説明

糸巻取装置

【課題】省エネルギー性を実現でき、残糸付きボビンを効率良く再供給できる構成の糸巻取装置を提供する。
【解決手段】自動ワインダ10は、複数の巻取ユニット92と、ボビン搬送コンベア93と、機台制御装置94と、を備える。巻取ユニット92は、排出した給糸ボビンである排出ボビンの本数を機台制御装置94へ送信する。ボビン搬送コンベア93は、巻取ユニット92が排出する排出ボビンを回収のために搬送する。機台制御装置94は、当初はボビン搬送コンベア93を停止状態としておき、複数の巻取ユニット92から排出された排出ボビンの合計の本数が所定のコンベア駆動閾値に達したときは、ボビン搬送コンベア93を駆動して排出ボビンを搬送した後、再び停止させる。上記の繰返しにより、ボビン搬送コンベア93が間欠駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出された給糸ボビンをコンベアによって回収する糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糸巻取装置である自動ワインダに対しては、精紡機等で生産された糸を、給糸ボビンに巻き付けた状態で供給することが従来から行われている。自動ワインダは、複数の給糸ボビンの糸を糸継ぎしながら巻き取り、所定長のパッケージを生成する。このような自動ワインダにおいて、糸の解舒が完了する等して排出された給糸ボビンを自動で回収する構成が知られている。特許文献1及び特許文献2は、この種の自動ワインダを開示する。
【0003】
特許文献1の自動ワインダは複数の巻取ユニットを備え、それぞれの巻取ユニットは、トレーに装着した状態の給糸ボビンを所定の巻取位置に載置可能になっている。また、この自動ワインダは、前記巻取位置の近傍に、ボビン供給用のベルトコンベアと、ボビン排出用のベルトコンベアと、を備える。それぞれのベルトコンベアは、給糸ボビンを保持したトレーを搬送可能に構成されている。この構成で、それぞれの巻取ユニットで巻返しが終了した給糸ボビンは、巻取位置からボビン排出用のベルトコンベアへトレーとともに排出される。
【0004】
また、特許文献1の自動ワインダはボビン処理部を備えており、前記巻取ユニットから排出された給糸ボビンは、ベルトコンベアでトレーとともに当該ボビン処理部へ搬送される。そして、ボビン処理部においては、最初に残糸検出装置で、給糸ボビンにおける残糸の量が検出される。そして、残糸が無いと判定された場合は、空のボビンのトレーからの抜取り、ボビン供給装置による新たな給糸ボビンのトレーへの設置、及び口出し処理等が行われる。その後、新しい給糸ボビンは、トレーとともに、ボビン供給用のベルトコンベアによって各巻取ユニットの巻取位置へ搬送される。
【0005】
なお、特許文献1では、ボビン処理部において、ボビン供給装置からトレーに新たな給糸ボビンが設置されるのを待機する際に、トレーを搬送する丸ベルト及び平ベルトのモータを停止させて省エネルギー化を図る構成も開示している。
【0006】
また、特許文献2には、巻取ユニットと、前記複数の巻取ユニットの列設方向に沿って水平に設けられ、前記複数の巻取ユニットから排出された排出ボビンを前記列設方向に沿って搬送する水平コンベアと、立上りコンベアと、からなる排出ボビンコンベアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−214064号公報
【特許文献2】特開2009−1349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の構成においては、ボビン処理部においてボビン供給装置からボビンが供給されるのを待機する際に、当該ボビン処理部における丸ベルト及び平ベルトのモータを停止させるようになっている。一方で、長距離のベルトコンベアで構成されるボビン排出用のベルトコンベアについては省エネルギー性が全く考慮されておらず、この点で改善の余地が残されていた。同様に、上記特許文献2の構成においても省エネルギー性が全く考慮されておらず、改善が望まれていた。
【0009】
なお、自動ワインダにおいては、巻取ユニットから排出された給糸ボビンに糸が残っている場合があり、中には、再び自動ワインダにセットして利用可能な状態のものも含まれる。この点、上記特許文献1の構成では、巻取ユニットから排出された給糸ボビンはベルトコンベアでいったんボビン処理部まで搬送された上で、残糸検出装置によって一定量以上の残糸があると判定された場合は、ボビン処理部からベルトコンベアで巻取ユニットに搬送される構成となっている。そのため、給糸ボビンの選別のために長距離の往復搬送が必要になり、給糸ボビンの供給効率の低下を招いていた。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、一層の省エネルギー性を実現でき、残糸付きボビンを効率良く再供給できる構成の糸巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取装置が提供される。即ち、この糸巻取装置は、複数の巻取ユニットと、ボビン搬送コンベアと、制御装置と、を備える。前記巻取ユニットは、給糸ボビンから引き出される糸をパッケージに巻き取る。前記ボビン搬送コンベアは、前記巻取ユニットが排出する給糸ボビンである排出ボビンを回収のために搬送する。前記制御装置は、前記ボビン搬送コンベアを間欠的に駆動するように制御する。
【0013】
