説明

細胞及びその他の粒子を磁気濃縮するためのデバイス並びに方法

本発明は、磁場をそれ単独で用いることによって、又はサイズ分離と組み合わせることによって、細胞及びその他の所望の分析物の濃縮を行うためのデバイス並びに方法に関する。本デバイス及び方法は、サンプル中、例えば母体血液中に存在する希少細胞、例えば胎児細胞又は上皮細胞の濃縮を行うために有益に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、細胞分離、医療診断、及びマイクロ流体デバイスの分野に関する。
【0002】
臨床的に又は環境的に価値のある情報がサンプル中に存在してはいるが量が少なすぎて検出できない、ということがしばしば起こり得る。従って、そのような情報の検出性を高めるために様々な濃縮法又は増幅法がしばしば用いられる。
【0003】
細胞の場合、種々のフローサイトメトリー及びセルソーティング法が利用可能であるが、これらの技術は一般に大型で高価なデバイスを用いるものであり、大量のサンプルと熟練したオペレータが必要である。このようなサイトメーターやソーターは静電偏向、遠心分離、蛍光活性化セルソーティング(fluorescence activated cell sorting)(FACS)、及び磁性活性化セルソーティング(magneticactivated cell sorting)(MACS)のような方法を用いて細胞の分離を達成する。これらの方法では、しばしばサンプル中の希少成分の分析が可能なほど十分なサンプルの濃縮ができないという問題が生ずる。更に、このような技術では、例えば効率の悪い分離又は成分の分解により、希少成分の不都合な損失が生じる場合がある。
【0004】
従って、サンプル濃縮のための新規なデバイス及び方法が求められている。
【0005】
発明の概要
全体として、本発明は、磁気的性質を利用し、一般的にはもう一つの分離要素、例えばサイズ、形状、変形能、及び親和性と組み合わせることにより、細胞やその他の対象分析物の濃縮を可能にするデバイス及び方法に関する。好ましくは対象分析物は固有の磁気的性質に基づいて分離され、その性質は本明細書で述べるように変化させてもよい。
【0006】
従って本発明は、第1の細胞又はその成分が第2の成分に対して濃縮されたサンプルを生成するデバイスに関し、第1の細胞又は成分が通流するチャネル、並びに0.05テスラから5.0テスラの範囲の磁界及び100テスラ/mから1,000,000テスラ/mの範囲の磁気勾配をチャネル中に発生させる磁石を具えるデバイスに関する。第1の細胞又は成分がチャネル中に保持されて第2の成分がチャネル中に保持されなくてもよく、又は逆の場合でもよい。チャネルは第1及び第2の流出口を含んでもよく、この場合第1の細胞又はその成分は第1の流出口へ向かって誘導され、一方第2の成分は第2の流出口へ誘導される。デバイスは更に、一秒当たり50,000個超の細胞又はその成分をチャネルへ流入させる流速を発生させることができるポンプを含んでもよい。
【0007】
デバイスは更に、サイズ、形状、変形能、又は親和性に基づいて第1の細胞又は成分を濃縮する分析モジュールを含んでもよい。分析モジュールは、例えば、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に対して並行でない方向へ決定論的に偏向させる構造を持つ第1のチャネルを含む。その構造は隙間のネットワークを形成する障壁構造のアレイを含んでもよい。その隙間を流れる流体は、主流の平均流動方向がチャネル中の平均流体流動方向に対して平行とならないように主流と副流とに不均等に分流される。障壁構造のアレイは第1及び第2の列を有してもよく、この場合第1の列の一つの隙間を流れる流体が第2の列の二つの隙間へ不均等に分流されるように、第2の列は第1の列に対して横方向に配置される。
【0008】
デバイスは更に第1の細胞若しくは成分、又は第2の成分の磁気的性質を変化させることができる試薬を含んでもよい。試薬は、例えば、第1の細胞若しくは成分中又は第2の成分中に存在するタンパク質で、例えば鉄含有の胎児ヘモグロビン、成人型ヘモグロビン、メトヘモグロビン、ミオグロビン、又はシトクロム等の磁気的性質を変化させる。試薬の典型例としては、亜硝酸ナトリウム、二酸化炭素、酸素、一酸化炭素、及び窒素が挙げられる。試薬は更に、第1の細胞若しくは成分中、又は第2の成分中の磁気を帯びたタンパク質の発現又は過剰発現を引き起こしてもよい。例えば、試薬は第1の細胞又は第2の成分に磁気応答性タンパク質を形質移入することができる。試薬は更に、第1の細胞若しくは成分又は第2の成分と結合するか、又は第2の成分中に取り込まれる磁性粒子を含んでもよい。
【0009】
第1の細胞は、例えば、血球細胞(例えば成人有核赤血球、若しくは10週未満の胎児等からの胎児有核赤血球)、別の有核細胞、又は脱核細胞である。第1の細胞は、哺乳類、鳥類、爬虫類、又は両生類のものであってよい。第1の細胞の成分の典型例としては、核、核周辺区画(peri−nuclear compartment)、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、又は細胞膜、脂質、多糖類、タンパク質、核酸、ウィルス粒子、及びリボソームが挙げられる。
【0010】
好ましい態様においては、少なくとも90%の第1の細胞又は成分がデバイス内に保持され、少なくとも90%の第2の成分がデバイス内に保持されない。
【0011】
別の局面では、本発明のデバイスは、第2の成分に対して第1の細胞又はその成分が濃縮されたサンプルを作成するために使用される。その方法は第1の細胞又は成分を具えるサンプルをチャネル内に導入し、磁気的性質に基づいて第1の細胞若しくは成分又は第2の成分の進路を他方に対して変化させることによって第1の細胞又は成分が濃縮されたサンプルを作成する。デバイス内に導入されるサンプルは、第3の成分に対して第1の細胞又は成分を濃縮してもよい。例えば、サイズ、形状、変形能、溶解されやすさ、標識、又は親和性に基づいて第3の成分に対して第1の細胞又は成分を濃縮する分析モジュールにサンプルを接触させてもよい。分析モジュールの典型例としては、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に対して並行でない方向へ決定論的に偏向させる構造を持つ第1のチャネルが挙げられ、ここで粒子とはサンプル中の第1の細胞若しくは成分又は第3の成分である。第1の細胞若しくは成分が濃縮されたサンプルには、サンプル中に存在する第1の細胞若しくは成分の少なくとも70%が保持されてよい。第1の細胞若しくは成分が濃縮されたサンプルは、例えば100倍に濃縮される。方法には更に第1の細胞若しくは成分又は第2の成分の磁気的性質を変化させることができる試薬とサンプルとを接触させることが含まれてもよい。第1の細胞若しくは成分が濃縮されたサンプルには、導入された濃縮前のサンプル中のの少なくとも90%の第1の細胞、若しくは成分及び濃縮前のサンプル中の10%未満の第2の成分が含まれていてよい。試薬、第1の細胞、その成分、第2の成分、純度、及び流速の典型例については本明細書の中で述べられる。
【0012】
本発明は更に、第1の細胞又はその成分を第2の成分に対して濃縮したサンプルを作製する別の選択肢としての方法に関するものであり、その方法では、第1の細胞又は成分を潜在的に具えるサンプルと、本明細書で述べるようにサンプル中の第1の細胞若しくは成分又は第2の成分において発現したタンパク質の磁気的性質を変化させる試薬とを接触させて変性サンプルを作製し、チャネルに相対する位置にあって第1の細胞若しくは成分又は第2の成分の進路を他方に対して変化させることのできる磁界及び磁気勾配を発生する磁石を有するチャネルとその変性サンプルを接触させることによって第1の細胞又は成分が濃縮されたサンプルを作製する。ある態様においては、サンプルは磁界と接触させる前に第3の成分に対して第1の細胞又は成分が濃縮されている。例えば、サンプルを、第3の成分に対して第1の細胞又は成分を濃縮してもよい。例えば、サイズ、形状、変形能、溶解性、標識、又は親和性に基づいて第3の成分に対して第1の細胞又は成分を濃縮する分析モジュールに接触させることができる。分析モジュールの典型例としては、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に対して並行でない方向へ決定論的に偏向させる構造を持つ第1のチャネルが挙げられ、この場合、粒子とはサンプル中の第1の細胞若しくは成分又は第3の成分である。構造の典型例は本明細書中で述べられる。第1の細胞若しくは成分が濃縮されたサンプルには、サンプル中に存在する第1の細胞若しくは成分の少なくとも70%が保持されるであろう。第1の細胞若しくは成分が濃縮されたサンプルは、例えば100倍又は1000倍に濃縮される。第1の細胞若しくは成分が濃縮されたサンプルには、導入された濃縮前のサンプル中の少なくとも90%の第1の細胞、若しくは成分及び濃縮前のサンプル中の10%未満の第2の成分が含まれていてよい。試薬、第1の細胞、その成分、第2の成分、純度、及び流速の典型例については本明細書の中で述べられる。
【0013】
別の様態において、本発明は流体サンプル(例:母体血液等の血液サンプル)の第1の分析物を第2及び第3の分析物に対して濃縮する方法に関し、その方法では、水力学的サイズに基づき、第1の分析物を第1の方向へ、第2の分析物を第2の方向へ誘導する複数の障壁を用いて第1の分析物を流体サンプルから濃縮する第1の濃縮ステップを行い、そして第1の、又は第3の分析物の固有の又は外的な磁気的性質に基づき、第1の分析物を流体サンプルから濃縮する第2の濃縮ステップを行う。第1の分析物の典型例は、本明細書にて述べるように細胞である。第2の濃縮ステップは、第1の濃縮ステップで得られた生成物に磁界を印加することを含んでもよい。磁界は、第1若しくは第3の分析物を引き付けてもよいし反発してもよい。一般的には、磁界は第3の分析物に対する第1の分析物の進路を変化させる。この方法は、例えば脱酸素によって第1の濃縮ステップの生成物の磁気的性質を変化させるステップを更に含んでもよい。脱酸素ステップは、第1の濃縮ステップの生成物をCO、CO、N、又はNaNOと接触させることを含んでもよい。この方法は更に、第1又は第3の分析物の常磁性化又は反磁性化を含んでもよい。第1の濃縮ステップ及び第2の濃縮ステップは連続して行ってもよい。ある態様においては、第1の濃縮ステップ又は第2の濃縮ステップは、連続して行うか又はお互いに並行して行う複数の濃縮ステップを具える。第1の濃縮ステップ又は第2の濃縮ステップはサンプル通流中に行う。第2の濃縮ステップは固有の又は外的な磁気的性質に基づいていてもよい。毎秒50,000個超の分析物が濃縮にかけられることが好ましい。典型的な磁界及び磁気勾配は本明細書において述べられる。
【0014】
本発明は更に、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい一つ又はそれ以上の第1の分析物を第1の流出口へ向かう第1の方向へ、臨界サイズよりも水力学的サイズが小さい一つ又はそれ以上の第2の分析物を第2の流出口へ向かう第2の方向へ選択的に誘導する障壁構造のアレイを持つ第1のモジュール、第1の流出口から排出される第1の分析物を受けるチャネルを持つ第2のモジュール、並びにチャネル内に第1の分析物の進路を変化させるための磁界及び磁気勾配を発生させる磁石を具えるシステムに関する。
【0015】
本発明は更に、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい一つ又はそれ以上の第1の分析物を第1の流出口へ向かう第1の方向へ、臨界サイズよりも水力学的サイズが小さい一つ又はそれ以上の第2の分析物を第2の流出口へ向かう第2の方向へ選択的に誘導する二次元的に配列された障壁構造のアレイを持つ通流チャネル、並びに第1の分析物の進路を変化させるための磁界及び磁気勾配を発生させる磁石を具えるシステムに関する。
【0016】
例えば第1の分析物は有核赤血球、例えば胎児有核赤血球、であり、第2の分析物は例えば脱核赤血球である。本明細書で述べるように、成人型有核赤血球は様々な疾患の診断及び治療に利用することができる。第1の分析物としては例えば、胎児ヘモグロビン、成人型ヘモグロビン、メトヘモグロビン、ミオグロビン、又はシトクロムが挙げられる。このシステムは、障壁構造のアレイ又はチャネルと繋がっていて、脱酸素剤又は磁気的性質を変化させることができるその他の試薬を具えるリザーバーを更に含んでよい。システムは更に、第1の分析物又はその成分を特異的に結合するためのプローブ、例えば核酸プローブ又は抗体プローブ、を含むリザーバーを含んでもよい。第1の分析物の進路は、例えば固有の又は外的な磁気的性質に基づいて変化する。このシステムで使われる典型的な磁界の強さは0.5テスラから5.0テスラの間であり、典型的な磁気勾配は100テスラ/mから1,000,000テスラ/mの間である。システムは更に、一秒当たり50,000個超の細胞又はその成分をチャネルへ流入させる流速を発生させることができるポンプを含んでもよい
【0017】
別の様態において、本発明は分析物が濃縮されたサンプルを作製するためのデバイスを提供するが、そのデバイスは、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に対して並行でない方向へ決定論的に偏向させる構造を持つ第1のチャネル(例えばマイクロ流体チャネル)、及び分析物がリザーバーへ流れ込む際に通る第1のチャネルの流出物と流体的に接続されたリザーバーを具えており、この場合、粒子とはサンプル中の分析物粒子又は非分析物成分であり、またリザーバーは分析物の磁気的性質を変化させる試薬を含んでもよい。その構造は、例えば隙間のネットワークを形成する障壁構造のアレイを具え、その隙間を流れる流体は臨界サイズを超えるサイズの粒子が主流を流れ、臨界サイズより小さいサイズの粒子が副流を流れるように主流と副流とに不均等に分流される。この障壁構造のアレイは第1及び第2の列を有してもよく、ここで第1の列の一つの隙間を流れる流体が第2の列の二つの隙間へ不均等に分流されるように、第2の列は第1の列に対して横方向へずれた位置にある。所望の分析物は、臨界サイズを超えるか又は臨界サイズ未満の水力学的サイズを有してよい。デバイスは、磁界を発生させることができる磁石を含んでよく、更に第2のチャネル(例:マイクロ流体チャネル)に配置された磁性障壁構造(例:永久磁石を具える障壁構造又は非永久磁石を具える障壁構造)の領域を含んでもよい。磁性障壁構造は二次元アレイ状に配列されていてもよい。デバイスのリザーバーは更に磁石を有する第2のチャネルを含んでもよい。試薬(例:亜硝酸ナトリウム)は一種類又はそれ以上の分析物の固有の磁気的性質を変化させてもよい。一つの態様においては試薬、例えばホロトランスフェリン又は磁性粒子は、一種類又はそれ以上の分析物と結合してもよい。磁性粒子は更に抗体(例:抗CD71、抗CD36、抗CD45、抗GPA、抗抗原i、抗CD34、抗胎児ヘモグロビン、抗EpCAM、抗E−カドヘリン、若しくは抗Muc−1)又はその抗原結合性断片を含んでもよい。
【0018】
本発明は更に、第2の分析物に対して第1の分析物を濃縮したサンプルを作製する方法を提供するが、その方法は、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に対して並行でない方向へ決定論的に偏向させる構造を持つデバイスに少なくともサンプルの一部を適用することで第1の分析物が濃縮され、第2の分析物を具える第2のサンプルを作製すること、第1の分析物の磁気的性質を変化させる試薬と第2のサンプルとを合わせることで変性された第1の分析物を作製すること、並びに第2のサンプルに磁界を作用させてその磁界が変性された第1の分析物を第2の分析物から物理的に分離する差動力(differential force)を発生させることで第1の分析物が濃縮されたサンプルを作製することを具える。試薬は第1の分析物と結合してもよい。別の態様においては、試薬(例:亜硝酸ナトリウム)が第1の分析物の固有の磁気的性質を変化させてもよい。更に別の態様においては、試薬は、第1の分析物と結合するか又は第1の分析物中に取り込まれる磁性粒子を含んでもよい。磁性粒子は抗体(例:抗CD71、抗GPA、抗抗原i、抗CD45、抗CD34、抗胎児ヘモグロビン、抗EpCAM、抗E−カドヘリン、若しくは抗Muc−1)又はその抗原結合性断片を含んでもよい。分析物は臨界サイズを超えるか又は臨界サイズ未満の水力学的サイズを有してよい。サンプルは母体血液サンプルであってもよい。第1の分析物は細胞(例:バクテリア細胞、胎児細胞、若しくは胎児赤血球等の血球細胞)、細胞小器官(例:核)、又はウィルスであってよい。
【0019】
本発明は更に、第2の血液成分(例:母体血球細胞)に対して赤血球を濃縮したサンプルを作製する方法を提供するが、この方法では、赤血球(例:胎児赤血球)を具えるサンプルを、鉄を酸化する試薬と接触させて酸化ヘモグロビンを生成すると、そのサンプルに磁界を印加するステップを具え、ここで、酸化ヘモグロビンを有する赤血球が第2の血液成分よりも強くその磁界に引きつけられることによって、赤血球が濃縮されたサンプルが作製される。この方法は更に、接触ステップの前に、例えば臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に対して並行でない方向へ決定論的に偏向させる構造を持つデバイスに少なくともサンプルの一部を適用することによって、サンプルを赤血球について濃縮する(例:母体赤血球に対して胎児血球細胞を濃縮)ステップを含んでもよい。
【0020】
別の局面において、本発明は赤血球が濃縮されたサンプルを作製するためのデバイスを提供するが、このデバイスは、サイズ、形状、変形能、又は親和性に基づいて赤血球を濃縮する分析デバイス、及び鉄を酸化する試薬を具えるリザーバーを具え、ここでその試薬(例:亜硝酸ナトリウム)は赤血球の磁気応答性を高める。分析デバイスは、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に対して並行でない方向へ決定論的に偏向させる構造を持つ第1のチャネルを含んでもよい。
【0021】
本発明は更に、GPA、胎児ヘモグロビン、抗原i、抗原I、CD34、CD45、CD15、CD71、EGFR、又はEpCAmと選択的に結合する一つ又はそれ以上の結合部位(例:モノクローナル抗体等の抗体)と結合した複数の磁性粒子を具える試薬を提供する。
【0022】
これらの試薬は、対象となる一つ又はそれ以上の細胞を細胞の混合物から分離する方法に利用でき、その方法は、細胞の混合物を試薬と合わせること、その細胞の混合物と試薬とを、結合部位が混合物中の対象となる一つ又はそれ以上の細胞と選択的に結合するのに十分な時間温置すること、並びに混合物に磁界を印加して磁性粒子と結合しなかった細胞から磁性粒子と結合した粒子を分離することを具える。この方法は更に、細胞の混合物を対象となる一つ又はそれ以上の細胞について濃縮するステップを含んでもよい。この濃縮ステップは、障壁構造のアレイによるサイズ分離又は対象でない一つ又はそれ以上の細胞の選択的な溶解を含んでもよい。
【0023】
別の局面において、本発明は赤血球細胞を具えるサンプルをカラム内に導入してカラムに磁界を印加し、第2の種類の赤血球細胞に対する第1の種類の赤血球細胞の進路を磁気的性質に基づいて変化させることによって赤血球細胞の亜集団を濃縮する方法に関するものであり、この場合、第1の種類の赤血球細胞は第2の種類の赤血球細胞よりも磁界へ引きつけられる力が強い。第1の種類の赤血球細胞は、例えば成熟赤血球又は正染性正赤芽球であり、第2の種類の赤血球細胞は、例えば正染性正赤芽球又は多染性正赤芽球である。
