説明

糖類センサーシステム

糖類を検出するための分析システムが提供される。前記分析システムは、固体基質に付着する糖類センサーと、該センサーに結合する糖類か、あるいは、前記センサーに結合しない糖類かのうち少なくとも1つを検出するための手段とを含む。1つの実施態様では、前記糖類センサーはグルコースを優先的に検出する。さらに本発明は、前記糖類センサーが付着したビーズ玉と、前記システムを用いてグルコースを検出する方法とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には蛍光センサー分子に関し、具体的にはモジュール式蛍光センサー分子の新規なグループに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2002年5月14日発行の「光誘起電子移動蛍光センサー分子」という名称の特許文献1に関連し、2003年5月1日出願の特許文献2の優先権を主張する。
【特許文献1】米国特許出願第6,387,672号明細書
【特許文献2】米国特許第10/427,404号明細書
【0003】
以下の説明は本発明に関する情報の概要を提供するものであって、提供される情報または本明細書で引用される文献のいずれかが本出願にかかる発明の先行技術であるという認諾ではない。
【0004】
生化学的なサンプルに含まれる被検体の検出及び定量的決定のために多数のアッセイ方法が開発されてきた。現用のアッセイ方法のかなりの部分は被検体とアッセイ試薬との間の特異的結合反応に依存する。前記被検体は、一部を列挙すると、タンパク質、ウイルス、ウイルス抗原、細菌細胞、細胞表面レセプター、酵素、ホルモン、多糖類、糖タンパク質、リポタンパクのような高分子の複合分子か、ペプチド、ある種のホルモン、治療薬、乱用薬物のような低分子のハプテン様分子かのばあいがある。
【0005】
前記結合アッセイは、そのフォーマットに基づいて、均一アッセイと不均一(heterogeneous)アッセイとの2つの大きなグループに分類できる。均一アッセイは、被検体とアッセイ試薬との間の単一相に基づく。不均一アッセイは液体サンプル中に含まれる被検体のアッセイ試薬への結合を伴うのが典型的で、該アッセイ試薬は固体支持体に付着している。ガラス棒(rod)、ガラスビーズ玉(bead)、シリカ含浸細片(silica impregnated strip)、ガラス繊維及び微細粒子(microparticle)を含まれるさまざまな材料が支持体表面として用いられてきた。
【0006】
色素一般、そして、特に蛍光色素は、検出可能な信号を提供するために均一及び不均一な結合アッセイの両方に慣用される。しかし、標識に結合した被検体によって生成される蛍光信号の正確な検出は、生物学的なサンプル自体の蛍光に起因する高くて変動のあるバックグランドによって妨害されることがしばしばある。
【0007】
液体フロー・サイトメトリーは、この問題を解消するのを助ける。フロー・サイトメトリーでは、結合した被検体を有する標識粒子がレーザ・ビームを通過する。前記粒子の発光した蛍光信号が測定され、前記被検体の存在及び量と関係づけられる。この方法の主な利点は、前記サンプルの他の結合しない成分の存在下で前記結合した被検体に関連する蛍光信号を正確に検出し計測することが可能である点である。
【0008】
糖類は生化学的な被検体の重要なグループを代表する。サンプル中の糖類の濃度を決定する現行の方法は酵素アッセイに頼るのが典型的である。酵素アッセイは信頼性があることは証明されているが、どちらかといえば不安定な酵素を利用しなければならず、該酵素は基質存在下では消耗される。更に、従来の酵素アッセイ方法は、便利なフロー・サイトメトリーのフォーマットで利用できない。フロー・サイトメトリーで用いられるような、粒子を用いるアッセイは、該粒子に限局された信号の変化を要求する。通常の酵素分析方法はこの要求に反する自由に拡散可能な中間体を用いる。
【0009】
糖類の決定は臨床的な場面で特に重要である。糖尿病及び低血糖症の治療は、組織のグルコース濃度の頻繁な測定を必要とする。これは、(指穿刺法のように)毎日数回少量の血液サンプルを採血することにより達成されるのが通常である。患者がランセットを用いて血液を1滴出血させて、その1滴を小型の測定器で読み取られる試薬の細片に適用するのが典型的である。この過程は痛く、侵襲的で、時間がかかる。
【0010】
最近、生体内でグルコースを測定するための最も侵襲的でない方法が、1999年9月10日出願の特許文献3に開示されたが、該出願は出願人名義が本発明の譲受人と同一人であり、引用により本明細書に取り込まれる。前記方法は、体内の被検体濃度に応答する検出可能な被検体信号を発生できる埋め込み式センサー粒子を使用に基づく。提唱された方法は、血液のD−グルコース測定用の従来の指穿刺法よりも侵襲的でない。前記方法は、皮内の前記センサー粒子を定期的に交換することだけを必要とする。
【特許文献3】米国特許出願第09/393,738号明細書
【0011】
前記センサー粒子は蛍光センサーを含み、該蛍光センサーは、該粒子の表面に付着しているか、あるいは、該粒子の内部に取り込まれているかのいずれかであるのが典型的である。前記センサーは標的被検体に特異的である。前記センサーの前記被検体との結合は、前記被検体の濃度に応答する検出可能な信号を発生する。前記被検体がグルコースのとき、蛍光体(fluor)にコンジュゲートしたジボロン酸が用いられる。
【0012】
グルコースに特異的な類似の蛍光センサーは、Jamesらの非特許文献1、Jamesらの特許文献4及びTakeuchiらの非特許文献2にも説明される。簡潔には、James及びTakeuchiの蛍光センサーは以下の(1)の一般式を有する。
【特許文献4】米国特許第5,503,770号明細書
【非特許文献1】the Journal of the American Chemical Society,1995,vol.117 pp.8982−8987
【非特許文献2】Tetrahedron,vol.52,No.4,pp.1195−1204
【0013】
【化1】


(1)
【0014】
上記の化学式において、Fは蛍光発色団、Rは炭素数の少ない脂肪族または芳香族官能基で、n+mは2又は3である。前記センサーの蛍光強度は、グルコースの水酸基(hydoroxyl)がボロン酸の対と結合することによって変調されるとおり、アミノ基と前記蛍光発色団との間の光誘起電子移動(PET)に応答して変化する。グルコース結合非存在下では、前記蛍光官能基による蛍光は窒素原子の非共有電子対によって消光される。グルコースが結合するとき、前記非共有電子対は結合形成に使われ、蛍光の消光に参加しない。その結果、前記センサーの内在性蛍光が発現する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の概要
前記蛍光センサーの生化学的アッセイ及び臨床検査への応用は以前の酵素を用いる試験管内の方法よりもいくつかの利点を提供するが、それでも、重大な欠点を有する。前記蛍光は、前記糖類結合官能基を分離し、所望の被検体選択性を提供するためにスペーサとして用いられるが、蛍光発色団のタイプと、サイズと、コンホメーションについて厳格な制約が課される。同じ理由で、前記開示された蛍光化合物と特異的に結合して検出可能な信号を発生することができる被検体のタイプ、サイズ及びコンホメーションにも著しい制約がある。さらに、引用された技術文献は不均一アッセイのフォーマットで前記PETタイプの蛍光化合物を使用することを示唆するが固体支持体に前記化合物を付着するための手段は全く提供されない。また、かかる付着は、前記蛍光分子のコンホメーション及び構造に課される厳格な制約に照らすと特に困難であろう。
【0016】
したがって、蛍光官能基及び結合官能基を独立に選択することを可能にする、モジュール式の構造を有する蛍光センサー、特にPETタイプのセンサーを提供することが本発明の目的である。広範囲の被検体と特異的に結合するように適合させることが容易に可能な蛍光センサーを提供することも本発明の目的である。均一及び非均一結合アッセイフォーマットの両方で使用可能で、固体表面に容易に付着できる蛍光センサーを提供することは本発明のさらなる目的である。最後に、前記蛍光センサーの便利な作成方法及び使用方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これら及びその他の目的及び利点は、以下の一般式(2)を有するモジュール式の本発明の蛍光センサーにおいて達成される。
【0018】
【化2】

(2)
【0019】
上記の化学式において、Flは蛍光発色団で、Nは窒素原子で、Bd1及びBd2は独立に選択される結合官能基で、Spは脂肪族のスペーサで、Anは前記センサーを固体支持体に付着させるためのアンカー官能基である。n=1又は2、m=1又は2、y=1又は3、xは整数である。前記結合官能基は、安定な1:1複合体を形成するように被検体分子を結合することを可能にする。結合官能基の例は、ボロン酸と、クラウンエーテルと、1,4,7,10,13−ペンタオクサ(Pentaoxa)−16−アザ−シクロオクタデカン(cyclooctadecane)(アザ18−クラウン−6)及び1,4,7,13−テトラオクサ(tetraoxa)−10−アザ−シクロヘキサデカン(cyclohexadecane)(アザ15−クラウン−5)のようなアザ−クラウンエーテルとを含むがこれらに限定されない。好ましい実施態様では、前記Bd1はR−B(OH)で、Bd2はR−B(OH)である。R及びRは互いに独立に選択される脂肪族又は芳香族の官能基で、Bはホウ素原子である。
【0020】
Spは6個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0021】
別の面では、本発明は、モジュール式の蛍光センサーの合成方法を提供する。前記方法は、
(a)以下の一般式の非対称化合物を作成するステップと、
(b)水素原子をBd1基及びBd2基と置換するステップとを含む。
【0022】
【化3】

