説明

細胞分離装置

【課題】滅菌性を担保しながら最終生成物による治療効果を向上する。
【解決手段】生体組織を消化することにより該生体組織から生体由来細胞を分離させて細胞懸濁液を生成する分解処理部2と、細胞懸濁液を収容する遠心分離容器10を揺動軸線回りに揺動可能に支持するアーム13aと、アーム13aを揺動軸線から離れた所定の軸線回りに回転させる回転部13bとを有し、細胞懸濁液を遠心分離により濃縮する細胞濃縮部3と、該細胞濃縮部3において細胞懸濁液中の生体由来細胞の収量を増加させる収量増加部とを備え、収量増加部は、アーム13aが静止した状態の遠心分離容器10に隣接する位置に設けられている細胞分離装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体から採取した脂肪組織から幹細胞などを含む脂肪由来細胞を分離する装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/012480号
【特許文献2】米国特許公開第2009/0304644号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置を用いて脂肪由来細胞を分離したときに、処理の過程で脂肪由来細胞の機能が低下した状態になる。したがって、最終生成物である細胞濃縮物を装置から回収してそのまま治療に用いても、迅速に十分な治療効果を得ることが難しいという問題がある。分離後の脂肪由来細胞を装置から取り出してから別途、賦活化などの処理をすることも考えられる。しかし、それまで装置内で滅菌性が担保されていた脂肪由来細胞に異物の混入を招く可能性がある。さらに、処理工程、特に、治療の使用前に脂肪由来細胞を洗浄・濃縮するために必要である遠心分離の回数が増えることによって脂肪由来細胞をむしろ弱らせてしまう可能性がある。
【0005】
特許文献2では、処理過程で細胞を刺激することにより、細胞の活性化または収量の増加を図っている。しかしながら、刺激のタイミングによっては細胞の活性が処理中に再び低下してしまう可能性があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、滅菌性を担保しながら最終生成物による治療効果を最大化することができる細胞分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、生体組織を消化することにより該生体組織から生体由来細胞を分離させて細胞懸濁液を生成する分解処理部と、前記細胞懸濁液を収容する遠心分離容器を揺動軸線回りに揺動可能に支持するアームと、前記アームを前記揺動軸線から離れた所定の軸線回りに回転させる回転部とを有し、前記細胞懸濁液を遠心分離により濃縮する細胞濃縮部と、該細胞濃縮部において前記細胞懸濁液中の前記生体由来細胞の収量を増加させる収量増加部とを備え、前記収量増加部は、前記アームが静止した状態の前記遠心分離容器に隣接する位置に設けられている細胞分離装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、分解処理部において生成された生体由来細胞を含む細胞懸濁液が、細胞濃縮部において濃縮されることにより、生体組織から生体由来細胞を抽出することができる。
この場合に、収量増加部によって生体由来細胞の収量が増加された濃縮液が最終生成物として回収されるので、該最終生成物による治療効果を最大化することができる。
【0009】
上記発明においては、前記細胞懸濁液に含まれる生体由来細胞の数を計測する細胞数計測手段と、該細胞数計測手段により計測された前記生体由来細胞の数の情報に基づいて、前記収量増加部を制御する制御部とを備えていてもよい。
このようにすることで、生体由来細胞の数に応じたより適切な条件で収量増加部により細胞懸濁液を処理し、生体由来細胞の収量をより効果的に増加させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、滅菌性を担保しながら最終生成物による治療効果を最大化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る細胞分離装置の全体構成図である。
