説明

細孔を有する薄膜の測定方法とそのシステム

【課題】細孔を有した薄膜に対して超臨界流体とエリプソメータを利用して膜厚を計測する方法において、容器の窓における光弾性効果を補正する方法を提供
【解決手段】あらかじめ大気中で試料50の反射光の偏光状態を測定し,続いて試料を超臨界流体容器内に配置し超臨界流体を封入ないし流通させた状態で反射光の偏光状態を測定し,続いて試料を超臨界流体容器内に配置し超臨界流体を封入ないし流通させた状態でプローブ材料を添加し偏光状態を測定し,前記大気中偏光状態と前記超臨界流体中偏光状態とから入力窓110と出力窓112の光弾性効果を求め,さらに入力窓と出力窓の光弾性効果の結果を利用し,プローブ材料を添加した場合の偏光状態から,超臨界流体中にプローブ材料を添加した場合の試料の光学的状態を求める、細孔を有する薄膜の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細孔を有した薄膜に対して超臨界流体とエリプソメータを利用して膜厚を計測する方法において、容器の窓における光弾性効果を補正する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高性能化に伴い、半導体デバイスの高集積化が進んで微細化が進み、配線ルールは0.1μm以下の領域へと開発が進んでいる。この配線に使用するCuの成膜方法に関しては、スパッタ法、CVD法、メッキ法などが一般に知られているが、いずれも微細配線を考えた場合には限界があり、0.1μm以下でかつ高アスペクト比の微細パターンとして効率よくCuを成膜することは困難である。そこで、これらに適した方法として超臨界状態の媒体を用いたCuの成膜方法が提案されている。(特許文献1)
【0003】
このような配線のプロセス微細化に伴って、シリコン基板上に形成されたトランジスタとトランジスタの間隔が狭まってきているため、これを接続する銅などによる配線の配線寄生容量が増大してしまい、その結果LSIの動作消費電力が増大してしまうという課題を抱えている。そこで、回路の低消費電力化を図るためには、配線寄生容量を低減する必要があるが、その手法として、誘電率が低い配線間層間絶縁膜の開発が進められている。この方法として絶縁膜内に細孔を導入することにより誘電率を2.5以下まで低減させる多孔質Low−k膜(Low−k:低い比誘電率)の研究が行なわれている。(特許文献2)
【0004】
細孔を増加させることにより低誘電率化に貢献するが、一方機械的強度の面ではマイナスであり後工程における劣化が発生しやすくなる。また,吸湿,ガスや薬液の浸透などによる劣化も生じる。多孔質薄膜の細孔構造評価が薄膜の品質を確保するため非常に重要なため、よりよい方法が追求される。また上述のとおり超臨界流体中で、上記多孔質膜の生成が可能で、さらにLow−k膜化まで一連に行うことができうるので、生産プロセスの効率上、細孔構造評価も上記プロセスに連接(インライン)した環境で行われることが好ましい。
【0005】
たとえば、従来技術の一つとして、ポジトロニウム消滅寿命分光法(PALS法)があるが、この方法は試料に陽電子を照射し発生したポジトロニウムの消滅時間を測定することで薄膜構造を評価するので、加速器を用いる必要があって工場や研究のインライン測定はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−225152
【特許文献2】特開2009−147096
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおりの従来方法では、細孔を有する薄膜の精製工程を終了したのちに、再度時間をかけて計測をしなければならない。そのため、容易に品質管理するこができない。発明者は、超臨界流体中でこの細孔構造薄膜の生成方法を研究するのに合わせて、その生成過程で品質確認用のデータを計測する方法を鋭意検討してきた。そこで、将来的なプロセスとして細孔の生成のみならず、細孔付き薄膜形成とする超臨界流体利用生成法の品質を管理する方法としては、生成プロセスに連携した管理方法が望まれた。
【0008】
薄膜が細孔を有している状態の屈折率とこの細孔が物質で埋められている状態との屈折率の違いがあることが知られているが、容易に細孔内へ物質を吸着し吸着量を測定することを可能とする方法を見いだすことを目的とした。