(3)
【0023】
上記の化学式では、Flは蛍光発色団で、Nは窒素原子で、Hは水素原子で、Spは脂肪族スペーサで、Anは前記センサーを固体基質に付着するためのアンカー官能基である。Bd1基及びBd2基は、被検体分子を結合して安定な1:1複合体を形成することが可能な独立に選択された結合官能基であり、n=1又は2で、xは整数である。
【0024】
本発明は、固体基質を標識する方法も提供する。前記方法は、
(a)固体基質を用意するステップと、
(b)本発明の式(2)のモジュール式蛍光センサーであって、Anが前記固体基質に付着可能なモジュール式蛍光センサーを用意するステップと、
(c)前記センサーを前記基質に付着させるのに十分な条件下で、前記センサーを前記固体基質と反応させるステップとを含む。
【0025】
前記固体基質は、例えば、ビーズ玉、粒子又微粒子の場合がある。前記センサーがビーズ玉に付着される場合には、前記ビーズ玉の外部表面に付着される場合もあれば、前記ビーズ玉の内部に結合される場合もある。
【0026】
本発明は、糖類を検出するための分析システムであって、
(a)糖類を含むことが知られているか、あるいは、糖類を含むことが疑われるサンプルと、以下の化学式を有する1種類または2種類以上の糖類センサーが付着した、1種類または2種類以上の固体基質と、
(b)前記センサーに結合しているか、あるいは、結合していない、少なくとも1種類の糖類を検出するための手段とを含む、分析システムも提供する。1つの実施態様では、前記システムは選択的にグルコースを検出する。
【0027】
【化4】

【0028】
前記化学式では、Zは、水素、アルキル基、アリル基からなるグループから選択され、Nは窒素原子で、Bd1基及びBd2基は独立に選択された結合官能基で、該結合官能基は、被検体分子と結合して安定な1:1複合体を形成することができ、Spは脂肪族スペーサで、Anは前記センサーを前記固体基質に付着させるためのアンカー官能基で、Sは固体基質で、n=1又は2で、m=1又は2で、xは整数である。
【0029】
本発明のモジュール式蛍光センサーは多数の利点を提供する。前記センサーのモジュール式構造は、広範囲の構造、結合親和性及び溶解度の被検体に適用するようにその機能的部品を都合良く交換することを可能にする。前記センサーのアンカー部位及び非対称構造は、不均一アッセイフォーマットで要求されるさまざまな固体基質に前記センサーを都合良く付着することを可能にする。また、本発明の蛍光センサーは、信号の発生を被検体の結合と共役させ、これによって、被検体の測定を局在化する。その結果、前記センサーは粒子を利用するアッセイ及びフロー・サイトメトリーでの応用によく適合する。最後に、本発明では、特別なスペーサ官能基が、被検体−結合官能基間の所望の分子間距離を提供するために使われるが、該分子間距離は被検体の選択性を決定する。他方で、従来のPETタイプのセンサーは、蛍光発色団をスペーサとして利用するが、該スペーサは使用可能な蛍光発色団のタイプに厳格な制約を課する。これに対し、本発明では、前記蛍光発色団はサイズ又はコンホメーションの制約なしに選択できる。
【0030】
更に、本発明は非蛍光性の糖類センサーを含む。この非蛍光性糖類センサーは1つの実施態様においてビーズ玉に付着される。この実施態様は競合アッセイにおいて糖類を検出する方法に有用である。1つの実施態様では、前記方法はグルコースを選択的に検出する。
【0031】
本発明の新規な蛍光センサーは、その多機能性に照らして、広範囲の分析及び臨床的な用途で有用である。前記センサーは糖類の検出及び定量的分析に特に有益である。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の一般式を有するモジュール式蛍光センサーを提供する。
【0033】
【化5】

(2)
【0034】
上記の化学式では、Flは蛍光発色団で、Nは窒素原子で、Bd1基及びBd2基は独立に選択された結合官能基で、Spha脂肪族スペーサで、Anは前記センサーは固体基質に付着させるためのアンカー官能基である。式(2)では、n、m、x及びyは整数で、n=1又は2、m=1又は2、y=1又は2で、xは整数である。1つの実施態様では、x=0ないし10である。前記結合官能基は、被検体分子と結合して、安定な1:1複合体を形成することができる。
【0035】
本発明では、蛍光発色団Flは結合官能基間のスペーサとしては作用しない。その結果、さまざまなサイズ及びコンホメーションを有する広範囲の官能基から選択可能である。受け入れ可能な蛍光発色団の例は、ナフチル(naphtyl)基、アンスリル(anthryl)基、ピレニル(pyrenyl)基、フェナンスリル(phenanthryl)基及びペリレニル(perylenyl)基のようなπ−電子系を含む官能基を含むが、これらに限定されない。前記蛍光発色団は、置換されない場合もあれば、置換される場合もある。例えば、一部の分子は、カルボキシル酸又は硫酸のような強い塩基性又は産生の官能基を該分子内に導入することによって、水溶性にすることができることは周知である。その結果、蛍光発色団は均一アッセイフォーマットに適合するために、単数又は複数の硫酸基で置換される場合がある。
【0036】
前記センサーの実施態様は蛍光発色団をその分子構造に含むが、被検体非存在下では蛍光を発しない。本明細書の背景技術の欄で説明したとおり、PET分子では、蛍光発色団の蛍光は単数又は複数の窒素原子の非共有電子対によって消光される。前記センサーがサンプル中に含まれる被検体と結合するとき、前記窒素原子の非共有電子対は該センサーと該被検体との分子内複合体の形成に参加する。その結果、前記センサーの内在性蛍光が発現されるようになる。
【0037】
本発明では、前記結合官能基は、1:1複合体が形成されるように前記被検体と前記センサーとの所望の特異的結合を提供する限り、いかなる官能基でもかまわない。前記結合官能基は電子不足型官能基(electron deficient group)であることが好ましい。電子不足型であることは、前記被検体と特異的に結合するとき、前記非共有電子対を前記窒素から結合官能基へ移行させるかどうかを左右する。受け入れ可能な結合官能基の例は、ボロン酸と、クラウン・エーテルと、1,4,7,10,13−ペンタオクサ−16−アザ−シクロオクタデカン(アザ18−クラウン−6)及び1,4,7,13−テトラオクサ−10−アザ−シクロヘキサデカン(アザ15−クラウン−5)のようなアザ−クラウン・エーテルを含まれるが、これらに限定されない。本発明のセンサーを用いて同定可能な被検体の例は、糖類、アミノ糖及びカルボニル糖を含むがこれらに限定されない。
【0038】
好ましい実施態様では、Bd1はR−B(OH)で、Bd2はR−B(OH)である。R及びRは互いに独立に選択される脂肪族又は芳香族の官能基で、Bはホウ素原子である。受け入れ可能なR及びRの官能基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びフェノキシ基を含むが、これらに限定されない。
【0039】
前記結合官能基は脂肪族スペーサSpで隔てられる。該スペーサの炭素骨格の長さは被検体のサイズに適合するように選択される。被検体がグルコースである1つの実施態様では前記炭素骨格の長さは、結合官能基の間の距離がグルコースのサイズに相当する。
【0040】
前記スペーサは直鎖状か分岐状か環状かの構造をとる場合があるが、好ましい実施態様では、スペーサは直鎖状のアルカンである。前記スペーサは1から9個までの炭素原子を含むのが典型的であるが、もっと長いスペーサが被検体のサイズと適合するために用いられる場合もある。例えば、被検体がグルコースのとき、スペーサは6個の炭素原子を含む場合がある。
【0041】
前記センサーのアンカー官能基Anは、固体基質/支持体、例えば、不均一結合アッセイに用いられる基質に該センサーを固定化するための手段を提供する。本明細書では、固体基質、固体支持体、基質及び支持体という用語は取り替え可能なように用いられる。An官能基は前記センサーの窒素原子の1つに、直接的にか、あるいは、炭素架橋−(CH2)−を用いるかのいずれかで付着される。前記炭素架橋内のAn官能基のタイプと、炭素数(x)とは、前記センサーが固体基質に強固に付着するように選択される。例えば1つの実施態様では、前記センサーはマイクロメートル規模のビーズ玉に付着される。本発明のセンサーが付着したマイクロメートル規模のビーズ玉は、フロー・サイトメトリーを含むさまざまな用途で使用される場合がある。典型的には、Anは有機官能基を含む。1つの実施態様ではAnはフェニル基を含む。
【0042】
アンカー官能基Anは任意である。例えば、均一アッセイでは、センサーの付着は必要とされない。したがって、センサーはアンカー官能基なしで合成される場合もあれば、メチル基又はベンジル基のような官能基とともに合成される場合もある。
【0043】
本発明は、機能的エレメントの間での相互作用が最小となるモジュール式センサーのための枠組みを提供する。本発明のセンサーの個々の機能的エレメントは、広範囲の被検体に対応するために容易に置換できる場合がある。例えば、1つの実施態様では、前記センサーの全ての官能基と炭素架橋の長さとが該センサーのグルコースとの選択的結合を提供するように選択される。
【0044】
本発明のモジュール式蛍光センサーは以下の一般式を有することが好ましい。
【0045】
【化6】

