説明

純水製造装置

【課題】簡単かつ低コストな構造で、低ケミカル化および低環境負荷化、省窒素ガス化、溶解性気体成分除去の高効率化、低ランニングコスト化が図れるようにする。
【解決手段】原水1を供給する給水タンク2、給水タンク2から供給される原水1を、RO膜3を通して純水化するRO装置4、RO装置4で純水化された純水5を導入して貯留し使用に供する純水タンク6を少なくとも備え、RO装置4の上流域内に窒素ガスをマイクロバブル以下の粒径にて発生させまたは注入する窒素マイクロバブル供給手段8を設けて、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置に関し、詳しくは、逆浸透膜(RO膜)を利用して純水を製造する純水製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の純水製造装置は、下記の特許文献1などによって既に知られている。特許文献1は、図7にブロック化して示すように、RO膜aを利用して純水を製造する純水製造装置bと、この純水製造装置bで製造した純水を給水給配管にて純水使用部cに供給して純水の使用に供する純水供給システム、ガス溶解装置を開示している。特許文献1が開示する純水製造装置bは、給水タンクdからの水を、溶解イオン成分と、溶解性気体成分(酸素、炭酸)を除去する脱炭酸塔eに通して後、RO装置fにて純水化している。純水はさらに窒素バブリングタワーgでの窒素バブリングにより前段までで除去しきれなかった溶解性気体成分(酸素、炭酸)を脱気処理することでより純度の高い純水が製造される。また、こうして製造した純水は、サブタンクhに貯蔵しながら純水の使用部cに供給できるようにし、純水の供給によるサブタンクhでの水位低下に対して窒素バブリングタワーgへの供給窒素を分岐導入することで調整するようにしている。
【0003】
RO装置fでは、原水中の溶解イオン成分の90%以上が濃縮されるため、RO膜aの表面で金属イオンがスケール化し、RO膜aの透過性が低下するが、このスケール化を抑制するのに炭酸イオン除去を目的とした脱炭酸塔eが設けられ、RO装置f手前にてスケール(陽イオン金属)分散剤を添加するようにしている。スケールは主に炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムであるが、RO装置f手前での分散剤はカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの陽イオン金属が重炭酸イオンやケイ酸イオンなどのマイナスに電荷したイオンと結合してスケールを発生することを抑制している。また、RO膜a表面では微生物が繁殖し、スライムとなって透過性が低下するが、この微生物スライムの付着に対してはスライムコントロール剤を添加することで抑制されている。一方、溶解性気体成分は曝気により除去されるが、除去後は窒素バブリングタワーgでの下方からの窒素パージにより気体の再溶解を抑制している。また、サブタンクhでも上方から窒素ガスをパージして気体成分の溶解を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−99382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の技術では、酸、スケール分散剤、スライムコントロール剤など各種薬剤の使用により、純水製造におけるランニングコストが非常に高くなる。また、薬品による環境負荷も高い。さらに、具体的には、窒素バブリングタワーgやサブタンクhへの窒素パージでの窒素消費量が高い上、純窒素を用いるためコストが高くつく。特に窒素パージは純水製造量、原水の供給流量にかかわらず常時一定流量で注入するため効率が非常に悪い。さらに、脱炭酸塔d、窒素バブリングタワーgなどの付帯装置が多く、設備が複雑かつ大型で、イニシャルコストも高価につく。
【0006】
