説明

紙幣ガイド皿、紙幣ガイド装置、紙幣処理装置及び紙幣取扱装置

【課題】紙幣挿入口の幅寸法よりも奥部に設けられた搬送路幅の方が広い紙幣処理装置において、一旦搬送路に搬送された紙幣がリジェクトされて挿入口へ向けて逆搬送される場合に紙幣がスキューを起こしたとしても紙幣ガイド皿の側壁との衝突を回避させてジャムを防止する。
【解決手段】紙幣挿入口21と、紙幣ガイド皿30と、正逆搬送機構12と、を備えた紙幣ガイド装置に装備される紙幣ガイド皿30であって、紙幣挿入口に挿入される紙幣の下面をガイドする底部ガイド部材31と、底部ガイド面の横方向両端から夫々立ち上げられて挿入される該紙幣の両端縁をガイドする側部ガイド部材35と、を有し、各側部ガイド部材の対向面35aには夫々正逆搬送機構により逆搬送されてくるリジェクト紙幣の横方向両端縁を受け入れる受入れ口36aと底部ガイド面よりも上方にて開口する排出口36bとを備えた逆搬送紙幣ガイド溝36が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備される紙幣処理装置を構成する紙幣ガイド装置の改良に関し、特に多金種処理用の紙幣処理装置において発生し易いリジェクト紙幣の紙幣挿入口でのジャムを効果的に防止することができる紙幣ガイド皿、紙幣ガイド装置、紙幣処理装置及び紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置は、利用者によって紙幣挿入口から挿入された紙幣を引き込んで装置内部に搬送する過程でその紙幣長、真贋、金種を判定し、正規の紙幣である場合にはこれを受入れて更に奥部に配置された紙幣収納部に収納したり、釣銭や返却金銭を払い出す紙幣処理装置と、利用者が操作するための操作スイッチ類、ディスプレイを備えた操作ボードと、利用者との間の取引が成立した場合に物品やサービスの提供を行う物品等提供部と、を備える。紙幣処理装置は、挿入された紙幣が正規の長さを有していない場合や、偽札である場合には、これをリジェクトして紙幣挿入口から返却する。
【0003】
図7及び図8は従来の紙幣挿入機構を備えた紙幣処理装置の構成と欠点を説明するための説明図である。
紙幣処理装置100は、自動販売機等の紙幣取扱装置に装備される。
図7(a)(b)に示すように、紙幣処理装置100の正面には紙幣挿入口101が配置されており、紙幣挿入口101の直下の装置外面からは紙幣ガイド皿102が突設されている。紙幣挿入口101から装置内部に続く紙幣搬送経路には、挿入検知センサ103、ソレノイドにより駆動されるシャッター104、ローラ対(搬送部材)105、搬送ベルト(搬送部材)106、長さ検知センサ107が順次配置されている。更に、長さ検知センサ107の奥部には紙幣の真贋、金種等を判別する図示しない識別装置が配置され、識別装置の奥部には図示しない紙幣収納部が配置されている。
図7(a)に示すように紙幣Sが紙幣挿入口101から挿入された場合には、挿入検知センサ103が紙幣先端を検知することによって図示しない制御部はソレノイドを駆動してシャッター104を開放し、更にモータを駆動してローラ対105、搬送ベルト106を回転させることにより紙幣を内部に搬送開始する。長さ検知センサ107は紙幣先端が進入してから後端が通過するまでの時間(パルス数)に基づいて紙幣の長さを判定し、正規の長さを有する場合には制御部は搬送ベルト106を順方向へ駆動して当該紙幣を識別装置に搬送する。一方、正規でない紙幣S、その他の紙葉類が挿入されることにより、正規の長さよりも短尺であることが長さ検知センサ107により検知された場合には、制御部はこの紙幣をリジェクトするために搬送ベルト106及びローラ対105を逆転させて紙幣挿入口101へ返却する(図7(b))。また、長さ検知センサ107を通過して識別装置に達した紙幣であっても真贋、金種の点で受入れ条件を満たさない場合にはリジェクトされ、搬送ベルト106の逆回転によって紙幣導入口101へ戻される。
