説明

累積時間分解発光二次元ゲル電気泳動法

タンパク質のゲル内検出および定量化のための新しい計器設計を提供する。累積時間分解発光二次元ゲル電気泳動と呼ばれるこの新しいプラットフォームは、蛍光寿命画像化の差を用いて特定のタンパク質標識からの蛍光と不特定のバックグラウンド蛍光とを区別することにより、現在の技術に比べて感度およびダイナミックレンジが共に大幅に向上する。プラットフォームは主として二次元ゲル電気泳動の画像を得るためのものであるが、一次元ゲルシステムでのタンパク質の検出にも、例えばPVDF膜に電気ブロットされたタンパク質の検出にも適用できる。現在の方法に比べて検出の感度およびダイナミックレンジが最大5−6桁高くなるので、本発明はバイオマーカ発見の分野で極めて必要とされる少量の細胞タンパク質の検出に技術的飛躍をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質のゲル内検出および定量化のための方法および新しい画像収集技術に関する。累積時間分解発光二次元ゲル電気泳動法(Cumulative Time-resolved Emission 2-Dimensional Gel Electrophoresis)(CuTEDGE)と呼ばれるこの新しいプラットフォームは、蛍光寿命の差を用いて特定のタンパク質標識からの蛍光と不特定のバックグラウンド蛍光とを区別することにより、感度およびダイナミックレンジを共に現在の技術に比べて大幅に改善する。
【背景技術】
【0002】
「プロテオミックス」はゲノムのタンパク質補体(プロテオーム)の研究を指す用語で、1994年にMarc Wilkinsが造語した。過去10年にわたって、細胞すなわち組織内の数千のタンパク質を同時に定量化するための多くの方法が開発され、例えば、バイオマーカの発見や細胞プロセスの機構の研究に用いられてきた。二次元ゲル電気泳動(2−DGE)はグローバルプロテオミックス解析に適した最初の方法であり、現在でもプロテオミックス研究の有力な方法の1つである。2−DGE法では、第1の次元で電荷に従って、第2の次元で寸法に従って、複雑なタンパク質サンプルを分離することにより、タンパク質スポットの2−Dマップを得る。理想的には、このマップの各スポットは単一のタンパク質種に対応する。次に、化学量論的にタンパク質に結合するタンパク質染料でタンパク質スポットを可視化して、タンパク質の量に対応する第3の次元を与える。これにより定量的プロテオーム解析が促進される。
【0003】
元来の2−DGE技術に関連する大きなゲル毎の変動が持つ問題に対しては、ディファレンシャルゲル電気泳動(Differential Gel Electrophoresis)(DIGE)法およびアレクサ標識化内部標準(Alexa-Labelled Internal Standard)(ALIS)法などの、内部標準を組み込む方法により対処してきた。この2つの方法は、スペクトル的に分離された蛍光色素でサンプルタンパク質および内部標準タンパク質に標識を付け、同じ2−DGEゲルで共に分離することに基づいている。レシオメトリック正規化(ratiometric normalization)によりゲル間の変動を訂正することができるので、2−DGE法の定量的側面および全統計的パワーを大きく改善することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Wheelock AM, Goto S.,2006,「ゲルベースのプロテオミクスの変動に与える電気泳動後解析の効果(Effects of post-electrophoretic analysis on variance in gel-based proteomics)」,Expert Rev.Proteomics,3: 129-142.
【非特許文献2】Wheelock AM, Buckpitt AR.,2005,「二次元ゲル電気泳動画像解析におけるソフトウエアに起因する変動( Software-induced variance in two-dimensional gel electrophoresis image analysis)」, Electrophoresis 26: 4508-4520.
【非特許文献3】Wheelock AM, Wheelock CE,2008,「ゲルベースのプロテオミクスにおけるバイオ情報科学。インプラントプロテオミクス:技術、戦略、および応用(Bioinformatics in gel-based proteomics. In Plant Proteomics: Technologies, Strategies and Applications)」, R Rakwal, G Agrawal編, pp. 107-125,Hoboken, NJ, USA: John Wiley & Sons Inc.
【非特許文献4】Silva E, O'Gorman M, Becker S, Eklund A, Grunewald J, Wheelock AM.,「観察者の目:熟練者は未熟練者と同じスポットを見るか( In the eye of the beholder: Does the Master see the SameSpots as the novice? )」,Journal of Proteome Research,改訂中.
【非特許文献5】Suhling K, French PM, Phillips D.,2005,「時間分解蛍光顕微鏡検査法(Time-resolved fluorescence microscopy)」,Photochem Photobiol Sci 4: 13-22.
【非特許文献6】Wallrabe H, Periasamy A.,2005,「FRETおよびFLIM顕微鏡検査法を用いるタンパク質分子の画像化(Imaging protein molecules using FRET and FLIM microscopy)」,Curr Opin Biotechnol 16: 19-27.
【非特許文献7】Handl HL, Gillies RJ.,2005,「リガンド・受容体相互作用のためのランタニドベースの発光解析(Lanthanide-based luminescent assays for ligand- receptor interactions)」,Life Sci,77: 361-371.
【非特許文献8】Clapp AR, Medintz IL, Fisher BR, Anderson GP, Mattoussi H.,2005,「発光量子ドットは有機染料ドナーの効率的なエネルギー受容体になり得るか(Can luminescent quantum dots be efficient energy acceptors with organic dye donors?)」,J.Am.Chem Soc.,127: 1242-1250.
【非特許文献9】Alban A, David SO, Bjorkesten L, Andersson C, Sloge E, Lewis S, Currie I.,2003,「比較二次元ゲル解析のための新しい実験設計:プールされた内部標準を組み込んだ二次元ディファレンスゲル電気泳動(A novel experimental design for comparative two-dimensional gel analysis: two- dimensional difference gel electrophoresis incorporating a pooled internal standard)」,Proteomics. 3: 36-44.
【非特許文献10】Wheelock AM, Morin D, Bartosiewicz M, Buckpitt AR., 2006,「定量的二次元ゲル電気泳動を行うための蛍光内部タンパク質標準の使用(Use of a fluorescent internal protein standard to achieve quantitative two-dimensional gel electrophoresis)」,Proteomics 6: 1385-1398.
【非特許文献11】Lassiter SJ, Stryjewski W, Legendre BL, Jr., Erdmann R, Wahl M, Wurm J,Peterson R, Middendorf L, Soper SA.,2000,「DNAシークエンシング応用における寿命ベースコーリングのためのスラブゲルの時間分解蛍光画像化(Time-resolved fluorescence imaging of slab gels for lifetime base-calling in DNA sequencing applications)」,Anal Chem 72: 5373-5382.
【非特許文献12】Stryjewski W, Soper SA, Lassiter SJ, Davis L.,2002,「ゲノミクス材料の検出のための時間分解近赤外蛍光を用いる多重解析(Multiplexed analysis using time-resolved near-IR fluorescence for the detection of genomics material)」,Proceedings of SPIE,4626 : 201 -209.
【非特許文献13】Bartolome A, Bardliving C, Rao G, Tolosa L.,2005,「タンパク質を結合する蛍光脂肪酸を用いる低コストの寿命支援レシオメトリック検出のための脂肪酸センサ(Fatty acid sensor for low-cost lifetime-assisted ratiometric sensing using a fluorescent fatty acid binding protein)」,Anal.Biochem. 345: 133-139.
