説明

紫外線硬化型樹脂組成物

【課題】 得られる硬化物が耐擦傷性を維持した上で、反りが小さく、湿熱処理後の樹脂密着性、透明性に優れた硬化物を与える紫外線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 分子内にオキシアルキレン鎖を有する数平均分子量が300〜2,000のポリエーテルポリオール(a)、有機ポリイソシアネート(b)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)を反応させて得られる2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)、官能基数3〜5の多官能(メタ)アクリレート(B)、分子内に芳香環を含有する単官能(メタ)アクリレート(C)、および光重合開始剤(D)を含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型樹脂組成物に関する。
さらに詳しくは、反りが小さく、かつ耐擦傷性、湿熱処理後の樹脂密着性、透明性に優れた光学フィルムなどの紫外線硬化型樹脂組成物、およびそれを硬化させて成型した光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より液晶ディスプレイに使用されるプリズムシートや、プロジェクションテレビに使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズといった光学レンズは、熱可塑性樹脂の射出成形、あるいは熱プレス成形により製造されるのが一般的であった。これらの製造方法では、製造時の加熱および冷却に長時間を必要とするため生産性が低く、また、光学レンズの熱収縮により、微細構造の再現性が悪いという問題点があった。
そこで、これらの問題点を解決するため、金型内面に透明樹脂基材がセットされた型内に紫外線硬化型樹脂組成物を流し込み、紫外線を照射して硬化させる方法がその後、実施されている。
【0003】
近年、ディスプレイの薄型化に伴い、拡散フィルム、輝度向上フィルム、プリズムレンズ等の光学フィルムの薄膜化が検討されている。
しかしながら、薄くした光学フィルムは、輸送時にフィルム同士が触れることにより傷つきやすいことから、その防止が検討されており、例えばビスフェノール骨格等の剛直な構造を導入する方法(特許文献1)、多官能アクリレートを導入する方法(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−240926号公報
【特許文献2】特開2004−131520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では耐擦傷性が不十分であるという問題がある。
また、特許文献2の方法では6官能アクリレートを使用しているため、アクリロイル基含有量が高く、紫外線硬化時の硬化収縮が大きくなる。一般に、アクリロイル基含量が高くなるほど硬化収縮が大きくなり、その結果、フィルムが反るという問題が発生する。さらに、硬化収縮が大きい6官能アクリレートを使用すると湿熱処理後の樹脂密着性が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、耐擦傷性を維持した上で、反りが小さく、湿熱処理後の樹脂密着性、透明性に優れた硬化物を与える紫外線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、分子内にオキシアルキレン鎖を有する数平均分子量が300〜2,000のポリエーテルポリオール(a)、有機ポリイソシアネート(b)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)を反応させて得られる2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)、官能基数3〜5の多官能(メタ)アクリレート(B)、分子内に芳香環を含有する単官能(メタ)アクリレート(C)、および光重合開始剤(D)を含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物;この紫外線硬化型樹脂組成物を紫外線照射で硬化させてなる光学部材用硬化物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、耐擦傷性を有するにもかかわらず、反りが小さく、湿熱処理後の樹脂密着性および透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、特定の化学構造を有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)、官能基数3〜5の多官能(メタ)アクリレート(B)、分子内に芳香環を含有する単官能(メタ)アクリレート(C)、および光重合開始剤(D)を必須成分とする。
そして、本発明における2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、分子内にオキシアルキレン鎖を有する数平均分子量が300〜2,000のポリエーテルポリオール(a)、有機ポリイソシアネート(b)および水酸基含有(メタ)アクリレート(c)から構成されている。
【0010】
本発明における第1の必須成分である2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、分子内にポリエーテルポリオール骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を含有するウレタン化合物であれば特に限定されず、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)とのウレタン化反応から形成されるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0011】
そして、このイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)は、数平均分子量が300〜2,000のポリエーテルポリオール(a)および有機ポリイソシアネート(b)を反応させることにより得られ、(a)と(b)のモル比(a)/(b)が、通常1/3〜10/1、好ましくは1/2〜8/1である。この範囲であると、耐擦傷性を有したまま、低収縮性に優れる。
(a)と(b)および(c)の反応におけるOH/NCO当量比が、通常0.45〜0.99、好ましくは0.50〜0.97である。
【0012】
ウレタンプレポリマー(d)の原料となる、ポリエーテルポリオール(a)は、耐擦傷性および低硬化収縮の観点から数平均分子量[以下、Mnと略記する。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]が好ましくは300〜2,000、さらに好ましくは、500〜1,500である。
【0013】
ポリエーテルポリオール(a)としては、下記の(a1)〜(a3)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0014】
(a1):脂肪族2価アルコールのアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」を「AO」と略記する。)付加物
