説明

紛失キー無効化システム

【課題】手元にない電子キーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることが可能な紛失キー無効化システムを提供すること。
【解決手段】ディーラでの紛失キー無効化処理では、手元にある電子キーのキー機能が有効化され、手元にない電子キーのキー機能が一時的に無効化される。そして、キー機能が一時的に無効化された電子キーは、既にキー機能が有効化されている電子キーと同時に使用されたことを条件に、キー機能が有効化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紛失したキーを無効化する紛失キー無効化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両キーとして登録済の電子キーのうち、手元にある電子キーを除く全ての電子キーを無効化する技術が開示されている。この技術によれば、手元にある電子キーは車両キーとしての機能がそのまま維持されるとともに、紛失した電子キーのように手元にない電子キーは車両キーとしての機能が無効化されるので、紛失キーを取得した第三者による車両制御が回避され、セキュリティ性が向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−50885号公報([請求項5])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1による技術では、紛失キーを除く全ての電子キーを一同に準備する必要があり煩わしい。例えば登録済の3個の電子キーのうち1個の電子キーを紛失し、残りの2個の電子キーのうち1個の電子キーを所持するかたちで車両を運転してディーラに出向いた場合には、ディーラでの無効化処理に際し、手元にないもう一つの電子キーと紛失キーとを区別することができない。従って、この場合、紛失キーを特定することができないので、ユーザは手元にないもう一つの電子キーを取りに戻らなければならない。尚、そうした電子キーを取りに戻らなかった場合には、その電子キーまでが紛失キーとして扱われ、上記無効化処理によりキー機能が無効化されるとともに、この電子キーは使用不可になってしまう。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、手元にない電子キーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることが可能な紛失キー無効化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ユーザが所持する電子キーに対し個別に設定されたキー識別コードが登録される登録手段を備え、前記登録手段にキー識別コードが登録されている登録済の電子キーによる電気的な制御が許容される電子キーシステムに適用され、前記登録済の電子キーのうち特定の電子キーを紛失キーとしてキー機能を無効化し、当該キーによる電気的な制御を禁止する紛失キー無効化システムにおいて、前記登録手段に登録されているキー識別コードに対する照合を行う照合手段と、前記照合手段により照合一致したキー識別コードを有する電子キーのキー機能を有効化し、当該キーによる電気的な制御を許容するとともに、前記照合手段により照合一致しなかったキー識別コードを有する電子キーの有効性について仮決定を行い、キー機能を有効化するために必要な特定要件が満たされたことを条件に、前記仮決定された電子キーのキー機能を有効化する決定手段とを備えることをその要旨としている。
【0007】
同構成によると、紛失キーを除く全ての電子キーが一同に揃わなくても、一部の電子キーの有効性について仮決定された後に特定要件が満たされれば、その電子キーのキー機能が有効化される。従って、手元にない電子キーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の紛失キー無効化システムにおいて、前記仮決定が行われてから所定の時間が経過するまでの一定期間内に、当該仮決定の行われた電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致したことを第1の特定要件と規定するとともに、前記仮決定に至らず既に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致してキー機能が有効化されている電子キーの本数に、前記仮決定が行われた後に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致した当該仮決定の行われた電子キーの本数を加えた有効キー本数が、前記登録済の電子キーの本数から予め入力設定された紛失キーの本数を減じた上限本数に達する以前に、当該仮決定の行われた電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致したことを第2の特定要件と規定し、さらに、前記仮決定が行われた後に、前記仮決定に至らず既に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致してキー機能が有効化されている電子キーのキー識別コードが前記照合手段により再び照合一致し、その照合の有効時間内に、当該仮決定の行われた電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致したことを第3の特定要件と規定し、前記決定手段は、前記第1の特定要件及び前記第2の特定要件及び前記第3の特定要件の少なくとも一つが満たされたことを条件に、前記仮決定された電子キーのキー機能を有効化することをその要旨としている。
