症の持続性高血糖に圧倒される(Gabbay,K.H.,N Engl J Med,288:pp.831−836(1973), Vlassara,H.,Diabetes,46(suppl.2):pp.S19−S25(1997); King,G.L.ら,Endocrinol.Metab Clin North Am,25:pp.255−270(1996))。従って、ポリオール経路フラックスを阻害する薬物が研究され、様々な成功を収めている(Kato,N.ら,Diabetes Res Clin Pract,50:pp.77−85(2000))。こうした薬物としては、アルレスタチン、ソルビニル、トルレスタット、エパルレスタットおよびゼナレスタットが挙げられる。これらのアルドースレダクターゼ阻害剤の治療有用性は、未だ確立されていない(Arch Opthalmol,108:pp.1234−1244(1990))。
【0009】
ジアシルグリセロール−プロテインキナーゼC(DAG−PKC)経路の阻害剤は、よりよい将来性を見せており、ビタミンE(d−アルファ−トコフェロール;Chappey,O.ら,Eur J Clin Invest,27:pp.97−108(1997))およびLY333 531(大環状ビスインドリルマレイミド化合物;Wakasaki,H.ら,Proc Natl Acad Sci,94:pp.9320−9325(1997); Nakamura,J.ら,Diabetes,48:pp.2090−2095(1999))は、両方とも、PKC−β2、プロテインキナーゼCのベータアイソフォーム、に対して特異的阻害作用を有する。これらの結果により、試験した患者の88%における網膜血流の増加が証明された(Bursell,S.E.ら,Diabetes Res Clin Pract,45:pp.169−172(1999))。腎臓保護物質アミノグアニジンが腎性プロテインキナーゼC活性を低下させることも、最近報告されており(Osicka,T.M.ら,Diabetes,49:pp.87−93(2000))、これは、糖尿病性網膜症での使用にこれが有望であることを示唆している。
【0010】
最後に、抗酸化薬、特に抗酸化剤(例えば、ビタミンCおよびE、β−カロチンならびにセレン)の混合物での細胞酸化ストレスの抑制は、網膜周皮細胞ゴーストの形成の65%までの低減を示した(Kowluru,R.A.ら,Diabetes,50:pp.1938−1942(2001); Ceriello,A.ら,Diabetes,44:pp.924−928(1995))。有用である可能性がある他の物質としては、α−リポ酸(Kern,T.S.ら,Diabetes,50:pp.1636−1642(2001))、アミノグアニジン(Morcos,M.ら,Diabetes Res Clin Pract,52:pp.175−183(2001))、ならびに単独のビタミンCおよびEが挙げられ、これらのすべてが、糖尿病性網膜症に随伴する酸化ストレスを低減し、インスリンの作用を促進するので、最初に有望視された(Paolisso,G.ら,Diabetes Care,16:pp.1433−1437(1993); Reaven,P.D.ら,Diabetes Care,18:pp.807−816(1995)。
【0011】
異なる生化学的経路での高血糖に起因する変化が血管内皮において一緒に作用して、糖尿病の第二期(いわゆる、内皮機能不全)を生じさせる。この機能不全は、糖尿病網膜症の発生および進行に直接関与するので、内皮機能不全の作用を修正または低減することを目的とした予防的処置が、この疾病を制御する第二の有意なアプローチである。こうした目標を定めたアプローチとしては、血小板機能阻害剤、例えば、アスピリン(Diabetes,38:pp.491−498(1989))、トリフューザル(trifusal)、およびジタゾール(Esmatjes,E.ら,Diabetes Res Clin Pract,7:pp.285−291(1989); Pagani,A.ら,Curr Ther Res,45:pp.409−415(1989); Moreno,A.ら,Haemostasis,25:ppl66−171(1995))のようなTxA合成阻害剤の使用;ジピリダモール(Vingolo,E.M.ら,Acta Ophthalmol Scand,77:pp.315−329(1999))、硝酸塩および硝酸塩での環状ヌクレオチドレベルの増加;ならびにトリクロジピン(Arch Ophthalmol,108:1577−1583(1990))およびクロピドグレル(De la Cruz,J.P.ら,Naunyn−Schmiedeberg’s Arch Pharmacol,367:pp.204−210(2002))のような薬物でのDP経路の阻害が挙げられる。内皮を調節する他のアプローチとしては、ボセンタンでの内皮受容体(ET and ET)の非特異的遮断(Hopfner,R.L.ら,Diabetologia,42:pp.1383−1394(1999))、プロスタサイクリン合成の調節(Shindo,H.ら,Prostaglandins,41:pp.85−96(1991); De La Cruz,J.P.ら,Thromb.Res.,97:pp.125−131(2000))、ドベシル酸カルシウムで窒素酸化物(NO)の生産および作用を刺激することによる窒素酸化物経路の調節(Leite,E.B.ら,Int.Ophthalmol,14:pp.81−88(1990); Ruiz,E.ら,Br.J.Pharmacol,121:pp.711−716(1997))、ならびにペントキシフィリンでの脈絡膜血流の増加(Sebag,J.ら,Angiology,45:pp.429−433(1994))が挙げられる。血小板機能阻害剤が、糖尿病性網膜症の進行を遅速させ得ることは証明されているが、これらは、この疾病の進行の最も初期から使用された場合にのみ有効であるように思われる。加えて、これらの薬物の高い推奨用量率は、これらの使用に関連する血栓性副鎖用の高い発生率を導く。
【0012】
血糖の不適切な制御と共に、内皮機能の不全は、糖尿病性網膜症の形態学的病変を導く。これらの病変(糖尿病性網膜症の第三期)は、化学療法がもはや選択肢にならないほど重症であることが多い。この状況では、より積極的な治療的処置が求められることが多い。こうした介入の1つがレーザー凝固であり、これは、新しい血管の退行を誘導し、梗塞部を消し、脈絡網膜接着を誘導することにより、劇的な視力障害のリスクを低減することができる(Petrovic,V.ら,Diabetes Technol Ther,1:pp.177−187(1999))。しかし、この治療アプローチの有用性は、網膜酸化を増加させることによる血管の退行および/または浮腫の退行に満たないものを生じさせることに限られることが多い(Ooi,C.G.ら,Diabetes Metab Res Rev,15:pp.373−377(1999))。類似のアプローチ、硝子体切除術は、硝子体出血の内容物を外科手術で除去し、増殖性糖尿病性網膜症における新血管成長に有利な媒質を除去する一方で、同時に網膜牽引を減少または最小化する(Smiddy,W.E.ら,Surveys of Ophthalmol,43:pp.491−507(1999))。しかし、重ねて、今日までのこうした外科手術アプローチの使用の結果は、期待の持てるほどのものではない(Lewis,H.,Am.J.Ophthalmol,131:pp.123−125(2001))。
【0013】
糖尿病性網膜症の治療に対する多数のアプローチが特許にも記載されている。米国特許第6,440,933号(2002年8月27日発行)には、逐次代謝により網膜に成長因子阻害活性を有するペプチドを送達するように設計されたペプチド誘導体、例えばソマトスタチン類似体が記載されている。これらのペプチド誘導体は、伝えられるところによるとジヒドロピリジンピリジニウム塩型レドックスターゲットまたは部分、バルキーな脂肪親和性官能基およびアミノ酸/ジペプチド/トリペプチドスペーサーを含むものであり、糖尿病性網膜症の予防および治療において使用するように提案されている。
【0014】
糖尿病性神経障害は、糖尿病によって生じる神経障害の一科である。糖尿病の人は、時の経過とともに体中の神経に損傷をきたす場合がある。神経障害は、手、腕、足および下肢のしびれならびに時には疼痛および衰弱を導く。消化管、心臓および性器をはじめとするすべての器官系で問題が発生する場合もある。糖尿病の人は、いつでも神経異常を発現し得るが、糖尿病により長く罹患している人ほど、このリスクが高い。糖尿病の人の50パーセントが、何らかの形態の神経障害を有すると統計学に予測されているが、神経障害の人のすべてが症状を有するとは限らない。血糖値制御の問題を有していた人、高い血中脂肪値および血圧を有する人、太りすぎの人ならびに40歳より高齢の人においても、糖尿病性神経障害が、より一般的であるようである。最も一般的なタイプは、末梢性神経障害であり、これは遠位性対称性神経障害とも呼ばれ、腕および下肢を罹患させる。
【0015】
糖尿病性神経障害の症状は、神経障害のタイプおよびどの神経が罹患するかによる。一部の被験者は、全く症状を有さない。他の者については、足のしびれ、刺痛または疼痛が最初の徴候となることが多い。1人の人が疼痛としびれの両方を経験する場合もある。多くの場合、症状は最初は小さく、ならびに殆どの神経損傷は数年をかけて発生するので、軽症が長期にわたって気づかれずにいることもある。症状は、知覚または運動神経系ならびに不随意(自律)神経系に影響し得る。一部の人(主として、巣状神経障害を有する人)において、疼痛の発症は、突然および重度であり得る。
【0016】
糖尿病性神経障害は、末梢性神経障害、自立性神経障害、近位型神経障害および巣状神経障害に分類することができる。各々、身体の異なる部位を別様に罹患させる。末梢神経障害は、足指、足、下肢、手および腕の疼痛または感覚喪失を引き起こす。自立性神経障害は、消化、腸および膀胱機能、性的反応ならびに発汗の変化を引き起こす。心臓を仕え、血圧を制御する神経も罹患させることがある。自立性神経障害は、無自覚低血糖(低い血糖)、人々が低血糖の警告徴候をもはや経験しない状態も引き起こすことがある。近位型神経障害は、大腿、股関節または臀部の疼痛を引き起こし、下肢衰弱を導く。巣状神経障害は、結果として、一神経または神経群を突然衰弱させ、これに起因して筋肉の衰弱または疼痛が生じる。身体のあらゆる神経を罹患させ得る。
【0017】
糖尿病性腎症は、3から6ヶ月空けて少なくとも2回の機会に確認される持続的アルブミン尿(>300mg/dまたは>200mcg/分)、糸球体濾過率(GFR)の容赦ない低下および動脈血圧上昇を特徴とする臨床症候群である。糖尿病性腎症は、米国および他の西洋諸国における慢性腎不全の主原因である。これは、個々の糖尿病患者についての罹病率および死亡率という点で最も有意な長期合併症の1つでもある。
【0018】
高血圧は、糖尿病腎症ではほぼ常に発現または悪化し、ならびに発現するための第一の異常であり得る。糖尿病性腎症は、体全体の血管疾患を悪化させる徴候でもある。糖尿病性眼病は、通常この段階には存在しており、これは、より小さな血管の損傷を示す。より大きな血管(動脈)は、ほぼ常に罹患し、これが心臓発作、卒中および循環系疾患のより多くの、および通常より若年での発生を導く。一般に、糖尿病は、小神経も損傷させることとなり、これが「糖尿病性末梢性腎症」および「自立性神経障害」の原因となる。
【0019】
米国特許第6,080,732号(2000年6月27日発行)は、糖尿病性網膜症に罹患している患者の治療における、スロデキシド(哺乳類の腸粘膜から抽出した天然由来のグリコサミノグリカン)およびこれを含有する組成物の使用を提案している。スロデキシドの有効度は、網膜の病変の改善を示すこの能力により、ならびにこの薬物を含有する医薬組成物で治療した糖尿病患者における微細毛細血管の膜の機能的完全性の回復度と続く毛細血管透過性低下により示されている。
【0020】
米国特許第5,639,482号(1997年6月17日発行)には、糖尿病患者の食事に、この糖尿病患者の視力が改善するまで24から35日間、1日に約1000mcgの亜セレン酸ナトリウムおよび100IUのビタミンEを補足することによる、糖尿病網膜症の治療方法およびこの再発を防止する手段が記載されている。このビタミン治療計画に従って、250mcgの亜セレン酸ナトリウムおよび400IUのビタミンEのデイリー・メインテナンス・サプリメントを継続できると、患者も申し出ている。
【0021】
米国特許第5,019,591号(1991年5月28日発行)には、網膜症の治療および予防ならびに糖尿病に随伴する他の小血管合併症の治療および予防のための方法が記載されており、この方法は、網膜症を有する患者に抗ヒスタミン剤または抗ヒスタミン剤の医薬適合性誘導体を投与することを含む。この特許の1つの実施態様において、前記抗ヒスタミン剤は、ジフェンヒドラミン、テルフェナジン、メキタジン、アステミゾール、アクリバスチン、SCH 29851、SK&F 93944、クレマスチン、ケトチフェン、アザタジン、オキサトミド、アゼラスチン、ドキセピン、ピペロキサン(933F)、929F、1571F、メピラミン、クロルフェニラミン、トリプロリジンおよびプロメタジンの群から選択され、一方、第二の実施態様において、前記抗ヒスタミン剤は、ブリマミド、シメチジン、ラニチジン、ファモチジンまたはニザチジンであると記載されている。
【0022】
AtheroGenics,Inc.に譲渡された、Parthasarathyの米国特許第5,262,439号には、水溶性が増大したプロブコールの類似体が開示されており、この場合、一方または両方のヒドロキシル基が、この化合物の水溶性を増大させるエステル基で置換されている。1つの実施態様において、前記エステルは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸またはマレイン酸のモノまたはジプロブコールエステルからなる群より選択されるジカルボン酸から形成される。もう1つの実施態様において、前記プロブコール誘導体は、モノまたはジエステルであり、この場合のエステルは、カルボン酸基、アミン基、アミン基の塩、アミド基、アミド基およびアルデヒド基から成る群より選択される官能基を含有するアルキルまたはアルケニル基を含有する。
【0023】
Parkerらの米国特許第5,155,250号には、2,6−ジアルキル−4−シリルフェノールは抗アテローム硬化症薬であると開示されている。同化合物は、1995年6月15日に発行されたPCT国際公開第95/15760号において血清コレステロール低下剤として開示されている。Parkerらの米国特許第5,608,095号には、アルキル化4−シリル−フェノールが、LDLの過酸化を抑制し、血漿コレステロールを低下させ、VCAM−1の発現を阻害し、従って、アテローム硬化症の治療に有用であると開示されている。
【0024】
2000年9月19日に発行された特許であり、AtheroGenics,Inc.により出願され、1998年11月18日に発行された国際公開第98/51662号に対応する、米国特許第6,121,319号には、VCAM−1により媒介される疾患、ならびに炎症性疾患および心血管疾患の治療のための、式:
【0025】
【化14】