【0024】
本発明は更に、細胞を具えるサンプルをカラム内に導入してカラムに磁界を印加し、磁気的性質に基づいてサンプル内の磁気の影響を受けやすい粒子を内在する細胞の進路を第2の種類の細胞に対して変化させることによって磁気の影響を受けやすい粒子を内在する細胞の集団を濃縮するための方法に関する。磁気の影響を受けやすい粒子は、例えば赤血球又は走磁性バクテリアである。磁気の影響を受けやすい粒子はマグネタイト又はグレイジャイトを含んでもよい。磁気の影響を受けやすい粒子を内在する細胞は、例えば単球又はマクロファージである。この方法は、家族性血球貪食性組織球症、急性単球性白血病、及びリンパ腫の診断又はその治療の監視に用いることができる。
【0025】
本発明は更に、血球を具えるサンプルをカラム内に導入してカラムに磁界を印加し、その導入前、導入の最中、又は導入後に、白血球と(例えば抗CD45抗体又は抗CD15抗体を通して)結合する磁気の影響を受けやすい試薬にサンプルを接触させ、磁気的性質に基づいてサンプル中の赤血球及び白血球の進路を第3の種類の細胞(例:幹細胞)に対して変化させることによって、血液サンプル(例:臍帯血)中の赤血球及び白血球を除去させる方法に関する。
【0026】
「分析物」とは、分子、その他の化学種、例えばイオン、又は粒子を意味する。典型的な分析物としては、細胞、ウィルス、核酸、タンパク質、炭水化物、及び低有機分子が挙げられる。
【0027】
「生物粒子」とは、生物由来の種であって、サンプルの採取、調製、保存、及び分析の時間尺度において水性媒体に溶解しないいずれの種も意味する。例としては、細胞、粒子状細胞成分、ウィルス、並びにタンパク質、脂質、核酸、及び炭水化物を具える複合物が挙げられる。
【0028】
「生物的サンプル」とは、生物由来のサンプル又は生物粒子を具える若しくは具える可能性のあるいずれのサンプルも意味する。好ましい生物的サンプルは細胞サンプルである。
【0029】
「血液成分」とは、宿主赤血球細胞、白血球細胞、及び血小板を具える全血のいずれの成分も意味する。血液成分には更に、例えばタンパク質、脂質、核酸、及び炭水化物等の血漿成分、並びに、例えば現在若しくは過去の妊娠、臓器移植、疾患、又は感染の理由で血中に存在する可能性のあるその他のいかなる細胞も含まれる。
【0030】
「細胞サンプル」とは、細胞又はその成分を具えるサンプルを意味する。そのようなサンプルとしては、天然の液体(例:血液、リンパ液、脳脊髄液、尿、子宮頚管洗浄液(cervical lavage)、水サンプル)、このような液体の一部、及び細胞が導入された液体(培養液、液化組織サンプル)が挙げられる。この用語は更にライセートも具える。
【0031】
「捕獲部位」とは、分析物が結合する化学種を意味する。捕獲部位は表面又は表面を形成する物質と結合した化合物でもよい。典型的な捕獲部位としては、抗体、オリゴペプチド若しくはポリペプチド、核酸、その他のタンパク質、合成ポリマー、及び炭水化物が挙げられる。
【0032】
「チャネル」とは、流体が流れることができる隙間を意味する。チャネルは、キャピラリー、導管、又は親油性表面上にあって水性液体を閉じ込める親水性パターンのストリップであってもよい。
【0033】
細胞の「成分」とは、細胞の溶解によって少なくとも部分的に単離することができる細胞のいずれの成分も意味する。細胞成分は、細胞小器官(例:核、核周辺区画(peri−nuclear compartment)、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、若しくは細胞膜)、ポリマー若しくは分子複合体(例:脂質、多糖体、膜タンパク質、膜貫通タンパク質、細胞質タンパク質、天然核酸、治療用核酸、病原性核酸、ウィルス粒子、若しくはリボソーム)、又はその他の分子(例:ホルモン、イオン、コファクター、若しくは薬物)であってもよい。細胞サンプルの「成分」とは、そのサンプル中に含まれる細胞のサブセットを意味する。
【0034】
「濃縮されたサンプル」とは、ある分析物を具えるサンプルで、サンプル中に一般的に存在するその他の分析物に対するその分析物の相対的な量を増加させるために処理されたサンプルを意味する。例えば、対象分析物の量を少なくとも10%、25%、50%、75%、若しくは100%増加させるか、又は少なくとも1000倍、10,000倍、100,000倍、若しくは1,000,000倍に増加させてることで、サンプルを濃縮することができる。
【0035】
「除去したサンプル」とは、ある分析物を具えるサンプルで、サンプル中に一般的に存在するその他の分析物に対するその分析物の量を減少させるために処理されたサンプルを意味する。例えば、サンプルを除去することにより、対象分析物の量を少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%減少させてもよい。
【0036】
サンプル(例:細胞サンプル)との関連における「交換バッファー剤」とは、サンプルが元々懸濁している媒体とは別の媒体であって、サンプル中の一つ又はそれ以上の成分がその中へ交換される媒体を意味する。
【0037】
分析物の「外的な磁気的性質」とは、その分析物に内在的ではない磁気的性質を意味する。
【0038】
「流動抽出境界」とは、アレイから流体を取り除くように設計された境界を意味する。
【0039】
「流動供給境界」とは、アレイへ流体を加えるよう設計された境界を意味する。
【0040】
「隙間」とは、流体及び/又は粒子が流れることのできる開口部を意味する。例えば、隙間はキャピラリー、流体が流れることのできる二つの障壁構造の間の空間、又は親油性表面上にあって水性流体を閉じ込める親水性パターンであってもよい。本発明の好ましい態様において、隙間のネットワークは障壁構造のアレイによって決定される。この態様においては、隙間は隣り合う障壁構造の間の空間のことである。好ましい態様において、隙間のネットワークは基材表面の障壁構造のアレイによって構築される。
【0041】
「水力学的サイズ」とは、流動、障壁構造(例:柱状)、又は他の粒子と相互作用した時の粒子の有効サイズを意味する。この障壁構造又は他の粒子は、マイクロ流体構造であってもよい。この用語は、流動中の粒子の体積、形状、及び変形能に対する一般用語として用いられる。
【0042】
「細胞内活性化」とは、転写因子の活性化を引き起こす二次メッセンジャー経路の活性化、又はキナーゼ若しくはその他の代謝経路の活性化を意味する。細胞外膜抗原の変化による細胞内活性化も受容体輸送の変化を引き起こす可能性がある。
【0043】
分析物の「固有の磁気的性質」とは、その分析物に内在的な磁気的性質を意味する。固有の磁気的性質は、分析の最初から存在してもよく、又は適切な試薬によって分析物内で誘起されたものでもよい。典型的な固有の磁気的性質としては、細胞によって発現された鉄含有タンパク質によって導入されたものが挙げられる。
【0044】
「標識試薬」とは、分析物に結合するか、内部移行するか、又は吸収されることが可能であって、例えば形状、形態、色、蛍光、発光、燐光、吸光、磁気的性質、又は放射線によって検出可能な試薬を意味する。
【0045】
「メタボローム」とは、代謝反応に関与し、細胞の維持、成長、又は通常機能に必要なタンパク質及び核酸を除く細胞内の化合物一式を意味する。
【0046】
「マイクロ流体的」とは、少なくとも一つの寸法が1mm未満であることを意味する。
【0047】
「障壁構造」とは、例えば一つの表面からの突起物等のチャネル内の流動の障害物を意味する。障壁構造は、例えば基材上から突出している柱状部、又は水性流体の場合は疎水性バリアであってよい。ある態様においては、障壁構造は部分的に透過性であってよい。例えば、障壁構造は多孔性物質で構成される柱状部であってよく、この場合、該孔は水性成分を透過させるが、分離対象の粒子は小さすぎて進入できない。
【0048】
「収縮試薬」とは、粒子の水力学的サイズを縮小させる試薬を意味する。収縮試薬は、粒子の容積を減少させるか、変形能を増大させるか、又は形状を変化させることにより作用できる。
【0049】
「膨潤試薬」とは、粒子の水力学的サイズを増大させる試薬を意味する。膨潤試薬は、粒子の容積を増大させるか、変形能を減少させるか、又は形状を変化させることにより作用できる。
【0050】
「実質的により大きい」とは、少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、25倍、50倍、又は100倍大きいことを意味する。
【0051】
「実質的により小さい」とは、少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、25倍、50倍、又は100倍小さいことを意味する。
【0052】
その他の特徴及び利点は以下の説明及び請求項によって明らかになるであろう。
【0053】
発明の詳細な説明
本発明はサンプル中の分析物を濃縮するのに有用な分析デバイス及び方法を提供する。一般に濃縮は、分析物又はサンプルの他の成分と磁界との相互作用を通して行われる。分析物は、固有の磁気的性質(例:鉄含有タンパク質)、外的な磁気的性質(例:分析物と結合した磁気ビーズ)、又は固有の若しくは外的な磁気的性質の欠如に基づいて濃縮することができる。濃縮は、サンプル中の成分に既存の磁気的性質に基づいて行うことができ、又は磁気的性質を変化させること(例:誘導若しくは付加)のできる試薬との反応に基づいて行うこともできる。本発明の方法及びデバイスを用いて、赤血球(例:母体血液からの胎児赤血球)等の分析物の濃縮サンプルを作製することができる。
【0054】
磁気分離
例えば本明細書で述べる方法におけるように変化された分析物の固有の磁気的性質、又は例えば磁気ビーズの提供による分析物の外的な磁気的性質を用いて、サンプル中の残りの成分に対するその分析物の単離、濃縮、又は除去を行うことができる。そのような単離、濃縮、又は除去にはポジティブ選別、つまり必要とする分析物が磁界に引きつけられる選別、又はネガティブ選別、つまり例えば反発するか若しくは影響を受けないことによって、所望の分析物が磁界に引きつけられない選別を含んでいてもよい。いずれの場合でも、所望の分析物を含有する分析物の集団を、分析や更なる処理のために回収することができる。
【0055】
磁気分離を行うために用いられるデバイスは磁界を発生させることのできるあらゆるデバイスでよい。一つの態様においては、MACSカラム(例:Miltenyi Biotec社製)を用いて、磁気応答性分析物の濃縮を行う。例えば本明細書に記載する試薬との反応によって分析物が磁気応答性である場合は、分析物は磁界の存在下でMACSカラムに引きつけられ、それによってサンプル中の残りの成分に対して所望の分析物を濃縮することが可能となる。別の態様においては、複数の磁性障壁構造を具えるデバイス、一般的にはマイクロ流体デバイスを用いることで濃縮を達成することができる。サンプル中の分析物が磁気応答性である場合(例:分析物の固有の磁気的性質を変化させる試薬との反応を通して、又は磁気応答性粒子の分析物への結合によって)、分析物は障壁構造に結合することができ、それによって結合した分析物の濃縮が可能となる。又は他の選択肢として、ネガティブ選別を取り入れてもよい。この例では、所望の分析物が非磁気応答性であるか、若しくは非磁気応答性にされてもよく、又は不要な分析物が磁気応答性であるか、磁気応答性にされるか、若しくは磁気応答性粒子と結合してもよい。この場合、一つ又はそれ以上の不要な分析物が磁気デバイス内に保持されて所望の分析物は保持されないため、所望の分析物についてサンプルが濃縮される。
【0056】
別の態様においては、磁界を印加する前に磁性粒子を具える試薬でサンプルが処理される。本明細書で述べるように、磁性粒子は、抗体のような分析物が結合可能な適切な捕獲部位によって被覆されていてもよい。処理サンプルに磁界を印加すると、磁性粒子と結合した分析物が選択的に引きつけられる。
【0057】
チャネル又はデバイスの他の領域は磁気応答性であっても又は磁気応答性でなくてもよい。一つの態様においては、分析物が通るチャネルは、該チャネル内に適切な磁界を発生可能な磁石と連結されている。典型的な磁石を図78に示す。又は他の選択肢として、デバイス内のチャネルが、通常印加された磁界を変化させる磁気応答性の領域を具える。一般に、磁界強度は0.05テスラから5.0テスラ、例えば約0.5テスラ、であり、その磁気応答性領域は100テスラ/mから1,000,000テスラ/m、例えば約10テスラ/m、の磁気勾配を発生させる。
【0058】
デバイスの磁性領域は、硬質磁性材料又は軟質磁性材料を用いて製造することができ、これらの材料の例としては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、希土類、ネオジム−鉄−ホウ素、鉄−クロム−コバルト、ニッケル−鉄、コバルト−白金、及びストロンチウムフェライト等が挙げられるがこれらに限定されない。デバイスの一部は磁性材料から直接製造してもよく、又は磁性材料が別の材料へ塗布されてもよい。硬質磁性材料は他の操作なしに磁界を発生させることができるため、デバイスの設計を単純化することができる。一方軟質磁性材料は、単に材料を非磁性化することで結合分析物の放出及び下流処理を行うことが可能である。磁性材料の種類により、塗布方法は陰極スパッタリング、焼結、電解析出、又はポリマーバインダー−磁性粉複合物の薄膜コーティングを含んでもよい。好ましい態様は、ポリイミド−ストロンチウムフェライト等のポリマー複合物(ポリイミドがバインダーとして、ストロンチウムフェライトが磁性充填剤として働く)のスピンキャスティング法による、微細加工された障壁構造(例:シリコンの柱状物)の薄膜コーティングである。コーティング後、ポリマー磁性コーティングは硬化され、安定な機械的性質を実現する。硬化後、デバイスは、該デバイスの永久磁気の好ましい方向を決定する外部誘導磁界に暫時曝露される。 障壁構造からの磁界の磁束密度及び固有保磁力は磁性充填剤の体積%によって制御することができる。
【0059】
別の態様においては、封止されたマイクロ流体デバイスの外表面上において導電性材料が微細パターン化される。該パターンは、約100ミクロンの空間的周期性を有する単独の電気回路から成ってもよい。この電気回路のレイアウト及びこの回路を流れる電流強度を制御することにより、封止されたマイクロ流体デバイス内において高い磁界強度を有する領域と低い磁界強度を有する領域の周期構造を確立することができる。
【0060】
更に別の態様では、磁気応答性の領域は非粘着性プラスチック又はテフロンでコーティングされた充填された鉄ビーズを具える。
【0061】
上述のいずれの態様においても、本発明ではどのような磁界発生源を用いてもよく、発生源としては硬質磁石、軟質磁石、電磁石、超伝導磁石、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。一つの態様においては、空間的に不均一な永久磁石又は電磁石を使用して秩序立った、そして場合によっては周期的な磁性粒子のアレイをもともとパターンを持たないマイクロ流体チャネル内に形成することができる(Dengら、Applied Physics Letters、Vol.78、p.1775、(2001))。又は他の選択肢として、規則的な周期性を持たない不均一な磁界を使用してもよい。電磁石を使用してデバイス内に不均一な磁界を発生させることもできる。不均一な磁界によって磁界強度が高い領域と低い領域が作られ、その結果として磁性粒子が周期的な配列をもって引きつけられることになる。他の外部磁界を使用して磁性粒子が吸着する磁性領域を形成することもできる。デバイスの製造に硬質磁性材料を用いてもよく、それによって電磁石や外部磁界が不要になる。一つの態様において、例えば処理容量を上げるために、デバイスは磁性領域を有する複数のチャネルを具える。更に、これらのチャネルは縦方向に重ねられた構造でもよい。
【0062】
上述の態様において、例えばデバイスを流れる流体全体の流速を上げるか、磁界を弱めるか、又はこれら二つのある組み合わせにより、磁石と結合した分析物はチャネル内の所定の位置から放出することができる。
【0063】
例えば0.1〜200×10−6/kgの範囲の質量帯磁率を有する超磁性及び常磁性粒子に影響を与えるために磁界を調節することができる。有用な常磁性粒子はそのサイズによって、微粒子状(細胞径のサイズである1μmから5μm)、コロイド状(100nmのオーダー)、及び分子状(2nmから10nmのオーダー)に分類することができる。常磁性体に働く基本力は、(1)式のように表される。
【0064】


【0065】
ここでFは体積Vの常磁性体に働く磁力、Δχは磁性粒子の帯磁率χbとそれを取り巻く媒体の帯磁率χfとの差、μは自由空間の透磁率、Bは外部磁界、そして∇は勾配演算子を表す。磁界を制御及び調整して広い範囲の微粒子状、コロイド状、及び分子状常磁性体の吸引と保持を可能になる。
【0066】
磁気的性質を変化させることが可能な試薬
ある態様においては、分析物又は他のサンプル成分が、その分析物又は他のサンプル成分の固有のそして外的な磁気的性質を変化させることが可能な試薬と反応する。試薬の厳密な性質は、分析物の性質又はその試薬が変化させる磁気的性質が固有のものであるのか外的なものであるのかに依存する。典型的な試薬としては、遷移金属を酸化若しくは還元する試薬、分析物と結合可能な磁気ビーズ、又は鉄(例えば米国特許第4,508,625号明細書に記載)、その他の磁性材料、若しくは磁性粒子とキレート化若しくは結合可能な試薬が挙げられる。具体的な試薬としては、化学物質、例えば亜硝酸ナトリウム、ガス、例えば窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、及びこれらの混合物が挙げられる。例えば、この試薬は分析物を常磁性化又は反磁性化するために作用することができる。試薬は更に分析物、例えばミオグロビン又はヘモグロビンを脱酸素化するために作用することができる。試薬は、分析物の磁気的性質を変化させることによって分析物の磁界への求引を可能にしたり減少させたり若しくは増加させたり、また磁界への反発を可能にしたり減少させたり若しくは増加させたり、又は分析物が磁界に影響されないようにその磁気的性質を除去したりするために作用することができる。試薬は更に、分析物が溶解、懸濁、若しくはそうでなければ担持される流体の磁気的性質、又は細胞の細胞質ゾルの磁気的性質を変化させることができる。試薬は更に分析物のレオロジーを変化させることができる。
【0067】
ある態様において、磁性粒子が分析物と結合して外的な磁気応答性を付与する。これらの態様では、磁界に応答するどのような粒子も本発明のデバイス及び方法に使用することができる。望ましい粒子としては、 例えば化学反応、物理吸着、絡み合い、若しくは静電相互作用によって化学的又は物理的に修飾可能な表面化学を有する粒子である。本発明の磁性粒子はどのようなサイズ及び/又は形状でもよい。ある態様においては、磁性粒子径は500nm未満、400nm未満、300nm未満、200nm未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、又は50nm未満である。ある態様においては、磁性粒子径は10nm乃至1000nm、20nm乃至800nm、30nm乃至600nm、40nm乃至400nm、又は50nm乃至200nmである。ある態様においては、磁性粒子径は10nm超、50nm超、100nm超、200nm超、500nm超、1000nm超、又は5000nm超である。磁性粒子は乾燥状態であっても液状であってもよい。流体サンプルと磁性粒子を含有する第2の液体媒体との混合は、本技術分野で知られるいかなる手段で行われてもよい。