【0009】
同構成によると、ユーザ自らがいずれかの特定要件を満たすことは比較的容易であるが、紛失キーを取得した第三者がいずれかの特定要件を満たすことには困難が伴う。従って、ユーザによる利便性を向上できるとともに、セキュリティ性を向上することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の紛失キー無効化システムにおいて、前記決定手段は、前記仮決定に際し、前記照合手段により照合一致しなかったキー識別コードを有する電子キーのキー機能を前記特定要件が満たされるまでの期間に亘り一時的に無効化し、さらに、前記決定手段は、前記仮決定を行った後に、前記仮決定に至らず既に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致してキー機能が有効化されている電子キーのキー識別コードが前記照合手段により再び照合一致し、その照合の有効時間内に、当該仮決定を行った電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致したことを条件に、前記仮決定した電子キーのキー機能を有効化することをその要旨としている。
【0011】
同構成によると、紛失キーを含め、手元にない電子キーは一時的に無効化される。このため、第三者によって紛失キーが取得されようとも、有効キーと同時に使用されない限りは、そのキーは使用不可の状態が維持される。従って、セキュリティ性を向上できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の紛失キー無効化システムにおいて、前記決定手段は、前記仮決定に際し、前記照合手段により照合一致しなかったキー識別コードを有する電子キーのキー機能を前記特定要件が満たされるまでの期間に亘り一時的に有効化し、さらに、前記決定手段は、前記仮決定を行ってから所定の時間が経過するまでの一定期間内に、当該仮決定を行った電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致しなかった場合には、前記仮決定した電子キーのキー機能を無効化することをその要旨としている。
【0013】
同構成によると、仮決定後の一定期間内に使用されなかった電子キーは紛失キーとして扱われ、キー機能が無効化される。従って、ユーザ自らの意志で上記期間内に使用されなかった電子キーや紛失キーを確実に使用不可にすることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の紛失キー無効化システムにおいて、前記決定手段は、前記仮決定に際し、前記照合手段により照合一致しなかったキー識別コードを有する電子キーのキー機能を前記特定要件が満たされるまでの期間に亘り一時的に有効化し、さらに、前記決定手段は、前記仮決定に至らず既に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致してキー機能が有効化されている電子キーの本数に、前記仮決定を行った後に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致した当該仮決定を行った電子キーの本数を加えた有効キー本数が、前記登録済の電子キーの本数から予め入力設定された紛失キーの本数を減じた上限本数に達した場合には、その達した時点で前記照合手段によりキー識別コードが照合一致しなかった当該仮決定を行った電子キーのキー機能を無効化することをその要旨としている。
【0015】
同構成によると、仮決定後に有効キー本数が上限本数に達した場合には、それまでにキー機能が有効化された電子キーを除く全ての電子キーが紛失キーとして扱われ、キー機能が無効化される。従って、有効化を望む電子キーについてそれを全て早急に有効化することで、紛失キーのみを確実に使用不可にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、手元にない電子キーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】紛失キー無効化システムの前提となる電子キーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態の紛失キー無効化システムの作用を示す説明図。
【図3】第1の実施形態を変更した他の実施形態の紛失キー無効化システムの作用を示す説明図。
【図4】第2の実施形態の紛失キー無効化システムの作用を示す説明図。
