説明

紡糸装置

多数の紡糸ノズルを備えた、多数の糸を溶融紡糸するための紡糸装置について記載されている。これらの紡糸ノズルは密に隣接する2つのノズル列で機械長手方向側に沿って平行に配置されている。これらのノズル列の下側には、紡糸ノズルから押し出された糸を冷却するための冷却装置が設けられており、糸は、冷却装置の下側に配置された、パッケージを形成するためのワインダによって巻き付けられる。できるだけ操作しやすい装置を提供するために、本発明によれば、両ノズル列の多数の紡糸ノズルが機械長手方向側に沿って複数の長手方向モジュールに分割されており、該長手方向モジュールがそれぞれ1つの通路によって互いに分離されている。これにより両方の機械長手方向側から紡糸ノズルを操作するために僅かな距離だけを橋絡すれば良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、多数の糸を溶融紡糸するための紡糸装置に関する。
【0002】
このような形式の紡糸装置は欧州特許公開第0742851号明細書により公知である。
【0003】
公知の紡糸装置では、多数の糸を溶融紡糸するために複数の紡糸ノズルが平行な2つの列に互いに隣接して配置される。紡糸ノズルは単数又は複数の溶融物源に接続されていて、各紡糸ノズルからマルチフィラメントヤーンが押し出される。紡糸ノズルは1つの加熱された紡糸バーの内側に配置されている。紡糸バーの下方にはダブル冷却シャフトを備えた1つの冷却装置が形成されていて、各ノズル列に別個の冷却シャフトが対応配置されている。処理後、糸は通常、パッケージを形成するように巻き付けられる。この場合、パッケージは、1つ又は2つの紡績機のボビンスピンドル上に緊定することができる。
【0004】
紡糸装置によって比較的多数の糸を同時に製作すべき場合のために、多数の紡糸ノズルは、均一な加熱の問題と、コンパクトな構成形式ながらも操作しやすい装置を提示している。
【0005】
従って本発明の課題は、冒頭で述べた形式の紡糸装置を改良して、多数の紡糸ノズルから押し出される糸をほぼ均質な質で押し出すことができるようにすることである。
【0006】
本発明の別の課題は、プロセス中断の際に、紡糸ノズルによるできるだけ迅速な紡糸開始を可能にすることにある。
【0007】
この課題は、本発明によれば、請求項1の上位概念の特徴を有する紡糸装置において、両紡糸ノズル列の多数の紡糸ノズルが機械長手方向側に沿って複数の長手方向モジュールに分割されており、該長手方向モジュールがそれぞれ1つの通路によって互いに分離されていることにより解決された。
【0008】
本発明は特に、紡糸ノズルが複数の長手方向モジュールの形成によりグループに分けられていることを特徴としており、この場合、各グループは紡糸ノズルの配置と紡糸ノズルの熱処理において同様である。長手方向モジュールの間に通路が形成されていることにより、各長手方向モジュールを両方の機械長手方向側から操作することができる。これにより特に、1人のオペレータが長手方向モジュールの両ノズル列の紡糸ノズルを管理することができるので、プロセス開始時にまたはプロセス中断後に短い紡糸開始時間が実現される。
【0009】
本発明の別の構成では、長手方向モジュールがそれぞれ1つのボックス状のノズル支持体によって形成されており、該ノズル支持体が熱媒体によって加熱されていて、通路に面した端部で、流入部および流出部を介して熱媒体が供給される。このような構成は、長手方向モジュールの内側での紡糸ノズルの均一な熱処理のために特に有利である。さらに、長手方向に向けられた熱媒体回路は、ボックス状のノズル支持体に、機械長手方向側に向けられた軽い傾斜を設けることにより簡単に実現することができる。さらに、紡糸装置の内側に通路によって形成された空間は、供給導管および供給ユニットのために有利に利用可能であるという利点がある。
【0010】
長手方向モジュールの紡糸ノズルは有利には複数の紡糸位置に分割される。この場合、各紡糸位置には、冷却装置のそれぞれ1つのダブル冷却シャフトが対応配置されていて、ダブル冷却シャフトは各ノズル列につき1つの冷却シャフトを有している。これにより、押し出されたばかりのマルチフィラメントヤーンのために集中的な冷却が行われる。この場合、紡糸位置は2つのノズル列において、12、16、20までの紡糸ノズルを有していて良い。この場合、例えば4つの紡糸位置が1つの長手方向モジュールを形成することができる。1つの長手方向モジュールにおける紡糸位置の数は2〜6である。
