説明

細胞を単離する方法およびキット

標的細胞を溶解しない方法を用いて溶解でき、それにより溶解した非標的物質から標的物質を精製分離できる他の種類の非標的細胞で大部分が構成される試料からの標的成分の示差抽出法が開示されている。典型的な方法の1つは、水性試料からの精子細胞の単離およびそれを行うためのキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願第60/828,537号(出願日:2006年10月6日)および米国仮出願第60/894,818号(出願日:2007年3月14日)に基づく優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
適用なし。
【背景技術】
【0003】
示差抽出(differential extraction)は、他の種類の非標的細胞を含有するかまたは主にそれよりなる試料から標的細胞物質を単離するのに有用である。溶解した非標的細胞から放出された非標的物質から標的細胞を精製分離できるように、非標的細胞は選択的に溶解される。非標的細胞からの混入核酸により標的シグナルがわかりにくくなる場合があるので、このことは、標的物質が、下流の核酸増幅で使用されるかまたは検出される特定の細胞型からの核酸である場合に特に有用である。核酸増幅に使用される核酸鋳型の量は少ないと考えられるので、試料の鋳型における非標的核酸の寄与を抑えるのに特に有用である。非標的物質の混在はまた、他の検出法、例えば標的物質の酵素検出または抗体ベースの検出を妨害する場合もある。精製プロセス中に非標的細胞を溶解することにより、バックグラウンドを抑えることができ、それによって標的物質の検出の感度および/または信頼性を増すことができる。
【0004】
示差抽出が有用な応用例は、法医学試料からの精子細胞の単離、下水、土壌試料、大気試料または体液などの多様な物質からの、生物戦争の病原体として使用可能な生物の単離および細胞試料からの細胞小器官の単離を含む。
【0005】
法医学試料から得られた遺伝物質は、性的暴行の加害者を確認するかまたは無実の容疑者の容疑を晴らすために使用できる。法医学試料から単離された精子細胞から得られた精製DNAは、それに続く遺伝的同一性試験に使用することができる。既知の容疑者の遺伝的プロフィールまたは多数の既決重罪犯に関する遺伝情報を含むデータベースと精子細胞DNAの遺伝的プロフィールを比較することができる。
【0006】
性的暴行事件において、法医学分析のために、膣もしくは直腸スワブまたは精液斑の付着した衣類などの法医学試料が被害者または犯罪現場から入手される。もし試料中に精子細胞が存在すれば、精子細胞からのDNAを単離し、遺伝的同一性試験に用いることができる。しかしながら、性的暴行被害者から得られる膣スワブは、一般的には、比較的少数の精子細胞および被害者由来の多数の上皮細胞を含む。結果として、もし試料中の他の細胞から最初に精子細胞が分離されなければ、法医学試料から精製されるDNAは、上皮細胞DNAの極度の混在に影響を受けやすい。このような混在により、試料からのDNAの遺伝的プロフィールと容疑者またはデータベースのメンバーのDNAの遺伝的プロフィールとの間の一致を立証する能力が妨げられる。従って、DNAを単離し分析する前に、法医学試料中の他の細胞から精子細胞を単離することが望ましい。
【0007】
法医学試料中の他の細胞から精子細胞を単離するために現在使われている技術は時間がかかり大きな労働力を必要とするため、現在のところ処理されていない未処理分の試料が存在する。この未処理分のために、容疑者が特定されなければ試料を処理しないという方針を有する管轄もある。その結果として、処理されていない試料の多くは最終的に廃棄され、試料に含まれる遺伝情報はナショナルデータベースと比較されたり、それに入れられたりすることはなく、それにより、再犯性犯罪者を特定し逮捕するための法の執行能力は低下する。
【0008】
一般的には、非還元条件下でプロテイナーゼKおよび界面活性剤で処理することにより、上皮細胞を含む法医学試料から上皮細胞を選択的に溶解して精子細胞を単離する(Gill et al. Nature 318:577-579, 1985)。上皮細胞の溶解に続いて、遠心分離により無傷の精子細胞をペレット化し、溶解した上皮細胞からのDNAを含む上清を除去する。可溶性上皮細胞DNAの混在を最小限にするために、可溶性上皮細胞DNAを除去する目的で水性緩衝液を用いて精子ペレットを数回洗浄する。このプロセスは、多くの場合、精子細胞の損失を生じ、大変大きな労働力を必要とする。
【0009】
固体支持体(例えば常磁性粒子)に結合した精子細胞特異的ポリクローナルまたはモノクローナル抗体に精子細胞を選択的に結合させることにより、精子と上皮細胞の両方を含む試料から精子細胞が単離されている。固定化抗体に細胞を結合させた後、支持体を洗浄して結合していない細胞を除去する。この方法は大量の抗体を必要とし、従って、比較的費用がかかる。さらにまた、この結合プロセスは効率が悪く、一般的には精子細胞は洗浄工程中に失われ、収率の低下と感度の低下が起こる。比較的低い膣のpHにおいて精子細胞は構造変化を受けるので、多くの精子細胞特異抗体はすべての精液含有試料からの精子細胞に結合しない。加えて、特定の個体において精子細胞表面抗原は変動または変異しているので抗体は効率的に結合できず、結果的に精子細胞収量は低下する。
【0010】
細胞サイズの差異に基づきサイズ選択膜により試料を濾過することにより、上皮細胞を精子細胞から分離することができる。精子細胞は上皮細胞、粘液および細胞残屑中に補足されるようになりがちなので、精子細胞は膜を通過するには大きすぎる塊を形成し、膜は目詰まりを起こす傾向にあり、このことにより、精子細胞の収量が最終的に低くなる恐れがあるのでこの方法には問題がある。加えて、溶解した上皮細胞からのDNAは精子とともに膜を通過し、精子を汚染する。
【0011】
他の方法において、最初に上皮細胞を選択的に溶解し、溶解物を濾過して、可溶性上皮細胞DNAと無傷の精子細胞とを分離することにより精子細胞が単離される。しかしながら、この方法は、膜の目詰まりを含む不都合を有し、これにより精子細胞と上皮細胞DNAとの混在が生じる。
【0012】
生殖医療の分野においては、精子細胞は、セルソーターを用いて新鮮な精液から単離されている。これは有効ではあるが、高価であり、時間がかかり、法医学試料(例えばスワブまたは衣類)から精子細胞および上皮細胞を効果的に回収する方法を扱っていない。
【0013】
スライド上の試料からの精子のマイクロダイセクションは、上皮細胞DNAの混入の無い精子を得るための他のアプローチである。有効ではあるが、このアプローチは自動化の助けとはならず、2以上の寄与者からの精子(レイプ試料ではよくあること)を含む試料における選択バイアスを生じがちである。
【0014】
従って、法医学試料において上皮細胞から精子細胞を分離するための、自動処理に使用できる簡易化した方法が当該技術分野で求められている。
【発明の概要】
【0015】
一側面において、本発明は、第1の細胞を溶解せずに第2の細胞を溶解する条件下で試料を処理して水性溶解物を調製し、試料に有効な力を加えて第1の細胞を含むペレットを形成させ、ペレットと水性溶解物の間にペレット固定キャップを形成させることによる、第1の細胞および第2の細胞を含む試料から第1の細胞を単離する方法を含む。
【0016】
他の側面において、本方法は、無傷の標的細胞小器官をペレット化し、ペレットと水性溶解物の間にペレット固定キャップを形成させることにより、水性溶解物試料から標的細胞小器官を分離することを可能にする。
【0017】
発明の詳細な説明
非精子細胞を選択的に溶解し、ついでペレット固定キャップを用いて溶解した非精子細胞から無傷の精子細胞を分離することにより、非精子細胞、例えば上皮細胞を含む試料から精子細胞を単離するのに適した方法が開示されている。精子細胞の単離を可能にすることに加えて、これらの方法は、2以上の細胞型を含む試料から他の細胞型を単離するのに有用であることが見出された。