【図5】第2の実施形態を変更した他の実施形態の紛失キー無効化システムの作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を車両用の電子キーシステムに適用される紛失キー無効化システムに具体化した第1の実施形態について説明する。本実施形態の紛失キー無効化システムは、電子キーシステムの適用された車両のオーナであるユーザが車両キーとして所持する電子キーを紛失した場合に備え、そうした紛失キーを取得した第三者による車両制御を回避するために、紛失キーのキー機能を無効化するものである。
【0019】
まず前提となる電子キーシステムの構成について説明する。図1に示すように、電子キーシステム1は、車両キーとなる電子キー2と、車両側のセキュリティ装置3とを備えるとともに、両者間で無線による双方向通信が可能となっている。
【0020】
電子キー2は、送受信機能を有するとともに、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25を備えている。
受信アンテナ21は、セキュリティ装置3から送信されてくる呼び掛け信号を受信するための媒体である。受信回路22は、受信アンテナ21で受信された呼び掛け信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号をマイコン23に出力する。
【0021】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えるとともに、そのメモリ23aには、電子キー2に対し個別に設定されたキー識別コードが記憶されている。そして、マイコン23は、受信回路22から呼び掛け信号に関する受信信号が入力されたとき、呼び掛け信号に応答するために、キー識別コードを含む応答信号の原信号を生成するとともに、その原信号を送信回路24に出力する。
【0022】
送信回路24は、マイコン23から入力された原信号を所定周波数(本実施形態では312MHz)の電波に変調して、応答信号を生成する。送信アンテナ25は、送信回路24で生成された応答信号を送信するための媒体である。
【0023】
車両側のセキュリティ装置3は、送受信機能を有するとともに、送信回路31、送信アンテナ32、受信アンテナ33、受信回路34、照合制御装置35を備えている。尚、本実施形態の車両では、車内通信ネットワークを介して各種制御装置が電気的に接続されている。以下、説明の便宜上、これら各制御装置の総称を照合制御装置と規定し、これを符号35で示す。この照合制御装置35は、各種車両制御を許容するのに必要な電気的なキー照合に関するセキュリティ制御を主として行う。
【0024】
送信回路31は、照合制御装置35から入力される呼び掛け信号の原信号を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調して、呼び掛け信号を生成する。送信アンテナ32は、送信回路31で生成された呼び掛け信号を車両周辺に送信するための媒体である。
【0025】
受信アンテナ33は、上記呼び掛け信号に応答するかたちで電子キー2から送信されてくる応答信号を受信するための媒体である。受信回路34は、受信アンテナ33で受信された応答信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号を照合制御装置35に出力する。
【0026】
照合制御装置35は、不揮発性のメモリ35aを備えるとともに、そのメモリ35aには、自車両に適合する正規の電子キー2のキー識別コードが登録される。そして、照合制御装置35は、送信回路31及び送信アンテナ32といった送信系を通じて車両周辺に呼び掛け信号を送信したことに伴い、受信回路34から応答信号に関する受信信号が入力されたとき、それに含まれるキー識別コードについて、メモリ35aに登録済のキー識別コードに対する照合を行う。そして、照合制御装置35は、照合一致したことを条件に、ドアロックの施解錠或いはエンジンの始動といった車両制御を許容する。
【0027】
尚、本実施形態では、いずれも上記電子キー2となる合計4本の電子キーの各キー識別コードが所定の登録手順を経てメモリ35aに予め登録されており、いずれの電子キーを所持する場合にも、当該電子キーのキー機能が有効化されていることを条件に、車両制御が許容されるようになっている。また、上記4本の電子キーのうち特定の電子キーが紛失キー無効化システムの構成要素である上記照合制御装置35によって必要に応じて紛失キーとして扱われ、この場合、キー機能が無効化され、当該キーによる車両制御が禁止されるようになっている。
【0028】
次に、紛失キー無効化システムの作用について説明する。尚、ここでは4本の電子キーに対し、キーナンバーとして「1」〜「4」が付与されるとともに、いずれの電子キーのキー機能も有効化された状態にあることを前提とする。
【0029】
この状態で例えばキーナンバー「2」の電子キーを紛失し、キーナンバー「1」の電子キーが手元にある場合、ユーザは、このキーナンバー「1」の電子キーを所持するかたちで車両を運転してディーラに出向くことになる。尚、キーナンバー「3」の電子キーは、当該ユーザの家族用に割り当てられた電子キーであり、このためこのキーはディーラに出向いたユーザの手元になく、また、キーナンバー「4」の電子キーは、このユーザの自宅のタンスにしまわれている予備のキーであり、したがってこのキーもユーザの手元にはない。このときの状態をまとめると図2(a)のようになる。
