説明

紙葉類識別装置

【課題】
それぞれ1箇所に備え付けた発光素子、受光素子にて、受光する角度、或いは照射する発光素子の角度によって色相、模様が変化するインクを有する紙葉類の真偽を判別する紙葉類識別装置を提供することにある。
【解決手段】
搬送路1上を搬送される紙葉類5の位置を検出する位置検出器10と、紙葉類5の表面を照射する発光素子2と、搬送路1上の搬送路方向に異なる地点1a、1bにおける、紙葉類5の表面からの反射光6、7を集光する集光器4と、集光器4により集光された反射光6、7を読み取る受光素子3と、位置情報と受光素子3により読み取られた反射光6、7に基づく受光データとの対応関係を表す受光情報、及び受光情報の基準となる受光情報基準データを記憶する記憶部11、12と、記憶部11、12に記憶された受光情報と、受光情報基準データとを比較する演算部8と、上記各部を制御する制御部9を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類識別装置に関し、特に反射光を受光する角度、或いは照射光を照射する角度によって色相、模様が変化する表面を有する紙葉類の真偽を判別するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の紙葉類識別装置として、小売店の店頭にて簡易的に紙幣の真贋を識別するための持ち運び可能な紙葉類識別装置や、金融機関のATM(Automated Tellers Machines)などに組み入れられた紙葉類識別装置が知られている。
これらの紙葉類識別装置では、反射光を受光する角度によって色相、模様が変化するホログラムやカラーシフトインクを有する紙葉類の真偽を判別するために、2個の受光素子を異なる位置に備え付ける構造とし、同一の対象点の反射光を異なる位置において、当該2個の受光素子で同時に受光する構造が採用されている。
また、照射光を照射する角度によって色相、模様が変化するホログラムやカラーシフトインクを有する紙葉類の真偽を判別する装置として、2個の発光素子を異なる位置に備え付ける構造とし、当該2個の発光素子を切り替えて照射することにより、異なる位置からの照射光に対する同一の対象点の反射光を受光する構造が採用されている。
従来技術としては、例えば、特開2006−146321(特許文献1)に示される紙葉類識別装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−146321
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された紙葉類識別装置においては、複数の受光素子を異なる位置に配置する、あるいは複数の発光素子を異なる位置に配置すると、紙葉類識別装置の小型化という顧客の要望に応えることができない。
本発明の目的は、照射光を照射する角度もしくは反射光を受光する角度によって色相、模様が変化する表面を有する紙葉類の真偽判別を実施可能な小型化された紙葉類識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
紙葉類を搬送する搬送路と、前記搬送路上を搬送される紙葉類の位置を検出する位置検出器と、搬送路上を搬送される紙葉類の表面を照射する発光部と、搬送路上の搬送路方向に異なる地点における、発光部による照射に基づく紙葉類の表面からの反射光を集光する集光部と集光部により集光された反射光を読み取る受光部と、位置情報と受光部により読み取られた反射光に基づく受光データとの対応関係を表す受光情報、及び受光情報の基準となる受光情報基準データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された受光情報と、受光情報基準データとを比較する演算部と、上記各部を制御する制御部を備えたことを特徴とする紙葉類識別装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、1箇所に備え付けた受光部と1箇所に備え付けた発光部にて、照射光を照射する角度もしくは反射光を受光する角度によって色相、模様が変化する表面を有する紙葉類を識別することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下の実施例1〜4では、照射光を照射する角度もしくは反射光を受光する角度によって色相、模様が変化する表面を有する紙葉類の一例として、カラーシフトインクを有する紙葉類を用いて説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、1つの発光素子からなる発光部と、1つの受光素子からなる受光部により、照射光を照射する角度もしくは反射光を受光する角度によって色相、模様が変化するカラーシフトインクを有する紙葉類を判別する紙葉類識別装置の検出部の構成を示した図である。以下、図1〜図3に従い、この検出部を備える紙葉類識別装置について説明する。
