説明

紫外線遮蔽剤とそれを含有する紫外線遮蔽剤含有分散液、及び化粧料

【課題】紫外線遮蔽効果が高く、透明性に優れ、無機系紫外線遮蔽剤と有機系紫外線吸収剤とを混合して処方することが可能であり、油中水型(W/O型)は勿論のこと、水中油型(O/W型)の化粧料への配合が可能である、紫外線遮蔽剤とそれを含有する紫外線遮蔽剤含有分散液及び化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の紫外線遮蔽剤は、有機系紫外線吸収剤を含有し平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である第1の樹脂粒子と、紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を含有し平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である第2の樹脂粒子とを含む紫外線遮蔽剤であって、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物が、質量比で1:45〜3:1の範囲で含有されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線遮蔽剤とそれを含有する紫外線遮蔽剤含有分散液、及び化粧料に関し、更に詳しくは、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア化粧品等の各種化粧品、特に、紫外線遮蔽能が必要とされるスキンケア化粧品のホワイトニング、メイクアップ化粧品のベースメイク、ボディケア化粧品のサンスクリーンに用いて好適な紫外線遮蔽剤とそれを含有する紫外線遮蔽剤含有分散液及び化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品に用いられている紫外線遮蔽剤としては、無機系紫外線遮蔽剤と有機系紫外線吸収剤があり、用途に応じて使い分けられている。無機系紫外線遮蔽剤と有機系紫外線吸収剤とは、それぞれの種類に応じて遮蔽することができる紫外線の波長が異なるので、これらを適宜組み合わせた化粧料が処方されている。
【0003】
無機系の紫外線遮蔽剤は、物理的な仕組みで紫外線を散乱または反射させるので、皮膚への影響が少なく、幼児から大人まで幅広い層のサンスクリーン剤に使用されている。
【0004】
しかし、無機系の紫外線遮蔽剤である酸化亜鉛や酸化チタンを化粧料に含有させた場合に、その平均分散粒径が0.1μm以上のものを使用すると、化粧料が白化して透明感を損ない、自然な仕上がりにすることができないという問題があった。一方で、化粧料中に酸化亜鉛等を0.1μm以下の平均分散粒径で分散させることは難しい。また分散させることができたとしても、このような酸化亜鉛等の微粒子は表面活性が高いため、皮膚と接触した時にざらつく感触になっていた。
【0005】
一方、有機系の紫外線吸収剤は、化学的にエネルギーを吸収して熱エネルギーに変換し、紫外線が皮膚細胞に浸透するのを防いでいる。また無機系の紫外線遮蔽剤と比較すると少量でも紫外線遮蔽効果が高いことから、大人用サンスクリーンとして使用されている。
【0006】
しかし、有機系の紫外線吸収剤は水に不溶であるため、その紫外線吸収効果を発揮させるためには特定の溶媒に溶かす必要があり、化粧品の処方自由度を下げるとともに、化粧品に配合した時にべとつくという問題があった。
【0007】
そして、無機系紫外線遮蔽剤と有機系紫外線吸収剤とを併用すると、金属イオンの影響により有機系紫外線吸収剤が再結晶化して、化粧料の変質、変色、使用感の低下を引き起こすことから、無機系紫外線遮蔽剤と有機系紫外線吸収剤とを自由に混合して化粧料を処方することができないという問題点があった。
【0008】
上記問題を解決するために、アクリル系樹脂に紫外線遮蔽能を有する金属酸化物粒子を内包させて、平均粒子径が0.1μm〜1μmの樹脂粉体とし、透明性が高く使用感のよい樹脂粉体が提案されている(特許文献1)。また、この樹脂粉体を用いることにより、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物粒子が直接接触することを防ぐことができるので、有機系紫外線吸収剤の結晶化等を抑制していた。
【0009】
また、有機系紫外線吸収剤が溶解された(メタ)アクリル系樹脂を形成するモノマーを水性媒体中に分散させて重合反応を行うことにより形成された有機系紫外線吸収剤を含有する(メタ)アクリル系樹脂からなる芯材部と、該芯材部の表面に形成された有機系紫外線吸収剤を含有しない(メタ)アクリル系樹脂からなる表層部とを有する化粧料用粒子とし、有機系紫外線吸収剤の皮膚刺激性を抑制する樹脂粉体が提案されている(特許文献2)。この樹脂粉体を用いることにより、有機系紫外線吸収剤が金属酸化物と直接接触することを防ぐので、有機系紫外線吸収剤の結晶化等を抑制していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2011/034032号
【特許文献2】特開平07−291837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を内包する樹脂粒子と有機系紫外線吸収剤を併用しようとすると、有機系紫外線吸収剤は水に不溶なことから、その紫外線遮蔽機能を発揮させるためには特定の溶媒に溶かす必要があった。そのため、特に水系化粧料を混合処方することが難しく、化粧料の処方の自由度が低下するという問題点があった。また、金属酸化物を内包する樹脂粒子と有機系紫外線吸収剤を併用したサンスクリーン剤であっても、光老化の原因となるUVA波(波長320〜400nm)を十分に遮蔽することができないという問題があった。
【0012】
一方、特許文献2の有機系紫外線吸収剤を内包する樹脂粒子と紫外線遮蔽能を有する金属酸化物粒子とを併用しようとすると、金属酸化物粒子の一次粒子径や化粧料中における分散粒径が大きい場合に化粧料の透明性が低下するという問題があった。また、有機系の紫外線吸収剤は一般的に化粧料に配合できる量が制限されており、有機系紫外線吸収剤単独での紫外線遮蔽効果が十分でないという問題があった。
そのため、有機系紫外線吸収剤を内包する樹脂粒子と紫外線遮蔽能を有する金属酸化物粒子を併用したサンスクリーン剤であっても、光老化の原因となるUVA波(波長320〜400nm)のうち、特に波長380nm〜400nmの紫外線を十分に遮蔽することができないという問題があった。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、特に波長380nm〜400nmの紫外線遮蔽効果が高く、透明性に優れ、無機系紫外線遮蔽剤と有機系紫外線吸収剤とを混合して処方することが可能であり、油中水型(W/O型)は勿論のこと、水中油型(O/W型)の化粧料への配合が可能である、紫外線遮蔽剤とそれを含有する紫外線遮蔽剤含有分散液及び化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、有機系紫外線吸収剤を含有する樹脂粒子と紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を含有する樹脂粒子の平均粒径をそれぞれ所定の大きさに調整し、かつこれらの樹脂粒子を所定の比率範囲で混合することにより、波長380nm〜400nmの紫外線遮蔽能が高く、透明性に優れ、水系の化粧料への配合も容易な紫外線遮蔽剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の紫外線遮蔽剤は、有機系紫外線吸収剤を含有し平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である第1の樹脂粒子と、紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を含有し平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である第2の樹脂粒子とを含む紫外線遮蔽剤であって、前記有機系紫外線吸収剤と前記金属酸化物が、質量比で1:45〜3:1の範囲で含有されてなることを特徴とする。
また本発明の紫外線遮蔽剤含有分散液は、上記紫外線遮蔽剤を含有することを特徴とする。