【0030】
そして、ディーラにおいて紛失キー無効化処理が行われる。すなわち、車両の照合制御装置35に対し専用ツールが電気的に接続されるとともに、このツールに対する入力操作による指示を受けるかたちで照合制御装置35は、紛失キー無効化モードへ遷移する。そして、このモードにおいて照合制御装置35は、メモリ35aに登録済のキー識別コードに対する照合を行い、この照合において、ディーラに持ち込まれたキーナンバー「1」の電子キーのキー識別コードについて照合一致するので、このキーナンバー「1」の電子キーのキー機能をそのまま有効化する。一方、ディーラに持ち込まれなかったキーナンバー「2」〜「4」の各電子キーのキー機能を一時的に無効化する。尚、キー機能が一時的に無効化されたキーナンバー「2」〜「4」の各電子キーは、キー機能の無効化が確定されている訳ではないが、それ単独による車両制御が禁止される。このときの状態をまとめると図2(b)のようになる。ちなみに、上記紛失キー無効化モード中に、紛失した電子キーの本数を入力設定する操作が行われることで、紛失キーの本数が照合制御装置35によって認識される。
【0031】
そして、ユーザの自宅において、紛失キーを除く全ての電子キーのキー機能を有効化するための処理が行われる。すなわち、ディーラでの紛失キー無効化処理において既にキー機能が有効化されているキーナンバー「1」の電子キーと同時に使用されることで、キー機能が一時的に無効化されているキーナンバー「3」及び「4」の各電子キーが一時的無効化の状態から有効化の状態へ変更される。具体的には、キーナンバー「1」の電子キーとともに、キーナンバー「3」及び「4」の各電子キーが呼び掛け信号の送信領域である車両周辺に持ち込まれると、それら3本の電子キーの各々から応答信号が送信され、各応答信号が照合制御装置35で解析されることで、メモリ35aに登録済のキー識別コードに対する照合でいずれも照合一致となる。すなわち、キーナンバー「1」の電子キーのキー識別コードが照合一致し、その照合の有効時間内に、キーナンバー「3」及び「4」の各電子キーのキー識別コードが照合一致したとき、同時使用として扱われる。そして、メモリ35aに登録済の電子キーの本数である4本から予め入力設定された紛失キーの本数である1本を減じた3本を上限として、その上限に達する以前にキー識別コードが照合一致した電子キーが有効キーとされる。尚、この有効キーには、ディーラでの紛失キー無効化処理の際に持ち込まれた電子キー、すなわち本例においてキーナンバー「1」の電子キーも含まれる。従って、本例では、紛失キーであるキーナンバー「2」の電子キーを除く、キーナンバー「1」及び「3」及び「4」の各電子キーが有効キーとされる。このときの状態をまとめると図2(c)のようになる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ディーラでの紛失キー無効化処理に際して紛失キーを除く全ての電子キーが一同に揃わなくても、一部の電子キーの有効性について仮決定(一時的無効化)された後に特定要件(本数上限到達以前での有効キーとの同時使用)が満たされれば、その電子キーのキー機能が有効化される。一方、上記仮決定された電子キーのうち本数上限到達以前に有効キーと同時に使用されなかった電子キーについては、キー機能が無効化され、使用不可となる。このため、ユーザは、ディーラに持ち込まなかった残りの電子キーについて、本数上限到達以前といった比較的早い段階で有効キーと同時に使用することで、紛失キーのみを使用不可にすることができる。従って、手元にない電子キーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることができる。
【0033】
(2)ユーザ自らが仮決定キーを本数上限到達以前に有効キーと同時に使用することは比較的容易であるが、紛失キーを取得した第三者がそれを行うことには困難が伴う。従って、紛失キーを含む仮決定キーの有効性を確定するに際し、ユーザによる利便性を向上できるとともに、セキュリティ性を向上することができる。
【0034】
(3)ディーラでの紛失キー無効化処理では、紛失キーを含め、手元にない電子キーは一時的に無効化される。このため、第三者によって紛失キーが取得されようとも、有効キーと同時に使用されない限りは、そのキーは使用不可の状態が維持される。従って、セキュリティ性を向上できる。
【0035】
尚、上記第1の実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・キーナンバー「1」の電子キーとの同時使用について、ディーラでの紛失キー無効化処理の後、時間的な制限を設けるようにしてもよく、この場合、上記第1の実施形態に倣うかたちで上限本数が設定されてもよいが、必ずしも上限本数は設定されなくてもよい。以下、時間的な制限を設けるとともに、上限本数の設定されない例について図3を用いて説明する。本例で用いる図3(a)は上記第1の実施形態で用いた図2(a)と同様であり、また、図3(b)は図2(b)と同様であるため、これらの説明については割愛する。