【0009】
図1に示す紙葉類識別装置の検出部は、紙葉類5を搬送する搬送路1と、搬送路1上を搬送される紙葉類5に照射光を照射する発光素子2と、照射光に対する紙葉類の反射光の経路を変更、調整し、集光する集光部である集光器4(例えば、プリズム、鏡など)と、集光器4により集光された経路の異なる反射光6、7を受光する受光素子3を備える。
【0010】
発光素子2は、紙葉類の搬送方向に異なる2箇所の搬送路上の位置である対象点1a、1bの両方を含む範囲を同時に照射する。集光器4は、発光素子2により照射光を照射される対象点1a、1bからの反射光6、7を集光する。受光素子3は、集光器4により集光された2箇所の対象点1aと対象点1bとの両方の位置からの反射光を加算した光を受光する。紙葉類5は、搬送路1上を対象点1aから対象点1bの矢印18の方向、もしくはその逆の対象点1bから対象点1aの方向に移動する。以降の説明では、矢印18の方向に移動するものとして説明する。
【0011】
図2は、図1で示した検出部を備える紙葉類識別装置の回路ブロック図である。以下、各部について説明する。
【0012】
位置検出器10は、図4には示されていないセンサ等により、搬送路1上を搬送される紙葉類5の位置である位置情報を検出する。記憶部11は、位置検出器10により検出された紙葉類の位置情報と、受光素子3により受光された反射光の受光データ(光量)を記憶、保存する。記憶部12は、事前に取得した真正な紙葉類の位置情報と受光データを、受光情報基準データとして、記憶、保存しておく。演算部8は、紙葉類が対象点1a、対象点1bを通過後、記憶部11により記憶された受光データ、位置情報と、記憶部12に記憶されている受光情報基準データとを比較演算処理する。制御部9は、紙葉類の真偽を識別するためにこれらの部位を制御する。
【0013】
図3は、図2の記憶部12に保存され、受光情報基準データとなる真正な紙葉類の位置情報、受光データを表す波形13a〜13cと、記憶部11に記憶され、真偽識別の対象となる紙葉類の位置情報、受光データを表す波形14a〜14cとを示す。なお、波形14a〜14cは、真偽識別の対象として、偽造された紙葉類を識別した場合の波形を示している。
【0014】
最初に、記憶部12に保存される真正な紙葉類の位置情報と受光データの関係を表す受光情報の一例である波形13a〜13cについて、図1〜図3を用いて説明する。
【0015】
波形13aは、紙葉類5が対象点1aを通過する際に、位置検出器10により検出された位置情報(横軸)に対する、受光素子3により受光された紙葉類5からの反射光6に基づく受光データ(縦軸)である。
【0016】
波形13bは、紙葉類が対象点1bを通過する際に、位置検出器10により検出された位置情報(横軸)に対する、受光素子3により受光された紙葉類5の反射光7に基づく受光データ(縦軸)である。波形13bは、対象点1aと対象点1bの距離分だけ波形13aよりも遅れた波形となる。また、カラーシフトインクを有する紙葉類(真正な紙葉類)は、そのインクを有する部分(13dと13e)にて、波形13aと波形13bとが異なる波形となる。
【0017】
ただし、受光素子3は、対象点1a、1bからの反射光をそれぞれ個別の波形として波形13a、波形13bのように読み取ることはできない。すなわち、対象点1a、1bからの反射光は、集光器4により集光され、波形13cのように、波形13aと波形13bとが加算された波形として、受光素子3により受光される。
【0018】
このようにして取得された真正な紙葉類の波形13c(位置情報と受光データ)は、受光情報基準データとして、事前に記憶部12に保存される。
【0019】
次に、真偽識別の対象となる紙葉類の位置情報と受光データの関係を表す受光情報である波形14a〜14cについて説明する。真偽識別の対象となる紙葉類の受光情報は、記憶部11に記憶される。なお、本実施例の波形14a〜14cは、偽造された紙葉類の波形を表す。
