紫外線照射装置
【課題】 装置の小型化を飛躍的に図ることができるとともに、保守点検の容易性、紫外線照射の作業性及び省電力化を達成することのできる紫外線照射装置を提供すること。
【解決手段】 紫外線硬化型粘着剤層を介して保護シートSが貼付された半導体ウエハを被照射体とし、これに相対する位置に複数の紫外線発光ダイオード21を基板20上に配置した紫外線照射部12が設けられている。発光ダイオード21は、ウエハとの相対移動方向に対して略直交する複数列の直線L1上に等間隔を隔てて配置されているとともに、各列において隣り合っている発光ダイオード21間に、隣接する列の発光ダイオードの一部が位置するように配置されている。
【解決手段】 紫外線硬化型粘着剤層を介して保護シートSが貼付された半導体ウエハを被照射体とし、これに相対する位置に複数の紫外線発光ダイオード21を基板20上に配置した紫外線照射部12が設けられている。発光ダイオード21は、ウエハとの相対移動方向に対して略直交する複数列の直線L1上に等間隔を隔てて配置されているとともに、各列において隣り合っている発光ダイオード21間に、隣接する列の発光ダイオードの一部が位置するように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線照射装置に係り、更に詳しくは、発光ダイオードを用いた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する)の処理装置においては、例えば、ウエハの回路面に保護テープを貼付した状態で所定処理することが行われている。この保護テープは、粘着面に紫外線硬化型樹脂が採用されており、紫外線照射装置により前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることによって粘着力を弱め、剥離が容易に行えるようになっている。
【0003】
前記紫外線照射装置としては、例えば、ウエハ面に相対する位置にランプケースを配置するとともに、当該ランプケース内に高圧水銀ランプ若しくはメタルハライドランプ等を配置して構成された装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−162141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された紫外線照射装置にあっては、高圧水銀ランプを発光源として用いる構成であるため、高電圧のトランスが必要となり、装置が大型化するとともに、電力消費量も大きくなるという不都合がある。また、ランプ寿命が短く頻繁なメンテナンスが必要となる他、紫外線照射条件を満たすまでの、いわゆる立ち上がり時間が長く必要なため、作業時間内はランプは点灯しっぱなしにしなければならないので、消費電力は非常に多い。更に、被照射体の平面積に対応した無駄のない照射制御ができないため、電力消費の無駄が避けがたいものとなり、また、水銀を用いたランプであるため、廃棄に際して環境上の問題も惹起するものとなる。
【0006】
そこで、本発明者は、紫外線の発光源として、紫外線発光ダイオードを用いた紫外線照射装置の開発を試みた。研究開発段階における装置は、図10及び図11に示されるように、基板50上で略格子状の軌跡に沿うように相互に等間隔を隔てて多数の発光ダイオード51を配置する一方、ウエハWの面に紫外線硬化型樹脂による粘着剤層53を備えた保護シートSを相対配置し、発光ダイオード51から紫外線を照射しつつ両者を図10中矢印B方向に相対移動させる構成が採用された。そして、紫外線照射後に保護シートSの剥離を行ったところ、粘着剤層53の硬化が不十分となる領域Aが、図11中紙面直交方向に沿って直線的に発生し、これが剥離を妨げることを知見した。
【0007】
これは、図11に示されるように、発光ダイオード51が保護フィルムSに非常に接近した距離で前記保護シートSに対して紫外線照射を行う構成であるため、当該距離と紫外線の指向角度とにより、前記領域Aに対して補完的に紫外線照射を行う発光ダイオード51が存在しないことに起因していることが判明した。
【0008】
この場合、発光ダイオード51と保護シートSとの距離を十分に大きくすることも考えられるが、このような距離設定を行うと、紫外線が減衰してしまい、粘着剤層を期待する程に硬化させることができなくなる、という別異の問題が発生することとなる。
【0009】
[発明の目的]