[式中、
、R、RおよびRは、独立して、水素、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル(これらは、置換されていてもよい)、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルカリール、置換アルカリール、アラルキルまたは置換アラルキルをはじめとする、この分子の望ましい特性に別様に悪影響を及ぼさない任意の基であり;前記R、R、RおよびR上の置換基は、水素、ハロゲン、アルキル、ニトロ、アミノ、ハロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より選択され;Zは、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、炭水化物基、−(CH)−R、−C(O)−Rおよび−C(O)−(CH−Rから成る群より選択され、この場合、(a)R、R、RおよびRの各々が、t−ブチルであるとき、Zは、水素ではなく;ならびに他の可変項は、これらの明細書において定義されているとおりである]
を有する式の一定の化合物が開示されている。
【0026】
AtheroGenics,Inc.により出願され、2001年9月27日に発行された国際公開第01/70757号には、次の式(I)の一定のチオエーテルおよびこれらの医薬的に許容される塩の使用が記載されている:
【0027】
【化15】

[式中、
、R、RおよびRは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルカリール、置換アルカリール、アラルキルまたは置換アラルキルをはじめとする、この分子の望ましい特性に悪影響を及ぼさない任意の基であり;ならびにZは、(i)置換もしくは非置換炭水化物、(ii)置換もしくは非置換アルジトール、(iii)スルホン酸を末端に有する、C1−10アルキルもしくは置換C1−10アルキル、(iv)ホスホン酸を末端に有する、C1−10アルキルもしくは置換C1−10アルキル、(v)置換もしくは非置換C1−10アルキル−O−C(O)−C1−10アルキル、(vi)直鎖ポリヒドロキシル化C3−10アルキル、(vii)−(CR1−6−COOH(この式中、Rは、水素、ハロ、アミノもしくはヒドロキシから独立して選択され、およびR置換基の少なくとも一方は、水素でない)、または(viii)−(CR1−6−X(この式中、Xは、アリール、ヘテロアリールもしくは複素環であり、およびRは、独立して水素、ハロ、アミノもしくはヒドロキシである)である]。
【0028】
2000年11月14日、AtheroGenics,Inc.に発行された米国特許第6,147,250号は、VCAM−1の発現を阻害する、および従って、VCAM−1により媒介される疾病の治療において使用することができる化合物、組成物および方法を提供しており、この方法は、場合によっては医薬的に許容される担体中の、式(II)の化合物またはこの医薬的に許容される塩の投与を含む。前記式(II)の化合物は、
【0029】
【化16】

[式中、
、R、RおよびRは、独立して、水素、直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル(これらは、置換されていてもよい)、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルカリール、置換アルカリール、アラルキルまたは置換アラルキルをはじめとする、この分子の望ましい特性に別様に悪影響を及ぼさない任意の基であり;前記R、R、RおよびR上の置換基は、水素、ハロゲン、アルキル、ニトロ、アミノ、ハロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より選択され;Zは、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、炭水化物基、−−(CH)−−R、−−C(O)−−R、および−−C(O)−−(CH−−Rから成る群より選択され、この場合、(a)R、R、RおよびRの各々が、t−ブチルであるとき、Zは、水素ではなく;Rは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アキルオキシ、アルコキシアルキル、置換アルコキシアルキル、NH、NHR、NR、モノもしくはポリヒドロキシ置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アシルオキシ、置換アシルオキシ、COOH、COOR、−−CH(OH)R、ヒドロキシ、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NRから成る群より選択され;Rは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルキルオキシ、アルコキシアルキル、置換アルコキシアルキル、NH、NHR、NR、モノもしくはポリヒドロキシ置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールから成る群より選択され;ならびにRは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルキルオキシ、アルコキシアルキル、置換アルコキシアルキル、NH、NHR、NR、モノもしくはポリヒドロキシ置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アシルオキシ、置換アシルオキシ、COOH、COOR、−−CH(OH)R、ヒドロキシ、O−ホスフェート、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NRから成る群より選択される]
、およびこの医薬的に許容される塩である。
【0030】
Mengらは、抗酸化剤特性と脂質調節特性を兼備する、血管細胞接着分子−I(VCAM−1)のTNF−α誘発性発現の強力な阻害剤として発見された一連のフェノール系化合物を開示している。前記開示化合物は、アテローム硬化症および高脂血症の動物モデルにおいて有効性を示した(Bioorganic & Med Chem Ltrs., 12(18):2545−2548(2002))。
【0031】
同様に、Sundellらは、プロブコール、([4−[[1−[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]チオール]−1−メチルエチル]チオ]2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノキシ]酢酸)、から誘導される新規代謝安定性フェノール系抗酸化剤化合物を記載しており、この化合物は、ICAM−1より大きな程度に、VCAM−1およびMCP−1(関節リウマチ(RA)における関節への白血球の補充に重要な2つのレドックス感受性炎症性遺伝子)のTNF−α誘発内皮発現を阻害する(FASEB Journal,16:p.A182(2002); Apr.20−24,2002,Annual Meeting of the Professional Research Scientists on Experimental Biology,ISSN 0892−6638)。
【0032】
網膜症、神経障害および腎症をはじめとする糖尿病性血管疾患の治療において使用される、現行の推奨治療計画に随伴する強い副作用の範囲、ならびに今日までにこの病的異常の基礎となる状態の治療におけるこれらの計画の限られた成功からして、糖尿病性血管疾患、ならびに糖尿病に関連して生じる他の小血管合併症の治療に有用な新たな方法および組成物が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の目的は、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および糖尿病性腎症をはじめとする糖尿病性血管疾患、ならびにこうした糖尿病性血管疾患の進行に随伴する疾患の治療に使用するための新規組成物、方法および戦略を提供することである。
【0034】
本発明のもう1つの目的は、ある患者において糖尿病性血管疾患に対して強い活性を示し、同時に、この患者の正常な細胞に対しては最小の作用しか示さない、新規組成物、方法および戦略を提供することである。
【0035】
本発明のさらなる目的は、ある患者において糖尿病性血管疾患、例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および糖尿病性腎症の進行に対して強い活性を示し、同時に、この患者の正常な細胞に対しては最小の作用しか示さない、新規組成物、方法および戦略を提供することである。
【0036】
本発明のなお、さらなる目的は、適切な組成物において使用するまで保管するために充分安定であり、任意の安定で望ましい様式により投与される、糖尿病性血管疾患、例えば糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および糖尿病性腎症を有する患者を治療するための組成物、方法および戦略を提供することである。
【0037】
本発明のさらなる目的では、糖尿病に随伴するものであってもよいし、なくてもよい眼の炎症性疾患、例えばブドウ膜炎、網膜血管炎または結膜、角膜、強膜、網膜および眼窩の他の炎症性疾患、ならびにこうした眼の炎症性疾患の進行に随伴する疾患を有する患者を治療するための組成物、方法および戦略を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は、1つの実施態様において、この必要がある宿主(典型的には哺乳類、さらに典型的にはヒト)において網膜症、神経障害および腎症をはじめとする糖尿病性血管疾患を抑制または治療する方法を提供し、この方法は、式I:
【0039】
【化17】

[式中、
、R、RおよびRは、独立して、水素、直鎖、分枝鎖(例えば、t−ブチル)もしくは環状アルキル(これらは、置換されていてもよい)、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルカリール、置換アルカリール、アラルキルまたは置換アラルキルであり;前記R、R、RおよびR基上の置換基は、水素、ハロゲン、アルキル、ニトロ、アミノ、ハロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より選択され;
Zは、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、炭水化物基、−−(CH−−R、−−C(O)−−R、および−−C(O)−−(CH−Rから成る群より選択され、この場合、R、R、RおよびRの各々がt−ブチルであるとき、Zは、水素でなく、ならびに(b)nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシアルキル、置換アルコキシアルキル、NH、NHR、NR、モノもしくはポリヒドロキシ置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アシルオキシ、置換アシルオキシ、COOH、COOR、−−CH(OH)R、ヒドロキシ、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NRから成る群より選択され;
は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシアルキル、置換アルコキシアルキル、NH、NHR、NR、モノもしくはポリヒドロキシ置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールから成る群より選択され;
は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシアルキル、置換アルコキシアルキル、NH、NHR、NR、モノもしくはポリヒドロキシ置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アシルオキシ、置換アシルオキシ、COOH、COOR、−CH(OH)R、ヒドロキシ、O−ホスフェート、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NRから成る群より選択される]
の化合物またはこの医薬的に許容される塩の治療有効量を単独で、または他の医薬品と併用で投与することを含む。
【0040】
およびRは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシアルキル、置換アルコキシアルキル、NH、NHR、NR、モノもしくはポリヒドロキシ置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールから成る群より独立して選択され;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシアルキル、置換アルコキシアルキル、モノもしくはポリヒドロキシ置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールから成る群より独立して選択される。
【0041】
代替実施態様において、R、RおよびRは、独立して、この化合物の水溶性を改善する置換基であり得、こうした置換基としては、C(O)−スペーサー−SOH(この場合のスペーサーは、下で定義する)、C(O)−スペーサー−SOM(この場合、Mは、医薬的に許容される塩を形成するために用いられる金属、例えばナトリウムである)、C(O)−スペーサー−PO、C(O)−スペーサー−PO、C(O)−スペーサー−POHM、C(O)−スペーサー−POH、C(O)−スペーサー−POM、SOM、−−PO、−−PO、−−POHM、環状ホスフェート、ポリヒドロキシアルキル、炭水化物基、C(O)−スペーサー−[O(C1−3−アルキル)(この場合、nは、上で定義したとおりであり、pは、1、2または3である)、−−[O(C1−3−アルキル)、カルボキシ低級アルキル、低級アルキルカルボニル低級アルキル、N,N−ジアルキルアミノ低級アルキル、ピリジル低級アルキル、イミダゾリル低級アルキル、モルホリニル低級アルキル、ピロリジニル低級アルキル、チアゾリル低級アルキル、ピペリジニル低級アルキル、モルホリニル低級ヒドロキシアルキル、N−ピリル、ピペラジニル低級アルキル、N−アルキルピペラジニル低級アルキル、チアゾリル低級アルキル、テトラゾリル低級アルキル、テトラゾリルアミノ低級アルキル、またはチアゾリル低級アルキルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
ここで用いるスペーサーは、−(CH、−(CH−CO−、−(CH−N−、−(CH−O−、−(CH−S−、−(CHO)−、−(OCH)−、−(SCH)−、−(CHS−)、−(アリール−O)−、−(O−アリール)−、−(アルキル−O)−、または−(O−アルキル)−から成る群より選択される基である。
【0043】
上で定義した基にある置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、アリール、ヘテロアリール、COOR、CONH、CONHR、CONR、ハロアルキル、アルコキシアルキル、モノ−またはポリヒドロキシアルキル、CHOR、CHOH、OCOR、O−ホスフェート、SONH、SONHR、またはSONRから成る群より選択される。
【0044】
本発明のもう1つの実施態様では、この必要がある宿主(典型的には哺乳類、さらに典型的にはヒト)において網膜症、神経障害および腎症をはじめとする糖尿病性血管疾患を抑制または治療する方法を提供し、この方法は、式(II):
【0045】
【化18】

