説明

紫外線吸収剤およびこれを含む高分子材料

【課題】ポリマーに混練したりまたは溶媒を用いて溶解させたりする場合の製造適性に優れ、共用する高分子材料の紫外光耐久性を向上させることだけでなく、該高分子材料を紫外線フィルタとして用いることによって他の安定でない化合物の分解を抑制することもできる、析出やブリードアウトのない、長波紫外線吸収能を長期間維持して耐光性に優れる紫外線吸収剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤。


(式中、R11、R12及びR14は各々独立に1価の置換基を表し、R13は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤およびこれを含む高分子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紫外線吸収剤を種々の樹脂などと共用して紫外線吸収性を付与することが行われている。紫外線吸収剤として無機系紫外線吸収剤と有機系紫外線吸収剤を用いる場合がある。無機系紫外線吸収剤(例えば、特許文献1〜3等を参照。)では、耐候性や対熱性などの耐久性に優れている反面、吸収波長が化合物のバンドギャップによって決定されるために選択の自由度が少なく、320〜400nmの長波紫外線(UV−A)領域まで吸収できるものはない。また、長波紫外線を吸収するものは可視域まで吸収を有するために着色を伴ってしまう。
これに対して、有機系紫外線吸収剤は、吸収剤の構造設計の自由度が高いために、吸収剤の構造を工夫することによって様々な吸収波長のものを得ることができる。
【0003】
これまでにも様々な有機系紫外線吸収剤を用いた検討がなされている。長波紫外線領域まで吸収する場合には、極大吸収波長が長波紫外線領域にあるものを用いるか、濃度を高くするかの2通りが考えられている。しかし、特許文献4及び5等に記載された極大吸収波長が長波紫外線領域にあるものは、耐光性が悪く、吸収能が時間とともに減少していくという欠点があった。
【0004】
これに対してベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は比較的耐光性に優れ、濃度や膜厚を大きくすれば長波長領域まで比較的クリアにカットできる(例えば特許文献6及び7等を参照。)。しかし、通常これらの紫外線吸収剤を樹脂等に混ぜて塗布する場合、膜厚は数十μm程度が限界である。この膜厚で長波長領域までカットするためには、高濃度に紫外線吸収剤を添加する必要がある。このような場合、紫外線吸収剤の析出や長期使用によるブリードアウトが生じるという問題があった。また、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の中には、皮膚刺激性や生体内への蓄積性の懸念があるものがある。
【0005】
一方、例えば、非特許文献1及び2には、4−ベンジリデンピラゾリジン−3,5−ジオン化合物に関する記載がある。
【0006】
【特許文献1】特開平5−339033号公報
【特許文献2】特開平5−345639号公報
【特許文献3】特開平6−56466号公報
【特許文献4】特開平6−145387号公報
【特許文献5】特開2003−177235号公報
【特許文献6】特表2005−517787号公報
【特許文献7】特開平7−285927号公報
【非特許文献1】Bulletin of the Chemical Society of Japan(1932年)7巻44頁
【非特許文献2】Journal of Chemical Physics(1950年)18巻1307頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリマーに混練したりまたは溶媒を用いて溶解させたりする場合の製造適性に優れ、共用する高分子材料の紫外光耐久性を向上させることだけでなく、該高分子材料を紫外線フィルタとして用いることによって他の安定でない化合物の分解を抑制することもできる、析出やブリードアウトのない、長波紫外線吸収能を長期間維持して耐光性に優れる紫外線吸収剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、光堅牢性が高い特定の構造を有する化合物を高分子材料に用いることで、その化合物の析出や長期使用によるブリードアウトが生じることなく、長波紫外線吸収能に優れ、かつ前記吸収能を長期間維持して耐光性に優れる高分子材料を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の課題は、下記の手段によって達成された。
【0009】
[1]下記一般式(1)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤。
【化1】

(式中、R11、R12及びR14は各々独立に1価の置換基を表し、R13は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。)
【0010】
[2]下記一般式(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤。
【化2】

(式中、R21は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換または無置換のフェニル基を表し、R22は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基を表し、R23は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、R24は1価の置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。)
【0011】
[3][1]又は[2]項に記載の紫外線吸収剤と少なくとも一つの高分子物質とを含む高分子材料。
[4]前記高分子物質が、アクリル酸系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリカーボネート系ポリマーからなる群から選択される少なくとも一種である、[3]項に記載の高分子材料。
[5]前記高分子物質のガラス転移点(Tg)が−80℃以上200℃以下である、[3]又は[4]項に記載の高分子材料。
【0012】
[6]前記高分子物質が、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート又はポリエチレンテレフタレートである、[3]〜[5]のいずれか1項に記載の高分子材料。
[7]前記高分子物質がポリエチレンテレフタレートであり、該ポリエチレンテレフタレート100質量%に対して前記紫外線吸収剤が0.1質量%〜50質量%含まれる、[3]〜[6]のいずれか1項に記載の高分子材料。
[8]前記のポリエチレンテレフタレートと紫外線吸収剤とを200℃以上で溶融混練することにより作製される、[7]項に記載の高分子材料。
【0013】
[9]前記高分子物質がポリアクリル酸エステル又はポリカーボネートであり、該ポリアクリル酸エステル又はポリカーボネート100質量%に対して前記紫外線吸収剤が0.1質量%〜50質量%含まれる、[3]〜[6]のいずれか1項に記載の高分子材料。
[10]前記のポリアクリル酸エステル又はポリカーボネートと紫外線吸収剤とを、沸点が200℃以下である溶剤に溶解させた後、これを基板上に塗布することにより作製される、[9]項に記載の高分子材料。
【0014】
[11]下記一般式(2)で表される化合物。
【化3】

(式中、R21は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換または無置換のフェニル基を表し、R22は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基を表し、R23は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、R24は1価の置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。)
[12]前記一般式(2)におけるR23が、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数3〜21のカルバモイル基、置換または無置換の炭素数2〜22のアシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基またはスルホ基のいずれかである、[11]項に記載の化合物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の紫外線吸収剤は、長波紫外線吸収能に優れ、かつ耐光性に優れ、前記吸収能を長期間維持することができる。また、透明性に優れ、高分子材料に用いた場合に着色することがない。また、皮膚刺激性ではないため取り扱いが容易である。さらに、紫外線吸収剤を高分子物質に混練させたり溶媒に溶解させたりすることで高分子材料に含有させることができ、しかも製造された高分子材料において紫外線吸収剤の析出や長期使用によるブリードアウトが生じることがない。
【0016】
本発明の高分子材料は、紫外線吸収剤をポリマーに混練させたり溶媒に溶解させたりする場合の製造適性に優れ、紫外線吸収剤の析出や長期使用によるブリードアウトが生じることがなく、紫外線吸収剤による着色がなく、長波紫外線吸収能に優れかつこの吸収能を長期間維持して耐光性(紫外光堅牢性)に優れる、という効果を奏する。
また、本発明の高分子材料は、優れた耐光性を有しているので、プラスチック、容器、塗料、塗膜、繊維、建材などの高分子成形品として用いることができる。また、優れた長波紫外線吸収能を有しているので、紫外線に弱い内容物を保護するフィルタ、包装材料、容器、塗料、塗膜、インク、繊維、建材、記録媒体、画像表示装置、太陽電池カバーとして用いることができ、光に不安定な化合物の分解を抑制することもできる。
また、本発明の高分子材料は化粧品用途に用いることができる。本発明の高分子材料を含む化粧用製剤は、化粧料の調製に当たり紫外線吸収剤の析出や黄色味の生じることが少なく、長波紫外線吸収能に優れかつ前記吸収能を長期間維持できるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明の化合物は、優れた長波紫外線吸収能を有し、高分子材料に使用しても、析出やブリードアウトを生じず、上記のように耐光性向上など優れた作用を示す。また、該化合物は紫外光に感受性の有機材料、特にヒトならびに動物の皮膚および毛髪を、紫外線照射の損傷作用から防御することができ、化粧用調製品、医薬製剤、および獣医薬製剤における光防御剤として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0019】
〔一般式(1)で表される化合物〕
下記一般式(1)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤(長波長紫外線吸収剤)について説明する。
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R11、R12及びR14は各々独立に1価の置換基を表し、R13は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。)
【0022】
前記一般式(1)で表される化合物は、4−ベンジリデンピラゾリジン−3,5−ジオン骨格を有する化合物である。前記一般式(1)で表される化合物自体は公知であり(例えば、Bulletin of the Chemical Society of Japan(1932年)7巻44頁)、写真材料やホログラム記録材料などの種々の材料への応用の可能性が報告されている(例えば、特開2006−227067号公報や特開2002−207268号公報)。
しかしながら、紫外線吸収剤としての有用性は今まで見出されておらず、前記一般式(1)で表される化合物が長波長紫外線吸収材料として特に優れた性能を示すことは予想できないものであった。
【0023】
前記一般式(1)中、R11、R12及びR14は各々独立に1価の置換基を表す。
1価の置換基としては、特に制限はないが、代表例として、ハロゲン原子、脂肪族基〔飽和脂肪基(アルキル基、又はシクロアルキル基、ビシクロアルキル基、架橋環式飽和炭化水素基もしくはスピロ飽和炭化水素基を含む環状飽和脂肪族基を意味する)、不飽和脂肪族基(二重結合または三重結合を有する、アルケニル基もしくはアルケニル基のような鎖状不飽和脂肪族基、又はシクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、架橋環式不飽和炭化水素基もしくはスピロ不飽和炭化水素基を含む環状不飽和脂肪族基を意味する)〕、アリール基(好ましくは置換基を有してもよいフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは、環構成原子が酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含む5〜8員環で、脂環、芳香環やヘテロ環で縮環していてもよい)、シアノ基、脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基〔脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アニリノ基およびヘテロ環アミノ基を含む〕、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)、アリールチオ基、スルファモイル基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルフィニル基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基、脂肪族オキシスルホニル基(代表としてアルコキシスルホニル基)、アリールオキシスルホニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基(例えばここで挙げた置換基)を有していてもよい。
【0024】
前記一般式(1)中、R13は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上の置換基を表す。
【0025】
ハメットの置換基定数σp値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.ハメットにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページなどに詳しい。
【0026】
ハメットの置換基定数σp値が−0.35以上の置換基の例としては、シアノ基(0.66)、カルボキシル基(−COOH:0.45)、アルコキシカルボニル基(−COOMe:0.45)、アリールオキシカルボニル基(−COOPh:0.44)、カルバモイル基(−CONH2:0.36)、アルキルカルボニル基(−COMe:0.50)、アリールカルボニル基(−COPh:0.43)、アルキルスルホニル基(−SO2Me:0.72)、アリールスルホニル基(−SO2Ph:0.68)、アシルオキシ(−OCOMe:0.31)、アルキルスルホニルオキシ(−OSO2Me:0.36)、塩素原子(0.23)、フッ素原子(0.06)、アルキル基(−Me:−0.17)、アルコキシ基(−OMe:−0.27)などが挙げられる。本明細書において、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、括弧内の値は代表的な置換基のσp値をChem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページから抜粋したものである。
【0027】
前記一般式(1)中、nは0〜4の整数を表す。nは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。
【0028】
以下に、上記R11、R12、R13又はR14で表される各置換基、及びR11、R12、R13又はR14で表される各置換基に置換してもよい置換基について、さらに詳しく説明する。
【0029】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
【0030】
脂肪族基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族基であり、前述のように、飽和脂肪族基には、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基が含まれ、置換基を有してもよい。これらの炭素数は1〜30が好ましい。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基および2−エチルヘキシル基を挙げることができる。ここで、シクロアルキル基としては置換もしくは無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換もしくは無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基を挙げることができる。ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基を挙げることができる。さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
【0031】
不飽和脂肪族基は、直鎖、分枝または環状の不飽和脂肪族基であり、アルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては、炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基が好ましい。例としてはビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基を挙げることができる。シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられる。ビシクロアルケニル基としては、置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基が含まれる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル基を挙げることができる。アルキニル基は、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、およびプロパルギル基が挙げられる。
【0032】
アリール基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基が挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
【0033】
ヘテロ環基は、置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらはさらに縮環していてもよい。これらのヘテロ環基としては、好ましくは5又は6員のヘテロ環基であり、また環構成のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。さらに好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、ピロール環、インドール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、ベンズイソチアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、チアゾリン環が挙げられる。
【0034】
脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)は、置換もしくは無置換の脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)が含まれ、炭素数は1〜30が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基などを挙げることができる。
【0035】
アリールオキシ基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基などを挙げることができる。好ましくは、置換基を有してもよいフェニルオキシ基である。
【0036】
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0037】
カルバモイルオキシ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基などを挙げることができる。
【0038】
脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有していてもよい。例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0039】
アリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェノキシカルボニルオキシ基である。
【0040】
アミノ基は、アミノ基、脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アリールアミノ基およびヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、カルボキシエチルアミノ基、スルフォエチルアミノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ基、4−キノリルアミノ基などを挙げることができる。
【0041】
アシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0042】
アミノカルボニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基などを挙げることができる。なお、この基における「アミノ」の用語は、前述のアミノ基における「アミノ」と同じ意味である。
【0043】
脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0044】
アリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。
【0045】
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0046】
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族スルホニルアミノ基(代表としてアルキルスルホニルアミノ基)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニルアミノ基)が好ましい。例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0047】
脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基などを挙げることができる。
【0048】
アリールチオ基は、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリールチオ基が好ましい。アリールチオ基の例には、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基などを挙げることができる。
【0049】
スルファモイル基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基の例には、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)基などを挙げることができる。
【0050】
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルフィニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族スルフィニル基(代表としてアルキルスルフィニル基)、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルフィニル基)が好ましい。例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基などを挙げることができる。
【0051】
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族スルホニル基(代表としてアルキルスルホニル基)、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニル基)が好ましい。例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル基などを挙げることができる。
【0052】
アシル基は、ホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換の脂肪族カルボニル基(代表としてアルキルカルボニル基)、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルカルボニル基)、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル基などを挙げることができる。
【0053】
アリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−(tert−ブチル)フェノキシカルボニル基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニル基である。
【0054】
脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0055】
カルバモイル基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基などを挙げることができる。
【0056】
アリールもしくはヘテロ環アゾ基として、例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基などを挙げることができる。
【0057】
イミド基として、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基などを挙げることができる。
【0058】
脂肪族オキシスルホニル基(代表としてアルコキシスルホニル基)は、炭素数1〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシスルホニル、エトキシスルホニル、n−ブトキシスルホニル基などを挙げることができる。
【0059】
アリールオキシスルホニル基は、炭素数6〜12が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、フェノキシスルホニル、2−ナフトキシフェニル基などを挙げることができる。
【0060】
これらに加え、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基が挙げられる。
【0061】
これらの各基はさらに置換基を有してもよく、このような置換基としては、上述の置換基が挙げられる。
【0062】
前記一般式(1)中、R11及びR12は各々独立に、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、アリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基、置換または無置換の炭素数2〜30のアシル基、置換または無置換の炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールスルホニル基であり、より好ましくは置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基、置換または無置換の炭素数2〜20のアシル基、置換または無置換の炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、特に好ましくは置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基である。
【0063】
13は、好ましくは水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数3〜21のカルバモイル基、置換または無置換の炭素数2〜22のアシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基またはスルホ基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数3〜16のカルバモイル基、フッ素原子または塩素原子であり、特に好ましくは水素原子、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、無置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基または塩素原子である。
【0064】
14は、好ましくは置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基であり、より好ましくは置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、特に好ましくはアルキル基である。
【0065】
前記一般式(1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、R11〜R14のうちの少なくとも1つが上述した好ましい基である場合が好ましく、R11〜R14のうちの2つ以上が上述した好ましい基である場合がより好ましく、R11〜R14の全てが上述した好ましい基である場合が最も好ましい。
【0066】
好ましい組み合わせとしては、R11及びR12が各々独立に置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基であり、R13が水素原子、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基であり、R14が塩素原子、フッ素原子、または無置換の炭素数1〜12のアルキル基であり、nが0又は1である組み合わせである。
より好ましい組み合わせとしては、R11及びR12が各々独立に無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または無置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基であり、R13が水素原子、無置換の炭素数1〜10のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基であり、R14が塩素原子、フッ素原子、または無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、nが0又は1である組み合わせである。
さらに好ましい組み合わせとしては、R11及びR12が各々独立に無置換の炭素数1〜8のアルキル基、無置換のフェニル基、または無置換の炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基であり、R13が水素原子、無置換の炭素数1〜8のアルキル基、または無置換の炭素数1〜8のアルコキシ基であり、nが0である組み合わせである。
【0067】
〔一般式(2)で表される化合物〕
また、前記一般式(1)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(2)で表される化合物である。
【0068】
【化5】

