説明

紙葉類搬送制御装置

【課題】クロック信号に基づくアクチュエータ制御回路の動作が停止した場合にアクチュエータが駆動したままの状態になることを防ぐ。
【解決手段】3ステートバッファ41(ゲート回路)は、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作の停止を動作検出回路36が検出した場合、アクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態とする。レベル固定回路50は、3ステートバッファ41がアクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態とした場合、アクチュエータ駆動回路21の駆動信号33用の入力端子21iの電圧を、アクチュエータ10が駆動しない電圧に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類の搬送を制御する紙葉類搬送制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、紙幣等の紙葉類(詳細は後述)の搬送を制御する装置が開示されている。また、図2に従来の紙葉類搬送制御装置201を示す。紙葉類搬送制御装置201は、主に、紙葉類の搬送に用いるアクチュエータ210と、アクチュエータ210を駆動するアクチュエータ駆動回路221と、アクチュエータ210の駆動を制御するアクチュエータ制御回路231と、を備える。
【0003】
アクチュエータ210は、例えば、紙葉類の搬送路の切替等に用いられるソレノイドや、紙葉類を搬送する可動部材等(例えばローラ等)を動作させるモータ等である。アクチュエータ駆動回路221は、アクチュエータ制御回路231が出力する駆動信号233に応じてアクチュエータ210を駆動する。アクチュエータ制御回路231は、クロック222から出力されるクロック信号223に基づいて動作する回路であり、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)、または、LSI(Large Scale Integration)等である。
【0004】
従来、アクチュエータ制御回路231の出力端子とアクチュエータ駆動回路221の入力端子とが直接接続されることが多かった。また、アクチュエータ制御回路231とアクチュエータ駆動回路221との間に、駆動信号233をそのまま(または反転のみ行って)通過させるだけの回路(インバート/ノンインバートバッファ241)が挿入される場合もあった。
【0005】
また、アクチュエータ制御回路231は、クロック信号223に基づく動作が停止した場合は駆動信号233の出力をこの停止直前の状態に保持する回路である。この停止は、例えば、クロック222とアクチュエータ制御回路231とを接続する配線の不良や、アクチュエータ制御回路231の故障など(詳細は後述)により生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−254480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、アクチュエータ制御回路は、クロック信号に基づく動作が停止したときは、この停止直前の駆動信号の出力の状態を保持する。すなわち、アクチュエータ制御回路は、アクチュエータを駆動させるための駆動信号を出力している時にクロック信号に基づく動作が停止した場合、アクチュエータを駆動させるための駆動信号をこの停止以後は出力したままの状態になる。その結果、アクチュエータが駆動したままという危険な状態になるおそれがある。
【0008】
例えば、アクチュエータがソレノイドの場合、電流が流れたままという状態になることでソレノイドが過熱されるおそれがある。ソレノイドがヒューズを備えている場合、前記過熱により切れたヒューズを交換する手間がかかるおそれがある。また、ソレノイドがヒューズを備えていない場合、前記過熱により、ソレノイドのケーブル被覆が燃えるおそれ、紙葉類が燃えるおそれ、または、紙葉類から有害ガスが発生するおそれ等がある。
また、小型のソレノイドで大きい駆動力を得るために、この小型のソレノイドに定格電流よりも大きい電流を流す場合がある。この場合は、ソレノイドの駆動時間に制限が課される場合がある。この制限時間を越えてソレノイドに電流を流すと上述した過熱の問題が生じやすい。
【0009】