【非特許文献14】Wheelock AM, Zhang L, Tran MU, Morin D, Penn S, Buckpitt AR, Plopper CG.,2004,「齧歯類気道上皮細胞タンパク質の隔離は肺毒性の生体内プロテオミクス研究を促進する(Isolation of rodent airway epithelial cell proteins facilitates in vivo proteomics studies of lung toxicity)」,Am. J. Physiol Lung Cell Mol. Physiol,286: L399-L410.
【非特許文献15】Spiess PC, Morin D, Jewell WT, Buckpitt AR.,2008,「ゲル電気泳動および多重化蛍光画像化解析を用いた細胞酸化ストレスに応じるタンパク質スルフヒドリル基の測定(Measurement of protein sulfhydryls in response to cellular oxidative stress using gel electrophoresis and multiplexed fluorescent imaging analysis)」,Chem Res Toxicol 21 : 1074-1085.
【非特許文献16】Rintamaki S.他、Journal of microbiological method, (2002 Aug), Vol.50, No.3, pp.313-8.
【非特許文献17】Lassiter S.J.他、Analytical chemistry, 2000 Nov 1, Vol.72, No.21, pp.5373-82.
【非特許文献18】Llopis S.D.他,Electrophoresis,2004 Nov,Vol.25, No.21-22, pp.3810-9.
【非特許文献19】Stryjewski他、Proceeding of SPIE - The International Society for Optical Engineering (2002), 4626 (Biomedical Nanotechnology Architectures and Applications), 201-209.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の2−DGE法に残る主な制約は検出の感度に限界があることである。生物サンプル内のタンパク質の量は12桁にもわたるので、定量的2−DGEに用いるタンパク質染料(protein stain)の感度およびダイナミックレンジに対する要求は高い。このため、3−4桁のダイナミックレンジを持つ蛍光染料が、これまでの比色染色法(ダイナミックレンジが一般に1−2桁に限定される銀およびクーマシ(commassie)染料など(図1))に代わって使用されるようになった。
【0006】
蛍光染料は、2−DGE分離の前の共有結合標識化(例えば、CyDyes(TM)、アレクサ染料)にも非共有結合の電気泳動後染色(post-electrophoretic staining)手続き(例えば、SYPRO Ruby(TM)、Deep Purple(TM))にも利用可能である。しかし、現在市販されているタンパク質の可視化のための最も高性能の蛍光プローブでも、可能な生理学的範囲のごく一部をカバーするだけである。なぜなら、生理学的タンパク質の量の範囲は数分子からマイクロモル濃度までにわたるが、最小DIGEの最新の方法の検出限界は一般にナノグラムのタンパク質に制限されるからである(図1)。
【0007】
2−DGEでのタンパク質の検出および定量化のための現在の蛍光の用法では、蛍石の刺激と得られる発光(emission)の測定とを同時に行う。技術的観点から時間効率が良くまた実際的なので、この方法は蛍光スキャナにもCCDカメラベースの2−DGE画像収集計器にも用いられている。しかし直接の蛍光測定はこれらの蛍光色素の可能性を十分には用いていない。生理的検査サンプルは多くの自動蛍光成分を含み、ポリアクリルアミドマトリクス自身が或る程度のバックグラウンド蛍光を放射(emit)する。信号対雑音比を最適にするには、バックグラウンド蛍光および自動蛍光からの外乱を小さくすることが重要である。
【0008】
現在の2−DGE技術では、生じるバックグラウンドを除去する操作は、電気泳動後のコンピュータ支援定量解析に用いるソフトウエアアルゴリズムにより機械的に行う。しかし、われわれが前に示したように、かかるバックグラウンド除去および訂正のアルゴリズムの多くはデータを変更し、またタンパク質のスポット量の定量化に更なる変動を与えると共に、ゆがんだ、非正規分布を生じる(文献1−4)。
【0009】
時間分解蛍光(TRF)を用いると、所定の画素内に存在する種々の蛍光種の減衰曲線を分離することにより光子の起源を得ることができる。TRFは現在関連分野の多くの応用(主として、局在、屈折ダイナミックス(folding dynamics)、または溶液内のタンパク質の動きを可視化する顕微鏡検査法応用)に用いられている(文献5、6)。2−DGEに現在用いられているいくつかの蛍光色素はこれらの関連分野の時間分解蛍光応用に用いられてきた(例えば、CyDyes(TM)(GE Healthcare,Uppsala,Sweden製)およびアレクサ染料ならびにSYPRO Ruby(TM)などのルテニウム・キレート(両者ともMolecular Probes,Eugene,OR,USA製)(文献7、8))。しかし、現在の2−DGE画像収集装置にはこの機能が欠けているので、2−DGEでのTRFの使用および開発は現在阻害されている。
【0010】
(関連技術の説明)
この分野の多くの従来技術は分子間相互作用、分子安定性、または分子内配列変化の研究のための蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術に関係し、またいくつかの技術は蛍光寿命画像化(FLIM)に関係する。これらはポリメラーゼ連鎖反応(polymerized chain reaction)(PCR)生成物の監視を含み(Rintamaki S.他、Journal of microbiological methods, (2002 Aug), Vol.50, No.3, pp.313-8)、他のものはDNAシークエンシングのベースコーリング用である(Lassiter S. J.他、Analytical chemistry, 2000 Nov 1, Vol.72, No.21, pp.5373-82)。これらの著者たちは、自動化されたDNAシーケンサ内の顕微鏡ヘッドを改造して近赤外時間分解蛍光寿命測定が可能になるようにした。したがって、この計器の設計、能力、および使用方法は本発明とは全く異なる性格のものであった。
【0011】
このグループが行った計器の改造は、DNAシークエンシングの精度および速度を改善するために分類を目的として設計された。本質的に、寿命の画像化は、異なる寿命を持つ2つの蛍光色素を区別して、スラブゲル電気泳動法により分別された異なるDNA断片の存在を示すのに用いられた。追跡研究において、著者たちは、同じ目的で(Llopis S.D.他、 Electrophoresis, 2004 Nov, Vol.25, No.21-22, pp.3810-9.)、並びにDNAマイクロアレイから蛍光シグネチャを読み取るために(Stryjewski他、Proceeding of SPIE - The International Society for Optical Engineering (2002), 4626 (Biomedical Nanotechnology Architectures and Applications), 201-209)、シークエンシング技術をポリママイクロチップ・プラットフォームに拡張した。