これにより、ボビン搬送コンベアを停止させて、排出ボビンを当該ボビン搬送コンベア上にある程度貯めてから搬送することで、省エネルギー性に優れた糸巻取装置を提供することができる。また、制御装置の制御によって自動的にボビン搬送コンベアの駆動及び停止を切り替えるので、オペレータがボビン搬送コンベアのスイッチを操作する必要がなくなる。そのため、作業効率を低下させることなく省エネルギー性を実現できる。また、ボビン搬送コンベアが停止しているときは、オペレータが残糸付きの排出ボビンをボビン搬送コンベアから容易に回収し、再供給が可能と判断したものについてはその場で巻取ユニットにセットすることができる。そのため、排出ボビンの回収等に関するオペレータの負担を軽減することができる。
【0014】
前記の糸巻取装置においては、前記制御装置は、前記給糸ボビンの種類に応じて、前記ボビン搬送コンベアの単位時間あたりの平均搬送距離を変化させることが好ましい。
【0015】
即ち、給糸ボビンの種類が異なると、糸の巻取長さの違い等により、給糸ボビンが排出される時間間隔が異なる。この点、上記の構成においては、給糸ボビンの特性に応じて効率良く排出ボビンの回収を行うことができるので、省エネルギー性に優れた構成にすることができる。
【0016】
前記の糸巻取装置においては、前記制御装置は、複数の巻取ユニットから排出された排出ボビンの本数の合計に応じて、前記ボビン搬送コンベアの単位時間あたりの平均搬送距離を変化させることが好ましい。
【0017】
即ち、残糸付きの排出ボビンが排出されること等により、排出ボビンが排出される時間間隔にはバラツキがある。この点、上記の構成においては、この時間間隔の変動を考慮して、排出ボビンの回収のための搬送を行うことができる。従って、排出ボビンの回収を効率化でき、省エネルギー性に優れた構成にすることができる。
【0018】
前記の糸巻取装置においては、前記制御装置は、複数の巻取ユニットから排出された排出ボビンの合計の本数が所定の本数に達したときに、前記ボビン搬送コンベアの駆動を開始することが好ましい。
【0019】
これにより、巻取ユニットから給糸ボビンが実際に排出される頻度にバラツキがあっても、それに応じてボビン搬送コンベア93の駆動タイミングを柔軟に変更することができる。従って、ボビン搬送コンベアから排出ボビンが溢れること等を防止しつつ、排出ボビンを効率的に回収することができる。
【0020】
前記の糸巻取装置においては、前記制御装置は、所定時間毎に前記ボビン搬送コンベアを駆動させることが好ましい。
【0021】
これにより、複雑な制御を行うことなく、ボビン搬送コンベア93の間欠駆動を実現することができる。そのため、制御装置の構成を簡単にすることができる。
【0022】
前記の糸巻取装置においては、前記制御装置は、前記ボビン搬送コンベアの搬送速度を変更可能であることが好ましい。
【0023】
これにより、状況に応じた適切な搬送速度で搬送コンベアを搬送することができるので、効率良く排出ボビンの回収を行うことができる。
【0024】
前記の糸巻取装置においては、前記糸巻取装置は、前記ボビン搬送コンベアの駆動の開始を事前に報知するコンベア駆動報知部を備えることが好ましい。
【0025】
これにより、オペレータは、コンベア駆動報知部が動作していないときは、ボビン搬送コンベアが現在停止状態であり、あとしばらくは駆動が開始されないことを確認できる。従って、排出ボビンのオペレータによる回収及び巻取ユニットへの再供給作業を効率的に行うことができる。
【0026】
前記の糸巻取装置においては、それぞれの前記巻取ユニットは、前記給糸ボビンを供給するためのマガジン式供給装置を備えることが好ましい。
【0027】
これにより、巻取ユニットは、ある程度の本数の給糸ボビンをマガジン式供給装置によって貯めておくことができる。従って、オペレータはほぼ常時、回収した排出ボビンを巻取ユニットに供給することができる。
【0028】
前記の糸巻取装置においては、それぞれの前記巻取ユニットは、排出ボビンが排出された原因を報知するボビン排出原因報知部を備えることが好ましい。
【0029】
これにより、オペレータは、どのような不具合がどの巻取ユニットで生じたかを容易に知ることができる。そのため、不具合の生じ易い巻取ユニットを特定することができる。また、残糸付きの排出ボビンが排出されたことがボビン排出原因報知部によって判るので、オペレータは残糸付きの排出ボビンを素早く発見し、巻取ユニットへの再供給の可否の判断及び実際の再供給作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの外観斜視図。
【図2】巻取ユニットの構成を示す側面図。
【図3】巻取ユニットの概略的な構成を示す正面図。
【図4】自動ワインダの主要な構成を示すブロック図。
【図5】ボビン搬送コンベアの構成を示す正面図。
【図6】ボビン搬送コンベアが駆動した直後の様子を示す斜視図。
【図7】ボビン搬送コンベアが駆動中の様子を示す斜視図。
【図8】ボビン搬送コンベアが停止する直前の様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダ10の外観斜視図である。
【0032】
図1に示すように、自動ワインダ(糸巻取装置)10は、並べて配置された複数の巻取ユニット92と、ボビン搬送コンベア93と、機台制御装置(制御装置)94と、を備える。
【0033】
最初に、図1から図3を参照して巻取ユニット92について説明する。図2は、巻取ユニット92の構成を示す側面図である。図3は、巻取ユニット92の概略的な構成を示す正面図である。
【0034】
図2等に示す巻取ユニット92は、供給された給糸ボビン21から糸20を解舒し、巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成するように構成されている。