また例えば、アクチュエータがモータの場合、モータが駆動したままという状態になることで次の問題が生じるおそれがある。例えば、紙葉類搬送制御装置を備えた機械(例えば自動券売機等)から紙葉類が出続けるおそれがある。特に、紙葉類が紙幣や有価証券等の場合は大きな損害が生じるおそれがある。また例えば、この機械を(例えばメンテナンス等のために)開けた者が、駆動したままの状態のモータにより動いたままの状態となった可動部材で指や手などを挟む事故が起こるおそれがある。特に、この機械を開けた者からは見えにくい場所にこの可動部材が配置されている場合は、上記事故が生じやすい。
【0010】
そこで本発明では、クロック信号に基づくアクチュエータ制御回路の動作が停止した場合にアクチュエータが駆動したままの状態になることを防ぐことができる紙葉類搬送制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
第1の発明の紙葉類搬送制御装置は、紙葉類の搬送に用いるアクチュエータと、入力される駆動信号に応じて前記アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動回路と、前記アクチュエータ駆動回路に接続されたレベル固定回路と、前記駆動信号を出力するアクチュエータ制御回路と、前記アクチュエータ制御回路の動作および停止を検出する動作検出回路と、前記アクチュエータ制御回路と前記アクチュエータ駆動回路との間に設けられたゲート回路と、を備える。前記アクチュエータ制御回路は、クロック信号に基づいて動作可能であるとともに、当該クロック信号に基づく動作が停止した場合は前記駆動信号の出力を当該停止直前の状態に保持する回路である。前記ゲート回路は、前記クロック信号に基づく前記アクチュエータ制御回路の動作の停止を前記動作検出回路が検出した場合、前記アクチュエータ駆動回路への出力をハイインピーダンス状態または非接続状態とする。前記レベル固定回路は、前記ゲート回路が前記アクチュエータ駆動回路への出力をハイインピーダンス状態または非接続状態とした場合、前記アクチュエータ駆動回路の前記駆動信号用の入力端子の電圧を、前記アクチュエータが駆動しない電圧に設定する。
【0012】
この紙葉類搬送制御装置では、アクチュエータ制御回路は、駆動信号を出力する。また、アクチュエータ駆動回路は、入力される駆動信号に応じてアクチュエータを駆動する。ここで、アクチュエータ制御回路は、クロック信号に基づいて動作可能であるとともに、クロック信号に基づく動作が停止した場合は駆動信号の出力を当該停止直前の状態に保持する回路である。よって、そのままでは、アクチュエータを駆動させる駆動信号をアクチュエータ制御回路が出力している状態で、クロック信号に基づくアクチュエータ制御回路の動作が停止した場合、紙葉類の搬送に用いるアクチュエータが駆動したままになるおそれがある。
【0013】
一方で、この紙葉類搬送制御装置は、アクチュエータ制御回路とアクチュエータ駆動回路との間に設けられたゲート回路を備える。ゲート回路は、クロック信号に基づくアクチュエータ制御回路の動作の停止を動作検出回路(アクチュエータ制御回路の動作および停止を検出する動作検出回路)が検出した場合、アクチュエータ駆動回路への出力をハイインピーダンス状態または非接続状態とする。その結果、アクチュエータ制御回路から出力された駆動信号は、アクチュエータ駆動回路に入力されない。
さらに、この紙葉類搬送制御装置は、アクチュエータ駆動回路に接続されたレベル固定回路を備える。レベル固定回路は、ゲート回路がアクチュエータ駆動回路への出力をハイインピーダンス状態または非接続状態とした場合、アクチュエータ駆動回路の駆動信号用の入力端子の電圧を、アクチュエータが駆動しない電圧に設定する。その結果、アクチュエータは駆動しない。したがって、クロック信号に基づくアクチュエータ制御回路の動作が停止した場合にアクチュエータが駆動したままの状態になることを防ぐことができる。
【0014】
第2の発明の紙葉類搬送制御装置では、前記アクチュエータ制御回路は、前記クロック信号に基づいて動作している場合、前記動作検出回路に動作信号を出力し、前記動作信号は状態が周期変化する信号である。
【0015】
この紙葉類搬送制御装置では、上記の動作信号は状態が周期変化する信号である。ここで、クロック信号に基づくアクチュエータ制御回路の動作が停止した場合に、アクチュエータ制御回路から動作検出回路に出力される信号の状態が保持される場合、当該停止後は当該信号の状態は変化しない。一方で、前記停止前にアクチュエータ制御回路から動作検出回路に出力される動作信号の状態は周期変化する。したがって、クロック信号に基づくアクチュエータ制御回路の動作が停止した場合に、アクチュエータ制御回路から動作検出回路に出力される信号の状態が保持される場合であっても、当該停止を動作検出回路が確実に検出できる。
