説明

系統安定化システム及び系統安定化方法

【課題】電力系統内の設備に不具合が生じた場合、想定された事故が発生する前に、その不具合の生じた設備を含む系統構成を切り離し、電力系統の信頼性を維持すること。
【解決手段】
情報取得部1Aは、電力系統2に関する所定の情報を取得する。機能不良設備判定部1Bは、所定の情報に基づいて、機能不良設備を判定する。安定判定部1Cは、機能不良設備が、安定化対策に関連しているか否かを判定する。分割領域判定部1Dは、電力系統を、機能不良設備を含む不健全系統と、機能不良設備を含まない健全系統とに分割するための分割領域を判定する。制御指令送信部1Fは、電力系統を健全系統と不健全系統とに分割するための制御指令を電力系統に含まれる所定の装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統安定化システム及び系統安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所で発電した電力を一般家庭及び商業施設等の各種需要家に供給するための電力系統では、安定した電力供給が求められている。そのため、電力系統を制御するシステムでは、想定される事故と想定される事故を安定化する系統安定化制御方法との一覧を予め作成しており、想定された事故が実際に発生した場合は、予め用意された系統安定化制御を実行する。従って、想定された事故が発生した場合でも、速やかに系統を安定化することができ、電力供給を継続できる。
【0003】
従来技術では、電力系統を予め複数の領域に区分しておき、それら区分にそれぞれ端末局を配置する。各端末局は、電圧及び周波数等の系統データに基づいて事故が発生したかを監視し、事故発生を検出した場合は系統を安定化させるための演算を行い、制御指令を出力する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−188133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、想定された事故が一つ生じた場合でも、系統安定化制御を実行することで、速やかに電力系統を安定化させることができる。しかし、例えば、複数の事故が短い間隔で発生したような場合は、予め用意された系統安定化制御だけでは電力系統を安定化させることができない可能性がある。また、例えば、変圧器等の各種設備の保守点検作業または設備の入れ替え作業等が行われている状況において、その作業対象設備と同一系統に属する他の設備に何らかの原因で障害が発生した場合も、用意された系統安定化制御ではその障害に対処することができない恐れがある。つまり、災害または作業等で想定事故への耐性が低下している状況では、想定された事故が生じた場合、その想定事故に対応するのが難しくなることがある。
【0006】
ここで、本明細書では、想定事故に対応可能な系統構成を健全系統と呼ぶ。想定事故に対応できない系統構成を、本明細書では不健全系統と呼ぶ。
【0007】
本発明の目的は、想定事故が生じるよりも前に、想定事故に対応できない可能性のある不健全系統と健全系統とを分割し、電力系統の信頼性を維持できるようにした系統安定化システム及び系統安定化方法を提供することにある。本発明の他の目的は、電力系統の想定事故に対する信頼性が低下した場合に、不健全系統を電力系統から切り離すことについての情報をユーザに提示し、ユーザの選択を確認した後に不健全系統と健全系統とを分割できるようにした系統安定化システム及び系統安定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る系統安定化システムは、電力系統に関する所定の情報として、電力系統内の観測情報と事前に定めた複数の想定事故リスト及び災害情報を取得するための情報取得部と、所定の情報に基づいて、電力系統に含まれる複数の設備のうち、正常動作しないと予測される機能不良設備を判定するための機能不良設備判定部と、機能不良設備が、電力系統を安定化するために予め用意される所定の安定化対策に関連しているか否かを判定する安定判定部と、機能不良設備が安定化対策に関連していると判定された場合、電力系統を、機能不良設備を含む不健全系統と、機能不良設備を含まない健全系統とに分割するための分割領域を判定する分割領域判定部と、分割領域判定部による判定結果に基づいて電力系統を健全系統と不健全系統とに分割するための制御指令を電力系統に含まれる所定の装置に送信するための制御指令送信部と、を備える。
【0009】
安定判定部は、機能不良設備が所定の安定化対策に関連しており、かつ、予め設定される想定事故に対して安定であるか否かを判定することができる。
【0010】
分割領域判定部による判定結果をユーザに提示するための判定結果提示部をさらに備え、判定結果提示部により提示される判定結果に対するユーザの選択を確認した後で、制御指令送信部は、制御指令を所定の装置に送信することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態の全体概要を示す説明図である。
【図2】図2は、電力系統と系統安定化システムの全体構成を示す。
【図3】図3は、プログラムデータの内容を示す説明図である。
【図4】図4は、系統安定化システムと電力系統の間で送受信される情報の概略構成を示す。
【図5】図5は、系統安定化処理の全体を示すフローチャートである。
【図6】図6は、データ受信の欠損に基づいて機能不良設備を判定する処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、中継装置を介して情報を送受信する場合の構成図である。
【図8】図8は、データ(センサ情報)が欠損している場合のセンサ情報を管理するテーブルの例である。
【図9】図9は、センサ情報が欠損する場合の系統構成の概略図である。
【図10】図10は、データ異常に基づいて機能不良設備を判定する処理を示すフローチャートである。
【図11】図11は、データ異常時のセンサ情報管理テーブルの例である。
【図12】図12は、センサ情報に異常が生じる場合の系統構成の概略図である。
【図13】図13は、線路容量を管理するテーブルの例である。
【図14】図14は、設備構成の変更に基づいて機能不良設備を判定する処理を示すフローチャートである。
【図15】図15は、設備構成の変更を示す情報の例である。
【図16】図16は、設備構成が変更される場合の系統構成の概略図である。
【図17】図17は、災害予測情報に基づいて機能不良設備を判定する処理を示すフローチャートである。
【図18】図18は、災害の発生を予測するサーバを備える全体構成図である。
【図19】図19は、災害予測情報の例を示す。
【図20】図20は、災害発生が予測される場合の系統構成の概略図である。
【図21】図21は、想定事故に対する安定性を判定するための処理を示すフローチャートである。
【図22】図22は、想定事故への対策を示すリストの例である。
【図23】図23は、想定事故に対する安定性の判定結果を示すリストの例である。
【図24】図24は、分割領域を算出する処理を示すフローチャートである。
【図25】図25は、最適な分割領域を算出するための処理を示すフローチャートである。
【図26】図26は、制約設備のリストの例である。
【図27】図27は、2つの分割領域間でのフェンス潮流の算出方法を示す説明図である。
【図28】図28は、3つの分割領域間でのフェンス潮流の算出方法を示す説明図である。
【図29】図29は、電力系統を不健全系統と健全系統とに分割する方法を示す説明図である。
【図30】図30は、分割結果を表示する画面の例である。
【図31】図31は、分割領域の需給バランスを表示する画面の例である。
【図32】図32は、電力系統を分割する前と分割した後とにおける、想定事故安定対策リストの例である。
【図33】図33は、第2実施例に係る系統安定化システムの構成を示す。
【図34】図34は、プログラムデータの内容を示す説明図である。
【図35】図35は、系統を安定化させる処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、想定事故に対する信頼性の低下した領域を、想定事故が発生するよりも前に電力系統から切り離すことで、残された多くの領域における想定事故に対する信頼性を維持できるようにしている。
【0013】
図1は、本実施形態の全体概要を示す説明図である。図1は、本発明の理解及び実施に役立つように作成されたもので、本発明の範囲は図1に示す構成例に限定されない。
【0014】
