説明

紙幣処理装置

【課題】復旧作業の作業性を向上できる紙幣処理装置の提供。
【解決手段】本体から引き出し可能な引出体46が紙幣を収納する収納部と引き出し方向に沿う支持軸に軸支されて収納部の上方を覆って収納部に対して紙幣を搬送する搬送位置と収納部の上方を開放する開放位置との間で揺動可能な搬送部と、を備え、引出体46の引き出し方向の後端部には、引出体46の本体からの引き出し時に後方に倒れて受面81を上向きとし、引出体46の本体への装填時に本体に当接し起立して受面81を引出体46の引き出し方向の後面80に対向させる揺動可能な受板55が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を取り扱う紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣を収納する紙幣カセットを着脱可能に備えた引出体が、本体に対し引き出し可能となっている紙幣処理装置がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−259084号公報(図10、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した紙幣処理装置では、紙幣カセット上部の搬送部を揺動開放して復旧作業する際に、搬送部に残留している紙幣を装置外に落下させる可能性があり、このような紙幣が引出体の後方に落下すると、本体内に入り込んでしまう等して復旧作業を繁雑にしてしまう可能性がある。
【0005】
したがって、本発明は、復旧作業の作業性を向上できる紙幣処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、本体および該本体から引き出し可能な引出体を有し、該引出体が、紙幣を収納する収納部と、引き出し方向に沿う支持軸に軸支されて該収納部の上方を覆って該収納部に対して紙幣を搬送する搬送位置と前記収納部の上方を開放する開放位置との間で揺動可能な搬送部と、を備えてなる紙幣処理装置であって、前記引出体の引き出し方向の後端部には、該引出体の前記本体からの引き出し時に後方に倒れて受面を上向きとし、前記引出体の前記本体への装填時に該本体に当接し起立して前記受面を前記引出体の引き出し方向の後面に対向させる揺動可能な受板が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、対向する前記受面と前記後面との間の紙幣を検知する紙幣検知手段と、該紙幣検知手段で紙幣を検知すると報知を行う報知手段と、が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記紙幣検知手段は、前記引出体の前記後面を構成するとともに上下方向に沿う基本状態から前記受板とは反対方向に揺動可能な後面部材と、該後面部材を前記基本状態に保持する付勢手段と、前記後面部材および前記受板のいずれか一方に形成された突出部と、前記後面部材および前記受板のいずれか他方に形成され前記突出部を進入可能とする被進入部と、前記後面部材が前記基本状態にあるか否かを検知する位置検知手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、引出体が本体から引き出されると、引出体の引き出し方向の後端部に設けられた受板が後方に倒れて受面を上向きとする。よって、収納部を覆う搬送部を揺動開放して復旧作業する際に、搬送部から紙幣が引出体の後方に落下したとしても、これを受板が受面で受けることができ、本体内に入り込んでしまう状況になることを抑制できる。したがって、復旧作業の作業性を向上できる。また、引出体の本体への装填時に受板が本体に当接して起立するため、受板を設置するためのスペースが小さくて済み、装置の大型化を抑制することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、引出体の本体への装填時に受板が本体に当接し起立して受面を引出体の後面と対向させると、紙幣検知手段がこれらの間の紙幣の有無を検知することになり、紙幣検知手段が紙幣を検知すると、報知手段が報知を行うことになる。よって、作業者が受板に紙幣が落下したことに気付かずに引出体の本体への装填を行ったとしても、受板の受面と引出体の後面との間に紙幣があることを報知することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、引出体の本体への装填時に受板が本体に当接し起立すると、対向する受板の受面と引出体の後面との間に紙幣がなければ、後面部材および受板のいずれか一方に形成された突出部が、後面部材および受板のいずれか他方に形成された被進入部に進入することになり、後面部材が付勢手段で基本状態に保持された状態を維持することになる。他方、対向する受板の受面と引出体の後面との間に紙幣があれば、突出部がこの紙幣に当接して被進入部に進入できなくなり、本体に当接して起立した受板が紙幣を介して後面部材を押圧し付勢手段の付勢力に抗して基本状態から揺動させることになる。そして、位置検知手段が、後面部材が基本状態にあるか否かを検知することで、紙幣の有無を検知することになる。したがって、簡素な構造で、対向する受板の受面と引出体の後面との間の紙幣を検知することができる。しかも、受板の受面と引出体の後面との間に紙幣があると、本体に当接して強制的に起立させられる受板に対し、後面部材が受板とは反対方向に揺動し逃げることになる。したがって、受板の受面と引出体の後面との間に挟まれた紙幣の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置を含む出納機を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置を概略的に示す側断面図である。
【図3】同紙幣処理装置の側断面図であって、入金処理ルートを太線で示すものである。
【図4】同紙幣処理装置の側断面図であって、収納処理ルートを太線で示すものである。
【図5】同紙幣処理装置の側断面図であって、返却処理ルートを太線で示すものである。
【図6】同紙幣処理装置の側断面図であって、バラ出金処理ルートを太線で示すものである。
【図7】同紙幣処理装置の側断面図であって、束出金処理ルートを太線で示すものである。
【図8】同紙幣処理装置の側断面図であって、自己精査処理の往路ルートを太線で示すものである。
【図9】同紙幣処理装置の側断面図であって、自己精査処理の復路ルートを太線で示すものである。
