説明

糸巻取機

【課題】給糸ボビンの芯管長さを検出することで、当該給糸ボビンに巻き付けられている糸量を正確に取得することができる糸巻取機を提供する。
【解決手段】自動ワインダは、給糸ボビン保持部と、巻取部17と、芯管検出センサ81と、を備える。給糸ボビン保持部は、芯管95に糸を巻き付けた給糸ボビン21がセットされる。巻取部17は、給糸ボビン21から引き出された糸をパッケージ30に巻き取る。芯管検出センサ81は、給糸ボビン保持部にセットされた給糸ボビン21の芯管長さを検出する。また、自動ワインダは、ステッピングモータ79と、算出部87と、を備える。ステッピングモータ79は、芯管95の長手方向に芯管検出センサ81を移動させることができるとともに、その移動量を制御できるように構成されている。算出部87は、ステッピングモータ79によって移動した芯管検出センサ81の移動量に基づいて芯管長さを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取機に供給される給糸ボビンの芯管長さを検出する構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、巻取部がパッケージに巻き取った巻取糸量を巻取開始時の給糸ボビンの巻付糸量から減算することで、給糸ボビンの残糸量を算出し、この残糸量に応じて各部を制御する糸巻取機の構成が知られている。この種の糸巻取機を開示するものとして特許文献1及び特許文献2がある。特許文献1には、給糸ボビンの残糸量に基づいて解舒補助装置の制御を行う構成が開示されている。特許文献2には、給糸ボビンの残糸量に基づいてテンション付与装置の制御を行う構成が開示されている。
【0003】
また、給糸ボビンの残糸量を検出するためのセンサを備え、このセンサの検出信号に基づいて残糸量を算出する構成を開示するものとして特許文献3がある。特許文献3には、給糸ボビンの糸量が所定以下になると、信号を発生する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−78016号公報
【特許文献2】特開2003−2540号公報
【特許文献3】特開平1−231769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2の構成は、給糸ボビンの残糸量を算出するために、巻取開始時の糸量を予め糸巻取機に入力する必要があった。しかし、給糸ボビンの巻付糸量は、糸を巻き付ける芯管の長さによって異なる。このため、巻取作業を行う給糸ボビンの種類(芯管の長さ)が変わった場合、巻付糸量(芯管長さ)の設定値を変更しなければならなかった。また、芯管長さが様々に異なる給糸ボビンが供給される場合や、オペレータが巻付糸量の入力値を間違えた場合等は、糸巻取機に設定されている巻付糸量と、給糸ボビンに巻き付けられている現実の糸量と、の間に大きな差が生じてしまう場合がある。この状態で算出された残糸量に基づいて各部の制御が行われた場合、パッケージの品質に悪影響が出るおそれがあった。この点、特許文献3の構成は、現実の残糸量をセンサによって検出しているものの、巻取作業開始時の残糸量(巻付糸量)を算出することはできず、現実に即したキメ細かい制御を継続して行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、給糸ボビンの芯管長さを検出することで、当該給糸ボビンに巻き付けられている糸量を正確に取得することができる糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下のように構成される糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、ボビンセット部と、巻取部と、芯管検出部と、を備える。前記ボビンセット部には、芯管に糸を巻き付けた給糸ボビンがセットされる。前記巻取部は、前記給糸ボビンから引き出された糸をパッケージに巻き取る。前記芯管検出部は、前記ボビンセット部にセットされた前記給糸ボビンの芯管長さを検出する。
【0009】
これにより、芯管検出部によって給糸ボビンの芯管長さを検出できるので、芯管長さの設定値を糸巻取機に入力する手間を省略でき、オペレータの負担を軽減できる。また、芯管長さを実際に測定して得られた値を制御に用いるので、従来の手入力と比較して、入力ミスによって不適切な制御が行われることもない。
【0010】
前記の糸巻取機においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取機は、記憶部と、更新部と、を備える。前記記憶部は、前記芯管検出部によって検出した前記芯管長さを記憶する。前記更新部は、前記ボビンセット部に給糸ボビンがセットされると、前記記憶部に記憶されている芯管長さを、新しく検出した芯管長さに更新する。
【0011】
これにより、糸巻取機にセットされた給糸ボビンについて芯管長さを一度検出して記憶部に記憶すれば、その後は当該記憶内容を参照することで簡単に芯管長さを取得し、各種の計算のために用いることができる。また、糸巻取機にセットされる芯管の長さが一定でない場合でも、芯管がセットされるごとに記憶部の内容が更新部によって更新されるので、芯管の長さの変化に柔軟に対応しながら適切に糸を巻き取ることができる。
【0012】
前記の糸巻取機においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取機は、駆動部と、算出部と、を備える。前記駆動部は、前記芯管の長手方向に前記芯管検出部を移動させることができるとともに、その移動量を制御可能に構成されている。前記算出部は、前記芯管検出部の移動量に基づいて芯管長さを算出する。
【0013】
これにより、駆動部によって移動した前記芯管検出部の移動量に基づいて芯管長さを容易かつ正確に算出することができる。
【0014】