【0036】
この場合、ディーラで紛失キー無効化処理が行われてから所定の時間(例えば3日間)が経過するまでの一定期間内に、キーナンバー「1」の電子キーと同時に使用された電子キーが有効キーとなる。一方、上記一定期間内に、キーナンバー「1」の電子キーと同時に使用されなかった電子キーは、キー機能が一時的に無効化された状態からキー機能の無効化が確定される。図3(c)には、上記一定期間内に、キーナンバー「3」の電子キーがキーナンバー「1」の電子キーと同時に使用される一方で、上記一定期間内に、キーナンバー「4」の電子キーがキーナンバー「1」の電子キーと同時に使用されなかった例が示されている。すなわち本例では、実際の紛失キーであるキーナンバー「2」の電子キーに加え、ユーザ自らの意志で上記一定期間内に同時使用されなかったキーナンバー「4」の電子キーも、紛失キーとして扱われ、キー機能が無効化されて使用不可となる。
【0037】
同構成によると、仮決定された電子キーのうち仮決定後の一定期間内に有効キーと同時に使用されなかった電子キーは紛失キーとして扱われ、キー機能が無効化される。従って、ユーザ自らの意志で上記期間内に有効キーと同時に使用されなかった電子キーや紛失キーを確実に使用不可にすることができる。
【0038】
・キーナンバー「1」の電子キーのキー識別コードが照合制御装置35で照合一致され、その照合の有効時間内に、それとは別の照合手段による照合を通じて、キーナンバー「3」或いは「4」の電子キーのキー識別コードが照合一致されたことを同時使用として規定してもよい。例えば、近年の車両による室内照合と翳しによるイモビ照合との組み合わせにより同時使用を規定してもよい。
【0039】
・同時使用の別の態様として、近年の車両に標準装備されつつあるカーナビゲーションシステムによる専用の操作を通じたものが採用されてもよい。
・ディーラで紛失キー無効化処理が行われてから所定の時間(例えば1時間)が経過するまでは、キーナンバー「3」或いは「4」の電子キーが単独で使用されたことを条件に、そのキーナンバー「3」或いは「4」の電子キーのキー機能を有効化する。そして、上記所定の時間が経過した後は、キーナンバー「1」の電子キーと同時に使用されたことを条件に、その同時使用されたキーナンバー「3」或いは「4」の電子キーのキー機能を有効化するようにしてもよい。
【0040】
・仮決定された電子キーについて、キーナンバー「1」の電子キーと同時使用された場合には、本数や時間に制限なくキー機能を有効化するようにしてもよい。
(第2の実施形態)
次に、紛失キー無効化システムの第2の実施形態について説明する。この紛失キー無効化システムの前提となる電子キーシステムは、図1に示す第1の実施形態の電子キーシステム1と同様であるため、以下、本実施形態の紛失キー無効化システムの作用を中心に説明する。尚、ここでは上記第1の実施形態と同様、4本の電子キーに対し、キーナンバーとして「1」〜「4」が付与されるとともに、いずれの電子キーのキー機能も有効化された状態にあることを前提とする。
【0041】
この状態で例えばキーナンバー「2」の電子キーを紛失し、キーナンバー「1」の電子キーが手元にある場合、ユーザは、このキーナンバー「1」の電子キーを所持するかたちで車両を運転してディーラに出向くことになる。尚、キーナンバー「3」の電子キーは、当該ユーザの自宅で保管されている電子キーであり、このためこのキーはディーラに出向いたユーザの手元になく、また、キーナンバー「4」の電子キーは、このユーザの家族用に割り当てられた電子キーであり、したがってこのキーもユーザの手元にはない。このときの状態をまとめると図4(a)のようになる。
【0042】
そして、ディーラにおいて紛失キー無効化処理が行われる。すなわち、車両の照合制御装置35に対し専用ツールが電気的に接続されるとともに、このツールに対する入力操作による指示を受けるかたちで照合制御装置35は、紛失キー無効化モードへ遷移する。そして、このモードにおいて照合制御装置35は、メモリ35aに登録済のキー識別コードに対する照合を行い、この照合において、ディーラに持ち込まれたキーナンバー「1」の電子キーのキー識別コードについて照合一致するので、このキーナンバー「1」の電子キーのキー機能をそのまま有効化する。一方、ディーラに持ち込まれなかったキーナンバー「2」〜「4」の各電子キーのキー機能を一時的に有効化する。尚、キー機能が一時的に有効化されたキーナンバー「2」〜「4」の各電子キーは、キー機能の有効化が確定されている訳ではないが、それ単独による車両制御が許容され、この点において上記第1の実施形態とは異なる。このときの状態をまとめると図4(b)のようになる。ちなみに、上記紛失キー無効化モード中に、紛失した電子キーの本数を入力設定する操作が行われることで、紛失キーの本数が照合制御装置35によって認識される。
【0043】
