説明

紫外線照射装置

【課題】無電極ランプ取り付けや破損等の不具合発生時における無電極ランプの点灯防止を可能とする。
【解決手段】筐体11内に、マイクロ波を発生するマグネトロン131,132および導波管151,152を介してマイクロ波に基づき紫外線を発光することが可能な放電媒体が封入された無電極ランプ12が配置される。筐体11内のマグネトロン131,132および無電極ランプ12は、ファンを主体とする冷却機構20を用いて冷却を行い、安定した紫外線特性が得られるようにしている。無電極ランプ12から照射される前記ランプの紫外線は、反射板21を用いて被照射物に対する集光または拡散を行う。無電極ランプ12が筐体11内の一部に通常状態で支持された位置から外れたことを、板バネ271,272の作用で、プッシュスイッチ28,29により検出し、この検出結果に基づいて電源14を制御し、マグネトロン151,152からマイクロ波の発生を停止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波によって励起し紫外線を発光させる無電極ランプを用い、表面硬化処理や光化学反応による化学物質の合成および処理、殺菌処理等を行う紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を生成させる放電ランプとして、マイクロ波による放電を利用したマイクロ波給電方式無電極放電ランプが考えられている。なかんずく、鉄が封入されたメタルハライドランプは、紫外線を発光させることで、ペンキ、インク、樹脂、塗装などが塗布された面の表面硬化処理や光化学反応による化学物質の合成および処理等の工程のある半導体や液晶パネルの製造、さらには紫外線を用いて殺菌を行う水処理等に用いられている。
【0003】
このような紫外線照射装置での無電極ランプは、筐体内に形成された円形状の穴内に無電極ランプを構成するバルブ両端に一体形成した装着用の突起を係合し、この突起を板バネで押えて支持する構造を取っている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平4−230949号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、筐体内に可視光センサーを設け、無電極ランプの光の有無を認識することで、ランプ不点灯検出を行う構成にすることが考えられる。しかしながら、板バネで無電極ランプの突起を押えているだけであるため、無電極ランプの位置ずれや落下考えられる他に、無電極ランプの破損などの不具合が発生してしまう。このような条件下においても、マイクロ波の給電があると無電極ランプは点灯してしまう、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、無電極ランプの取付上や破損などの不具合の発生時における無電極ランプの点灯の防止を可能とする紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線照射装置は、マイクロ波により紫外線が放射可能な放電媒体が封入された無電極ランプと、前記ランプにマイクロ波を供給するためのマグネトロンと、前記マグネトロンから発生するマイクロ波を、前記ランプへ給電するための導波管と、前記ランプの紫外線光を集光または拡散させる反射板と、が少なくとも筐体内に構成された紫外線照射装置において、前記無電極ランプが前記筐体内に正規に支持される状態から外れたことを検出する検出手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、無電極ランプの取付上や破損などの不具合の発生時における無電極ランプの点灯を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1〜図4は、この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するためのもので、図1はシステム構成図、図2は図1のI−I’線の断面図、図3は図1で使用する無電極ランプの一例について説明するための構成図、図4は図1の要部の断面図である。
【0010】
図1、図2において、11は筐体であり、この筐体11の中央部には電極を備えない、いわゆる無電極ランプ12を配置して取り付けてある。131,132は、マイクロ波を発生させるマグネトロンである。14は、マグネトロン131,132に電力を供給するための電源である。151,152は、マグネトロン131,132で発生させアンテナ161,162から送信されるマイクロ波を、無電極ランプ12に伝達させる導波管である。
【0011】
ここで、図3を参照して無電極ランプ12の構成例について説明する。121は紫外光を透過させる石英ガラス製の長さが240mm程度の円筒形状のバルブである。バルブ121は、中央部122をその両端部123,124よりも細くなるようにテ―パをつけたもので、両端部123,124の外径は例えば17mm程度、中央部122の外径は10mm程度である。
【0012】