また本発明の化粧料は、上記紫外線遮蔽剤及び上記紫外線遮蔽剤含有分散液の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紫外線遮蔽剤によれば、有機系紫外線吸収剤を含有した第1の樹脂粒子と紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を含有した第2の樹脂粒子を、それぞれ所定の平均粒径に調整したものを所定の混合比で含有させていることで、有機系紫外線吸収剤と無機酸化物の紫外線遮蔽能に相乗効果が得られ、それぞれの樹脂粒子を単独で用いた場合と比較して、波長380nm〜400nmの紫外線をより遮蔽することができる。
【0017】
また、有機系紫外線吸収剤を特定の溶媒に溶かす必要が無いので、油中水型(W/O型)は勿論のこと、従来では処方が困難であった水中油型(O/W型)、化粧水、日焼け止めジェル等の水系化粧料への配合を行うことができ、化粧料の処方の自由度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の紫外線遮蔽剤に用いられる金属酸化物粒子は一次粒子が0.1μm以下の微粒子であるため、化粧料に配合して塗布したときに高い透明性が得られる。
また、本発明の紫外線遮蔽剤に用いられる無機粒子は一次粒子が0.1μm以下の微粒子であるため、化粧料に配合して塗布したときに高い透明性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1及び比較例1、2それぞれのモイスチャージェルの分光透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の紫外線遮蔽剤とそれを含有する紫外線遮蔽剤含有分散液及び化粧料を実施するための形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り本発明を限定するものではない。
【0021】
[紫外線遮蔽剤]
本実施形態の紫外線遮蔽剤は、有機系紫外線吸収剤を含有し平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である第1の樹脂粒子と、紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を含有し平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である第2の樹脂粒子とを含む紫外線遮蔽剤であって、前記有機系紫外線吸収剤と前記金属酸化物が、質量比で1:45〜3:1の範囲でなることを特徴とする。
【0022】
有機系紫外線吸収剤を含有する第1の樹脂粒子(以下、紫外線吸収剤含有樹脂粒子と略す場合がある)と、紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を含有する第2の樹脂粒子(以下、金属酸化物含有樹脂粒子と略す場合がある)は、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物が質量比で1:45〜3:1の範囲、好ましくは、1:6〜3:1の範囲で混合されている。この範囲で混合することにより、紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子の紫外線遮蔽効果の相乗効果が得られ、単独でこれらの樹脂粒子を用いる場合よりも、波長380nm〜400nmの紫外線遮蔽効果が高まる。
【0023】
「紫外線吸収剤含有樹脂粒子(第1の樹脂粒子)」
本実施形態の紫外線吸収剤含有樹脂粒子の平均粒径は、0.1μm以上かつ1μm以下であり、0.1μm以上かつ0.6μm以下が好ましく、0.1μm以上かつ0.4μm以下がより好ましい。ここで、樹脂粒子の平均粒径を上記範囲とすることにより、紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子の紫外線遮蔽効果の相乗効果が得られ、単独でこれらの樹脂粒子を用いる場合よりも、波長380nm〜400nmの紫外線遮蔽効果が高まる。
【0024】
ここで紫外線吸収剤含有樹脂粒子の平均粒径とは、紫外線吸収剤含有樹脂粒子を5質量%、ポリエーテル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング(株)社製、SH3775M)10質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)社製、SH245)を、サンドミルで2500回転3時間分散させた分散液を、動的光散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LB−550)を用いて分散粒径を測定した時の累積体積粒度分布が50体積%(D50)の粒子径を意味する。
なお、上記の測定方法により得られるD50の分散粒径は、走査型電子顕微鏡で紫外線吸収剤含有樹脂粒子を観察したときの樹脂粒子の一次粒子径とほぼ一致する。したがって、紫外線吸収剤含有樹脂粒子の平均粒径として、紫外線吸収剤含有樹脂粒子の平均一次粒子径を測定してもよい。
【0025】
紫外線吸収剤含有樹脂粒子中における有機系紫外線吸収剤の含有率は、0.1質量%以上かつ80質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上かつ50質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上かつ30質量%以下である。
【0026】
ここで、有機系紫外線吸収剤の樹脂中における含有率が0.1質量%未満では、有機系紫外線吸収剤の量が少なすぎて、有機系紫外線吸収剤が有する紫外線遮蔽機能を十分に発現することができなくなる。その結果、紫外線遮蔽機能を十分に発現させようとすると大量の樹脂粒子が必要となり、化粧料を作製する際の材料設計が極めて難しくなるので好ましくない。一方、含有率が80質量%を超えると、有機系紫外線吸収剤の量が樹脂に対して相対的に高くなりすぎ、その結果、樹脂中における有機系紫外線吸収剤の分散性が低下し、紫外線吸収剤含有樹脂粒子の組成の均一性が損なわれるので好ましくない。
【0027】
<樹脂>
紫外線吸収剤含有樹脂粒子に用いられる樹脂としては、モノマーが有機系紫外線吸収剤を溶解させることができるものであり、かつモノマーの重合体の透明度が高く、化粧料の原料として使用可能な樹脂であれば特に限定されない。
このような樹脂モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルスチレン共重合体、アクリルアミド共重合体、アクリルエポキシ共重合体、アクリルウレタン共重合体、アクリルポリエステル共重合体、シリコンアクリル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等のモノマーを用いることができる。これらの中でも(メタ)アクリル樹脂のモノマーが透明性に優れている点で好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル樹脂のモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0029】
また、上記アクリルと組み合わせて重合させることができるモノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、N−ビニルピロビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0030】
これらの樹脂モノマーは、1種のみを単独で重合して用いてもよく、2種以上を組み合わせて重合して用いてもよい。例えば、(メタ)アクリル樹脂のモノマーとそれ以外のモノマーを組み合わせる場合には、透明性の観点から樹脂モノマー中の(メタ)アクリル樹脂のモノマーの含有率が10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0031】
<有機系紫外線吸収剤>
有機系紫外線吸収剤としては、上記の樹脂モノマーに溶解させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ジベンゾイルメタン系化合物、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体等が挙げられる。これらの有機系紫外線吸収剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
