説明

紙幣識別装置

【課題】搬送ベルトのメンテナンス作業を容易に行うことができるとともに、部品点数及びコストの低減を図ることのできる紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】搬送ベルト33を有する第1の搬送ユニット30を本体ケース10に着脱自在に設けたので、第1の搬送ユニット30を外部に取外して搬送ベルト33の清掃または交換を行うことができる。この場合、第1の搬送ユニット30は、搬送ベルト32が第1の搬送ユニット30の一端側で前後方向に延びるとともに、第1の搬送ユニット30の他端側で紙幣収納ユニット70の下端側まで上下方向に延びるように形成されているので、搬送ベルト32が紙幣収納ユニット70の上端側まで長く延びることがなく、紙幣を前後方向及び上下方向に搬送する構成においても搬送ベルト32を短く形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の使用可能な自動販売機等に用いられる紙幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の紙幣識別装置としては、前面下部に紙幣投入口を有する識別装置本体と、識別装置本体の背面側に配置された紙幣収納部と、紙幣投入口から投入された紙幣を識別する識別部と、紙幣投入口から投入された紙幣を紙幣収納部に搬送する搬送機構とを備え、紙幣投入口から投入された紙幣を識別装置本体内の後方に向かって搬送するとともに、識別装置本体内の前後方向所定位置から上方に向かって搬送するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、前記紙幣識別装置の搬送機構は、識別装置本体に回動自在に取付けられた複数のガイドローラと、各ガイドローラに巻き掛けられた無端状の搬送ベルトと、ガイドローラを回転させる駆動機構とから構成され、各ガイドローラに巻き掛けられた搬送ベルトが搬送ユニットの一端側で前後方向に延びるとともに、搬送ユニットの他端側で紙幣収納部の上端側まで上下方向に延びるように形成されている。
【特許文献1】米国特許第5756985号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記紙幣識別装置では、搬送ベルトが紙幣収納部の上端側まで延びるように長く形成されているため、搬送ベルトの弛みを防止するためのテンションローラを搬送ベルトに当接させて搬送ベルトに張力を付与している。このため、メンテナンスにおいて搬送ベルトの交換または清掃を行う場合には、テンションローラの当接を解除してから搬送ベルトを取外さなければならず、メンテナンス作業が煩雑になるという問題点があった。また、テンションローラが別途必要となるため、部品点数が増加するとともに、搬送ベルトが長い分だけコストが高くなり、搬送ベルトの清掃作業にも苦労するという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送ベルトのメンテナンス作業を容易に行うことができるとともに、部品点数及びコストの低減を図ることのできる紙幣識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、前面下部に紙幣投入口を有する識別装置本体と、識別装置本体の背面側に配置された紙幣収納部と、紙幣投入口から投入された紙幣を識別する識別部と、紙幣投入口から投入された紙幣を紙幣収納部に搬送する搬送機構とを備え、紙幣投入口から投入された紙幣を識別装置本体内の後方に向かって搬送するとともに、識別装置本体内の前後方向所定位置から上方に向かって搬送するようにした紙幣識別装置において、前記搬送機構の少なくとも一部を、識別装置本体に着脱自在に取付けられたユニット本体と、ユニット本体に回動自在に取付けられた複数のガイドローラと、各ガイドローラに巻き掛けられた無端状の搬送ベルトとを有する搬送ユニットによって形成し、搬送ユニットを、各ガイドローラに巻き掛けられた搬送ベルトが搬送ユニットの一端側で前後方向に延びるとともに、搬送ユニットの他端側で紙幣収納部の下端側まで上下方向に延びるように形成している。
【0007】