そして、ユーザの自宅において、紛失キーを除く全ての電子キーのキー機能の有効化を確定するための処理が行われる。すなわち、キーナンバー「3」及び「4」の各電子キーが1本ずつ或いは同時に呼び掛け信号の送信領域である車両周辺に持ち込まれると、それら2本の電子キーの各々から応答信号が送信され、各応答信号が照合制御装置35で解析されることで、メモリ35aに登録済のキー識別コードに対する照合でいずれも照合一致となる。そして、メモリ35aに登録済の電子キーの本数である4本から予め入力設定された紛失キーの本数である1本を減じた3本を上限として、その上限に達する以前にキー識別コードが照合一致した電子キーが有効キーとされる。尚、この有効キーには、ディーラでの紛失キー無効化処理の際に持ち込まれた電子キー、すなわち本例においてキーナンバー「1」の電子キーも含まれる。従って、本例では、紛失キーであるキーナンバー「2」の電子キーを除く、キーナンバー「1」及び「3」及び「4」の各電子キーが有効キーとされる。このときの状態をまとめると図4(c)のようになる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ディーラでの紛失キー無効化処理に際して紛失キーを除く全ての電子キーが一同に揃わなくても、一部の電子キーの有効性について仮決定(一時的有効化)された後に特定要件(本数上限到達以前での使用)が満たされれば、その電子キーのキー機能が有効化される。一方、上記仮決定された電子キーのうち本数上限到達以前に使用されなかった電子キーについては、キー機能が無効化され、使用不可となる。このため、ユーザは、ディーラに持ち込まなかった残りの電子キーについて、本数上限到達以前といった比較的早い段階で使用することで、紛失キーのみを使用不可にすることができる。従って、手元にない電子キーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることができる。
【0045】
(2)ユーザ自らが仮決定キーを本数上限到達以前に使用することは比較的容易であるが、紛失キーを取得した第三者がそれを行うことには困難が伴う。従って、紛失キーを含む仮決定キーの有効性を確定するに際し、ユーザによる利便性を向上できるとともに、セキュリティ性を向上することができる。
【0046】
(3)仮決定後に有効キー本数が上限本数に達した場合には、それまでにキー機能が有効化された電子キーを除く全ての電子キーが紛失キーとして扱われ、キー機能が無効化される。従って、有効化を望む電子キーについてそれを全て早急に有効化することで、紛失キーのみを確実に使用不可にすることができる。
【0047】
尚、上記第2の実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・キーナンバー「3」及び「4」の各電子キーの1本ずつ或いは同時での使用について、ディーラでの紛失キー無効化処理の後、時間的な制限を設けるようにしてもよく、この場合、上記第2の実施形態に倣うかたちで上限本数が設定されてもよいが、必ずしも上限本数は設定されなくてもよい。以下、時間的な制限を設けるとともに、上限本数の設定されない例について図5を用いて説明する。本例で用いる図5(a)は上記第2の実施形態で用いた図4(a)と同様であり、また、図5(b)は図4(b)と同様であるため、これらの説明については割愛する。
【0048】
この場合、ディーラで紛失キー無効化処理が行われてから所定の時間(例えば3日間)が経過するまでの一定期間内に使用された電子キーが有効キーとなる。一方、上記一定期間内に使用されなかった電子キーは、キー機能が一時的に有効化された状態からキー機能の無効化が確定される。図5(c)には、上記一定期間内に、キーナンバー「3」の電子キーが使用される一方で、上記一定期間内に、キーナンバー「4」の電子キーが使用されなかった例が示されている。すなわち本例では、実際の紛失キーであるキーナンバー「2」の電子キーに加え、ユーザ自らの意志で上記一定期間内に使用されなかったキーナンバー「4」の電子キーも、紛失キーとして扱われ、キー機能が無効化されて使用不可となる。尚、キーナンバー「4」の電子キーは、当初は家族用に割り当てられていた電子キーであったが、無効化が確定された後は使用不可となるので、図5(c)では、このキーナンバー「4」の電子キーについて、「自宅にあるキー」といった表現を用いている。
【0049】
同構成によると、仮決定された電子キーのうち仮決定後の一定期間内に使用されなかった電子キーは紛失キーとして扱われ、キー機能が無効化される。従って、ユーザ自らの意志で上記期間内に使用されなかった電子キーや紛失キーを確実に使用不可にすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…電子キーシステム、2…電子キー、3…セキュリティ装置、21…受信アンテナ、22…受信回路、23…マイコン、23a…メモリ、24…送信回路、25…送信アンテナ、31…送信回路、32…送信アンテナ、33…受信アンテナ、34…受信回路、35…照合制御装置(照合手段、決定手段)、35a…メモリ(登録手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが所持する電子キーに対し個別に設定されたキー識別コードが登録される登録手段を備え、前記登録手段にキー識別コードが登録されている登録済の電子キーによる電気的な制御が許容される電子キーシステムに適用され、