【0068】
捕獲部位は、本技術分野で知られるいかなる手段で磁性粒子と結合してもよい。例としては、化学反応、物理吸着、絡み合い、又は静電相互作用が挙げられる。磁性粒子と結合する捕獲部位は、対象とする分析物の性質に依存する。捕獲部位の例としては、タンパク質(抗体、アビジン、細胞表面受容体等)、帯電若しくは非帯電ポリマー(ポリペプチド、核酸、合成ポリマー等)、疎水性若しくは親水性ポリマー、低分子(ビオチン、受容体配位子、キレート剤等)、及びイオンが挙げられるがこれらに限定されない。このような捕獲部位を用いて、細胞(例:バクテリア細胞、病原体細胞、胎児細胞、胎児血液細胞、ガン細胞、上皮細胞、内皮細胞、血液細胞)を、細胞小器官(例:核)、ウィルス、ペプチド、タンパク質、ポリマー、核酸、超分子複合体、その他の生体分子(例:有機若しくは無機分子)、低分子、イオン、又はこれらの組み合わせ若しくは断片と特異的に結合させることができる。捕獲部位の具体例としては、抗CD71、抗CD36、抗GPA、抗EpCAM、抗Eカドヘリン、抗Muc−1、及びホロトランスフェリンが挙げられる。他の具体的な抗体は本明細書で述べられる。別の態様においては、捕獲部位は胎児細胞(例:胎児赤血球)、ガン細胞、又は上皮細胞に対して特異的である。
【0069】
サンプルは更に、分析物に固有の磁気的性質を変化させる試薬と組み合わせてもよい。変性分析物は試薬によって、非変性分析物と比較して多少磁気応答性に変性されてもよく、又は非磁気応答性に変性されてもよい。一つの例では、胎児赤血球(fRBC)を含有するサンプル(例:例えば母体赤血球を除去した母体血液サンプル)は亜硝酸ナトリウムで処理され、それによってfRBC中の胎児ヘモグロビンが酸化される。この酸化によって、サンプル中の他の成分、例えば母体白血球細胞、に対する胎児ヘモグロビンの磁気応答性が変化し、それによってfRBCの分離が可能となる。更に、胎児細胞及び母体細胞の示差的な酸化を用いて、胎児由来と母体由来の有核RBCを分離することも可能である。ヘモグロビン(例:成人若しくは胎児由来)、ミオグロビン、又はチトクロム(例:チトクロムC)に含まれる鉄等の磁気応答性成分を具えるいずれかの細胞を修飾して、細胞又はその成分(例:小器官)等の分析物の固有の磁気応答性を変化させることができる。
【0070】
更に細胞は、磁気応答性のタンパク質又はその他の分子の発現を誘起、阻止、促進、又は抑制する試薬と接触されてもよい。例えば、磁気の影響を受けやすいタンパク質又はサブユニット(例:ヘモグロビン若しくはヘム)をコードするベクターは、対象の一次遺伝子と共にトランスフェクトされる。トランスフェクトに成功した細胞は続いて本明細書で述べる磁気デバイスを用いて濃縮することができる。このような方法により、一過的にトランスフェクトされた対象物を機能が失われる前にすばやく単離したり、又は安定的にトランスフェクトされた集団を確保することができる。また、磁気の影響を受けやすいタンパク質の発現が環境条件又は活性化剤の存在若しくは非存在という条件に依存するよう操作することもできる。そのような試薬を用いて、未変性だが不活性である磁気の影響を受けやすいタンパク質を有する細胞中における発現を誘因することができる。
【0071】
マルチモード磁気系濃縮
本発明の方法を用いて、固有の及び外的な磁気的性質に基づき細胞又はその他の粒子を同時に濃縮することができる。例えば血液サンプルにおいて、赤血球を固有の磁気的性質に基づいて分離し、同時に白血球を、例えばCD45又はCD15抗体を通して白血球に結合する磁気ビーズによる処理後に分離することができる。このようなマルチモード法により、サンプルの非磁気応答性細胞又は成分の濃縮が可能となる。例えば、臍帯血の幹細胞を赤血球及び白血球の両方から分離することができる。
【0072】
分析デバイス
本発明のデバイスは、どのような分析デバイスと接続して使用することができ、又はどのような分析デバイスを含んでいてもよい。例としては、アフィニティーカラム、細胞カウンター、粒子ソーター、例えば蛍光活性化セルソーター及び磁気活性化セルソーター、キャピラリー電気泳動デバイス、サンプル保管デバイス、及びサンプル調製デバイスが挙げられる。本明細書で述べるシステムとの関連においては、マイクロ流体デバイスが特に重要である。
【0073】
典型的な分析デバイスには、例えば国際公開公報第2004/029221号、国際公開公報第2004/113877号、Huangら、Science、Vol.304、p.987−990(2004)、米国特許公開公報第2004/0144651号、米国特許公報第5,837,115号、米国特許公報第6,692,952号、米国特許出願第11/449,161号、米国特許出願第11/227,904号、及び米国特許出願第11/449,149号に記載に記載される、フィルター、ふるい、及び、決定論的分離デバイス具える、サイズ、形状、又は変形能に基づいて粒子を分離するのに有用なデバイス;例えば国際公開公報第2004/029221号及び米国特許公開公報第2005/0266433号に記載される親和性に基づく捕獲に有用なデバイス;例えば国際公開公報第2004/029221号、米国特許公報第5,641,628号、及び米国特許出願第11/449,149号に記載されるサンプル中細胞の選択的溶解に有用なデバイス;並びに例えば国際公開公報第2004/029221号、米国特許公報第6,692,952号、米国特許公開公報第2004/0166555号、及び米国特許公開公報第2006/0128006号に記載される細胞の整列に有用なデバイスが含まれる。
【0074】
特定の態様においては、分析デバイスを使用して、例えば回収又は更なる分析のためにサンプル中の様々な分析物を濃縮することができる。希少細胞又はその成分はデバイス中に保持されてもよく、又は例えば国際公開公報第2004/029221号に記載のように他の細胞と比べて濃縮されてもよい。典型的な希少細胞としては、サンプルによるが、胎児細胞(例:胎児赤血球細胞);幹細胞(例:未分化幹細胞);ガン細胞;免疫系細胞(ホスト又は移植片の);上皮細胞;結合組織細胞;バクテリア;真菌;ウィルス;及び病原体(例:バクテリア又は原虫)が挙げられる。そのような希少細胞は、体液、例えば血液、又は環境源サンプル、例えば水若しくは大気サンプル、を具えるサンプルから単離することができる。胎児赤血球は、例えば発生段階の胎児の性別の判定並びに異数体又は例えば突然変異のような遺伝的特徴の同定のために、母体末梢血液から濃縮することができる。ガン細胞も、診断及び治療進行状況のモニターのために、末梢血液から濃縮することができる。体液又は環境サンプルは、例えば大腸菌群、敗血症等の血液由来疾患、又はバクテリア性若しくはウィルス性髄膜炎等の病原体についてスクリーニングすることもできる。希少細胞には、例えば移植された器官の細胞のように、別の生物中に存在する1の生物の細胞も含まれる。例えば、デバイス中で保持又は濃縮された分析物は、例えば蛍光又は放射線プローブで標識することができ、化学的又は遺伝子解析(蛍光in situハイブリダイゼーション等)に付すことができ、もし生物的なものであれば培養することができ、又は観察若しくはプローブを用いた追跡を行うこともできる。
【0075】
分析デバイスはマイクロ流体チャネルを含んでも又は含まなくてもよく、すなわち、マイクロ流体デバイスであってもなくてもよい。分析物が導入されるデバイスのチャネルの寸法は、扱う分析物のサイズ又は種類に依存するであろう。好ましくは、分析デバイスのチャネルは少なくとも一つの寸法(例:高さ、幅、長さ、又は半径)が10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、又は1mm以下である。本明細書で述べるデバイス及び方法に使用されるマイクロ流体システムは、好ましくは少なくとも一つの寸法が1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、又は0.05mm未満である。分析デバイスの好ましい寸法は、当業者であれば、所望の用途に基づいて決定することができる。
【0076】
分析デバイス(例:決定論的デバイス)には、分析物(例:赤血球等の細胞)の磁気的性質を変化させることができる試薬(例:結合部位を有する磁性粒子又は亜硝酸ナトリウム)を含むリザーバーが接続されていてもよく、又は該リザーバーが含まれていてもよい。リザーバーは、例えばマイクロ流体チャネルのようなチャネル、チューブ、又は分析物を受容して試薬と接触させることのできる他のどのような容器を含んでもよい。リザーバーは、分析デバイスから分離可能であってもよく、分析デバイスと一体化されていてもよい。試薬の分析物との混合は、拡散、機械的混合、無秩序混合、対流、又は乱流を具えるどのような手段で行われてもよい。試薬は、リザーバー内に乾燥状態で保存されてサンプルの導入の際に液化されてもよく、溶液として保存されてサンプルと混合されてもよい。別の態様においては、試薬はサンプルの導入に合わせて連続的に又は不連続な投入によってリザーバーに添加される。
【0077】
リザーバーは、未反応試薬又は試薬と分析物との反応の副生物から変性分析物を分離可能にする構造を更に含んでもよい。例えば、本明細書で述べるように、この目的のために決定論的分離を利用することもできる。又は別の選択肢として、フィルター、リンス、若しくはその他の手段を利用することもできる。そのような構造はリザーバー又は分析デバイスの一部として含まれても又は含まれていなくてもよい。
【0078】
一つの態様において、リザーバーは、例えばチャネル内の領域に磁性粒子を接着させることで、チャネルを流れる分析物が接触できるようにパターン化された表面上の磁性領域を有するチャネルを具える。例えば、チャネルの寸法に対する磁性粒子サイズ及び形状といったパラメータを適切に選択することによって、分析物と結合した磁性粒子との間の相互作用を促進するパターンを提供できる。磁性粒子は抗体(例:抗CD71、抗CD36、抗CD45、抗GPA、抗抗原i、抗CD34、抗胎児ヘモグロビン、抗EpCAM、抗E−カドヘリン、又は抗Muc−1)のような親和性に基づく機構によって分析物と結合できる適切な捕獲部位によって被覆されていてもよい。磁性粒子はデバイス内に均一に配置されてもよく、又は空間的に分離された領域内に配置されてもよい。更に、磁性粒子を用いてデバイス内に構造を作製してもよい。例えば、チャネル内で互いに向かい合う二つの磁性領域を用いて、磁性粒子を求引してこの二つの領域をつなぐ「橋掛け構造」を形成することができる。磁性粒子は、チャネルの硬質磁性領域に付着してもよく、磁界を発生するよう作動された軟質磁性領域に付着してもよい。
【0079】
リザーバーの例が図74に示されており、リザーバーのジオメトリ、及び例えば細胞又は分子等の対象分析物を複雑な混合物から単離し、その後放出する機能的なステップの流れを示す。図に示すように、リザーバーはチャネルの一表面から反対側の表面に向かって伸びる障壁構造を有する。この障壁構造はチャネル断面の全長に渡って伸びていてもよく、伸びていなくてもよい。この例では、障壁構造は磁気を帯びており(例:硬質若しくは軟質磁性材料を具える、又は不均一磁界中の強磁界中の位置)、磁性粒子を吸引及び保持するが、この場合、その磁性粒子は捕獲部位によって被覆されていてもよく、又は磁界に求引される細胞であってもよい。リザーバーのジオメトリ、障壁構造の分布、形状、サイズ、並びにフローパラメ−タは、例えば捕獲部位を有する磁性粒子に結合した分析物を求引することによる対象分析物の濃縮の効率を最適化するために変更してもよい(例:国際公開公報第2004/029221号に記載)。一つの具体例としては、様々な形状(円柱状、矩形状、台形状、又は多形状)及びサイズ(10から999ミクロン)の微小構造を有する磁性障壁構造を持つ陽極反応で蓋をされたウェハーが独特の配列に置かれ(配置間隔及び密度は正三角形配列、対角線配列、及びランダムアレイ分布の間で変化する)、連続して潅流する液流の範囲内における変性又は未変性の分析物と障壁構造との衝突頻度が最大化される。磁性障壁構造の厳密なジオメトリ及び障壁構造の分布は、単離、濃縮、又は精製される分析物の種類依存するであろう。
【0080】
図75はリザーバーの製造と機能化の例を示す。磁化された障壁構造により、封止後にリザーバーを調節することができる。半導体処理パラメータ(高温加熱又は蓋部を接着するための溶剤型封止剤)と捕獲部位(温度並びに無機及び有機溶剤による影響を受けやすい)との不適合性のため、このようなデバイスは汎用性があり、あらゆる捕獲部位の機能化に適合する。磁界の使用によって捕獲部位を障壁構造(例:柱状)上に保持できることは、固定化に複雑な表面化学を用いる従来技術に対して追加される利点である。このようなリザーバーにより、最終ユーザーは簡単にかつ迅速に最適な捕獲部位又は捕獲部位の混合物をリザーバーに充填することができ、それによって用途の多様性が広がるのである。このリザーバーによってオンデマンドかつ「ジャストインタイム(just−in−time)」のワンステップによる機能付与が可能となり、それによって捕獲部位が製造段階で化学的架橋を伴っていた場合に生ずるであろう捕獲部位の保存安定性の問題を回避することができる。障壁構造上に装填、保持することができる捕獲部位としては、全ての哺乳類細胞上の分化クラスター(CD)受容体、細胞受容体の合成及び組み換えリガンド、並びにどのような磁性粒子にも付加できるその他の対象の有機分子、無機分子若しくは化合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
追加的構成要素
本発明のデバイスは更に、例えば分析物の単離、回収、操作、又は検出のための要素を含んでもよい。そのような要素は当該技術分野において公知である。例えば、本発明のデバイス(例:決定論的デバイスを組み込んだデバイス)は更に、親和性分離、溶解分離、電気泳動分離、遠心分離、及び誘電泳動分離を具える他の種類の分離用構成要素を含んでもよい。本発明のデバイスは更にデバイスからの出力を二次元的にイメージ化するための構成要素、例えばウェルのアレイ又は平面、を含んでもよい。そのようなウェルのアレイ又は平面は、顕微鏡又はその他の撮像機器、例えばカメラ、によってイメージ化又は観察することができる。
【0082】
本発明のデバイスは更に、同一デバイス上で又は別のデバイス上で、他の濃縮デバイスと一緒に使用しても良い。他の濃縮技術に関しては、例えば国際公開公報第2004/029221号、国際公開公報第2004/113877号、米国特許公報第6,692,952号、米国特許公開公報第2005/0282293号、米国特許公開公報第2005/0266433号、及び米国特許出願第11/449,161号に記載されており、いずれも参照することで組み入れられるものとする。
【0083】
決定論的分離法(Deterministic Separation)
一つの態様において本発明は、例えば粒子の磁気的性質を変化させることができる試薬を具えるリザーバーと組み合わせて、水力学的サイズに基づいて粒子を決定論的に誘導するチャネル及び磁石を具えるデバイスを提供する。本発明は更に、水力学的サイズに基づいて粒子を決定論的に誘導するチャネルを具えるデバイスにサンプルを適用することによって第1の分析物が濃縮された第2のサンプルを作製し、該第2のサンプルを第1の分析物の磁気的性質を変化させる試薬と合わせるか若しくは既存の磁気的性質を利用し、そして磁界を印加して第2の分析物から第1の分析物を分離することによって、第2の分析物に対して第1の分析物を濃縮したサンプルを作製するための方法を提供する。
【0084】
一つの例としては、チャネルは、流体の成分を決定論的に横方向へ移動させる障壁構造のアレイを一つ又はそれ以上具える。そのようなデバイスは、Huangら、Science、Vol.304、p.987−990(2004)、米国特許公開公報第2004/0144651号、及び国際公開公報第2004/029221号に記載されている。これらのデバイスは更に、隙間のネットワークのアレイを使用してもよく、この場合、一つの隙間を流れる流体はそれに続く隙間へ不均等に分流される。一つの態様においては、隙間を流れる流体はたとえ隙間が同一の寸法にあっても不均等に分流される。流体の流れは、隙間のアレイを通して分離されるべき粒子を輸送する。この流れは、アレイの照準線に対して小角度(流角)を有して配置される。臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子はアレイの照準線に沿って移動し、一方臨界サイズ未満の水力学的サイズを有する粒子は別方向への流れに従う。デバイス内の流体は層流条件下で流れる。
【0085】
臨界サイズは複数の設計パラメータの関数である。図1に示す障壁構造のアレイを参照すると、障壁構造の各列は前の列に対してΔλ分横方向にシフトしており、ここでλは障壁構造同士の中心間距離である(図1A)。パラメータΔλ/λ(「分岐比」、ε)は、次の障壁構造の左側に分岐された流れの比率を決定する。図1では、図示の都合上εは1/3となっている。一般的に、二つの障壁構造間の隙間を流れる流束をφとすると、副流束はεφであり、主流束は(1−εφ)である(図2)。この例では、隙間を流れる流束が実質的に3分の1ずつに分流されている(図1B)。隙間を流れる三つの各流束は障壁構造の周囲を縫うように流れるが、各流束の平均流動方向は全体の流れの方向となっている。図1Cは、臨界サイズ(例:4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21,22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ミクロン)を超える分析物のアレイを通る動きを示している。そのような分析物は、各隙間を流れる主流束へ次々と移送され主流束と共に移動する。
【0086】
図2について述べると、臨界サイズは約2Rcriticalであり、ここでRcriticalは停滞流の流れ線と障壁構造との間の距離を表す。例えば細胞等の粒子の質量中心がRcritical外にある場合、粒子は主流束に従いアレイの照準線に沿って移動する。隙間縦断面における流動のプロファイルが既知であれば、Rcriticalを決定することができる(図3)。副流束を作り上げるのは流体層の厚さである。任意の隙間の大きさdに対して、Rcriticalは分岐比εに基づいて調整することができる。一般的に、εが小さいとRcriticalも小さい。
【0087】
決定論的横方向移動用のアレイにおいては、形状の異なる粒子はサイズが異なるかのような挙動を示す(図4)。例えば、リンパ球は直径5μm以下の球状であり、赤血球は直径7μm以下、厚さ1.5μm以下の両凹面円盤状である。赤血球の長軸(直径)はリンパ球のそれよりも長いが、短軸(厚さ)はリンパ球よりも短い。赤血球が流動によって障壁構造のアレイを通る時、もしその長軸が流動とそろえば水力学的サイズは実質的にその厚さ(1.5μm以下)となり、リンパ球よりも小さくなる。赤血球は流体力学的流動によって障壁構造のアレイ間を通る時、その長軸が流動とそろう傾向にあり、実質的にリンパ球よりも「小さい」約1.5μm幅の粒子のような挙動を示す。従って方法とデバイスは、体積は同じであるかもしれないが、その形状に従って分析物を分離することができるのである。更に、異なる変形能を有する分析物もサイズが異なるかのような挙動を示す(図5)。例えば、未変形では同じ形状の二つの分析物は、アレイの障壁構造に接触して変形する際に一方が他方よりも容易に変形することができるため、決定論的横方向移動によって分離することができる。従って、デバイス内での分離は、分析物の物理的寸法、形状、及び変形能を具える水力学的サイズに影響するどのようなパラメータに基づいても達成することができる。