【0020】
波形14aは、紙葉類が対象点1aを通過する際に、位置検出器10により検出された位置情報(横軸)に対する、受光素子3により受光された紙葉類からの反射光に基づく受光データ(縦軸)である。
【0021】
波形14bは、紙葉類が対象点1bを通過する際に、位置検出器10により検出された位置情報(横軸)に対する、受光素子3により受光された紙葉類からの反射光に基づく受光データ(縦軸)である。
【0022】
波形14aと波形14bは、カラーシフトインクを有していない偽造された紙葉類の波形であり、真正な紙葉類の波形13aと波形13bとは異なり、対象点1aの反射光6に基づく受光データと、対象点1bの反射光7に基づく受光データとで、カラーシフトインクを有する部分(14dと14e)による差異は生じない。
【0023】
ただし、上述したように、対象点1a、1bからの反射光は、集光器4により集光され、波形14cのように、波形14aと波形14bとが加算された波形として、受光素子3により受光される。
【0024】
このようにして読み取られた偽造された紙葉類の波形14c(位置情報と受光データ)は、記憶部11に保存される。
【0025】
波形15は、搬送路1上を搬送される紙葉類が対象点1a、対象点1bを通過後、演算部8により、記憶部11に記憶された波形14cと、記憶部12に記憶されている受光情報基準データ(波形13c)との比較演算の結果を示す。本実施例では比較演算の方法として、波形13cと波形14cの差分をとる方法を用いている。
【0026】
波形15の場合、カラーシフトインクを有する部分に波形(ピーク)15aが生じている。このため、演算部8は、真偽識別の対象となった紙葉類がカラーシフトインクを有する部分にピークが生じない紙葉類、すなわち、カラーシフトインクを使用していない偽造された紙葉類であると判断する。
【0027】
なお、演算部8は、カラーシフトインクを有する部分に波形(ピーク)が生じていない場合は、真正な紙葉類であると判断する。
【0028】
本実施例では、1つの発光素子、1つの受光素子及び1つの集光器4により、照射光を照射する角度もしくは反射光を受光する角度によって色相、模様が変化するカラーシフトインクを有する紙葉類を判別する紙葉類識別装置を説明した。実施形態を利用することにより、低コストで小型化可能な紙葉類識別装置の提供が可能となる。
【実施例2】
【0029】
図4は、複数(本実施例では2つ)の発光素子からなる発光部と1つの受光素子からなる受光部により、カラーシフトインクを有する紙葉類を判別する紙葉類識別装置の検出部の構成を示した図である。以下、図4〜図6に従い、この検出部を備える紙葉類識別装置について説明する。
なお、以下では実施例1と異なる動作をする部位を中心に説明する。
【0030】
図4に示す紙葉類識別装置の検出部は、紙葉類5を搬送する搬送路1と、搬送路1上を搬送される紙葉類5に照射光を別々に照射する2つの発光素子2a、2bと、照射光に対する紙葉類の反射光6、7の経路を変更、調整し、集光する集光部である集光器4(例えば、プリズム、鏡など)と、集光器4により集光された経路の異なる反射光6、7を受光する受光素子3とを備える。
【0031】
発光素子2aは、対象点1aを含むが対象点1bを含まない範囲を対象として照射し、発光素子2bは、対象点1aは含まないが1bを含む範囲を対象として照射する。発光素子2aは対象点1aを、発光素子2bは対象点2bを、時分割で交互に照射する。集光器4は、発光素子2aの照射光に基づく対象点1aからの反射光6、および発光素子2bの照射光に基づく対象点1bからの反射光7を別々に集光する。受光素子3は、集光器4により集光された発光素子2aの照射光に基づく反射光6と発光素子2bの照射光に基づく反射光7を別々に受光する。
【0032】
すなわち、実施例1では、発光素子2から照射される照射光に対する対象点1a、1bからの反射光6、7は、加算された受光データとして受光素子3により受光されたが、本実施例では、発光素子2a、2bにより交互に照射光を照射された対象点1a、1bからの反射光6、7は、時分割で交互に集光、受光され、受光データとして、別々に分離されて記憶部11a、11bに記憶される。
【0033】
図5は、図4で示した検出部を備える紙葉類識別装置の回路ブロック図である。以下、各部について説明する。
【0034】