(4)
【0046】
前記化学式(4)では、Flは蛍光発色団で、Nは窒素原子で、Bはホウ素原子である。R及びRは、安定な1:1複合体を形成するために、被検体と、ボロン酸官能基の水酸基との共有結合ができる脂肪族又は芳香族の官能基である。R及びRは互いに独立に選択される。Anは前記センサーを固体基質に付着するためのアンカー官能基で、xはいずれかの整数である。1つの実施態様では、x=0ないし10である。
【0047】
本発明の化学式(2)及び(4)に該当する典型的な化合物は以下の化学式を有する。
【0048】
【化7】

(5)
【0049】
予想外なことに、化合物(5)はグルコースに対する特異的な選択性を有し、サンプル中に含まれるグルコースと結合するとき強い蛍光を発する。かかるグルコースに対する特異性は化合物(5)の構造によって説明可能である。2個のボロン酸基が6個の炭素の鎖を含むスペーサによって互いに隔てられ、グルコースのシス−1,2−水酸基及び4,6−水酸基と結合してグルコースと強力な1:1複合体を形成することを可能にする。
【0050】
別の面では、本発明はモジュール式蛍光センサーの合成方法を提供する。前記方法は、
(a)以下の一般式の非対称化合物を形成するステップと、
(b)水素原子をBd1及びBd2官能基で置換するステップとを含む。
【0051】
【化8】

(3)
【0052】
前記化学式では、Flは蛍光発色団で、Nは窒素原子で、Hは水素原子で、Spは脂肪族スペーサで、Anは前記センサーを固体基質に付着させるためのアンカー官能基である。Bd1及びBd2は、独立に選択された結合官能基で、被検体分子と結合して安定した1:1複合体を形成することができ、n=1又は2で、xはいずれかの整数である。1つの実施態様では、x=0ないし10である。1つの実施態様では、水素原子を置換するステップは、オルトブロモメチル・フェニルボロン酸(orthobromomethyl phenylboronic acid)を付加することを含む。例えば、図1に示され、実施例1に詳細に説明されるような反応経路が用いられる場合がある。
【0053】
本発明は固体基質の標識方法も提供する。前記方法は、
(a)固体基質を用意するステップと、
(b)本発明の化学式(2)のモジュール式蛍光センサーであって、Anが前記固体基質に付着できるモジュール式蛍光センサーを用意するステップと、
(c)前記センサーを前記固体基質に付着させるのに十分な条件下で、前記センサーを前記基質と反応させるステップとを含む。
【0054】
本発明の目的のためには、センサーの基質への付着を妨害しない場合に、ある条件は十分であるとされる。当業者は、固体基質のタイプと、アンカー官能基の性質とに基づいてどの条件が十分であるかわかるであろう。例えば、アンカー官能基がアミノ基、好ましくは、第1級アミン基のとき、固体基質はカルボキシル酸基を含むべきで、十分な条件は共役試薬の添加によって満たされる。受け入れ可能な共役試薬は、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(dicyclohexylcarbodimide、DCC)と、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボイミド(dimethylaminopropyl)carboimide)又は水溶性カルボイミドと、カルボニルジイミダゾール(carbonyldiimidazole、CDI)を含むが、これらの限定されない。更に、N−ヒドロキシスクシンイミド(hydroxysuccinimide)が、より良い反応効率を得るために反応混合液に添加される場合がある。本発明の1つの実施態様によると、アンカー官能基が第1級アミンのとき、センサーはN,N−ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)を溶媒として1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(disopropylcarbodiimide、DIPC)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(benzotriazole、HOBt)及び4−N,N−ジメチルアミノピリジン(dimethylaminopyridine、DMAP)を混合し、前記反応混合液を室温で2ないし24時間攪拌することによって前記基質に付着させられる。
【0055】
本発明は、ビーズ玉のような固体基質に付着又は固定化された糖類センサーも提供する。この実施態様では、前記糖類センサーがその分子構造に蛍光発色団を含むことは要求されない。固体基質に付着した糖類センサーは以下の化学式を有する場合がある。
【0056】
【化9】

(6)
【0057】
前記化学式では、Zは水素、アルキル基、アリル基及び蛍光発色団からなるグループから選択され、Nは窒素原子で、Bd1及びBd2は独立に選択された結合官能基で、Spは脂肪族スペーサで、Anは前記センサーを固体基質(S)に付着させるためのアンカー官能基である。化学式(6)では、n、m、x及びyは整数で、n=1又は2で、m=1又は2で、y=1又は2で、xは整数である。1つの実施態様では、x=0ないし10である。1つの実施態様では、前記結合官能基は、安定な1:1複合体を形成するために被検体分子と結合することができる。
【0058】
1つの実施態様では、糖類検知ビーズ玉は、以下の構造を有し、グルコースと選択的に結合してグルコースを検出する糖類センサーを有する。
【0059】
【化10】

(7)
【0060】
前記化学式では、Zは、水素、アルキル基、アリル基から成るグループから選択され、Nは窒素原子で、Spは脂肪族スペーサで、Anは前記センサーを固体基質(S)に付着させるためのアンカー官能基である。Zは蛍光発色団の場合がある。
【0061】
別の実施態様では、前記糖類検知ビーズ玉は、グルコースを検出するためにグルコースと選択的に結合する1種類または2種類以上のセンサーを含む。前記ビーズ玉に付着するセンサー/リガンドは以下の構造を有する場合がある。
【0062】
【化11】