(式中、
Yは、結合または
【0046】
【化19】

であり;
、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、C1−10アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−10アルカリールおよびアリールC1−10アルキルから成る群より独立して選択され、この場合、すべての非水素およびヒドロキシ置換基は、C1−10アルキル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ハロC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから選択される基の1個以上から置換されていてもよい;
Zは、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ヒドロキシルC1−10アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−10アルカリール、アリールC1−10アルキル、ヘテロアリールC1−10アルキル、C1−10アルコキシC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノC1−10アルキル、カルボキシC1−10アルキル、C1−10ジアルキルアミノC1−10アルキル、アミノC1−10アルキル、複素環、複素環C1−10アルキル、RNH、RN、カルボキシ、炭水化物基、炭水化物ラクトン基およびアルジトール基(この場合、これらのすべてが、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシル、アシルオキシ、COOH、COOR、OC(O)R、CH(OH)R、NHR、NR、C(O)NH、C(O)NHR、CONR、NHC(O)O−R、OSOH、SOH、SONHR、SONR、P(O)(OH)OR、POP(O)(OH)R、P(O)(OR、P(O)R(OR)、OPOH、PO、ヒドロキシメチルおよび環状ホスフェート(この場合、可能なときには、これらのすべてが1個以上のRにより置換されていてもよい)から選択される基から選択される基より独立して選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より独立して選択され;
は、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−10アルコキシ、C1−10アルコキシカルボニルC1−10アルキル、アリール、カルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アリール、複素環、複素環C1−10アルキルおよびヘテロアリール(この場合、これらのすべてが、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;ならびに
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノおよびカルボキシから成る群より独立して選択される;2個のR基が一緒になって、4から7員環を形成してもよい)
の化合物またはこの医薬的に許容される塩の有効量を投与することを含む。
【0047】
本発明のさらなる実施態様では、この必要がある宿主において網膜症、神経障害および腎症をはじめとする糖尿病性血管疾患を抑制または治療する方法を記載し、この方法は、式III:
【0048】
【化20】

(式中、
Yは、結合または
【0049】
【化21】

であり;
Zは、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ヒドロキシルC1−10アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−10アルカリール、アリールC1−10アルキル、ヘテロアリールC1−10アルキル、C1−10アルコキシC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノC1−10アルキル、カルボキシC1−10アルキル、C1−10ジアルキルアミノC1−10アルキル、アミノC1−10アルキル、複素環、複素環C1−10アルキル、RNH、RN、カルボキシ、炭水化物基、炭水化物ラクトン基およびアルジトール基(この場合、これらのすべてが、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシル、アシルオキシ、COOH、COOR、OC(O)R、CH(OH)R、NHR、NR、C(O)NH、C(O)NHR、CONR、NHC(O)O−R、OSOH、SOH、SONHR、SONR、P(O)(OH)OR、POP(O)(OH)R、P(O)(OR、P(O)R(OR)、OPOH、PO、ヒドロキシメチルおよび環状ホスフェート(この場合、可能なときには、これらのすべてが1個以上のRにより置換されていてもよい)から選択される基から選択される基より独立して選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より独立して選択され;
は、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−10アルコキシ、C1−10アルコキシカルボニルC1−10アルキル、アリール、カルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アリール、複素環、複素環C1−10アルキルおよびヘテロアリール(この場合、これらのすべてが、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;ならびに
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノおよびカルボキシから成る群より独立して選択され;2個のR基が一緒になって、4から7員環を形成してもよい)
の化合物またはこの医薬的に許容される塩の治療有効量を、単独でまたは他の医薬品と併用で投与することを含む。
【0050】
本開示のさらにもう1つの実施態様では、この必要がある宿主において網膜症、神経障害および腎症をはじめとする糖尿病性血管疾患を抑制または治療する方法を記載し、この方法は、
【0051】
【化22】

から成る群より選択される化合物またはこの医薬的に許容される塩を、単独でまたは他の医薬品と併用で投与することを含む。
【0052】
本開示のさらなる実施態様では、患者おいて網膜症、神経障害および腎症をはじめとする糖尿病性血管疾患を、単独でまたは他の医薬品と併用で、抑制または治療する方法を記載し、この方法は、
【0053】
【化23】

の化合物またはこの医薬的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む。
【0054】
本発明のさらなる実施態様では、糖尿病に随伴するものであってもよいし、なくてもよい眼の炎症性疾患、例えばブドウ膜炎、網膜血管炎または結膜、角膜、強膜、網膜および眼窩の他の炎症性疾患を治療および/または予防するための医薬組成物を記載し、この組成物は、本明細書中、前記いずれかの実施態様において開示したような式I、式IIもしくは式IIIの化合物またはこの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを、場合によっては、医薬的に許容される担体または希釈剤、および場合によっては、1つ以上の他の有効な治療薬とともに含む。
【0055】
本発明のもう1つの実施態様では、糖尿病性血管疾患を哺乳類、特にこうした疾病を有するまたはこうした疾病のリスクがあると診断された哺乳類において治療および/または予防するための医薬組成物を記載し、この組成物は、本明細書中、前記いずれかの実施態様において開示したような式I、式IIもしくは式IIIの化合物またはこの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを、場合によっては、医薬的に許容される担体または希釈剤、および場合によっては、血管疾患治療用の1つ以上の他の有効な治療薬とともに含む。
【0056】
本発明のさらなる実施態様として、哺乳類における糖尿病性血管疾患の治療方法を記載し、この方法は、前記いずれかの実施態様において開示したような式I、式IIもしくは式IIIの化合物またはこの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの有効量を、場合によっては、医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤とともに、ならびに場合によっては、血管疾患の治療用の1つ以上の他の有効な治療薬と併用および/または交代で投与することを含む。
【0057】
本発明のもう1つの実施態様では、1つ以上の他の有効な治療薬と場合によっては併用および/または交代で、哺乳類において糖尿病性血管疾患を治療するための、前記いずれかの実施態様において開示したような式I、式IIもしくは式IIIの化合物またはこの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグと場合によっては医薬適合性担体または希釈剤の使用を記載する。
【0058】
本発明のさらなる実施態様では、哺乳類における糖尿病性血管疾患を治療するための医薬品の製造における、1つ以上の他の有効な治療薬と場合によっては併用および/または交代での、前記いずれかの実施態様において開示したような式I、式IIもしくは式IIIの化合物またはこの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグと場合によっては医薬適合性担体または希釈剤の使用を記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
糖尿病性血管疾患、特に糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および糖尿病性腎症を、こうした疾病を有すると診断された患者において治療する方法を提供する。本発明に従って、網膜の血流を増加させることができ、血管収縮因子の過発現を減少させることができ、および/または網膜の微小血管異常を予防することができる。糖尿病性血管疾患および/または眼の炎症性疾患のための治療計画において本開示の化合物を含む薬物を併用することもここで考慮される。
【0060】
本発明は、第1期、第2期および第3期糖尿病性網膜症を含む、糖尿病性神経障害、腎症および網膜症をはじめとする糖尿病性血管疾患を患者において治療するための方法を考えている。本開示に従って、糖尿病性血管疾患に現在罹患している患者を治療する方法は、こうした治療が必要な患者に、式I、式IIまたは式III:
【0061】
【化24】