【図2】図1の細胞分離装置の遠心分離機の構成を示す図である。
【図3】図2の遠心分離機に使用される遠心分離容器の構成を示す図である。
【図4】図2の遠心分離機に設けられている受け部を示す図である。
【図5】細胞数計測部の構成と、該細胞数計測部により脂肪由来細胞の数を計測する方法を説明する図である。
【図6】細胞数計測部により細胞塊の3次元形状を計測する方法を説明する図である。
【図7】細胞刺激部の構成を示す図であり、ヒータおよび温度センサの配置を示している。
【図8】図7に示したヒータおよび温度センサの配置の変形例を示す図である。
【図9】図7に示したヒータおよび温度センサの配置のもう1つの変形例を示す図である。
【図10】細胞刺激部の変形例を示す図である。
【図11】受け部の変形例を示す図である。
【図12】受け部のもう1つの変形例を示す図である。
【図13】細胞刺激部の配置の変形例を示す図である。
【図14】細胞数計測部の変形例を示す図である。
【図15】細胞数計測部の構成のもう1つの変形例を示す図である。
【図16】細胞数計測部の構成のもう1つの変形例を示す図である。
【図17】細胞数計測部の配置の変形例を示す図である。
【図18】細胞数計測部の配置のもう1つの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る細胞分離装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る細胞分離装置1は、図1に示されるように、脂肪組織(生体組織)を消化する分解処理部2と、該分解処理部2において生成された細胞懸濁液を濃縮する細胞濃縮部3と、分解処理部2、細胞濃縮部3、洗浄液バッグ4および廃液バッグ5を接続する搬送経路6と、各部2,3および搬送経路6の動作を制御する制御部7とを備えている。
【0013】
分解処理部2は、生体内から吸引するなどして採取した脂肪組織と、該脂肪組織を分解する消化酵素液とを、図示しない撹拌装置によって収集容器8内で撹拌する。これにより、脂肪組織から、該脂肪組織に結合していた脂肪由来細胞(生体由来細胞)が分離させられ、消化酵素液内に脂肪由来細胞が浮遊した細胞懸濁液が生成されるようになっている。収集容器8の底面8aは一方向に傾斜し、該底面8aの最下位置から細胞懸濁液が排出されるようになっている。符号8bは、消化された脂肪組織の残渣などの比較的大きな不純物が細胞懸濁液とともに排出されるのを防止するフィルタである。
【0014】
細胞濃縮部3は、遠心分離機9と、後述するように、該遠心分離機9に支持された遠心分離容器10内の脂肪由来細胞の数を計測する細胞数計測部(細胞数計測手段)11および脂肪由来細胞に刺激を与える細胞刺激部(収量増加部)12とを備えている。
遠心分離機9は、図2に示されるように、アーム13aを有する回転軸部材13と、アーム13aに支持され遠心分離容器10が設置されるバケット14と、回転軸部材13をその略中心軸線回りに回転させるモータ(回転部)13bとを備え、回転軸部材13にはバケット14の底部を受ける受け部15が一体に設けられている。
【0015】
回転軸部材13は鉛直方向に略直立して設けられている。バケット14は、遠心分離容器10より若干大きく該遠心分離容器10と略同一の形状を有し、回転軸部材13に略直交して固定されたアーム13aの両端に、その底部が回転軸部材13から離間する方向に揺動可能に支持されている。これにより、細胞懸濁液を収容した遠心分離容器10をバケット14に収納した状態で回転軸部材13を回転させたときに、バケット14および遠心分離容器10が揺動して底部が半径方向外方に配置され、細胞懸濁液中の脂肪由来細胞が、後述するポケット部10bの底部に凝集させられるようになっている。
【0016】
遠心分離容器10は、図3に示されるように、搬送経路6に接続された配管10aが内部に挿入され、該配管10aを介して細胞懸濁液が遠心分離容器10内に供給されるようになっている。なお、遠心分離の際に配管10aが捩じれないように、配管10aは図示しない回転継手を介して搬送経路6に接続されている。