(8)
【0063】
化学式(8)に示されるグルコースセンサーは、グルコースとの結合に際して光学的に検出可能な蛍光信号を発生しない。この化合物の調製は、実施例III及び図1に詳細に説明される。
【0064】
前記固体基質は、ビーズ玉、粒子、微粒子等の場合があり、本明細書では、ビーズ玉、粒子及び微粒子という用語は交換可能なように用いられる。糖類検知ビーズ玉は、約0.1から約50マイクロメートルまでの範囲の直径を有するのが典型的である。本発明の1つの実施態様では、前記ビーズ玉は、密度が約0.5ないし約2g/mLの範囲内の液体中に懸濁されるのが典型的である。これらのサイズ及び密度の範囲の組み合わせは、前記糖類検知ビーズ玉が、ピペット、ポンプ及びある種のバルブのようなたいていの輸液装置によって単純な液体として処理されることを可能にする。
【0065】
前記ビーズ玉は、普通に入手可能な、エマルジョン重合によって形成されたポリスチレンラテックスビーズのように、丸くて均一であることが好ましい。前記ビーズ玉は、当業者に知られた他の製法によって他の材料で製造される場合がある。前記ビーズ玉は、類似の荷電状態のような、他の粒子状センサーとの相互作用を効果的に阻止する手段を取り込むことも可能である。前記材料及び方法の例は、可溶化ポリマーの液滴キャスティングによって製造される可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)ビーズか、ゾルゲルから製造されたガラス状ビーズ玉かを含むが、これらに限定されない。更に、前記センサービーズ玉は、生体再吸収性ポリマーで作られる場合がある。生体再吸収性ポリマーの例は、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ−DL−ラクチド−コーグリコリド(poly−DL−lactide−co−glycolide、PLGA)、デンプン、ゼラチン等を含むが、これらに限定されない。
【0066】
本発明のセンサービーズ玉は、多孔質ガラス(CPG)ビーズ玉又はポリマーゲルのような、しかしこれらに限定されない、親水性ビーズ玉の場合がある。適当な可塑剤又は十分に低いガラス転移温度で低分子被検体による自由な浸透を許す疎水性ビーズ玉の場合もある。代替的には、リポソームのような、しかし、これに限定されない、半透膜の場合がある。前記センサーの分解を避けるために、前記センサーはCPGビーズ又はポリマーゲルの細孔のような、親水性ビーズの内部に結合される場合がある。受容体は、低分子被検体による自由な浸透を許すために、適当な可塑剤を有する疎水性ビーズの内部に捕捉される場合もある。前記受容体は、更に、半透性膜の内部に詰め込まれる場合がある。本発明の目的のためには、可塑剤は、低分子被検体の疎水性ビーズ内への自由な浸透を許す場合に適当とされる。かかる可塑剤の例は、ジオクチル・アジパート、ジイソデシル・アジパート等を含むが、これらに限定されない。代替的な実施態様によれば、本発明のセンサーは、疎水性その他の不溶性ビーズの表面に結合する場合がある。
【0067】
アッセイシステム
本発明は、更に、2種類以上の被検体を同時に検出するための分析アッセイシステムを提供する。このシステムは、「被検体検出システム」という名称の2001年11月14日付出願のMichael L.Bellらの同時係属出願の米国特許出願第09/990,678号明細書に詳細に説明されており、引用により本出願にその全体が取り込まれる。前記システムは、ビーズ玉の多数のサブポピュレーションの間を区別し、関心のある複数の被検体を定量するために蛍光標識ビーズを利用する。前記アッセイシステムで用いられる蛍光標識は、共通の光源によって励起可能で、該蛍光標識自体及び前記システム中の他の蛍光光源とは区別できる波長で発光可能で、スペクトルの遠赤外(far−red)又は近赤外領域に励起波長がある。
【0068】
本発明のこの実施態様によれば、マイクロフルイディクスと蛍光ビーズセンサー技術とを組み合わせることによって、複数の被検体が同時に検出及び計測される。複数の分析反応が1組のマイクロメートル規模のビーズ上で隔離され、該ビーズはフロー・サイトメトリー装置のような装置によって個別に読み取られる。前記装置は、それぞれの組のビーズの素性(identity)と、それぞれのビーズがその被検体と反応した程度とを決定する。それぞれの組のビーズは、(1)該ビーズを符号化するために特有の蛍光標識の組み合わせを持ち、(2)関心のある1つの被検体、あるいは、1群の被検体に特異的であり、(3)個々の関心のある被検体を同定するための蛍光色素(すなわち、分析色素又は蛍光被検体検出色素)を含む。
【0069】
本発明の方法によれば、分析サンプルは、関心のあるさまざまな被検体に特異的な1組のビーズ玉と反応させられる。前記ビーズ玉はフロー・サイトメトリー装置のような検出装置を通される。関心のある特異的な被検体と反応したビーズは特定のビーズ玉と関心のある被検体とに関連する蛍光色素に対応する蛍光発光スペクトルを発生する。前記装置は、前記ビーズ玉の中に取り込まれた蛍光標識の特有の組み合わせによって少なくとも部分的に前記ビーズ玉を同定する。前記蛍光標識由来の情報は、前記被検体特異的な蛍光色素由来の情報と関連付けられ、対応する結果が1つの反応で複数の被検体の定量的な同定を可能にする。
【0070】
本明細書に説明される検出システム及び方法の1つの面は、適切に標識されたビーズ玉の調製及び使用である。本発明に用いられるビーズ玉は、ポリスチレンのようなポリマー材料でできているのが一般的である。本発明で有用なビーズ玉/粒子を作成するための適当な調製技術は当業者に一般的に知られている。適当な調製技術の例は、引用により本明細書に取り込まれる米国特許第4,609,689号明細書に説明される。代替的には、前記ビーズ玉/粒子は、Bio−Rad Laboratories Inc.社又はBang Laboratories Inc.社のような商業的な供給元から入手できる。
【0071】
本発明に用いられる蛍光標識は前記ビーズ玉に埋め込まれていることが好ましいが、必要ではない。前記蛍光標識を前記ビーズ玉の内部に埋め込むことは、蛍光分解を起こす環境的な因子から前記標識を保護することによって信号の安定性を増大する。前記蛍光標識を前記ビーズ玉の内部に埋め込むことは、前記ビーズ玉の外部を被検体及び/又は分析用色素との結合のために残しておくことにもなる。
【0072】
前記蛍光標識は、当業者に知られた方法を用いて前記ビーズ玉に添加される。1つの既知の方法は、引用によって本明細書に取り込まれる、米国特許第4,302,166及び4,162,282号明細書に説明されるキャスティング法のような、キャスティング法である。この方法では、蛍光標識とポリマーとが溶媒に溶解される。溶液は、微細なノズルを通して水のシースの中に液流として排出される。圧電トランスジューサーが前記液流を離散した液滴に分け、前記溶媒が見ずに拡散するにつれて前記液滴は硬化してビーズ玉になる。別の製法は、膨潤−収縮(swell−shrink)法である。この方法は、引用により本明細書に取り込まれるL.B.Bangs(「均一なラテックス粒子(Uniform Latex Particles)」、Seragen Diagnostics Inc.、1984年、40頁)に説明される。膨潤−収縮法は、攪拌されたビーズ玉に脂溶性又は疎水性の色素を添加して、インキュベーション期間の後、前記ビーズ玉に吸収されなかった色素を洗浄することからなる。
【0073】
ある組のビーズ玉は、該ビーズ玉を符号化するための蛍光標識の特有の組み合わせに基づいて他の組のビーズ玉と区別できる。複数の組のビーズが、単一の反応中の複数の被検体を特異的に検出するために用いられる場合がある。1つの反応中の複数の被検体を検出することは、複数のアッセイ手順を簡素化でき、別々のアッセイ由来の結果の間のばらつきを少なくできる。
【0074】
本発明では、異なる量の蛍光標識が、個々の組のビーズ玉を別の組のビーズ玉から同定するために、異なる組のビーズ玉でさまざまな組み合わせで用いられる。前記ビーズが少なくとも2種類の蛍光標識で標識されることは好ましいが、必要ではなく、ビーズ玉のポピュレーションの数をより多くするために、より多くの数の標識の組み合わせを使うことができる。例えば、標識Aを1部と標識Bを2部とを含むビーズ玉は、標識Aを2部と標識Bを1部とを含む第2のビーズ玉から区別することができる。これらのビーズ玉は、標識Aを2部と標識Bを4部とを含むか、標識Aを4部と標識Bを2部とを含むかである第3のビーズ玉から区別できる。このやり方で、区別可能なビーズ玉のポピュレーションの数を増やすために蛍光標識の対が用いられる場合がある。したがって、分析検出システムが10種類の異なる量の標識Aを区別できる場合には、標識Aだけを用いて10個の異なるビーズ玉のポピュレーションを弁別することができる。しかし、分析検出システムが更に10種類の異なる量の標識Bの間を区別できる場合には、標識A及び標識Bは組み合わせて10掛ける10、すなわち、100種類の異なるビーズ玉のポピュレーションの特性を蛍光標識するために用いることができる。第3の標識が用いられる場合には、同定可能なビーズ玉の数は、1000種類の区別可能なビーズ玉のポピュレーションにまで拡大する。
【0075】
最適な数の識別可能なビーズ玉のポピュレーションのためには、蛍光ビーズ標識の発光スペクトルが特定のビーズ玉の組で用いられる異なる蛍光標識の濃度に正確に対応することが好都合である。ビーズ玉上で複数の被検体を蛍光によって正確に同定し定量するためには、外部の蛍光光源と、アッセイで用いられる蛍光標識と、前記被検体と関連する蛍光色素との間での干渉が最小であることが好都合である。先行技術の検出システム及び方法は、これらの利点を同時に備えた蛍光利用検出システムを提供することができなかった。
【0076】
ビーズ玉のサイズはビーズ玉を符号化するための別のパラメーターである。ビーズ玉は予め成形されたサイズで購入される場合もあれば、ことなる均一なサイズで調製される場合もある。好ましいが、必要ではないビーズ玉のサイズは、5.5、7.0及び10.2ミクロンである。ビーズ玉のサイズは別々に検出され、蛍光とは別に決定されて、前記蛍光標識と前記被検体検出色素とともに関心のある被検体を検出し定量するために関連付けられる。より少ない数の符号化されたビーズが必要な場合には、ビーズ玉に目印を付けるための蛍光標識の組み合わせが好ましい。
【0077】
前記ビーズ玉の蛍光標識の濃度は、発光信号の強度に比例する。区別できるビーズの組み合わせの最大数は、同一の強度の発光信号のビーズを調製することによって達成される。異なるサイズのビーズ玉の異なる組の発光信号の強度はおよそ同じ強度であることが望ましいが、必要なわけではない。この目的を達成するために、小さなビーズ玉の蛍光標識の濃度が増加され、及び/又は、大きなビーズ玉の蛍光標識の濃度は減少される。本発明に用いられる蛍光標識の発光波長は、電磁放射線スペクトルの近赤外領域である。この開示の目的のためには、電磁放射線スペクトルの近赤外領域は、750nmより長く、1000nmより短い波長を有する光である。一連の固定された所定量でより長い発光波長を有する蛍光標識でビーズ玉に目印を付けること、及び、これを達成する手段は、本発明の技術分野の改良である。これらの蛍光標識の吸収及び発光スペクトルはありふれた干渉物質のスペクトルから十分離れている。本発明に用いられる蛍光標識の長い発光波長は、関心のある複数の被検体を検出するための分析信号として用いられるべき検知色素の選択肢を多くすることができる。したがって、750nmより短い発光波長を有する蛍光色素は、前記蛍光標識と発光スペクトルが重複することを考慮することなく、分析検知色素の候補として含むことができる。
【0078】
符号化されたビーズ玉を調製するために用いられる溶媒の中と、貯蔵中及び使用中のビーズ玉自体の中との両方で、蛍光標識が安定であることは望ましいが必要なわけではない。これは、前記ビーズ玉がほとんど水の沸点まで繰り返し加熱される使用条件を含む。また、ビーズ玉を符号化するために用いられるべき蛍光標識は、該蛍光標識を該ビーズ玉の中に浸透させるために必要な溶媒に可溶性であることも望ましいが、必要なわけではない。前記蛍光標識は水性培地中で長期間保存する間、あるいは、DNA増幅のようなさまざまなアッセイに用いられる高温工程の間に前記ビーズ玉から溶脱しないことが好都合である。
【0079】
単一のビーズ玉に埋め込まれる場合であっても、1つの組に入れられた蛍光標識がエネルギー移動を通じて有意な相互作用をしないことが望ましいが、必要なわけではない。かかる相互作用は不正確な蛍光検出(例えば、長波長の色素の存在下で短波長の色素の蛍光に見かけ上の損失が生じること)が起こる場合がある。これらのタイプの相互作用は前記色素をビーズ標識として同時に使用することを困難にする場合がある。更に、前記蛍光標識は、標的カチオンの計測用のビーズのオプトード(optodes)中の蛍光pH指示剤である、ETH5294のような分析色素として用いられる蛍光色素と有意な干渉を生じないことは好都合である。
【0080】
前記蛍光標識は同一の励起レーザを共有することが好都合であるが、必要なわけではない。検出システムは同一の励起レーザがシステム中で用いられるときによりコンパクトになるのが一般的であり、蛍光標識の組み合わせを励起するのに1個のレーザを使用することは、一般的にはより経済的な効率がよい。しかし、代替的な実施態様では蛍光標識の組み合わせを励起するために、複数の励起レーザが検出システムに用いられる場合がある。
【0081】
ビーズ玉との組み合わせで用いられるとき、前記蛍光標識の発光波長は互いに区別できることが一般的であるが、重複する部分があることもある。区別できる蛍光標識の組み合わせは、蛍光標識の1つの組み合わせを有する1個の特定のビーズ玉が、異なる蛍光標識の組み合わせを有する別のビーズ玉からそれぞれのビーズ玉の特定の発光スペクトルによって同定でき、あるいは、弁別できる。例えば、第1のビーズ玉はそのビーズ玉の蛍光標識の発光スペクトルの相対強度を比較することによって同定できる。このビーズ玉は、ビーズ玉の中の蛍光標識の発光スペクトルの相対強度が異なる第2のビーズ玉から区別できる。およそ少なくとも30nmのストークスシフトだけ互いに異なる発光スペクトルピークを有する蛍光標識を用いる蛍光標識の組み合わせは一般的に区別できる。しかし、これは本発明の要件ではなく、本発明の実施するために要する蛍光標識発光スペクトルの最大ピークの正確な分離は、それぞれの特定の組み合わせの標識及びスペクトル分解能に応じて異なる場合がある。1つの実施態様では、被検体検出色素の発光ピーク波長は、蛍光標識の発光の第1及び第2のピーク波長から少なくとも100nm異なり、第1及び第2の励起波長は少なくとも100nm異なり、該励起波長の1つは約750nmより長い。
【0082】
前記蛍光標識を前記アッセイシステムで用いることは、(1)ビーズ玉の発光信号は互いに有意な相互作用を起こさない点と、(2)被検体発光信号はビーズの発光信号と有意な相互作用を起こさない点と、(3)ビーズ玉及び被検体の発光信号は外部の蛍光光源と有意な相互作用を起こさない点とで、先行技術の蛍光利用検出システムの限界を解決する。上記に列挙された利点に加えて、標識として長い波長の蛍光物質(fluorescer)を使用することは、安価でコンパクトなダイオード・レーザと、経済的な光子検出器とを使うことを可能にする。
【0083】
近赤外蛍光化合物は当業者に知られており、粒子を符号化するための蛍光標識として本発明で利用できる。適当な蛍光化合物は当業者に知られた方法によって上記の基準に従って選択され、本発明で利用できる。例えば、引用により本明細書に取り込まれる、Webb,J.Pら、Eastman Organic Chemical Bulletin,(1974)、 46巻3号、Pierce,B.Mら、IEEE Journal of Quantum Electronics,(July 1982),巻QE−18,7号、1164−1170頁、Strekowskiら、J.Org.Chem.,(1992)、 57巻、4578−4580頁及び 米国特許第2,887,479、2,895,955及び5,061,618号明細書は、近赤外蛍光化合物を説明する。1つの実施態様では、シアニン色素が前記ビーズ玉を符号化するための蛍光標識として用いられる。これらのシアニン発色団は同時係属中の米国出願第09/990,678号明細書に詳細に説明される。
【0084】
多数の被検体の検出システムに用いられる代表的なビーズ玉は図2に示される。図2に示すとおり、ビーズ玉12は蛍光標識14A、14Bで標識され、被検体受容体13が該ビーズ玉に付着する。前記被検体受容体13を含む前記ビーズ玉、14A又は14Bは、次に関心のある被検体15について特定のサンプルをアッセイするために用いられる。蛍光被検体検出色素16も存在する。被検体検出色素16は、前記受容体に特異的な被検体も前記サンプル中に存在するときに、蛍光信号を発光する。
【0085】
蛍光被検体検出色素は当業者に知られている。前記蛍光被検体検出色素は、単一の蛍光物質か、検出システム内でのエネルギー移動によって活性化される供与体−受容体色素対かの場合があり、人工合成又は天然の蛍光物質の場合がある。適切な蛍光被検体検出色素は、特定のアッセイについて選択され、この開示内容を参照する当業者によって本発明にしたがって使用できる。
【0086】
前記蛍光被検体検出色素は、特異的な分析反応で用いられる特定のアッセイに応じて、当業者に知られたさまざまな方法によって前記ビーズ玉に複合体化される。例えば、蛍光被検体検出色素16は、受容体(図示されない)か、被検体15(図2B)かに付着される場合があり、あるいは、前記被検体は天然の蛍光色素(図示されない)を含む場合がある。前記蛍光被検体検出色素は、図2Aに示されるとおり、2重受容体−被検体複合体(例えばサンドイッチ)における第2の受容体に付着する場合がある。
【0087】
多数の被検体の検出システムで用いられる代表的なビーズ玉が図2に示される。図2に示されるとおり、ビーズ玉12は蛍光標識14A、14Bで標識され、被検体受容体13が前記ビーズ玉に付着する。次に被検体受容体13を含む前記ビーズ、14A又は14Bは関心のある被検体15について特定のサンプルをアッセイするために用いられる。蛍光被検体検出色素16も存在する。被検体検出色素16は、前記サンプル中に前記受容体に特異的な被検体も存在するときに、蛍光信号を発光する。
