説明

紡績糸製造装置

延伸機(3)と、延伸機の下流側に配置されたエアノズルアッセンブリ(4)とを備えた、スフスライバーから紡績糸を製造するための装置。排気ダクト(15)を備えた渦室はエアノズルアッセンブリの内側に配置されている。クリーニングダクト(18)は延伸機の供給ロール対(9,10)に割り当てられており、排気ダクトと共に1つの共通の負圧源(21)に接続されている。クリーニングダクト(18)は好ましくはエアノズルアッセンブリ(4)の内部において排気ダクト(15)に開口している。クリーニングダクトは好ましくは供給ロール対の加圧ロール(10)の方へ方向づけられている。追加の吸引開口も延伸機の下側ロール(5,9)に割り当てられることができ、同様に共通の負圧源に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給ロール対を有する延伸機と、延伸機の下流側に配置され、排気ダクトを備えた渦室を有しているエアノズルアッセンブリと、吸引口により供給ロール対に付設されているクリーニングダクトとを備えた、スフスライバーから紡績糸を製造するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は特許文献1によって知られている。この装置の場合、スフスライバーは延伸機において延伸されてスライバーになり、スライバーにはその後エアノズルアッセンブリにおいて紡糸回転が付与される。このためスライバーはエアノズルアッセンブリの取り込みダクトを通じてまず渦室内へ案内される。渦室には、糸引き出しダクトの取り込み口のまわりに渦流を発生させるための流体装置が付設されている。この場合、まず、スライバーに保持されている繊維の前端が糸引き出しダクト内へ案内され、他方糸の自由な後端は拡開され、渦流により把持され、すでに糸引き出しダクトの取り込み口にある端部、すなわち取り込まれた前端のまわりにねじれを付与され、これにより十分に真正なねじれを備えた糸が生成される。
【0003】
このような装置は高速の紡糸速度を可能にし、したがって、とりわけエアノズルアッセンブリの上流側に配置されている延伸機に対しても高度の要求が課される。特に、かなり高速で回転する供給ロール対はその周面で繊維の飛散が生じる傾向がある。このため、公知の装置の供給ロール対には、供給ロール対を清潔に保つ用を成すクリーニングダクトの吸引口が付設されている。前記特許文献1はどの負圧源にクリーニングダクトが接続されているかを記載していないが、図面から判断すると、排気ダクトとクリーニングダクトとに対し異なる負圧源が設けられていることは明らかである。
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1207225A2号明細書
【発明の開示】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類の装置に対し特に簡潔な構成を設けることである。
この課題は、排気ダクトとクリーニングダクトとが1つの共通の負圧源に接続されていることによって解決される。
【0006】
排気ダクトに対し必要な負圧と供給ロール対を吸引するために必要な負圧とは、1つの共通の負圧源(たとえば共通のファン)では達成できないほど互いに異なるものではないことが明らかになった。空間的に非常に狭くなっている領域での機械工学的観点では、これはかなりのスペースの節約になり、従来の技術に比べて製造コストを著しく低減させるものである。
【0007】
本発明の1つの構成では、クリーニングダクトはエアノズルアッセンブリの内部において排気ダクトに開口している。このために、排気ダクトがクリーニングダクトの開口領域においてリングダクトとして形成されていてもよい。
【0008】
エアノズルアッセンブリは通常のように渦室に通じている取り込みダクトを有し、該取り込みダクトに対しクリーニングダクトが少なくともほぼ平行に延びているのが有利である。このようにして、取り込みダクトに続いている渦室もクリーニングダクトも排気ダクトに簡単に接続させることが容易に可能になる。この場合、クリーニングダクトの吸引口は、取り込みダクトから間隔をおいて、供給ロール対に付属の加圧ロールの方へ方向づけられていてもよい。すなわち実験により、供給ロール対の加圧ロールが飛散に対し特に抵抗力がないことが明らかになったからである。前記間隔はほぼ加圧ロールの半径に対応しているのが合目的である。
【0009】
本発明の他の構成では、延伸機の駆動される下側ロールに、延伸機に付属の加圧ロールとは逆の側の領域に位置するようにそれぞれ他の吸引口が付設され、これら他の吸引口も前記共通の負圧源に接続されているのが有利である。このようにして、ただ1つの負圧源だけでエアノズルアッセンブリから紡糸空気が排出されるばかりでなく、さらに延伸機全体を清潔に保つことができる。