【0069】
(式中、R21は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換または無置換のフェニル基を表し、R22は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基を表し、R23は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、R24は1価の置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。)
【0070】
前記一般式(2)で表される化合物は、4−ベンジリデンピラゾリジン−3,5−ジオン化合物のピラゾリジンの1位がアルキル基またはフェニル基であり(前記一般式(2)におけるR21)、かつ2位がアルコキシカルボニル基である(前記一般式(2)における−COOR22)化合物である。4−ベンジリデンピラゾリジン−3,5−ジオン化合物の中でも、特に前記一般式(2)で表される化合物が、紫外線吸収剤として有用であることはもとより、時間経時で吸収能が変化しにくい、という優れた性能を示すことは予想できないものであった。さらに、前記一般式(2)で表される化合物は、吸収スペクトルおよび透過スペクトルにおける長波側端部の裾切れが優れ、特にヒトの視感度が高い波長450〜550nm付近における吸収が少なく、無色透明であるという優れた性能をも示す。すなわち、高分子材料中に含有させたときに、該化合物による着色がほとんどなく、高分子材料が黄変しない。
【0071】
前記一般式(2)におけるR21は、置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基または置換または無置換のフェニル基を表す。R21に置換していても良い置換基は、前述のR11、R12、R13又はR14で表される置換基に置換してもよい置換基と同義であり好ましい範囲も同様である。
【0072】
前記一般式(2)におけるR22は、置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基を表す。R22に置換していても良い置換基は、前述のR11、R12、R13又はR14で表される置換基に置換してもよい置換基と同義であり好ましい範囲も同様である。
【0073】
前記一般式(2)におけるR23、R24およびmは、それぞれ前記一般式(1)におけるR13、R14およびnと同義であり好ましい範囲も同様である。
【0074】
前記一般式(2)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、R21〜R24のうちの少なくとも1つが上述した好ましい基である場合が好ましく、R21〜R24のうちの2つ以上が上述した好ましい基である場合がより好ましく、R21〜R24の全てが上述した好ましい基である場合が最も好ましい。
【0075】
好ましい組合せとしては、R21が置換もしくは無置換の炭素数1〜16のアルキル基、または置換もしくは無置換のフェニル基であり、R22が置換もしくは無置換の炭素数1〜16のアルキル基であり、R23が水素原子、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基であり、R14が塩素原子、フッ素原子、または無置換の炭素数1〜12のアルキル基であり、nが0又は1である組み合わせである。
より好ましい組み合わせとしては、R21が置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、または1置換もしくは無置換のフェニル基であり、R22が置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基であり、R23が水素原子、無置換の炭素数1〜10のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基であり、R24が塩素原子、フッ素原子、または無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、nが0又は1である組み合わせである。
特に好ましい組み合わせとしては、R21が無置換の炭素数1〜8のアルキル基または無置換のフェニル基であり、R22が無置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、R13が水素原子、無置換の炭素数1〜8のアルキル基、または無置換の炭素数1〜8のアルコキシ基であり、nが0である組み合わせである。
【0076】
前記一般式(1)で表される化合物の分子量は、紫外線吸収能と耐ブリード性の観点から1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、400以上900以下であることが特に好ましい。
【0077】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【表1】

【0079】
ここで、例示化合物(22)〜(30)は、前記一般式(2)で表される化合物の具体例でもある。
【0080】
これらの化合物は、従来公知の類似化合物の合成方法に準じて合成することができる。例えば、ブリテン オブ ザ ケミカル ソサイエティ オブ ジャパン(Bull.Chem.Soc.Jpn)(1932年)7巻45〜48頁に記載の方法に準じる合成法で合成できる。
【0081】
具体的には例えば、下記一般式(3)で表されるベンズアルデヒド誘導体と下記一般式(4)で表されるようなピラゾリジンジオン化合物を反応させることで化合物を得ることができる。具体的には実施例で説明する。
【0082】
【化6】