本発明は、簡単かつ低コストな構造で、低ケミカル化および低環境負荷化、省窒素ガス化、溶解性気体成分除去の高効率化、低ランニングコスト化が図れる純水製造装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の純水製造装置は、原水を供給する給水タンク、給水タンクから供給される原水を、RO膜を通して純水化するRO装置、RO装置で純水化された純水を導入して貯留し使用に供する純水タンクを少なくとも備え、RO装置の上流域内に窒素ガスをマイクロバブル以下の粒径にて発生させまたは注入する窒素マイクロバブル供給手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成では、RO装置上流での原水中に、窒素マイクロバブル供給手段からマイクロバブル以下の粒径となった窒素マイクロバブルを発生または注入するので、脱気作用を発揮する上、マイクロバブル以下の粒径となった窒素マイクロバブルはPHに依存するが表面の負帯電にて、原水中で正帯電している金属イオンに引き寄せられて電気的に中和する作用、およびバブル自体のスライムを含む疎水性物質を吸着する作用があるので、水中やRO膜表面でのスケール発生、スライムの増殖を抑制することができる。また、マイクロバブル以下の粒径の窒素マイクロバブルは水中での長期滞留性により、RO装置内で消滅することなく金属イオンを安定的に分散し、スライムのRO膜a表面での付着を抑制し、バブルの自己加圧作用にて窒素マイクロバブルの消滅過程での原水への溶存率を高められるので脱気率、気体成分除去率、および窒素ガスの有効率が向上する。
【0009】
なお、窒素マイクロバブルにより水中の酸素や炭酸ガスを減少することで、それらを栄養とする菌や微生物などのスライムの繁殖を抑制するという相乗効果が得られる。
【0010】
上記において、さらに、窒素マイクロバブル供給手段は、粒径が50μm以下の窒素マイクロバブルを供給することを特徴とすることができる。
【0011】
このような構成では、上記に加え、さらに、窒素マイクロバブルの粒径が50μm以下であることにより、前記自己加圧作用による気体成分の溶解率、除去率を高められる。
【0012】
上記において、さらに、窒素マイクロバブル供給手段は、RO装置の直前または内部に設置することを特徴とすることができる。
【0013】
このような構成では、上記に加え、さらに、窒素マイクロバブルのRO装置の直前ないしは内部への供給により、広いRO装置内原水域での滞留時間、浮上距離を大きくして、金属イオンの分散効果やスライムの吸着・剥離効果を高められる。
【0014】
上記において、さらに、RO装置の上流に酸性剤またはおよびアルカリ剤を原水中に供給してpHを調整するpH調整手段を設けたことを特徴とすることができる。
【0015】
このような構成では、上記に加え、さらに、原水のpHをpH調整手段により調整して、例えば、窒素マイクロバブルが負に帯電するpH4以上で、かつ、金属イオンがスケール化しやすくなるpH9を超えたpH域およびアルカリ域を外した最適環境を確保して、スケールの発生をさらに抑えられるし、帯電電位、ゼータ電位を調整することができる。
【0016】
上記において、さらに、RO装置の上流に脱炭酸塔を設け、この脱炭酸塔の直前または内部に窒素マイクロバブル供給手段を設けたことを特徴とすることができる。
【0017】
このような構成では、上記に加え、さらに、脱炭酸塔により原水中の遊離炭酸を除去できるが、その直前又は内部に設けた窒素マイクロバブル供給手段から、原水中に窒素マイクロバブルを注入ないしは発生させることにより、窒素ガスの分圧が上昇するので、脱炭酸作用を高められる。
【0018】
上記において、さらに、給水タンクの内部に窒素マイクロバブル供給手段を設けることを特徴とすることができる。
【0019】
このような構成では、上記に加え、さらに、原水供給源において窒素マイクロバブル供給手段からの窒素マイクロバブル供給により、原水中の脱気が図れるので脱炭酸塔の設置を省略することができる。
【0020】
上記において、さらに、純水タンクの内部に窒素を供給し、充満させる窒素供給手段を設けたことを特徴とすることができる。
【0021】
このような構成では、上記に加え、さらに、純水と他のガスとの接触を抑える必要があるが、原水中に窒素マイクロバブルが過剰に溶解した窒素ガスが、RO膜を通り抜けて圧力が低下したRO装置の下流側、特に純水タンクの純水中で窒素バブルとなるため、RO水と空気とが接触しやすいところを、RO水中の窒素バブルにより空気との接触が抑制されると共に、RO水中の窒素分圧が上昇することで、さらに溶解性気体成分(酸素、炭酸)の除去が可能となる。
【0022】
なお、上記において、さらに、窒素バブリングタワーを脱炭酸塔と共に設けることもでき、これによって、脱気不足となる場合の脱気を促進することができる。
【0023】