【0004】
図8は複数国の多種類の紙幣を識別可能な識別装置を備えた多金種対応の紙幣処理装置に装備される紙幣挿入部の平面図である。
通貨を異にする複数の国の紙幣に共通使用できる識別装置を搭載した多金種対応の紙幣処理装置にあっては、幅方向寸法dが異なる全ての紙幣Sを安定して搬送できるように紙幣ガイド皿102よりも奥部にある搬送路110の幅D1は、当該紙幣処理装置が受入れ可能な最大幅の紙幣の幅寸法d1に合わせて大きく(d1+α)設定してある。
そして、紙幣挿入時に紙幣を直進し易いように安定してガイドするために、紙幣ガイド皿102の両側壁102a間の幅寸法D2は、当該紙幣処理装置を使用する国の紙幣のうちの最大幅の紙幣に合わせて設定する。
即ち、この種の紙幣処理装置においては、紙幣ガイド皿102以外は共通の部材で構成しておき、国毎に最適のガイド幅を有した紙幣ガイド皿102を紙幣挿入口101に対して着脱交換するだけであるから、安価に対応国のバリエーションを広げることができる。
【0005】
以上の構成において、紙幣ガイド皿の幅寸法D2が搬送路110の幅D1よりも大幅に狭い場合には、リジェクト紙幣Sを搬送路110から紙幣挿入口101に逆搬送する際に、スキュー等によって紙幣Sの逆搬送経路が少しでも横方向へずれを起こすと、紙幣後端部Paが紙幣ガイド皿の側壁102aにぶつかってジャムを起こす虞が高まる。
なお、一旦搬送路に挿入された紙幣が紙幣挿入口に逆搬送されるのは、紙幣がリジェクトされた場合だけではなく、業務終了時に紙幣取扱装置の金庫内に収納された紙幣を紙幣挿入口から取り出す場合も含まれる。
特許文献1、2、3には、紙幣挿入口の構造が開示されているが、このような不具合に対処するための構成は一切開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−073534号公報
【特許文献2】特開2000−149122公報
【特許文献3】特開2002−260062公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように従来の紙幣挿入機構にあっては、紙幣挿入口の幅寸法よりも奥部に設けられた搬送路の幅の方が広い場合に、一旦搬送路に搬送された紙幣がリジェクトされる等により逆搬送されるときに紙幣が紙幣ガイド皿の側壁と衝突してジャムし易くなるという問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、紙幣挿入口の幅寸法よりも奥部に設けられた搬送路幅の方が広い紙幣処理装置において、紙幣が挿入口へ向けて搬送路を逆搬送される場合に紙幣がスキューを起こしたとしても紙幣ガイド皿の側壁との衝突を回避させてジャムを防止することができる紙幣ガイド皿、紙幣ガイド装置、紙幣処理装置、及び紙幣取扱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る紙幣ガイド皿は、紙幣挿入口と、該紙幣挿入口の下方において前方へ突設されて紙幣下面をガイドする紙幣ガイド皿と、該紙幣ガイド皿の下流に連設されて前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を後方へ搬入したり前記紙幣挿入口へ逆搬送する正逆搬送機構と、を備えた紙幣ガイド装置に装備される前記紙幣ガイド皿であって、前記紙幣挿入口に挿入される紙幣の下面をガイドする底部ガイド面を備えた底部ガイド部材と、該底部ガイド面の横方向両端から夫々立ち上げられて挿入される該紙幣の両端縁をガイドする側部ガイド部材と、を有し、前記各側部ガイド部材には夫々前記正逆搬送機構により逆搬送されてくる逆搬送紙幣の位置がずれている場合に該逆搬送紙幣の横方向端縁を受け入れる受入れ口と前記底部ガイド面よりも上方にて開口する排出口とを備えた逆搬送紙幣ガイド溝が形成されていることを特徴とする。
