説明

紙容器

【課題】外面の損傷を低減できるとともに窓部の耐突き刺し性を向上できる紙容器を提供する。
【解決手段】内容物を視認する窓部8を開口する紙層11と、窓部8を覆って紙層11の外面に配される透明な外装材20と、窓部8を覆って紙層11の内面に配される透明な内装材30と、を積層したブランク材10を所定の箱形状に折曲して形成され、外装材20及び内装材30の少なくとも一方が二軸延伸ナイロンフィルムの層23を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物や粘稠物等の内容物を収納する紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液状物や粘稠物等の内容物を収納する従来の紙容器は特許文献1に開示されている。この紙容器は、基材層、中間層及び内層とを備えた積層体から成るブランク板をゲーベルトップ型の箱形状に折曲して形成される。基材層は熱接着性樹脂層及び紙層を有している。中間層はガスバリア層を形成し、内層は熱接着性樹脂層から成っている。そして、基材層のみが切り欠かれた切欠部が形成され、紙容器を組立てた際の側面に対応する位置に配した切欠部によって容器内部を透視できる窓部が設けられている。
【0003】
基材層の内面には中間層及び内層によって形成される内装材が窓部を覆うように配される。中間層は酸化珪素蒸着層を有するPET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルムにより形成され、ガスバリア性や保香性を有する。内層はエチレンーαオレフィン共重合体により形成される。中間層と内層とをLDPE(低密度ポリエチレン)から成る接着層を介して積層して内装材が形成される。そして、内層の熱接着性樹脂層が紙容器の組立時にブランク板を折り曲げた際に対向した最表面である基材層の熱接着性樹脂層と熱溶着される。
【0004】
上記構成の紙容器は側面に窓部が配される。これにより、窓部を介して紙容器の内容物を視認することができる。また、紙容器の一側面の両端にそれぞれ窓部を設けることにより、窓部間を手指で押圧すると容易に紙容器が変形して内容物を強制的に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−96548号公報(第5頁−第10頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の紙容器によると、窓部の周縁において紙層の端面が露出している。このため、紙容器の保管中や輸送中等に水分が紙層の端面から浸透する場合や、内容物の充填時に紙容器の外面を伝う内容物が紙層の端面から浸透する場合がある。これにより、紙容器の外面に汚れや損傷が発生する問題があった。
【0007】
また、窓部はガスバリア層から成る中間層と熱接着性樹脂層から成る内層とを積層した内装材により覆われているためガスバリア性に優れているが、耐突き刺し性については考慮されていない。このため、窓部の耐突き刺し性が十分なものではなく、紙容器の搬送時等にピンホールが窓部に形成されて内容物の漏洩やガス侵入による劣化が生じる虞があった。
【0008】
加えて、窓部の周縁に配される基材層のエッジに使用者や作業者の手指が触れた際に手指を切る虞があり、紙容器の安全性に問題があった。
【0009】
本発明は、窓部周縁における汚れや損傷を低減できるとともに安全性を向上できる窓部の耐突き刺し性を向上できる紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、内容物を視認する窓部を開口する紙層と、前記窓部を覆って前記紙層の外面に配される透明な外装材と、前記窓部を覆って前記紙容器の内面に配される透明な内装材と、を積層したブランク板を所定の箱形状に折曲して形成され、前記外装材及び前記内装材の少なくとも一方が二軸延伸ナイロンフィルムの層を有することを特徴としている。
【0011】
この構成によると、窓部となる開口を有する紙層が外面を外装材により被覆され、内面を内装材により被覆されているため、窓部周縁部においてブランク板の端面が露出することがない。これにより、窓部周縁部での汚れや損傷を防止することができる。更に、外装材及び内装材の少なくとも一方が二軸延伸ナイロンフィルムの層を有しているため、窓部における耐突き刺し性を向上することができる。また、外装材及び内装材により覆われた窓部を介して内容物を視認することができる。
【0012】