これにより、搬送ベルトを有する搬送ユニットが紙幣識別装置に着脱自在に設けられていることから、搬送ユニットを外部に取外して搬送ベルトの清掃または交換を行うことが可能となる。この場合、搬送ユニットは、搬送ベルトが搬送ユニットの一端側で前後方向に延びるとともに、搬送ユニットの他端側で紙幣収納部の下端側まで上下方向に延びるように形成されていることから、搬送ベルトが紙幣収納部の上端側まで長く延びることがなく、紙幣を前後方向及び上下方向に搬送する構成においても搬送ベルトを短く形成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙幣識別装置によれば、搬送ユニットを外部に取外して搬送ベルトの清掃または交換を行うことができるので、メンテナンス作業を極めて容易に行うことができる。この場合、紙幣を前後方向及び上下方向に搬送する構成においても搬送ベルトを短く形成することができるので、従来のように搬送ベルトの弛みを防止するためのテンションローラを必要とせず、部品点数を少なくすることができるとともに、テンションローラを解除する煩わしい作業も不要になるという利点がある。また、搬送ベルトが短くなる分、搬送ベルトのコストを低減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図13は本発明の一実施形態を示すもので、図1は紙幣識別装置の斜視図、図2はその側面断面図、図3はその要部側面断面図、図4は本体ケース、第1の搬送ユニット及び投入口カバーの正面側分解斜視図、図5は紙幣収納ユニット、第1及び第2の搬送ユニット及び押圧ユニットの正面側分解斜視図、図6はその背面側分解斜視図、図7は押圧ユニットの一部側面断面図、図8はその分解斜視図、図9は制御系を示すブロック図、図10は制御部の動作を示すフローチャート、図11及び図12は係止レバーの動作説明図、図13は第2の搬送ユニットを取外した状態を示す紙幣識別装置の要部側面断面図である。
【0010】
この紙幣識別装置は、識別装置本体をなす本体ケース10と、本体ケース10の前面に取付けられた投入口カバー20と、投入された紙幣Aを搬送する第1及び第2の搬送ユニット30,40と、投入された紙幣Aを識別する識別部50と、各搬送ユニット30,40によって所定位置まで搬送した紙幣Aを後方に押圧する押圧ユニット60と、押圧ユニット60によって押圧された紙幣Aを収容する紙幣収納ユニット70と、紙幣識別装置の動作を制御する制御部80とから構成されている。
【0011】
本体ケース10は背面側を開口した箱状に形成され、その前面下部には投入口カバー20が取付けられる取付板11がネジ12によって固定されている。取付板11には投入口カバー20によって覆われる開口部11aが設けられ、開口部11aの上方には投入口カバー20を係止するための孔11bが幅方向二箇所に設けられている。本体ケース10には第1の搬送ユニット30を保持する左右一対の保持片13が開口部11aの幅方向両側から前方に突出するように設けられ、各保持片13には第1の搬送ユニット30側に係合する係合孔13aがそれぞれ設けられている。また、本体ケース10内の幅方向両側面には第1の搬送ユニット30を保持する左右一対の溝14が設けられている。
【0012】
投入口カバー20は正面形状が略四角形をなす合成樹脂の成型品からなり、その周縁には本体ケース10側に当接するフランジ部20aが設けられている。投入口カバー20の前面は前方に向かって下り傾斜をなすように突出しており、その前面下端側には紙幣投入口20bが設けられている。また、投入口カバー20の上端側及び下端側には本体ケース10に係止する第1の係止部21及び第2の係止部22がそれぞれ幅方向一対ずつ設けられている。即ち、第1の係止部21は上方のフランジ部20aに設けられ、取付板11の孔11bの縁部に係止するようになっている。また、第2の係止部22は上下方向に弾性変形可能に形成され、取付板11の開口部11aの下端縁に係止するようになっている。
【0013】
第1の搬送ユニット30は、第2の搬送ユニット40の上方に配置されるユニット本体31と、ユニット本体31に回動自在に取付けられた複数のガイドローラ32と、各ガイドローラ32に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト33とからなり、各ガイドローラ32及び搬送ベルト33はユニット本体31の両側部にそれぞれ設けられている。
【0014】