【図10】同紙幣処理装置の側断面図であって、ローカル整理処理の往路ルートを太線で示すものである。
【図11】同紙幣処理装置の側断面図であって、ローカル整理処理の復路ルートを太線で示すものである。
【図12】同紙幣処理装置の引出体を示す斜視図であって、(a)は搬送部が搬送位置にある状態を、(b)は搬送部が開放位置にある状態を示すものである。
【図13】同紙幣処理装置の本体から引き出された引出体および各種カセットを示す斜視図であって、(a)は搬送部が搬送位置にある状態を、(b)は搬送部が開放位置にある状態を示すものである。
【図14】同紙幣処理装置の引出体を示す搬送部が開放位置にある状態の正面図である。
【図15】同紙幣処理装置の引出体の引き出し時の状態を示す後部の斜視図である。
【図16】同紙幣処理装置の引出体の装填時の状態を示す後部の斜視図である。
【図17】同紙幣処理装置の引出体の引き出し時の状態を示す後部の斜視図であって、紙幣を受けた状態を示すものである。
【図18】同紙幣処理装置の引出体の装填時の状態を示す後部の斜視図であって、紙幣が残存した状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。図1は、紙幣および硬貨等を取り扱う出納機を示している。この出納機は、銀行等の金融機関の店舗に設置されて店舗全体の貨幣処理を管理するものである。出納機は、例えば、大口顧客に対する係員による入金、出金等の取引処理、係員による渉外先への持ち出し金の出金処理や、渉外先からの持ち帰り金の入金処理、さらには、営業終了後の金融機関店舗全体での入出金状況の締め上げ管理等を行うものである。
【0014】
出納機は、紙幣についての入出金処理等を行う本実施形態に係る紙幣処理装置11と、紙幣の特に新券についての出金処理等を行う新券処理装置12と、硬貨についての入出金処理等を行う硬貨処理装置13とが左右に並設されて構成されており、硬貨処理装置13の上部に、操作者によって操作入力がなされる操作部14と、操作者に対して画面表示および音声出力を行う表示部15とが設けられている。
【0015】
次に、本実施形態に係る紙幣処理装置11の全体構成を図2を参照して説明する。以下の説明における前後左右は、操作者側を前、操作者とは反対側を後、操作者から見て左右を左右とする。
【0016】
紙幣処理装置11は、その前面側の上部に、機外からバラ紙幣が投入されるとともに機内から出金用のバラ紙幣が繰り出される入出金部21が設けられている。入出金部21は、その底部を構成する載置板22が後下がりに傾斜した姿勢で昇降可能に設けられており、その奥側の支承面23が載置板22と直交するように後上がりに傾斜して設けられている。入出金部21には、紙幣が長さ方向を左右方向に沿わせた姿勢で載置板22上に集積されることになり、紙幣は載置板22の傾斜により後端縁が支承面23に当接する。入出金部21の上部の後側には、載置板22上に集積されたバラ紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて機内へ繰り出すとともに機内からの紙幣を入出金部21に繰り出す繰出部21aが設けられている。なお、紙幣処理装置11内では、紙幣が、長さ方向を左右方向に沿わせた姿勢で搬送されることになる。
【0017】
入出金部21の下側には、紙幣処理装置11の前面位置に、受け付け不可と判定された入金リジェクト紙幣が機内から繰り出される入金リジェクト部26が設けられている。入出金部21および入金リジェクト部26の後側には、出金不可と判定された出金リジェクト紙幣を収納する出金リジェクト部27が設けられており、出金リジェクト部27の後方の下部には紙幣を識別する識別部28が設けられている。
【0018】
また、出金リジェクト部27の後方の上部には紙幣を整列させて所定の結束枚数集積させる整列部30が設けられており、この整列部30の上部には、整列部30で集積された結束枚数の紙幣に結束テープを巻き回して小束紙幣とする結束部31が設けられている。この結束部31の前側には結束部31で作成された小束紙幣を機外に繰り出す束出金部32が設けられている。
【0019】
また、紙幣処理装置11の下部には、奥側から順に、入金確定後の所定の単一金種のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納する金種カセット(収納部)35、同様の金種カセット(収納部)36、同様の金種カセット(収納部)37、入金確定後のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納する混合カセット(収納部)38、および入金された入金確定前のバラ紙幣を上下に集積させた状態で一時貯留するプールカセット(収納部)39が上下左右の位置を合わせて水平直線状のカセット配列方向に一列状に配列されている。このカセット配列方向は、紙幣処理装置11の前後方向に沿っている。
【0020】
金種カセット35の上部には、その内部に紙幣を繰り出すとともに内部の紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して繰り出す繰出部35aが設けられており、金種カセット36の上部にも同様の繰出部36aが、金種カセット37の上部にも同様の繰出部37aが、混合カセット38の上部にも同様の繰出部38aが、プールカセット39の上部にも同様の繰出部39aが、それぞれ設けられている。
【0021】
紙幣処理装置11の内部には、紙幣を搬送する紙幣搬送路41が各部を適宜繋ぐように設けられている。紙幣搬送路41は、繰出部21aから後上がりに延出した後、後下がりに延出し、さらに鉛直下方に延出し、その後、前側に一端延出した後、下側にて後側に折り返し、後方に延出し、途中上側に凸状に屈曲して識別部28を通って下方に若干延出する搬送路41Aと、搬送路41Aに連続して下側に若干延出した後に前方に延出し前端から下方に若干延出する搬送路41Bと、搬送路41Bに連続するようにプールカセット39に設けられた搬送路41Cとを有している。