前記の糸巻取機においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取機は、給糸ボビンから糸を引き出すときに発生するバルーンを制御するための解舒補助装置を備える。前記解舒補助装置は、前記バルーンに接触する接触部材と、前記給糸ボビンのチェース部を検出するチェース部検出部と、を有する。前記駆動部は、前記芯管の長手方向に前記接触部材を移動させることで、当該接触部材と一体的に前記芯管検出部を移動させる。
【0015】
これにより、バルーンの制御を行う解舒補助装置の構成を利用しているので、芯管長さを正確に検出するための機能を少ない部品点数で実現できる。また、芯管長さに対するチェース部の位置に基づいて、給糸ボビンの残糸量を容易に算出することができる。従って、半玉の状態の給糸ボビンがボビンセット部にセットされた場合でも、当該給糸ボビンの残糸量を適切に算出することができる。
【0016】
前記の糸巻取機においては、前記駆動部としてのモータが有するモータ軸の回転を前記芯管検出部の直線移動に変換する駆動力変換機構を備えることが好ましい。
【0017】
これにより、回転角度を電気的に制御できるモータを用いて芯管検出部を直線的に移動させることができるので、芯管長さを精密に測定することができる。
【0018】
前記の糸巻取機においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記パッケージに巻き取られる糸にテンションを付与するテンション付与装置を備える。前記テンション付与装置は、前記芯管検出部が検出した前記芯管長さに応じてテンション制御を行う。
【0019】
これにより、ボビンセット部にセットされた給糸ボビンの芯管長さを実際に測定して制御に用いることで、現実の状況をより反映したテンション制御を行うことができる。
【0020】
前記の糸巻取機においては、前記芯管検出部の検出信号に基づいて、前記ボビンセット部のセット位置から前記給糸ボビンが外れているか否かを判定する判定部を備えることが好ましい。
【0021】
これにより、給糸ボビンが適切な位置にセットされているか否かを判定するための機能を、芯管検出部を利用した簡素な構成で実現することができる。
【0022】
前記の糸巻取機においては、前記判定部が前記ボビンセット部のセット位置から前記給糸ボビンが外れていると判定した場合は、前記巻取部の巻取作業を中止することが好ましい。
【0023】
これにより、セット位置から給糸ボビンが外れた状態で巻取作業が行われることを防止できる。
【0024】
前記の糸巻取機においては、前記ボビンセット部のセット位置から前記給糸ボビンが外れていることを報知するための報知部を備えることが好ましい。
【0025】
これにより、給糸ボビンがセット位置から外れていることをオペレータが迅速に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニットの側面図。
【図2】ワインダユニットの概略的な構成を示した正面図。
【図3】解舒補助装置及び芯管検出センサの構成を示した拡大斜視図。
【図4】給糸ボビンが給糸ボビン保持部にセットされたときの給糸ボビンと可動部材との位置関係を模式的に示した側面断面図。
【図5】芯管検出センサによって芯管の長さを検出する様子を模式的に示した側面断面図。
【図6】チェース部検出センサによって給糸ボビンのチェース部を検出する様子を模式的に示した側面断面図。
【図7】芯管検出センサによって給糸ボビンがセット位置から外れていることを検出する様子を模式的に示した側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット10の側面図である。図2はワインダユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
【0028】
図1及び図2に示すワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダ(糸巻取機)は、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された機台制御装置90と、を備えている。機台制御装置90は、各ワインダユニット10の巻取作業の状況を表示可能な表示画面(報知部)91を備えている。
【0029】
それぞれのワインダユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。また、ワインダユニット10は、巻取ユニット本体16の各部を制御するユニット制御部50を備えている。
【0030】
前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を装着可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための綾振ドラム24と、から構成される巻取部17を備えている。また、前記巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と綾振ドラム24との間の糸走行経路中に各種の装置を備えている。具体的に説明すると、前記糸走行経路には、給糸ボビン21側から綾振ドラム24側へ向かって順に、解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置(糸継部)14と、クリアラ(糸品質測定器)15が備えるクリアラヘッド49と、が配置されている。
【0031】
また、巻取ユニット本体16の正面側には、図1に示すように、オペレータが給糸ボビン21を供給するためのマガジン式供給装置60が配置されている。マガジン式供給装置60は、ワインダユニット10の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているボビン収納装置62と、を備えている。
【0032】
