説明

紙用添加剤の製造方法、紙用添加剤及び紙

【構成】 炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させる工程中又は反応終了後、塩基性物質で処理する工程を含むことを特徴とする紙用添加剤の製造方法、紙用添加剤及びその紙用添加剤を含有する紙。
【効果】 従来の炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させて得られる紙用添加剤よりもDCPの含有量が少なく、抄紙時の泡立ちが著しく抑えられ、かつ、紙厚向上などの性能を低下させない紙用添加剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用添加剤及びそれを含有する紙に関し、更に詳しくは、低分子有機ハロゲン化合物、主として、1,3−ジクロロ−2−プロパノール(以下、これをDCPと記す。)の含有量がより少なくなる、特定のモノカルボン酸及び/又は特定のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させる工程において塩基性物質を添加することを特徴とする紙用添加剤の製造方法、及びそれを含有する紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙のサイズ剤の主要成分として、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルとポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとの反応物(以下、「CAE樹脂」)が有用であることは公知である(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。CAE樹脂のサイズ剤以外の用途として不透明度向上剤及び多孔性向上剤もある。前記CAE樹脂が不透明度向上剤として使用されることは公知である(例えば、特許文献3,特許文献4参照)。多孔性向上剤としては公知である(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特公昭42−2922号公報
【特許文献2】特公昭47−11306号公報
【特許文献3】特開昭61−252400号公報
【特許文献4】特開平2000−273792号公報
【特許文献5】特開昭61−252400号公報
【0003】
また、湿潤紙力増強剤として使用されている熱硬化性樹脂水溶液の製造方法として、より具体的には、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂のDCPを低減するために塩基性物質を使用する製造方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献6】特開平06−001842号公報
【0004】
一方、近年においては環境保護の気運の上昇などにより、発ガン性があると言われている低分子有機ハロゲン化合物を減らすことが求められている。CAE樹脂についても有機ハロゲン化合物を少なくすることが求められており、特に低分子有機ハロゲン化合物の主成分となっているDCPの含有量をより少なくすることが、求められている。しかも単にDCPの含有量を少なくするのではなく、従来のCAE樹脂の性能を低下させないことが求められている。
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、例えば、特公昭42−2922号公報の実施例のように、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルとポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとの反応は、溶媒を使用せず、また80℃〜90℃の一段階で反応させており、反応中に生成する副生成物としてのDCPの含有量が十分に減少していない。また、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は水溶性樹脂であり、その分子量は100万〜200万にも及ぶような高分子であるのに対して、本発明の紙用添加剤は最終的にはエマルションとして使用するものであるとともに分子量数千のものであるため、水溶性樹脂のように塩基性物質を安易に使用するとエマルションの安定性が悪化することが当業者からは容易に想像されたため、本発明のような紙用添加剤への検討は行われていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定のモノカルボン酸及び/又は特定のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロドリンとを反応して得られるところの、DCPの含有量がより少ないにもかかわらず、従来の性能を維持することのできる紙用添加剤、及びこのような紙用添加剤を含有する紙を提供することを課題とするものである。更に言うと、本発明の目的は、従来公知のCAE樹脂を製造する際のアミド系化合物の残存アミノ基とエピハロドリンとのモル比が同じである場合には、ダイオキシンの発生原因となると言われている吸着性有機塩素化合物(AOX;Adsorbable Organic Halogen)の含有量を低減させることができ、かつ、抄紙時の発泡が抑制され、しかも従来のCAE樹脂と同じように紙厚の向上性能を有するCAE樹脂を含有する紙用添加剤の製造方法、紙用添加剤及びこれを含有する紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記公知方法により製造される樹脂の欠点について鋭意検討を重ねた結果、DCPの含有量を減らすために塩基性物質をアミド系化合物とエピハロヒドリンとの反応途中又は反応後に添加する工程を設けることでDCPの含有量が減り、さらに従来の性能を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は
(1)炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させる工程中又は反応終了後に、塩基性物質を添加する工程を含むことを特徴とする紙用添加剤の製造方法、
(2)塩基性物質を添加する工程前に存在する1,3−ジクロロ−2−プロパノールの量に対して200〜800モル%の塩基性物質を使用することを特徴とする前記(1)の紙用添加剤の製造方法、