系統安定化システム1は、電力系統2を安定化するためのシステムである。電力系統2には、例えば、変圧器、線路、発電機、需要家設備等の、複数の設備N1〜N4が含まれている。また、後述の実施例に記載のように、電力系統2には、複数のセンサ装置170と複数の開閉器180及び複数の通信装置190等も含まれている。
【0015】
系統安定化システム1は、一つのコンピュータから構成することもできるし、または、複数のコンピュータを連携させて構成することもできる。系統安定化システム1は、その機能として、例えば、情報取得部1Aと、機能不良設備判定部1Bと、安定判定部1Cと、分割領域判定部1Dと、判定結果提示部1Eと、制御指令送信部1Fを備える。
【0016】
情報取得部1Aは、電力系統2に関する所定の情報を取得するための機能である。所定の情報としては、後述の実施例で明らかになるように、センサ装置170からのセンサ情報(例えば、線路潮流データ)、設備の構成変更を示す情報、災害の発生を予測する情報がある。情報取得部1Aは、それら各情報の全てを所定の情報として取得してもよいし、それら各情報のうち少なくともいずれか一つの情報を取得してもよい。
【0017】
機能不良設備判定部1Bは、情報取得部1Aにより取得された所定の情報に基づいて、電力系統2に含まれる複数の設備N1〜N4のうち、正常動作しない可能性があると予測される機能不良設備N2を判定するための機能である。図1では、説明の便宜上、設備N2が機能不良設備であるとする。他の設備N1〜N3は、何も問題が生じていない健全な設備である。
【0018】
機能不良設備とは、災害または保守点検等により、正常に動作しないか、正常に動作する可能性が所定値よりも高いと判定された設備である。例えば、或る設備の近くに設置されたセンサ装置からの信号が途絶えたり、異常値を示しているような場合は、その設備にも何らかの影響が及んでいる、または及ぶ可能性がある、と考えることができる。その設備がたとえ今実際に正常動作していても、正常動作しなくなる可能性が一定値以上あれば、機能不良設備と判定される。次の瞬間に生じるかも知れない想定事故に対処できる能力を維持するためである。
【0019】
安定判定部1Cは、機能不良設備N2が、電力系統2を安定化するために予め用意される所定の安定化対策に関連しているか否かを判定する機能である。安定化対策とは、例えば、いわゆる「N−1基準」等のような所定の安全基準に基づいて、電力系統を安定化させるための方法である。
【0020】
N−1基準とは、N個の設備のうち1個の設備が故障した場合でも、残るN−1個の設備により電力供給が維持される、という安全基準である。想定事故のそれぞれについて、電力系統2を安定化するための対策が用意されている。安定化対策のために使用されうる設備を、本明細書では、安定化設備と呼ぶ。
【0021】
安定判定部1Cは、機能不良設備が安定化設備に該当するかを判定する機能である。機能不良設備が安定化設備であると判定された場合、その機能不良設備を含む系統構成は、安定性が低い(不安定である)と考えることができる。或る想定事故が生じた場合に、その想定事故に対応する安定化対策を実行できない可能性があるためである。
【0022】
分割領域判定部1Dは、電力系統2を複数の領域(系統構成)に分割するための機能である。分割領域判定部1Dは、安定判定部1Cにより機能不良設備が安定化対策に関連していると判定された場合、電力系統2を、機能不良設備を含む不健全系統と、機能不良設備を含まない健全系統とに分割するための分割領域を判定する。
【0023】
図1の上側に示すカットC1、カットC2は、一方の分割領域である不健全領域と他方の分割領域である健全領域とに分割するための境界線を示す。例えば、カットC1に沿って電力系統2を分割する場合、不健全系統には機能不良設備N2のみが含まれ、健全系統には正常設備N1、N3、N4が含まれる。また、例えば、カットC2に沿って電力系統2を分割する場合、不健全系統には機能不良設備N2及び正常設備N3が含まれ、健全系統には他の正常設備N1及びN4が含まれる。
【0024】
ここで、正常設備N3は、例えば、病院または消防署等の重要施設であるとする。従って、正常設備N3を不健全系統に含めるのは、好ましくない。想定事故が発生した場合、不健全系統では電力の正常供給を行うことができない可能性があるためである。そこで、分割領域判定部1Dは、重要な設備N3が不健全系統に含まれないように、不健全系統と健全系統とを分けることができる。つまり、本実施形態では、制約条件として、「予め設定される重要な設備N3が健全系統に属すること」と設定されている。
【0025】
判定結果提示部1Eは、分割領域判定部1Dによる判定結果をユーザに提示するための機能である。ユーザとは、例えば、電力系統2を運用する系統運用者である。ユーザに提示される判定結果には、電力系統2の分割後の構成等が含まれている。
【0026】
判定結果提示部1Eは、判定結果を表示装置11(図2で後述)等に表示することで、ユーザに提示する。ユーザは、その判定結果を確認し、系統安定化システム1に対して所定の指示を与えることができる。所定の指示としては、例えば、電力系統の分割についての選択、または、電力系統の分割についての修正指示、電力系統の分割についての承認などがある。
【0027】
制御指令送信部1Fは、分割領域判定部1Dによる判定結果に基づいて電力系統2を健全系統と不健全系統とに分割するための制御指令を作成し、その制御指令を電力系統2に含まれる所定の装置に送信するための機能である。所定の装置としては、例えば、開閉器180(図2で後述)が該当する。所定の開閉器180を遠隔操作することで、不健全系統を電力系統2から自動的に切り離すことができる。
【0028】
上述のように本実施形態では、電力系統2に関する所定の情報を収集し、その情報に基づいて機能不良設備が存在するかを判定し、機能不良設備を発見した場合は安定性を判定する。所定の情報は、電力系統内の観測情報と、事前に定めた複数の想定事故リスト及び災害情報を含むことができる。さらに、本実施形態では、機能不良設備であると判定した場合、その機能不良設備に関連する想定事故が発生するよりも前に、機能不良設備を含む系統構成(不健全系統)を電力系統2から切り離すための分割領域を判定する。
【0029】
そして、本実施形態では、判定された分割領域についてユーザの確認を得た後、電力系統2内の所定の装置(開閉器)に制御指令を送信し、電力系統2を不健全系統と健全系統とに分割する。
【0030】
従って、本実施形態では、想定事故に対する安定化対策で使用される設備(安定化設備)に異常等が生じて機能不良設備であると判定された場合は、想定事故が発生する前に、その機能不良設備を含む不健全系統を、電力系統2から切り離しておく。これにより、本実施形態では、その後、不健全系統に想定事故が発生した場合でも、想定事故による影響を不健全系統内に止め、不健全系統での不具合が健全な他の系統に波及して、障害が広範囲に生じるのを未然に防止できる。
【0031】
本実施形態では、災害または保守作業等により所定の安定化対策の実施可能性が低下した系統構成(不健全系統)を、他の健全な系統構成から事前に切り離すことで、電力系統全体の信頼性を維持することができる。以下、本実施形態をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
図2〜図32を参照して第1実施例を説明する。図1との対応関係を先に述べると、系統安定化システム10は図1の系統安定化システム1に、電力系統100は図1の電力系統2に、対応する。
【0033】
系統安定化システム10の全体処理の流れは、図5で後述する。図5に示すステップのうち、ステップS1及びS2は、図1の情報取得部1Aに対応する。ステップS3は、図1の機能不良設備判定部1Bに、ステップS5は、図1の安定判定部1Cに、ステップS6及びS7は、図1の分割領域判定部1Dに、対応する。ステップS8は、図1の判定結果提示部1Eに、ステップS9は、図1の制御指令送信部1Fに、対応する。
【0034】
図2を参照し、電力系統100及び系統安定化システム10の全体構成を説明する。電力系統100と系統安定化システム10とは、通信ネットワーク300を介して通信可能に接続されている。
【0035】
電力系統100の構成を説明する。電力系統100は、複数の分割系統110、111を備える。図2では、2つの分割系統110、111を示すが、電力系統100は、3つ以上の分割系統を有することもできる。各分割系統110、111は、接続のための構成112を介して、接続されている。
【0036】