【0088】
蛍光被検体検出色素は当業者に知られている。蛍光被検体検出色素は、単一の蛍光物質か、前記検出システム中でのエネルギー移動によって活性化される供与体−受容体色素対かの場合があり、人工合成又は天然の蛍光物質の場合がある。適切な蛍光被検体検出色素は、特定のアッセイについて選択され、この開示内容を参照する当業者によって本発明にしたがって使用される場合がある。
【0089】
前記蛍光被検体検出色素は、特異的な分析反応で用いられる特定のアッセイに応じて当業者に知られたさまざまな方法によって前記ビーズ玉に複合体化される。例えば、蛍光被検体検出色素16は、受容体(図示されない)か被検体15(図2B)かに付着される場合があり、あるいは、前記被検体は天然の蛍光色素(図示されない)を含む場合がある。前記蛍光被検体検出色素は、図2Aに示されるとおり、2重受容体−被検体複合体(例えば、サンドイッチ)での第2の受容体に付着する場合がある。
【0090】
前記アッセイシステムの利点は、複数の被検体が自動化システムで同時に検出できることである。例えば、複数のサブポピュレーションのビーズ玉でできたビーズ玉のパネルであって、それぞれの個別のサブポピュレーションのビーズ玉は異なる関心のある被検体に特異的であるビーズ玉のパネルが調製される場合がある。前記ビーズ玉のパネルは、テストサンプルと反応させられ、その後、検出システムを通される。このやり方で、被検体のパネルが同時に検出され定量化される。したがって、本発明は複数のアッセイが1つの反応で完了できる点で、時間的な効率が良い。本発明とともに使用可能な当業者に知られたパネルの例は、電解質パネル、ホルモンパネル等を含む。他の複数被検体のパネルが当業者に知られており、この開示内容を参照して、本発明の検出システムで利用できることは理解される。
【0091】
今回の検出システム及び方法で用いられる好ましいアッセイシステムはフロー・サイトメトリー装置である。フロー・サイトメトリー・システムは当業者に知られている。好ましいフロー・サイトメトリー装置は、標準的なアルゴンイオンレーザを交換した785nmレーザを有する改造型コールターXLフロー・サイトメトリー装置である。前記フロー・サイトメトリー装置はこの開示内容を参酌する当業者によって理解されるであろう既知のやり方で作動する。
【0092】
図3は、本発明で使用可能なフロー・サイトメトリー・システムの代表的な概念図である。光エネルギー23は、光学サブシステム内のレーザ又はアーク灯のような励起光源20A、20B及び20Cによって前記フロー・サイトメトリー装置に提供される。長波長の励起レーザがビーズ玉21に目印を付けるべく用いられる前記蛍光標識を同時に励起するために使用され、1個または2個以上の短波長の励起レーザが蛍光被検体検出色素を励起するために使用されることが好ましい。前記サイトメトリー装置の光学サブシステムは、適切なレーザ・ラインフィルターと、ビーム・エキスパンダと、鏡と、レンズと、フロー・セルと、サイトメトリー装置を作動するうえで好都合な他の構成部分であって、この開示内容を参酌する当業者によって理解されるであろう構成部分とを含む場合がある。
【0093】
被検体色素を励起するための適切な短波長(lower wavelength)レーザは当業者に知られている。蛍光被検体検出色素用の好ましい励起波長は、635nmダイオード・レーザで、代替的には、650nmのダイオード・レーザ又は633nmヘリウム−ネオン・レーザが使用可能である。代替的に、より波長の短い488nmアルゴン・イオン・レーザ又は530nm2重YAGレーザが使用可能である。本発明の別の面では、複数の検出レーザが異なる励起波長の複数の蛍光色素を検出するために使用できる。本発明のこの面では、長波長レーザと短波長レーザとの組み合わせが使用される。本発明のこの面の例は、異なるビーズ玉上の異なる蛍光色素を励起するために用いられる、650nmレーザ及び530nmレーザである。長波長レーザ(例えば、750nmより長いもの)は当業者に知られている。好ましいレーザ励起波長は約785nmである。好ましいが、必要ではない本発明の面では、532、650及び780nmの3個のレーザを有するフロー・サイトメトリー・システムが使用される。
【0094】
前記検出サブシステムで特定の発光24を検出するための適切な検出器25は、この開示内容を参酌する当業者に理解されるとおり、既知である。検出器は、光信号を電気的なインパルスに変換して、それにより、検出光をその蛍光源と関連付ける光ダイオード、光電子増倍管又はこれらに類する装置の場合がある。前方散乱光及び側方散乱光を検出するための検出器は当業者に知られており、この開示内容を参酌する当業者によって理解されるとおり、前記検出システムにおいて光散乱を検出するために使用できる。光散乱及び蛍光は検査ゾーン内のそれぞれのビーズ玉について同時に検出できる。本発明の好ましいが必要ではない面では、前方散乱検出器、側方散乱検出器及び光電子増倍管が検出サブシステムで用いられる。検出サブシステムは、フィルター・システムと、鏡と、この開示内容を参酌する当業者によって理解されるようなサイトメトリー装置を作動するうえで好都合なその他の構成部分とを用いることができる。検出器26からの電気信号は、信号及びディスプレイの処理、保存及び/又は更なる処理のためのシステムの電子装置に供給されるのが典型的である。
【0095】
分析サブシステムでは、マイクロプロセッサ27のようなハードウェアは、コンピュータのハードドライブのような記憶保存装置28との組み合わせで、データを検出し、該データを処理する。前記分析システムで使用される適切なハードウェアは、この開示内容を参酌する当業者によって理解されるとおり既知である。データ及び信号処理に用いられる分析システムソフトウェアは、分析結果を出すために、検出されたデータを既知のデータと関連付けることができる。前記分析サブシステムは、それぞれのビーズ玉に関連する電気信号からデータを収集することができる。あるクラスのビーズ玉は、該クラスのビーズ玉に共通の特性に基づいて確立される。既知のクラスのビーズ玉からのデータは未知のクラスのサンプルのビーズ玉から検出されたデータと比較できる。処理されたデータ及び解釈された結果は、ユーザへの出力29として与えられる場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0096】
以上の説明は、本発明の範囲を例示することを意図するものであって、限定するつもりはない。実際、当業者は本明細書の内容に基づいて過度の実験を要することなく更なる実施態様を想定し作出することができる。
【実施例1】
【0097】
式(5)の蛍光センサーが、図1に示される合成経路にしたがって、以下に詳細に説明されるように調製された。
【0098】
N−ベンジル−ヘキサン−1,6ジアミンの調製
テトラヒドロフラン(THF)(300mL)及びエタノール(75mL)中のヘキサメチレン−1,6−ジアミン(17.15g、148ミリモル)及びベンズアルデヒド(3.0mL、29.5ミリモル)の溶液が、室温で24時間窒素雰囲気下で攪拌された。溶媒は除去され、オイル状液体は真空乾燥された。乾燥した残渣はTHF(100mL)に溶解され、ホウ化水素ナトリウム(5.58g、148ミリモル)が前記溶液中に添加された。前記溶液は室温で7時間窒素雰囲気下で攪拌された。メタノール及び水が前記溶液に添加され、溶媒が減圧下で除去された。得られたオイル状液体はクロロホルムに溶解され、水で洗浄された。前記溶液は硫酸マグネシウム上で乾燥され、溶媒が減圧下で除去されて、無色のオイル状液体(4.49g、74%)を得た。H NMR(CDCl)δ/ppm1.1−1.5(8H,m,(CH),2.55(2H,t,NHCH),2.65(2H,t,ArCNCH),3.75(2H,s,ArCH),7.1−7.25(5H,m,ArH)。
【0099】
N−ベンジル−N’−ピレン−1−イル(yl)メチレン−ヘキサン−1,6−ジアミンの調製
THF及びメタノール(各12.5mL)中のN−ベンジル−ヘキサン−1,6ジアミン(500mg、2.42ミリモル)及び1−ピレンカルボキシアルデヒド(670mg、2.90ミリモル)の溶液が室温で20時間窒素雰囲気下で攪拌された。溶媒は減圧下で除去され、残渣はメタノールで洗浄された。沈殿は濾過され、濾液は除去され、減圧下で乾燥され、黄色のオイル状液体(940mg、93%)を得た。H NMR(CDCl)δ/ppm 1.45−1.62(6H,m,(CH),1.85(2H,m,=HCCH),2.65(2H,t,NHCH),3.78(2H,s,PhCH),3.85(2H,t,=NCH),7.15−7.25(5H,m,Ph−H),7.95−8.23,8.53,8.88(7H,1H,1H respectively,m,d,d,Py−H),9.27(1H,s,N=CH).13C NMR(CDCl)δ/ppm 27.31,27.49,30.12,31.16,49.50,54.13,62.77,122.64,125.00,125.59,125,84,126.12,126.24,126.91,127.50,128.16,128.42,128.59,130.64,131.30,140.50,159.54;m/z(TOF)419([M+H],100%)。
【0100】
N−ベンジル−N’−ピレン−1−イル(yl)メチル−ヘキサン−1,6−ジアミンの調製
メタノール(10.0mL)中のN−ベンジル−N’−ピレン−1−イル(yl)メチレン−ヘキサン−1,6−ジアミン(420mg、1.00ミリモル)及びホウ化水素ナトリウム(190mg、5.00ミリモル)溶液が室温で3時間窒素雰囲気下で攪拌された。溶媒は減圧下で除去され、残渣はクロロホルム中に溶解され、水で洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥された。溶媒が除去され、残渣は真空乾燥され、黄色のオイル状液体(386/mg、92%)を得た。H NMR(CDCl)δ/ppm 1.32(4H,m,(CH),1.45(2H,m,BnNCCH),1.55(2H,m,PyCNCCH),2.55(2H,t,BnNCH),2.75(2H,t,PyCNCH),3.75(2H,s,PhCH),4.50(2H,s,PyCH),7.15−7.25(5H,m,Ph−H),7.95−8.10,8.15−8.22,8.37(4H,4H,1H respectively,m,m,d,Py−H).13C NMR(CDCl)δ/ppm 27.35,30.16,49.46,50.02,51.94,54.13,54.13,123.19,124.72,125.00,125.09,125.89,126.89,127.03,127.50,127.64,128.14,128.40,129.06,131.34,134.15;m/z(EI)420([M]),7%)。
【0101】
N−ベンジル−N,N’−ビス−(2−ボロノベンジル)−N’−ピレン−1イル(yl)メチル−ヘキサン−1,6−ジアミンの調製(図1、化合物1又は式(5))
無水アセトニトリル(10mL)中のN−ピレン−1−イル(yl)メチル−ヘキサン−1,6−ジアミン(291mg、0.69ミリモル)、2−(2−ブロモメチル−フェニル)−[1,3,2]ジオキサボリナン(422mg、1.66ミリモル)及び炭酸カリウム(380mg、2.76ミリモル)の溶液が還流凝縮器で20時間窒素雰囲気下で加熱された。溶媒は減圧下で除去され、残渣はクロロホルム中に溶解され、水で洗浄された。溶媒は硫酸マグネシウム上で乾燥され、減圧下で除去された。残渣はTHF(10mL)中に溶解された。水(10mL)が前記THF溶液に添加され、該溶液は室温で3時間攪拌された。有機相がクロロホルムで抽出され、水で洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥された。溶媒は減圧下で除去された。残渣はn−ヘキサンでクロロホルムから再沈殿され、白黄色の粉末(172mg、35%)を得た。H NMR(CDCl)δ/ppm 1.25−1.48(8H,m,(CH),2.25(2H,t,BnNCH),2.48(2H,t,PyCNCH),3.45(2H,s,PhB(OH)CHNBn),3.58(2H,s,PhB(OH)CHNCPy),3.85(2H,s,PhCH),4.21(2H,s,PyCH),7.02−7.41 and 7.88−8.19(22H,m,Ar−H),8.86(4H,bs,BOH).13C NMR(CDCl)δ/ppm 51.69,52.99,54.42,56.42,57.11,61.03,61.86,67.85,122.90,124.55,124.99,125.79,127.31,128.28,128.57,129.43,130.00,130.55,136.32,141.56;Found:C,76.56;H,6.69;N,3.80,C4446 requires C,76.76;H,6.73;N,4.07%;m/z(FAB)1230([M+H+4(3−HOCHNO)−4(HO)]+,100%);mp.165−168°C。
【実施例2】
【0102】
実施例Iで調製された式(5)のセンサーの相対蛍光強度が、さまざまなD−グルコース濃度を有する52.1wt%メタノール及びリン酸バッファー(pH8.21)中で計測された(図3)。リン酸バッファーはD.D.Perrin及びB.Dempsey、「Buffers for pH and Metal Ion Control(pH及び金属イオン制御用バッファー)」、Chapman and Hall、ロンドン、1974年、に説明されるとおり調製された。蛍光スペクトルは前記溶液のD−グルコース量を増加させながら記録された。混合溶液は342nmでの励起を計測された。蛍光強度は前記溶液中の全D−グルコース濃度に対応することがわかった。
【実施例3】
【0103】
グルコース結合センサーを有するビーズ玉の調製(将来的な実施例)
グルコース結合センサーのビーズ玉への調製は図1に詳細に示される。ビーズ玉は、インディアナ州FishersのBangs Laboratories,Inc.社から入手可能な5.6マイクロメートル径ポリ(スチレン/5.5% ジビニルベンゼン/5%メタクリル酸)である。図1に示される化合物2は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(5ml)中のクロスリンクしたカルボン酸修飾ポリマービーズ(200mg)と、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)(170mg)と、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(HOBt)(200mg)と、4−N、N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(8mg)との懸濁液を氷浴上で窒素雰囲気下30分間攪拌することによって調製される。次に、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(1.0g)が前記溶液に添加され、室温で1日攪拌される。この反応混合液がテトラヒドロフラン(THF)中に注ぎ込まれ、室温で1時間攪拌される。前記混合液が延伸されてビーズ玉を沈殿させ、上清はデカントされ、前記ビーズ玉はメタノール中に再懸濁される。前記ビーズ玉は再度遠心して洗浄され、上清をデカントし、前記ビーズ玉をメタノール中に再懸濁する。
【0104】
化合物3は、まず、THF及びメタノール(各7mL)中の化合物2(200mg)及びベンズアルデヒド(50mg)のの懸濁液を室温で5時間攪拌させることによって調製される。ホウ化水素ナトリウム(57mg)が前記反応に添加され、室温で1時間攪拌される。溶媒が減圧下で除去され、残渣はクロロホルム中に懸濁される。前記懸濁液は水で洗浄され、硫酸マグネシウム上で乾燥され、溶媒は減圧下で除去される。残渣は、遠心しデカントし、再懸濁することによってメタノール中で2回洗浄される。
【0105】
化合物1は、THF(5mL)及びアセトニトリル(3mL)中の化合物3(95mg)と、炭酸カリウム(116mg)と、2−(2−ブロモベンジル)−1,3−ジオキサ−2−ボリナン(93mg)との懸濁液を還流凝縮器で7時間加熱することによって調製される。前記混合液は室温まで冷却され、上清が減圧下で除去される。残渣がクロロホルム中に懸濁され、水で洗浄される。前記混合液は硫酸マグネシウム上で乾燥され、溶媒は減圧下で除去される。残渣はフロロホルム及びn−ヘキサン中で再懸濁され、遠心及びデカントによって洗浄される。洗浄済みのビーズ玉はpH7.2に調整された50mMトリスバッファー中に再懸濁される。
【0106】
グルコース検知ビーズを用いる競合アッセイ(将来的実施例)
反応混合液は、180μLの50mMトリスバッファー、pH7.2及び0.01%Tween20中に約5000個のビーズ玉と、130ナノグラムのグルコース類似体フルオレセイン ジ(β−D−グルコピラノシド)(シグマ−アルドリッチ、ミズーリ州、セントルイス)と、グルコースを含むことが疑われるサンプル20μLとを組み合わせることにより形成される。センサーで覆われたビーズ玉は被検体又はその類似体と結合する。任意的に、グルコースの添加がアッセイ信号範囲をシフトするために用いられる場合がある。これは有用だが、必要ではない。反応混合液は、FSにトリガーを設定し、前記ビーズ玉にゲートを設定し、FL1検出チャンネルを使用するベックマン・コールターのEPICSXLフロー・サイトメトリー装置を用いて読み取られる。
【0107】
同じ目的のため、アッセイのばらつきは、フルオレセインで標識された[2−[2−[2−メルカプト−(1,2−プロパンジオール)−3−[(1,3−ジヒドロ−3−3−ジメチル−1−プロピル−2H−インドール−2−イリジン(ylidine))エチリジン]−1−シクロヘキセン−1−イル(yl)]エテニル]3,3−ジメチル−1−プロピルインドーリウム]イオジンを用いて実行することもできる。このプロパンジオール環ロック型(propane diol ring−locked)シアニン色素の構造は以下に示される。
【0108】
【化12】