このボビン収納装置62はマガジンカン63を備え、このマガジンカン63には複数の収納孔が円状に並べて形成されている。この収納孔のそれぞれには、供給ボビン70を傾斜姿勢でセットすることができる。前記マガジンカン63は、図略のモータによって間欠的な回転送り駆動が可能であるように構成されている。そして、このマガジンカン63の間欠駆動と、マガジンカン63が備える図略の制御弁の開閉動作とによって、マガジン保持部61が有する図略のボビン供給路に供給ボビン70を1つずつ落下させることができる。前記ボビン供給路に供給された供給ボビン70は、傾斜姿勢のまま給糸ボビン保持部(ボビンセット部)71へ導かれる。
【0033】
給糸ボビン保持部71は図略の回動手段を備えており、供給ボビン70を前記ボビン供給路から受け取った後、当該供給ボビン70を斜め姿勢から直立姿勢に引き起こすように回動する。これによって、供給ボビン70を巻取ユニット本体16の下部にあるセット位置(図1及び図2に示す位置)に給糸ボビン21として適切に供給して、ワインダユニット10による巻取作業を行うことができる。
【0034】
なお、本実施形態の自動ワインダは、複数の給糸ボビン21の糸を糸継ぎしながらパッケージ30を形成するように構成されているが、使用される給糸ボビン21の形状は必ずしも厳密に一定であるとは限らない。即ち、給糸ボビン21の芯管の寸法は、所定の条件(例えば、芯管の長さが所定の範囲内であること)を満たすように設定されているものの、製造メーカ等によって多少異なることがある。この点、本実施形態では、詳細は後述するが、芯管の長さが種々異なる給糸ボビン21がマガジンカン63にセットされて使用された場合でも、適切に制御して糸を巻き取ることができるように構成されている。
【0035】
解舒補助装置12は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し可動部材76を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸20の解舒を補助するためのものである。この解舒補助装置12には、給糸ボビン21の芯管95の長さを検出するための芯管検出センサ81が取り付けられている。
【0036】
ユニット制御部50は、芯管検出センサ81の検出信号に基づいて、給糸ボビン保持部71にセットされた給糸ボビン21の芯管長さを算出し、算出した芯管長さに基づいて給糸ボビン21の巻付糸量を設定できるように構成されている。なお、解舒補助装置12及び芯管検出センサ81の構成及びユニット制御部50の処理の詳細は後述する。
【0037】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。本実施形態のテンション付与装置13は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式に構成されている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動可能に構成されている。
【0038】
テンション付与装置13は、テンション付与装置制御部82に電気的に接続されている。このテンション付与装置制御部82が発生する電気的な制御信号によって、テンション付与装置13が糸20に付与するテンションの強さが制御(テンション制御)されている。
【0039】
テンション付与装置制御部82は、給糸ボビン21の残糸量に応じてテンション制御を行うように構成されている。より具体的には、テンション付与装置制御部82は、満巻き状態の給糸ボビン21の解舒作業初期(残糸量が多いとき)では、糸20に付与する力を強めるようにテンション付与装置13を制御する。一方、給糸ボビン21の解舒作業末期(残糸量が残り少ないとき)では、糸20に付与するテンションを弱めるようにテンション付与装置13を制御する。これにより、給糸ボビン21の糸が残り少なくなったときに生じるテンションの増加を抑制し、糸20のテンションを安定させることができる。
【0040】
糸継装置14は、クリアラ15が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。このような糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いるものや、機械式のものを使用することができる。
【0041】
クリアラ15は、糸20の太さを検出するためのセンサが配置されたクリアラヘッド49と、このセンサが出力する糸太さ信号を処理するアナライザ52と、を備えている。クリアラ15は、前記センサからの糸太さ信号を監視することにより、スラブ等の糸欠陥(糸欠点)を検出するように構成されている。クリアラヘッド49の近傍には、クリアラ15が糸欠陥を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が配置されている。
【0042】
糸継装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ(糸端捕捉部)26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0043】
この構成で、糸切れ時又は糸切断時においては、下糸案内パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することで糸継装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、上糸案内パイプ26が図1及び図2の位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆転されるパッケージ30から解舒される上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、糸継装置14に上糸を案内するようになっている。そして、下糸と上糸の糸継ぎが糸継装置14によって行われる。
【0044】
