説明

純水製造装置

【課題】RO処理した後イオン交換処理して純水を製造する装置において、イオン交換装置から高水質のイオン交換処理水を得ることができる純水製造装置を提供する。
【解決手段】RO装置と、該RO装置の処理水が通水されるイオン交換装置を有した純水製造装置において、該イオン交換装置では、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂の順に通水が行われ、アニオン交換樹脂出口水のpHが9以上(望ましくは9.5以上)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RO装置(逆浸透膜装置)及びイオン交換装置を用いた純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業等における純水や超純水製造設備などにおいて、RO装置と、RO処理水をイオン交換処理するイオン交換装置が広く用いられている。このイオン交換装置の1つとして、混床式イオン交換装置が周知である。
【0003】
混床式イオン交換装置は、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とが混合された混合イオン交換樹脂層を有するイオン交換塔を備え、例えば原水の下降流通水によりイオン交換塔において原水中のカチオン及びアニオンを同時にイオン交換して純度の高い純水を製造するようにしている。そして、各イオン交換樹脂の再生を行う時には同一塔内で、混合イオン交換樹脂層を逆洗分離し、各イオン交換樹脂の比重差により上層に強塩基性アニオン交換樹脂層を、下層に強酸性カチオン交換樹脂層を形成した後、各イオン交換樹脂層にそれぞれの再生剤を通液して両イオン交換樹脂を個別に再生するようにしている。この再生操作は同一塔内で行われることもあるし、各イオン交換樹脂を別の塔に個別に抜き出し、それぞれの塔内で個別に再生を行うこともある。
【0004】
従来の混床式イオン交換装置にあっては、「逆再生」と呼ばれるカチオン・アニオン交換樹脂の分離不完全による不具合が生じることがある。
【0005】
即ち、カチオン交換樹脂はH形で使用され、その再生は酸溶液を通液することにより行われる。一方、アニオン交換樹脂はOH形で使用され、その再生はアルカリ溶液を通液することにより行われる。前述の通り、混床式脱塩塔のイオン交換樹脂の再生に先立って、先ず混床に上向流通水を施して、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを比重差で分離した後、例えば、HClを塔下部から導入してカチオン交換樹脂の再生を行い、またNaOHを塔上部から導入してアニオン交換樹脂の再生を行う。各々の再生廃液は、アニオン交換樹脂床とカチオン交換樹脂床との界面部分に設けた排出配管より排出する。その後、Nガスを塔底部から導入してアニオン交換樹脂とイオン交換樹脂を混合して混床とし、通水を再開する。
【0006】
このような再生型混床式イオン交換塔においては、HCl,NaOHによる各イオン交換樹脂の再生に先立って、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを十分に分離する必要がある。この分離が完全に行われず、例えば、アニオン交換樹脂中にカチオン交換樹脂が混入すると、アルカリ(主として水酸化ナトリウムが使用される。)による再生(逆再生)でカチオン交換樹脂がNa形となり、この樹脂を使って脱イオンを行うとナトリウムイオンが放出される。また、カチオン交換樹脂中にアニオン交換樹脂が混入すると、酸(主として硫酸又は塩酸が使用される。)による再生(逆再生)でアニオン交換樹脂がSO形又はCl形となり、脱イオンに際して硫酸イオン又は塩素イオンが放出される。
【0007】
このような逆再生を防止しようとしたイオン交換装置として、特開平10−137751(特許文献1)には、塔内を通水性の仕切板で上下2室に区画し、一方の室にカチオン交換樹脂を充填し、他方の室にアニオン交換樹脂を充填した複床式のものが記載されている。この仕切板は、水の流通を許容するが、イオン交換樹脂の流通は、阻止するものであり、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合が防止される。この特許文献1の塔体は一塔式であり、装置面積が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−137751