紫外線吸収剤含有樹脂粒子はオルガノシロキサンにより表面処理されていてもよい。紫外線吸収剤含有樹脂粒子の表面をオルガノシロキサンで処理することにより撥水効果が得られるため、汗などに流されにくくなったり、油剤とのなじみをよくしたり、皮膚との親和性を高めたりすることができる。
オルガノシロキサンの量は、当該紫外線遮蔽剤含有樹脂粒子に対して1質量%以上かつ20質量%以下であることが好ましい。
【0033】
表面処理に用いるオルガノシロキサンとしては、ジアルキルアルコキシシラン化合物が挙げられる。中でも、オルガノポリシロキサン、あるいは、オルガノポリシロキサンをアルキル基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、アルキル珪素化合物の群から選択された1種または2種以上により変性した変性オルガノポリシロキサンが好適に用いられる。特に、ジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)、このジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)を変性した変性ジメチルポリシロキサン(変性シリコーンオイル)が好適に用いられる。
【0034】
「金属酸化物含有樹脂粒子(第2の樹脂粒子)」
本実施形態の金属酸化物含有樹脂粒子の平均粒径は、0.1μm以上かつ1μm以下であり、0.1μm以上かつ0.6μm以下が好ましく、0.1μm以上かつ0.4μm以下がより好ましい。ここで、金属酸化物含有樹脂粒子の平均粒径を上記範囲とすることにより、紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子の紫外線遮蔽効果の相乗効果が得られ、単独でこれらの樹脂粒子を用いる場合よりも、380nm〜400nmの紫外線遮蔽効果が高まる。
【0035】
ここで金属酸化物粒子含有樹脂粒子の平均粒径とは、上記紫外線吸収剤含有樹脂粒子同様、金属酸化物含有樹脂粒子を5質量%、ポリエーテル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング(株) SH3775M)10質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン(東レ・ダウコーニング株式会社製、SH245)を、サンドミルで2500回転3時間分散させた分散液を、動的光散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LB−550)を用いて分散粒径を測定し、累積体積粒度分布が50体積%(D50)の粒子径を意味する。
なお、上記の測定方法により得られるD50の分散粒径は、走査型電子顕微鏡で金属酸化物含有樹脂粒子を観察したときの樹脂粒子の一次粒子径とほぼ一致する。したがって、金属酸化物含有樹脂粒子の平均粒径として、金属酸化物含有樹脂粒子の平均一次粒子径を測定してもよい。
【0036】
<金属酸化物粒子>
紫外線遮蔽能を有する金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄の群から選択される1種または2種以上を含む紫外線遮蔽能を有する粒子である。金属酸化物の平均一次粒子径は0.003μm以上かつ0.1μm以下、より好ましくは0.01μm以上かつ0.05μm以下、さらに好ましくは0.02μm以上かつ0.04μm以下である。
【0037】
金属酸化物の平均一次粒子径が0.003μm未満では、結晶化度が低下して紫外線遮蔽機能を発現しなくなり、また、平均一次粒子径が0.1μmを超えると、粒子の可視光線に対する散乱係数が大きくなるために、透明性が著しく低下し、その結果、可視光線に対する光透過性が低下し、透明性が悪くなるので、好ましくない。
【0038】
金属酸化物は、シリカ、アルミナ、オルガノポリシロキサンの群から選択される1種または2種以上により粒子を表面処理したものを用いてもよい。これらシリカ、アルミナ、オルガノポリシロキサンの群から選択される1種または2種以上により金属酸化物を表面処理した場合、モノマーに分散させるときの分散安定性が向上するため好ましい。
【0039】
金属酸化物の樹脂粒子中における含有率は、1質量%以上かつ80質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上かつ60質量%以下である。
【0040】
ここで、金属酸化物の樹脂粒子中における含有率が1質量%未満では、金属酸化物の量が少なすぎて、金属酸化物が有する紫外線遮蔽機能を十分に発現することができなくなる。したがって、紫外線遮蔽機能を十分に発現させようとすると、大量の金属酸化物含有樹脂粒子が必要となり、化粧品を作製する際の材料設計が極めて難しくなる。一方、含有率が80質量%を超えると、金属酸化物の量が樹脂に対して相対的に高くなり、その結果、樹脂中における金属酸化物の分散性が低下し、金属酸化物含有樹脂粒子の組成の均一性が損なわれるので好ましくない。
【0041】
樹脂はモノマーの重合体の透明度が高く、化粧料の原料として使用可能な樹脂であれば特に限定されない。そして、上述の<樹脂>の項目にて説明した樹脂材料と全く同様のモノマーを用いることができるので、説明を省略する。
【0042】
金属酸化物含有樹脂粒子はオルガノシロキサンにより表面処理されていてもよい。オルガノシロキサンの量は当該金属酸化物樹脂粒子に対して1質量%以上かつ20質量%以下であることが好ましい。
このオルガノシロキサンとしては、ジアルキルアルコキシシラン化合物が挙げられる。中でも、オルガノポリシロキサン、あるいは、オルガノポリシロキサンをアルキル基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、アルキル珪素化合物の群から選択された1種または2種以上により変性した変性オルガノポリシロキサンが好適に用いられる。特に、ジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)、このジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)を変性した変性ジメチルポリシロキサン(変性シリコーンオイル)が好適に用いられる。
【0043】
金属酸化物含有樹脂粒子の表面をオルガノシロキサンにより処理することにより、以下のような利点が得られる。
まず、上記金属酸化物として酸化亜鉛を用いる場合、酸化亜鉛は水に微量溶解する性質があるが、金属酸化物含有樹脂粒子の表面をオルガノシロキサンで表面処理しておくことにより、金属酸化物含有樹脂粒子からの酸化亜鉛の溶出を効果的に抑制することができる。また上記金属酸化物として酸化チタンを用いる場合には、オルガノシロキサンで表面処理することで、酸化チタンの表面活性を抑制する効果が得られる。
【0044】
有機系紫外線吸収剤と金属酸化物とは、各材料が吸収または遮蔽することのできる波長領域を考慮して、適宜組み合わせて用いればよい。
例えば、酸化亜鉛は、n型の金属酸化物半導体であり、そのバンド構造におけるバンドギャップエネルギーは3.2eVである。そこで、この酸化亜鉛に、そのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光が照射されると、電子がその光エネルギーを吸収して価電子帯から伝導帯へ励起される。酸化亜鉛の吸収端は波長380nm付近であるから、酸化亜鉛は、長波長紫外線(UVA)から中波長紫外線(UVB)の波長領域を吸収することができる。以上のことから、長波長紫外線(UVA)を遮蔽することができる有機系紫外線吸収剤や中波長紫外線(UVB)を遮蔽することができる有機系紫外線吸収剤と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0045】