【0022】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Bの途中から分岐する搬送路41Dと、搬送路41Dに連続するように金種カセット35に設けられた搬送路41Eと、搬送路41Bの搬送路41Dよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Fと、搬送路41Fに連続するように金種カセット36に設けられた搬送路41Gと、搬送路41Bの搬送路41Fよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Hと、搬送路41Hに連続するように金種カセット37に設けられた搬送路41Iと、搬送路41Bの搬送路41Hよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Jと、搬送路41Jに連続するように混合カセット38に設けられた搬送路41Kと、搬送路41Bの搬送路41Jよりもプールカセット39側から分岐して上方に延出する搬送路41Lと、搬送路41Lに繋がって屈曲し後方に延出して搬送路41Aの入出金部21と識別部28との間に繋がる搬送路41Mとを有している。
【0023】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Bの搬送路41Jの分岐位置と搬送路41Lの分岐位置との間位置から分岐して上方に延出する搬送路41Nと、搬送路41Nに繋がって上方に延出し搬送路41Mの途中位置に繋がる搬送路41Oと、搬送路41Mにおける搬送路41Oの接続位置と搬送路41Aへの接続位置との間位置から分岐して入金リジェクト部26に繋がる搬送路41Pと、搬送路41Aにおける搬送路41Mの接続位置と入出金部21との間位置から分岐し前方に延出して搬送路41Pの途中位置に繋がる搬送路41Qと、搬送路41Pにおける搬送路41Qの接続位置と入金リジェクト部26との間位置から上方に分岐し後上がりに延出して出金リジェクト部27に繋がる搬送路41Rとを有している。
【0024】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Aにおける入出金部21と搬送路41Qの分岐位置との間位置と、搬送路41Mの接続位置と識別部28との間位置とを繋ぐ搬送路41Sと、搬送路41Aにおける搬送路41Sの接続位置と入出金部21との間位置から後方に分岐して整列部30に繋がる搬送路41Tとを有している。搬送路41Sには、紙幣の表裏を反転させる表裏反転部43が設けられている。
【0025】
ここで、上記した搬送路41A〜41Mは正逆両方向に紙幣を搬送可能となっており、搬送路41N〜41Tは一方向にのみ紙幣を搬送可能となっている。
【0026】
図3の太線は、機外から入出金部21に投入されたバラ紙幣を搬送しつつ識別計数する入金処理のルートを示している。つまり、入出金部21の載置板22上にバラ紙幣が載置されて、操作部14に入金処理を行う旨の入力操作がなされると、繰出部21aが入出金部21の載置板22上の紙幣を上端のものから順に一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41Aで搬送することになる。搬送路41Aでの搬送中に識別部28が紙幣を識別計数することになり、識別部28で受け入れ可能と判定した紙幣(取り扱い可能な金種の紙幣)を、図3に太実線で示すように、搬送路41B,41Cでプールカセット39に搬送する一方、識別部28で受け入れ不可と判定した紙幣を、図3に太破線で示すように、搬送路41Bから搬送路41N,41O,41M,41Pで入金リジェクト部26に搬送する。これにより、受け入れ可能な紙幣をプールカセット39に一時貯留し、受け入れ不可な紙幣を入金リジェクト部26に放出する。
【0027】
図4の太線は、入金処理にてプールカセット39に一時貯留した紙幣を、操作部14への承認操作が入力されたことを条件に、確定して、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに収納する収納処理のルートを示している。つまり、プールカセット39の紙幣を上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図4に太実線で示すように、搬送路41C,41B,41L,41M,41Aで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、搬送路41B,41D〜41Kの対応するものによって金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに搬送する。これにより、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものに紙幣を収納する。なお、収納処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図4に太破線で示すように、搬送路41B,41N,41O,41M,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0028】
図5の太線は、入金処理にてプールカセット39に一時貯留した紙幣を、操作部14へのキャンセル操作が入力されたことを条件に、入出金部21に繰り出す返却処理のルートを示している。つまり、プールカセット39の紙幣を上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41C,41B,41Aによって入出金部21に搬送する。これにより、入出金部21に紙幣を返却する。
【0029】
図6の太線は、操作部14へ入力されたバラ出金操作に基づいて、金種カセット35、金種カセット36および金種カセット37の指定された金種のものから紙幣を出金するバラ紙幣出金処理のルートを示している。つまり、バラ出金処理では、図6に太実線で示すように、金種カセット35〜37の指定された金種のものに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜37aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Iの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41Aで入出金部21に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41Aで入出金部21に、それぞれ搬送する。これにより、出金操作に基づくバラ紙幣を入出金部21に繰り出す。なお、出金処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図6に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0030】