【0083】
一般式(3)中、R13、R14及びnは、それぞれ一般式(1)におけるR13、R14及びnと同義であり、好ましい範囲も同じである。
一般式(4)中、R11及びR12は、それぞれ一般式(1)におけるR11及びR12と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0084】
上記一般式(3)で表される化合物は、市販品として入手可能である(例えば、和光純薬工業株式会社製、カタログ番号019−04133など)。
上記一般式(4)で表される化合物は、例えば、Monatsh.Chem.,112(1981年)369頁記載の方法で合成するか、もしくは市販品(例えば、和光純薬工業株式会社製、カタログ番号322−39723)として入手可能である。
【0085】
前記一般式(1)で表される化合物は、好ましくは長波長紫外線吸収剤として使用できる。最大吸収波長は、好ましくは300〜420nmの範囲であり、より好ましくは330〜410nmの範囲であり、特に好ましくは360〜400nmの範囲である。
【0086】
本発明の高分子材料の調製には、その高分子組成物が用いられる。本発明に用いられる高分子組成物は、後述する高分子物質に、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤を含有してなる。
【0087】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤は、様々な方法で高分子物質に含有させることができる。前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤が高分子物質との相溶性を有する場合は、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤を高分子物質に直接添加することができる。また、高分子物質との相溶性を有する補助溶媒に、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤を溶解し、その溶液を高分子物質に添加してもよい。また、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤をポリマー中に分散し、その分散物を高分子物質に添加してもよい。
【0088】
高分子物質への前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤の添加方法については、特開昭58−209735号、同63−264748号、特開平4−191851号、同8−272058号の各公報および英国特許第2016017A号明細書を参考にできる。
【0089】
異なる構造を有する二種類以上の前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤を併用してもよいし、本発明の紫外線吸収剤とそれ以外の構造を有する一種類以上の任意の紫外線吸収剤を併用してもよい。二種類(好ましくは三種類)の紫外線吸収剤を併用すると、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。また、二種類以上の紫外線吸収剤を併用すると、紫外線吸収剤の分散状態が安定化するとの作用もある。
【0090】
本発明の紫外線吸収剤以外の構造を有する紫外線吸収剤としては、いずれのものでも使用できる。例えば、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)第2章、東レリサーチセンター調査研究部門編集「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)2.3.1、などに記載されている紫外線吸収剤が挙げられる。例えば、紫外線吸収剤の構造として知られているトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、アクリレート系、安息香酸エステル系シュウ酸ジアミド系などの化合物が挙げられる。例えば、ファインケミカル、2004年5月号、28〜38ページ、東レリサーチセンター調査研究部門発行「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)96〜140ページ、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)54〜64ページなどに記載されている。
好ましくは、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系、トリアジン系の化合物である。より好ましくはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系の化合物である。特に好ましくはベンゾトリアゾール系、トリアジン系の化合物である。
【0091】
前記ベンゾトリアゾール系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmであることが好ましい。代表例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)−5’−メチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−sec−ブチル−5’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)−カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−ドデシル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノール]などを挙げることができる。
【0092】
前記トリアジン系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmであることが好ましい。代表例としては、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジ(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジ(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−トリデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(ドデシルオキシ/トリデシルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ)フェニル−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2−{2−ヒドロキシ−4−[3−(2−エチルヘキシル−1−オキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ]フェニル}−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシ)フェニル−4,6−ジ(4−フェニル)フェニル−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。
【0093】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜380nmである化合物が好ましい。代表例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−デシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノ−2’−ヘキシルオキシカルボニルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ベンジルオキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタンなどを挙げることができる。
【0094】
前記サリチル酸系化合物としては、その有効吸収波長が約290〜330nmである化合物が好ましい。代表例としては、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、4−オクチルフェニルサリシレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−t−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシサリシレート、ヘキサデシル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシサリシレートなどを挙げることができる。
【0095】
前記アクリレート系化合物としては、その有効吸収波長が約270〜350nmである化合物が好ましい。代表例としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、イソオクチル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、ヘキサデシル 2−シアノ−3−(4−メチルフェニル)アクリレート、メチル 2−シアノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート、ブチル 2−シアノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート、メチル 2−カルボメトキシ−3−(4−メトキシフェニル)シンナメート2−シアノ−3−(4−メチルフェニル)アクリル酸塩、1,3−ビス(2’−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ)−2,2−ビス(((2’−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン、N−(2−カルボメトキシ−2−シアノビニル)−2−メチルインドリンなどを挙げることができる。
【0096】
前記シュウ酸ジアミド系化合物としては、その有効吸収波長が約250〜350nmであるものが好ましい。代表例としては、4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−t−ブチルオキサニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−t−ブチルオキサニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサミド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサニリド、2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−t−ブチルオキサニリドなどを挙げることができる。
【0097】
本発明の高分子材料は、更に光安定剤、酸化防止剤を含んでいても良い。
光安定剤、酸化防止剤の好ましい例としては特開2004−117997号公報に記載された化合物が挙げられる。具体的には、特開2004−117997号公報のp29中段、段落[0071]〜[0111]に記載の化合物であることが好ましく、段落[0072]に記載の一般式(TS−I)、一般式(TS−II)、一般式(TS−IV)又は一般式(TS−V)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0098】
本発明の高分子材料における前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤の含有量は、使用目的と使用形態によって異なるため一義的に定めることはできないが、当業者はいくらかの試験をすることによって容易に決定することができる。好ましくは高分子材料の全量に対して0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜5質量%である。また、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤の含有量は、本発明の目的に応じて適宜決定することができる。
【0099】
本発明においては、紫外線吸収剤のみで実用的には十分な紫外線遮蔽効果が得られるものの、更に厳密を要求する場合には隠蔽力の強い白色顔料、例えば酸化チタンなどを併用してもよい。また、外観、色調が問題となる時、あるいは好みによって微量(0.05質量%以下)の着色剤を併用することができる。また、透明あるいは白色であることが重要である用途に対しては蛍光増白剤を併用してもよい。蛍光増白剤としては市販のものや特開2002−53824号公報記載のものが挙げられる。
【0100】
本発明の高分子材料に用いられる高分子物質について説明する。高分子物質としては、アクリル酸系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネートおよびその配合物を用いることが好ましい。以下に各々について詳細を説明する。
【0101】
[アクリル酸系ポリマー]
ここで、アクリル酸系ポリマーとは、下記一般式(A1)で表される化合物をモノマー成分とし、これを重合することにより得られるホモポリマー及びコポリマーを意味する。
【0102】
【化7】