(式中の可変項記号(R、R、R、R、R、YおよびZ)は、前に上で定義したとおりである)
の化合物またはこの医薬的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む。投与される治療有効量は、好ましくは、前記化合物およびこれに適する担体または賦形剤を含む医薬調合物の形態である。本発明のこうした医薬調合物は、着香剤、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性または分散剤、および医薬調合技術分野では公知の多数の他の添加剤も含むことがある。
【0062】
I.定義
用語「C−C10アルキル」「C−C10アルケニル」、C−C10アルコキシ、C−C10アルケノキシ、C−C10アルキニルおよびC−C10アルキノキシは、例えば、C−C10アルキルが直鎖、分枝鎖および適する場合には環状のC、C、C、C、C、C、C、C、CおよびC10アルキル官能基を含み;C−C10アルケニルは、直鎖、分枝鎖および適する場合には環状のC、C、C、C、C、C、C、CおよびC10アルケニル官能基を含み;C1−10アルコキシは、直鎖、分枝鎖および適する場合には環状のC、C、C、C、C、C、C、C、CおよびC10アルコキシ官能基を含み;C−C10アルケノキシは、直鎖、分枝鎖および適する場合には環状のC、C、C、C、C、C、C、CおよびC10アルケノキシ官能基を含み;C−C10アルキニルは、直鎖、分枝鎖および適する場合には環状のC、C、C、C、C、C、C、C、CおよびC10アルキニル官能基を含み;ならびにC−C10アルキノキシは、直鎖、分枝鎖および適する場合には環状のC、C、C、C、C、C、C、CおよびC10アルキノキシ官能基を含むように、各数の基を独立して含むと考える。
【0063】
単独でまたは複合語の中の用語「アルキル」は、1から10個の炭素原子または1から6個の炭素原子を含有するものを含む、非環式飽和直鎖、分枝鎖または環状第一級、第二級もしくは第三級炭化水素を意味する。前記アルキル基は、下で定義するような基で置換されていてもよい。用語アルキルとしては、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、s−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチルおよび2,3−ジメチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、トリフルオロメチルならびにジフルオロメチルが挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、置換アルキル基と非置換アルキル基の両方を包含する。アルキル基を置換することができる部分は、例えば、アルキル、ヒドロキシル、ハロ、ニトロ、シアノ、アルケニル、アルキニル、ヘテロアリール、複素環、炭素環、アルコキシ、オキソ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、シクロアルキル、テトラゾリル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、炭水化物、アミノ酸、アミノ酸エステル、アミノ酸アミド、アルジトール、ハロアルキルチ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、カルボキシル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アミノアルキル、アミノアシル、アミド、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、イミド、スルホン酸、スルフェート、スルホネート、スルホニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、ハロアルキルスルホニル、スルファニル、スルフィニル、スルファモイル、カルボン酸エステル、カルボン酸、アミド、ホスホニル、ホスフィニル、ホスホリル、チオエステル、チオエーテル、オキシム、ヒドラジン、カルバメート、ホスホン酸、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、スルホンアミド、カルボキサミド、ヒドロキサム酸、スルホニルイミド、またはこの化合物の薬理活性を阻害しない任意の他の望ましい官能基であり、これらは未保護であるか、必要な場合には、当業者に知られているように、例えば本明細書に参照して組み込まれているGreeneら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons,Third Edition,1999に教示されているように保護されている。
【0064】
単独でまたは複合語の中の用語「アルケニル」は、2から10個の炭素原子または2から6個の炭素原子を含有するものを含む、非環式直鎖、分枝鎖、または環状第一級、第二級または第三級炭化水素を意味し、この場合、この置換基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する。前記アルケニル基は、置換されていてもよい。こうした基の例としては、エチレン、メチルエチレンおよびイソプロピリデンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
用語「アルキニル」は、約2から10個の炭素原子を含有するまたは2から6個の炭素原子を有するような基をはじめとする、1つ以上の三重結合を含有するほどの線状または分枝状不飽和非環式炭化水素基を指す。アルキニル基は、本明細書において定義するうような基で置換されていてもよい。適するアルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブチン−1−イル、ブチン−2−イル、ペンチン−1−イル、ペンチン−2−イル、4−メトキシペンチン−2−イル、3−メトキシブチン−1−イル、ヘキシン−1−イル、ヘキシン−2−イル、ヘキシン−3−イル、3,3−ジメチルブチン−1−イル基などが挙げられる。
【0066】
単独でまたは複合語の中の用語「アシル」は、ヒドリド、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルコキシ、アリールチオおよびアルキルチオアルキルをはじめとする(しかし、これらに限定されない)任意の望ましい基に結合しているカルボニルまたはチオカルボニル基を意味する。「アシル」の例は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、フタロイル、マロニル、ニコチニルなどである。
【0067】
用語「アルコキシ」および「アルコキシアルキル」は、各々が炭素原子数1から約10のアルキル部分を有する、線状または分枝状オキシ含有基、例えばメトキシ基を包含する。用語「アルコキシアルキル」は、アルキル基に結合した1つ以上のアルコキシ基を有する、すなわちモノアルコキシアルキルおよびジアルコキシアルキル基を形成する、アルキル基も包含する。他のアルコキシ基は、1から6個の炭素原子を有する「低級アルコキシ」基である。こうした基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびt−ブトキシアルキルが挙げられる。「アルコキシ」基は、1個以上のハロ原子、例えばフルオロ、クロロまたはブロモでさらに置換されて、「ハロアルコキシ」基をもたらすことができる。こうした基の例としては、フルオロメトキシ、クロロメトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、フルオロエトキシ、テトラフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシおよびフルオロプロポキシが挙げられる。
【0068】
用語「アルキルアミノ」は、アミノ基に結合しているアルキル基をそれぞれ1個または2個含有する、「モノアルキルアミノ」および「ジアルキルアミノ」を示す。用語アリールアミノは、アミノ基に結合しているアリール基をそれぞれ1個または2個含有する、「モノアリールアミノ」および「ジアリールアミノ」を示す。用語「アラルキルアミノ」は、アミノ基に結合しているアラルキル基を包含する。用語アラルキルアミノは、アミノ基に結合しているアラルキル基をそれぞれ1個または2個含有する、「モノアラルキルアミノ」および「ジアラルキルアミノ」を示す。用語アラルキルアミノは、アミノ基に結合している1個のアラルキル基および1個のアルキル基を含有する、「モノアラルキルモノアルキルアミノ」をさらに示す。
【0069】
用語「アルコキシ」は、−−ORと定義し、この場合のRは、上で定義したような、シクロアルキルをはじめとするアルキルである。
【0070】
用語「アルコキシアルキル」は、水素がアルコキシ基によって置換されたアルキル基と定義する。用語「(アルキルチオ)アルキル」は、酸素原子ではなく硫黄原子が存在することを除き、アルコキシアルキルと同様に定義する。
【0071】
用語「アルキルチオ」および「アリールチオ」は、−−SRと定義し、この場合のRは、それぞれ、アルキルまたはアリールである。
【0072】
用語「アルキルスルフィニル」は、R−−SOと定義し、この場合のRは、アルキルである。
【0073】
用語「アルキルスルホニル」は、R−−SOと定義し、この場合のRは、アルキルである。
【0074】
単独でまたは複合語の中の用語「アリール」は、1、2または3個の環を含有する炭素環式芳香族構造を意味し、この場合、こうした環は、ペンダント式に互いに結合していてもよいし、または縮合していてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ベンジルおよびビフェニルが挙げられる。「アリール」基は、アルキル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、アルケニル、アルキニル、ヘテロアリール、複素環、炭素環、アルコキシ、オキソ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、シクロアルキル、テトラゾリル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、炭水化物、アミノ酸、アミノ酸エステル、アミノ酸アミド、アルジトール、ハロアルキルチ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、カルボキシル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アミノアルキル、アミノアシル、アミド、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、イミド、スルホン酸、スルフェート、スルホネート、スルホニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、ハロアルキルスルホニル、スルファニル、スルフィニル、スルファモイル、カルボン酸エステル、カルボン酸、アミド、ホスホニル、ホスフィニル、ホスホリル、チオエステル、チオエーテル、オキシム、ヒドラジン、カルバメート、ホスホン酸、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、スルホンアミド、カルボキサミド、ヒドロキサム酸、スルホニルイミド、またはこの化合物の薬理活性を阻害しない任意の他の望ましい官能基(これらは未保護であるか、必要な場合には、当業者に知られているように保護されている)をはじめとする(しかし、これらに限定されない)1つ以上の望ましい部分で、可能な場合には、置換されていてもよい。加えて、「アリール」環上の隣接する基が組み合わさって、5から7員飽和または部分不飽和炭素環、アリール環、ヘテロアリール環または複素環を形成することがあり、これらもまた上記のように置換されていることがある。
【0075】
用語「カルボキシアルキル」は、アルキル基に結合しているカルボキシ基を指す。
【0076】
ここで定義する用語「ハロ」は、フルオロ、ブロモ、クロロおよびヨードを指す。
【0077】
用語「ヒドロキシアルキル」は、任意の1個または2個のアルキル炭素原子が、ヒドロキシル(−−OH)官能基で置換されている基を指す。ヒドロキシアルキルの非限定的な例としては、モノヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキルおよびポリヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0078】
用語「複素環式」は、部分的に飽和されていてもよいし(少なくとも1つの二重結合を含有する)、完全に飽和されていてもよく、ならびに環内に少なくとも1個のヘテロ原子、例えば酸素、硫黄またはリンが存在する、非芳香族環基を指す。ここで用いる用語ヘテロアリールまたはヘテロ芳香族は、芳香族環内に少なくとも1個の硫黄、酸素、窒素またはリンを含む芳香族を指す。複素環およびヘテロ芳香族の非限定的な例は、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、ピペラジニル、ピペリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロピラニル、イミダゾリル、ピロリニル、ピラゾリニル、インドリニル、ジオキソラニルもしくは1,4−ジオキサニル、アジリジニル、フリル、フラニル、ピリジル、ピリミジニル、ベンズオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,3,4−チアジアゾール、インダゾリル、1,3,5−トリアジニル、チエニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ベンゾフラニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、ピラゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、プリニル、カルバゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、キサンチニル、ヒポキサンチニル、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、チアジン、ピリダジンまたはプテリジニルであり、この場合、前記ヘテロアリールまたは複素環基は、アリール基について上に記載したものと同じ置換基から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基上の酸素および窒素官能基は、必要なまたは所望される場合には保護することができる。適する保護基としては、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリル、トリチルもしくは置換トリチル、アルキル基、アシル基、例えばアセチルおよびプロピオニル、メタンスルホニル、ならびにp−トルエンスルホニルを挙げることができる。
【0079】
用語「治療有効量」または「治療有効用量」は、求められている、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を惹起する薬物または医薬の量を意味するものとする。用語「治療有効用量」は、結果として所望の効果を達成する化合物の量を指す。こうした化合物の毒性および治療有効度は、例えば、LD50(この集団の50%に致死的な用量)およびED50(この集団の50%において治療的に有効な用量)を判定するための、細胞培養物または実験動物での標準的な薬学的手順により判定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、これは、LD50のED50に対する比率として表される。高い治療指数(すなわち、有効用量より実質的に高い毒性用量)を示す化合物が好ましい。得られたデータは、ヒトで使用するための投薬量範囲を系統立てて述べる際に使用することができる。こうした化合物の投薬量は、好ましくは、毒性を殆どまたは全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内に存する。投薬量は、利用される剤形および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。
【0080】
ここで用いる用語「糖尿病性血管疾患」は、大血管または小血管を罹患させる、糖尿病に関連した疾病および疾患を指す。末梢血管疾患ならびに神経障害、腎症(腎不全)および網膜所が、この分類に含まれる。
【0081】
ここで用いる用語「糖尿病性網膜症」は、糖尿病または糖尿病の合併症が眼の網膜内の血管を損傷させる眼の疾患を指し、非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)と増殖性糖尿病性網膜症(PDR)の両方を包含する。
【0082】
ここで用いる用語「宿主」は、糖尿病性血管疾患または眼の炎症性疾患に関連した特性を示す細胞または器官を指す。宿主は、典型的には、鳥類および哺乳類をはじめとする脊椎動物であり、さらに好ましくは哺乳類である。本開示における宿主または患者としての哺乳類は、霊長目、食肉目、長鼻目、奇蹄目、偶蹄目、齧歯目およびウサギ目の科からのものであるほうが好ましい。本発明の哺乳類脊椎動物は、Canis familiaris(犬)、Felis catus(ネコ)、Elephas maximus(ゾウ)、Equus caballus(ウマ)、Sus Dmesticus(ブタ)、Camelus dromedarious(ラクダ)、Cervus axis(シカ)、Giraffa camelopardalis(キリン)、Bos taurus(ウシ/雌牛)、Capra hircus(ヤギ)、Ovis aries(ヒツジ)、Mus musculus(マウス)、Lepus brachyurus(ウサギ)、Mesocricetus auratus(ハムスター)、Cavia porcellus(モルモット)、Meriones unguiculatus(アレチネズミ)、およびHomo sapiens(ヒト)であると、さらにいっそう好適である。最も好ましくは、本発明の中で使用する宿主または患者は、Homo sapiens(ヒト)である。本発明の範囲内の宿主として適する鳥類としては、Gallus domesticus(ニワトリ)およびMeleagris gallopavo(シチメンチョウ)が挙げられる。
【0083】
II.調合物および投与
1.調合物
糖尿病性血液疾患と眼の炎症性疾患の両方を含む本明細書に記載の疾患のいずれかに罹患している哺乳類、特にヒトをはじめとする宿主は、本明細書に記載する式I、式IIもしくは式IIの化合物またはこの医薬的に許容されるプロドラッグ、エステルおよび/もしくは塩の有効量を、場合によっては医薬適合性担体または希釈剤と併用で、この宿主に投与することにより治療することができる。これらの活性物質は、任意の適する経路によって投与する、例えば、経口投与、非経口投与、静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、舌下投与、経皮投与、気管支投与、咽喉投与、鼻腔内投与、クリームもしくは軟膏などにより局所投与、直腸内投与、関節内投与、槽内投与、髄腔内投与、膣内投与、腹腔内投与、眼内投与、吸入により投与、口腔内投与、または経口もしくは経鼻噴霧剤として投与することができる。