【0009】
そこで、超臨界流体は気体と液体の性質を併せ持つ特異な流体であり、本発明ではその低粘性、高拡散性に着目し、微細構造への浸透性の高さを用いた。また、偏光解析法を用いた計測は、非接触、非破壊、高速測定、高精度といった特長があるので、この2つを併用することで高速、かつ高感度に微細孔構造を評価できると考えた。
【0010】
しかし、超臨界流体状態における耐圧容器の窓には、圧力に応じたフランジ締め付け力が掛かり、さらに超臨界流体の内圧と加温の影響を受けて光を透過するガラス窓に光弾性効果(後に説明する光の偏光位相差と遅延)が発生する。偏光解析法を利用して測定をする際はこの効果を補正する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、
あらかじめ大気中で試料の反射光の偏光状態を測定し,続いて試料を超臨界流体容器内に配置し超臨界流体を封入ないし流通させた状態で反射光の偏光状態を測定し,続いて試料を超臨界流体容器内に配置し超臨界流体を封入ないし流通させた状態でプローブ材料を添加し偏光状態を測定し,前記大気中偏光状態と前記超臨界流体中偏光状態とから入力窓と出力窓の光弾性効果を求め,さらに入力窓と出力窓の光弾性効果の結果を利用し,プローブ材料を添加した場合の偏光状態から,超臨界流体中にプローブ材料を添加した場合の試料の光学的状態を求める、細孔を有する薄膜の測定方法である。
これによって、薄膜の細孔状態を検定する方法が提供できる。
【0012】
そして、請求項2の発明は、
高圧に耐えうる耐圧容器と、この耐圧容器に取り付けられて光を受け入れて透過する入力窓と、この耐圧容器の中の光を外に導出する出力窓と、前記容器の中に設置されて細孔を有する薄膜試料を載置する試料台と、この耐圧容器内を温めるヒーターと、前記耐圧容器に接続されて高圧と高温で超臨界状態になるからなる媒体を高圧供給する充填ポンプとからなる超臨界流体容器であって、発光を行う光源と、この光源からの光を受け入れて前記入光窓からの光が前記試料台上に載置された試料面で反射し出力窓を通過した偏光の状態を検出する装置と,前記超臨界流体容器内に注入され前記試料台上の薄膜試料の細孔に含浸するプローブ材料を送出するプローブポンプと、前記反射光の偏光状態基づいて前記薄膜試料の膜厚保変化を検定する機能を備えたことを特徴とする、細孔を有する薄膜の測定システムであることを要旨とする。
これによって、薄膜の細孔状態を検定システムが提供できる。
【発明の効果】
【0013】
製造ラインから取り出して別検査システムに設置する必要なく、細孔を含む多孔質薄膜形成工程内で検査できるようになる。またその際、容器の光学窓ガラスに発生する光弾性ひずみ(超臨界流体環境の高圧高温下における窓ガラスのひずみ)を補正した正しい値を導く方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のシステムを説明した図である。
【図2】本発明の計測ステップを示すフローチャートである。
【図3】補償子の方位角を示す図である
【図4】補償子の方位角からW・Wを決定するためのグラフである。
【図5】薄膜内に細孔が形成されている概念図である。
【図6】偏光のパターンを示した図である
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
(薄膜の説明)
まず初めに、以下で述べる細孔がある薄膜(多孔質薄膜)を簡単に説明する。
図5に概略図を示したが、試料50は主体をなす薄膜52と、この薄膜52に内包される細孔54とからなり、この試料50には今回は詳細説明を省略するパターニングの工程で集積回路用の配線56、配線58が形成される。配線56と配線58との間には寄生容量が存在するが、これが電気信号の伝達に遅延を生じさせる。特に近年では配線の高精細化が進み、配線56、配線58自体のサイズも小さくなってきているうえ、この配線56、配線58との間の距離も縮まってきていることから、上記寄生容量が大きくなり無視できなくなってきている。
【0016】
背景技術で述べたとおり、絶縁膜となる薄膜52では細孔54を付与すると誘電率が下がるので効果的であるが、一方力学的強度も下がることから、基板としての基礎機能を維持する範囲でしか細孔54を含ませることはできない。
これら薄膜52の作成方法は広く公知となっているいくつかの方法で実現可能であることから、ここでは説明を省略する。