【0016】
第3の発明の紙葉類搬送制御装置では、前記ゲート回路は、前記アクチュエータ駆動回路への出力をハイインピーダンス状態に設定可能な3ステートバッファである。
【0017】
この紙葉類搬送制御装置のゲート回路は、汎用部品で構成することができる。
【0018】
第4の発明の紙葉類搬送制御装置では、前記レベル固定回路は、前記アクチュエータ駆動回路の前記駆動信号用の前記入力端子と、所定の電圧に設定された端子と、を電気的に接続するレベル固定抵抗を備える。
【0019】
この紙葉類搬送制御装置のレベル固定回路は、汎用部品で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】紙葉類搬送制御装置のブロック図である。
【図2】従来の紙葉類搬送制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1を参照して紙葉類搬送制御装置1の実施形態を説明する。
【0022】
紙葉類搬送制御装置1は、紙葉類の搬送を制御する装置である。紙葉類は、例えば、紙や樹脂(プラスチック)等を材料とする、紙幣、有価証券(切符など)、磁気カード、又はICカード等である。なお、紙葉類の材料が紙の場合は紙葉類は燃えやすく、紙葉類の材料が樹脂の場合は加熱により有害ガス(煙)が発生しやすい。紙葉類搬送制御装置1は、例えば駅務機器(自動券売機や改札機など)を構成する装置である。紙葉類搬送制御装置1は、紙葉類を数える、紙葉類を搬送する、または、紙葉類を金庫に対して出し入れする等の機能を備えたユニット(紙幣ユニット等)を構成する装置である。
【0023】
この紙葉類搬送制御装置1は、紙葉類の搬送に用いるアクチュエータ10と、アクチュエータ10を駆動及び制御する制御プリント基板20とを備える。制御プリント基板20には、アクチュエータ10に接続されたアクチュエータ駆動回路21と、アクチュエータ駆動回路21に(3ステートバッファ41を介して)接続されたアクチュエータ制御回路31と、アクチュエータ制御回路31に接続されたCPU25およびメモリ26と、アクチュエータ制御回路31に(CPU25を介して)接続されたクロック22と、が設けられる。さらに、制御プリント基板20には、アクチュエータ制御回路31とアクチュエータ駆動回路21との間に設けられた3ステートバッファ41と、アクチュエータ制御回路31と3ステートバッファ41とに接続された動作検出回路36と、アクチュエータ駆動回路21に接続されたレベル固定回路50と、が設けられる。
【0024】
アクチュエータ10は、紙葉類の搬送に用いる部材であり、例えばソレノイドやモータ等である。
【0025】
このアクチュエータ10がソレノイドの場合、アクチュエータ10は、電流が流れることで発生する電磁力により可動部(図示なし)を駆動(吸引)する部材であり、例えば紙葉類の通路を切り換える部材である。なお、紙葉類搬送制御装置1の小型化のために、アクチュエータ10として小型のソレノイドを用いる場合がある。また、この小型のソレノイドに過負荷をかけ(定格電流よりも大きい電流を流し)、通常(定格電流以下の電流を流す場合)よりも大きい力を出させる場合がある。この場合、この小型のソレノイドに過負荷をかける時間は制限され、制限時間(例えば1秒や数秒等)を超過した場合はアクチュエータ10が過熱されるおそれがある。アクチュエータ10には、ヒューズを設けても良い(例えば内蔵しても良い)。
【0026】
このアクチュエータ10がモータの場合、アクチュエータ10は、電力が供給されることで、回転子が駆動(回転)する部材であり、例えば紙葉類を搬送する可動部材等(例えばローラ等)を動作させる部材である。アクチュエータ10は、紙葉類搬送制御装置1を備えた機械(自動券売機など)の内部での紙葉類の移動、または、この機械に対する紙葉類の出し入れ等に用いられる。アクチュエータ10(モータ)は例えば、パルスモータ又はDCモータ等である。
【0027】