【0088】
図6について述べると、模式的に表すように、例えば細胞のような水力学的サイズが異なる分析物の混合物をアレイの最上部から供給して分析物を底部で回収することにより、臨界サイズ2Rcriticalを超える大きさの分析物を含有する流出物及び臨界サイズよりも小さい細胞を含有する流出物の、二種類の流出物を得ることができる。一方の流出物のみを回収してもよく、又は例えばサンプルを二種類又はそれ以上の副サンプルに分画する時のように両方を回収してもよい。隙間サイズよりも大きな分析物はアレイ内に捕捉されることになる。従ってアレイは動作可能なサイズの範囲を有する。主流束へ振り分けられるには、細胞はカットオフサイズ(2Rcritical)を超えて、最大通過サイズ(アレイ隙間サイズ)未満の大きさでなければならない。アレイの「サイズ範囲」は、カットオフサイズに対する最大通過サイズの比として定義される。
【0089】
遊離未反応試薬の変性分析物からの分離
決定論的デバイスは、遊離未反応試薬を変性分析物から分離するために使用することができる。図60に示すように、抗体等の標識剤は、決定論的デバイスへの導入前又は決定論的デバイス内で分析物(例:細胞サンプル)と共にプレインキュベートしてもよい。試薬は、対象分析物、例えば上皮細胞等の細胞集団、と特異的に反応するのが望ましい。典型的な標識剤としては、抗体、量子ドット、ファージ、アプタマー、フルオロフォア含有分子、検出可能な化学反応を起こすことが可能な酵素、磁気的性質を変化させる試薬(例:亜硝酸ナトリウム)、又は機能化ビーズが挙げられる。一般的には、試薬は対象分析物(例:細胞)又はビーズに結合した対象分析物よりも小さく;従って試薬と組み合わせたサンプルをデバイスに導入する際は、未反応試薬は進路を偏向されることなくデバイスを通り抜け、変性分析物(例:試薬と結合した分析物)は進路を偏向されるので、それによって変性分析物から未反応試薬が分離される。都合の良いことに、本方法によってサイズ分離及び分析物からの遊離未反応試薬の分離の両方が達成される。更に本分離方法により、以下に述べるように、所望の場合には、放出ステップ又は破壊の可能性のある分析法を用いることなく、下流のサンプル分析が容易化される。
【0090】
図61は、濃縮されて標識されたサンプルが、サイズが近似するために対象細胞と共に分離される非対象細胞集団を含有する特別な場合を示す。この試薬は対象細胞と選択的に結合するため、結合した標識剤の検出に依存する下流のサンプル分析を非対象細胞が妨害することはない。
【0091】
アレイのデザイン
決定論的分離は、チャネル内に隙間と障壁構造のアレイを使うことで達成することができる。そのようなアレイ、バイパスチャネル、及び界面の典型的な構成を以下で述べる。
【0092】
一段式アレイ
一つの態様においては、一段のステージが例えば円柱型柱状の障壁構造のアレイを具える(図1D)。ある態様においては、例えば白血球を赤血球から分離する時、アレイはカットオフサイズよりも数倍大きい最大通過サイズを有する。大きい隙間サイズdと小さい分岐比εの組み合わせによって本結果を達成することができる。好ましい態様において、εは1/2以下であり、例えば1/3以下、1/10以下、1/30以下、1/100以下、1/300以下、又は1/1000以下である。そのような態様において、障壁構造の形状が隙間における流動縦断面に影響を与ええることができる;一方、アレイを短くするために障壁構造を流動方向に短縮してもよい(図1E)。一段式アレイは、本明細書で述べるようにバイパスチャネルを含んでもよい。
【0093】
多段式アレイ
別の態様においては、複数のステージを使用して、広いサイズ範囲にわたる分析物を分離する。典型的なデバイスを図7に示す。図に示したデバイスは三つのステージを持つが、どのようなステージ数も使用でき、アレイは必要な数だけステージを有してよい。一般的には、第1ステージのカットオフサイズは第2ステージのカットオフサイズよりも大きく、第1ステージのカットオフサイズは第2ステージの最大通過サイズよりも小さい(図8)。続くステージでも同様である。第1ステージでは、例えば第2ステージで目詰まりを起こしかねない分析物を第2ステージに到達する前に偏向(及び除去)する。同様に、第2ステージでは、第3ステージで目詰まりを起こしかねない分析物を第3ステージに到達する前に偏向(及び除去)する。
【0094】
既に述べたように、多段式アレイにおいては下流にて目詰まりを起こしかねない大粒径の分析物、例えば細胞、を最初に偏向し、そしてこのように偏向された分析物は目詰まりを避けるために下流ステージをバイパスする必要がある。従って、本発明のデバイスはアレイからの生成物を除去するバイパスチャネルを含んでもよい。バイパスチャネルは、臨界サイズを超える分析物を除去するという観点から本明細書で述べているが、バイパスチャネルを用いて、アレイのどの部分からも生成物を除去することができる。
【0095】
バイパスチャネルの異なるデザインを以下に示す。
【0096】
単式バイパスチャネル
このデザインでは、すべてのステージが一つのバイパスチャネルを共有するか、又は一つのステージのみ有する。バイパスチャネルの物理的境界は、一方をアレイの境界、他方を側壁としてもよい(図9から図11)。単式バイパスチャネルは、二重アレイと共に使用することもできる(図12)。
【0097】
単式バイパスチャネルは更に、デバイス全体の流束を一定に維持するために、ア例と連結した状態で設計することができる(図13)。図に示すように、チャネル内の流れがアレイ内の流れに干渉しないように、バイパスチャネルの幅が変化することでて全ステージを通して流束が一定に維持される。そのようなデザインは、二重アレイと共に使用することもできる(図14)。単式バイパスチャネル更に、全ステージを通して実質的に流体抵抗を一定に維持するために、アレイと連結した状態で設計することができる(図15)。そのようなデザインは、二重アレイと共に使用することもできる(図16)。
【0098】
複式バイパスチャネル
このデザインでは(図17)、各ステージがそれぞれバイパスチャネルを有し、チャネル同士は互いに側壁で仕切られている。例えば細胞のような大粒径の分析物は、主流束へ偏向されて第1ステージの右下の角へ向かい、その後バイパスチャネルへ入る(図17のバイパスチャネル1)。第2ステージで目詰まりを起こさない小さい細胞は第2ステージへ送られ、第2ステージの臨界サイズより大きな細胞は第2ステージの右下の角へ偏向されて別のバイパスチャネルへ入る(図17のバイパスチャネル2)。このデザインを必要なステージの数だけ繰り返すことができる。この態様においては、バイパスチャネル同士は流体的な接続はされておらず、複数の分画を回収又は処置することが可能となっている。バイパスチャネルは直線である必要はなく、物理的に互いに平行である必要もない(図18)。複式バイパスチャネルは、二重アレイと共に使用することもできる(図19)。
【0099】
複式バイパスチャネルは更に、デバイス全体の流束を一定に維持するために、アレイと連結した状態で設計することもできる(図20)。この例では、バイパスチャネルは、アレイ中の流れが乱れされず、すなわち実質的に一定となるように、一定量の流れを除去するように設計されている。そのようなデザインは、二重アレイと共に使用することもできる(図21)。本デザインでは、中心にあるバイパスチャネルを二つの二重アレイで共有してもよい。
【0100】
最適な境界のデザイン
もしアレイが無限の大きさであると仮定すれば、流動の乱れはすべての隙間において等しくなるであろう。隙間を進む流束φは等しくなり、すべての隙間における副流束はεφとなるであろう。実際には、アレイの境界によってこの無限流動のパターンが乱される。アレイの境界の一部は、無限アレイの流動パターンを作り出すようなデザインとしてもよい。境界は流動供給型、すなわち境界がアレイへ流体を注入するものであってよく、又は流動抽出型、すなわち境界がアレイから流体を抽出するものであってもよい。
【0101】
好ましい流動抽出境界は、境界における各隙間(d=24μm、ε=1/60)からεφを抽出(図22の矢印で表す)するよう幅が次第に広がっている。例えばアレイと側壁との間の距離は、各隙間から境界へεφが加えられるように次第に大きくなっている。このアレイ内における流動パターンは、この境界デザインのためにバイパスチャネルによる影響を受けない。
【0102】
好ましい流動供給境界は、境界における各隙間(d=24μm、ε=1/60)へεφを正確に供給(図23の矢印で表す)するよう幅が次第に狭くなっている。例えばアレイと側壁との間の距離は、境界から各隙間へ向かってεφが除去されるように次第に小さくなっている。ここでも、このアレイ内における流動パターンは、この境界デザインのためにバイパスチャネルによる影響を受けない。
【0103】
流動供給境界の幅はアレイの隙間(d=24μm、ε=1/60)と同じかそれより広くてもよい(図24)。例えば分析物の回収のために境界がバイパスチャネルとして機能している場合は、幅の広い境界が好適であり得る。境界の全流量の一部を使ってアレイへ供給し、境界における各隙間へεφを供給する境界を用いることができる(図24の矢印で表す)。
【0104】
図25は二重アレイにおける単式バイパスチャネルを示す(ε=1/10、d=8μm)。このバイパスチャネルは二つの流動供給境界を具える。バイパスチャネルの破線1を横切る流束をΦbypassとする。φの流れは、隙間から破線の左側に向かってΦbypassに合流する。境界における障壁構造の形状は、境界の各隙間において、アレイへ向かう流量がεφとなるように調整される。破線2における流束もΦbypassである。
【0105】
量の決定及び安定化のためのオンチップ流体抵抗器
決定論的分離には、アレイ内の流量を決定し安定化するため、更にはアレイから回収される流量を決定するためにも、流体抵抗器を用いてもよい。図26に示すのは平面デバイスの模式図であり;サンプル、例えば血液、流入チャネル、バッファー流入チャネル、排液流出チャネル、及び生成物流出チャネルがそれぞれアレイと接続されている。流入口及び流出口は流体抵抗器として作用する。図26はこれらの異なるデバイス構成要素の対応する流体抵抗も示す。
【0106】
アレイ内における流量の決定
図27及び28に示すのは、デバイスの深さが均一でかつ一定の圧力損失で運転した時のアレイ内におけるサンプル流及びバッファー流の流動及び対応する流動幅である。圧力損失を流体抵抗で割ることで流量が決まる。ここで示したデバイスでは、Iblood及びIbypassは同等であり、これによってアレイ内の血液流及びバッファー流の対応する流動幅が決まる。
【0107】
回収分画の決定
生成物及び排液の流出チャネルにおける比抵抗を制御することにより、各流分の回収許容範囲を調節することができる。例えばここで示した一式の模式図においては、RproductがRwasteより大きい場合、潜在的に排液分画へのロスが増加して排液が希釈されるという犠牲の下、より濃縮度の高い生成物分画が得られる。逆に、RproductがRwasteよりも小さい場合、排液流からの潜在的な汚染の犠牲の下、より希釈され収率の高い生成物分画が回収される。
【0108】
流量の安定化
各流入チャネル及び流出チャネルは、チャネル全体にわたる圧力損失が駆動圧全体の変動と同程度か、又はこれを超えるように設計することができる。典型的な例では、流入及び流出圧力損失は駆動圧の0.001乃至0.99倍である。
【0109】
多重化決定論的アレイ
決定論的分離は、多重化決定論的アレイを用いて達成してもよい。デバイス上に複数のアレイを設けることによってサンプル処理能力が向上し、異なる分画若しくは操作のための複数のサンプル又はサンプルの一部の同時処理が可能となる。多重化は更に、調製用途にも好適である。最も単純な多重デバイスは二つのデバイスを直列に、つまりカスケード状に連結したものである。例えば、一つのデバイスの主流束からの流出が二つ目のデバイスの流入に接続されてもよい。又は別の選択肢として、一つのデバイスの副流束からの流出が二つ目のデバイスの流入に接続されてもよい。
【0110】
二重化
二つのアレイを、例えば鏡像のように並べて配置してもよい(図29)。そのような配置においては、二つのアレイの臨界サイズは同じでもよく異なっていてもよい。更に、主流束が二つのアレイの境界、各アレイの端部、又はこれらの組み合わせへ流れるようにアレイを配置してもよい。このような多重化アレイは、例えば臨界サイズを超える分析物を回収したり、又は例えばバッファー交換、反応、若しくは標識によるサンプルの変性のために、アレイ間に配置された中心領域を更に含んでもよい。
【0111】
デバイス上での多重化
二重構造を形成するのに加えて、流入を分離した二つ以上のアレイを同じデバイス上に配置してもよい(図30A)。そのような配置は複数のサンプルに対して使用することができ、又はその複数のアレイは同じサンプルの同時処理のために同じ流入口に接続されてもよい。同じサンプルの同時処理において、流出口は流体的に接続されていても接続されていなくてもよい。例えば、複数のアレイが同じ臨界サイズを有する場合、流出口はサンプル処理量を高めるために接続されてもよい。別の例としては、アレイがすべて同じ臨界サイズを有していない可能性があるか、又はアレイ中の分析物がすべて同じように処理されていない場合があり、その場合は流出口は流体的に接続されなくてもよい。
【0112】
多重化は、複数の二重アレイを一つのデバイス上に配置することによっても達成することができる(図30B)。二重であれ一重であれ、複数のアレイは互いに可能等のような立体的関係で配置することができる。
【0113】
典型的な多段式デバイス
上述のデバイスに加えて以下に示す典型的な多段式決定論的デバイスも、本発明のデバイスに含まれてよい。例えば、図58Aに示すのは「カスケード」配置であり、ここでは、一つのデバイスの流出口1が二番目のデバイスのサンプル流入口に接続されている。これにより、二番目のデバイスに導入されるサンプルがすでに対象細胞について濃縮されているように、一番目のデバイスを使っての初期分離ステップが可能となる。この二つのデバイスの臨界サイズは同じ又は異なっていてもよく、それは用途に依存する。
【0114】
図60では、未標識の細胞サンプルがカスケード配置された一番目のデバイスにサンプル流入口から導入され、標識試薬を具えるバッファーが一番目のデバイスへ流体流入口から導入される。上皮細胞は偏向され、標識試薬を具えるバッファー中に含まれて中央流出口から流出する。そしてこの濃縮された標識サンプルは、カスケード配置された二番目のデバイスへサンプル流入口を通して導入され、一方バッファーが流体流入口を通して二番目のデバイスへ添加される。対象細胞の更なる濃縮及び遊離標識試薬の分離が達成され、濃縮サンプルを更に分析することができる。又は別の選択肢として、一番目のデバイスの中央流出口から流出したサンプルに対して二番目のデバイスへ導入される前に標識試薬を直接添加してもよい。カスケード配置の使用により、少ない量又は高い濃度の標識試薬を、図60の一段式デバイスの配置に比べてより少ない犠牲のもとに使用することができる;しかも、一番目のデバイスを使用した初期分離ステップの存在により、生じ得るあらゆる非特異的結合も著しく減少される。
【0115】
二つ以上のデバイスのステージの配置における別の選択肢は「バンドパス(bandpass)」配置である。この配置を図58Bに示すが、ここで一つのデバイスの流出口2が二番目のデバイスのサンプル流入口に接続されている。これにより、二番目のデバイスに導入されるサンプルが一番目のデバイス内で偏向を受けなかった細胞を具えるように、一番目のデバイスを使って初期分離ステップを行うことができる。この方法は、対象細胞がサンプル中での最大の細胞でない場合に有用であり得る;この場合は、一番目のステージを用いて、大粒径の非対象細胞を中央流出口へ偏向することでこの数を減少させることができる。カスケード配置と同様に、この二つのデバイスの臨界サイズは同じでも異なっていてもよく、それは意図する用途に依存する。例えば、より小さい内皮細胞の分離を要する用途と比較して、上皮細胞の分離を要する用途では異なる臨界サイズが適切である。
【0116】
図66では、あらかじめ標識試薬と共にプレインキュベートされた細胞サンプルがバンドパス配置の一番目のデバイスのサンプル流入口へ導入され、バッファーが流体流入口を通して一番目のデバイスへ導入される。一番目のデバイスは、大粒径非対象細胞が偏向されて中央流出口から流出し、一方対象細胞、小粒径非対象細胞、及び標識試薬を具える混合物が一番目のデバイスの流出口2から流出するように配置される。この混合物は次にサンプル流入口を通して二番目のデバイスへ導入され、一方バッファーが流体流入口から二番目のデバイスに添加される。対象細胞の濃縮及び遊離標識試薬の分離が達成され、濃縮サンプルは更に分析することができる。第1ステージにおける偏向された細胞への標識試薬の非特異的結合は、偏向された細胞及びどのような結合した標識試薬もシステムから除去されるため、この方法の場合許容される。
【0117】
上述のどの多段決定論的デバイスの配置においても、デバイス及びそれらの接続を一つのデバイスへ一体化してもよい。例えば、二つ以上のステージを具える単一のカスケードデバイスが可能であり、二つ以上のステージを具える単一のバンドパスデバイスも同様である。複数ステージの流出物は次いでリザーバーの流入物と一つにまとめられる。
【0118】
小占有面積アレイ
決定論的デバイスは、占有面積が小さいことを特徴とすることができる。アレイの占有面積を減らすことによってコストが下がり、また分析物の障壁構造への衝突数が減ることで分析物への潜在的な機械的損傷や他の影響を排除することができる。多段アレイの長さは、ステージ間の境界が流方向に対して垂直でない場合は短くすることができる。ステージ数が増えると長さの短縮も重要になってくる。占有面積の小さい三段式アレイを図31に示す。
【0119】
本発明のデバイスの用途
既述のように、本発明はバクテリア、ウィルス、真菌類、細胞、細胞成分、ウィルス、核酸、タンパク質、及びタンパク質複合体を含む粒子等の分析物を濃縮するためのデバイス及び方法に関する。本発明で意図する流体サンプルの例としては、全血、汗、涙、耳液、痰、リンパ液、骨髄懸濁液、リンパ液、尿、唾液、精液、膣液、脳脊髄液、脳液、腹水、乳、気道、腸、及び泌尿器管の分泌物、並びに羊水等の生体流体サンプルが挙げられる。更に、溶解又は懸濁可能な他の生体サンプル(例:バイオプシーによるサンプル)も本明細書で述べるシステム及び方法が意図するサンプルである。濃縮に加えて、サンプル中の分析物へ様々な操作を行うためにデバイスを使用することもできる。そのような操作としては、例えば磁気的性質等の分析物そのものの変性、又は分析物を担持する流体の変性が挙げられる。好ましくは、デバイスは、不均一混合物からの希少分析物の濃縮、又は例えばサンプル中の液体の交換若しくは分析物の試薬との接触による希少分析物の変性のために使用される。そのようなデバイスにより、細胞等潜在的に脆弱な分析物に対するストレスが制限された高度な濃縮が可能となっており、ここで本発明のデバイスでは、細胞の機械的溶解又は細胞内活性化が低減される。
【0120】
主に細胞に関して述べられているが、本発明のデバイスは、磁気的性質(若しくはその欠如)及び/又は本明細書で述べるその他の濃縮方法、例えば水力学的サイズに基づいた濃縮、に基づいて単離、濃縮、又は除去され得るどのような分析物においても使用することができる。
【0121】