紙幣挿入口の幅寸法よりも奥部に設けられた搬送路幅の方が広い紙幣処理装置においては、識別装置等においてリジェクトされた紙幣等、紙幣挿入口に逆搬送される紙幣を紙幣挿入口へ向けて逆送する場合に、ガイド皿の側部立ち上げ部と紙幣とが衝突することがある。本発明では、紙幣ガイド皿の側部ガイド部材の対向面に逆搬送紙幣の端縁をガイドする逆搬送紙幣ガイド溝を設けたので、逆搬送される紙幣がスキューを起こしたとしても紙幣ガイド皿の側壁との衝突を回避させてジャム発生を防止することができる。
【0009】
請求項2の発明は、前記底部ガイド部材に対して前記各側部ガイド部材を着脱自在に構成し、該側部ガイド部材を交換することにより、前記各側部ガイド部材の対向面間の間隔を調整可能に構成したことを特徴とする。
紙幣処理装置を複数の国、地域の紙幣を共通して適用可能な構成とするためには、側部ガイド部材間の間隔を紙幣幅に応じて変更することが有効である。
請求項3の発明は、前記底部ガイド面の幅方向両側縁に沿って夫々装着凹所を設け、各装着凹所内に各側部ガイド部材の底部を嵌合させることにより、該各側部ガイド部材を位置決めしたことを特徴とする。
底部ガイド部材と側部ガイド部材を別部材とした場合には、底部ガイド部材側に設けた装着凹所内に側部ガイド部材を嵌合配置することにより位置決めが容易となる。
請求項4の発明に係る紙幣ガイド装置は、前記側部ガイド部材を、底部を前記装着凹所内に嵌合させる下部材と、該下部材上に組み付けられる上部材とから構成し、前記下部材の上面と前記上部材の下面との間に形成されるギャップを前記逆搬送紙幣ガイド溝としたことを特徴とする。
側部ガイド部材を一体成形品としてもよいが、下部材と上部材とから構成することにより、製造が容易となる。
【0010】
請求項5の発明は、紙幣挿入口と、該紙幣挿入口の下方において前方へ突設されて紙幣をガイドする紙幣ガイド皿と、該紙幣ガイド皿の下流に連設されて前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を後方へ搬入したり前記紙幣挿入口へ逆搬送する正逆搬送機構と、を備えた紙幣ガイド装置であって、前記紙幣ガイド皿は、紙幣挿入口に挿入される紙幣の下面をガイドする底部ガイド面を備えた底部ガイド部材と、該底部ガイド面の横方向両端から夫々立ち上げられて挿入される該紙幣の両端縁をガイドする側部ガイド部材と、を有し、前記各側部ガイド部材には夫々前記正逆搬送機構により逆搬送されてくる逆搬送紙幣の位置がずれている場合に該逆搬送紙幣の横方向端縁を受け入れる受入れ口と前記底部ガイド面よりも上方にて開口する排出口とを備えた逆搬送紙幣ガイド溝が形成されていることを特徴とする。
請求項6の発明に係る紙幣処理装置は、請求項5に係る紙幣ガイド装置と、その紙幣搬送方向下流側に配置された識別装置と、を備えたことを特徴とする。
請求項7の発明に係る紙幣取扱装置は、請求項6に記載の紙幣処理装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙幣挿入口の幅寸法よりも奥部に設けられた搬送路幅の方が広い紙幣処理装置において、紙幣ガイド皿の対向する側面にリジェクト紙幣等の逆搬送されてくる端縁をガイドする逆搬送紙幣ガイド溝を設けたので、紙幣が挿入口へ向けて搬送路を逆搬送される場合に紙幣がスキューを起こしたとしても紙幣ガイド皿の側壁との衝突を回避させてジャム発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙幣ガイド装置を備えた紙幣処理装置を有した紙幣取扱装置(自動券売機)の外観を示す斜視図である。