発光素子2aは対象点1aを、発光素子2bは対象点1bを、制御部9により制御されることにより、時分割で交互に照射する。受光素子3は、発光素子2aの照射光に基づく対象点1aの反射光6と、発光素子2bの照射光に基づく対象点1bの反射光7とを、別々に読み取るため、制御部9により制御され、発光素子2a、2bの照射周期にあわせて、反射光の読み取りを行う。受光素子3は、実施例1における反射光の読み取り周期の2分の1の読み取り周期で、反射光6、7を読み取る。受光素子3により読み取られた反射光の受光データは、位置検出器10により検出された紙葉類の位置情報とともに、記憶部11a、11bに記憶される。具体的には、制御部9により、発光素子2aに対象点1aを照射させているときの受光データを、位置情報とともに記憶部11aに記憶させ、発光素子2bに対象点1bを照射させているときの受光データを、位置情報とともに記憶部11bに記憶させる。
【0035】
搬送路1上を搬送される紙葉類が対象点1a、対象点1bを通過後、演算部8は、記憶部11aにより記憶された受光データおよび位置情報と、記憶部11bに記憶された受光データおよび位置情報とを比較演算処理し、カラーシフトインクを有する部分を抽出する。
【0036】
図6は、図4の記憶部11a、11bに記憶された真正な紙葉類の位置情報、受光データを表す波形16a〜16b、その比較演算結果である波形16cと、記憶部11a、11bに記憶され偽造された紙葉類の位置情報、受光データを表す波形17a〜17b、その比較演算結果である波形17cとを示す。
【0037】
最初に、真正な紙葉類の位置情報と受光データの関係を表す受光情報の一例である波形16a〜16cについて説明する。
【0038】
波形16aは、真正な紙葉類が対象点1aを通過する際に、位置検出器10により検出された位置情報(横軸)に対する、受光素子3により受光された紙葉類からの反射光に基づく受光データ(縦軸)である。
【0039】
波形16bは、紙葉類が対象点1bを通過する際に、位置検出器10により検出された位置情報(横軸)に対する、受光素子3により受光された紙葉類からの反射光に基づく受光データ(縦軸)である。波形16bは、対象点1aと対象点1bの距離分だけ波形16aよりも遅れた波形となる。また、カラーシフトインクを有する紙葉類(真正な紙葉類)は、そのインクを有する部分(16d)にて、波形16aと波形16bとが異なる波形となる。
【0040】
ここで、上述したように、発光素子2aは対象点1aを、発光素子2bは対象点1bを、時分割で交互に照射する。波形16aと波形16bは、発光素子2aに照射された照射光に対する対象点1aからの反射光6と、発光素子2bにより照射された照射光に対する対象点1bからの反射光7とを、発光素子2a、2bの発光周期にあわせて、受光素子3が時分割で交互に読み取った波形である。
【0041】
波形16aは、記憶部11aに記憶され、波形16bは記憶部11bに記憶される。記憶部11bに記憶された波形16bは、対象点1aと対象点1bの距離分だけ記憶部11aに記憶された波形16aよりも遅れた波形となる。
【0042】
搬送路1上を搬送される紙葉類が対象点1a、対象点1bを通過後、演算部8は、波形16aと波形16bとのいずれかを対象点1aと対象点1bとの距離分だけ、波形16aと波形16bとを一致させる方向にシフトさせ、2つの波形を比較演算し、カラーシフトインクを有する部分のピーク(16e)を抽出する。
【0043】
演算部8は、このピーク16eが一定の閾値を超えている場合に、カラーシフトインクを有する真正な紙葉類と判断する。
【0044】
次に、偽造された紙葉類の位置情報と受光データに関する波形17a〜17cについて説明する。
【0045】
波形17aは、偽造された紙葉類が対象点1aを通過する際に、位置検出器10により検出された位置情報(横軸)に対する、受光素子3により受光された紙葉類からの反射光に基づく受光データ(縦軸)である。
【0046】
波形17bは、紙葉類が対象点1bを通過する際に、位置検出器10により検出された位置情報(横軸)に対する、受光素子3により受光された紙葉類からの反射光に基づく受光データ(縦軸)である。波形16bは、対象点1aと対象点1bの距離分だけ波形17aよりも遅れた波形となる。
【0047】
波形17aと波形17bは、カラーシフトインクを有していない偽造された紙葉類の波形である。このため、波形17aと波形17bにおいては、真正な紙葉類の波形16aと波形16bとは異なり、カラーシフトインクを有する部分(17d)による差異は生じない。