【0012】
本発明のようにバックグラウンド除去のために多次元時間分解蛍光を使用することは、これらのどの応用でも行われていない。対照的に、著者たちは、単一指数関数的ワークフローを維持するためにはどのポリマサポートマトリクスの発生するバックグラウンド蛍光の量が最も少ないかを調査することに力を注ぎ、または負の制御スポットの強度の時間ゲーティングすなわち除去などの従来のバックグラウンド訂正法を用いた。このように、本発明がゲル内(タンパク質)測定において特定のバックグラウンドを除去するために多次指数的関数的時間分解蛍光を用いることは、驚くべき効果と新しい技術を示す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、グローバルプロテオーム研究における蛍光で標識を付けたタンパク質のゲル内検出および定量化のための新しいプラットフォームを提供することである。本発明は蛍光寿命画像化(FLIM)を用いることを含む。他の目的および利点は以下の開示および請求の範囲から明らかになる。
【0014】
CuTEDGE技術の中心的な実施の形態は、タンパク質に結合された(共有結合的にまたはイオン力により)蛍光色素をパルスレーザスキャナで励起することを含む。定量的2−DGEで画像収集に現在用いられている最新の蛍光レーザスキャナは励起に一定光源を用いる。ゲルの持続的な照明は蛍光寿命の差を用いず、検出された発光は蛍光色素とバックグラウンド蛍光の複合ピーク発光に対応する。対照的に、ここに述べる発明を用いてパルスレーザでスキャニングすると、画素毎のレベルのFLIM測定値を与える(図2A−2C)。レーザ(恐らくダイオードレーザ)は密閉したスキャナ容器内に納めてよく、または光ファイバケーブル・コンセントにより外部に取り付けてよく、用いる励起波長(すなわち、特定のダイオードレーザ)に最適な柔軟性を与える。このように、この技術は現在の計装のグレードアップとして、または完全に閉じたスキャナシステムとして与えてよい。
【0015】
本発明の別の実施の形態は、蛍光減衰曲線の多次指数関数的当てはめ(multi−exponentialfitting)を用いて、蛍光色素標識化タンパク質種から生じる蛍光と、ゲルマトリクス自身、ゲル内に存在する溶液または粒子、または散乱効果などの他の源から生じる蛍光とを分離することを含む。蛍光減衰曲線を分離すると、図2A−2Cに示すように光子レベルのバックグラウンドを除去することができる。更に、CuTEDGE技術のこの実施の形態により、その後の画像解析でソフトウエア支援のバックグラウンド除去アルゴリズムが必要でなくなり、またこれらのアルゴリズムに起因することが知られている実験的変動の増加が抑えられる。2−DGE画像内の蛍光寿命の分布の例を図4A−4Bに示す。これはCy2の疑似カラー寿命画像を示す。
【0016】
本発明の更に別の実施の形態は、励起のために多数のレーザ波長を連続的に用いて、TRFと蛍光色素のスペクトル分離との組合せを容易にすることを含む。現在の2−DGEプロトコルにスペクトル分離を用いて、分離パターン内のゲル間変動の訂正をDIGE(文献9)およびALIS(文献10)方式などの多重化により容易にする。2−DGE内の内部標準の組込みのためのプロトコルを多重化することは2−DGE法に固有のゲル間変動を訂正するのに極めて重要であり、ゲルベースのプロテオミクスの分野で確立されている。このようにこの実施の形態を用いると、2−DGE内の内部標準のための現在のプロトコルを用いて、CuTEDGE計器を現在のプロテオミクス・ワークフロー内で適用しやすくなる。TRFではなくスペクトル分離による多重化を用いて寿命減衰スペクトルの複雑さを減らすと、CuTEDGE法のバックグラウンド除去能力が向上する。しかしながら、Cy2/Cy3染料対の場合(例4)のように、励起波長と、組み込んだ蛍光色素の蛍光寿命とが両立する場合は、二重FLIM測定法を含めてもよい。
【0017】
十分な感度並びにダイナミックレンジの光子検出器を組み込むことは本発明の別の重要な実施の形態である。伝統的に、ダイナミック検出レンジを広くするために、2−DGEの画像収集計器に光電子倍増管(PMT)技術が用いられてきた。しかし、PMT検出器の量子効率(QE)が限られているため、CuTEDGE応用では検出感度と妥協させることがある。可視範囲内で最大90%のQEを持つアバランシェフォトダイオード(APD)検出器は感度の点で有利であるが、検出のダイナミックレンジに限界があるというマイナス面がある。このように、この技術で知られているように、ユーザの個別のニーズに適合する検出器を備えるCuTEDGE計器の種々のモデルを設計することができる。
【0018】
蛍光色素に特有の強度蛍光減衰曲線を積分して曲線下の面積(AUC)を計算することは本発明の別の中心的な実施の形態である。出力フォーマットとして成分の振幅寄与ではなくAUC(蛍光色素成分の全光子数に対応する)を用いると、ダイナミックレンジが更に1−2桁改善すると推定される。
【0019】
自動化およびユーザの使いやすさは、特に、得られる2−DGE画像の図形的および定量的計算の点で、CuTEDGE計器の中心的要素である。FLIM解析のための自動化プロトコル、バックグラウンド成分の除去、および蛍光色素成分の強度画像のエクスポートが、2−DGEに用いる標準蛍光色素のために含まれる。現在の2−DGE画像解析ソフトウエアを使用しやすくするため、このようにAUCは得られたエクスポート画像内で一次元(Z)の強度として表される。現在用いられている16ビットのフォーマットの代わりに32ビットのタグ付き画像ファイルフォーマット(TIFF)またはその同等物を用いると10桁に近いディジタルダイナミックレンジが得られるので、CuTEDGE技術により達成される画素強度の最大のダイナミックレンジが得やすくなる。
【0020】
自動化を最大にするため、本発明はユーザが定義する多数の異なるプロトコルの連続スキャニング(例えば、多重化に用いる多数の蛍光色素の連続スキャニング)のプログラミングも容易にする。
今日、ゲルベースのプロテオミクスに用いる種々の蛍光プローブに広範囲の蛍光寿命が利用できるので、スキャン時間の最適化のための可変周波数パルスレーザダイオードは本発明の別の実施の形態である。
【0021】
詳細な説明がよりよく理解されるように、またこの技術への本発明の寄与がよりよく認識されるように、本発明の重要な機能をかなり広範囲に概説した。本発明の更なる機能があるが、それは後で説明する。
この点で、本発明の少なくとも1つの実施の形態を詳細に説明する前に、本発明はその応用の際に、以下の記述で説明しまたは図面に示す構造の詳細や構成要素の配置に限定されないことを理解すべきである。本発明は他の実施の形態が可能であり、また種々の方法で実現しまた実施することができる。また理解されるように、ここに用いる表現および用語は説明のためのものであって、制限するものと見なしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】検出されたタンパク質の量に対する、銀染料での実際のタンパク質の量(細い実線)と、最新の蛍光DIGE測定値(点線)と、更にDIGE蛍光色素を用いた最初の原理の証明の測定値の比較として、準最適なTRF計器によるもの(破線)と本発明を用いた測定値によるもの(太い実線)とを示す。
【図2A】CyDye標識化タンパク質のゲル内測定値から得られる蛍光減衰曲線(光子数対時間)の多次指数関数的当てはめの一例を示す。