ユニット本体31は本体ケース10の背面側から本体ケース10に出し入れ自在に形成され、本体ケース10の各保持片13及び各溝14によって着脱自在に保持されている。この場合、ユニット本体31の前端側両側面には各保持片13の係合孔13aに係合可能な突起31aが設けられ、各保持片13を幅方向に弾性変形させながら各突起31aを各保持片13の係合孔13aに係合することにより、ユニット本体31の前端側が各保持片13によって保持されるようになっている。また、本体ケース10の各溝14にはユニット本体31の後端側下部に配置されたガイドローラ32のシャフト32aが挿入され、ユニット本体31の後端側が各溝14によって保持されるようになっている。
【0015】
搬送ベルト33は、ユニット本体31の前端側下部に配置されたガイドローラ32と、ユニット本体31の後端側上部に配置されたガイドローラ32と、ユニット本体31の後端側下部に配置されたガイドローラ32に巻き掛けられている。また、搬送ベルト33には、ユニット本体31の前端側下部と後端側上部との間に配置されたガイドローラ32が外側から当接しており、各ガイドローラ32によって搬送ベルト33が略L字状をなすように支持されている。即ち、搬送ベルト32は、第1の搬送ユニット30の一端側(前端側)で前後方向に延びるとともに、第1の搬送ユニット30の他端側(背面側)で紙幣収納ユニット70の下端側まで上下方向に延びるように支持されている。
【0016】
また、ユニット本体31の後端側上部に配置された左右一対のガイドローラ32は互いにシャフト34を介して連結されており、その一方には歯車35が取付けられている。即ち、各ガイドローラ32は歯車35から入力される回転力によってそれぞれ回動するようになっている。この場合、第1の搬送ユニット30は押圧ユニット60側に配置されたモータ36によって駆動されるようになっており、モータ36の回転力は押圧ユニット60側に配置された歯車37を介して第1の搬送ユニット30の歯車35に伝達されるようになっている。
【0017】
第2の搬送ユニット40は、第1の搬送ユニット30の下方に配置されるユニット本体41と、ユニット本体41に回動自在に取付けられた複数のガイドローラ42とからなり、各ガイドローラ42はユニット本体41の両側部にそれぞれ設けられている。ユニット本体41は側面形状が略L字状をなすように形成され、本体ケース10の背面側下部に着脱自在に取付けられている。また、第2の搬送ユニット40は、第1の搬送ユニット30のユニット本体31の背面側及び下面側と対向することにより、ユニット本体31との間に前後方向及び上下方向に延びる紙幣搬送路Bを形成するようになっている。即ち、第1の搬送ユニット30及び第2の搬送ユニット40の対向面はそれぞれ通路面31b,41aを形成している。
【0018】
また、第2の搬送ユニット40の通路面41aは紙幣Aに係止する幅方向一対の係止レバー43を備え、各係止レバー43は第1の搬送ユニット30の通路面31bに対して進退自在に設けられている。即ち、各係止レバー43は一端をユニット本体41に支軸43aを介して回動自在に連結され、図示しない付勢手段によって第1の搬送ユニット30の通路面31b側に付勢されている。この場合、付勢手段としては、例えば支軸43aに巻回されたコイルスプリング等が用いられる。また、各係止レバー43は他端を紙幣搬送方向(上方)に向けて配置され、通路面31b側に当接すると斜め上方に傾斜した状態となる。第1の搬送ユニット30の通路面31bには各係止レバー43の他端(先端)側をそれぞれ受容する一対の孔31cが設けられ、各係止レバー43は他端側を孔31c内に挿入させた状態で第1の搬送ユニット30側に当接するようになっている。
【0019】
更に、第1の搬送ユニット30の通路面31bには、紙幣搬送路B内の紙幣Aに紙幣搬送方向の反対方向に係止可能な段差部31dが設けられ、段差部31dは紙幣搬送方向の下流側が上流側よりも低くなるように通路面31bの全幅に亘って形成されている。この場合、段差部31dは孔31cのやや下方(紙幣搬送方向上流側)に配置されている。
【0020】
識別部50は、第2の搬送ユニット40側に設けられた複数の発光体51と、第1の搬送ユニット30側に設けられた複数の受光体52とからなり、各発光体51及び各受光体52は紙幣搬送路を間に一対ずつ対向するように配置されている。
【0021】
