説明

紙葉類鑑別装置

【課題】偽造防止策のための真の蛍光インクと同様の蛍光特性を有する蛍光インクを用いて偽造防止策が模倣された場合であっても、紙葉類の真偽を的確に判別できること。
【解決手段】本発明にかかる紙葉類鑑別装置1は、紙葉類Mの検査領域に付着した蛍光インクに紫外線を照射するUV照射部5と、前記紫外線によって前記蛍光インクから発生した蛍光を受光し、前記蛍光を光電変換してUV蛍光信号S1を生成する受光部8と、制御部14とを有する。制御部14は、UV蛍光信号S1をデジタル化したUV蛍光信号S2もとに蛍光粒子を検出する画像処理部14aと、検出した蛍光粒子の特徴を抽出する特徴抽出部14bと、抽出した蛍光粒子の特徴をもとに紙葉類Mの真偽を判別する真偽判別部14cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、株券、有価証券、通行券、商品券、カード等の貴重印刷物(以下、紙葉類と称する)の真偽を鑑別する紙葉類鑑別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙葉類は、その性質上、偽造および改竄の防止が要求される。この紙葉類の偽造および改竄の防止策(以下、単に偽造防止策と称する場合がある)として、例えば、紫外線の照射時に蛍光を発生する蛍光インクが紙葉類に印刷される。この紙葉類の偽造防止策に用いられる蛍光インクは、通常、可視光線の下において視認が困難であり、紫外線が照射されることによって顕在化する。かかる蛍光インクを用いた紙葉類の偽造および改竄の防止技術として、可視光線以外の励起光を照射した際に可視光線を発光する1種または2種以上の蛍光インクを用いて画像が印刷されるとともに、この画像の印刷領域内に蛍光インクが印刷されていない部分を設けた蛍光印刷物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような蛍光印刷物の印刷領域に励起光照射した場合、この印刷領域内の画像が蛍光インクの発光によって顕在化し、且つ、この印刷領域内の蛍光インクが印刷されていない部分が黒色に見える。
【0003】
このような蛍光インクを用いて偽造防止策が施された紙葉類(すなわち真の紙葉類)と偽の紙葉類とを識別し、かかる紙葉類の真偽を鑑別する紙葉類鑑別装置が提案されている。この紙葉類鑑別装置は、鑑別対象の紙葉類に対して紫外線を照射し、この紫外線の照射に起因する蛍光を紙葉類から検出した場合、この蛍光の検出結果をもとに、この紙葉類の真偽を判別する。例えば、この鑑別対象の紙葉類が本物(真の紙葉類)である場合、紙葉類鑑別装置は、この鑑別対象の紙葉類に印刷された真の蛍光インク(すなわち紙葉類の偽造および改竄を防止するための蛍光インク)に紫外線を照射し、この紫外線によって真の蛍光インクから発生した蛍光を検出する。紙葉類鑑別装置は、このように鑑別対象の紙葉類から紫外線による蛍光を検出した場合に、この鑑別対象の紙葉類を真の紙葉類と判別する。一方、この鑑別対象の紙葉類が偽の紙葉類(偽造または改竄された紙葉類)である場合、紙葉類鑑別装置は、この鑑別対象の紙葉類に真の蛍光インクが印刷されていないため、この鑑別対象の紙葉類から紫外線による蛍光を検出できない。この場合、紙葉類鑑別装置は、この鑑別対象の紙葉類を偽の紙葉類と判別する。
【0004】
しかし、偽造または改竄された偽の紙葉類には、一般に市販されているマーキングペン(蛍光ペン)またはインクジェットプリンタ用の半透明な蛍光インクが上述した真の蛍光インクに似せて印刷される虞がある。このように真の蛍光インクを模倣した偽の蛍光インクが印刷された偽の紙葉類を鑑別する場合、上述した紙葉類鑑別装置では、紫外線の照射によって偽の蛍光インクから発生した蛍光を検出した場合に、この偽の紙葉類を真の紙葉類と誤判別するという問題点があった。
【0005】
このような問題点を解消した紙葉類鑑別装置として、上述した真の蛍光インクと偽の蛍光インク(例えば蛍光ペン等)との間に蛍光波長の差異があることを利用し、鑑別対象の紙葉類に対して紫外線を照射した際に蛍光インクから発生した蛍光の波長帯域と受光強度との関係をもとに、この鑑別対象の紙葉類の真偽を判別するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−287034号公報
【特許文献2】特開2002−109598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、偽造または改竄された偽の紙葉類に蛍光インクを付着して上述した偽造防止策を模倣する方法として、蛍光ペンによる手書きまたはインクジェットプリンタによる印刷等が想定される。なお、一般に市販されている蛍光ペンまたはインクジェットプリンタ用の蛍光インクの蛍光特性(蛍光色、蛍光強度等)は多種多様である。このため、蛍光ペンの蛍光インクを含む市販の蛍光インクの中には、紙葉類の偽造防止策のための真の蛍光インクと同様の蛍光特性を有するものが存在する可能性が高い。すなわち、かかる真の蛍光インクと同様の蛍光特性を有する市販の蛍光インクを用いて上述した偽造防止策が模倣される虞がある。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2に記載された従来の紙葉類鑑別装置は、紫外線の照射による蛍光インクの蛍光波長と蛍光強度との関係(すなわち蛍光特性)をもとに紙葉類の真偽を判別する。このため、かかる従来の紙葉類鑑別装置は、偽造防止策のための真の蛍光インクと同様の蛍光特性を有する蛍光インク(すなわち偽造防止策を模倣する偽の蛍光インク)が偽の紙葉類に付着された場合、紙葉類の真偽を的確に判別することが困難になり、かかる偽の蛍光インクによって偽造防止策が模倣された偽の紙葉類を排除することが困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、偽造防止策のための真の蛍光インクと同様の蛍光特性を有する蛍光インクを用いて偽造防止策が模倣された場合であっても、紙葉類の真偽を的確に判別できる紙葉類鑑別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる紙葉類鑑別装置は、紙葉類の所定領域に付着した蛍光インクに紫外線を照射する紫外線照射手段と、前記紫外線によって前記蛍光インクから発生した蛍光を受光し、前記蛍光を光電変換して蛍光信号を生成する受光手段と、前記蛍光信号をもとに、前記蛍光を発生した蛍光粒子を検出する検出手段と、真の蛍光インクと該真の蛍光インクを模倣する偽の蛍光インクとの間で異なる前記蛍光粒子の特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記蛍光粒子の特徴をもとに前記紙葉類の真偽を判別する判別手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記受光手段は、前記真の蛍光インクの蛍光粒子に比して小さく且つ前記偽の蛍光インクの蛍光粒子に比して大きいサイズの画素を有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記検出手段は、前記蛍光信号をもとに前記紙葉類の所定領域の画像データを生成し、該画像データの画素によって形成される前記蛍光粒子を検出し、前記特徴抽出手段は、前記検出手段によって検出された前記蛍光粒子の特徴である幾何学的なパラメータを抽出し、前記判別手段は、前記幾何学的なパラメータをもとに前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記判別手段は、前記幾何学的なパラメータを用いて区分されるグループ毎に前記蛍光粒子を分類し、該グループ毎に蛍光粒子の数量を計数する計数処理を行い、該計数処理の結果をもとに前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする。
【0014】
また、請求項5にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記検出手段は、前記蛍光信号をもとに前記紙葉類の所定領域の一次元的なスキャンデータを生成し、該スキャンデータをもとに前記蛍光粒子を検出し、前記特徴抽出手段は、前記検出手段によって検出された前記蛍光粒子の特徴である前記スキャンデータの信号パターンを抽出し、前記判別手段は、前記スキャンデータの信号パターンをもとに前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする。
【0015】
また、請求項6にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記判別手段は、前記スキャンデータの信号パターンに含まれるハイレベル信号の連続出力回数と、ローレベル信号の連続出力回数と、前記ハイレベル信号または前記ローレベル信号の総出力回数とをもとに、前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする。
【0016】
また、請求項7にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記紫外線の照射領域内の前記蛍光インクに可視光線を照射する可視光線照射手段をさらに備え、前記紫外線照射手段および前記可視光線照射手段は、前記蛍光インクに対して紫外線および可視光線をそれぞれ交互に照射し、前記受光手段は、前記可視光線によって前記蛍光インクから発生した可視蛍光を受光し、該可視蛍光を光電変換して可視蛍光信号をさらに生成し、前記判別手段は、前記可視蛍光信号をもとに前記可視蛍光の有無を判定し、前記可視蛍光が発生した旨を判定した場合、前記紙葉類が偽であると判別することを特徴とする。
【0017】
また、請求項8にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記可視光線照射手段は、前記紫外線の波長帯域と前記蛍光の波長帯域との間の波長帯域の前記可視光線を照射することを特徴とする。
【0018】
また、請求項9にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記紫外線の照射領域内を通過する搬送路に沿って前記紙葉類を搬送する搬送手段と、前記紫外線の照射領域内であって前記搬送路と前記受光手段との間に設けた透明板と、前記搬送路に対向する前記透明板の表面に焦点を形成し、該焦点の位置からの少なくとも前記蛍光を前記受光手段に集光する光学系と、前記透明板の表面に形成された前記焦点の位置に前記紙葉類を搬送可能に押し付ける押付けローラと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項10にかかる紙葉類鑑別装置は、上記の発明において、前記紫外線の照射領域内を通過する搬送路に沿って前記紙葉類を搬送する搬送手段と、前記紫外線の照射領域内であって前記搬送路を斜めに横断する斜線に沿ってライン状焦点を形成し、該ライン状焦点に含まれる焦点位置からの少なくとも前記蛍光を前記受光手段に集光する光学系と、を備え、前記搬送手段は、前記ライン状焦点と前記紙葉類の所定領域とが交差するように前記紙葉類を搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる紙葉類鑑別装置によれば、紙葉類の偽造防止策に用いられる真の蛍光インクと偽造防止策を模倣する偽の蛍光インクとの間で明確に異なる蛍光粒子の特徴をもとに、鑑別対象の紙葉類の真偽を判別することができる。この結果、かかる真の蛍光インクと略同様の蛍光特性(蛍光波長、蛍光強度等)を有する偽の蛍光インクが紙葉類に用いられた場合であっても、紙葉類の真偽を的確に判別することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明にかかる紙葉類鑑別装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、この実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置1は、鑑別対象の紙葉類Mを搬送する搬送部2と、搬送部2の入力端に挿入された紙葉類Mを検知する紙葉類検知センサ3と、紙葉類Mに付着した蛍光インクに紫外線を照射して蛍光インクからの蛍光を検出し、この紫外線による蛍光を光電変換してUV蛍光信号を生成する蛍光検出部4とを有する。また、紙葉類鑑別装置1は、蛍光検出部4によって生成されたUV蛍光信号を増幅する増幅部9と、増幅部9によって増幅されたUV蛍光信号をデジタル信号に変換するA/D変換部10とを有する。さらに、紙葉類鑑別装置1は、各種閾値および紙葉類Mの真偽判別処理に用いる判別基準データを入力する入力部11と、入力部11によって入力された各種閾値および判別基準データ等を保存する記憶部12と、紙葉類Mの真偽判別結果を出力する出力部13と、紙葉類鑑別装置1の各構成部を制御するとともに紙葉類Mの真偽判別処理を行う制御部14とを有する。
【0023】
搬送部2は、蛍光検出部4の紫外線照射領域内を通過する搬送路2aに沿って鑑別対象の紙葉類Mを搬送する。具体的には、搬送部2は、かかる紙葉類Mの搬送路2aを形成するガイド部材2bと、ガイド部材2bによって案内される搬送路2aに沿って紙葉類Mを搬送する搬送ローラ2cと、搬送ローラ2cを駆動する駆動部2dとを有する。
【0024】
ガイド部材2bは、蛍光検出部4の紫外線照射領域内(すなわち、後述するUV照射部5によって照射される紫外線の照射領域内)を通過するように紙葉類Mの搬送路2aを形成し、かかる搬送路2aに沿って紙葉類Mを案内する。搬送ローラ2cは、ガイド部材2bによって形成された搬送路2aに沿って所定の搬送方向(図1を参照)に紙葉類Mを搬送する。この場合、搬送ローラ2cは、駆動部2dの駆動に基づいて、ガイド部材2bの入力端から挿入された紙葉類Mを蛍光検出部4の紫外線照射領域内を通過するように搬送し、その後、ガイド部材2bの出力端から紙葉類Mを搬出する。駆動部2dは、制御部14の制御に基づいて、かかる搬送ローラ2cを駆動する。
【0025】
紙葉類検知センサ3は、例えば赤外線の発光部と受光部とを用いて実現され、ガイド部材2bの入力端から搬送路2a内に挿入された紙葉類Mを検知する。具体的には、紙葉類検知センサ3は、ガイド部材2bの入力端近傍に配置され、制御部14の制御に基づいて所定の照射領域内に赤外線を照射し、この赤外線の照射領域内に侵入した紙葉類Mを検知する。この場合、紙葉類検知センサ3は、紙葉類Mを検知した旨を示す検知結果信号を制御部14に送信する。
【0026】
蛍光検出部4は、紙葉類Mに予め付着させた蛍光インクに紫外線を照射し、この紫外線によって蛍光インクから発生した蛍光を検出する。具体的には、蛍光検出部4は、搬送路2a内を搬送する紙葉類Mに紫外線を照射するUV照射部5と、この紫外線の照射によって紙葉類Mの蛍光インクから発生した蛍光を集光する光学系6と、光学系6によって集光された蛍光を受光するとともに、この紫外線による蛍光の受光結果を示すUV蛍光信号を生成する受光部8とを有する。
【0027】
UV照射部5は、例えば400nm以下の波長帯域内に発光波長ピーク(例えば約380nm)を有する紫外線発光ダイオードおよびLED駆動回路等を用いて実現され、制御部14の制御に基づいて紙葉類Mに紫外線を照射する。この場合、UV照射部5は、搬送路2aに沿って搬送される紙葉類M内の所定領域(例えば紙葉類Mの真偽を判別するために紫外線が照射される紙葉類M内の検査領域)を面的に走査するように紫外線を照射する。かかるUV照射部5は、この紙葉類M内の所定領域に予め蛍光インクが付着されている場合、この蛍光インクに対して紫外線を照射することになり、これによって紙葉類Mの蛍光インクを励起し、この蛍光インクから蛍光を発生させる。
【0028】
光学系6は、紙葉類Mの蛍光インクから発生した蛍光を受光部8に対して集光するとともに、この紙葉類Mから反射した紫外線を遮断する。このような光学系6は、紙葉類Mの蛍光インクから発生した蛍光を集光するためのレンズ6a,6cと、紫外線を遮断するための光学フィルタ6bとによって構成される。レンズ6aは、紫外線の照射によって紙葉類Mの蛍光インクから発生した蛍光と紙葉類Mから反射した紫外線とを集光する。光学フィルタ6bは、レンズ6aによって集光された蛍光を透過するとともに紫外線を遮断する。レンズ6cは、光学フィルタ6bを透過した蛍光を受光部8の受光領域に集光する。
【0029】
受光部8は、例えば一次元配列されたフォトダイオードアレイまたはラインCCDと所定の駆動回路とを用いて実現される。受光部8は、紙葉類の偽造防止策に用いられる真の蛍光インクの蛍光粒子径に比して小さいサイズの画素であって、偽の蛍光インクの蛍光粒子径に比して大きいサイズの画素を複数有する。かかる複数の画素は、例えば一次元配列され、受光部8の受光領域を形成する。受光部8は、光学系6によって受光領域に集光された蛍光を受光するとともに、この蛍光を光電変換してUV蛍光信号S1を生成する。この場合、受光部8は、制御部14の制御に基づいて、予め設定された単位時間t当たりに受光した蛍光の受光結果を示すUV蛍光信号S1を生成し、生成したUV蛍光信号S1を単位時間t毎に増幅部9に出力する。かかる受光部8によって生成されたUV蛍光信号S1は、受光部8の受光領域を形成する複数の画素の各画素における蛍光の受光結果(蛍光強度等)を示すアナログ信号であり、紙葉類Mの所定領域(例えば紫外線が照射された紙葉類M内の所定の検査領域)を走査した結果を示す一次元データを含む。
