説明

紫外線硬化性樹脂組成物およびその用途

【課題】 筐体を構成する鋼板の継ぎ目部分などに使用され、水分や湿気が浸入するのを十分に防止でき、簡易かつ瞬時に深部まで硬化して、硬化不良や欠膠部などが発生せず、かつ、充分な密着性のために防錆機能をも有する紫外線硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、カチオン重合型および/またはラジカル重合型の紫外線硬化性化合物を含み、前記紫外線硬化性化合物に対し紫外線重合開始剤を配合してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性樹脂組成物およびその用途に関し、詳しくは、紫外線により簡易かつ瞬時に深部まで硬化される、紫外線硬化性樹脂組成物およびその用途、すなわち、これを用いたシーリング材とこのシーリング材を用いた筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来筐体は、金属板同士をスポット溶接やアーク溶接を用いて点で接合し、筐体の形状に加工した後に静電塗装を行ない製品としてきた。しかし、静電塗装を行なうだけでは、溶接接合部の金属同士の隙間から水分が浸入して内部部品が汚損されたり、塗装のかからない断面等から錆が発生したりするなど、屋外で使用する場合には問題があった。そこで、一部の筐体には、シーリング材が使用されている。
例えば、特許文献1では、シーリング材として1液型ウレタン系反応型ホットメルト接着剤を使用した、自動販売機筐体のシーリング方法が開示されている。前記特許文献1においては、シーリング材として、硬化の際に空気中の湿気と反応して架橋構造を形成する、湿気硬化性のシーリング材が用いられている。
【0003】
また、湿気硬化性以外でも、熱硬化性のシーリング材が用いられる場合がある。
【特許文献1】特開2000−113298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような湿気硬化性のシーリング材では、空気と接している表面部分から湿気による硬化が始まるため、前記表面部分が完全に硬化してしまうと、その後は湿気が内部まで浸入できなくなり、厚みや深さのあるシーリング材の場合には硬化不良の問題が生じる。
また、熱硬化性のシーリング材の場合には、加熱するために大掛かりな設備が必要となり、シーリング材を用いた筐体の生産に余分な時間がかかってしまうことにもなる。別の方法として、硬化前に筐体を移送して次工程へと進み、該筐体表面に静電塗装で微粒子状の塗料を吸着させ、これを焼付け処理する工程において、併せてシーリング材を熱硬化させることも可能であるが、この場合、移送中に該シーリング材が流れたり、他の物に触れて欠膠部が生じたりするなどといった問題があった。
【0005】
また、硬化不良を生じる従来のシーリング材では、密着性が充分でないために隙間が生じ、そこから浸入する空気や水に曝されて錆の発生を招くおそれがあった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡易かつ瞬時に深部まで硬化し、硬化不良や欠膠部などの発生を防止し、かつ、充分な密着性のために防錆機能をも有する紫外線硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行なった。その結果、紫外線を照射してラジカル重合および/またはカチオン重合により瞬時に硬化させれば、厚みや深さのある樹脂組成物であっても深部まで十分に硬化することを見出し、それを確認して、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、カチオン重合型および/またはラジカル重合型の紫外線硬化性化合物を含み、前記紫外線硬化性化合物に対し紫外線重合開始剤を配合することを特徴とする。
さらに、前記紫外線硬化性化合物に対し熱重合開始剤も配合してなることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紫外線照射により硬化させるため簡易かつ瞬時の硬化が可能となり、欠膠部が生じず、深部硬化性に優れているため硬化不良の問題が生じず、かつ、シーリング材の充分な密着性のため錆の発生をも防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔紫外線硬化性樹脂組成物〕
本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、カチオン重合型および/またはラジカル重合型の紫外線硬化性化合物を含み、前記紫外線硬化性化合物に対し紫外線重合開始剤を配合してなる紫外線硬化性樹脂組成物である。また、本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化に続き、熱硬化を施すことにより最終硬化させる、いわゆるデュアルキュア型の樹脂組成物であってもよく、この場合においては、前記カチオン重合型および/またはラジカル重合型の紫外線重合開始剤以外に、熱重合開始剤が使用されることになる。
【0009】