各分割系統100、111は、例えば、ノード(母線)150と、電源120と、負荷140と、変圧器130と、線路160と、センサ170と、開閉器180と、通信装置190とを備えている。
【0037】
図2に示す構成は、説明のための例であって、実際には、各分割系統110、111内に複数の電源120及び負荷140等を設けることができる。また、線路160上には、少なくとも一つずつセンサ170及び開閉器180が設けられていればよい。
【0038】
電源120は、例えば、太陽光発電装置、太陽熱発電装置、地熱発電装置、風力発電装置、火力発電所、水力発電所等のように構成され、ノード150に電力を供給する。変圧器130は、ノード150とノード150の間に設けられ、電圧等を調整する。ノード150から供給される電力を使用する負荷140は、例えば、一般家庭、商業施設、工場、病院、警察署、消防署、官公庁等の各需要家である。
【0039】
線路160は、ノード間を接続する。「センサ装置」としてのセンサ170は、線路160を流れる電流の値及び電圧値などを計測し、それらの計測値をセンサ情報として、系統安定化システム10に送信する。「所定の装置」としての開閉器180は、線路160を開閉することで、ノード150同士を接続したり、遮断したりする。
【0040】
通信装置190は、センサ170及び開閉器180と通信ネットワーク300との間に設けられる。センサ170及び開閉器180は、通信装置190を介して通信ネットワーク300に接続されており、通信ネットワーク300を介して系統安定化システム10と通信する。
【0041】
接続構成112は、各分割系統110、111を一つまたは複数の経路で、電気的に接続する。各経路は、例えば、線路160と、センサ170と、開閉器180と、通信装置190を備えることができる。このように、一方の分割系統110のノード150と他方の分割系統111のノード150とは、接続構成112の有する一つ以上の経路を介して接続される。
【0042】
電力系統100と系統安定化システム10の間の通信について説明する。分割系統(110、111)内の通信装置190は、通信ネットワーク300を介して、系統安定化システム10の通信インターフェース(図中I/F)15と接続されている。これにより、各分割系統110、111内のセンサ170及び開閉器180と系統安定化システム10の間で、後述の情報310A、310Bが送受信される。
【0043】
ここで、図4を参照する。図4は、センサ170及び開閉器180と系統安定化システム10の間で送受信される情報310A、310Bの概略構成例を示す。
【0044】
電力系統100のセンサ170から系統安定化システム10には、センサ情報310Aが送信される。センサ情報310Aは、例えば、線路潮流P 311と、センサ170を識別するための固有番号(図中ID)312と、タイムスタンプ313を含む。
【0045】
センサ情報310Aに含まれる線路潮流Pとは、ノード150間を接続する線路160を流れる、時間断面毎の潮流である。線路潮流は、センサ170により計測される。
【0046】
系統安定化システム10は、線路160上の開閉器180に向けて、制御情報310Bを送信する。制御情報310Bは、例えば、制御指令314と、開閉器180を識別するための固有情報315と、タイムスタンプ316とを含む。開閉器180には、事前に固有番号が設定されており、系統安定化システム10は、各線路160上の各開閉器180の固有番号を予め把握している。
【0047】
なお、通信ネットワーク300を介して、各センサ170及び系統安定化システム10は、図外のタイムサーバに接続されている。従って、各センサ170の内部時刻と系統安定化システム10内の時刻とは同期している。
【0048】
図2に戻り、系統安定化システム10の構成について説明する。系統安定化システム10は、例えば、表示装置11と、入力装置12と、マイクロプロセッサ13と、メモリ14と、通信インターフェース15と、各種データベース21〜25を備えており、それらはバス線41に接続されている。
【0049】
表示装置11は、例えば、ディスプレイ装置として構成される。ディスプレイ装置に代えて、またはディスプレイ装置と共に、プリンタ装置または音声出力装置等を用いる構成でもよい。入力装置12は、例えば、キーボードスイッチ、マウス等のポインティング装置、タッチパネル、音声指示装置等の少なくともいずれか一つを備えて構成できる。
【0050】
マイクロプロセッサ(図中CPU:Central Processing Unit)13は、プログラムデータベース25から所定のコンピュータプログラムを読み込んで実行する。マイクロプロセッサ13は、一つまたは複数の半導体チップとして構成してもよいし、または、計算サーバのようなコンピュータ装置として構成してもよい。
【0051】
メモリ14は、例えば、RAM(Random Access Memory)として構成され、プログラムデータベース25から読み出されたコンピュータプログラムを記憶したり、各処理に必要な計算結果データ及び画像データ等を記憶したりする。メモリ14に格納された画面データは、表示装置11に送られて表示される。表示される画面の例は後述する。
【0052】
通信インターフェース15は、通信ネットワーク300に接続するための回路及び通信プロトコルを備える。
【0053】
系統安定化システム10は、例えば、設備データベース21、系統データベース22、分割領域データベース23、分割結果データベース24、プログラムデータベース25等を備えることができる。それら各データベースの詳細は後述する。
【0054】
図3を参照して、プログラムデータベース25の記憶内容を説明する。プログラムデータベース25には、例えば、機能不良設備判定プログラムCP11と、想定事故安定判定プログラムCP12と、分割領域計算プログラムCP13とが格納されている。マイクロプロセッサ13は、各コンピュータプログラムを実行することで、機能不良設備を発見したり、機能不良設備の安定度を評価したり、最適な分割領域を解析したり、解析結果をユーザに提示したりする。
【0055】
図2に戻る。系統安定化システム10には、プログラムデータベース25以外に、4つのデータベース21〜24が設けられている。設備データベース21には、設備データD1として、例えば、系統構成(図示せず)と、想定事故対策リスト21T1(図22参照)と、制約設備リスト21T2(図26参照)と、が記憶されている。それら系統構成、想定事故対策リスト21T1及び制約設備リスト21T2は、系統管理サーバ320から通信ネットワーク300を介して、系統安定化システム10に送信される。
【0056】
系統構成とは、電力系統100の構成を示す情報である。系統構成には、例えば、電源120と、変圧器130と、負荷140と、ノード150と、線路160と、センサ170と、開閉器180及び通信装置190の、配置及び接続構成が記憶されている。
【0057】
想定事故対策リスト21T1には、想定事故に対する安定化対策が記憶される。電力系統100の運用者が、発生しうる事故と、その事故が生じた場合に安定した電力供給を維持するための対策とを、事前に設定している。
【0058】
なお、安定化対策とは、地絡または短絡等の事故が生じた設備を切り離したり、電源120または負荷140をノード150から切り離したりする制御である。つまり、安定化対策とは、電力系統100に含まれる設備を用いて、事故に対応するための一連の制御処理である。安定化対策のために使用される設備を、安定化設備と呼ぶ。
【0059】
制約設備リスト21T2には、例えば、病院、通信拠点設備、消防署、市役所、変電所等の重要な負荷、及び/または、送電上のハブの、リストが記憶される。
【0060】
系統データベース22には、系統データD2として、例えば、センサ情報テーブル22T1、22T1A(図8参照。テーブル22T1とテーブル22T1Aを特に区別しない場合は、センサ情報テーブル22T1と呼ぶ)と、線路容量テーブル22T2(図13参照)と、設備構成変更情報22T3(図15参照)が記憶されている。
【0061】
センサ情報310Aは、図4で説明した通り、センサ170から通信装置190及び通信ネットワーク300を介して、系統安定化システム10に送信される。センサ情報テーブル22T1は、受信されたセンサ情報310Aを記憶する。線路容量テーブル22T2及び設備構成変更情報22T3は、系統管理サーバ320から通信ネットワーク300を介して、系統安定化システム10に送信される。
【0062】