【0030】
なお、かかる単位時間tは、面的に走査される紙葉類Mの検査領域のうちの1列の走査ラインに対してUV照射部5からの紫外線が照射される時間であって、かかる1列の走査ラインを単位に紙葉類Mを搬送する搬送部2の単位搬送時間である。この場合、かかる単位時間t毎に搬送部2によって搬送される紙葉類Mの搬送距離(すなわち走査ラインの短手方向の幅)が紙葉類Mの蛍光インクに含まれる蛍光粒子の平均粒子径に比して短くなるように、上述した単位時間tが設定される。
【0031】
増幅部9は、受光部8によって生成されたUV蛍光信号S1を増幅する。具体的には、増幅部9は、単位時間t毎に受光部8からUV蛍光信号S1を受信し、受信したUV蛍光信号S1を増幅する。かかる増幅部9によって増幅されたUV蛍光信号S1は、A/D変換部10に入力される。
【0032】
A/D変換部10は、かかるUV蛍光信号S1をデジタル信号に変換する。具体的には、A/D変換部10は、UV蛍光信号S1の出力値(受光部8の各画素において受光された蛍光の蛍光強度)に対する閾値が予め設定され、この閾値とUV蛍光信号S1の出力値とを比較することによってUV蛍光信号S1を2値化処理する。かかる2値化処理によって、A/D変換部10は、アナログ信号であるUV蛍光信号S1のノイズを除去して信号対雑音比(S/N比)を高めるとともに、かかるUV蛍光信号S1をデジタル信号であるUV蛍光信号S2に変換する。A/D変換部10は、受光部8によって単位時間t毎に生成されたUV蛍光信号S1をUV蛍光信号S2(すなわちデジタル信号)に順次変換し、得られたUV蛍光信号S2を制御部14に順次送信する。
【0033】
入力部11は、鑑別対象の紙葉類Mの真偽を判別するために用いられる各種閾値および判別基準データ等を制御部14に入力する。記憶部12は、かかる入力部11によって入力された各種閾値および判別基準データ等を保存する。出力部13は、紙葉類Mの真偽判別結果を出力する。なお、出力部13は、液晶等のディスプレイまたはLEDを有し、かかる紙葉類Mの真偽判別結果を画面表示または可視光の出力(例えば発光パターンまたは発光色)によって示すものであってもよいし、プリンタ等を有し、かかる紙葉類Mの真偽判別結果をプリント出力するものであってもよい。
【0034】
制御部14は、搬送部2の駆動部2d、紙葉類検知センサ3、UV照射部5、受光部8、記憶部12、および出力部13の各駆動を制御する。また、制御部14は、紙葉類検知センサ3、受光部8、増幅部9、A/D変換部10、および入力部11に対し、各種信号の送受信または各種情報等の入出力を制御する。具体的には、制御部14は、入力部11によって入力された各種閾値および判別基準データ等を保存するように記憶部12を制御し、紙葉類Mの真偽判別結果を出力するように出力部13を制御する。また、制御部14は、搬送路2a内に挿入された紙葉類Mを検知するように紙葉類検知センサ3を制御する。制御部14は、かかる紙葉類検知センサ3から紙葉類Mの検知結果信号を受信した場合、この紙葉類Mを搬送路2aに沿って搬送するように駆動部2dを制御するとともに、この紙葉類Mに対して紫外線を照射するようにUV照射部5を制御する。この場合、制御部14は、この紙葉類Mの検査領域内の各走査ラインに紫外線を順次照射してこの検査領域を走査し終えるようにUV照射部5および駆動部2dを制御する。制御部14は、かかる紙葉類Mの検査領域を一次元的に走査した結果を示す一次元データを含むUV蛍光信号S1を単位時間t毎に順次生成出力するように受光部8を制御する。
【0035】
また、制御部14は、記憶部12に保存した閾値または判別基準データ等を必要に応じて読み出し、鑑別対象の紙葉類Mの真偽を判別する真偽判別処理を行う。このような制御部14は、上述したUV蛍光信号S2をもとに蛍光粒子を検出する画像処理部14aと、画像処理部14aによって検出された蛍光粒子の特徴を抽出する特徴抽出部14bと、かかる特徴をもとに紙葉類Mの真偽を判別する真偽判別部14cとを有する。
【0036】
画像処理部14aは、紙葉類Mに付着させた蛍光インクに含まれる蛍光粒子を上述したUV蛍光信号S2をもとに検出する検出手段として機能する。具体的には、UV蛍光信号S2は、上述したようにUV蛍光信号S1を2値化処理したデジタル信号であり、紙葉類Mの検査領域内の1列の走査ラインについて紫外線による蛍光の有無を画素単位に示す一次元データを含む。画像処理部14aは、複数のUV蛍光信号S2をもとに取得したn列(n=1,2,3,・・・)の走査ライン分の一次元データ群を二次元的に配列して、かかる紙葉類Mの検査領域(すなわち上述したUV照射部5による紫外線の照射によって面的に走査された領域)の画像データを生成する。
【0037】
ここで、かかる紙葉類Mの検査領域に蛍光インクが付着されていた場合、この画像データは、この蛍光インクに対する紫外線の照射によって蛍光を発生した1以上の蛍光粒子が含まれるUV蛍光画像データである。この場合、画像処理部14aは、かかるUV蛍光画像データに含まれる1以上の蛍光粒子を画素単位に検出する。すなわち、画像処理部14aは、上述した一次元データにおける蛍光有りの受光結果を示す画素(“1”または“ハイレベル(H)”の出力値を有する画素)を蛍光粒子の投影画像形成画素として検出し、かかる投影画像形成画素を1以上検出することによって1以上の蛍光粒子を画素単位に検出する。
【0038】
特徴抽出部14bは、画像処理部14aによって画素単位に検出された1以上の蛍光粒子の特徴を抽出する特徴抽出手段として機能する。具体的には、特徴抽出部14bは、画像処理部14aによって検出された各蛍光粒子にそれぞれ含まれる投影画像形成画素の数量(単位はピクセル)をもとに、各蛍光粒子の特徴である幾何学的なパラメータ(例えば蛍光粒子の粒子径、面積、周囲長等)を蛍光粒子毎に抽出する。
【0039】
ここで、かかる特徴抽出部14bによって抽出された蛍光粒子の特徴は、紙葉類の偽造防止策として紙葉類に付着させる蛍光インク(真の蛍光インク)と偽造防止策を模倣する蛍光インク(偽の蛍光インク)との間で明確に異なるものである。すなわち、かかる偽の蛍光インク、例えば蛍光ペンまたはインクジェットプリンタに用いられる市販の蛍光インクは、蛍光ペンのペン先またはインクジェットプリンタのノズルにおける目詰まりの防止と蛍光顔料の分散性とを考慮し、その蛍光粒子径を1μm以下に調整している。これに対し、紙葉類の偽造防止策に用いられる真の蛍光インクは、かかる偽の蛍光インクに比して大きい蛍光粒子径(例えば数μm〜数十μmの蛍光粒子径)を有する。したがって、かかる真偽の両蛍光インクの間において、蛍光粒子の粒子径、面積、周囲長等の幾何学的なパラメータに明確な差異がある。特徴抽出部14bは、かかる真偽の両蛍光インクの間で明確に異なる蛍光粒子の特徴の一例である幾何学的なパラメータを抽出する。
【0040】
真偽判別部14cは、特徴抽出部14bによって抽出された蛍光粒子の特徴をもとに紙葉類Mの真偽を判別する判別手段として機能する。具体的には、真偽判別部14cは、上述した幾何学的なパラメータによって区分されるグループ毎に、画像処理部14aによって検出された蛍光粒子を分類する。この場合、真偽判別部14cは、例えば、記憶部12に保存された所定の閾値と各蛍光粒子の幾何学的なパラメータとを比較することによって、幾何学的なパラメータが閾値以上の蛍光粒子と閾値未満の蛍光粒子とにグループ分けする。真偽判別部14cは、このように分類したグループ毎に蛍光粒子の数量を計数する計数処理を行い、この計数処理の結果をもとに紙葉類Mの真偽を判別する。この場合、真偽判別部14cは、記憶部12に保存された判別基準データを参照し、かかる計数処理の結果である各グループの蛍光粒子数量が判別基準データを満足すれば、紙葉類Mを真の紙葉類であると判別し、判別基準データを満足しなければ、紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0041】
つぎに、蛍光検出部4の構成について詳細に説明する。図2は、実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置1の蛍光検出部4の一構成例を示す模式図である。図2に示すように、蛍光検出部4は、上述したUV照射部5、光学系6、および受光部8を有し、さらに、かかるUV照射部5と光学系6と受光部8とを保持するホルダ4aを有する。ホルダ4aには、互いに遮光された2つの内部空間が形成され、かかるホルダ4aの各内部空間に、UV照射部5と光学系6および受光部8とがそれぞれ配置される。また、かかるUV照射部5が配置されたホルダ4aの内部空間(発光側内部空間)の開口部にはガラス7aが設けられ、かかる光学系6および受光部8が配置されたホルダ4aの内部空間(受光側内部空間)の開口部にはガラス7bが設けられる。この場合、UV照射部5は、かかるガラス7aを介して紙葉類Mに紫外線を照射する。光学系6は、かかる紫外線によって紙葉類Mの蛍光インクから発生した蛍光をガラス7bを介して集光する。
【0042】
具体的には、UV照射部5によって発光された紫外線は、ガラス7aが設けられた発光側内部空間の開口部によって空間的な照射範囲が制限されつつ、このガラス7aを透過して紙葉類Mに到達する。この場合、かかるUV照射部5からの紫外線は、予め蛍光インクを付着させた紙葉類Mの検査領域Maに対して線状に照射される。ここで、紙葉類Mは、上述したように搬送部2によって搬送されつつUV照射部5からの紫外線が照射される。このため、UV照射部5は、検査領域Ma内のn列(n=1,2,3,…)の走査ラインを順次走査しつつ最終的に検査領域Maを面的に走査するように、この紙葉類Mに対して線状に紫外線を照射する。
【0043】
一方、かかるUV照射部5からの紫外線によって検査領域Maの蛍光インクから走査ライン毎に発生した蛍光は、ガラス7bが設けられた受光側内部空間の開口部によって空間的な受光範囲が制限されつつ、このガラス7bを透過して光学系6のレンズ6aに到達する。また、紙葉類Mに対する紫外線の照射によって紙葉類Mから反射した紫外線(反射紫外線)は、かかる蛍光とともにガラス7bを透過して光学系6のレンズ6aに到達する。
【0044】
レンズ6aは、紫外線が照射される紙葉類Mに対して所定の焦点距離を有するようにホルダ4aの受光側内部空間に配置され、かかる紙葉類Mの検査領域Ma上に、真の蛍光インクに含まれる蛍光粒子の平均粒子径に比して小さいサイズの焦点を形成する。このようなレンズ6aは、ガラス7bを介して検査領域Maから到達した蛍光および反射紫外線を集光する。かかるレンズ6aによって集光された検査領域Maからの蛍光および反射紫外線は、レンズ6aを透過後、平行光線の状態で光学フィルタ6bに到達する。
【0045】
光学フィルタ6bは、かかる検査領域Maからの蛍光を透過するとともに反射紫外線を遮断する。光学フィルタ6bは、かかる反射紫外線を遮断することによって、上述したUV蛍光信号S1のS/N比を高めることができる。かかる光学フィルタ6bを透過した検査領域Maからの蛍光は、平行光線の状態でレンズ6cに到達する。
【0046】
レンズ6cは、かかる光学フィルタ6bを透過した検査領域Maからの蛍光(すなわち検査領域Ma内の走査ライン毎の蛍光)を受光部8の受光領域に順次集光する。この場合、レンズ6cは、最終的に、かかる蛍光を発生した蛍光粒子の投影画像を受光部8の受光領域に結像する。
【0047】
受光部8は、レンズ6cによって受光領域に集光された検査領域Maからの蛍光を順次受光し、かかる蛍光を順次光電変換して上述したUV蛍光信号S1を単位時間t毎に生成する。この場合、受光部8は、最終的に、かかるレンズ6cによって結像された蛍光粒子(検査領域Maに存在する蛍光粒子)の投影画像を撮像する。
【0048】
つぎに、紙葉類Mの真偽判別処理を行う制御部14の動作について説明する。図3は、UV蛍光画像データを用いて紙葉類Mの真偽を判別する真偽判別処理の処理手順を例示するフローチャートである。図3に示すように、まず、制御部14は、A/D変換部10によってデジタル化されたUV蛍光信号S2を順次受信し、紫外線の照射によって紙葉類Mの検査領域Maにおけるn列の走査ラインを順次走査して生成される複数のUV蛍光信号S2(n列分のUV蛍光信号S2)を取得する(ステップS101)。
【0049】
続いて、制御部14は、かかるA/D変換部10によってデジタル化されたn列分のUV蛍光信号S2をもとに、紙葉類Mの検査領域Maを撮像したUV蛍光画像データを生成する(ステップS102)。この場合、画像処理部14aは、かかるn列分のUV蛍光信号S2をもとに、紙葉類Mの検査領域Maを走査した1列からn列の走査ラインの一次元データ(すなわちn列分の一次元データ)を取得し、かかるn列分の一次元データを二次元配列することによってUV蛍光画像データを生成する。このようにして、画像処理部14aは、かかる検査領域Maを撮像した画像データ、すなわち、この検査領域Maの蛍光インクに含まれる1以上の蛍光粒子の投影画像を含むUV蛍光画像データを生成する。
【0050】
その後、制御部14は、ステップS102において生成したUV蛍光画像データに含まれる1以上の蛍光粒子を検出する(ステップS103)。この場合、画像処理部14aは、かかるUV蛍光画像データを形成する画素群の中から、“1”または“ハイレベル(H)”の出力値に対応する画素を蛍光粒子の投影画像形成画素として検出し、かかる投影画像形成画素によって形成される1以上の蛍光粒子を画素単位に検出する。また、画像処理部14aは、このように検出した1以上の蛍光粒子(すなわち投影画像形成画素の集合体)に対してラベル番号I(I=1,2,3,…)をそれぞれ付与するラベリング処理を行う。
【0051】
つぎに、制御部14は、かかるUV蛍光画像データをもとに検出した1以上の蛍光粒子の特徴の一例である幾何学的なパラメータを抽出する(ステップS104)。この場合、特徴抽出部14bは、上述したラベル番号Iが付与された各蛍光粒子にそれぞれ含まれる投影画像形成画素の数量(単位はピクセル)をもとに、各蛍光粒子の特徴の一例である幾何学的なパラメータ(例えば蛍光粒子の粒子径、面積、周囲長等)を蛍光粒子毎に抽出する。かかる特徴抽出部14bによって抽出された蛍光粒子の特徴は、上述したように、真偽の両蛍光インクの間で明確に異なるものである。
【0052】
続いて、制御部14は、ステップS104において抽出した蛍光粒子の特徴をもとに紙葉類Mの真偽を判別する(ステップS105)。この場合、真偽判別部14cは、まず、ステップS104において抽出された幾何学的なパラメータによって区分されるグループ毎に、各ラベル番号I(I=1,2,3,…)の蛍光粒子を分類する。すなわち、真偽判別部14cは、記憶部12に保存された所定の閾値、例えば蛍光粒子径の上限閾値TH1および下限閾値TH2を参照し、各ラベル番号Iの蛍光粒子毎に、かかる上限閾値TH1および下限閾値TH2と各蛍光粒子径とを比較する。この比較処理によって、真偽判別部14cは、各ラベル番号Iの蛍光粒子を、上限閾値TH1以上の蛍光粒子径を有する大の蛍光粒子グループと、下限閾値TH2以上且つ上限閾値TH1未満の蛍光粒子径を有する中の蛍光粒子グループと、下限閾値TH2未満の蛍光粒子を有する小の蛍光粒子グループとに分類する。
【0053】
つぎに、真偽判別部14cは、このように分類した蛍光粒子グループ毎に蛍光粒子の数量を計数する計数処理を行う。具体的には、真偽判別部14cは、大の蛍光粒子グループに含まれる蛍光粒子の数量(大の蛍光粒子数量)と、中の蛍光粒子グループに含まれる蛍光粒子の数量(中の蛍光粒子数量)と、小の蛍光粒子グループに含まれる蛍光粒子の数量(小の蛍光粒子数量)とをそれぞれ計数する。その後、真偽判別部14cは、記憶部12に保存された判別基準データを参照する。この場合、判別基準データは、真の蛍光インクに含まれる蛍光粒子を大中小の各蛍光粒子グループに分類した際の大中小の各蛍光粒子数量を示すものであり、紙葉類Mの検査領域Maに付着させた蛍光インクが真の蛍光インクであるために満足すべき大中小の各蛍光粒子数量の許容範囲を示す。真偽判別部14cは、かかる判別基準データと大中小の各蛍光粒子数量とをそれぞれ比較し、かかる大中小の各蛍光粒子数量の全てが判別基準データを満足すれば、鑑別対象の紙葉類Mを真の紙葉類(真の蛍光インクによって偽造防止策が施された紙葉類)であると判別する。これに対し、真偽判別部14cは、かかる大中小の各蛍光粒子数量の少なくとも一つが判別基準データを満足しなければ、鑑別対象の紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0054】