1,4−ブタンジオールのエチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」を「EO」と略記する。)5モル付加物、1,6−ヘキサンジオールのプロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」を「PO」と略記する。)5モル付加物、およびネオペンチルグリコールのブチレンオキサイド5モル付加物等
【0015】
(a2):ポリオキシアルキレングリコール
ポリオキシエチレングリコール(Mn400)、ポリオキシプロピレングリコール(Mn600)およびポリオキシテトラメチレングリコール(Mn1,000)等
【0016】
(a3):2価フェノール化合物のAO付加物(AO2〜20モル)
2価フェノール化合物[単環フェノール(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等)、縮合多環フェノール(ジヒドロキシナフタレン等)、ビスフェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノール−Fおよびビスフェノール−S等)]のAO付加物[レゾルシノールのEO4モル付加物、ジヒドロキシナフタレンのPO4モル付加物、ビスフェノールA、ビスフェノール−Fおよびビスフェノール−SのEO2モル各付加物等]
【0017】
これらのポリエーテルポリオール(a)のうち低収縮性の観点から好ましいのは(a1)および(a2)、さらに好ましくは(a2)である。
【0018】
ウレタンプレポリマー(d)の原料となる有機ポリイソシアネート(b)は、下記の(b1)〜(b4)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0019】
(b1):芳香族ポリイソシアネート
1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、およびm−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート
【0020】
(b2):脂肪族ポリイソシアネート
エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)
【0021】
(b3):脂環式ポリイソシアネート
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート
【0022】
(b4):芳香脂肪族ポリイソシアネート
m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジエチルベンゼンジイソシアネートおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)
【0023】
これらの有機ポリイソシアネート(b)のうち低硬化収縮の観点から好ましいのは(b1)および(b3)、さらに好ましくは(b3)である。
【0024】
ポリエーテルポリオール(a)および有機ポリイソシアネート(b)の反応におけるOH/NCO当量比は0.45〜0.99、好ましくは0.50〜0.97、さらに好ましくは0.55〜0.95である。該当量比が0.45未満では硬化時の収縮率が大きくなり後述する基材との密着性が悪くなり、0.99を超えると(メタ)アクリレートとの相溶性が悪くなる。
【0025】
上記(a)および(b)の反応で得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)に、さらに水酸基含有(メタ)アクリレート(c)を反応させて、本発明の必須成分の2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)を得ることができる。
【0026】
この水酸基含有(メタ)アクリレート(c)としては、下記の(c1)〜(c6)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0027】
(c1):(メタ)アクリル酸のAO付加物
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチルおよびこれらのAO付加物等
【0028】
(c2):(c1)のε−カプロラクトン付加物
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−ε−カプロラクトン2モル付加物等
【0029】
(c3):ジオールのモノ(メタ)アクリレート
ジオール[ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール]のモノ(メタ)アクリレート
【0030】
(c4):エポキシドとヒドロキシ(メタ)アクリル酸の反応生成物
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ビフェノキシ−2−ヒドロキシプロプル(メタ)アクリレート等
【0031】
(c5):(メタ)アクリル酸と3官能以上のポリオールの反応生成物およびその付加物
グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートおよびそれらのAO付加物等
【0032】
(c6):(メタ)アクリル酸とブタジエンポリオール、イソプレンポリオール、水添ブタジエンポリオールおよび水添イソプレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとの反応生成物
【0033】
これらの水酸基含有(メタ)アクリレート(c)のうち、前述のポリイソシアネート成分(b)との反応性の観点から好ましいのは(c1)および(c2)であり、さらに好ましいのは(c1)である。
【0034】
本発明の2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造においては、ウレタン化触媒を用いてもよい。ウレタン化触媒には、金属化合物(有機ビスマス化合物、有機スズ化合物、有機チタン化合物等)、3級アミン、アミジン化合物および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0035】
ウレタン化触媒の使用量は、(A)の重量に基づいて通常1重量%以下、反応性、透明性の観点から好ましくは0.001〜0.5重量%、さらに好ましくは、0.05〜0.2重量%である。
【0036】
本発明における(A)の含有量は、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、通常5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%である。(A)の含有量が5%未満であると、硬化収縮が大きいため密着性が悪くなる。また45%を超えると、粘度が高くなり、ハンドリング性が悪くなる。
【0037】
本発明における第2の必須成分である官能基数3〜5の多官能(メタ)アクリレート(B)は、下記一般式のXが水酸基、メチル基または(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物(B1)〜(B3)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0038】