カチオン重合型の紫外線硬化性化合物とラジカル重合型の紫外線硬化性化合物は、いずれか一方のみの使用であっても良いが、併用すると、深部硬化性が高まり、塗工厚さを増すことができる。カチオン重合型の紫外線硬化性化合物とラジカル重合型の紫外線硬化性化合物が併用される場合は、紫外線重合開始剤もカチオン性の紫外線重合開始剤とラジカル性の紫外線重合開始剤が併用される。
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、また、紫外線から近赤外線の光に対して吸収を持つ増感剤と組み合わせて用いることにより、紫外線から近赤外線領域にかけての光に対する活性を高め、極めて高感度な重合性組成物とすることが可能である。この意味において、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物にいう「紫外線硬化性」とは、紫外線のみでなく近赤外線の光に対しても硬化するものを言う。
【0010】
〔カチオン重合型の紫外線硬化性化合物〕
紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性化合物または組成物のうち、カチオン重合により重合、すなわち硬化が行われるものを言う。紫外線硬化性化合物としては、紫外線照射によって硬化する化合物であれば、特に指定はされないが、カチオン重合型の紫外線硬化性オリゴマーが好ましく用いられる。
カチオン重合型の紫外線硬化性オリゴマーとしては、公知あるいは市販の各種液状ポリジエンのエポキシ化物が使用できる。具体的には、アニオンリビング重合技術で合成された1,2ポリブタジエン骨格を有するものや、その水素添加物などにエポキシ基が組み込まれたものがある。ラジカル重合で生成したポリジエン化合物にエポキシ基が組み込まれたものがある。液状ポリジエン系オリゴマーの末端基とエポキシ樹脂等のエポキシ基との反応によって、液状ポリジエン系オリゴマーの分子内にエポキシ基を導入したものなどが挙げられる。ここで使用されるエポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである。
【0011】
エポキシ基を有する紫外線硬化性オリゴマーの市販品としては、ナガセケムテック社製の商品名「R−45EPT」、ダイセル化学工業社製の商品名「PB−3600」や「セロキサイド2021P」、クレイトンポリマー社製の商品名「L−207」、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート828」などがある。
エポキシ基を有する紫外線硬化性オリゴマーの数平均分子量は、限定する訳ではないが、100〜50,000の範囲であり、好ましくは100〜30,000の範囲、100〜20,000の範囲である。分子量が大き過ぎると、加工適性が劣るものとなり、シーリング材の施工作業性が悪くなる。分子量が低過ぎると、十分な柔軟性が得られず、シーリング機能が低下する。
【0012】
カチオン重合型の紫外線硬化性化合物に対する重合開始剤としては、通常の紫外線硬化性化合物や組成物に対する各種の重合開始剤のうち、カチオン性の紫外線重合開始剤を使用する。カチオン重合開始剤の市販品としては、旭電化工業社製の商品名「アデカオプトマーSP−150」、ダウケミカル社製の「UVI―6692」などがある。
カチオン重合型の紫外線硬化性化合物の使用材料や組成配合に合わせて、適切なカチオン性紫外線重合開始剤を選択して使用すればよい。
カチオン性紫外線重合開始剤としては、たとえば、オニウム塩が使用できる。これは、オニウムイオンと陰イオンとから構成される有機塩であり、紫外線が照射されることによって、ルイス酸とブレンステッド酸(プロトン酸)とを発生する。
【0013】
オニウム塩の具体例として、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリクミルヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ビス(4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル)フルフィド、ビス(4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)フルフォニオ)−フェニル)フルフィド、η5−2、4−(シクロペンタジェニル)(1、2、3、4、5、6−η−(メチルエチル)ベンゼン)−鉄(1+)が挙げられる。
陰イオンの具体例として、テトラフルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネートが挙げられる。
【0014】
前記カチオン性紫外線重合開始剤は、200〜400nmの波長で光分解するものが好ましい。その理由としては、長波長の紫外線の方が短波長の紫外線よりも物質へのエネルギー伝播が良好に行なわれるため、紫外線硬化性樹脂の深部まで硬化させるためには200nmより短波長の紫外線で光分解する開始剤は好ましくなく、他方、400nmよりも長波長で光分解する開始剤は、深部硬化性の観点からは好ましいが、可視領域の光でも光分解するおそれがあり、貯蔵安定性に欠けるからである。