アクチュエータ駆動回路21は、入力される駆動信号33に応じてアクチュエータ10を駆動する回路である。すなわち、アクチュエータ駆動回路21はアクチュエータ10のドライバである(パルスモータドライバ、DCモータドライバ、ソレノイドドライバ等である)。また、アクチュエータ駆動回路21は、アクチュエータ10の駆動または停止(アクティブ状態、または、インアクティブ状態)を切り換える言わばスイッチである。アクチュエータ駆動回路21の入力端子21iは、3ステートバッファ41を介してアクチュエータ制御回路31に接続され、アクチュエータ制御回路31から駆動信号33が入力される(入力されない場合は後述)。アクチュエータ駆動回路21に入力される信号は、「H」(High)または「L」(Low)のデジタル信号(ロジック信号)である。アクチュエータ駆動回路21の出力端子21oはアクチュエータ10に接続され、アクチュエータ10に電力を供給する(例えば24V等のパワー系の電流を供給する)。アクチュエータ駆動回路21は、例えばトランジスタ等の半導体素子であり、例えばFET(Field Effect Transistor、電界効果トランジスタ)等であり、例えば1つの素子で構成される(2以上の素子で構成しても良く、半導体素子以外の部材で構成しても良い)。
【0028】
クロック22は、クロック信号23(CLK信号、グローバルCLK信号)を生成する回路である。クロック22は、CPU25を介して(介さなくても良い)アクチュエータ制御回路31に接続され、アクチュエータ制御回路31にクロック信号23を出力する。クロック22は、例えば水晶振動子を利用した発振回路である。クロック信号23は、例えば20MHz等の矩形波等である。クロック22がCPU25を介してアクチュエータ制御回路31に接続される場合、クロック信号23がCPU25を単に通過するようにしても良く、また、CPU25がクロック信号23を出力するようにしても良い。
【0029】
CPU25(Central Processing Unit)は、演算や命令を行う装置である。CPU25は、クロック22に接続され、クロック信号23が入力され、クロック信号23に基づいて動作する。CPU25は、バス27(CPUバス)を介してアクチュエータ制御回路31、及び、メモリ26(フラッシュメモリ、又は、SRAM(Static Random Access Memory)等)に接続される。CPU25は、メモリ26との間で情報(アドレスやデータ)のやり取りを行い、アクチュエータ制御回路31に命令(後述)を出す。
【0030】
アクチュエータ制御回路31は、アクチュエータ10の駆動を制御する回路である。アクチュエータ制御回路31は、例えば集積回路であり、例えば、FPGAやPLD(製造後にロジックを打ち込むことが可能な回路、例えばロジックを並行動作させることが可能な回路)又はLSI、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。なお、アクチュエータ制御回路31は、例えば2以上の素子や回路等を組み合わせて構成しても良い。
【0031】
このアクチュエータ制御回路31は、上述した駆動信号33を出力する。さらに詳しくは、アクチュエータ制御回路31は、バス27を介して(経由して)CPU25から命令(「アクチュエータ10を駆動させる(または停止させる)」という命令)が与えられると、アクチュエータ駆動回路21にアクチュエータ10を駆動させる(または停止させる)ための駆動信号33(例えば「H」又は「L」)を出力する。
【0032】
このアクチュエータ制御回路31は、クロック信号23に基づいて動作可能である。アクチュエータ制御回路31は、クロック信号23に同期して動作する(例えば出力信号を生成する)同期回路を構成する。なお、アクチュエータ制御回路31は、2以上のクロック22に基づいて動作するものでも良い。
【0033】
このアクチュエータ制御回路31は、クロック信号23に基づく動作が停止した場合は(以下、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作の停止を「停止S」という)、駆動信号33の出力を当該停止S直前の状態(前状態、問題が起こる寸前の状態)に保持する回路である。例えば、停止Sの直前に駆動信号33が「H」の状態であれば、停止S後は駆動信号33が「H」の状態で保持される(「L」の場合も同様)。例えば、停止Sは、アクチュエータ制御回路31内部の断線や故障(アクチュエータ制御回路31の個別不良による暴走、個別不具合)により生じ得る。また例えば、停止Sは、アクチュエータ制御回路31にクロック信号23が供給されないことにより生じ得る。この「供給されないこと」は、例えば、制御プリント基板20の製造時のハンダ付け不良や同製造後の制御プリント基板20の振動による素子等のはがれ、同製造後のヒートショックによる断線、または、その他劣化による断線などにより生じ得る。
【0034】