【0011】
長手方向モジュールの内側におけるノズル列のできるだけ狭い分割を実現するために、請求項4に記載した本発明の別の構成が特に有利である。この場合、ダブル冷却シャフトに形成された真ん中の圧力室は、吹き付け空気を冷却シャフトに供給するために、機械長手方向側の側方に配置された空気通路を介して供給される。空気通路は、紡糸位置の間に配置されている横方向管片を介してダブル冷却シャフトの各圧力室に接続されている。これにより、空調装置の経済的な利用に必要なパラメータを維持することができる。特に、相応に僅かな流れ速度を生ぜしめる大きな供給横断面が実現される。
【0012】
各紡糸位置の内側で、例えば糸の破断のような事象を、一方の紡糸ノズル列もしくはその紡糸ノズル列の1つの紡糸ノズルに対応させることができるように、本発明の別の有利な構成によれば、糸が集合平面において所定の順序でまとめられる。これにより例えば、集合平面において、一方のノズル列の糸群が、隣接するノズル列の糸群の側方で案内されるという順序が生じる。しかしながら、両ノズル列の糸を交互に互いに隣接するように集合平面において案内することもできる。
【0013】
1つの紡糸位置の内側における多数の糸に基づき、紡糸位置ごとに設けられる巻取り機は、有利には2つの巻取りユニットを備えた1つの巻取り機によって、またはそれぞれ1つの巻取りユニットを備えた複数の巻取り機によって形成される。これにより、高い巻取り速度のために適したコンパクトな巻取りユニットが形成される。
【0014】
ノズル列の糸群をできるだけ同時に巻き付けてパッケージを形成するために、処理後に引き出された糸群を、一方のノズル列の糸と、他方のノズル列の糸が所定の対応関係でパッケージに巻き付けられるように、巻取りユニットに分割することが提案される。この場合、有利には、対応関係は、一方のノズル列の糸が全て、1つの巻取りユニットのボビンスピンドルに巻き付けられるように選択される。
【0015】
従って本発明は特に、従来の紡糸装置に対して約30〜40%小さな所要スペースを占める極めてコンパクトな構成形式を特徴とする。
【0016】
次に本発明の紡糸装置の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0017】
図1、図2、図3には、本発明による紡糸装置の1つの実施例が異なる図面で示されている。この場合、図1には機械長手方向側から見た図が、図2には図1の紡糸装置の一部が、図3には機械長手方向側に対して横方向から見た図が示されている。以下の説明は、これらの図のうちの1つを特別に参照するものではない限り、全ての図面に当てはまる。
【0018】
この紡糸装置は、図1〜図3では側方の支持体としてしか示されていない多層の機械フレーム1によって保持される。機械フレーム1の上段には、複数の長手方向モジュール2.1,2.2,2.3が機械長手方向側に沿って相並んで配置されている。長手方向モジュール2.1,2.2,2.3はそれぞれ多数の紡糸ノズル4を有しており、これらの紡糸ノズル4は2つの平行なノズル列A,Bに配置されている。
【0019】
図1に示したように、機械長手方向側に沿って配置された長手方向モジュール2.1,2.2.2,3はそれぞれ通路Dによって互いに分離されている。長手方向モジュール2.1,2.2の間の通路Dは、機械フレーム1の層全体にわたって延びている。
【0020】
長手方向モジュール2.1,2.2.2,3はそれぞれボックス形のノズル支持体8.1,8.2,8.3によって形成される。これらのボックス形のノズル支持体8.1,8.2,8.3の内側には、長手方向モジュールに対応配置された紡糸ノズル4と、紡糸ノズル4に結合された分配ポンプ5と、ここには図示されていない別の溶融物分配装置とが配置されている。溶融物を案内する構成部分を加熱するためにノズル支持体8.1,8.2,8.3はそれぞれ1つの熱媒体回路に接続されている。このためにノズル支持体8.1,8.2,8.3の端面33にはそれぞれ流入部11および流出部12が配置されている。流出部12はそれぞれノズル支持体8.1,8.2,8.3の下方領域に形成されており、ノズル支持体はやや傾斜した配置形式で保持されているので、復水として生じる熱媒体は簡単に導出され得る。流入部11と流出部12の供給導管は有利には通路Dの領域に形成されている。
