説明

紙容器用積層材料及び液体用紙容器

【課題】低温シール性を有し、さらに内容物に接する面の滑り性が良好な紙容器用積層材料及びそれを用いた液体用紙容器を提供することにある。
【解決手段】板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層がLDPEからなる接液側樹脂層と、LLDPE単独又はLLDPEとLDPEとのブレンド樹脂からなるラミネート側樹脂層との二層構成からなり、前記接液側樹脂層の厚さとラミネート側樹脂層の厚さの比率が接液側樹脂層/ラミネート側樹脂層=1/1〜1/9であり、前記ブレンド樹脂がLLDPE15〜95重量%とLDPE85〜5重量%の配合割合の混練樹脂であり、その紙容器用積層材料からなる液体用紙容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
果汁飲料、ジュース、お茶類、コーヒー、乳飲料、スープ等のノンアルコール飲料や清酒、焼酎等のアルコール飲料を包装する紙容器に使用する紙容器用積層材料及びそれを用いた液体用紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙容器用積層材料としては、外側から順に、ポリオレフィン系樹脂層、基材層、接着性樹脂層、ガスバリア層、接着剤層、シーラント層が積層された多層構成のものが多く使用されており、前記シーラント層としては、低温シール性を付与する為に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を使用する場合が多い。しかしながら、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなるシーラント層を有する紙容器用積層材料を用いて製函した液体用紙容器は、内容物に接する面に使用している直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の摩擦係数が大きくて滑り性が劣ることに起因して、充填包装機で液体内容物を充填包装する時の充填適性が悪い問題を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、低温シール性を有し、さらに内容物に接する面の滑り性が良好な紙容器用積層材料及びそれを用いた液体用紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る発明は、板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が低密度ポリエチレン樹脂からなる接液側樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなるラミネート側樹脂層との二層構成からなり、前記接液側樹脂層の厚さとラミネート側樹脂層の厚さの比率が接液側樹脂層/ラミネート側樹脂層=1/1〜1/9であることを特徴とする紙容器用積層材料である。
【0005】
本発明の請求項2に係る発明は、板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が低密度ポリエチレン樹脂からなる接液側樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなる中間樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなるラミネート側樹脂層との三層構成からなり、前記接液側樹脂層の厚さと、中間樹脂層とラミネート側樹脂層の合計厚さの比率が接液側樹脂層/中間樹脂層+ラミネート側樹脂層=1/1〜1/9であることを特徴とする紙容器用積層材料である。
【0006】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2に係る発明において、前記ブレンド樹脂が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂15〜95重量%と低密度ポリエチレン樹脂85〜5重量%の配合割合の混練樹脂であることを特徴とする紙容器用積層材料である。
【0007】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の紙容
器用積層材料を用いて、該シーラント層面が内容物に接するようにして製函したものからなることを特徴とする液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙容器用積層材料は、板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が低密度ポリエチレン樹脂からなる接液側樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなるラミネート側樹脂層との二層構成からなり、前記接液側樹脂層の厚さとラミネート側樹脂層の厚さの比率が接液側樹脂層/ラミネート側樹脂層=1/1〜1/9であるか、あるいは該シーラント層が低密度ポリエチレン樹脂からなる接液側樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなる中間樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなるラミネート側樹脂層との三層構成からなり、前記接液側樹脂層の厚さと、中間樹脂層とラミネート側樹脂層の合計厚さの比率が接液側樹脂層/中間樹脂層+ラミネート側樹脂層=1/1〜1/9であり、前記ブレンド樹脂が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂15〜95重量%と低密度ポリエチレン樹脂85〜5重量%の配合割合の混練樹脂であるので、低温シール性があり、さらにシーラント層表面の滑り性が良く、製函適性が良好であり、さらに、シーラント層の樹脂のシール時の流動性が良い。よって、前記紙容器用積層材料からなる液体用紙容器は、液体内容物を充填包装する時のトップ部のシール性が良好で、液漏れなどが発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の紙容器用積層材料を、実施の形態に沿って以下に詳細に説明する。