決定論的デバイス及びその他の分析デバイスは、例えば分析物が相互に接触したり、水力学的に相互作用したり、又は別の分析物周囲の流動分布に影響を及ぼしたりする濃縮されたサンプルにおいても使用することができる。例えば、決定論的デバイスによってヒトドナー由来の全血中で白血球を赤血球から分離することができる。ヒトの血液は一般に45体積%以下の細胞を含有している。細胞は、アレイを流れる時は物理的に接触した状態及び/又は水力学的に相互に結合した状態にある。図32は、アレイ内で密に充填された細胞が互いに物理的に相互作用する様子を模式的に表している。
【0122】
既述のように、本発明のデバイス及び方法は、一つ又はそれ以上の分析物をその固有の又は外的な磁気的性質に基づいてサンプルから分離することを含んでもよい。一つの態様においては、サンプルは分析物の磁気的性質を変化させる試薬で処理される。その変性は磁性粒子を介してもよいし、又は分析物の固有の磁気的性質を変化させる試薬を介してもよい。故に、磁気応答性分析物がデバイス表面に求引され、サンプル中の所望の分析物(例:胎児細胞、病原性細胞、ガン細胞、又はバクテリア細胞等の希少細胞)をデバイス中に保持することができる。別の態様では、所望の分析物がサイズ、形状、又は変形能に基づくメカニズムによってデバイス中に保持される。別の態様ではネガティブ選別が利用され、この場合、不所望の磁気の影響を受けやすい分析物がデバイス内で結合され、所望の分析物は結合されない。この結合に加えて、例えば所望又は不所望の分析物を特定の方向、例えば流出口の方向、へ偏向するといったように、磁気の影響を受けやすい分析物の進路を磁界によって変化させることができる。いずれの態様においても、分析物(例:磁性粒子と結合した分析物)の保持のためにMACSカラムを使用することができる。
【0123】
ポジティブ選別を用いる本発明の態様では、例えば磁気的にデバイス内に結合されることで、対象分析物の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%が濃縮サンプル内に保持されることが好ましい。デバイス表面は、非対象分析物の非特異的な結合を最小限にするように設計されることが好ましい。更に、例えば磁気的にデバイス内に結合されないことで、非対象分析物の少なくとも99%、98%、95%、90%、80%、又は70%が、濃縮サンプル内に保持されないことが好ましい。選択的なデバイス内での保持により、例えば血液、痰、尿、及び土壌、空気、又は水のサンプルといった混合物から特定の分析物集団を分離することが可能となる。
【0124】
本発明の方法とデバイスにより、例えば濃縮サンプルの少なくとも0.01%、0.1%、1%、10%、20%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%が所望の分析物であるような高純度の濃縮サンプルを生成することができる。分析物が細胞、例えば胎児赤血球又は上皮細胞である場合には、定量的PCR法が使えるように高純度であることが特に好ましい。本発明のデバイスは更に、高収率(すなわち所望の分析物の保持率)における高純度も可能にする。例えば、サンプル中に存在する所望の分析物、例えば胎児赤血球、の少なくとも90%が本発明のデバイスで濃縮されたサンプル中に保持され、そして不所望の分析物、例えば白血球、の少なくとも90%が、例えば少なくとも95%又は99.9%が、濃縮サンプル内に保持されない。
【0125】
更なる態様においては、本発明のデバイスは血液媒介病原体、バクテリア量及びウィルス量、水性媒体中に溶解若しくは懸濁された風媒性病原体の単離及び検出、食品産業における病原体検出、並びに化学的及び生物的危険性に関する環境サンプリングに使用することができる。更に、磁性粒子は捕獲部位及び候補の薬物化合物と共存してもよい。対象細胞の捕獲は、捕獲された細胞及び固定化された薬物化合物との相互作用に関して更に分析されてもよい。従って、創薬プロセスにおいてハイスループットな候補化合物の細胞に基づいた二次スクリーニングに使用するために、デバイスは複雑な混合物からの細胞亜集団の単離、及びこれら細胞と候補薬物化合物との反応性の分析の両方に使用することができる。他の態様においては、創薬における受容体−リガンド相互作用のの試験が、捕獲部位すなわち受容体を磁性粒子上に局在化して候補リガンド(又はアゴニスト若しくはアンタゴニスト)の複雑な混合物中を流動させることによって、本デバイス内で達成することができる。対象リガンドが捕獲され、その結合現象を、例えば蛍光プローブによる二次染色によって検出することができる。本態様により、組織若しくは細胞処理物から抽出された複雑な混合物から公知のリガンドの非存在若しくは存在をすばやく同定したり、又は候補薬物化合物を同定したりすることが可能となる。
【0126】
磁性粒子
分析物の選択的保持は、磁性粒子(例えばデバイス中に存在する障壁構造に付着しているか、又は分析物が相互作用を起こす面積を拡大して結合の可能性を高めるような障壁構造を作るために操作された)を本発明のデバイスへ導入することで達成することができる。捕獲部位を磁性粒子上に結合することで、対象分析物との特異的な結合を生じさせることができる。別の態様において磁性粒子は、一定のサイズ、形状、又は変形能の分析物のみが選択的にデバイス中を通過できるように配置されてもよい。これらの態様の組み合わせも想定される。例えば、特定の分析物をサイズに基づいて保持し、そしてその他の分析物を結合に基づいて保持するようなデバイスを構成してもよい。更に、デバイスは一種類又はそれ以上の対象分析物を結合するよう設計されてもよく、例えば、デバイス内に領域が直列、並列、若しくは分散配置されるか、又は二種類又はそれ以上の捕獲部位が、例えば同一の障壁構造若しくは領域に結合されることで同一の若しくは隣接する磁性粒子上に配置される。更に、デバイス内において、又は同一又は異なる磁性粒子に対して、同一の分析物に対して特異性を有する複数の捕獲部位(例:抗CD71及び抗CD36)を、例えば同一の又は異なる障壁構造又は領域に配置することにより用いることができる。
【0127】
デバイス内の流動条件は一般に、分析物の損傷を防ぐために分析物が極めて温和に処理されるよう設定される。分析物を本発明のマイクロ流体デバイス内へ及びマイクロ流体デバイス内から送液するために、正圧若しくは負圧ポンプ又は流体カラムからの流動を利用してもよい。このデバイスは、各分析物について一つ又はそれ以上の磁性粒子との衝突頻度を最大にしながらも温和な処理を可能にする。対象分析物は磁性粒子との衝突によってどの捕獲部位とも相互作用を起こす。設計したデバイス中の磁界による求引の結果として、捕獲部位が障壁構造と共局在してもよい。この相互作用により、対象分析物の所定の位置での捕獲及び保持が可能となる。捕獲された分析物は、磁性粒子を保持している磁性領域を非磁性化することで放出することができる。領域からの分析物の選択的放出のために、非磁性化を選択された障壁構造又は領域に限定することができる。例えば磁界を電磁界としてもよく、これによって領域又は障壁構造ごとに任意に磁界を印加したりしなかったりすることが可能となる。他の態様においては、例えば、化学的開裂、非共有結合性相互作用の遮断、又は結合分析物の磁気応答性の低下によって分析物と捕獲部位との間の結合を切断することで粒子を放出することができる。例えば、鉄粒子にはDNAリンカーを介してモノクローナル抗体と結合しているものがあり;DNA分解酵素を使うことで結合を開裂して鉄粒子から分析物を放出することができる。又は別の選択肢として、抗体断片化プロテアーゼ(例:パパイン)を使って選択的放出処理を行ってもよい。特に硬質磁性領域の場合、磁性粒子への剪断力(shear force)を増加させて磁性領域から磁性粒子を放出してもよい。他の態様においては、捕獲された分析物は放出されず、保持された状態で分析又は更なる処置を行うことができる。
【0128】
図76は、トランスフェリン受容体を発現する細胞を複雑な混合物から捕獲、単離するよう設計されたリザーバーの例を示す。CD71受容体に対するモノクローナル抗体は、例えば鉄ドープポリスチレン及び鉄粒子若しくは鉄コロイド等これらに限定されない磁性材料と共有結合的に結合した状態で市販されており容易に入手可能である(例:Miltenyi社及びDynal社)。磁性粒子と結合したCD71に対するmABがリザーバーへ流入される。この抗体で被覆された粒子は障壁構造(例:柱状)、底部、及び壁部へ求引され、粒子と磁界との間の磁界相互作用の強さによって保持される。障壁間にある粒子及び障壁構造から離れて局在磁界の影響圏内でゆるやかに保持されている粒子はリンスすることで除去される(流速は、障壁構造から離れた粒子への水力学的せん断応力が磁力よりも大きくなるよう調整することができる)。
【0129】
図77は、複雑な混合物、例えば血液、のCD71陽性細胞をホロトランスフェリンを使って捕獲及び放出するためにリザーバーを適用した好ましい態様である。ホロトランスフェリンは鉄含量が高く、市販されており、対応するモノクローナル抗体に比べてCD71受容体との親和定数及び相互作用の特異性が高い。トランスフェリンリガンドに結合した鉄は、細胞受容体と結合するためのリガンドの立体構造を保持すること、及びリガンドを障壁構造上に保持するための分子常磁性要素として働くことという二重の役割を果たす。
【0130】
濃縮
一つの態様では、本発明のデバイスは、例えば少なくとも部分的に磁気的性質に基づいて、そして任意に水力学的サイズに基づいて所望の分析物を濃縮したサンプルを作製するために使用される。そのような濃縮の用途としては、希少細胞を具える粒子等の分析物の濃縮が挙げられる。デバイスは更に、小器官(例:核)等の細胞成分を濃縮するためにも使用することができる。本発明のデバイス及び方法では、初期混合物と比べて所望の分析物の少なくとも1%、10%、30%、50%、75%、80%、90%、95%、98%、又は99%が保持され、一方、一種類又はそれ以上の不所望の分析物に対して所望の分析物が少なくとも1倍、10倍、100倍、1000倍、10,000倍、100,000倍、又は1,000,000倍まで潜在的に濃縮されることが好ましい。濃縮によって、サンプル中の不要な分析物に対する所望の分析物の濃度は上昇するが、初期サンプルと比べて所望の分析物の希釈が起こることもある。希釈は90%以下が好ましく、例えば75%以下、50%以下、33%以下、25%以下、10%以下、又は1%以下である。
【0131】
別の態様では、本発明のデバイスは希少分析物が濃縮されたサンプルを作製するために用いられる。一般的に希少分析物とは、サンプル中の全分析物に対して10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、0.0001%未満、0.00001%未満、若しくは0.000001%未満存在する分析物であるか、又はサンプルの全質量に対して質量が10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、0.0001%未満、0.00001%未満、若しくは0.000001%未満である分析物のことである。典型的な希少分析物としては、サンプルによるが、胎児細胞、骨髄細胞、前駆細胞、幹細胞(例:未分化幹細胞)、泡沫細胞、ガン細胞、免疫系細胞(ホスト又は移植片の)、上皮細胞、内皮細胞、子宮内膜細胞、栄養芽細胞、結合組織細胞、バクテリア、真菌、ウィルス、及び病原体(例:バクテリア又は原虫)が挙げられる。そのような希少細胞は、例えば血液等の体液、又は例えば水サンプル中の病原体等の環境源のサンプルから単離することができる。胎児赤血球は、例えば発生段階の胎児の性別の判定並びに異数体又は遺伝的特徴、例えば突然変異、の識別のために、母体末梢血液から濃縮することができる。循環腫瘍細胞は通常上皮細胞種であり上皮細胞由来であるが、これらの細胞も診断及び治療の進行状況モニターの目的で末梢血液から濃縮することができる。循環内皮細胞も同様に末梢血液から濃縮することができる。
【0132】
体液又は環境サンプルは、例えば大腸菌群、敗血症等の血液由来疾患、又はバクテリア性若しくはウィルス性髄膜炎等の病原体についてスクリーニングすることもできる。希少細胞には、例えば移植された器官の細胞のように別の生物中に存在する1の生物の細胞も含まれる
【0133】
取り出す血液又はその他の体液の量は哺乳類の種類及びその状態、例えば妊娠又は例えばガン等の疾患の段階によって変化する場合がある。いくつかの態様においては、50mL未満、40mL未満、30mL未満、20mL未満、10mL未満、9mL未満、8mL未満、7mL未満、6mL未満、5mL未満、4mL未満、3mL未満、2mL未満、1mL未満、0.5mL未満、0.1mL未満、0.05mL未満、又は0.01mL未満の体液が個体から入手される。ある態様においては、1乃至50mL、2乃至40mL、3乃至30mL、又は4乃至20mLの体液が個体から入手される。他の態様においては、5mL超、10mL超、15mL超、20mL超、15mL超、30mL超、35mL超、40mL超、45mL超、50mL超、55mL超、60mL超、65mL超、70mL超、75mL超、80mL超、85mL超、90mL超、95mL超、又は100mL超の体液が個体から入手される。例えば、ある態様においては、本明細書のシステム及び方法によって、5mL未満又は3mL未満の母体血液サンプルから希少細胞(例:胎児細胞)を検出及び単離することができる。他の例では、本明細書のシステム及び方法を用いて、20mL超又は50mL超等の大容積の血液から希少細胞を分析又は濃縮することができる。上述の機能はいずれも、例えば1日未満、又は12時間未満、10時間未満、11時間未満、9時間未満、8時間未満、7時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、若しくは1時間未満以内に行うことができる。希少細胞の濃縮及び/又は検出のために、採取したサンプル全体を本明細書のデバイスに適用してもよい。又は別の選択肢として、特定の成分だけがデバイス内に導入されるようにサンプルを処理してもよい。
【0134】
希少分析物の濃縮に加えて、デバイスを調製用途に利用することができる。典型的な調製用途としては、血液からの細胞パック(cell pack)の生成が挙げられる。一つの例においては、磁気分離単独で又は決定論的濃縮との組み合わせによって血小板、赤血球、及び白血球が濃縮された分画を生成するよう設計することができる。多重化又は多段階デバイスを用いることにより、三種類の細胞分画すべてを同一サンプルから同時に又は順に生成することができる。他の態様においては、このデバイスを使用することにより、例えば臍帯血サンプルにおいて、無核細胞から有核細胞を分離することができる。
【0135】
本発明のデバイスは、濃縮されるべき分析物が損傷やその他の分解を受けやすいような状況において有用である。本明細書で述べるように、デバイスは分析物(例:細胞)と障壁構造又はその他の表面との衝突数を最小限にして分析物の濃縮を行うよう設計することができる。このように衝突数を最小限にすることにより、分析物(例:細胞)への機械的損傷を減らし、細胞の場合には衝突によって引き起こされる細胞内活性化も阻止又は低減できる。穏やかな処理により、サンプル中の限りのある希少分析物数を保持し、細胞の場合は細胞内成分による汚染又は分解を引き起こす破裂を阻止又は低減し、そして例えば幹細胞、血小板といった細胞の成熟や活性化を阻止又は低減する。好ましい態様においては、損傷を受ける(例:活性化又は機械的な溶解)分析物が30%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、又は0.01%未満となるように濃縮が行われる。
【0136】
図33に示すのはヒトの末梢血液中の細胞の一般的サイズ分布である。白血球は4μm以下から18μm以下の範囲であり、一方赤血球は1.5μm以下(短径)である。赤血球から白血球を分離するよう設計された決定論的デバイスは、通常2乃至4μmのカットオフサイズと18μm超の通過サイズを有する。そのようなデバイスは、本明細書で述べるように磁気分離と組み合わせて使用してもよい。
【0137】
図57Aは濃縮のための決定論的デバイスの作用を示す。細胞サンプルがサンプル流入口から添加され、バッファーが流体流入口から添加される。臨界サイズより小さい細胞はデバイス中を偏向されずに移動し、元のサンプル媒体中に含まれて端部の流出口から排出される。臨界サイズより大きい細胞、例えば上皮細胞、は偏向され、流体流入口から添加されたバッファー中に含まれて中央流出口から排出される。従って、このデバイスを操作することによって臨界サイズより大きい細胞と小さい細胞が濃縮されたサンプルが生成される。上皮細胞は血流の中で最も大きい部類に入る細胞であるため、デバイスの隙間のサイズとジオメトリは、デバイス内を一回通すことによって実質的に上皮細胞が濃縮されたサンプルを中央流出口から生成しながら、実質的に他のすべの種類の細胞を端部流出口へ誘導するよう選択することもできる。
【0138】
図57Aに示すように、本発明に含まれる決定論的デバイスは本明細書で述べるような操作を行うために二重式である必要はない。図57Bに示す模式図は、二重式デバイス又は単式アレイを表したものであり得る。
【0139】
決定論的分離に磁気分離を組み合わせることによって、濃縮は様々な方法で促進することができる。例えば、対象分析物(例:細胞)をビーズ(例:免疫親和性ビーズ)で標識し、それによってサイズを大きくし(図59に示すように)、更に分析物の磁気的性質を潜在的に変化させることもできる。上皮細胞の場合は、これによって更にサイズが大きくなり、結果として分離効率が更に向上する。又は別の選択肢として、もっと小さい分析物(例:細胞)については、該分析物がサンプル内で最大サイズの物体となるか若しくはサンプルの他の成分と比べて違うサイズ範囲を占める程度まで、又は他の分析物と共精製するように、そのサイズを拡大してもよい。ビーズはポリスチレン、磁性物質、又は分析物(例:細胞)と接着可能な他のあらゆる物質から作ることができる。そのようなビーズは、デバイス内の標識された細胞の流れを妨げないような中間的な浮力を持つことが好ましい。分析物のサイズの変更は、並列又は直列配列で用いられる磁気的及び決定論的性質に基づいた濃縮において利用することができる。
【0140】
変性
他の態様においては、濃縮に加えて又は濃縮は行わないで、対象分析物をサンプル中の分析物又は流体を化学的又は物理的に変性することができる変性剤と接触させてもよい。用途としては、精製、バッファー交換、標識(例:免疫組織化学的、磁気的、及び組織化学的標識、細胞染色、並びに流動蛍光in situハイブリダイゼーション(flow in−situ fluorescence hybridization)(FISH))、磁気的変性、細胞固定、細胞安定化、細胞溶解、及び細胞活性化が挙げられる。
【0141】
そのような方法により、分析物をサンプルから別の液体中(例:バッファー交換)へ移動させることができる。図34Aはこの効果を一段式決定論的デバイスについて模式的に示したものであり、図34Bはこの効果を多段式決定論的デバイスについて示したものであり、図34Cはこの効果を決定論的デバイスの二重アレイについて示したものであり、図34Dはこの効果を決定論的デバイスの多段式二重アレイについて示したものである。同様に、磁気分離を用いてデバイス中に分析物を保持するか又は所望の方向へ偏向してバッファー交換を行うことができる。そのような方法を用いることによって、分析物(例:血球細胞)をサンプル内で濃縮することができる。このような一つの液体から別の液体への分析物の移動を利用して、一連の変性、例えば血液のオンチップでのライト染色(Wright staining blood on−chip)を行うことができる。そのような一連の変性には、分析物を第1の試薬と反応させ、次に分析物を洗浄用バッファーへ移動させ、そして別の試薬と反応させるということを具える場合がある。