【0084】
本発明の化合物は、無機または有機酸から誘導される医薬的に許容される塩の形態で使用することができる。「医薬的に許容される塩」とは、正常な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用することに適し(過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わない)ならびに妥当な損益比に見合っている塩を意味する。医薬的に許容される塩は、当該技術分野では周知である。P.H.Stahlらは、医薬的に許容される塩を「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties,Selection,and Use」(Wiley VCH,Zurich,Switzerland:2002)に詳細に記載している。これらの塩は、本発明の化合物の最終単離および精製中にインサイチューで調製することができ、または遊離塩基官能基を適する有機酸と反応させることによって調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。また、塩基性窒素含有基は、ハロゲン化低級アルキル、例えば塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチル;硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル;長鎖ハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル;ハロゲン化アリールアルキル、例えば臭化ベンジルおよびフェネチル他などの物質で四級化することができる。これによって、水溶性もしくは油溶性または水分散性もしくは油分散性生成物が得られる。医薬的に許容される酸付加塩を形成するために利用することができる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸などの有機酸が挙げられる。
【0085】
塩基性付加塩は、カルボン酸含有部分を、適する塩基、例えば医薬適合性金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩と、あるいはアンモニアまたは有機第一、第二もしくは第三アミンと反応させることにより、本発明の化合物の最終単離および精製中にインサイチューで調製することができる。医薬的に許容される塩としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属に基づくカチオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムマグネシウムおよびアルミニウム塩など)ならびに非毒性第四アンモニアおよびアミンカチオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミンなどを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。塩基性付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンとしては、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどが挙げられる。本発明の化合物の好ましい塩としては、リン酸塩、trisおよび酢酸塩が挙げられる。
【0086】
医薬的に許容される塩は、当該技術分野では周知の標準的な手順を用いて、例えば、アミンなどの充分に塩基性の化合物を適する酸と反応させて生理学的に許容されるアニオンを生じさせることにより、得ることもできる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムもしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウムもしくはマグネシウム)塩を製造することもできる。
【0087】
本調合物は、単位投薬形で適便に提供することができ、ならびに薬学技術分野では周知の任意の方法により調製することができる。すべての方法は、本発明の化合物またはこの医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物(「活性成分」)と、1つ以上の補助成分を構成する担体とを会合させる段階を含む。一般に、本調合物は、活性成分を液体担体もしくは微粉個体担体または両方と均一および均質に会合させ、次いで、必要な場合にはこの生成物を所望の調合物に成形することによって調製する。
【0088】
本化合物または医薬的に許容されるエステル、塩、溶媒和物もしくはプロドラッグは、所望の作用を損なわせない他の活性物質と、または糖尿病性血管疾患もしくは眼の炎症性疾患に対する他の薬物を含む、所望の作用を補足する物質と、混合することができる。非経口適用、皮内適用、皮下適用または局所適用に使用される溶液または懸濁液は、例えば、次の成分を含むことがある:滅菌希釈剤、例えば注射用精製水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌薬、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸、クエン酸またはリン酸および張性の調節薬、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。非経口製剤は、硝子またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多数回分バイアルに封入することができる。
【0089】
静脈内投与の場合、好ましい担体は、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)である。
【0090】
非経口注射用の本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される滅菌水性または非水系溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、および滅菌注射用溶液または懸濁液のための滅菌粉末を含む。適する水性および非水系担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、これらの適する混合物、植物油(例えばオリーブ油)および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、または分散液の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適正な流動性を維持することができる。
【0091】
これらの組成物は、免疫促進因子(例えば、CpG配列を有するものをはじめとする免疫刺激性核酸配列など)、保存薬、湿潤薬、乳化剤および分散剤をはじめとするアジュバントも含有することがある。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより確保することができる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含めることが望ましい場合もある。注射用剤形の持続吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらすことができる。
【0092】
一部のケースでは、薬物の作用を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましいことが多い。これは、水溶性が低い結晶質または非晶質材料の懸濁液の使用により達成することができる。このとき、薬物の吸収速度は、この解離速度に依存し、そしてまたこの解離速度は、結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口投与用薬物形態の遅延吸収は、油性ビヒクルに薬物を溶解または懸濁させることにより達成される。
【0093】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガカントゴムおよびこれらの混合物のような懸濁化剤を含有し得る。
【0094】
不活性希釈剤に加えて、本調合組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味料、着香剤および香料などのアジュバントも含むことがある。
【0095】
本活性化合物は、適切な場合には1つ以上の賦形剤を伴う、マイクロまたはナノカプセル化形態である場合もある。
【0096】
注射用デポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)中の薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより製造される。薬物のポリマーに対する比率、および利用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用調合物は、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクリエマルジョン中に薬物を捕捉することによって作製することもできる。
【0097】
注射用調合物は、細菌保留フィルターに通す濾過により、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは懸濁させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を配合することにより、滅菌することができる。注射用製剤(例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液)は、適する分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って調合することができる。滅菌注射用製剤は、非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液またはエマルジョン(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液)である場合もある。利用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、U.S.P.および等張食塩液などがある。加えて、滅菌固定油が、溶媒または懸濁化媒体として従来利用されている。このために、合成モノまたはジグリセリドをはじめとする任意の無菌固定油を利用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射用薬物の調製に使用される。
【0098】
非経口投与(皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与および関節内投与を含む)のための調合物としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬およびこの調合物を所期受容者の血液と等張性にする溶質を含有し得る、水性および非水系滅菌注射溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る、水性および非水系滅菌懸濁液が挙げられる。これらの調合物は、単位用量または複数回分の用量用の容器、例えば封止アンプルおよびバイアルで提供することができ、ならびに使用直前に滅菌液体担体(例えば、食塩水、注射用蒸留水)を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。以前に説明されている種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から、即時調合注射溶液および懸濁液を調製することができる。
【0099】
本発明の方法は、式I、式IIまたは式IIIの化合物を含有する医薬調合物を使用して実施することができる。ヒトでの糖尿病性血管疾患または眼の炎症性疾患の治療は、式I、式IIまたは式IIIの化合物を投与して、既存の状態を、この事象の作用を緩和するように治療することによる治療的処置であり得る。代わりになるべきものとして、および同等に許容される、ヒトでの糖尿病性血管疾患または眼の炎症性疾患の治療は、糖尿病性血管疾患の悪化状態の予期において、例えば、糖尿病性血管疾患または眼の炎症性疾患の既存状態を悪化することが予想される職業、生活様式または刺激原への暴露を有する患者において、式I、式IIまたは式IIIの化合物を投与することによる、予防的処置であり得る。一部の症例では、本発明の方法を用いて式I、式IIまたは式IIIの化合物(およびこれらの調合物)を投与することにより、糖尿病状態の基礎原因を予防および治癒することはできないであろうが、重症度または程度を低減し、この症状を改善することはできる。
【0100】
2.投与
本発明の化合物は、任意の適切な投与経路により投与、例えば、経口投与、非経口投与、静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、舌下投与、経皮投与、気管支投与、咽喉投与、鼻腔内投与、クリームもしくは軟膏などにより局所投与、直腸内投与、関節内投与、槽内投与、髄腔内投与、膣内投与、腹腔内投与、眼内投与、吸入により投与、口腔内投与、または経口もしくは経鼻噴霧剤として投与される。しかし、投与経路は、この糖尿病性血管疾患または眼の炎症の状態および重症度に依存して変化し得る。宿主または患者に投与される化合物の正確な量は、担当医の責任であろう。しかし、利用される用量は、患者の年齢および性別、治療する正確な疾患およびこの重症度をはじめとする多数の因子に依存するであろう。本発明の組成物によると、1日当たり約0.001mg/kgから1日当たり約2500mg/kgの用量範囲が一般的である。例えば、用量範囲は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約1000mg/kgである。場合によっては、用量範囲は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約500mg/kgであり、これは、1日当たり1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg、kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、200mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、500mg/kg、およびこの範囲内に与えた値のうちのいずれか2つの間の値を包含する。ヒトのための用量範囲は、例えば、約0.005mgから100g/日である。あるいは、本発明の用量範囲は、本発明の化合物の血液血清中レベルが、約0.01μMから約100μM、好ましくは約0.1μMから約100μMになるような範囲である。本発明による血液血清中レベルの適する値としては、約0.01μM、約0.1μM、約0.5μM、約1μM、約5μM、約10μM、約15μM、約20μM、約25μM、約30μM、約35μM、約40μM、約45μM、約50μM、約55μM、約60μM、約65μM、約70μM、約75μM、約80μM、約85μM、約90μM、約95μMおよび約100μM、ならびにこれらの値のうちのいずれか2つの中(例えば、約10μMと約60μMの間)にある任意の血液血清レベルが挙げられるが、これらに限定されない。錠剤または分割単位で提供される他の投薬量提示形態は、こうした投薬量範囲で、またはこれらの範囲の間にある範囲で有効である本発明の1つ以上の化合物の量を適便に含有し得る。
【0101】
3.併用
本発明の化合物は、単独で投与してもよいし、治療活性化合物の制御放出を可能ならしめる組成物の一部として投与してもよい。一般に、式I、式IIもしくは式IIIの化合物またはこの医薬的に許容される塩は、治療有効量が摂取されるように哺乳類、例えばヒトに投与されるであろう。適便には、治療有効量は、漸増用量で活性化合物を投与し、患者に対する効果、例えば特定の糖尿病性血管疾患に関連した症状の低減、を観察することにより、個々の患者ごとに決めることができる。一般に、化合物は、治療効果を示すために必要な式I、式IIまたは式IIIの化合物の望ましい血液レベル濃度をこのヒトにおいて達成する様式および用量で投与しなければならない。
【0102】
本発明の化合物は、リポソームの形態で投与することができる。当該技術分野では公知であるように、リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒体中に分散されている単層または多層水和液晶により形成される。リポソームを形成することができるいずれの非毒性で生理学的に許容される代謝性脂質を使用してもよい。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存薬、賦形剤などを含有し得る。好ましい脂質は、別々にまたは一緒に使用される、天然および合成リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当該技術分野では公知である。例えば、Prescott,Ed.,Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press,New York,N.Y.,(1976),p 33以降参照、および米国特許第4,522,811号参照。例えば、リポソーム調合物は、無機溶媒に適切な脂質(複数を含む)(例えば、ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルホスファチジルコリン、およびコレステロール)を溶解し、次いで、前記溶媒を蒸発させ、容器表面に乾燥した脂質の薄膜を残すことによって調製することができる。次に、活性化合物またはこの一リン酸塩、二リン酸塩および/または三リン酸塩誘導体の水溶液をこの容器に導入する。次に、手でこの容器を、渦を巻くように動かして、容器の側面から脂質材料を遊離させ、脂質凝集物を分散させ、これによってリポソーム懸濁液を作る。
【0103】
本発明の化合物は、単独で投与することができ、医薬組成物の状態で投与することができ、医薬的に許容される塩として投与することができ、または糖尿病性血管疾患、例えば糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および糖尿病性腎症に関連して使用される任意の治療薬をはじめとする1つ以上の治療薬と併用でもしくは交代で投与することができる。「背景技術」で挙げたまたは「表A」で挙げる化合物を特に含む。例えば、本発明の化合物は、コルチコステロイド、例えばデキサメタゾンおよびフルオシンドンアセトニド、シクロスポリン、カルシウムチャネル作動薬、トブラマイシン、プロテインキナーゼCベータ阻害剤(PKC−β阻害剤)、抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)、アスピリン、ジピリダモール、クロピドグレル、メロキシカムおよびエテルナセプト、ならびにこれらの誘導体から成る群より選択される1つ以上の薬物と共に投与することができる。
【0104】
【表1】

