説明

紙製組立部材および組立玩具

【課題】 組立完成の達成感を得ることができるとともに、組立・分解を繰り返し行うことができる組立玩具と、それに使用する組立部材を提供する。
【解決手段】 紙製組立部材は、長尺な矩形の紙片10,20の長辺側端縁11,12の片方または両方に短尺方向に沿った係合溝13〜18,23〜28を設けた組立部材であって、係合溝の全部または一部が、係合案内領域LAと係止領域SAとを備えた構成とする。組立玩具は、紙製組立部材を使用するものであって、複数の紙片100の係合溝を係合することにより、該紙片の長辺側端縁111によって多角形を形成するとともに、他の紙片200,300,400を順位の長辺側端縁によって上記多角形を構成する角または辺に跨る直線を形成し、全体として中空多角柱状を組み立てることができる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な矩形の紙片で構成された紙製組立部材と、この紙製組立部材を使用した組立玩具に関し、特に、組立玩具は教材として使用できるものに関するするものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な組立玩具は、複数のパネルで構成され、各パネルの辺に凹部および凸部が設けられたブロック体によるものであった(特許文献1参照)。この種の玩具は、独創的な形状を任意に組み立てることができる点において、成長期の子供の知育に利用され得るものであるが、これらのブロック体を組み立てるためには、辺に設けられた凹部および凸部の係合によるため、組み立てることのできる立体形状が限定的なものとならざるを得なかった。
【0003】
そこで、自在な形状を創造し得るような知育用組立玩具としては、多種の形状の複数の板状体を重ねて立体形状を組み立てるものが考案されている(特許文献2参照)。この種の玩具は、重ねる部品の形状や大きさを異ならせ、また、重ねる位置や向きを変化させることにより、自在の立体形状を組み立てることができることから、知育用として利用され得るが、規制される範囲が狭く、製作すべき形状が予め決定していなければ、完成したときの達成感を得ることに乏しかった。
【0004】
上記の中間的な組立玩具としては、板状部材または棒状部材の厚み方向に係合溝を設けた組立部材を使用するものが提案されている(特許文献3参照)。この発明は、建築構造物との兼用として開発されたものであるから、大型構造物を組み立てることができるが、知育用玩具とするときは、持ち運びおよび取扱が煩瑣であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−71099号公報(1頁、図1)
【特許文献2】特開2006−181124号公報(2−3頁、図1)
【特許文献3】特開2008−156912号公報(2−3頁、図1−図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に掲げた従来技術は、いずれも組立の自由度、すなわち利用者の創造力を頼りに自由な立体形状を構築することができるという利点がある反面、予め決められた形状を複雑な過程を経て完成させるという解決策の探索という面では、知育的な要素を発揮できなかった。
【0007】
また、知育のための組立玩具としては、利用者が目的形状を完成させたときの達成感を与えることも必要であり、そのための玩具としては、プラスチックモデルやジグソーパズルが周知である。しかし、プラスチックモデルやジグソーパズルは、完成までに長時間を要し、また、完成したものを分解して再び組み立てるような使用方法がされていない。
【0008】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、組立完成の達成感を得ることができるとともに、組立・分解を繰り返し行うことができる組立玩具と、それに使用する組立部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、紙製組立部材にかかる本発明は、長尺な矩形の紙片の長辺側端縁の片方または両方に短尺方向に沿った係合溝を設けた組立部材であって、上記係合溝の全部または一部が、係合案内領域と係止領域とを備えた係合溝であることを特徴とする紙製組立部材を要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、素材が紙製であることから軽量に構成することができる。また、係合溝の全部または一部が、係合案内領域と係止領域とを備えていることから、複数の同種の紙製組立部材を組み合わせる際、一方の部材の係合溝に他方の部材の紙片部分を係入させるとき、係合案内領域により他方の部材の紙片が案内されるとともに、係止領域に到達させることにより所定の位置において係合状態を維持させることができる。