バルブ121の発光空間125内には、不活性ガスとそれに水銀と鉄を主成分とするマイクロ波で放電させる放電媒体を封入する。バルブ121の両端にはバルブ121を支持する支持部126,127がバルブ121と一体的に形成される。
【0013】
再び図1、図2において、171,172は、マグネトロン131,132から送信されるそれぞれのマイクロ波のパワーを検出するマイクロ波センサーである。マイクロ波センサー171,172は、それぞれ導波管151,152内に取り付けられ、検出結果は制御部18に供給する。制御部18では、マイクロ波の強度に基づいて電源14からマグネトロン131,132に供給する電力の制御を行う。制御部18は、コンピュータプログラムにより動作するコンピュータやこのコンピュータを集積化した集積回路により構成される。
【0014】
19は、無電極ランプ12から照射された光を受光する、金属線をメッシュ状に編み込んだり、金属板にパンチング加工したりしたカバーで覆われた受光素子、20は受光素子19が受光した光の量を検出する光量検出器である。この光量検出器20により検出された光の量は、制御部18に供給して、予め設定された光の量に等しくなるように電源14を制御する。
【0015】
光量検出器20は、受光素子17に対してリード線などで接続され、受光素子19が受光した光の量を例えば受光素子19から供給される電流の値により検出するようになっている。光量検出器20は、制御部18に対しリード線などで接続され、検出した光の量を示すアナログ電圧を制御部18に与える。
【0016】
制御部18は、所望の光の量を示すアナログ電圧、電源14の制御量ならびに制御量を増加または減少させるときの1回の量(単位制御量という)が記憶される図示しないメモリを備え、メモリには当初は当該アナログ電圧、制御量の初期値および当該単位制御量が記憶されている。
【0017】
また、制御部18は、光量検出器20から与えられるアナログ電圧と、メモリに記憶したアナログ電圧に基づいて、メモリに記憶された制御量を更新し、電源14に与える制御量を増加または減少させるようになっている。電源14は、制御部18から与えられた制御量に応じたエネルギー量のマイクロ波が発生するようにマグネトロン131,132を制御するようになっている。
【0018】
さらに、筐体11の上部には、筐体11の内部に、例えば、風を供給することにより無電極ランプ12とマグネトロン131,132を冷却させるファンを主体とする冷却機構21が設けられる。
【0019】
無電極ランプ12の背面側には反射板22が設置される。また、反射板22の反射面側と被照射物(図示せず)との間には、照射窓を構成するスクリーン23が筐体11の一部に設けられている。スクリーン23は、金属でありかつ開口部が設けられている。スクリーン23は、例えば、金属線をメッシュ状に編み込んで形成したり、金属板にパンチング加工で形成したりして開口部を有するようになっている。24は、無電極ランプ12と反射板21それにスクリーン23で構成される空洞共振部である。
【0020】
空洞共振部24における無電極ランプ12は、反射板21に対し集光あるいは拡散する状態になる位置関係に取り付けられる。すなわち、反射板22も支持されるフレーム25の側面には、図4に示すように取付孔261,262を形成し、この取付孔261,262に支持部126,127を挿入する。
【0021】
取付孔261,262に挿入されたそれぞれ支持部126,127は、一端がフレーム25に取り付けられた板バネ271,272の他端で弾性的に支持される。板バネ271,272の他端と対向するそれぞれの位置には、フレーム25の反対面側の取り付けられたプッシュスイッチ28,29のノブ281,291がそれぞれ操作可能に突出した状態で取り付けられる。プッシュスイッチ28,29は、ノブ281,282が板バネ271,272で押された場合にオンするタイプの検出手段である。支持部126,127が取付孔261,262に挿入された状態では、支持部126,127がノブ281,291を作用しない位置に板バネ271,272を押えた状態になっている。
【0022】
30は、プッシュスイッチ28,29の少なくともいずれか一方がオンしたときに制御部18の制御信号に基づきアラーム駆動部31を駆動し警告音を鳴らすためのスピーカである。
【0023】
次に、図5、図6を参照してプッシュスイッチ28,29の作用について説明する。図5は図1の要部を抜書きした構成図であり、図6はプッシュスイッチ28,29と無電極ランプ12の支持部127側のみの状態について説明するための説明図である。
【0024】
図5において、先ず無電極ランプ12の支持部127が取付孔262に通常の取り付けの図6(a)の状態にある場合について考える。なお、このときは、支持部126が取付孔261も図6(a)に相当する状態にあるとする。
【0025】
この場合は、ノブ291が板バネ29に押されることはなく、プッシュスイッチ29はオフの状態にある。従って、プッシュスイッチ29はオフの状態にあることから、制御部18はアラーム駆動部31を駆動するための制御信号の出力はないことからスピーカ30は無音の状態にある。
【0026】