【0010】
本発明の他の利点および構成は、拡大概略断面図で図示した紡績装置の以下の説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面に図示した装置は、スフスライバー2から紡績糸1を製造するために用いられる。装置は主要な構成要素として延伸機3とエアノズルアッセンブリ4とを含んでいる。
【0012】
紡績されるスフスライバー2は供給方向Aにおいて延伸機3に供給され、紡績された糸1として排出方向Bに引き出され、図示していない巻取り装置へ転送される。
【0013】
一部のみを図示した延伸機3は3シリンダ延伸機として実施されているのが好ましく、全部で3つのロール対を有している。これらのロール対はそれぞれ駆動される下側ロールと、加圧ロールとして構成された上側ロールとを有している。図示していない入口側ロール対には、案内ベルト7と8を備えたロール対5,6と、供給ローラ対9,10とが続いている。符号5と9はそれぞれ駆動される下側ロールであり、符号6と10は付属の加圧ロールである。このような延伸機3においてスフスライバー2が公知の態様で所望の精度まで延伸される。延伸機3に接続して薄いスライバー11があり、スライバー11は延伸されているが、撚りはかかっていない。
【0014】
延伸機3の下流側にわずかな間隔をおいて配置され、紡糸回転を付与するエアノズルアッセンブリ4は、本発明では任意の構成であってもよい。しかしながら、国際公開第02/24993A2号パンフレットに記載の構成が好ましい。というのは、この種のエアノズルアッセンブリ4は特に高速の供給速度を可能にするからである。
【0015】
エアノズルアッセンブリ4には取り込みダクト12を介してスライバー11が供給される。この取り込みダクト12にはいわゆる渦室13が続いている。渦室13内ではスライバー11に紡糸回転が付与され、その結果紡績糸1が生じる。紡績糸1は糸引き出しダクト14を通じて引き出される。流体装置を設ければ、渦室13に対し接線方向に開口する圧縮空気ノズルにより圧縮空気を吹き込むことにより渦室13内に渦流が発生する。ノズルオリフィスから流出する圧縮空気は排気ダクト15を介して排気される。排気ダクト15は糸引き出しダクト14を含んでいるスピンドル状の定置部材16のまわりにリング状の横断面を有している。
【0016】
渦室13の領域には、ねじれ防止手段として、糸引き出しダクト14に対しわずかに偏心して該糸引き出しダクト14の取り込み口に配置される糸案内面のエッジが配置されている。
【0017】
本発明による装置では、紡糸される糸はスライバー11の状態に保持され、したがって実質的に回転を付与されることなく取り込みダクト12から糸引き出しダクト14内へ案内される。他方糸は、取り込みダクト12と糸引き出しダクト14との間の領域で渦流の作用を受け、この渦流の作用により糸は、或いは少なくともその端部領域は、糸引き出しダクト14の取り込み口から離間するように駆動される。したがって、上記の方法で製造された糸1は、実質的に糸長手方向に延びる繊維またはほとんどねじれのない繊維領域の核と、この核のまわりで繊維または繊維領域がねじれている外側領域とを有する。
【0018】
このような糸の構造を実現するため、典型的な例を挙げて説明すると、繊維の先行側端部、特に後行側端部が上流側へ向けて取り込みダクト12で保持されるような糸の先行側端部を、実質的に直接に糸引き出しダクト14内へ到達させ、他方繊維の後行側領域を、特に取り込みダクト12の入口領域でもはや保持されなくなったときに、渦形成によりスライバー11から引き出し、その後、発生した糸1のまわりに回転せしめる。いかなる場合も、繊維は同じ時点で、発生した糸1に取り込まれて糸引き出しダクト14を通じて引張られるとともに、渦流の作用をも受ける。渦流は繊維を遠心力で糸引き出しダクト14の取り込み口から離間するように加速させ、排気ダクト15中へ引き出す。渦流によりスライバー11から引き出された繊維領域は、糸引き出しダクト14の取り込み口に開口する繊維渦を形成する。繊維渦はいわゆる太陽であり、その長いほうの成分は糸引き出しダクト14のスピンドル状の入口領域のまわりにスパイラル状に外側で巻回され、スパイラルの状態で排気ダクト15内の流動力に抗して糸引き出しダクト14の取り込み口の方へ引っ張られる。
【0019】
この種の構成の装置は、600m/分のオーダーの特に高速の紡糸速度を可能にさせる。この場合、供給ロール対9,10は必要とする高延伸効率のために特に高速で回転しなければならないので、延伸機3に対し非常に高度な要求が立てられることは明らかである。供給ロール対9,10が、特にその加圧ロール10が損失繊維の飛散をかなり受けることは必然である。このため、供給ロール対9,10の加圧ロール10にはクリーニングダクト18の吸引口17が付設されている。