【0011】
また、紙製組立部材にかかる本発明は、長尺な矩形の紙片の長辺側端縁の片方または両方に短尺方向に沿った係合溝を設け、複数の上記紙片の係合溝同士を係合して交差させて使用する紙製組立部材であって、三枚以上の紙片が交差する位置に該当する複数の係合溝のうち少なくとも一つが、係合案内領域と係止領域とを備えてなる係合溝であることを特徴とする紙製組立部材を要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、係合溝同士が係合することにより、相互に相手方の紙片を係止することとなり、紙製組立部材の交差した形状を維持させることができる。また、三枚以上の紙片が交差する位置においては、少なくとも最後に係合される係合溝が、既に二枚以上の紙片が交差する状態を相手に係合させることとなり、このとき少なくとも最後に係合される係合溝に係合案内領域が形成されていることにより、当該係合が容易となる。このような係合においても係止領域が形成されることにより、この係止領域によって係止するまで十分に係合することにより、三枚以上の紙片の係合が緩むことを回避し得る。
【0013】
上記各発明において、前記係止溝は、交差する位置の前記係止領域先端同士が当接するとき、前記長辺側端縁の少なくとも一方が同一の仮想平面上に位置するように深さ寸法が調整された係止溝とすることができる。このような構成によれば、同一平面上に位置する長辺側端縁の集合によって、単一の仮想平面が形成されることとなり、この仮想平面を基準面(底面)とする中空の柱状を構築することができる。
【0014】
他方、組立玩具にかかる本発明は、上記のいずれかの発明にかかる紙製組立部材を使用した組立玩具であって、複数の前記紙片の係合溝同士を係合することにより、該紙片の長辺側端縁によって多角形を形成するとともに、他の紙片の長辺側端縁によって上記多角形を構成する角または辺に跨る直線を形成し、全体として中空多角柱状を組み立てることができることを特徴とする組立玩具を要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、係合溝同士が係合された紙片は、表裏両面が角度を有して交差することとなり、紙片の長辺側端縁が多角形を形成する状態において、中空の多角柱状を構成することができる。また、上記多角形の角または辺に跨る直線を紙片の長辺側端縁により形成させることによって、上記中空の多角柱はリブを配置した状態となり、当該中空の多角柱形状を維持させることができる。なお、複数の長尺な紙片により中空多角柱形状を形成するためには、近接する各紙片の両端付近を係合することが必要となるから、各紙片の両端付近に係合溝を設けることとなり、また、角または辺に跨る直線を形成するための紙片を係合するためには、上記多角柱形状を形成した紙片の中間に係合溝を設けることとなる。
【0016】
上記発明において、前記複数の紙片は、前記中空多角柱を構成する位置または組立順序により色分けされてなる紙片であることが好ましい。このような構成であれば、構成部分による色分けの場合には、完成した状態での紙片の位置関係を予想することができ、組立順序による色分けの場合には、色分けの順番に従って次順位の紙片が係合できるような位置を見付けることができるから、初期の利用または低レベルの知育用としての使用に適する。
【0017】
上記に示した組立玩具にかかる発明においては、前記複数の紙片の表面に、文字、図形若しくは模様またはこれらの組合せからなる図柄を分割して描いた構成とすることができ、この場合、前記中空多角柱を構成する所定の位置に上記紙片を配置するとき、該紙片の表面を斜視することにより上記図柄の全体を観察することができるようにしてなるものとすることができる。このような構成であれば、複数の紙片を組み立てる際、当該図柄を想像することにより、完成した状態での紙片の位置を予想することができ、出来上がりの状態を楽しむことができるとともに想像力の学習に資することができる。また、合同の紙片を複数使用する場合においても、それらの位置が決定することとなり、簡単な形状である場合においても組立に知力を発揮することとなり、知育用として使用することができる。
【0018】
また、上記に示した組立玩具にかかる各発明において、前記複数の紙片のうちの数枚の紙片は、他の紙片よりも短尺方向の寸法を大きく構成してなる突出紙片であり、この突出紙片の長辺側の両側端縁は、それぞれ係合溝が設けられている構成とすることができる。このような構成であれば、他の紙片に係合し、紙片が交差した状態において、当該突出紙片のみが他の紙片の端縁よりも突出することとなり、その突出紙片の突出した部分の長辺側端縁に通常寸法の紙片を係合することにより、単純な中空多角柱よりも立体的な形状を構成することができる。