その後、制御部14は、ステップS105において判別した紙葉類Mの真偽判別結果を出力するように出力部13を制御する(ステップS106)。この場合、出力部13は、かかる紙葉類Mの真偽判別結果を示す情報(文字、数字、記号等)を画面に表示し、または、かかる紙葉類Mの真偽判別結果を示す発光パターンまたは発光色の可視光を出力する。あるいは、出力部13は、かかる紙葉類Mの真偽判別結果を紙面等にプリント出力する。かかる出力部13によって出力された真偽判別結果を視認することによって、ユーザは、鑑別対象の紙葉類Mが真偽いずれのものであるかを判別することができる。
【0055】
つぎに、真の蛍光インクを付着させた真の紙葉類と偽の蛍光インク(すなわち偽造防止策としての真の蛍光インクを模倣するもの)を付着させた偽の紙葉類とを判別する制御部14の動作を具体的に説明する。図4は、蛍光インクを付着させた紙葉類Mの検査領域Maを紫外線の照射によって面的に走査する状態を例示する模式図である。図5は、UV蛍光画像データを用いて真の紙葉類を判別する際の制御部14の動作を説明するための模式図である。図6は、UV蛍光画像データを用いて偽の紙葉類を判別する際の制御部14の動作を説明するための模式図である。
【0056】
図4に示すように、制御部14は、所定の搬送方向に沿って紙葉類Mを搬送するように搬送部2の駆動部2dを制御するとともに、この紙葉類Mの検査領域Maを面的に走査するようにUV照射部5および受光部8を制御する。この場合、UV照射部5は、かかる紙葉類Mの検査領域Maにおける1,2,・・・,(n−1),n列の各走査ラインに対して順次、紫外線を線状に照射し、かかる検査領域Maを所定の走査方向(図4を参照)に沿って面的に走査する。受光部8は、かかるUV照射部5からの紫外線によって検査領域Maの各走査ラインの蛍光インクから発生した蛍光を単位時間t毎に順次受光し、かかる走査ライン毎に発生した蛍光の受光結果を示すUV蛍光信号S1を順次生成する。
【0057】
制御部14は、上述したように、かかる1,2,・・・,(n−1),n列の各走査ラインに対応する各UV蛍光信号S1をそれぞれデジタル化したn列分のUV蛍光信号S2を取得し、かかるn列分のUV蛍光信号S2をもとに、この紙葉類Mの検査領域Maを面的に走査(すなわち撮像)したUV蛍光画像データを生成する。この場合、画像処理部14aは、かかるn列分のUV蛍光信号S2をもとに、1,2,・・・,(n−1),n列の各走査ラインにそれぞれ対応するn列分の一次元データを二次元的に配列して、かかる検査領域MaのUV蛍光画像データを生成する。
【0058】
具体的には、例えば図5に示すように、紙葉類Mの検査領域Maにおいて複数の蛍光粒子K1が蛍光を発生した場合、画像処理部14aは、かかる複数の蛍光粒子K1の投影画像を含むUV蛍光画像データP1を生成する。ここで、かかるUV蛍光画像データP1に含まれる蛍光粒子K1の投影画像は、受光部8の各画素サイズが蛍光粒子K1に比して小さいため、上述した一次元データにおいて“1”または“ハイレベル(H)”の出力値を有する投影画像形成画素の集合体である連結画素群G1によって形成される。かかる連結画素群G1は、図5に示すように、UV蛍光画像データP1に含まれる複数の投影画像形成画素のうちの互いに隣接するもの同士を空間的に連結することによって形成される。
【0059】
画像処理部14aは、かかるUV蛍光画像データP1に含まれる連結画素群G1を検査領域Ma内の蛍光粒子K1として検出する。このようにして、画像処理部14aは、蛍光粒子K1を画素単位に検出する。そして、画像処理部14aは、このように画素単位に検出した複数の蛍光粒子K1(具体的には蛍光粒子K1の投影画像である複数の連結画素群G1)に対してラベル番号Iをそれぞれ付与する。この場合、画像処理部14aは、例えば図5に示す3つの連結画素群G1に対し、ラベル番号I=1,2,3をそれぞれ付与する。なお、画像処理部14aおよび特徴抽出部14bは、かかるラベル番号Iをもとに、複数の蛍光粒子K1すなわち複数の連結画素群G1のそれぞれを特定する。
【0060】
かかる画像処理部14aによって画素単位に蛍光粒子K1が検出された場合、特徴抽出部14bは、蛍光粒子K1の投影画像である連結画素群G1を形成する画素(投影画像形成画素)の数量をもとに、ラベル番号I毎に蛍光粒子K1の特徴の一例である幾何学的なパラメータを抽出する。この場合、特徴抽出部14bは、例えば図5に示す連結画素群G1を形成する投影画像形成画素の数量をもとに、この連結画素群G1に対応する蛍光粒子K1の蛍光粒子径R1(=7ピクセル)を抽出する。
【0061】
このようにして特徴抽出部14bが各ラベル番号I(I=1,2,3,…)の蛍光粒子K1(連結画素群G1)の特徴を抽出し終えた場合、真偽判別部14cは、例えば蛍光粒子径の上限閾値TH1および下限閾値TH2を参照し、上述した大中小の各蛍光粒子グループに各ラベル番号Iの蛍光粒子K1を分類する。つぎに、真偽判別部14cは、かかる大中小の各蛍光粒子グループにそれぞれ含まれる蛍光粒子K1の数量を計数処理し、この計数処理によって得られた大中小の各蛍光粒子数量と上述した判別基準データとを比較する。
【0062】
ここで、鑑別対象の紙葉類Mが、真の紙葉類であって、印刷等によって検査領域Maに偽造防止策としての真の蛍光インクを付着させたものである場合、図5に示すUV蛍光画像データP1に含まれる複数の連結画素群G1は、この検査領域Maに付着させた真の蛍光インクに含まれる蛍光粒子K1の投影画像を形成する。この場合、真偽判別部14cは、かかる複数の連結画素群G1(すなわち蛍光粒子K1)に関する大中小の各蛍光粒子数量の全てが上述した判別基準データを満足する旨を確認する。これに基づいて、真偽判別部14cは、かかる蛍光粒子K1を含む蛍光インク(すなわち真の蛍光インク)を付着させた紙葉類Mを真の紙葉類であると判別する。
【0063】
これに対し、鑑別対象の紙葉類Mが、偽の紙葉類であって、印刷等によって検査領域Maに偽造防止策を模倣した偽の蛍光インク(例えば市販の蛍光インク)を付着させたものである場合、この偽の蛍光インクに含まれる複数の蛍光粒子K2は、上述した真の蛍光インクに含まれる蛍光粒子K1に対して明確に異なる幾何学的なパラメータ(蛍光粒子の粒子径、面積、周囲長等)を有し、例えば、かかる蛍光粒子K1に比して著しく小さい粒子径を有する。この場合、画像処理部14aは、例えば図6に示すように、かかる偽の蛍光インクが付着した検査領域Maを面的に走査(すなわち撮像)した画像データ、すなわち、かかる複数の蛍光粒子K2の投影画像を含むUV蛍光画像データP2を生成する。
【0064】
なお、かかるUV蛍光画像データP2に含まれる1以上の蛍光粒子K2の投影画像は、受光部8の各画素サイズが蛍光粒子K2に比して大きいため、UV蛍光画像データP2内の単一の投影画像形成画素によって形成される。したがって、画像処理部14aは、通常、かかるUV蛍光画像データP2に含まれる各投影画像形成画素を検査領域Ma内の1以上の蛍光粒子K2として検出する。このようにして、かかる蛍光粒子K2は、画素単位に検出される。
【0065】
その後、画像処理部14aは、上述した蛍光粒子K1の場合と略同様に、画素単位に検出した蛍光粒子K2の投影画像である投影画像形成画素の各単体に対してラベル番号I(I=1,2,3,…)をそれぞれ付与する。特徴抽出部14bは、各ラベル番号Iの蛍光粒子K2の投影画像をそれぞれ形成する投影画像形成画素の数量をもとに、かかる蛍光粒子K2の特徴の一例である幾何学的なパラメータ(例えば蛍光粒子径)をラベル番号I毎に抽出する。
【0066】
真偽判別部14cは、上述した蛍光粒子K1の場合と略同様に、各ラベル番号Iの蛍光粒子K2を大中小の各蛍光粒子グループに分類し、かかる大中小の各蛍光粒子グループの蛍光粒子数量(すなわち大中小の各蛍光粒子数量)と上述した判別基準データとを比較する。この場合、真偽判別部14cは、かかる複数の蛍光粒子K2に関する大中小の各蛍光粒子数量の少なくとも一つが上述した判別基準データを満足しない旨を確認する。これに基づいて、真偽判別部14cは、かかる蛍光粒子K2を含む偽の蛍光インクを付着させた紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0067】
ここで、かかる複数の蛍光粒子K2が、例えば図6に示すように、検査領域Ma内の部分領域A1に密集している場合、画像処理部14aは、かかる部分領域A1に密集した複数の蛍光粒子K2の集合体の投影画像を含むUV蛍光画像データP2を生成する。この場合、かかる複数の蛍光粒子K2の集合体の投影画像は、この部分領域A1に対応するUV蛍光画像データP2内の画素領域A2において連結した複数の投影画像形成画素の集合体である連結画素群G2によって形成される。
【0068】
このような連結画素群G2を含むUV蛍光画像データP2が生成された場合、画像処理部14aは、かかる複数の蛍光粒子K2の集合体ではなく単一の蛍光粒子として連結画素群G2を検出し、この連結画素群G2に対してラベル番号Iを付与する。この場合、特徴抽出部14bは、かかる連結画素群G2に含まれる投影画像形成画素の数量をもとに、単一の蛍光粒子の幾何学的なパラメータを抽出する。ここで、真偽判別部14cが、真偽の両蛍光インクの蛍光粒子径を単純比較し、かかる蛍光粒子径の単純な比較結果をもとに紙葉類Mの真偽を判別する場合を仮定する。この場合、画像処理部14cが、上述したように複数の蛍光粒子K2の集合体を単一の連結画素群G2として誤検出すれば、真偽判別部14cは、紙葉類Mの真偽を誤判別する虞がある。
【0069】
しかし、真偽判別部14cは、上述したように、画像処理部14aによって検出された蛍光粒子を例えば大中小の各蛍光グループに分類し、かかる大中小の各蛍光粒子グループの蛍光粒子数量(すなわち大中小の各蛍光粒子数量)と上述した判別基準データとを比較処理し、この比較処理の結果をもとに紙葉類Mの真偽を判別する。したがって、真偽判別部14cは、蛍光粒子径に例示される蛍光粒子の幾何学的なパラメータを単純比較した場合に発生する真偽の誤判別を防止でき、紙葉類Mの真偽を的確に判別することができる。
【0070】
また、真偽判別部14cは、紙葉類の偽造防止策に用いられる真の蛍光インクと偽造防止策を模倣する偽の蛍光インク(例えば市販の蛍光インク)との間で明確に異なる蛍光粒子の幾何学的なパラメータをもとに紙葉類の真偽を判別している。したがって、真偽判別部14cは、かかる真の蛍光インクと略同様の蛍光特性(蛍光波長、蛍光強度等)を有する偽の蛍光インクが紙葉類に用いられた場合であっても、紙葉類の真偽を的確に判別することができる。この結果、かかる偽の蛍光インクが用いられた偽の紙葉類を的確に除外することができる。
【0071】
以上、説明したように、本発明の実施の形態1では、紙葉類の所定の検査領域に紫外線を照射してこの検査領域を面的に走査し、この検査領域の走査結果を示すUV蛍光画像データを生成し、このUV蛍光画像データをもとに、この検査領域内の蛍光インクに含まれる蛍光粒子を画素単位に検出し、かかる蛍光粒子の特徴である幾何学的なパラメータをもとに、この紙葉類の真偽を判別するように構成した。このため、紙葉類の偽造防止策に用いられる真の蛍光インクと偽造防止策を模倣する偽の蛍光インクとの間で明確に異なる蛍光粒子の幾何学的なパラメータをもとに、鑑別対象の紙葉類の真偽を判別することができる。この結果、かかる真の蛍光インクと略同様の蛍光特性(蛍光波長、蛍光強度等)を有する偽の蛍光インクが紙葉類に用いられた場合であっても、紙葉類の真偽を的確に判別できる紙葉類鑑別装置を実現することができる。かかる紙葉類鑑別装置を用いることによって、このような偽の蛍光インクによって偽造防止策を模倣した偽の紙葉類を的確に除外することができる。
【0072】
また、かかる幾何学的なパラメータによって区分される蛍光粒子グループ毎に蛍光粒子を分類し、各蛍光粒子グループに含まれる蛍光粒子の計数値と所定の判別基準データとを比較処理し、この比較処理の結果をもとに紙葉類の真偽を判別している。このため、蛍光粒子径に例示される蛍光粒子の幾何学的なパラメータを単純比較した場合に発生する真偽の誤判別を防止でき、紙葉類Mの真偽を的確に判別することができる。
【0073】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、UV蛍光画像データによって画素単位に検出した蛍光粒子の幾何学的なパラメータをもとに紙葉類の真偽を判別していたが、この実施の形態2では、紙葉類内の所定の検査領域(例えば蛍光インクの付着領域)を一次元的に走査したスキャンデータを生成し、真偽の両蛍光インクの間で異なる蛍光粒子の特徴であるこのスキャンデータの信号パターンをもとに、紙葉類の真偽を判別している。
【0074】
図7は、本発明の実施の形態2にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。図7に示すように、この実施の形態2にかかる紙葉類鑑別装置21は、上述した実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置1の蛍光検出部4に代えて蛍光検出部22を有し、制御部14に代えて制御部25を有する。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0075】
蛍光検出部22は、紙葉類Mの検査領域Maに対して紫外線を照射し、この紫外線によって検査領域Maの蛍光インクから発生した蛍光を検出する機能を有する。かかる蛍光検出部22は、紙葉類Mの検査領域Ma内の所定の走査ラインを走査するためのUV照射部5および光学系6を有し、上述した蛍光検出部4の受光部8に代えて受光部24を有する。
【0076】
受光部24は、例えばフォトダイオードまたはCCD等の受光素子と所定の駆動回路とを用いて実現される。受光部24は、紙葉類の偽造防止策に用いられる真の蛍光インクの蛍光粒子径に比して小さいサイズの画素であって、偽の蛍光インクの蛍光粒子径に比して大きいサイズの画素を有する。かかる画素は、単一または複数であって、受光部24の受光領域を形成する。受光部24は、光学系6によって受光領域に集光された蛍光を受光するとともに、この蛍光を光電変換してUV蛍光信号S3を生成する。この場合、受光部24は、制御部25の制御に基づいて、予め設定された単位時間t当たりに受光した蛍光の受光結果を示すUV蛍光信号S3を生成し、生成したUV蛍光信号S3を単位時間t毎に増幅部9に出力する。かかる受光部24によって生成されたUV蛍光信号S3は、受光部24の受光領域を形成する単一または複数の画素における蛍光の受光結果(蛍光強度等)を示すアナログ信号であり、紙葉類Mの検査領域Ma(例えば蛍光インクの付着領域)における所定の走査ライン上の単位領域を走査した結果を示す。なお、かかる走査ライン上の単位領域は、この走査ラインを一次元的に走査して得られる一次元のスキャンデータ内の1画素分のデータに対応する領域である。
【0077】
なお、この実施の形態2において、単位時間tは、一次元的に走査される紙葉類Mの検査領域Maの走査ライン上の単位領域に対してUV照射部5からの紫外線が照射される時間であって、かかる走査ライン上の単位領域毎に紙葉類Mを搬送する搬送部2の単位搬送時間である。この場合、かかる単位時間t毎に搬送部2によって搬送される紙葉類Mの搬送距離(すなわち走査ライン上の単位領域の幅)が紙葉類Mの蛍光インクに含まれる蛍光粒子の平均粒子径に比して短くなるように単位時間tが設定される。
【0078】
増幅部9は、単位時間t毎に受光部24からUV蛍光信号S3を受信し、受信したUV蛍光信号S3を増幅する。かかる増幅部9によって増幅されたUV蛍光信号S3は、A/D変換部10に入力される。A/D変換部10は、UV蛍光信号S3の出力値(受光部24の画素において受光された蛍光の蛍光強度)に対する閾値が予め設定され、この閾値とUV蛍光信号S3の出力値とを比較することによってUV蛍光信号S3を2値化処理する。かかる2値化処理によって、A/D変換部10は、アナログ信号であるUV蛍光信号S3のノイズを除去してS/N比を高めるとともに、かかるUV蛍光信号S3をデジタル信号であるUV蛍光信号S4に変換する。A/D変換部10は、受光部24によって単位時間t毎に生成されたUV蛍光信号S3をUV蛍光信号S4(すなわちデジタル信号)に順次変換し、得られたUV蛍光信号S4を制御部25に順次送信する。
【0079】
制御部25は、上述した実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置1の制御部14と略同様に、搬送部2の駆動部2d、紙葉類検知センサ3、UV照射部5、受光部8、記憶部12、および出力部13の各駆動を制御し、紙葉類検知センサ3、受光部8、増幅部9、A/D変換部10、および入力部11に対し、各種信号の送受信または各種情報等の入出力を制御する。この場合、制御部25は、搬送部2によって搬送される紙葉類Mの検査領域Maにおける走査ライン上の単位領域に紫外線を順次照射してこの走査ラインを一次元的に走査し終えるようにUV照射部5および駆動部2dを制御する。また、制御部25は、かかる紙葉類Mの検査領域Maにおける走査ライン上の単位領域を走査した結果を示すUV蛍光信号S3を単位時間t毎に順次生成出力するように受光部24を制御する。
【0080】