【0048】
ここで、上述したように、発光素子2aは対象点1aを、発光素子2bは対象点1bを、時分割で交互に照射する。波形17aと波形17bは、発光素子2aの照射光に基づく対象点1aからの反射光6と、発光素子2bの照射光に基づく対象点1bからの反射光7とを、発光素子2a、2bの発光周期にあわせて、受光素子3が時分割で交互に読み取った波形である。波形17aは、記憶部11aに記憶され、波形17bは記憶部11bに記憶される。記憶部11bに記憶された波形17bは、対象点1aと対象点1bの距離分だけ記憶部11aに記憶された波形17aよりも遅れた波形となる。
【0049】
搬送路1上を搬送される紙葉類が対象点1a、対象点1bを通過後、演算部8は、波形17aと波形17bとのいずれかを対象点1aと対象点1bとの距離分だけ、波形17aと波形17bとを一致させる方向にシフトさせ、2つの波形を比較演算する。ここで、波形17aと波形17bは、偽造された紙葉類の波形であるため、カラーシフトインクを有する部分に波形(ピーク)17eは抽出されない。
【0050】
演算部8は、ピーク17eが一定の閾値を超えていない場合に、カラーシフトインクを有しない偽造された紙葉類と判断する。
【0051】
本実施例では、同じ位置に設置された複数の発光素子と1つの受光素子により、カラーシフトインクを有する紙葉類を判別する紙葉類識別装置を説明した。本実施形態を利用することにより、紙葉類の姿勢、態様に応じた多種多様な発光制御が可能となり、より多種類の紙葉類の判別することができる小型化可能な紙葉類識別装置を提供することができる。
【実施例3】
【0052】
図7は、1つの発光素子からなる発光部と複数(本実施例では2つ)の受光面を有する受光素子からなる受光部により、カラーシフトインクを有する紙葉類を判別する紙葉類識別装置の検出部の構成を示した図である。以下、図7、図8に従い、この検出部を備える紙葉類識別装置について説明する。なお、以下では実施例1と異なる動作をする部位を中心に説明する。
【0053】
図7に示す紙葉類識別装置の検出部は、紙葉類5を搬送する搬送路1と、搬送路1上を搬送される紙葉類5に照射光を照射する発光素子2と、照射光に対する紙葉類の反射光の経路を変更、調整し、集光する集光部である集光器4(例えば、プリズム、鏡など)と、集光器4により集光された経路の異なる反射光6、7を別々に受光する受光面3a、3bを有する受光素子3を備える。
【0054】
発光素子2は、紙葉類の搬送方向に異なる2箇所の対象点1a、1bの両方を同時に照射する。集光器4は、発光素子2の照射光に基づく対象点1aからの反射光6を受光面3aに導き、対象点1bからの反射光7を受光面3bに導く。受光素子3の受光面3a、3bは、集光器4により集光された反射光6と反射光7を、それぞれを独立した受光データとして受光する。
【0055】
すなわち、本実施例では、発光素子2による照射光を照射された対象点1a、1bからの反射光6、7は、集光器4によりそれぞれ集光された後、受光面3a、3bにより、時分割にて交互に受光され、受光データとして、別々に分離されて記憶部11a、11bに記憶される。
【0056】
図8は、図7で示した検出部を備える紙葉類識別装置の回路ブロック図である。以下、各部について説明する。
【0057】
受光素子3の2つの受光面3a、3bは、制御部9の制御により、発光素子2の照射光に基づく対象点1aからの反射光6と、対象点1bからの反射光7とを、実施例1における反射光の読み取り周期の2分の1の周期で、時分割による方法で交互に受光する。それぞれの受光面で受光した反射光6、7を受光素子3は交互に読み取る。
【0058】
受光素子3の受光面3aにより受光された反射光6の受光データと、位置検出器10により検出された位置情報は、記憶部11aに記憶され、受光面3bにより受光された反射光7の受光データと、位置検出器10により検出された位置情報は、記憶部11bに記憶される。
【0059】
受光データ、位置情報が、記憶部11a、11bに記憶された後の、紙葉類の真偽識別方法は、実施例2と同様であるので、以下簡単に述べる。
【0060】
搬送路1上を搬送される紙葉類が対象点1a、対象点1bを通過後、演算部8は、記憶部11aに記憶された波形と、記憶部11bに記憶された波形とを一致するようにシフトさせ、2つの波形を比較演算する。偽造された紙葉類の場合は、カラーシフトインクを有する部分に波形(ピーク)は抽出されないが、真正な紙葉類の場合は、カラーシフトインクを有する部分に波形(ピーク)が抽出される。