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複床式イオン交換樹脂の場合はカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂の順で通水している。しかしながら、この順に通水するとアニオン交換樹脂からのNaを代表とする金属成分が多く溶出し、処理水の水質が低いものとなる。
【0010】
本発明は、RO処理した後イオン交換処理して純水を製造する装置において、イオン交換装置から高水質のイオン交換処理水を得ることができる純水製造装置を提供することを目的とする。
【0011】
ところで、上記特開平10−137751のイオン交換装置は、アニオン交換樹脂層とカチオン交換樹層とを仕切る仕切板が通水性であるため、再生時には、カチオン交換樹脂再生用の酸溶液が仕切板を通過してアニオン交換樹脂と接触することにより、逆再生が生じる。また、アニオン交換樹脂再生用のアルカリ溶液が仕切板を通過してカチオン交換樹脂と接触することにより、逆再生が生じる。特許文献1の0023,0027,0028段落には、再生時に一方の再生剤が他方のイオン交換樹脂層に流入しないように純水をバランス水として通水することが記載されているが、再生剤の混入を完全に防止するには不十分であり、逆再生が生じてしまう。
【0012】
本発明は、その一態様において、塔内部におけるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の逆再生が確実に防止され、再生直後でも高水質の脱イオン水を生産することができるイオン交換装置を有した純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の純水製造装置は、RO装置と、該RO装置の処理水が通水されるイオン交換装置とを有した純水製造装置において、該イオン交換装置では、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂の順に通水が行われ、アニオン交換樹脂出口水のpHが9以上(望ましくは9.5以上)であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の一態様で用いられるイオン交換装置の塔体は、内部にイオン交換樹脂が充填されるイオン交換装置用塔体において、該塔体内に遮水性の仕切板によって上室と下室とが区画形成されており、該塔体外を引き回された連通手段によって該上室と下室とが連通されている。イオン交換装置は、このイオン交換装置用塔体と、該塔体の上室及び下室のうち一方に収容されたカチオン交換樹脂と、他方に収容されたアニオン交換樹脂とを備えてなるものである。
【0015】
このイオン交換装置は、前記上室の上部に液を供給又は排出するための上部給排配管と、該下室の下部に液を供給又は排出するための下部給排配管とを備えており、前記連通手段は、該上室の下部に液を給排するための第1の連通配管と、該下室の上部に液を給排するための第2の連通配管と、該第1の連通配管と第2の連通配管とを連通する第3の連通配管と、該第3の連通配管の開閉手段と、該第1の連通配管及び第2の連通配管にそれぞれ設けられた再生液の給排手段と、を備えることが好ましい。
【0016】
このイオン交換装置は、前記上室の上部、上室の下部、下室の上部及び下室の下部にそれぞれ、水は通すがイオン交換樹脂の通過を阻止する集配水部材が配置されており、前記上部給排配管、第1の連通配管、第2の連通配管及び下部給排配管の末端がそれぞれ該集配水部材に接続されていることが好ましい。
【0017】
このイオン交換装置は、前記上室の上部及び下室の上部にそれぞれ粒状の不活性樹脂が充填されており、上室上部の集配水部材及び下室下部の集配水部材がそれぞれ該不活性樹脂中に埋設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
RO処理水をイオン交換処理するためのイオン交換装置への通水順をアニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂の順とすることにより、イオン交換装置の処理水金属濃度を大幅に低減でき、且つ先にアニオン交換樹脂に通水することで、カチオン交換樹脂給水のpHを高くすることができる。これにより、カチオン交換樹脂での実質的なカチオン交換キャパシティーを大幅に増加させることが可能になる。
【0019】
