説明

紙製容器の製造方法

【課題】押型により深絞り加工をする際にフランジ部に形成される折り畳み片の形状並びに形成方向が一律とするなる紙製容器の製造方法を提供する。
【解決手段】所定形状の少なくとも紙を基材とするとともに所定の予め所定の湿度に調整したシート材を押型と穴あき金型を用いる深絞り成形プレスにより皿状の収容部の開口端に沿ってフランジ部を有する皿状の収容部を形成する紙製容器の製造方法であって、形成される包装容器のフランジ部となる前記シート材の表面および裏面の所定位置に成型プレスをするときにフランジ部に所定形状の折り畳み片を所定の方向へ向けて形成するための折り畳み用の溝条を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、板製シートを圧縮成型してトレイ、箱や容器、包装材など各種の加工品を造る方法が知られているが、単に板紙を圧縮成型する場合には成型時に大きく延ばすことができないので深絞りを行うと皺がよったり破断したりしてしまうことから凹凸の深さが浅いものに限られ、また、折り曲げ角度も広く、深絞りや直角の折り曲げ角度を得ることが困難であるばかりか折り曲げ箇所の保存性も悪く加工品も浅い絞り成型による皿状のもののように用途が限られていた。
【0003】
そこで、深絞りの加工品を得る手段の1つとしてそこで、例えば特開平7−315356号公報に提示されているように、板紙部分を加湿することにより軟化させて押型により容器状に押圧成形することにより深絞り成形を可能にした手段や特開平9−76378号公報に提示されているように水溶性の各種合成樹脂液を含浸させて熱硬化させるなどの手段が知られており、これらの手段によれば強度的にも優れた成形品が得られる。
【0004】
図5は従来の深絞りによる紙製容器の製造方法の一例を示すものであり、例えば所定の湿度に調整した紙製のシート材1をそれぞれ中央に透窓21および31を形成した上側穴あき金型2と下側穴あき金型3にて挟持して前記上側穴あき金型2の透窓21と押型4を押圧挿入して図6に示すように所定深さの深絞りを行い、図7に示したような紙製容器5を形成し、例えば中央に形成された収容凹部51に被収容物(図示せず)を収容してしフランジ部52に紙製シート材による蓋体53を貼り付けて使用することができる。
【0005】
このような使用方法によると、前記成型された紙製容器5のフランジ部52を比較的幅広に形成することからフランジ部52の各角部に折り畳み片54が形成されるが、折り畳み片54を切断することなくそのままの状態で使用するので切断工程が不要で製造し易いとともに切断屑の処理をする必要もなく、使用後に元のシート状の紙片として再利用が可能であるなどの利点を有しているばかりかそのまま使用しても外観上の問題もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−315356号公報
【特許文献2】特開平9−76378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記紙製容器5は押型4により深絞り加工される際に材料となるシート材1を単に押型4により押圧するのでフランジ部52の角部に形成される折り畳み片54の形状並びに形成方向が一律でなく、外観上、見栄えが悪いという問題があり商品的な価値が低下する。また、多量生産したときに全体形状が異なると重ねて置くことができないので効率のよい保管や運搬ができないという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる問題点を解決するためになされたものであり、押型により深絞り加工をする際にフランジ部に形成される折り畳み片の形状並びに形成方向が一律とするなる紙製容器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明である紙製容器の製造方法は、所定形状の少なくとも紙を基材とするとともに所定の予め所定の湿度に調整したシート材を押型と穴あき金型を用いる深絞り成形プレスにより皿状の収容部の開口端に沿ってフランジ部を有する皿状の収容部を形成する紙製容器の製造方法であって、形成される包装容器のフランジ部となる前記シート材の表面および裏面の所定位置に成型プレスをするときにフランジ部に所定形状の折り畳み片を所定の方向へ向けて形成するための折り畳み用の溝条を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明によると、深絞り加工をしたときに材料となるシート材のフランジ部となる位置における表面および裏面の所定位置に折り畳み用の溝条を形成しておくことにより必ず所定の位置に所定形状の折り畳み片が形成される。
【0011】