前記登録済の電子キーのうち特定の電子キーを紛失キーとしてキー機能を無効化し、当該キーによる電気的な制御を禁止する紛失キー無効化システムにおいて、
前記登録手段に登録されているキー識別コードに対する照合を行う照合手段と、
前記照合手段により照合一致したキー識別コードを有する電子キーのキー機能を有効化し、当該キーによる電気的な制御を許容するとともに、前記照合手段により照合一致しなかったキー識別コードを有する電子キーの有効性について仮決定を行い、キー機能を有効化するために必要な特定要件が満たされたことを条件に、前記仮決定された電子キーのキー機能を有効化する決定手段とを備える
ことを特徴とする紛失キー無効化システム。
【請求項2】
前記仮決定が行われてから所定の時間が経過するまでの一定期間内に、当該仮決定の行われた電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致したことを第1の特定要件と規定するとともに、
前記仮決定に至らず既に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致してキー機能が有効化されている電子キーの本数に、前記仮決定が行われた後に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致した当該仮決定の行われた電子キーの本数を加えた有効キー本数が、前記登録済の電子キーの本数から予め入力設定された紛失キーの本数を減じた上限本数に達する以前に、当該仮決定の行われた電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致したことを第2の特定要件と規定し、
さらに、前記仮決定が行われた後に、前記仮決定に至らず既に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致してキー機能が有効化されている電子キーのキー識別コードが前記照合手段により再び照合一致し、その照合の有効時間内に、当該仮決定の行われた電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致したことを第3の特定要件と規定し、
前記決定手段は、前記第1の特定要件及び前記第2の特定要件及び前記第3の特定要件の少なくとも一つが満たされたことを条件に、前記仮決定された電子キーのキー機能を有効化する
請求項1に記載の紛失キー無効化システム。
【請求項3】
前記決定手段は、前記仮決定に際し、前記照合手段により照合一致しなかったキー識別コードを有する電子キーのキー機能を前記特定要件が満たされるまでの期間に亘り一時的に無効化し、
さらに、前記決定手段は、前記仮決定を行った後に、前記仮決定に至らず既に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致してキー機能が有効化されている電子キーのキー識別コードが前記照合手段により再び照合一致し、その照合の有効時間内に、当該仮決定を行った電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致したことを条件に、前記仮決定した電子キーのキー機能を有効化する
請求項1に記載の紛失キー無効化システム。
【請求項4】
前記決定手段は、前記仮決定に際し、前記照合手段により照合一致しなかったキー識別コードを有する電子キーのキー機能を前記特定要件が満たされるまでの期間に亘り一時的に有効化し、
さらに、前記決定手段は、前記仮決定を行ってから所定の時間が経過するまでの一定期間内に、当該仮決定を行った電子キーのキー識別コードが前記照合手段により照合一致しなかった場合には、前記仮決定した電子キーのキー機能を無効化する
請求項1に記載の紛失キー無効化システム。
【請求項5】
前記決定手段は、前記仮決定に際し、前記照合手段により照合一致しなかったキー識別コードを有する電子キーのキー機能を前記特定要件が満たされるまでの期間に亘り一時的に有効化し、
さらに、前記決定手段は、前記仮決定に至らず既に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致してキー機能が有効化されている電子キーの本数に、前記仮決定を行った後に前記照合手段によりキー識別コードが照合一致した当該仮決定を行った電子キーの本数を加えた有効キー本数が、前記登録済の電子キーの本数から予め入力設定された紛失キーの本数を減じた上限本数に達した場合には、その達した時点で前記照合手段によりキー識別コードが照合一致しなかった当該仮決定を行った電子キーのキー機能を無効化する
請求項1に記載の紛失キー無効化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60741(P2013−60741A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199743(P2011−199743)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】