【0017】
(システム構成)
図1を用いて本システムの構成を説明する。
【0018】
(超臨界流体容器の説明)
本システムの主要部分は超界流体容器10である。この、耐圧容器100と計測光を入力する為の入力窓110、計測する対象である試料50を載置するための載置台114、耐圧容器100の内部を高温にするための容器ヒータ116、載置された試料50から反射した光を耐圧容器100の内部から計測光を出力するための出力窓112、で構成されている。この入力窓110と、出力窓112は、後に述べる計測のため取り外し可能に構成されている。これは超臨界状態ではない環境下での計測が必要であるためであって、窓のみが取り外し可能である必要はなく、入力窓110と出力窓112が耐圧容器100にとりついたままで載置台114から取り外し可能であってもよい。
【0019】
(光学系の説明)
つぎに、光学計測系の説明をする。光を発光するためのキセノンランプ200と、このキセノンランプ200から光を受けて試料50へ照射する光について水平偏光と垂直偏光を制御するための偏光子202と、この偏光子202から試料50の面で反射して得られる位相と偏光方向が変化した光を受けて水平偏光と垂直偏光の状態を変化させる補償子204と、この補償子204からの光の偏光状態を検出するための検光子206、光の強度を測定する光検出器208とから形成される計測部分からなる。この計測結果は偏光解析法で得られる。
なお、この偏光解析法の原理については、後に概説する。
【0020】
(充填材料等の制御系の説明)
充填材料ボンベ300には耐圧容器100の内部を超臨界状態に充填するための充填材料が保持されている。この材料として、二酸化炭素、酸素、アルゴン、クリプトン、キセノン、アンモニア、メタン、メタノール、ジメチルケトン、水素、及び6フッ化硫黄、などの物質が利用可能であり本発明では二酸化炭素(CO)を使用した。
【0021】
この充填材料ボンベ300からの充填材料を送出する充填ポンプ302と、後に述べるプローブ材料の流入を制御するためのダイナミックミキサー304と、これから耐圧容器100内部へ送り込む際に適正な温度に加温するためのヒータ306とから構成される充填部分が、耐圧容器100に接続されている。
【0022】
また一方、試料50の薄膜52に内包する細孔54の形成状態を調べるために、この細孔54に充填するためのプローブ材料を保持する為のプローブ材料ボンベ308と、このプローブ材料を送出するためのプローブポンプ310と、プローブの流れを開閉するバルブ312から構成されるプローブ部分がダイナミックミキサー304に接続されている。
【0023】
なお、耐圧容器100内の圧力は、この容器に接続されて内部圧力を監視するバックプレッシャレギュレータ314により、図示を省略した圧力レギュレータで圧力制御する。
【0024】
(光計測の原理)
図6に対して原理を簡単に説明する。
【0025】
本発明では、偏光解析法(以下、これをエリプソメトリという)を使用している。このエリプソメトリを用いた測定系をエリプソメータという。
光は電磁波であり、その電界ベクトルは光の進行方向に対し垂直に振動している。光はその電界ベクトルの振動がランダムな無偏光と、規則的な偏光とに区別される。偏光では、図6に示すように、その電界ベクトルの先端の軌跡が、光の進行方向に垂直な平面内で直線、円、楕円を描いており、この様な光はそれぞれ直線偏光、円偏光、及び楕円偏光と呼ばれている。さらに円偏光と楕円偏光の場合には電界ベクトルの先端の動きが光線を覗き込む方向から見て、左回りの場合と右回りの場合がある。これらの光の偏光状態は進行方向に垂直な平面内で直行する二つの直線偏光の重ね合わせとして考えることもできる。
【0026】
このため、光が対象面の入射に対し平行に振動する直線偏光をp偏光、電場が入射面に対し垂直に振動する直線偏光をs偏光と呼ぶ。p、s偏光を試料に入射させたときp、s偏光の振幅反射係数はそれぞれ異なる。そのため、試料での光反射によりp、s偏光のそれぞれの振幅及び位相は大きく変化する。エリプソメトリでは、反射p、s偏光の振幅比を角度で表したΨと位相差を表した△の二つの値を決定する。つまり、エリプソメータを用いて試料の反射光を計測すると、Ψ△の組み合わせで計測値を得ることができる。なお、試料の複素屈折率をρとすると、
【数1】