【0105】
4.剤形
本発明の化合物および調合物は、当該技術分野では標準的な公知剤形のいずれかで、固体剤形、半固体剤形または液体剤形ならびにこれらの剤形の下位区分のもので投与することができる。
【0106】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、キャプレット、錠剤、ピル、粉末、ロゼンジおよび顆粒が挙げられる。こうした固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性医薬適合性賦形剤もしくは担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/またはa)充填剤もしくは増量材、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびサリチル酸;b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルジネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴム;c)保湿剤、例えばグリセロール;d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯もしくはタピオカデンプン、アルギン酸、一定のシリケート、および炭酸ナトリウム;e)溶解遅延剤、例えばパラフィン;f)吸収促進剤、例えば第四アンモニウム化合物;g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;h)吸着剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレー;およびi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ならびのこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤およびピルの場合の剤形は、緩衝剤も含むことがある。
【0107】
同様のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用する軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として利用することもできる。
【0108】
コーティングおよび剤皮(例えば、腸溶コーティングおよび医薬調合技術分野では周知の他のコーティング)を有する錠剤、カプセル、ピルおよび顆粒の固体剤形を作製することができる。これらは、不透明化剤を場合によっては含有することがあり、活性成分(複数を含む)を単に放出する組成のものである場合もあり、または好適には腸管の一定の部分で遅延様式で放出する組成のものである場合もある。使用することができる包埋組成物の例としては、高分子物質および蝋が挙げられる。
【0109】
錠剤は、場合によっては1つ以上の補助成分と共に、圧縮または成形することにより製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤または分散剤と場合によっては混合された易流動性形態(例えば、粉末または顆粒)の活性成分を適する機械で圧縮することにより作製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適する機械で成形することにより製造することができる。錠剤は、場合によっては、コーティングすることができ、または刻み目を入れることができ、ならびにこの中の活性成分の遅速または制御放出を生じさせるように調合することができる。
【0110】
直腸内または膣内投与のための組成物は、例えば座剤であり、これは、周囲温度で固体であるが体温では液体であり、従って直腸または膣腔内で溶融し、活性化合物を放出する、適する非刺激性賦形剤または担体(例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは座剤用ワックス)と本発明の化合物を混合することにより作製することができる。
【0111】
半液体剤形は、固体と称するには構造が柔らかすぎるが、液体とみなすには濃稠である剤形を包含する。これらには、クリーム、ペースト、軟膏、ゲル、ローション、および本発明の活性化合物を含有する他の半固体エマルジョンが挙げられる。
【0112】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば動物および植物脂肪、油、蝋、パラフィン、デンプン、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含有し得る。
【0113】
経口投与のための液体剤形としては、医薬的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。本活性化合物に加えて、これらの液体剤形は、当該技術分野において一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒など)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物)を含有し得る。
【0114】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、分解性または非分解性ポリマーと場合によっては混合された、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、噴霧剤、吸入薬またはパッチが挙げられる。本活性化合物は、医薬適合性担体および必要に応じて必要な任意の保存薬または緩衝液と無菌条件下で混合される。眼科用調合物、点耳剤、眼軟膏、粉末および溶液も本発明の範囲内であると考えられる。
【0115】
本発明の化合物を含有する調合物は、経皮パッチなどの器具により皮膚を通して投与することができる。パッチは、マトリックス(例えば、ポリアシルアミド、ポリシロキサンまたは両方、および材料が皮膚に送達される速度を制御するために適するポリマーから製造された半透膜)で作ることができる。他の適する経皮パッチ調合物および構造は、米国特許第5,296,222号および同第5,271,940号、ならびにSatas,D.ら,「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology,2nd Ed.」,Van Nostrand Reinhold,1989:Chapter 25,pp.627−642に記載されている。
【0116】
粉末および噴霧剤は、本発明の化合物に加えて、賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含有し得る。噴霧剤は、クロロフルオロ炭化水素などの通例の噴射剤をさらに含有し得る。
【0117】
III.制御放出調合物
1つの実施態様において、本発明の活性化合物は、身体からの急速な排泄または急速な放出から本化合物を護る担体、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムをはじめとする制御放出調合物を用いて調製することができる。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。こうした調合物の調製方法は、当業者には明らかであろう。
【0118】
生分解性ポリマーの分野は、ポリ乳酸の合成および生分解性がKulkarniら(「Polylactic acid for surgical implants」,Arch.Surg,1966,93,839)によって報告されて以来、急速に発展した。送達装置用のマトリックス材料として有用と報告されている他のポリマーの例としては、ポリ無水物、ポリエステル(例えば、ポリグリコリドおよびポリラクチド−co−グリコリド)、ポリアミノ酸(例えば、ポリリシン)、ポリエチレンオキシドのポリマーおよびコポリマー、アクリル酸を末端に有するポリエチレンオキシド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリアクリロニトリルならびにポリホスファゼンが挙げられる。例えば、Langerの米国特許第4,891,225号および同第4,906,474号(ポリ無水物)、Hutchinsonの同第4,767,628号(ポリラクチド、ポリラクチド−co−グリコリド酸)、ならびにTiceらの同第4,530,840号(ポリラクチド、ポリグリコリド、およびコポリマー)参照。組織接触材料および制御放出担体として光重合性生分解性ヒドロゲル(重合および架橋することができるエンドキャップ用モノマーまたはオリゴマーである生分解性モノマーまたはオリゴマー伸長部を有する親水性オリゴマーを含む、重合され、架橋されたマクロマーのヒドロゲル)を記載しているHubbellらの米国特許第5,626,863号;ならびにFocal,Inc.により出願された、薬物送達用の制御放出薬および組織治療薬として使用するためのマルチブロック生分解性ヒドロゲルに関するPCT国際公開第97/05185号も参照。
【0119】
生物由来の分解性材料、例えば架橋ゼラチンは、周知である。ヒアルロン酸は、架橋され、生物医学用途の分解性膨潤ポリマーとして使用されている(Della Valleらの米国特許第4,957,744号;「Surface modification of polymeric biomateriacls for reduced thrombogenicity」,Polym.Mater.Sci.Eng.,1991,62,731−735])。
【0120】
多数の分散系が、物質の担体、特に生物活性化合物の担体、として現在使用されており、または現在開発中である。医薬および化粧品調合物に使用される分散系は、懸濁液またはエマルジョンのいずれかとして分類することができる。懸濁液は、懸濁化剤を使用して液体媒体に分散されている、粒径が数ナノメートルから数百マイクロメートルまでに及ぶ固体粒子と定義される。固体粒子としては、マイクロスフェア、マイクロカプセルおよびナノスフェアが挙げられる。エマルジョンは、界面活性剤および脂質などの乳化剤の界面膜によって安定化された、ある液体の別の液体への分散物と定義される。エマルジョン調合物としては、油中水型エマルジョンおよび水中油型エマルジョン、複合エマルジョン、マイクロエマルジョン、微細液滴およびリポソームが挙げられる。微細液滴は、Haynesに対して発行された米国特許第4,622,219号および同第4,725,442号において定義されているように、内側に油相を有する球状液層から成る単層リン脂質小胞である。リポソームは、水不溶性極性脂質を水溶液と混合することによって作製されるリン脂質小胞である。水への不溶性脂質の混入に起因する逆エントロピーにより、水溶液が閉じ込められた同心性の閉じたリン脂質膜の非常に規則的な集合体が生じる。
【0121】
Dunnらの米国特許第4,938,763号には、非反応性水不溶性熱可塑性ポリマーを生体適合性水溶性溶媒に溶解して液体を形成し、この液体を体内に配置し、溶媒を散逸させて固体インプラントを作ることによる、インサイチューでのインプラント形成法が開示されている。前記ポリマー溶液は、注射により体内に配置することができる。このインプラントは、この周囲の腔の形を取ることができる。代替実施態様において、このインプラントは、溶媒を含有せず、および通常は硬化触媒の添加により適所で硬化して固体を形成する、反応性の液体オリゴマー系ポリマーから形成される。
【0122】
米国特許第5,718,921号には、ポリマーおよびこの中に分散された薬物を含むマイクロスフェアが開示されている。米国特許第5,629,009号には、生物活性因子の制御放出用の送達システムが開示されている。米国特許第5,578,325号には、非線状親水性疎水性マルチブロックコポリマーのナノ粒子および微小粒子が開示されている。米国特許第5,545,409号には、生物活性因子の制御放出用の送達システムが開示されている。米国特許第5,494,682号には、イオン架橋された高分子マイクロカプセルが開示されている。
【0123】
Andrx Pharmaceuticals,Inc.の米国特許第5,728,402号には、ヒドロゲル形成剤との混合物で活性薬物、この塩、エステルまたはプロドラッグを含む内相および胃での溶解を阻止するコーティングを含む外相を含む、制御放出調合物が記載されている。Andrx Pharmaceutical Inc.の米国特許第5,736,159号および同第5,558,879号には、通路がインサイチューで形成される、殆ど水溶性を有さない薬物のための制御放出調合物が開示されている。Andrx Pharmaceuticals,Inc.の米国特許第5,567,441号には、1日1回用制御放出調合物が開示されている。米国特許第5,508,040号には、多粒子拍動型薬物送達システムが開示されている。米国特許第5,472,708号には、拍動型粒子系薬物送達システムが開示されている。米国特許第5,458,888号には、薬物を含有する内相と3,000から10,000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールポリマーを含む外相とを有するブレンドを使用して製造することができる制御放出錠剤調合物が記載されている。米国特許第5,419,917号には、ヒドロゲルを形成するように薬物の放出速度を改変する方法が開示されており、この方法は、ヒドロゲルからの実施的にゼロ次の薬物放出速度を生じさせることができる医薬適合性イオン性化合物の有効量の使用に基づく。米国特許第5,458,888号には、制御放出錠剤調合物が開示されている。
【0124】
Elan Corporation,plcの米国特許第5,641,745号には、マイクロスフェアまたはナノスフェアを形成する生分解性ポリマーの中に活性薬物を含む、制御放出医薬調合物が開示されている。この生分解性ポリマーは、好適には、ポリ−D,L−ラクチドまたはポリ−D,L−ラクチドとポリ−D,L−ラクチド−co−グリコリドのブレンドである。Elan Corporation,plcの米国特許第5,616,345号には、1日1回投与用制御吸収調合物が記載されており、この調合物は、有機酸と会合している活性化合物と、コアを包囲し、大比率の医薬適合性被膜形成性水不溶性合成ポリマーと小比率の医薬適合性被膜形成性水溶性合成ポリマーを含有する多層膜とを含む。米国特許第5,641,515号には、生分解性ナノ粒子に基づく制御放出調合物が開示されている。米国特許第5,637,320号には、1日1回投与用制御吸収調合物が記載されている。米国特許第5,580,580号および同第5,540,938号は、調合物および神経疾患の治療におけるこれらの使用に関する。米国特許第5,533,995号は、薬物を制御送達する受動的経皮装置に関する。米国特許第5,505,962号には、制御放出医薬調合物が記載されている。
【0125】
IV.一般合成方法
本発明の化合物の調製方法は、中でも、例えば米国特許第6,147,250号および同第6,670,398号に開示されている。前記特許は、両方とも、本明細書に参照して組み込まれている。
【0126】
キラル中心を有する本発明の化合物が、光学活性形態およびラセミ形態で存在および単離できることは、理解される。一部の化合物は、多形も示すことがある。本発明が、本明細書に記載する有用な特性を有する、本発明の化合物のあらゆるラセミ形態、光学活性形態、ジアステレオマー形態、多形形態または立体異性体形態を包含することも理解されるはずであり、光学活性形態を調製する方法は、当該技術分野では周知である(例えば、再結晶技術によるラセミ形態の分割による方法、光学活性出発原料からの合成による方法、キラル合成による方法、またはキラル固定相を使用するクロマトグラフ分離による方法)。