【0020】
本発明による装置のために設けられたクリーニングダクト18は、冒頭で述べた従来の技術の場合とは異なり、エアノズルアッセンブリ4の内部において排気ダクト15に開口している。排気ダクト15はクリーニングダクト18の開口領域19に、スパイラル状の部材16を取り囲むリングダクト20として形成されている。
【0021】
図から明らかなように、クリーニングダクト18は渦室13に通じている取り込みダクト12に対し少なくともほぼ平行に延びている。これにより、クリーニングダクト18の吸引口17を取り込みダクト12からある程度の間隔で供給ロール対9,10の加圧ロール10の方向へ方向づけることが可能になる。上記間隔はほぼ加圧ロール10の半径に対応しているべきである。
【0022】
装置のこのような構成により、排気ダクト15とクリーニングダクト18とを1つの共通の負圧源21(ここでは吸引管として図示されている)へ接続することが可能になるが、図示していないファンへ接続させるのが合目的である。この共通の負圧源21には他の吸引口22と23を接続させてもよい。これら他の吸引口22と23は、付属の加圧ロール6,10とは逆の側の領域において、駆動される下側ロール5,9と上流側の図示していない入口下側ロールとに対向している。これにより、紡糸空気を排出することも延伸機3を清潔に保つことも簡単に可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】紡績装置の拡大概略断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 紡績された糸
3 延伸機
4 エアノズルアッセンブリ
6 加圧ロール
9,10 供給ローラ対
10 加圧ロール
12 取り込みダクト
13 渦室
15 排気ダクト
17 吸引口
18 クリーニングダクト
19 開口領域
20 リングダクト
21 負圧源
22,23 吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ロール対を有する延伸機と、延伸機の下流側に配置され、排気ダクトを備えた渦室を有しているエアノズルアッセンブリと、吸引口により供給ロール対に付設されているクリーニングダクトとを備えた、スフスライバーから紡績糸を製造するための装置において、排気ダクト(15)とクリーニングダクト(18)とが1つの共通の負圧源(21)に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
クリーニングダクト(18)がエアノズルアッセンブリ(4)の内部において排気ダクト(15)に開口していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
排気ダクト(15)がクリーニングダクト(18)の開口領域(19)においてリングダクト(20)として形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
エアノズルアッセンブリ(4)が渦室(13)に通じている取り込みダクト(12)を有し、該取り込みダクト(12)に対しクリーニングダクト(18)が少なくともほぼ平行に延びていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
クリーニングダクト(18)の吸引口(17)が、取り込みダクト(12)から間隔をおいて、供給ロール対(9,10)に付属の加圧ロール(10)の方へ方向づけられていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記間隔がほぼ加圧ロール(10)の半径に対応していることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
延伸機(3)の駆動される下側ロール(5,9)に、延伸機(3)に付属の加圧ロール(6,10)とは逆の側の領域に位置するようにそれぞれ他の吸引口(22,23)が付設され、これら他の吸引口(22,23)も前記共通の負圧源(21)に接続されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2006−519936(P2006−519936A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504425(P2006−504425)
【出願日】平成16年2月14日(2004.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001402
【国際公開番号】WO2004/081268
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】