このアクチュエータ制御回路31は、クロック信号23に基づいて動作している場合、動作検出回路36に動作信号32を出力する。すなわち、アクチュエータ制御回路31は、動作検出回路36に接続され、アクチュエータ制御回路31が動作していることを示す動作信号32(動作検出用の信号)を動作検出回路36に出力する。
動作信号32は、状態が周期変化する信号である。動作信号32は、クロック信号23に基づいてアクチュエータ制御回路31により生成される。動作信号32は、例えば、「H」、「L」、「H」、「L」・・・と状態が周期変化する信号(例えば一定周波数の信号)であり、周期変化の周波数は例えば1kHzである。なお、動作信号32の周波数は、クロック信号23の周波数と同一でも、異なっても良い。また、クロック信号23に基づくアクチュエータ駆動回路21の動作の停止Sの前後で動作信号32の状態が変わる場合は、動作信号32は、状態が周期変化するものでなくても良い。
【0035】
一方で、アクチュエータ制御回路31がクロック信号23に基づいて動作していない場合、アクチュエータ制御回路31は動作検出回路36に動作信号32を出力しない。この場合、アクチュエータ制御回路31は、動作信号32以外の信号を出力する(例えば「H」又は「L」を出力し続ける等)。
【0036】
動作検出回路36(図1では「FPGA動作検出回路」と記載)は、アクチュエータ制御回路31の動作および停止を検出する回路である。動作検出回路36は、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作の停止Sを検出可能な回路である。動作検出回路36は、アクチュエータ制御回路31から動作信号32が入力される否かを検出することで、停止Sを検出する。具体的には例えば、動作信号32が「H」、「L」、「H」、「L」・・・と状態が周期変化する矩形波の場合、この動作信号32の立ち上がりエッジを検出しない場合に動作検出回路36は停止Sが生じたと判断する。
【0037】
この動作検出回路36は、3ステートバッファ41に接続され、3ステートバッファ41に上記の検出結果を出力する。動作検出回路36が、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作を検出した場合(動作信号32を検出した場合)、3ステートバッファ41にゲート有効信号37を出力する。動作検出回路36が、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作を検出しない場合(動作信号32を検出しない場合)、3ステートバッファ41にゲート無効信号38を出力する。動作検出回路36は、具体的には例えば、汎用ロジックIC123等である。
【0038】
3ステートバッファ41(ゲート回路)は、アクチュエータ制御回路31とアクチュエータ駆動回路21との間に設けられる(アクチュエータ制御回路31とアクチュエータ駆動回路21とを接続する配線に挿入される)。3ステートバッファ41は、アクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態「Hiz」に設定可能な回路である。3ステートバッファ41は、具体的には例えば汎用ロジックIC540、541等である。3ステートバッファ41は、動作検出回路36から入力されるゲート有効信号37またはゲート無効信号38に応じて、アクチュエータ駆動回路21の駆動信号33用入力端子21iへ出力する信号(二次側信号)を次のように切り換える。
【0039】
この3ステートバッファ41は、動作検出回路36からゲート有効信号37が入力された場合(クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作を動作検出回路36が検出した場合)、アクチュエータ制御回路31から入力された駆動信号33を、アクチュエータ駆動回路21にそのまま出力する(出力42に通過させる)(いわば、ゲートを開く)。なお、3ステートバッファ41は、駆動信号33を反転させてアクチュエータ駆動回路21に出力しても良い(すなわち、3ステートバッファ41は、インバート型でもノンインバート型でも良い)。
【0040】