押圧ユニット60は、本体ケース10内に配置されるユニット本体61と、紙幣を押圧する押圧板62と、一端を押圧板61に回動自在に連結された連結部材63と、連結部材63の他端が回動自在に連結された回転板64と、回転板64を回転させるモータ65と、回転板64にモータ65の回転力を伝達する複数の歯車66とから構成されている。
【0022】
ユニット本体61はその内部に連結部材63、モータ65及び各歯車66を収容するとともに、その下部には第1の搬送ユニット30を駆動するモータ36及び各歯車37を収容している。ユニット本体61の上部及び下部には、押圧板62を前後方向に摺動自在に係合する係合筒61aがそれぞれ幅方向二箇所ずつに設けられ、各係合筒61aはユニット本体61に前後方向に延びるように一体に形成されている。また、ユニット本体61の背面側には紙幣収納ユニット70を本体ケース10に係止するための複数の係止片61bが幅方向両端の上下二箇所ずつに設けられ、各係止片61bは後方に突出するとともに、その先端側が上方に屈曲するように形成されている。また、ユニット本体61内には、押圧板62の駆動機構(モータ65及び各歯車66等)を覆うカバー61cと、及び第1の搬送ユニット30の駆動機構(モータ36及び各歯車37)を覆うカバー61dがそれぞれ取付けられている。
【0023】
押圧板62の前面側にはユニット本体61の各係合筒61aにそれぞれ係合する複数の係合軸62aが設けられ、各係合軸62aはユニット本体61側に向かって前後方向に延びるように押圧板62に一体に形成されている。即ち、各係合軸62aは各係合筒61aにそれぞれ前後方向に摺動自在に挿入され、押圧板62が各係合筒61aに案内されながら前後方向に移動するようになっている。また、押圧板62の中央部には連結部材63が連結される連結軸62bが設けられている。
【0024】
連結部材63は一端を押圧板62の連結軸62bに回動自在に連結され、その他端側には回転板64を連結する長孔63aが設けられている。
【0025】
回転板64はユニット本体61に回動自在に取付けられ、その回転軸には歯車64aが一体に設けられている。回転板64には回転中心から偏心した位置に連結部材63に連結される連結部64bが突設され、連結部64bは連結部材63の長孔63aに挿入されている。
【0026】
モータ65はユニット本体61の上部に配置され、その回転軸には歯車65aが取付けられている。
【0027】
各歯車66はユニット本体61に回動自在に支持され、大径歯車及び小径歯車を同軸状に一体に形成した周知の歯車からなる。この場合、各歯車66、回転板64の歯車64a及びモータ65の歯車65aはそれぞれ平歯車からなり、モータ65側及び回転板64側の何れから入力される回転力によっても回転可能になっている。
【0028】
また、ユニット本体61の前面側には基板67が配置され、基板67には第1の搬送ユニット30の搬送ベルト33を任意に動作させるためのベルトスイッチ68が取付けられている。ユニット本体61には前後方向に移動自在な操作ピン68aが設けられ、操作ピン68aの一端を押圧すると、ベルトスイッチ68が操作ピン68aの他端で押圧されてオン状態となる。この場合、操作ピン68aはユニット本体61の幅方向一端側に設けた孔61eに挿入され、その一端側は紙幣収納ユニット70がユニット本体61側に取付けられた状態でも外部から操作できるように紙幣収納ユニット70の外側に配置されている。
【0029】
更に、ユニット本体61には紙幣収納ユニット70の着脱を検知する検知スイッチ69が設けられ、検知スイッチ69はユニット本体61側との接触により紙幣収納ユニット70の装着を検知するようになっている。
【0030】
紙幣収納ユニット70は、前面、背面及び上面を開口した箱状のユニット本体71と、ユニット本体71の背面を覆うユニットカバー72と、ユニット本体71内に前後方向に移動自在に設けられた紙幣支持板73と、紙幣支持板73をユニット本体71の前面側に押圧するスプリング74と、ユニット本体71の上面開口部を開閉する開閉カバー75とからなる。
【0031】
ユニット本体71の前面側には押圧ユニット60の各係止片61bをそれぞれ係止する複数の係止部71aが幅方向両端の上下二箇所ずつに設けられ、各係止部71aは幅方向に延びる板状に形成されている。
【0032】
ユニットカバー72はユニット本体71に組付けられ、ユニットカバー72の幅方向両側面の上端側には開閉カバー75を回動自在に連結する連結部72aがそれぞれ設けられている。
【0033】