【0035】
巻取ユニット92は、図2に示すように、給糸ボビン21を供給するためのマガジン式供給装置60を備えている。このマガジン式供給装置60は、巻取ユニット92の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているボビン収納装置62と、を備えている。
【0036】
このボビン収納装置62はマガジンカン63を備え、このマガジンカン63には複数の収納孔が円状に並べて形成されている。マガジン式供給装置60には、オペレータが給糸ボビン21をマガジンカン63の収納孔に手で投入することで、給糸ボビン21を供給できるようになっている。このボビン供給作業を容易とするために、本実施形態では図1に示すように、給糸ボビン21を多数収容可能なボビン供給箱91が用意されている。ボビン供給箱91は台車に載せられており、給糸ボビン21が少なくなった巻取ユニット92までボビン供給箱91を容易に移動させることができるようになっている。
【0037】
図2等に示すマガジンカン63は、図略のモータによって間欠的な回転送り駆動が可能に構成されている。そして、このマガジンカン63の間欠駆動と、マガジンカン63が備える図略の制御弁の開閉の切替えとによって、マガジン保持部61が有する図略のボビン供給路に給糸ボビン21を1つずつ落下させることができる。前記ボビン供給路に供給された給糸ボビン21は、傾斜姿勢のまま、巻取ユニット92が備える給糸ボビン保持部55へ導かれる。
【0038】
給糸ボビン保持部55は、図3に示す保持部駆動モータ28の動力を受けて移動可能に構成されている。この保持部駆動モータ28は、ユニット制御部50の制御により、給糸ボビン保持部55を図略の回動手段によって回動させることができる。給糸ボビン保持部55は、前記ボビン供給路を通じて落下した給糸ボビン21を下方で受けた後、当該給糸ボビン21を斜め姿勢から直立姿勢に引き起こすように回動する。これによって、給糸ボビン21を巻取ユニット92の下部に適切に供給して、巻取ユニット92による巻取作業を行うことができる。
【0039】
また、給糸ボビン保持部55は、保持部駆動モータ28の動力によって、保持していた給糸ボビン21を跳ね上げて排出することもできるようになっている。なお、以下の説明では、この排出動作により給糸ボビン保持部55から取り外されて巻取ユニット92から排出された給糸ボビン21を、排出ボビン96と称することがある。
【0040】
巻取ユニット92は、巻取ボビン22又はパッケージ30を回転駆動するための綾振ドラム24を備えている。そして、巻取ユニット92は、給糸ボビン保持部55と綾振ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、クリアラ(糸品質測定器)15が備えるクリアラヘッド49と、を配置した構成となっている。
【0041】
解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸20の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸20の解舒を補助する。規制部材40の近傍には、前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられている。このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させる制御が行われる。
【0042】
解舒補助装置12の近傍には、糸20の有無を検知可能な糸検出センサ37が設けられている。この糸検出センサ37は、給糸ボビン21から引き出される糸20が検知されなくなると、糸無し信号をユニット制御部50に送信するようになっている。
【0043】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動することができる。
【0044】
このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸20に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。なお、テンション付与装置13としては、上記のゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。
【0045】
糸継装置14は、クリアラ15が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。このような糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いるものや、機械式のものを使用することができる。
【0046】
クリアラ15は、糸20の太さを検出するためのセンサが配置されたクリアラヘッド49と、このセンサが出力する糸太さ信号を処理するアナライザ52と、を備えている。クリアラ15は、前記センサからの糸太さ信号を監視することにより、スラブ等の糸欠陥(糸欠点)を検出するように構成されている。この糸品質情報は、ユニット制御部50へ送信されている。また、クリアラヘッド49の近傍には、クリアラ15が糸欠陥を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が配置されている。
【0047】
糸継装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0048】