【0019】
さらに、上記の各発明において、前記複数の紙片のうちの数枚の紙片は、前記多角形を構成する角または辺から外方に突出する長尺紙片であり、この長尺紙片の長辺側端縁の少なくとも一方には、係合溝が設けられている構成とすることができる。このような構成であれば、各紙片によって組み立てられた組立玩具同士を連結することが可能となり、平面的に拡大した種々の形状を構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
組立玩具にかかる本発明によれば、所定の形状が構成できるように紙片には係合溝が設けられ、その係合溝同士を順序よく係合することにより、上記予定形状が形成されることから、組立完成の達成感を得ることができる。そして、組立後に紙片を逆の順序で係合解除すれば、容易に分解することができることから、組立・分解を繰り返し行うことができる。
【0021】
また、紙製組立部材にかかる本発明によれば、上記のような組立玩具に使用する組立部材を提供することができる。特に、紙製であるため、係合溝の加工が容易であり、単純な多角柱形状のほかに、複雑な立体形状を構成するための組立部材を作製することもできる。そして、紙片の係合溝は、係合案内領域および係止領域によって構成されることから、紙片の長辺側端縁が直角以外の角度で交差するような係合状態においても、係合案内領域により係合位置が案内され、かつ、係止領域により所定の深さで係合させることができる。この係合案内領域は、二枚の紙片が交差する場合のみならず、三枚または四枚の紙片が一個所で交差するような場合においても、係合位置を案内するために機能するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】紙製組立部材にかかる発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】紙製組立部材の結合状態を示す説明図である。
【図3】係合溝の詳細を示す説明図である。
【図4】係合溝の係合状態を示す説明図である。
【図5】他の係合溝の詳細を示す説明図である。
【図6】他の係合溝の係合状態を示す説明図である。
【図7】組立玩具にかかる発明の実施形態を示す斜視図である。
【図8】組立玩具の組立手順を示す説明図である。
【図9】組立玩具の組立手順を示す説明図である。
【図10】組立玩具の組立手順を示す説明図である。
【図11】組立玩具の組立手順を示す説明図である。
【図12】組立玩具にかかる発明の第二の実施形態を示す説明図である。
【図13】組立玩具にかかる発明の第三の実施形態を示す説明図である。
【図14】組立玩具にかかる発明の第四の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。説明の便宜上、紙製組立部材の実施形態について説明し、その後、この部材を使用した組立玩具の実施形態について説明することとする。
【0024】
紙製組立部材にかかる本発明の実施形態は、図1に示すように、全体的に長尺な矩形の紙片10で構成されている。この紙片10は、使用形態に応じて各種の寸法に切断形成され、これらの長辺側端縁11,12には複数の係合溝13,14,15,16,17,18が設けられている。これらのうち、ほとんどの係合溝13〜17は、第一の長辺側端縁11から第二の長辺側端縁12に向かって直線状に切り込まれて構成され、一部の係合溝18は、第二の長辺側端縁12から第一の長辺側端縁11に向かって直線状に設けられている。すなわち、各係合溝13〜18は、いずれも長辺側端縁11,12に対して直角方向に切り込まれている。そして、第一の長辺側端縁11に設けられる係合溝13〜17の代表的な深さ寸法は、紙片10の短尺方向(これを幅方向という)の寸法(これを幅寸法という)の1/2とするものであり、同一線上に設けられている係合溝15,18は、約1/3の深さ寸法で設けられている。
【0025】
このような構成の紙片10は、図2(a)および(b)に示すように、同種構成の紙片20を反転させ、代表的な深さ寸法に設けられた同様の係合溝16,26を相互に係合させることにより、両紙片10,20の長辺側端縁12,21が同一の仮想平面Xの表面上に一致することとなる。そして、このような係合状態においては、各紙片10,20の表面(紙片は表裏の区別なく、いずれかの面を意味する)は、幅方向について、上記仮想平面Xに対して直角方向となり、長手方向について、隣接する紙片10,20の相互において角度が自在となるように係合させることができる。
【0026】