また本発明は、上記構成の紙容器において、前記外装材及び前記内装材の一方が二軸延伸ナイロンフィルムの層を有し、他方が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの層を有することを特徴としている。この構成によると、内容物の保香性及び保味性を高く維持することができる。
【0013】
また本発明は、上記構成の紙容器において、前記窓部内で前記外装材と前記内装材とが接着されることを特徴としている。この構成によると、窓部内で外装材と内装材とが一体化され、窓部において外装材と内装材との浮きを防止することができる。
【0014】
また本発明は、上記構成の紙容器において、前記外装材及び前記内装材の少なくとも一方の前記窓部上にUVカットインキによる印刷を施したことを特徴としている。この構成によると、紙容器内への紫外線の侵入が防止される。
【0015】
また本発明は、上記構成の紙容器において、前記外装材及び前記内装材の少なくとも一方にガスバリア層を設けたことを特徴としている。この構成によると、容器内への酸素及び水蒸気の侵入を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、窓部の両面が外装材及び内装材により覆われ、外装材及び内装材の少なくとも一方が二軸延伸ナイロンフィルムの層を有する。従って、窓部の周縁に紙層が露出しないため紙容器の外面の汚れや損傷を防止できるとともに、窓部の耐突き刺し性を向上することができる。また、窓部の周縁にエッジが形成されないため、紙容器の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の紙容器を示す斜視図
【図2】本発明の第1実施形態の紙容器を示す展開図
【図3】本発明の第1実施形態の紙容器の窓部を含む断面図
【図4】本発明の第2実施形態の紙容器を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の紙容器を示す斜視図である。紙容器1はブランク板10(図2参照)をゲーベルトップ型の箱形状に折曲して形成される。紙容器1は傾斜屋根部3に注出口となる注出部材2を有している。傾斜屋根部3の下方には胴部4が連接して設けられる。
【0019】
胴部4は4面に配した側面板4a、4b、4c、4d(4c、4dは図2参照)により形成される。一の側面板4aの左右端の稜線には内容物を視認する窓部8が形成される。左右の窓部8は罫線9で繋がれる。罫線9は側面板4aを内側に折るための折り目となる。
【0020】
これにより、窓部8を介して紙容器1の内容物を視認することができる。また、注出口を下方にして窓部8間を手指で押圧すると、罫線9で側面板4aが内側に折曲される。これにより、容易に紙容器1が変形して内容物を強制的に押し出して排出することができる。
【0021】
図2は紙容器1の展開図を示している。紙容器1を展開したブランク板10は所定位置に折り目Dが設けられ、矩形の側面板4a〜4dが一方向に連接される。側面板4aの左右端の折り目D上に窓部8が設けられる。側面板4a〜4dの上端にはそれぞれ傾斜屋根部3を形成する傾斜屋根部形成板3a〜3dが連接される。傾斜屋根部形成板3cには注出部材10(図1参照)を取り付ける貫通孔7が設けられる。
【0022】
側面板4a〜4dの下端にはそれぞれ紙容器1の底面を形成する底面板5a〜5dが連接される。また、傾斜屋根部形成板3d、側面板4d及び底面板5dの側方には糊代6が設けられている。ブランク板10を折り目Dで折曲して糊代6で接着することにより、箱状の紙容器1が形成される。
【0023】
図3はブランク板10の窓部8を含む断面図を示している。ブランク板10は窓部8を開口した紙層11を有している。紙層11は例えば斥量が200〜480g/m2(より望ましくは260〜400g/m2)の枚葉紙が用いられ、一面にコート層(不図示)が形成される。枚葉紙を用いることにより、多品種少量生産に容易に対応することができる。コート層には商品名等の図柄がオフセット印刷され、印刷後に窓部8が打ち抜き加工等によって形成される。
【0024】
紙層11の外面側には積層体により形成される透明な外装材20が接着層12を介して配される。紙層11の内面側には積層体により形成される透明な内装材30が接着層13を介して配される。この時、内装材30及び外装材20によって窓部8が覆われる。
【0025】
接着層12、13は例えば、アクリル樹脂エマルジョン接着剤等の水性エマルジョンタイプの接着剤により形成される。水性エマルジョンタイプの接着剤はトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの有機溶剤を含まないため、紙層11に有機溶剤が染み込むことによる臭気の発生を防止することができる。
