説明

紙用柔軟剤

【課題】しっとり感、しなやかさ、なめらかさを塗布した紙に同時に付与することが出来る紙用柔軟剤を提供する。
【解決手段】20℃で液状の2〜4価の多価アルコール(A)と、式(1)で示されるアミドアミン化合物(B)とを有し、前記多価アルコール(A)と前記アミドアミン化合物(B)との重量比(A)/(B)が95.0/5.0〜99.5/0.5である紙用柔軟剤。


(式(1)中RCOは脂肪酸を原料として形成される炭素数10〜24のアシル基であり、RおよびRは炭素数1〜4のアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙用柔軟剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーやティシュペーパーなどの衛生紙は直接肌に触れるものであるため、触り心地のよい紙であることが求められている。すなわち、しっとり感、しなやかさ、なめらかさを共に有することが求められている。これら要件を満たす紙を製造するため、これまで多くの紙用柔軟剤が開発されている。
【0003】
「しっとり感」すなわち保湿感を有する紙として、例えば特許文献1には、塩化カルシウムなどの保湿性を有する塩類、グリセリンなどの多価アルコール、マルチトールなどの糖類のうち少なくとも1種を含む紙が記載されている。
【0004】
また、しっとり感およびなめらかさを有する紙として、例えば特許文献2には、タルクなどの紛体とグリセリンを含む紙が記載されている。
【0005】
同じく、しっとり感およびなめらかさを有する紙として、特許文献3には、ステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、アミン塩あるいはアミンのうち少なくとも1種と多価アルコールとを含む紙が記載されている。
【0006】
更に同じく、しっとり感およびなめらかさを有する紙として、特許文献4には、ステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、アミン塩あるいはアミンのうち少なくとも1種、多価アルコール、及び、動植物油を含む紙が記載されている。
【特許文献1】特開平05−156596号公報
【特許文献2】特開2001−11790号公報
【特許文献3】特開平07−109693号公報
【特許文献4】特開平09−296389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載の紙では、しなやかさおよびなめらかさが不十分である。
また、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載の紙では、しなやかさについては不十分である。このようにしっとり感、しなやかさ、なめらかさを紙に同時に付与する紙用柔軟剤は得られていない。
【0008】
本発明の目的は、しっとり感、しなやかさ、なめらかさを塗布した紙に同時に付与することが出来る紙用柔軟剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するために鋭意検討した結果、多価アルコールと特定構造のアミドアミン化合物とを組み合わせた紙用柔軟剤が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の紙用柔軟剤は、20℃で液状の2〜4価の多価アルコール(A)と、式(1)で示されるアミドアミン化合物(B)とを有し、前記多価アルコール(A)と前記アミドアミン化合物(B)との重量比(A)/(B)が95.0/5.0〜99.5/0.5である。
【0011】
【化1】

(式(1)中RCOは脂肪酸を原料として形成される炭素数10〜24のアシル基であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、RおよびRは炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0012】
本発明に係る紙用柔軟剤は、原料の脂肪酸全体を100重量%とした場合に、50重量%以上が不飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る紙用柔軟剤は、アミドアミン化合物(B)の全部または一部に換えて、前記アミドアミン化合物(B)が酸により中和された塩を有していてもよい。
【0014】
アミドアミン化合物(B)の全部または一部を中和し、塩にすることで紙用柔軟剤の分散液を調製する際に容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の紙用柔軟剤は、しっとり感、しなやかさ、なめらかさを塗布した紙に同時に付与することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の紙用柔軟剤は、20℃で液状の2〜4価の多価アルコール(A)と、式(1)で示されるアミドアミン化合物(B)とを有する。そこで、以下、それぞれの化合物につきまず説明し、しかる後、本発明を具体化した紙用柔軟剤および紙用柔軟剤を含有する紙の実施例を説明する。
【0017】
1.20℃で液状の2〜4価の多価アルコール(A)
【0018】
本発明に用いる多価アルコール(A)は20℃で液状の2〜4価の多価アルコールである。
【0019】
20℃で固体状の多価アルコールを用いた、紙用柔軟剤を塗布した紙は低温環境下でのしっとり感が低下する。よって冬季に使用した場合等に問題が生じうる。従って、20℃で液状の多価アルコールが好ましい。
【0020】
また、アルコールの価数が1価であればしっとり感の向上の点で好ましくなく、5価以上であればべたつき感の点で好ましくない。よって2〜4価の多価アルコールであることが好ましい。
【0021】
本発明に用いる好適なアルコールとしては2価のアルコールであるエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールが挙げられる。同様に3価のアルコールとしてグリセリン、4価のアルコールとしてジグリセリンが挙げられ、これら多価アルコールは単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらの中でしっとり感がより向上するグリセリン、ジグリセリンが好ましい。
【0022】
2.アミドアミン化合物(B)
【0023】
アミドアミン化合物(B)は式(1)で示される。
【0024】
【化2】