このとき、両紙片10,20は、幅寸法が同一であり、係合すべき係合溝16,26は、双方ともに幅寸法の1/2であるため、それぞれの係合溝16,26の最終端縁(溝の底部端縁)が当接する状態まで相互に購入させることにより、上述のように仮想平面Xにおいて長辺側端縁12,21が揃う状態となるのである。
従って、当然のことながら、幅寸法が同じ紙片10,20を使用し、一方の係合溝が幅寸法の1/3である場合において、仮想平面Xに長辺側端縁12,21を一致させるためには、他方の係合溝の幅寸法は2/3としなければならない。
【0027】
次に、係合溝の詳細について説明する。図3は、係合溝13を拡大した図である。この係合溝13は、係合案内領域LAと係止領域SAとによって構成されている。これらの両領域LA,SAは、いずれも直線状の切り溝によって構成されているが、係止領域SAを構成する切り溝の深さ寸法が、係合案内領域LAに比べて深くなるように設けられている(図3(a))。この係合案内領域LAと係止領域SAは、上述のように、切り溝の深さ寸法を異ならせる構成とすることにより、少なくとも係止領域SAが係止位置の基準となるものである。これについて、両領域LA,SAを同じ深さ寸法にする場合(図3(b))、結果的には、幅寸法を大きくした係合溝13として構成することもできる。この場合には、領域LA,SAに区別がないため、全体として係合が案内され、溝の先端において係止位置が決定されることとなる。そして、通常の切り溝23との係合は、図3(c)に示すように、係合案内領域LAに案内されつつ係合できることとなる。なお、本発明の実施形態では、切り溝13の構成は、両領域LA,SAが上記のいずれかの形態をとることになるが、図面上わかりやすくするために、係止領域SAの深さ寸法を係合案内領域LAの深さ寸法よりも長くしたものを図示することとする。また、本発明上記において「切り溝」と表現しているが、現実の製造工程における構成は抜き型による成型方法を採用するため、切り込んで設けるものとは異なるが、直線状に切り込んで形成することも可能であるため、そのような表現を使用している。
【0028】
そこで、上記のような係合溝13の構成によれば、図4に示すように、片方の紙片(これを被係合紙片という)10の当該係合溝13に対し、係合しようとする他の紙片(これを係合紙片という)20は、紙片10との係合開始当初、両領域LA,SAの両方によって容易に係入できる(図4(a),(b))。そして、係合完了直前において、双方の係合溝13,23の係合案内領域LAが終了し、相互に係止領域SAにおいてのみ係入することができるようになる(図4(c))。
【0029】
従って、上述の係合溝13,23の深さ寸法とは、係止領域SAの先端までの長さ寸法を意味しているのである。そして、この係止領域SAにおいて双方の係合溝13,23が互いに係入することにより、係合紙片20は予定の位置で係止されることとなるのである。なお、係止領域SAは、紙片10,20の肉厚と同程度の幅に構成することによって、遊びを少なくした状態で係合させることができ、係合された状態を緩やかに保持させることが可能となる。
【0030】
上記のような係合溝13,23の構造は、紙片10,20に設けられる係合溝のすべてに適用する必要はなく、各紙片10,20の表面が長手方向に直角でない角度で交差する場合、または、三枚以上の紙片が交差する場合のように、係合溝同士の係合に余裕をもたせる必要がある位置の係合溝に限定することができる。そして、そのような位置の係合溝は、組み立てるべき形状により個別に設定することができる。
【0031】
次に、紙片10の第二の長辺側端縁12に設けた係合溝18について説明する。図5は、上記係合溝18およびこれに対向する係合溝15を拡大した図である。この図に示すように、第二の長辺側端縁12に設けられた係合溝18は、第一の長辺側端縁11に設けられた係合溝15と同一直線上に配置されている。この同一直線上とは、両係合溝15,18がともに係合案内領域LAと係止領域SAを備えたものである場合、係止領域SAの中心線が共通することを意味する。つまり、第一の長辺側端縁11から係合される他の紙片と、第二の長辺側端縁12から係合される他の紙片とが、同じ位置で交差するように構成されているのである。
【0032】
従って、図6(a)に示すように、これらの係合溝15,18が設けられている紙片10に対し、他の二枚の紙片30,40が交差するように、両長辺側端縁11,12から係合される構成とすることができるのである。なお、この図に示されているように、他の二枚の紙片30,40に設けられる係合溝33,43は、いずれも深さ寸法が幅寸法の2/3に調整されており、係合完了後における長辺側端縁が同一の仮想平面上に位置するようになっている。
【0033】