【図2B】より長い蛍光寿命を持つ蛍光色素を用い、時間ゲート測定のための最適窓を示す、蛍光減衰曲線(光子数対時間)の多次指数関数的当てはめの一例を示す(破線)。
【図2C】累積バックグラウンド蛍光の寄与と全蛍光とを比較するグラフである。標準の非時間分解測定中の発光レベルを示す(破線)。
【図3A】一定光源で励起中のCy3およびCy5の相対蛍光、波長および時間の三次元グラフを示す。
【図3B】時間分解測定(すなわち、パルスレーザで励起)中のCy3およびCy5の相対蛍光、波長および時間の三次元グラフを示す。
【図3C】図3Aに示す蛍光成分と波長成分の二次元表現で、Cy3およびCy5についての励起曲線(実線)および発光曲線(破線)を示す。
【図3D】図3Bの時間成分と光子数成分の二次元表現で、Cy3およびCy5についての寿命発光曲線を示す。
【図4A】Cy2標識化タンパク質を含む2−DGEゲル内の種々の寿命成分の分布を表す疑似カラー寿命画像を示す。時間スケールを右上隅に示し、白は最も長い寿命、黒はより短い寿命を表す。画像の非スポット領域内の黒と白が入り混じって見えるところは、アクリルアミドマトリクスに関連する非常に短いバックグラウンド成分(0.2ns)とより長いバックグラウンド成分(4.2ns)との混合から生じたものである(図5参照)。
【図4B】全蛍光強度(寿命分離なし)が寿命画像によく対応していることを示す対応する従来の2−DGE画像のタンパク質スポットパターンを示し、寿命蛍光を与えることにより、ポリアクリルアミドゲルのバックグラウンド成分をCyDye蛍光色素のものから明確に分離できることを示す。
【図5】一次元勾配ゲル内の長い主バックグラウンド成分(4.2ns)についての光子数に対するアクリルアミド濃度のグラフである。
【図6】可能なCuTEDGE計器設計の略図である。
【図7】タンパク質の定量化に用いられるスポット量に寄与する3つの次元を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明はグローバルプロテオーム研究における蛍光で標識を付けたタンパク質のゲル内検出および定量化のための新しいプラットフォームを提供するもので、基本的にここで詳細に説明する以下の実施の形態を有する。CuTEDGE計器の一般的設計の概要を図6に示す。密封したスキャナ容器内に納めた、または光ファイバケーブルにより外部に取り付けたパルスレーザダイオードを、蛍光色素標識化タンパク質(共有結合またはイオン力による)のゲル内励起に用いる。ゲルを保持するガラスプラテンを動かすことにより、またはゲルプラテンの下の2色性ミラーを動かすことにより動作するスキャナ機構は、ゲルの画素毎のスキャニングを容易にする。動く/静止する2色フィルタを通って放射される蛍光は最適なエミッション・フィルタ(emission filter)を通り、更に光ファイバケーブルを通って、計器の設計が密閉スキャナシステムか外部の高性能のキットかに従って、内部に納めた検出器または外部に取り付けた検出器に導かれる。光子計数板はデータをソフトウエアモジュールにエクスポートし、転送する。このモジュールは、蛍光減衰曲線の完全に自動化された多次指数関数的寿命当てはめにより蛍光色素標識化タンパク質種から生じる蛍光と、他の望ましくないバックグラウンド蛍光から生じる蛍光とを分離するように設計する。蛍光色素に特有の積分された蛍光減衰曲線は、更なる定量的2−DGE画像解析と両立するフォーマットで、蛍光色素毎に1つの強度画像としてエクスポートされる。
【0024】
本発明では、蛍光色素とバックグラウンド蛍光のそれぞれの蛍光減衰時間の固有の差を用いることにより、ゲルベースのプロテオミクスにおける全信号強度と信号対雑音比とを共に大幅に向上させることができる。パルスレーザを用いることにより、図3A−3Dに示すように、蛍光寿命全体の減衰曲線を測定することができる。レーザパルスおよび検出器をゲルにまたがって移動させる機構を用いて、ゲルの画素毎のスキャニングを容易にする。1つの解決法は、ゲルを保持する静止したガラスプラットフォームの下にある一組のミラーをステッパモータコントローラで動かし、ゲルプラットフォームは実際に動かさない。この逆の機構により、スラブゲルを静止状態に保って、壊れやすいポリアクリルアミドゲルが(特に大型のゲルが)破裂するのを防ぐことができる。ミラーを動かすために生じる距離の変化は遅延発生器を適当に置くことにより訂正する。更に、この方式では強い容器でも水がスラブゲル内に浸透しやすくなる。さもないと、多重化に必要な高解像度の連続スキャニング中に完全に乾くことがある。別の解決法はゲルを保持するスキャナ板をステップ状に動かすことである。重要なことは、どちらの機構もパルスダイオードレーザの交換が容易で、励起波長を柔軟に選択できるようにすることである。
【0025】
TRFの最も直接的な使用は、検出した光子放出曲線(photon emission curve)から平均寿命を計算することである。多次指数関数的当てはめをしない一層簡単なTRF測定は、主として既知の蛍光色素が存在するかしないかを決定するのに用いられる。図2Aに示すCy2標識化タンパク質のゲル内検出などの複雑なシステムでは、バックグラウンド成分の寄与と蛍光色素から得られる発光とを識別することができない。一定光源を用いる非TRF測定では全蛍光のピークレベルに対応する一定発光レベルが得られ(実線)、単一指数関数的TRF測定に似て、個々のバックグラウンド成分と全蛍光とを識別することができない。
【0026】
得られる単一指数関数的当てはめでは多数の蛍光成分をうまく分離できないので、バックグラウンドとフルオロフォアからの発光が1つの曲線に集約される(図2Cの実線)。このように、得られる単一指数関数的FLIM測定は既知の寿命の蛍光色素が存在するかしないかを識別するのに適している。その例は「関連技術の説明」に述べた単一指数関数的TRF計器で、これはマイクロアレイ内のヌクレオチドのサンガ(Sanger)DNAシークエンシングおよび検出におけるヌクレオチドの2値分類用に構築された(文献11、12)。CuTEDGE技術が意図する2−DGEゲル画像への応用はDNAマイクロアレイのための前のTRF応用に比べて多くの挑戦を提供する。
【0027】
最も重要なことは、マイクロアレイ内のスポット位置およびスポット寸法が分かるので、スポット境界を予め決定するのが容易になることである。対照的に、2−DGEではスポットパターンがタンパク質の生理化学的特性に基づくので、スポット寸法もスポット位置も分からない。スポット分離パターン内のゲル間変動が大きいと2−DGE画像内のスポット検出および定量化は更に複雑になる。マイクロアレイ内で用いられる固い表面は2−DGEで用いられるポリアクリルアミドゲル・マトリクスよりはるかに均質である。2DE内のタンパク質のゲル内の局在性のために、バックグラウンド蛍光はマイクロアレイ内のヌクレオチドの検出に用いられるオントップ混成より複雑になる。このように、2−DGE画像収集にはマイクロアレイ画像化システムに比べて、バックグラウンド検出および除去の点ではるかに強いシステムが必要である。
【0028】
バックグラウンド蛍光は従来の蛍光応用では定量化できないので、バックグラウンド放射(background emission)は、蛍光で標識を付けた分子を囲む画素の強度の評価により推定しなければならない。2−DGE画像内のバックグラウンド除去のために現在利用可能なアルゴリズムはあまり正確ではなく、これらのアルゴリズムは再現性の点で強くないので定量的解析にかなりの変動をもたらすことを、われわれはすでに多くの出版物で示した(文献1−4)。
【0029】