本発明のそれ以上の課題および特徴は、以下の詳細な説明および図面によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ自体単独で、あるいは可能な限り種々の組み合わせで複合して採用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の純水製造装置によれば、RO装置上流での原水中にマイクロバブル以下の粒径となった窒素マイクロバブルを発生させるか注入してその長期滞留性と高い接触率とにより、窒素の消費量を抑えて十分に働かせられ、窒素マイクロバブルによりその自己加圧作用を伴い脱気、気体成分除去、が図れて窒素バブリングタワーや脱炭酸塔の省略またはバブリング窒素量の低減が図れる上、原水中の金属イオンとの電気的な中和作用にて水中やRO膜表面でのスケール発生を抑えられるし、疎水性物質としてのスライムを吸着して除去しスライムコントロール剤を省略または低減するので、ノンケミカル化または低ケミカル化、装置の簡略化、低イニシャルコスト化、低ランニング化に加え、低環境負荷化も実現する。しかも、窒素マイクロバブルのRO装置内原水域での浮上により吸着している金属イオンやスライムを原水の表層へ持ち運んでオーバーフローさせるなどして除去しやすくなるので、それらの処理コストも低減することができる。
【0025】
上記に加え、さらに、窒素マイクロバブルの粒径が50μm以下として、前記自己加圧作用による気体成分の溶解率、除去率をさらに高められる。
【0026】
上記に加え、さらに、窒素マイクロバブルのRO装置の直前ないしは内部への供給により、広いRO装置内原水域での滞留時間、浮上距離を大きくして、金属イオンやスライムの吸着および原水表層への持ち運びの作用を高められるので、RO膜表面でのスケールやスライムの発生を効果的に抑えられる。
【0027】
上記に加え、さらに、原水のpHをpH調整手段により調整して、例えば、窒素マイクロバブルが負に帯電するpH4以上で、かつ、金属イオンがスケール化しやすくなるpH9を超えたpH域およびアルカリ域を外した最適環境を確保して、スケールの発生をさらに抑えられるし、帯電電位、ゼータ電位を調整することができる。
【0028】
上記に加え、さらに、脱炭酸塔により原水中の遊離炭酸を除去できるが、その直前又は内部に設けた窒素マイクロバブル供給手段から、原水中に窒素マイクロバブルを注入ないしは発生させることにより、窒素ガスの分圧が上昇するので、脱炭酸作用を高められる。
【0029】
上記に加え、さらに、原水供給源において窒素マイクロバブル供給手段からの窒素マイクロバブル供給により、原水中の脱気が図れるので脱炭酸塔の設置を省略することができる。
【0030】
上記に加え、さらに、純水と他のガスとの接触を抑える必要があるが、原水中に窒素マイクロバブルが過剰に溶解した窒素ガスが、RO膜を通り抜けて圧力が低下したRO装置の下流側、特に純水タンクの純水中で窒素バブルとなって純水と接触しやすいところを、RO水中の窒素バブルにより空気との接触が抑制されると共に、RO水中の窒素分圧が上昇することで、さらに溶解性気体成分(酸素、炭酸)の除去が可能となる。
【0031】
なお、上記において、さらに、窒素バブリングタワーを脱炭酸塔と共に設けることもでき、これによって、脱気不足となる場合の脱気を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る実施の形態の純水製造装置の1つの例を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の純水製造装置の別の例を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の純水製造装置の他の例を示す概略ブロック図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の純水製造装置の今1つの例を示す概略ブロック図である。
【図5】気泡径と気泡の上昇速度との関係を示すグラフである。
【図6】pHと気泡のゼータ電位との関係を示すグラフである。
【図7】従来の純水製造装置の例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施の形態について、図1〜図4を参照しながら具体的に説明し、本発明の理解に供する。以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載を限定するものではない。