ここで、図6(b)に示すように、当該紙片10の一方の係合溝18に他の紙片40の係合溝43を係合させた状態において、反対側の係合溝15には、紙片30が係合されておらず、かつ、既に係合された紙片40の係合溝43も開口状態となっている。従って、残りの紙片30の係合溝33は、上記係合溝15,43の開口端から係入させることによって、三枚の紙片10,30,40を同じ位置で交差させることができるのである(図6(c))。
【0034】
なお、このように、三枚の紙片10,30,40を同じ位置で交差させる場合には、いずれか一枚の紙片について、上述のような係合案内領域LAと係止領域SAを備えた係合溝を設けることが好ましい。また、交差の状態に応じてすべての係合溝15,18,33,43について両領域を備えた構造としてもよい。
【0035】
また、第二の長辺側端縁12に設けられる係合溝18は、必ずしも反対側に対向する係合溝15を備える場合に限られず、片方側からの係合(他の一枚の紙片による係合)のための係合溝18であってもよく、その場合には、深さ寸法が紙片10の幅寸法の1/2とすることができる。
【0036】
次に、組立玩具にかかる本発明の実施形態について説明する。組立玩具の実施形態では、上述したように、各種形態の係合溝13〜18,23〜28,33,43を有する紙片10,20,30,40、および、これらの長手方向の寸法や係合溝の向き・位置・数等を変化させた他種類の紙片を複数使用して構成されるものである。
【0037】
第一の実施形態は、図7に示すように、中空の六角柱形状を組み立てる玩具である。ここで、中空とは、枠部以外に内部が空洞である真正の中空を意味するものではなく、空洞領域が存在する状態を意味するものである。また、六角柱形状は、数学上の六角柱に類似した形状を意味するものであり、平面および底面における六角形の頂点および各辺から突出する部分が存在する形状を含めている。なお、このような表現は中空の多角柱形状という場合も同様である。
【0038】
図7は組立完成時の斜視図であり、この図に示すように、構成する紙片は、すべて同じ幅寸法で構成されており、それぞれの係合位置は、三枚の紙片が交差するようになっている。また、外形(六角形)を形成する紙片100、および、中空内部を横切るように設けられる紙片200,300,400は、それぞれ組立順序がことなり、これを明確にすべく色分けされている。
【0039】
ここで、各紙片100〜400を組み立てる際の手順について説明する。図8に示すように、第1に、外形構成用紙片100を使用して外形(六角形)を形成する。本実施形態では、同じ形態の外形構成用紙片100を6枚使用し、これを連続するように係合させて中空の正六角柱を形成するのである。各紙片100は、片方(上方)の長辺側端縁(これを上縁という)111に三つの係合溝113,114,115と、他方(下方)の長辺側端縁(これを下縁という)112に一つの係合溝116を備えており、上縁111の係合溝113〜115のうち、中間に位置する係合溝114は紙片100の中央に設けられ、他の二つの係合溝113,115は、紙片100の両端近傍に設けられている。また、下縁112の係合溝116は、紙片100の両端近傍に設けられた係合溝113,115の片方の係合溝115の延長線上に設けられ、上縁111の係合溝115が紙片100の幅寸法の1/3の長さに調整されるとともに、下縁112の係合溝116が紙片100の幅寸法の1/2の長さに調整されている。なお、上縁111の他の係合溝113,114は紙片100の幅寸法の1/2に調整されている。
【0040】
従って、隣接する紙片100A,100Bは、上縁111の両端近傍に設けられた係合溝113,115のうち、長さを紙片100の幅寸法の1/2に調整された係合溝113に対し、下縁112の係合溝116を係合させることにより、両紙片を連結することができる。そして、このような連結方法により、さらに隣接する紙片100Cは、その下縁112の係合溝116を、既に半分係合されている紙片100Bの上縁111の係合溝113に係合させることにより、さらに連結することが可能となる。そして、最後の紙片100Fが連結された後は、この最後の紙片100Fの上縁111の係合溝113に、最初の紙片100Aの下縁112の係合溝116を係合させることにより、中空の六角柱を形成することができるのである。
【0041】
上記のように中空の六角柱が形成された後には、その中空部を横切る紙片(これを横断用紙片という)200,300,400を順次結合させるのであるが(図9〜図11参照)、これらの紙片200,300,400は、係合溝に僅かな差異があり、この係合溝の差異により、結合の順序が異なるものである。すなわち、第一の横断用紙片200を結合した後、第二の横断用紙片300を結合し、最後に第三の横断用紙片400を結合するのである。これらの各横断用紙片200,300,400の詳細は次のとおりである。