線路容量情報22T2は、線路160毎の容量情報を記憶する。設備構成変更情報22T3は、電力系統100の設備構成の変更に関する情報を記憶する。系統運用者は、系統管理サーバ320を介して、電力系統100内の電源120と変圧器130と負荷140とノード150と線路160とセンサ170と開閉器180と通信装置190の、配置及び接続構成の変更点を時間断面毎に設定することができる。
【0063】
分割領域データベース23は、分割領域データD3として、例えば、機能不良設備リスト(図示せず)と、想定事故安定判定リスト23T1(図23参照)と、分割領域リスト(図示せず)と、開閉器動作リスト(図示せず)とを記憶することができる。
【0064】
機能不良設備リストは、機能不良設備判定プログラムCP11により作成される。機能不良設備判定プログラムCP11は、系統データに基づいて機能不良設備の有無を判定し、機能不良設備であると判定された設備を機能不良設備リストに登録する。
【0065】
分割領域リストは、分割領域計算プログラムCP13により作成される。分割領域計算プログラムCP13は、系統構成と機能不良設備リストと想定事故安定判定リスト23T1とに基づいて、分割すべきカットを全て算出し、それら算出されたカットを分割領域リストに登録する。
【0066】
想定事故安定判定リスト23T1は、想定事故安定判定プログラムCP12により作成される。想定事故安定判定リスト23T1には、機能不良設備を含んだ電力系統(不健全系統)内で想定事故が発生した場合に安定か否かが記憶される。どのような想定事故が生じ得るかは、系統運用者が決定することができる。
【0067】
開閉器動作リストは、電力系統100を分割するための、開閉器180の動作を記憶している。即ち、算出されたカットに沿って電力系統100を分割するために、どの開閉器180の開閉状態をどのように制御すべきかを示す情報が、開閉器動作リストに記憶されている。
【0068】
分割結果データベース24には、分割結果データD4として、例えば、各分割領域の需給バランスを示すデータ(図31参照)と、分割の前後における想定事故対策リストの変化を示すデータ(図32参照)とが記憶されている。
【0069】
分割領域の需給バランスは、分割領域計算プログラムCP13の計算結果として求められる。各分割領域の需給バランスを示すデータには、各分割領域における発電量と負荷量のバランス変化を示すデータが記憶されている。例えば、分割領域において、発電量と負荷量がアンバランスの場合、その分割領域では周波数が変動する。そこで、分割領域の需給バランスを示すデータには、周波数の時間変化を示すデータを含めている。
【0070】
想定事故対策リストには、分割前の想定事故に対する安定化対策のリストと、分割後の想定事故に対する安定化対策のリストとが記憶されている。
【0071】
図5のフローチャートは、系統安定化システム10で実施される系統安定化処理の全体を示す。最初に、系統安定化システム10は、設備データD1を受信して記憶し(S1)、続いて、系統データD2を受信して記憶する(S2)。
【0072】
系統安定化システム10は、機能不良設備判定プログラムCP11により系統データD2を演算処理することで、機能不良設備を判定する(S3)。さらに、系統安定化システム10は、機能不良設備リストを作成して記憶し、機能不良設備リストを表示装置11に表示させる(S3)。
【0073】
系統安定化システム10は、全ての想定事故について、以下のステップS5及びステップS6を繰り返し実行する(S4)。
【0074】
系統安定化システム10は、想定事故安定判定プログラムCP12により、機能不良設備が想定事故に対して安定であるかを判定する(S5)。機能不良設備が想定事故に対して安定であるとは、機能不良設備に関連する想定事故が生じても、安定した電力供給を維持できる場合である。これに対し、機能不良設備が不安定であるとは、機能不良設備に関連する想定事故が生じると、安定した電力供給を行うことができない可能性がある場合である。
【0075】
系統安定化システム10は、機能不良設備が想定事故に対して不安定であると判定された場合(S5:不安定)、分割領域計算プログラムCP13により分割領域を算出して記憶する(S6)。
【0076】
系統安定化システム10は、分割領域計算プログラムCP13により最適分割領域を計算し、その算出結果を記憶する(S7)。系統安定化システム10は、最適な分割領域に関する画面(図30で後述)を作成し、系統運用者に提示する。
【0077】
系統安定化システム10は、系統運用者の承認、選択または指示を確認した後、最適な分割領域を生成するための制御指令(制御情報310B)を作成して、所定の開閉器180に送信する(S8)。所定の開閉器180とは、選択されたカットに沿って不健全系統を電力系統100から切り離すために必要な開閉器である。以下、図5に示す各ステップについて詳細に説明する。
【0078】
ステップS1では、設備データD1を取得し、設備データベース21に記憶する。系統安定化システム10は、電力系統100の系統構成と想定事故対策リスト(図22)と制約設備リスト(図26)を、例えば、系統管理サーバ320から受信してメモリ14に書き出し、設備データベース21に記憶する。
【0079】
図22を参照する。図22は、想定事故対策リスト21T1の一例を示している。このリスト21T1は、想定事故に対応するための安全対策を管理する。想定事故対策リスト21T1は、例えば、想定事故の番号21T1C1と、想定事故の内容21T1C2と、安定化対策の内容21T1C3とを管理する。
【0080】
想定事故の内容21T1C2は、想定事故の発生箇所と、想定事故の様相とが記憶されている。安定化対策の内容21T1C3は、想定事故に対処するための安定化設備を特定する情報と、安定化設備の動作とを記憶する。
【0081】
例えば、リスト21T1の1行目には、線路160で3φ4LG(三相四線地絡事故)が発生した場合、線路160を開放除去することで安定化することができることが記憶されている。なお、3φ4LGは、線路が二回線ある場合に発生しうる事故である。一回線=三相なので、二回線の場合は合計6相となる。線路160及び線路161は、それぞれ二回線以上存在する。
【0082】
図26は、制約設備リスト21T2の一例を示している。制約設備リスト21T2は、分割領域の判定に際して考慮される制約条件を管理する。例えば、重要施設を有するノード150は、健全系統に含まれている必要がある。
【0083】
制約設備リスト21T2は、例えば、設備番号21T2C1と、制約された設備の名称21T2C2と、制約された設備が接続されているノード21T2C3と、制約された設備の位置(設置箇所)21T2C4とを管理する。
【0084】
制約設備とは、例えば、病院、消防署、変電所、通信基地局等の、災害または障害発生時においても電力供給を継続すべき重要な設備である。
【0085】
図5に戻る。ステップS2では、系統データD2を取得する。系統安定化システム10は、センサ情報22T1(図8、図11)と、設備構成変更情報22T3(図15)と、線路容量情報22T2(図13)を、各センサ190及び系統管理サーバ320から受信して、系統データベース22に記憶する。
【0086】
図8を参照する。図8は、センサ情報テーブル22T1の一例を示している。センサ情報テーブル22T1は、センサ170から収集したセンサ情報を管理する。センサ情報テーブル22T1は、例えば、時刻22T1C1と、線路潮流P 22T1C2と、データ受信状況22T1C3と、欠損に関する情報22T1C4とを管理する。
【0087】
線路潮流P 22T1C2では、線路を識別するための識別番号と、線路の始端ノードにおける潮流の値と、線路の終端ノードにおける潮流の値とを対応付けて管理する。データ受信状況22T1C3では、センサ170から受信する線路潮流Pの状態(受信できたか否か)を記録する。欠損情報22T1C4には、受信状況22T1C3の値に基づいて、設備欠損が生じたか否かを示す判定値が記録される。
【0088】
図11を参照する。図11は、センサ情報テーブルの他の例22T1Aを示す。センサ情報テーブル22T1Aは、図8に示すテーブル22T1の欠損情報22T1C4に代えて、センサ情報の異常を示す異常情報22T1C5を備えている。図11のテーブル22T1Aにおいて、データ受信状況22T1C3には、センサ170から受信する線路潮流Pの状態として、線路潮流Pの値に異常が発見されたか否かを示す値が記憶される。異常情報22T1C5には、受信状況22T1C3の値に基づいて、設備に異常が生じたか否かを示す判定値が記録される。
【0089】