【図2】(a)及び(b)は紙幣取扱装置の正面図及びA−A断面図である。
【図3】紙幣処理装置の側部縦断面図である。
【図4】(a)(b)及び(c)は紙幣ガイド皿の正面図、側面図、及び平面図である。
【図5】(a)及び(b)は紙幣ガイド皿と紙幣搬送経路との関係を示す平面図である。
【図6】紙幣ガイド皿の分解斜視図である。
【図7】(a)及び(b)は従来例に係る紙幣ガイド装置の正面斜視図、及び側部縦断面図である。
【図8】幅方向寸法が異なる多種類の紙幣を受け入れ可能な多金種対応の紙幣処理装置に装備される紙幣挿入部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る紙幣ガイド装置を備えた紙幣処理装置を有した紙幣取扱装置(自動券売機)の外観を示す斜視図であり、図2(a)及び(b)は紙幣取扱装置の正面図及びA−A断面図であり、図3は紙幣処理装置の側部縦断面図であり、図4(a)(b)及び(c)は紙幣ガイド皿の正面図、側面図、及び平面図であり、図5(a)及び(b)は紙幣ガイド皿と紙幣搬送経路との関係を示す平面図であり、図6は紙幣ガイド皿の分解斜視図である。
紙幣処理装置2は、例えば食券等の自動販売機(紙幣取扱装置)1に装備されて紙幣の受け入れ処理、釣銭等としての紙幣の払い出し処理、リジェクト紙幣(逆搬送紙幣)の返却処理等を行う機能を有する。なお、紙幣が紙幣挿入口に逆搬送されるのは、リジェクトされた場合のみならず、終業時に紙幣取扱装置の金庫内に収容された紙幣を回収するために紙幣挿入口から取り出す際にも逆搬送されるが、以下の実施形態の説明ではリジェクト紙幣を中心に説明する。
紙幣処理装置2は、紙幣取扱装置本体3の前面に設けられた紙幣挿入口(紙幣挿入部)21と、紙幣挿入口21に対して着脱自在に装着される紙幣ガイド皿30と、紙幣挿入口21から挿入され紙幣ガイド皿30によって案内されてきた紙幣Sを紙幣搬送経路Pに沿って装置本体内部に搬送したり紙幣挿入口へ向けて逆搬送するローラ対12a、及び搬送ベルト12b等の搬送部材(正逆搬送機構)12と、紙幣搬送経路P上に沿って搬送されてきた紙幣の真贋、金種を判定するための図示しないセンサ群からなる識別装置26と、を備えている。紙幣挿入口21、紙幣ガイド皿30と、搬送部材(正逆搬送機構)12は、紙幣ガイド装置(イ)を構成している。
【0014】
紙幣挿入口21は、紙幣挿入口21の下方において前方へ突設されて紙幣をガイドする紙幣ガイド皿30との協働により挿入される紙幣を紙幣搬送経路Pに導く。即ち、紙幣ガイド皿30は、挿入された紙幣の下面をガイドする底部ガイド面31aを上面に有した底部ガイド部材31と、底部ガイド面31aの横方向両端から夫々立ち上げられて挿入される紙幣の両端縁をガイドする側部ガイド面35aを内側面に有した側部ガイド部材35、35と、を有する。紙幣ガイド皿30は、利用者により紙幣挿入口に挿入された紙幣の底面を底部ガイド面31aによってガイドし、且つ紙幣の幅方向両端縁を両側部ガイド面35aによってガイドすることによってスムーズな挿入を可能にしている。
これを更に詳述すると、装置本体3の正面には紙幣挿入口21が配置されており、紙幣挿入口21の直下の装置本体外面からは紙幣ガイド皿30が突設されている。紙幣挿入口21から装置本体内部に続く紙幣搬送経路Pには、挿入検知センサ22、ソレノイドにより駆動されるシャッター23、ローラ対(搬送部材)12a、搬送ベルト(搬送部材)12b、長さ検知センサ25が順次配置されている。更に、長さ検知センサ25の奥部には紙幣の真贋、金種等を判別する識別装置26が配置され、識別装置の奥部には図示しない紙幣収納部が配置されている。
【0015】
