説明

紫外線量測定器

【課題】科学的アプローチによって自ら組み立て、目で見て確認できる超低コストの簡易な紫外線量測定器を提供する
【解決手段】メチレンブルー溶液と、光触媒の5μm以下の酸化チタン粒子に、呈色色素の吸着防止用にエオシンを加えたアルコールスラリーとの混合液を透明管に入れて開閉可能に密封し、透明管に光導入窓を設けこの窓の内壁面を上記混合溶液の紫外線による光触媒反応面とすることを特徴とする紫外線量測定器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線量測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロンガスの大量使用等が原因とされるオゾン層の破壊によって、地上へ届く有害な紫外線の量が増加している。この紫外線の増加は、皮膚ガンの発生の原因ともされ、人々の健康の面で社会問題化しつつある。このため、一般の人々の紫外線への関心度も高く、日常の生活において、紫外線の量等を気にする人が増えている。
【0003】
事実、UV(紫外線)カットを謳った各種製品が、市場に流通しており、このような事からも紫外線に対する人々の関心度が高いことが窺える。このような状況から、どんな条件(時間帯や標高や天気等)で紫外線が強いのか等を測定するため、紫外線の量や照射の方向等を計測する装置が、従来から下記の特許文献に記載のように、種々開発されてきている。
しかし、従来の一般的な紫外線測定装置は、大がかりなものがほとんどで、一般の人が外出時に気軽に持ち歩くようなものではない。しかも従来の紫外線測定装置は、紫外線のエネルギーを漏れなくかつ正確に電圧値や電流値に変換して表示する構成となっているため、当該メーター類を作動させるための構造が複雑となり、また重い電源が必須の構成となっている。
このような要因から、紫外線測定装置は高価なものとなり、現在のところ一般の人々が外出時に気軽に携帯するものは少なく、したがって、紫外線に関する簡単な情報、たとえば、紫外線が多くなりそうである等の情報を、天気予報等のメディアを通じて知るに止まっている。
また構造が目で見えなく複雑なため手軽に学習具として製作も出来ず適していない。 本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、手軽に学習具として製作し視認できる簡易な紫外線測定器を提供し、また一般の人々でも外出時に気軽に持ち歩きかつ外出先等で簡単に紫外線の量を把握できる簡易な紫外線測定器を提供することを目的とする。

【特許文献1】特開平5-248946号公報「紫外線測定ゲル」ゲル中にアニリン・ジメチルアニリン・ジアニシジン・フェノール等の色原体と過酸化水素を含有させた。
【特許文献2】特開平8-313340号公報「紫外線測定シート」紫外線の強度に対応して変色するフォトクロミック層を配置した
【特許文献3】特開平10-227690号公報「携帯紫外線測定器」紫外線により色や濃淡が変化する物質のシートを備えた。
【特許文献4】特開2003-270035号公報「簡易紫外線測定器アクセサリ」蛍光物質に紫外線Uを照射して可視光を発光させその量を電気出力変換表示する。
【特許文献5】特開2004-239883号公報「紫外線測定装置」紫外線吸収特性の異なる光反応材(Cr,Fe,Ni等をドープしたTiO2を含むフォトクロミック組成物等)毎に導光管内に配置し、光反応材の色の変化から紫外線波長を見る。
【特許文献6】特開2006-71582号公報「紫外線測定器具」光活性剤が紫外線の作用で生成した遊離基により変色する変色剤(ロイコメチレンブルー等)を利用し、変色程度で紫外線の強度を見る。(酸化チタンの記載は無い。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、化学的アプローチによって自ら組み立て、目で見て確認できる超低コストの簡易な紫外線量測定器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