【化1】

【0039】
[式(1)中、Xは水酸基、メチル基または(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。Rは水素原子またはメチル基;R’は水素原子またはメチル基を表し、a、bおよびcはそれぞれ独立に0〜30の整数を表す。]
【0040】
式(1)中、Xは水酸基、メチル基または(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。
これらのうち、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基であり、さらに好ましくはアクリロイルオキシ基である。
【0041】
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基で表され、好ましくは水素原子である。
【0042】
式(1)中、R’が水素原子の場合はエチレンオキサイドの付加に相当し、メチル基の場合はプロピレンオキサイドの付加に相当する。
エチレンオキサイド単独付加、プロピレンオキサイド単独付加でもよいし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック付加もしくはランダム付加でもよい。
【0043】
a、bおよびcはエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの付加モル
数を表し、それぞれ独立に通常0〜10の数であり、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくはすべて0である。(a+b+c)は0〜30の数であり、好ましくは0〜15、特に好ましくは0〜5である。
【0044】
本発明における官能基数3〜5の多官能(メタ)アクリレート(B)としては、は、下記一般式のXが水酸基、メチル基または(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物(B1)〜(B3)などが挙げられ、以下具体例を示す。下記化合物を単独で用いても、その混合物でもよい。
【0045】
(B1):一般式(1)中のXが水酸基の化合物
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールのEO10モル付加物のトリアクリレート、ペンタエリスリトールのPO5モル付加物のトリメタクリレート等
【0046】
(B2):一般式(1)中のXがメチル基の化合物
トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンのEO20モル付加物のトリアクリレート、トリメチロールプロパンのPO5モル付加物のトリメタクリレート等
【0047】
(B3):一般式(1)中のXがアクリロイルオキシ基の化合物
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールの15モル付加物のトリアクリレート、ペンタエリスリトールのPO5モル付加物のテトラメタクリレート等
【0048】
これらの多官能(メタ)アクリレート(B)のうち、耐擦傷性の観点から好ましいのは(B2)および(B3)であり、さらに好ましいのは(B3)である。
【0049】
本発明における(B)の含有量は、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、通常25〜50%、好ましくは30〜40%である。(A)の含有量が25%未満であると、耐擦傷性が悪くなってしまう。また50%を超えると、硬化収縮率が悪くなり、反りが大きくなり、かつ密着性が低下する
【0050】
本発明における第3の必須成分である芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)は、分子内に芳香環を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ含有していれば、特にその化学構造は限定されない。
【0051】
芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)としては、下記の(C1)〜(C3)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0052】
(C1):フェニル基を分子内に有する単官能(メタ)アクリレート
ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、フェノールのEO2モル付加物の(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート等
【0053】
(C2):ビフェニル基を分子内に有する単官能(メタ)アクリレート
o−、m−、またはp−フェニルフェノールのモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモノ(メタ)アクリレート、o−、m−、またはp−フェニルフェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート等
【0054】
(C3):スチレン化フェノキシ基を分子内に有する単官能(メタ)アクリレート
2.5モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのモノ(メタ)アクリレート、2.5モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート、3モルのスチレンがフェノールに付加したスチレン化フェノールのAO付加物のモノ(メタ)アクリレート等
【0055】
これらの芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)のうち、湿熱処理後の樹脂密着性の観点から好ましいのは(C1)および(C3)であり、さらに好ましくは(C1)である。
【0056】
本発明における(C)の含有量は、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、通常20〜60%、好ましくは25〜50%である。(A)の含有量が20%未満であると、湿熱処理後の樹脂密着性が悪化する。また60%を超えると、耐擦傷性が悪化する。
【0057】
本発明における第4の必須成分である光重合開始剤(D)としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
また、これらの2種以上を併用してもよい。
【0058】
これらの光重合開始剤(D)うち、硬化物の着色防止の観点から好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0059】
本発明における(D)の含有量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計に基づいて硬化性および硬化物の着色の観点から好ましくは0.3〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0060】
また、本発明の光学部品用紫外線硬化性樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤(E)を含有させてもよい。