本発明は、前述した不都合に着目するとともに、紫外線発光ダイオードを用いた場合の問題を解決すべく種々の実験を通じて得られた知見により案出されたものであり、その目的は、装置の小型化を飛躍的に図ることができるとともに、保守点検の容易性、紫外線照射の作業性及び省電力化を達成することのできる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、被照射体に相対する位置に複数の紫外線発光ダイオードを配置するとともに、これら被照射体と発光ダイオードが相対移動可能に設けられた紫外線照射装置において、
前記発光ダイオードは、前記相対移動方向と略直交する複数列の直線上に等間隔を隔てて配置されているとともに、各列において隣り合っている発光ダイオード間に、隣接する列の発光ダイオードの一部が位置するように配置される、という構成を採っている。
【0011】
本発明において、前記発光ダイオードは、基板に着脱自在に設ける、という構成を採るとよい。
【0012】
また、本発明は、前記発光ダイオード数個をユニット化して当該ユニット単位で発光ダイオードが基板に着脱自在に設けられる、という構成を採ることもできる。
【0013】
更に、前記発光ダイオードは、被照射体の平面積に応じて発光領域が制御可能に設けられる、という構成も採用することができる。
【0014】
また、本発明は、前記被照射体を支持するテーブルに、前記相対移動方向と略直交する方向に沿う所定間隔毎に照度センサを配置することが好ましい。
【0015】
更に、前記発光ダイオードの複数個を一単位としたユニット毎、又は一個毎の照射能力が電流値及び/又は電圧値によって検出されるように設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、紫外線照射を行うための発光源として発光ダイオードを採用したから、従来の水銀ランプ等を採用した場合のトランス等の大掛かりな装備が不要となり、装置の小型化を達成することができる。また、隣り合っている発光ダイオード間に他の列の発光ダイオードの一部が位置する配置としたことにより、発光ダイオードを被照射体に接近させた場合に生じ得る未照射領域の発生を回避することができる。また、発光ダイオードを基板に着脱自在とすることで、一部交換による保守を容易に実現してコスト的な負担を最小限に保つことが可能となる。更に、紫外線の発光領域を制御可能とすることで、消費電力を低減しつつ発光ダイオードの製品寿命を長期に亘って確保することができるうえ、高圧水銀ランプのように立ち上がり時間が必要ないため、紫外線を照射する寸前で発光ダイオードを点灯し、照射が終われば電源を切ることができるので、点灯しっぱなしの高圧水銀ランプに比べて多大な省エネルギー化が実現できる。また、照度センサを設けることで、発光ダイオードの性能評価を確実に行うことができ、紫外線照射不足を回避することができる。その上、電流計及び/又は電圧計を用いて電流値、電圧値を管理することによって、発光ダイオードが切れた状態を検出できるので、紫外線の照射不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る紫外線照射装置がウエハ処理装置に適用された実施形態に係る概略正面図が示されている。同図において、紫外線照射装置10は、被照射体としてのウエハWを吸着支持するウエハ支持部11と、このウエハ支持部11の上方において、前記ウエハWと略平行に配置された紫外線照射部12と、これらウエハ支持部11及び紫外線照射部12を囲むチャンバ13とを備えて構成されている。
【0019】
前記ウエハ支持部11は、図1中左右方向に延びるガイド15と、このガイド15に沿って移動可能に設けられるとともに平面形状が略方形に設けられたテーブル16と、当該テーブル16の上面側において、図1中紙面直交方向に沿って等間隔を隔てて配置された複数の照度センサ17とにより構成されている。テーブル16は、上面側が吸着面として構成され、ウエハWを吸着した状態で当該ウエハWの位置を固定するように設けられている。ここで、ウエハWには、その上面側(回路面側)に保護シートSが貼付されている。この保護シートSは、下面側に紫外線硬化型の粘着剤層18が設けられ、当該粘着剤層18を硬化させることにより、後工程で保護シートSをウエハWから簡単に剥離できるようになっている。
【0020】