前記カチオン性紫外線重合開始剤は、カチオン重合型の紫外線硬化性化合物100重量部に対し、0.1重量部以上の割合で配合するのが好ましい。0.1重量部未満では、重合反応の反応性が低く、紫外線硬化性樹脂の深部まで十分に硬化されないおそれがある。
【0015】
〔ラジカル重合型の紫外線硬化性化合物〕
紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性化合物または組成物のうちラジカル重合によって重合、すなわち、硬化が行われるものを言い、例えば、紫外線硬化性化合物として、1分子中の両末端にアクリレート基を2個以上持つ多官能アクリレートやメタクリレートを用いることが好ましい。その数平均分子量は、100〜50,000の範囲が一般的であるが、好ましくは、100〜30,000である。このような紫外線硬化性化合物を用いたラジカル重合型オリゴマーの市販品としては、BASF社製の商品名「AcResin203UV」、荒川化学工業社製の商品名「ビームセット101」や「ビームセット505A−6」、日本合成化学工業社製の商品名「紫光UV−3000B」などがある。
【0016】
ラジカル重合型の紫外線硬化性化合物は、分子量が大き過ぎると粘度が高くなり、シーリング材とした時の塗工適性が悪くなる。また、分子量が低過ぎると充分な柔軟性が得られずシーリング機能が低下する。
ラジカル重合型の紫外線硬化性化合物に対する重合開始剤としては、ラジカル性の紫外線重合開始剤が用いられる。
ラジカル性の紫外線重合開始剤としては、公知のものを使用できるが、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類及びキサントン類等が挙げられる。
【0017】
ラジカル重合開始剤の市販品としては、チバガイギー社製の商品名「イルガキュア184」などがある。
ラジカル性の紫外線重合開始剤は、前記カチオン性紫外線重合開始剤と同様の理由により、200〜400nmの波長で光分解するものが好ましい。
前記ラジカル性紫外線重合開始剤は、ラジカル重合型の紫外線硬化性化合物100重量部に対し、0.1重量部以上の割合で配合するのが好ましい。0.1重量部未満では、重合反応の反応性が低く、紫外線硬化性樹脂の深部まで十分に硬化されないおそれがある。
〔各種添加剤〕
本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を害しない範囲で、その他の各種添加物を使用しても良い。
【0018】
本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化に続き、熱硬化を施すことにより最終硬化させる、いわゆるデュアルキュア型の樹脂組成物であってもよく、この場合、熱重合開始剤が用いられる。
前記熱重合開始剤としては、公知のものを使用できるが、具体的には、紫外線重合開始剤と同様、オニウム塩等が挙げられる。
熱重合開始剤の市販品としては、三新化学工業社製の商品名「SI−80L」や「SI−100L」などがある。
前記熱重合開始剤は、80〜180℃の温度で熱分解するものが好ましい。その理由としては、80℃未満では貯蔵安定性が悪くなるおそれがあり、180℃を超えると硬化不良を起こすおそれがあるからである。
【0019】
前記熱重合開始剤は、例えば、カチオン重合型の熱重合開始剤を用いる場合であれば、前記カチオン重合型の紫外線硬化性化合物100重量部に対し、0.1重量部以上の割合で配合するのが好ましい。0.1重量部未満では、硬化不良を起こすおそれがある。
カチオン重合型および/またはラジカル重合型の紫外線硬化性化合物に、さらにポリオール化合物やエポキシ樹脂を組み合わせても良い。このように、ポリオール化合物やエポキシ樹脂などを組み合わせれば、接着性や耐久性といった特性を紫外線硬化性樹脂組成物に付与することができる。
前記ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどの各種ポリオールが使用できる。
【0020】
前記ポリエステルポリオールとして、多価アルコールと多塩基性カルボン酸との縮合物等からなるポリエステルポリオールが使用できる。多価アルコールの具体例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、ヘキサングリコール、トリメチロールプロパンが挙げられる。多塩基性カルボン酸の具体例として、アジピン酸、グルタル酸、セバチン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、これらの酸類の2量体(ダイマー酸)、ピロメリット酸が挙げられる。
前記ポリエーテルポリオールとして、アルキレンオキサイドの1種もしくは2種以上を、2個以上の活性水素を持つ化合物に付加重合させて得られた生成物が使用できる。アルキレンオキサイドの具体例として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランが挙げられる。2個以上の活性水素を持つ化合物の具体例として、先に挙げた多価アルコール、多塩基性カルボン酸が挙げられるほか、エチレンジアミン、ヘキサジアミンなどのアミン類、エタノールアミン、プロパノールアミン等のアルカノールアミン、レゾルシン、ビスフェノール等の多価フェノールが挙げられる。