【0061】
演算部8は、ピーク17eが一定の閾値を超えているか否かにより、真正な紙葉類と偽造された紙葉類を判別する。
【0062】
本実施例では、1つの発光素子と複数の受光面を有する受光素子により、カラーシフトインクを有する紙葉類を判別する紙葉類識別装置を説明した。本実施形態を利用することにより、受光素子を増やすことなく、より多種類の紙葉類の判別することができる小型化が可能な紙葉類識別装置を提供することができる。
【実施例4】
【0063】
図9は、実施例1の発光素子2、受光素子3及び集光器4を、それぞれ搬送路1上の紙葉類の搬送方向に対して垂直方向に水平に複数備えた発光部19、受光部20及び集光部21からなる実施形態を示す斜視図である。発光部19、受光部20及び集光部21の長さは、搬送路1上を搬送される紙葉類の搬送方向に対する垂直方向の幅と略同一である。
【0064】
発光部19は、紙葉類の搬送方向に異なる2箇所の対象ライン1a、1bの両方を同時に照射し、集光部21は、発光部19により照射光を照射される対象ライン1a、1bからの反射光を集光し、受光部20は、集光部21により集光された2箇所の対象ライン1aと対象ライン1bとの両方の位置からの反射光を加算した光を受光する。なお、その他の構成、紙葉類の真偽判別方法は実施例1と同様である。
【0065】
本実施例では実施例1に基づき説明をしたが、実施例2、3についても、同様の形態による実施が可能である。
【0066】
本実施形態を利用することにより、カラーシフトインクが紙葉類の搬送方向に対して垂直方向に広く利用されている場合や、紙葉類の全面に利用されている場合などにも利用できる紙葉類識別装置を提供することが可能となる。
【0067】
上記実施例1〜4では、照射光を照射する角度もしくは反射光を受光する角度によって色相、模様が変化する表面の一例として紙葉類に利用されるカラーシフトインクを具体例として挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。
【0068】
また、記憶部11、12、11a、11bを異なる記憶装置として説明したが、1つの記憶装置に複数の記憶エリアを有する構成でも良い。
【0069】
また、搬送路1上を紙葉類が搬送されるとしたが、この場合の搬送は、自動的に紙葉類を搬送する場合のみならず、手動で紙葉類をスライドし、検知部を通過するような形態も含む。
【0070】
以上のように、本発明は、搬送方向に対して1つの位置に配置された発光素子、搬送方向に対して1つの位置に配置された受光素子により、照射光を照射する角度もしくは反射光を受光する角度によって色相、模様が変化する表面を有する紙葉類を識別することが可能であれば、実施例1〜4に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】紙葉類識別装置の検出部の構成図(実施例1)
【図2】実施例1の回路ブロック図
【図3】実施例1の受光データと比較演算処理。
【図4】紙葉類識別装置の検出部の構成図(実施例2)
【図5】実施例2の回路ブロック図
【図6】実施例2の受光データと比較演算処理。
【図7】紙葉類識別装置の検出部の構成図(実施例3)
【図8】実施例3の回路ブロック図
【図9】紙葉類識別装置の検出部の構成図(実施例4)
【符号の説明】
【0072】
1…搬送路、1a、1b…対象点、2、2a、2b…発光素子、3…受光素子、3a、3b…受光素子内の受光面、4…集光器、5…紙葉類、6…1aからの反射光、7…1bからの反射光、8…演算部9…制御部10…位置検出器、11、11a、11b、12…記憶部、13a、13b…受光データの説明用波形、13c…受光データの波形、14a、14b…受光データの説明用波形、14c…受光データの波形、15…比較演算処理の結果、16a、16b…受光データ(真正な紙葉類)、16c…比較演算処理の結果(真正な紙葉類)、17a、17b…受光データ(偽造された紙葉類)、17c…比較演算処理の結果(偽造された紙葉類)、18…紙葉類の搬送方向、19…紙葉類の幅長さに略同一である発光部、20…紙葉類の幅長さに略同一である受光部、21…紙葉類の幅長さに略同一である集光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送する搬送路と、