【0017】
また、遠心分離容器10の底部には、内面が窪んで形成された略半球形状のポケット部10bが設けられている。配管10aの先端面に開口した吸引吐出口10cは、ポケット部10b内の底面から離れた位置に配置されている。これにより、細胞懸濁液の遠心分離後に吸引吐出口10cから上清を排出したときには、ポケット部10bの底面に沈殿した細胞塊をそのまま残して上清が排出され、上清の排出後に吸引吐出口10cから洗浄液を供給したときには、洗浄液の流入の勢いによって細胞塊が洗浄液内で効率的に撹拌されるようになっている。また、吸引吐出口10cから吸引と吐出とを繰り返すことにより、細胞懸濁液をピペッティングして撹拌することができるようになっている。
【0018】
受け部15は、回転軸部材13が回転を停止した状態においてバケット14の底部と隣接する位置に受け面15aが形成されている。受け面15aは、図4に示されるように、回転軸部材13に対して半径方向外方側が開放された略凹半球形状であり、バケット14の底部に相補的な形状を有している。これにより、遠心分離の開始時および終了時においてバケット14がその揺動を妨げられることなくスムーズに受け面15aから離間し、また、受け面15aに接近できるようになっている。
【0019】
このときに、遠心分離終了時に位置が下がってきたバケットの底部が受け面15aにより確実に密着するように、バケット14の底部および受け面15aに互いに引力を発生させる磁石16が設けられている。磁石16は、遠心分離時にバケット14の底部に作用する遠心力よりも十分に小さい磁力を有している。磁石16は、電磁石であり、遠心分離の終了時に作動して磁力を発生するようになっていてもよい。
【0020】
細胞数計測部11および細胞刺激部12はともに、受け面15aに設けられている。
細胞数計測部11は、図5に示されるように、受け面15aに受けられたポケット部10bに向かって略水平方向に検出光Lを出射するともに、検出光Lが後方に反射または散乱された戻り光を検出する。ここで、ポケット部10bの底部に細胞塊Aが沈殿した状態で細胞数計測部11が戻り光を検出すると、細胞塊Aと上清Bとの界面で戻り光の強度が変化する。細胞数計測部11は、この戻り光の強度の変化から細胞塊Aの上端位置を検出し、検出した上端位置から細胞塊Aの体積を算出し、算出した体積から脂肪由来細胞の数を算出するようになっている。
【0021】
このときに、図6に示されるように、細胞塊Aの上端位置が少なくとも3方向から検出されるように、少なくとも3つの位置から検出光Lが出射されることが好ましい。このようにすることで、細胞塊Aの上端面の形状を3次元で検出して細胞塊Aの体積をより高い精度で求め、細胞塊Aに含まれる脂肪由来細胞の数をより正確に算出することができる。
【0022】
なお、細胞数計測部11とバケット14内に設置された遠心分離容器10との間の途中位置において検出光Lおよび戻り光が遮られることがないように、バケット14の底部の検出光Lおよび戻り光が通過する位置には、これらの光を透過させる窓(図示略)が設けられている。また、バケット14内に遠心分離容器10を設置したときに、遠心分離容器10の底部がバケット内から出没するように、バケット14の底部が切断されて開放されてもよい。
【0023】
細胞刺激部12は、図7に示されるように、受け面15aに設けられたヒータ(以下、ヒータ12ともいう)である。受け面15aには温度センサ17も設けられている。これにより、受け面15aに受けられたポケット部10b内が効率良く加温され、また、ポケット部10b内の温度がより精度良く検出されるようになっている。また、温度センサ17によって検出された温度の情報は制御部7に送信され、制御部7によってヒータ12の温度が所定の温度に一定に保たれるように制御されるようになっている。
【0024】
なお、図7に示したヒータ12および温度センサ17の配置は一例であり、適宜変更可能である。例えば、図8に示されるように、ヒータ12を底面に設け、温度センサ17を側面に設けてもよく、図9に示されるように、ヒータ12と温度センサ17の両方を側面に設けてもよい。