バックグラウンド蛍光と蛍光色素の寿命の差は十分大きいので、単一指数関数的TRFを適用すると一定照明測定値を改善することができる。すなわち、時間遅延測定によりバックグラウンド雑音を減らすことができる(図2B)。しかし、バックグラウンド放射を除去することを目的として時間ゲーティングを行うと、一般にフルオロフォアの主発光ピークも除去される(図2B)。蛍光色素の寿命がバックグラウンド成分より十分長い場合は、時間ゲート測定値を用いてバックグラウンド蛍光を定量化から除去することができる。この戦略は信号対雑音比の改善をいくぶん損なうが、存在する成分の寿命が分かれば、複雑な当てはめアルゴリズムのニーズをなくすことができる。したがって、単一指数関数的時間遅延法をマイクロアレイに適用しようとしたこれまでの試みが示すように、感度およびダイナミックレンジの利益は限られる。(文献12)
【0030】
更に、現在2−DGEに最もよく用いられているシアニンベースのフルオロフォア(DIGE CyDyes)の蛍光寿命は、周囲のポリアクリルアミドマトリクスの寿命よりはるかに短い(〜1nsに対して〜4ns、図2A)ので、時間ゲーティング方式は除外される。このように、多次指数関数的減衰のためのデコンボリューションアルゴリズムの使用は、かかる短寿命蛍光色素についてもFLIMベースのバックグラウンド除去を容易にするためのCuTEDGE技術の中心である。
【0031】
時間分解蛍光(TRF)を示す図2Aでは、励起にパルスレーザを用い(時間0)、その後の蛍光減衰曲線を定量化する。Cy2標識化タンパク質のゲル内検出の検出から得られる減衰曲線の多次指数関数的当てはめは、蛍光色素成分(1ns)に加えて、短いバックグラウンド成分(0.2ns)および長いバックグラウンド成分(4.2ns)を示す。図5は、主バックグラウンド成分(4.2ns)の強度と勾配ポリアクリルアミドゲル内のアクリルアミド濃度との強い相関を示し(R2=0.67)、ポリアクリルアミドマトリクスがこのバックグラウンド成分の源であることを示す。成分の寿命はポリアクリルアミド勾配を通して安定しており、成分の強度だけが変化している。このように、CuTEDGE技術に用いられるバックグラウンド除去戦略は強い方法であって、濃度が変化する勾配ゲルにもアイソクラチックゲルにも適用できる。多次指数関数的当てはめはバックグラウンド成分の除去を容易にし、これにより信号対雑音比は大幅に向上する。
【0032】
3重組の(3-plexed set)DIGE蛍光色素(Cy2、Cy3、およびCy5)を用いた原理の証明実験は、バックグラウンド成分と蛍光色素自身の寿命の分布に明確な差があることを示した(図4A)。伝統的な強度画像と疑似カラー寿命画像とを比較すると、タンパク質スポット分離パターンが重ね合わせ可能であることが明らかに分かる。したがって、画素毎に多次指数関数的当てはめを行い、その後に蛍光色素成分を抽出すると、光子レベルでのバックグラウンド除去が容易になる。準最適の計器を用いても、信号対雑音比は現在の最高級のレーザスキャナより10倍以上向上することを原理の証明測定は示した(改良されたTRF顕微鏡の最大測定深さが〜1μmであるのに対して、Typhoonスキャナが測定するゲルの全深さは1mmである)。
【0033】
図1に示すように、2−DGEで用いる種々のタンパク質染料の線形検出範囲(y軸)に対して生理タンパク質の量の範囲(x軸)をプロットした。銀染料などの比色法(細い実線)のダイナミックレンジは一般に1−2桁であるが、最小DIGEなどの蛍光法(点線)の直線的ダイナミックレンジは3−4桁である。現在のTRF測定器を用いた原理の証明測定(破線)は、TRFを標準DIGE測定に適用するとダイナミックレンジを3桁改善することを示した(太い実線)。新しいCuTEDGE計器について概説した実施の形態を実現すると、検出のダイナミックレンジおよび感度は更に2−3桁向上すると推定される(実線のボックス)。このように、この中心的な実施の形態だけで、感度およびダイナミックレンジは2−DGEの現在の画像収集技術より数桁向上することが期待される。
【0034】
測定の特異性のこのような増加は、より高い感度をもたらすだけでなく、散乱効果から交絡因子を除去したり、またはゲルマトリクス自身、ゲル内に残留する溶媒、粒子または細胞残屑を含む、ゲル内に存在する他の蛍光種も除去する。検出の信号対雑音比の向上に加えて、多次指数関数的FLIM方式はその後の画像解析におけるセグメンテーション(スポット検出)および登録(スポットマッチング)に伴う問題を減らすことにも寄与する。かかる問題は自動化スポット検出およびマッチングの膨大なマニュアル編集が現在必要なので、定量的2−DGEワークフローにおける別の大きなボトルネックになっている。したがって、CuTEDGE技術により生成されるきれいなバックグラウンドは、画像調整の自動化を改善し、最終的に画像解析の主観性を減らす。2−DGE解析ソフトウエアで現在用いられているバックグラウンド除去アルゴリズムが導入するソフトウエアに起因する変動もなくなる。なぜなら、かかるアルゴリズムはもう必要ないからである。
【0035】
スペクトル的に分離した蛍光色素を用いる多重化は2−DGE分離技術に固有の大きなゲル毎の変動を補償するための定着した方法である。しかし多くのTRF応用で、多重化は種々の蛍光寿命を持つ蛍光色素を用いて行うが、励起と発光のスペクトルは重なる。CuTEDGE技術の汎用性を最大にするため、われわれはスペクトルと時間の分離を1つの応用内で組み合わせる。すなわち、例2に示すように多数のレーザ波長を励起に用いる。これによりTRFと、例えばDIGE(文献9)およびALIS(文献10)方式に現在用いられているスペクトル分離とを組み合わせるのが容易になり、2−DGEの内部標準のための現在のプロトコルを用いて現在のプロテオミクス・ワークフロー内でCuTEDGE計器を容易に実現することができる。現在の画像収集計装を用いる多重化では、収集時間が長くなっても定量化への影響は全く認められない。
【0036】
図3A−3Dはこれをグラフで示す。ゲルベースのプロテオミクスで用いられる現在のレーザスキャナの場合のように、一定光源で励起中は(図3A)、蛍光色素間のクエンチング(quenching)または重なりを避けるために、励起曲線(図3Cの実線)と発光曲線(図3Cの点線)とは十分分離しなければならない。一定励起のために、重なりは測定中ずっと同じである(図3A)。したがって、測定窓が長くても特定の信号と不特定の(バックグラウンド)信号の増幅は同じである。パルスレーザで励起中は(図3B)、励起源は時間的にも(図3D)スペクトル的にも(図3C)発光から分離される。かかるスペクトル・時間特性は異なる蛍光種の区別に別の次元を加え、光子レベルでのバックグラウンド除去のための手段を提供する(図2参照)。
【0037】
一定光源を励起に用いるために励起と発光のスペクトルの重なりが残るので(図3A)、狭い帯域フィルタを用いる必要がある。対照的に、CuTEDGE技術によるスペクトル・時間分離は励起と発光のスペクトルを時間的に分離するので(図3B)より広い帯域フィルタを用いることが可能になり、その結果、ダイナミックレンジおよび感度が向上する。TRFではなくスペクトル分離による多重化を用いると寿命減衰スペクトルが複雑でなくなるので、CuTEDGE法のバックグラウンド除去能力が向上する。励起波長が一致する場合には、スペクトル分離の方法は多重プローブの同時測定にも用いることができる。われわれの原理の証明測定によると、これはプローブ対Cy2およびCy3の場合であって、共に490nmのダイオードレーザにより十分励起することができる。この場合は、2色性フィルタおよび二重検出器を用いることにより、発光の別々の検出が容易になる(例4参照)。蛍光色素とバックグラウンド成分を共に十分に当てはめることができるような十分大きな寿命の差を持つTRF多重化のための新しい蛍光色素セットが開発されれば、スペクトル分離法は省いてよい。