【0021】
長手方向モジュール2.1,2.2.2,3の上方に配置された、溶融物形成装置もしくは溶融物分配装置は図示されていない。例えば、複数の長手方向モジュールの溶融物を案内する構成部分には押出機を介して溶融物が供給され得る。
【0022】
長手方向モジュール2.1,2.2.2,3はそれぞれ、複数の紡糸位置に分割されている。以下にこれらの紡糸位置の構成を長手方向モジュール2.1に基づき詳しく説明する。
【0023】
各紡糸位置3.1,3.2,3.3,3.4は全部で12の紡糸ノズル4を有している。この紡糸ノズル4は均一に2つのノズル列A,Bに分割されている。ノズル列Aの紡糸ノズルとノズル列Bの紡糸ノズルとはそれぞれ1つの分配ポンプ5に接続されている。各分配ポンプ5は駆動軸6を有しており、この駆動軸は駆動装置(図示せず)に連結されている。それぞれ1つの溶融物接続部7を介して分配ポンプ5には単数又は複数の溶融源からポリマ溶融物が供給される。
【0024】
図2及び図3に示した実施例では、1つの紡糸位置の紡糸ノズルは2つの別個の分配ポンプによって供給される。しかしながら、例えば、2列のノズル列に設けられた総数6又は8の紡糸ノズルにおいて、全ての紡糸ノズルが1つの分配ポンプによって供給されることも可能である。この場合、各紡糸位置における紡糸ノズルの数は一例に過ぎないということに注意されたい。
【0025】
ノズル支持体8.1,8.2,8.3の下方には冷却装置13が配置されている。この冷却装置13は紡績個所ごとにそれぞれ1つのダブル冷却シャフト14を有している。つまり、第1の長手方向モジュール2.1の紡糸位置3.1〜3.4にはそれぞれダブル冷却シャフト14.1,14.2,14.3,14.4が対応配置されている。
【0026】
図3に示したように、各ダブル冷却シャフト14.1〜14.4は、それぞれノズル列A及びノズル列Bの紡糸ノズル4に対応配置された2つの別個の冷却シャフト15.1,15.2によって形成される。ダブル冷却シャフト14.1〜14.4は、冷却シャフト15.1,15.2の間に各1つの圧力室16を有している。冷却シャフト15.1,15.2と圧力室16の間には吹付け壁17.1,17.2が形成されているので、横方向に向けられた冷却空気流が冷却シャフト15.1,15.2内に生ぜしめられる。ダブル冷却シャフト14.1〜14.4の圧力室16は、下方領域で空気接続部18および横方向接続管片19を介して中央の空気通路20に接続されている。空気通路20は機械長手方向側に平行に側方で延びていて、冷却装置13の全てのダブル冷却シャフトに供給する。空気通路20に接続された横方向接続管片19は冷却装置13の下方領域で紡糸位置の間に配置されている。冷却装置13の下方領域はそれぞれ落下シャフトによって形成されている。第1の長手方向モジュール2.1ではこれらの落下シャフトは符号34.1,34.2,34.3,34.4で示されている。落下シャフト34.1〜34.4はこの場合、下方に狭まる形状を有しており、これにより紡糸位置の間に生じる空間が、横方向接続管片19を収容するために利用される。吹付け空気の側方からの供給は特に、紡糸ノズル列A,Bができるだけ狭い部分を互いにおいて配置することができるという大きな利点を有している。従って、ノズル列A,Bの間に延びる中央平面を通って配置される空気供給部を省くことができる。
【0027】
図3に示したように、ダブル冷却シャフト14.1の下方領域では、各冷却シャフト15.1,15.2にそれぞれ1つの準備装置23.1,23.2が対応配置されている。この場合、準備装置23.1はノズル列Aの紡糸ノズル4に対応配置されているので、押し出されたノズル列Aのマルチフィラメントヤーン9は冷却終了時に準備装置23.1によって準備コーティングが行われる。相応に、ノズル列Bの紡糸ノズルから押し出された糸10が準備装置23.2によって準備される。糸9,10は準備されてから、共通の集合平面35で1つの糸群22にまとめられる。このために、落下シャフト34.1の出口側にガイド手段21が配置されている。このガイド手段21によって、糸群22の内側における各糸の予め規定された順序が守られる。次に、糸群22における糸9,10の配分を詳しく説明する。
【0028】