図2に示すように、給糸ボビン21から解舒された糸は、糸継装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される綾振ドラム24が回転駆動することにより従動回転する。綾振ドラム24の外周面には綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸20を所定の幅でトラバースすることが可能になっている。図2に示すように、この綾振ドラム24はドラム駆動モータ(ドラム回転駆動部)53のモータ軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの信号に基づいて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0045】
前記綾振ドラム24には回転センサ42が取り付けられており、この回転センサ42は、クリアラ15が備える前記アナライザ52に電気的に接続されている。この回転センサ42は例えばロータリエンコーダとして構成され、綾振ドラム24が所定角度回転するごとに回転パルス信号をアナライザ52に送信するように構成されている。アナライザ52は、単位時間あたりに入力された回転パルス信号の数に基づいて糸の巻取速度を取得し、これを糸欠陥の判定に用いている。また、ユニット制御部50は、アナライザ52を介して取得した回転パルス信号によって巻取糸量を算出する。この巻取糸量は、給糸ボビン21の残糸量の算出にも用いられる。
【0046】
以上の構成で、前記マガジン式供給装置60からボビンが給糸ボビン保持部71に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から解舒された糸20を前記巻取ボビン22に巻き取ることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0047】
次に、図3から図6までを参照して、解舒補助装置12及び芯管検出センサ81の構成について説明する。図3は、解舒補助装置12及び芯管検出センサ81の構成を示した拡大斜視図である。図4は、給糸ボビン21が給糸ボビン保持部71にセットされたときの給糸ボビン21と可動部材76との位置関係を模式的に示した側面断面図である。図5は、芯管検出センサ81によって芯管95の長さを検出する様子を模式的に示した側面断面図である。図6は、チェース部検出センサ80によって給糸ボビン21のチェース部を検出する様子を模式的に示した側面断面図である。
【0048】
図1及び図2に示すように、本実施形態の解舒補助装置12は、固定部材75と、駆動力変換機構85と、可動部材76と、ステッピングモータ(駆動部)79と、チェース部検出センサ80と、を主要な構成として備える。また、この解舒補助装置12には、前述したように芯管検出センサ81が備えられている。
【0049】
固定部材75は、ユニットフレーム11に固定されている。この固定部材75の下部には、バルーンを制御するための絞り部(図略)が形成されている。給糸ボビン21から引き出された糸は、この絞り部を通ってテンション付与装置13に導かれる。
【0050】
駆動力変換機構85は、ステッピングモータ79の回転方向の力を直線方向の力に変換するためのものであり、昇降部78と、ネジ軸77と、を備えている。ネジ軸77は上下方向(即ち、セットされた給糸ボビン21の長手方向と平行な方向)に向けて配置され、回転可能に支持されている。また、昇降部78は、正面視において、略U字を上下逆にしたような形状となっている。この昇降部78は、筒状に形成された可動部材(接触部材)76を保持することができる。
【0051】
この昇降部78は、取付部材74に支持されている。取付部材74にはネジ孔が切られており、このネジ孔にネジ軸77が螺合されることで、昇降部78がネジ軸77に取り付けられている。ネジ軸77の一側の端部には、ステッピングモータ79のモータ軸が連結されている。また、前記昇降部78は、ネジ軸77と一体的に回転しないように、回転方向への移動が適宜の手段によって規制されている。
【0052】
この構成で、ステッピングモータ79が駆動してネジ軸77が回転すると、昇降部78は、ネジ軸77の軸線方向に沿って上方向又は下方向に移動する。新しい給糸ボビン21をセットするとき又は糸継作業を行うときはステッピングモータ79が適宜制御され、可動部材76(昇降部78)を、給糸ボビン21の上方の待機位置に待機させる。また、給糸ボビン21のセットが完了した場合、又は糸継作業が終了した場合は、可動部材76が前記待機位置から下降し、給糸ボビン21のチェース部との間で所定の位置関係を実現するようにステッピングモータ79が制御される。
【0053】
ステッピングモータ79は、ステッピングモータ制御部83に電気的に接続されている。このステッピングモータ制御部83は、駆動パルス信号によってステッピングモータ79を制御する。ステッピングモータ制御部83はユニット制御部50に接続されており、ユニット制御部50は、糸継装置14及びクリアラ15等の各部の制御と解舒補助装置12の制御を連動して行うことができる。
【0054】
チェース部検出センサ(チェース部検出部)80は、給糸ボビン21のチェース部を検出するためのものである。本実施形態のチェース部検出センサ80は、投光部80aと受光部80bとを有する透過式のフォトセンサとして構成されている。チェース部検出センサ80が検出した検出信号は、ユニット制御部50に入力される。
【0055】
芯管検出センサ81(芯管検出部)は、給糸ボビン21の芯管95の長さを検出するためのものである。本実施形態の芯管検出センサ81は、前記チェース部検出センサ80と同様に、投光部81aと受光部81bとを有する透過式のフォトセンサとして構成されている。この芯管検出センサ81は、芯管95の中心を検出できるように、側面視において昇降部78の中央に配置されている。また、芯管検出センサ81とチェース部検出センサ80は何れも昇降部78に配置されており、2つのセンサは、昇降部78の昇降に伴って同時に上下に移動するようになっている。芯管検出センサ81が検出した検出信号は、ユニット制御部50に入力される。
【0056】