【0109】
本発明は一部の好ましい実施態様を参酌してかなり詳細に説明されたが、他の実施態様も想定できる。したがって、添付する請求の範囲の精神及び範囲は本明細書に説明された好ましい実施態様の記載に限定されるべきではない。
【0110】
請求の範囲、要約及び図面を含む、本明細書に開示された全ての特徴と、開示されたいずれかの方法又は製法の全てのステップとは、係る特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、いかなる組み合わせで組み合わされてもかまわない。請求の範囲、要約及び図面を含む本明細書に開示されたそれぞれの特徴は、特記されない限り、同一、均等又は類似の目的に役立つ代替的な特徴によって置換できる。したがって、特記されない限り、開示されるそれぞれの特徴は、均等又は類似の特徴の一連の上位概念のうちのほんの1つの例にすぎない。
【0111】
特定の機能を実行するための「手段」又は特定の機能を実行するための「ステップ」と明示的に表記しない請求項のいかなる構成要素も、米国特許法第112条に規定する「手段」又は「ステップ」として解釈されるべきではない。
【0112】
本発明の上記及びその他の特徴と、該特徴を得るやり方は、添付する図面とともに以下の説明を参酌することによって最も良く理解されるであろう。これらの図面は本発明の典型的な実施態様のみしか示さず、それゆえに、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】ビーズ玉状の固体基質上での本発明の蛍光センサーの合成を表す概念図。
【図2】本発明の複数の被検体用ビーズ利用検出システム用の代表的なビーズ玉の概念図で、ビーズ玉1は、ビーズ玉−受容体−被検体−受容体の複合体を示し、ビーズ玉2は、ビーズ玉−受容体−被検体の複合体を示す。
【図3】本発明の代表的なフロー・サイトメトリー・システムの概念図。
【図4】図2に代表されるビーズ検出システムを用い、本発明を取り込んで実施される方法のフロー・チャート。
【符号の説明】
【0114】
12、21 ビーズ玉
13 被検体受容体
14A、14B 蛍光標識
15 被検体
16 色素
18 2重の受容体−被検体サンドイッチ
20A、20B、20C 励起光源
23 光エネルギー
24 発光
25 検出器
26 検出器からの電気信号
27 マイクロプロセッサ
28 記憶保存装置
29 ユーザ出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類を検出するための分析システムであって、
(a)糖類を含むことが知られているか、糖類を含むことが疑われるサンプルと、
(b)以下の化学式を有する1種類または2種類以上の糖類センサーが付着した、1種類または2種類以上の固体基質と、
【化1】