前記紫外線照射部12は、図2に示されるように、平面形状が略方形に設けられた基板20と、この基板20の図1中下面側に配置された多数の紫外線発光ダイオード21とを備え、前記ウエハWの面に対して平面内で相対移動可能に設けられている。発光ダイオード21は前記相対移動方向(図2中上下方向)に沿って相互に略平行な複数列の直線上に等間隔を隔てて配置されているとともに、各列において隣り合っている発光ダイオード21間に、隣接する列の発光ダイオード21の一部が位置するように配置されている。これを更に詳述すると、各発光ダイオード21は平面視略正方形状をなしており、その中央部に紫外線発光部21Aが設けられている。この発光ダイオード21は、前記相対移動方向と略直交方向に沿って延びる横第1列〜第8列に対応する第1の直線L1と、この第1の直線L1と同一平面内で略直交する方向(ウエハ移動方向)に延びる縦第1列〜第14列に対応する第2の直線L2それぞれの直線上に発光ダイオード21のコーナーCが位置するように配置されている。ここで、第1の直線L1の相互間隔は略等しく、また、第2の直線L2間の相互間隔も略等しく設定されている。図2の例では、例えば、横第1列の発光ダイオード21間には、横第2列の発光ダイオード21の一部すなわち上半部がそれぞれ位置するように配置され、以下同様に、横第2列上で隣り合う発光ダイオード21間には、横第3列の発光ダイオード21のそれぞれ上半部が位置するように配置されている。この関係は、縦各列の場合も同様である。なお、図2の縦横各列の数は、説明の便宜上示しているだけであり、これらの列の数は必要に応じて増加、減少させることとなる。
【0021】
以上の構成において、ウエハ支持部11と紫外線照射部12の相対移動方向が、前記直線L1又はL2の何れかに一致した状態、或いは、これに近い状態とされたときに、図3に示されるように、紫外線照射の未照射領域を無くすことが可能となる。
なお、発光ダイオード21は、照度センサ17によって、ウエハに紫外線を照射する都度照度評価がなされるようになっており、これにより、照度が低下したと検知したときに、一個又は複数を一単位とするユニット毎に電圧を上げて必要照度を確保することができる(この場合、電圧には上限値を設けておくことが必要となる)。また、電圧が上限値に達していて照度が不足していると検知した場合は、一個又は複数を一単位とするユニット毎に交換を行うことができ、常に安定した性能で紫外線照射を行うことが可能となる。
【0022】
従って、このような実施形態によれば、保護シートS上で紫外線が未照射となる領域は全く生じないものとなり、粘着剤層18を全領域に亘って完全硬化させることができ、その後の保護シートSの剥離を確実に行うことが可能となる。
【0023】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0024】
例えば、図4に示されるように、発光ダイオード21の発光タイミングを個々に制御可能とし、ウエハWが紫外線照射部12の下方を通過するときのタイミングに合わせて順次発光させる態様で紫外線照射を行うことでもよい。この制御は、図示しない制御装置に各発光ダイオード21又は各ユニットのアドレスデータと、前記相対移動速度とを予め付与しておくことにより実現することができる。図4の例では、発光ダイオード21の直下にウエハWが位置して重なり合う領域内の発光ダイオードがONした状態であり、この段階では、上下両側の発光ダイオード21群又は各ユニット群はOFFとなっている。従って、図4の位置から図5の位置までウエハWの移動が進んだときには、全領域における発光ダイオード21がONとなり、更にウエハWが進むに従って、OFF領域が次第に拡大することとなる。
【0025】
また、図6に示されるように、ウエハWの大きさが発光ダイオード21の配置領域面積に比べて小さいときには、実質的に関与しない発光ダイオード21の領域を常にOFFに保って紫外線照射を行うことも可能である。
【0026】
更に、図7に示されるように、発光ダイオード21が基板20に対して着脱自在な状態で固定できる構成とすれば、一部の発光ダイオード21が何らかの理由で故障したときに、当該部分の交換作業を極めて容易に行うことが可能となり、全体的に交換を必要としないことで、メンテナンスコストも最小限なものとすることができる。また、発光ダイオード数個を1ユニットとし、そのユニット毎に交換するようにしてもよい。なお、発光ダイオード21が切れているか否かの検出方法は、図8及び図9に示されるように、複数個を一単位としたユニット毎の電流値及び/又は電圧値を計測することによって行うことができる。また、ここでは、図示省略しているが、発光ダイオードの採用数が少ないような場合には、一個毎の電流値及び/又は電圧値を計測する構成も勿論採用することができる。
【0027】
また、本発明は、半導体ウエハを照射体として限定されるものではなく、未照射領域を発生させない状態で紫外線照射反応を必要とするものであれば適用することを妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る紫外線照射装置の概略構成図。