図8のセンサ情報テーブル22T1は、センサ情報を所定時間以上継続して取得できなかった場合に、設備が欠損したことを判定するために用いられる。図11のセンサ情報テーブル22T1Aは、センサ情報に所定時間以上の異常が発生した場合に、設備に異常が生じたことを判定するために用いられる。本実施例では、図8に示すテーブル22T1と、図11に示すテーブル22T1Aの両方を備える場合を説明するが、いずれか一方のみを備える構成でもよい。
【0090】
図15を参照する。図15は、設備構成変更情報22T3の一例を示す。設備構成変更情報22T3は、電力系統100内の各設備の状態を管理する。設備構成変更情報22T3は、所定時間毎に(22T3C1)、設備の状態(22T3C2)を管理する。図15に示す例では、第1行目に、線路160が14時30分30秒から停止されることが記録されている。
【0091】
図5のステップS3に戻る。機能不良設備判定プログラムCP11は、機能不良設備の有無を判定し、その結果を記憶し、かつ、その結果を表示する。機能不良設備を判定する方法には、以下に述べるように複数ある。そこで、図6、図10、図14、図17を参照して、機能不良設備の判定方法を説明する。以下の各判定方法の全てを備える構成でもよし、それらのうちいずれか一つ以上の判定方法を備える構成でもよい。いずれの構成も本発明の範囲に含まれる。
【0092】
まず最初に図6を参照して、第1の機能不良設備判定方法を説明する。図6に示す第1の判定方法は、センサ情報の欠損に基づいて、機能不良設備の存在を判定する。
【0093】
機能不良設備判定プログラムCP11(以下、判定プログラムCP11と略記する場合がある)は、センサ170からセンサ情報(線路潮流P)を受信して系統データベース22に記憶する(S10)。
【0094】
判定プログラムCP11は、データ欠損が所定時間以上継続しているか判定する(S20)。データ欠損が継続している場合(S20:YES)、判定プログラムCP11は、データ欠損の生じているセンサ170の位置を特定して記憶する(S30)。判定プログラムCP11は、データ欠損の生じているセンサ170の近傍に有る設備を特定し(S40)、その特定された設備を機能不良設備であると判定して、分割領域データベース23に記憶する(S50)。ステップS50で記憶された機能不良設備に関する情報は、画面に出力することもできる。
【0095】
ステップS10において、センサ170の線路潮流Pを通信ネットワーク300を介して系統安定化システム10に送信する場合、図7に示すように、中継装置340を用いてもよい。中継装置340は、複数のセンサ170からのセンサ情報を受信し、それらセンサ情報を集約して系統安定化システム10に送信することができる。
【0096】
ステップS20では、図8に示すように、例えば、30秒間の計測周期において、5分間以上センサ情報を受信できなかった場合、データ欠損が発生したと判定する。判定の閾値(所定時間)を5分間に設定するのは、例えば30秒間のように所定時間を短く設定すると、通常の通信エラーをデータ欠損として誤判定する可能性があるためである。図6の例では、データ欠損が継続して検出された場合(S20:YES)、判定プログラムCP11は、機能不良設備が発生したと判定する。
【0097】
なお、以下の説明においても同様であるが、上述の5分間または30秒間等の具体的な数値は、実施例の理解のために用意された値であり、本発明の範囲は上記具体的数値に限定されない。
【0098】
図9は、線路160でデータ欠損200が生じた場合の例である。図9は、第1の分割系統110と第2の分割系統111との間を接続する複数の線路160、161のうち、一方の線路160に設けられたセンサ170からのセンサ情報が所定時間以上、系統安定化システム10に届かない状態を示す。センサ情報(線路潮流Pのデータ)を受信できないセンサ170の位置200を、図9ではX印で示している。
【0099】
なお、図9では、第2の分割系統111に、第2の接続構成114を介して、第3の分割系統113が接続されている。さらに、図9の構成を説明する。第2の分割系統111のノード152から第1の分割系統110のノード150に向けて、線路160には線路潮流P0の電力が流れている。第2の分割系統111のノード153から第1の分割系統110のノード151に向けて、線路161には線路潮流P1の電力が流れている。第3の分割系統113のノード156から第2の分割系統111のノード154に向けて、線路162には線路潮流P2の電力が流れている。第2の分割系統111のノード155から第3の分割系統113のノード157に向けて、線路163には線路潮流P3の電力が流れている。
【0100】
図10を参照して、第2の機能不良設備判定方法を説明する。図10に示す第2の判定方法は、センサ170からのセンサ情報が所定時間以上異常値を示す場合に、機能不良設備が発生したと判定する。
【0101】
判定プログラムCP11は、センサ170からセンサ情報(線路潮流P)を受信して系統データベース22に記憶し(S11)、センサ情報のデータに異常値が継続しているかを判定する(S21)。
【0102】
データ異常値が継続している場合(S21:YES)、判定プログラムCP11は、異常値を出力しているセンサ170の位置を特定して記憶する(S31)。判定プログラムCP11は、異常値を示すセンサ170の近傍の設備を特定し(S41)、その設備を機能不良設備であると判定して、分割領域データベース23に記憶する(S51)。図6で述べたと同様に、機能不良設備であると判定された設備等の情報を、画面に出力してユーザに提示することもできる。
【0103】
センサ情報に含まれる線路潮流Pの値が異常であるか否かは、図13に示す線路容量テーブル22T2の値と比較することで判断される。センサ情報に含まれている線路潮流Pの値が、テーブル22T2に規定されている線路容量の値を越えた場合は、データ異常値であると判定される。
【0104】
データ異常値が継続しているか否かを判定するための所定時間は、例えば、計測周期が30秒の場合、2分間程度の値に設定される。例えば、30秒程度の短い時間だけ、データに異常が生じた場合は、電力系統を安定化させるための制御を実行する必要がないと考えられるためである。
【0105】
図12は、或る設備210が原因となって、線路160でデータ異常値が生じた場合の例を示している。
【0106】
図14を参照して第3の機能不良設備判定方法を説明する。図14に示す第3の判定方法では、保守作業等により設備構成が変更される場合に、その変更対象の設備を機能不良設備であると判定する。
【0107】
判定プログラムCP11は、系統管理サーバ320から設備構成変更情報を受信し、系統データベース22に記憶する(S12)。判定プログラムCP11は、設備構成変更情報に基づいて、変更対象の設備を特定し(S22)、変更対象設備を機能不良設備であると判定して、分割領域データベース23に記憶する(S32)。機能不良設備であると判定された設備に関する情報は、画面を介してユーザに提示することもできる。
【0108】
図15の設備構成変更情報22T3の1行目に示すように、例えば、線路160が2011/06/28の14:30:30から停止される場合、その線路160は正常に使用できない機能不良設備であると判定することができる。
【0109】
図16は、線路160で停止201が生じた場合の例を示している。
【0110】
図17を参照して第4の機能不良設備判定方法を説明する。図17に示す第4の判定方法では、災害の発生を予測する情報に基づいて、機能不良設備を判定する。
【0111】
図18の全体構成図に示すように、系統安定化システム10は、通信ネットワーク300を介して、災害予測サーバ330からの災害予測情報を受信できる。災害予測サーバ330は、例えば、台風または地震のような災害がいつ頃どこで起きるかを予測し、その予測結果を系統安定化システム10に送信する。
【0112】
判定プログラムCP11は、災害予測サーバ330から災害予測情報を受信して、系統データベース22に記憶する(S13)。判定プログラムCP11は、災害発生が予測される地理的範囲内に電力系統100の設備が存在するかを判定する(S23)。判定プログラムCP11は、災害の発生が予測された地域内の設備を特定し、その設備を機能不良設備であると判定して、分割領域データベース23に記憶する(S33)。上記同様に、機能不良設備であると判定された設備に関する情報は、画面に出力することができる。
【0113】
図19は、災害予測情報330T1の一例を示す。災害予測情報330T1は、例えば、被災する可能性のある設備に関する情報330T1C1と、発生が予測される災害に関する情報330T1C2とを管理する。