図7の太線は、操作部14へ入力された束出金操作に基づいて、金種カセット35、金種カセット36および金種カセット37の指定された金種のものからの紙幣を結束して出金する束出金処理のルートを示している。つまり、束出金処理では、図7に太実線で示すように、金種カセット35〜37のうち指定された金種のものに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜37aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Iの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41A,41Tで整列部30に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41A,41Tで整列部30に、それぞれ搬送する。これにより、指定された単一金種の紙幣を結束単位枚数だけ整列部30に繰り出す。そして、結束部31で結束を行い、束出金部32に繰り出す。このような処理を指定された金種毎に指定された束数分行うことになる。なお、束出金処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図7に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0031】
図8の太線は、操作部14へ入力された自己精査処理操作に基づいて、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応するものの紙幣を自己精査する自己精査処理の往路ルートを示している。つまり、自己精査処理では、図8に太実線で示すように、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定された一つに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a〜38aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D〜41Kの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28で識別計数しつつ、搬送路41M,41L,41B,41Cを介してプールカセット39に搬送する。そして、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定された一つに収納されていた紙幣をすべて繰り出す。なお、この搬送中、識別部28で重送等と識別した紙幣については、図8に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0032】
図9の太線は、上記した自己精査処理の復路ルートを示している。上記したようにプールカセット39に一旦移した紙幣を、図9に太実線で示すように、搬送路41C,41B,41L,41M,41Aによって、識別部28に搬送し、識別部28で識別計数するとともに、識別部28の識別結果に基づいて、搬送路41B,41D〜41Kの対応するものを介して、金種カセット35〜37および混合カセット38の対応する金種のものに収納する。なお、この搬送中、識別部28で重送等と識別した紙幣については、図9に太破線で示すように、搬送路41B,41N,41O,41M,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。
【0033】
以上により、識別部28の計数結果と、金種カセット35〜37および混合カセット38の自己精査処理を行ったものに収納された紙幣の枚数とが一致することになり、このような自己精査処理を、金種カセット35〜37および混合カセット38のうちの設定されたものについて、それぞれ個別に行うことになる。なお、金種カセット35〜37および混合カセット38にそれぞれ収納された紙幣の合計枚数がプールカセット39の最大収納枚数以下であった場合には、上記の自己精査処理をそれぞれ個別に行う必要はなく、すべて一括して行うこともできる。
【0034】
図10の太線は、機外から入出金部21に投入されたバラ紙幣を搬送しつつ識別計数するローカル整理処理の往路ルートを示している。つまり、入出金部21の載置板22上にバラ紙幣が載置されて、操作部14にローカル整理処理を行う旨の入力操作が金種指定とともになされると、繰出部21aが入出金部21の載置板22上の紙幣を上端のものから順に一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図10に太実線で示すように、搬送路41Aで搬送することになる。搬送路41Aでの搬送中に識別部28が紙幣を識別計数することになり、識別部28で指定金種と判定した紙幣を、搬送路41B,41Cでプールカセット39に搬送する一方、識別部28で指定金種以外と判定した紙幣を、図10に太破線で示すように、搬送路41Bから搬送路41N,41O,41M,41Pで入金リジェクト部26に搬送する。これにより、指定金種の紙幣をプールカセット39に一時貯留し、指定金種以外の紙幣を入金リジェクト部26に放出する。
【0035】
図11の太線は、ローカル整理処理の復路ルートを示している。上記したようにプールカセット39に一旦収納した紙幣を、上端のものから繰出部39aが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、図11の太線で示すように、搬送路41C,41B,41Aで識別部28に搬送し、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41A,41Tで整列部30に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41A,41Tで整列部30に、それぞれ搬送する。このようにして、指定された単一金種の紙幣を結束単位枚数だけ整列部30に繰り出す。そして、結束部31で結束を行い、束出金部32に繰り出す。このような処理を結束単位枚数が整列部30に集積される限り繰り返す。なお、結束単位枚数に満たない、端数紙幣が整列部30に集積された場合にも、これを結束し端数紙幣であることを示す識別をつけて束出金部32に繰り出す。なお、ローカル整理処理にて識別部28で重送等と識別した紙幣については、図11に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41Pによって入金リジェクト部26に搬送し、入金リジェクト部26に放出する。