また、酸化チタンは、そのバンド構造におけるバンドギャップエネルギーが3.0eV〜3.2eVにあるが、酸化チタンにおける電子の励起が間接遷移であることから、エネルギーギャップの値から想定される吸収波長よりはるかに低波長側である波長320nm付近から光の吸収が始まる。よって、酸化チタンは中波長紫外線(UVB)の波長領域を遮蔽する効果が強く、長波長紫外線(UVA)を遮蔽することができる有機系紫外線吸収剤と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0046】
有機系紫外線吸収剤と金属酸化物粒子との組み合わせの例としては、波長380nm以下の波長領域を遮蔽することのできる酸化亜鉛と、波長358nm〜360nmの極大吸収を有するアボベンゾンとの組み合わせを挙げることができる。
【0047】
本実施形態において、平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である有機系紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収剤含有樹脂粒子(第1の樹脂粒子)と、平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である紫外線遮蔽能を有する金属酸化物粒子を含有する金属酸化物含有樹脂粒子(第2の樹脂粒子)とを、それらに含まれる有機系紫外線吸収剤と金属酸化物とが所定の質量比(1:45〜3:1)となるように混合した場合に、単独でそれらを用いたときよりも波長380nm〜400nmの紫外線を遮蔽する効果が高まる。このような効果が得られるメカニズムについて、その詳細は不明であるが、次のように考えられる。
【0048】
まず、紫外線吸収剤含有樹脂粒子のみを含む紫外線遮蔽剤の場合、紫外線吸収剤含有樹脂粒子中の有機系紫外線吸収剤によって紫外線が吸収されるが、光は樹脂粒子中をほぼ直線的に通過するので、個々の樹脂粒子における紫外線の吸収効率が低く、そのために、波長380nm〜400nmの紫外線を十分に遮蔽することができないと考えられる。
【0049】
一方、金属酸化物含有樹脂粒子のみを含む紫外線遮蔽剤の場合には、金属酸化物によって紫外線が反射、散乱されながら紫外線が遮蔽される。そのため、紫外線吸収剤含有樹脂粒子のみを含む紫外線遮蔽剤と比較すると、樹脂粒子中を紫外線が通過する時間が相対的に長くなり、金属酸化物と紫外線とが接触する時間も相対的に長くなる。しかし、金属酸化物そのものが380nm〜400nmの範囲の紫外線を遮蔽する能力が低いため、十分に遮蔽することができない。
【0050】
上記に対して、紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子の両方を含有する紫外線遮蔽剤の場合には、入射した光が金属酸化物含有樹脂粒子で反射・散乱されるとともに、紫外線吸収剤含有樹脂粒子で吸収される。金属酸化物含有樹脂粒子で反射された光は紫外線吸収剤含有樹脂粒子に到達し、吸収される。これを繰り返すことにより、本実施形態の紫外線遮蔽剤では金属酸化物による遮蔽と有機系紫外線吸収剤による吸収が何度も行われる。すなわち、金属酸化物の散乱・反射により、紫外線が樹脂粒子を通過する回数が、紫外線吸収剤含有樹脂粒子を単独で用いた場合よりも多くなり、紫外線をより多く遮蔽できると考えられる。これらの効果により、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物による紫外線遮蔽の相乗効果が得られると考えられる。
【0051】
そして、それぞれの樹脂粒子の平均粒径を1μm以下とすることにより、樹脂粒子間に生じる空隙が小さくなるので、樹脂粒子中の金属酸化物と有機系紫外線吸収剤の距離も相対的に近くなる。そのため、有機系紫外線吸収剤による紫外線の吸収と金属酸化物による紫外線の遮蔽が、より多く行われやすくなり、紫外線遮蔽の相乗効果がより得られやすくなるものと考えられる。
【0052】
さらに、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物の質量比を1:45〜3:1とすることで、有機系紫外線による吸収効果と、金属酸化物による遮蔽効果及び散乱、反射効果のバランスがとれることにより、紫外線遮蔽の相乗効果が得られ易くなると考えられる。
上記の効果により、それぞれの樹脂粒子を単独で用いるよりも、本実施形態の紫外線遮蔽剤は波長380nm〜400nmの紫外線遮蔽効果を高めることができると推定される。
【0053】
本実施形態の紫外線遮蔽剤には、用途に応じて、別途上記有機系紫外線吸収剤や上記無機粒子を含有させてもよい。例えば、油中水型(W/O型)等の油系の化粧料の場合は、本実施形態の紫外線遮蔽剤に、別途有機系紫外線吸収剤を添加することにより、有機系紫外線吸収剤含有樹脂粒子の添加量を減らすことができ、より透明性の高い化粧料を得ることができる。
【0054】
[紫外線遮蔽剤の製造方法]
本実施形態の紫外線遮蔽剤は、金属酸化物含有樹脂粒子を製造する工程、紫外線吸収剤含有樹脂粒子を製造する工程、紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子を混合する工程により得られる。
【0055】
「金属酸化物含有樹脂粒子の製造工程」
本実施形態の金属酸化物含有樹脂粒子の製造方法では、まず、紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を、この金属酸化物に対して1質量%以上かつ50質量%以下の分散剤を含む樹脂モノマー中に分散させて樹脂モノマー分散液とする。
次いで、この樹脂モノマー分散液を、この樹脂モノマー分散液に対して、0.1質量%以上かつ10質量%以下の懸濁保護剤、0.01質量%以上かつ5質量%以下のシリコーン系消泡剤及び0.1質量%以上かつ10質量%以下の架橋剤を含む純水中に懸濁または乳化させて分散粒径が0.1μm以上かつ1.2μm以下の懸濁液または乳化液とする。
次いで、この懸濁液または乳化液に、この懸濁液または乳化液に対して0.01質量%以上かつ1質量%以下の重合開始剤を添加して懸濁重合または乳化重合を行うことにより、金属酸化物含有樹脂粒子を生成する。
【0056】
以下、金属酸化物含有樹脂粒子の製造方法における各工程について詳細に説明する。
【0057】
まず、紫外線遮蔽能を有する金属酸化物粒子を、分散剤を含む樹脂モノマー中に分散させて樹脂モノマー分散液とする。
紫外線遮蔽能を有する金属酸化物は、上述の<金属酸化物>の項目にて説明した金属酸化物と全く同様であるから、説明を省略する。
【0058】
<分散剤>
分散剤としては、樹脂モノマーとの親和性に富み、疎水性の高いものがよい。すなわち、分散剤は金属酸化物を被覆することで樹脂モノマーに対する分散を促し、同時に金属酸化物の粒子は比較的に短時間のうちに、ほとんどが単分散状態となり、モノマー分散液中における平均分散粒径(体積分布D50)は0.003μm以上かつ0.1μm以下となる。
また、分散剤は金属酸化物に疎水性を付与するので、金属酸化物が重合体の外に出ず、水相に移行することなく樹脂中に取り込まれるのを助ける。
【0059】
このような分散剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のカルボン酸またはその塩、アルカンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸やポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のリン酸エステルまたはその塩、ラウリルリン酸ナトリウム等のフォスフォン酸またはその塩が挙げられる。
【0060】
特に、本実施形態の紫外線遮蔽剤を化粧料に用いる場合には、これらの分散剤は、同時に化粧料の原料として認められるものでなくてはならない。
分散剤の金属酸化物に対する添加率は、1質量%以上かつ50質量%以下が好ましい。添加率が1質量%未満では、金属酸化物の表面を覆うには少なすぎて十分な金属酸化物の分散状態を得ることができず、一方、50質量%を超えると、これ以上添加率を上げても、さらに分散性を改善することができず、分散剤が無駄になるからである。
【0061】