【0114】
被災可能性のある設備に関する情報330T1C1は、例えば、線路を特定する情報と、線路の始端ノード及び終端ノードをそれぞれ特定する情報と、設備の位置情報とを備えている。災害に関する情報330T1C2は、例えば、災害発生が予測される地域の位置情報と、現時点から所定時間内の発生確率とを備えることができる。さらに、災害の種類、災害による被害の程度等を情報330T1C2に含めてもよい。図19では、その1行目に示すように、線路160において、今から所定時間(例えば1時間)以内に、50%の確率で災害が生じることが記録されている。
【0115】
図20は、線路160の近くで災害の発生が予測された場合の例である。図20に、点線で示す円は、災害の発生が予測される地域202を示す。
【0116】
図5のステップS4に戻る。想定事故安定判定プログラムCP12は、機能不良設備判定プログラムCP11により検出された機能不良設備について、設備データベース21の想定事故対策リスト21T1に記載の各想定事故に対する安定性(安定か否か)をそれぞれ判定する。
【0117】
想定事故安定判定プログラムCP12は、機能不良設備について、想定事故対策リスト21T1に記載された想定事故対策が安定か判定する(S5)。安定な場合はステップS4に戻り、不安定な場合はステップS6に移る。
【0118】
図5のステップS5の詳細を、図21のフローチャートを参照して説明する。図18は、想定事故に対する安定性(安定か否か)を判定する処理のフローチャートである。
【0119】
想定事故安定判定プログラムCP12は、想定事故対策リスト21T1に記載の、想定事故に対処するための安定化設備を読み込む(S100)。想定事故安定判定プログラムCP12は、ステップS100で読み込んだ安定化設備とステップS3で判定された機能不良設備とを比較する(S200)。想定事故安定判定プログラムCP12は、その比較結果に基づいて安定であるか否かを判定し、その判定結果を記憶する(S300)。
【0120】
図23は、想定事故に対して安定であるか否かを判定した結果を記憶する想定事故安定判定リスト23T1の一例である。想定事故安定判定リスト23T1は、例えば、想定事故の番号23T1C1と、想定事故の内容23T1C2と、安定化対策の内容23T1C3と、機能不良設備を特定する情報23T1C4と、機能不良設備と安定化設備とが一致するか判定する一致フラグ23T1C5とを管理する。
【0121】
想定事故の内容23T1C2には、想定事故の発生箇所と、想定事故の様相(状況)が記憶される。安定化対策の内容21T1Cは、想定事故に対処して系統の安定化のために使用する安定化設備を特定する情報と、その安定化設備の動作を記憶する。
【0122】
機能不良設備がいずれかの安定化設備と一致する場合、その機能不良設備は、想定事故に対して不安定であると判定される。これに対し、機能不良設備がいずれの安定化設備にも一致しない場合、その機能不良設備は、想定事故に対して安定であると判定される。
【0123】
図23の想定事故安定判定リスト23T1では、線路160が機能不良設備であると判定された場合を示す。この場合、機能不良設備である線路160は、1番目の安定化対策における安定化設備と一致するため、一致フラグ23T1C5に黒丸が設定される。不一致の場合、一致フラグには“−”が設定される。
【0124】
図5のステップS6に戻る。分割領域計算プログラムCP13は、分割領域を算出して記憶する。ステップS6の詳細を、図24のフローチャートを用いて説明する。
【0125】
分割領域計算プログラムCP13は、機能不良設備と正常設備と線路潮流Pをそれぞれメモリ14から読み込み(S200)、機能不良設備と正常設備とを分割しうる全てのカットを検出する(S210)。カットとは、機能不良設備を含む系統構成と、正常設備のみを含む系統構成とを分割するための領域間の境界である。つまり、ステップS210では、不健全系統を電力系統から切り離すための分割パターンを全て抽出する。
【0126】
分割領域計算プログラムCP13は、検出された各カットのうち、制約設備が含まれるカットを抽出する(S220)。分割領域計算プログラムCP13は、各カットのフェンス潮流(ΣP)をそれぞれ算出し、フェンス潮流が最小となるカットを判定して、メモリ14に記憶する(S230)。
【0127】
図27を参照して、フェンス潮流の算出例を説明する。分割系統110と分割系統111の間には、3つの線路160、161、162が設けられている。線路160の線路潮流をP1、線路161の線路潮流をP2、線路162の線路潮流をP3とする。
【0128】
図27の場合、分割系統110と分割系統111の間のフェンス潮流ΣPは、各潮流P1、P2、P3の合計値として求めることができる(ΣP=P1+P2+P3)。潮流の向きは、例えば、分割系統110から分割系統111に向かう方向を正とし、逆向きの潮流を負として扱うことができる。この場合、線路潮流P1は正の潮流、線路潮流P2と線路潮流P3はそれぞれ負の潮流であると定義することができる。フェンス潮流ΣPは、P1と(−P2)と(−P3)の和として求められる。
【0129】
図28を参照して、フェンス潮流の他の算出例を説明する。図28の例では、3つの分割系統110、111、113が存在しており、機能不良設備を含む分割系統110を他の2つの分割系統111、113から切り離す場合のフェンス潮流を算出する。
【0130】
分割系統110と他の分割系統111、113との間のフェンス潮流ΣPは、分割系統110と分割系統111の間の線路潮流の和と、分割系統110と分割系統111の間の線路潮流の和とを合算して求める(ΣP=P1+P2+P3+P4+P5)。
【0131】
図29を参照して、機能不良設備を含む不健全系統を電力系統から分割するためのカットを抽出する様子を説明する。図29の例では、4個のノードN1〜N4が電力系統に含まれており、ノードN2が機能不良設備であり、ノードN3が制約設備であり、ノードN1及びN4が正常設備である。
【0132】
各ノード間の線路潮流には、理解のために具体的な数値を設定している。ノードN2からノードN1に向かう線路潮流の値は、4である(P=4)。ノードN3からノードN2に向かう線路潮流の値は、3である(P=3)。ノードN3からノードN1に向かう線路潮流の値も、3である(P=3)。ノードN1からノードN4に向かう線路潮流の値は、1である(P=1)。ノードN3からノードN4に向かう線路潮流の値は、5である(P=5)。
【0133】
以下、ノードN1〜N4を設備N1〜N4と呼び変えて説明する。分割領域計算プログラムCP13は、機能不良設備N2と正常設備N1、N3、N4とを分割する全てのカットC1〜C4を抽出する。
【0134】
第1のカットC1は、機能不良設備N2のみを含む系統構成(不健全系統)を、正常設備N1、N3、N4を含む系統構成(健全系統)から分離する。第2のカットC2は、機能不良設備N2と正常設備N3を含む不健全系統を、正常設備N1、N4を含む健全系統から分離する。第3のカットC3は、機能不良設備N2と正常設備N1を含む不健全系統を、正常設備N3、N4を含む健全系統から分離する。第4のカットC4は、機能不良設備N2と正常設備N1、N3を含む不健全系統を、正常設備N4のみを含む健全系統から分離する。
【0135】
上記4つのカットC1〜C4のうち、第2のカットC2と第4のカットC4とでは、想定事故が発生した場合でも優先して電力を供給すべき制約設備N3が、不健全系統に含まれている。不健全系統は、想定事故への対応能力が低下しているため、制約設備N3が不健全系統に含まれるのは、電力の安定供給の面で好ましくない。従って、上記4つのカットC1〜C4のうち、制約設備N3が健全系統に含まれるカットC1及びC3のみが、選択候補となる。
【0136】
そこで、カットC1のフェンス潮流を算出すると、その値は1となる(ΣP=4−3=1)。カットC3のフェンス潮流を算出すると、その値は−6となる(ΣP=1−3−4=−6)。フェンス潮流ΣPを絶対値で比較すると、フェンス潮流ΣPが最小となるカットは、カットC3である。そこで図24のステップS230では、カットC3が選択される。
【0137】
図5のステップS7に戻る。ステップS7では、ステップS6で算出された分割領域をメモリ14から読み出し、分割領域計算プログラムCP13によって、最適な分割領域を一つ算出して記憶する。最適な分割領域を算出する処理について、図25のフローチャートを用いて説明する。
【0138】