また、制御部25は、記憶部12に保存した各種閾値等を必要に応じて読み出し、鑑別対象の紙葉類Mの真偽を判別する真偽判別処理を行う。このような制御部25は、上述したUV蛍光信号S4をもとに蛍光粒子を検出する走査処理部25aと、走査処理部25aによって検出された蛍光粒子の特徴を抽出する特徴抽出部25bと、かかる蛍光粒子の特徴をもとに紙葉類Mの真偽を判別する真偽判別部25cとを有する。
【0081】
走査処理部25aは、紙葉類Mに付着させた蛍光インクに含まれる蛍光粒子を上述したUV蛍光信号S4をもとに検出する検出手段として機能する。具体的には、UV蛍光信号S4は、上述したようにUV蛍光信号S3を2値化処理したデジタル信号であり、紙葉類Mの検査領域Maを一次元的に走査する走査ライン上の単位領域について紫外線による蛍光の有無を示す画素単位のデータを含む。走査処理部25aは、複数のUV蛍光信号S4をもとに取得した1走査ライン分の画素単位のデータ群を一次元的に配列して、かかる紙葉類Mの検査領域Maを一次元的に走査した走査ラインのスキャンデータを生成する。
【0082】
ここで、かかる紙葉類Mの検査領域Maに蛍光インクが付着されていた場合、このスキャンデータは、この蛍光インクに対する紫外線の照射によって蛍光を発生した蛍光粒子の有無を走査ライン上の単位領域毎(すなわち画素単位)に示す一次元データである。この場合、走査処理部25aは、かかるスキャンデータをもとに、かかる走査ライン上の1以上の蛍光粒子を画素単位に検出する。すなわち、走査処理部25aは、かかるスキャンデータにおける蛍光有りの受光結果を示す画素(すなわち“1”または“ハイレベル(H)”の出力値を有する画素)を蛍光粒子の投影画像形成画素として検出する。走査処理部25aは、かかる投影画像形成画素を1以上検出することによって、上述した走査ライン上の1以上の蛍光粒子を画素単位に検出する。
【0083】
特徴抽出部25bは、走査処理部25aによって画素単位に検出された蛍光粒子の特徴を抽出する特徴抽出手段として機能する。具体的には、特徴抽出部25bは、かかる蛍光粒子の特徴の一例として、上述した走査処理部25aによって生成されたスキャンデータの信号パターンを抽出する。さらに具体的には、特徴抽出部25bは、かかるスキャンデータの信号パターンに含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1と、ローレベル信号の連続出力回数Q2と、ハイレベル信号の総出力回数Q3とを抽出する。
【0084】
ここで、紙葉類の偽造防止策として紙葉類に付着させる真の蛍光インクと偽造防止策を模倣する偽の蛍光インクとの間には、上述したように、両者の蛍光粒子径に明確な差異がある。また、受光部24の画素サイズは、上述したように、真の蛍光インクの蛍光粒子径に比して小さく、且つ、偽の蛍光インクの蛍光粒子径に比して大きい。これらのことに起因して、上述したスキャンデータの信号パターンは、紙葉類Mの検査領域Ma内の走査ライン上に付着されていた蛍光インクの真偽に依存して明確に異なる。すなわち、かかる特徴抽出部25bによって抽出されるスキャンデータの信号パターンは、真偽の両蛍光インクの間で明確に異なる蛍光粒子の特徴の一例である。
【0085】
真偽判別部25cは、特徴抽出部25bによって抽出された蛍光粒子の特徴をもとに紙葉類Mの真偽を判別する判別手段として機能する。具体的には、真偽判別部25cは、記憶部12に保存された各種閾値を参照し、上述した特徴抽出部25bによって抽出されたスキャンデータの信号パターンをもとに、紙葉類Mの真偽を判別する。この場合、真偽判別部25cは、記憶部12に保存された各閾値と上述したハイレベル信号およびローレベル信号の各連続出力回数Q1,Q2とをそれぞれ比較する。真偽判別部25cは、かかる連続出力回数Q1,Q2の少なくとも一つが閾値以上であれば、鑑別対象の紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。一方、真偽判別部25cは、かかる連続出力回数Q1,Q2がともに閾値未満であれば、記憶部12に保存された別の各閾値と上述したハイレベル信号の総出力回数Q3とを比較する。この場合、真偽判別部25cは、かかる総出力回数Q3が閾値による許容範囲内であれば、鑑別対象の紙葉類Mを真の紙葉類であると判別し、かかる総出力回数Q3が閾値による許容範囲外であれば、鑑別対象の紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0086】
つぎに、蛍光検出部22の構成について詳細に説明する。図8は、実施の形態2にかかる紙葉類鑑別装置21の蛍光検出部22の一構成例を示す模式図である。図8に示すように、蛍光検出部22は、上述した実施の形態1にかかる蛍光検出部4の受光部8に代えて受光部24を有する。かかる蛍光検出部22において、鑑別対象の紙葉類Mの検査領域Maを紫外線の照射によって一次元的に走査するように、UV照射部5と光学系6と受光部24とガラス7a,7bとがホルダ4aに配設される。その他の構成は、上述した実施の形態1と同じである。
【0087】
具体的には、UV照射部5によって発光された紫外線は、ホルダ4aの発光側内部空間の開口部によって空間的な照射範囲が制限されつつ、ガラス7aを透過して紙葉類Mの検査領域Maに到達する。この場合、UV照射部5は、検査領域Ma内の1列の走査ライン上の単位領域を順次走査しつつ最終的に検査領域Maの走査ラインを一次元的に走査するように、この紙葉類Mに紫外線を照射する。
【0088】
一方、かかるUV照射部5からの紫外線によって検査領域Ma内の蛍光インクから発生した単位領域毎の蛍光は、ホルダ4aの受光側内部空間の開口部によって空間的な受光範囲が制限されつつ、ガラス7bを透過して光学系6のレンズ6aに到達する。また、この紙葉類Mからの反射紫外線は、かかる蛍光とともにガラス7bを透過して光学系6のレンズ6aに到達する。
【0089】
レンズ6aは、図8に示すように、紫外線が照射される紙葉類Mに対して所定の焦点距離を有するようにホルダ4aの受光側内部空間に配置され、かかる紙葉類Mの検査領域Maを一次元的に走査する走査ライン上の単位領域に焦点Fを形成する。かかるレンズ6aによって形成される焦点Fのサイズは、真の蛍光インクに含まれる蛍光粒子K1の平均粒子径に比して小さい。すなわち、かかる焦点Fのサイズは、蛍光粒子K1の内側に納まることが可能なものである。このようなレンズ6aは、かかる検査領域Maの走査ライン上の単位領域(すなわち焦点Fに一致させた領域)からガラス7bを介して到達した蛍光および反射紫外線を集光する。かかるレンズ6aによって集光された検査領域Maからの蛍光および反射紫外線は、レンズ6aを透過後、平行光線の状態で光学フィルタ6bに到達する。
【0090】
光学フィルタ6bは、かかる検査領域Maからの蛍光を透過するとともに反射紫外線を遮断する。光学フィルタ6bは、かかる反射紫外線を遮断することによって、上述したUV蛍光信号S3のS/N比を高めることができる。かかる光学フィルタ6bを透過した検査領域Maからの蛍光は、平行光線の状態でレンズ6cに到達する。レンズ6cは、かかる光学フィルタ6bを透過した検査領域Maからの蛍光(すなわち検査領域Maの走査ライン上の単位領域毎の蛍光)を受光部24の受光領域に順次集光する。
【0091】
受光部24は、レンズ6cによって受光領域に集光された検査領域Maからの蛍光を順次受光し、かかる蛍光を順次光電変換して上述したUV蛍光信号S3を単位時間t毎に生成する。この場合、受光部24は、検査領域Ma内の走査ライン上に存在する蛍光粒子の投影画像を撮像する。
【0092】
つぎに、紙葉類Mの真偽判別処理を行う制御部25の動作について説明する。図9は、紙葉類Mの検査領域Maのスキャンデータを用いて紙葉類Mの真偽を判別する真偽判別処理の処理手順を例示するフローチャートである。図9に示すように、まず、制御部25は、A/D変換部10によってデジタル化されたUV蛍光信号S4を順次受信し、紫外線の照射によって紙葉類Mの検査領域Maを走査ライン上の単位領域毎に順次走査して生成される複数のUV蛍光信号S4(1列分のUV蛍光信号S4)を取得する(ステップS201)。
【0093】
その後、制御部25は、かかるA/D変換部10によってデジタル化された1列分のUV蛍光信号S4をもとに、紙葉類Mの検査領域Maを一次元的に走査した走査ラインのスキャンデータを生成する(ステップS202)。この場合、走査処理部25aは、A/D変換部10から入力した1列分のUV蛍光信号S4にそれぞれ含まれる画素単位の各データに対して入力順にラベル番号J(J=1,2,3,…)を付与する。なお、かかる画素単位のデータは、ハイレベル(H)またはローレベル(L)の出力値によって走査ライン上での蛍光の有無を示すものである。走査処理部25aは、かかるハイレベルのデータを含むUV蛍光信号S4(すなわちハイレベル信号)を取得することによって、検査領域Maの走査ライン上の蛍光粒子を画素単位に検出する。また、走査処理部25aは、かかるローレベルのデータを含むUV蛍光信号S4(すなわちローレベル信号)を取得することによって、検査領域Maの下地(すなわち蛍光粒子が存在しない領域)を画素単位に検出する。走査処理部25aは、かかるラベル番号Jを付与した各データ(すなわちハイレベル信号またはローレベル信号)をラベル番号Jの昇順に一次元配列することによって、検査領域Maの走査ラインのスキャンデータを生成する。
【0094】
つぎに、制御部25は、かかる走査処理部25aによって画素単位に検出された蛍光粒子の特徴として、ステップS202において生成されたスキャンデータの信号パターンを抽出する(ステップS203)。この場合、特徴抽出部25bは、かかるスキャンデータに含まれる画素単位の各データの出力値がハイレベルおよびローレベルのいずれであるかをラベル番号Jの昇順に確認する。これによって、特徴抽出部25bは、かかるスキャンデータの信号パターンに含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1と、ローレベル信号の連続出力回数Q2と、ハイレベル信号の総出力回数Q3とを抽出する。
【0095】
その後、制御部25は、ステップS203において抽出した蛍光粒子の特徴をもとに紙葉類Mの真偽を判別する(ステップS204)。この場合、真偽判別部25cは、記憶部12に保存された各種閾値を参照し、ステップS203において抽出されたスキャンデータの信号パターンをもとに、紙葉類Mの真偽を判別する。具体的には、真偽判別部25cは、記憶部12に保存された閾値TH3,TH4を参照し、ハイレベル信号の連続出力回数Q1と閾値TH3とを比較し、且つ、ローレベル信号の連続出力回数Q2と閾値TH4とを比較する。なお、かかる閾値TH3,TH4は、真の蛍光インクの付着領域を一次元的に走査した場合のスキャンデータに含まれるハイレベル信号およびローレベル信号の各連続出力回数Q1,Q2の上限値である。
【0096】
真偽判別部25cは、連続出力回数Q1が閾値TH3以上である場合、または、連続出力回数Q2が閾値TH4以上である場合、スキャンデータに含まれるハイレベル信号またはローレベル信号が上限値(閾値TH3,TH4)以上の回数連続する旨を把握する。この場合、真偽判別部25cは、かかるスキャンデータ内にハイレベル信号およびローレベル信号をランダムに繰り返していない信号パターンが含まれると判断する。
【0097】
ここで、真の蛍光インクの蛍光粒子径は、上述したように、偽の蛍光インクの蛍光粒子径および受光部24の画素サイズに比して大きい。これに起因して、真の蛍光インクを付着させた検査領域Maを一次元的に走査した場合に生成されるスキャンデータの信号パターンは、かかる真の蛍光インクの塗布状態に応じてハイレベル信号およびローレベル信号がランダムに繰り返されるものになる。この場合、かかるハイレベル信号およびローレベル信号の各連続出力回数Q1,Q2は、上述した閾値TH3,TH4に比してそれぞれ小さい。したがって、真偽判別部25cは、上述したようにハイレベル信号およびローレベル信号をランダムに繰り返していない信号パターンがスキャンデータ内に含まれる場合、鑑別対象の紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0098】
一方、スキャンデータの信号パターンがハイレベル信号およびローレベル信号をランダムに繰り返すものである場合、すなわち、ハイレベル信号およびローレベル信号の各連続出力回数Q1,Q2がともに上限値(閾値TH3,TH4)未満である場合、真偽判別部25cは、記憶部12に保存された別の閾値TH5,TH6を参照し、かかる閾値TH5,TH6とハイレベル信号の総出力回数Q3とを比較する。なお、かかる閾値TH5,TH6は、真の蛍光インクを付着させた検査領域Maを一次元的に走査した場合のスキャンデータに含まれるハイレベル信号の総出力回数Q3の上限値および下限値である。真偽判別部25cは、この総出力回数Q3が閾値TH5,TH6によって設定される許容範囲内の値である場合、鑑別対象の紙葉類Mを真の紙葉類であると判別し、この総出力回数Q3がこの許容範囲外の値である場合、鑑別対象の紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0099】
その後、制御部25は、ステップS204において判別した紙葉類Mの真偽判別結果を出力するように出力部13を制御する(ステップS205)。この場合、出力部13は、かかる紙葉類Mの真偽判別結果を示す情報(文字、数字、記号等)を画面に表示し、または、かかる紙葉類Mの真偽判別結果を示す発光パターンまたは発光色の可視光を出力する。あるいは、出力部13は、かかる紙葉類Mの真偽判別結果を紙面等にプリント出力する。かかる出力部13によって出力された真偽判別結果を視認することによって、ユーザは、鑑別対象の紙葉類Mが真偽いずれのものであるかを判別することができる。
【0100】
つぎに、真の蛍光インクを用いて偽造防止策が施された真の紙葉類と偽の紙葉類とを判別する制御部25の動作を具体的に説明する。図10は、蛍光インクを付着させた紙葉類Mの検査領域Maを紫外線の照射によって一次元的に走査する状態を例示する模式図である。図11は、スキャンデータの信号パターンをもとに真の紙葉類を判別する制御部25の動作を説明するための模式図である。図12は、スキャンデータの信号パターンをもとに偽の紙葉類を判別する制御部25の動作を説明するための模式図である。図13は、検査領域Maに蛍光インクを付着させていない偽の紙葉類を判別する制御部25の動作を説明するための模式図である。図14は、スキャンデータの信号パターンをもとに別態様の偽の紙葉類を判別する制御部25の動作を説明するための模式図である。
【0101】
図10に示すように、制御部25は、所定の搬送方向に沿って紙葉類Mを搬送するように搬送部2の駆動部2dを制御するとともに、この紙葉類Mの検査領域Maを一次元的に走査するようにUV照射部5および受光部24を制御する。この場合、UV照射部5は、かかる検査領域Maの走査ラインC上の単位領域(すなわち焦点Fに一致させた領域)に対して紫外線を順次照射し、かかる検査領域Maの走査ラインCを所定の走査方向(図10を参照)に沿って一次元的に走査する。受光部24は、かかるUV照射部5からの紫外線によって検査領域Maの走査ラインC上に存在する蛍光インクから発生した蛍光を単位時間t毎に順次受光し、かかる走査ラインCに含まれる各単位領域の蛍光の受光結果を示すUV蛍光信号S3を順次生成する。
【0102】
制御部25は、上述したように、かかる走査ラインCの各単位領域にそれぞれ対応する各UV蛍光信号S3をデジタル化した1列分のUV蛍光信号S4を取得し、かかる1列分のUV蛍光信号S4をもとに、この検査領域Maの走査ラインCを一次元的に走査(すなわち撮像)したスキャンデータを生成する。この場合、走査処理部25aは、かかる1列分のUV蛍光信号S4のそれぞれにラベル番号J(J=1,2,3,…)を入力順に付与し、かかる1列分のUV蛍光信号S4の各データ(上述したハイレベル信号またはローレベル信号)をラベル番号Jの昇順に一次元配列することによって、この検査領域Maの走査ラインCのスキャンデータを生成する。
【0103】
具体的には、例えば図11に示すように、紙葉類Mの検査領域Ma内の走査ラインC上に複数の蛍光粒子K1が蛍光を発生した場合、走査処理部25aは、かかる走査ラインCに存在する蛍光粒子K1を画素単位に検出したスキャンデータD1を生成する。かかるスキャンデータD1は、ラベル番号Jの昇順に一次元配列した各データの出力値(ハイレベル(H)およびローレベル(L))によって蛍光粒子K1の有無を画素単位に示す。
【0104】
走査処理部25aは、かかるスキャンデータD1に含まれるハイレベルの出力値(ハイレベル信号)をもとに走査ラインC上の蛍光粒子K1を画素単位に検出する。また、走査処理部25aは、かかるスキャンデータD1に含まれるローレベルの出力値(ローレベル信号)をもとに走査ラインCにおける検査領域Maの下地(蛍光粒子K1が存在しない領域)を画素単位に検出する。
【0105】