【0018】
非標的細胞を溶解するが、標的細胞は溶解しないかまたは非標的細胞より低い程度で溶解する選択条件で選択的に溶解することができる非標的細胞を含むかまたは主にそれよりなる試料から標的細胞を精製するのにこれらの方法は特に有用である。これにより、溶解した非標的細胞からの標的細胞の単離が容易になる。ついで、単離された標的細胞は、例えば、その後の核酸増幅における鋳型として役立たせることができる標的細胞核酸を単離するために使用できる。非標的細胞物質の除去により、標的シグナルを埋没させるかまたはわかりにくくする場合があるバックグラウンド核酸に寄与する非標的細胞からの混入核酸の問題が軽減される。
【0019】
特定の条件下で溶解に対して異なる感受性を有する2以上の種類の細胞を含む出発材料における、細胞から物質を単離することが望まれる任意の応用に本発明の方法を適用できる。本方法は、例えば、下水、土壌試料、大気試料または体液などの、広範囲の潜在的生物学的複合試料からの微生物を精製するために使用できる。例えば、天然に存在する病原体、生物戦争の病原体、有毒カビなどを含む、細菌、ウイルス、酵母および真菌などの微生物は、本発明の方法を使用して精製できる。さらに、本方法は、細胞試料からの核などの無傷の細胞小器官を精製するために使用できる。
【0020】
性的暴行の被害者から得られる法医学試料は、一般的には、多数の上皮細胞と、存在するにしても比較的少数の精子細胞とを含む。遺伝的同一性試験において後に使用する精子細胞からDNAを得るために、結果の解釈を妨害したり複雑化したりする恐れのある可溶性水性物質、特にDNAから精子細胞を単離する必要がある。例えば、溶解した上皮細胞からのDNAは水溶液に可溶性である。
【0021】
十分な時間、(一般的には遠心分離により)試料に力を加えて精子ペレットを形成させ、試料にペレット固定キャップ材料を加えて精子ペレットと水性物質の間にバリアを形成させることにより、試料中の可溶性水性物質から精子細胞を分離する方法を以下に述べる。可溶性水性物質(例えばDNA)は水相にとどまり、ペレット固定キャップによりペレット精子細胞から物理的に分離される。例えば、ペレット固定キャップは、液体を容器に添加するかまたは容器から除去するときに生じうる精子細胞ペレットの崩壊を最小限度にする。本発明によるペレット固定キャップの使用により、混入物質(例えば上皮細胞DNA)の除去が容易になり、精子細胞ペレットの損失が最小限度になる。比較的弱い遠心力により形成されるゆるい精子細胞ペレットは、特に崩壊を受けやすい。従って、本発明の方法は、比較的弱い遠心力しかかけることができないプレートローターにおいて使用するのに適したマルチウェルプレートを使用するハイスループットシステムに特に適している。本方法はまた、比較的強い遠心力下で形成される、きつく詰まった精子細胞ペレットを混入物質から分離するのにも有用である。
【0022】
本明細書において、“精子細胞”は、無傷の精子細胞または本質的に無傷の精子細胞およびその鞭毛または“尾部”を失った精子細胞を含むことができ、精細胞などの未成熟の精子細胞前駆体を含む。精子細胞は、細胞を変化させる環境条件、機械的せん断または化学的処理(例えばプロテイナーゼKまたは他の試薬への暴露)にさらされたものである場合もあるが、これらの細胞、特にそれらの核を保持しているものは本発明の範囲内である。
【0023】
性的暴行被害者からの法医学試料は、一般的には、スワブまたは布(例えば、精液斑を含む衣類からの切り抜き)などの固体支持体上で採取される。スワブまたは布は、試験管または他の適切な容器などの容器に移して、例えば非精子細胞を選択的に溶解する溶解緩衝液などの水溶液に接触させることができる。物質を固体支持体から水溶液に移した後、容器を遠心分離して水性物質内の精子細胞を沈澱またはペレット化させる。場合により、固体支持体の通過を効果的に阻止するが液体試料の通過を可能にする機械的バリアを備えた第2の容器に固体支持体および水性緩衝液を移すことにより、水性緩衝液および精子細胞の回収を容易にすることができる。固体支持体からの水性試料の回収および精子細胞のペレット化を1回の遠心分離により達成することができる。
【0024】
上皮細胞を選択的に溶解するために使用する溶解緩衝液は、適切にはプロテイナーゼKおよびルコシルまたはSDSを含む。場合により、水相の明視化を高めるために、溶解緩衝液は任意の適切な水溶性色素(例えばFD & C Yellow)を含むことができる。上皮細胞の溶解を可能にするが、精子細胞の溶解を促進しない条件下で、プロテイナーゼKなどの適切な量のプロテアーゼで物質が処理される。暴露されるタンパク質が比較的多数のジスルフィド結合を含むので、精子細胞はプロテアーゼに比較的抵抗する。従って、還元剤の存在によりジスルフィド結合は切断され、プロテアーゼで処理された精子細胞の溶解が促進されるので、還元条件は示差溶解(differential lysis)に適していない。ジギトニンまたはTergitolなどの非イオン性界面活性剤はまた、種々の細胞を選択的透過または溶解させるのに使用できると考えられる。その構造から、上皮細胞は精子細胞よりもジギトニンによる浸透化または溶解により反応性が高いと予想される。同様に、異なるコレステロール量を有する細胞は、ジギトニンによる浸透化に対して示差感受性(differential susceptibility)を示すことが予想される。
【0025】
プロテイナーゼKおよび界面活性剤で処理した後、溶解した上皮細胞および無傷の精子細胞を含む溶解物は、遠心分離されてペレットと精子細胞になる。次いで容器にペレット固定キャップ材料を移して、ペレット精子細胞と水性物質の間にペレット固定キャップを形成させる。好ましくは、ペレット固定キャップ層は、精子細胞ペレットの真上の、水性物質の下端付近に移される。次いで水性物質は取り除かれるが、ペレット固定キャップはペレット上の同じ位置にとどまっている。
【0026】
以下の実施例において、細胞ペレットと非標的物質(例えば水性物質または非標的細胞溶解物)の間にペレット固定キャップを形成させるために、MagneSil(登録商標)常磁性粒子(Promega Corp.)およびDNA IQ(登録商標)樹脂(カタログ番号 A8252, Promega Corp., Madison, WI)をペレット固定キャップ材料として用いた。ペレットの混和と崩壊を防ぐために、水性物質の除去の間、細胞ペレットの下に磁石を置くことによりペレットと非標的物質の間の同じ位置にペレット固定キャップを維持した。水性物質を除去し、細胞ペレットを洗浄した後、細胞からのDNAが粒子に結合するのを可能にする条件下で、細胞ペレット中の細胞を溶解した。
【0027】
水性物質の除去の間、精子細胞ペレットの崩壊を防ぐために、限定するものではないが、Terebaらへの米国特許第6,673,631号(発明の名称:“Simultaneous Isolation and Quantification of DNA”)およびSmithらへの米国特許第6,027,945号(発明の名称:“Methods of Isolating Biological Target Materials Using Silica Magnetic Particles”)に記載されているものを含む適切な常磁性材料を用いて細胞ペレット上にペレット固定キャップを形成させることができると考えられる。本発明の好ましい実施形態において、磁性または常磁性ペレット固定キャップ材料の全量は約40ul以下である。本発明の好ましい実施形態において、磁性または常磁性ペレット固定キャップ材料の全量は試料あたり約10ul以下である。本発明の最も好ましい実施形態において、磁性または常磁性ペレット固定キャップ材料の全量は試料あたり約2ul以下である。
【0028】