即ち、カチオン交換樹脂にHイオンが少ない高pHの水が流入すると、カチオン交換樹脂層内で起こる次式のイオン交換平衡反応が右向きにシフトするようになる。従って、カチオン交換樹脂層への流入水のpHが高いほどより多くのカチオンを交換することができる。
[H]−R+[Na]=[Na]−R+[H] ・・・(1)
([ ]−Rは樹脂相中の対イオンを表わす。)
【0020】
原水をまずアニオン交換樹脂と接触させると、アニオン交換処理水のpHが高くなるので、上記の通り、カチオン交換樹脂給水のpHを高くすることができる。しかしながら、一般の原水中には多くの硬度成分(Ca、Mg)が含まれているため、原水をそのままアニオン交換層に通水すると、水酸化マグネシウムなどのスケールが発生し、通水の妨げとなる可能性が高い。本発明では、原水をRO膜装置により処理し、その透過水を、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂に通水することで、アニオン交換樹脂層でのスケール発生を抑制する。
【0021】
ただし、RO装置では硬度成分だけでなくアニオンの除去も行なわれる。アニオンを除去しすぎると、アニオン交換樹脂出口でのpHが上がらずカチオン交換樹脂のキャパシティーを大幅に増大させることができない。そこで、ROの運転条件を制御し、硬度成分除去をほどほどに除去し、アニオンを除去しすぎないようにRO処理することにより、アニオン交換樹脂出口のpHを高くし、実質的なカチオン交換キャパシティーを大幅に増加させることができる。このことは、一見イオン交換樹脂にかかる負荷量を増大させることを意味するように見られるが、実際はRO装置に、安価なRO膜が使用でき、またRO膜の運転圧を下げるなどのメリットがあり、トータルコストでコスト削減が実現できる。
【0022】
本発明の一態様で用いるイオン交換装置においては、上室と下室とが遮水性の仕切板で区画され、一方の室にカチオン交換樹脂が収容され、他方の室にアニオン交換樹脂が収容されている。被処理水は、一方の室に供給され、連通手段を介して他方の室に流入し、該他方の室から取り出される。
【0023】
このイオン交換装置では、イオン交換樹脂の再生時には、各室に別々に酸又はアルカリが供給される。従って、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合することは全くなく、しかも、両室を区画する仕切板は遮水性であり、一方の室に供給された酸又はアルカリが仕切板を通過して他方の室に流入することは全くなく、逆再生が防止される。
【0024】
このイオン交換装置では、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを別々の室に充填するので、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の体積比を任意に調節することができる。
【0025】
このイオン交換装置では、第1の連通配管及び第2の連通配管を介して上室及び下室にそれぞれ酸又はアルカリを容易に通水して効率よく再生を行うことができる。この際、第3の連通配管を閉とすることにより、酸、アルカリの混合が完全に防止される。そして、上室及び下室のイオン交換樹脂を同時に再生することができ、再生時間を大幅に短縮することができる。
【0026】
このイオン交換装置によれば、上室及び下室に水の局部的な滞留が生じることがなく、効率よく処理水(脱イオン水)の生産及びイオン交換樹脂の再生を行うことができる。
【0027】
このイオン交換装置は、上室及び下室の上部に不活性樹脂を充填しており、イオン交換樹脂の流動が抑制される。イオン交換樹脂が流動すると、採水時又は再生時に液が均等にイオン交換樹脂と接触しないため水質の低下が生じるおそれがあるが、この請求項5によれば、かかる水質低下が防止され、高水質の処理水を得ることができる。また、採水時と再生時の被処理水と再生剤の通水方向は特に限定されないが、採水を上向流、再生を下向流とする方が、高水質の処理水を得ることができるため望ましい。これは不活性樹脂の充填により、十分に再生されたイオン交換樹脂が各イオン交換樹脂の上部に固定され、採水時は被処理水の出口側にこのイオン交換樹脂が位置する為と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例及び比較例を示すフロー図である。
【図2】実験結果を示すグラフである。