(c)前記センサーに結合する糖類か、前記センサーに結合しない糖類かのうち少なくとも1つを検出するための手段とを含み、
上記化学式において、
Zは、水素、アルキル基及びアリル基からなるグループから選択され、
d1及びBd2は独立に選択される結合官能基で、
Nは窒素原子で、
Spは脂肪族スペーサで、
Anは前記センサーを前記固体基質に付着させるためのアンカー官能基で、
Sは固体基質で、
n=1又は2、m=1又は2、y=1又は2、xは整数である、糖類を検出するための分析システム。
【請求項2】
d1はR−B(OH)で、Bd2はR−B(OH)で、Bd1及びBd2は、安定な1:1複合体を形成するために糖類分子と結合することができ、R及びRは、互いに独立に選択される脂肪族又は芳香族の官能基で、Bはホウ素原子である、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
及びRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びフェノキシ基からなるグループから選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
Spは直鎖アルカンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記直鎖アルカンは、1ないし9個の炭素原子を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記直鎖アルカンは6個の炭素原子を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記固体基質に付着する前記糖類センサーは以下の一般式で表される構造を有し、
【化2】

上記化学式において、
Anは前記センサーを前記固体基質に付着させるためのアンカー官能基で、
Sは前記固体基質である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記固体基質に付着する前記センサーは以下の一般式で表される構造を有し、
【化3】