【0036】
本実施形態に係る紙幣処理装置11は、その上部にある、入出金部21、入金リジェクト部26、出金リジェクト部27、識別部28、整列部30、結束部31、束出金部32、表裏反転部43および搬送路41A,41M,41O〜41Tが本体45内に配置されており、その下部にある、搬送路41B,41D,41F,41H,41J,41L,41Nが、本体45から紙幣処理装置11の前後方向に沿って前面側に引き出し可能な引出体46内に配置されている。さらに、搬送路41Eは、引出体46に対し着脱可能な金種カセット35内に、搬送路41Gは同様の金種カセット36内に、搬送路41Iは同様の金種カセット37内に、搬送路41Kは同様の混合カセット38内に、搬送路41Cは同様のプールカセット39内に、それぞれ配置されている。
【0037】
引出体46は、図示略のスライドレールを介して本体45に連結されており、図12に示すように、装填部47と、この装填部47の上方に揺動可能に設けられた搬送部48とを有している。図13に示すように、装填部47には、紙幣を収納する複数の収納体である金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39が一列状に装填されることになり、この装填部47の上方の搬送部48は、金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の上方を覆ってこれらに対して紙幣を搬送する。搬送部48には、図2に示す上記した搬送路41B,41D,41F,41H,41J,41L,41Nが設けられている。
【0038】
装填部47は、図12に示すように、前壁部51と、前壁部51の左端側の略全高さ範囲から後方に延出するベース壁部52と、前壁部51の右端側の下部から後方に延出する着脱壁部53と、前壁部51と平行をなしてベース壁部52および着脱壁部53に連結される後壁部54と、これら前壁部51、ベース壁部52、着脱壁部53および後壁部54で囲まれる空間の下部を閉塞する図示略の底板部とを有している。ここで、前壁部51は、紙幣処理装置11の前面を構成する。また、ベース壁部52の上部には、図12(b)に示すように、前後方向に沿う支持軸57aを有する2カ所のヒンジ57を介して搬送部48が揺動可能に連結されている。
【0039】
装填部47には、図13に示す金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39が個別に装填される、図12に示す複数の装填空間58を仕切る複数の仕切壁部59が、前壁部51と後壁部54との間に、これらに平行に設けられている。ここで、図12(b)に示すように、ヒンジ57の支持軸57aが上側に設けられることになるベース壁部52の高さよりも、支持軸57aとは反対側の着脱壁部53の高さの方が上記したように低くなっており、これにより、複数の装填空間58は、着脱壁部53の上側において側方に大きく開口している。
【0040】
仕切壁部59は、着脱壁部53への接合側が着脱壁部53と同高さとなっており、ベース壁部52への接合側が着脱壁部53よりも高くベース壁部52よりも若干低い高さとなっている。これにより、仕切壁部59は、着脱壁部53側の上部がベース壁部52の上部と着脱壁部53の上部とを結ぶように斜めに切り欠かれた形状をなしている。言い換えれば、搬送部48を軸支する側のベース壁部52の上端部と、上側が開放された着脱壁部53の上端部とを結ぶ線の近傍付近に仕切壁部59の上端縁が形成されている。このような装填部47には、前壁部51側の下部に、本体45からの引き出し時に床面上で転動するキャスタ60が設けられている。
【0041】
装填部47の一縁であるベース壁部52の上部には前後二カ所に上記したヒンジ57が取り付けられており、これらヒンジ57に上記した搬送部48が取り付けられている。言い換えれば、搬送部48が、装填部47の一縁にあって、複数の金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の配列方向、つまり引出体46の引き出し方向に沿うヒンジ57の支持軸57aに軸支されて、装填部47に対し揺動可能となっている。
【0042】
搬送部48は、ベース壁部52と着脱壁部53との間の上方位置で水平に配置される図12(a)に示す搬送位置と、ベース壁部52の上方に延出する姿勢となってすべての装填空間58の上方を開放する図12(b)に示す開放位置との間で揺動可能となっている。搬送位置にあるとき、搬送部48は、図13(a)に示す金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の上方を覆ってこれらに対して紙幣を搬送可能となる。開放位置にあるとき、図13(b)に示すように金種カセット35〜37、混合カセット38およびプールカセット39の上方を開放する。なお、搬送部48は、図12(a),図13(a)に示すように水平に配置される搬送位置と、図12(b),図13(b),図14に示す開放位置との間の揺動角度が、90度より大きくなっている。引出体46と本体45とは、搬送部48が搬送位置にあるときに、本体45に対し衝突することなく装填可能となり、搬送部48が開放位置にあるときには、本体45に対し装填しようとすると搬送部48が本体45に衝突する形状関係になっている。
【0043】
図12に示すように、引出体46の引き出し方向の後端部となる後壁部54には、その左右両側(一方のみ図示)の側面部65の上下方向中間位置に左右方向に沿う支持軸55aがそれぞれ設けられており、これら支持軸55aによって受板55が揺動可能に取り付けられている。この受板55は、図15に示すように支持軸55aから後上がりに傾斜して延出する後倒状態と、図16に示すように支持軸55aから鉛直上方に延出するように起立する起立状態との間で揺動する。
【0044】
図15に示すように、受板55は、矩形板状の主板部70と、主板部70の平行な一対の端縁部から主板部70に対し垂直をなすように同側に立ち上がる一対の側板部71と、図16に示すように主板部70の残りの一の端縁部から側板部71と同側に略垂直に立ち上がる当接板部75とを有する受板本体72を有している。一対の側板部71の当接板部75側の端部には、主板部70に沿う方向に主板部70よりも延出する延出部73がそれぞれ形成されている。主板部70には、その当接板部75側に、側板部71と平行をなすスリット74が、一対の側板部71間を結ぶ方向に所定の間隔をあけて複数(具体的には6カ所)形成されている。