紙幣支持板73はユニット本体71の内形よりもやや小さい平板状に形成され、押圧ユニット60の押圧板62に対応するように配置されている。
【0034】
スプリング74は、図示を簡略したコイル状のバネからなり、紙幣支持板73とユニットカバー72との間に圧縮状態で介装されている。この場合、スプリング74はユニットカバー72から紙幣支持板73に向かって巻径が徐々に大きくなるように形成されている。
【0035】
開閉カバー75はユニット本体71及びユニットカバー72の上端側を覆うように形成され、その幅方向両側面の後端側はユニットカバー72の各連結部72aに回動自在に連結されている。
【0036】
制御部80はマイクロコンピュータによって構成され、第1の搬送ユニット30のモータ36、ベルトスイッチ68及び検知スイッチ69に接続されている。尚、図示していないが、制御部80には押圧ユニット60のモータ65及びその他の機器、外部からの制御線等が接続されており、正常動作時は紙幣識別動作、紙幣搬送動作、紙幣収納動作を行うようになっている。その際、紙幣詰まりなどの異常が生ずると、エラー状態となって動作を停止し、ベルトスイッチ68を押圧すると、エラー状態を解除して初期状態にリセットするようになっている。
【0037】
即ち、制御部80は、図10のフローチャートに示すようにベルトスイッチ68がオンになると(S1)、検知スイッチ69によって紙幣収納ユニット70の装着が検知されている場合は(S2)、前記エラー状態を解除し(S3)、ステップS2において紙幣収納ユニット70が装着されていない場合は、第1の搬送ユニット30のモータ36を作動し(S4)、ベルトスイッチ68がオフになると(S5)、モータ36を停止するようになっている(S6)。
【0038】
以上のように構成された紙幣識別装置によれば、投入口カバー20の紙幣投入口20bに紙幣が投入されると、第1の搬送ユニット30のモータ36が作動し、第1及び第2の搬送ユニット30,40の各ガイドローラ32,42によって紙幣が搬送される。即ち、紙幣投入口20bに投入された紙幣は本体ケース10の後方に向かって搬送されるとともに、本体ケース10の前後方向所定位置から上方に向かって搬送され、押圧ユニット60と紙幣収納ユニット70との間まで搬送される。その際、搬送される紙幣が識別部50の各発光体51と各受光体52との間を通過し、識別部50によって紙幣の真贋及び金種が判定される。また、押圧ユニット60と紙幣収納ユニット70との間に紙幣が搬送されると、押圧ユニット60のモータ65が作動し、押圧板62が紙幣収納ユニット70側に移動する。これにより、紙幣が押圧板62によって紙幣収納ユニット70側に押圧され、紙幣収納ユニット70内に搬入される。その際、押圧板62はスプリング74に抗して紙幣支持板73を紙幣と共に後方に移動させ、押圧板62が待機位置に戻ると、紙幣支持板73もスプリング74によって紙幣と共に前方に戻る。
【0039】
押圧板62によって紙幣を押圧する際、押圧ユニット60のモータ65が回転すると、その回転力が各歯車66を介して回転板64に伝達され、回転板64が所定方向に回転する。これにより、回転板64の回転運動が連結部材63によって押圧板62の往復運動に変換される。その際、押圧板62の各係合軸62aがユニット本体61の各係合筒61a内をそれぞれ前後方向に摺動することにより、押圧板62が各係合筒61aに案内されながら紙幣支持板73との平行状態を保持したまま前後方向に移動する。
【0040】
各搬送ユニット30,40によって紙幣Aを搬送する際、図9(a) に示すように紙幣搬送路Bの各通路面31b,41a間には係止レバー43が介在しているが、係止レバー43は先端を紙幣搬送方向に向けて配置されているため、図9(b) に示すように紙幣Aとの接触によって一方の通路面40aに回動し、紙幣Aの搬送を妨げることなく紙幣Aの通過が許容される。
【0041】
また、前記紙幣識別装置に対する不正行為として、端部にテープ等を接続した真正の紙幣Aを投入し、識別部50によって一旦真正と判別させて商品を購入した後、紙幣収納ユニットに収納された紙幣Aをテープ等によって外部に引き抜こうとした場合には、以下のようにして紙幣Aの引き抜きが阻止される。
【0042】