磁性粒子は鉄系材料を含む。具体的にいえば、ニッケルまたはコバルトを含む材料などの、他の磁性または常磁性材料を使用できると考えられる。磁性粒子は、米国特許第6,855,499号に記載されているような、シリカまたはセルロース系化合物(例えば、セルロース、デキストランまたはアガロース)を含む材料でコーティングされていることができる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態は、シリカ酸化物(silaceous oxide)コーティングにより覆われた2以上の磁性または常磁性コアを各粒子が含む凝集磁性粒子または常磁性粒子を用いる。このような凝集磁性粒子の好ましいサイズは、粒子の最小寸法で1〜15ミクロンである。これらの凝集磁性粒子の好ましい粒子BET表面積は、窒素吸収により測定するとき、約1m2/gm〜約50m2/gmである。
【0030】
ペレット固定キャップに使用する他の適切な材料には、3Mから市販されている成形用磁性材料などの磁性材料を含む織布または不織布を含む少なくとも1つの磁性マットがある。実施においては、ペレットと水相の間に層を形成させるために、適切なサイズに作られる。マットは固体表面であってもよく、あるいは液体は通過させるがペレット物質は通過させない十分なサイズの開口部を含むこともできる。例えば、磁性マットは、標的物質(例えば精子)の最小寸法よりも小さい開口部を有する網を含むことができる。多重マットの使用により、ペレットが処理工程中に覆われるためのさらなる保障が得られる。磁性マットは、プラスチック成形用磁石であることができる。プラスチック磁石は、特定の形状に成形、打ち抜きまたは機械加工することができる低コスト磁石であり、軽く、高い磁場強度を有する。このようなプラスチック磁石の例は、3M Electronics Products Division of St. Paul, MN製のMagnet Material B-1060である。Dexter Magnetic Technologies (Elk Grove Village, IL)から入手できる軟質フェライトシートまたはストリップの形の永久磁石もまた、織マットまたは不織マットを形成させるために使用できる。
【0031】
ペレット固定キャップとして使用するための適切な材料は、水性物質の密度を超える密度、すなわち約1.0g/cm3を超える密度を有する材料を含む。好ましくは、ペレット固定キャップ材料は、精子細胞ペレットと水性物質の間の分離を行うために用いる条件下では可溶性水性物質に結合しない材料である。さらに、この材料は、好ましくは水性物質と置き換わって精子細胞ペレット上にペレット固定キャップを形成することができる材料であり、同時に実質的に水性物質を排除する材料である。適切には、ペレット固定キャップ材料は、システムへの液体の添加またはシステムからの液体の除去に応じた混和に耐えるように形成される。好ましい本発明の使用方法において、外部磁場の適用により、あるいはペレット固定キャップの状態の変化、たとえば温度または圧力の変化により物理的に、ペレット固定キャップを同じ位置に維持することができる。粒径は重要ではないが、比較的小さな粒子は比較的少量の水溶液をトラップするので、洗浄液は少なくてすむ。
【0032】
適切なペレット固定キャップ材料の例は温度応答性材料を含む。温度応答性材料は、約32℃以上の温度で固体または半固体状態であり、約32℃以下の温度で液体形である。よって、温度応答性材料は室温では液体状態である。温度応答性材料は、液体から固体(または半固体状態)へ可逆的に変換可能であり、かつ逆もまた同様であり、従って試料を十分に加熱して温度応答性材料を固相に変換することによりペレット固定キャップが形成される。
【0033】
典型的な温度応答性材料はN-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)(別名N-(n-プロピル)アクリルアミド;登録番号2210-25-5)である。他の適切な温度応答性材料は、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(エチルアクリルアミド)、ポリ(N-エチルメタクリルアミド)、ポリ[N-(3エトキシプロピル)アクリルアミド];ポリ[N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド];ポリ(N-ビニルイソブチルアミド)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、メトキシポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレンフマラート)とのコポリマー、エチレングリコールビニルエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ブチルビニルエーテル、ポリグリシドール、アクリロイル-L-プロリンメチルエステル、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、N-アクリロイル-N'-アルキルピペラジンとメタクリル酸メチルとのコポリマー、ポリ(2-プロピオンアミドアクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド-co-メタクリル酸ブチル)、ポリ(オルガノホスファゼン)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ゼラチン、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、エラスチン、エラスチンミメティックポリペプチド、2,4,6トリメチルピリジンおよびポリ(N-ビニルピロリドン)を含む。
【0034】
水性物質の除去を容易にするために、精子細胞ペレット上へのペレット固定キャップの形成後、かつ水性物質の除去前に、場合により、水性物質の密度を超える密度を有する非水性液体を加えることができる。本発明の方法と関連して使用するのに適した非水性液体は、米国出願番号第10/939,105号に記載されているものを含む(これは参照により本願に組み込まれる)。非水性液体の密度は、好ましくは水性物質の密度とペレット固定キャップ材料の密度との中間の密度である。しかしながら、もし、例えば常磁性ペレット固定キャップへかける磁力などの他の力材料によりペレット固定キャップ材料が同じ位置に維持されるならば、ペレット固定キャップ材料の密度を超える密度を有する非水性液体を適切に使用することができる。非水性液体の添加後、場合により遠心分離により促進して水性および非水性相を分離し、ついで水相を除去する。
【0035】
本発明の方法によって水性物質の除去を容易にするための非水性液体の適合性を評価することは、十分に当業者の能力の範囲内である。ペレット細胞の望ましくない溶解を防ぐために、非水性液体は適切には非カオトロピックである。非水性液体は、好ましくは比較的低い水溶性を有する非水性液体である。水に溶解性の低い非水性液体を用いることにより、一般的にはより良い相分離が得られ、精子細胞ペレットと水可溶性物質、例えば上皮細胞DNAとの混在は低減される。
【0036】
米国出願番号第10/939,105号に詳細に説明されているように、適切な非水性液体は、限定するものではないが、グルタル酸ジエチル(“DEG”)、グルタル酸ジメチル(“DMG”)、および1-クロロ-2-メチル-2-プロパノールを含む。異なる密度を有する2以上の非水性液体を用いて、望ましい密度を得るのに有効な比率で組み合わせて、非水性液体の密度を調節することができる。2以上の非水性液体を用いる場合、実質的に均一な密度の液体混合物を形成させるために、適切には前記液体は実質的に互いに混和性である。また、標準的精製方法を用いて、ペレットからDNAの抽出を行うことができる。
【0037】