また、図2に示すように、ユニット制御部50は、芯管検出センサ81の検出部信号に基づいて各種の処理を行う処理部84を備えている。この処理部84は、算出部87と、更新部88と、判定部89と、を有している。また、ユニット制御部50は、芯管検出センサ81の検出信号に基づいて算出された芯管長さを記憶する記憶部86を備えている。
【0057】
算出部87は、ステッピングモータ79の駆動量(ステッピングモータ79によって移動した芯管検出センサ81の移動量)に基づいて芯管長さを算出する処理を行う。より具体的には、ユニット制御部50は、最初にステッピングモータ79を制御し、昇降部78を待機位置まで移動させる。その後、ユニット制御部50は、芯管検出センサ81の状態を監視しつつ、ステッピングモータ79を回転させて昇降部78を所定の速度で下降させる。なお、このときにステッピングモータ79へ送信された駆動パルスの数は、適宜のカウンタによってカウントされている。
【0058】
そして、昇降部78が前記待機位置からある距離だけ下降した時点で芯管検出センサ81が芯管を検出すると、前記算出部87は、ステッピングモータ79の駆動パルスのカウント値(即ち、ネジ軸77の回転角度)と、ネジ軸77のピッチと、に基づいて、芯管検出センサ81の下降距離(移動距離)を算出する。そして、算出部87は、得られた下降距離を所定の距離から減算することで、給糸ボビン21の芯管長さを取得する。
【0059】
なお、ユニット制御部50は、芯管検出センサ81が芯管を検出した後も昇降部78の下降を継続するようにステッピングモータ79を制御している。そして、昇降部78が前記待機位置からある距離だけ下降した時点でチェース部検出センサ80がチェース部を検出すると、算出部87は、上記の芯管検出センサ81の場合とほぼ同じ方法で、チェース部の位置を取得する。
【0060】
算出部87は、上記のようにして芯管長さ及びチェース部の位置が得られると、巻取開始時の給糸ボビン21の巻付糸量(残糸量)を算出する。この残糸量は、芯管長さに対するチェース部の位置に基づき、適宜の関数を使用することで求めることができる。
【0061】
また、算出部87によって芯管長さが求められると、更新部88は、記憶部86に記憶されている芯管長さを、算出された芯管長さで上書き(更新)する処理を行う。これにより、給糸ボビン21が巻取ユニット本体16に供給されるごとに、当該給糸ボビン21の芯管長さを記憶部86に再記憶させることができる。
【0062】
判定部89は、給糸ボビン21がセット位置から外れているか否かを判定する判定処理を行う。この判定部89による判定処理の詳細は後述する。
【0063】
次に、給糸ボビン21が給糸ボビン保持部71にセットされた場合のユニット制御部50の処理について説明する。図4に示すように、給糸ボビン21がマガジン式供給装置60から供給されて給糸ボビン保持部71にセットされた直後の時点では、可動部材76は給糸ボビン21の上方の待機位置に退避している。そして、給糸ボビン21の給糸ボビン保持部71へのセットが完了すると、ステッピングモータ79が駆動し、これによって昇降部78が下方に移動する。
【0064】
そして、ある距離だけ昇降部78が下方に移動した時点で、図5に示すように、芯管検出センサ81の投光部81aから受光部81bへの光が芯管95の上端部によって遮られ、芯管95の上端部が検出される。芯管検出センサ81は、芯管95を検出した旨の検出信号をユニット制御部50に送信する。この検出信号をユニット制御部50が受信すると、算出部87は、当該検出信号に基づいて芯管長さを算出する。そして、算出された芯管長さが、更新部88によって記憶部86に記憶される。
【0065】
その後も昇降部78の下降は継続され、今度は、給糸ボビン21のチェース部がチェース部検出センサ80によって検出される。ユニット制御部50がチェース部検出センサ80の検出信号を受信すると、算出部87はチェース部の位置を算出するとともに、得られたチェース部の位置と、記憶部86に記憶されている芯管長さと、に基づいて、給糸ボビン21に巻き付けられている巻付糸量を算出する。
【0066】
なお、給糸ボビン保持部71に供給される給糸ボビン21の糸量は、常に一定(満量)であるとは限らない。例えば、以下のような事情で、巻取ユニット本体16に半玉の給糸ボビン21が供給されることが考えられる。即ち、巻取ユニット本体16に満玉の給糸ボビン21が供給されて途中まで順調に巻取作業を行っていたものの、途中から糸継ミスが多く頻発するようになった等の理由で、糸が全部解舒される前の段階で給糸ボビン21が巻取ユニット本体16から排出される場合があり得る。この場合、オペレータは、排出された給糸ボビン21(半玉の給糸ボビン)について糸継ミスの原因を取り除く等の処置を行って、その給糸ボビン21を再びマガジンカン63に投入する。すると、当該半玉の給糸ボビン21が巻取ユニット本体16に供給されることになる。しかしながら、本実施形態の構成によれば、このような半玉の給糸ボビンについても、芯管長さとチェース部の位置を実際に測定することで、巻付糸量(残糸量)を適切に計算することができる。
【0067】
上記のようにして巻付糸量が算出された後、パッケージ30側の糸と給糸ボビン21側の糸が糸継装置14によって糸継ぎされ、巻取りが開始される。この巻取作業中において、ユニット制御部50は、チェース部検出センサ80から入力された検出信号に基づいて、解舒補助装置12の昇降部78を移動させる制御を行う。より具体的には、給糸ボビン21からの糸の解舒に伴うチェース部の下降をチェース部検出センサ80によって検出し、それに応じてステッピングモータ79を駆動して可動部材76を下降させる。これにより、給糸ボビン21から糸を解舒するときに発生するバルーンの大きさを適切に制御することができる。
【0068】