即ち、収納された紙幣Aを引き戻すと、図10(a) に示すように紙幣Aの先端が係止レバー43に係止する。その際、係止レバー43は先端を紙幣搬送方向に向けて配置されているため、紙幣Aに紙幣搬送方向の反対方向の力を加えても、係止レバー43は他方の通路面31bとの当接によって回動を規制され、紙幣Aの引き抜きが阻止される。また、係止レバー43の先端側は孔31c内に受容されているため、紙幣Aが係止レバー43の先端と他方の通路面31bとの間を通り抜けることはない。
【0043】
一方、例えば紙幣Aに接続したテープ(図示せず)を幅広に形成するなど、テープによって係止レバー43を一方の通路面41a側に回動させた状態まま紙幣Aを引き戻された場合には、紙幣Aが係止レバー43の先端と他方の通路面31bとの間を通り抜け、係止レバー43によっては紙幣Aの引き抜きを阻止することができない。しかし、この場合は紙幣Aが係止レバー43によって他方の通路面31b側に押圧されているため、図10(b) に示すように紙幣Aの先端が他方の通路面31bの段差部31dに係止し、紙幣Aの引き抜きが阻止される。
【0044】
また、前記紙幣識別装置において、第1の搬送ユニット30を取外してメンテナンスを行う場合には、第1の搬送ユニット30を本体ケース10の各保持部13との係合を解除して後方に引き出すことにより、第1の搬送ユニット30が外部に取外される。これにより、搬送ベルト33を第1の搬送ユニット30に装着したまま清掃したり、或いは搬送ベルト33を取外して清掃または交換を行うことが可能となる。
【0045】
また、第1の搬送ユニット30を本体ケース10から取外さずに搬送ベルト33の清掃を行う場合には、紙幣収納ユニット70及び第2の搬送ユニット40を本体ケース10から取外す。その際、第2の搬送ユニット40を取外すと、第1の搬送ユニット30の背面側が本体ケース10の背面側下部に露出する。ここで、ベルトスイッチ68の操作ピン68aを押圧すると、ベルトスイッチ68がオンになり、モータ36が作動してガイドローラ32が回転し、搬送ベルト33が動作する。これにより、搬送ベルト33を動作させながら搬送ベルト33を清掃することができる。
【0046】
このように、本実施形態の紙幣識別装置によれば、搬送ベルト33を有する第1の搬送ユニット30を本体ケース10に着脱自在に設けたので、第1の搬送ユニット30を外部に取外して搬送ベルト33の清掃または交換を行うことができ、メンテナンス作業を極めて容易に行うことができる。この場合、第1の搬送ユニット30は、搬送ベルト32が第1の搬送ユニット30の一端側で前後方向に延びるとともに、第1の搬送ユニット30の他端側で紙幣収納ユニット70の下端側まで上下方向に延びるように形成されているので、搬送ベルト32が紙幣収納ユニット70の上端側まで長く延びることがなく、紙幣を前後方向及び上下方向に搬送する構成においても搬送ベルト32を短く形成することができる。これにより、従来のように搬送ベルトの弛みを防止するためのテンションローラを必要としないので、部品点数を少なくすることができるとともに、テンションローラを解除する煩わしい作業も不要になるという利点がある。また、搬送ベルト32が短くなる分、搬送ベルト32のコストを低減することもできる。
【0047】
更に、第1の搬送ユニット30の近傍に配置された第2の搬送ユニット40を本体ケース10から取外すと、第1の搬送ユニット30の背面側が外部に露出するように構成するとともに、第1の搬送ユニット30のガイドローラ32を回転させるモータ36をベルトスイッチ68の操作によって第1の搬送ユニット30が本体ケース10に装着された状態で任意に作動させるようにしたので、第1の搬送ユニット30を取外さずに搬送ベルト33を動作させながら搬送ベルト33を全周に亘って清掃することができる。これにより、第1の搬送ユニット30の通路面31b側に位置する部分以外も搬送ベルト33の清掃が可能となり、搬送ベルト33のメンテナンスを確実に行うことができる。
【0048】
また、紙幣収納ユニット70が本体ケース10から取外されたときのみベルトスイッチ68によって第1の搬送ユニット30のモータ36を作動させるようにしたので、紙幣収納ユニット70が本体ケース10に装着されているときは、ベルトスイッチ68を操作してもモータ36が作動することがなく、搬送ベルト33を無用に動作させることがないという利点がある。
【0049】