【0045】
また、受板55は、図16に示すように、矩形板状の基板部77と、基板部77の平行な一対の端縁部から基板部77に対し垂直をなすように同側に立ち上がる一対の突出板部(突出部)78とを有する別体部材79を複数(具体的には3つ)有している。これら別体部材79は、主板部70の板厚方向の側板部71とは反対側から、2カ所のスリット74に両側の突出板部78を嵌合させており、基板部77を主板部70に面接触させるようにして受板本体72にそれぞれ固定されている。この固定状態で、各別体部材79の突出板部78は、図15に示すように、受板本体72の主板部70から板厚方向の側板部71側に突出することになる。
【0046】
上記のように受板本体72と複数の別体部材79とが一体化されてなる受板55は、後壁部54の後側において、一対の側板部71を主板部70より前側とし、かつ一対の延出部73を側板部71から下向きに延出させる姿勢で、一対の延出部73において側面部65の一対の支持軸55aに回動可能に連結されている。
【0047】
受板55は、図16に示すように、支持軸55aから鉛直上方に延出する起立状態では、側板部71が後壁部54の側面部65に重なり合うとともに主板部70が前後方向に直交することになり、また、図15に示すように、支持軸55aから後上がりに傾斜して延出する後倒状態では、当接板部75が後壁部54の後面80に接触することでそれ以上の揺動が規制されるようになっている。受板55は、支持軸55aから後上がりに傾斜して延出する後倒状態となるように図示略の揺動スプリングで付勢されている。なお、受板55を、自重のみによって後倒状態となるようにしても良い。
【0048】
受板55は、当接板部75を後壁部54の後面80に当接させて停止した後倒状態では、主板部70の板厚方向の側板部71側の面が、後面80側ほど下側に位置するように傾斜しつつ上向きとなり、この面が上側から落下する紙幣を受ける受面81となる。そして、突出板部78はこの受面81から凸状をなす。なお、引出体46は、紙幣処理装置11の前後方向前側に引き出されることから、その後面80は、この引き出し方向の後面になる。
【0049】
受板55は、一対の側板部71の延出部73とは反対側に、回転軸82aを左右方向に沿わせて取り付けられる当接ローラ82を有している。これら当接ローラ82は、引出体46が本体45から前端まで引き出された状態では、何にも当接することがない。よって、当接ローラ82は、受板55を図示略の揺動スプリングの付勢力で後倒状態とし、その結果、受板55の後端に位置する状態となる。図13に示すように、引出体46が本体45から前端まで引き出された状態で、後倒状態にある受板55は、引出体46が引き出されることで露出する本体45の前端開口部83内に後部が入り込み、引出体46と本体45との間に生じる平面視の隙間を埋める。
【0050】
他方、この状態から、引出体46が本体45に装填されると、後倒状態にあった受板55の後端に位置していた当接ローラ82が、装填終期に、図16に示すように、本体45の奥側の図示略のローラストッパに当接して、前後方向移動が規制されることになり、よって、引出体46がさらに装填されると、当接ローラ82は、後壁部54に近づき、受板55を、図示略の揺動スプリングの付勢力に抗して後壁部54に近づける。最終的に、引出体46が本体45に図示略の装填ストッパに当接して停止する後端位置まで装填されると、当接ローラ82は、受板55を起立状態とする。つまり、受板55は、引出体46の本体45への装填時に本体45に当接して起立状態となる。
【0051】
また、この状態から、引出体46が本体45から引き出されると、その初期に、本体45の奥側の図示略のローラストッパに当接して停止している当接ローラ82に対し引出体46が前方に移動し、その結果、受板55が図示略の揺動スプリングの付勢力で後方に倒れて受面81を上向きとする。そして、受板55は、当接板部75が後面80に当接してそれ以上の揺動が規制される後倒状態になると、後倒状態を維持したまま、引出体46と一体に引き出されることになる。つまり、受板55は、引出体46の本体45からの引き出し時に後方に倒れて受面81を上向きとする。
【0052】
図15に示すように、引出体46の後壁部54は、左右両端で上下方向に沿う一対の板状部87とこれら板状部87の前端縁側で前後方向に略直交する面部88とを有している。つまり、後壁部54は前方に凹む凹状部90を有している。そして、板状部87が、後壁部54の左右の側面部65を構成する。なお、面部88は、後壁部54の後面80の下部を構成しており、受板55が後倒状態にあるとき、当接板部75はこの面部88に当接する。
【0053】
凹状部90には、後壁部54の後面80の面部88よりも上側の中間後面部93を構成する後面部材94が、受板55を支持する支持軸55aに揺動可能に支持されて設けられている。この後面部材94は、矩形板状の主板部95と、主板部95の平行な一対の端縁部のそれぞれの一端側から主板部95に対し垂直をなすように同側に立ち上がる一対の連結板部96と、主板部95の一対の連結板部96とは反対側に位置する端縁部から、主板部95に対し連結板部96と同側に垂直をなして立ち上がる被検知板部97とを有している。主板部95には、連結板部96と平行をなすスリット(被進入部)98が、一対の連結板部96間を結ぶ方向に所定の間隔をあけて複数(具体的には6カ所)形成されている。
【0054】
後面部材94は、後壁部54の後側において、一対の連結板部96を主板部95より前側、かつ下部に位置させる姿勢で、一対の連結板部96において側面部65の一対の支持軸55aに回動可能に連結されている。そして、主板部95の板厚方向の連結板部96とは反対側が上記した中間後面部93となっている。
【0055】
凹状部90には、後面部材94よりも上側の面部88に固定される矩形の固定板部100と、固定板部100の下端縁部から後方に延出する中間板部101と、中間板部101の固定板部100とは反対側の端縁部から、固定板部100と平行をなして下方に延出する係止板部102とを有する係止板103が設けられている。この係止板103は、その係止板部102が、後面部材94の主板部95よりも受板55側に位置しており、この主板部95に当接して後面部材94のそれ以上の受板55側への揺動を規制する。この係止板部102に主板部95を当接させた状態で後面部材94は、中間後面部93を前後方向に直交させることになる。固定板部100の受板55側の面は、上記した面部88の下部および中間後面部93とともに後壁部54の後面80を構成する上部後面部104となる。