上記化学式において、
p及びqは整数で、p/qの比は1以上である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
d1、Bd2、Sp、m及びqはグルコースに対する前記糖類の選択的結合を可能にするように選ばれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記糖類センサーとの結合についてグルコースと競合する標識グルコース類似体を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記固体基質は同定標識を有する1種類または2種類以上のビーズ玉である、請求項1ないし10のいずれかに記載のシステムであって、
前記同定標識は、
(a)第1励起波長の光によって励起でき、励起されるとき、ピーク波長の光を発することができる、蛍光被検体検出色素と、
(b)2種類または3種類以上の蛍光標識とを含み、
前記蛍光標識は、第1の組み合わせの量比を有し、同一の第2励起波長の光によって励起でき、互いに弁別可能な第1および第2のピーク波長の光を発することができ、前記被検体検出色素の発光のピーク波長は、前記蛍光標識の発光の第1および第2の最大波長とは少なくとも100nm異なり、第1および第2のピーク波長は少なくとも100nm異なり、前記励起波長のうちの1つは約750nmより長い、請求項1ないし10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記サンプル中の粒子及び糖類を検出するための手段は、
(a)前記蛍光色素を励起するための手段と、
(b)第1および第2の蛍光標識を励起するための手段と、
(c)前記発光を検出するための手段と、
(d)前記検出された発光を分析中の特定のビーズ玉と関連づけるための手段とを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記被検体検出色素は、前記ビーズ玉の外側に複合体化され、前記蛍光標識は前記ビーズ玉の内側に埋め込まれる、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記蛍光標識は両方とも750nmより長い波長の光を発する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
第1励起波長の光は前記蛍光標識からの発光を起こさず、第2励起波長の光は前記被検体検出色素からの発光を実質的に起こさない、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
以下の化学式を有する糖類センサーが付着する糖類検知ビーズ玉であって、
【化4】

上記化学式において、
Sは前記ビーズ玉で、
Zは、水素、アルキル基、アリル基及び蛍光発色団からなるグループから選択され、
Nは窒素原子で、
d1及びBd2は独立に選択される結合官能基で、該結合官能基は糖類分子と結合することができ、
Spは脂肪族スペーサで、
Anは前記センサーを前記ビーズ玉に付着させるためのアンカー官能基で、
n=1又は2、m=1又は2、y=1又は2、pは整数である、糖類検知ビーズ玉。
【請求項17】
前記糖類検知ビーズ玉は以下の化学式を有し、
【化5】

上記化学式において、
Anは前記グルコース結合センサーを前記粒子に付着させるアンカー官能基で、
Zは、水素、アルキル基及びアリル基からなるグループから選択される、請求項16に記載の糖類検知ビーズ玉。
【請求項18】
(a)糖類を含むことが知られているか、前記糖類を含むことが疑われるサンプルを用意すること、
(b)請求項1に記載の分析システムを用意すること、及び
(c)前記サンプル中の糖類を検出することを含む、糖類の検出方法。
【請求項19】
検出される前記サンプル中の糖類はグルコースである、請求項18に記載の糖類の検出方法。
【請求項20】
前記分析システムは、前記糖類センサーとの結合についてグルコースと競合する標識グルコース類似体を含み、グルコースは競合アッセイによって検出される、請求項19に記載の被検体の検出方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類を検出するための分析システムであって、
(a)糖類を含むことが知られているか、糖類を含むことが疑われるサンプルと、
(b)以下の化学式を有する1種類または2種類以上の糖類センサーが付着した、1種類または2種類以上の固体基質と、
【化1】

(c)前記センサーに結合する糖類か、前記センサーに結合しない糖類かのうち少なくとも1つを検出するための手段とを含み、
上記化学式において、
Zは、水素、アルキル基及びアリル基からなるグループから選択され、
d1及びBd2は独立に選択される結合官能基で、
Nは窒素原子で、
Spは脂肪族スペーサで、
Anは前記センサーを前記固体基質に付着させるためのアンカー官能基で、
Sは固体基質で、
n=1又は2、m=1又は2、y=1又は2、xは整数である、糖類を検出するための分析システム。
【請求項2】
d1はR−B(OH)で、Bd2はR−B(OH)で、Bd1及びBd2は、安定な1:1複合体を形成するために糖類分子と結合することができ、R及びRは、互いに独立に選択される脂肪族又は芳香族の官能基で、Bはホウ素原子である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
及びRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びフェノキシ基からなるグループから選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
Spは直鎖アルカンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記直鎖アルカンは、1ないし9個の炭素原子を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記直鎖アルカンは6個の炭素原子を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記固体基質に付着する前記糖類センサーは以下の一般式で表される構造を有し、
【化2】

上記化学式において、
Anは前記センサーを前記固体基質に付着させるためのアンカー官能基で、
Sは前記固体基質である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記固体基質に付着する前記センサーは以下の一般式で表される構造を有し、
【化3】

上記化学式において、
p及びqは整数で、p/qの比は1以上である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
d1、Bd2、Sp、m及びqはグルコースに対する前記糖類の選択的結合を可能にするように選ばれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記糖類センサーとの結合についてグルコースと競合する標識グルコース類似体を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記固体基質は同定標識を有する1種類または2種類以上のビーズ玉である、請求項1ないし10のいずれかに記載のシステムであって、
前記同定標識は、
(a)第1励起波長の光によって励起でき、励起されるとき、ピーク波長の光を発することができる、蛍光被検体検出色素と、
(b)2種類または3種類以上の蛍光標識とを含み、
前記蛍光標識は、第1の組み合わせの量比を有し、同一の第2励起波長の光によって励起でき、互いに弁別可能な第1および第2のピーク波長の光を発することができ、前記被検体検出色素の発光のピーク波長は、前記蛍光標識の発光の第1および第2の最大波長とは少なくとも100nm異なり、第1および第2のピーク波長は少なくとも100nm異なり、前記励起波長のうちの1つは約750nmより長い、請求項1ないし10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記サンプル中の粒子及び糖類を検出するための手段は、
(a)前記蛍光色素を励起するための手段と、
(b)第1および第2の蛍光標識を励起するための手段と、
(c)前記発光を検出するための手段と、
(d)前記検出された発光を分析中の特定のビーズ玉と関連づけるための手段とを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記被検体検出色素は、前記ビーズ玉の外側に複合体化され、前記蛍光標識は前記ビーズ玉の内側に埋め込まれる、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記蛍光標識は両方とも750nmより長い波長の光を発する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
第1励起波長の光は前記蛍光標識からの発光を起こさず、第2励起波長の光は前記被検体検出色素からの発光を実質的に起こさない、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
以下の化学式を有する糖類センサーが付着する糖類検知ビーズ玉であって、
【化4】

上記化学式において、
Sは前記ビーズ玉で、
Zは、水素、アルキル基及びアリル基からなるグループから選択され、
Nは窒素原子で、
d1及びBd2は独立に選択される結合官能基で、該結合官能基は糖類分子と結合することができ、
Spは脂肪族スペーサで、
Anは前記センサーを前記ビーズ玉に付着させるためのアンカー官能基で、
n=1又は2、m=1又は2、y=1又は2、pは整数である、糖類検知ビーズ玉。
【請求項17】
前記糖類検知ビーズ玉は以下の化学式を有し、
【化5】

上記化学式において、
Anは前記グルコース結合センサーを前記粒子に付着させるアンカー官能基で、
Zは、水素、アルキル基及びアリル基からなるグループから選択される、請求項16に記載の糖類検知ビーズ玉。
【請求項18】
(a)糖類を含むことが知られているか、前記糖類を含むことが疑われるサンプルを用意すること、
(b)請求項1に記載の分析システムを用意すること、及び
(c)前記サンプル中の糖類を検出することを含む、糖類の検出方法。
【請求項19】
検出される前記サンプル中の糖類はグルコースである、請求項18に記載の糖類の検出方法。
【請求項20】
前記分析システムは、前記糖類センサーとの結合についてグルコースと競合する標識グルコース類似体を含み、グルコースは競合アッセイによって検出される、請求項19に記載の糖類の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−525517(P2006−525517A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513440(P2006−513440)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/013245
【国際公開番号】WO2004/099778
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(591028256)ベックマン コールター インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】BECKMAN COULTER,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】4300N.Harbor Boulevard Fullerton,California 92834−3100 U.S.A.
【Fターム(参考)】