図25に示す最低分割領域算出処理では、分割領域計算プログラムCP13は、フェンス潮流ΣPが最小となるカットを取得し(S300)、フェンス潮流ΣPが最小となるカットを分割領域データベース23の分割領域リストに記憶する(S310)。
【0139】
図5のステップS9に戻る。系統安定化システム10は、不健全系統と健全系統とを分割する計画についての各種データ(画像データ、数値データ等)を作成して、表示装置11に表示させる。
【0140】
図30は、分割結果(分割予定)を示す画面G10を示す。画面G10は、例えば、系統状況を表示する第1表示領域G110と、需給バランスと線路潮流と安定度とフェンス潮流とを表示する第2表示領域G120と、系統構成を模式図として示す第3表示領域G130とを含む。
【0141】
系統状況を示す第1表示領域G110では、ステータス(センサ情報が欠損した線路と、欠損であると判定された時刻)と、改善のために実施する制御方法(線路161を分割する指令と、分割する時刻)とを表示する。
【0142】
第2表示領域G120では、発電量ΣG[MW]と、負荷量ΣL[MW]と、線路に流れる潮流P[p.u.]と、安定度の指標としての周波数f[Hz]と、フェンス潮流との、各時系列変化を、分割領域毎に表示する。
【0143】
第3表示領域G130では、系統構成を模式的に表示する。図30に示すようなディスプレイ画面G10を作成してユーザに提示することで、ユーザは、電力系統の分割が適切であるかを直感的に理解でき、ユーザの使い勝手が向上する。なお、系統安定化システム10は、系統安定化システム10の外部に存在する端末に画面G10を送信して表示させてもよい。例えば、系統安定化システム10と別に構成されたコンソール端末、または、携帯電話等に画面を表示させることもできる。
【0144】
図31は、系統状況と周波数偏差の、時系列変化を示す画面G121である。このディスプレイ画面G121の上段には、系統状況として、ステータス(センサ情報が欠損した線路と、欠損であると判定された時刻)と、改善のために実施される制御方法(線路161の分割指令と、分割する時刻)とを表示する。
【0145】
画面G121の下段には、周波数偏差の時系列変化を表示する。このようなディスプレイ画面G121をユーザに提示すれば、ユーザは、電力系統の状態を直感的に理解することができ、使い勝手が向上する。
【0146】
図5のステップS8に戻る。分割領域計算プログラムCP13によって得られた分割領域リストに基づいて、系統安定化システム10は、所定の各開閉器180を作動させるための制御指令を作成する。系統安定化システム10は、所定の各開閉器180に、制御指令を送信して動作させる。
【0147】
図32には、電力系統を分割する前の状態G210と、電力系統を分割した後の状態G220とを対比して示す画面G20である。
【0148】
このように構成される本実施例では、以下の効果を奏する。本実施例では、機能不良設備が検出された場合(判定された場合)、その機能不良設備を含む不健全系統を、電力系統100から分離させることができる。これにより、本実施例では、その後、不健全系統に想定事故が発生した場合でも、不健全系統で生じる不具合が健全系統に波及して障害が広がるのを未然に防止できる。
【0149】
そして、本実施例では、電力系統の一部である不健全系統を、想定事故の発生前に電力系統から切り離すことで、残された多くの系統構成について想定事故への対応能力を維持することができ、電力系統に対する信頼性を向上できる。
【0150】
このように本実施例では、機能不良であると判定された設備を有する系統構成は、たとえ今現在電力が正常に供給されていても、電力系統100から切り離す。切り離された不健全系統内に、太陽光発電装置またはガスタービン型発電機等の分散電源が十分に設けられている場合、不健全系統は独立した系統として存続可能である。つまり、不健全系統内の分散電源は、独立運転が許可され、分散電源からの電力が不健全系統内の負荷に供給される。
【0151】
不健全系統を電力系統から切り離す場合の影響をできるだけ少なくするために、制約設備が不健全系統に含まれないように制御する。このような判定指標に加えて、さらに、不健全系統内の発電量と消費量との需給バランスに着目することもできる。そこで、本実施例では、図30及び図31の画面にて、各分割領域における電力供給の安定性(周波数変化)を算出して表示する。これにより、ユーザは、電力需給ができるだけバランスするように、不健全系統を電力系統から切り離すための最適なカット(最適分割領域)を選択することができる。
【実施例2】
【0152】
図33〜図35を参照して、第2実施例を説明する。本実施例は、第1実施例の変形例に相当する。従って、第1実施例との相違を中心に説明する。
【0153】
第1実施例では、図21で述べたように、機能不良設備と想定事故対策リストに記載の安定化設備とを比較することで、安定であるか不安定であるかを判定した。これに対し、本実施例では、系統のオンライン情報を用いて、機能不良設備を備えた系統構成の、想定事故に対する安定度を算出し、安定であるか不安定であるかを判定する。
【0154】
つまり、第1実施例では、時々刻々と変化する系統状態を無視して、機能不良設備と安定化設備(想定された最過酷の系統状態に対する想定事故対策リストに記載の安定化設備)とを比較するだけで安定判別を行った。
【0155】
これに対し、本実施例では、時々刻々と変化する系統状態をオンラインで監視し、機能不良設備が発生した場合に、現在の系統状態で計算した想定事故対策が必要かどうかその都度判別する。これにより、本実施例では、より正確な安定判別が可能となる。従って、第1実施例の想定事故対策よりも本実施例の想定事故対策の方が対策によって発生する損失を小さくできるという効果を期待できる。ここで、損失とは、例えば想定事故対策によって生じうる、需要家の停電による社会的経済損失のことである。
【0156】
図33は、本実施例の全体構成を示す。本実施例の系統安定化システム10Aは、図2に示す系統安定化システム10に比べて、さらに、安定度計算データベース26と、計測データベース27と、計算結果データベース28とを備える。さらに、本実施例のプログラムデータベース25Aは、図34に示すように、状態推定プログラムCP14と、潮流計算プログラムCP15と、安定度計算プログラムCP16とをさらに備える。本実施例のプログラムデータベース25Aは、想定事故安定判定プログラムCP12を備えていない。
【0157】
なお,安定度計算データベース26には、安定度計算データD5として、潮流計算値と、状態推定に必要な線路定数Zと、センサ誤差とが記憶されている。そして、データベース26には、安定度計算に必要な発電機モデル及び定数と、制御系モデル及び定数と、想定事故条件とが記憶されている。計測データベース27には、計測データD6として、電力系統100の時間断面毎のノード電圧V、線路の電流I、有効電力P、無効電力Q、負荷や発電などの有効電力P、無効電力Qなどの情報が記憶される。計算結果データベース28には、計算結果データD7として、状態推定結果と、潮流計算結果と、安定度計算結果とが記憶されている。
【0158】
本実施例では、まず一定の周期で(例えば30秒周期で)電力系統100のオンライン情報を計測データベース27に格納する。前記オンライン情報は、電力系統100から通信ネットワーク300を介して通信インターフェース15で伝送される。
【0159】
次に系統安定化システム10Aの計算処理内容について説明する。基本的な計算処理内容は第1実施例と同じであるが、図35の系統安定化処理のフローチャートを用いて相違点を説明する。図35のフローチャートは図5のフローチャートに対応する。
【0160】
系統安定化システム10Aは、機能不良設備判定プログラムCP11により系統データD2を演算処理することで、機能不良設備を判定し(S3)、機能不良設備リストを作成して記憶し、機能不良設備リストを表示装置11に表示させる(S3)。
【0161】
続いて第1実施例とは異なり、系統安定化システム10Aは、計測データD6を入力にして、状態推定プログラムCP14を実行して得た電力系統100の時間断面毎のノード電圧V、線路の電流I、有効電力P、無効電力Q、負荷や発電などの有効電力P、無効電力Qなどの情報を安定度計算データベース26に格納する。
【0162】
状態推定計算とは、計測データD6と設備データD1と系統データD2を基に、異常データの有無の判定と除去を行い、特定の時間断面におけるもっともらしい系統状態を推定する計算のことである。上記異常データとは、例えば、通信障害などにより近傍のデータと明らかに離れた量になったデータのことである。