また、本発明において、前記押型による成型プレスを収容部の底部を形成する予備成型ブレスと次いでフランジ部までを押圧成形する本成型ブレスの2段階にて行うとともに、前記予備成型ブレスと本成形ブレスとの間に前記折り畳み用の溝条を形成することとすれば、底部に連続して所定の位置に所定形状の折り畳み片を形成し易い。
【0012】
更に、前記折り畳み用の溝条を、前記シート材の表面および裏面に沿ってそれぞれ配置した前記シート材に前記折り畳み用の溝条を形成するための所定形状の突条が付設された一対の押圧板により形成する場合には深絞りプレス作業の流れの中で効率よく前記折り畳み用の溝条を形成することが可能である。
【0013】
更にまた、前記各押圧板が中央部に前記押型の挿通窓を有するとともに前記シート材の表面および裏面への当接面の所定の位置に押圧力により前記シート材に前記折り畳み用の溝条を形成するための所定形状の突条が付設されている場合には一連のプレス工程においてシート材の表面および裏面に簡単に溝条を形成することができ、前記各押圧板に形成される突条が適宜の剛性と弾性を有する紐状体を貼着して形成されている場合にはより確実に溝条を形成することができる。
【0014】
更にまた、前記各押圧板が前記シート材の表面および裏面への当接面に剥離層を形成している場合にはシート材に傷をつけたり破損するなどの心配がない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、板状の紙材を用いて直角に近い角度に折り曲げた深絞り成型が可能であり、製造された成型品も充分な強度を有し、特に、合成樹脂材を含んでいないので環境的にも優れており、処理や再使用にも適している。また、製造も容易で、比較的簡易な設備で自動化が可能であり、多量生産にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態である紙製容器の製造方法の概略を示す説明図。
【図2】図1に示した実施の形態において、絞り加工の概要を説明する一部断面図であり、(a)は予備成型ブレスの状態、(b)は本成型ブレスの状態を示す。
【図3】図1に示した実施の形態においてシート材に折り畳み片形成用の溝条が形成された状態を示す説明図。
【図4】図1に示した実施の形態において製造された紙製容器を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は平面図。
【図5】従来の紙製容器の製造方法の概略を示す説明図。
【図6】図5に示した実施の形態において、絞り加工の概要を説明する一部断面図。
【図7】図5に示した従来例において製造された紙製容器の斜視図。
【図8】図7に示した紙製容器の使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明である紙製容器の製造方法についての好ましい実施の形態を実施するための製造装置の一部を示すものであって、前記従来と同様に所定の湿度に調整するとともに必要なら糊のような好ましくは天然の接着剤を添加した紙製で平面矩形状を呈するシート材1を深絞り加工により上面を開口するとともに各角部に折り畳み部54を絞り形成した図4に示した紙製容器5を製造するものであり、製造に際して、前記従来例と同様に、主としてそれぞれ中央に透窓21および31を形成した上側穴あき金型2と下側穴あき金型3にて挟持して前記上側穴あき金型2の透窓21と押圧挿入して所定深さの深絞りを行う押型4を使用する。
【0019】
また、特に本実施の形態に使用する製造装置は、シート材1の表面11および裏面12に沿って配置されて前記深絞りプレス作業の流れの中で効率よく前記折り畳み部54を形成するための一対の押圧板6,7を有している。
【0020】
更に詳しく説明すると、前記各押圧板6,7は、中央部に前記押型4の挿通窓61,71を有するとともに前記シート材1の表面11または裏面12への当接面の所定の位置(本実施の形態では絞り時に折り畳み部を形成する角部)に押圧力により前記シート材1の表面11と裏面12に所定形状の折り畳み部を形成するための溝条を押圧形成するための突条62,72がそれぞれ突設されている。即ち、シート材1の表面11に沿って配置される上側の押圧板6は溝条を押圧形成するための突条62が裏面に形成されており、シート材1の裏面12に沿って配置される下側の押圧板7は溝条を押圧形成するための突条72が表面に形成されている。
【0021】
殊に、本実施の形態では前記突条62,72が例えば各押圧板6,7の所定位置に予め形成した所定形状の記(図示せず)に沿わせて屈曲可能な適宜の剛性と弾性を有する紐状体を糊や接着剤を用いて貼着させることにより簡単且つ確実に所定位置に所定形状の突条62,72を配置することができる。
【0022】