【0021】
前記ポリカーボネートポリオールとして、有機カーボネートと、脂肪族ジオールなどの1種以上のジオールとのエステル交換反応によって得られたものが使用できる。脂肪族ジオールの具体例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。
前記ポリオレフィンポリオールとして、ポリオレフィン系飽和炭化水素骨格(炭素鎖数150〜200)と分子末端に反応性の1級水酸基を有するものが使用できる。
前記エポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものが使用され、具体的には、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、テトラプロモビスフェノールAの難燃タイプ、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型のプロピレンオキシド付加物やエチレンオキシド付加物などのグリシジル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアネート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などの線状脂肪族エポキシ樹脂;アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクルジエポキシカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンオキシドなどの脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0022】
カチオン重合型および/またはラジカル重合型の紫外線硬化性化合物に、他の成分を組み合わせて用いる場合の3者の組成配合は、限られないが、好ましくは、カチオン重合型および/またはラジカル重合型の紫外線硬化性化合物20〜80重量%、ポリオール10〜40重量%、エポキシ樹脂10〜40重量%からなるものが使用できる。好ましくは、紫外線硬化性化合物30〜70重量%、ポリオール15〜35重量%、エポキシ樹脂15〜35重量%からなるものである。
紫外線のみでなく、近赤外線による硬化性をも高めるため、増感剤が用いられても良い。
【0023】
前記増感剤の具体例としては、カルコン誘導体やジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ−ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体等が挙げられる。
【0024】
〔紫外線硬化性樹脂組成物の用途〕
本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば、シーリング材として好適に用いられる。この場合、基本的には、通常のシーリング材と共通する技術が適用できる。
通常、シーリング機能を付与する部材や装置機器のシーリング面に、シーリング材を供給することで、シーリング面にシーリング体を形成させ、このシーリング面に配置されたシーリング体が、別の部材のシーリング面に当接して、シーリング機能すなわち封止機能を果たす。
以下、図を用いて、シーリング材を筐体に使用した場合を例として、その施工方法を具体的に説明する。
【0025】
筐体は、複数の鋼板を組み合わせることによって構成され、図1は、シーリング材1塗布後の斜視図であり、特に、天板2と側板3との接合部分に着目した図である。
まず、図1に示すように、天板2と側板3を組み合わせてスポット溶接を行ない、スポット溶接部4により接合する。図示しないが、他の接合部分についても、同様にスポット溶接が行なわれている。
次に、上記のように各部材がスポット溶接により接合して構成された筐体に対し、シーリングを行なう。シーリング材1として用いる本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、通常、液状ペーストのため、押し出し型塗付機や櫛目へらなどを用いて塗付することができる。天板2(側板3の上面)の外周全体にわたってシーリング材1が注入され、天板2と側板3の間隙にシーリング材1が流れ込む。シーリング材1が液状ペーストであるが故に、全体に隙間なく充填されることになる。さらに、シーリング後に凹凸がある場合は、櫛目へらなどで均したりして、表面を平滑にしてもよい。また、硬化させた後に、サンドペーパーなどで凹凸を削ることにしても良い。
【0026】
側板エッジ部分5に関しては、メッキ処理が施されていないことが多いため、鋼板の生地が露出していることがある。静電塗装だけを塗付する状態になると、この生地面に塗装がかからない場合があり、そこから錆が発生してしまうことがあるが、図1に示すように、シーリング材1を側板のエッジ部分5にまできちんと注入しておくことによって、防錆効果を得ることが可能となる。同様にして、側板3同士および側板3と図示しない底板もシーリングされる。