【0142】
図35Aから35Cは、二つのバイパスチャネルを持つ二段式決定論的デバイスにおける変性の更なる例を示す。この例では、より大きい分析物が血液からバッファー(例えば分析物の磁気的性質を変化させる試薬を具える)へ移され、ステージ1で回収される。中間のサイズを有する分析物はステージ2で血液からバッファー(例えば分析物の磁気的性質を変化させる試薬を具える)へ移され、ステージで血液からバッファーへ移動しないより小さい分析物も回収される。図35Bは二つのステージにおけるサイズのカットオフを示し、図35Cは回収された三つの分画のサイズ分布を示す。回収された分画は続いて磁気に基づく濃縮処理付すことができる。
【0143】
図36は、アレイの横方向端部とチャネル壁部との間に配置されたバイパスチャネルを有する二段式決定論的デバイス内での、例えば磁気的性質等の変性の例を示す。図37は図36と同様の決定論的デバイスを示すが、ただし二つのステージが流体的チャネルで接続されている点が異なる。図38は、占有面積の小さい二つのステージを有する決定論的デバイス内での変性を示す。図39Aから39Bは、一番目及び二番目のステージからの流出物が一つのチャネルで捕獲されるデバイス内での変性を示す。図40は本発明の方法において使用するための別のデバイスを示す。
【0144】
図41は分析物に複数の連続した変性を行うための決定論的デバイスの使用を示す。このデバイスでは、分析物はサンプルから分析物と反応する試薬中へ移され、次いで変性された分析物はバッファー中へ移され、これによって未反応の試薬又は反応副生物が除去される。更なるステップを追加してもよい(例:本明細書において述べるステップ)。
【0145】
濃縮及び変性は組み合わせることができる。例えば、所望の細胞を溶解試薬と接触させることができ、例えば核等の細胞成分がサイズ、磁気的性質、又はこの両方に基づいて濃縮される。別の例では、分析物を分析物と結合する例えば磁気ビーズ等の粒子状標識剤と接触させることができる。未結合の粒子状標識剤はサイズ、磁気的性質、又はこの両方に基づいて除去することができる。
【0146】
濃縮
本発明のデバイスは、例えば細胞等の対象サンプルを濃縮するためにも使用することができる。図62に示す一つの例では、細胞サンプルが決定論的デバイスのサンプル流入口へ導入される。流体流入口へ導入されるバッファーの容積を細胞サンプルの容積よりも著しく低くなるように低下させることにより、より少ない容積で対象細胞の濃度が高まる結果となる。同様に、チャネル内の磁気応答性分析物の保持を利用して、例えば保持された分析物をより少ない容積中へ放出することにより、分析物を濃縮することができる。この濃縮ステップにより、下流ステップで行われる分析の結果を向上させることができる。
【0147】
細胞溶解
本発明のデバイスは細胞溶解を目的として使用することもできる。決定論的デバイス内でこれを達成するためには、濃縮で用いられるプロトコルと同様の手順に従う:細胞サンプルをデバイスのサンプル流入口から添加し(図63)、溶解バッファーを流体流入口から添加する。上述のように、臨界サイズよりも大きい細胞は偏向されて溶解バッファー中に入り、これらの細胞が溶解する。結果として、中央流出口から排出されるサンプルは小器官を具える溶解された細胞成分を含有しており、一方偏向されない細胞全体が他の流出口から排出される。同様に、磁気的性質に基づいてデバイス中に保持された(又は保持されない)細胞を、溶解試薬と接触させて、例えば磁気的に結合した分析物の細胞内成分を放出させることができる。従って、このデバイスは対象細胞を選択的に溶解する方法を提供する。
【0148】
下流分析
例えば希少細胞及び/又は成分等の濃縮された分析物は、本技術分野で公知のいかなる手段を用いて検出されてもよい。例えば、ある態様において、ここでの検出モジュールは、例えば顕微鏡、カメラ、分光器、又はハイパースペクトル撮像器(例えばVo−Dinhら、IEEE Eng.Med.Biol.Mag.、Vol.23、p.40−49、(2004)参照)等の撮像器を含む。検出は、対象分析物の存在又は非存在を示す選択的染色の使用と色変化の検出を具える場合がある。ある態様において、染色による細胞同定では、標識をしていない一次抗体及びそれに続く酵素複合二次抗体のを使用する非直接的免疫染色法が用いられる。典型的な酵素としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼが挙げられる。前記複合酵素に対する公知の無色基質により色素染色が生じる。ある態様において、染色されて同定された希少細胞は更に、特異的なプローブを用いた核酸ハイブリダイゼーションによって染色体異常について分析される。このトリアージ的な戦略では、好ましくは希少細胞に対して染色を用い、核酸プローブには異なるマーカーを用いる。
【0149】
多くの診断検査にとっての重要な必須事項は、遊離又は未反応の変性剤を分析サンプルから除去するか又は許容レベル以下まで減少させることである。一つの態様において、その試薬は標識試薬である。上述のように、本発明のデバイスは分析物(例:細胞)に結合した標識試薬から遊離の標識試薬を分離することができる。従って、遊離の標識試薬による著しいレベルのバックグラウンド干渉を受けることなく、反応サンプルのバルク測定を行うことが可能である。一つの例では、EpCAM等の特定の上皮細胞マーカーに選択的な蛍光抗体が用いられる。蛍光部位はCy色素、Alexa色素、又はその他のフルオロフォア含有分子を含んでもよい。得られた標識サンプルは次に、細胞等の標識を用いて濃縮した分析物の得られたサンプルの蛍光を蛍光光度計で測定することにより分析される。又は別の選択肢として、蛍光光度計と共に発色団含有標識を使用してもよい。得られた測定値を用いて、サンプル中の細胞等の対象分析物の数を定量することができる。
【0150】
他の多くの測定方法や標識試薬も、本発明の方法及びデバイスにおいて有用である。標識抗体は、基質を開裂して一定の波長で吸光度を変化させる共有結合した酵素を有する場合がある。そして開裂の程度を分光計によって定量する。使用した基質によっては比色又は発光による読み取りも可能である。有益なことに、酵素標識を用いることによって測定信号を大幅に増幅することができ、検出限界を低くすることが可能になる。
【0151】
量子ドット、例えばQuantumDot Corp.社のQdots(登録商標)、を抗体等の捕獲部位と共有結合する標識試薬として使用することができる。Qdotsは光退色に耐性があり、二光子励起測定と組み合わせて使うこともできる。
【0152】
本発明の方法に有用な別の可能な標識試薬としてはファージがある。ファージディスプレイ法は、例えば対象細胞の表面に見られるタンパク質等の標的に対して強い結合親和力を有する組換えファージ系によって結合ペプチドが提示される技術である。任意のファージに対応するペプチド配列はそのファージの核酸中にコードされている。従ってファージは、細胞等の分析物に比べて潜在的に小さいために分離しやすく、またPCR又はそれと同様の技術で分析及び定量が可能な核酸も保持することから濃縮サンプル中に存在する細胞の数の定量が可能なため、有用な標識試薬である。
【0153】
図65は標識試薬としてのファージの使用を表しており、ここでは決定論的デバイスの二つのステージがカスケード型に配置されている。図65に示す方法は、使用する標識試薬以外は一般的に示した図64に相当している。同様に磁気濃縮を使用してもよい。
【0154】
下流分析には、分析されるサンプル中の所望の分析物(例:細胞)の数の正確な定量が含まれる場合がある。正確な定量的結果を得るためには、一般に標識試薬の標的(例:対象細胞の表面抗原)の量が既知又は予測可能(例:細胞内の発現レベルに基づいて)でなければならず、かつ標識試薬の結合が予測可能な形、例えば干渉物質が存在しない状態、で進行することも必要である。従って、標識試薬の導入前に高度に濃縮された細胞サンプルを生成するデバイス又は方法は特に有用である。更に、所望の分析物が希少である場合(例:血液サンプル中の上皮細胞)には、発生するシグナルを増幅させる標識試薬が好ましい。シグナルを増幅させる試薬としては酵素及びファージが挙げられる。簡便なシグナル増幅はできないが強いシグナルを発生させる量子ドット等の他の標識試薬も好ましい。定量は非変性又は非標識分析物で行うこともできる。
【0155】
本発明のデバイス及び方法を用いてサンプル中の細胞を濃縮する場合は、更なる定量及び分子生物学的分析を同じ細胞セットについて行うことができる。本発明のデバイスによる細胞の穏やかな処理は、既述のバルク測定方法と合わせることにより、所望の場合に更なる分析が可能なように細胞の完全性が維持される。例えば、バルク測定に続いて、細胞の完全性を破壊する技術を実施することができる;そのような技術としてはDNA若しくはRNA分析、プロテオーム分析、又はメタボローム分析が挙げられる。そのような分析の例としてはPCR法があり、この方法において細胞は溶解され特定のDNA配列の濃度が増幅される。このような技術は、単離された対象細胞の数が非常に少ない場合に特に有用である。
【0156】
ガンの診断
固形腫瘍から剥離した上皮細胞が、乳ガン、結腸ガン、肝臓ガン、卵巣ガン、前立腺ガン、及び肺ガンの患者の循環系で見つかっている。一般に、治療後に循環腫瘍細胞(CTC)が存在することは、腫瘍の進行及び拡がり、乏しい治療効果、疾患の再発、及び/又は生存率の低下と関連付けられている。従って、CTCを計数することにより、治療効果に基づいて初期のリスク及びその後のリスクを予見する基準となる特徴について患者を層別化する手段が得られる。
【0157】
休眠中であり寿命の長い骨髄中の腫瘍由来細胞とは違い、上皮細胞種であり上皮細胞由来であるCTCは、半減期が約1日程度と短く、その存在は増殖する腫瘍から最近流入があったことを示唆する(Patelら、Ann.Surg.、Vol.235、p.226−231、2002)。従ってCTCは、患者の疾患及び治療効果についての現在の臨床状態を反映し得る。CTCの計数及び特性決定は、ガン予後の評価並びに疾患の再発につながりかねない治療の失敗の早期検出のための治療効果のモニタリングにおいて潜在的な価値を有する。更に、CTC分析によって、一通りの治療を完了した前駆症状の患者における再発を早期に検出することできる。現状では、測定可能な疾患を持たない人は、有望な新しい治療法の臨床試験に参加する資格を有しない(Braunら、N.Engl.J.Med.、Vol.351、p.824−826、2004)。
【0158】
本発明のデバイス及び方法を用いて、ガン患者及びガンのリスクがある患者を評価することができる。例えば、血液サンプルを患者から採取し、本発明のデバイスに導入して上皮細胞を他の血球細胞から分離する。血液サンプル中の上皮細胞の数を、例えば本明細書で述べる方法を用いて定量する。例えば、細胞はEpCAMと結合する抗体で標識することができ、その抗体は共有結合した蛍光標識を有しているか又は磁性粒子と結合していてよい。次にこのデバイスで作製された濃縮サンプルについてバルク測定を行い、この測定から血液の元々のサンプル中に存在する上皮細胞の数を定量することができる。顕微鏡技術を利用して視覚的に細胞の定量を行い、血液サンプル中の対応する標識細胞の数とバルク測定とを相関させることもできる。
【0159】
何日、何週間、何カ月、又は何年にも渡って一連の測定を行うことによって、患者の血流中に存在する上皮細胞のレベルを時間の関数として追跡することができる。すでにガンである患者の場合、この方法は疾患の進行を示す有用な情報を提供し、また患者の血流中にある循環上皮細胞の増加、減少、若しくは変化の無さに基づいて適切な治療法を選択する際の医師の手助けとなる。ガンのリスクがある患者に対しては、検出細胞数の突然の増加によって、患者が腫瘍を発症したことを示す早期の警告を提供し得る。この早期の診断は、これに続く治療と組み合わせることで、この診断情報が無い場合に比べて患者の予後が改善される結果となる傾向にある。
【0160】
診断の方法としては、血液から単離された標識上皮細胞のバルク測定並びに細胞の完全性を破壊する技術が挙げられる。例えば、単離された対象細胞の数が非常に少ないサンプルに対してはPCR法を行う;特定のガンマーカーに特異的なプライマーを使うことにより、分析された細胞に由来する腫瘍の種類に関する情報を得ることができる。患者の持つガンの種類を診断する手段として、RNA分析、プロテオーム分析、又はメタボローム分析を追加的に行うことができる。
【0161】
肺ガン及びその他のガンの一つの重要な診断指標は、上皮増殖因子受容体(EGFR)におけるある種の突然変異の存在又は非存在である。EGFRは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通部、及び細胞内チロシンキナーゼ(TK)ドメインから成る。EGFRの通常の生理学的役割は、上皮増殖因子(EGF)を具えるErbBリガンドと前記細胞外結合部位において結合し、増殖、生存、運動、及びその他の関連する活動を引き起こす下流の細胞内シグナルのカスケードを誘起することである。EGFR変異を有する非小細胞肺腫瘍の多くは、ゲフィチニブ(Iressa、AstraZeneca社製)等の低分子EGFR阻害剤に反応するが、多くの場合、最終的には二次変異を起こして薬剤耐性を示すようになる。本発明のデバイス及び方法を使うことにより、そのような薬を摂取した患者に対して頻繁に血液サンプルを採取し、各サンプル中の上皮細胞の数を時間の関数として定量することによって患者のモニタリングを行うことができる。これによって疾患の経過に関する情報が得られる。例えば、循環上皮細胞の数が時間と共に減少した場合、疾患の重症度が緩和されて腫瘍が小さくなったことを示唆している。上皮細胞の定量を行った直後に、これらの細胞をPCRで分析して、上皮細胞内で発現されたEGFR遺伝子中にどのような変異が存在し得るのかを特定することができる。EGFRのTKドメインにおけるATP結合ポケット周囲に集中するような特定の変異がガン細胞のゲフィチニブ阻害に対する感受性を高めることは知られている。従って、このような変異の存在により、ゲフィチニブによる治療に好ましい反応を示すガンであるという診断が支持されることになる。しかし、ゲフィチニブに好ましい反応を示す患者の多くは最終的には二次変異を起こし、この変異は多くの場合TKドメインのエクソン20内の第790番目の位置でのメチオニンからスレオニンへの置換であり、この置換によって細胞がゲフィチニブに対する耐性を示すようになる。本発明のデバイス及び方法を用いることによってこの変異に関する試験を行うこともでき、これによって疾患の経過並びにゲフィチニブ又は同様の化合物に対して応答する可能性に関する更なる診断情報が得られる。
【0162】
胎児細胞の検出
本明細書で述べるデバイス及び方法は、妊娠中のヒトから採取した血液サンプルに対して、例えば胎児の状態又は異常をスクリーニングするために、用いることができる。胎児をスクリーニングする際、妊娠期間が24週以内、20週以内、16週以内、12週以内、10週以内、8週以内、又は4週以内である妊娠中の哺乳動物又はヒトから血液サンプルを採取することができる。他の態様においては、胎児細胞のスクリーニング及び検出は妊娠終了後に行ってもよい。
【0163】
例えば、ある態様においては、希少細胞はε/γグロビン(細胞質)、GPA、i−抗原、CD71、又はこれらの組み合わせ等の抗原の染色によって検出される。εグロビンとγグロビンの組み合わせは、妊娠期間10週から24週の胎児有核赤血球(fNRBC)の95から100%で見られる。Al−Muftiら、Haematologica、Vol.85、p.357−362(2001)、Choolaniら、Mol.Hum.Reprod.、Vol.9、p.227−235(2003)。このε−γの組み合わせ又はγグロビン単独は、例えばBohmer、Br.J.Haematol.、Vol.103、p.351−60(1998)、Choolaniら(2003)、Christensenら、Fetal Diagn.Ther.、Vol.20、p.106−112(2005)、及びHennerbichlerら、Cytometry、Vol.48、p.87−92(2002)で述べられているように、fNRBCの染色に使用されてきた。グロビンは高い特異性(10,000倍超)を持つ選別基準であり、CD71の濃縮を行っても行わなくても、fNRBC一個につき誤検知が10未満であった。両グロビンに対する抗体は当業者に公知である。染色の結果は、陽性か陰性かといった二元評価、又は分析物中の抗原量を示す種々の強度ととして生じさせることができる。
【0164】
グリコホリンA及びCD71は、細胞の種類を検出するために使用することができる更なる抗原である。GPAは赤血球系譜全体に存在する。従って、その成熟レベルに関係なく有核赤血球の識別に使用することができる。GPAは赤血球系譜細胞上のみに存在すると考えられており、通常は循環細胞上にはほとんど見られず、その存在量は妊娠中に増加する。例えばPriceら、Am.J.Obstet.Gynecol.、Vol.165、p.1713−1717(1991)、及びSohdaら、Pregnat.Diagn.、Vol.17、p.743−752(1997)にあるように、FACSソーティング法によって、CD71とGPAの組み合わせが妊娠中の単核細胞の少なくとも0.15%に存在することが示された。
【0165】
例えばSitarら、Exp.Cell Res.、Vol.302、p.153−161(2005)にあるように、抗原iも胎児細胞の単離及び/又は検出のためのマーカーとして使用することができる。i抗原は、患者のポリクローナル血清を用いることにより1950年代に初めて発表された。それに続くデータより、この抗原の二種類の形態、抗原「I」及び抗原「i」がそれぞれ成体細胞及び胎児細胞上で発現されることが示された。
【0166】
一旦対象となる胎児細胞又は成分が検出されると、それらは例えば性別、遺伝子の状態等の様々な目的のために更に分析することができる。ある態様においては、胎児細胞又はその成分の分析を用いて、染色体異常、DNA異常、又はRNA異常等の遺伝的異常の有無が判定される。常染色体異常の例としては、アンジェルマン症候群(15q11.2−q13)、ネコ鳴き症候群(5p−)、ディジョージ症候群及び口蓋心顔面症候群(22q11.2)、ミラー・ディーカー症候群(17p13.3)、プラダー・ウィリー症候群(15q11.2−q13)、網膜芽細胞腫(13q14)、スミス・マジェニス症候群(17p11.2)、第13染色体トリソミー、第16染色体トリソミー、第18染色体トリソミー、第21染色体トリソミー(ダウン症)、三倍性、ウィリアムズ症候群(7q11.23)、並びにウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4p−)が挙げられるがこれらに限定されない。性染色体異常の例としては、カルマン症候群(Xp22.3)、硫酸ステロイド欠乏症(STS)(Xp22.3)、X染色体性魚鱗癬(Xp22.3)、クラインフェルター症候群(XXY)、脆弱X症候群、ターナー症候群、超女性若しくはX染色体トリソミー、及びX染色体モノソミーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0167】
本発明のシステムによって分析可能な、さほど一般的でないその他の染色体異常としては、欠失(喪失した小部分)、微小欠失(単一遺伝子しか含むことができない微量物質の喪失)、転座(染色体の一部が別の染色体に付加)、及び逆位(染色体のセクションが切り取られて上下逆に再挿入)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0168】