【0103】
(一般式(A1)中、Ra1はヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基を表す。Ra2は水素原子、メチル基、又は炭素数2以上のアルキル基を表す。)
【0104】
前記一般式(A1)について詳細に説明する。
前記一般式(A1)中、Ra1はヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基を表す。Ra1のうち好ましくは、置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、特に好ましくは、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。
【0105】
a2は、水素原子、メチル基、又は炭素数2以上のアルキル基を表す。Ra2のうち好ましくは水素原子またはメチル基の場合である。
【0106】
すなわち前記一般式(A1)の好ましい置換基の組み合わせとしては、Ra1が炭素数1〜18の置換または無置換のアルコキシ基、炭素数6〜24の置換または無置換のアリールオキシ基であり、Ra2が水素原子またはメチル基の場合である。
【0107】
一般式(A1)で表される化合物として具体的には以下のものが挙げられる。
〔アクリル酸エステル誘導体〕
メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−又はi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート。
【0108】
〔メタクリル酸エステル誘導体〕
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−又はi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート。
【0109】
〔アクリルアミド誘導体〕
アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド。
【0110】
〔メタクリルアミド誘導体〕
メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド。
【0111】
アクリル酸系ポリマーとしては、上記一般式(A1)で表されるモノマーのみから重合される1成分系のホモポリマー、並びに上記一般式(A1)で表されるモノマーをモル比にて10%〜90%、好ましくは20%〜80%用いて、他モノマー成分もしくはさらなる上記一般式(A1)で表されるモノマー成分と共に重合された2〜4成分、好ましくは2〜3成分系のコポリマーが好ましい。上記他モノマー成分としては、置換もしくは無置換のスチレン誘導体、アクリルニトリルなどが挙げられる。
【0112】
アクリル酸系ポリマーとしては、炭素数4〜24のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルをモノマー成分とするホモポリマー、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルをモノマー成分としてモル比で10%〜90%有する2〜3成分系のコポリマーが好ましい。
【0113】
[ポリエステル]
次にポリエステルについて説明する。本発明に用いられるポリエステルは、モノマー成分として、下記のジカルボン酸およびその酸ハライドまたは多価カルボン酸とジオールから成る。
【0114】
ジカルボン酸またはその酸ハライドの例としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、エチルコハク酸、ピメリック酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、1,2−および1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族、脂環式のもの、
【0115】
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、2−メチルイソフタル酸、3−メチルフタル酸、2−メチルテレフタル酸、2,4,5,6−テトラメチルイソフタル酸、3,4,5,6−テトラメチルフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、3−クロルイソフタル酸、3−メトキシイソフタル酸、2−フルオロイソフタル酸、3−フルオロフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタル酸、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、4,4’−オキシビス安息香酸、3,3’−オキシビス安息香酸、3,4’−オキシビス安息香酸、2,4’−オキシビス安息香酸、3,4’−オキシビス安息香酸、2,3’−オキシビス安息香酸、4,4’−オキシビスオクタフルオロ安息香酸、3,3’−オキシビスオクタフルオロ安息香酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルカルボン酸などの芳香族のものが挙げられる。
【0116】
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸の例としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸が挙げられる。
【0117】
本発明に用いられるポリエステルについては、これらのジカルボン酸および多価カルボン酸成分のうち、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸を用いることが好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることが特に好ましい。
【0118】
ジオールの例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0119】
本発明に用いられるポリエステルについては、これらのジオール成分のうちエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、ビスフェノールAを用いることが好ましく、エチレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビスフェノールを用いることが特に好ましい。
【0120】
すなわち本発明に用いられるポリエステルにおいて好ましいモノマーの組み合わせおよびポリマーは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンテレフタレート、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として1,4−ブチレングリコールを用いたポリブチレンテレフタレート、ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンナフタレートである。
【0121】
[ポリカーボネート]
本発明に用いられるポリカーボネートは、下記の多価フェノール類とビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲンなどの炭酸エステル類から成る。
多価フェノール類の例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン,ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシドなどが挙げられる。
【0122】
本発明に用いられるポリカーボネートについては、これらの多価フェノール成分のうちハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル,ビスフェノールAを用いることが好ましい。
【0123】
炭酸エステル類としてはホスゲン、ジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。
【0124】
本発明に用いられるポリカーボネートについては、これらの炭酸エステル成分のうちホスゲン、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを用いることが好ましい。
【0125】
すなわち本発明に用いられるポリカーボネートにおいて好ましいモノマーの組み合わせおよびポリマーは、多価フェノール成分としてビスフェノールA、炭酸エステル成分としてホスゲンを用いたビスフェノールAカーボネートが挙げられる。
【0126】
上記のポリマーの中でも、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートが特に好ましい。上記の好ましい高分子物質を用いた場合当業者の予想に反して紫外線吸収剤の光堅牢性が上記以外の高分子物質を用いた場合と比較して、飛躍的に向上した。
【0127】
本発明に用いられる高分子物質は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
本発明に用いられる高分子物質は、透過率が80%以上であることが好ましい。なお、本発明における透過率については、日本化学会編「第4版実験化学講座 29 高分子材料媒」(丸善、1992年)225〜232ページに記載の内容に基づき、全光線透過率を求めたものである。
【0128】
本発明に用いられる高分子物質は、ガラス転移点(Tg)が−80℃以上200℃以下であることが好ましく、−30℃以上180℃以下であることが更に好ましい。中でも、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート又はポリエチレンテレフタレートが好ましい。
上記Tgを示す高分子物質を用いた高分子材料は適度な軟らかさと硬さの高分子材料を作製することが可能であり、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、作業の効率が上がり、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤を用いた場合、紫外線吸収剤自体の光堅牢性を良化させる効果がある。
【0129】
本発明の高分子材料には、上記の高分子物質および紫外線防止剤に加えて、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、加工安定剤、老化防止剤、相溶化剤などの任意の添加剤を適宜含有してもよい。
【0130】
本発明の高分子材料は前記高分子物質を用いてなる。本発明の高分子材料は、前記高分子物質のみから形成されたものでもよく、また、前記高分子物質を任意の溶媒に溶解して形成されたものでもよい。
【0131】
高分子物質としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合、本発明の高分子材料は、ポリエチレンテレフタレートと紫外線吸収剤とを200℃以上で溶融混練することによって作製することが好ましい。同温度未満でポリエチレンテレフタレートを溶融させることによって高分子材料を作製すると、紫外線吸収剤が斑に点在した高分子材料となる可能性がある。
このとき、本発明の高分子材料における紫外線吸収剤の含有量は、ポリエチレンテレフタレート100質量%に対して0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜25質量%が更に好ましい。0.4質量%〜10質量%が特に好ましい。0.1質量%未満の添加量である場合、紫外線吸収剤の添加量不足で紫外線領域を完全に吸収する高分子材料とはならない可能性がある。
【0132】
本発明に用いられる前記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、溶解性に優れ、種々の溶媒にポリマーとともに溶解させ、塗布することにより容易に高分子材料を作製することが可能である。高分子材料の作製の際には、可塑剤を添加しなくともよい。さらに可塑剤を用いて作製した高分子材料の場合と比較して、溶媒に塗布もしくはポリマー混練を行った高分子材料は光堅牢性に優れるという利点がある。
【0133】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物は分子量が1000以下であるものが多く、このような化合物を、PET混練というような高温で長時間溶融させる状況下で使用するということは、揮発、分解の可能性があるため、当業者が容易に予想しうることではなかった。
【0134】
高分子物質としてポリアクリル酸エステル又はポリカーボネートを用いる場合、本発明の高分子材料は、ポリアクリル酸エステル又はポリカーボネートと前記紫外線吸収剤とを沸点が200℃以下である溶剤に溶解させた後、これを基板上に塗布することによって作製することが好ましい。沸点が200℃を超える溶媒を使用して紫外線吸収剤を塗布すると、高温で溶剤を揮発させる必要が生じる。その場合、作業工程が複雑になる可能性がある。
このとき、本発明の高分子材料における紫外線吸収剤の含有量は、ポリアクリル酸エステル又はポリカーボネート100質量%に対して0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜25質量%が更に好ましい。0.4質量%〜10質量%が特に好ましい。0.1質量%未満の添加量である場合、紫外線吸収剤の添加量不足で紫外線領域を完全に吸収する高分子材料とはならない可能性がある。
【0135】
本発明に用いることができる沸点200℃以下の溶剤としては、本発明の紫外線吸収剤を溶解または分散できるものであれば特に限定されないが、塗布の面状と塗布後における溶剤の乾燥の観点から、溶剤の沸点は0℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは20℃以上150℃以下であり、特に好ましくは30℃以上120℃以下である。具体的には、例えばアルコール系溶剤(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール又はテトラフルオロプロパノール等)、ハロゲン系溶剤(例えば塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(例えばアセトン、エチルメチルケトン又はシクロヘキサノン等)、炭化水素系溶剤(ベンゼンやトルエン又はシクロヘキサン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル又は酢酸ブチル等)エーテル系溶剤(ジオキサン又はテトラヒドロフラン等)などが挙げられる。また、これらの溶媒は必要に応じて2種類以上の溶媒を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0136】
本発明に用いることができる基板としては、例えば、ガラス基板、鉄基板、アルミ基板、シリコン基板、セラミック基板などの無機材料基板や、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム基板、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム基板、ポリカーボネートフィルム基板などの高分子材料基板などが挙げられる。これらの基板の形状は、板状、シート状または円盤状など、さまざまな形状をとることができ、高分子材料を塗布可能な形状であればどのような形状であってもよい。
【0137】
本発明の高分子材料は、合成樹脂が使用される全ての用途に使用可能であるが、特に日光または紫外線を含む光に晒される可能性のある用途に特に好適に使用できる。具体例としては、例えばガラス代替品とその表面コーティング材、住居、施設、輸送機器などの窓ガラス、採光ガラスおよび光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設、輸送機器などの内外装材および内外装用塗料、蛍光灯、水銀灯などの紫外線を発する光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波などの遮断用材、食品、化学品、薬品などの容器または包装材、農工業用シートまたはフィルム材、印刷物、染色物、染顔料などの退色防止剤、日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料などの化粧品、スポーツウェア、ストッキング、帽子などの衣料用繊維製品および繊維、カーテン、絨毯、壁紙などの家庭用内装品、プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼などの医療用器具、光学フィルタ、プリズム、鏡、写真材料などの光学用品、テープ、インクなどの文房具、標示板、標示器などとその表面コーティング材などを挙げることができる。また、本発明の高分子材料は、化粧品用途に用いることもできる。
【0138】
本発明の高分子材料の形状としては、平膜状、粉状、球状粒子、破砕粒子、塊状連続体、繊維状、管状、中空糸状、粒状、板状、多孔質状などのいずれの形状であってもよい。
【0139】
本発明の高分子材料は、前記一般式(1)又は(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤を含有しているため、優れた耐光性(紫外光堅牢性)を有しており、紫外線吸収剤の析出や長期使用によるブリードアウトが生じることがない。また、本発明の高分子材料は、優れた長波紫外線吸収能を有するので、紫外線吸収フィルタや容器として用いることができ、紫外線に弱い化合物などを保護することもできる。例えば、前記高分子物質を押出成形または射出成形などの任意の方法により成形することで、本発明の高分子材料からなる成形品(容器など)を得ることができる。また、別途作製した成形品に前記高分子物質の溶液を塗布・乾燥することで、本発明の高分子材料からなる紫外線吸収膜がコーティングされた成形品を得ることもできる。
【0140】
本発明の高分子材料を紫外線吸収フィルタや紫外線吸収膜として用いる場合、高分子物質は透明であることが好ましい。透明高分子材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂である。本発明の高分子材料は透明支持体として用いることもでき、透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。
【0141】
本発明の高分子材料からなる包装材料について説明する。本発明の高分子材料からなる包装材料は、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであればいずれの種類の高分子から成る包装材料であってもよい。例えば、特開平8−208765号公報に記載の熱可塑性樹脂、特開平10−168292号公報、特開2004−285189号公報に記載のポリエステル、特開2001−323082号公報に記載の熱収縮性ポリエステルなどが挙げられる。例えば、特開2006−240734号公報に記載の紫外線吸収剤を含む樹脂を塗布した紙であってもよい。
【0142】
本発明の高分子材料からなる包装材料は、食料品、飲料、薬剤、化粧品、個人ケア用品などいずれのものを包装するものであってもよい。例えば、特開平11−34261号公報、特開2003−237825号公報に記載の食品包装、特開平8−80928号公報に記載の着色液体包装、特開2004−51174号公報に記載の液状製剤用包装、特開平8−301363号公報、特開平11−276550号公報に記載の医薬品容器包装、特開2006−271781号公報に記載の医療品用滅菌包装、特開平7−287353号公報に記載の写真感光材料包装、特開2000−56433号公報に記載の写真フィルム包装、特開2005−178832号公報に記載の紫外線硬化型インク用包装、特開2003−200966号公報、特開2006−323339号公報に記載のシュリンクラベルなどが挙げられる。
【0143】
本発明の高分子材料からなる包装材料は、例えば特開2004−51174号公報に記載の透明包装体であってもよいし、例えば特開2006−224317号公報に記載の遮光性包装体であってもよい。
【0144】
本発明の高分子材料からなる包装材料は、例えば特開2001−26081号公報、特開2005−305745号公報に記載のように紫外線遮蔽性を有するだけでなく、他の性能を合わせて持っていても良い。例えば特開2002−160321号公報に記載のガスバリヤー性を合わせて有するものや、例えば特開2005−156220号公報に記載の酸素インジケータを内包するものや、例えば特開2005−146278号公報に記載の紫外線吸収剤と蛍光増白剤を組み合わせるものなどが挙げられる。
【0145】
本発明の高分子材料からなる包装材料は、いずれの方法を用いて製造してもよい。例えば特開2006−130807号公報に記載のインキ層を形成させる方法、例えば特開2001−323082号公報、特開2005−305745号公報に記載の紫外線吸収剤を含有した樹脂を溶融押出し積層する方法、例えば特開平9−142539号公報に記載の基材フィルム上にコーティングする方法、例えば特開平9−157626号公報に記載の接着剤に紫外線吸収剤を分散する方法などが挙げられる。
【0146】
本発明の高分子材料からなる容器について説明する。本発明の高分子材料からなる容器は、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであればいずれの種類の高分子から成る容器であってもよい。例えば、特開平8−324572号公報に記載の熱可塑性樹脂容器、特開2001−48153号公報、特開2005−105004号公報、特開2006−1568号公報に記載のポリエステル製容器、特開2000−238857号公報に記載のポリエチレンナフタレート製容器などが挙げられる。
【0147】
本発明の高分子材料からなる容器の用途は食料品、飲料、薬剤、化粧品、個人ケア用品、シャンプーなどいずれのものを入れるものであってもよい。例えば特開平5−139434号公報に記載の液体燃料貯蔵容器、特開平7−289665号公報に記載のゴルフボール容器、特開平9−295664号公報、特開2003−237825号公報に記載の食品用容器、特開平9−58687号公報に記載の酒用容器、特開平8−155007号公報に記載の薬剤充填容器、特開平8−324572号公報、特開2006−298456号公報に記載の飲料容器、特開平9−86570号公報に記載の油性食品用容器、特開平9−113494号公報に記載の分析試薬用溶液容器、特開平9−239910号公報に記載の即席麺容器、特開平11−180474号公報、特開2002−68322号公報、特開2005−278678号公報に記載の耐光性化粧料容器、特開平11−276550号公報に記載の医薬品容器、特開平11−290420号公報に記載の高純度薬品液用容器、特開2001−106218号公報に記載の液剤用容器、特開2005−178832号公報に記載の紫外線硬化型インク用容器、WO04/93775号パンフレットに記載のプラスチックアンプルなどが挙げられる。
【0148】
本発明の高分子材料からなる容器は、例えば特開平5−305975号公報、特開平7−40954号公報に記載のように紫外線遮断性を有するだけでなく、他の性能を併せて持っていてもよい。例えば特開平10−237312号公報に記載の抗菌性容器、特開2000−152974号公報に記載の可撓性容器、特開2002−264979号公報に記載のディスペンサー容器、例えば特開2005−255736号公報に記載の生分解性容器などが挙げられる。
【0149】
本発明の高分子材料からなる容器はいずれの方法を用いて製造してもよい。例えば特開2002−370723号公報に記載の二層延伸ブロー成形による方法、特開2001−88815号公報に記載の多層共押出ブロー成形方法、特開平9−241407号公報に記載の容器の外側に紫外線吸収層を形成させる方法、特開平8−91385号公報、特開平9−48935号公報、特表平11−514387号公報、特開2000−66603号公報、特開2001−323082号公報、特開2005−105032号公報、WO99/29490号パンフレットに記載の収縮性フィルムを用いた方法、特開平11−255925号公報に記載の超臨界流体を用いる方法などが挙げられる。
【0150】