図1、図2、図3に示したように、冷却装置13の下側には処理装置24が配置されている。この処理装置24は多数の処理モジュール36を有しており、各紡糸位置にこれらの処理モジュール36の1つが対応配置されている。第1の長手方向モジュール2.1の例では、紡糸位置3.1〜3.4に処理モジュール36.1〜36.4が対応配置されている。処理モジュールは処理したい糸のタイプに応じて、ゴデット、ゴデットユニット、交絡装置、コーム、加熱装置、準備装置等の装置が装備されている。図示の実施例では、具体的に例えば2つのゴデット25.1,25.2が示されている。
【0029】
処理装置24の内側では、糸群22がガイドされる集合平面35がガイド手段21から第1のゴデット25.1に達する移行部において90°回転される。これにより、糸はゴデット25.1に沿って、機械長手方向に対してほぼ横方向に向けられた1つの平面でガイドされる。
【0030】
処理装置24の下側には多数の巻取りユニットから成るワインダ26が配置されている。即ち、各紡糸位置にはそれぞれ2つの巻取りユニット27.1,27.2が対応配置されている。この場合、巻取りユニット27.1,27.2は、1つの巻取り機の形または相並んで設置された2つの巻取り機の形で形成することができる。図示の実施例では巻取りユニット27.1,27.2が、それぞれ同期運転される巻取り機37.1,37.2に形成されている。即ち、ワインダ26は多数の巻取り機37から形成される。各巻取りユニット27.1,27.2では糸群22の糸がそれぞれ1つのパッケージ32となるように巻成される。このためにはパッケージ32はボビンスピンドル29.1に緊締されている。ボビンスピンドル29.1は各巻取りユニット27.1,27.2においてそれぞれボビンリボルバ28によって保持される。このボビンリボルバ28は180°ずらされて配置された第2のボビンスピンドル29.2を支持している。従ってボビンリボルバの回転により、糸群22の糸は継続的にパッケージを形成するように巻成される。パッケージ32の周面には圧着ローラ30が接触している。圧着ローラ30に前置された、綾巻きパッケージを形成するために糸を往復ガイドするための綾振り装置は図示されていない。
【0031】
巻取りユニット27.1,27.2に糸群22が進入する手前に、糸群22の糸を分割するために紡糸位置ごとに各1つのダブルガイド条片31が設けられている。この場合、紡糸ノズル列A,Bもしくはノズル列A,Bの紡糸ノズルに合わせられた対応配置がこのダブルガイド条片31によって保持される。次に、糸群の分割と選択的な対応配置について詳しく説明する。
【0032】
図1、図2、図3に示した紡糸装置では、冷却装置13、処理装置24及びワインダ26は各長手方向モジュール2.1,2.2.2,3において同様に形成されている。運転中、1つ又は複数の溶融物源によって、例えばポリエステルベースのポリマー溶融物が形成される。ポリマー溶融物は、分配システム(詳しくは説明せず)を介して長手方向モジュール2.1,2.2.2,3の分配ポンプ5へと案内される。分配ポンプ5によってポリマー溶融物は過剰圧力をもって、対応配置された紡糸ノズル4へと圧送される。各紡糸ノズル4はその下面に多数のノズル孔を有しており、これらのノズル孔を通って糸ごとに1つのファインフィラメント束が押し出される。即ち、紡糸装置の各紡糸ノズルはマルチフィラメントヤーンを形成する。従って1つの紡糸位置の内側でノズル列ごとに紡糸される糸は、次いで紡糸位置ごとに配置されたダブル冷却シャフトで冷却されて、隣接したノズル列の糸と一緒に冷却後、1つの共通の糸群22にまとめられる。まとめられる前に、ノズル列Aの糸9とノズル列Bの糸10とは、それぞれ対応配置された準備装置23.1,23.2によって液体で濡らされ、次いでガイド手段21によって紡糸位置ごとに糸群22にまとめられる。糸群の糸は、互いに平行に狭い間隔を置いてそれぞれ1つの処理モジュール36を通ってガイドされ、次いで処理後に2つの巻取りユニットを介してパッケージを形成するように巻き取られる。
【0033】