加えて、具体的にいえば、適切な密度を有する混合した非水性液体を得るための適切な比率を選択することにより、精子細胞を単離するために、DMG、DEGまたは1-クロロ-2-メチル-2-プロパノールと共にクロロホルムを使用できると考えられる。
【0038】
溶解した上皮細胞からの、水に可溶性である上皮細胞DNAは、水層中に見いだされ、例えばピペッティングを含む任意の適切な手段を用いて水性物質を除去することにより分離される。試料源を確かめるために、場合により、遺伝的同一性試験における対照として、水相中に存在する上皮細胞DNAを使用することができる。水相の回収の後、バリアの表面近辺および容器壁に少量の水溶液が残る場合がある。場合により、精子細胞ペレットを崩壊させずに水溶液および上皮細胞DNAの除去を促進するために、水または適切な水溶液を用いて洗浄することにより、残った水溶液を除去することができる。場合により、ペレット固定キャップ材料および精子細胞をペレット化し、水性洗浄液を除去することができる。場合により、水性洗浄物質を除去する前に、前もってペレット化し、キャップをつけた精子細胞上にさらなるペレット固定キャップ材料を加えてさらなるペレット固定キャップを形成させることができる。さらなるペレット固定キャップ材料は、最初の精製中に加えたペレット固定キャップ材料と同じであることもでき、異なることもできる。
【0039】
実施例に記載されているように、水性物質を除去して精子細胞ペレットを取り残すことができ、界面活性剤および/またはカオトロピック剤を含み、場合によりDTTも含む水溶液と細胞を接触させることより精子細胞を溶解し、次いでDNAを抽出することができる。また、標準的精製方法を用いて、ペレットからのDNAを抽出することができる。
【0040】
例えば、水相の除去後、カオトロピック剤および還元剤を含む溶解緩衝液を非水性液体に加えてボルテックスし、実質的に均一な混合物を形成させることができる。実施例に示すように、グアニジンチオシアナート(GTC)およびジチオスレイトール(DTT)を含む溶解緩衝液を非水相、磁性シリカ樹脂および精子細胞ペレットと混合して、精子細胞を溶解し、溶解により細胞から放出されたDNAを磁性シリカ樹脂に結合させた。
【0041】
また、水性および非水性層の両方を除去して精子細胞ペレットを取り残すことができ、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および還元剤、例えばDTTを含む水溶液と精子細胞を接触させることにより、存在する精子細胞を溶解することができる。溶解に続いて、フェノール:クロロホルム抽出により、または任意の適切なDNA精製方法、例えば当該技術分野で公知の標準的DNA精製方法を用いてDNAを単離することができる。
【0042】
実施例に記載されているように、本発明の方法は、膣または頸部スワブなどの法医学試料に含有される上皮細胞から精子細胞を単離するのに有効であることが見出された。布などの、精液を含む他の固体担体を含む他の供給元から精子細胞を単離するのに本方法が有用であることが考えられる。本発明の方法は、精子細胞および混入した赤血球もしくは白血球または他の有核非精子細胞由来のDNAを含む試料と共に使用するのに適していると予想するのが妥当である。
【0043】
精子細胞を単離するのに使用するその適合性に加えて、本発明の方法は、種々の溶解条件に対する示差感度(differential sensitivity)に基づいて細胞を分離する一般的な利用可能性を有すると予想される。例えば、グラム陰性細胞が特に感受性が高いリゾチームでの処理により、グラム陰性細胞の示差溶解後にグラム陰性細胞から特定のグラム陽性細菌細胞を分離するのに、本発明の方法を適合させることができる。
【0044】
さらに、選択的溶解、例えば細胞膜または細胞壁の選択的溶解後に水性溶媒に可溶性の細胞小器官物質を単離するのに本方法は有用である。以下の実施例に記載されているように、全血の細胞溶解後に、他の細胞代替物から核を単離するのに本方法は有用であることが見出された。本方法は、溶液中の細胞代替物から、ペレット標的物質を分離するのに有用であり、非標的ペレット物質から標的細胞代替物を分離するのにも有用である。
【0045】
場合により、核膜の溶解を最小にする条件を用いて細胞の細胞膜を選択的に溶解することにより、本発明の方法を用いて細胞核を単離できる。実施例6は、ジギトニンおよびRNasinを含む溶解緩衝液を用いて細胞を処理することによりHEK細胞からRNAを単離するための本発明の方法の使用を予言的に記載している。これらの条件下では、細胞膜は少なくとも部分的に溶解して細胞から細胞質RNAが放出され、かつ細胞核は十分に無傷で残り、遠心分離によりペレット化され、一方RNAは溶解物中に残ることが予想される。ジギトニンを用いる選択的溶解または浸透化は、米国仮出願番号第60/894,810号(出願日:2007年3月14日)に詳細に記載されている(参照によりその全体が本願に組み込まれる)。ついで、ペレットとRNAを含む溶解物との間にペレット固定キャップが形成される。
【0046】
実施例6は、40mg/mlジギトニンを含む溶解緩衝液の使用を予言的に記載している。しかしながら、濃度が細胞膜の溶解に有効であり、核の実質的な溶解または浸透化を引き起こさない任意の適切な濃度でジギトニンを使用できると考えられる。核の実質的溶解とは、核をペレット化する能力を妨害するものをいう。好ましくは核の少なくとも5%、10%、25%、50%、75%または99%が遠心分離により除去できる。例えば、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50mg/mlの濃度のジギトニンが適切であると考えられる。実施例6はまた、溶解緩衝液中にRNasin Plusを400U/mlの濃度で含むことを予言的に記載している。RNasinは任意のRNアーゼを阻害するのに有効な量で含まれることができ、少なくとも一部のRNAの単離を可能にするのに十分な程度に存在することができると考えられる。好ましくは、少なくとも0.1単位/ul溶解物、0.2単位/ul溶解物、0.4単位/ul溶解物、1.0単位/ul溶解物、2単位/ul溶解物、4単位/ul溶解物、6単位/ul溶解物、8単位/ul溶解物または12単位/ul溶解物の濃度でRNasinが存在する。任意の適切なRNasinを使用できることは、当業者には明らかであろう。
【0047】
実施例7は、上皮細胞および精子細胞の両方を含む試料中の上皮細胞の選択的溶解を予言的に記載している。ジギトニンもしくはTergitolなどの非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物を含む溶解緩衝液の使用により、上皮細胞の溶解に必要なプロテイナーゼKの量を減らすか、またはプロテイナーゼKをまったく必要としないことが予想される。プロテイナーゼKの削減により、精子細胞の分解または溶解を抑制し、精子細胞および精子細胞核酸の収量を改善することができる。
【0048】
実施例7は、40mg/mlジギトニンを含む溶解緩衝液の使用を予言的に記載している。しかしながら、濃度が上皮細胞の溶解に有効であり、精子細胞の実質的溶解を引き起こさないという条件で、任意の適切な濃度でジギトニンを使用できると考えられる。例えば、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50mg/mlの濃度のジギトニンが適切であると考えられる。精子細胞の実質的溶解とは、精子細胞をペレット化する能力を妨害するものをいう。好ましくは、精子細胞の少なくとも5%、10%、25%、50%、75%または99%は遠心分離により除去できる。
【0049】