【図2】発光ダイオードの配置例を示す概略平面図。
【図3】紫外線照射領域を示す概略正面図。
【図4】発光ダイオードの初期発光領域を制御する状態を示す概略平面図。
【図5】発光ダイオードの全領域から発光させる状態を示す概略平面図。
【図6】被照射体の平面積に応じて発光ダイオードを制御する状態を示す概略平面図。
【図7】発光ダイオードを基板に着脱自在とした構成を示す概略正面図。
【図8】発光ダイオードの複数個を一単位としたユニット毎の電流値を計測する回路構成図。
【図9】発光ダイオードの複数個を一単位としたユニット毎の電圧値を計測する回路構成図。
【図10】発光ダイオードを縦横並列に配置した場合の概略平面図。
【図11】図10に示される発光ダイオードによる不都合を説明するための概略正面図。
【符号の説明】
【0029】
10 紫外線照射装置
11 ウエハ支持部
12 紫外線照射部
17 照度センサ
21 発光ダイオード
W 半導体ウエハ(被照射体)
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線照射装置に係り、更に詳しくは、発光ダイオードを用いた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する)の処理装置においては、例えば、ウエハの回路面に保護テープを貼付した状態で所定処理することが行われている。この保護テープは、粘着面に紫外線硬化型樹脂が採用されており、紫外線照射装置により前記紫外線硬化型樹脂を硬化させることによって粘着力を弱め、剥離が容易に行えるようになっている。
【0003】
前記紫外線照射装置としては、例えば、ウエハ面に相対する位置にランプケースを配置するとともに、当該ランプケース内に高圧水銀ランプ若しくはメタルハライドランプ等を配置して構成された装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−162141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された紫外線照射装置にあっては、高圧水銀ランプを発光源として用いる構成であるため、高電圧のトランスが必要となり、装置が大型化するとともに、電力消費量も大きくなるという不都合がある。また、ランプ寿命が短く頻繁なメンテナンスが必要となる他、紫外線照射条件を満たすまでの、いわゆる立ち上がり時間が長く必要なため、作業時間内はランプは点灯しっぱなしにしなければならないので、消費電力は非常に多い。更に、被照射体の平面積に対応した無駄のない照射制御ができないため、電力消費の無駄が避けがたいものとなり、また、水銀を用いたランプであるため、廃棄に際して環境上の問題も惹起するものとなる。
【0006】
そこで、本発明者は、紫外線の発光源として、紫外線発光ダイオードを用いた紫外線照射装置の開発を試みた。研究開発段階における装置は、図10及び図11に示されるように、基板50上で略格子状の軌跡に沿うように相互に等間隔を隔てて多数の発光ダイオード51を配置する一方、ウエハWの面に紫外線硬化型樹脂による粘着剤層53を備えた保護シートSを相対配置し、発光ダイオード51から紫外線を照射しつつ両者を図10中矢印B方向に相対移動させる構成が採用された。そして、紫外線照射後に保護シートSの剥離を行ったところ、粘着剤層53の硬化が不十分となる領域Aが、図11中紙面直交方向に沿って直線的に発生し、これが剥離を妨げることを知見した。
【0007】
これは、図11に示されるように、発光ダイオード51が保護フィルムSに非常に接近した距離で前記保護シートSに対して紫外線照射を行う構成であるため、当該距離と紫外線の指向角度とにより、前記領域Aに対して補完的に紫外線照射を行う発光ダイオード51が存在しないことに起因していることが判明した。
【0008】
この場合、発光ダイオード51と保護シートSとの距離を十分に大きくすることも考えられるが、このような距離設定を行うと、紫外線が減衰してしまい、粘着剤層を期待する程に硬化させることができなくなる、という別異の問題が発生することとなる。
【0009】
[発明の目的]
本発明は、前述した不都合に着目するとともに、紫外線発光ダイオードを用いた場合の問題を解決すべく種々の実験を通じて得られた知見により案出されたものであり、その目的は、装置の小型化を飛躍的に図ることができるとともに、保守点検の容易性、紫外線照射の作業性及び省電力化を達成することのできる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、被照射体に相対する位置に複数の紫外線発光ダイオードを配置するとともに、これら被照射体と発光ダイオードが相対移動可能に設けられた紫外線照射装置において、