メチレンブルー溶液と、光触媒の5μm以下の酸化チタン粒子に、呈色色素の吸着防止用にエオシンを加えたアルコールスラリーとの混合液を透明管に入れて開閉可能に密封し、透明管に光導入窓を設けこの窓の内壁面を上記混合溶液の紫外線による光触媒反応面とすることを特徴とする紫外線量測定器。
例えば、メチレンブルー溶液は99%のエタノールを溶媒とすることが好ましい。
酸化チタンスラリーは,水20〜60%を含むアルコールの液に対して10wt%の酸化チタン(粒径5μm以下)を懸濁させ、エオシンを吸着させる。エオシンは触媒に対して1wt%を吸着させたもので、メチレンブルー溶液と混合する。同量の混合では60〜80%の水−アルコールスラリーとなる。
【0006】
近年、VOCなどの環境汚染物質を除去を目的として、応用されつつある光触媒としての作用も興味深い。(酸化による分解、除去)
【発明の効果】
【0007】
自ら構築することが容易であり、肉眼で色変化を追うことができる。結果として、化学反応の興味、環境への意識高揚につながる。
受光部にUVケア用品を塗ることでその効果を確認することができる。
蛍光灯、白熱灯等への適用による光源波長への興味や、低コスト、低刺激性で取り扱いが平易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1.本発明において、前記メチレンブルー溶液として、エタノール溶液を溶媒としてメチレンブルー3〜5mMの溶液とする理由。
(1)、そのもののエタノール濃度99%では、応答速度が速すぎ、色が元に戻らない、など適していない。20%〜40%の水を含有させると上記の点が解消され、長く、精度良く測定できる。
(2)、メチレンブルー3mM(実質は混合するので1.5mM)以下においては肉眼による色の追跡が困難である。5mMを超える濃度の高いものについては、溶解度または析出のおそれがなければ可であろうが、測定時間がいたずらに長くなる。
2.本発明における前記酸化チタンアルコールスラリーについて
(1)、酸化チタン粒子を5μm以下の粒径にする理由
酸化チタン粒子は、ナノ粒子(P-25など)に比べ、少量でも入手しやすくかなり廉価(これが第一)である。又母液が沈殿しても容器に固着せず再分散が容易。
沈降など、想定測定時間中の影響がない。
(2)、酸化チタン粒子の使用量は10〜20wt%が良い。
それは、コスト面と沈降、拡散の影響の回避効果がある。

(3)、酸化チタン粒子は、耐光性、視認性、酸化還元につよい。色境界がより明瞭になる。また指示色素のメチレンブルーの吸着を抑える。
3.発明を実施するための最良の形態は次の実施例1の通りである。
【実施例1】
【0009】
図1において、総紫外線量測定器は、酸化チタンスラリーとメチレンブルー溶液を混合挿入したガラスチューブAに蓋Dをして倒立して置き、シリコンチューブ窓枠Bで窓Cを形成しこの窓における変色とその変化時間を計る。
即ち、先ず、色素のメチレンブルー溶液と光触媒スラリー液の酸化チタンスラリーを所定のガラスチューブAに入れ混合し蓋Dをする。ガラスチューブAにシリコンチューブ窓枠Bで測定窓を設け、その窓の曲面頂部を太陽方向に向け、窓Dの幅を測定領域とする色変化時間を測定する。
光触媒への呈色色素の吸着防止と視認性の向上のため酸化チタンスラリー光触媒に予めエオシンを吸着させておく。
本発明の紫外線量測定器は、光触媒反応によって呈色色素のメチレンブルーが還元されロイコ体となり無色化することを応用するものである。光触媒反応は、容器とスラリー界面の極薄のバルク層でのみ起きており、測定後は振って攪拌するだけで再利用できる。
十数回の使用でやや色が薄れるが、空気に晒して放置すると酸素により酸化し元の色に再現できる。
1.酸化チタンスラリーの組成
例えば5μm以下の酸化チタン粒子(アナーゼ型 和光)を10gを、エタノール0.1%溶液を50mlでスラリー状にしたものに2wt%エオシンを加え12時間攪拌して酸化チタン粒子にエシオを吸着させる。上澄みにエオシンが無いことを確認したものを使用する。
2.ロイコ色素であるメチレンブルー溶液の組成
市販の和光製99%エタノールを溶媒として測定時間調整用の曇り時用としてメチレンブルー3mMの溶液と、晴れ時用としてメチレンブルー5mMの溶液の2種類を作成する。アルコールは酸化チタン粒子の強力な酸化サイトで優先的に酸化される犠牲剤である。この時に発現する触媒電子又は発生する水素の触媒によるプロトンが還元種の一つになる。