【0026】
外装材20は外面側から順に熱接着性樹脂層21、接着層22及びフィルム基材層23を有している。フィルム基材層23としてONY(二軸延伸ナイロン)フィルムが用いられる。フィルム基材層23は例えば、15μmの厚みに形成される。熱接着性樹脂層21はフィルム基材層23のONYフィルム上に接着層22を形成するアンカーコート剤を挟んで押出しラミネートされたPE(ポリエチレン)により形成される。熱接着性樹脂層21は例えば、20μmの厚みに形成される。
【0027】
内装材30は紙層11側から順にフィルム基材層31、ガスバリア層32、接着層33及び熱接着性樹脂層34を有している。フィルム基材層31として、PETフィルムまたはOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムが用いられる。PETフィルムは保香性及び保味性が高いのでより望ましい。フィルム基材層31は例えば、12μmの厚みに形成される。
【0028】
ガスバリア層32はフィルム基材層31の表面に蒸着した酸化ケイ素蒸着膜により形成される。ガスバリア層32によって紙容器1内への酸素や水蒸気の侵入が防止される。ガスバリア層32を酸化アルミニウム蒸着膜やアルミニウム箔等により形成してもよい。
【0029】
フィルム基材層31と熱接着性樹脂層34とを接着する接着層33はドライラミネート剤等から成っている。フィルム基材層31上にアンカーコート剤を介して押出しラミネートされたPEにより接着層33を形成してもよい。これにより、内装材30の強度をより向上させることができる。
【0030】
熱接着性樹脂層34はエチレン−αオレフィン共重合体等により形成される。紙容器1の組立て時にブランク板10を折り曲げて対向した熱接着性樹脂層34と熱接着性樹脂層21とが熱溶着される。
【0031】
尚、フィルム基材層23、31の一方または両方の表面に所望の図柄を印刷してもよい。この時、窓部8上にUVカットインキによる印刷を施すとより望ましい。これにより、紙容器1内に侵入する紫外線をカットし、内容物の紫外線による劣化を防止することができる。
【0032】
ブランク板10を形成する際には、まず、紙層11のコート層と反対側に接着層13を形成する接着剤が塗布され、内装材30がラミネートされる。次に、外装材20に接着層12を形成する接着剤が塗布され、紙層11のコート層上に外装材20がラミネートされる。
【0033】
この時、紙層11のコート層上に接着層12の接着剤を塗布して外装材20をラミネートしてもよい。しかしながら、紙層11に接着剤を塗布すると窓部8の段差のために内装材30に接着剤が届きにくい。外装材20に接着層12の接着剤を塗布すると、窓部8上に容易に接着層12を形成することができる。これにより、ラミネート時の加圧によって窓部8内で接着層12の接着剤が内装材30に接着される。従って、窓部8内で外装材20と内装材30とが一体化したフィルム状に形成され、外装材20と内装材30との浮きを防止して内容物の視認性をよくすることができる。
【0034】
尚、外装材20を紙層11にラミネートした後に、内装材30をラミネートしてもよい。この場合も同様に、内装材30に接着層13の接着剤を塗布するとより望ましい。
【0035】
本実施形態によると、紙層11の窓部8の両面が外装材20及び内装材30により覆われ、外装材20のフィルム基材層23がONYフィルムにより形成される。これにより、窓部8の周縁に紙層11が露出しないため、紙容器1の外面の汚れや損傷を防止することができる。
【0036】
また、ONYフィルムによって窓部8の耐突き刺し性を向上させることができる。これにより、紙容器1の搬送時等にピンホールが窓部8に発生することを防止し、内容物の漏洩やガス侵入による内容物の劣化を防止することができる。加えて、外装材20で覆われた窓部8の周縁にエッジが形成されないため手指の切り傷を防止することができ、紙容器1の安全性を向上することができる。
【0037】
また、内装材30のフィルム基材層31をPETフィルムにより形成することによって内容物の保香性及び保味性を高く維持することができる。
【0038】
また、窓部8内で外装材20と内装材30とを接着することにより、窓部8の視認性をよくすることができる。加えて、外装材20と内装材30とが一体化され、ONYフィルムから成るフィルム基材層23をPETフィルム等を含む内装材30で補強することができる。これにより、窓部8の耐突き刺し性をより向上することができる。
【0039】