(式(1)中RCOは脂肪酸を原料として形成される炭素数10〜24のアシル基であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、RおよびRは炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0025】
式(1)中のRCOは脂肪酸を原料として形成される炭素数10〜24のアシル基である。炭素数が10未満であると、本形態にかかる紙用柔軟剤が紙に与えるしなやかさとなめらかさが不十分となる。また、炭素数が24を超えても紙にしなやかさを与えることができるが、炭素数の増加に見合った効果が得られず、入手も困難である。よって、RCOの炭素数10〜24であることが好ましく、炭素数16〜22であることがなめらかさおよびしなやかさをバランスよく与えうるという観点より更に好ましい。このような要件を満たす脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の飽和脂肪酸、リンデル酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エイコセン酸、エルカ酸、セラコレン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。これらを単独で用いても混合させて用いてもよい。特に、不飽和脂肪酸を50質量%以上含む場合には、塗布した紙にしっとり感、しなやかさ、なめらかさを与える効果が特に良好であり、好ましい。
【0026】
式(1)中のRは炭素数2〜4のアルキレン基である。この炭素数が1の化合物はしなやかさ、なめらかさを与える効果が不十分である。また、炭素数が5以上であっても紙にしっとり感、しなやかさ、なめらかさを与えることはできるが、炭素数の増加に見合った効果が得られず、入手困難となる。このようなアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
【0027】
式(1)中のRとRとは炭素数1〜4のアルキル基である。この炭素数が4を超えても紙にしっとり感、しなやかさ、なめらかさを与えることはできるが、炭素数の増加に見合った効果が得られず、入手困難となる。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられる。
【0028】
式(1)に示されるアミドアミン化合物(B)はジアルキルアミノアルキレンアミンと脂肪酸との縮合反応によって得られる。具体的には、上記脂肪酸(例えばオレイン酸)とジアルキルアミノアルキレンアミン(例えばジエチルアミノプロピルアミン)とを混合し、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら昇温し、生成水を反応系外へ除去しながら反応させることにより製造する。
【0029】
製造したアミドアミン化合物(B)は上述した多価アルコール(A)と共に用いる。この際、酸で中和して塩とすることにより、紙用柔軟剤の分散液を調製することが容易となる。この際使用する酸としては、塩酸、硫酸、炭酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、サリチル酸、ヒドロキシ吉草酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、タウリン、スルファミン酸などが好ましい。これらのうち、低臭であるとの理由から、グリコール酸、乳酸およびクエン酸がより好ましい。酸で中和する場合は、アミドアミン化合物(B)のアミン価を測り、同アミン価に等量の酸を添加することにより、アミドアミン化合物(B)を中和し、塩を生成する。
【0030】
3.紙用柔軟剤の製造
【0031】
紙用柔軟剤は、多価アルコール(A)およびアミドアミン化合物(B)からなる。このとき多価アルコール(A)とアミドアミン化合物(B)との重量比(A)/(B)が99.5/0.5を超えると柔軟剤を使用した紙のしなやかさとなめらかさが十分に向上せず、95/5未満の場合は紙のしっとり感の向上が十分でない。従って、しなやかさ、なめらかさ、しっとり感を同時に付与するためには、重量比(A)/(B)は95/5〜99.5/0.5が好ましく、更に好ましくは96/4〜99.5/0.5である。