【0025】
搬送経路6は、収集容器8、遠心分離容器10、洗浄液バッグ4および廃液バッグ5を接続するチューブ18と、該チューブ18の途中位置に設けられたバルブV1〜V10および送液ポンプ19とを備えている。符号6aは、チューブ18を分岐する継手を示している。洗浄液バッグ4には、洗浄液として、例えば、乳酸リンゲル緩衝液が収容されている。
【0026】
制御部7は、図示しない配線を介して分解処理部2、細胞濃縮部3、バルブV1〜V10および送液ポンプ19に接続され、これらの動作を予め設定された処理手順にしたがって制御するようになっている。
【0027】
また、制御部7は、細胞濃縮部3において最後の遠心分離と上清の排出とが終了した後、細胞数計測部11に脂肪由来細胞の数を計測させる。そして、制御部7は、細胞数計測部11によって計測された脂肪由来細胞の数に基づいて次に行う加温処理の処理時間を決定し、決定した処理時間の間、温度センサ17によって検出される温度が設定温度に保たれるようにヒータ12の温度を調節するようになっている。ここで、設定温度は、脂肪由来細胞に適度な刺激を与えることができる温度、具体的には、38〜42℃、好ましくは40℃に設定される。
【0028】
また、制御部7は、加温処理を行っている間、配管10aによる吸引と吐出とをゆっくり繰り返させることにより、遠心分離容器10内の脂肪由来細胞と上清との混合物である細胞濃縮物をピペッティングさせるようになっている。
【0029】
このように構成された細胞分離装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る細胞分離装置1は、分解処理部2において脂肪組織を消化した後、生成された細胞懸濁液を搬送経路6によって細胞濃縮部3に搬送する。次に、細胞分離装置1は、細胞濃縮部3において細胞懸濁液を遠心分離した後、遠心分離容器10内から上清を廃液バッグ5に排出する。このときに、細胞分離装置1は、ポケット部10b内に一定量の少量の上清を残して、他の上清を排出するようになっている。次に、細胞分離装置1は、洗浄液バッグ4から遠心分離容器10に洗浄液を搬送し、遠心分離し、遠心分離容器10内から上清を一定量だけ残して排出することにより脂肪由来細胞を洗浄する。必要に応じて洗浄が複数回行われてもよい。
【0030】
脂肪由来細胞の洗浄の後、細胞分離装置1は、ポケット部10b内に沈殿している脂肪由来細胞の数を計測し、加温処理時間を決定する。そして、細胞分離装置1は、ヒータ12の温度を上昇させ、ポケット部10b内を設定温度、好ましくは40℃に保ちながら、決定した処理時間の間、ポケット部10b内の脂肪由来細胞と少量の上清とをピペッティングしながら待つ。
以上の手順により、最終生成物として脂肪由来細胞が少量の洗浄液に懸濁された細胞濃縮物がポケット部10b内に得られる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、脂肪由来細胞は、全ての処理が終了する直前に加温処理によって刺激されることにより賦活化される。これにより、賦活化されたばかりの高い活性を有する脂肪由来細胞の収量を増加させ、最終生成物による治療効果を向上することができるという利点がある。また、加温処理時にピペッティングを行うことにより、細胞濃縮物中の脂肪由来細胞に均一に熱を伝えて脂肪由来細胞をより効率良く賦活化することができるという利点がある。
【0032】
また、このようにして脂肪由来細胞を賦活化するためには遠心分離容器10内を外側からヒータ12で加温するだけでよいので、最終生成物の滅菌性を担保することができるとともに、遠心分離などの処理回数が増えることがないので、脂肪由来細胞を健全な状態に保ったまま回収することができるという利点がある。
【0033】
さらに、従来の細胞分離装置では、遠心分離容器10内の細胞が凝集している位置が分からないため、細胞が凝集していない位置に刺激を与えてしまい、不活化の効率が落ちてしまう可能性があった。この課題に対して、本実施形態に係る細胞分離装置1によれば、細胞数計測部11を備えることにより、細胞が凝集している位置を検出して確実に細胞に刺激を与えることができ、賦活化の効率を向上することができる。