前記発光ダイオードは、前記相対移動方向と略直交する複数列の直線上に等間隔を隔てて配置されているとともに、各列において隣り合っている発光ダイオード間に、隣接する列の発光ダイオードの一部が位置するように配置される、という構成を採っている。
【0011】
本発明において、前記発光ダイオードは、基板に着脱自在に設ける、という構成を採るとよい。
【0012】
また、本発明は、前記発光ダイオード数個をユニット化して当該ユニット単位で発光ダイオードが基板に着脱自在に設けられる、という構成を採ることもできる。
【0013】
更に、前記発光ダイオードは、被照射体の平面積に応じて発光領域が制御可能に設けられる、という構成も採用することができる。
【0014】
また、本発明は、前記被照射体を支持するテーブルに、前記相対移動方向と略直交する方向に沿う所定間隔毎に照度センサを配置することが好ましい。
【0015】
更に、前記発光ダイオードの複数個を一単位としたユニット毎、又は一個毎の照射能力が電流値及び/又は電圧値によって検出されるように設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、紫外線照射を行うための発光源として発光ダイオードを採用したから、従来の水銀ランプ等を採用した場合のトランス等の大掛かりな装備が不要となり、装置の小型化を達成することができる。また、隣り合っている発光ダイオード間に他の列の発光ダイオードの一部が位置する配置としたことにより、発光ダイオードを被照射体に接近させた場合に生じ得る未照射領域の発生を回避することができる。また、発光ダイオードを基板に着脱自在とすることで、一部交換による保守を容易に実現してコスト的な負担を最小限に保つことが可能となる。更に、紫外線の発光領域を制御可能とすることで、消費電力を低減しつつ発光ダイオードの製品寿命を長期に亘って確保することができるうえ、高圧水銀ランプのように立ち上がり時間が必要ないため、紫外線を照射する寸前で発光ダイオードを点灯し、照射が終われば電源を切ることができるので、点灯しっぱなしの高圧水銀ランプに比べて多大な省エネルギー化が実現できる。また、照度センサを設けることで、発光ダイオードの性能評価を確実に行うことができ、紫外線照射不足を回避することができる。その上、電流計及び/又は電圧計を用いて電流値、電圧値を管理することによって、発光ダイオードが切れた状態を検出できるので、紫外線の照射不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る紫外線照射装置がウエハ処理装置に適用された実施形態に係る概略正面図が示されている。同図において、紫外線照射装置10は、被照射体としてのウエハWを吸着支持するウエハ支持部11と、このウエハ支持部11の上方において、前記ウエハWと略平行に配置された紫外線照射部12と、これらウエハ支持部11及び紫外線照射部12を囲むチャンバ13とを備えて構成されている。
【0019】
前記ウエハ支持部11は、図1中左右方向に延びるガイド15と、このガイド15に沿って移動可能に設けられるとともに平面形状が略方形に設けられたテーブル16と、当該テーブル16の上面側において、図1中紙面直交方向に沿って等間隔を隔てて配置された複数の照度センサ17とにより構成されている。テーブル16は、上面側が吸着面として構成され、ウエハWを吸着した状態で当該ウエハWの位置を固定するように設けられている。ここで、ウエハWには、その上面側(回路面側)に保護シートSが貼付されている。この保護シートSは、下面側に紫外線硬化型の粘着剤層18が設けられ、当該粘着剤層18を硬化させることにより、後工程で保護シートSをウエハWから簡単に剥離できるようになっている。
【0020】
前記紫外線照射部12は、図2に示されるように、平面形状が略方形に設けられた基板20と、この基板20の図1中下面側に配置された多数の紫外線発光ダイオード21とを備え、前記ウエハWの面に対して平面内で相対移動可能に設けられている。発光ダイオード21は前記相対移動方向(図2中上下方向)に沿って相互に略平行な複数列の直線上に等間隔を隔てて配置されているとともに、各列において隣り合っている発光ダイオード21間に、隣接する列の発光ダイオード21の一部が位置するように配置されている。これを更に詳述すると、各発光ダイオード21は平面視略正方形状をなしており、その中央部に紫外線発光部21Aが設けられている。