図1に示す純水製造装置100、図2に示す純水製造装置200、図3に示す純水製造措置300、図4に示す純水製造装置400は、共通する部分や対象には同一の符号を付して説明すると、原水1を供給する給水タンク2、給水タンク2から供給される原水1を、RO膜(Reberse Osmosis Membrane)3を通して純水化するRO装置4、このRO装置4で純水化された純水5を導入して貯留し、下流に接続した2次装置500での、再処理や洗浄といった各種使用に供する純水タンク6を少なくとも備え、RO装置4の上流域内に窒素ガス7をマイクロバブル以下の粒径にて発生させまたは注入する窒素マイクロバブル供給手段8を設けた点で共通している。このような基本的な構成によって、RO装置4上流での原水1中に、窒素マイクロバブル供給手段8からマイクロバブル以下の粒径となった図1のRO装置4の原水1中に代表して示す窒素マイクロバブル7を発生または注入するので、窒素が原水1に対する脱気作用を発揮する上、マイクロバブル以下の粒径となった窒素マイクロバブル7はPHに依存するが表面の負帯電に
て、原水中で正帯電している金属イオンに引き寄せられて電気的に中和する作用、およびバブル自体のスライムを含む疎水性物質を吸着する作用があるので、原水1中やRO膜3表面でのスケール発生、スライムの増殖を抑制することができる。また、マイクロバブル以下の粒径の窒素マイクロバブル7は水中での長期滞留性により、RO装置内で消滅することなく金属イオンを安定的に分散し、スライムのRO膜a表面での付着を抑制し、バブルの自己加圧作用にて窒素マイクロバブル7の消滅過程での原水1への溶存率を高められるので脱気率、気体成分除去率、および窒素ガスの有効率が向上する。
【0034】
以上の結果、RO装置4上流での原水1中にマイクロバブル以下の粒径となった窒素マイクロバブル7を発生させるか注入してその長期滞留性と高い接触率とにより、窒素の消費量を抑えて十分に働かせられ、窒素マイクロバブル7によりその自己加圧作用を伴い脱気、気体成分除去、が図れて図1に示す例の純水製造装置100のように、図4に示した例の純水製造装置400が採用している窒素バブリングタワー11や、図2に示す純水製造装置200、図3に示す純水製造装置300、図4に示す純水装置400が共に採用している脱炭酸塔12、酸(硫酸)添加の省略、またはバブリング窒素量の低減が図れる上、原水1中の金属イオンとの電気的な中和作用にて原水1中やRO膜3表面でのスケール発生を抑えられるし、疎水性物質としてのスライムを吸着して除去し、図2に示す純水製造装置200、図3に示す純水製造装置300、図4に示す純水装置400が共に採用しているスライムコントロール剤13を省略または低減するので、ノンケミカル化または低ケミカル化、装置の簡略化、低イニシャルコスト化、低ランニング化に加え、低環境負荷化も実現する。しかも、窒素マイクロバブル7のRO装置4内の原水1域での浮上により吸着している金属イオンやスライムを原水1の表層へ持ち運んでオーバーフローさせるなどして除去しやすくなるので、それらの処理コストも低減することができる。
【0035】
図1に示す純水製造装置100では、特に、脱炭酸塔、窒素場ブリングタワーの省略、酸、スライムコントロール剤の供給の省略により、最も単純化した簡単かつ小型な装置となっているし、環境負荷も大幅に低減したものとなっている。しかも、窒素マイクロバブル供給手段8を給水タンク2内に設けたことによって、給水タンク2内の原水1に対して脱炭酸塔が持つ炭酸ガス分離機能を発揮させられるので、脱炭酸塔を省略してもCO2と結合するスケールの発生が抑制され、スケール分散剤消費量を低減でき問題はない。また、水タンク2とRO装置4との距離を短縮できるので、スライム付着抑制効果が向上し、この点でもスライムコントロール剤を不要とできるし、用いる場合でも消費量を低減できる。結果、イニシャルコスト、ランニングコスト共に低減し、環境負荷も低減する。
【0036】
なお、RO膜3は純水製造上、水の分子の大きさである0.38ナノメートル以上の大きさの孔を有したものでよく、除去対象の粒子径によってそれより大きくすることができる。また、マイクロバブル供給手段8は、具体的に示していないが、特許文献2(特開2009−97431号公報)、特許文献3(特開2009−85048号公報)、特許文献4(特開2009−82903号公報)など既に種々な技術が提案され、実用されているので、本発明はそれら既に知られる技術を採用して実現できるので、具体的な説明は省略する。
【0037】