このような紡糸装置では、一方では紡糸ノズルの定期的な保守整備が実施され、他方ではプロセス中断後またはプロセス開始時に新たに紡糸された糸がオペレータによって継がれなければならない。紡糸ノズルの本発明のような装置により、複数の機械長手方向側の間の迅速な交換を一人のオペレータによって簡単に行うことができる。図2に示したように、一人のオペレータは中層階から長手方向モジュール2.1,2.2.2,3を両機械長手方向側から迅速に操作することができる。このためには各長手方向モジュール2.1,2.2.2,3の間の通路Dを通って長手方向側を変更することができる。各長手方向側の間の距離が短いことにより、1つの紡糸位置において糸が破断した後でもプロセス中断は極めて短い。
【0034】
本発明による紡糸装置のさらなる利点は、供給導管及び例えば準備搬送装置のような付加ユニットを、有利には隣接した各長手方向モジュールの間の通路Dに組み込むことができることにある。これにより、極めてコンパクトで省スペース型の紡糸装置が提供される。従って例えば、長手方向モジュールの第2のラインを、図1に示した装置のすぐ隣に配置することができる。これにより有利には建物全体に、列において配置されたこのような形式の長手方向モジュールを備え付けることができる。これは従来の紡糸装置と比較して30〜40%小さな所要スペースを要する。
【0035】
このような形式の紡糸装置を監視する際には通常、各糸の糸走行が監視される。糸の破断が検出された場合のために、制御装置に相応に報知するセンサ手段が設けられている。このような形式の監視法は、紡糸装置全体において品質の高い高価な糸を製造するために特に重要である。ただし、糸走行部内で発生する事象のこのような形式の監視と分析のためには、どの紡糸位置もしくはどの紡糸ノズルから糸が形成されたのかということを知る必要がある。この点において、両ノズル列からの糸をまとめる場合は、予め規定された順序を保持しなければならない。こうすることにより、ワインダから紡糸ノズルまで糸走行部全体を逆に辿ることができる。
【0036】
このために図4及び図5には、1つの紡糸位置内での各糸の分布が概略的に示されている。分布および紡糸位置は、例えば図1に符号3.1で示した紡糸位置を成していて良い。図4にはこの場合、糸群22が形成されるまでの紡糸位置が概略的に示されていて、図5には当該紡糸位置の横断面図が概略的に示されている。前記両図のうちの一方に関連づけない限り以下の説明は両図に該当する。
【0037】
部分的に示したノズル支持体8.1では全部で12の紡糸ノズル4が均一に2つのノズル列A、Bに分配されている。従ってノズル列Aの紡糸ノズル4からは相応に、符号9で示されている6つの糸が形成される。ノズル列Bの糸10は相応に、ノズル列Bの紡糸ノズル4から押し出される。冷却シャフト(図示せず)の内側では、糸9と10とが平行に案内されて準備装置23.1,23.2まで到る。この場合、準備装置23.1,23.2は準備ローラとして示されている。しかしながら準備装置は、それぞれ糸を濡らす個々の準備ピンから形成されていても良い。
【0038】
糸9,10は濡らされた後、共通の集合平面35へとガイドされる。集合平面35では糸9,10はガイド手段によって1つの糸群22を成すように配置される。この糸群22では、相並んで配置された12の糸が予め規定された順序を有している。図4に示した実施例では、ノズル列Bの糸10とノズル列Aの糸9とがそれぞれ糸群として相並んでガイドされる。落下シャフトの下側に配置されたガイド手段21は例えば、12の個々の糸ガイドを有した糸ガイド条片によって形成されていて良い。
【0039】
図5に示したように、集合平面35はノズル列Aとノズル列Bとの紡糸ノズルの間の真ん中の領域に配置されている。従って、両ノズル列の糸の均一な変位が得られる。これにより、有利には同じ物理特性を備えた糸を製作することもできる。
【0040】
図6には糸群における糸の分布の別の実施例が示されている。図6に示した実施例は、図4の実施例と同じであるので、ここでは相違点のみを示す。ノズル列Aの糸9の分布とノズル列Bの糸10の分布の際には、ガイド手段21によって、ノズル列Aの糸9とノズル列Bの糸10とを交互に互いに並べてガイドする糸群22の内側の順序が規定される。これによりノズル列に基づいて所定の順序AB AB ABが得られる。これにより糸群22の処理装置への移行部が、糸の出所が判るように規定されている。
【0041】
合成糸の製作の際、糸品質はその都度の巻取り過程によって著しく決定される。この点に関して、均一な糸品質を得るために、紡糸ノズルと巻取り位置との間の規定された対応配置が有利である。図7には、例えば図1に示した紡糸装置で使用可能な巻取りユニットの実施例に基づいて、糸群の糸が処理後にそれぞれ個々の巻取りユニットに分割される様子が示されている。