適切には、本発明の方法に使用される物質はキットとして提供できる。適切には、キットは、ペレット固定キャップ材料、例えば、常磁性粒子、凝集シリカ磁性もしくは常磁性粒子またはシリカ磁性粒子、例えばMagneSil(登録商標)粒子を含む。本発明のキットはまた、特定の細胞、細胞小器官または特定の細胞からの細胞成分を単離するのに有用な1以上の他の成分を含むこともできる。例えば、キットは、混入細胞の示差溶解に使用される緩衝液または試薬、例えば、プロテイナーゼK、リゾチームまたは界面活性剤を含むことができる。場合により、キットは、例えばカオトロピック剤を含む、対象とする細胞からのDNAを単離するのに使用される成分を含むことができる。キットは、場合により、水性物質の除去を容易にするための適切な密度の非水性液体を含むことができる。
【0050】
以下の実施例は限定するものではなく、単に例示を目的としたものである。
【実施例1】
【0051】
反復遠心洗浄の標準法に対するペレット固定キャップ法
本実施例には、スワブあたり精液0.2μl(〜32,000精子)に相当するものを得るためにnanopure水で希釈した精液を加えた膣スワブから調製した乾燥試料スワブを試料として用いた。各スワブからの綿支持体を半分に分割して2つの試料を作成した。プロテイナーゼK(Promegaカタログ番号V3022)108μgを含む消化用緩衝液(Digestion Buffer)(Promega)400μlを、1.5mlマイクロ遠心チューブ内の各試料に加えた。試料を30秒間ボルテックスし、56℃で1時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、スワブの綿支持体部分を溶液からピンセットで取り除き、新しい1.5mlマイクロ遠心チューブに挿入したスピンバスケットに移した。残った液体消化物を、対応する綿支持体を含むスピンバスケットにピペットで移した。試料をスイングバケットローター(すべてBeckman製:Allegra6R遠心機;GH-3.8ローター;Microplus Carrier;Biomek200024本立1.5mlマイクロ遠心チューブアダプター付きチューブラック)中、1,400xg(3,000rpm)で10分間遠心した。綿支持体を含有するスピンバスケットを試料チューブから取り除いて捨てた。精子分画を得るための2つの処理群:処理群1(ペレット固定キャップ)および処理群2(遠心洗浄)に試料を分割した。
【0052】
処理群1:
各遠心試料チューブにDNA IQ(登録商標)樹脂(カタログ番号A8252、Promega Corp.)7μlを加えた。細胞ペレットが存在するかまたは存在すると予想されるチューブの底部分に磁化したDNA IQ(登録商標)樹脂が配置されるように、平らな磁石上にチューブを置いた。各試料チューブの、水性消化物の底付近の磁化した樹脂上に、Differex(登録商標)分離溶液(カタログ番号A8512)100μlを加えた。水性消化物分画と分離溶液は上部の水層と下部の非水層とに分かれた。上部の水層を除去した。チューブ壁および非水層の上部表面を2回続けてnanopure水洗浄液で洗浄した。最後の洗浄液の除去に続いて、60mM DTTを含むDNA IQ(登録商標)溶解緩衝液(カタログ番号A8262)200μlを各試料に加え、試料を短時間ボルテックスした。DNA IQ(登録商標)核酸単離システム(カタログ番号DC6700)を用いてDNAを単離した。40μlの容量でDNAを溶出した。
【0053】
処理群2:
遠心分離に続いて、消化物上清の大部分を除去し、細胞ペレット上に15〜20μlの上清を残した。nanopure水のアリコート500μlを各試料に加え、遠心機で試料をさらに10分間遠心した。上清を除去して、15〜20μlを残した。この洗浄プロセスを2回繰り返して、合計3回の水洗浄を行った。最終洗浄液を除去した後、60mM DTTを含むDNA IQ溶解緩衝液100μlを各試料に加えた。各試料にDNA IQ樹脂7μlを加えた。試料を短時間ボルテックスし、DNA IQ核酸単離の出発材料として用いた。40μlの容量でDNA単離液を溶出した。
【0054】
Quantifiler Yアッセイ系(Applied Biosystems、San Carlos CA、カタログ番号4343906)を用いて、処理群1および処理群2からの精子分画試料を定量した。鋳型0.5〜1.25ngを用いて、各精子分画試料にTHO1 1遺伝子座STR増幅(Promega Corp、カタログ番号DC6561)を行った。THO1増幅産物1μlとHi-Dyeホルムアミド9μlおよびILS6001μlとを混合して、男性分画試料のキャピラリー電気泳動を行った(3100Genetic Analyzer;Applied Biosystems)。Genescanソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて、キャピラリー電気泳動から得られたデータの導入パラメータを分析した。
【0055】
THO1遺伝子座においては、女性および男性協力者は共にヘテロ接合型であった。女性協力者は遺伝子型(9.3、9)を示し、男性協力者は遺伝子型(9、6)を示した。協力者は共に、THO1遺伝子座において9反復対立遺伝子を共有していた。2名の協力者間で共有されていないTHO1対立遺伝子は、9.3反復配列(女性特異的)および6反復配列(男性特異的)であった。フルオレセインチャンネルにおいて、9.3および6塩基対反復増幅産物の電気泳動ピークは、それぞれおおよそ175および161塩基対の位置に認められた。
【0056】
電気泳動図からのピーク高さとして現れるこれらのピークの蛍光強度の検査を用いて、男性分画試料における2名の協力者の相対発現量を測定した。共有されていない2つの対立遺伝子ピーク(女性および男性特異的)について得られた結果を以下の表1に示す。
【表1】

【0057】
ペレット固定キャップ(処理群1)は、精子を女性上皮細胞の大多数から女性上皮DNAの顕著な持ち越しのない男性分画に分離するのに、連続上皮分画希釈液の旧来の示差抽出法である遠心除去(処理群2)と同等に機能することをこのデータは示している。
【実施例2】
【0058】
非水性液体の有無による、DNA IQ(登録商標)樹脂をペレット固定キャップとして用いる精子ペレットの磁性固定化
本実施例には、スワブあたり精液2μl(〜200,000精子)に相当するものを得るためにnanopure水で希釈した精液を加えた膣スワブから調製した乾燥試料スワブを試料として用いた。各スワブからの綿支持体を半分に分割して2つの試料を作成した。プロテイナーゼK310μgを含む消化用緩衝液400μlを、1.5mlマイクロ遠心チューブ内の各試料に加えた。試料を30秒間ボルテックスし、56℃で90分間インキュベートした。インキュベーションに続いて、綿支持体を溶液からピンセットで取り除き、新しい1.5mlマイクロ遠心チューブに挿入したスピンバスケットに移した。残った液体消化物を、対応する綿支持体を含むスピンバスケットにピペットで移した。試料にキャップをして、これをスイングバケットローター中、1,400x g(3,000rpm)で10分間遠心した。綿支持体を含有するスピンバスケットを試料チューブから取り除いて捨てた。チューブの底の細胞ペレットに磁場が集中するように修正されたMagneSphere Technology Magnetic Separation Stand(Promegaカタログ番号Z5332)に試料を置いた。次いで各試料チューブにDNA IQ(登録商標)樹脂7μlを加えた。2つの処理群:処理群1(DNA IQ(登録商標)樹脂による精子ペレット固定に続く非水性液体バリアの添加)および処理群2(DNA IQ(登録商標)樹脂単独でのペレット固定化)に試料を分割した。
【0059】
処理群1:
ついで、樹脂および細胞ペレットを覆うために、各試料チューブの、水性消化物の底付近の磁化した樹脂上に、Differex(登録商標)分離溶液(グルタル酸ジメチル)(カタログ番号A8512)100μlを加えた。水性消化物分画と分離溶液は上部の水層と下部の非水層とに分かれた。上部の水層を除去した。各チューブにヌクレアーゼフリー水(Promega Corp.、カタログ番号P1193)500μlを穏やかに加えてチューブ壁および分離溶液の上部表面を洗浄した。試料チューブをスイングバケットローターに戻し、1,400xgでさらに10分間遠心した。遠心後、水洗浄液を取り除き、捨てた。洗浄工程をさらに2回繰り返して、合計3回の水洗浄を行った。60mM DTTを含むDNA IQ(登録商標)溶解緩衝液250μlを試料に加え、試料を短時間ボルテックスした。得られた試料をDNA IQ(登録商標)核酸単離の出発材料として用いた。
【0060】
処理群2:
水性上皮消化物の大部分を除去し、試料チューブ内の樹脂固定化細胞ペレット上に約20μlの残留量を残した。試料チューブにヌクレアーゼフリー水500μlを穏やかに加えて、上清中に存在する上皮細胞DNAを希釈した。洗浄液量を除去して、残留量20μlを残した。この洗浄プロセスを2回繰り返して、全部で3回洗浄した。60mM DTTを含むDNA IQ(登録商標)溶解緩衝液250μlを試料に加え、試料を短時間ボルテックスした。得られた試料をDNA IQ(登録商標)核酸単離の出発材料として用いた。
【0061】
容量2.2ml/ウェル(ABgeneカタログ番号AB-0932、Rochester、NY)の96ウェルプレートのウェルに、両方の処理群からの精子分画を移した。Biomek(登録商標)2000Workstation(Beckman Coulter)で自動化したDNA IQ(登録商標)核酸単離を用いて、プレート内で試料からDNAを単離した。各試料から100μlの容量で単離されたDNAを溶出した。
【0062】
Y-染色体を標的にするPlexor(登録商標)(Promegaカタログ番号A4011)定量PCRアッセイを用いて、各DNA標品について男性特異的DNA含量を定量した。THO1 1遺伝子座STR増幅の鋳型として、各精子分画標品から男性特異的DNA0.25ngを用いた。THO1遺伝子座においては、女性および男性協力者は共にヘテロ接合型であった。女性協力者は遺伝子型(9.3、9)を示し、男性協力者は遺伝子型(9、6)を示した。協力者は共に、THO1遺伝子座において9反復対立遺伝子を共有していた。2名の協力者間で共有されていないTHO1対立遺伝子は、9.3反復配列(女性特異的)および6反復配列(男性特異的)であった。フルオレセインチャンネルにおいて、9.3および6塩基対反復増幅産物の電気泳動ピークは、それぞれおおよそ175および161塩基対の位置に認められた。
【0063】
電気泳動図からのピーク高さとして現れるこれらのピークの蛍光強度の検査を用いて、男性分画試料における2名の協力者の相対発現量を測定した。共有されていない2つの対立遺伝子ピーク(女性および男性特異的)について得られた結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0064】
バリアを補うための非水性液体有り(処理群1)またはなし(処理群2)のいずれにおいても、女性上皮細胞を含む混合物における少数派の成分から精子を分離するのに、常磁性樹脂をバリアとして用いる精子ペレットの固定化は、特定の条件下で同等に機能することをこれらのデータは示している。
【実施例3】
【0065】
属の異なる細胞の示差溶解に続く、溶解物からの細胞ペレットの固定化
大腸菌(E. coli)を溶解するが黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を溶解しないリゾチームで混合物を最初に消化することにより、新鮮な尿試料(健常者からの試料に細菌を加えたもの)を用いて、グラム陽性黄色ブドウ球菌細胞をグラム陰性細菌である大腸菌JM109株(pMGFP)から分離した。以下の試料と同時に8つひと組で各細菌株単独の対照試料を処理した。さらに、酵素をなにも使用しなかった対照(2X8=16)および、最初の溶解工程でリゾチームとリゾスタフィンの両方を使用した他の対照(2X8=16)もまた含めた。これらの対照試料のいずれも粒子で覆わなかった。
【0066】
コーニング丸底96ウェルプレートにおいて、各ウェルに50mM EDTAおよび約3X107個の黄色ブドウ球菌および約1X108個の大腸菌JM109(pMGFP)を含有する尿180ulに、10mg/mlリゾチーム(Sigma Aldrich、St. Louis、MOカタログ番号L-6876) 5ulを加え、37℃で30分間インキュベートした。リゾチーム消化による大腸菌の示差溶解後、スイングバケットローターを備えたSorvall RT6000B遠心機(Thermo Electron,Waltham MA)を用いて、コーニング丸底96ウェルプレート中、800Xgで20分間遠心分離することにより、黄色ブドウ球菌細胞をペレット化した。次いで、得られたペレットをPromega製DNA-IQ樹脂(4X8=32)(100mg/ml、カタログ番号DC6701)2ulで覆うかまたは(残りの試料に関して)“粒子無添加で”(4X8=32試料)、DNA IQ(登録商標)樹脂の代わりに水2ulを加えた。試料をそのまま60秒間おき、粒子を底に沈ませて、ペレットを覆わせた。ついで、プレートの下に置いた平らな磁石から磁力をかけて、表面を覆っている流体(溶解した大腸菌を含んでいる)を除去する間、黄色ブドウ球菌ペレットを覆うDNA IQ(登録商標)樹脂粒子を固定化した。Promega製WizardゲノムDNA精製システムを用い、すべての試料に以下のプロトコルを適用した。
【0067】
a)各ウェルにリゾスタフィン(2mg/ml)(Sigma-Aldrich、St.Louis、MOカタログ番号L0761)8ulを加え、(上下に)6回ピペッティングしてペレットを再懸濁し、37℃で30分間インキュベートした。各ウェルに核溶解液(Nuclei Lysis Solution)(カタログ番号A7943)90ulを加え、6回ピペッティングして混合した。21℃で10分間プレートをインキュベートした。
b)Protein Precipitation Solution(カタログ番号A7953)35ulを加え、試料をピペットで10回混合した。21℃で5分間プレートをインキュベートした。
c)800Xgで20分間プレートを遠心分離した。
d)各ウェルにイソプロパノール140ulを含む清潔なコーニング丸底96ウェルプレートに各上清を移した。試料を10回のピペッティングで混合し、21℃で15分間放置した。800Xgで20分間プレートを遠心分離した。ピペットで上清を除去した。
e)各ウェルに75%エタノール200ulを加えた。
f)800Xgで20分間プレートを遠心分離した。
g)上清をピペットで除去し、プレートを20分間風乾した。
h)各ウェルにElution Buffer, Blood(カタログ番号MD1421)50ulを加えた。
i)4℃で12時間プレートを放置した。各カラムについて、各試料のうち12ulをプールして96ulの平均試料1つを作成し、これを(12,000Xgで30秒後に)260nmの吸光度で定量した。個々の試料はPicogreen(登録商標)(Invitrogen, Carlsbad, CA)で定量した。
表3に示すように、ペレット固定キャップ法により、より高い平均DNA収量が得られることを結果は示している。
【表3−1】

【表3−2】

【実施例4】
【0068】
固定ペレット核からのDNAの単離
Wizard(登録商標)ゲノムDNA精製システム(Promegaカタログ番号A1120)を用いて、ヒト全血のアリコート50ulを赤血球溶解緩衝液150ulで希釈した。赤血球と白血球は溶解したが、白血球の核は無傷で残った。スイングバケットローターを用い、コーニング丸底96ウェルプレートで10分間1400Xgで遠心分離することにより、核をペレット化した。試料の2分の1において、得られたペレットをPromega製MagneSil(登録商標)常磁性粒子(カタログ番号A2201)20ulで覆って、磁性粒子の層でペレット核を覆った。試料のもう半分には、MagneSil(登録商標)粒子の代わりに加えた水20ulを接触させた。プレートの下においた磁石により磁力を加えてペレット核を固定し、表面を覆っている上清を除去した。