なおメチレンブルー2mM以下では視認性が悪く適さず好ましくない。
3.測定液の作成
以上の二液を0.2mlずつ注射器を用いて図1に示すガラスチューブA内に装入攪拌し蓋をする。窓枠用のシリコンチューブBを取り付け窓Cを作り測定を開始する。Dは、ガラスチューブAの蓋体を示す。
4.紫外線の測定
ガラスチューブAは図1のように倒立して置き、シリコンチューブBの窓枠で形成した窓Cにおける変色の時間を計る。
この窓Cの裏面には必ず前記混合液が存在するようにする。つまり空気層は形成しないようにするのである。このためガラスチューブAを縦置きにして、窓Cは最下部にすればその高さ領域にのみ前記混合液を充当しておけばよい。空気は酸化のために必要であるから時々蓋Dを外し空気を入れ替えすると良い。ガラスチューブAを横置きにする場合は、前記混合液を満杯にしておけば良い。
図2はパワーメータで測定した数値と比較し、おおよその紫外線強度を推定しメモリを窓Cに付しておくことにより簡易な紫外線量測定器が完成する。
図2は、予めパワーメーターで測定した数値を基に測定結果をいろいろな指針と共に示した例(自作)である。
図3には、総紫外線量測定器の窓Cの外周面にメモリを付した例であり、メモリは青い字で書いて貼り付けるか、又はガラスチューブAの窓Cの内周面に組み込む。
実測結果は、安定しており、曇天でも測定できる感度をもち、安全性も高く、非常に簡単に行えた。
図4は、石英管A1の下部の混合液収容領域の上下に、メモリ付きの窓C1,C2を設けて(窓枠は省略してある)紫外線A波(波長280〜320nm)・B波(波長320〜380nm)分離型にした紫外線量測定器であり、A波用100は、>350nmをカットするフィルターとしてポリスチレン製薄膜101を測定する窓C1に貼り、B波用200は、A波域をカットするフィルターとして4-tert-ブチル-4-メトキアシベンゾイルメタン製薄膜201を測定する窓D2に貼ったものである。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、前述のように、自ら構築することが容易であり、肉眼で色変化を追うことができる。結果として、化学反応の興味、環境への意識高揚につながり、受光部にUVケア用品を塗ることでその効果を確認することができ、蛍光灯、白熱灯等への適用による光源波長への興味や、低コスト、低刺激性で取り扱いが平易であるなどの優れた効果を呈するため、教育産業、美容産業等に多大な貢献をするものと期待できる発明である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示す簡易な紫外線量測定器の立体説明図である。
【図2】予めパワーメーターで測定した数値を基に測定結果をいろいろな指針と共に示した例である。
【図3】図1に示す総紫外線量測定器の窓部に付したメモリ例を示す説明図である。
【図4】図1に示す総紫外線量測定器の窓部に付したA波用とB波用の段状に形成した各メモリ例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0012】
A・・・・・・・・ガラスチューブ
B・・・・・・・・シリコンチューブ製の窓枠
C・・・・・・・・シリコンチューブ製の窓枠で形成したガラスチューブの窓
101・・・・・・・・ポリスチレン製薄膜
201・・・・・・・・4-tert-ブチル-4-メトキアシベンゾイルメタン製薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチレンブルー溶液と、光触媒の5μm以下の酸化チタン粒子に、呈色色素の吸着防止用にエオシンを加えたアルコールスラリーとの混合液を透明管に入れて開閉可能に密封し、透明管に光導入窓を設けこの窓の内壁面を上記混合溶液の紫外線による光触媒反応面とすることを特徴とする紫外線量測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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