【0056】
なお、図示は略すが、後面部材94には、後面部材94を受板55側に付勢する図示略の起立スプリングが設けられており、この起立スプリングにより、後面部材94は係止板部102に主板部95を当接させて停止する基本状態に保持される。この基本状態にあるとき、後面部材94はその中間後面部93を上下方向に沿わせ前後方向に直交させており、後面部材94は、この基本状態から受板55とは反対側に所定角度揺動可能となっている。後壁部54の一方の板状部87の内面には、後面部材94が基本状態にあるときに被検知板部97を検知せず、後面部材94が基本状態から面部88側に揺動すると、被検知板部97を検知する位置検知センサ(位置検知手段)105が設けられている。つまり、位置検知センサ105は、後面部材94が基本状態にあるか否かを検知する。
【0057】
図16に示すように、起立状態にある受板55は、その受面81を、後面80のうち後面部材94に設けられた中間後面部93および係止板103に設けられた上部後面部104に対向させることになる。そして、上記した基本状態にある後面部材94の複数のスリット98は、起立状態にある受板55の複数の突出板部78を一対一で円滑に進入させることが可能となっている。
【0058】
つまり、基本状態にある後面部材94の中間後面部93に対し、これに受面81を対向させるように受板55が後倒状態から起立状態に向け揺動すると、中間後面部93および受面81の間に何も存在していなければ、受板55は、後面部材94を図示略の起立スプリングの付勢力で基本状態としたままそのスリット98内に突出板部78を進入させて起立状態になる。他方、中間後面部93および受面81の間に例えば紙幣が存在していれば、受板55は、紙幣が邪魔して後面部材94のスリット98内に突出板部78を進入させることができず、突出板部78で紙幣および後面部材94を押圧し後面部材94を図示略の起立スプリングの付勢力に抗して揺動させながら起立状態になる。
【0059】
そして、位置検知センサ105は、被検知板部97を検知しないこと、つまり後面部材94が基本状態にあることを検知することで、対向する受面81と中間後面部93との間に紙幣がないことを検知することになり、被検知板部97を検知すること、つまり後面部材94が基本状態にはないことを検知することで、対向する受面81と中間後面部93との間に紙幣が有ることを検知することになる。よって、後面部材94、これを付勢する図示略の起立スプリング、係止板部102、突出板部78、スリット98および位置検知センサ105が、対向する受面81と後面80との間の紙幣を検知する紙幣検知部(紙幣検知手段)107を構成している。
【0060】
図示略の制御部は、位置検知センサ105によって被検知板部97が検知される、つまり紙幣検知部107で紙幣を検知すると、図1に示す表示部(報知手段)15によって、引出体46の後端部に落下紙幣があることを画像表示および音声出力で報知することになる。勿論、位置検知センサ105によって被検知板部97が検知されていなければ、引出体46の後端部に落下紙幣があることを報知することはない。
【0061】
つまり、引出体46に設けられた金種カセット35〜37、混合カセット38、プールカセット39および搬送部48のいずれかにおいてジャム等の異常が発生したことを図示略のセンサが検知すると、制御部は、各部を停止させるとともに、引出体46を本体45から引き出して復旧作業を促す旨を画像表示を表示部15に表示させる。これを見て作業者は、図13(a)に示すように、引出体46を本体45から前端位置まで引き出す。すると、受板55が図示略の揺動スプリングの付勢力で後倒状態となり、本体45の前端開口部83内に後部が入り込み、引出体46と本体45との間に生じる平面視の隙間を前下がりの姿勢で埋める。
【0062】
引出体46を本体45から前端位置まで引き出した後、作業者は、必要により、図13(b)に示すように、搬送部48を装填部47に対しヒンジ57の支持軸57aを中心に開放位置まで揺動させた状態で、復旧作業を行う。つまり、ジャム紙幣や搬送途中で停止している紙幣を搬送部48から取り除く。
【0063】
その際に、搬送部48から紙幣が落下して引出体46の後方に落下してしまうことがあると、前端開口部83から本体45内に入り込んでしまう可能性があるが、引出体46の後端部の受板55が後倒状態で本体45の前端開口部83内に入り込んでいるため、図17に示すように、大抵の紙幣Sは、この受板55の受面81上に落下し留まることになる。その際に、受面81は前下がりに傾斜しているため、受面81の支持軸55aとは反対側に落下した紙幣も、この傾斜により、支持軸55a側に滑動して突出板部78上に乗り上げることになり、よって、受面81上に落下した紙幣Sは、基本的にすべて受面81から突出する突出板部78に重なる状態となる。このとき、受板55はその受板本体72の当接板部75が主板部70の下端縁部から前上がりに延出して面部88に当接しており、紙幣Sが受板55からさらに下方に落下することを規制している。また、このとき、受板55は、その受板本体72の一対の側板部71が主板部70の左右両縁部から上側に突出しているため、左右両側から紙幣Sが滑り落ちてしまうことも規制する。そして、作業者は、この受板55から紙幣Sを回収すれば良いことになり、その作業が容易となる。
【0064】
復旧作業が終了すると、作業者は搬送部48を搬送位置に戻し、引出体46を本体45に押し込むようにして装填する。すると、引出体46の移動によって、後倒状態にあった受板55が当接ローラ82において本体45の奥側の図示略のローラストッパに当接し、図示略の揺動スプリングの付勢力に抗して後壁部54に近づくように揺動して、受面81を引出体46の後面81の中間後面部93および上部後面部104と対向させる起立状態となる。
【0065】
このとき、図15に示すように受板55上に紙幣Sがない状態で、引出体46が本体45に装填された場合は、図16に示すように、受板55は、後面部材94を図示略の起立スプリングの付勢力で係止板部102に当接する基本状態としたままそのスリット98内に突出板部78を進入させて起立状態になる。すると、紙幣検知部107の位置検知センサ105は、引き続き被検知板部97を検知せず、よって、制御部は、表示部15によってアラームを発生させることはない。