この構成で、糸継時には、下糸案内パイプ25は捕捉位置で下糸を吸引捕捉した後、上方に回転して糸継装置14まで下糸を導く。一方、上糸案内パイプ26は、上方の捕捉位置まで回転してパッケージの表面上に存在する上糸を吸引捕捉した後、下方に回転して糸継装置14まで上糸を導く。糸継装置14では上糸と下糸の糸継作業が行われ、余分な糸は適宜切断される。その後、巻取りが再開される。
【0049】
給糸ボビン21から解舒された糸20は、糸継装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される綾振ドラム24が回転駆動することにより駆動される。
【0050】
綾振ドラム24は、パッケージ30を回転駆動させるためのものであり、ドラム駆動モータ53に接続されている。この綾振ドラム24の周面には綾振溝が形成されており、この綾振溝によって糸20はトラバースされながらパッケージ30に巻き取られる。
【0051】
以上の構成で、前記マガジン式供給装置60からボビンが給糸ボビン保持部55に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から解舒された糸20を前記巻取ボビン22に巻き取ることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0052】
なお、ユニット制御部50は様々な場合に給糸ボビン21を給糸ボビン保持部55から排出するように制御するが、その主な原因としては以下の3つを挙げることができる。
【0053】
即ち、1つ目は、給糸ボビン21に巻かれていた糸20が全て解舒され、空ボビンとなった場合である。この場合は、糸20が無くなったことを検知した糸検出センサ37が糸無し信号をユニット制御部50に送信することにより、ユニット制御部50は給糸ボビン21の糸20が尽きたことを認識し、空のボビンを巻取ユニット92から排出する。
【0054】
2つ目は、給糸ボビン21(マガジン式供給装置60から新しく供給された給糸ボビン21を含む)から糸20を下流側へ良好に引き出せない場合である。即ち、糸切れや糸切断が生じたとき、及び、新しく給糸ボビン21が給糸ボビン保持部55に供給されたときは、給糸ボビン21側の下糸が下糸案内パイプ25によって捕捉され、糸継装置14に導かれる。しかしながら、給糸ボビン21から糸20が良好に解舒できない等の理由で、下糸案内パイプ25による糸20の捕捉に成功できないことがある。
【0055】
ユニット制御部50は、下糸案内パイプ25を上方に回動させた後に糸検出センサ37の状態を調べ、糸20を検知していない場合(即ち、捕捉に失敗した場合)は、下糸案内パイプ25による糸20の捕捉動作を再度行う。そして、下糸案内パイプ25の捕捉動作を所定回数繰り返しても糸20の捕捉に失敗する場合は、ユニット制御部50は当該給糸ボビン21の使用を断念し、(残糸付きの)給糸ボビン21を巻取ユニット92から排出する。なお、この場合に排出された給糸ボビン21は、残糸を少量除去する等して再び巻取ユニット92にセットすれば、次回は問題なく使用できる場合も多い。
【0056】
3つ目は、クリアラ15による糸欠陥の検出が多発する場合である。即ち、クリアラ15による糸欠陥の検出が所定の頻度を上回るような場合は、ユニット制御部50は給糸ボビン21の全体の糸品質に問題があるとみなし、当該給糸ボビン21の糸20を巻取ボビン22側へ供給するのを中止する。この場合、ユニット制御部50は、(残糸付きの)給糸ボビン21を巻取ユニット92から排出する。
【0057】
巻取ユニット92は、例えば光や音等によりアラームを発することが可能なユニットアラーム(ボビン排出原因報知部)66を備えている。このユニットアラーム66の具体的な構成としては、例えばランプやブザー等が考えられるが、本実施形態ではランプが採用されている。このユニットアラーム66は、ユニット制御部50に電気的に接続されており、巻取ユニット92が給糸ボビン21の排出を行うときに、アラームを発するように構成されている。
【0058】
ここで、給糸ボビン21が排出される原因としては、前述のとおり種々の場合が考えられる。ユニットアラーム66は、アラームを発するときに、上記の原因に応じて異なるアラームを発するように構成されている。なお、異なるアラームを発生させる方法としては、ランプの発光色を異ならせたり、ブザー音を異ならせたりすることが考えられる。
【0059】
図4に示すように、それぞれの巻取ユニット92のユニット制御部50は、機台制御装置94と接続されている。ある巻取ユニット92で給糸ボビン21の排出が行われると、当該巻取ユニット92のユニット制御部50は、排出信号を機台制御装置94へ送信する。機台制御装置94の制御部73は、CPU及びRAM等を備えたマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部73は、巻取ユニット92のユニット制御部50から受信した給糸ボビン21の排出信号をカウントし、給糸ボビン21が排出された本数を(後述の排出本数として)記憶できるように構成されている。
【0060】
次に、図1、図4及び図5を参照してボビン搬送コンベア93について説明する。図5は、ボビン搬送コンベア93の構成を示す正面図である。図1及び図5に示すように、ボビン搬送コンベア93は、水平ベルトコンベア81と、傾斜ベルトコンベア82と、を備える。なお、ボビン搬送コンベア93に関する以下の説明においては、当該ボビン搬送コンベア93による排出ボビン96の搬送方向上流側及び下流側を単に「上流側」及び「下流側」と称することがある。
【0061】