更に、紙幣収納ユニット70が本体ケース10に装着されているときは、ベルトスイッチ68によって異常状態における制御部80のエラー解除を行うようにしたので、モータ36を作動させないときのベルトスイッチ68を他の用途に用いることができ、構造の簡素化を図ることができる。尚、モータ36の作動以外に、ベルトスイッチ68によって電源供給状態のチェックやLEDの発光テスト等、制御部80のエラー解除以外の動作を行うようにしてもよい。
【0050】
また、ベルトスイッチ68を、本体ケース10に外部から操作可能に設けた操作ピン68aに連動するように設けたので、ベルトスイッチ68を紙幣収納ユニット70や他の部品を取外すことなく操作することができ、エラー解除操作を容易に行うことができる。
【0051】
図14乃至図19は本発明の他の実施形態を示すもので、図14は第1の搬送ユニットの斜視図、図15は第2の搬送ユニット及び紙幣収納ユニット70を取外した状態を示す紙幣識別装置の要部斜視図、図16及び図17は係止レバーの動作説明図、図18は制御系を示すブロック図、図19は制御部の動作を示すフローチャートである。尚、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0052】
本実施形態では、紙幣の引き抜きを阻止するための複数の係止レバーを第1の搬送ユニット30側に設けており、その他の構成は前記実施形態と同等である。即ち、同図に示す係止レバー38は第1の搬送ユニット30の通路面31bに対して進退自在に設けられ、その長手方向略中央部をユニット本体31に支軸38aを介して回動自在に連結されている。係止レバー38は図示しないコイルスプリングによって図中反時計回りに付勢されており、その一端側が通路面31bから第2の搬送ユニット40側に突出するようになっている。尚、係止レバー38によって紙幣の引き抜きを阻止する動作は前記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
また、係止レバー38の他端側には突出片38bが設けられ、ユニット本体31内には突出片38bの側方に位置するレバースイッチ39が設けられている。レバースイッチ39は、例えば光センサによって突出片38bを非接触で検知する検知部39aを有し、係止レバー38が図中時計回りに所定位置まで回動すると、検知部39aによって突出片38bを検知してオン状態となるように構成されている。また、レバースイッチ39は制御部80に接続されている。
【0054】
即ち、制御部80は、図19のフローチャートに示すようにレバースイッチ39がオンになると(S10)、検知スイッチ69によって紙幣収納ユニット70の装着が検知されている場合は(S11)、前記ステップS10に戻り、ステップS11において紙幣収納ユニット70が装着されていない場合は、第1の搬送ユニット30のモータ36を作動し(S13)、レバースイッチ39がオフになると(S14)、モータ36を停止するようになっている(S15)。
【0055】
本実施形態において、第1の搬送ユニット30を本体ケース10から取外さずに搬送ベルト33の清掃を行う場合には、紙幣収納ユニット70及び第2の搬送ユニット40を本体ケース10から取外す。その際、第2の搬送ユニット40を取外すと、第1の搬送ユニット30の背面側が本体ケース10の背面側下部に露出する。ここで、図17に示すように係止レバー38の一端側を押圧して図中時計回りに回動させると、レバースイッチ39がオンになり、モータ36が作動してガイドローラ32が回転し、搬送ベルト33が動作する。これにより、搬送ベルト33を動作させながら搬送ベルト33を清掃することができる。
【0056】
このように、本実施形態によれば、第1の搬送ユニット30のガイドローラ32を回転させるモータ36をレバースイッチ39によって第1の搬送ユニット30が本体ケース10に装着された状態で任意に作動させるようにしたので、前記実施形態と同様、第1の搬送ユニット30を取外さずに搬送ベルト33を動作させながら搬送ベルト33を全周に亘って清掃することができ、搬送ベルト33の清掃を極めて容易に行うことができる。
【0057】
この場合、レバースイッチ39を、紙幣の引き抜きを阻止するための係止レバー38の操作に連動するようにしたので、レバースイッチ39の操作部としての専用部品を別途必要とせず、構造の簡素化を図ることができる。
【0058】