紙幣Sが紙幣挿入口21から挿入された場合には、挿入検知センサ22が紙幣先端を検知することによって図示しない制御部はソレノイドを駆動してシャッター23を開放し、更にモータを駆動してローラ対12a、搬送ベルト12bを回転させることにより紙幣を内部に搬送開始する。長さ検知センサ25は紙幣先端が進入してから後端が通過するまでの時間(パルス数)に基づいて紙幣の長さを判定し、正規の長さを有する場合には制御部は搬送ベルト12bを順方向へ駆動して当該紙幣を識別装置26に搬送する。一方、規定寸法よりも短尺な紙幣S、その他の紙葉類、カード等が挿入されることにより、正規の長さよりも短尺であることが長さ検知センサ25により検知された場合には、制御部はこの紙幣をリジェクトするために搬送ベルト12b及びローラ対12aを逆転させて紙幣挿入口21へ返却する。
また、識別装置26において紙幣の真贋、金種を判別した結果、リジェクトすべき紙幣であると判定した場合にも、制御部はこの紙幣をリジェクトするために搬送ベルト12b及びローラ対12aを逆転させて紙幣挿入口21へ返却する。
【0016】
ところで、この種の紙幣処理装置2が通貨を異にする複数の国(地域)の紙幣に共通使用できる識別装置26を搭載した多金種対応型である場合には、図5(a)に示すように幅方向寸法(横方向寸法)dが異なる全ての紙幣Sを安定して搬送できるように、紙幣ガイド皿よりも奥にある紙幣搬送経路P(正逆搬送機構12)の幅D1を当該紙幣処理装置が受入れ可能な最大幅の紙幣の幅寸法d1に合わせて大きく(d1+α、αはマージン分)設定してある。一方、紙幣ガイド皿30の両側部ガイド面35a間の幅寸法D2は、紙幣挿入時に紙幣を直進させ易いように当該紙幣処理装置を使用する国の紙幣のうちの最大幅の紙幣に合わせて設定することとなる。
従って、従来の紙幣処理装置における紙幣ガイド皿は、紙幣処理装置を使用する国の紙幣の幅寸法に適合したものを装着して出荷する必要がある。このため、紙幣ガイド皿は装置本体3に対して着脱交換可能に構成されている。
【0017】
上述のように紙幣搬送経路Pの幅D1よりも紙幣ガイド皿の両側部ガイド面35a間の幅寸法D2が小さい場合には、背景技術において説明したようにリジェクトされた結果として逆搬送される紙幣の先端角部が側部ガイド部材35と衝突してジャムを起こす虞が高くなる。
これに対して本発明の紙幣ガイド皿30は、各側部ガイド部材の対向面35aに夫々搬送部材12により逆搬送されてくるリジェクト紙幣Sの横方向(幅方向)両端縁を受け入れる受入れ口36aと底部ガイド面よりも上方にて開口する排出口36bとを備えた逆搬送紙幣ガイド溝36が形成されている(図2(b)等を参照)。
【0018】
図5(a)中に実線で示すように紙幣挿入口21に向けて逆搬送されてくるリジェクト紙幣(逆搬送紙幣)S1が幅方向へスキュー(偏位)していない場合には挿入時と同様に底部ガイド面31a上に紙幣下面をガイドされ、且つ幅方向両端縁を両側部ガイド面35aによってガイドされながらスムーズに紙幣挿入口21から外部へ排出される。一方、図5(a)中に鎖線で示すようにリジェクト紙幣S2が一方の幅方向へ変位した状態で逆搬送される場合には、リジェクト紙幣S2の先端縁の一方が対応する側部ガイド面35aに設けた逆搬送紙幣ガイド溝36の受入れ口36aに入り込んで(図2(b)、図5(b))逆搬送紙幣ガイド溝36内を紙幣挿入口へ向けて移動し排出口36bからスムーズに排出される。このため、リジェクト紙幣は側部ガイド部材35の後端面と衝突することなくスムーズに紙幣挿入口から外部へ排出される。
【0019】
逆搬送紙幣ガイド溝36の後半部36A及び排出口36bが底部ガイド面31aよりも上方に位置しているのは、底部ガイド面と同等の高さに逆搬送紙幣ガイド溝36の後半部36A及び排出口36bが位置している場合には、紙幣挿入口21から底部ガイド面に沿って新たに挿入される紙幣の幅方向端縁が逆搬送紙幣ガイド溝36に入り込んでしまい、挿入される紙幣の幅方向位置を側部ガイド面35aによって規制することができなくなるからである。