いくつかの態様においては、胎児細胞又はその成分の分析がSNP解析及びそのようなSNPに基づく胎児の状態の予測に利用される。
【0169】
本明細書のいずれの態様においても、検出/分析は本技術分野で公知のいかなる手段を用いて行ってもよい。遺伝子状態の検出/分析を行うための方法としては、核型分析、in situハイブリダイゼーション(ISH)(例:蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、色素発色in situハイブリダイゼーション(chromogenic in situ hybridization)(CISH)、金ナノ粒子in situハイブリダイゼーション(nanogold in situ hybridization)(NISH))、制限断片長多型(RFLP)解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、フローサイトメトリー、電子顕微鏡、量子ドット、及び一塩基多型(SNP)若しくはRNAレベルの検出のための核酸アレイが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの態様においては、遺伝的異常検出のために二種類又はそれ以上の方法が行われる。例えば、対象となる一つの細胞又は成分の分析に複数種類のFISHプローブ又はその他のDNAプローブを使用することができる。
【0170】
細胞亜集団の濃縮
本発明の方法及びデバイスを用いて、細胞の亜集団を濃縮することもできる。例えば、有核赤血球は成熟過程において形態及びヘモグロビン含有量が変化する。ヘモグロビン含有量の違いに基づいて、正染性正赤芽球等の後期有核細胞を、多染性正赤芽球等の初期有核細胞から分離することができる。図99は、本明細書で述べる方法を用いて得られた様々な成熟段階のnRBCを示す。
【0171】
赤血球貪食
本発明の方法及びデバイスを用いて、赤血球を吸収した細胞(赤血球貪食)を濃縮することもできる。図100は、RBCを内部に取り込み本発明の磁気デバイス内に保持された単球を示す。赤血球貪食は家族性血球貪食性組織球症、急性単球性白血病、及びリンパ腫等の様々な疾患や遺伝的異常と関連性がある。これらの細胞の検出は、特定の状態の診断又は治療の有効性の判定のために使用することができる。例えば、本発明の方法はRBCを内部に取り込んだ細胞の数を定量するために使用することができる。
【0172】
この方法は一般に、例えばAquaspirillum magnetotacticum等の走磁性バクテリアのような磁気的要素を内部に取り込むか、又は磁気的要素と結合するどのような細胞に対しても使用することができる。走磁性バクテリアが更に他の細胞に貪食される可能性もあるが、その場合には、これらの細胞も本発明の方法を用いて濃縮することができる。
【0173】
有核赤血球の濃縮
循環nRBCレベルの上昇は、赤白血病、重症型βサラセミア、バート(Bart’s)ヘモグロビン、免疫溶血性貧血等様々な疾患や遺伝的異常と関連性がある。磁気濃縮とサイズ若しくは溶解に基づいた濃縮との組み合わせによって、nRBC又はその核を濃縮することができる。これらの細胞の検出は、特定の状態の診断又は治療の有効性の判定のために使用することができる。
【0174】
濃縮方法の組み合わせ
本明細書で述べる濃縮方法のいずれかを順に、又は同時に用いて、例えば細胞又は核等の対象分析物の濃縮を行うことができる。組み合わせて用いる場合、一般にはいかなる所望の順番で行うこともできる。例えば方法としては、サイズ分離、磁気分離、及び全細胞溶解若しくは選択的溶解の組み合わせが挙げられる。本明細書で述べるように、方法は抗体等の捕獲部位との結合に基づいた親和性濃縮、又は細胞若しくは粒子の分光学的性質若しくはその他の測定可能な性質に基づいた濃縮を更に含んでもよい。
【0175】
このような濃縮法の組み合わせを達成するためのデバイスとしては、各濃縮用の独立したモジュールを挙げることができ、2種類又はそれ以上の濃縮は、単一のモジュール又はデバイス、又は、例えば、適切な流体工学によって接続された、又はデバイス間のサンプルの手動又はロボット移動に依存する各種類の濃縮用デバイス中に生じることができる。
【0176】
サンプル調製
本明細書で述べる方法において、サンプルは、例えば安定化若しくはある成分の除去等で処置された状態、又は処置されていない状態で使用することができる。一つの態様において、サンプルは本発明のデバイスへ導入される前に例えば細胞等の対象分析物について濃縮される。細胞集団を濃縮する方法は本明細書において述べられており、本技術分野において公知であり、例えば親和性メカニズム、磁気的性質、凝集、並びにサイズ、形状、及び変形能に基づいた濃縮等が挙げられる。サンプルによってはデバイスへの導入前に希釈又は濃縮してもよい。
【0177】
例えば血液等のサンプルは採取されてから1週間以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、1日以内、12時間以内、6時間以内、3時間以内、2時間以内、又は1時間以内に本発明のシステムに適用されることが好ましい。ある態様においては、血液サンプルは患者から採取してすぐに本発明のシステムへ適用される。サンプルは、4℃から37℃で本発明のシステムへ適用されることが好ましい。
【0178】
一つの態様においては、試薬をサンプルへ添加して、サンプル内の分析物の水力学的サイズを選択的に又は非選択的に増大させる。この修飾されたサンプルは次に、例えば決定論的デバイス内部に挿入される。粒子は膨潤されて水力学的サイズが増大しているため、より大きく製造が容易な隙間サイズを持つ決定論的デバイスを使用することが可能である。好ましい態様においては、膨潤ステップ及びサイズに基づいた濃縮ステップは、決定論的デバイス上において一体化された形で行われる。適切な試薬としてはいかなる低浸透圧性溶液も含まれ、例えば脱イオン水、2%糖溶液、又は純粋な非水溶媒が挙げられる。その他の試薬としては、例えば磁気ビーズ若しくはポリマービーズのような、選択的に(例:抗体若しくはアビジン−ビオチンにより)又は非選択的に結合するビーズが挙げられる。
【0179】
別の態様においては、試薬をサンプルへ添加してサンプル中の粒子の水力学的サイズを選択的に又は非選択的に減少させる。サンプル中の粒子のサイズを不均一に減少させることにより、粒子間の水力学的サイズの差が増大する。例えば、高い浸透圧を利用して細胞を収縮させることにより、脱核細胞から有核細胞が分離される。脱核細胞が非常に小さく収縮することが出来るのに対し、有核細胞は核の大きさ以下に収縮することは出来ない。典型的な収縮試薬としては高浸透圧性溶液が挙げられる。
【0180】
別の選択肢としての態様においては、親和性を付与されたビーズを用いてサンプル中の他の分析物に対して対象分析物の水力学的サイズを増大させ、これによって、より大きく製造が容易な隙間サイズを持つ決定論的デバイスを使用することが可能となる。
【0181】
このようなサイズの変化は、本明細書で述べるように、磁気濃縮と順に又は平行して行うことができる。
【0182】
例えば血液等のサンプルを採取する場合、サンプルは以下に挙げる試薬の一種類又はそれ以上を具える容器内へ収容してもよい:安定剤、保存剤、固定剤、溶解剤、希釈剤、抗アポトーシス剤、抗凝固剤、抗血栓剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、磁気的性質を変化させる試薬、及び/又は架橋剤。
【0183】
流体は、能動的又は受動的にデバイス内を通流させることができる。流体は、電場、遠心場、圧力駆動性の流体流、電気浸透流、又は毛細管現象によって送液することができる。好ましい態様においては、このような場の平均方向はチャネル壁に平行なものとなる。
【0184】
以下に示す典型的な決定論的デバイス及び方法はいずれも、本発明のデバイスに組み込むことができる。
【0185】
実施例
実施例1.14の三段式二重アレイを多重化したシリコン製デバイス
図42Aから42Eに示すのは以下の特徴を持つ典型的なデバイスである。
【0186】
寸法:90mm×34mm×1mm
アレイデザイン:三段式。隙間サイズは一番目、二番目、及び三番目のステージがそれぞれ18、12、及び8μm。分岐比は1/10。単式バイパスチャネルの二重アレイ構造。
デバイスデザイン:多重化された14の二重アレイ、及び流動安定性のための流体抵抗器。
デバイス作製:アレイ及びチャネルは標準的なフォトリソグラフィー及びディープシリコン反応性エッチング技術を用いてシリコンから作製した。エッチング深さは150μmである。流体を流すための貫通穴の形成にはKOH湿式エッチングを用いる。シリコン基板はエッチングされた表面を血液適合性感圧接着剤(9795、3M社製、ミネソタ州セントポール所在)を使ってシールし、蓋をされた形の流体チャネルを形成した。
デバイスの実装:デバイスは、血液及びバッファーをデバイスへ供給して生成した分画を抽出するために、外部流体貯留部を有するプラスチック製マニホールドと機械的に接続した。
デバイスの操作:実装されたデバイスからの流体の供給及び抽出を調節するために、バッファーと血液の貯留部へ2.4PSIの圧力を印加するための外部圧力源を用いた。
【0187】
実験条件:
同意した成体提供者からのヒト血液をKEDTAバキュテナー(366643、Becton Dickinson社製、ニュージャージー州フランクリンレイクス所在)内に採取した。未希釈の血液を、上述の典型デバイス(図42F)を使い、採取後9時間以内に室温で処理した。血液の有核細胞を脱核細胞(赤血球及び血小板)及び血漿から分離し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(A8412−100ML、Sigma−Aldrich社製、ミズーリ州セントルイス所在)を具え、カルシウム及びマグネシウムを含まないダルベッコリン酸バッファー(14190−144、Invitrogen社製、カリフォルニア州カールズバッド)のバッファー流中へ供給した。
【0188】
測定法:
全血球数は、Coulterインピーダンス血液分析デバイス(COULTER(登録商標)Ac・T diff(商標)、Beckman Coulter社製、カリフォルニア州フラートン所在)を用いて計測した。
【0189】
結果:
図43Aから図43Fに、血液サンプル、並びにデバイスによって得られた排液分画(バッファー、血漿、赤血球、血小板)及び生成物分画(バッファー、有核細胞)に関して血液分析デバイスによって得られた典型的なヒストグラムを示す。表1は5種類の異なる血液サンプルの結果を示す。
【0190】
表1

【0191】
実施例2.14の一段式二重アレイを多重化したシリコン製デバイス
図44Aから図44Dに示すのは以下の特徴を持つ典型的なデバイスである。
【0192】
寸法:90mm×34mm×1mm
アレイデザイン:一段式。隙間サイズ24μm。分岐比は1/60。複式バイパスチャネルの二重アレイ構造。
デバイスデザイン:多重化された14の二重アレイ、及び流動安定性のための流体抵抗器。
デバイス作製:アレイ及びチャネルは標準的なフォトリソグラフィー及びディープシリコン反応性エッチング技術を用いてシリコンから作製した。エッチング深さは150μmである。流体を流すための貫通穴の形成にはKOH湿式エッチングを用いる。シリコン基板はエッチングされた表面を血液適合性感圧接着剤(9795、3M社製、ミネソタ州セントポール所在)を使ってシールし、蓋をされた形の流体チャネルを形成した。
デバイスの実装:デバイスは、血液及びバッファーをデバイスへ供給し、生成した分画を抽出するために、外部流体貯留部を有するプラスチック製マニホールドと機械的に接続した。
デバイスの操作:実装されたデバイスからの流体の供給及び抽出を調節するために、バッファーと血液の貯留部へ2.4PSIの圧力を印加するための外部圧力源を用いた。
【0193】
実験条件:
同意した成体提供者からのヒト血液をKEDTAバキュテナー(366643、Becton Dickinson社製、ニュージャージー州フランクリンレイクス所在)内に採取した。未希釈の血液を、上述の典型デバイスを使い、採取後9時間以内に室温で処理した。血液の有核細胞を脱核細胞(赤血球及び血小板)及び血漿から分離し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(A8412−100ML、Sigma−Aldrich社製、ミズーリ州セントルイス所在)を具え、カルシウム及びマグネシウムを含まないダルベッコリン酸バッファー(14190−144、Invitrogen社製、カリフォルニア州カールズバッド所在)のバッファー流中へ供給した。
【0194】
測定法:
全血球数は、Coulterインピーダンス血液分析デバイス(COULTER(登録商標)Ac・T diff(商標)、Beckman Coulter社製、カリフォルニア州フラートン所在)を用いて計測した。
【0195】
結果:
デバイスは17mL/hで操作し、99%超の赤血球除去率、95%超の有核細胞保持率、及び98%超の血小板除去率を達成した。
【0196】
実施例3.胎児臍帯血の分離
図45に示すのは、胎児臍帯血から有核細胞を分離するために使用するデバイスの模式図である。
【0197】
寸法:100mm×28mm×1mm
アレイデザイン:三段式。隙間サイズは一番目、二番目、及び三番目のステージがそれぞれ18、12、及び8μm。分岐比は1/10。単式バイパスチャネルの二重アレイ構造。
デバイス設計:多重化された10の二重アレイ、及び流動安定性のための流体抵抗器。
デバイス作製:アレイ及びチャネルは標準的なフォトリソグラフィー及びディープシリコン反応性エッチング技術を用いてシリコンから作製した。エッチング深さは140μmである。流体を流すための貫通穴の形成にはKOH湿式エッチングを用いる。シリコン基板はエッチングされた表面を血液適合性感圧接着剤(9795、3M社製、ミネソタ州セントポール所在)を使ってシールし、蓋をされた形の流体チャネルを形成した。
デバイスの実装:デバイスは、血液及びバッファーをデバイスへ供給し、生成した分画を抽出するために、外部流体貯留部を有するプラスチック製マニホールドと機械的に接続した。
デバイスの操作:実装されたデバイスからの流体の供給及び抽出を調節するために、バッファーと血液の貯留部へ2.0PSIの圧力を印加するための外部圧力源を用いた。
【0198】
実験条件:
ヒトの胎児臍帯血をクエン酸デキストロース抗凝固剤含有リン酸バッファー中へ採取した。血液1mLを、上述のデバイスを使って3mL/hで採取後48時間以内に室温で処理した。血液の有核細胞を脱核細胞(赤血球及び血小板)及び血漿から分離し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(A8412−100ML、Sigma−Aldrich社製、ミズーリ州セントルイス所在)及び2mMのEDTA(15575−020、Invitrogen社製、カリフォルニア州カールズバッド所在)を含むカルシウム及びマグネシウムを含まないダルベッコリン酸バッファー(14190−144、Invitrogen社製、カリフォルニア州カールズバッド所在)のバッファー流中へ供給した。
【0199】
測定法:
生成物分画及び排液分画の細胞塗抹サンプル(図46Aから46B)を作製し、変性ライトギムザ染色(WG16、Sigma−Aldrich社製、ミズーリ州セントルイス所在)を行った。
【0200】
結果:
生成物分画中に胎児有核赤血球が観察され(図46A)、排液分画中には観察されなかった(図46B)。
【0201】
実施例4
母体血液からの胎児細胞の単離
母体血液からの胎児細胞の単離の実現性を実証するために、実施例1で詳細に述べたデバイス及びステップを免疫磁気親和性濃縮法と組み合わせて用いた。
【0202】
実験条件:
男性胎児を妊娠した同意した妊婦提供者から、人工妊娠中絶直後に血液をKEDTAバキュテナー(366643、Becton Dickinson社製、ニュージャージー州フランクリンレイクス所在)内に採取した。未希釈の血液を、実施例1で述べたデバイスを使い、採取後9時間以内に室温で処理した。血液の有核細胞を脱核細胞(赤血球及び血小板)及び血漿から分離し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)(A8412−100ML、Sigma−Aldrich社製、ミズーリ州セントルイス所在)を具え、カルシウム及びマグネシウムを含まないダルベッコリン酸バッファー(14190−144、Invitrogen社製、カリフォルニア州カールズバッド所在)のバッファー流中へ供給した。続いて、有核細胞分画を抗CD71マイクロビーズ(130−046−201、Miltenyi Biotech Inc.社製、カリフォルニア州オーバン所在)で標識し、MiniMACS(商標)MSカラム(130−042−201、Miltenyi Biotech Inc.社製、カリフォルニア州オーバン所在)を使い製造者の仕様書に従って濃縮した。最後にCD71陽性の分画をスライドガラス上に滴下した。
【0203】
測定法:
サンプルを滴下されたスライドガラスは、Vysisプローブ(Abbott Laboratories社製、イリノイ州ダウナーズグローブ所在)を用いて、製造者の仕様書に従って蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法により染色した。サンプルはX及びY染色体の存在に対して染色された。一つのケースでは、21番染色体トリソミーであることが分かっている妊婦から調製したサンプルで、21番染色体に対する染色も行われた。
【0204】
結果:
有核細胞分画から調製したCD71陽性集団において確実に男性細胞が存在することから、胎児細胞の単離が確認された(図47)。テストされた一つの異常ケースにおいては、21番染色体トリソミーの病態も認識された(図48)。
【0205】
実施例5から10は、デバイスの具体的態様を示す。各デバイスの説明では、連続するステージの数、各ステージの隙間サイズ、ε(流角)、及びデバイスごとのチャネルの数(アレイ/チップ)を示す。各デバイスはDRIE法によりシリコンから製造し、各々熱酸化層を有していた。
【0206】
実施例5
このデバイスは一つのアレイ中に五つのステージを具える。
【0207】
アレイデザイン:五段式、非対称アレイ。
隙間サイズ:
第1ステージ:8μm
第2ステージ:10μm
第3ステージ:12μm
第4ステージ:14μm
第5ステージ:16μm
流角:1/10
アレイ/チップ:1
【0208】
実施例6
このデバイスは、バイパスチャネルを有する二重アレイであるステージを具える。デバイスの高さは125μmであった。
【0209】
アレイデザイン:中央回収チャネルを有する対称三段式アレイ。
隙間サイズ:
第1ステージ:8μm
第2ステージ:12μm
第3ステージ:18μm
第4ステージ:
第5ステージ:
流角:1/10
アレイ/チップ:1
その他:中央回収チャネル
【0210】
図49Aはこのデバイスを作製する際に使用したマスクを示す。図49Bから49Dは流入口、アレイ、及び流出口を規定するマスクの部分を拡大したものである。図50Aから50Gは実際のデバイスのSEM写真である。
【0211】
実施例7