【0032】
4.紙用柔軟剤を含有する紙の製造
【0033】
紙用柔軟剤を含有する紙は、抄紙工程により得られた衛生紙原紙の表面にこの紙用柔軟剤を塗布することによって製造される。この際、紙用柔軟剤をそのまま用いても良いが、溶媒で希釈して用いてもよい。これら塗布の方法としては転写印刷方式、フローコーター、ロールコースター、スプレー等の方法が挙げられる。好ましくは転写印刷方式によって衛生紙原紙に塗布される。
【0034】
また紙用柔軟剤の塗布量は原紙100質量部に対して10〜25質量部が好ましい。10質量部位以下では十分なしっとり感、しなやかさ、なめらかさを与えることが出来ず、25質量部以上添加してもしっとり感、しなやかさ、なめらかさの向上効果が鈍くなる。
【実施例1】
【0035】
本発明を実施例および比較例により更に具体的に説明する。
【0036】
〔紙用柔軟剤の製造例〕
【0037】
まず、多価アルコール(A)について示し、次にアミドアミン化合物(B)の合成例、および紙用柔軟剤を使用した紙の合成例および製造例を示す。
【0038】
(多価アルコール(A))
【0039】
多価アルコール(A)の例としてグリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコールを用いた。なお、ポリエチレングリコールは、分子量200のものを用いた。
【0040】
(アミドアミン化合物(B)の合成例等)
【0041】
本発明を構成するアミドアミン化合物(B)の例として化合物B−1〜B−6およびその比較対象となる化合物B’−1を合成した。これら化合物の詳細については表1に示している。
【0042】
・B−1の合成
【0043】
表1に示した脂肪酸とジアルキルアミノアルキレンアミンを用いて、化合物B−1を下記に示す方法で合成した。化合物B−1は、式(1)中のRCOとしてオレイン酸由来物、Rにかかるアルキレン基としてプロピレン基、RとRにかかるアルキル基としてエチル基を有する。
【0044】
攪拌機、冷却管、温度計および窒素導入管を備えた500ml容量の4つ口フラスコにオレイン酸252.0g(0.9モル)およびジエチルアミノプロピルアミン117.2g(0.9モル)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら180〜190℃まで昇温し、生成水を反応系外へ除去しながら15時間反応させ、アミン価138のアミドアミン化合物B−1を得た。
【0045】
・B−2〜B−6およびB’−1の合成
【0046】
表1に示す脂肪酸とジアルキルアミノアルキレンアミンを表1に示したモル比で仕込み、上記B−1の合成と同様に反応させて化合物B−2〜B−6および比較対象となる化合物B’−1を得た。
【0047】
ここで表1中の混合脂肪酸Iとはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸をそれぞれ重量割合で2%、31%、66%、1%、混合したものである。また、混合脂肪酸IIとはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸をそれぞれ重量割合で3%、2%、48%、40%、7%、混合したものである。
【0048】
ここで、オレイン酸、エルカ酸は不飽和脂肪酸であり、また混合脂肪酸IIもオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸が不飽和脂肪酸であり、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸の合計重量比率が50%を超えている。したがって化合物B−1、B−5、B−6は「原料の脂肪酸全体を100重量%とした場合に、50重量%以上が不飽和脂肪酸である」との要件を満たしたアミドアミン化合物(B)である。
【0049】
一方、ステアリン酸、ラウリン酸、カプリル酸は飽和脂肪酸である。また、混合脂肪酸Iは直鎖飽和脂肪酸であるパルミチン酸、ステアリン酸を主成分としており、これら直鎖飽和脂肪酸の合計重量比率が50%を超えており、不飽和脂肪酸の比率が50%に満たない。
【0050】
【表1】