ここで、非特許文献1(URL[http点//unit.aist.go.jp/emtech−ri/26env−fluid/takahashi.pdf]マイクロバブルおよびナノバブルに関する研究 産業技術総合研究所 環京管理技術研究部門 高橋正好氏)は、気泡径と気泡の上昇速度との関係について、図5に示すグラフを実験結果として開示しているが、本発明者の実験では脱気作用、スケールおよびスライム発生の抑制上、許容できる上昇速度の上限は1000μm/s程度であることから、原水1内に注入しまたは発生させる窒素マイクロバブル7の粒径は、図5から50μm以下となる。そこで、窒素マイクロバブル供給手段8は、粒径が50μm以下の窒素マイクロバブルを供給するよう
にする。このように、窒素マイクロバブル7の粒径が50μm以下であることにより、広い吸水タンク1内やRO装置4内の原水1域などでの浮上しながらの自己加圧作用による気体成分の溶解率、除去率、金属イオンやスライムの吸着除去率を高められ、低ケミカル化および低環境負荷化、省窒素ガス化、溶解性気体成分除去の高効率化、低イニシャルコスト化、低ランニングコスト化に優れたものとなる。
【0038】
また、窒素マイクロバブル7は、金属イオンやスライムの吸着除去にはそれらが正帯電していることに関し、負帯電している必要がある。非特許文献1は、気泡のゼータ電位(zeta potential/electrokinetic potential)とpHとの関係につき、図6に示すグラフを実験結果として開示しているが、図6によれば、pHがほぼ4以上で負に帯電し、pH9までゼータ電位が負にて上昇するので、正帯電している陽イオン金属やスライムとの中和作用を営むのはpH4以上で、pH9に近くなるほど電位が高く陽イオン金属などとの中和作用が起きやすくなる。特に、本発明者は、陽イオン金属などもpHの上昇によって陰イオンと結合しスケール化しやすくなることから、pHは6〜8程度の範囲とするのが好適であることを知見している。
【0039】
これを満足するには、図2に示す純水製造装置200、図3に示す純水製造装置300、図4に示す純水製造装置400が採用しているように、RO装置4の上流に、酸、硫酸で代表される酸性剤14またはおよび亜硫酸Naで代表される還元剤15を原水1中に供給してpHを調整するpH調整手段16を設ければよい。これにより、原水1のpHをpH調整手段16により調整して、例えば、窒素マイクロバブル7が負に帯電するpH4以上で、かつ、金属イオンなどがスケール化しやすくなるpH9を超えたpH域およびアルカリ域を外した最適環境を確保して、スケールの発生をさらに抑えられるし、帯電電位、ゼータ電位を調整することもできる。
【0040】
図2に示す純水製造装置200は、RO装置4を純水タンク6に直接接続するのに、つまり、窒素バブリングタワーを省略するのに、純粋タンク6に窒素パージしなくても、RO装置4に供給する原水1を一部バイパスした経路に設けた窒素マイクロバブル供給手段8により窒素マイクロバブル7を供給して窒素で曝気させ、その分圧(例えば4気圧)によって原水1中に過剰の窒素を溶解しておき、RO装置4の下流を大気に開放することにより、分岐した純水1中に過剰に溶解していた窒素が気化し溶解性気体成分が除去される。これに加え、純水タンク6での窒素パージ量を削減または低減することができる。
【0041】
本例では、また、既述したpH調整手段16が酸性剤14を供給することがある点に対応して、脱炭酸塔12を前記窒素マイクロバブル供給手段8による働きに影響ないよう、前記窒素マイクロバブル供給手段8を設ける分岐経路の分岐点より上流に設けて、酸や炭酸などの溶解性気体成分を除去できるようにしてある。さらに、スライムコントロール剤13に加え、スケール分散剤17も供給するようにしているが、既述の通りいずれも省略または低減できる。このように、窒素マイクロバブル供給手段8は、RO装置4の直前に設置することができるほか、場合によりRO装置4の原水1域内部に設置することもできる。このような、窒素マイクロバブル7のRO装置4の直前またはおよび内部への供給により、広いRO装置内原水1域での滞留時間、浮上距離を大きくして、金属イオンやスライムの吸着および原水1表層への持ち運びの作用を高められる。
【0042】
図3に示す例の純水製造装置300は、図2に示す例の純水製造装置200における技術を、窒素マイクロバブル供給手段8の設置位置以外の構成の点で踏襲しているが、RO装置4の上流に設けた脱炭酸塔12の直前または内部に窒素マイクロバブル供給手段8を設けた点で相違している。このようにすると、脱炭酸塔12により原水1中の遊離炭酸を除去できるが、その直前又は内部に設けた窒素マイクロバブル供給手段8から、原水1中に窒素マイクロバブル7を注入ないしは発生させることにより、窒素ガスの分圧が上昇す