【図3】イオン交換装置の一例を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の純水製造装置は、RO装置である程度の硬度成分除去とある程度のアニオンを除去した後、イオン交換装置に対しアニオン交換樹脂層、カチオン交換樹脂層の順に通水することにより、処理水水質の向上とカチオン交換樹脂の実質的なイオン交換キャパシティーの向上を図るようにしたものである。
【0030】
本発明では、アニオン交換樹脂層の流出水すなわちカチオン交換樹脂層への流入水のpHが9以上、例えば9〜10となるようにRO装置の通水条件を設定する。RO装置で硬度成分及びアニオンを除去しすぎると、カチオン交換樹脂層への流入水のpHが9よりも小さくなり(すなわち、流入水中のH+イオン量が多くなり)、カチオン交換樹脂層における前記(1)式のイオン交換反応が左向きにシフトしてしまい、カチオン交換効率が低下する。流入水pHが9以上、特に9.5以上であると、前記(1)式の反応が右向きにシフトし、カチオン交換樹脂層でのカチオン交換量が増加し、イオン交換処理水中の金属イオン濃度が十分に低くなる。
【0031】
本発明では、アニオン交換樹脂への流入水のトータルアニオン量が0.5mg/L−asCaCO以上(特に1.6mg/L−asCaCO以上)であることが好ましい。
【0032】
本発明の純水製造装置は、RO装置とイオン交換装置のみで構成されてもよいが、さらにUV酸化装置や脱気装置を備えてもよい。例えば、前記RO装置の後段にUV酸化器が設置されており、有機物を有機酸、重炭酸イオン、炭酸イオン化することによりアニオン交換樹脂への流入水のトータルアニオン量を0.5mg/L−asCaCO以上(望ましくは1.6mg/L−asCaCO以上)にするように構成されていてもよい。
【0033】
本発明の純水製造装置の好適なフローを例示すると次の(i)〜(vi)の通りである。
(i) RO → イオン交換装置
(ii) RO → UV酸化 → イオン交換装置
(iii) RO → 脱気装置 → イオン交換装置
(iv) RO → 脱気装置 − UV酸化 → イオン交換装置
(v) 脱気装置 → RO → イオン交換装置
(vi) 脱気装置 → RO → UV酸化 → 新イオン交換装置
【0034】
脱気装置としては脱炭酸塔、真空脱気装置、膜脱気装置、窒素脱気装置などを用いることができる。
【0035】
以下、図3を参照し、本発明で用いるのに好適なイオン交換装置について説明する。
【0036】
塔体1は筒軸心方向を鉛直方向とした円筒部1aと、頂部の鏡板部1bと、底部の鏡板部1cとによって外殻が構成されている。鏡板部1bは上に凸に湾曲し、鏡板部1cは下に凸に湾曲している。
【0037】
この塔体1内が遮水性の仕切板2によって上室20と下室30との2室に区画されている。この実施の形態では、仕切板2は、水を全く通過させない金属又は合成樹脂製のものであり、鏡板部1cと同様に下に凸に湾曲している。仕切板2の周縁部は、円筒部1aの内周面に対し溶接等により水密的に結合されている。
【0038】
上室20内の上部に第1の集配水部材4が配置され、この第1の集配水部材4に上部給排配管3が接続されている。上室20内の下部に第2の集配水部材6が設置され、この集配水部材6に第1の連通配管5が接続されている。下室30内の上部に第3の集配水部材9が設置され、この集配水部材9に第2の連通配管8が接続されている。連通配管5,8は、第3の連通配管11によって接続され、この連通配管11に弁12が設置されている。
【0039】
連通配管5,8の末端部には、再生液の給排手段としての弁7,10が設けられている。下室30の下部には、第4の集配水部材14が設置され、この集配水部材14に下部給排配管13が設置されている。
【0040】
上室20内の大部分にカチオン交換樹脂21が充填され、このカチオン交換樹脂21の上側に粒状の不活性樹脂22が充填されている。第1の集配水部材4はこの不活性樹脂22内に埋設されている。
【0041】
下室30内の大部分にアニオン交換樹脂31が充填され、このアニオン交換樹脂31の上側に粒状の不活性樹脂32が充填されている。第3の集配水部材9はこの不活性樹脂32中に埋設されている。不活性樹脂としては、イオン交換樹脂よりも比重の小さいポリアクリロニトリル系樹脂などが用いられる。不活性樹脂の粒径は、イオン交換樹脂と同程度が好ましい。
【0042】