図1に示すように、水平ベルトコンベア81は、巻取ユニット92の正面側に配置されており、複数の巻取ユニット92が並べられる方向に沿って配置されている。巻取ユニット92から排出された給糸ボビン21(排出ボビン96)は、この水平ベルトコンベア81上に落下する。傾斜ベルトコンベア82は、水平ベルトコンベア81の下流側端部に接続して配置されており、水平ベルトコンベア81によって搬送された排出ボビン96を更に斜め上方へ搬送できるように構成されている。傾斜ベルトコンベア82の下流側端部には、排出ボビン96を回収するためのボビン回収箱95が設置されている。
【0062】
図5に示すように、水平ベルトコンベア81は、2つのプーリ83と、ベルト84と、テンション付与機構89と、を備えている。また、傾斜ベルトコンベア82も同様に、複数のプーリ85と、ベルト86と、を備えている。
【0063】
図5では示していないが、2つのプーリ83,85のうち少なくとも何れかは、図4に示すコンベア駆動モータ88と連結されている。このコンベア駆動モータ88は電動モータとされており、図4に示すように、機台制御装置94の制御部73と接続されている。制御部73は、コンベア駆動モータ88の駆動及び停止を制御することができる。
【0064】
ベルト84及び86はプーリ83及び85からの動力が伝達されることで駆動され、ベルト上にある排出ボビン96を搬送することができる。テンション付与機構89は、ベルト84にテンションを付与するためのテンションプーリを備えている。また、傾斜ベルトコンベア82のベルト86には、図示しない横桟部が所定のピッチで取り付けられており、排出ボビン96が転がり落ちにくい構成になっている。
【0065】
図1に示すように、水平ベルトコンベア81には、その側面にコンベアアラーム(コンベア駆動報知部)87が設置されている。コンベアアラーム87は、例えば光や音等によりアラームを発することが可能に構成されている。このコンベアアラーム87の具体的な構成としては、例えばランプやブザー等が考えられるが、本実施形態ではランプが採用されている。また、図4に示すように、このコンベアアラーム87は機台制御装置94と接続されており、機台制御装置94がコンベア駆動モータ88を駆動し始めるときに(具体的には、駆動開始の所定時間前に)アラームを発するように構成されている。
【0066】
水平ベルトコンベア81上の排出ボビン96は、機台制御装置94がコンベア駆動モータ88を駆動させることで搬送される。排出ボビン96は、水平ベルトコンベア81の端部まで搬送されると、傾斜ベルトコンベア82によって斜め上方に搬送される。そして、排出ボビン96は、最終的には傾斜ベルトコンベア82の下流側端部からボビン回収箱95の内部に落下し、回収される。
【0067】
ボビン回収箱95に収容された排出ボビン96は、上述したとおり、残糸付きのものも含まれている。また、排出ボビン96の残糸の量が多く、残糸をすべて破棄して新しい精紡糸を巻き直したのでは無駄が大きくなる場合もある。そこで、本実施形態の構成では、オペレータは、残糸付きの排出ボビン96のうち再供給可能なものをボビン回収箱95から見つけ出し、巻取ユニット92のマガジン式供給装置60に供給できるようになっている。ただし、後述するように、オペレータは、水平ベルトコンベア81上の排出ボビン96を直接拾って巻取ユニット92に再供給することもできる。
【0068】
次に、上記の構成において、ボビン搬送コンベア93を間欠的に搬送する制御を説明する。
【0069】
まず、糸の巻取りを始める前に、各種の設定が行われる。具体的には、オペレータは機台制御装置94の表示部72に糸巻取条件設定メニューを表示させ、入力キー71により数値入力を行うことによって、巻取ユニット92に適用させる糸巻取条件を設定する。設定される糸巻取条件とは、例えば、巻き取られる糸の種類、巻取速度、番手、巻取張力、パッケージ重量、糸欠陥に関する項目などがある。
【0070】
また、オペレータは、コンベア駆動閾値を入力キー71で入力し、機台制御装置94に設定する。このコンベア駆動閾値とは、それぞれの巻取ユニット92から給糸ボビン21が排出された本数の合計(以下では単に「排出本数」と称する)に関する閾値である。この排出本数がコンベア駆動閾値以上になると、機台制御装置94はコンベア駆動モータ88を所定の速度で駆動させ、ボビン搬送コンベア93による排出ボビン96の搬送を開始する。
【0071】
即ち、上記コンベア駆動閾値は、ボビン搬送コンベア93を停止させた状態で排出ボビン96を水平ベルトコンベア81上に貯めておく上限本数を意味する。従って、コンベア駆動閾値としては、水平ベルトコンベア81上に排出ボビン96が溢れて巻取ユニット92からの排出ミスを招かない程度の本数を適宜設定することができる。設定されたコンベア駆動閾値は、機台制御装置94の制御部73に記憶される。
【0072】
その後、それぞれの巻取ユニット92において糸の巻取りが開始される。各巻取ユニット92が糸を巻き取り始めた直後は、ボビン搬送コンベア93は停止している。そして、各巻取ユニット92は、上述した様々な原因で給糸ボビン21を排出しながら、パッケージ30を形成する。
【0073】
機台制御装置94の制御部73は、全ての巻取ユニット92が排出した給糸ボビン21の本数(排出本数)の累計値を記憶できるように構成されている。この排出本数は、自動ワインダ10の稼動開始当初ではゼロとされているが、給糸ボビン21の排出が行われて巻取ユニット92から排出信号が入力される毎に1ずつ増加していく。
【0074】
機台制御装置94は、排出本数がコンベア駆動閾値以上になるまでは、ボビン搬送コンベア93の停止状態を継続するように制御する。従って、水平ベルトコンベア81上には、一定程度の本数の排出ボビン96が溜まることになる。
【0075】