添加剤には、金型離型剤(アルキルリン酸エステル、アルキルリン酸エステルとジメチルアルキルアミンの塩等)、可塑剤、有機溶剤、無機充填剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、スリップ剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤が含まれる。
【0061】
本発明の樹脂組成物を用いた成形体の製造方法は、特に限定されないが、例えば次の方法で塗工、成形することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物を予め20〜50℃に温調し、成形体形状(例えば光学レンズ形状)が得られる金型(型温は通常20〜50℃、好ましくは25〜40℃)にディスペンサー等を用いて、硬化後の厚みが50〜150μmとなるように塗工(または充填)し、塗膜上から透明基材(透明フィルムを含む)を空気が入らないように加圧積層し、さらに該透明基材上から後述の紫外線を照射して該塗膜を硬化させた後に、型から離型し、フィルム状硬化物やシート状硬化物を得る。
【0062】
本発明の樹脂組成物を紫外線により硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置[例えば、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]を使用できる。使用するランプとしては、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。紫外線の照射量(mJ/cm2)は、組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から好ましくは10〜10,000、さらに好ましくは100〜5,000である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0064】
製造例1
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に分子量1000のポリテトラメチレングリコール[商品名:PTMG−1000、三菱化学(株)製]597部、イソホロンジイソシアネート265部[商品名:VESTANAT IPDI、BASFジャパン(株)製]および触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)0.5部を仕込み、80℃で4時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート138部を加え、80℃で3時間反応させて本発明のウレタンアクリレート(A−1)を得た。
【0065】
製造例2
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、分子量344のビスフェノールAのPO2モル付加物[商品名:ニューポールBP−2P、三洋化成工業(株)製]361部、キシリレンジイソシアネート[商品名:タケネート500、三井武田ケミカル(株)製]395部およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)0.5部仕込み、80℃で6時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート244部を加え、80℃で3時間反応させて本発明のウレタンアクリレート(A−2)を得た。
【0066】
比較製造例1
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、分子量200のポリエチレングリコール[商品名:PEG200、三洋化成工業(株)製]228部、イソホロンジイソシアネート507部およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)0.2部仕込み、80℃で4時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート265部を加え、80℃で3時間反応させて比較例のためのウレタンアクリレート(A’−1)を得た。
【0067】
比較製造例2
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、分子量4,000のポリプロピレングリコール[商品名:サンニックスPP−4000、三洋化成工業(株)製]868部、キシリレンジイソシアネート[商品名:タケネート500、三井武田ケミカル(株)製]82部およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)0.2部仕込み、80℃で5時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート50部を加え、80℃で3時間反応させて比較例のためのウレタンアクリレート(A’−2)を得た。
【0068】
実施例1
製造例1で合成したウレタンアクリレート(A−1)15重量部、製造例2で合成したウレタンアクリレート(A−2)10重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート[商品名「ライトアクリレートPE−3A」、共栄社化学(株)製](B−1)30重量部、フェノキシエチルアクリレート[商品名「ライトアクリレートPO−A」、共栄社化学(株)製](C−1)35重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、チバスペシャリティケミカルズ(株)製](D−1)2重量部、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート[商品名「AP−8」、大八化学(株)製](E−1)を一括で配合し、ディスパーサーで均一に混合攪拌し、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0069】
実施例2〜6および比較例1〜6
表1に記載の各成分と配合量に従って、実施例1と同様にして、実施例2〜6および比較例1〜6の光学部品用樹脂組成物を得た。
【0070】
【表1】

【0071】
なお、表1中に記載した化合物の記号は、以下の化合物を表す。
【0072】
(B−2):ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名「ライトアクリレートPE−4A」、共栄社化学(株)製]
(B−3):トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド20モル付加物とのトリアクリレート[商品名「SR−415」、サートマー・ジャパン(株)製]
(B’−1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[商品名「ライトアクリレートDPE−6A」、共栄社化学(株)製]
(C−2):o−フェニルフェノールのEO1モル付加物のモノアクリレート[商品名「A−LEN−10」新中村化学(株)製]
(D−2):1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ダロキュアーTPO」、チバスペシャリティケミカルズ(株)製]