金属酸化物は、モノマー分散液中に1質量%以上かつ80質量%以下、好ましくは5質量%以上かつ70質量%以下、より好ましくは10質量%以上かつ60質量%以下含有させるのが好ましい。ここで、金属酸化物のモノマー分散液中における含有率が1質量%未満では、このモノマーを重合した樹脂中における金属酸化物の量が少なすぎて、金属酸化物が有する紫外線遮蔽機能を十分に発現することができなくなる。そのため、紫外線遮蔽機能を十分に発現させようとすると、大量の樹脂が必要となり、化粧品を作製する際の材料設計が極めて難しくなる。一方、含有率が80質量%を超えると、金属酸化物の量がモノマーに対して相対的に高くなり、その結果、モノマー分散液及びモノマーを重合した樹脂中における金属酸化物の分散性が低下し、金属酸化物含有樹脂粒子の組成の均一性が損なわれるので、好ましくない。
【0062】
用いられる分散装置としては、分散系に十分な分散エネルギーを与えられるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、ホモジナイザー等が挙げられる。
分散時間としては、30分〜3時間程度が好ましいが、分散状態と製造コストとの兼ね合いで適切な時間を選べばよい。
【0063】
この金属酸化物粒子のモノマー分散液中における平均分散粒径(体積分布D50)は、0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。
ここで、金属酸化物のモノマー分散液中の平均分散粒径が0.1μmを超えると、モノマーを重合させて樹脂とした時に、樹脂中の金属酸化物の可視光線に対する散乱係数が大きく、透明性が著しく低下することとなり、その結果、透明性が低下し、場合によっては失透する虞があるので、好ましくない。
【0064】
次いで、得られた樹脂モノマー分散液を、懸濁保護剤、シリコーン系消泡剤及び架橋剤を含む純水中に懸濁または乳化させ、分散粒径(体積分布D50)が0.1μm以上かつ1.2μm以下の懸濁液または乳化液とする。
【0065】
平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下の金属酸化物含有樹脂粒子を得るためには、回転数は6000rpm〜10000rpmで、10分〜20分程度で懸濁または乳化させるのがよい。
【0066】
<懸濁保護剤>
懸濁保護剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、あるいはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルフェニル硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの中でも、陰イオン性界面活性剤が好ましく、この陰イオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
懸濁保護剤の添加量は、上記の樹脂モノマー分散液に対して0.1質量%以上かつ10質量%以下、より好ましくは、0.1質量%以上かつ2質量%以下である。
【0067】
<シリコーン系消泡剤>
シリコーン系消泡剤としては、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、粉末型、固形型、エマルジョン型、自己乳化型等が挙げられ、これらの中でも、オイルコンパウンド型が好ましい。
このシリコーン系消泡剤の添加量は、上記の樹脂モノマー分散液に対して0.01質量%以上かつ5質量%以下が好ましく、より好ましくは、0.1質量%以上かつ1質量%以下である。
【0068】
シリコーン系消泡剤は、上記の樹脂モノマー分散液に対して0.01質量%以上かつ5質量%以下添加することにより、混合機、撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等の攪拌速度を大幅に上げることができ、樹脂粒子を0.1μm程度まで小さくすることができる。その結果、混合機、撹拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー等の攪拌速度を大幅に上げることができ、その結果、樹脂粒子の製造効率を向上させることができるので、製造コストを大幅に削減することができる。
【0069】
<架橋剤>
架橋剤としては、2個以上の不飽和二重結合を有する単量体であればよく、特に限定されるものではないが、多官能ビニル単量体や多官能(メタ)アクリル酸エステル酸誘導体等の中から適宜選択して用いることができる。
より具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0070】
また、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10− デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,7−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオール系ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0071】
また、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。
これらの中でも特に(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
架橋剤の添加量は、上記の樹脂モノマー分散液に対して0.1質量%以上かつ10質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上かつ10質量%以下である。
【0072】
<純水>
純水は、化粧料に一般的に使用される水であれば特に限定されず、イオン交換水、蒸留水、精製水、超純水、天然水、アルカリイオン水、深層水等を含む。純水は、懸濁液または乳化液の総量に対して40質量%以上かつ80質量%以下、好ましくは50質量%以上かつ70質量%以下になるように添加させればよい。
【0073】
次いで、上記の懸濁液または乳化液に重合開始剤を添加し、懸濁重合または乳化重合を行う。
【0074】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスジイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等のアゾ系開始剤等が挙げられるが、これらの中でも、過硫酸塩が好ましい。
【0075】
重合開始剤の添加量は、上記の樹脂モノマー分散液に対して0.01質量%以上かつ1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上かつ0.5質量%以下である。
【0076】
重合方法としては、上記の懸濁液または乳化液を窒素雰囲気下、かつ重合開始剤の存在下にて、攪拌しながら昇温して重合を開始させる方法が好ましい。
この重合開始温度は50〜80℃とするのが好ましい。そして、この温度を保持しながら重合させる時間としては、1〜5時間程度が好ましく、未反応の残留モノマーが最小となる時間及び重合状態、製造コストとの兼ね合いで適当な時間を選べばよい。
その後、氷冷または自然冷却し、重合反応を停止させることで、重合物を得ることができる。
【0077】
これら懸濁保護剤、シリコーン系消泡剤及び重合開始剤の含有率を上記の範囲に限定し、適切な懸濁または乳化条件で実施することにより、得られる樹脂粒子の平均粒径を0.1μm以上かつ1μm以下に制御することができる。
【0078】
次いで、得られた重合物から、残留しているモノマー、重合開始剤、界面活性剤を除去するために、アルコールにて十分に洗浄したのち、純水にて洗浄し、乾燥し、得られた金属酸化物含有樹脂粒子を解砕する。
【0079】
アルコールは、純水に可溶なもので容易に洗い流せるものであればよく、例えば、エタノール、2−プロパノール等があげられ、特に2−プロパノールが好ましい。
洗浄方法は、残留モノマー等を除去できれば特に限定されないが、加圧ろ過、吸引ろ過、フィルタープレス、遠心分離、限外ろ過、デカンテーション等により洗浄する。
【0080】
洗浄終了後、得られた重合物を80℃〜100℃で乾燥してアルコールや純水を除去し、次いで得られた重合物を解砕する。乾燥方法としては、アルコールや純水を除去することのできる方法であればよく、特に限定されないが、大気圧中の乾燥、真空乾燥等が挙げられる。
【0081】
解砕方法は、各粒子を解砕することができる方法であれば特に限定されないが、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミル、インペラーミル等が挙げられる。