そして、上記のように水平ベルトコンベア81が停止しているときは、オペレータは、当該水平ベルトコンベア81に排出された排出ボビン96を容易に手で拾うことができる。オペレータは、排出ボビン96のうち残糸付きのものを選んで手で拾い、排出ボビン96から残糸を若干ほどく。そして、巻取ユニット92への再供給が可能と判断したものについては、当該排出ボビン96を巻取ユニット92のマガジン式供給装置60にその場でセットすることができる。
【0076】
排出本数がコンベア駆動閾値以上になると、機台制御装置94は、排出本数の累計値をゼロにリセットした上で、コンベアアラーム87によるアラームを一定時間発生させ(即ち、ランプを発光させ)、オペレータの注意を喚起する。その後、機台制御装置94は、コンベア駆動モータ88を駆動することで、ボビン搬送コンベア93による排出ボビン96の搬送を開始する。
【0077】
図6には、ボビン搬送コンベア93が駆動した直後の様子が斜視図で示されている。なお、図6において、水平ベルトコンベア81の最も上流側に位置している巻取ユニット92から排出された排出ボビン96(以下、最上流の排出ボビンと称する)が、特に鎖線で囲って示されている。
【0078】
本実施形態において、ボビン搬送コンベア93による排出ボビン96の搬送は、一定の速度で行われる。図7には、図6の状態からボビン搬送コンベア93による搬送が進んだ様子が示されている。図7の状態では、前述した最上流の排出ボビン96が、水平ベルトコンベア81の中央付近に位置している。
【0079】
図7に示すように、最上流の排出ボビン96の更に上流側では、ボビン搬送コンベア93が駆動を開始してすぐ後に排出された排出ボビン96が搬送されている。即ち、ボビン搬送コンベア93の駆動は、巻取ユニット92による糸20の巻取りと独立して行われるので、ボビン搬送コンベア93の駆動開始後に巻取ユニット92が給糸ボビン21を排出することもあり得る。このコンベア駆動中の給糸ボビン21の排出は、機台制御装置94の制御部73が前述の排出本数としてカウントするように構成しても良いし、カウントしなくても良い。
【0080】
機台制御装置94は、ボビン搬送コンベア93の駆動を一定時間だけ継続し、その後に停止するよう制御する。このボビン搬送コンベア93の駆動により、当該コンベアの停止時に水平ベルトコンベア81上に排出されていた全ての排出ボビン96(前述の最上流の排出ボビン96を含む)は、ボビン回収箱95に落下する。なお、図8には、最上流の排出ボビン96がボビン回収箱95に落下する直前の様子が示されている。ボビン搬送コンベア93が停止すると、機台制御装置94は、引き続き排出本数をカウントする。
【0081】
機台制御装置94は、以上の制御の反復により、ボビン搬送コンベア93の自動的な間欠駆動を実現している。これにより、普段はボビン搬送コンベア93を停止させておき、水平ベルトコンベア81上に排出ボビン96をある程度貯めてからボビン回収箱95にまとめて搬送することが可能になり、省電力化を効果的に実現できている。
【0082】
また本実施形態では、上述したように、オペレータはボビン搬送コンベア93の停止中に排出ボビン96(再供給が可能なもの)を水平ベルトコンベア81から容易に回収し、当該排出ボビン96を巻取ユニット92にその場でセットすることができる。また、排出ボビン96が巻取ユニット92から多数排出されたとしても、当該排出ボビン96が水平ベルトコンベア81上に適宜広げられた状態となるので、個々の排出ボビン96を目視で容易に確認できる。従って、ボビン回収箱95にいったん回収された排出ボビン96を取り出して選別する場合に比べ、巻取ユニット92への再供給が可能な残糸付きボビンを目視で選別する作業が容易である。
【0083】
しかも、それぞれの巻取ユニット92において排出ボビン96を排出するときは、その原因をユニットアラーム66によりオペレータに報知するようになっている。従って、オペレータは、例えば残糸付きの給糸ボビン21がどの巻取ユニット92から排出されたかを簡単に把握できる。これにより、残糸付きの給糸ボビン21について、巻取ユニット92へのその場での供給作業を効率良く行うことができる。
【0084】
以上に説明したように、本実施形態の自動ワインダ10は、複数の巻取ユニット92と、ボビン搬送コンベア93と、機台制御装置94と、を備える。巻取ユニット92は、給糸ボビン21から引き出される糸をパッケージ30に巻き取る。ボビン搬送コンベア93は、巻取ユニット92が排出する給糸ボビン21である排出ボビン96を、回収のために搬送する。機台制御装置94は、ボビン搬送コンベア93を間欠的に駆動するように制御する。
【0085】
これにより、ボビン搬送コンベア93を停止させて、排出ボビン96を水平ベルトコンベア81上にある程度貯めてから搬送することで、省電力性に優れた自動ワインダ10を提供することができる。また、機台制御装置94の制御によって自動的にボビン搬送コンベア93の駆動及び停止を切り替えるので、オペレータがボビン搬送コンベア93のスイッチを操作する必要がなくなる。そのため、作業効率を低下させることなく省電力性を実現できる。また、ボビン搬送コンベア93が停止しているときは、オペレータが残糸付きの排出ボビン96を水平ベルトコンベア81上から容易に拾って回収し、再供給が可能と判断したものについてはその場で巻取ユニット92のマガジン式供給装置60にセットすることができる。そのため、排出ボビン96の回収等に関するオペレータの負担を軽減することができる。
【0086】
また、本実施形態の自動ワインダ10において、機台制御装置94は、複数の巻取ユニット92から排出された排出ボビン96の合計の本数(排出本数)がコンベア駆動閾値に達したときに、ボビン搬送コンベア93の駆動を開始する。