この発光ダイオード21は、前記相対移動方向と略直交方向に沿って延びる横第1列〜第8列に対応する第1の直線L1と、この第1の直線L1と同一平面内で略直交する方向(ウエハ移動方向)に延びる縦第1列〜第14列に対応する第2の直線L2それぞれの直線上に発光ダイオード21のコーナーCが位置するように配置されている。ここで、第1の直線L1の相互間隔は略等しく、また、第2の直線L2間の相互間隔も略等しく設定されている。図2の例では、例えば、横第1列の発光ダイオード21間には、横第2列の発光ダイオード21の一部すなわち上半部がそれぞれ位置するように配置され、以下同様に、横第2列上で隣り合う発光ダイオード21間には、横第3列の発光ダイオード21のそれぞれ上半部が位置するように配置されている。この関係は、縦各列の場合も同様である。なお、図2の縦横各列の数は、説明の便宜上示しているだけであり、これらの列の数は必要に応じて増加、減少させることとなる。
【0021】
以上の構成において、ウエハ支持部11と紫外線照射部12の相対移動方向が、前記直線L1又はL2の何れかに一致した状態、或いは、これに近い状態とされたときに、図3に示されるように、紫外線照射の未照射領域を無くすことが可能となる。
なお、発光ダイオード21は、照度センサ17によって、ウエハに紫外線を照射する都度照度評価がなされるようになっており、これにより、照度が低下したと検知したときに、一個又は複数を一単位とするユニット毎に電圧を上げて必要照度を確保することができる(この場合、電圧には上限値を設けておくことが必要となる)。また、電圧が上限値に達していて照度が不足していると検知した場合は、一個又は複数を一単位とするユニット毎に交換を行うことができ、常に安定した性能で紫外線照射を行うことが可能となる。
【0022】
従って、このような実施形態によれば、保護シートS上で紫外線が未照射となる領域は全く生じないものとなり、粘着剤層18を全領域に亘って完全硬化させることができ、その後の保護シートSの剥離を確実に行うことが可能となる。
【0023】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0024】
例えば、図4に示されるように、発光ダイオード21の発光タイミングを個々に制御可能とし、ウエハWが紫外線照射部12の下方を通過するときのタイミングに合わせて順次発光させる態様で紫外線照射を行うことでもよい。この制御は、図示しない制御装置に各発光ダイオード21又は各ユニットのアドレスデータと、前記相対移動速度とを予め付与しておくことにより実現することができる。図4の例では、発光ダイオード21の直下にウエハWが位置して重なり合う領域内の発光ダイオードがONした状態であり、この段階では、上下両側の発光ダイオード21群又は各ユニット群はOFFとなっている。従って、図4の位置から図5の位置までウエハWの移動が進んだときには、全領域における発光ダイオード21がONとなり、更にウエハWが進むに従って、OFF領域が次第に拡大することとなる。
【0025】
また、図6に示されるように、ウエハWの大きさが発光ダイオード21の配置領域面積に比べて小さいときには、実質的に関与しない発光ダイオード21の領域を常にOFFに保って紫外線照射を行うことも可能である。
【0026】
更に、図7に示されるように、発光ダイオード21が基板20に対して着脱自在な状態で固定できる構成とすれば、一部の発光ダイオード21が何らかの理由で故障したときに、当該部分の交換作業を極めて容易に行うことが可能となり、全体的に交換を必要としないことで、メンテナンスコストも最小限なものとすることができる。また、発光ダイオード数個を1ユニットとし、そのユニット毎に交換するようにしてもよい。なお、発光ダイオード21が切れているか否かの検出方法は、図8及び図9に示されるように、複数個を一単位としたユニット毎の電流値及び/又は電圧値を計測することによって行うことができる。また、ここでは、図示省略しているが、発光ダイオードの採用数が少ないような場合には、一個毎の電流値及び/又は電圧値を計測する構成も勿論採用することができる。
【0027】
また、本発明は、半導体ウエハを照射体として限定されるものではなく、未照射領域を発生させない状態で紫外線照射反応を必要とするものであれば適用することを妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る紫外線照射装置の概略構成図。
【図2】発光ダイオードの配置例を示す概略平面図。
【図3】紫外線照射領域を示す概略正面図。
【図4】発光ダイオードの初期発光領域を制御する状態を示す概略平面図。
【図5】発光ダイオードの全領域から発光させる状態を示す概略平面図。