つぎに、制御部25は、かかる走査処理部25aによって検出された走査ラインC上の蛍光粒子K1の特徴を抽出する。具体的には、特徴抽出部25bは、かかる走査ラインC上の蛍光粒子K1の特徴として、かかる蛍光粒子K1の有無を画素単位に検出したスキャンデータD1の信号パターンを抽出する。この場合、特徴抽出部25bは、スキャンデータD1に含まれる画素単位の各データの出力値(ハイレベルまたはローレベル)をラベル番号Jの昇順に確認し、このスキャンデータD1の信号パターンに含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1と、ローレベル信号の連続出力回数Q2と、ハイレベル信号の総出力回数Q3とを抽出する。
【0106】
その後、制御部25は、このように抽出した蛍光粒子K1の特徴をもとに紙葉類Mの真偽を判別する。具体的には、真偽判別部25cは、スキャンデータD1に含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1と上述した閾値TH3とを比較し、且つ、スキャンデータD1に含まれるローレベル信号の連続出力回数Q2と上述した閾値TH4とを比較する。
【0107】
ここで、鑑別対象の紙葉類Mが、真の紙葉類であって、印刷等によって検査領域Maに偽造防止策としての真の蛍光インクを付着させたものである場合を想定する。この場合、かかる検査領域Maの走査ラインCのスキャンデータD1の信号パターンは、例えば図11に示すように、蛍光粒子K1の有りを示すハイレベル信号と蛍光粒子K1の無しを示すローレベル信号とをランダムに繰り返すものである。すなわち、真偽判別部25cは、ハイレベル信号およびローレベル信号の各連続出力回数Q1,Q2がともに上限値(閾値TH3,TH4)未満である旨を確認する。その後、真偽判別部25cは、かかるスキャンデータD1に含まれるハイレベル信号の総出力回数Q3と上述した閾値TH5,TH6とを比較する。真偽判別部25cは、かかるスキャンデータD1のハイレベル信号の総出力回数Q3が閾値TH5,TH6によって設定される許容範囲内の値である旨を確認し、この紙葉類Mを真の紙葉類であると判別する。
【0108】
これに対し、鑑別対象の紙葉類Mが、印刷等によって検査領域Maに偽造防止策を模倣する偽の蛍光インクを付着させた偽の紙葉類である場合を想定する。この場合、走査処理部25aは、上述したスキャンデータD1の場合と略同様に、1列分のUV蛍光信号S4の各データをラベル番号Jの昇順に一次元配列することによって、この偽の紙葉類の検査領域Maにおける走査ラインCのスキャンデータD2を生成する。ここで、偽の蛍光インクに含まれる蛍光粒子K2は、上述したように、真の蛍光インクの蛍光粒子K1に比して蛍光粒子径が十分小さく、且つ、受光部24の画素サイズに比して小さい。このため、受光部24は、かかる偽の蛍光インクを付着させた検査領域Ma(図12を参照)の走査ラインC上を走査した場合、蛍光有りの領域と蛍光無しの領域とを画素単位に区別して撮像することは困難である。したがって、走査処理部25aは、かかる偽の蛍光インクを付着させた検査領域Maの走査ラインC上を走査したスキャンデータとして、例えば図12に示すようにハイレベルの出力値が連続する信号パターンのスキャンデータD2を生成する。
【0109】
かかるスキャンデータD2が走査処理部25aによって生成された場合、特徴抽出部25bは、かかるスキャンデータD2の信号パターンを抽出する。具体的には、特徴抽出部25bは、スキャンデータD2に含まれる画素単位の各データの出力値をラベル番号Jの昇順に確認し、このスキャンデータD2に含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1と、ローレベル信号の連続出力回数Q2(=0)と、ハイレベル信号の総出力回数Q3とを抽出する。
【0110】
その後、真偽判別部25cは、このスキャンデータD2に含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1と上述した閾値TH3とを比較し、且つ、このスキャンデータD2に含まれるローレベル信号の連続出力回数Q2(=0)と上述した閾値TH4とを比較する。この結果、真偽判別部25cは、このハイレベル信号の連続出力回数Q1が閾値TH3以上である旨を確認する。すなわち、真偽判別部25cは、かかるスキャンデータD2内にハイレベル信号およびローレベル信号をランダムに繰り返していない信号パターンが含まれる旨を確認する。このような結果に基づいて、真偽判別部25cは、この紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0111】
一方、鑑別対象の紙葉類Mが、偽の紙葉類であって、検査領域Maに蛍光インクを付着させていない場合を想定する。この場合、走査処理部25aは、上述したスキャンデータD1,D2の場合と略同様に、1列分のUV蛍光信号S4の各データをラベル番号Jの昇順に一次元配列することによって、この偽の紙葉類の検査領域Maにおける走査ラインCのスキャンデータD3を生成する。ここで、かかる偽の紙葉類の検査領域Ma(図13を参照)には、真偽いずれの蛍光インクも付着していない。したがって、走査処理部25aは、かかる検査領域Maの走査ラインC上を走査したスキャンデータとして、例えば図13に示すようにローレベルの出力値が連続する信号パターンのスキャンデータD3を生成する。
【0112】
かかるスキャンデータD3が走査処理部25aによって生成された場合、特徴抽出部25bは、かかるスキャンデータD3の信号パターンを抽出する。具体的には、特徴抽出部25bは、スキャンデータD3に含まれる画素単位の各データの出力値をラベル番号Jの昇順に確認し、このスキャンデータD3に含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1(=0)と、ローレベル信号の連続出力回数Q2と、ハイレベル信号の総出力回数Q3(=0)とを抽出する。
【0113】
その後、真偽判別部25cは、このスキャンデータD3に含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1(=0)と上述した閾値TH3とを比較し、且つ、このスキャンデータD3に含まれるローレベル信号の連続出力回数Q2と上述した閾値TH4とを比較する。この結果、真偽判別部25cは、このローレベル信号の連続出力回数Q2が閾値TH4以上である旨を確認する。すなわち、真偽判別部25cは、かかるスキャンデータD3内にハイレベル信号およびローレベル信号をランダムに繰り返していない信号パターンが含まれる旨を確認する。このような結果に基づいて、真偽判別部25cは、この紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0114】
つぎに、鑑別対象の紙葉類Mが、蛍光ペン等によって検査領域Maに偽造防止策を模倣する偽の蛍光インクを付着させた偽の紙葉類の別態様である場合を想定する。この場合、走査処理部25aは、上述したスキャンデータD1〜D3の場合と略同様に、1列分のUV蛍光信号S4の各データをラベル番号Jの昇順に一次元配列することによって、この偽の紙葉類の検査領域Maにおける走査ラインCのスキャンデータD4を生成する。
【0115】
ここで、この検査領域Maには、例えば図14に示すように、蛍光ペン等を用いて複数の蛍光インクラインEが形成されている。かかる複数の蛍光インクラインEを横切るように検査領域Maを一次元的に走査した場合、この検査領域Maの走査ラインCのスキャンデータD4は、図14に示すように、かかる複数の蛍光インクラインEの有無に対応してハイレベル信号およびローレベル信号を交互に繰り返す信号パターンを有する。かかるスキャンデータD4が走査処理部25aによって生成された場合、特徴抽出部25bは、かかるスキャンデータD4の信号パターンを抽出する。具体的には、特徴抽出部25bは、スキャンデータD4に含まれる画素単位の各データの出力値をラベル番号Jの昇順に確認し、このスキャンデータD4に含まれるハイレベル信号の連続出力回数Q1と、ローレベル信号の連続出力回数Q2と、ハイレベル信号の総出力回数Q3とを抽出する。
【0116】
真偽判別部25cは、かかるスキャンデータD4に含まれるハイレベル信号およびローレベル信号の各連続出力回数Q1,Q2がともに上限値(閾値TH3,TH4)未満であると判断する場合がある。この場合、真偽判別部25cは、かかるスキャンデータD4に含まれるハイレベル信号の総出力回数Q3と上述した閾値TH5,TH6とを比較する。
【0117】
ここで、紙葉類Mの検査領域Maに偽装した複数の蛍光インクラインEに対応してスキャンデータD4の信号パターンに含まれるハイレベル信号の総出力回数Q3は、真の蛍光インクの付着領域を走査したスキャンデータ(例えば上述したスキャンデータD1)の信号パターンに含まれるハイレベル信号の総出力回数に比して著しく少ない。この場合、真偽判別部25cは、かかるスキャンデータD4のハイレベル信号の総出力回数Q3が閾値TH5,TH6によって設定される許容範囲外の値である旨を確認する。このような結果に基づいて、真偽判別部25cは、この紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別する。
【0118】
以上、説明したように、本発明の実施の形態2では、紙葉類の所定の検査領域に紫外線を照射してこの検査領域を一次元的に走査し、この検査領域における所定の走査ラインのスキャンデータを生成し、この検査領域の走査ライン上に存在する蛍光粒子を画素単位に検出し、かかる蛍光粒子の特徴であるスキャンデータの信号パターンをもとに、この紙葉類の真偽を判別するように構成した。このため、紙葉類の偽造防止策に用いられる真の蛍光インクと偽造防止策を模倣する偽の蛍光インクとの間で明確に異なるこのスキャンデータの信号パターンをもとに、鑑別対象の紙葉類の真偽を判別することができる。この結果、かかる真の蛍光インクと略同様の蛍光特性(蛍光波長、蛍光強度等)を有する偽の蛍光インクが紙葉類に用いられた場合であっても、紙葉類の真偽を的確に判別できる紙葉類鑑別装置を実現することができる。かかる紙葉類鑑別装置を用いることによって、上述した実施の形態1の場合と略同様に、偽の蛍光インクによって偽造防止策を模倣した偽の紙葉類を的確に除外することができる。
【0119】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1では、紫外線の照射によって蛍光を発生した蛍光粒子の幾何学的なパラメータをもとに紙葉類の真偽を判別していたが、この実施の形態3では、紙葉類の検査領域(例えば蛍光インクの付着領域)に対して紫外線と可視光線とを交互に照射し、上述した蛍光粒子の幾何学的なパラメータと可視光線の照射による蛍光の受光結果とをもとに、紙葉類の真偽を判別している。
【0120】
図15は、本発明の実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。図15に示すように、この実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置31は、上述した実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置1の蛍光検出部4に代えて蛍光検出部32を有し、制御部14に代えて制御部35を有する。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0121】
蛍光検出部32は、紙葉類Mの検査領域Maに対して紫外線と可視光線とを交互に照射し、この紫外線によって検査領域Maの蛍光インクから発生した蛍光(UV蛍光)と、この可視光線によって検査領域の蛍光インクから発生した蛍光(可視蛍光)とを検出する機能を有する。かかる蛍光検出部32は、上述した実施の形態1の蛍光検出部4と同様にUV照射部5および受光部8を有し、上述した蛍光検出部4の光学系6に代えて光学系34を有する。また、蛍光検出部32は、紙葉類Mの検査領域Maに可視光線を照射する可視光照射部33をさらに有する。
【0122】
可視光照射部33は、例えば400〜500nmの波長帯域内に発光波長ピークを有する可視光発光ダイオードおよび所定の駆動回路を用いて実現される。可視光照射部33は、紙葉類Mの検査領域Ma内であってUV照射部5によって紫外線が照射される領域に対し、可視光線を照射する。この場合、可視光照射部33は、制御部35の制御に基づいて、UV照射部5による紫外線の照射と交互に可視光線を照射する。すなわち、可視光照射部33は、上述したUV照射部5に追随して紙葉類M内の検査領域Maを面的に走査するように可視光線を照射する。
【0123】
光学系34は、上述した実施の形態1の光学系6と同様に、紙葉類Mの蛍光インクから発生したUV蛍光を受光部8に対して集光するとともに、この紙葉類Mから反射した紫外線を遮断する。さらに、光学系34は、紙葉類Mの別の蛍光インクから発生した可視蛍光を受光部8に対して集光するとともに、この紙葉類Mから反射した可視光線(すなわち可視蛍光を除く反射光)を遮断する。このような光学系34は、上述した実施の形態1の光学系6と同様にレンズ6a,6cを有し、上述した光学系6の光学フィルタ6bに代えて光学フィルタ34bを有する。
【0124】
光学フィルタ34bは、所定の光透過帯域Wを有するバンドパスフィルタまたはロングパスフィルタを用いて実現され、レンズ6aを透過した検査領域MaからのUV蛍光および可視蛍光を波長選択的に透過する。この場合、光学フィルタ34bは、かかる検査領域Maの蛍光インクから発生したUV蛍光および可視蛍光を透過するとともに、検査領域Maから反射した紫外線および可視光線(可視蛍光を除く)を遮断する。
【0125】
なお、この実施の形態3において、受光部8は、上述したように、レンズ6cによって集光された蛍光(UV蛍光)を光電変換してUV蛍光信号S1を順次生成し、さらに、レンズ6cによって集光された可視蛍光を光電変換して可視蛍光信号S5を順次生成する。この場合、受光部8は、制御部35の制御に基づいて、上述した単位時間t毎にUV蛍光信号S1と可視蛍光信号S5とを生成し、生成したUV蛍光信号S1と可視蛍光信号S5とを単位時間t毎に増幅部9に出力する。かかる受光部8によって生成されたUV蛍光信号S5は、受光部8の受光領域を形成する複数の画素の各画素における可視蛍光の受光結果(蛍光強度等)を示すアナログ信号であり、紙葉類Mの検査領域Maを走査した結果を示す一次元データを含む。
【0126】
また、増幅部9は、単位時間t毎に受光部8からUV蛍光信号S1と可視蛍光信号S5とを受信し、受信したUV蛍光信号S3と可視蛍光信号S5とを増幅する。かかる増幅部9によって増幅されたUV蛍光信号S1および可視蛍光信号S5は、A/D変換部10に順次入力される。A/D変換部10は、UV蛍光信号S5の出力値(受光部8の画素において受光された可視蛍光の蛍光強度)に対する閾値がさらに設定され、上述したようにUV蛍光信号S1を2値化処理し、且つ、この閾値とUV蛍光信号S5の出力値とを比較することによってUV蛍光信号S5を2値化処理する。かかるA/D変換部10は、上述したようにUV蛍光信号S1をデジタル信号であるUV蛍光信号S2に順次変換し、さらに、アナログ信号であるUV蛍光信号S5のノイズを除去してS/N比を高めるとともに、かかるUV蛍光信号S5をデジタル信号であるUV蛍光信号S6に変換する。かかるA/D変換部10によってデジタル化されたUV蛍光信号S2および可視蛍光信号S6は、制御部35に順次入力される。
【0127】
制御部35は、上述した実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置1の制御部14と略同様に、搬送部2の駆動部2d、紙葉類検知センサ3、UV照射部5、受光部8、記憶部12、および出力部13の各駆動を制御し、紙葉類検知センサ3、受光部8、増幅部9、A/D変換部10、および入力部11に対し、各種信号の送受信または各種情報等の入出力を制御する。さらに、制御部35は、可視光照射部33の駆動を制御する。この場合、制御部35は、UV照射部5からの紫外線と可視光照射部33からの可視光線とが紙葉類Mの検査領域Maに対して交互に照射されるようにUV照射部5および可視光照射部33を制御する。また、制御部35は、搬送部2によって搬送される紙葉類Mの検査領域Maを紫外線によって面的に走査し、これに追随してこの検査領域Maを可視光線によって面的に走査するように、UV照射部5、可視光照射部33、および駆動部2dを制御する。さらに、制御部35は、上述したUV蛍光信号S1および可視蛍光信号S5を単位時間t毎に順次生成出力するように受光部8を制御する。
【0128】
また、制御部35は、上述した実施の形態1の制御部14と同様に、蛍光粒子の幾何学的なパラメータをもとに紙葉類Mの真偽を判別する機能を有し、さらに、この紙葉類Mの検査領域Maからの可視蛍光の受光結果をもとに、この紙葉類Mの真偽を再度判別する機能を有する。このような制御部35は、上述した特徴抽出部14bを有し、また、上述した実施の形態1の制御部14の画像処理部14aに代えて画像処理部35aを有し、真偽判別部14cに代えて真偽判別部35cを有する。