【0051】
(紙用柔軟剤の製造例)
【0052】
紙用柔軟剤の実施例として紙用柔軟剤1〜6を製造し、本発明の要件を満たさない比較例として紙用柔軟剤7〜10を製造した。なお、これら紙用柔軟剤および本発明の要件を満たさない紙用柔軟剤の詳細については表2に示す。
【0053】
・実施例にかかる紙用柔軟剤1の製造
【0054】
多価アルコール(A)としてグリセリン、アミドアミン化合物(B)としてB−1を使用し、実施例にかかる紙用柔軟剤1を製造した。
【0055】
攪拌機、冷却管、温度計を備えた500ml容量の4つ口フラスコにグリセリン308g、イオン交換水77.6gおよびグリコール酸4.29g(70%)を仕込み、50℃で15分攪拌した。攪拌後、上述の化合物B−1を11.2g仕込み、更に50℃で15分攪拌し、紙用柔軟剤1の分散液を得た。
【0056】
・実施例にかかる紙用柔軟剤2〜6および比較例にかかる紙用柔軟剤7〜10の製造
【0057】
紙用柔軟剤1と同様にして、表2に記載した多価アルコール(A)、酸およびアミドアミン化合物(B)を用いて紙用柔軟剤2〜6および紙用柔軟剤7〜10を得た。具体的には表2に示した各成分を同表に記載の割合で用いた。
【0058】
(柔軟剤塗布紙の製造例)
【0059】
LBKP(広葉樹晒パルプ)のみから製造した坪量15g/mの紙を20cm×20cmに裁断し、原紙とした。各原紙の質量を測定した後、紙毎に、各紙用柔軟剤1から10をそれぞれハンドスプレーで噴霧し、塗布した。柔軟剤塗布後の紙質量を測定し、塗布前の原紙の質量を減じて紙用柔軟剤の塗布量を測定した。
【0060】
この柔軟剤塗布後の紙を温度23℃、湿度50%に調節した恒温恒湿室に48時間入れ、調湿した。
【0061】
この調湿後の紙を以下単にシートと呼び、上記工程において実施例にかかる紙用柔軟剤1〜6をそれぞれ添加したシートをそれぞれシート1〜6、比較例にかかる紙用柔軟剤7〜10をそれぞれ添加したシートをそれぞれシート7〜10とする。
【0062】
〔評価方法および評価結果〕
【0063】
続いて、紙用柔軟剤および紙用柔軟剤を含有する紙の評価方法および評価結果を説明する。
【0064】
(評価方法)
【0065】
シート1〜10をそれぞれ3枚一組とし、しっとり感、しなやかさ、なめらかさについて、女性評価者10人が各シートを触り、以下に示す各基準でそれぞれ点数をつけ、その合計点が35点以上のシートを非常に良好(◎)、30点以上を良好(○)、30点未満を不十分(×)と評価した。但し、評価者10人のうち3名以上が1をつけた場合、合計点数にかかわらず不十分(×)と評価した。
【0066】
・しっとり感の評価
点数 しっとり感
4 非常にしっとり感がある。
3 しっとり感がある。
2 ややしっとり感がある。
1 しっとり感がない。
【0067】
・しなやかさの評価
点数 しなやかさ
4 非常にしなやかさがある。
3 しなやかさがある。
2 ややしなやかさがある。
1 しなやかさがない。
【0068】
・なめらかさの評価
点数 なめらかさ
4 非常になめらかである。
3 なめらかである。
2 ややなめらかである。
1 なめらかでない。
【0069】
(評価分析)
【0070】
以上の評価方法を用いた評価の結果を表2に示す。表2より以下のことが確認できる。
【0071】
【表2】