また、前記各押圧板6,7に形成される突条62,72はそれぞれ前記シート材1の表面11と裏面12とにそれぞれ谷折りと山折りの所定形状の折り畳み部を形成するための溝条を形成するものであり、押圧板6の突条62と押圧板7の突条72とは互いに絞り加工時に所定の折り畳み部が形成可能となるような関係にそれらの位置と形状が予め設定されている。
【0023】
そして、本実施の形態により紙製容器を製造するには、初めに図2(a)に示すように下側穴あき金型3の上に透窓31に透窓71を合わせて重ねた下側の押圧板7の上にシート材1を載置するとともに、その上にそれぞれの透窓61,21を前記下側穴あき金型3の上に透窓3および下側の押圧板7の透窓71に合致させて上側の押圧板6および上側穴あき金型2を載置し、上側穴あき金型2の透窓21と上側の押圧板6の透窓61へと押型4を圧入する。
【0024】
この際、本実施の形態では、図2(b)に示すように、初めに前記押型4による成型プレスを図4に示した紙製容器5における収容部51の底部511を形成する予備成型ブレスを行う。次に、上側の穴あき金型2に上方から圧力を掛けて前記各押圧板6,7に挟持されるシート材1の表面11と裏面12とにそれぞれ谷折りと山折りの所定形状の折り畳み部を形成するための溝条63,73を形成する(図3参照)。
【0025】
次に、図2(c)示すように、押型4を更に押圧して本絞り行う。このとき、前述の如く、シート材1の表面11と裏面12とにそれぞれ谷折りと山折りの所定形状の折り畳み部を形成するための溝条62、72が形成されているので何れの製品もフランジ部52の角部に所定形状の折り畳み部54が所定の位置に形成される(図4参照)。
【0026】
このようにして深絞りした後、脱型すると平面においてフランジ52に形成された折り畳み片の形状が同一で前後左右が均一な紙製容器をきわめて簡単に量産することができる。
【0027】
また、前記各押圧板6,7が前記シート材1の表面11および裏面12への当接面に剥離層(図示せず)を形成している場合にはシート材に傷をつけたり破損するなどの心配がない。剥離層は例えば押圧板6,7自体、或いは表面を硬質の合成樹脂板や金属板などにより形成することにより容易に形成することができる。
【0028】
尚、本実施の形態は本発明の一例であり、例えば平面が円状であったり他の多角形であっても同様に実施することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 シート材、2,3 穴あき金型、4 押型、5 紙製容器、6,7 押圧板、11 表面、12 裏面、51 収容部、52 フランジ部、54 折り畳み片、61,71 突条、63,73 溝条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の少なくとも紙を基材とするとともに所定の予め所定の湿度に調整したシート材を押型と穴あき金型を用いる深絞り成形プレスにより皿状の収容部の開口端に沿ってフランジを有する皿状の収容部を形成する紙製容器の製造方法であって、形成される包装容器のフランジ部となる前記シート材の表面および裏面の所定位置に成型プレスをするときにフランジ部に所定形状の折り畳み片を所定の方向へ向けて形成するための折り畳み用の溝条を形成することを特徴とする紙製容器の製造方法。
【請求項2】
前記押型による成型プレスを収容部の底部を形成する予備成型ブレスと次いでフランジ部までを押圧成形する本成型ブレスの2段階にて行うとともに、前記予備成型ブレスと本成形ブレスとの間に前記折り畳み用の溝条を形成することを特徴とする請求項1記載の紙製容器の製造方法。
【請求項3】
前記折り畳み用の溝条を、前記シート材の表面および裏面に沿ってそれぞれ配置した前記シート材に前記折り畳み用の溝条を形成するための所定形状の突条が付設された一対の押圧板により形成することを特徴とする請求項1または2に記載の紙製容器の製造方法。
【請求項4】
前記各押圧板が中央部に前記押型の挿通窓を有するとともに前記シート材の表面および裏面への当接面の所定の位置に押圧力により前記シート材に前記折り畳み用の溝条を形成するための所定形状の突条が付設されていることを特徴とする請求項3に記載の紙製容器の製造方法。
【請求項5】
前記各押圧板に形成される突条が適宜の剛性と弾性を有する紐状体を貼着して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の紙製容器の製造方法。
【請求項6】
前記各押圧板が前記シート材の表面および裏面への当接面に剥離層を形成していることを特徴とする請求項3,4または5に記載の紙製容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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