【0038】
現在の画像収集計器は励起された蛍光色素が放出する光子を検出するのにPMTを用いる。PMTは信号の増幅度は高い(最大106)が、光子計数の効率は一般に低い(QE〜10%)。APD検出器は可視範囲で最大90%の量子効率を示すが、各光子を検出した後の中断時間が長いために、これまで画像収集計器として用いられなかった。APD検出器のアクティブクエンチング(active quenching)の新しい方法によりこの問題がなくなったので、APD検出器を用いると感度およびダイナミックレンジが大幅に向上するであろう。しかし広いダイナミックレンジが必要な場合は、APD型の検出器の最大カウント速度が限られることがやはり制限要因になるであろう。したがって、CuTEDGE計器に適した検出器の範囲があり、応用の必要に従って、個々のCuTEDGE計器の設計において検出のダイナミックレンジと検出の感度とを比較検討することになる。
【0039】
CuTEDGEに用いられる各蛍光色素のスペクトル・時間特性の抽出は信号の定量化への新しい方法の道を開く。現在のFLIM応用では、一般に各成分の信号の振幅を用いて画素内の各成分の寄与を定量化する。CuTEDGE応用では、われわれは代わりに曲線の下の面積(AUC)全体を定量化のために用いる。AUCを用いることは特定の成分毎に当てはまる光子数に対応し、検出の感度並びにダイナミックレンジの向上に寄与する。一定励起を与える伝統的な画像収集では、AUCの積分は振幅の測定に比べて測定のダイナミックレンジの向上が顕著でない。なぜなら、全ての交絡因子がプローブの信号と入り混じって(convoluted)増幅されるからである。CuTEDGEに用いられる多次指数関数的減衰曲線のデコンボリューション(deconvolution)により、蛍光色素に特有のAUCを計算することができる。スペクトル・時間分離を行うと広帯域エミッション・フィルタも使用しやすくなるので、得られる曲線下の容量(VUC)を計算することによる信号対雑音の改善は更に進む。
【0040】
現在のFLIMソフトウエアで利用可能な寿命当てはめアルゴリズムは複雑な人手の支援および評価が必要なので、ユーザはこの分野の深い知識を要求される。対照的に、CuTEDGEの概念は高いレベルの自動化を提供するので、時間分解蛍光の分野の専門知識のないプロテオミクス研究者も時間効率よく正確な測定を行うことができる。ポリアクリルアミド濃度およびバッファが変化しても2−DGE内の蛍光成分の寿命は一定に保たれるので、画素毎の寿命当てはめのための自動化プロトコルと、関係する成分の強度画像のその後のエクスポートは、今日2−DGEに用いられている標準蛍光色素について含まれる。現在の2−DGE画像解析ソフトウエアの使用を促進するため、AUCはエクスポートされる画像内で一次元(Z)の強度として表される(図7参照)。現在用いられている16ビットのフォーマットの代わりに32ビットのグレースケール画像ファイルフォーマットを用いると10桁に近いディジタルダイナミックレンジを与え、CuTEDGE技術により達成されるダイナミックレンジを容易に数桁も改善する。計器の柔軟性を最大にするために、ユーザが誘導する当てはめのため、並びに自動化スキャニング用のルーチンの構築のためのソフトウエアも提供し、新しい蛍光色素またはゲルマトリクスのためのプロトコルを容易に実現することができる。
【0041】
2−DGEは時間がかかるので、今日の大規模なプロテオミクス研究での有用性が限られることが多いので、自動化は全てのプロテオミクス・プラットフォームにおいて最も重要である。したがって、上に述べた自動化された寿命当てはめおよびその後の蛍光色素成分のための強度画像の計算に加えて、ユーザが定義する多数のプロトコルの自動化された連続スキャニングはCuTEDGE計器の標準的な機能である。時間効率の他に、この機能は種々の蛍光色素の光露出を最小にするのにも寄与する。連続スキャンは、最小DIGEプロトコルで例示されているような多重化を促進する(例2)。連続スキャンの他の応用は、飽和DIGEの後のSYPRO(TM)Rubyによる全タンパク質の検出(例5)、または追加のCyDyeによる4重化(例4)を含む。
【0042】
CuTEDGE計器は可変周波数パルスレーザ(例えば、0.1−40MHz)を備えており、現在2−DGEに用いられている広範囲の蛍光色素の検出および定量化に用いられる方法を微調整することができる。例えば、ルテニウム複合体について報告された〜350−500nsの極めて長い寿命(文献7,8,13)は時間遅延の累積測定方式を必要とする(図2B、例1)が、例えば、CyDyesの寿命スパンがはるかに短い(〜1ns(文献8))ことが示すように、バックグラウンドから得られる減衰曲線をその後除去したFLIM(図2A、例2)はこれらの蛍光色素について最大感度を得るのに一層適当である。可変周波数モードを用いると後者のスキャン時間は非常に短くなる。
【0043】
上の説明に関して、理解されるように、サイズ、材料、形状、機能および動作方法、組立ておよび使用の種々の形態を含む本発明の部分の最適な次元関係は当業者に容易に明らかである。
したがって、上に述べたことは本発明の原理の単なる例示と見なすべきである。更に、多くの修正および変更は当業者にすぐに思い浮かべられるので、図示し説明した構造および動作に本発明を厳密に限定することは望ましくなく、したがって、全ての適当な修正および同等物は本発明の範囲内に入るものとする。
【0044】
(例1)
この例では、タンパク質をまずラットの気道から溶解洗浄により隔離する(文献14)。これは、2−DGE互換の尿素ベース溶解バッファ(7M尿素、2Mチオ尿素、4%w/vCHAPS、0.5%トリトンX100、2%v/vプロテアーゼ阻害剤カクテル)内の気道上皮プロテオームを瞬時に可溶性にする隔離法である。サンプルのタンパク質濃度はブラッドフォード(Bradford)の方法を用いて決定し、2−DGEを用いて分離する。400μgのタンパク質/サンプルの部分標本を溶解バッファで350μlまで希釈し、適当なpH範囲用のIPGバッファを1%v/vの最終濃度になるまで加える。タンパク質サンプルを室温で一晩再水和によりIPGストリップ(GE Healthcare)の上にロードして、MultiphorII電気泳動ユニットおよびEPS3501XL電源を20℃で用いて、次の勾配プロトコル(0−50Vで1分、50Vで1時間、50−1000Vで3時間、1000−3500Vで3時間、3500Vで19時間(全部で74.9kVh)で等電点電気泳動法(IEF)を行う。
【0045】
IEFの後に、ストリップを平衡バッファ(50mMトリス−HCl pH8.8,6M尿素、30%グリセロール、2%SDS)内で2x15分間培養する。第1の培養で65mMのDTT、第2の培養で10mMのヨードアセトアミドを組み込むことによりスルフヒドリルの還元(reduction)およびアルキル化を行う。次にストリップを20cmx25cmの10%T SDS−PAGEゲル上にロードし、0.5%のIsoGelアガロースを用いてシールする。第2の次元の分離を、10℃、14mA/ゲルでエタン・ダルト(Ettan Dalt)電気泳動システム(GE Healthcare)内で、25mMのトリス、192mMのグリシン、および0.5%のSDS内で染料フロントが18cm移動する(〜18時間)まで行う。
【0046】