るので、脱炭酸作用を高められる。場合により脱炭酸塔12の直前および内部の双方に窒素マイクロバブル供給手段8を設けることもできる。
【0043】
さらに、図4に示す例の純水製造装置400は、図2に示す例の純水製造装置200の構成に加え、さらに、特許文献1が採用している窒素バブリングタワー11をRO装置4と純水タンク6との間に設けるとともに、純水タンク6の内部に窒素ガス19を供給し、充満させる窒素供給手段18を設けてある。既述したように、窒素バブリングタワー11を設けるにも、窒素の消費量を低減できるし、純水1と他のガスとの接触を抑える必要から、原水1中に窒素マイクロバブル7が過剰に溶解した窒素ガスが、RO膜を通り抜けて圧力が例えば大気圧程度まで低下したRO装置4の下流側、特に純水タンク6の純水1中で窒素バブルとなって純水と接触しやすいところを、窒素ガス19のパージにより所定の圧力を確保して窒素バブルの発生を抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、純水の製造に窒素マイクロバブルを利用して、装置の簡略化、小型化によるイニシャルコストの低減、ノン、低ケミカル化、低環境負荷化、低ランニングコスト化を図って純水を製造することができる。
【符号の説明】
【0045】
100、200、300、400 純水製造装置
500 2次装置
1 原水
2 給水タンク
3 逆浸透膜
4 RO装置
5 純水
6 純水タンク
7 窒素マイクロバブル
8 窒素マイクロバルブ供給手段
11 窒素バブリングタワー
12 脱炭酸塔
13 スライムコントロール剤
14 酸
15 還元剤
16 pH調整手段
17 スケール分散剤
18 窒素供給手段
19 窒素ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を供給する給水タンク、前記給水タンクから供給される原水を、RO膜を通して純水化するRO装置、前記RO装置で純水化された純水を導入して貯留し使用に供する純水タンクを少なくとも備え、前記RO装置の上流域内に窒素ガスをマイクロバブル以下の粒径にて発生させまたは注入する窒素マイクロバブル供給手段を設けたことを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
前記窒素マイクロバブル供給手段は、粒径が50μm以下の窒素マイクロバブルを供給する請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記窒素マイクロバブル供給手段は、前記RO装置の直前または内部に設置する請求項1、2のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記RO装置の上流に酸性剤またはおよびアルカリ性剤を原水中に供給してpHを4〜9に調整するpH調整手段を設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項5】
前記RO装置の上流に脱炭酸塔を設け、前記脱炭酸塔の直前または内部に前記窒素マイクロバブル供給手段を設けた請求項1、2のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項6】
前記窒素マイクロバブル供給手段は、前記給水タンクの内部に設けた請求項1、2のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項7】
前記純水タンクの内部に窒素を供給し、充満させる窒素供給手段を設けた請求項1〜6のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項8】
窒素バブリングタワーを前記脱炭酸塔と共に設けた請求項5、7のいずれか1項に記載の純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161409(P2011−161409A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29689(P2010−29689)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(591261336)パナソニック環境エンジニアリング株式会社 (29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】