図1(a)は本発明の紙容器用積層材料の一実施形態を示す側断面図であり、紙容器用積層材料(10)は外側から厚み方向に順に、ポリオレフィン系樹脂層(12)、基材層(11)、接着性樹脂層(13)、ガスバリア層(14)、接着剤層(15)、シーラント層(20)が積層された構成で、前記シーラント層(20)はラミネート側樹脂層(16)と接液側樹脂層(17)の二層構成になっており、(b)は紙容器用積層材料の他の実施形態を示す側断面図であり、紙容器用積層材料(10′)は外側から厚み方向に順に、ポリオレフィン系樹脂層(12)、基材層(11)、接着性樹脂層(13)、ガスバリア層(14)、接着剤層(15)、シーラント層(21)が積層された構成で、前記シーラント層(21)は、ラミネート側樹脂層(16)と中間樹脂層(18)と接液側樹脂層(17)の三層構成になっている。
【0010】
前記紙容器用積層材料(10、10′)は、ガスバリア層(14)と接着剤層(15)の間に、さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムなどからなる補強フィルム層を接着剤を介して積層した構成でも構わない。
【0011】
前記基材層(11)は、坪量200〜500g/m2の板紙からなっている。
【0012】
前記ポリオレフィン系樹脂層(12)には、主に、厚みが3〜40μmの低密度ポリエチレン樹脂が使用され、積層方法は公知の溶融押出ラミネーション法で積層する。
【0013】
前記接着性樹脂層(13)には、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン・アクリル酸共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂、アイオノマー樹脂などが使用可能である。厚みは5〜50μmが好ましい。
【0014】
前記ガスバリア層(14)は、単層構成又は積層構成の材料からなっており、単層構成
の材料としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、アルミニウム箔などが使用され、積層構成の材料としては、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に少なくとも、酸化珪素若しくは酸化アルミニウムなどの無機酸化物の蒸着薄膜層を積層したガスバリア性フィルムなどが使用される。
【0015】
前記接着剤層(15)は、ポリウレタン系接着剤からなっており、水酸基を持った主剤とイソシアネート基を持った硬化剤とを2液混合して使用する2液型の接着剤が使用され、塗布量は1〜5g/m2(乾燥状態)が良い。
【0016】
前記ラミネート側樹脂層(16)及び中間樹脂層(18)は、密度が0.895〜0.920g/cm3、メルトフローレート(MFR)が0.2〜20g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)単独、又は前記LLDPE15〜95重量%と密度が0.915〜0.926g/cm3、メルトフローレート(MFR)が0.2〜20g/10分の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)85〜5重量%の配合割合の混練樹脂からなっている。
【0017】
前記接液側樹脂層(17)は、密度が0.915〜0.926g/cm3、メルトフローレート(MFR)が0.2〜20g/10分の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)からなっている。
【0018】
前記シーラント層(20)は、ラミネート側樹脂層(16)と接液側樹脂層(17)の二層構成になっており、層の厚さ比率は、ラミネート側樹脂層(16)/接液側樹脂層(17)=1/1〜9/1である。総厚は30〜90μmが好ましい。内容物に接する接液側樹脂層(17)が上記記載の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)からなっていることで、シーラント層(20)の滑り性が良くなり、低温シール性も有する。さらに、ラミネート側樹脂層(16)と接液側樹脂層(17)の厚さ比率が前記範囲内にあることで、シーラント層(20)の樹脂のシール時の流動性が良くなる。
【0019】
前記シーラント層(21)は、ラミネート側樹脂層(16)と中間樹脂層(18)と接液側樹脂層(17)との三層構成になっており、厚さ比率は、ラミネート側樹脂層(16)と中間樹脂層(18)の合計厚さ/接液側樹脂層(17)の厚さ=1/1〜9/1である。総厚は30〜90μmが好ましい。内容物に接する接液側樹脂層(17)が上記記載の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)からなっていることで、シーラント層(21)の滑り性が良くなり、低温シール性も有する。さらに、ラミネート側樹脂層(16)と中間樹脂層(18)の合計厚さと接液側樹脂層(17)の厚さの比率が前記範囲内にあることで、シーラント層(21)の樹脂のシール時の流動性が良くなる。
【0020】
本発明の液体用紙容器は、前記紙容器用積層材料(10)または紙容器用積層材料(10′)を用いて、それぞれシーラント層(20)又はシーラント層(21)面が内容物に接するように製函したものからなっている。液体用紙容器の形態としては、特に限定されないが、例えば、フラットトップタイプあるいはゲーベルトップタイプの角型の液体用紙容器などがある。
【0021】
本発明の紙容器用積層材料及び液体用紙容器を具体的な実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0022】
基材層(11)として、坪量400g/m2の板紙を使用し、ポリオレフィン系樹脂層(12)及び接着性樹脂層(13)の樹脂として、低密度ポリエチレン樹脂を使用し、ガスバリア層(14)として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に厚さ50nmの酸化珪素薄膜層、ポリビニルアルコール樹脂を主成分とする厚さ0.5μmの