前記搬送路上を搬送される紙葉類の位置を検出する位置検出部と、
前記搬送路上を搬送される紙葉類の表面を照射する発光部と、
前記搬送路上の搬送路方向に異なる地点における、前記発光部による照射に基づく紙葉類の表面からの反射光を集光する集光部と、
前記集光部により集光された反射光を読み取る受光部と、
前記位置情報と前記受光部により読み取られた前記反射光に基づく受光データとの対応関係を表す受光情報、及び前記受光情報の基準となる受光情報基準データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された受光情報と前記受光情報基準データとを比較する演算部と、
前記各部を制御する制御部を備えたことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
請求項1の紙葉類識別装置であって、
前記発光部、前記集光部、及び前記受光部は、前記搬送路の搬送方向に対してそれぞれ1地点に配置することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紙葉類識別装置であって、
前記発光部は、少なくとも第一の発光素子と第二の発光素子とを備え、
前記異なる地点は、少なくとも第一の地点と第二の地点とを含み、
前記第一の発光素子は、前記第一の地点を含み、かつ、前記第二の地点を含まない範囲を照射し、
前記第二の発光素子は、前記第一の地点を含まず、かつ、前記第二の地点を含む範囲を照射することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項4】
請求項3に記載の紙葉類識別装置であって、
前記制御部は、
前記第一の発光素子と前記第二の発光素子とを時分割で照射させるように制御し、
前記受光部を、前記第一の発光素子による前記第一の地点における紙葉類からの反射光と、前記第二の発光素子による前記第二の地点における紙葉類からの反射光とを、前記第一の発光素子と前記第二の発光素子との照射に応じて別々に読み取るように制御し、
前記記憶部は、
前記位置情報と前記受光部により読み取られた前記第一の地点における反射光に基づく受光データとの対応関係を表す受光情報を前記受光情報基準データとして記憶し、前記位置情報と前記受光部に読み取られた前記第二の地点における反射光に基づく受光データとの対応関係を表す受光情報を記憶することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の紙葉類識別装置であって、
前記受光部は少なくとも2つの独立した受光面を有し、
前記集光部及び前記受光部は、前記受光部の受光面が、前記異なる地点のうち少なくとも第一の地点からの反射光と第二の地点からの反射光とを異なる受光面で受光するように配設したことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項6】
請求項5に記載の紙葉類識別装置であって、
前記制御部は、前記2以上の受光部に、前記第一の地点における紙葉類からの反射光と、前記第二の地点における紙葉類からの反射光とを時分割で読み取るように制御し、
前記記憶部は、
前記位置情報と前記受光部により読み取られた前記第一の地点における反射光に基づく受光データとの対応関係を表す受光情報を前記受光情報基準データとして記憶し、前記位置情報と前記受光部に読み取られた前記第二の地点における反射光に基づく受光データとの対応関係を表す受光情報を記憶することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載の紙葉類識別装置であって、
前記発光部、前記受光部及び前記集光部を前記搬送路の搬送方向に対して垂直方向に複数設けることを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項8】
請求項7に記載の紙葉類識別装置であって、
前記発光部、前記受光部及び前記集光部の前記搬送路の搬送方向に対して垂直方向の長さは、前記搬送路上を搬送される紙葉類の搬送方向に対して垂直方向の長さに略同一であることを特徴とする紙葉類識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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