【0087】
これにより、巻取ユニット92から給糸ボビン21が実際に排出される頻度にバラツキがあっても、それに応じてボビン搬送コンベア93の駆動タイミングを柔軟に変更することができる。従って、ボビン搬送コンベア93から排出ボビン96が溢れること等を防止しつつ、排出ボビン96をボビン回収箱95に効率的に回収することができる。
【0088】
また、本実施形態の自動ワインダ10は、ボビン搬送コンベア93の駆動の開始を事前に報知するコンベアアラーム87を備える。
【0089】
これにより、オペレータは、コンベアアラーム87が動作していないときは、ボビン搬送コンベア93が現在停止状態であり、あとしばらくは駆動が開始されないことを確認できる。従って、排出ボビン96のオペレータによる回収及び巻取ユニット92への再供給作業を効率的に行うことができる。
【0090】
また、本実施形態の自動ワインダ10において、それぞれの前記巻取ユニット92は、前記給糸ボビン21を供給するためのマガジン式供給装置60を備える。
【0091】
これにより、巻取ユニット92は、ある程度の本数の給糸ボビン21をマガジン式供給装置60によって貯めておくことができる。従って、オペレータはほぼ常時、回収した排出ボビン96を巻取ユニット92に供給することができる。
【0092】
また、本実施形態の自動ワインダ10において、それぞれの巻取ユニット92は、排出ボビン96が排出された原因を報知するユニットアラーム66を備える。
【0093】
これにより、オペレータは、どのような不具合がどの巻取ユニット92で生じたかを容易に知ることができる。そのため、不具合の生じ易い巻取ユニット92を特定することができる。また、残糸付きの排出ボビン96が排出されたことがユニットアラーム66により判るので、オペレータは残糸付きの排出ボビン96を素早く発見し、巻取ユニット92への再供給の可否の判断及び実際の再供給作業を効率良く行うことができる。
【0094】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例は、前述の実施形態とボビン搬送コンベアの制御のみが異なり、他の部分については前述の実施形態(図1〜図5)と同様であるので、以下の説明では上記実施形態と同一の符号を用いることがある。
【0095】
即ち、本変形例では、ボビン搬送コンベア93の間欠駆動にあたって、コンベア駆動閾値を用いる代わりに、所定時間毎にボビン搬送コンベア93を駆動及び停止させる構成になっている。即ち、例えば、ボビン搬送コンベア93を120秒間停止した後に15秒間駆動させる制御が繰り返されるようになっている。
【0096】
また、本変形例において機台制御装置94の制御部73は、コンベア駆動モータ88の駆動及び停止の切替えだけでなく、その駆動速度も制御できるようになっている。そして、制御部73は、ボビン搬送コンベア93を、給糸ボビンの種類(具体的には、糸の太さ)に応じた搬送速度で駆動する。
【0097】
つまり、太い糸が巻かれた給糸ボビン21は、細い糸が巻かれた場合に比べて巻取長が短く、短時間で糸が尽きてしまうので、巻取ユニット92から給糸ボビン21が排出されるペースが速い。そのため、制御部73は、太い糸の場合はボビン搬送コンベア93の搬送速度を大きくするように適宜の計算式で予め計算し、得られた速度で当該ボビン搬送コンベア93を駆動することとしている。従って、太い糸の場合は、ボビン搬送コンベア93の単位時間あたりの平均搬送距離は大きくなる。
【0098】
あるいは、ボビン搬送コンベア93の搬送速度を変更する制御に代えて、あるいはそれに加えて、ボビン搬送コンベア93を駆動する時間の割合を糸の太さに応じて変更するようにしても良い。例えば、ボビン搬送コンベア93を、細い糸の給糸ボビン21の場合は120秒間の停止と15秒間の駆動を繰り返すように制御し、太い糸の場合は120秒間の停止と30秒間の駆動を繰り返すように制御することが考えられる。これによっても、糸の太さによって、ボビン搬送コンベア93の単位時間あたりの平均搬送距離を変化させることができる。
【0099】
更には、直近の例えば180秒間に巻取ユニット92から排出された給糸ボビン21の累計本数を計算し、その結果に応じてボビン搬送コンベア93の搬送速度や駆動時間の割合を動的に変化させるように制御しても良い。この場合、実際の巻取ユニット92の運用状況に応じた排出ボビン96の搬送が可能になる。
【0100】
以上に示すように、本変形例の自動ワインダ10において、機台制御装置94は、給糸ボビン21の種類に応じて、ボビン搬送コンベア93の単位時間あたりの平均搬送距離(即ち、搬送速度又は駆動時間の割合)を変化させる。
【0101】
即ち、給糸ボビン21の種類が異なると、糸の巻取長さの違い等により、給糸ボビン21が排出される時間間隔が異なる。この点、上記の構成においては、給糸ボビン21の特性に応じて効率良く排出ボビン96の回収を行うことができるので、省電力性に優れた構成にすることができる。
【0102】
また、本変形例の自動ワインダ10において、機台制御装置94は、複数の巻取ユニット92から排出された排出ボビン96の本数の合計に応じて、ボビン搬送コンベア93の単位時間あたりの平均搬送距離(搬送速度又は駆動時間の割合)を変化させるように構成することもできる。
【0103】
即ち、残糸付きの排出ボビン96が排出されること等により、排出ボビン96が排出される時間間隔にはバラツキがある。この点、上記の構成においては、この時間間隔の変動を考慮して、排出ボビン96のボビン回収箱95への搬送を行うことができる。従って、排出ボビン96の回収を効率化でき、省電力性に優れた構成にすることができる。