の関係がある。
【0027】
本発明の実施説明としては、エリプソメータにおけるこれらの光偏光の説明が、従来よく知られていて多くの文献や製品があることから、簡単に触れる範囲にとどめる。
【0028】
(計測の手順)
次に図2を用いて本発明の手順を説明する。
なお、以下説明で記載した、第1ステップS1、第2ステップS2、第3ステップS3、第4ステップS4、は図2に示したフローチャートの各工程を示す。
【0029】
(第1ステップS1の説明)
まず初めに、常温常圧状態での計測を説明する。後に詳しく述べるが、目的はすでに述
べたとおりで、超臨界状態の高圧力と高温によって光弾性効果を受けている入力窓110と出力窓112の影響を補償するためにこの光弾性効果特定することである。
【0030】
このとき、入力窓110と出力窓112とは耐圧ガラス製であり、取り外しができる構造になっている。S1では、容器(窓の光弾性効果)の影響のない環境での計測となる。
キセノンランプ200から発光された光は、偏光子202を通り直接、試料50の表面に投光される。この試料50から反射した光は、補償子204を通過した後に検光子206と光検出器208とで検出されエリプソメトリ法で計算されて、測定結果として(Ψ0
、Δ0)を得る。なお、添え字のは、試料50の細孔54にプローブ材料が充填されて
いないときの測定結果を示す。なお後のために説明すると、プローブ材料が細孔54に充填されている状態での測定結果を(Ψ、Δ)のように添え字を1に、また超臨界状態下での測定結果を(Ψ’、Δ’) (Ψ’、Δ’)のようにダッシュをつけるこ
とにする。記号については、すでに上述の(光計測の原理)で述べたとおりである。
【0031】
(第2ステップS2の説明)
第2ステップS2では、次の計測をする。
充填材料ボンベ300から充填ポンプ302で二酸化炭素を送出し、耐圧容器100の内部に充填して昇圧する。圧力はバックプレッシャレギュレータ(BPR)240で計測し図を省略した圧力レギュレータで制御した。試料台114の部に設置した容器ヒータ116で加熱し、耐圧容器100内を超臨界状態とした。
このとき、温度100℃、圧力10MPaである。耐圧容器100内は高温になっているので、二酸化炭素を送出する際にプレヒートしなければならないため、ヒータ306を通過させる。
この状態で第1ステップと同様にエリプソメトリ計測を行う。このときの結果が、(Ψ0
’、Δ0’)である。
【0032】
ところで、この第2ステップS2では、入力窓110、出力窓112がともに高圧と高温によって光弾性効果を有している。偏光状態を表すパラメータ行列を、入力窓110がW、出力窓112がWと記載し、圧力も温度もかかっていない第1ステップS1の時の試料50反射面の状態パラメータをSとした場合、この超臨界状態下において光学影響を受けて見える試料50反射面の状態パラメータをSとすれば、
【数2】