【0127】
光学活性材料を得るための方法の例は、当該技術分野では公知であり、ならびにこうした方法の例には、少なくとも次のものが挙げられる:
i)結晶の物理的分離 −− 個々のエナンチオマーの肉眼で見える結晶を手で分離することによる技法。この技法は、異なるエナンチオマーの結晶が存在する場合、すなわち、この材料が集塊であり、これらの結晶が視覚的に異なる場合に用いることができる;
ii)同時結晶化 −− 個々のエナンチオマーをラセミ体の溶液から別々に結晶させることによる技法であり、後者(ラセミ体)が固体状態で集塊である場合にのみ可能である技法;
iii)酵素的分割 ―― エナンチオマーと酵素の反応速度を変えることによりラセミ体を部分的または完全に分離することによる技法;
iv)酵素的不斉合成 ―― 少なくとも1つの合成段階で酵素反応を用いて、所望のエナンチオマーのエナンチオマー的に純粋なまたは富化された合成前駆体を得ることによる合成技法;
v)キラル不斉合成 ―― キラル触媒またはキラル助剤を使用して達成することができる、生成物に不斉(すなわち、キラリティー)を生じさせる条件下で非キラル前駆体から所望のエナンチオマーを合成することによる合成技法;
vi)ジアステレオマー分離 ―― 個々のエナンチオマーをジアステレオマーに転化させるエナンチオマー的に純粋な試薬(キラル助剤)とラセミ化合物を反応させることによる技法。得られたジアステレオマーを、この後、この時にはより明瞭なこれらの構造の違いによりクロマトグラフィーまたは結晶化によって分離し、この後、キラル助剤を除去して、所望のエナンチオマーを得る;
vii)1次および2次不斉変換 ―― ラセミ体からのジアステレオマーが平衡して、所望のエナンチオマーからのジアステレオマーが溶液中で優勢となることによる技法、すなわち、この場合、所望のエナンチオマーからのジアステレオマーの優先結晶化が平衡を乱して、結局、原則的にすべての材料を所望のエナンチオマーからの結晶ジアステレオマーに転化させる。次に、所望のエナンチオマーをこのジアステレオマーから遊離させる;
viii)動力学的分割 ―― この技法は、動力学的条件下でのキラル非ラセミ試薬または触媒とエナンチオマーの不等反応速度によるラセミ体の部分的または完全な分割(または部分的に分割された化合物のさらなる分割)の達成を指す;
ix)非ラセミ前駆体からのエナンチオ特異的合成 ―― 所望のエナンチオマーを非キラル出発原料から得ることによる合成技法であり、この場合、立体化学的完全性は、合成の過程で損なわれないまたは最小限にしか損なわれない;
x)キラル液体クロマトグラフィー ―― ラセミ体のエナンチオマーを、固定相とこれらの相互作用の違いにより、液体移動相内で分離することによる技法。前記固定相は、キラル材料で造られていてもよいし、または前記固定相が、異なる相互作用を誘発する追加のキラル材料を含有してもよい;
xi)キラルガスクロマトグラフィー ―― ラセミ体を蒸発させ、エナンチオマーを、この気体移動相における固定非キラル吸着相を有するカラムとこれらの相互作用の違いにより、分離することによる技法;
xii)キラル溶媒での抽出 ―― エナンチオマーを特定のキラル溶媒への一方のエナンチオマーの優先溶解により、分離することによる技法;
xiii)キラル膜を横断する輸送 ―― ラセミ体を薄膜障壁と接触させることによる技法。一般に、前記障壁は、2つの混和性液体(一方がラセミ体を含有する)を分けるものであり、濃度または圧力差などの駆動力により、前記膜障壁を横断する優先輸送が生じる。分離は、ラセミ体の一方のエナンチオマーしか通さないこの膜の非ラセミキラル性の結果として起こる。
【0128】
本発明の化合物の一部は、互変異性体、幾何異性体または立体異性体の形態で存在する場合がある。本発明は、シスおよびトランス幾何異性体、EおよびZ幾何異性体、RおよびSエナンチオマー、ジアステレオマー、D−異性体、L−異性体、これらのラセミ混合物およびこれらの他の混合物をはじめとする、すべてのこうした化合物を、本発明の範囲に入ると考える。こうした互変異性体、幾何異性体または立体異性体の医薬的に許容される塩も本発明に包含される。用語「シス」および「トランス」は、二重結合により連結されている2つの炭素原子が、各々、この二重結合の同じ側に2つの高級基を有する(シス)またはこの二重結合の反対側に2つの高級基を有する(トランス)であろう、幾何異性の形態を示す。本明細書に記載する化合物の一部は、アルキル基を含有し、ならびにシスとトランス両方、または「E」と「Z」両方の幾何異性体を含むことになる。記載する化合物の一部は、1つ以上の立体中心を有し、ならびに存在する各立体中心についてのR形、S形およびR形とS形の混合体を含むことになる。
【0129】
本明細書に記載する化合物の一部は、1つもしくはそれ以上のケトン系もしくはアルデヒド系カルボニル基またはこれらの組み合わせを単独でまたは複素環構造の一部として含有することがある。こうしたカルボニル基は、存在する各アルデヒドおよびケト基の、一部または主として「ケト」形で、および一部または主として1つ以上の「エノール」形で存在し得る。アルデヒド系またはケトン系カルボニル基を有する本発明の化合物は、「ケト」互変異性体形と「エノール」互変異性体形の両方を含むことになる。
【0130】
本明細書に記載する化合物の一部は、1つもしくはそれ以上のイミンもしくはエナミン基またはこれらの組み合わせを含有することがある。こうした基は、存在する各々の基の、一部または主として「イミン」形で、および一部または主として1つ以上の「エナミン」形で存在し得る。前記イミンまたはエナミン基を有する本発明の化合物は、「イミン」互変異性体の形態と「エナミン」互変異性体の形態の両方を含むことになる。
【0131】
本発明の好ましい実施態様を実証するために以下の実施例を含める。以下の実施態様で説明する技法が、本発明を実施する際に充分に機能する本発明者らが発見した技法の代表であり、従って、この実施に好ましい様式の構成要素となると考えることができることは、当業者には理解されるはずである。しかし、本開示に鑑みて、本発明の範囲から逸脱することなく、開示する特定の実施態様に多くの変更を施し、同様または類似の結果をなお得ることができることは、当業者には理解されるはずである。
【0132】
(実施例)
【実施例1】
【0133】
細胞内ROSの測定
ウシ網膜内皮細胞(BREC)[ニューヨーク州、レンセリアーのVEC Technologies,Inc.;またはペンシルバニア州立大学(Pennsylvania State University)のDr.David]をMCDB−131完全培地(ニューヨーク州、レンセリアーのVEC Technologies,Inc.)と共にフィブロネクチン被覆細胞培養フラスコで培養した。前集密細胞をAGIX−4207化合物(5μMまたは10μMのいずれか)で1時間処理し、続いて、TNF−α(10ng/mL)で2時間、共処理(co−treatment)した。次に、細胞を溶解し、全RNAサンプルをRNeasy試薬(ドイツ、ヒルデンのQuiagen,Inc.)により単離した。VCAM−1またはGAPDHに特異的なプライマーペアを用いて、現時間PCRアッセイを行った。値は、2つの独立した実験の平均値の代表である。
【0134】
2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセイン・二酢酸塩(HDCF−DA;オレゴン州、ユージーンのMolecular Probes)の細胞内酸化を用いて、基底細胞内反応性酸素分子種(ROS)を測定した。この細胞内区画において、エステラーゼがHDCF−DAの酢酸基を切断し、この結果、この細胞内区画内にHDCF−DAが捕捉される。酸化剤への暴露により、細胞内HDCF−DAが酸化されて蛍光性化合物(DCF)になり、これは、サンプルを485nmで励起させたときの530nmで蛍光強度の増加により測定することができる。ウシ網膜内皮細胞(BARECS)を3時間、様々な濃度のAGIX−4207で前処理し、この後、30分間、10mMのHDCF−Daで共処理した。この後、細胞をPBSで洗浄し、Tris緩衝食塩水(TBS)−Tweenに溶解し、DCF蛍光を測定した。結果を図1に示し、未処理サンプルに対する蛍光のパーセントとして報告する。
【実施例2】
【0135】
白血球停滞の測定
本開示の化合物の網膜白血球停滞を、Miyamoto(Miyamoto,Kら,Proc.Natl.Acad.Sci,USA,96(19):pp.10836−10841(1999))が記載したような技法に従って測定した。アクリジン・オレンジ(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのSigma)、4mg/kgを約1.5mL/分の速度で頚静脈カテーテルにより注入した。20分後、基底部をSLOにより撮像して、網膜における静止白血球を定量した。白血球停滞を図2に示し、大血管間の全白血球数/面積(ピクセル)によって表す。3乳頭径以下の面積を表す9象限の平均を取った。
【実施例3】
【0136】
網膜血行動態の測定
当該技術分野において記載されている(Clermont A.C.ら,Invest Ophthalmol Via Sci,35:pp.981−990,(1994))ように、走査レーザー検眼鏡(SLO)を使用するビデオ蛍光眼底血管造影法およびこのビデオ出力のデジタルキャプチャーにより、網膜パラメータをアッセイした。40°視野および10%フルオレセインナトリウムの5μLボーラスを使用して、ビデオ血管造影図を対側的に記録した。Bursellにより記載された技法を用いて、色素希釈曲線を分析した。平均循環時間、MCT、は、静脈の平均充満時間と動脈の平均充満時間の間の差として報告された。これは、網膜血流に逆比例する。このデータを図3に示す。
【実施例4】
【0137】
実時間PCRの測定
ストレプトゾトジン(STZ)誘発糖尿病ラットからラット網膜組織を切り出し、Trizol試薬中で保存した。網膜組織を均質化し、全RNAを抽出し、Trizol法(Life Technologies; Chomczynski,P.ら,Anal.Biochem.,162:pp.156−159(1987))を用いて精製した。iScript cDNA Synthesis Kit(Bio−Rad Laboratories)を使用してcDNAを作製した。cDNAテンプレート、遺伝子特異的プライマー(例えば、VCAM−1またはGAPDH)およびコアミックス試薬(QiagenまたはBio−Rad Laboratories)でのSYBR Green Methodを用いる実時間PCRにより、前炎症性因子転写産物の初期量を定量分析した。各々の特異的mRNA発現レベルを、対応するGAPDH mRNAレベルにより正規化した。
【0138】
これらのインビトロ試験の結果を統計学的に平均+/−SEMとして表した。StarView統計解析ソフトウェアプログラムによる分散分析(ANOVA)の後、スチューデントの(Stuednt’s)t検定で統計学的比較を行った。すべてのインビボ結果は、平均+/−SDとして表す。ダン(Dunn)の不等分散法を使用する階数でクラスカル・ウォリス(Kruskal−Wallis)片側分析の正規分布についてスチューデンツ・ニューマン・コイルス(Students−Newman−Keuls)検定を用いて多重比較を行った。結果は、P<0.05で有意差とみなした。図4は、これらの測定の結果を図示するものである。
【0139】
上の実験に伴うデータから明らかであるように、本発明の化合物は、TNF−α誘発ウシ網膜内皮細胞において反応性酸素分子種およびVCAM−1 mRNA発現を減少させた。さらに、本発明の試験により、経口投与された本発明の化合物が、MCTとRBFの両方を少なくとも50%正規化し、白血球停滞を87%正規化し、網膜血管透過性を少なくとも69%正規化し、ならびに糖尿病患者における網膜VCAM−1 mRNAレベルを少なくとも70%正規化したことが例証される。
【実施例5】
【0140】
VCAM−1アッセイ
細胞の分割
4つの集密P150プレートのうちの2つをトリプシン処理し、細胞を50MLの円錐形遠心管に移入する。細胞をペレット化し、再び浮遊させ、トリパン・ブルー排除法を用いてカウントする。
【0141】
細胞を細胞数36,000/mLの濃度で再び浮遊させ、各ウエルに1mLを分取する。
【0142】
細胞を24ウエル組織培養プレートに分割する。各ウエル内の細胞は、この翌日までに約90から95%の集密度になるはずである。細胞は、8代より高い継代にはならないはずである。
【0143】
化合物の調製:
水溶性化合物:
化合物は、最初、50μMおよび10μMでスクリーニングする。培地中の各化合物の50mMの保存溶液を調製する。この保存溶液を5mMおよび1mMに希釈する。10μLの5mM溶液を各ウエルに添加すると(培地1mL/ウエル)、最終濃度は、50μMとなる。ウエルに10μLの1mM溶液を添加すると、10μMの最終濃度が得られるだろう。
【0144】
低溶解性化合物
倍地中で溶液にならないであろう化合物は、25mMの濃度でDMSOに懸濁させる。次に、この保存溶液を培地中で最終濃度まで希釈する。古い培地を吸引し、1mLの新たな培地と化合物を添加する。例えば、最終濃度が50μMである場合、培地1mLにつき2mLの25mM保存溶液を添加する。より低い濃度については、この50mM溶液を希釈する。
【0145】
化合物の添加
化合物をプレートに添加する(各化合物を二重重複で行う)。1つのプレートは、VCAM発現のために行い、1つのプレートは、ICAM発現のために行う。
【0146】
化合物の添加直後にTNFを各ウエルに添加する。通常、100単位/mLのTNFを各ウエルに添加する。TNFのロットによって単位数が異なるので、新しいロット各々を滴定して、最適な濃度を決定する。この結果、この濃度は変わるであろう。100単位/mLを使用すべき場合には、TNFを10単位/μLに希釈し、10μLを各ウエルに添加する。
【0147】
これらのプレートを37℃、5%COで一晩(約16時間)インキュベートする。翌日、これらのプレートを、毒性の何らかの視覚的徴候があるかどうか、顕微鏡のもとで確認する。あらゆる細胞死、破壊片または形態変化、ならびに不溶性化合物(微粒子または濁度)を記録する。
【実施例6】
【0148】
ELISAアッセイ
MCP−1を評価するために、培地(500μL)を取り置き、−70℃で冷凍する。細胞を1mL/ウエルのハンクス平衡塩類溶液(HBSS)またはPBSで大雑把に洗浄する。この洗浄溶液を静かに出し、次いで、このプレートをペーパータオル上で軽くたたく。HBSS+5%FCCSの250μL/ウエルをブランク(1次抗体負含ウエル)に添加するか、HBSS+5%FCCS中で希釈した1次抗体の250μL/ウエルを添加する。30分間、37℃でインキュベートする。これらのウエルを0.5mL/ウエルのHBBSまたはPBSで2回洗浄し、最終洗浄後、これらのプレートをペーパータオル上で穏やかにたたく。HBBS+5%FCS中で希釈したHRPコンジュゲート型二次抗体の250μL/ウエルを、ブランクウエル(1次抗体不含)を含むすべてのウエルに添加する。37℃で30分間インキュベートする。これらのウエルを0.5mL/ウエルのHBSSまたはPBSで4回洗浄し、最終洗浄後、これらのプレートをペーパータオル上で穏やかにたたく。250μL/ウエルの基質溶液を添加する。適切な色(青)が発現されるまで、暗所、室温でインキュベートする。インキュベーションを行った時間長を書き留める(典型的には15から30分)。75μL/ウエルの停止溶液(8Nの硫酸)を添加し、450nmで読み取る。
【0149】
実施例5から6で説明したアッセイにより、式(I)、(II)および(III)の化合物の阻害度を判定した。結果を表Iに提供する。
【0150】
【表2】