【0042】
この場合、巻取りユニット27.1,27.2は1つの巻取り機内に形成されている。巻取り機は2つのボビンリボルバ28.1,28.2を有している。これらのボビンリボルバは、それぞれ2つのボビンスピンドル29.1,29.2を支持している。ボビンリボルバ28.1,28.2にはそれぞれ1つの圧着ローラ30.1,30.2が対応配置されている。これらの圧着ローラ30.1,30.2の上方には1つのダブルガイド条片31が設けられており、このダブルガイド条片31は両長手方向側に関してボビンスピンドルに対して平行に、巻取り位置ごとに各1つの糸ガイドを有している。このような形式のダブル巻取り機は基本的に公知であり、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10045473号明細書に記載されている。これに関して巻取り機の詳しい説明については引用した前記刊行物が参照される。
【0043】
糸群22は処理後、ダブルガイド条片31によって、規定された対応配置に相応して個々の巻取りユニット27.1,27.2に分割される。この場合、ノズル列Aの糸9及びノズル列Bの糸10が糸群22から分離され、それぞれ巻取りユニット27.1,27.2に供給される。これによりノズル列Aの糸9が巻取りユニット27.1のボビンスピンドル29.1においてパッケージを形成するように巻き付けられ、ノズル列Bの糸10は巻取りユニット27.2のボビンスピンドル29.2においてパッケージを形成するように巻き付けられる。従って、糸群22内の糸は全て、紡糸ノズルとワインダとの間のあらゆる位置で識別可能である。紡糸装置の監視と制御は従って、簡単な手段によって実施可能である。
【0044】
図1に示した紡糸装置の処理装置及びワインダの構成は例に過ぎない。従って、例えば1つの紡糸装置の全ての糸を一緒に、唯1つの巻取りユニットを備えた巻取り機によって収容することができる。処理装置の構成は、主として、完全にドラフトされた糸(FDY)、予備配向された糸(POY)、高度に配向された糸(HOY)、またはクリンプ糸(BCF)のどれが製造されるかに依存している。これに関して、処理装置には選択的に複数のユニットが装備される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の紡糸装置の1つの実施例を示す図である。
【図2】図1の実施例を示す別の図である。
【図3】図1の実施例を示すさらに別の図である。
【図4】集合平面における糸ガイドのための実施例を概略的に示した図である。
【図5】集合平面における糸ガイドのための実施例を概略的に示した図である。
【図6】集合平面における糸ガイドのための別の実施例を概略的に示した図である。
【図7】図1の紡糸装置の巻き付け装置の実施例を概略的に示した図である。
【符号の説明】
【0046】
1 機械フレーム、 2.1,2.2,2.3 長手方向モジュール、 3.1,3.2,3.3,3.4 紡糸位置、 4 紡糸ノズル、 5 分配ポンプ、 6 駆動軸、 7 溶融物接続部、 8.1,8.2,8.3 ノズル支持体、 9 ノズル列Aの糸、 10 ノズル列Bの糸、 11 流入部、 12 流出部、 13 冷却装置、 14.1,14.2,14.3,14.4 ダブル冷却シャフト、 15.1,15.2 冷却シャフト、 16 圧力室、 17.1,17.2 吹付け壁、 18 空気接続部、 19 横方向接続管片、 20 空気通路、 21 ガイド手段、 22 糸群、 23.1,23,2 準備装置、 24 処理装置、 25.1,25.2 ゴデット、 26 ワインダ、 27.1,27.2 巻取りユニット、 28 ボビンリボルバ、 29.1,29.2 ボビンスピンドル、 30 圧着ローラ、 31 ダブルガイド条片、 32 パッケージ、 33 端面、 34.1,34.2,34.3,34.4 落下シャフト、 35 集合平面、 36.1,36.2,36.3,36.4 処理モジュール、 37.1,37.2 巻取り機、 A,B ノズル列、 D 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の糸を溶融紡糸するための紡糸装置であって、多数の紡糸ノズル(4)が設けられており、これらの紡糸ノズルが密に隣接する2つのノズル列(A,B)で機械長手方向側に沿って平行に配置されており、これらのノズル列(A,B)の下側に配置された、紡糸ノズル(4)から押し出された糸を冷却するための冷却装置(13)と、該冷却装置(13)の下側に配置された、糸を巻き付けてパッケージを形成するためのワインダ(26)とが設けられている形式のものにおいて、