その後、紫外線を照射させ硬化皮膜を得る。
シーリング材の吐出と紫外線照射とは、実質的に同時に開始される場合もある。シーリング材の吐出が十分に行なわれたあとで、紫外線照射を行なうこともできる。
【0027】
紫外線照射としては、基本的に、通常の紫外線硬化組成物に対する紫外線硬化処理と同様の装置や処理条件が適用できる。
照射する紫外線として、波長200〜400nmの紫外線を、照射強度1〜10,000mW/cmで照射することができる。
シーリング体が形成されたシーリング面を連続走行させながら、固定設置された紫外線照射手段で紫外線を照射することができる。シーリング面の走行速度と紫外線の強さとを調整することで、単位時間当たりの照射量や照射時間が調節できる。
勿論、シーリング体は固定状態にしたまま、紫外線照射ランプや紫外線ビームを移動させることもできる。
【0028】
前段階の紫外線照射により、瞬時に硬化が完了する場合だけでなく、紫外線照射により1段階の硬化が進行し、その後、さらに熱処理が行なわれることで最終硬化する、いわゆるデュアルキュア型の紫外線硬化性樹脂組成物も本発明の範囲に含まれる。
デュアルキュア型の紫外線硬化性樹脂組成物である場合における前記熱処理は、特に限定するわけではないが、例えば、130〜200℃で20〜60分間行なうことができる。
紫外線により一段階目の硬化が瞬時に行なわれるため、通常の熱硬化性樹脂と異なり、熱硬化前に移送しても欠膠部の問題などは生じない。したがって、静電塗装の際の塗料の焼付け処理を利用して、デュアルキュア型の紫外線硬化性樹脂組成物を最終硬化させることもでき、このようにすれば、新たに加熱のための設備を準備したり、加熱のために余分な時間を要することもない。
【0029】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物をシーリング材として用いる場合、特に、屋外などの過酷な環境で使用される場合に、優れた性能を発揮できる。水濡れなど水との接触が避けられない環境や、常温を大きく超える高熱状態になる環境においても、優れたシーリング機能を発揮する。
具体的には、例えば、配電盤、冷蔵庫、自動販売機、エアコン室外機、給湯器、自動車などの筐体全般に使用でき、特に、本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は密着性が強く防錆機能を発揮するため、金属製の筐体に好適に使用できる。
〔その他の用途〕
本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、シーリング材以外にも、例えば、接着などに用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
〔評価試験1〕
以下のようにして、実施例1〜10の紫外線硬化性樹脂組成物、比較例1の1液型熱硬化性エポキシ樹脂、比較例2の湿気硬化性樹脂、をそれぞれ準備し、以下の評価試験を行なった。
<初期粘度>
ブルックフィールドHB形粘度計にて、27号ローターで試験を行った。
【0031】
<硬度>
上記実施例1〜10の樹脂組成物および比較例1〜2の樹脂を2mm厚さに成型しシートを作成した。次に、シート状の実施例1〜10にかかる紫外線硬化性樹脂組成物について、365nmの紫外線を照射強度3300mW/cmで照射して硬化させた。また、それとは別に、前記シート状の実施例1〜10にかかる紫外線硬化性樹脂組成物に対して、365nmの紫外線を照射強度3300mW/cmで照射した後、さらに200℃で20分間加熱することにより、硬化させた。
比較例1の1液型熱硬化性エポキシ樹脂については、シート状とした後、180℃で30分間加熱することにより硬化を行なった。
【0032】
比較例2の湿気硬化性樹脂については、シート状とした後、温度23℃、相対湿度50〜60%の雰囲気中で24時間放置することにより硬化を行なった。
それぞれについて、高分子計器製アスカー硬度AおよびDにて(ショアAおよびD)硬度を測定した。
<深部硬化性>
上記実施例1〜10の樹脂組成物および比較例1〜2の樹脂を透明のカップに標線10mmの位置まで注ぎ、それぞれについて、上記の硬度測定時と同じ条件(実施例1〜4は紫外線照射のみ、実施例5〜10は紫外線照射および加熱により硬化)で、硬化を行なった後、それぞれの硬化厚さを測定した。
【0033】
結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
<実施例1〜10>
上の表1に示す組成配合で実施例1〜10の紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。
<比較例1>
セメダイン社製の1液型熱硬化性エポキシ樹脂「EP−106NL」(商品名)を比較例1とした。
<比較例2>
日立化成ポリマー社製の湿気硬化性樹脂「ハイボン4832FA」(商品名)を比較例2とした。
【0036】
〔評価試験2〕
実施例1〜10の紫外線硬化性樹脂組成物、比較例1の1液型熱硬化性エポキシ樹脂、比較例2の湿気硬化性樹脂を用いて、筐体を作成し、以下の評価試験を行なった。