【0151】
ここで開示し、特許請求の範囲に記載する組成物および方法のすべてが、過度の実験を伴わずに本開示に鑑みて製造および実行できる。好ましい実施態様によって本発明の組成物および方法を説明したが、ここで説明した組成物および方法に、ならびに方法の段階または段階の順序に関して、本発明の概念および範囲を逸脱することなく変化をつけることができることは、当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本開示の化合物での治療による基底細胞内ROSレベルの抑制を示す図である。
【図2】本発明の化合物での網膜の治療による白血球停滞の測定値を示す図である。
【図3】本発明の化合物での網膜の治療による血行動態の測定値を示す図である。
【図4】VCAM−1 mRNAレベルについての試験に基づく治療効果の要約を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における糖尿病性血管疾患、糖尿病性神経障害、腎症または網膜症を治療するための医薬品の製造における、式I:
【化1】

の化合物またはこの医薬的に許容される塩の使用
(式中、
Yは、結合または
【化2】

であり;
、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルカリールおよびアリールアルキル(すべての非水素およびヒドロキシ置換基は、アルキル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ハロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから選択される基の1個以上の基から置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;
Zは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルカリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノアルキル、カルボキシアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、複素環、複素環アルキル、RNH、RN、カルボキシ、炭水化物基、炭水化物ラクトン基およびアルジトール基(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より選択され;
は、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシル、アシルオキシ、COOH、COOR、OC(O)R、CH(OH)R、NHR、NR、C(O)NH、C(O)NHR、CONR、NHC(O)O−R、OSOH、SOH、SONHR7、SONR、P(O)(OH)OR、POP(O)(OH)R、P(O)(OR、P(O)R(OR)、OPOH、PO、ヒドロキシメチルおよび環状ホスフェート(可能な場合すべてが、1個以上のRにより置換されていてもよい)から選択される基より選択される基から独立して選択され;
は、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より独立して選択され;
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニルアルキル、アリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボキシアルキル、アルキルカルボキシアリール、複素環、複素環アルキルおよびヘテロアリール(すべて、1個以上のRで置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;ならびに
は、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノおよびカルボキシから成る群より独立して選択され;
2個のR基が一緒になって、4から7員環を形成してもよい)。
【請求項2】
哺乳類における糖尿病性血管疾患を治療するための医薬品の製造における式I:
【化3】

の化合物またはこの医薬的に許容される塩の使用
(式中、
Yは、結合または
【化4】

であり;
、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、C1−10アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−10アルカリールおよびアリールC1−10アルキル(すべての非水素およびヒドロキシ置換基は、C1−10アルキル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ハロC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから選択される基の1個以上から置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;
Zは、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ヒドロキシルC1−10アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−10アルカリール、アリールC1−10アルキル、ヘテロアリールC1−10アルキル、C1−10アルコキシC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノC1−10アルキル、カルボキシC1−10アルキル、C1−10ジアルキルアミノC1−10アルキル、アミノC1−10アルキル、複素環、複素環C1−10アルキル、RNH、RN、カルボキシ、炭水化物基、炭水化物ラクトン基およびアルジトール基(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシル、アシルオキシ、COOH、COOR、OC(O)R、CH(OH)R、NHR、NR、C(O)NH、C(O)NHR、CONR、NHC(O)O−R、OSOH、SOH、SONHR、SONR、P(O)(OH)OR、POP(O)(OH)R、P(O)(OR、P(O)R(OR)、OPOH、PO、ヒドロキシメチルおよび環状ホスフェート(可能な場合すべてが、1個以上のRにより置換されていてもよい)から選択される基から選択される基より独立して選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より独立して選択され;
は、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−10アルコキシ、C1−10アルコキシカルボニルC1−10アルキル、アリール、カルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アリール、複素環、複素環C1−10アルキルおよびヘテロアリール(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;ならびに
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノおよびカルボキシから成る群より独立して選択され;
2個のR基が一緒になって、4から7員環を形成してもよい)。
【請求項3】
哺乳類における糖尿病性神経障害、腎症または網膜症を治療するための医薬品の製造における式I:
【化5】

またはこの医薬的に許容される塩の使用
(式中、
Yは、結合または
【化6】

であり;
、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、C1−10アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−10アルカリールおよびアリールC1−10アルキル(すべての非水素およびヒドロキシ置換基は、C1−10アルキル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ハロC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから選択される基の1個以上から置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;
Zは、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ヒドロキシルC1−10アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−10アルカリール、アリールC1−10アルキル、ヘテロアリールC1−10アルキル、C1−10アルコキシC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノC1−10アルキル、カルボキシC1−10アルキル、C1−10ジアルキルアミノC1−10アルキル、アミノC1−10アルキル、複素環、複素環C1−10アルキル、RNH、RN、カルボキシ、炭水化物基、炭水化物ラクトン基およびアルジトール基(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシル、アシルオキシ、COOH、COOR、OC(O)R、CH(OH)R、NHR、NR、C(O)NH、C(O)NHR、CONR、NHC(O)O−R、OSOH、SOH、SONHR7、SONR、P(O)(OH)OR、POP(O)(OH)R、P(O)(OR、P(O)R(OR)、OPOH、PO、ヒドロキシメチルおよび環状ホスフェート(可能な場合すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から選択される基から選択される基より独立して選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より独立して選択され;
は、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−10アルコキシ、C1−10アルコキシカルボニルC1−10アルキル、アリール、カルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アリール、複素環、複素環C1−10アルキルおよびヘテロアリール(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;ならびに
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノおよびカルボキシから成る群より独立して選択され;
2個のR基が一緒になって、4から7員環を形成してもよい)。
【請求項4】
哺乳類における糖尿病性血管疾患を治療するための医薬品の製造における式II:
【化7】

の化合物またはこの医薬的に許容される塩の使用
(式中、
Yは、結合または
【化8】

であり;
Zは、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ヒドロキシルC1−10アルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−10アルカリール、アリールC1−10アルキル、ヘテロアリールC1−10アルキル、C1−10アルコキシC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノC1−10アルキル、カルボキシC1−10アルキル、C1−10ジアルキルアミノC1−10アルキル、アミノC1−10アルキル、複素環、複素環C1−10アルキル、RNH、RN、カルボキシ、炭水化物基、炭水化物ラクトン基およびアルジトール基(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシル、アシルオキシ、COOH、COOR、OC(O)R、CH(OH)R、NHR、NR、C(O)NH、C(O)NHR、CONR、NHC(O)O−R、OSOH、SOH、SONHR、SONR、P(O)(OH)OR、POP(O)(OH)R、P(O)(OR、P(O)R(OR)、OPOH、PO、ヒドロキシメチルおよび環状ホスフェート(可能な場合すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から選択される基から選択される基より独立して選択され;
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、ハロC1−10アルキル、C1−10アルキルアミノ、ジC1−10アルキルアミノ、アシルおよびアシルオキシから成る群より独立して選択され;
は、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−10アルコキシ、C1−10アルコキシカルボニルC1−10アルキル、アリール、カルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アリール、複素環、複素環C1−10アルキルおよびヘテロアリール(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より独立して選択され;ならびに
は、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、アシルオキシ、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノおよびカルボキシから成る群より独立して選択され;
2個のR基が一緒になって、4から7員環を形成してもよい)。
【請求項5】
Yが、結合または
【化9】

であり;
Zが、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ヒドロキシルC1−10アルキル、アリールおよびヘテロアリール(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より選択され;
が、ヒドロキシル、COOH、COOR、OC(O)R、CH(OH)R、NHR、NR、C(O)NH、C(O)NHR、CONR、NHC(O)O―Rから成る群より独立して選択され;ならびに
が、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−10アルコキシ、C1−10アルコキシカルボニルC1−10アルキル、アリール、カルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アルキル、C1−10アルキルカルボキシC1−10アリール、複素環、複素環C1−10アルキルおよびヘテロアリールから成る群より独立して選択され;
2個のR基が一緒になって、4から7員環を形成してもよい)、
請求項4に記載の使用。
【請求項6】
Yが、結合または
【化10】

であり;
Zが、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ヒドロキシルC1−10アルキルおよびアリール(すべて、1個以上のRにより置換されていてもよい)から成る群より選択され;
が、ヒドロキシル、COOH、COOR、OC(O)Rから成る群より独立して選択され;ならびに
が、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニルおよびC1−10アルコキシから成る群より独立して選択される、
請求項4に記載の使用。
【請求項7】
化合物またはこの医薬的に許容される塩が、
【化11】

から成る群より選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
化合物またはこの医薬的に許容される塩が、
【化12】

である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
医薬品が、結膜投与、経鼻投与、口腔内投与、表皮投与または非経口投与に適する、請求項4に記載の使用。
【請求項10】
医薬品が、経口投与に適する、請求項4に記載の使用。
【請求項11】
医薬品が、結膜投与に適する、請求項4に記載の使用。
【請求項12】
医薬品が、眼科用溶液、眼科用懸濁液、眼科用ゲル、眼科用軟膏または眼科用ストリップもしくは挿入物の形態である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
医薬品が、投薬量の化合物を含む、請求項4に記載の使用。
【請求項14】
医薬品が、適する担体を含む、請求項4に記載の使用。
【請求項15】
糖尿病血管疾患に罹患しているヒトを治療するための医薬品の製造における、式:
【化13】

によって表される化合物またはこの医薬的に許容される塩の使用、ならびに医薬的に許容される担体中に存在してもよい該化合物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−505097(P2008−505097A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519391(P2007−519391)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/023103
【国際公開番号】WO2006/007508
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(501185903)アセロジエニクス・インコーポレイテツド (8)
【Fターム(参考)】