また、外装材20及び内装材30の少なくとも一方の窓部8上にUVカットインキによる印刷を施すことにより、紫外線をカットして紫外線による内容物の劣化を防止することができる。
【0040】
また、内装材30にガスバリア層31を設けたので、紙容器内への酸素や水蒸気の侵入を防止して内容物の劣化を防止することができる。尚、外装材20にガスバリア層を設けてもよい。
【0041】
次に、図4は第2実施形態の紙容器を示す側面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図3に示す第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は紙容器1の窓部8が胴部4を形成する一の側面板4bの略中央下部に設けられる。ブランク板10の構成を含むその他の部分は第1実施形態と同様である。
【0042】
本実施形態によると、第1実施形態のように紙容器1の内容物を強制的に押し出して排出することは困難となるが、窓部8を介して紙容器1の内容物を視認することができる。この時、第1実施形態と同様に、窓部8の周縁に紙層11が露出しないため紙容器1の外面の損傷を防止することができる。また、ONYフィルムによって窓部8の耐突き刺し性を向上させることができる。
【0043】
第1、第2実施形態において、内装材30にONYフィルムを更に積層してもよい。また、外装材20のフィルム基材層23をPETフィルムまたはOPPフィルムにより形成し、内装材30のフィルム基材層31をONYフィルムにより形成してもよい。耐アルカリ性の低いPETフィルムを外装材20に配することにより、アルカリ性の強い内容物の場合でもPETフィルムを用いて保香性及び保味性を高くすることができる。
【0044】
尚、内装材30にONYフィルムを配すると、ONYフィルムを透過する香り成分や味成分によって外装材20のラミネート強度が劣化する場合がある。このため、弱アルカリ性、中性及び酸性の内容物の場合は、第1、第2実施形態のようにONYフィルムを外装材20に配してPETフィルムを内装材30に配するとより望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によると、液状物や粘稠物等の内容物を収納する紙容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 紙容器
2 注入部材
3 傾斜屋根部
3a〜3d 傾斜屋根部形成板
4 胴部
4a〜4d 側面板
5a〜5d 底面板
6 糊代
8 窓部
9 罫線
10 ブランク板
11 紙層
12、13、22、33 接着層
20 外装材
21 熱接着性樹脂層
23 フィルム基材層
30 内装材
31 フィルム基材層
32 ガスバリア層
34 熱接着性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を視認する窓部を開口する紙層と、前記窓部を覆って前記紙層の外面に配される透明な外装材と、前記窓部を覆って前記紙容器の内面に配される透明な内装材と、を積層したブランク板を所定の箱形状に折曲して形成され、前記外装材及び前記内装材の少なくとも一方が二軸延伸ナイロンフィルムの層を有することを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記外装材及び前記内装材の一方が二軸延伸ナイロンフィルムの層を有し、他方が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの層を有することを特徴とする請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記窓部内で前記外装材と前記内装材とが接着されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙容器。
【請求項4】
前記外装材及び前記内装材の少なくとも一方の前記窓部上にUVカットインキによる印刷を施したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の紙容器。
【請求項5】
前記外装材及び前記内装材の少なくとも一方にガスバリア層を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171631(P2012−171631A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32419(P2011−32419)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】