ユニット制御部50は、算出部87で算出された給糸ボビン21の巻付糸量と、当該給糸ボビン21からパッケージ30に巻き取られた糸量(巻取糸量)と、に基づいて現在の残糸量を計算し、得られた残糸量に基づいてテンション付与装置13を制御する。これにより、給糸ボビン21の残糸量が少なくなったときのテンションの増加を抑制する制御を正確に行うことができるので、パッケージ30の品質を高めることができる。
【0069】
給糸ボビン21に巻き付けられていた糸の解舒が全て終了すると、空ボビンとなった給糸ボビン21は、給糸ボビン保持部71から適宜の場所に排出される。そして、新しい給糸ボビン21がマガジン式供給装置60から導入される。すると、ユニット制御部50は、上述と同様に芯管長さの測定処理を行い、新しく供給された給糸ボビン21の芯管長さを取得して、巻取作業を開始する。このときに行われるテンション制御には、新しく取得された芯管長さの値が適用される。
【0070】
次に、判定部89による巻取開始時のセットミス判定処理について説明する。本実施形態の自動ワインダには、ワインダユニット10が適切に巻取作業を行うことができる最短芯管長さ(芯管長さの下限値)が予め設定されている。前記セットミス判定処理は、この最短芯管長さに基づいて、給糸ボビン21がセット位置に適切にセットされているか否かを判定するものである。
【0071】
以下、詳細に説明する。ユニット制御部50には、前述した待機位置から前記最短芯管長さに対応する位置まで芯管検出センサ81を移動させるのに必要なステッピングモータ79の駆動量が予め記憶されている。そして、判定部89は、前記駆動量だけステッピングモータ79を駆動しても(即ち、最短芯管長さに対応する検出位置に芯管検出センサ81が到達しても)、当該芯管検出センサ81が芯管95を検出していない場合に、セットミスが生じていると判定する。
【0072】
これによって、最短芯管長さよりも短い芯管長さの給糸ボビン21がセットされた場合に、異常として検出することができる。また、マガジン式供給装置60の給糸ボビン21のシュートミスによって、正確な位置に給糸ボビン21がセットされていない場合も、このセットミス判定処理によって検出することができる。
【0073】
判定部89によってセットミスが生じていると判定されると、ユニット制御部50は、機台制御装置90が備える表示画面91にその旨を表示するとともに、巻取部17による巻取作業を停止させる。
【0074】
ところで、給糸ボビン21が給糸ボビン保持部71に当初は正常にセットされていたが、巻取作業中に給糸ボビン21が給糸ボビン保持部71のセット位置から外れてしまうような場合も考えられる。例えば、巻取作業中に糸が給糸ボビン21から上方に引っ張られて解舒されることに伴い、給糸ボビン21自体が上方に引っ張られ、給糸ボビン21が給糸ボビン保持部71から抜けて浮き上がってしまうような場合である。
【0075】
上記のように給糸ボビン21が外れた状態のままで巻取作業が続行された場合、大量の糸が無駄になるおそれがある。そこで本実施形態では、このような事態を防止するため、判定部89が、給糸ボビン保持部71の適切な位置に給糸ボビン21がセットされているか否かをチェックする機能を有するように構成されている。
【0076】
次に、図7を参照して、判定部89による巻取作業時のチェック処理について説明する。図7は、芯管検出センサ81によって給糸ボビン21がセット位置から外れていることを検出する様子を模式的に示した側面断面図である。
【0077】
判定部89によるセット位置チェック処理は、糸継作業時に行われる可動部材76の移動を利用して行う。即ち、給糸ボビン21からの解舒時に糸が切れたとき、クリアラ15が糸欠陥を発見して糸をカッタにより切断したとき、及び、給糸ボビン21が新しく供給されたとき等は、上述の糸継作業を行うため、ユニット制御部50は可動部材76を前記待機位置まで上昇させる。そして、糸継作業を完了して巻取りを再開するときは、糸解舒時のバルーンを再び制御できる状態に戻すために、可動部材76を元の位置まで下降させる。そして、給糸ボビン21のセット位置のチェック処理は、この下降時の芯管検出センサ81の検出信号に基づいて行われる。以下、この判定処理について説明する。
【0078】
即ち、判定部89は、糸切れ等に伴う糸継作業完了後の可動部材76の下降時にも、給糸ボビン21が新しくセットされた場合と同様の手順で芯管長さを測定する。そして、得られた芯管長さを、給糸ボビン21が新しくセットされたときに測定された芯管長さ(記憶部86に記憶されている芯管長さ)と比較する。同一の給糸ボビン21について芯管長さを測定しているのであるから、2つの測定値は通常は一致するはずであるが、上述した給糸ボビン21の浮き上がり等が生じると、芯管長さの測定値は一致しなくなる。判定部89は、比較の結果、2つの芯管長さの測定値が一致しなかった場合(厳密には、2つの芯管長さの間に所定以上の差があった場合)は、給糸ボビン21がセット位置から外れていると判定するのである。
【0079】
例えば図7に示すように、巻取作業中に、給糸ボビン21が給糸ボビン保持部71の正規なセット位置(鎖線に示す位置)から外れた場合、検出される芯管長さは当初の値と異なることになる。従って、図7に示すような場合は、給糸ボビン21がセット位置から外れたと判定されるのである。
【0080】
給糸ボビン21がセット位置から外れていると判定部89が判定すると、ユニット制御部50は、機台制御装置90が備える表示画面91にその旨を表示するとともに、巻取部17による巻取作業を停止させる。これにより、オペレータは、復旧のために必要な作業を素早く行って巻取りを再開することができる。
【0081】
以上に示したように、本実施形態の自動ワインダは、給糸ボビン保持部71と、巻取部17と、芯管検出センサ81と、を備える。給糸ボビン保持部71には、芯管95に糸を巻き付けた給糸ボビン21がセットされる。巻取部17は、給糸ボビン21から引き出された糸をパッケージに巻き取る。芯管検出センサ81は、給糸ボビン保持部71にセットされた給糸ボビン21の芯管長さを検出する。
【0082】