この3ステートバッファ41は、動作検出回路36からゲート無効信号38が入力された場合(クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作の停止Sを動作検出回路36が検出した場合)、アクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態「Hiz」とする(いわば、ゲートを遮断する。信号通過を無効にする)。すなわち、3ステートバッファ41は、アクチュエータ駆動回路21とアクチュエータ制御回路31とを電気的に切り離したような状態にする。3ステートバッファ41での駆動信号33のゲートの遮断は、停止Sの直後でも良く、また、停止Sから一定時間経過後でも良い。
なお、「ゲート回路」として、出力42をハイインピーダンス状態「Hiz」にできる3ステートバッファ41を用いることに代えて、出力42を非接続状態にできる部材等(スイッチ等)を用いても良い。出力42の非接続状態とは、出力42とアクチュエータ駆動回路21とを切り離した状態(配線を切り離した状態)、すなわち、アクチュエータ駆動回路21とアクチュエータ制御回路31とを切り離した状態である。
【0041】
レベル固定回路50は、アクチュエータ駆動回路21に接続される。レベル固定回路50はレベル固定抵抗51(又はレベル固定抵抗53のいずれか一方)を備える。レベル固定抵抗51(又は53)は、アクチュエータ駆動回路21の駆動信号33用の入力端子21iと、所定の電圧(−V電圧または+V電圧)に設定された端子52(又は54)と、を電気的に接続する。なお、レベル固定抵抗51(又は53)は、3ステートバッファ41の出力42と、端子52(又は54)と、を接続する。さらに詳しくは、レベル固定回路50は次のように動作する。
【0042】
このレベル固定回路50は、3ステートバッファ41がアクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態「Hiz」としない場合(出力42から「H」又は「L」が出力される場合。3ステートバッファ41のゲートが開いている場合)、アクチュエータ駆動回路21に入力される信号(駆動信号33)の状態(「H」又は「L」)に影響を与えない。これは、3ステートバッファ41の出力42に対してレベル固定抵抗51(又は52)のインピーダンスが非常に大きいからである。なお、レベル固定抵抗51(又は53)の抵抗値は例えば10kΩ等である。なお、「ゲート回路」として出力42を非接続状態にできる部材を用いた場合も同様に、レベル固定回路50は駆動信号33の状態に影響を与えない。
【0043】
このレベル固定回路50は、3ステートバッファ41がアクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態「Hiz」とした場合(すなわち停止Sが生じている場合。3ステートバッファ41のゲートが遮断されている場合)、アクチュエータ駆動回路21の駆動信号33用の入力端子21iの電圧を、アクチュエータ10が駆動しない電圧に設定する。具体的には、アクチュエータ駆動回路21の入力端子21iに例えば「L」が入力されたときにアクチュエータ10が停止する場合、レベル固定回路50は入力端子21iの電圧を「L」に設定(固定)する。具体的には、レベル固定抵抗51は、−V電圧(「L」)に設定された端子52と、入力端子21iとを接続する。同様に、入力端子21iに「H」が入力されたときにアクチュエータ10が停止する場合は、レベル固定抵抗53は、+V電圧(「H」)に設定された端子54と、入力端子21iとを接続する。すなわち、レベル固定抵抗51は、吊り下げ抵抗(プルダウン抵抗)であり、レベル固定抵抗53は吊り上げ抵抗(プルアップ抵抗)である。
なお、「ゲート回路」として出力42を非接続状態にできる部材を用いた場合も同様に、「ゲート回路」の出力42を非接続状態とした場合、レベル固定回路50は入力端子21iの電圧をアクチュエータ10が駆動しない電圧に設定する。
【0044】
(本実施形態の紙葉類搬送制御装置の特徴)
(特徴1)
この紙葉類搬送制御装置1では、アクチュエータ制御回路31は、駆動信号33を出力する。また、アクチュエータ駆動回路21は、入力される駆動信号33に応じてアクチュエータ10を駆動する。ここで、アクチュエータ制御回路31は、クロック信号23に基づいて動作可能であるとともに、クロック信号23に基づく動作が停止(停止S)した場合は駆動信号33の出力を当該停止S直前の状態に保持する回路である。よって、そのままでは、アクチュエータ10を駆動させる駆動信号33をアクチュエータ制御回路31が出力している状態で、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作が停止(停止S)した場合、紙葉類の搬送に用いるアクチュエータ10が駆動したままになるおそれがある。