集配水部材4,6,9,14としては、従来のイオン交換装置で使用されている集水板や、放射状に延在させた配管に多数のスリットを設けたストレーナーなどを使用することができる。例えば、イオン交換樹脂の大きさが約0.4mm程度の場合、ストレーナーとしてスリットの幅が約0.2mmのものを使用するのが好ましい。集配水部材4,6,9,14は、鏡板部1b、仕切板2、鏡板部1cに沿う形状を有しており、鏡板部1b、仕切板2、鏡板部1cに沿うデッドスペースが小さいものとなっている。
【0043】
このイオン交換装置を用いた脱イオン水の生産(採水)時のフローを図3(a)に示す。この場合、弁12を開、弁7,10を閉とし、下部給排配管13から原水(被処理水)を供給する。この原水は集配水部材14、アニオン交換樹脂31、不活性樹脂32、集配水部材9、連通配管8,12,5、集配水部材6、カチオン交換樹脂21、不活性樹脂22、集配水部材4、上部給排配管3の順に流れ、処理水(脱イオン水)として取り出される。
【0044】
アニオン交換樹脂31及びカチオン交換樹脂21の再生時には、図3(b)のように弁12を閉、弁7,10を開とし、上部給排配管3からHCl、HSOなどの酸溶液を供給すると共に、第3の連通配管8からNaOHなどのアルカリ溶液を供給する。酸溶液は、集配水部材4、不活性樹脂22、カチオン交換樹脂21、集配水部材6、連通配管5、弁7の順に流れ、再生廃水(酸)として流出し、これによりカチオン交換樹脂21が再生される。アルカリ溶液は、集配水部材9、不活性樹脂32、アニオン交換樹脂31、集配水部材14、下部給排配管13の順に流れ、再生廃水(アルカリ)として流出し、これにより、アニオン交換樹脂31が再生される。
【0045】
再生終了後は、図3(b)のHCl溶液、NaOH溶液の代わりに、それぞれ純水を通水し、各経路及び樹脂をリンスした後、必要に応じて純水で上室と下室を個別に下向流洗浄しながら洗浄排水を排出し、その後、純水を上室20と下室30との間で所定時間循環させ、次いで、採水工程に復帰する。この再生に際しては、カチオン交換樹脂21とアニオン交換樹脂31とが混ざり合うことは全くない。また、再生用の酸溶液が下室30に流入したり、アルカリ溶液が上室20に混入することが全くなく、逆再生が完全に防止される。加えて、カチオン交換樹脂21とアニオン交換樹脂31とを同時に並行して再生することができ、再生時間が著しく短いものとなる。
【0046】
このイオン交換装置は、1つの塔体1内を1枚の仕切板2によって上下2室に区画したものであり、塔体の高さが低く、設置スペースも小さい。また、上室20と下室30とを連通する配管5,11,8が短くてすむ。
【0047】
このイオン交換装置では集配水部材4,6,9,14が鏡板部1b、仕切板2、鏡板部1cに沿って設けられており、水の局部的な滞留が防止される。
【0048】
このイオン交換装置では、上室20及び下室30の上部に不活性樹脂22,32を充填しており、カチオン交換樹脂21及びアニオン交換樹脂31の流動が防止され、採水時及び再生時に液が均等にカチオン交換樹脂21及びアニオン交換樹脂31と接触するようになっており、高水質の脱イオン水が得られると共に、十分に再生が行われるようになる。
【0049】
上記実施の形態では、上室20にカチオン交換樹脂を収容し、下室30にアニオン交換樹脂を収容しているが、逆としてもよい。上記実施の形態では、上室20と下室30とが配管5,11,8を介して連通されているが、塔体1の外部を引き回されている限り、これに限定されない。また、この実施の形態では、3個の弁7,10,12を用いているが、2個の三方弁を用いて流路切り替えを行うようにしてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例について説明する。図1は、実験装置のフロー図である。超純水に対しIPA溶液、NaCl溶液、MgCl溶液を添加して下記水質の原水とし、タンク40に収容してある。
【0051】
<原水水質>
MgCl:6mg/L−asCa
NaCl:5mg/L−asNa
IPA:5mg/L−asC
【0052】
このタンク40内の原水をライン41〜44に分岐させて4台のRO装置51〜54に並列供給し、各RO透過水をそれぞれイオン交換装置61〜64に通水する。なお、RO装置52への給水に対してはMgClを添加し、RO給水のMgCl濃度を10mg/L−asCaとした。ライン41,ライン42による処理が実施例1,2、ライン43,ライン44による処理が比較例1,2である。イオン交換装置61〜64としては、いずれも図3に示すイオン交換装置を用いた。諸元は次の通りである。