【0034】
なお、上記実施形態においては、脂肪由来細胞を加温することにより刺激することとしたが、これに代えて、超音波または赤外光を照射することにより刺激してもよい。
この場合、図10に示されるように、ヒータ12に代えて超音波振動子または赤外光源20が受け面15aに設けられる。このようにしても、細胞濃縮物C内の脂肪由来細胞に簡便にかつ効果的に刺激を与えて脂肪由来細胞を賦活化することができる。
【0035】
このときに、制御部7は、細胞数計測部12によって計測された脂肪由来細胞の数に比例するように、超音波振動子または赤外光源20から出力される超音波または赤外光の強度または出力時間を調節する。また、制御部7は、温度センサ17によって検出された温度が所定の閾値を越えたときに、超音波または赤外光の照射を一時停止させ、温度センサ17によって検出された温度が所定の閾値より低くなったときに超音波または赤外線の照射を再開させる。これにより、超音波または赤外線の照射により細胞濃縮物Cの温度が過度に上昇することを防止することができる。
【0036】
あるいは、ポケット部10b内の細胞懸濁液の液量を測定する図示しない液量測定手段を設け、制御部7が、液量測定手段により測定された細胞懸濁液の液量に基づいて超音波または赤外光の照射条件を制御してもよい。液量測定手段としては、例えば、細胞懸濁液の液面位置を検出する光学センサ、または、細胞懸濁液の重量を測定する重量計などを用いることができる。
【0037】
さらに、細胞刺激部12として超音波振動子を採用する場合には、細胞濃縮物Cの各位置における脂肪由来細胞の密度、または、細胞濃縮物内の気泡の有無を検出する光学センサ(図示略)が設けられていてもよい。このようにすることで、細胞濃縮物Cに過剰な強度の超音波が照射されていないか否かを検出し、脂肪由来細胞に過度な刺激が与えられることを防ぐことができる。
【0038】
また、上記実施形態においては、収量増加部として細胞刺激部を採用したが、収量増加部は、細胞懸濁液の中から不要な細胞を除去する構成であってもよい。例えば、収量増加部として、細胞懸濁液中の脂肪由来細胞以外の細胞と特異的に結合する抗体が表面に結合されたビーズを用いることができる。この場合、制御部7は、例えば、細胞懸濁液の液量に基づいて、遠心分離容器10内に供給するビーズの量を調節する。
【0039】
また、上記実施形態においては、細胞刺激部12が、ポケット部10bを覆うように回転軸部材13と一体に設けられていることとしたが、細胞刺激部12の配置はこれに限定されるものではなく、ポケット部10b内の細胞濃縮物に効率よく刺激を与えることができるように配置されていればよい。
【0040】
例えば、受け部15が、図11に示されるように、ポケット部10bが嵌る溝が形成されたコの字形状であってもよく、図12に示されるように、ポケット部と隣接する面が緩やかな湾曲面に形成されていてもよい。また、図13に示されるように、遠心分離機9を囲うパネル21を設け、パネル21の底面全面に、アーム13aおよび回転軸部材13とは別体で細胞刺激部12が設けられていてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、細胞数計測部11が、沈殿した細胞塊Aの体積に基づいて脂肪由来細胞の数を計測することとしたが、これに代えて、細胞濃縮物Cの散乱光の強度に基づいて脂肪由来細胞の数を計測してもよい。
この場合、脂肪由来細胞を洗浄して上清を排出し、ピペッティングして脂肪由来細胞と少量の上清とを懸濁した後に、細胞数計測部11は、図14に示されるように、受け面15aからポケット部10bに向けて検出光L’を照射し、該検出光L’の散乱光を検出する。このときの散乱光の強度は、細胞濃縮物C中の脂肪由来細胞の密度に比例するので、細胞数計測部11は、検出した散乱光の強度に基づいて脂肪由来細胞の数を算出することができる。
【0042】