なお、「アクチュエータ10が駆動したまま」とは例えば、ソレノイドに電流が流れたままになる、または、モータの回転子が回転したままになること等である。
【0045】
一方で、この紙葉類搬送制御装置1は、アクチュエータ制御回路31とアクチュエータ駆動回路21との間に設けられた3ステートバッファ41(ゲート回路)を備える。3ステートバッファ41は、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作の停止Sを動作検出回路36(アクチュエータ制御回路31の動作および停止を検出する動作検出回路36)が検出した場合、アクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態「Hiz」とする(出力42を非接続状態にできるようなゲート回路を用いた場合は、ハイインピーダンス状態とすることに替えて非接続状態とする。以下同様)。その結果、アクチュエータ制御回路31から出力された駆動信号33は、アクチュエータ駆動回路21に入力されない。
【0046】
さらに、この紙葉類搬送制御装置1は、アクチュエータ駆動回路21に接続されたレベル固定回路50を備える。レベル固定回路50は、3ステートバッファ41がアクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態「Hiz」とした場合、アクチュエータ駆動回路21の駆動信号33用の入力端子21iの電圧を、アクチュエータ10が駆動しない電圧(「H」又は「L」)に設定する。その結果、アクチュエータ10は駆動しない(インアクティブ状態になる)。したがって、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作が停止(停止S)した場合にアクチュエータ10が駆動したままの状態になることを防ぐことができる。
【0047】
なお、アクチュエータ10がソレノイドの場合、停止Sが原因で電流がソレノイドに流れたままとなり、ソレノイドが過熱されることを防ぐことができる。その結果、ソレノイドにヒューズが内蔵されている場合、前記停止Sが原因でヒューズが切れることを防ぐことができる。また、ソレノイドにヒューズが内蔵されていない場合、前記停止Sを原因とする、ソレノイドのケーブル被覆の燃焼、紙葉類の燃焼、または、紙葉類からの有害ガス(煙)の発生等を防ぐことができる。
また、アクチュエータ10がモータの場合、前記停止Sが原因でモータが駆動したままの状態になることを防ぐことができる。その結果、前記停止Sが原因で、紙葉類搬送制御装置1を備えた機械(例えば自動券売機等)から紙葉類が出続けることを防ぐことができる。また、この機械を(例えばメンテナンス等のために)開けた者が、前記停止Sが原因で駆動したままの状態となったモータにより動いたままの状態となった可動部材(ローラ等)で指や手などを挟むことを防ぐことができる(安全な作業状態を確保できる)。
【0048】
(特徴2)
この紙葉類搬送制御装置1では、アクチュエータ制御回路31は、クロック信号23に基づいて動作している場合、動作検出回路36に動作信号32を出力する。また、動作信号32は状態が周期変化する信号である。ここで、クロック信号23に基づくアクチュエータ制御回路31の動作が停止(停止S)した場合に、アクチュエータ制御回路31から動作検出回路36に出力される信号の状態が保持される場合(「(A)の場合」という)、当該停止S後は当該信号の状態は変化しない(上述した駆動信号33と同様に、例えば「H」又は「L」の状態が保持される)。一方で、停止S前にアクチュエータ制御回路31から動作検出回路36に出力される動作信号32の状態は周期変化する。すなわち、動作検出回路36に入力される信号の状態は、停止Sの前(周期変化あり)と後(周期変化なし)とで異なる。したがって、上記(A)の場合でも、停止Sを動作検出回路36が確実に検出できる。
【0049】
(特徴3)
この紙葉類搬送制御装置1の「ゲート回路」は、アクチュエータ駆動回路21への出力42をハイインピーダンス状態「Hiz」に設定可能な3ステートバッファ41である。このように「ゲート回路」は、汎用部品で構成することができる。
【0050】
(特徴4)
この紙葉類搬送制御装置1では、レベル固定回路50は、アクチュエータ駆動回路21の駆動信号33用の入力端子21iと、所定の電圧(−V電圧(又は+V電圧))に設定された端子52(又は54)と、を電気的に接続するレベル固定抵抗51(又は53)を備える。このように、レベル固定回路50は、汎用部品で構成することができる。