なお、図6に示すように紙幣ガイド皿30を、底部ガイド部材31と、外部ガイド部材に対して着脱交換可能な一対の側部ガイド部材35とから構成してもよい。
即ち、底部ガイド部材31は底部ガイド31aの両側方に夫々装着凹所37を有しており、本例では、側部ガイド部材35を、下部材40と、上部材45とから構成し、各装着凹所37内に側部ガイド部材35の下部材40の底部を嵌合させ図示しない螺子で固定する。各装着凹所37の底面には階段状の段差部37aを形成し、側部ガイド部材35の下部材40の底部にはこの段差部37aと整合する階段状の段差部35bを形成して、装着凹所37内における側部ガイド部材35の位置決め安定性を高めている。
各側部ガイド部材35を各装着凹所37内に夫々嵌合配置したときに、対向面である側部ガイド面35a間の間隔が調整可能となるように、側部ガイド面35aの位置が異なる側部ガイド部材を複数種類用意しておく。即ち、各側部ガイド部材35を各装着凹所37内に嵌合配置したときに、対向面である側部ガイド面35a間の間隔が挿通される紙幣にとって最適の間隔となるように、当該紙幣の幅寸法に見合うように予め製造した側部ガイド部材を選択して組み付ける。
【0020】
また、下部材40の上面40aを上部材45の下面内側45aと対向させた状態で螺子50を上部材45に設けた穴45bと底部ガイド部材31側に設けた螺子穴51に螺着することによって、下部材40上に上部材45を固定する。この際、下部材の上面40aと上部材の下面内側45aとの間にはギャップが形成されており、このギャップが逆搬送紙幣ガイド溝36となる。なお、符号60は底部ガイド面31aの上方に所定のギャップを隔てて固定されて紙幣挿入口21を形成する天板部材であり、2つの側部ガイド部材35の上面に跨って配置された状態で装置本体3に固定される。
側部ガイド部材を一体成形品としてもよいが、下部材と上部材とから構成することにより、製造が容易となる。
【0021】
このように紙幣ガイド皿30を、装置本体3に対して着脱自在に固定される底部ガイド部材31と、底部ガイド部材に対して着脱自在な側部ガイド部材35とから構成したので、紙幣処理装置2が使用される国の通貨である紙幣の幅方向サイズに応じて側部ガイド部材35だけを交換することができ、側部ガイド部材35の対向面間隔を紙幣に応じて変更、調整することができる。底部ガイド部材31を共通使用できるので、経済的である。
なお、上記実施形態では紙幣の短い辺を先頭にして搬送する縦搬送を例として説明したが、紙幣の長い辺を先頭にして搬送する横搬送の場合にも本発明を適用することができる。従って、本発明において幅方向とは短手方向を意味せず、紙幣挿入方向と直交する方向(横方向)を意味する。
また、本実施形態においては、一旦挿入された紙幣がリジェクトされる場面を例として説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば後段の紙幣収納庫から売り上げ金を回収するため、紙幣を逆搬送して紙幣挿入口から紙幣を取り出すといった場面でも効果を奏することはいうまでもない。
なお、本発明に係る紙幣ガイド皿30を備えた紙幣処理装置2は、各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…自動販売機(紙幣取扱装置)、2…紙幣処理装置、3…紙幣取扱装置本体、12…搬送部材(正逆搬送機構)、12a…ローラ対、12b…搬送ベルト、21…紙幣挿入口、22…挿入検知センサ、23…シャッター、25…検知センサ、26…識別装置、30…紙幣ガイド皿、31…底部ガイド部材、31a…底部ガイド面、35…側部ガイド部材、35a…側部ガイド面、35a…対向面、35b…段差部、36…逆搬送紙幣ガイド溝、36A…後半部、36b…排出口、37…装着凹所、37a…