なお、筐体はいずれもボンデ鋼板を基材として作成した。そして、実施例1〜10については、鋼板の隙間部分に紫外線硬化性樹脂を注入し、365nmの紫外線を照射強度3300mW/cmで照射することにより硬化させた後、焼き付け塗料を用いて、静電塗装により微粒子状の塗料を筐体に吸着させ、焼付け処理を行なうことにより得るようにした。このとき、実施例1〜4については、紫外線照射のみで最終硬化し、デュアルキュア型の実施例5〜10については、静電塗装の際の焼付け処理により最終硬化した。
【0037】
比較例1、2については、紫外線照射に代えて、比較例1は180℃で30分間加熱することにより、比較例2は、温度23℃、相対湿度50〜60%の雰囲気中で24時間放置することにより、それぞれ硬化を行ない、前記硬化方法以外は実施例1〜10と同様にして、各筐体を得るようにした。
<防錆性>
筐体に35重量%の塩水を240時間または1000時間噴霧したときの、各筐体の防錆性を、以下の基準により評価した。
35重量%の塩水を240時間および1000時間噴霧し、錆の発生が確認されない状態を○、シール周辺が若干薄く変色しているものを△、完全に赤錆が発生したものを×とした。
【0038】
結果を表1に併せて示す。
〔性能総合評価〕
本発明にかかる、実施例1〜10の紫外線硬化性樹脂組成物は、シーリング材その他の用途に用いる際に作業性の点で問題の無い粘度であり、また、硬度についても充分なものであった。
比較例1の熱硬化性エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂であるため、加熱のための大掛かりな設備や時間が必要となってしまい、実施例1〜10にかかる紫外線硬化性樹脂のように簡易かつ瞬時に硬化を行なうことができない。そのため、硬化させるためには、まず、加熱処理するための設備へと筐体を移送する必要があり、その際に、液状であるシーリング材が流れたり、欠膠部が生じたりといった問題が生じてしまう。このように欠膠部が発生すると、該欠膠部から錆が生じてしまうため、防錆性にも劣ったものとなってしまう。実際に、比較例1の熱硬化性エポキシ樹脂を用いた筐体は、実施例1〜10の紫外線硬化性樹脂組成物を用いた筐体のいずれと比較しても、防錆性が劣っている。
【0039】
比較例2は、深部まで湿気が浸入できないことにより、硬化不良の問題が生じている。また、硬化不良により、防錆性にも劣ったものとなってしまっている。
なお、表1には示していないが、シーリング材を用いずに溶接のみによってボンデ鋼板を接合し、次いで、焼付け塗料を用いて静電塗装により、微粒子状の塗料を筐体に吸着させ、焼付け処理を行なうことにより、筐体を得、上記した防錆性の評価に準じて防錆性を評価した。この場合、やはり、240時間、1000時間のいずれについても、評価は×となることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば、配電盤、冷蔵庫、自動販売機、エアコン室外機、給湯器、自動車などにシーリング材として使用でき、特に、金属製筐体のシーリングに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかる紫外線硬化性樹脂組成物をシーリング材として用いた筐体の一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 シーリング材
2 天板
3 側板
4 スポット溶接部
5 側板エッジ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合型および/またはラジカル重合型の紫外線硬化性化合物を含み、前記紫外線硬化性化合物に対し紫外線重合開始剤を配合してなる、紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記紫外線硬化性化合物に対し熱重合開始剤も配合してなる、請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
シーリング材として用いられる、請求項1または2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
シーリング材として請求項1または2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物が用いられている、筐体。
【請求項5】
前記紫外線硬化性樹脂組成物の硬化は、紫外線硬化に続き、熱硬化を施すことにより行われている、請求項4に記載の筐体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−56821(P2008−56821A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236415(P2006−236415)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000190943)新田ゼラチン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】