【実施例5】
【0069】
固定ペレット核からのDNAの単離
標準プロトコルに従い、WizardゲノムDNA精製システムを用いて、各試料からDNAを単離した。簡潔に言えば、各ウェルに核溶解液(Promegaカタログ番号A7943)100ulを加え、6回ピペッティングすることにより混合した。21℃で10分間プレートをインキュベートした。Protein Precipitation Solution(カタログ番号A7953)35ulを加え、試料をピペットで6回混合した。21℃で5分間プレートをインキュベートした。800Xgで20分間プレートを遠心分離した。各ウェルにイソプロパノール140ulを含有する清潔なコーニング丸底96ウェルプレートに各上清を移した。800Xgで20分間プレートを遠心分離した。ピペットで上清を除去した。各ウェルに75%エタノール200ulを加えた。800Xgで20分間プレートを遠心分離した。上清をピペットで除き、プレートを30分間風乾した。各ウェルにElution Buffer, Blood (カタログ番号 MD1421)50ulを加えた。4℃で12時間プレートをインキュベートした。各カラムについて、各試料のうち12ulをプールして96ulの平均試料1つを作成し、これを(12,000Xgで30秒後に)260nm(引くA320)の吸光度で定量した。個々の試料はPicogreen(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)で定量した。結果を表4および5に示す。
【表4】

【表5】

【0070】
表4(試料カテゴリーについての各カラム(8試料群)の平均値)および表5(個々の試料のpicogreen値およびそれらの平均値)において見られるように、MagneSil磁性粒子1ul、2ulまたは4ul(ウェルあたり粒子1ug、2ugまたは4ug)の使用により、MagneSil(登録商標)粒子の覆いなしの試料と比較してより高い平均収量が得られた。さらに、MagneSil(登録商標)粒子を用いて核ペレットを固定化した場合、試料の脱落(すなわちDNAが検出されない試料)の頻度が低下したことをPicogreenの結果は示している。ペレット核を固定するための磁性粒子の使用は、より均一な信頼性のある結果およびより高いDNA収量を提供する。ペレットを固定化するために磁性粒子を用いた試料から上清を除去するとき、試料あたりのペレット中の細胞核の損失はより少なく、凝集体における核ペレットの損失はより少なかったと推定される。
【実施例6】
【0071】
核からの細胞質RNAの精製
100mM HEPES(pH7.6)/100mM EDTA/40mg/mlジギトニン/0.4%DMSO(体積比)/RNasin Plus(PromegaカタログN2611)400単位を含む溶解液を96ウェルプレートに200ul/ウェルで用いて、各試料から細胞質RNAを単離する。簡潔に言えば、1X106個のHEK293細胞を含有する溶解液200ulを各ウェルに加え、6回ピペッティングして混合する。4℃で10分間プレートをインキュベートする。800Xgで20分間プレートを遠心分離する。MagneSil Blue粒子1ulで1つおきの試料ペレット(例えば96ウェルプレートウェルA1、A3、A5、A7、B2、B4、B6などにおける)を覆い、残った試料ペレットはMagneSil Blue粒子では覆わない。ついで、プレートを平らな磁石上に60秒間置く。ついで、多チャンネルピペッターを用いて、上清を、清潔なコーニング丸底96ウェルプレートのそれらの対応するウェルに移す。Promega製DNA定量システム(カタログ番号K4000)を用いて試料ウェルあたりのDNAの定量を行い、Quant-iT RiboGreen(InvitrogenカタログR11490、Carlsbad、CA)を用いてRNAの定量を行う。Promega製Plexor2-工程qRT-PCRシステム(カタログ番号A4051)を用いてRNAを定量的RT-PCRにかける。
【実施例7】
【0072】
上皮細胞残滓からのヒト精子の精製
100mM HEPES(pH7.6)/100mM EDTA/40mg/mlジギトニン/0.4%DMSO(体積比)を含む溶解液を96ウェルプレートに200ul/ウェルで用いて、各試料からヒト精子を単離する。簡潔に言えば、1X103個のヒト精子細胞および1X106個のヒト上皮細胞を含む溶解液200ulを各ウェルに加え、6回ピペッティングして混合する。4℃で10分間プレートをインキュベートする。800Xgで20分間プレートを遠心分離する。MagneSil Blue粒子1ulで1つおきの試料ペレット(例えば96ウェルプレートウェルA1、A3、A5、A7、B2、B4、B6などにおける)を覆い、残った試料ペレットはMagneSil Blue粒子では覆わない。ついで、プレートを平らな磁石上に60秒間置く。ついで、多チャンネルピペッターを用いて、上清を、清潔なコーニング丸底96ウェルプレートのそれらの対応するウェルに移す。Promega製Differexシステム(カタログ番号DC6800)を用いて精子ペレットを精製し、Promega製AluQuantヒトDNA定量システム(カタログ番号DC1010)を用いて得られたDNAを定量し、Promega製PowerPlex16システム(カタログ番号DC6530)を用いてプロフィールを作成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の細胞および第2の細胞を含む試料から第1の細胞を単離する方法であって、
(a)第1の細胞を溶解せずに第2の細胞を溶解する条件下で試料を処理して水性溶解物を調製し;
(b)十分な時間試料に力を加えて第1の細胞を含むペレットを形成させ;
(c)ペレットと水性溶解物の間にペレット固定キャップを形成させること
を含む前記方法。
【請求項2】
第1の細胞が精子細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(c)の水性溶解物を除去することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ペレットを回収することをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ペレットを洗浄することをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
水性溶解物を除去する前に、工程(c)の水性溶解物と、約1.00g/cm3を超える密度を有する非水性液体を接触させて、ペレット固定キャップと水性溶解物の間に非水層を形成させることをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項7】
遠心分離により力が加えられる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ペレット固定キャップが磁性または常磁性材料を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
精子ペレットと水性物質の間にキャップを維持するために磁性または常磁性材料に磁場をかけることをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
常磁性材料がシリカを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
常磁性材料がシリカ磁性粒子を含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
常磁性材料が、シリカ酸化物でコーティングされた磁性粒子を含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