段差部、40…下部材、40a…上面、45…上部材、45a…下面内側、45b…穴、50…螺子、51…螺子穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣挿入口と、該紙幣挿入口の下方において前方へ突設されて紙幣下面をガイドする紙幣ガイド皿と、該紙幣ガイド皿の下流に連設されて前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を後方へ搬入したり前記紙幣挿入口へ逆搬送する正逆搬送機構と、を備えた紙幣ガイド装置に装備される前記紙幣ガイド皿であって、
前記紙幣挿入口に挿入される紙幣の下面をガイドする底部ガイド面を備えた底部ガイド部材と、該底部ガイド面の横方向両端から夫々立ち上げられて挿入される該紙幣の両端縁をガイドする側部ガイド部材と、を有し、
前記各側部ガイド部材には夫々前記正逆搬送機構により逆搬送されてくる逆搬送紙幣の位置がずれている場合に該逆搬送紙幣の横方向端縁を受け入れる受入れ口と前記底部ガイド面よりも上方にて開口する排出口とを備えた逆搬送紙幣ガイド溝が形成されていることを特徴とする紙幣ガイド皿。
【請求項2】
前記底部ガイド部材に対して前記各側部ガイド部材を着脱自在に構成し、該側部ガイド部材を交換することにより、前記各側部ガイド部材の対向面間の間隔を調整可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の紙幣ガイド皿。
【請求項3】
前記底部ガイド面の幅方向両側縁に沿って夫々装着凹所を設け、各装着凹所内に各側部ガイド部材の底部を嵌合させることにより、該各側部ガイド部材を位置決めしたことを特徴とする請求項2に記載の紙幣ガイド皿。
【請求項4】
前記側部ガイド部材を、底部を前記装着凹所内に嵌合させる下部材と、該下部材上に組み付けられる上部材とから構成し、前記下部材の上面と前記上部材の下面との間に形成されるギャップを前記逆搬送紙幣ガイド溝としたことを特徴とする請求項2又は3に記載の紙幣ガイド皿。
【請求項5】
紙幣挿入口と、該紙幣挿入口の下方において前方へ突設されて紙幣をガイドする紙幣ガイド皿と、該紙幣ガイド皿の下流に連設されて前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を後方へ搬入したり前記紙幣挿入口へ逆搬送する正逆搬送機構と、を備えた紙幣ガイド装置であって、
前記紙幣ガイド皿は、紙幣挿入口に挿入される紙幣の下面をガイドする底部ガイド面を備えた底部ガイド部材と、該底部ガイド面の横方向両端から夫々立ち上げられて挿入される該紙幣の両端縁をガイドする側部ガイド部材と、を有し、
前記正逆搬送機構は、前記両側部ガイド部材の対向面間の間隔よりも広い搬送幅を備え、
前記各側部ガイド部材には夫々前記正逆搬送機構により逆搬送されてくる逆搬送紙幣の位置がずれている場合に該逆搬送紙幣の横方向端縁を受け入れる受入れ口と前記底部ガイド面よりも上方にて開口する排出口とを備えた逆搬送紙幣ガイド溝が形成されていることを特徴とする紙幣ガイド装置。
【請求項6】
請求項5に係る紙幣ガイド装置と、その紙幣搬送方向下流側に配置された識別装置と、を備えたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の紙幣処理装置を備えたことを特徴とする紙幣取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−154541(P2011−154541A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15746(P2010−15746)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】