【0129】
画像処理部35aは、上述した実施の形態1の画像処理部14aと同様に、紙葉類Mに付着させた蛍光インクに含まれる蛍光粒子を検出する検出手段として機能する。すなわち、画像処理部35aは、上述した画像処理部14aと同様に、n列分のUV蛍光信号S2をもとにUV蛍光画像データを生成し、生成したUV蛍光画像データに含まれる投影画像形成画素によって形成される蛍光粒子を検出する。さらに、画像処理部35aは、複数の可視蛍光信号S6をもとに取得したn列の走査ライン分の一次元データ群を二次元的に配列して、かかる紙葉類Mの検査領域Maの可視蛍光画像データを生成する。かかる可視蛍光画像データは、画素単位の各データの出力値(ハイレベルまたはローレベル)によって、受光部8における検査領域Maからの可視蛍光の受光結果を示す二次元データである。
【0130】
真偽判別部35cは、特徴抽出部14bによって抽出された蛍光粒子の特徴と、上述した可視蛍光画像データによって示される可視蛍光の受光結果とをもとに、紙葉類Mの真偽を判別する判別手段として機能する。具体的には、真偽判別部35cは、上述した実施の形態1の真偽判別部14cと同様に、蛍光粒子の幾何学的なパラメータをもとに紙葉類Mの真偽を判別する機能を有する。また、真偽判別部35cは、かかる幾何学的なパラメータを用いた真偽判別処理によって紙葉類Mを真の紙葉類であると判別した場合、上述した可視蛍光画像データによって示される可視蛍光の受光結果をもとに、紙葉類Mの真偽を再度判別する。かかる真偽判別部35cは、蛍光粒子の幾何学的なパラメータを用いた真偽判別処理によって真の紙葉類であると判別した紙葉類Mであって、上述した可視蛍光画像データをもとに検査領域Maからの可視蛍光が無い旨を確認した紙葉類Mを真の紙葉類であると最終的に判別する。
【0131】
つぎに、蛍光検出部32の構成について詳細に説明する。図16は、実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置31の蛍光検出部32の一構成例を示す模式図である。図16に示すように、蛍光検出部32は、上述した実施の形態1の蛍光検出部4のホルダ4aに代えてホルダ32aを有し、上述したように光学系6の光学フィルタ6bに代えて光学フィルタ34bを有する。
【0132】
ホルダ32aは、上述したUV照射部5、可視光照射部33、光学系34、および受光部8を保持するためのものである。具体的には、ホルダ32aに、互いに遮光された3つの内部空間(UV発光側内部空間、可視光発光側内部空間、受光側内部空間)が形成される。この場合、UV発光側内部空間および可視光発光側内部空間は、受光側内部空間を挟んだ両側にそれぞれ形成される。かかるホルダ32aは、図16に示すように、UV発光側内部空間にUV照射部5を保持し、可視光発光側内部空間に可視光照射部33を保持し、受光側内部空間に光学系34と受光部8とを保持する。この場合、かかる光学系34は、レンズ6aが紙葉類Mの検査領域Maに対して所定の焦点距離を有するように受光側内部空間に配置される。このように配置されたレンズ6aは、紙葉類Mの検査領域Ma上に、真の蛍光インクに含まれる蛍光粒子の平均粒子径に比して小さいサイズの焦点を形成する。また、かかるホルダ32aのUV発光側内部空間の開口部にはガラス7aが設けられ、受光側内部空間の開口部にはガラス7bが設けられ、可視光発光側内部空間の開口部にはガラス7cが設けられる。
【0133】
このような構成を有する蛍光検出部32において、UV照射部5からの紫外線は、上述した実施の形態1の場合と同様に、ガラス7aを透過して紙葉類Mの検査領域Maに到達する。この場合、かかる紫外線によって検査領域Maの蛍光インクから発生したUV蛍光は、レンズ6a、光学フィルタ34b、およびレンズ6cを順次透過して受光部8の受光領域に集光される。なお、光学フィルタ34bは、かかる検査領域Maから反射した紫外線を遮断する。
【0134】
一方、可視光照射部33からの可視光線は、かかるUV照射部5による紫外線と交互に検査領域Maに到達する。この場合、可視光照射部33からの可視光線は、上述したUV照射部5からの紫外線と略同様に、可視光発光側内部空間の開口部によって空間的な照射範囲が制限されつつ、ガラス7cを透過して紙葉類Mの検査領域Maに到達する。かかる可視光照射部33からの可視光線は、UV照射部5からの紫外線に追随して検査領域Ma(例えば蛍光インクの付着領域)に対して線状に照射される。
【0135】
かかる可視光照射部33からの可視光線によって検査領域Maの蛍光インクから発生した可視蛍光は、上述したUV蛍光と略同様にレンズ6a、光学フィルタ34b、およびレンズ6cを順次透過し、受光部8の受光領域に集光される。この場合、かかる可視光線の照射によって検査領域Maから反射した反射光(上述した可視蛍光を除く可視光線)は、レンズ6aを透過後、光学フィルタ34bによって遮断される。
【0136】
つぎに、光学フィルタ34bの光透過帯域Wについて説明する。図17は、光学フィルタ34bの光透過帯域Wの一例を示す模式図である。なお、図17には、UV照射部5によって照射される紫外線の波長帯域と光強度との関係を示す曲線B1と、可視光照射部33によって照射される可視光線の波長帯域と光強度との関係を示す曲線B2と、UV照射部5からの紫外線によって蛍光インクから発生したUV蛍光の波長帯域と光強度との関係を示す曲線B3と、可視光照射部33からの可視光線によって蛍光インクから発生した可視蛍光の波長帯域と光強度との関係を示す曲線B4とが図示されている。
【0137】
図17に示すように、UV照射部5は、中心波長が380nm近傍であって400nm以下の波長帯域(図17の曲線B1を参照)の紫外線を照射する。かかる紫外線が照射された真の蛍光インクは、中心波長が530nm近傍であって510〜550nmの波長帯域(図17の曲線B3を参照)のUV蛍光を発生する。一方、可視光照射部33は、中心波長が450nm近傍であって400〜500nmの波長帯域(図17の曲線B2を参照)の可視光線を照射する。すなわち、可視光照射部33は、UV照射部5によって照射される紫外線の波長帯域とこの紫外線によって蛍光インクから発生するUV蛍光の波長帯域との間の波長帯域の可視光線を照射する。かかる可視光線が照射された偽の蛍光インクは、中心波長が570nm近傍であって530〜610nmの波長帯域(図17の曲線B4を参照)の可視蛍光を発生する。なお、真の蛍光インクは、かかる可視光線が照射された場合、蛍光を発生しない。
【0138】
ここで、光学フィルタ34bは、このようなUV蛍光および可視蛍光を透過し、且つ、紙葉類Mから反射した紫外線および可視光線(可視蛍光を除く)を遮断する。このような光学フィルタ34bは、図17に示すように、曲線B2によって示される可視光線の波長帯域と曲線B3によって示されるUV蛍光の波長帯域との間に設定される波長(例えば500nm近傍)以上の波長帯域を光透過帯域Wに設定される。かかる光透過帯域Wを有する光学フィルタ34bは、紙葉類Mの検査領域MaからのUV蛍光および可視蛍光を透過するとともに、この検査領域Maからの紫外線と可視蛍光を除く可視光線とを確実に遮断する。
【0139】
つぎに、紙葉類Mの真偽判別処理を行う制御部35の動作について説明する。図18は、UV蛍光画像データと可視蛍光画像データとを用いて紙葉類Mの真偽を判別する真偽判別処理の処理手順を例示するフローチャートである。図18に示すように、まず、制御部35は、上述したステップS101と同様に、n列分のUV蛍光信号S2とn列分の可視蛍光信号S6とを取得する(ステップS301)。この場合、制御部35は、かかるn列分の可視蛍光信号S6として、可視光線の照射によって紙葉類Mの検査領域Maにおけるn列の走査ラインを順次走査して生成される複数の可視蛍光信号S6を取得する。
【0140】
続いて、制御部35は、上述したステップS102と同様に、かかるn列分のUV蛍光信号S2をもとにUV蛍光画像データを生成し、さらに、かかるn列分の可視蛍光信号S6をもとに可視蛍光画像データを生成する(ステップS302)。この場合、画像処理部35aは、上述した実施の形態1の画像処理部14aと同様にn列分の一次元データを二次元配列してUV蛍光画像データを生成する。さらに、画像処理部35aは、かかるn列分の可視蛍光信号S6をもとに、紙葉類Mの検査領域Maを可視光線によって走査した1列からn列の走査ラインの一次元データを取得し、かかるn列分の一次元データを二次元配列することによって可視蛍光画像データを生成する。なお、かかる画像処理部35aによって生成された可視蛍光画像データは、上述した可視光線の照射によって面的に走査された紙葉類Mの検査領域Maの画像データである。
【0141】
その後、制御部35は、上述したステップS103と同様に、かかるUV蛍光画像データに含まれる1以上の蛍光粒子(すなわちUV照射時の蛍光粒子)を検出する(ステップS303)。この場合、画像処理部35aは、上述した実施の形態1の画像処理部14aと同様に、投影画像形成画素によって形成される1以上の蛍光粒子を画素単位に検出し、検出した1以上の蛍光粒子(すなわち投影画像形成画素の集合体)に対して上述したラベリング処理を行う。
【0142】
つぎに、制御部35は、上述したステップS104と同様に、かかるUV蛍光画像データをもとに検出した1以上の蛍光粒子(UV照射時の蛍光粒子)の特徴の一例である幾何学的なパラメータを抽出する(ステップS304)。その後、制御部35は、ステップS302において生成した可視蛍光画像データをもとに、紙葉類Mの検査領域Maに対する可視光照射時の可視蛍光の有無を判定する(ステップS305)。この場合、真偽判別部35cは、上述した可視蛍光画像データを形成する画素群の中に、かかる検査領域Maからの可視蛍光を受光部8が受光した旨を示す“1”または“ハイレベル(H)”の出力値を有する画素を検出することによって、かかる検査領域Maに対する可視光照射時の可視蛍光を有りと判定する。一方、真偽判別部35cは、かかる可視蛍光を受光部8が受光した旨を示す画素を検出しなかった場合、検査領域Maに対する可視光線照射時の可視蛍光を無しと判定する。
【0143】
その後、制御部35は、ステップS303において抽出した蛍光粒子の特徴とステップS305において判定した可視蛍光有無の判定結果とをもとに、紙葉類Mの真偽を判別する(ステップS306)。この場合、真偽判別部35cは、まず、上述した実施の形態1の真偽判別部14cと同様に(すなわちステップS105と同様に)、UV照射時の蛍光粒子の特徴の一例である幾何学的なパラメータをもとに紙葉類Mの真偽を判別する。
【0144】
ここで、真偽判別部35cは、かかるUV照射時の蛍光粒子の特徴に基づいた真偽判別処理(第1の真偽判別処理)によって紙葉類Mを真の紙葉類であると判別した場合、上述した可視蛍光有無の判定結果をもとに、この第1の真偽判別処理の結果が的確なものであるか否かを確認する第2の真偽判別処理を行う。かかる第2の真偽判別処理において、真偽判別部35cは、かかる可視蛍光有無の判定結果が「可視光照射時の可視蛍光有り」を示すものである場合、かかる第1の真偽判別処理によって真の紙葉類であると判別した紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別し直す。これに対し、真偽判別部35cは、かかる可視蛍光有無の判定結果が「可視光照射時の可視蛍光無し」を示すものである場合、かかる第1の真偽判別処理によって真の紙葉類であると判別した紙葉類Mを真の紙葉類であると最終的に判別する。
【0145】
一方、真偽判別部35cは、かかる第1の真偽判別処理によって紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別した場合、上述した可視蛍光有無の判定結果によらず、この紙葉類Mを偽の紙葉類であると最終的に判別する。
【0146】
その後、制御部35は、ステップS306において最終的に判別した紙葉類Mの真偽判別結果を出力するように出力部13を制御する(ステップS307)。この場合、出力部13は、かかる紙葉類Mの最終的な真偽判別結果を示す情報(文字、数字、記号等)を画面に表示し、または、かかる紙葉類Mの最終的な真偽判別結果を示す発光パターンまたは発光色の可視光を出力する。あるいは、出力部13は、かかる紙葉類Mの最終的な真偽判別結果を紙面等にプリント出力する。かかる出力部13によって出力された最終的な真偽判別結果を視認することによって、ユーザは、鑑別対象の紙葉類Mが真偽いずれのものであるかを確実に判別することができる。
【0147】
つぎに、鑑別対象の紙葉類Mの検査領域Maに対して紫外線と可視光線とを交互に照射して紙葉類Mの真偽を判別する制御部35の動作を具体的には説明する。図19は、紫外線と可視光線とを交互に照射して紙葉類Mの検査領域Maを面的に走査する状態を例示する模式図である。図20は、UV照射時の蛍光粒子の特徴と可視蛍光有無の判定結果とをもとに紙葉類Mの真偽を判別する制御部35の最終的な判別パターンを例示する模式図である。
【0148】
図19に示すように、制御部35は、所定の搬送方向に沿って紙葉類Mを搬送するように搬送部2の駆動部2dを制御するとともに、紫外線と可視光線とを交互に照射して紙葉類Mの検査領域Maを面的に走査するようにUV照射部5と可視光照射部33と受光部8とを制御する。この場合、UV照射部5は、上述したように、かかる紙葉類Mの検査領域Maにおける1,2,・・・,(n−1),n列の各走査ラインに対して順次、紫外線を線状に照射し、かかる検査領域Maを所定の走査方向に沿って面的に走査する。また、可視光照射部33は、かかるUV照射部5に追随して、かかる紙葉類Mの検査領域Maにおける1,2,・・・,(n−1),n列の各走査ラインに対して順次、可視光線を線状に照射し、かかる検査領域Maを所定の走査方向に沿って面的に走査する。
【0149】
受光部8は、かかるUV照射部5からの紫外線によって検査領域Maの各走査ラインの蛍光インクから発生したUV蛍光を単位時間t毎に順次受光し、かかる走査ライン毎に発生したUV蛍光の受光結果を示すUV蛍光信号S1を順次生成する。さらに、受光部8は、かかる可視光照射部33からの可視光線によって検査領域Maの各走査ラインの蛍光インクから発生した可視蛍光を単位時間t毎に順次受光し、かかる可視蛍光の受光結果を示す可視蛍光信号S5を順次生成する。
【0150】
制御部35は、このように生成されたn列分のUV蛍光信号S1を順次デジタル化したn列分のUV蛍光信号S2をもとにUV蛍光画像データを生成する。また、制御部35は、このように生成されたn列分の可視蛍光信号S5を順次デジタル化したn列分の可視蛍光信号S6をもとに可視蛍光画像データを生成する。制御部35は、かかるUV蛍光画像データから検出したUV照射時の蛍光粒子の特徴(幾何学的なパラメータ)と、かかる可視蛍光画像データをもとに判定した可視光線照射時の可視蛍光有無の判定結果とをもとに、紙葉類Mの真偽を判別する。
【0151】
具体的には、図20の判別パターン#1に示すように、真偽判別部35cは、UV照射時の蛍光粒子の特徴に基づいた第1の真偽判別処理によって紙葉類Mの真偽を判別した結果(UV蛍光画像データによる判別結果)が「真」であり、且つ、上述した可視蛍光画像データに基づいた蛍光有無の判定結果が「可視蛍光照射時の可視蛍光無し」を示すものである場合、この紙葉類Mを真の紙葉類であると最終的に判別する。また、図20の判別パターン#2に示すように、真偽判別部35cは、かかるUV蛍光画像データによる判別結果が「真」であり、且つ、かかる蛍光有無の判定結果が「可視蛍光照射時の可視蛍光有り」を示すものである場合、この紙葉類Mを偽の紙葉類であると最終的に判別する。
【0152】
真偽判別部35cは、このように2段階の真偽判別処理を行って紙葉類Mの真偽を判別することによって、蛍光インクを付着させた紙葉類Mの真偽を確実に判別でき、例えば真の蛍光インクによる偽造防止策を偽の蛍光インクによって模倣した偽の紙葉類を「偽」であると確実に判別することができる。
【0153】
一方、図20の判別パターン#3,#4に示すように、真偽判別部35cは、かかるUV蛍光画像データによる判別結果が「偽」である場合、かかる蛍光有無の判定結果、すなわち可視蛍光照射時の可視蛍光の有無によらず、紙葉類Mを偽の紙葉類であると最終的に判別する。
【0154】
以上、説明したように、本発明の実施の形態3では、紙葉類の所定の検査領域に紫外線と可視光線とを交互に照射してこの検査領域を面的に走査し、この検査領域の走査結果を示すUV蛍光画像データと可視蛍光画像データとを生成し、上述した実施の形態1と同様に、UV照射時の蛍光粒子の特徴である幾何学的なパラメータをもとに紙葉類の真偽を判別し、さらに、かかる可視蛍光画像データに基づいて判定した可視蛍光有無の判定結果をもとに、この紙葉類の真偽を再度判別するように構成した。このため、上述した実施の形態1の作用効果を享受するとともに、蛍光インクを付着させた紙葉類の真偽をより的確に判別できる紙葉類鑑別装置を実現することができる。
【0155】