(3)塩基性物質がアンモニア、水酸化ナトリウム、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アミノエチルピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチルアミン、テトラエチレンペンタミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、トリエタノールアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)又は(2)の紙用添加剤の製造方法、
(4)前記(1)〜(3)の紙用添加剤の製造方法によって得られる紙用添加剤、
(5)前記(4)の紙用添加剤を含有することを特徴とする嵩高紙
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
従来の炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させて得られる紙用添加剤よりもDCPの含有量が少なく、紙厚向上などの性能を低下させない紙用添加剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<アミド系化合物について>
本発明のアミド系化合物は、炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得ることができる。
【0011】
前記の炭素数6〜24のモノカルボン酸及び炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体としては炭素数6〜24の脂肪酸及び炭素数6〜24の脂肪酸のエステル等を挙げることができる。
【0012】
前記の脂肪酸としては炭素数6〜24である直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。これら各種の脂肪酸の中でも特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びオレイン酸が好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0013】
前記の脂肪酸のエステルとしては上記各脂肪酸の低級アルコールエステルなどが挙げられる。脂肪酸の低級アルコールエステルとして、脂肪酸のメチルエステル、脂肪酸のエチルエステル、及び脂肪酸のプロピルエステルなどが挙げられる。本発明における脂肪酸エステルは、従来から公知の、脂肪酸とアルコールとのエステル化反応により得ることができる。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0014】
前記のポリアルキレンポリアミン類としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン及びこれらのアミン類のアルキレンオキシド付加物が挙げられ、これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。これらの中で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが好ましく、さらにはテトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0015】
モノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応モル比は特に限定するものではないが、ポリアルキレンポリアミン類1モルに対してモノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体の反応量は、通常、1.5〜3モルである。
【0016】
モノカルボン酸及び/又はモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応は、100〜200℃に加熱することにより行われる。反応時間は、通常、0.5〜10時間であり、中でも2〜6時間が好ましい。反応に際してカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類とを混合する方法に制限はなく、通常はポリアルキレンポリアミン類にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を徐々に添加して反応をスムースに進行させる方法が好ましい。アミド化反応の触媒は特に用いなくても良いが、アミド化反応の触媒として、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などのスルホン酸類、あるいは、アミド化反応に通常に用いられる触媒を使用しても良い。その使用量はポリアルキレンポリアミン1モルに対し、通常の場合0.005 〜0.1モルであり、好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0017】
<アミド系化合物とエピハロヒドリンとの反応>
このようにして得られたアミド化合物とエピハロヒドリンとを反応させる。具体的には反応溶媒として水又は水と有機溶剤との混合溶媒を用い、アミド化合物と反応溶媒との混合物を40℃〜100℃に保ち、そこへエピハロヒドリンを添加して反応を進行させる。
【0018】
DCP含有量をより低くするためには、反応温度40〜55℃で5分〜1時間反応させた後、70〜100℃に昇温して1〜8時間反応させる2段階反応が好ましい。
【0019】
反応の途中、反応の終了後のいずれにおいても塩基性物質を用いることで、DCPを低減することができる。DCPをより効率的に低減するには、反応の終了後に塩基性物質を加えることが好ましい。
【0020】
塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等の無機塩基性物質、あるいは、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン等の第1、2、3級有機アミン類、あるいは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどのアンモニウムヒドロキシド類などが挙げられるが、工業的には水酸化ナトリウムに代表される無機塩基性物質が、DCPをより効率的に低減するにはアンモニアを用いることが好ましい。
【0021】
塩基性物質の使用量は、通常、塩基性物質で処理する工程前に存在する1,3−ジクロロ−2−プロパノールの量に対して200〜800モル%であり、好ましくは300〜600モル%である。使用量が200モル%より少ないとDCPを低減しにくい場合があり、800モル%を越えて使用すると安定なエマルションが得られなくなることがある。また、低分子ハロゲン化合物がDCP以外にも多量に存在している場合は、塩基性物質は前記の値よりも多いことが好ましくい。