【0051】
(変形例)
上記の実施形態は様々に変形できる。例えば、上記実施形態では1つのアクチュエータ制御回路31で1つのアクチュエータ10の駆動を制御する構成を説明したが、1以上のアクチュエータ制御回路31で2以上のアクチュエータの駆動を制御しても良い。例えば図1に示すように、1つのアクチュエータ制御回路31でアクチュエータ10及び110の駆動を制御する場合は、上記の実施形態の構成に加え、アクチュエータ駆動回路121と、3ステートバッファ141と、レベル固定回路150とを設ける。このとき、3ステートバッファ141に接続する動作検出回路は、3ステートバッファ41に接続した動作検出回路36と同一のものでも良く、別個のもの(図示なし)でも良い。
【0052】
また例えば、複数のアクチュエータ制御回路31で2以上のアクチュエータ10の駆動を制御しても良い。この場合、複数のアクチュエータ制御回路31に入力するクロック信号23は、1つのクロック22から出力しても、2以上のクロック22から出力しても良い。
【0053】
また例えば、上述した各構成要素の具体的な回路の構成は適宜変更しても良い。例えば、上記の説明では別個の構成要素として説明したものを1つの素子等にまとめても良く、1つの構成要素として説明したものを複数の回路や素子に分けても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 紙葉類搬送制御装置
10、110 アクチュエータ
21、121 アクチュエータ駆動回路
21i 入力端子
23、28 クロック信号
31 アクチュエータ制御回路
32 動作信号
33 駆動信号
36 動作検出回路
41、141 3ステートバッファ(ゲート回路)
42 アクチュエータ駆動回路への出力
50、150 レベル固定回路
51、53 レベル固定抵抗
52、54 端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の搬送に用いるアクチュエータと、
入力される駆動信号に応じて前記アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動回路と、
前記アクチュエータ駆動回路に接続されたレベル固定回路と、
前記駆動信号を出力するアクチュエータ制御回路と、
前記アクチュエータ制御回路の動作および停止を検出する動作検出回路と、
前記アクチュエータ制御回路と前記アクチュエータ駆動回路との間に設けられたゲート回路と、
を備え、
前記アクチュエータ制御回路は、クロック信号に基づいて動作可能であるとともに、当該クロック信号に基づく動作が停止した場合は前記駆動信号の出力を当該停止直前の状態に保持する回路であり、
前記ゲート回路は、前記クロック信号に基づく前記アクチュエータ制御回路の動作の停止を前記動作検出回路が検出した場合、前記アクチュエータ駆動回路への出力をハイインピーダンス状態または非接続状態とし、
前記レベル固定回路は、前記ゲート回路が前記アクチュエータ駆動回路への出力をハイインピーダンス状態または非接続状態とした場合、前記アクチュエータ駆動回路の前記駆動信号用の入力端子の電圧を、前記アクチュエータが駆動しない電圧に設定する、
紙葉類搬送制御装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ制御回路は、前記クロック信号に基づいて動作している場合、前記動作検出回路に動作信号を出力し、
前記動作信号は状態が周期変化する信号である、請求項1に記載の紙葉類搬送制御装置。
【請求項3】
前記ゲート回路は、前記アクチュエータ駆動回路への出力をハイインピーダンス状態に設定可能な3ステートバッファである、請求項1または2に記載の紙葉類搬送制御装置。
【請求項4】
前記レベル固定回路は、前記アクチュエータ駆動回路の前記駆動信号用の前記入力端子と、所定の電圧に設定された端子と、を電気的に接続するレベル固定抵抗を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙葉類搬送請求項著装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−222988(P2012−222988A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87530(P2011−87530)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】