本発明の高分子材料からなる塗料および塗膜について説明する。本発明の高分子材料からなる塗料は、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであればいずれの成分からなる塗料であってもよい。例えば、アクリル樹脂系、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は主剤、硬化剤、希釈剤、レベリング剤、はじき防止剤などを任意に配合することができる。
【0151】
例えば、透明樹脂成分としてアクリルウレタン樹脂、シリコンアクリル樹脂を選んだ場合には、硬化剤としてポリイソシアネートなどを、希釈剤としてトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶剤、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系を用いることができる。また、ここでアクリルウレタン樹脂とは、メタクリル酸エステル(メチルが代表的)とヒドロキシエチルメタクリレート共重合体とポリイソシアネートと反応させて得られるアクリルウレタン樹脂をいう。なお、この場合のポリイソシアネートとはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。透明樹脂成分としては、他にも例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルスチレン共重合体などが挙げられる。更にこれら成分に加えアクリル樹脂、シリコン樹脂などのレベリング剤、シリコン系、アクリル系などのはじき防止剤などを必要に応じて配合することができる。
【0152】
本発明の高分子材料からなる塗料の使用目的としてはいずれの用途であってもよい。例えば特開平7−26177号公報、特開平9−169950号公報、特開平9−221631号公報、特開2002−80788号公報に記載の紫外線遮蔽塗料、特開平10−88039号公報に記載の紫外線・近赤外線遮断塗料、特開2001−55541号公報に記載の電磁波遮蔽用塗料、特開平8−81643号公報に記載のクリアー塗料、特開2000−186234号公報に記載のメタリック塗料組成物、特開平7−166112号公報に記載のカチオン電着塗料、特開2002−294165号公報に記載の抗菌性および無鉛性カチオン電着塗料、特開2000−273362号公報、特開2001−279189号公報、特開2002−271227号公報に記載の粉体塗料、特開2001−9357号公報に記載の水性中塗り塗料、水性メタリック塗料、水性クリヤー塗料、特開2001−316630号公報に記載の自動車、建築物、土木系品に用いられる上塗り用塗料、特開2002−356655号公報に記載の硬化性塗料、特開2004−937号公報に記載の自動車バンパーなどプラスチック材などに使用される塗膜形成組成物、特開2004−2700号公報に記載の金属板用塗料、特開2004−169182号公報に記載の硬化傾斜塗膜、特開2004−107700号公報に記載の電線用塗装材、特開平6−49368号公報に記載の自動車補修塗料、特開2002−38084号公報、特開2005−307161号公報に記載のアニオン電着塗料、特開平5−78606号公報、特開平5−185031号公報、特開平10−140089号公報、特表2000−509082号公報、特表2004−520284号公報、WO2006/097201号パンフレットに記載の自動車用塗料、特開平6−1945号公報に記載の塗装鋼板用塗料、特開平6−313148号公報に記載のステンレス用塗料、特開平7−3189号公報に記載のランプ用防虫塗料、特開平7−82454号公報に記載の紫外線硬化型塗料、特開平7−118576号公報に記載の抗菌性塗料、特開2004−217727号公報に記載の眼精疲労防止用塗料、特開2005−314495号公報に記載の防曇塗料、特開平10−298493号公報に記載の超耐候性塗料、特開平9−241534号公報に記載の傾斜塗料、特開2002−235028号公報に記載の光触媒塗料、特開2000−345109号公報に記載の可剥塗料、特開平6−346022号公報に記載のコンクリート剥離用塗料、特開2002−167545号公報に記載の防食塗料、特開平8−324576号公報に記載の保護塗料、特開平9−12924号公報に記載の撥水性保護塗料、特開平9−157581号公報に記載の板ガラス飛散防止用塗料、特開平9−59539号公報に記載のアルカリ可溶型保護塗料、特開2001−181558号公報に記載の水性一時保護塗料組成物、特開平10−183057号公報に記載の床用塗料、特開2001−115080号公報に記載のエマルション塗料、特開2001−262056号公報に記載の2液型水性塗料、特開平9−263729号公報に記載の1液性塗料、特開2001−288410号公報に記載のUV硬化性塗料、特開2002−69331号公報に記載の電子線硬化型塗料組成物、特開2002−80781号公報に記載の熱硬化性塗料組成物、特表2003−525325号公報に記載の焼付ラッカー用水性塗料、特開2004−162021号公報に記載の粉体塗料およびスラリー塗料、特開2006−233010号公報に記載の補修用塗料、特表平11−514689号公報に記載の粉体塗料水分散物、特開2001−59068号公報、特開2006−160847号公報に記載のプラスチック用塗料、特開2002−69331号公報に記載の電子線硬化型塗料などが挙げられる。
【0153】
本発明の高分子材料からなる塗料は一般に塗料(透明樹脂成分を主成分として含む)および前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤から構成されるが、好ましくは樹脂を基準に考えて紫外線吸収剤0〜20質量%の組成である。塗布する際の厚さは、好ましくは2〜1000μmであるが、更に好ましくは5〜200μmの間である。これら塗料を塗布する方法は任意であるが、スプレー法、ディッピング法、ローラーコート法、フローコーター法、流し塗り法などがある。塗布後の乾燥は塗料成分によって異なるが概ね室温〜120℃で10〜90分程度行うことが好ましい。
【0154】
本発明の高分子材料からなる塗膜は、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含む塗膜であり、上記の本発明の高分子材料からなる塗料を用いて形成された塗膜である。
【0155】
本発明の高分子材料からなるインクについて説明する。本発明の高分子材料からなるインクは、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであればいずれの形態のインクであってもよい。例えば、染料インク、顔料インク、水性インク、油性インクなどが挙げられる。また、いずれの用途に用いられてもよい。例えば、特開平8−3502号公報に記載のスクリーン印刷インク、特表2006−521941号公報に記載のフレキソ印刷インク、特表2005−533915号公報に記載のグラビア印刷インク、特表平11−504954号公報に記載の平版オフセット印刷インク、特表2005−533915号公報に記載の凸版印刷インク、特開平5−254277号公報に記載のUVインク、特開2006−30596号公報に記載のEBインクなどが挙げられる。また例えば、特開平11−199808号公報、WO99/67337号パンフレット、特開2005−325150号公報、特開2005−350559号公報、特開2006−8811号公報、特表2006−514130号公報に記載のインクジェットインク、特開2006−257165号公報に記載のフォトクロミックインク、特開平8−108650号公報に記載の熱転写インク、特開2005−23111号公報に記載のマスキングインク、特開2004−75888号公報に記載の蛍光インク、特開平7−164729号公報に記載のセキュリティインク、特開2006−22300号公報に記載のDNAインクなども挙げられる。
【0156】
本発明の高分子材料からなるインクを用いることで得られるいずれの形態も本発明に含まれる。例えば特開2006−70190号公報に記載の印刷物、印刷物をラミネートして得られる積層体、積層体を用いた包装材料や容器、特開2002−127596号公報に記載のインク受理層などが挙げられる。
【0157】
本発明の高分子材料からなる繊維について説明する。本発明の高分子材料からなる繊維は、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであればいずれの種類の高分子から成る繊維であってもよい。例えば、特開平5−117508号公報、特開平7−119036号公報、特開平7−196631号公報、特開平8−188921号公報、特開平10−237760号公報、特開2000−54287号公報、特開2006−299428号公報、特開2006−299438号公報に記載のポリエステル繊維などが挙げられる。
【0158】
本発明の高分子材料からなる繊維はいずれの方法で製造してもよい。例えば特開平6−228818号公報に記載のように前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤をあらかじめ含んだ高分子を繊維状に加工してもよいし、例えば特開平5−9870号公報、特開平8−188921号公報、特開平10−1587号公報に記載のように繊維状に加工したものに対して前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含む溶液などを用いて処理をおこなってもよい。特開2002−212884号公報、特開2006−16710号公報に記載のように超臨界流体を用いて処理をおこなってもよい。
【0159】
本発明の高分子材料からなる繊維は各種用途に用いることができる。例えば、特開平5−148703号公報に記載の衣料、特開2004−285516号公報に記載の裏地、特開2004−285517号公報に記載の肌着、特開2003−339503号公報に記載の毛布、特開2004−11062号公報に記載の靴下、特開平11−302982号公報に記載の人工皮革、特開平7−289097号公報に記載の防虫メッシュシート、特開平10−1868号公報に記載の工事用メッシュシート、特開平5−256464号公報に記載のカーペット、特開平5−193037号公報に記載の透湿・防水性シート、特開平6−114991号公報に記載の不織布、特開平11−247028号公報に記載の極細繊維、特開2000−144583号公報に記載の繊維からなるシート状物、特開平5−148703号公報に記載の清涼衣料、特開平5−193037号公報に記載の透湿防水性シート、特開平7−18584号公報に記載の難燃性人工スエード状構造物、特開平8−41785号公報に記載の樹脂ターポリン、特開平8−193136号公報に記載の膜剤、外壁材剤、農業用ハウス、特開平8−269850号公報に記載の建築資材用ネット、メッシュ、特開平8−284063号公報に記載のフィルター基材、特開平9−57889号公報に記載の防汚膜剤、特開平9−137335号公報に記載のメッシュ織物、陸上ネット、特開平10−165045号公報に記載の水中ネット、特開平11−247027号公報、特開平11−247028号公報に記載の極細繊維、特開平7−310283号公報、特表2003−528974号公報に記載の防織繊維、特開2001−30861号公報に記載のエアバッグ用基布、特開平7−324283号公報、特開平8−20579号公報、特開2003−147617号公報に記載の紫外線吸収性繊維製品などが挙げられる。
【0160】
本発明の高分子材料を含む建材について説明する。本発明の高分子材料を含む建材は、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであればいずれの種類の高分子から成る建材であってもよい。例えば、特開2002−161158号公報に記載のポリエステル系、特開2003−160724号公報に記載のポリカーボネート系などが挙げられる。
【0161】
本発明の高分子材料を含む建材はいずれの方法で製造してもよい。例えば特開平8−269850号公報に記載のように前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含む材料を用いて所望の形に形成してもよいし、例えば特開平10−205056号公報に記載のように前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含む材料を積層して形成してもよいし、例えば特開平8−151457号公報に記載のように前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を用いた被覆層を形成させてもよいし、例えば特開2001−172531号公報に記載のように前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含有する塗料を塗装して形成してもよい。
【0162】
本発明の高分子材料を含む建材は各種用途に用いることができる。例えば、特開平7−3955号公報、特開平8−151457号公報、特開2006−266042号公報に記載の外装用建材、特開平8−197511号公報に記載の建材用木質構造体、特開平9−183159号公報に記載の建材用屋根材、特開平11−236734号公報に記載の抗菌性建築資材、特開平10−205056号公報に記載の建材用基材、特開平11−300880号公報に記載の防汚建材、特開2001−9811号公報に記載の難燃性材料、特開2001−172531号公報に記載の窯業系建材、特開2003−328523号公報に記載の装飾用建材、特開2002−226764号公報に記載の建材用塗装物品、特開平10−6451号公報、特開平10−16152号公報、特開2006−306020号公報に記載の化粧材、特開平8−269850号公報に記載の建築資材用ネット、特開平9−277414号公報に記載の建材用透湿防水シート、特開平10−1868号公報に記載の建築工事用メッシュシート、特開平7−269016号公報に記載の建材用フィルム、特開2003−211538号公報に記載の表装用フィルム、特開平9−239921号公報、特開平9−254345号公報、特開平10−44352号公報に記載の建材用被覆材料、特開平8−73825号公報に記載の建材用接着剤組成物、特開平8−207218号公報に記載の土木建築構造物、特開2003−82608号公報に記載の歩行路用塗装材、特開2001−139700号公報に記載のシート状光硬化性樹脂、特開平5−253559号公報に記載の木材用保護塗装、特開2005−2941780号公報に記載の押釦スイッチ用カバー、特開平9−183159号公報に記載の接合シート剤、特開平10−44352号公報に記載の建材用基材、特開2000−226778号公報に記載の壁紙、特開2003−211538号公報に記載の表装用ポリエステルフィルム、特開2003−211606号公報に記載の成形部材表装用ポリエステルフィルム、特開2004−3191号公報に記載の床材などが挙げられる。
【0163】
本発明の高分子材料を含む記録媒体について説明する。本発明の高分子材料を含む記録媒体は、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであればいずれのものであってもよい。例えば、特開平9−309260号公報、特開2002−178625号公報、特開2002−212237号公報、特開2003−266926号公報、特開2003−266927号公報、特開2004−181813号公報に記載のインクジェット被記録媒体、特開平8−108650熱転写インク用受像媒体、特開平10−203033号公報に記載の昇華転写用受像シート、特開2001−249430号公報に記載の画像記録媒体、特開平8−258415号公報に記載の感熱記録媒体、特開平9−95055号公報、特開2003−145949号公報、特開2006−167996号公報に記載の可逆性感熱記録媒体、特開2002−367227号公報に記載の光情報記録媒体などが挙げられる。
【0164】
本発明の高分子材料を含む画像表示装置について説明する。本発明の高分子材料を含む画像表示装置は前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであればいずれのものであってもよい。例えば、特開2006−301268号公報に記載のエレクトロクロミック素子を用いた画像表示装置、特開2006−293155号公報に記載のいわゆる電子ペーパーと呼ばれる画像表示装置、特開平9−306344号公報に記載のプラズマディスプレイ、特開2000−223271号公報に記載の有機EL素子を用いた画像表示装置などが挙げられる。前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤は、例えば特開2000−223271号公報に記載の積層構造中に紫外線吸収層を形成させるものでもよいし、例えば特開2005−189645号公報に記載の円偏光板など必要な部材中に紫外線吸収剤を含むものを用いてもよい。
【0165】
本発明の高分子材料を含む太陽電池用カバーについて説明する。本発明における適用する太陽電池は、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、色素増感太陽電池などいずれの形式の素子からなる太陽電池であってもよい。結晶シリコン太陽電池やアモルファスシリコン太陽電池において、特開2000−174296号公報に記載のように防汚や耐衝撃性、耐久性を付与する保護部材としてカバー材が用いられている。また色素増感太陽電池において、特開2006−282970号公報に記載のように光(特に紫外線)に励起されて活性となる金属酸化物系半導体を電極材料として用いるため、光増感剤として吸着させた色素が劣化し、光発電効率が徐々に低下する問題があり、紫外線吸収層を設けることが提案されている。
【0166】
本発明の高分子材料を含む太陽電池用カバーはいずれの種類の高分子から成るものであってもよい。例えば特開2006−310461号公報に記載のポリエステル、特開2004−227843号公報に記載のアクリル樹脂などが挙げられる。
【0167】
本発明の高分子材料を含む太陽電池用カバーはいずれの方法で製造してもよい。例えば特開平11−40833号公報に記載の紫外線吸収層を形成してもよいし、特開2005−129926号公報に記載のそれぞれ紫外線吸収剤を含む層を積層してもよいし、特開2000−91611号公報に記載の充填材層の樹脂に含まれていてもよいし、特開2005−346999号公報に記載の紫外線吸収剤を含む高分子からフィルムを形成してもよい。
【0168】
本発明の高分子材料を含む太陽電池用カバーはいずれの形状であってもよい。特開2000−91610号公報、特開平11−261085号公報に記載のフィルム、シート、例えば特開平11−40833号公報に記載の積層フィルム、特開平11−214736号公報に記載のカバーガラス構造などが挙げられる。特開2001−261904号公報に記載の封止材に紫外線吸収剤を含むものであってもよい。
【0169】
前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むガラス被膜およびこれを用いたガラスについて説明する。このガラスないしガラス被膜は、その被膜に前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むものであれば、どのような形態であってもよい。また、いずれの用途に用いられてもよい。例えば、特開平5−58670号公報、特開平9−52738号公報記載の熱線遮断性ガラス、特開平7−48145号公報記載のウインドガラス、特開平8−157232号公報、特開平10−45425号公報、特開平一1−217234号公報記載の着色ガラス、特開平8−59289号公報記載の水銀ランプやメタルハライドランプなどの高輝度光源用紫外線シャープカットガラス、特開平5−43266号公報記載のフリットガラス、特開平5−163174号公報記載の車両用紫外線遮断ガラス、特開平5−270855号公報記載の色つき熱線吸収ガラス、特開平6−316443号公報記載の含蛍光増白剤紫外線吸収断熱ガラス、特開平7−237936号公報記載の自動車用紫外線熱線遮断ガラス、特開平7−267682号公報記載の外装用ステンドグラス、特開平7−291667号公報記載の撥水性紫外線赤外線吸収ガラス、特開平7−257227号公報記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置向けガラス、特開平7−232938号公報記載の調光遮熱複層窓、特開平5−78147号公報、特開平7−61835号公報、特開平8−217486号公報記載の紫外線赤外線カットガラス、特開平6−127974号公報、特開平7―53241号公報記載の紫外線カットガラス、特開平8−165146号公報記載の窓用紫外線赤外線吸収ガラス、特開平10−17336号公報記載の窓用紫外線遮断防汚膜、特開平9−67148号公報記載の栽培室用透光パネル、特開平10−114540号公報記載の紫外線赤外線吸収低透過ガラス、特開平一1−302037号公報記載の低反射率低透過率ガラス、特開2000−16171号公報記載のエッジライト装置、特開2000−44286号公報記載の粗面形成板ガラス、特開2000−103655号公報記載のディスプレイ用積層ガラス、特開2000−133987号公報記載の導電性膜つきガラス、特開2000−191346号公報記載の防眩性ガラス、特開2000−7371号公報記載の紫外線赤外線吸収中透過ガラス、特開2000−143288号公報記載のプライバシー保護用車両用窓ガラス、特開2000−239045号公報記載の防曇性車両用ガラス、特開2001−287977号公報記載の舗装材料用ガラス、特開2002−127310号公報に記載の水滴付着防止性および熱線遮断性を有するガラス板、特開2003−342040号公報記載の紫外線赤外線吸収ブロンズガラス、WO01/019748パンフレット記載の合わせガラス、特開2004−43212号公報記載のID識別機能つきガラス、特開2005−70724号公報記載のPDP用光学フィルタ、特開2005−105751号公報記載の天窓などが挙げられる。前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含むガラス被膜ないしこれを用いたガラスはいずれの方法によって作られてもよい。
【0170】
また、その他の使用例としては特開平8−102296号公報、特開2000−67629号公報、特開2005−353554号公報に記載の照明装置用光源カバー、特開平5−272076号公報、特開2003−239181号公報に記載の人工皮革、特開2006−63162号公報に記載のスポーツゴーグル、特開2007−93649号公報に記載の偏向レンズ、特開2001−214121号公報、特開2001−214122号公報、特開2001−315263号公報、特開2003−206422号公報、特開2003−25478号公報、特開2004−137457号公報、特開2005−132999号公報に記載の各種プラスチック製品向けハードコート、特開2002−36441号公報に記載の窓外側貼り付け用ハードコート、特開平10−250004号公報に記載の窓張りフィルム、特開2002−36452号公報に記載の高精細防眩性ハードコートフィルム、特開2003−39607号公報に記載の帯電防止性ハードコートフィルム、特開2004−114355号公報に記載の透過性ハードコートフィルム、特開2002−113937号公報に記載の偽造防止帳表、特開2002−293706号公報に記載の芝の紫斑防止剤、特開2006−274179号公報に記載の樹脂フィルムシート接合用シール剤、特開2005−326761号公報に記載の導光体、特開2006−335855号公報に記載のゴム用コーティング剤、特開平10−34841号公報、特開2002−114879号公報に記載の農業用被覆材、特表2004−532306号公報、特表2004−530024号公報に記載の染色ろうそく、特表2004−525273号公報に記載の布地リンス剤組成物、特開平10−287804号公報に記載のプリズムシート、特開2000−71626号公報に記載の保護層転写シート、特開2001−139700号公報に記載の光硬化性樹脂製品、特開2001−159228号公報に記載の床用シート、特開2002−189415号公報に記載の遮光性印刷ラベル、特開2002−130591号公報に記載の給油カップ、特開2002−307619号公報に記載の硬質塗膜塗工物品、特開2002−307845号公報に記載の中間転写記録媒体、特開2006−316395号公報に記載の人工毛髪、WO99/29490号パンフレット、特開2004−352847号公報に記載のラベル用低温熱収縮性フィルム、特開2000−224942号公報に記載の釣り用品、特開平8−208976号公報に記載のマイクロビーズ、特開平8−318592号公報に記載のプレコート金属板、特開2005−504735号公報に記載の薄肉フィルム、特開2005−105032号公報に記載の熱収縮性フィルム、特開2005−37642号公報に記載のインモールド成形用ラベル、特開2005−55615号公報に記載の投影スクリーン、特開平9−300537号公報、特開2000−25180号公報、特開2003−19776号公報、特開2005−74735号公報に記載の化粧シート、特開2001−207144号公報に記載のホットメルト接着剤、特表2002−543265号公報、特表2002−543266号公報、米国特許第6225384号明細書に記載の接着剤、特開2004−352783号公報に記載の電着コート、ベースコート、特開平7−268253号公報に記載の木材表面保護、特開2003−253265号公報、特開2005−105131号公報、特開2005−300962号公報、特許第3915339号明細書に記載の調光材料、調光フィルム、調光ガラス、特開2005−304340号公報に記載の防蛾灯、特開2005−44154号公報に記載のタッチパネル、特開2006−274197号公報に記載の樹脂フィルムシート接合用シール剤、特開2006−89697号公報に記載のポリカーボネートフィルム被覆、特開2000−231044号公報に記載の光ファイバテープ、特表2002−527559号公報に記載の固形ワックスなどが挙げられる。