【0022】
本発明に使用される反応溶媒としては水あるいは水および有機溶剤の混合溶媒が使用される。有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、この中でもイソプロピルアルコールが好ましい。これらは一種単独で水と混合しても良いし、二種以上を併用して水と混合しても良い。水と有機溶剤の使用量、混合比率は反応温度でアミド化合物を均一に溶解、又は分散させるのに必要な量、混合比を使用すれば良く、通常アミド化合物とエピハロヒドリンとの反応は、アミド化合物の濃度が5〜90%、水と有機溶剤の混合比は水100gに対して0〜100gで行われる。
【0023】
アミド化合物はエピハロヒドリンとの反応において、アミド系化合物の残存アミノ基の活性水素に対する、エピハロヒドリンのモル量は、0.5〜1.2当量であり、好ましくは、0.7〜1.2当量である。エピハロヒドリンのモル量が0.5当量よりも少ないとCAE樹脂の粘度が高くなり流動性を失い、取り扱いが困難となると言う不都合を生じることがあり、また1.2当量を超えるとCAE樹脂中のDCPの含有量が多くなると言う不都合を生じることがある。
【0024】
ここで、残存アミノ基は、アミノ系化合物のアミン価を測定して算出することができる。
【0025】
残存アミノ基=アミン価=(V ×F ×0.5 ×56.1 )/S
但し、V :1/2 規定塩酸メタノール液の滴定量(cc)
F :1/2 規定塩酸メタノール液の力価
S :採取した試料の固形分量(g)
【0026】
本発明に使用されるエピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどが挙げられ、その中でもエピクロロヒドリンが好ましい。
【0027】
CAE樹脂は必要に応じて従来公知の方法で分散させることができる。従来公知の分散方法としては、転相乳化、界面活性剤、無機塩類の添加、あるいは界面活性剤、無機塩類を添加した後の転相乳化、また機械的な方法により分散させることができる。これらは単独でも二種以上の方法を併用しても差し支えない。機械的な方法としてはホモミキサー、高圧吐出型ホモジナイザー、高剪断型回転式乳化分散機、超音波乳化機等の各種公知の乳化機により均一に分散させる方法が挙げられる。
【0028】
界面活性剤としては、従来公知の界面活性剤が使用でき、例えば、高級アルコールあるいは高級脂肪酸にオキシアルキレン基が付加した非イオン界面活性剤などが挙げられる。また、無機塩類としては、例えばナトリウムやカルシウムの塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩などが挙げられる。これらは一種単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0029】
かくして、得られた本発明のCAE樹脂は、DCPの含有量が著しく低く、しかも、製紙用添加剤として用いると公知の方法で製造されたCAE樹脂と同等もしくはそれ以上の優れたサイズ効果、不透明度向上及び多孔性向上効果を奏する。
【0030】
一般的にはDCPの含有量はアミド系化合物の残存アミノ基の活性水素に対する、エピハロヒドリンのモル量により大きく変化し、このモル量が多くなるほどDCP量は多くなる。アミド系化合物の残存アミノ基の活性水素に対するエピハロヒドリンのモル量が同じ場合、本発明の製紙用添加剤は、従来公知のCAE樹脂に比べ、DCPの含有量を、従来公知の前記サイズ剤よりも、200〜5000ppm減少でき、かつサイズ性能、不透明度、多孔性を同等もしくは向上できる。
【0031】
一方、残存アミノ基の活性水素に対する、エピハロヒドリンのモル量を減らすことでDCP量を減少させることができるが、その場合、サイズ性能、不透明度、多孔性は低下する。
【0032】
本発明の製紙用添加剤を含有する紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。紙以外には改質木材、無機系建築材料が挙げられ、例えばパーティクルボード、ハードボード、インシュレーションボード、ロックウールボード等を挙げることができる。これらの中でも特に嵩が必要となる紙に適用することが好ましい。
【0033】
本発明の紙を製造するに当たって、通常、本発明の製紙用添加剤をパルプ原料固形分に対し固形分で0.1〜3重量%の使用割合で添加する。また本発明の製紙用添加剤はサイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー等で紙基体に塗布されたものであってもよい。
【0034】
本発明の紙はパルプ原料としてクラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプを含有することができる。また、上記パルプ原料と岩綿、石綿、あるいはポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有してもよい。
【0035】
本発明の紙を製造するにあたって、填料、サイズ剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、及び濾水性向上剤などの添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、これらを本発明の紙用添加剤と予め混合して紙料に添加して使用することもでき、混合の方法は特に制限はない。
【0036】
填料としては、クレー、タルク、及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのごとき脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン、ロジンエステル系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション、2−オキセタノンの水性エマルション、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0037】
乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。
【0038】
歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又は両性又はアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0039】