以上により、金属酸化物含有樹脂粒子を生成することができる。
【0082】
「紫外線吸収剤含有樹脂粒子の製造工程」
本実施形態の紫外線吸収剤含有樹脂粒子の製造方法では、まず、樹脂モノマーに有機系紫外線吸収剤を、この有機系紫外線吸収剤の含有率が0.1質量%以上かつ80質量%以下となるように溶解させて樹脂モノマー溶解液とする。
次いで、この樹脂モノマー溶解液を、この樹脂モノマー溶解液に対して0.1質量%以上かつ10質量%以下の懸濁保護剤、0.01質量%以上かつ5質量%以下のシリコーン系消泡剤及び0.1質量%以上かつ10質量%以下の架橋剤を含む純水中に懸濁または乳化させて懸濁液または乳化液とする。
次いで、この懸濁液または乳化液に、この懸濁液または乳化液に対して0.01質量%以上かつ1質量%以下の重合開始剤を添加して懸濁重合または乳化重合を行い、有機系紫外線吸収樹脂粒子を生成する。
【0083】
以下、紫外線吸収剤含有樹脂粒子の各製造工程について詳細に説明する。
【0084】
<樹脂モノマー溶解液の作製工程>
有機系紫外線吸収剤を樹脂モノマー中に0.1質量%以上かつ80質量%以下となるように溶解させ、樹脂モノマー溶解液とする。
有機系紫外線吸収剤は、上述の<有機系紫外線吸収剤>の項目にて説明した有機系紫外線吸収剤と全く同様であるから、説明を省略する。
【0085】
樹脂モノマー溶解液に対して、重合効率を高めるために、1質量%以上かつ50質量%以下の分散剤を混合させてもよい。分散剤の添加率が1質量%未満では、後述する懸濁液または乳化液のエマルジョン被膜強度が高くならず、その結果、懸濁重合または乳化重合の重合効率が低下する場合があるからである。一方、50質量%を超えると、これ以上添加率を上げても、さらに重合効率を改善することができず、分散剤が無駄になるからである。
使用可能な分散剤は、上述の<分散剤>の項目にて説明した分散剤と全く同様であるから、説明を省略する。
【0086】
有機系紫外線吸収剤は、樹脂モノマー溶解液中に0.1質量%以上かつ80質量%以下、好ましくは0.5質量%以上かつ50質量%以下、より好ましくは1質量%以上かつ30質量%以下含有させる。
ここで、有機系紫外線吸収剤のモノマー溶解液中における含有率が0.1質量%未満では、有機系紫外線吸収剤の量が少なすぎて、モノマーを重合させた樹脂が有機系紫外線吸収剤の有する紫外線遮蔽機能を十分に発現することができなくなる。その結果、紫外線遮蔽機能を十分に発現させようとすると、大量の樹脂が必要となり、化粧料を作製する際の材料設計が極めて難しくなるので好ましくない。一方、含有率が80質量%を超えると、有機系紫外線吸収剤の量がモノマー溶解液に対して相対的に高くなり、その結果、モノマー溶解液中における有機系紫外線吸収剤の分散性が低下し、紫外線吸収剤含有樹脂粒子の組成の均一性が損なわれるので、好ましくない。
【0087】
次いで、樹脂モノマー溶解液中に懸濁保護剤、シリコーン系消泡剤及び架橋剤を含む純水中に懸濁または乳化させ、分散粒径(体積分布D50)が0.1μm以上かつ1.2μm以下の懸濁液または乳化液とする。この工程は上述の金属酸化物含有樹脂粒子の製造工程における、懸濁液または乳化液作製工程と全く同様であるので、説明を省略する。
【0088】
次いで、上記の懸濁液または乳化液に重合開始剤を添加し、懸濁重合または乳化重合を行う。この懸濁重合または乳化重合工程は上述の金属酸化物含有樹脂粒子の製造工程における、懸濁重合または乳化重合工程と全く同様であるので、説明を省略する。
【0089】
次いで、得られた重合物から、残留しているモノマー、重合開始剤、界面活性剤を除去するために、アルコールにて十分に洗浄したのち、純水にて洗浄し、乾燥し、得られた樹脂粒子を解砕する。この工程は上述の金属酸化物含有樹脂粒子の製造工程における、洗浄、乾燥、解砕工程と全く同様であるので、説明を省略する。
以上により、紫外線吸収剤含有樹脂粒子を生成することができる。
【0090】
上記で得られた紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子を、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物が質量比で1:45〜3:1の範囲になるように混合する。
混合する方法は特に限定されず、乾粉の樹脂粒子どうしを混合しても良いし、後述するように紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子を溶媒中で混合することとしてもよい。
【0091】
また、上記の金属酸化物含有樹脂粒子の製造途中の重合物と、上記の紫外線吸収剤含有樹脂粒子の製造途中の重合物を、上記範囲になるように混合して、上記同様、洗浄、乾燥、解砕することにより混合することもできる。
【0092】
以上の工程により、本実施形態の紫外線遮蔽剤を得ることができる。
【0093】
[紫外線遮蔽剤含有分散液]
本実施形態の紫外線遮蔽剤含有分散液は、上記の紫外線吸収剤含有樹脂粒子及び金属酸化物含有樹脂粒子を分散媒中に分散してなる分散液である。紫外線吸収剤含有樹脂粒子及び金属酸化物含有樹脂粒子は、分散液中に合計質量で1質量%以上かつ80質量%以下、好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、より好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下含有させる。上記範囲でそれぞれの樹脂粒子を分散媒中に分散させることにより、紫外線遮蔽効果に優れ、分散液中における紫外線遮蔽剤の分散性が安定し、経時安定性に優れた紫外線遮蔽剤含有分散液を得ることができる。
【0094】
分散媒は、上記の樹脂粒子を分散させることができる溶媒であればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン類、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
【0095】
この分散液は、上記の紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子を溶媒と混合し、必要に応じて分散剤や水溶性バインダーを混合し、次いで、この混合物にサンドミル、ジルコニアビーズを用いたビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー等の分散機や混合機を用いて分散処理を施し、紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子を溶媒中に分散させることにより、得ることができる。
【0096】
紫外線遮蔽剤含有分散液として、シリコーンに分散させたシリコーン系分散液と水に分散させた水系分散液について例示する。
【0097】
[紫外線遮蔽剤含有シリコーン分散液]
本実施形態の紫外線遮蔽剤含有シリコーン分散液は、上記の紫外線吸収剤含有樹脂粒子及び金属酸化物含有樹脂粒子を合計質量で1質量%以上かつ80質量%以下、好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、より好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下シリコーンに分散してなるシリコーン分散液である。
【0098】
シリコーンとしては、式(1)で示される構造骨格を有する環状シリコーンや直鎖状シリコーンであれば特に限定されない。このようなシリコーンとしては例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン等が挙げられる。
【0099】
【化1】

式(1)のXは1〜2000であれば、化粧料として好適に使用することができる。
【0100】
分散剤としては、上記紫外線吸収剤含有樹脂粒子と金属酸化物含有樹脂粒子をシリコーン中に分散させることができれば特に限定されないが、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ジメチルシリコーン等が挙げられる。分散剤は紫外線吸収剤含有樹脂粒子及び金属酸化物含有樹脂粒子の合計質量に対して、1質量%以上50質量%以下混合させるのが好ましい。
【0101】
また、上記シリコーンと分散剤をサンドミルやホモジナイザー等で分散させて得られた分散液に、さらに天然オイル、保湿剤、増粘剤、香料、防腐剤等を混合させてもよい。