【0042】
第一の横断用紙片200は、図9に示しているように、上縁211に複数の係合溝213,214,215,216が設けられ、両端近傍の係合溝213,216が紙片200の幅寸法の1/3の長さに調整されるとともに、これらの延長線上に下縁212の係合溝217,218が設けられている。この下縁212の係合溝217,218は、紙片200の幅寸法の1/2の長さに調整されており、上縁211の他の係合溝214,215も、紙片200の幅寸法の1/2に調整されている。このように、係合溝213〜218の配置および長さを調整したのは、両端近傍の下縁212に設けた係合溝217,218は、既に係合が完了している外形構成用紙片100の中央に位置する係合溝114に係合させるためであり、また、両端近傍の上縁211の係合溝213,216は、後に第三の横断用紙片400の係合を許容するためである。さらに、他の上縁211の係合溝214,215についても、後に第二の横断用紙片300の係合を許容するために設けられている。
【0043】
なお、上記第一の横断用紙片200のうち、最も長尺な紙片200aは、その両端近傍の係合溝213a,216a,217a,218aの長さが他の紙片200と異なっている。これは、両端近傍の下縁212aの係合溝217a,218aは、既に係合が終了している外形構成用紙片100の係合溝115(幅寸法の1/3の長さに構成したもの)に対して、係合させるためである。従って、下縁212aの係合溝217a,218aの長さは、紙片200aの幅寸法の2/3であり、上縁211aの係合溝213a,216aは、紙片200aの幅寸法の1/4に調整している。これら第一の横断用紙片200(200aを含む)は、それぞれ平行に配置されるため、同じ第一の横断用紙片200と考えることができる。
【0044】
第二の横断用紙片300は、図10に示しているように、両端を除く中間の位置に、上縁311および下縁312の両方に係合溝314,315,319,310が設けられている。これは、既に係合された第一の横断用紙片200に交差する状態で連結されるためである。これらの係合溝のうち下縁312の係合溝319,310の長さは、紙片300の幅寸法の1/2であり、上縁311の係合溝314,315は1/3である。
【0045】
なお、両端近傍の係合溝は、上縁311と下縁312の両方に設けられる場合と下縁312にのみ設けられる場合がある。これは、後の第三の横断用紙片400が係合される部分であるか、係合されない部分であるかの差によるものである。すなわち、外形構成用紙片100の両端が既に係合している部分、および、外形構成用紙片100と第一の横断用紙片200が係合している部分には、第三の横断用紙片400の係合がないため、上縁311には係合溝が設けられず、外形構成用紙片100および第一の横断用紙片200に設けられた係合溝のうち、どれとも係合していない部分は、後の第三の横断用紙片400が係合されるため、上縁311に係合溝が設けられているのである。
【0046】
また、上縁311と下縁312に係合溝が設けられる部分では、下縁312の係合溝の長さ寸法は、紙片300の幅寸法の1/2であり、上縁211の係合溝は2/3である。下縁212の係合溝のみが設けられる部分では、その長さは、紙片300の幅寸法の2/3である。
【0047】
第三の横断用紙片400は、図11に示しているように、下縁412にのみ係合溝が設けられている。これは、組み立て工程の最後の紙片であるため、後の紙片の係合がないためである。そして、これらの係合溝は、外形構成用紙片100ならびに第一および第二の横断用紙片200,300のうちいずれかと係合しており、それらの上縁111,211,311に係合することとなるため、その長さ寸法は、紙片400の2/3に調整されている。これにより、上縁111,211,311に設けられた係合溝(長さ寸法は紙片100,200,300の1/3)に係合することができるのである。
【0048】
上記のように、異なる形態の横断用紙片200,300,400を順次結合させることにより、予定した形状を組み立てることができるのであり、その順序を間違えた場合には、本来係合すべき位置に係合溝が存在しないこととなるから、予定した形状に組み立てることはできないものである。従って、これらの係合溝の状態を注意深く観察することにより、組立完成状態を想像しつつ組み立てることができ、知育効果を得ることができるとともに、完成時の達成感を得ることができる。
【0049】
次に、組立玩具にかかる第二の実施形態について説明する。本実施形態は、図12に示すように、上記の中空の六角柱の構築物Aに、中空の三角柱の構築物Bを重ねて組み立てることができるものである。