尚、前記実施形態では、紙幣の引き抜きを阻止するための係止レバー38をレバースイッチ39の操作部として用いるようにしたものを示したが、操作部を他の専用部品によって形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態を示す紙幣識別装置の斜視図
【図2】紙幣識別装置の側面断面図
【図3】紙幣識別装置の要部側面断面図
【図4】本体ケース、第1の搬送ユニット及び投入口カバーの正面側分解斜視図
【図5】紙幣収納ユニット、第1及び第2の搬送ユニット及び押圧ユニットの正面側分解斜視図
【図6】本体ケース、第1及び第2の搬送ユニット及び押圧ユニットの背面側分解斜視図
【図7】押圧ユニットの一部側面断面図、
【図8】押圧ユニットの分解斜視図
【図9】制御系を示すブロック図
【図10】制御部の動作を示すフローチャート
【図11】係止部材の動作説明図
【図12】係止部材の動作説明図
【図13】第2の搬送ユニットを取外した状態を示す紙幣識別装置の要部側面断面図
【図14】本発明の他の実施形態を示す第1の搬送ユニットの斜視図
【図15】第2の搬送ユニット及び紙幣収納ユニット70を取外した状態を示す紙幣識別装置の要部斜視図
【図16】は係止レバーの動作説明図
【図17】は係止レバーの動作説明図
【図18】制御系を示すブロック図
【図19】制御部の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0060】
10…本体ケース、20b…紙幣投入口、30…第1の搬送ユニット、36…モータ、38…係止レバー、39…レバースイッチ、40…第2の搬送ユニット、50…識別部、68…ベルトスイッチ、68a…操作ピン、70…紙幣収納ユニット、A…紙幣。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面下部に紙幣投入口を有する識別装置本体と、識別装置本体の背面側に配置された紙幣収納部と、紙幣投入口から投入された紙幣を識別する識別部と、紙幣投入口から投入された紙幣を紙幣収納部に搬送する搬送機構とを備え、紙幣投入口から投入された紙幣を識別装置本体内の後方に向かって搬送するとともに、識別装置本体内の前後方向所定位置から上方に向かって搬送するようにした紙幣識別装置において、
前記搬送機構の少なくとも一部を、識別装置本体に着脱自在に取付けられたユニット本体と、ユニット本体に回動自在に取付けられた複数のガイドローラと、各ガイドローラに巻き掛けられた無端状の搬送ベルトとを有する搬送ユニットによって形成し、
搬送ユニットを、各ガイドローラに巻き掛けられた搬送ベルトが搬送ユニットの一端側で前後方向に延びるとともに、搬送ユニットの他端側で紙幣収納部の下端側まで上下方向に延びるように形成した
ことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記搬送ユニットのガイドローラを回転させる駆動手段を搬送ユニットが識別装置本体に装着された状態で任意に作動可能なスイッチを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
前記スイッチを、識別装置本体に着脱自在に設けられた所定の構成部品が識別装置本体から取外されたときのみ操作部の操作によって駆動手段を作動させるように構成した
ことを特徴とする請求項2記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
前記スイッチを、識別装置本体に着脱自在に設けられた所定の構成部品が識別装置本体に装着されているときは操作部の操作によって駆動手段の作動以外の所定の動作を行うように構成した
ことを特徴とする請求項2または3記載の紙幣識別装置。
【請求項5】
前記スイッチを、識別装置本体側に外部から操作可能に設けた操作部に連動するように設けた
ことを特徴とする請求項2、3または4記載の紙幣識別装置。
【請求項6】
前記スイッチを、搬送ユニット側に外部から操作可能に設けた操作部に連動するように設けた
ことを特徴とする請求項2、3または4記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−24084(P2006−24084A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203002(P2004−203002)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】