【0163】
状態推定計算の方法は、Lars Holten、 Anders Gjelsvlk、 Sverre Adam、 F. F. Wu、 and Wen-Hs I ung E. Liu、 Comparison of Defferent Methods for State Estimation. IEEE Trans. Power Syst.、 3(1988)、 1798-1806 に記載の方法などに即して行う。
【0164】
次に、系統安定化システム10Aは、計算結果データD7の状態推定結果と設備データD1と系統データD2とを入力にして、潮流計算プログラムCP15で系統の潮流状態を計算し、系統の各送電線に流れる潮流と各母線の電圧及び位相角を計算結果データベース28に潮流計算結果として格納する(S3A)。
【0165】
系統安定化システム10Aは、計算結果データD7の潮流計算結果と設備データD1と系統データD2と安定度計算データD5とを入力にして、安定度計算プログラムCP16で系統の安定性を求め、各想定事故に対して安定か否かを計算結果データベース28に格納する(S5A)。
【0166】
上記安定度計算とは、電力系統の事故に対する安定性を計算する手法であり、例えば、電圧安定度計算と周波数安定度計算と過渡安定度計算のいずれか一つ又は複数の計算のことである。安定度計算の方法は、PRABHA KUNDUR,The EPRI Power System Engineering Series,Power System Stability and Control,EPRI,(1994)に記載の各種安定度計算方法などに即して行う。
【0167】
上記安定度計算(S5A)は、図5に示す系統安定化処理における、想定事故についての安定判別S5に相当する。安定度計算によって、不安定と判別された場合には,系統安定化処理の分割領域を算出する(S6)。全ての想定事故について、以下のステップS5に相当する安定度計算及びステップS6を繰り返し実行する(S4)。以降のステップは、第1実施例と同様である。このように、オンライン情報に基づいて安定度を計算することで、系統の状態に合わせた最適な安定判定を実施できる。
【0168】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、電力系統から切り離された不健全系統について監視を続け、機能不良設備が正常設備に復帰したと判定できる場合は、所定の開閉器に制御指令を出力し、不健全系統であった系統構成を電力系統に再接続することもできる。例えば、センサ情報を正常に受信できるようになった場合、センサ情報の異常値が無くなった場合、保守作業等が終了して設備の状態が正常に回復した場合、予測された災害が発生しなかった場合等に、不健全系統を電力系統に復帰させてもよい。
【符号の説明】
【0169】
1、10、10A:系統安定化システム
2、100:電力系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統を安定化するための系統安定化システムであって、
前記電力系統内の観測情報と事前に定めた複数の想定事故リスト及び災害情報を取得するための情報取得部と、
前記所定の情報に基づいて、前記電力系統に含まれる複数の設備のうち、正常動作しない可能性があると予測される機能不良設備を判定するための機能不良設備判定部と、
前記機能不良設備が、前記電力系統を安定化するために予め用意される所定の安定化対策に関連しているか否かを判定する安定判定部と、
前記機能不良設備が前記安定化対策に関連していると判定された場合、前記電力系統を、前記機能不良設備を含む不健全系統と、前記機能不良設備を含まない健全系統とに分割するための分割領域を判定する分割領域判定部と、
前記分割領域判定部による判定結果に基づいて前記電力系統を前記健全系統と前記不健全系統とに分割するための制御指令を前記電力系統に含まれる所定の装置に送信するための制御指令送信部と、
を備える系統安定化システム。

【請求項2】
前記安定判定部は、前記機能不良設備が前記所定の安定化対策に関連しており、かつ、予め設定される想定事故に対して安定であるか否かを判定する、
請求項1に記載の系統安定化システム。

【請求項3】
前記分割領域判定部による判定結果をユーザに提示するための判定結果提示部をさらに備え、
前記判定結果提示部により提示される前記判定結果に対するユーザの選択を確認した後で、前記制御指令送信部は、前記制御指令を前記所定の装置に送信する、
請求項2に記載の系統安定化システム。

【請求項4】
前記分割領域判定部は、予め設定される制約条件を満たすように、前記分割領域を判定する、
請求項3に記載の系統安定化システム。

【請求項5】
前記情報取得部は、前記所定の情報として、前記電力系統の線路潮流を示す線路潮流データを前記電力系統に設けられるセンサ装置から取得し、
前記設備判定部は、前記センサ装置から前記線路潮流データを所定期間以上取得できなかった場合、前記電力系統に含まれる複数の設備のうち前記センサ装置に対応する設備を前記機能不良設備として判定する、
請求項4に記載の系統安定化システム。

【請求項6】
前記情報取得部は、前記センサ装置から取得する前記線路潮流データが予め設定される所定範囲内に収まらない異常値を示す場合、前記電力系統に含まれる前記複数の設備のうち前記センサ装置に対応する設備を前記機能不良設備として判定する、
請求項5に記載の系統安定化システム。

【請求項7】
前記情報取得部は、前記電力系統の構成変更を示す開閉器の開閉状態と設備構成変更情報を取得し、
前記設備判定部は、前記設備構成変更情報に含まれる変更対象の設備を前記機能不良設備として判定する、
請求項6に記載の系統安定化システム。

【請求項8】
前記情報取得部は、前記電力系統に関連する地域での災害発生を予測する災害予測情報を取得し、
前記設備判定部は、前記電力系統に含まれる前記複数の設備のうち、前記災害予測情報に示される災害予測範囲内に存在する設備を前記機能不良設備として判定する、
請求項7に記載の系統安定化システム。

【請求項9】
前記安定判定部は、前記機能不良設備が、所定の事故に対する前記所定の安定化対策で使用される安定化設備に該当するか否かを判定し、
前記機能不良設備が前記安定化設備に該当する場合、前記分割領域判定部は、前記電力系統を、前記不健全系統と前記健全系統とに分割するための分割領域を判定する、
請求項8に記載の系統安定化システム。

【請求項10】
前記所定の装置とは、前記電力系統に含まれる複数の開閉器のうち、前記不健全系統と前記健全系統とを分離するために使用される所定の開閉器であり、
前記制御指令は、前記所定の開閉器を作動させるための信号またはデータとして構成される、
請求項9に記載の系統安定化システム。

【請求項11】
電力系統を安定化するための系統安定化方法であって、
前記電力系統に関する所定の情報を取得する情報取得ステップと、
前記所定の情報に基づいて、前記電力系統に含まれる複数の設備のうち、正常動作しない可能性があると予測される機能不良設備を判定するための機能不良設備判定ステップと、
前記機能不良設備が、前記電力系統を安定化するために予め用意される所定の安定化対策に関連しているか否かを判定する安定判定ステップと、
前記機能不良設備が前記安定化対策に関連していると判定された場合、前記電力系統を、前記機能不良設備を含む不健全系統と、前記機能不良設備を含まない健全系統とに分割するための分割領域を判定する分割領域判定ステップと、
前記分割領域判定部による判定結果に基づいて前記電力系統を前記健全系統と前記不健全系統とに分割するための制御指令を前記電力系統に含まれる所定の装置に送信するための制御指令送信ステップと、
をそれぞれコンピュータに実行させるための系統安定化方法。

【請求項12】
前記分割領域判定ステップによる判定結果をユーザに提示するための判定結果提示ステップをさらに備え、
前記制御指令送信ステップは、前記判定結果提示ステップにより提示される前記判定結果に対するユーザの選択を確認した後で、前記制御指令を前記所定の装置に送信する、
請求項11に記載の系統安定化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2013−99065(P2013−99065A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238407(P2011−238407)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】