【0050】
図12(a)に示しているように、六角柱の構造物Aを構成する紙片のうち、横断用紙片200,300,400の各1枚が、幅寸法を大きく構成しており、その各紙片の上縁211,311,411には、連結用の係合溝が設けられている。他方、三角柱の構造物Bは、外形構成用紙片500のすべてが幅寸法を大きく構成しており、その一部には連結用の係合溝が設けられている。なお、この三角柱の構築物Bの横断用紙片600,700,800は、通常の幅寸法で設けられている。
【0051】
上記構成の両構築物A,Bを連結すると、図12(b)に示すように、三角柱の構築物Bの外形構成用紙片500の下縁は、六角柱の構築物Aの通常の幅寸法の紙片の上縁に当接し、一体的な新しい構築物Cを形成することができる。この構築物Cは、図12(a)に示したように、両構築物A,Bを別々に組み立てた後に連結することもできるが、三角柱の構築物Bを組み立てる際に、その外形構成用紙片500を先に六角形の構築物Bに係合させることにより、三角形の構築物Bを組み立てると同時に完成形状である構築物Cを組み立てることも可能である。
【0052】
本実施形態では、組立順序について若干の自由度が認められるが、それぞれの構築物A,Bの組立については、その順序が制限されることとなり、完成形状を想像しながら一層の知育効果を得るとともに、完成時の達成感を得ることができる。
【0053】
次に、組立玩具にかかる第三の実施形態について説明する。本実施形態は、図13(a)に示すように、中空の三角柱に組み立てるものであり、組立完成時は、外形構成用紙片900の両端が構築物Dから大きく突出し、その突出部分に係合溝が設けられている。このときの外形構成用紙片900は、長尺紙片として予め多角形の外形から突出するように構成されたものである。
【0054】
このような構成の構築物Dは、同種構築物Dを複数組み立てた後に、突出部分同士を連結して他の形状を創造することができる。例えば、図13(b),(c)に示すように、中央に構築部Dを配置し、その三辺に同様の三つの構築物Dを連結することにより、大きな三角柱の構築物Eを構成することができる。また、三角形の頂点に三つの構築物Dを連結させることも可能である。
【0055】
本実施形態では、同じ構築物Dを複数組み立てることから、同じ組立作業を反復することができ、その都度達成感を得ることができるうえ、その後に、創造力を発揮して独自の形状に組み立てることも可能となるから、創造力に関する地域効果も期待できるものである。
【0056】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の態様をとることができる。例えば、組立玩具にかかる実施形態では、六角柱または三角柱に組み立てる構成について例示したが、他の多角柱を構成するものであってもよい。また、六角柱の組立玩具について、異なる形態の紙片100〜400を例示して組立順序を説明したが、説明以外の順序で組み立てることができるように係合溝の配置を変更することができる。そして、色彩による構成紙片の分類を行ってもよく、その際の色分けは、組み立てる順序を示す色分けのほか、上縁と下縁を示すように、単一の紙片に二色を施してもよい。
【0057】
また、図14に示すように、一列に整列する紙片200の全体に亘って一つの図柄Pを各紙片200に分割して描いた構成としてもよい(図14(a)および(b)参照)。この場合、例えば、各紙片200の形状(長さ、幅および係合溝の位置など)は全て同じものとしたときであっても、個々に紙片の位置は必然的に決定することとなる(図14(a)参照)。また、このような構成であれば、出来上がりの状態において、紙片表面が連続するとどのような図柄Pになるかを楽しみすることができる。そして、図柄Pが全体として統一されたものとなるように紙片200の位置を工夫するところに知力が発揮されることとなる。また、完成後には斜視において図柄Pが装飾効果を与えることとなるため(図14(c)参照)、完成をもって装飾品として使用することもできる。なお、図14では、各紙片200の表面が当該図中において見える面のみに図柄Pを描いているが、これを裏面に描くこともできるほか、他の構成紙片300の表面または裏面に描くこともできる。また、図14では、中空多角柱の外形を構成する紙片について、内側の面にのみ図柄Pの一部を描き、外側の面には何も描いていないが、この紙片の外側に図柄Pの一部を描く構成とすることができるほか、外形を構成する紙片には何も描かない構成することもできる。さらに、図柄は例示であって、これに色彩を付すことや、他の形状や模様に変更し、さらにはデザイン画の名称などを文字として付してもよい。利用者がもっとも興味を持つような図柄を使用することにより、年代別または知力別に応じたものを作成することができる。