と記載できる。
【0033】
(第3ステップS3の説明)
第3ステップS3では、プローブ用材料を添加して計測する。今回はアセトンを使用したが、ヘキサンなど他の材料の使用も可能である。
バルブ312を開放してプローブ材料ボンベ308からプローブポンプ310でアセトンを送入し、ダイナミックミキサー304で混合して耐圧容器100に送り込む。
【0034】
送り込むアセトンの量は図を省略した計量器で制御し、今回はプローブ濃度の影響を確認するため4.3mol%,5.8mol%,15.0mol%と3種類を実験した。ただし、試料50の細孔に十分充填できるだけの濃度が実現されればかまわない。この状態で、計測をした結果を(Ψ1’、Δ1’)とする。プローブが含浸されている状態をもし大気中で測定すればその結果は(Ψ1、Δ1)である。しかし窓の影響によって実際の測定結果は(Ψ1’、Δ1’)となってしまうのである。
この超臨界状態下において光学影響を受けて見える試料50反射面の状態パラメータSは,プローブ物質によって状態パラメータはSからSに変わっているので
【数3】

となる。このSを求めることで(Ψ1、Δ1)を得ることができる。
【0035】
(第4ステップ)
以上第1ステップから第3ステップまで出た結果の、(Ψ、Δ0)、(Ψ’、Δ
’)、(Ψ’、Δ’)をを用いて(Ψ1、Δ1)を求める。
この時に用いる式を一般式として説明する。
【0036】
反射面の状態行列をSとし、偏光子202のパラメータ行列をPとし、検光子206
のパラメータ行列をAとし、キセノンランプ200の出力をLinとし、検出器207に
入射する光の状態をLoutとして、すでに述べた窓の光弾性効果の行列を入力窓110がW、出力窓112がWであるから、超臨界流体容器10の窓効果を精密に記述した式は一般式として次のようになる(ここではジョーンズ形式で記述し補償子を省いて考える)。
【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

ここで,(C),(C)は入力窓110,出力窓112を任意の位相子とみたてた場合の光弾性パラメータでC,Cは方位角,δは位相遅れである。実際に光検出器207で測定されるのは光強度I=Loutout(*は共役複素数を示す)であり,エリプソメータではAやPの情報から(Ψ,Δ)を計算する。この機能は通
常のエリプソメータが具備しているものであるのでここではその説明は省略する。
【0037】
次に第2ステップで得た結果の(Ψ’、Δ’)と,第3ステップで得た結果の(Ψ1’、Δ1’)とから窓の光弾性パラメータ(出力側の窓の行列W1と、入射側の窓の行列
2)を決定し,試料のみの浸透、吸着過程を観測する。
第1ステップの偏光要素の行列はSで既知である。第2ステップの偏光要素の行列はAWPである。第3ステップの偏光要素の行列はAWPである。この時、A、Pは与えるので既知、W、S、Wは未知である。そのためSを用いてまずW、Wを求め次にSをもとめるのである。
【0038】
、W中の4つの光弾性パラメータ(C,C)を決定するために反
射側の窓と検光子の間にある補償子204を利用する。図3に示したように補償子204の方位角をθとする。θ=0を与える空間的な配置はエリプソメータの構成によって異なるが,一般的には入射面に対して45°である。この補償子の位相遅れをδとする。方位角θの補償子の行列をCθとすると,偏光状態を表す行列は、ACθP、となり,Cθは具体的には
【数12】