これにより、芯管検出センサ81によって給糸ボビン21の芯管長さを検出できるので、芯管長さの設定値を自動ワインダに入力する手間を省略でき、オペレータの負担を軽減できる。また、芯管長さを実際に測定して得られた値を制御に用いるので、従来の手入力と比較して、入力ミスによって不適切な制御が行われることもない。
【0083】
また、本実施形態の自動ワインダにおいては、以下のように構成される。即ち、自動ワインダは、記憶部86と、更新部88と、を備える。記憶部86は、芯管検出センサ81によって検出した芯管長さを記憶する。更新部88は、給糸ボビン保持部71に給糸ボビン21がセットされると、記憶部86に記憶されている芯管長さを、新しく検出した芯管長さに更新する。
【0084】
これにより、自動ワインダにセットされた給糸ボビン21について芯管長さを一度検出して記憶部86に記憶すれば、その後は当該記憶内容を参照することで簡単に芯管長さを取得し、各種の計算のために用いることができる。また、自動ワインダにセットされる芯管の長さが一定でない場合でも、芯管がセットされるごとに記憶部86の内容が更新部88によって更新されるので、芯管の長さの変化に柔軟に対応しながら適切に糸を巻き取ることができる。
【0085】
また、本実施形態の自動ワインダにおいては、以下のように構成される。即ち、自動ワインダは、ステッピングモータ79と、算出部87と、を備える。ステッピングモータ79は、芯管95の長手方向に芯管検出センサ81を移動させることができるとともに、芯管検出センサ81の移動量を制御可能に構成されている。算出部87は、芯管検出センサ81の移動量に基づいて芯管長さを算出する。
【0086】
これにより、ステッピングモータ79によって移動した芯管検出センサ81の移動量に基づいて芯管長さを容易かつ正確に算出することができる。
【0087】
また、本実施形態の自動ワインダにおいては、以下のように構成される。即ち、自動ワインダは、給糸ボビン21から糸を引き出すときに発生するバルーンを制御するための解舒補助装置12を備える。解舒補助装置12は、バルーンに接触する可動部材76と、給糸ボビン21のチェース部を検出するチェース部検出センサ80と、を有する。前記ステッピングモータ79は、芯管95の長手方向に可動部材76を移動させることで、当該可動部材76と一体的に芯管検出センサ81を移動させる。
【0088】
これにより、バルーンの制御を行う解舒補助装置12の構成を利用しているので、芯管長さを正確に検出するための機能を少ない部品点数で実現できる。また、芯管長さに対するチェース部の位置に基づいて、給糸ボビン21の残糸量を容易に算出することができる。従って、半玉の状態の給糸ボビン21が給糸ボビン保持部71にセットされた場合でも、当該給糸ボビンの残糸量を適切に算出することができる。
【0089】
また、本実施形態の自動ワインダにおいては、駆動部としてのステッピングモータ79が有するモータ軸の回転を芯管検出センサ81の直線移動に変換する駆動力変換機構85を備える。
【0090】
これにより、回転角度を電気的に制御できるステッピングモータ79を用いて芯管検出センサ81を直線的に移動させることができるので、芯管長さを精密に測定することができる。
【0091】
また、本実施形態の自動ワインダにおいては、以下のように構成される。即ち、自動ワインダは、パッケージ30に巻き取られる糸20にテンションを付与するテンション付与装置13を備える。テンション付与装置13は、芯管検出センサ81が検出した芯管長さに応じてテンション制御を行う。
【0092】
これにより、給糸ボビン保持部71にセットされた給糸ボビン21の芯管長さを実際に測定して制御に用いることで、現実の状況をより反映したテンション制御を行うことができる。
【0093】
また、本実施形態の自動ワインダにおいては、芯管検出センサ81の検出信号に基づいて、給糸ボビン保持部71のセット位置から給糸ボビン21が外れているか否かを判定する判定部89を備える。
【0094】
これにより、給糸ボビン21が適切な位置にセットされているか否かを判定するための機能を、芯管検出センサ81を利用した簡素な構成で実現することができる。
【0095】
また、本実施形態の自動ワインダにおいては、判定部89が給糸ボビン保持部71のセット位置から給糸ボビン21が外れていると判定した場合は、巻取部17の巻取作業を中止する。
【0096】
これにより、セット位置から給糸ボビン21が外れた状態で巻取作業が行われることを防止できる。
【0097】
また、本実施形態の自動ワインダにおいては、給糸ボビン保持部71のセット位置から給糸ボビン21が外れていることを報知するための表示画面91を備える。
【0098】
これにより、給糸ボビン21がセット位置から外れていることをオペレータが迅速に把握することができる。
【0099】
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0100】
上記実施形態では、芯管検出センサ81は、解舒補助装置12の昇降部78に配置されているが、この構成は適宜変更することができる。例えば、芯管検出センサ81を昇降部78とは別の部材に配置する構成に変更することができる。
【0101】
また、チェース部検出センサ80及び芯管検出センサ81には、透過式のフォトセンサが用いられているが、この構成は適宜変更することができる。例えばチェース部検出センサ80及び芯管検出センサ81に、反射式のフォトセンサを用いることもできる。
【0102】
また、チェース部検出センサ80及び芯管検出センサ81の代わりに、検出対象までの距離を測定できる距離センサを採用することができる。例えば、給糸ボビン21の芯管95の上端部分を検出できるように、昇降部78の中央に距離センサを1つ配置する。そして、ユニット制御部50は、この距離センサによって取得した距離情報に基づいて芯管95の位置情報と、給糸ボビン21のチェース部の位置情報と、を取得する。このように、1つの芯管検出部が、芯管の長さとチェース部の位置とを検出するように構成することもできる。
【0103】