次にポリアクリルアミドゲルをガラスカセットから取り除き、メーカのプロトコル(Molecular Probes、Eugene、OR)に従ってSYPRO Ruby(TM)染料を用いてタンパク質を可視化する。手短に述べると、2−DGEゲルを7%の酢酸および10%のエタノール内で2x30分間固定し、次に100%のSYPRO(TM)Ruby染色溶液内で一晩培養する。次に、2−DGEゲルを100%のメタノール内で5分間脱染してゲル表面の染料粒子を除いた後、水中で2x15分間平衡させる。
【0047】
SYPRO(TM)Ruby染色した2−DGEゲルをCuTEDGEスキャナのガラスプラテン上に直接置き、20−100μmの画素寸法を持つ時間遅延多次指数関数的寿命測定レジメン(regimen)を用いてタンパク質を可視化する。励起は波長490nmのパルスダイオードレーザにより0.1−0.5MHz(2−10μsサイクル)の低いパルスレートで行い、SYPRO(TM)Ruby内の蛍光Ru複合体の極端に長い寿命を完全に減衰させる。
【0048】
発光はPMT検出器を用いて検出し、610±50nm(610bp100)の帯域エミッション・フィルタまたは600nmのロングパスフィルタを適用する。データは、最大4つの異なる減衰アルゴリズムを同時に当てはめる能力を有する多次指数関数的蛍光減衰当てはめソフトウエアモジュールにエクスポートする。SYPRO(TM)Rubyタンパク質染料内に用いるルテニウムII−トリス(バソフェナントロリンジスルホネート(bathophenanthrolinedisulfonate))(RuTBS)分子の極端に長い蛍光寿命に基づき、時間遅延測定方式を用いてバックグラウンド蛍光を除外する(図2B)。時間間隔10−500nsにわたるRuTBS分子の減衰曲線の曲線下の面積(AUC)を計算し、スキャナ位置の所定のX,Y座標の画素強度と定義する(図7参照)。
【0049】
時間遅延測定を行うと、SYPRO(TM)Ruby染料(610bp30)に通常用いられるものより広い帯域エミッション・フィルタにより選択性を保持しやすい。なぜなら、マトリクスおよび生体分子からの自動蛍光の大部分は最初の5ns内に起こるからである。より広い帯域フィルタによりRuTBSの広い発光ピークの大部分を検出することが可能になり、その結果感度が向上する。スキャンが完了した後、X,Y座標毎の得られるAUC値を32ビットのグレースケール・ティフ(tiff)ファイル内に合併する。これは最適な2−DGE解析ソフトウエアで解析することができる。
【0050】
(例2)
喫煙者および喫煙未経験者から気管支肺胞洗浄により隔離したマクロファージを、2−DGE溶解バッファを用いて可溶性にする(例1参照)。研究に含まれた全ての人からの同じ量のタンパク質をプールして内部標準を作成し、メーカの推薦(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)に従ってNHSエステル共役Cy2(最小DIGE試薬)で標識を付ける。喫煙者および喫煙未経験者からのタンパク質サンプルを無作為に2つのグループに分け、Cy3およびCy5最小DIGE試薬でそれぞれ標識を付ける。例1に述べたプロトコルに従って、2−DGEゲル上でCy2標識化内部標準を1つのCy3および1つのCy5標識化サンプルと共に分離する。3つの異なるタンパク質標識を、スペクトルおよび時間分解蛍光の組合せを用いた3つの異なるスキャニングプロトコルの自動化されたシーケンスで次のように可視化する。
【0051】
A)Cy2蛍光色素(内部標準)を、波長490nm、パルスレート40MHz(25nsサイクル)のパルスダイオードレーザで励起する。50psの応答速度を持つAPD検出器を用いて発光を検出し、520±20nm(520bp40)の帯域エミッション・フィルタを適用する。
B)Cy3蛍光色素(サンプル)を、波長532nm、パルスレート40MHz(25nsサイクル)のパルスダイオードレーザで励起する。50psの応答速度を持つAPD検出器を用いて発光を検出し、580±10nm(580bp20)の帯域エミッション・フィルタを適用する。
C)Cy5蛍光色素(サンプル)を、波長640nm、パルスレート40MHz(25nsサイクル)のパルスダイオードレーザで励起する。50psの応答速度を持つAPD検出器を用いて発光を検出し、670±10nm(670bp20)の帯域エミッション・フィルタを適用する。
【0052】
各スキャニング手続きからのデータを、複数の減衰アルゴリズムを同時に当てはめる能力を有する多次指数関数的蛍光減衰当てはめソフトウエアモジュールにエクスポートする。CyDyeの減衰時間は比較的短い(0.9−1.5ns)ので、各CyDyeに対応する全減衰曲線の下のAUCを画素毎に計算する(図2A)。減衰曲線の多次指数関数的当てはめにより、特定の波長のそれぞれの光子レベルでのバックグラウンド放射を容易に除去することができる。これはソフトウエアモジュール内の自動化機能として与えられる(図6)。各X,Y毎に得られるAUC値を、DIGE機能を持つ2−DGE解析ソフトウエアで解析するのに適した3つの別個の重ね合わせ可能な32ビットのグレースケール画像ファイルに合併する。
【0053】
(例3)
例2に述べたプロトコルの追加のステップとしてSYPRO(TM)Ruby染色を行って、DIGEゲル内の全タンパク質含有量の定量化を容易にする。現在の技術では、スペクトルが重なるために(特にSYPRO(TM)Ruby、Cy3、およびCy5の発光曲線に関して)、DIGEとSYPRO(TM)Ruby蛍光色素とを同じ2−DGEゲル内で用いることができない。本発明の実施の形態は時間次元を用いて、これらを標準プロトコルに合併するのを容易にする(図3に例示するように)。例2に概説した手続きが終了した後、全タンパク質含有量を定量化するためのSYPRO(TM)Ruby染料を用いる後染色を、例1に概説したステップBおよびCに従って行う。
【0054】
(例4)
本発明では、Cy5.5またはCy7などの追加のCyDyeを用いた4重化DIDE解析が容易になる。第4のサンプルに追加のCyDye−NHS−エステル共役で標識を付け、例2で述べたように、Cy2標識化内部標準、Cy3標識化サンプル、およびCy5標識化サンプルで共に分離する。Cy7蛍光色素を組み込む場合は、波長735nm、パルスレート40MHz(25nsサイクル)のパルスダイオードレーザと、780±30nm(780bp60)のエミッション・フィルタで励起して、可視化ステップを例2に追加する。Cy5.5を組み込む場合は、二重検出器を用いる別の方法を適用すれば全スキャン時間を大幅に減らすことができる。原理の証明測定から、Cy2およびCy3の励起波長の重なりは、490nmの単一ダイオードレーザで両蛍光色素を励起するのに十分であることが分かった。
【0055】
放射光線(emitted light beam)を波長に基づいて分割するのに2色フィルタを適用すると、二重検出器を用いることにより両方の蛍光色素からの発光を同時に検出することができる。Cy5とCy5.5のスペクトルの重なりは染料対Cy2/Cy3のものに似ているので、640nmのパルスレーザと、適当な2色フィルタとエミッション・フィルタ670BP20および71BP40nmとの組合せとをそれぞれ用いて、単一スキャン/二重検出法をこの染料対にも適用することができる。各検出器/スキャンプロトコルからのデータは多次指数関数的蛍光減衰当てはめソフトウエアモジュールにエクスポートする。各CyDyeに対応する当てはめた減衰曲線の下のAUCは画素毎に計算する。減衰曲線の多次指数関数的当てはめにより、各特定の波長の光子レベルでのバックグラウンド放射を容易に除去することができる(図6)。各X,Y座標毎に得られるAUC値を、DIGE機能を持つ2−DGE解析ソフトウエアで解析するのに適した4つの別個の重ね合わせ可能な32ビットのグレースケール・ティフファイルに合併する。