上記範囲で調整することにより、この紫外線遮蔽剤含有シリコーン系分散液を単独で用いても、化粧料に混合しても、肌に塗り広げて塗布した場合に透明性を十分に確保することができる。
【0102】
[紫外線遮蔽剤含有水系分散液]
本実施形態の紫外線遮蔽剤含有水系分散液は、上記の紫外線吸収剤含有樹脂粒子及び金属酸化物含有樹脂粒子をアルコール類を含む分散媒中に分散してなる紫外線遮蔽剤含有水系分散液であり、上記の紫外線吸収剤含有樹脂粒子及び金属酸化物含有樹脂粒子の合計含有率を1質量%以上かつ80質量%以下、より好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下含有するとともに、アルコール類を5質量%以上かつ20質量%以下含有してなる水系分散液である。
【0103】
この水系分散液では、さらに、水溶性高分子を0.001質量%以上かつ10質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上かつ5質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上かつ3質量%以下含有してなる水系分散液としてもよい。この場合、紫外線吸収剤含有樹脂粒子、金属酸化物含有樹脂粒子、アルコール類及び水溶性高分子各々の成分の含有率の合計が100質量%を超えないように、各成分の含有率を調整する必要がある。
【0104】
アルコール類としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の炭素数1〜6の1価アルコールまたは多価アルコールが挙げられ、中でも1価アルコール、特にエタノールが好ましい。
【0105】
この水系分散液が水溶性高分子を含まない場合、アルコール類の含有率は、5質量%以上かつ20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上かつ20質量%以下である。
特に、アルコール類の含有率を10質量%以上かつ20質量%以下とした場合には、紫外線遮蔽剤の水系分散液における分散性及び経時安定性を向上させることができるので好ましい。
【0106】
また、この水系分散体液が水溶性高分子を含む場合、この水溶性高分子としては、化粧品用途として使用できるものであれば特に限定されないが、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、カラギーナン、ガラクタン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプン、寒天、キサンタンガム、クインスシード、グアーガム、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、トラガカントガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウムペクチン、プルラン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水溶性高分子は、分散剤及び粘度調整剤としての役割を有し、添加することにより紫外線遮蔽剤の水系分散液における分散性及び経時安定性も向上する。
【0107】
この水系分散液が水溶性高分子を含む場合のアルコール類の含有率は、5質量%以上かつ20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以上かつ20質量%以下である。
ここで、水系分散液が水溶性高分子を含む場合のアルコール類の含有率を5質量%以上かつ20質量%以下とした理由は、含有率が5質量%未満では、アルコール類の含有量が少なすぎてしまうために、水溶性高分子がアルコール類に均一に浸潤できずに水分にて不均一に膨潤することとなり、その結果、紫外線遮蔽剤の分散性が低下して取扱いが困難となり、さらには水系分散液の経時安定性が低下するので、好ましくない。また、含有率が20質量%を超えると、水系分散液全体の粘性が高くなり、紫外線遮蔽剤の分散安定性が低下するとともに、水系分散液の経時安定性も低下するので、好ましくない。
【0108】
この紫外線遮蔽剤含有水系分散液は、アルコール類を含む溶媒またはアルコール類と水溶性高分子とを含む混合物に、上記の紫外線吸収剤含有樹脂粒子及び金属酸化物含有樹脂粒子を混合し、次いで、水を混合して分散させることにより、得ることができる。水の量は適宜調整すればよいが、15質量%以上かつ94質量%以下の範囲が好ましい。
上記範囲で調整することにより、単独で用いても化粧料に混合しても、肌に塗り広げて塗布した場合に透明性を十分に確保することができる紫外線遮蔽剤含有水系分散液が得られる。
【0109】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、上述した紫外線遮蔽剤及び紫外線遮蔽剤含有分散液の一方又は双方を、紫外線遮蔽剤換算で1質量%以上かつ60質量%以下含有してなる化粧料であり、この紫外線遮蔽剤を上記の範囲内で含有することにより、白化の虞もなく、透明感を十分に確保することができ、しかも、ざらつき感等が無く、使用感に優れたものとなる。
【0110】
この化粧料は、上述した紫外線遮蔽剤及び紫外線遮蔽剤含有分散液の1種または2種以上を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等に従来通りに配合することにより得ることができる。
【0111】
さらに、従来では処方が困難であった化粧水や日焼け止めジェル等の水系化粧料に、上述した紫外線遮蔽剤及び紫外線遮蔽剤含有分散液のいずれか一方又は双方を配合することにより、紫外線遮蔽能、透明感及び使用感に優れた水系化粧料を得ることができる。
【0112】
この化粧料を化粧品の成分として用いることにより、紫外線遮蔽能、透明感及び使用感に優れたスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア化粧品等の各種化粧品を提供することが可能である。特に、紫外線遮蔽能が必要とされるスキンケア化粧品のホワイトニング、メイクアップ化粧品のベースメイク、ボディケア化粧品のサンスクリーン等に好適である。
【0113】
以上説明したように、本実施形態の紫外線遮蔽剤によれば、平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下の紫外線吸収剤含有樹脂粒子と、平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下の紫外線遮蔽能を有する金属酸化物含有樹脂粒子とを、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物の質量比で、1:45〜3:1の範囲になるように混合させていることで、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物粒子の双方の紫外線遮蔽能における相乗効果を得ることができ、波長380nm〜400nmの紫外線遮蔽効果が高まる。
【0114】
また、有機系紫外線吸収剤と金属酸化物をそれぞれ樹脂中に固定化させているので高い光安定性が得られる。具体的には、紫外線に曝されたときに、金属イオンの影響によって有機系紫外線吸収剤が結晶化し、化粧料の変質、変色、使用感の低下を生じる場合があるが、本実施形態の紫外線遮蔽剤ではこのような劣化を抑制することができ、化粧料の品質を安定化させることができる。
【0115】
また、本実施形態の紫外線遮蔽剤は、有機系紫外線吸収剤を特定の溶媒に溶解させる必要がないので、油中水型(W/O型)は勿論のこと、従来では処方が困難であった水中油型(O/W型)、化粧水や日焼け止めジェル等の水系化粧料に配合することができる。したがって、化粧料の処方の自由度を高めることができる。
また、紫外線吸収剤含有樹脂粒子及び金属酸化物含有樹脂粒子の平均粒径を0.1μm以上かつ1μm以下としたので、化粧品に用いた場合においても、ざらつき感等がなく、使用感に優れている。
【0116】
また、平均一次粒子径が0.003μm以上かつ0.1μm以下の金属酸化物が樹脂中に含有されているので、可視光線を吸収することなく、化粧料で重要視されている透明性を維持することができる。
【0117】