【0072】
(1)本発明に係る紙用柔軟剤の効果の確認
【0073】
本発明に係る紙用柔軟剤を使用した実施例(シート1〜6)は、しっとり感、しなやかさ、なめらかさがいずれも良好(○)以上である。このことより、本発明にかかる紙用柔軟剤はしっとり感、しなやかさ、なめらかさを塗布した紙に同時に付与することが判る。
【0074】
更に式(1)中のRCOで示されるアシル基原料の50重量%以上が不飽和脂肪酸であるB−1、B−5、B−6を用いたシート1、5、6はしっとり感、しなやかさ、なめらかさがいずれも非常に良好(◎)である。このことより、アシル基の原料となる原料の脂肪酸全体を100重量%とした場合に、50重量%以上が不飽和脂肪酸であることがより好ましいことが判る。
【0075】
一方、式(1)中のRに相当する炭素数2〜4のアルキレン基としてエチレン基またはプロピレン基を用い、R及びRに相当する炭素数1〜4のアルキル基としてエチル基またはメチル基を用いたが、いずれを用いても他の発明構成要件を満たしていれば、しっとり感、しなやかさ、なめらかさがいずれも良好(○)であり、明確な違いは見られなかった。
【0076】
(2)実施例と比較例との効果の比較
【0077】
シート7はアミドアミン化合物(B)に換えて、脂肪酸の炭素数が8であるカプリル酸を用いたアミドアミン化合物B’−1を有する本発明の要件を満たさない紙用柔軟剤7を使用した比較例である。本発明に係る実施例(シート1〜6)に比較して、しなやかさ、なめらかさが不十分であり、しっとり感も点数が低い。したがって式(1)中のRCOの炭素数が10以上の不飽和アシル基である、アミドアミン化合物(B)を用いることが好ましい。
【0078】
シート8は、アミドアミン化合物(B)を用いない例であり、シート9は多価アルコール(A)とアミドアミン化合物(B)との重量比(A)/(B)が99.5/0.5を超えている(99.9/0.1)例である。いずれもしっとり感については辛うじて良好(○)の評価を得ているものの、しなやかさ、なめらかさについては不十分(×)である。よって多価アルコール(A)とアミドアミン化合物(B)との重量比(A)/(B)は99.5/0.5以内であることが好ましい。
【0079】
一方、シート10は多価アルコール(A)とアミドアミン化合物(B)との重量比(A)/(B)が95.0/5.0未満の例である。しっとり感、しなやかさは良好(○)および非常に良好(◎)の評価を得ているものの、なめらかさについては不十分(×)である。よって多価アルコール(A)とアミドアミン化合物(B)との重量比(A)/(B)は95.0/5.0以上であることが好ましい。
【0080】
(3)その他の事項について
【0081】
・中和用の酸について
【0082】
シート1,2,6に用いた紙用柔軟剤では、中和用の酸としてグリコール酸を使用し、シート3,4,5に用いた紙用柔軟剤では、中和用の酸として乳酸を使用した。いずれの場合においてもしっとり感、しなやかさ、なめらかさがいずれも良好(○)である。よって中和用の酸の種類は紙用柔軟剤の効力に影響しないことが推察される。
【0083】
またシート5に添加した紙用柔軟剤2では、中和用の酸を使用していない。その場合においても、しっとり感、しなやかさ、なめらかさがいずれも良好(○)である。よって中和用の酸の有無も紙用柔軟剤の効力に影響しないことが推察される。すなわち、アミドアミン化合物(B)が酸により中和された塩であれ、アミドアミン化合物(B)であれ、いずれかが必要量紙用柔軟剤中に含まれておれば、しっとり感、しなやかさ、なめらかさには差がないことが推察される。
【0084】
但し、化合物(B)は酸で中和し、塩とすることで紙用柔軟剤の分散性を調製することが用意となる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば紙のしっとり感、しなやかさ、なめらかさを付与することができる紙用柔軟剤が提供される。同柔軟剤を用いて製造された紙はティシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオル等衛生紙分野に広く利用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃で液状の2〜4価の多価アルコール(A)と、
式(1)で示されるアミドアミン化合物(B)とを有し、
前記多価アルコール(A)と前記アミドアミン化合物(B)との重量比(A)/(B)が95.0/5.0〜99.5/0.5である紙用柔軟剤。
【化1】

(式(1)中RCOは脂肪酸を原料として形成される炭素数10〜24のアシル基であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、RおよびRは炭素数1〜4のアルキル基である。)
【請求項2】
前記原料の脂肪酸全体を100重量%とした場合に、50重量%以上が不飽和脂肪酸である請求項1に記載の紙用柔軟剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアミドアミン化合物(B)の全部または一部に換えて、前記アミドアミン化合物(B)が酸により中和された塩を有する紙用柔軟剤。

【公開番号】特開2009−41157(P2009−41157A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210435(P2007−210435)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】