【0104】
また、本変形例の自動ワインダ10において、機台制御装置94は、所定時間毎にボビン搬送コンベア93を駆動させる。
【0105】
これにより、複雑な制御を行うことなく、ボビン搬送コンベア93の間欠駆動を実現することができる。そのため、機台制御装置94の構成を簡単にすることができる。
【0106】
また、本変形例の自動ワインダ10において、機台制御装置94は、ボビン搬送コンベア93の搬送速度を変更可能である。
【0107】
これにより、状況に応じた適切な搬送速度で排出ボビン96を搬送することができるので、効率良く排出ボビン96の回収を行うことができる。
【0108】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0109】
上記実施形態及び変形例において、ボビン搬送コンベア93の駆動1回あたりの搬送距離は、そのときに排出されていた給糸ボビン21(排出ボビン96)の全てを1回でボビン回収箱95に回収できるように十分な距離としても良いし、それより短い距離としても良い。ただし、1回の駆動で排出ボビン96の全てを回収する方が、水平ベルトコンベア81の下流側に多量の排出ボビン96が貯められることを防止できるので好ましい。
【0110】
ユニットアラーム66は、上述した給糸ボビン21の排出のほか、様々な異常(糸継装置14による糸継作業のミス、供給電源の異常等)を検出する機器と接続し、そのような異常が検出された際にもアラームを発する構成にすることもできる。この場合、異常の内容を数値等で表示する構成をユニットアラーム66に備えて、発生した事象の内容をオペレータが容易に把握できる構成にすることもできる。
【0111】
ボビン搬送コンベア93が駆動を開始するときには、ボビン搬送コンベア93が備えるコンベアアラーム87がアラームを発する構成である。しかしながら、これに代えて又は併用して、機台制御装置94がボビン搬送コンベア93の駆動開始時にアラームを発する構成にすることもできる。
【0112】
上記の変形例においては、給糸ボビン21の種類として糸の太さ(番手)を用いたが、これに代えて給糸ボビン21のサイズ又は糸の種類を用いることができる。
【0113】
上記の変形例においては、コンベアの搬送速度及び駆動時間の割合は、給糸ボビン21の種類に応じて変化されている。しかしながら、これに代えて、その他の糸巻取条件(例えば、巻取速度等)から求める構成にすることもできる。
【0114】
上記の実施形態及び変形例は、自動ワインダに限定されず、給糸ボビンの糸を解舒して巻き取る構成の糸巻取装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
10 自動ワインダ(糸巻取装置)
21 給糸ボビン
50 ユニット制御部
60 マガジン式供給装置
66 ユニットアラーム(ボビン排出原因報知部)
87 コンベアアラーム(コンベア駆動報知部)
88 コンベア駆動モータ
92 巻取ユニット
93 ボビン搬送コンベア
94 機台制御装置(制御装置)
96 排出ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンから引き出される糸をパッケージに巻き取る複数の巻取ユニットと、
前記巻取ユニットが排出する給糸ボビンである排出ボビンを回収のために搬送するボビン搬送コンベアと、
前記ボビン搬送コンベアを間欠的に駆動するように制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取装置であって、
前記制御装置は、前記給糸ボビンの種類に応じて、前記ボビン搬送コンベアの単位時間あたりの平均搬送距離を変化させることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取装置であって、
前記制御装置は、複数の巻取ユニットから排出された排出ボビンの本数の合計に応じて、前記ボビン搬送コンベアの単位時間あたりの平均搬送距離を変化させることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記制御装置は、複数の巻取ユニットから排出された排出ボビンの合計の本数が所定の本数に達したときに、前記ボビン搬送コンベアの駆動を開始することを特徴とする糸巻取装置。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記制御装置は、所定時間毎に前記ボビン搬送コンベアを駆動させることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記制御装置は、前記ボビン搬送コンベアの搬送速度を変更可能であることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記糸巻取装置は、前記ボビン搬送コンベアの駆動の開始を事前に報知するコンベア駆動報知部を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
それぞれの前記巻取ユニットは、前記給糸ボビンを供給するためのマガジン式供給装置を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
それぞれの前記巻取ユニットは、排出ボビンが排出された原因を報知するボビン排出原因報知部を備えることを特徴とする糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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