【図6】被照射体の平面積に応じて発光ダイオードを制御する状態を示す概略平面図。
【図7】発光ダイオードを基板に着脱自在とした構成を示す概略正面図。
【図8】発光ダイオードの複数個を一単位としたユニット毎の電流値を計測する回路構成図。
【図9】発光ダイオードの複数個を一単位としたユニット毎の電圧値を計測する回路構成図。
【図10】発光ダイオードを縦横並列に配置した場合の概略平面図。
【図11】図10に示される発光ダイオードによる不都合を説明するための概略正面図。
【符号の説明】
【0029】
10 紫外線照射装置
11 ウエハ支持部
12 紫外線照射部
17 照度センサ
21 発光ダイオード
W 半導体ウエハ(被照射体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射体に相対する位置に複数の紫外線発光ダイオードを配置するとともに、これら被照射体と発光ダイオードが相対移動可能に設けられた紫外線照射装置において、
前記発光ダイオードは、前記相対移動方向と略直交する複数列の直線上に等間隔を隔てて配置されているとともに、各列において隣り合っている発光ダイオード間に、隣接する列の発光ダイオードの一部が位置するように配置されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記発光ダイオードは、基板に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記発光ダイオード数個をユニット化して当該ユニット単位で発光ダイオードが基板に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記発光ダイオードは、被照射体の平面積に応じて発光領域が制御可能に設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記被照射体を支持するテーブルに、前記相対移動方向と略直交する方向に沿う所定間隔毎に照度センサを配置したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記発光ダイオードの複数個を一単位としたユニット毎、又は一個毎の照射能力が電流値及び/又は電圧値によって検出されることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の紫外線照射装置。
【請求項1】
被照射体に相対する位置に複数の紫外線発光ダイオードを配置するとともに、これら被照射体と発光ダイオードが相対移動可能に設けられた紫外線照射装置において、
前記発光ダイオードは、前記相対移動方向と略直交する複数列の直線上に等間隔を隔てて配置されているとともに、各列において隣り合っている発光ダイオード間に、隣接する列の発光ダイオードの一部が位置するように配置されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記発光ダイオードは、基板に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記発光ダイオード数個をユニット化して当該ユニット単位で発光ダイオードが基板に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記発光ダイオードは、被照射体の平面積に応じて発光領域が制御可能に設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記被照射体を支持するテーブルに、前記相対移動方向と略直交する方向に沿う所定間隔毎に照度センサを配置したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記発光ダイオードの複数個を一単位としたユニット毎、又は一個毎の照射能力が電流値及び/又は電圧値によって検出されることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の紫外線照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−40944(P2006−40944A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214534(P2004−214534)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
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