次に、図6(b)に示すように、取付孔262から支持部126が外れた状態になった場合について考える。この場合、プッシュスイッチ29は板バネ29の作用によりノブ291が押されることでオンとなる。制御部18は、プッシュスイッチ29がオンされたことを判断し、アラーム駆動部31に制御信号を供給して駆動信号を出力させ、スピーカ30から警告音を発生させる。同時に制御部18は、電源14を停止させる信号を出力し、電源14を停止する。
【0027】
このように、無電極ランプ12は、通常の取り付け状態から外れた位置になった場合に、警告を発するとともにマイクロ波を発生させる電源の停止を行うことで、通常の位置にない無電極ランプの点灯を防止することが可能となる。
【0028】
なお、ここでの説明では、無電極ランプが通常の取り付け状態から外れた場合について説明したが、無電極ランプが破損した場合にも同様の動作で電源等の停止を行い不具合状態でのマイクロ波の発生を防止することができる。
【0029】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、不具合が発生した場合を知らせる手段としてスピーカを使用したが、図5の括弧書きで示したLED等のような可視的に知らせるものであっても構わない。可視的に知らせる場合は、フラッシングを用いるとより効果的となる。無電極ランプの状態を知らせる手段としたプッシュスイッチは、リードスイッチでもよい。また、無電極ランプが通常の取り付け状態のときにオンとすることでも構わない。さらに、機械的なスイッチでなくても光学的、電子的なスイッチでも構わない。
【0030】
さらに、無電極ランプは、長手方向の中央部の径をその両端の径よりも小さいものを使用して説明したが、中央部、両端部が同じ径のバルブを用いたものであっても構わない。また、筐体内には2個のマグネトロンを配置し、これらのマグネトロンから1個の無電極ランプにマイクロ波を放射させる説明したが、マグネトロンは1個の場合であっても同様の効果を奏する。
【0031】
プッシュスイッチをオンオフさせるものとしては板バネではなく、無電極ランプの支持部を挟むような格好のコネクタを用い、コネクタから支持部が外れた場合に、この情報を制御部に与えるやり方も考えられる。この場合、コネクタそのものにスイッチ機能を備えることで、プッシュスイッチと板バネの両機能を持たせることができ、省スペース化にも寄与する。
【0032】
またさらに、プッシュスイッチ28,29は両方がオンした場合だけでなく、何れか一方がオンした場合においても、制御部18は、無電極ランプが不具合として判断することにことでより確実なマイクロ波の停止を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するためのシステム構成図。
【図2】図1のI−I’線断面図。
【図3】図1で使用される無電極ランプの一例について説明するための構成図。
【図4】図1の要部を拡大して示した断面図。
【図5】図1の要部を抜書きした状態を拡大して示した構成図。
【図6】図1の要部の作用について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0034】
11 筐体
12 無電極ランプ
126,127 支持部
131,132 マグネトロン
14 電源
151,152 導波管
161,162 アンテナ
18 制御部
21 冷却機構
22 反射板
23 スクリーン
24 空洞共振部
25 フレーム
261,262 取付孔
271,272 板バネ
28,29 プッシュスイッチ
30 スピーカ
31 アラーム駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波により紫外線が放射可能な放電媒体が封入された無電極ランプと、
前記ランプにマイクロ波を供給するためのマグネトロンと、
前記マグネトロンから発生するマイクロ波を、前記ランプへ給電するための導波管と、
前記ランプの紫外線光を集光または拡散させる反射板と、が少なくとも筐体内に構成された紫外線照射装置において、
前記無電極ランプが前記筐体内に正規に支持される状態から外れたことを検出する検出手段を備えたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記無電極ランプが正規の支持状態にないことを前記検出手段が検出した場合は、前記マイクロ波の発生を停止したことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記無電極ランプが正規の支持状態にないことを前記検出手段が検出した場合は、警告を発することを特徴とする請求項1または2記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−285548(P2009−285548A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139209(P2008−139209)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】