かかる紙葉類鑑別装置を用いることによって、真の蛍光インクと略同様の蛍光特性(蛍光波長、蛍光強度等)を有する偽の蛍光インクによって偽造防止策を模倣した偽の紙葉類を確実に除外することができる。
【0156】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4について説明する。上述した実施の形態2では、搬送路2a内を搬送する紙葉類Mの検査領域Maから発生した蛍光を光学系6が集光し、かかる光学系6によって集光された蛍光を受光部24が受光していたが、この実施の形態4では、さらに、光学系6によって形成される焦点の位置に紙葉類Mを搬送可能な状態で押し付けるようにし、かかる焦点と紙葉類Mの検査領域Maとを確実に合わせるようにしている。
【0157】
図21は、本発明の実施の形態4にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。図21に示すように、この実施の形態4にかかる紙葉類鑑別装置41は、上述した実施の形態2にかかる紙葉類鑑別装置21の蛍光検出部22に代えて蛍光検出部42を有し、光学系6によって形成される焦点Fの位置に搬送路2a内の紙葉類Mを搬送可能に押し付ける押付けローラ44をさらに有する。その他の構成は実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0158】
蛍光検出部42は、上述した実施の形態2の蛍光検出部22と同様に、紙葉類Mの検査領域Maに対して紫外線を照射し、この紫外線によって検査領域Maの蛍光インクから発生した蛍光を検出する機能を有する。かかる蛍光検出部42は、上述したUV照射部5と光学系6と受光部24とを有する。さらに、蛍光検出部42は、この受光部24と搬送路2aとの間であって搬送路2aに接する位置にガラス43を有する。この場合、光学系6は、搬送路2aに対向する側のガラス43の表面に焦点Fを形成し、かかる焦点Fの位置から到達した蛍光(すなわち検査領域Maからの蛍光)を受光部24の受光領域に集光する。
【0159】
押付けローラ44は、光学系6によって形成される焦点Fの位置に紙葉類Mを搬送可能に押し付けるよう機能する。具体的には、押付けローラ44は、紙葉類Mの搬送方向(図21を参照)に回転するローラとバネ等の弾性部材とを用いて実現され、搬送部2によって搬送路2a内を搬送される紙葉類Mを搬送可能な状態でガラス43に押し付ける。すなわち、押付けローラ44は、搬送部2による紙葉類Mの搬送を阻害せずに、この紙葉類Mの検査領域Maをガラス43に押し付ける。この場合、押付けローラ44は、バネ等の弾性部材の弾性力を用い、上述した焦点Fが形成されたガラス43の表面に紙葉類Mの検査領域Maを押し付ける。かかる押付けローラ44によってガラス43の表面に押し付けられた紙葉類Mは、このガラス43の表面に形成された焦点Fと検査領域Maの単位領域とを合わせつつ、搬送部2によって搬送される。
【0160】
つぎに、蛍光検出部42の構成および押付けローラ44の作用について詳細に説明する。図22は、蛍光検出部42の一構成例および押付けローラ44の作用を説明する模式図である。図22に示すように、蛍光検出部42は、上述した実施の形態2の蛍光検出部22のホルダ4aに代えてホルダ42aを有し、ガラス7a,7bに代えてガラス43を有する。その他の構成は実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0161】
ホルダ42aは、上述したUV照射部5、光学系6、および受光部24を保持する。具体的には、ホルダ42aに、互いに遮光された2つの内部空間(発光側内部空間、受光側内部空間)が形成される。かかるホルダ42aは、図22に示すように、発光側内部空間にUV照射部5を保持し、受光側内部空間に光学系6と受光部24とを保持する。また、ホルダ42aは、搬送路2aに接する側の端部に開口部が形成される。このホルダ42aの開口部には、ガラス43が配設される。
【0162】
ガラス43は、上述したようにホルダ42aの開口部に配設される透明なガラス板であり、UV照射部5によって発光される紫外線を透過し、この紫外線によって紙葉類Mの蛍光インクから発生する蛍光(UV蛍光)を透過する。この場合、ガラス43は、紙葉類Mの搬送路2aに接するように配置される。かかるガラス43は、光学系6のレンズ6aによって、搬送路2aに対向する側の表面に焦点Fが形成される。なお、レンズ6aは、かかるガラス43の表面に対して所定の焦点距離を有するように、ホルダ42aの受光側内部空間に配設される。
【0163】
このような構成を有する蛍光検出部42において、UV照射部5からの紫外線は、ホルダ42aの発光側内部空間の開口部42bによって空間的な照射範囲が制限されつつ、ガラス43を透過する。この場合、かかる紫外線は、このガラス43の表面に形成された焦点Fの位置に照射される。
【0164】
ここで、押付けローラ44は、かかる焦点Fが形成されたガラス43の表面に対して紙葉類Mを搬送可能に押し付ける。この場合、紙葉類Mの検査領域Maは、かかる押付けローラ44の作用によってガラス43の表面上の焦点Fの位置に押し付けられるとともに、UV照射部5からの紫外線が照射される。この検査領域Maに蛍光インクが付着していれば、この検査領域Maの蛍光インクは、上述した焦点Fの位置において走査ラインの単位領域毎に蛍光を発生する。
【0165】
このように焦点Fの位置において発生した蛍光(検査領域Maからの蛍光)は、ガラス43を透過し、その後、ホルダ42aの受光側内部空間の開口部42cによって空間的な照射範囲が制限されつつ、光学系6のレンズ6aによって到達する。かかる検査領域Maからの蛍光は、かかるレンズ6aによって集光され、平行光線の状態で光学フィルタ6bに到達する。
【0166】
その後、かかる検査領域Maからの蛍光は、光学フィルタ6bを透過後、レンズ6cによって受光部24の受光領域に集光される。この場合、受光部24は、上述した押付けローラ44の作用によって焦点Fに検査領域Maを常時一致させた状態で検査領域Maからの蛍光を受光できる。このような受光部24は、かかる蛍光を発生した蛍光粒子を常時鮮明に撮像することができ、かかる蛍光の光強度を正しく検出することができる。かかる受光部24によって生成されたUV蛍光信号S3は、検査領域Maからの蛍光の光強度を略正確に示すデータ出力値を有する。
【0167】
以上、説明したように、本発明の実施の形態4では、上述した実施の形態2の構成および機能を有し、さらに、受光部の受光領域に蛍光を集光する光学系の焦点の位置に対して、搬送路内の紙葉類を搬送可能に押し付けるように構成した。このため、紙葉類(特に検査領域)に不必要な折り目等の凹凸が形成されている場合であっても、この紙葉類の検査領域(例えば蛍光インクの付着領域)と光学系の焦点とを確実に合わせることができる。この結果、この紙葉類の検査領域を光学系の焦点に常時一致させた状態で蛍光を受光でき、上述した実施の形態2の作用効果を享受するとともに、紙葉類の真偽判別結果の正確さをより高めることができる紙葉類鑑別装置を実現できる。
【0168】
(実施の形態5)
つぎに、本発明の実施の形態5について説明する。上述した実施の形態4では、押付けローラ44を用いて紙葉類Mの検査領域Maをガラス43の表面に押し付け、これによって検査領域Maを焦点Fに一致させていたが、この実施の形態5では、UV照射部5からの紫外線の照射領域内であって搬送路2aを斜めに横断する斜線上にライン状焦点を形成し、かかるライン状焦点と検査領域Maとが交差するように紙葉類Mを搬送している。
【0169】
図23は、本発明の実施の形態5にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。図23に示すように、この実施の形態5にかかる紙葉類鑑別装置51は、上述した実施の形態2にかかる紙葉類鑑別装置21の蛍光検出部22に代えて蛍光検出部52を有する。その他の構成は実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0170】
蛍光検出部52は、上述した実施の形態2の蛍光検出部22と同様に、紙葉類Mの検査領域Maに対して紫外線を照射し、この紫外線によって検査領域Maの蛍光インクから発生した蛍光を検出する機能を有する。具体的には、蛍光検出部52は、上述した実施の形態2の蛍光検出部22と同様にUV照射部5を有し、この蛍光検出部22の光学系6に代えて光学系53を有し、この蛍光検出部52の受光部24に代えて受光部54を有する。
【0171】
つぎに、蛍光検出部52の構成について詳細に説明する。図24は、実施の形態5にかかる紙葉類鑑別装置51の蛍光検出部52の一構成例を示す模式図である。図24に示すように、蛍光検出部52は、上述した実施の形態2の蛍光検出部22と同様にUV照射部5を有し、この蛍光検出部22のホルダ4aに代えてホルダ52aを有し、この蛍光検出部22の光学系6に代えて光学系53を有し、この蛍光検出部22の受光部24に代えて受光部54を有する。
【0172】
ホルダ52aは、UV照射部5、光学系53、および受光部54を保持する。具体的には、ホルダ52aは、搬送路2a内を搬送する紙葉類Mに対して紫外線を照射できる態様でUV照射部5を保持する。また、ホルダ52aは、搬送路2aに対して傾斜する態様で光学系53を保持し、光学系53によって集光された蛍光を受光できる態様で受光部54を保持する。
【0173】
光学系53は、UV照射部5によって紙葉類Mの検査領域Maに紫外線が照射された際に検査領域Maの蛍光インクから発生した蛍光(UV蛍光)を受光部54の受光領域に集光するとともに、かかる紫外線の照射によって検査領域Maから反射した紫外線(反射紫外線)を遮断する。具体的には、光学系53は、シリンドリカルレンズ53a,53cと上述した光学フィルタ6bとを組み合わせて実現され、図24に示すように搬送路2aに対して斜めに配置される。
【0174】
シリンドリカルレンズ53aは、上述したUV照射部5による紫外線の照射領域内に該当する搬送路2a内にライン状焦点FLを形成し、このライン状焦点FL上の各焦点位置からの蛍光を集光する。具体的には、シリンドリカルレンズ53aは、かかる紫外線の照射領域内であって搬送路2aを斜めに横断する斜線に沿ってライン状焦点FLを形成する。この場合、ライン状焦点FLは、例えば図24に示すように、搬送路2aを形成する両側の各ガイド2bをそれぞれ斜めに横断するように形成される。かかるライン状焦点FLは、上述した焦点Fを一次元的に配列した焦点群であり、図24のZ軸によって規定される搬送路2a内の高さ方向の全位置に対応して焦点Fを含む。例えば、ライン状焦点FLは、搬送路2a内の高さZ1,Z2にそれぞれ対応する各焦点位置a1,a2に焦点Fをそれぞれ含む。
【0175】
シリンドリカルレンズ53cは、上述したシリンドリカルレンズ53aに対してほぼ平行に配設され、光学フィルタ6bを透過した蛍光、すなわち、上述したライン状焦点FLに含まれる各焦点Fのいずれかに一致した検査領域Maからの蛍光を受光部54の受光領域に集光する。このようなシリンドリカル53cは、例えば、ライン状焦点FLと紙葉類Mの検査領域Maとが焦点位置a1において交差した場合、この焦点位置a1の焦点Fに一致した検査領域Maの単位領域(例えば走査ラインC上の単位領域)からの蛍光を受光部54の受光領域に集光する。このことは、ライン状焦点FLのほかの焦点位置(例えば焦点位置a2)についても同様である。
【0176】
なお、光学フィルタ6bは、かかるシリンドリカルレンズ53a,53cの間に配設され、シリンドリカルレンズ53aを透過した光のうちの紫外線を遮断する。すなわち、光学フィルタ6bは、上述したライン状焦点FLに含まれる各焦点Fのいずれかに一致した検査領域Maからの蛍光を透過するとともに、この検査領域Maから反射した紫外線を遮断する。
【0177】
受光部54は、例えば一次元配列されたフォトダイオードアレイまたはラインCCDと所定の駆動回路とを用いて実現される。受光部54は、紙葉類の偽造防止策に用いられる真の蛍光インクの蛍光粒子径に比して小さいサイズの画素であって、偽の蛍光インクの蛍光粒子径に比して大きいサイズの画素を複数有する。かかる複数の画素は、上述したライン状焦点FLに含まれる各焦点Fにそれぞれ対応して一次元配列され、受光部54の受光領域を形成する。このような受光部54は、上述した実施の形態2の受光部24と略同様に、紙葉類Mの検査領域Maからの蛍光を光電変換してUV蛍光信号S3を単位時間t毎に生成する。この場合、受光部54は、かかる一次元配列した複数の画素のいずれかを介して、上述したライン状焦点FLに含まれる各焦点Fのいずれかに一致した検査領域Maからの蛍光を受光し、受光した検査領域Maからの蛍光を光電変換してUV蛍光信号S3を生成する。
【0178】
つぎに、上述したような構成を有する蛍光検出部52の動作について詳細に説明する。図25は、ライン状焦点FLに交差した紙葉類Mの検査領域Maからの蛍光を受光する状態を例示する模式図である。図26は、ライン状焦点FL上の焦点Fに一致した検査領域Maからの蛍光に対応するUV蛍光信号S3を生成する受光部54の動作を説明するための模式図である。
【0179】
搬送部2は、蛍光検出部52に対して鑑別対象の紙葉類Mを非接触の状態に維持しつつ、この紙葉類Mの検査領域Maとライン状焦点FLとが交差するように、この紙葉類Mを搬送する。かかる搬送部2によって搬送される紙葉類Mは、図25に示すように、シリンドリカルレンズ53aによって搬送路2a内に形成されたライン状焦点FLを横切るように、UV照射部5からの紫外線の照射領域内を通過する。この場合、紙葉類Mの検査領域Maは、かかる紫外線の照射領域内においてライン状焦点FLに交差し、このライン状焦点FLに含まれる焦点Fのいずれかに一致する。
【0180】
例えば図25に示すように、搬送路2a内の高さZ2に対応する焦点位置a2においてライン状焦点FLと検査領域Maとが交差した場合、UV照射部5からの紫外線は、この焦点位置a2の焦点Fに一致した検査領域Maに照射され、この検査領域Maに付着した蛍光インクから蛍光を発生させる。かかる検査領域Maからの蛍光は、この検査領域Maと焦点Fとが一致した状態でシリンドリカルレンズ53aに集光され、その後、光学フィルタ6bを透過し、シリンドリカルレンズ53cによって受光部54の受光領域に集光される。この場合、受光部54は、かかる焦点位置a2における焦点Fに対応する画素54aを介して、この検査領域Maからの蛍光を受光する。
【0181】
このように、受光部54は、かかるライン状焦点FL上の焦点位置a2に対応する画素54aを介して、この焦点位置a2における焦点Fに一致した検査領域Maからの蛍光を受光する。このことは、搬送路2a内の高さ方向(図25のZ軸によって規定)のいずれの位置、言い換えれば、ライン状焦点FLと紙葉類Mの検査領域Maとの交点であるライン状焦点FL上のいずれの焦点位置についても同様である。すなわち、受光部54は、一次元配列された複数の画素のうちのいずれかの画素を介し、ライン状焦点FL上に含まれるいずれかの焦点位置の焦点Fに一致した状態の検査領域Maからの蛍光を受光する。
【0182】
このように検査領域Maからの蛍光を受光した受光部54は、受光した蛍光を光電変換してUV蛍光信号S3を生成する。この場合、受光部54は、保有する複数の画素のうちのいずれかを介して検査領域Maからの蛍光を受光すれば、蛍光有りを示すデータを含むUV蛍光信号S3を生成し、かかる複数の画素に含まれるいずれの画素においても検査領域Maからの蛍光を受光しなければ、蛍光無しを示すUV蛍光信号S3を生成する。
【0183】
具体的には、受光部54は、例えば図26に示すように、一次元配列された複数の画素のうちの画素54a(図25に示したライン状焦点FL上の焦点位置a2に対応する画素)を介して検査領域Maからの蛍光を受光した場合、蛍光有りを示すデータ(すなわちA/D変換部10に設定した所定の閾値以上の出力値を有するデータ)を含むUV蛍光信号S3を生成する。かかる蛍光有りを示すUV蛍光信号S3は、上述したA/D変換部10によってハイレベル(H)のUV蛍光信号S4にデジタル変換される。これに対し、受光部54は、保有する複数の画素のいずれの画素においても検査領域Maからの蛍光を受光しなかった場合、蛍光無しを示すデータ(すなわちA/D変換部10に設定した所定の閾値未満の出力値を有するデータ)を含むUV蛍光信号S3を生成する。かかる蛍光無しを示すUV蛍光信号S3は、上述したA/D変換部10によってローレベル(L)のUV蛍光信号S4にデジタル変換される。
【0184】
以上、説明したように、本発明の実施の形態5では、上述した実施の形態2の構成および機能を有し、さらに、UV照射部による紫外線の照射領域内であって紙葉類の搬送路内に、この搬送路を斜めに横断する斜線に沿ってライン状焦点を形成し、かかるライン状焦点と紙葉類の検査領域とが交差するように紙葉類を搬送するように構成した。このため、紙葉類(特に検査領域)に不必要な折り目等の凹凸が形成されている場合であっても、蛍光検出部に対して鑑別対象の紙葉類を非接触の状態に維持しつつ、この紙葉類の検査領域(例えば蛍光インクの付着領域)とライン状焦点のうちのいずれかの焦点(すなわち光学系の焦点)とを確実に合わせることができる。この結果、この紙葉類の検査領域と光学系の焦点とを常時一致させた状態で蛍光を受光でき、上述した実施の形態2の作用効果を享受するとともに、紙葉類の真偽判別結果の正確さをより高めることができる紙葉類鑑別装置を実現できる。さらに、この紙葉類を蛍光検出部に対して非接触の状態に維持しつつ搬送できるので、搬送路内における紙葉類の紙詰まり等の搬送エラーを防止することができる。