各粒子が、シリカ酸化物で覆われた2以上の磁性または常磁性コアを含む凝集磁性粒子を常磁性材料が含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
常磁性材料が磁性マットを含む、請求項8記載の方法。
【請求項15】
ペレット固定キャップ材料がセルロース系磁性粒子を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ペレット固定キャップ材料が温度応答性材料を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
方法がハイスループットプロセスで行われる、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
力が約3000xg以下である、請求項7記載の方法。
【請求項19】
第2の細胞が上皮細胞である、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
水性物質が非精子細胞DNAを含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
非水性液体が、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジメチルおよび1-クロロ-2-メチル-2-プロパノールの少なくとも1つを含む、請求項6記載の方法。
【請求項22】
非水性液体がさらにクロロホルムを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
非水性液体が、約0.1:99.9〜約50:50(グルタル酸ジメチル:クロロホルム)の割合でクロロホルムおよびグルタル酸ジメチルを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
第1の細胞のDNAをシリカに結合させる条件下で第1の細胞を溶解することをさらに含む、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
第1の細胞からのDNAをセルロース系材料に結合させる条件下で第1の細胞を溶解することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項26】
水性溶解物が、第1の細胞を溶解せずに第2の細胞を溶解するのに有効な濃度でジギトニンを含む、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
上皮細胞を含む水性試料から精子細胞DNAを単離する方法であって、
(a)上皮細胞を選択的に溶解する条件下で試料を処理し;
(b)処理された試料に十分な時間力を加えて精子ペレットを形成させ;
(c)精子ペレットと、溶解した上皮細胞を含む水性物質の間でペレット固定キャップを形成させ;
(d)水性物質を除去し;
(e)精子細胞DNAの精製を可能にする条件下で精子ペレット中の細胞を溶解する
ことを含む前記方法。
【請求項28】
工程(d)の前に、約1.00g/cm3を超える密度を有する非水性液体を添加して、ペレット固定キャップと溶解した上皮細胞の間に非水層を形成させることをさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
(f)工程(d)の後かつ工程(e)の前に、非水性液体、ペレット固定キャップおよび精子細胞を洗浄し;
(g)力を加えて、洗浄層、非水層ならびにペレット固定キャップ材料および精子細胞を含むペレットを形成させ;
(h)工程(g)の後にシリカを含む常磁性材料を添加して、工程(g)のペレットと非水層の間に常磁性ペレット固定キャップを形成させ;
(i)洗浄層および非水層を除去すること
をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
水性細胞溶解物試料から生細胞または標的細胞小器官を分離する方法であって、
(a)十分な時間試料に力を加えて、生細胞または標的細胞小器官の少なくとも一部を含むペレットを形成させ、
(b)ペレットと水性細胞溶解物の間にペレット固定キャップを形成させること
を含む前記方法。
【請求項31】
水性物質を除去することをさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ペレットを回収することをさらに含む、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
遠心分離により力が加えられる、請求項30〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
ペレット固定キャップが磁性または常磁性材料を含む、請求項30〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
ペレットと水性物質の間にペレット固定キャップを維持するために常磁性材料に磁場をかけることをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
標的細胞小器官を含む細胞を含む試料から標的細胞小器官を単離する方法であって、
(a)細胞小器官を溶解せずに細胞を選択的に溶解する条件下で試料を処理して水性溶解物を調製し;
(b)十分な時間試料に力を加えて標的細胞小器官を含むペレットを形成させ;
(c)ペレットと溶解物の間にペレット固定キャップを形成させること
を含む前記方法。
【請求項37】
工程(a)の試料の処理が、工程(a)の選択的溶解を引き起こすのに有効な濃度でジギトニンを含む溶解緩衝液と試料を接触させることを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
溶解緩衝液がRNasinをさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
標的細胞を含む試料から標的細胞代替物を単離する方法であって、
(a)標的細胞を選択的に溶解するが少なくとも1つの細胞小器官が溶解しない条件下で試料を処理して水性溶解物を調製し;
(b)十分な時間試料に力を加えて、溶解しない細胞小器官を含むペレットを形成させ;
(c)ペレットと溶解物の間にペレット固定キャップを形成させること
を含む前記方法。
【請求項40】
ペレットが核を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
工程(a)の試料の処理が、工程(a)の選択的溶解を引き起こすのに有効な濃度でジギトニンを含む溶解緩衝液と試料を接触させることを含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
溶解緩衝液がRNasinをさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
非標的細胞を選択的に溶解する溶解剤およびペレット固定材料を含む、非標的細胞から標的細胞または細胞小器官を単離するキット。
【請求項44】
ペレット固定材料が、シリカ磁性粒子、セルロース系磁性材料、温度応答性材料および磁性マットの少なくとも1つを含む、請求項32記載のキット。

【公表番号】特表2010−505425(P2010−505425A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531640(P2009−531640)
【出願日】平成19年10月8日(2007.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/080686
【国際公開番号】WO2008/127356
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】