また、駆動力変換機構85は、モータ軸の回転を芯管検出センサ81の直線移動に変換する構成であれば、適宜変更することができる。例えば、ベルト駆動によって昇降部78を上下方向に移動させる構成に変更することができる。また、ウォームギアとピニオンによって昇降部78を上下方向に移動させる構成に変更することができる。また、昇降部78を駆動するモータは、ステッピングモータ79以外にもサーボモータを用いることもできる。更に、駆動部は、モータ以外のものを用いることもできる。例えば、駆動部としてシリンダを採用し、ワインダユニットを以下のように構成することができる。即ち、ワインダユニットは、芯管検出センサ81を駆動するためのシリンダと、シリンダによって移動した芯管検出センサ81の移動量を検出するための移動量検出部と、を備える。そして、ユニット制御部50の算出部87は、前記移動量検出部によって検出した芯管検出センサ81の移動量に基づいて芯管長さを算出する。
【0104】
また、テンション付与装置13は、ゲート式のものが用いられているが、テンション制御を行うことができる構成であれば、適宜変更することができる。例えば、テンション付与装置としてディスク式のものを採用することができる。
【0105】
また、ワインダユニット10ごとに警告ランプを配置し、給糸ボビン保持部71から給糸ボビン21が外れている場合は、当該警告ランプを作動させてオペレータに給糸ボビン21の状態を報知する構成に変更することができる。
【0106】
また、巻取部17は、綾振ドラム24によって糸をトラバースする構成であるが、糸をトラバースするための構成は適宜変更することができる。例えば、先端に糸ガイドを取り付けたトラバースアームを回動させる構成のトラバース装置、糸ガイドをベルト駆動によって往復動させる構成のトラバース装置、回転羽根を用いたロータリ式トラバース装置等を用いることができる。
【0107】
また、図1に示すようなマガジン式供給装置60に代えて、図示しない搬送コンベアを自動ワインダの下部に備え、給糸ボビン21を図略の給糸ボビン供給部から各ワインダユニット10の給糸ボビン保持部71に供給するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0108】
12 解舒補助装置
13 テンション付与装置
17 巻取部
71 給糸ボビン保持部(ボビンセット部)
80 チェース部検出センサ(チェース部検出部)
81 芯管検出センサ(芯管検出部)
86 記憶部
87 更新部
88 判定部
89 算出部
76 可動部材(接触部材)
79 ステッピングモータ(駆動部)
91 表示画面(報知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯管に糸を巻き付けた給糸ボビンがセットされるボビンセット部と、
前記給糸ボビンから引き出された糸をパッケージに巻き取る巻取部と、
前記ボビンセット部にセットされた前記給糸ボビンの芯管長さを検出するための芯管検出部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記芯管検出部によって検出した前記芯管長さを記憶する記憶部と、
前記ボビンセット部に給糸ボビンがセットされると、前記記憶部に記憶されている芯管長さを、新しく検出した芯管長さに更新する更新部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記芯管の長手方向に前記芯管検出部を移動させることができるとともに、その移動量を制御できる駆動部と、
前記芯管検出部の移動量に基づいて芯管長さを算出する算出部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取機であって、
給糸ボビンから糸を引き出すときに発生するバルーンを制御するための解舒補助装置を備え、
前記解舒補助装置は、
前記バルーンに接触する接触部材と、
前記給糸ボビンのチェース部を検出するチェース部検出部と、
を有し、
前記駆動部は、前記芯管の長手方向に前記接触部材を移動させることで、当該接触部材と一体的に前記芯管検出部を移動させることを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の糸巻取機であって、
前記駆動部としてのモータが有するモータ軸の回転を前記芯管検出部の直線移動に変換する駆動力変換機構を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記パッケージに巻き取られる糸にテンションを付与するテンション付与装置を備え、
前記テンション付与装置は、前記芯管検出部が検出した前記芯管長さに応じてテンション制御を行うことを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記芯管検出部の検出信号に基づいて、前記ボビンセット部のセット位置から前記給糸ボビンが外れているか否かを判定する判定部を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項7に記載の糸巻取機であって、
前記判定部が前記ボビンセット部のセット位置から前記給糸ボビンが外れていると判定した場合は、前記巻取部の巻取作業を中止することを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の糸巻取機であって、
前記ボビンセット部のセット位置から前記給糸ボビンが外れていることを報知するための報知部を備えることを特徴とする糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−105460(P2011−105460A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262858(P2009−262858)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】