【0185】
なお、本発明の実施の形態4にかかる紙葉類鑑別装置41は、上述した実施の形態2にかかる紙葉類鑑別装置21と同様にスキャンデータの信号パターンをもとに紙葉類の真偽を判別していたが、これに限らず、上述した実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置1と同様に蛍光粒子の幾何学的なパラメータをもとに紙葉類の真偽を判別してもよい。具体的には、かかる実施の形態4の変形例1にかかる紙葉類鑑別装置は、上述した実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置1に対して押付けローラ44を追加したものと略同様の構成を有する。この場合、実施の形態4の変形例1にかかる紙葉類鑑別装置の蛍光検出部4は、例えば図27に示すように、上述したホルダ4aをホルダ42aに代えたものにし、かかる蛍光検出部4のホルダ42aの開口部に配設されたガラス43の表面(すなわちレンズ6aによって形成される焦点の位置)に対して押付けローラ44が紙葉類Mの検査領域Maを押し付けるように構成すればよい。
【0186】
また、本発明の実施の形態4にかかる紙葉類鑑別装置41は、上述した実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置31と同様に蛍光粒子の幾何学的なパラメータと可視蛍光有無の判定結果とをもとに紙葉類の真偽を判別してもよい。具体的には、かかる実施の形態4の変形例2にかかる紙葉類鑑別装置は、上述した実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置31に対して押付けローラ44を追加したものと略同様の構成を有する。この場合、実施の形態4の変形例2にかかる紙葉類鑑別装置の蛍光検出部32は、例えば図28に示すように、上述したホルダ32aの開口部にガラス43を配設したものにし、かかるホルダ32aに配設されたガラス43の表面(すなわちレンズ6aによって形成される焦点の位置)に対して押付けローラ44が紙葉類Mの検査領域Maを押し付けるように構成すればよい。
【0187】
さらに、本発明の実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置31は、鑑別対象の紙葉類の検査領域に対して紫外線と可視光線とを交互に照射し、紫外線照射時に検出される蛍光粒子の幾何学的なパラメータと可視光線照射時における可視蛍光有無の判定結果とをもとに紙葉類の真偽を判別していたが、これに限らず、紙葉類の検査領域に対して紫外線を照射した際の蛍光(UV蛍光)の有無と可視光線を照射した際の蛍光(可視蛍光)の有無とに基づいて紙葉類の真偽を判別してもよい。
【0188】
具体的には、真偽判別部35cは、紙葉類Mの検査領域Maに対して紫外線を照射した際に検査領域Maから発生したUV蛍光を光電変換したUV蛍光信号をもとに、検査領域Maに対するUV照射時の蛍光有無を判定する。また、真偽判別部35cは、かかる紫外線に追随して検査領域Maに可視光線を照射した際に検査領域Maから発生した可視蛍光を光電変換した可視蛍光信号をもとに、検査領域Maに対する可視光照射時の蛍光有無を判定する。真偽判別部35cは、かかるUV照射時における蛍光有無の判定結果と可視光照射時における蛍光有無の判定結果とをもとに、紙葉類Mの真偽を判別してもよい。この場合、真偽判別部35cは、例えば図29に示すように、「UV照射時に蛍光有り」且つ「可視光照射時に蛍光無し」(判別パターン#5)であれば、紙葉類Mを真の紙葉類であると判別し、「UV照射時に蛍光有り」且つ「可視光照射時に蛍光有り」(判別パターン#6)、「UV照射時に蛍光無し」且つ「可視光照射時に蛍光無し」(判別パターン#7)、「UV照射時に蛍光無し」且つ「可視光照射時に蛍光有り」(判別パターン#8)のいずれかであれば、紙葉類Mを偽の紙葉類であると判別してもよい。
【0189】
また、本発明の実施の形態1〜3では、鑑別対象の紙葉類Mの検査領域Maに紫外線を照射するUV照射部(UV照射部5)と検査領域Maからの蛍光を集光する光学系(光学系6,34,53)とを紙葉類Mに対して同じ側の各位置にそれぞれ配置していたが、これに限らず、紙葉類Mを境界にして互いに対向する各位置に、かかるUV照射部と光学系とをそれぞれ配置してもよい。この場合、かかる光学系の光学フィルタは、紙葉類Mの検査領域Maを透過した紫外線を遮断する。
【0190】
さらに、本発明の実施の形態1,3では、蛍光粒子の特徴の一例である幾何学的なパラメータとして蛍光粒子の粒子径を抽出していたが、これに限らず、かかる幾何学的なパラメータとして蛍光粒子の面積または周囲長を画素単位に抽出してもよい。また、紙葉類Mの真偽判定処理に用いる蛍光粒子の幾何学的なパラメータは、蛍光粒子径のみに限らず、蛍光粒子の粒子径、面積、および周囲長の少なくとも一つであればよい。
【0191】
また、本発明の実施の形態2,4,5では、紙葉類Mの検査領域Maを一次元的に走査したスキャンデータの信号パターンに含まれるハイレベル信号およびローレベル信号がともにランダムに繰り返される場合、かかる信号パターンに含まれるハイレベル信号の総出力回数Q3をもとに紙葉類Mの真偽を判別していたが、これに限らず、かかる総出力回数Q3は、この信号パターンに含まれるローレベル信号の総出力回数であってもよい。
【0192】
さらに、本発明の実施の形態1〜4では、紙葉類Mの搬送路2aと上述した受光部(受光部8,24,54)との間に配設される透明部材、すなわち、紙葉類Mの検査領域Maからの蛍光等を透過する透明部材として透明なガラス板を用いていたが、これに限らず、かかる透明部材は、少なくとも検査領域Maからの蛍光(UV蛍光、可視蛍光)を透過する透明な樹脂板であってもよい。
【0193】
また、本発明の実施の形態1〜5では、単一のフォトダイオード、一次元配列されたフォトダイオードアレイ、またはラインCCDを受光部に用いていたが、これに限らず、複数の画素を二次元的に配列した二次元CCDを受光部に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0194】
以上のように、本発明に係る紙葉類鑑別装置は、蛍光インクを付着させた紙葉類の真偽真偽判別処理に有用であり、特に、偽造防止策として真の蛍光インクを付着させた真の紙葉類と偽造防止策を模倣する偽の蛍光インクを付着させた偽の紙葉類とを鑑別する紙葉類鑑別装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる紙葉類鑑別装置の蛍光検出部の一構成例を示す模式図である。
【図3】UV蛍光画像データを用いて紙葉類の真偽を判別する真偽判別処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【図4】蛍光インクを付着させた紙葉類の検査領域を紫外線の照射によって面的に走査する状態を例示する模式図である。
【図5】UV蛍光画像データを用いて真の紙葉類を判別する際の制御部の動作を説明するための模式図である。
【図6】UV蛍光画像データを用いて偽の紙葉類を判別する際の制御部の動作を説明するための模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。
【図8】実施の形態2にかかる紙葉類鑑別装置の蛍光検出部の一構成例を示す模式図である。
【図9】紙葉類の検査領域のスキャンデータを用いて紙葉類の真偽を判別する真偽判別処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【図10】蛍光インクを付着させた紙葉類の検査領域を紫外線の照射によって一次元的に走査する状態を例示する模式図である。
【図11】スキャンデータの信号パターンをもとに真の紙葉類を判別する制御部の動作を説明するための模式図である。
【図12】スキャンデータの信号パターンをもとに偽の紙葉類を判別する制御部の動作を説明するための模式図である。
【図13】検査領域に蛍光インクを付着させていない偽の紙葉類を判別する制御部の動作を説明するための模式図である。
【図14】スキャンデータの信号パターンをもとに別態様の偽の紙葉類を判別する制御部の動作を説明するための模式図である。
【図15】本発明の実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。
【図16】実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置の蛍光検出部の一構成例を示す模式図である。
【図17】光学フィルタの光透過帯域の一例を示す模式図である。
【図18】UV蛍光画像データと可視蛍光画像データとを用いて紙葉類の真偽を判別する真偽判別処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【図19】紫外線と可視光線とを交互に照射して紙葉類の検査領域を面的に走査する状態を例示する模式図である。
【図20】UV照射時の蛍光粒子の特徴と可視蛍光有無の判定結果とをもとに紙葉類の真偽を判別する制御部の最終的な判別パターンを例示する模式図である。
【図21】本発明の実施の形態4にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。
【図22】蛍光検出部の一構成例および押付けローラの作用を説明する模式図である。
【図23】本発明の実施の形態5にかかる紙葉類鑑別装置の一構成例を模式的に示すブロック図である。
【図24】実施の形態5にかかる紙葉類鑑別装置の蛍光検出部の一構成例を示す模式図である。
【図25】ライン状焦点に交差した紙葉類の検査領域からの蛍光を受光する状態を例示する模式図である。
【図26】ライン状焦点上の焦点に一致した検査領域からの蛍光に対応するUV蛍光信号を生成する受光部の動作を説明するための模式図である。
【図27】実施の形態4の変形例1にかかる紙葉類鑑別装置の蛍光検出部の一構成例を例示する模式図である。
【図28】実施の形態4の変形例2にかかる紙葉類鑑別装置の蛍光検出部の一構成例を例示する模式図である。
【図29】実施の形態3にかかる紙葉類鑑別装置による紙葉類の別の真偽判別パターンを例示する模式図である。
【符号の説明】
【0196】
1,21,31,41,51 紙葉類鑑別装置
2 搬送部
2a 搬送路
2b ガイド部材
2c 搬送ローラ
2d 駆動部
3 紙葉類検知センサ
4,22,32,42,52 蛍光検出部
4a,32a,42a ホルダ
5 UV照射部
6,34,53 光学系
6a,6c レンズ
6b,34b 光学フィルタ
7a,7b,7c,43 ガラス
8,24,54 受光部
9 増幅部
10 A/D変換部
11 入力部
12 記憶部
13 出力部
14,25,35 制御部
14a,35a 画像処理部
14b,25b 特徴抽出部
14c,25c,35c 真偽判別部
25a 走査処理部
33 可視光照射部
42b,42c 開口部
44 押付けローラ
53a,53c シリンドリカルレンズ
54a 画素
a1,a2 焦点位置
C 走査ライン
D1〜D4 スキャンデータ
E 蛍光インクライン
F 焦点
FL ライン状焦点
G1,G2 連結画素群
K1,K2 蛍光粒子
M 紙葉類
Ma 検査領域
P1,P2 UV蛍光画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の所定領域に付着した蛍光インクに紫外線を照射する紫外線照射手段と、
前記紫外線によって前記蛍光インクから発生した蛍光を受光し、前記蛍光を光電変換して蛍光信号を生成する受光手段と、
前記蛍光信号をもとに、前記蛍光を発生した蛍光粒子を検出する検出手段と、
真の蛍光インクと該真の蛍光インクを模倣する偽の蛍光インクとの間で異なる前記蛍光粒子の特徴を抽出する特徴抽出手段と、
前記蛍光粒子の特徴をもとに前記紙葉類の真偽を判別する判別手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類鑑別装置。
【請求項2】
前記受光手段は、前記真の蛍光インクの蛍光粒子に比して小さく且つ前記偽の蛍光インクの蛍光粒子に比して大きいサイズの画素を有することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記蛍光信号をもとに前記紙葉類の所定領域の画像データを生成し、該画像データの画素によって形成される前記蛍光粒子を検出し、
前記特徴抽出手段は、前記検出手段によって検出された前記蛍光粒子の特徴である幾何学的なパラメータを抽出し、
前記判別手段は、前記幾何学的なパラメータをもとに前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする請求項1または2に記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項4】
前記判別手段は、前記幾何学的なパラメータを用いて区分されるグループ毎に前記蛍光粒子を分類し、該グループ毎に蛍光粒子の数量を計数する計数処理を行い、該計数処理の結果をもとに前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする請求項3に記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記蛍光信号をもとに前記紙葉類の所定領域の一次元的なスキャンデータを生成し、該スキャンデータをもとに前記蛍光粒子を検出し、
前記特徴抽出手段は、前記検出手段によって検出された前記蛍光粒子の特徴である前記スキャンデータの信号パターンを抽出し、
前記判別手段は、前記スキャンデータの信号パターンをもとに前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする請求項1または2に記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項6】
前記判別手段は、前記スキャンデータの信号パターンに含まれるハイレベル信号の連続出力回数と、ローレベル信号の連続出力回数と、前記ハイレベル信号または前記ローレベル信号の総出力回数とをもとに、前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする請求項5に記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項7】
前記紫外線の照射領域内の前記蛍光インクに可視光線を照射する可視光線照射手段をさらに備え、
前記紫外線照射手段および前記可視光線照射手段は、前記蛍光インクに対して紫外線および可視光線をそれぞれ交互に照射し、
前記受光手段は、前記可視光線によって前記蛍光インクから発生した可視蛍光を受光し、該可視蛍光を光電変換して可視蛍光信号をさらに生成し、
前記判別手段は、前記可視蛍光信号をもとに前記可視蛍光の有無を判定し、前記可視蛍光が発生した旨を判定した場合、前記紙葉類が偽であると判別することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項8】
前記可視光線照射手段は、前記紫外線の波長帯域と前記蛍光の波長帯域との間の波長帯域の前記可視光線を照射することを特徴とする請求項7に記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項9】
前記紫外線の照射領域内を通過する搬送路に沿って前記紙葉類を搬送する搬送手段と、
前記紫外線の照射領域内であって前記搬送路と前記受光手段との間に設けた透明板と、
前記搬送路に対向する前記透明板の表面に焦点を形成し、該焦点の位置からの少なくとも前記蛍光を前記受光手段に集光する光学系と、
前記透明板の表面に形成された前記焦点の位置に前記紙葉類を搬送可能に押し付ける押付けローラと、
を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項10】
前記紫外線の照射領域内を通過する搬送路に沿って前記紙葉類を搬送する搬送手段と、
前記紫外線の照射領域内であって前記搬送路を斜めに横断する斜線に沿ってライン状焦点を形成し、該ライン状焦点に含まれる焦点位置からの少なくとも前記蛍光を前記受光手段に集光する光学系と、
を備え、前記搬送手段は、前記ライン状焦点と前記紙葉類の所定領域とが交差するように前記紙葉類を搬送することを特徴とする請求項1または2に記載の紙葉類鑑別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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