【0058】
なお、上記のような各形態の組立玩具は、紙片を用いるものであるが、これは、幼児が使用する際の取り扱いに配慮したものである。従って、本発明の全般において、紙という場合には、比較的柔軟な素材を使用して紙と同様の取り扱いができるものであれば、プラスチック繊維を用いたものも含まれる。そして、このような紙またはこれに類似する材料を使用する場合には、上記実施形態の組立玩具を分解した状態(組立前の状態)においては、複数の紙片を積層することとなり、梱包状態および収納スペースを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0059】
10,20,30,40 紙製組立紙片
11,21,31,41 長辺側端縁(上縁)
12,22,32,42 長辺側端縁(下縁)
13,14,15,16,17,18,23,24,25,26,27,28,33,43 係合溝
100,200,300,400,500,600,700,800,900 紙片
111,211,311,411 長辺側端縁(上縁)
112,212,312,412 長辺側端縁(下縁)
113,114,115,116,213,214,215,216,217,218314,315,319,310 係合溝
A,B,C,D,E 構築物
P 図柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な矩形の紙片の長辺側端縁の片方または両方に短尺方向に沿った係合溝を設けた組立部材であって、上記係合溝の全部または一部が、係合案内領域と係止領域とを備えた係合溝であることを特徴とする紙製組立部材。
【請求項2】
長尺な矩形の紙片の長辺側端縁の片方または両方に短尺方向に沿った係合溝を設け、複数の上記紙片の係合溝同士を係合して交差させて使用する紙製組立部材であって、三枚以上の紙片が交差する位置に該当する複数の係合溝のうち少なくとも一つが、係合案内領域と係止領域とを備えてなる係合溝であることを特徴とする紙製組立部材。
【請求項3】
前記係止溝は、交差する位置の前記係止領域先端同士が当接するとき、前記長辺側端縁の少なくとも一方が同一の仮想平面上に位置するように深さ寸法が調整された係止溝であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の紙製組立部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紙製組立部材を使用した組立玩具であって、複数の前記紙片の係合溝同士を係合することにより、該紙片の長辺側端縁によって多角形を形成するとともに、他の紙片の長辺側端縁によって上記多角形を構成する角または辺に跨る直線を形成し、全体として中空多角柱状を組み立てることができることを特徴とする組立玩具。
【請求項5】
前記複数の紙片は、前記中空多角柱を構成する位置または組立順序により色分けされてなる紙片であることを特徴とする請求項4記載の組立玩具。
【請求項6】
前記複数の紙片は、文字、図形若しくは模様またはこれらの組合せからなる図柄を分割して描いた紙片であって、前記中空多角柱を構成する所定の位置に上記紙片を配置するとき、該紙片の表面を斜視することにより上記図柄の全体を観察することができるようにしてなることを特徴とする請求項4または5のいずれか1項に記載の組立玩具。
【請求項7】
前記複数の紙片のうちの数枚の紙片は、他の紙片よりも短尺方向の寸法を大きく構成してなる突出紙片であり、この突出紙片の長辺側の両側端縁は、それぞれ係合溝が設けられていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の組立玩具。
【請求項8】
前記複数の紙片のうちの数枚の紙片は、前記多角形を構成する角または辺から外方に突出する長尺紙片であり、この長尺紙片の長辺側端縁の少なくとも一方には、係合溝が設けられていることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載の組立玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−240310(P2010−240310A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95177(P2009−95177)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(509102650)有限会社福益工業所 (2)
【Fターム(参考)】