【0066】
他方、図17に示すように受板55上に落下した紙幣Sを作業者が取り忘れて引出体46を本体45に装填してしまうと、図18に示すように、受板55は、紙幣Sが邪魔して後面部材94のスリット98内に突出板部78を進入させることができず、突出板部78で紙幣Sを押圧し、紙幣Sを介して後面部材94を押圧して、後面部材94を図示略の起立スプリングの付勢力に抗して係止板部102から離間させるように揺動させながら起立状態になる。すると、紙幣検知部107の位置検知センサ105は、それまで検知していなかった被検知板部97を検知する状態となり、これを受けて、制御部は、引出体46の後端部に紙幣Sがあることを示すアラームを表示部15に発生させることになる。すると、作業者は、再び、引出体46を本体45から引き出し、受板55上に残存していた紙幣Sを取り除いた後、引出体46を本体45に装填する。
【0067】
以上に述べた本実施形態の紙幣処理装置11によれば、引出体46が本体45から引き出されると、引出体46の引き出し方向の後端部に設けられた受板55が後方に倒れて受面81を上向きとする。よって、金種カセット35〜37、混合カセット38,プールカセット39を覆う搬送部48を揺動開放して復旧作業する際に、紙幣Sが搬送部48から引出体46の後方に落下したとしても、これを受板55が受面81で受けることができ、本体45内に入り込んでしまう状況になることを抑制できる。したがって、復旧作業の作業性を向上できる。
【0068】
また、引出体46の本体45への装填時に受板55が本体45に当接し起立するため、受板55を設置するためのスペースが小さくて済み、紙幣処理装置11の大型化を抑制することができる。
【0069】
また、引出体46の本体45への装填時に受板55が本体45に当接し起立して受面81を引出体46の後面80と対向させると、紙幣検知部107がこれらの間の紙幣Sの有無を検知することになり、紙幣検知部107が紙幣Sを検知すると、表示部45が報知を行うことになる。よって、作業者が、受板55に紙幣Sが落下したことに気付かずに引出体46の本体55への装填を行ったとしても、受板55の受面81と引出体46の後面80との間に紙幣Sがあることを報知することができる。
【0070】
また、引出体46の本体45への装填時に受板55が本体45に当接し起立すると、対向する受板55の受面81と引出体46の後面80との間に紙幣Sがなければ、一方の受板55に形成された突出板部78が、他方の後面部材94に形成されたスリット98に進入することになり、後面部材94が起立スプリングで基本状態に保持された状態を維持することになる。他方、対向する受板55の受面81と引出体46の後面80との間に紙幣Sがあれば、突出板部78がこの紙幣Sに当接してスリット98に進入できなくなり、本体45に当接して起立した受板55が紙幣Sを介して後面部材94を押圧し起立スプリングの付勢力に抗して基本状態から揺動させることになる。そして、位置検知センサ105が、後面部材94が基本状態にあるか否かを検知することで、紙幣Sの有無を検知することになる。したがって、簡素な構造で、対向する受板55の受面81と引出体46の後面80との間の紙幣Sを検知することができる。
【0071】
しかも、受板55の受面81と引出体46の後面80との間に紙幣Sがあると、本体46に当接して強制的に起立させられる受板55に対し、後面部材94が受板55とは反対方向に揺動し逃げることになる。したがって、受板55の受面81と引出体46の後面80との間に挟まれた紙幣Sの損傷を防止することができる。
【0072】
なお、以上の実施形態においては、受板55に突出板部78を設け、後面部材94にスリット98を設ける場合を例にとり説明したが、後面部材94および受板55のいずれか一方に突出部を形成し、後面部材94および受板55のいずれか他方に突出部を進入可能とする被進入部(スリット、穴、溝、切り欠き等)を形成すれば良い。
【符号の説明】
【0073】
11 紙幣処理装置
15 表示部(報知手段)
35〜37 金種カセット(収納部)
38 混合カセット(収納部)
39 プールカセット(収納部)
45 本体
46 引出体
48 搬送部
55 受板
57a 支持軸
78 突出板部(突出部)
80 後面
81 受面
94 後面部材
98 スリット(被進入部)
105 位置検知センサ(位置検知手段)
107 紙幣検知部(紙幣検知手段)
S 紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体および該本体から引き出し可能な引出体を有し、
該引出体が、
紙幣を収納する収納部と、
引き出し方向に沿う支持軸に軸支されて該収納部の上方を覆って該収納部に対して紙幣を搬送する搬送位置と前記収納部の上方を開放する開放位置との間で揺動可能な搬送部と、
を備えてなる紙幣処理装置であって、
前記引出体の引き出し方向の後端部には、該引出体の前記本体からの引き出し時に後方に倒れて受面を上向きとし、前記引出体の前記本体への装填時に該本体に当接し起立して前記受面を前記引出体の引き出し方向の後面に対向させる揺動可能な受板が設けられていることを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
対向する前記受面と前記後面との間の紙幣を検知する紙幣検知手段と、
該紙幣検知手段で紙幣を検知すると報知を行う報知手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記紙幣検知手段は、
前記引出体の前記後面を構成するとともに上下方向に沿う基本状態から前記受板とは反対方向に揺動可能な後面部材と、
該後面部材を前記基本状態に保持する付勢手段と、
前記後面部材および前記受板のいずれか一方に形成された突出部と、
前記後面部材および前記受板のいずれか他方に形成され前記突出部を進入可能とする被進入部と、
前記後面部材が前記基本状態にあるか否かを検知する位置検知手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−3973(P2013−3973A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136483(P2011−136483)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】