【0171】
次に、高分子材料の耐光性を評価する方法について説明する。高分子材料の耐光性を評価する方法として、「高分子の光安定化技術」(株式会社シーエムシー、2000年)85ページ〜107ページ、「高機能塗料の基礎と物性」(株式会社シーエムシー、2003年)314ページ〜359ページ、「高分子材料と複合材製品の耐久性」(株式会社シーエムシー、2005年)、「高分子材料の長寿命化と環境対策」(株式会社シーエムシー、2000年)、H.Zweifel編「Plastics Additives Handbook 5th Edition」(Hanser Publishers)238ページ〜244ページ、葛良忠彦著「基礎講座2 プラスチック包装容器の科学」(日本包装学会、2003年)第8章などの記載を参考にできる。
また各々の用途に対する評価としては下記の既知評価法により達成できる。
高分子材料の光による劣化は、JIS−K7105:1981、JIS−K7101:1981、JIS−K7102:1981、JIS−K7219:1998、JIS−K7350−1:1995、JIS−K7350−2:1995、JIS−K7350−3:1996、JIS−K7350−4:1996の方法およびこれを参考にした方法によって評価することができる。
【0172】
包装・容器用途として用いられる場合の耐光性は、JIS−K7105の方法およびこれを参考にした方法によって評価することができる。その具体例としては、特開2006−298456号公報に記載のボトル胴体の光線透過率、透明性評価、キセノン光源を用いた紫外線暴露後のボトル中身の官能試験評価、特開2000−238857号公報に記載のキセノンランプ照射後のヘーズ値評価、特開2006−224317号公報に記載のハロゲンランプ光源としたヘイズ値評価、特開2006−240734号公報に記載の水銀灯暴露後のブルーウールスケールを用いた黄変度評価、特開2005−105004号公報、特開2006−1568号公報に記載のサンシャインウェザーメーターを用いたヘーズ値評価、着色性目視評価、特開平7−40954号公報、特開平8−151455号公報、特開平10−168292号公報、特開2001−323082号公報、特開2005−146278号公報に記載の紫外線透過率評価、特開平9−48935号公報、特開平9−142539号公報に記載の紫外線遮断率評価、特開平9−241407号公報、特開2004−243674号公報、特開2005−320408号公報、特開2005−305745号公報、特開2005−156220号公報に記載の光線透過率評価、特開2005−178832号公報に記載のインク容器内インキの粘度評価、特開2005−278678号公報に記載の光線透過率評価、日光暴露後の容器内サンプル目視、色差ΔE評価、特開2004−51174号公報に記載の白色蛍光灯照射後の紫外線透過率評価、光透過率評価、色差評価、特開2004−285189号公報に記載の光線透過率評価、ヘーズ値評価、色調評価、特開2003−237825号公報に記載の黄色度評価、特開2003−20966号公報に記載の遮光性評価、L***表色系色差式を用いた白色度評価、特開2002−68322号公報に記載のキセノン光を分光した後の波長ごとの暴露後サンプルにおける色差ΔEa**を用いた黄ばみ評価、特開2001−26081号公報に記載の紫外線暴露後、紫外線吸収率評価、特開平10−298397号公報に記載のサンシャインウェザーメーターを用いた暴露後のフィルム引っ張り伸び評価、特開平10−237312号公報に記載のキセノンウェザーメーター暴露後の抗菌性評価、特開平9−239910号公報に記載の蛍光灯照射後の包装内容物褪色性評価、特開平9−86570号公報に記載のサラダ油充填ボトルに対する蛍光灯暴露後の油の過酸化物価評価、色調評価、特開平8−301363号公報に記載のケミカルランプ照射後の吸光度差評価、特開平8−208765号公報に記載のサンシャインウェザーメーターを用いた暴露後の表面光沢度保持率、外観評価、特開平7−216152号公報に記載のサンシャインウェザロメーターを用いた暴露後の色差、曲げ強度評価、特開平5−139434号公報に記載の遮光比評価、灯油中の過酸化物生成量評価などが挙げられる。
【0173】
塗料・塗膜用途として用いられる場合の長期耐久性は、JIS−K5400、JIS−K5600−7−5:1999、JIS−K5600−7−6:2002、JIS−K5600−7−7:1999、JIS−K5600−7−8:1999、JIS−K8741の方法およびこれを参考にした方法によって評価することができる。その具体例としては、特表2000−509082号明細書に記載のキセノン耐光試験機およびUVCON装置による暴露後の色濃度およびCIE L***色座標における色差ΔEa**、残留光沢を用いた評価、特表2004−520284号明細書に記載の石英スライド上フィルムに対するキセノンアーク耐光試験機を用いた暴露後の吸光度評価、ロウにおける蛍光灯、UVランプ暴露後の色濃度およびCIE L***色座標における色差ΔEa**を用いた評価、特開2006−160847号公報に記載のメタルウェザー耐候性試験機を用いた暴露後の色相評価、特開2005−307161号公報に記載のメタルハイドランプを用いた暴露試験後の光沢保持率評価および色差ΔEa**を用いた評価、サンシャインカーボンアーク光源を用いた暴露後光沢感の評価、特開2002−69331号公報に記載のメタルウェザー耐候性試験機を用いた暴露後の色差ΔEa**を用いた評価、光沢保持率、外観評価、特開2002−38084号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率評価、特開2001−59068号公報に記載のQUV耐候性試験機を用いた暴露後の色差ΔEa**を用いた評価、光沢保持率評価、特開2001−115080号公報、特開平6−49368号公報、特開2001−262056号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後光沢保持率評価、特開平8−324576号公報、特開平9−12924号公報、特開平9−169950号公報、特開平9−241534号公報、特開2001−181558号公報に記載の塗装板に対するサンシャインウェザーメーターを用いた暴露後の外観評価、特開2000−186234号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率、明度値変化評価、特開平10−298493号公報に記載の塗膜に対するデューサイクルWOM暴露後の塗膜劣化状態の外観評価、特開平7−26177号公報に記載の塗膜の紫外線透過率評価、特開平7−3189号公報、特開平9−263729号公報に記載の塗膜の紫外線遮断率評価、特開平6−1945号公報に記載のサンシャインウェザーメーターを用いた塗膜の光沢保持率80%となる時間比較評価、特開平6−313148号公報に記載のデューパネル光コントロールウェザーメーターを用いた暴露後の錆発生評価、特開平6−346022号公報に記載の屋外暴露後の塗装済み型枠に対するコンクリートの強度評価、特開平5−185031号公報に記載の屋外暴露後の色差ΔEa**を用いた評価、碁盤目密着評価、表面外観評価、特開平5−78606号公報に記載の屋外暴露後の光沢保持率評価、特開2006−63162号公報に記載のカーボンアーク光源を用いた暴露後の黄変度(ΔYI)評価などが挙げられる。
【0174】
インク用途として用いられる場合の耐光性は、JIS−K5701−1:2000、JIS−K7360−2、ISO105−B02の方法およびこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には特表2006−514130号公報に記載の事務所用蛍光灯、褪色試験機を用いた暴露後の色濃度およびCIE L***色座標の測定による評価、特開2006−22300号公報に記載のキセノンアーク光源を用いた紫外線暴露後の電気泳動評価、特開2006−8811号公報に記載のキセノンフェードメーターによる印刷物の濃度評価、特開2005−23111号公報に記載の100Wケミカルランプを用いたインク抜け性評価、特開2005−325150号公報に記載のウェザーメーターによる画像形成部位の色素残存率評価、特開2002−127596号公報に記載のアイスーパーUVテスターを用いた印刷物のチョーキング評価、および変色評価、特開平11−199808号公報、特開平8−108650号公報に記載のキセノンフェードメーター暴露後の印刷物についてCIE L***色座標における色差ΔEa**を用いた評価、特開平7−164729号公報に記載のカーボンアーク光源を用いた暴露後の反射率評価などが挙げられる。
【0175】
太陽電池モジュールの耐光性は、JIS−C8917:1998、JIS−C8938:1995の方法およびこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、特開2006−282970号公報に記載のキセノンランプに太陽光シミュレーション用補正フィルタを装着した光源による暴露後のI−V測定光発電効率評価、特開平11−261085号公報、特開2000−144583号公報に記載のサンシャインウェザーメーター、フェードメーターを用いた暴露後の変褪色グレースケールなど級評価、色、外観密着性評価などが挙げられる。
【0176】
繊維および繊維製品の耐光性は、JIS−L1096:1999、JIS−A5905:2003、JIS−L0842、JIS−K6730、JIS−K7107、DIN75.202、SAEJ1885、SN−ISO−105−B02、AS/NZS4399の方法およびこれを参考にした方法によって評価することができる。特開平10−1587号公報、特開2006−299428号公報、特開2006−299438号公報に記載の紫外線透過率評価、特開平6−228816号公報、特開平7−76580号公報、特開平8−188921号公報、特開平11−247028号公報、特開平11−247027号公報、特開2000−144583号公報、特開2002−322360号公報、特開2003−339503号公報、特開2004−11062号公報に記載のキセノン光源、カーボンアーク光源を用いた暴露後のブルースケール変褪色評価、特開2003−147617号公報に記載のUVカット率評価、特開2003−41434号公報に記載の紫外線遮断性評価、特開平11−302982号公報に記載のドライクリーニング後のカーボンアーク光源を用いた暴露後ブルースケール変褪色評価、特開平7−119036号公報、特開平10−251981号公報に記載のフェードオメーターを用いた暴露後の明度指数、クロマティクネス指数に基づく色差ΔE*評価、特開平9−57889号公報、特開平9−137335号公報、特開平10−1868号公報、特開平10−237760号公報に記載のUVテスター、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後の引っ張り強度評価、特開平8−41785号公報、特開平8−193136号公報に記載の全透過率評価、強力保持率評価、特表2003−528974号明細書、特表2005−517822号明細書、特開平8−20579号公報に記載の紫外線保護係数(UPF)評価、特開平6−228818号公報、特開平7−324283号公報、特開平7−196631号公報、特開平7−18584号公報に記載の高温フェードメーターを用いた暴露後の変褪色グレースケール評価、特開平7−289097号公報に記載の屋外暴露後の外観評価、特開平7−289665号公報に記載の紫外線暴露後の黄色度(YI)、黄変度(ΔYI)評価、特表2003−528974号明細書に記載の規約反射率評価などが挙げられる。
【0177】
建材の耐光性は、JIS−A1415:1999の方法およびこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、特開2006−266402号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の表面色調評価、特開2004−3191号公報、特開2006−306020号公報に記載のカーボンアーク光源を用いた暴露後の外観評価、アイスーパーUVテスターを用いた暴露後の外観評価、暴露後の吸光度評価、暴露後の色度、色差評価、メタルハイドランプ光源を用いた暴露後のCIE L***色座標における色差ΔEa**を用いた評価、光沢保持率評価、特開平10−44352号公報、特開2003−211538号公報、特開平9−239921号公報、特開平9−254345号公報、特開2003−211606号公報に記載のサンシャインウェザーメーターを用いた暴露後のヘーズ値変化評価、暴露後の引張試験機を用いた伸度保持率評価、特開2002−161158号公報に記載の溶媒浸漬後の紫外線透過率評価、アイスーパーUVテスターを用いた暴露後の外観目視評価、特開2002−226764号公報に記載のQUV試験後の光沢率変化評価、特開2001−172531号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率評価、特開平11−300880号公報に記載のブラックライトブルー蛍光灯を用いた紫外線暴露後の色差ΔEa**を用いた評価、特開平10−205056号公報に記載のコーブコン促進試験機を用いた暴露後の密着保持率評価、紫外線遮断性評価、特開平8−207218号公報、特開平9−183159号公報に記載の屋外暴露(JIS−A1410)後の外観評価、全光透過率評価、ヘイズ変化評価、引張せん断接着強さ評価、特開平8−151457号公報に記載のキセノンウェザーメーターを用いた暴露後の全光線透過率評価、ヘイズ評価、黄変度評価、特開平7−3955号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の黄変度(ΔYI)、紫外線吸収剤残存率評価などが挙げられる。
【0178】
記録媒体用途として用いられる場合の耐光性はJIS−K7350の方法およびこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、特開2006−167996号公報に記載の蛍光灯照射後の印字部位における地肌色差変化評価、特開平10−203033号公報、特開2004−181813号公報に記載のキセノンウェザーメーターを用いた暴露による画像濃度残存率評価、特開2002−207845号公報に記載のキセノンウェザーメーターを用いた暴露による光学反射濃度変化評価、特開2003−266926号公報に記載のサンテストCPS光褪色試験機を用いた暴露後のL***評価形による黄変度評価、特開2003−145949号公報に記載のフェードメーターを用いた暴露後の褪色評価、特開2002−212237号公報に記載のキセノンフェードメーターを用いた暴露後の褪色目視評価、特開2002−178625号公報に記載の室内太陽光暴露後の色濃度保持率評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露後の色濃度保持率評価、特開2002−367227号公報に記載のフェードメーターを用いた暴露後のC/N評価、特開2001−249430号公報に記載の蛍光灯暴露後のかぶり濃度評価、特開平9−95055号公報に記載の蛍光灯を用いた暴露後の光学反射濃度評価、消去性評価、特開平9−309260号公報に記載のアトラスフェードメーターを用いた暴露後の色差ΔE*評価、特開平8−258415号公報に記載のカーボンアークフェードメーターを用いた暴露後の褪色目視評価、特開2000−223271号公報に記載の有機EL素子色変換特性保持率評価、特開2005−189645号公報に記載のキセノン褪色試験機による暴露後の有機ELディスプレイ輝度測定評価などが挙げられる。
【0179】
その他の評価法としてはJIS−K7103、ISO/DIS9050の方法およびこれを参考とした方法によって評価できる。具体的には、特開2006−89697号公報に記載のポリカーボネート被覆フィルムのUVテスターによる暴露後の外観評価、特開2006−316395号公報に記載の人工毛髪における紫外線暴露後のブルースケール評価、特開2006−335855号公報に記載の促進耐候性試験機を用いた暴露後の評価用処理布水接触角評価、特開2005−55615号公報に記載の耐候試験機を用いた暴露後の投影スクリーンに映し出された映像目視評価、特開2005−74735号公報に記載のサンシャインウェザーメーター、メタルウェザーメーターを用いた暴露後の試験体表面劣化、意匠性変化目視評価、特開2005−326761号公報に記載の金属ランプリフレクターを用いた点灯暴露後の外観目視評価、特開2002−189415号公報、特開2004−352847号公報に記載のボトル用ラベルの光線透過率評価、特開2003−19776号公報に記載のキセノンウェザーメーターを用いた湿度条件下、暴露後のポリプロピレン劣化評価、特開2002−36441号公報、特開2003−25478号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いたハードコートフィルムの劣化評価、基材の劣化評価、親水性評価、耐擦傷性評価、特開2003−239181号公報に記載のキセノンランプ光源を用いた暴露後の人工皮革のグレースケール色差評価、特開2003−253265号公報に記載の水銀灯を用いた暴露後の液晶デバイス特性評価、特開2002−307619号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の密着性評価、特開2002−293706号公報に記載の芝の紫斑度合い評価、特開2002−114879号公報に記載のキセノンアーク光源を用いた暴露後紫外線透過率評価、引張強度評価、特開2001−139700号公報に記載のコンクリート密着速度評価、特開2001−315263号公報に記載のサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後外観評価、および塗膜密着性評価、特開2001−214121号公報、特開2001−214122号公報に記載のカーボンアーク光源を用いた暴露後の黄変度、密着性評価、特開2001−207144号公報に記載の紫外線フェードメーターを用いた接着性能評価、特開2000−67629号公報に記載の照明点灯時における昆虫類飛来抑制評価、特開平10−194796号公報に記載のアイスーパーUVテスターを用いた合わせガラスの黄変度(ΔYI)評価、特開平8−318592号公報に記載のQUV照射、耐湿テストを行った後の表面外観評価、光沢保持率評価、特開平8−208976号公報に記載のデューパネル光コントロールウェザーメーターを用いた経時色差評価、特開平7−268253号公報に記載のキセノンウェザロメーターを用いた暴露後の木材基材塗布状態における光沢度(DI)、黄色度指数(YI)評価、特表2002−5443265号公報、特表2002−543266号公報に記載の紫外線照射、暗闇を繰り返した後の紫外線吸収率評価、特表2004−532306号公報に記載の紫外線暴露後の染料褪色色差ΔE*評価などが挙げられる。
【0180】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0181】
合成例1
(例示化合物(2)の調製)
1,2−ジフェニルピラゾリジン−3,5−ジオン0.8g(3.2ミリモル)とp−トルアルデヒド1.0g(8.3ミリモル)を、窒素フロー条件下100℃で30分間撹拌した後に、室温まで冷却した。この反応混合物にエタノール10mLを加え、再結晶を行い目的生成物の黄色固体を得た。収量0.94g、収率83%。
例示化合物(2)の酢酸エチル溶液中における吸収極大波長は345nmであり、長波紫外線吸収能を有することがわかった。
1H NMR(重クロロホルム):δ2.45(3H),7.15(2H),7.3〜7.4(6H)、7.45(4H)、8.1(1H),8.45ppm(2H).
FAB MS(マトリクス:3−ニトロベンジルアルコール)m/z 355([M+H]+),354([M]+,100%).
【0182】
合成例2
(例示化合物(22)の調製)
2−メトキシカルボニル−1−フェニルピラゾリジン−3,5−ジオン0.8g(3.2ミリモル)とp−アニスアルデヒド1.0g(8.3ミリモル)を、窒素フロー条件下100℃で30分間撹拌した後に、室温まで冷却した。この反応混合物にエタノール10mLを加え、再結晶を行い目的生成物の黄色固体を得た。収量1.08g、収率92%。
例示化合物(22)の酢酸エチル溶液中における吸収極大波長は378nmであり、長波紫外線吸収能を有することがわかった。
1H NMR(重クロロホルム):δ1.25(3H),3.95(3H),4.3(2H),7.0(2H),7.2〜7.5(5H),8.1(1H),8.6(2H).
FAB MS(マトリクス:3−ニトロベンジルアルコール)m/z 367([M+H]+),366([M]+,100%).
【0183】
また、その他の例示化合物についても上記合成法に準じて合成できる。
【0184】
実施例1
(成形板試料101〜118の作製)
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)(Tg100〜110℃)1kgと例示化合物(1)0.1gをステンレス製タンブラーで1時間撹拌した。この混合物をベント式押出機で230℃にて溶融混合し、常法によって成形用ペレットを作製した。このペレットを80℃で3時間乾燥処理した後、射出成形機で厚さ3mmの成形板(試料101)を作製した。また、例示化合物(1)を例示化合物(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)、(12)、(14)、(22)、(23)、(24)、(25)、(29)又は(32)に代えたこと以外は同様にして、成形板試料102〜118を作製した。
例示化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)、(12)、(14)、(22)、(23)、(24)、(25)、(29)及び(32)の酢酸エチル溶液中における最大吸収波長は、それぞれ356nm、345nm、375nm、368nm、314nm、331nm、332nm、324nm、316nm、346nm、346nm、328nm、378nm、345nm、404nm、377nm、322nm及び380nmである。
【0185】
(成形板試料119及び120の作製)
また、例示化合物(1)を比較化合物X又はYに代えたこと以外は同様にして、成形板試料119及び120を作製した。比較化合物X及びYの酢酸エチル溶液中における最大吸収波長は357nm及び355nmである。
【0186】
【化8】