(E−2):ジメチルステアリルアミン[商品名「ファーミンDM8098」、花王(株)製]
(E−3):ヒンダードフェノール系酸化防止剤[商品名「イルガノックス1010」、チバスペシャリティケミカルズ(株)製]
【0073】
本発明および比較のための樹脂組成物の耐擦傷性、反り、湿熱処理後の密着性、および全光線透過率を下記の方法で測定した。
性能結果を表1に示す。
【0074】
<性能評価用フィルムの作成法>
樹脂組成物をガラス板の片面に、厚さが20μmになるようにアプリケーターで塗工した後、厚さ100μmのPETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」東洋紡績(株)製]を樹脂側に貼り合わせ、ローラーを上から転がして空気を押し出した。
PETフィルム側から紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]により、紫外線を1000mJ/cm照射して、硬化させた。PETフィルムに密着した硬化物をガラス板から剥離し、性能評価用のフィルムを作成した。
【0075】
<性能評価方法>
(1)耐擦傷性
2cm×2cmのアクリル板に同じ大きさの両面テープを貼り付け、その接着面に同じ大きさで未使用のスチールウール#0000[商品名「ボンスター」、日本スチールウール(株)製]を貼り付ける。このアクリル板のスチールウールのついていない側に同じ大きさの両面テープを貼り付け、その接着面を500gのおもりに貼り付ける。
性能評価用のフィルムを10cm×10cm正方形にカットし、水平な台の上に、塗工面を上にして置き、その上にスチールウールを貼り付けたおもりを置く。
おもりの胴部分を手で持ち、コーティング膜に対しておもりを水平に10回往復させ、摩擦試験を行い、外観を目視により下記の基準で判断する。
【0076】
○:全く擦り傷が付かない。
△:9本以下の擦り傷が認められる。
×:10本以上の擦り傷が認められ、表面が白化する。
【0077】
(2)反り
性能評価用のフィルムを6cm×6cm正方形にカットし、平らなテーブルに置き、正方形の四端のテーブルからの反り(mm)を測定し、4点の平均値を算出した。
【0078】
(3)湿熱処理後の樹脂密着性
性能評価用のフィルムを10cm×10cm正方形にカットし、60℃、相対湿度95%の恒温恒湿器[エスペック(株)製、SH−641]中で50時間静置した。
その後、23℃、相対湿度50%に温調された部屋で24時間静置し、上記テストピースをJIS K 5600−5−6に準拠し、1mm幅にカッターナイフで切込みを入れて碁盤目(10×10個)を作成した。該この碁盤目上にセロハン粘着テープを貼り付けて90度剥離を行い、PETフィルムからの硬化物の剥離状態を目視で観察し、下記の判定基準で評価した。
【0079】
○:硬化物の面積90%以上が基材に残っている
△:硬化物の面積10〜90%基材に残っている
×:基材に残っている硬化物の面積が10%未満
【0080】
(4)透明性(全光線透過率)
性能評価用のフィルムをJIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」BYK gardner(株)製]を用いて全光線透過率(%)を測定した。
【0081】
表1の結果から、実施例1〜6の本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を硬化して得られたフィルムは耐擦傷性を維持した上で、反りが小さく、湿熱処理後の樹脂密着性、透明性に優れていることが分かる。
一方、ウレタンアクリレート(A)を含有しない比較例1、6官能のアクリレートを使用した比較例2、および分子量200の低分子ポリオールを構成成分とするウレタンアクリレート(A’−1)を使用した比較例5はいずれも反りが大きく、さらに比較例2および比較例5は湿熱処理後の樹脂密着性も悪化した。
芳香環含有単官能アクリレート(C)を含有しない比較例4は湿熱処理後の樹脂密着性が悪化した。
多官能アクリレート(B)を使用しない比較例3、および分子量4,000の高分子ポリオールを構成成分とするウレタンアクリレート(A’−2)を使用した比較例6はいずれも耐擦傷性が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の光学部品用紫外線硬化性樹脂は、耐擦傷性、低反り性、湿熱処理後の樹脂密着性および透明性が優れているため、光学部材、電気・電子部材としても有用である。
また、本発明の硬化物を用いた光学部品は、フィルム状、シート状で使われるほか、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角向上レンズ等)、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にオキシアルキレン鎖を有する数平均分子量が300〜2,000のポリエーテルポリオール(a)、有機ポリイソシアネート(b)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)を反応させて得られる2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)、官能基数3〜5の多官能(メタ)アクリレート(B)、分子内に芳香環を含有する単官能(メタ)アクリレート(C)、および光重合開始剤(D)を含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
該多官能(メタ)アクリレート(B)が下記一般式(1)で表される請求項1記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、Xは水酸基、メチル基または(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。Rは水素原子またはメチル基;R’は水素原子またはメチル基を表し、a、bおよびcはそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。]
【請求項3】
(A)、(B)、および(C)の合計重量に基づいて、該多官能(メタ)アクリレート(B)を25〜50重量%含有する請求項1または2記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(A)、(B)、および(C)の合計重量に基づいて、該2官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)を5〜45重量%含有する請求項1〜3いずれか記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の紫外線硬化型樹脂組成物を紫外線照射で硬化させてなる光学部材用硬化物。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか記載の紫外線硬化型樹脂組成物を紫外線照射で硬化させてなる光学用フィルムまたは光学用シート。

【公開番号】特開2012−116923(P2012−116923A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266795(P2010−266795)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】