塔体直径 : 450mm
塔体の高さ : 3000mm
上室容積 : 190L
下室容積 : 260L
アニオン交換樹脂 : Dow 550A
カチオン交換樹脂 : Dow 650C
カチオン交換樹脂の充填量 : 200L
アニオン交換樹脂の充填量 : 150L
不活性樹脂22の充填量 : 30L
不活性樹脂32の充填量 : 30L
【0053】
各イオン交換装置にRO処理水を、イオン交換装置処理水の比抵抗値が18.0MΩ・cmを切るまで通水し、下記の酸溶液及びアルカリ溶液を用いて同時に再生し、原水通水を再開した。
【0054】
[再生条件]
HCl :5% 通水流量:1m/h、30分
NaOH :5% 通水流量:1m/h、加温40℃、30分
30分の薬液(酸又はアルカリ)通水後、30分薬液を押し出し、その後15分で運転を切り換える。
【0055】
再生後に原水を通水したときのアニオン交換樹脂層出口水(カチオン交換樹脂流入水)のpHは次の通りであった。
実施例1:9
実施例2:9.6
比較例1:8.8
比較例2:8.2
【0056】
再生後の通水における各イオン交換装置処理水中のNa濃度の経時変化を図2に示す。図2の通り、実施例1及び実施例2は長期にわたってNa濃度が低い。これに対し、比較例1,2は早期にNaがリークすることが認められる。
【0057】
なお、イオン交換装置61〜64への流入水のトータルアニオン量は次の通りであった。
実施例1:0.5mg/L−asCaCO
実施例2:2mg/L−asCaCO
比較例1:0.3mg/L−asCaCO
比較例2:0.1mg/L−asCaCO
【符号の説明】
【0058】
1 塔体
1b,1c 鏡板
2 仕切板
3 上部給排配管
4,6,9,14 集配水部材
5,8,11 連通配管
13 下部給排配管
20 上室
30 下室
40 原水槽
51〜54 RO装置
61〜64 イオン交換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RO装置と、該RO装置の処理水が通水されるイオン交換装置とを有した純水製造装置において、
該イオン交換装置では、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂の順に通水が行われ、アニオン交換樹脂出口水のpHが9以上(望ましくは9.5以上)であることを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
請求項1において、アニオン交換樹脂への流入水のトータルアニオン量が0.5mg/L−asCaCO以上であることを特徴とする純水製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記RO装置の後段にUV酸化器が設置されており、有機物を有機酸、重炭酸イオン、炭酸イオン化することによりアニオン交換樹脂への流入水のトータルアニオン量を0.5mg/L−asCaCO以上にすることを特徴とする純水製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記イオン交換装置の塔体内に遮水性の仕切板によって上室と下室とが区画形成されており、
該塔体外を引き回された連通手段によって該上室と下室とが連通されており、
該塔体の上室及び下室のうち一方にカチオン交換樹脂が充填され、他方にカチオン交換樹脂が充填されていることを特徴とする純水製造装置。
【請求項5】
請求項4において、前記イオン交換装置は、
前記上室の上部に液を供給又は排出するための上部給排配管と、
該下室の下部に液を供給又は排出するための下部給排配管と、
を備えており、前記連通手段は、
該上室の下部に液を給排するための第1の連通配管と、
該下室の上部に液を給排するための第2の連通配管と、
該第1の連通配管と第2の連通配管とを連通する第3の連通配管と、
該第3の連通配管の開閉手段と、
該第1の連通配管及び第2の連通配管にそれぞれ設けられた再生液の給排手段と
を備えたことを特徴とする純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−205989(P2012−205989A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72514(P2011−72514)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】