さらに、本実施形態の化粧料を化粧品の成分として用いることにより、紫外線遮蔽能、透明感、使用感及び安全性に優れたスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア化粧品等の各種化粧品を提供することができる。特に、紫外線遮蔽能が必要とされるスキンケア化粧品のホワイトニング、メイクアップ化粧品のベースメイク、ボディケア化粧品のサンスクリーン等に用いた場合には、紫外線遮蔽能、透明感、使用感及び安全性に優れた化粧品を提供することができる。
【0118】
なお、本実施形態の紫外線遮蔽剤とそれを含む分散液は、紫外線遮蔽機能を必要とする耐候性塗料等にも転用することができる。
また、化粧品以外の分野で用いる場合には、化粧品で重要視されているざらつき感や使用感、透明性等がさほど問題とされない場合も多く、分散剤や樹脂の選択の幅が広がり、塗料等の設計配合の自由度を高めることができる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0120】
[製造例1]
[酸化亜鉛含有樹脂粒子の作製]
酸化亜鉛微粒子(住友大阪セメント(株)社製、平均一次粒子径0.02μm)200質量部、メタクリル酸メチル188質量部、リン酸エステル型界面活性剤12質量部を混合し、サンドミルを用いて2時間分散処理を行い、酸化亜鉛微粒子をメタクリル酸メチル中に分散させたモノマー分散液を得た。
【0121】
次いで、得られたモノマー(MMA)分散液105.0質量部、純水229.5質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部、エチレングリコールジメタクリレート14.0質量部、シリコーン系消泡剤1.0質量部を混合し、ホモジナイザーを用いて6000回転で10分攪拌し、分散粒径D50が0.6μmのエマルジョンを得た。
【0122】
次いで、得られたエマルジョンを320.0質量部、純水79.856質量部、過硫酸カリウム0.144質量部を混合し、攪拌機及び温度計を備えた反応装置に移して窒素置換を室温で1時間行った。次いで、65℃に昇温して3時間保持し、重合反応を行った。次いで、氷冷して重合反応を停止させ、得られた重合物を2−プロパノールにて洗浄し、さらに純水にて洗浄した後、90℃にて乾燥させた。このようにして得られた乾燥物をハンマーミルにて解砕し、平均粒径が0.5μmの酸化亜鉛微粒子を含有した樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子をTG−DTA((株)リガク社製、Thermo Plus2 TG8120)で測定したところ、樹脂粒子中に酸化亜鉛が50質量%含有されていることが確認された。
【0123】
[製造例2]
[酸化亜鉛含有樹脂粒子を含有する水系分散液]
製造例1で得られた酸化亜鉛含有樹脂粒子を25質量部、エタノール7.5質量部、純水17.5質量部を混合して、酸化亜鉛含有樹脂粒子を含有する水系分散液を得た。
【0124】
[製造例3]
[アボベンゾン含有樹脂粒子の作製]
メタクリル酸メチル85質量部にアボベンゾン(DSMニュートリションジャパン(株)社製、パルソール(登録商標)1789)10質量部、リン酸エステル型界面活性剤5質量部を加えて混合し、樹脂モノマー溶解液を作製した。
次いで、この樹脂モノマー溶解液105質量部に、純水229.5質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部、エチレングリコールジメタクリレート14.0質量部、シリコーン系消泡剤1.0質量部を混合し、ホモジナイザーを用いて10000回転で10分攪拌し、エマルジョンを作製した。
【0125】
上記のエマルジョン320.0質量部と、純水79.856質量部と、過硫酸カリウム0.144質量部とを混合し、攪拌機及び温度計を備えた反応装置に移して窒素置換を1時間行った。
次いで、窒素置換後の反応溶液を65℃に昇温させ、この65℃にて3時間保持し、重合反応を行った。その後、氷冷して重合反応を停止させ、得られた重合物を2−プロパノール及び純水で洗浄した後、90℃にて乾燥させた。このようにして得られた乾燥物をハンマーミルにて解砕し、平均粒径が0.3μmのアボベンゾンを含有した樹脂粒子を得た。
回収された樹脂粒子の質量は、樹脂粒子の作製に用いたメタクリル酸メチル、アボベンゾン、リン酸エステル界面活性剤の総質量とほぼ一致した。そのため、樹脂粒子中にアボベンゾンが10質量%含有されているとして、製造例4以下の配合を行った。
【0126】
[製造例4]
[アボベンゾン含有樹脂粒子を含有する水系分散液]
製造例2において、製造例2で得られた酸化亜鉛含有樹脂粒子の替わりに製造例3で得られたアボベンゾン含有樹脂粒子を用いた以外は同様にして、アボベンゾン含有樹脂粒子を含有する水系分散液を得た。
【0127】
[実施例1]
製造例2で得られた酸化亜鉛含有樹脂粒子を含有する水系分散液を20質量部、製造例4で得られたアボベンゾン含有樹脂粒子を含有する水系分散液を20質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウムを1.5質量部、エタノールを6.0質量部、グリセリンを2.5質量部混合した。次いで、70℃10分で加熱撹拌し、酸化亜鉛含有樹脂粒子とアボベンゾン含有樹脂粒子を含有するモイスチャージェルを得た(有機系紫外線吸収剤:酸化亜鉛=1:5)。
【0128】
得られたモイスチャージェルを2mg/cmの量にて石英板に塗布し、分光透過率及びSPF値をSPFアナライザー UV−1000S(米国Labsphere社製)を用いて測定した。この分光透過率を図1に示す。SPF値は、66.8であった。
【0129】
[比較例1]
製造例2で得られた酸化亜鉛含有樹脂粒子を含有する水系分散液を20質量部用いる一方、製造例4で得られたアボベンゼン含有樹脂粒子を含有する水系分散液は用いないこととした以外は実施例1と同様にして、酸化亜鉛含有樹脂粒子を含有するモイスチャージェルを作製した。
【0130】
実施例1と同様にしてSPF値及び分光透過率を測定した。この分光透過率を図1に示す。SPF値は33.0であった。
【0131】
[比較例2]
製造例4で得られたアボベンゾン含有樹脂粒子を含有する水系分散液を20質量部用いる一方、製造例2で得られた酸化亜鉛含有樹脂粒子を含有する水系分散液を用いないこととした以外は実施例1と同様にして、アボベンゾン含有樹脂粒子を含有するモイスチャージェルを得た。
【0132】
実施例1と同様にしてSPF値及び分光透過率を測定した。この分光透過率を図1に示す。SPF値は40.5であった。
【0133】
図1より、実施例1の酸化亜鉛含有樹脂粒子及びアボベンゾン含有樹脂粒子の双方の樹脂粒子を含有するモイスチャージェルは、それぞれ単独の樹脂粒子を含有するモイスチャージェルよりも波長380nm〜400nmの紫外線遮蔽率に優れた。また、SPF値も実施例1が一番高く、紫外線遮蔽能に優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系紫外線吸収剤を含有し平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である第1の樹脂粒子と、紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を含有し平均粒径が0.1μm以上かつ1μm以下である第2の樹脂粒子とを含む紫外線遮蔽剤であって、
前記有機系紫外線吸収剤と前記金属酸化物が、質量比で1:45〜3:1の範囲で含有されてなることを特徴とする、紫外線遮蔽剤。
【請求項2】
請求項1記載の紫外線遮蔽剤を含有してなることを特徴とする、紫外線遮蔽剤含有分散液。
【請求項3】
請求項1記載の紫外線遮蔽剤及び請求項2記載の紫外線遮蔽剤含有分散液の一方又は双方を含有してなることを特徴とする、化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2012−240948(P2012−240948A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111382(P2011−111382)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】