両ノズル列(A,B)の多数の紡糸ノズル(4)が機械長手方向側に沿って複数の長手方向モジュール(2.1,2.2)に分割されており、該長手方向モジュール(2.1,2.2)がそれぞれ1つの通路(D)によって互いに分離されていることを特徴とする紡糸装置。
【請求項2】
長手方向モジュール(2.1,2.2)がそれぞれ1つのボックス状のノズル支持体(8.1,8.2)によって形成されており、該ノズル支持体(8.1,8.2)が熱媒体によって加熱可能であって、ノズル支持体(8.1,8.2)が、通路(D)に面した少なくとも1つの端部に熱媒体のための流入部(11)及び/又は流出部(12)を有している、請求項1記載の紡糸装置。
【請求項3】
長手方向モジュール(2.1,2.2)の紡糸ノズル(4)が複数の紡糸位置(3.1,3.2)に分割されていて、冷却装置(13)が前記紡糸位置(3.1,3.2)ごとにそれぞれ1つのダブル冷却シャフト(14.1,14.2)を有しており、該ダブル冷却シャフトは、紡糸位置(3.1,3.2)の各ノズル列(A,B)において別個の冷却シャフト(15.1,15.2)を形成している、請求項1又は2記載の紡糸装置。
【請求項4】
紡糸位置(3.1,3.2)に対応配置されたダブル冷却シャフト(14.1,14.2)がそれぞれ1つの中央の圧力室(16)を有しており、ダブル冷却シャフト(14.1,14.2)の中央の圧力室(16)が、機械長手方向面に隣接して配置された側方の空気通路(20)に接続されている、請求項3記載の紡糸装置。
【請求項5】
ダブル冷却シャフト(14.1,14.2)の圧力室(16)が横方向管片(19)によって、紡糸位置(3.1,3.2)の間に配置されている冷却通路(20)に接続されている、請求項4記載の紡糸装置。
【請求項6】
ダブル冷却シャフト(14.1,14.2)のそれぞれが落下シャフト(34.1,34.2)に開口しており、両ノズル列(A,B)の紡糸ノズル(4)の糸が、落下シャフト(34.1,34.2)の下側で、平行に延びる糸の糸群(22)を形成するために1つの共通の集合平面(35)へと案内される、請求項3から5までのいずれか1項記載の紡糸装置。
【請求項7】
一方のノズル列(A)の糸(9)が、他方のノズル列(B)の糸(10)とともに前記集合平面(35)においてガイド手段(21)によって、糸群(22)内に所定の順序が生じるように案内される、請求項6記載の紡糸装置。
【請求項8】
紡糸位置(3.1)ごとに設けられたワインダ(26)が、2つの巻取りユニット(27.1,27.2)またはそれぞれ1つの巻取りユニットを備えたそれぞれ2つの巻取り機(37.1,37.2)を有している、請求項6又は7記載の紡糸装置。
【請求項9】
処理後に引き出される糸群(22)が、ノズル列(A)の糸(9)とノズル列(B)の糸(10)とが、所定の対応配置でパッケージ(12)を形成するように巻き付けられるように分割される、請求項8記載の紡糸装置。
【請求項10】
前記対応配置が、一方のノズル列(A)の糸(9)が全て、一方の巻取りユニット(27.1)のボビンスピンドル(29.1)に巻取られ、他方のノズル列(B)の糸(10)が他方の巻取りユニット(27.2)の第2のボビンスピンドル(27.2)に巻き付けられるように選択されている、請求項9記載の紡糸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−512444(P2007−512444A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540340(P2006−540340)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013168
【国際公開番号】WO2005/052226
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】