【0187】
(評価)
<光堅牢性および湿熱堅牢性の強制評価>
作製した成形板に、UVフィルタを除去したキセノンランプで照度15万ルクスになるように光照射し、100時間照射後の紫外線吸収化合物の残存量をそれぞれ測定した。同様に別途作成した成形板を温度60℃、相対湿度80%RHの条件下で48時間経時した後の紫外線吸収化合物の残存量をそれぞれ測定した。残存量は次式に従い計算した。
残存率%=100×(100−照射後の透過率)/(100−照射前の透過率)
なお、透過率は、紫外線吸収化合物の吸収極大波長で測定した値である。結果を表2に示す。
【0188】
【表2】

【0189】
表2から明らかなように、光堅牢性強制試験の結果、比較化合物X又はYを含む試料119及び120では、100時間光照射後の紫外線吸収化合物の残存量が低く、耐光性が劣った。これに対し、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含む試料101〜118では、100時間光照射後においても紫外線吸収剤が90%以上残存しており、耐光性に優れることがわかった。
また、湿熱堅牢性強制試験の結果、比較化合物X又はYを含む試料119及び120ではブリードアウトに起因すると考えられる白濁が生じた。これに対し、本発明の前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含む試料101〜118は、このような白濁は観測されず、高い透明性を有していた。さらに、湿熱堅牢性強制試験において本発明の前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤はいずれも85%以上残存しており、湿熱堅牢性にも優れていることが分かった。
これらの結果から、本発明の高分子材料は、長波紫外線吸収能に優れ、かつこの吸収能が長期間維持し、耐光性に優れることがわかった。
【0190】
実施例2
(PETフィルム試料201の作製)
ダイヤナールLR−1065(商品名、三菱レイヨン社製、アクリル樹脂の40%メチルエチルケトン(MEK)溶液)100g、及び例示化合物(4)0.5gからなる透明塗料を、膜厚100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥膜厚が30μm程度となるようにバーコーターを用いて塗布し、これを乾燥して紫外線吸収層を有するPETフィルム試料201を作製した。なお、例示化合物(4)の酢酸エチル溶液中における吸収極大波長は368nmであり、長波紫外線吸収能を有する。
【0191】
(PETフィルム試料202の作製)
例示化合物(4)の代わりに比較化合物Yを用いたこと以外は同様にしてPETフィルム試料202を作製した。
【0192】
(評価)
インクジェットプリンター(PIXUS iP1500、商品名、キヤノン製)を用いてインクジェット記録用紙にマゼンタ色のベタ印字をおこない、十分に乾燥させてから、先に作製したPETフィルムを最上層に紫外線吸収層となるように重ねて固定した。PETフィルム側から光が当たるように南側の窓ガラスに貼り付け、12週間放置することで耐光性試験をおこなった。
比較化合物Yを含む紫外線吸収層を有する試料202では、激しく退色していることが目視で確認された。これに対し、例示化合物(4)を含む紫外線吸収層を有する試料201では、印字直後とほぼ同等の色相を維持していることがわかった。このことから、前記一般式(1)又は(2)で表される紫外線吸収剤を含む本発明の高分子材料は、光堅牢性が弱い化合物を長期間保護するための紫外線吸収フィルムとしても優れていることがわかった。
【0193】
実施例3
(ポリマー練り込み型紫外線吸収剤含有高分子フィルム試料301及び302の作製)
ポリエチレンテレフタラート5gに対し、例示化合物(3)又は(22)を、膜厚50μmのフィルム作製時に極大吸収波長における吸光度が1.0となるように15mg添加し、265℃で溶融混練後、冷却することで紫外線吸収剤含有ポリエチレンテレフタラートを得た。この紫外線吸収剤含有ポリエチレンテレフタラートを280℃で延伸することにより紫外線吸収剤含有高分子フィルム試料301及び302を作製した。
例示化合物(3)又は(22)を使用した試料301及び302は、結晶が短時間で溶融したため、溶け残りの粒子が無く、均質で透明性が高いサンプルを容易に作製することができた。
【0194】
(ポリマー練り込み型紫外線吸収剤含有高分子フィルム試料303の作製)
例示化合物(3)の代わりに比較化合物Yを用いたこと以外は同様にして紫外線吸収剤含有高分子フィルム試料303を作製した。比較化合物Yを使用した試料303は、ブリードアウトに起因すると推測される白濁が観察された。
【0195】
(吸収スペクトル測定)
作製した紫外線吸収剤含有高分子フィルム試料301及び302について、分光光度計(UV−3100、製品名、島津製作所製)を用いて吸収スペクトルを測定した。結果を図1に示す。
図1の結果から、ポリエチレンテレフタラートの高分子膜中においても、吸収極大波長が長波長紫外線領域(386nm及び387nm)であり、長波長紫外線を効率よく遮断可能な紫外線吸収剤含有高分子フィルムとして有用であるということがわかった。
また、特に前記一般式(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤(例示化合物(22))を含有する試料302は、前記一般式(1)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤(例示化合物(3))を含有する試料301に比べて、視感度が高い450〜550nm付近の長波側端部の裾切れに優れていることがわかった。このことから、前記一般式(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤は、長波長紫外線域のごく長波長部分に吸収能を有するにもかかわらず、ほぼ着色のない無色の透明性の高いサンプルであり、この点で特に優れていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】実施例3で作製したポリマー練り込み型紫外線吸収剤含有高分子フィルム試料301及び302の吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤。
【化1】