乾燥皮膜からなるガスバリ性被膜層を積層したガスバリア性フィルムを使用し、接着剤層(15)として、ポリウレタン系接着剤を使用し、シーラント層(20)として、密度が0.915g/cm3、メルトフローレートが4.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層/密度が0.920g/cm3、メルトフローレートが6.0g/10分の低密度ポリエチレン樹脂層=3/1(厚さ比率)の総厚60μmの二層共押出フィルムを使用して、低密度ポリエチレン樹脂(20μm)/板紙(坪量400g/m2)/低密度ポリエチレン樹脂(30μm)/ガスバリア性フィルム/ポリウレタン系接着剤(乾燥塗布量5g/m2)/二層共押出フィルム(60μm)の構成の本発明の紙容器用積層材料(10)を作成した。さらに、前記紙容器用積層材料(10)を用いて紙容器製造機で内容量1000mlのゲーベルトップタイプの本発明の液体用紙容器を作成した。
【0023】
以下に、本発明の比較用の実施例について説明する。
【実施例2】
【0024】
シーラント層として、厚み60μmで、密度が0.915g/cm3、メルトフローレートが4.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして、比較用の紙容器用積層材料を作成した。さらに、前記紙容器用積層材料を用いて紙容器製造機で内容量1000mlのゲーベルトップタイプの比較用の液体用紙容器を作成した。
【実施例3】
【0025】
シーラント層として、厚み60μmで、密度が0.920g/cm3、メルトフローレートが7.0g/10分の低密度ポリエチレンフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして、比較用の紙容器用積層材料を作成した。さらに、前記紙容器用積層材料を用いて紙容器製造機で内容量1000mlのゲーベルトップタイプの比較用の液体用紙容器を作成した。
【0026】
〈評価〉
実施例1の本発明の紙容器用積層材料及び実施例2〜3の比較用の紙容器用積層材料のシーラント層の静摩擦係数を以下の方法で測定した。さらに、実施例1の本発明の液体用紙容器及び実施例2〜3の比較用の液体用紙容器に自動充填包装機で水を充填密封し、その時のトップ部のシール性の良否を評価した。その結果を表1に示す。
(1)静摩擦係数の測定方法
作成した紙容器用積層材料のシーラント層の静摩擦係数を、JIS K7125の摩擦係数試験方法に準拠した方法で測定した。
【0027】
【表1】

表1に示すように、実施例1の本発明の紙容器用積層材料は、シーラント層の静摩擦係数は小さくて滑り性が良好であり、その紙容器用積層材料を用いて製函した液体用紙容器に水を充填、密封時のトップ部のシール性も良好であった。他方、実施例2の比較用の紙容器用積層材料は、シーラント層の静摩擦係数は大きくて滑り性が悪く、実施例3の比較用の紙容器用積層材料を用いて製函した液体用紙容器に水を充填、密封時のトップ部のシール性は不良であった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明の紙容器用積層材料の一実施形態を示す側断面図であり、(b)は紙容器用積層材料の他の実施形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10,10′…紙容器用積層材料
11…基材層
12…ポリオレフィン系樹脂層
13…接着性樹脂層
14…ガスバリア層
15…接着剤層
16…ラミネート側樹脂層
17…接液側樹脂層
18…中間樹脂層
20,21…シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が低密度ポリエチレン樹脂からなる接液側樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなるラミネート側樹脂層との二層構成からなり、前記接液側樹脂層の厚さとラミネート側樹脂層の厚さの比率が接液側樹脂層/ラミネート側樹脂層=1/1〜1/9であることを特徴とする紙容器用積層材料。
【請求項2】
板紙からなる基材層の一方の面にポリオレフィン系樹脂を積層し、他方の面に少なくとも、接着性樹脂層、ガスバリア層、シーラント層を積層した積層体からなる紙容器用積層材料において、該シーラント層が低密度ポリエチレン樹脂からなる接液側樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなる中間樹脂層と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独又は直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンド樹脂からなるラミネート側樹脂層との三層構成からなり、前記接液側樹脂層の厚さと、中間樹脂層とラミネート側樹脂層の合計厚さの比率が接液側樹脂層/中間樹脂層+ラミネート側樹脂層=1/1〜1/9であることを特徴とする紙容器用積層材料。
【請求項3】
前記ブレンド樹脂が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂15〜95重量%と低密度ポリエチレン樹脂85〜5重量%の配合割合の混練樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の紙容器用積層材料。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の紙容器用積層材料を用いて、該シーラント層面が内容物に接するようにして製函したものからなることを特徴とする液体用紙容器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−73007(P2009−73007A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243680(P2007−243680)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】