また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、カレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、並びに防滑剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、硫酸バン土は本発明の製紙用添加剤を添加する前、添加した後、あるいは同時に添加して使用しても良い。
【0040】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。 なお、各例中、%は特記しない限りすべて重量%である。
【0041】
製造例1
温度計、冷却機、攪拌機、及び窒素導入管を備えた2リットル四つ口丸底フラスコにテトラエチレンペンタミン189.3g(1モル)を仕込み130℃へ昇温した後、牛脂脂肪酸{ステアリン酸/パルミチン酸混合物(混合重量比65:35)} 958.9g(3.5モル)を徐々に加えた。170℃まで昇温し、生成する水を除去しながら5時間反応させ、ワックス状のアミド系化合物を得た。得られたアミド化合物のアミン価は51であった。
【0042】
製造例2〜3
表1に示したモノカルボン酸及びポリアルキレンポリアミンを使用したこと以外は製造例1と同様にしてアミド化合物を得た。得られたアミド化合物のアミン価も表1に併記した。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた1リットルの四つ口フラスコに製造例1で得られたアミド系化合物50.0gとイソプロピルアルコール(以下、IPAと略記する)8.1g、水206gを仕込み、80℃まで昇温した後、1時間攪拌した。アミド化合物がサスペンションとなったことを確認した後、50℃まで冷却し、エピクロロヒドリン4.2g(0.045モル)を加え、50℃にて30分反応させた。 その後、80℃にて3時間反応させてからDCP濃度を測定したところ、2500ppm(0.0052モル)であった。続いて28%アンモニア水溶液1.86g(0.031モル;対DCP 590モル%)を添加し、さらに80℃で30分間処理を行った後、冷却して固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂水溶液に含まれるDCP量は70ppmであった。
【0045】
実施例2
DCPを処理するための塩基性物質をアンモニアからトリエタノールアミン4.03g(0.027モル;対CDP 520モル%)に変更した以外は実施例1と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は180ppmであった。
【0046】
実施例3
DCPを処理するための塩基性物質をアンモニアからジエチルアミン1.94g(0.027モル;対DCP 510モル%)に変更した以外は実施例1と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は160ppmであった。
【0047】
実施例4
DCPを処理するための塩基性物質をアンモニアからN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン2.12g(0.021モル;対DCP 400モル%)に変更した以外は実施例1と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は1020ppmであった。
【0048】
実施例5
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた1リットルの四つ口フラスコに製造例2で得られたアミド系化合物50.0gとIPA 8.9g、水229gを仕込み、80℃まで昇温した後、1時間攪拌した。アミド化合物がサスペンションとなったことを確認した後、エピクロロヒドリン9.5g(0.103モル)を加え、80℃にて3時間30分反応させてからDCP濃度を測定したところ、6500ppm(0.015モル)であった。続いてアミノエチルピペラジン 10.25g(0.079モル;対DCP 530モル%)を添加し、さらに80℃で30分間処理を行った後、冷却して固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂水溶液に含まれるDCP量は250ppmであった。
【0049】
実施例6
DCPを処理するための塩基性物質をアミノエチルピペラジンからトリエチレンテトラミン5.91g(0.040モル;対DCP 270モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は2010ppmであった。
【0050】
実施例7
DCPを処理するための塩基性物質をアミノエチルピペラジンからエチレンジアミン 3.51g(0.058モル;対DCP 390モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は930ppmであった。
【0051】
実施例8
DCPを処理するための塩基性物質をアミノエチルピペラジンからテトラエチレンペンタミン 9.30g(0.048モル;対DCP 320モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は1600ppmであった。
【0052】
実施例9
DCPを処理するための塩基性物質をアミノエチルピペラジンから30%水酸化ナトリウム 5.99g(0.045モル;対DCP 300モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は1950ppmであった。
【0053】
実施例10
DCPを処理するための塩基性物質をアミノエチルピペラジンからトリエチルアミン7.11g(0.070モル;対DCP 470モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は470ppmであった。
【0054】
実施例11
DCPを処理するための塩基性物質をアミノエチルピペラジンからエチレンジアミン 1.80g(0.030モル;対DCP 200モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は3000ppmであった。
【0055】
実施例12
DCPを処理するための塩基性物質をアミノエチルピペラジンから30%水酸化ナトリウム 13.99g(0.105モル;対DCP 700モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は3ppmであったが、エマルション粒子の凝集による巨大粒子の生成が認められた。
【0056】
実施例13