【0056】
(例5)
この例は、最近公表された、Spiess他(文献15)が飽和DIGE多重化を用いて、酸化剤に曝した後のシステインの酸化すなわち付加物形成を検出したという、タンパク質チオールのレドックス状態を決定するための方法の変更を含む。手短に述べると、非チオ尿素溶解バッファを用いて溶解洗浄により気道上皮タンパク質を隔離し(文献14)、還元したチオールに標識を付けるために過剰なマレイミド共役Cy3標識(250nM Cy3/mgタンパク質、>10倍過剰)で培養する。自由(過剰)Cy3標識の加水分解を完全にするために培養を16時間行う。次に、トリブチルホスフィンを24mMの最終濃度になるまで加えてジスルフィド結合を還元する。Cy5マレイミドを用いる第2の飽和標識化反応を行い、還元されたジスルフィド結合のシステインに標識を付ける。区別して標識を付けたタンパク質サンプルを、例1に述べたように2−DGEにより分離する。元の方法では、一定光源を励起に用いるTyphoon8600蛍光スキャナ(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA,GE Healthcareの一部門)を用いてCy3およびCy5のレベルを定量化した。銀染料により決定された全タンパク質含有量(図1参照)を正規化に用いた。
【0057】
本発明により、上に述べた方法の感度、特異性、およびダイナミックレンジを、例2および例3に述べたプロトコルの組合せにより改善することができる。手短に述べると、これは、例2に述べたCuTEDGE技術を用いてCyDyeを可視化した後、例3に述べたCuTEDGE SYPRO(TM)Rubyプロトコルを用いて全タンパク質含有量を定量化することを含む。
【0058】
(例6)
ぜんそく患者並びに健康な対象群から得られるブロンキオアルベオラ(broncheoalveolar)洗浄(BAL)流体からのタンパク質を、免疫ブロット法によりIL−13含有量について解析する。手短に述べると、メーカの使用説明書(Millipore,Bedfont,OR)に従ってBioMax遠心フィルタを用いてBAL流体タンパク質を濃縮し、例1に述べたように2−DGEで分離する。電気泳動の後に、ISO−DALTシステムを10℃、250mAで19時間にわたって、25mMのトリス、192mMのグリシン、10%(v/v)のメタノール内で用いて、タンパク質をSequiblot(TM)ポリビニルジフルオライド(PVDF)膜(0.2μmの細孔サイズ)にブロットする(blotted)。その後、ミルクタンパク質で膜のブロッキングを行い、PVDF膜をモノクローナル抗IL−13一次抗体で培養する。一次抗体はCy5共役抗マウス二次抗体を用いて検出する。
【0059】
Cy5標識を640nmのパルスダイオードレーザ(40MHz)で励起して可視化し、50psの応答速度を持つAPD検出器および670bp20エミッション・フィルタにより蛍光を定量化する。データは、多数の減衰アルゴリズムを同時に当てはめる能力を有する多次指数関数的蛍光減衰当てはめソフトウエアモジュールにエクスポートする。減衰曲線全体の下のAUCを画素毎に計算する。減衰曲線の多次元当てはめにより、各特定の波長の光子レベルでのバックグラウンド放射を容易に除去することができる。各X,Y座標毎に得られるAUC値を、2−DGE解析ソフトウエアで解析するのに適した32ビットのグレースケール・ティフファイルに合併する。
【0060】
本発明について特定の実施の形態を参照して説明したが、認識されるように、多くの変更、修正、および実施の形態が可能である。したがって、全てのかかる変更、修正、および実施の形態は本発明の精神および範囲内にあると見なすべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質に結合された蛍光色素をパルスレーザスキャナで励起して画素毎のレベルで蛍光寿命画像化測定値を与えることを含む、二次元ゲル電気泳動の画像収集の方法。
【請求項2】
前記パルスレーザスキャナは密閉したスキャナ容器内に納めたダイオードレーザである、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項3】
前記パルスレーザスキャナは光ファイバケーブル・コンセントにより外部に取り付けて、用いる励起波長に最適の柔軟性を与える、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項4】
前記方法はグレードアップした現在の計装で行う、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項5】
前記方法は完全に閉じたスキャナシステムで行う、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項6】
蛍光減衰曲線の多次指数関数的当てはめを用いて、後でバックグラウンド除去を行うために、蛍光色素標識化タンパク質種から生じる蛍光と、ゲルマトリクス自身、ゲル内に存在する溶液または粒子、または散乱効果などの他の源から生じる蛍光とを分離することを更に含む、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項7】
励起のために多数のレーザ波長を連続的に用いて、時間分解蛍光と蛍光色素のスペクトル分離との組合せを容易にし、スペクトル分離による多重化を用いて寿命減衰スペクトルの複雑さを減らすことを更に含む、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項8】
二重蛍光寿命画像化測定がある、請求項7記載の画像収集の方法。
【請求項9】
前記蛍光色素に特有の強度蛍光減衰曲線を積分して曲線の下の面積を計算することを更に含む、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項10】
自動化およびユーザが使いやすい機能を組み込むことを更に含む、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項11】
前記自動化およびユーザが使いやすい機能は、得られる一次元または二次元のゲル電気泳動の図形的および定量的計算、蛍光寿命画像化解析のための自動化プロトコル、前記バックグラウンド成分の除去、および二次元のゲル電気泳動に用いられる標準蛍光色素のための蛍光色素成分の強度画像のエクスポートの少なくとも1つを含む、請求項11記載の画像収集の方法。
【請求項12】
自動化を最大にし、多重化に用いる多数の蛍光色素の連続スキャニングを含むユーザが定義する多数の異なるプロトコルの連続スキャニングのプログラミングを容易にすることを更に含む、請求項1記載の画像収集の方法。
【請求項13】
ゲルベースのプロテオミクスに用いる蛍光プローブと、スキャン時間の最適化のための可変周波数パルスレーザダイオードとを用いることを更に含む、請求項1記載の画像収集の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−521247(P2011−521247A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509961(P2011−509961)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056072
【国際公開番号】WO2009/141349
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510305767)ヒカリ バイオ エービー (1)
【Fターム(参考)】