(式中、R11、R12及びR14は各々独立に1価の置換基を表し、R13は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表される化合物よりなる紫外線吸収剤。
【化2】

(式中、R21は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換または無置換のフェニル基を表し、R22は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基を表し、R23は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、R24は1価の置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紫外線吸収剤と少なくとも一つの高分子物質とを含む高分子材料。
【請求項4】
前記高分子物質が、アクリル酸系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリカーボネート系ポリマーからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3記載の高分子材料。
【請求項5】
前記高分子物質のガラス転移点(Tg)が−80℃以上200℃以下である、請求項3又は4に記載の高分子材料。
【請求項6】
前記高分子物質が、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート又はポリエチレンテレフタレートである、請求項3〜5のいずれか1項に記載の高分子材料。
【請求項7】
前記高分子物質がポリエチレンテレフタレートであり、該ポリエチレンテレフタレート100質量%に対して前記紫外線吸収剤が0.1質量%〜50質量%含まれる、請求項3〜6のいずれか1項に記載の高分子材料。
【請求項8】
前記のポリエチレンテレフタレートと紫外線吸収剤とを200℃以上で溶融混練することにより作製される、請求項7記載の高分子材料。
【請求項9】
前記高分子物質がポリアクリル酸エステル又はポリカーボネートであり、該ポリアクリル酸エステル又はポリカーボネート100質量%に対して前記紫外線吸収剤が0.1質量%〜50質量%含まれる、請求項3〜6のいずれか1項に記載の高分子材料。
【請求項10】
前記のポリアクリル酸エステル又はポリカーボネートと紫外線吸収剤とを、沸点が200℃以下である溶剤に溶解させた後、これを基板上に塗布することにより作製される、請求項9記載の高分子材料。
【請求項11】
下記一般式(2)で表される化合物。
【化3】

(式中、R21は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換または無置換のフェニル基を表し、R22は置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基を表し、R23は水素原子またはハメットの置換基定数σp値が−0.35以上である置換基を表し、R24は1価の置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。)
【請求項12】
前記一般式(2)におけるR23が、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基、置換または無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換または無置換の炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数3〜21のカルバモイル基、置換または無置換の炭素数2〜22のアシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基またはスルホ基のいずれかである、請求項11記載の化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−18686(P2010−18686A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179501(P2008−179501)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】