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた1リットルの四つ口フラスコに製造例3で得られたアミド系化合物50.0gとIPA 8.9g、水229gを仕込み、80℃まで昇温した後、1時間攪拌した。アミド化合物がサスペンションとなったことを確認した後、50℃まで冷却し、エピクロロヒドリン9.5g(0.103モル)を加え、50℃にて30分反応させた。その後、80℃にて3時間反応させてからDCP濃度を測定したところ、2300ppm(0.0053モル)であった。続いてジエチレントリアミン 1.42g(0.014モル;対DCP 260モル%)を添加し、さらに80℃で30分間処理を行った後、、冷却して固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂水溶液に含まれるDCP量は760ppmであった。
【0057】
実施例14
DCPを処理するための塩基性物質をジエチレントリアミンからジシクロヘキシルアミン 4.80g(0.027モル;対DCP 500モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は320ppmであった。
【0058】
実施例15
DCPを処理するための塩基性物質をジエチレントリアミンからトリメチルアミン 1.69g(0.029モル;対DCP 540モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は70ppmであった。
【0059】
実施例16
DCPを処理するための塩基性物質をジエチレントリアミンからジエタノールアミン 2.44g(0.023モル;対DCP 430モル%)に変更した以外は実施例4と同様な手順で固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂のDCP濃度は840ppmであった。
【0060】
比較例1
塩基性物質による処理を行わない以外は、実施例1と同様にして固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂水溶液に含まれるDCP量は2500ppm(0.0052モル)であった。
【0061】
比較例2
塩基性物質による処理を行わない以外は、実施例4と同様にして固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂水溶液に含まれるDCP量は6500ppm(0.015モル)であった。
【0062】
比較例3
塩基性物質による処理を行わない以外は、実施例10と同様にして固形分濃度20%のCAE樹脂を得た。 得られたCAE樹脂水溶液に含まれるDCP量は2300ppm(0.0053モル)であった。
【0063】
【表2】

【0064】
実施例17〜32及び比較例4〜6
<泡立ち性試験>
380mlのカナディアン・スタンダード・フリーネスまで叩解したパルプ(広葉樹 対 針葉樹のパルプ比が9対1である混合パルプ)を2.5%のスラリーとし、これに対パルプ10%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP121)、対パルプ0.5%(絶乾重量基準)の両性澱粉(王子コーンスターチ社製;Cato304)及び、実施例1〜16及び比較例1〜3に記載の紙用添加剤を対パルプ1%(絶乾重量基準)になるように添加した後、pH8の希釈水でパルプ濃度0.25%まで希釈し、円筒型の容器に入れた。その後、希釈したパルプスラリーに対パルプ0.01%の歩留り向上剤(ハイモ社製;NR12MLS)を添加した後、このパルプスラリーをポンプで循環してこれを50cmの高さから容器に落下させ、10分後の液面に蓄積する泡の面積を、液面全体面積に対する百分率で表した。
【0065】
<手抄き試験>
380mlのカナディアン・スタンダード・フリーネスまで叩解したパルプ(広葉樹 対 針葉樹のパルプ比が9対1である混合パルプ)を2.5%のスラリーとし、これに対パルプ10%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP121)、対パルプ0.5%(絶乾重量基準)の両性澱粉(王子コーンスターチ社製;Cato304)及び、実施例1〜16及び比較例1〜3に記載の紙用添加剤を対パルプ0.6%(絶乾重量基準)になるように添加した後、pH8の希釈水でパルプ濃度0.5%まで希釈し、希釈したパルプスラリーに対パルプ0.01%の歩留り向上剤(ハイモ社製;NR12MLS)を添加した。得られたパルプスラリーを用い、角型シートマシンにて抄紙して、坪量80g/mの手抄き紙を得た。得られた手抄き紙を23℃、RH50%の条件下に24時間調湿した後、紙の密度をJIS P8118に従い測定した。
【0066】
<DCP測定法>
アミド系化合物中のDCP量は、ガスクロマトグラフィーで定量した。
【0067】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数6〜24のモノカルボン酸及び/又は炭素数6〜24のモノカルボン酸誘導体とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとを反応させる工程中又は反応終了後に、塩基性物質を添加する工程を含むことを特徴とする紙用添加剤の製造方法。
【請求項2】
塩基性物質を添加する工程前に存在する1,3−ジクロロ−2−プロパノールの量に対して200〜800モル%の塩基性物質を使用することを特徴とする請求項1記載の紙用添加剤の製造方法。
【請求項3】
塩基性物質がアンモニア、水酸化ナトリウム、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アミノエチルピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチルアミン、テトラエチレンペンタミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙用添加剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の紙用添加剤の製造方法によって得られる紙用添加剤。
【請求項5】
請求項4に記載の紙用添加剤を含有することを特徴とする紙厚向上紙。

【公開番号】特開2007−31898(P2007−31898A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219013(P2005−219013)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】