また、上記実施形態で採用した細胞数計測部11の構成は一例であり、この構成に限定されるものではない。例えば、図15に示されるように、細胞数計測部11は、受け面15aに設けられたカメラ11aと、バケット14に設けられたメモリ11bとからなり、カメラ11aで撮影した画像内の細胞塊Aの高さ位置をメモリ11bで測定し、測定した高さ位置から細胞数を算出してもよい。このとき、カメラ11aで遠心分離容器10内およびメモリ11bを撮影できるように、適宜バケット14の一部を透明部材から構成したりバケット14の一部に穴を形成したりすることができる。
【0043】
あるいは、図16に示されるように、脂肪由来細胞が懸濁された状態でバケット14に付された格子状の線11cをカメラ11aで撮影してもよい。この場合、細胞懸濁液の濃度によって線11cの見え方が変化することから、脂肪由来細胞数を計測することができる。
【0044】
また、細胞数計測部11は、図17に示されるように、パネル21と受け面15aとに設けられても良く、図18に示されるように、パネル12に2つ設けられても良い。細胞数計測部11をパネル21に設ける場合、遠心分離機9の回転が停止したときに、細胞数計測部11と遠心分離容器10との位置がずれる可能性がある。したがって、回転停止時にアーム13aが細胞数計測部11に対して所定の位置で停止するように、モータ13bにブレーキを設けてもよく、あるいはアーム13aを逆回転させて停止位置を調節してもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、細胞刺激部12と細胞数計測部11との配置は適宜変更可能である。具体的には、細胞刺激部12と細胞数計測部11をともにアーム13aと一体に設けてもよく、細胞刺激部12をアーム13aと一体に設け細胞数計測部11をパネル21に設けてもよく、細胞刺激部12をパネル21に設け細胞数計測部11をアーム13aと一体に設けてもよい。
また、細胞数計測部11として、フローサイトメトリ、粒度分布測定装置または濁度計を用いることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 細胞分離装置
2 分解処理部
3 細胞濃縮部
4 洗浄液バッグ
5 廃液バッグ
6 搬送経路
7 制御部
8 収集容器
8a 底面
8b フィルタ
9 遠心分離機
10 遠心分離容器
10a 配管
10b ポケット部
10c 吸引吐出口
11 細胞数計測部(細胞数計測手段)
11a カメラ
11b メモリ
11c 格子状の線
12 細胞刺激部(収量増加部)、ヒータ
13 回転軸部材
13a アーム
13b モータ(回転部)
14 バケット
15 受け部
15a 受け面
16 磁石
17 温度センサ
18 チューブ
19 送液ポンプ
20 超音波振動子または赤外光源
21 パネル
A 細胞塊
B 上清
C 細胞濃縮物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を消化することにより該生体組織から生体由来細胞を分離させて細胞懸濁液を生成する分解処理部と、
前記細胞懸濁液を収容する遠心分離容器を揺動軸線回りに揺動可能に支持するアームと、前記アームを前記揺動軸線から離れた所定の軸線回りに回転させる回転部とを有し、前記細胞懸濁液を遠心分離により濃縮する細胞濃縮部と、
該細胞濃縮部において前記細胞懸濁液中の前記生体由来細胞の収量を増加させる収量増加部とを備え、
前記収量増加部は、前記アームが静止した状態の前記遠心分離容器に隣接する位置に設けられている細胞分離装置。
【請求項2】
前記細胞懸濁液に含まれる生体由来細胞の数を計測する細胞数計測手段と、
該細胞数計測手段により計測された前記生体由来細胞の数の情報に基づいて、前記収量増加部を制御する制御部とを備える請求項1に記載の細胞分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−10663(P2012−10663A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152209(P2010−152209)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】