と書き表せる。実際に光検出器208で測定されるのは光強度I=Loutout(*は共役複素数を示す)であるので,この配置(ACθP)でエリプソメータ
が出力する(Ψ1’、Δ1’)θの結果を用いて(C,C)を決定する。
【0039】
ACθP配置でエリプソメータが出力する(Ψ1’、Δ1’)θ式3から式12から明らかなように複雑な関数であり、Iは補償子204の方位角θに対しては複雑
な非線形の関数になる。従って単純な行列計算では解W,Wは得られないことから、今回はθと(Ψ1’、Δ1’)θの関係を測定し、窓の光弾性パラメータ(C,C)を最小二乗法の最小二乗フィッティングにより求めた。この最小二乗フィッティ
ングを含む行列計算には自作したプログラムを使用したが,非線形のフィッティングであれば数式計算ソフトを用いてもよい。
【0040】
以上の手順で得られた結果の一例を示す。図4に示すように、横軸に補償子204の方位角θ、左縦軸をΨ、右縦軸をΔとし、○点と△点はそれぞれ実際に測定したΨとΔの結果である。この点に沿って描く点線は最小二乗フィッティングを用いて描いた曲線である。以上のようにして窓の光弾性パラメータがこのように決定でき、窓の光弾性効果が補正できるようになった。
【0041】
最後に、エリプソメータの解析ソフト利用してΨとΔから膜厚dと屈折率nを逆算する。この機能も通常のエリプソメータであれば具備しているので詳細な説明は省略する。
【0042】
プローブ物質(細孔の計測を行う検出用物質)にはアセトンを用いた。添加濃度ごと一時間保持した後エリプソメータで測定する。添加濃度は、4.3mol%、5.8mol%、15.0mol%の3通りを実施した。これは、本実験において細孔に十分アセトンが回って充填しているかを確認するためである。
アセトン以外にもヘキサンなどが使える。
【0043】
なお、本発明の広範な実施に有用な、他の超臨界流体の種類の例には、二酸化炭素の他、酸素、アルゴン、クリプトン、キセノン、アンモニア、メタン、メタノール、ジメチルケトン、水素、及び6フッ化硫黄が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0044】
なお,本発明は光学窓の補正手順を提供するものであるので,エリプソメータや光学素子の配置,計算式は上記実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明を利用すれば、次世代微細化プロセスでの低電力・高速化を実現する基板に使用され、配線間寄生容量低減を目的とした低誘電率の多孔質薄膜にかかわる。超臨界流体を利用してこの薄膜を製造した際、その多孔質薄膜の細孔評価方法を提供できる。
【符号の説明】
【0046】
10 超臨界流体容器
50 試料(細孔を有する薄膜:多孔質薄膜)
52 薄膜の基材
54 細孔
56、58 薄膜に形成される配線

100 耐圧容器
110 入力窓
112 出力窓
114 試料台
116 容器ヒータ

200 キセノンランプ
202 偏光子
204 補償子

206 検光子
208 光検出器

300 充填材料ボンベ
302 充填ポンプ
304 ダイナミックミキサー
306 ヒータ
308 プローブ材料ボンベ
310 プローブポンプ
312 バルブ(プローブ用)
314 バックプレッシャレギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ大気中で試料の反射光の偏光状態を測定し,
続いて試料を超臨界流体容器内に配置し超臨界流体を封入ないし流通させた状態で反射光の偏光状態を測定し,
続いて試料を超臨界流体容器内に配置し超臨界流体を封入ないし流通させた状態でプローブ材料を添加し偏光状態を測定し,
前記大気中偏光状態と前記超臨界流体中偏光状態とから入力窓と出力窓の光弾性効果を求め,
さらに入力窓と出力窓の光弾性効果の結果を利用し,プローブ材料を添加した場合の偏光状態から,超臨界流体中にプローブ材料を添加した場合の試料の光学的状態を求める、細孔を有する薄膜の測定方法。
【請求項2】
高圧に耐えうる耐圧容器と、この耐圧容器に取り付けられて光を受け入れて透過する入力窓と、この耐圧容器の中の光を外に導出する出力窓と、前記容器の中に設置されて細孔を有する薄膜試料を載置する試料台と、この耐圧容器内を温めるヒーターと、前記耐圧容器に接続されて高圧と高温で超臨界状態になるからなる媒体を高圧供給する充填ポンプとからなる超臨界流体容器であって、
発光を行う光源と、この光源からの光を受け入れて前記入光窓からの光が前記試料台上に載置された試料面で反射し出力窓を通過した偏光の状態を検出する装置と,
前記超臨界流体容器内に注入され前記試料台上の薄膜資料の細孔に含浸するプローブ材料を送出するプローブポンプと、前記反射光の偏光状態基づいて前記薄膜試料の膜厚保変化を検定する機能を備えたことを特徴とする、
細孔を有する薄膜の測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−52972(P2012−52972A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197237(P2010−197237)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2010年春季<第57回>応用物理学関係連合講演会講演予稿集
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)本出願は、平成21年度独立行政法人科学技術振興機構 地域イノベーション創出総合支援事業(シーズ発掘試験)の成果に基づくものである。
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【Fターム(参考)】