このデバイスは、バイパスチャネルを有する二重アレイであるステージを含む。「フィン部」は、バイパスチャネルからの流体がアレイへ再流入するのを防ぐためにバイパスチャネルに隣接するように設計された。チップには更にオンチップ流体抵抗器が含まれた。すなわち流入口及び流出口はアレイよりも大きい流体抵抗を有した。デバイスの高さは117μmであった。
【0212】
アレイデザイン:三段式対称アレイ。
隙間サイズ:
第1ステージ:8μm
第2ステージ:12μm
第3ステージ:18μm
第4ステージ:
第5ステージ:
流角:1/10
アレイ/チップ:10
その他:大型フィン付き中央回収チャネル、オンチップ流体抵抗器
【0213】
図51Aはこのデバイスを作製する際に使用したマスクを示す。図51Bから図51Dは流入口、アレイ、及び流出口を規定するマスクの部分を拡大したものである。図52Aから52Fは実際のデバイスのSEM写真である。
【0214】
実施例8
このデバイスは、バイパスチャネルを有する二重アレイであるステージを具える。「フィン部」は、バイパスチャネルからの流体がアレイへ再流入するのを防ぐためにバイパスチャネルに隣接するように設計された。アレイに最も近いフィン部の縁部はアレイ形状に近似するよう設計された。チップには更にオンチップ流体抵抗器が含まれた。すなわち流入口及び流出口はアレイよりも大きい流体抵抗を有した。デバイスの高さは138μmであった。
【0215】


【0216】
図45Aはこのデバイスを作製する際に使用したマスクを示す。図45Bから図45Dは流入口、アレイ、及び流出口を規定するマスクの部分を拡大したものである。図53Aから図53Fは実際のデバイスのSEM写真である。
【0217】
実施例9
このデバイスは、バイパスチャネルを有する二重アレイであるステージを具える。「フィン部」は、バイパスチャネルからの流体がアレイへ再流入するのを防ぐためにバイパスチャネルに隣接するようにFemlabを用いて最適化された。アレイに最も近いフィン部の縁部はアレイ形状に近似するよう設計された。チップには更にオンチップ流体抵抗器が含まれた。すなわち流入口及び流出口はアレイよりも大きい流体抵抗を有した。デバイスの高さは139μm又は142μmであった。
【0218】
アレイデザイン:三段式対称アレイ
隙間サイズ:
第1ステージ:8μm
第2ステージ:12μm
第3ステージ:18μm
第4ステージ:
第5ステージ:
流角:1/10
アレイ/チップ:10
その他:Femlab最適化中央回収チャネル(Femlab I)、オンチップ流体抵抗器
【0219】
図54Aはこのデバイスを作製する際に使用したマスクを示す。図54Bから図54Dは流入口、アレイ、及び流出口を規定するマスクの部分を拡大したものである。図55Aから図55Sは実際のデバイスのSEM写真である。
【0220】
実施例10
このデバイスは、両アレイ端部からの流出物を受けるよう配置されたバイパスチャネルを有する二重アレイのステージを一つ含む。このデバイスの障壁構造は楕円型である。アレイ境界はFemlab toでモデル化された。チップには更にオンチップ流体抵抗器が含まれた。すなわち流入口及び流出口はアレイよりも大きい流体抵抗を有した。デバイスの高さは152μmであった。
【0221】
アレイデザイン:一段式対称アレイ
隙間サイズ:
第1ステージ:24μm
第2ステージ:
第3ステージ:
第4ステージ:
第5ステージ:
流角:1/60
アレイ/チップ:14
その他:中央バリア
楕円型支柱
オンチップ流体抵抗器
Femlabモデル化アレイ境界
【0222】
図44Aは、このデバイスを作製する際に使用したマスクを示す。図44Bから図44Dは流入口、アレイ、及び流出口を規定するマスクの部分を拡大したものである。図56Aから図56Cは実際のデバイスのSEM写真である。
【0223】
実施例11
本発明のデバイスに組み込まれた決定論的デバイスは、コンピュータ支援設計(CAD)によって設計され、フォトリソグラフィーによって微細加工された。まず血液サンプルを減量して小細胞の大集団を取り除き、その後希少対象上皮細胞を免疫親和性捕獲によって回収するという二段階プロセスが開発された。デバイスはCADによるデザインに基づいて、フォトリソグラフィーによって規定され、シリコン基板にエッチングされた。標準顕微鏡スライドのサイズとほぼ同程度である細胞濃縮モジュールは、14の並列型サンプル処理セクション、並びに共通のサンプル及びバッファーの流入口と生成物及び排液の流出口とに接続された関連するサンプル処理チャネルを具える。各セクションは、より大きな細胞を生成物流へ移動させることで対象細胞の種類をサイズによって分離するよう最適化された微細加工障壁構造のアレイを具える。この例では、マイクロチップは、赤血球(RBC)及び血小板をより大きい白血球及び循環腫瘍細胞から分離するよう設計された。濃縮された対象細胞の集団はデバイスを通過した全血から回収された。この細胞濃縮マイクロチップの性能は、正常全血中の白血球(WBC)からRBC及び血小板を分離することによって評価した(図67)。ガン患者の場合、循環腫瘍細胞はより大きいWBC分画中に見られる。血液は最低限の希釈(30%)を行い、サンプル6mLを6mL/hrまでの流速で処理した。生成物流及び排液流は、自動的に異なる血液細胞集団を区別し、サイズで分類し、数を計数するCoulterモデル「A−T diff」臨床血液分析デバイスによって評価した。この濃縮チップによってWBCからのRBCの分離が達成され、WBC分画は99%超の有核細胞を保持し、99%超のRBC及び97%超の血小板が除去されていた。これらの細胞分画の代表的なヒストグラムを図68に示す。通常の細胞診断により、WBC及びRBC分画が高度に濃縮されていることが確認された(図69)。
【0224】
次に、上皮細胞が、固定化抗体で機能化されたマイクロ流体モジュールにおける親和性捕獲によって回収された。抗体で被覆された微細加工障壁構造の規則的アレイを具える一つのチェンバーを持つ捕獲モジュールが設計された。これらの障壁構造は、捕獲領域を約4倍に広げ、また障壁構造近傍の層流下における細胞の流れを遅くして細胞と固定化抗体との接触時間を長くすることにより、細胞の捕獲が最大となるよう配置されている。この捕獲モジュールは、細胞の損傷を防ぐために比較的高流速だが低剪断力の条件下で操作することができる。捕獲モジュールの表面は、10%のシラン、0.5%のグルタルアルデヒド及びアビジン、続いてビオチン化抗EpCAMによって順に処理することで機能化された。活性部位はPBS中の3%ウシ血清アルブミンによってブロックし、希釈トリス塩酸バッファーで反応停止し、希釈L−ヒスチジンで安定化した。モジュールは各ステージ後にPBS中で洗浄し、最後は乾燥して室温で保存した。捕獲性能はヒト進行肺ガン細胞株NCI−H1650(ATCC No.CRL−5883)によって測定した。この細胞株は、EGFRのエクソン19においてインフレームの15塩基対の欠失をヘテロ接合体で有し、これによってゲフィチニブ感受性になっている。コンフルエントな培養物からの細胞をトリプシンで回収し、生体染料であるCell Tracker Orange(CMRA試薬、Molecular Probes社製、オレゴン州ユージーン所在)で染色し、新しい全血中に再懸濁して様々な流速でマイクロ流体チップにて分画した。この実現性に関する初期実験では、細胞の懸濁液は細胞濃縮モジュールであらかじめ分画して赤血球を減量するというステップを行わずに、捕獲モジュール内で直接処理した。従って、サンプル流には腫瘍細胞に加えて正常赤血球及び白血球も含まれていた。捕獲モジュール内で細胞を処理した後、デバイスをより高い流速(3mL/hr)にてバッファーで洗浄し、非特異的に結合した細胞を除去した。接着性の蓋を取り除き、付着した細胞をチップ上にパラホルムアルデヒド固定して蛍光顕微鏡で観察した。細胞の回収率は血球計数器によるカウントから算出した。代表的な捕獲結果を表2に示す。未分画血液を用いた再構成実験の初期収率は60%超であり、非特異的結合は5%未満であった。
【0225】
表2

【0226】
次に、全血にスパイクされ上述のようにサイズ分画及び親和性捕獲で回収されたNCI−H1650細胞をin situで分析することに成功した。白血球から上皮細胞を区別するための試験的実験では、蛍光標識されたCD45汎白血球モノクローナル抗体の原液0.5mLを捕獲モジュールへ移し、30分間室温でインキュベートした。モジュールをバッファーで洗浄して未結合の抗体を除去し、細胞を1%パラホルムアルデヒドで固定して蛍光顕微鏡で観察した。図70に示すように、上皮細胞は捕獲モジュールの障壁構造及び底部に結合していた。CD45汎白血球抗体による流路のバックグラウンドの染色が、染色されたいくつかの白血球と同様に見られるが、これは明らかに低レベルの非特異的捕獲に起因するものである。
【0227】
実施例12.デバイスの態様
好適な決定論的デバイスのデザインを図73Aに、このデザインに対応した三種類の好適なデバイスの態様に対するパラメータを図73Bに示す。これらの態様は上皮細胞を血液から分離するために特に有用である。
【0228】
実施例13.EGFR変異のPCR分析
ガン患者からの血液サンプルを実施例11のデバイス及び方法を用いて処理、分析し、CTCを含有する上皮細胞の濃縮サンプルを得る。このサンプルを更に分析して潜在的なEGFR変異を識別する。
この分析を行うために、この濃縮サンプル中に存在する対象細胞からゲノムDNAを単離し、対立遺伝子特異的リアルタイムPCR分析に使用するために増幅する。今日までに報告されており、ゲフィチニブに対する感受性又は耐性をもたらすことが知られている非小細胞肺ガンにおけるEGFR変異は、すべてエクソン18から21までのコード領域内に存在する。従って、この四つの各エクソンを、固有の組み合わせのエクソン特異的プライマーでPCR増幅する。次に、対立遺伝子特異的多重定量PCR反応を、TaqMan5’ヌクレアーゼアッセイPCRシステム(Applied Biosystems社)及びApplied Biosystems社のリアルタイムPCRデバイスモデル7300を使用して行う。これにより、臨床的意味のある公知の変異はいずれもすばやく識別することができる。
【0229】
この方法には二段階PCR(two−step PCR)のプロトコルが必要である。まず、エクソン18から21までを通常のPCR反応によって増幅する。得られたPCR生成物を等分し、対立遺伝子特異的マルチプレックスリアルタイムPCR分析に用いる試料とする。最初のPCR反応は、増幅中に対立遺伝子特異的な情報が失われる可能性を最小限にするため、対数期中に停止する。次に、二段階目のPCRにより、最初のPCR産物の各対象変異に特異的な部分領域の増幅を行う。リアルタイムPCR分析の感度が非常に高いことから、たとえわずか10個のCTCが単離されただけであったとしても、EGFR遺伝子の変異状態に関するすべての情報を得ることが可能である。リアルタイムPCR分析により、投入DNA濃度の10(8 logs)を超える量の対立遺伝子の配列で定量することができ、従って、この方法を使うことにより、不純物を具える集団中のヘテロ接合体の変異であっても容易に検出される。
【0230】
オリゴヌクレオチドはプライマー最適化ソフトウェアであるPrimer Express(Applied Biosystems社)を用いて設計し、ハイブリダイゼーション条件は野生型EGFRのDNA配列を突然変異対立遺伝子から区別できるように最適化される。EGFR変異を持つことが分かっている肺ガン細胞株、H358(野生型)、H1650(15塩基対欠失、Δ2235−2249),及びH1975(2箇所の点突然変異、2369 C→T、2573 T→G)等、から増幅されたEGFRのゲノムDNAを使って対立遺伝子特異的リアルタイムPCR反応の最適化を行う。TaqMan5’ヌクレアーゼアッセイを用い、野生型配列又は公知のEGFR変異に特異的な対立遺伝子特異的標識プローブを作製する。オリゴヌクレオチドはミスマッチからマッチを容易に区別可能な融解温度を持つよう設計され、リアルタイムPCR条件は野生型と突然変異遺伝子とが区別できるように最適化される。リアルタイムPCR反応はすべて三回の反復実験数(triplicate)で行った。
【0231】
まず、野生型配列を含む標識されたプローブを、一つの変異プローブと共に同じ反応で多重化する。その結果を野生型配列に対する一つの突然変異対立遺伝子配列の比として表すことにより、任意の変異を持つサンプルと持たないサンプルを識別することができる。あるプローブセットに対して条件を最適化すれば、その後は任意のエクソン内のすべての突然変異対立遺伝子についてのプローブを同じリアルタイムPCRアッセイにおいて多重化することが可能となり、臨床環境におけるこの分析ツールの利便性が向上することになる。
【0232】
注入されるCTCサンプルの純度は様々であってよく、単離されるCTCの変異状態も不均一であってよい。しかし、リアルタイムPCRが極めて高感度であることから、存在するどのような変異配列もすべて識別することができる。
【0233】
実施例14.上皮細胞と異なる種類の細胞数の定量
本発明の方法を用いることにより、上皮細胞以外の細胞種の数に基づいた診断が可能である。ガンの非存在、存在、又は進行に関する診断は、細胞由来サンプル中の特定のカットオフサイズを超える細胞の数に基づいて行うことができる。例えば、水力学的サイズが14ミクロンかそれより大きい細胞を選んでよい。このカットオフサイズにより、ほとんどの白血球が除去されるであろう。次に、下流の分子分析又は細胞学的分析によってこのような細胞の性質を特定することができる。
【0234】
分析に有用と思われる上皮細胞以外の細胞種としては、内皮細胞、内皮前駆細胞、子宮内膜細胞、又は疾患状態の指標となる栄養芽細胞が挙げられる。更に、上皮細胞とその他の細胞種の細胞数を別々に定量して上皮細胞の数とその他の細胞種の数との比を算出することにより、有用な診断情報を得ることができる。
【0235】
図71Aから図71Dに示すように、決定論的デバイスは上述のような対象細胞の亜集団を単離するような構成としてもよい。赤血球、白血球、及び血小板を具えるほとんどのネイティブな血球細胞が排液へ流れ、内皮細胞、内皮前駆細胞、子宮内膜細胞、又は栄養芽細胞を具え得るネイティブでない細胞が濃縮サンプル中へ回収されるようにカットオフサイズを選択してもよい。この濃縮サンプルは更に分析にかけてもよい。
【0236】
従って、決定論的デバイスを用いることによって、血液又は他の体液から得た細胞の亜集団をサイズに基づいて単離することが可能であり、それによって、大型の細胞種を対象としている場合にネイティブな血球細胞の大部分を簡便に除去することができる。図72に模式的に示すように、決定論的デバイスは濃縮サンプル中の細胞数を決定するための計数手段を含んでもよく、その濃縮サンプル中の細胞の更なる分析によって、診断上又は他の目的に有用な追加的な情報を得ることができる。
【0237】
実施例15.母体血液中の胎児有核赤血球の濃縮
例えば、本明細書に記載のように、デバイスは母体脱核赤血球から胎児有核赤血球及び母体白血球を分離することが可能な決定論的分離部を具える。この決定論的分離部は、亜硝酸ナトリウムを含む貯留部と接続されている。母体血液サンプル、例えば希釈されたものをデバイスに導入し、胎児赤血球が濃縮され母体赤血球が除去された分画を生成する。このサンプルは貯留部へ送られ、そこで亜硝酸ナトリウムが胎児ヘム鉄を酸化し、それによって胎児赤血球の磁気応答性が増大する。次に磁界が、例えばMACSカラムによって印加されるが、変性胎児赤血球は磁石と結合するのに対し、母体白血球は磁石と結合しない。白血球を、例えば洗浄によって除去し、次に磁界を取り除くことにより、例えば分析、保存、又は更なる処置のための胎児赤血球が回収できる。
【0238】
実施例16.急勾配磁石を用いた血液からの胎児有核赤血球の分離
酸化ヘモグロビン含有赤血球を引きつけるのに有用な典型的な急勾配磁石を模式的に図78に示す。キャピラリーに導入された赤血球は、不均一な磁界が印加されたために別々の領域に集められた(図79Aから79C)。
【0239】
図80は、男性臍帯血から調製された有核赤血球(ポジティブ分画)のペレット及び白血球(ネガティブ分画)のペレットの写真である。有核細胞はまず横型決定論的分離デバイスを用いて血液から抽出し、50Mの亜硝酸ナトリウムで10分間処理した。次に有核細胞を磁気カラムに通して有核赤血球を保持させた。カラム内では、磁界強度は約1テスラ、磁場勾配は約3000テスラ/m、そして流速は約0.4mm/sec.であった。白血球を1%のBSA及び2mMのEDTAを具えるダルベッコPBSバッファーでカラムから洗い流し、ネガティブ分画として回収した。有核赤血球は同じバッファーを使い流速4mm/sでカラムから溶出し、ポジティブ分画として回収した。
【0240】
図81は、図80に示す方法により母体血液から単離した有核赤血球の一連の蛍光イメージである。細胞は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により染色した。X染色体はアルファサテライト領域に対する藍緑色標識プローブで識別され、一方Y染色体についてはアルファサテライト領域及びサテライトIII領域に対するそれぞれ赤色染色及び緑色染色によって識別された。核はDAPI(青色)で対比染色された。
【0241】
図82は、図80に示す方法を用いて母体血液から単離した様々な成熟段階の有核赤血球を示す。細胞はライトギムザ染色によって染色した。
【0242】
図83A及び図83Bは(A)抗CD71抗体を用いた濃縮結果を示す顕微鏡写真、及び(B)図80に示す方法を用いた濃縮結果を示す顕微鏡写真である。(A)のサンプル中には血液1mL当たり200,000超の有核細胞が含まれており、(B)のサンプル中には血液1mL当たり約100から500の有核細胞が含まれていた。図80に示す方法で得られた有核赤血球の純度は、抗体を用いた濃縮法に比べて約1000倍良好であった。
【0243】
図101に、決定論的デバイス及び磁気濃縮による連続濃縮で得られた21番染色体トリソミーを持つ胎児細胞の顕微鏡写真を示す。
【0244】
実施例17.細胞濃縮の典型的な方法
本発明の好適な態様を実施する三つの方法を図84に示す。親和性濃縮では、本明細書の記載に従いサンプルを決定論的デバイスに通す。次に決定論的デバイスの流出物を抗体又はその他の選択的結合成分で被覆された磁気ビーズと接触させる。ビーズと結合した細胞は次に、磁気分離、サイトスピン、及び、例えばFISHによる分析にかけられる。ヘモグロビン濃縮では、本明細書に記載のようにサンプルを決定論的デバイスに通す。次に決定論的デバイスの流出物をヘモグロビンを酸化させることのできる試薬、例えば亜硝酸ナトリウムと接触させ、磁気応答性細胞を磁気的に分離する。分離された細胞は、サイトスピン及び例えばFISHによる分析にかけてもよいし、又は分子分析を行ってもよい。一体化法では、本発明のデバイスは決定論的濃縮部と磁気濃縮部を具え、そこからの流出物は分子分析にかけられてもよい。図85に本発明の一体化されたデバイスを模式的に示す。
【0245】
実施例18.濃縮後の選択的溶解
以下に示す実施例では母体全血から得られた循環胎児細胞の核の集団の抽出を中心に述べているが、述べられている方法はその他の細胞からの細胞成分の単離にも汎用される。
【0246】
胎児細胞核の単離
図86は、母体血液サンプルからの胎児細胞核の単離方法を示すフローチャートである。この方法により赤血球を選択的に溶解できる(図87)。
【0247】
全血からゲノム分析の対象となる循環細胞の精製された核集団を単離する方法のいくつかの態様を以下に示す。
【0248】
(a)この方法には、本明細書に記載するように、全血のマイクロ流体処理が含まれる。この処理は、(1)脱核赤血球及び血小板の数を10―10(1 to 3 log)倍除去することで有核細胞を濃縮したサンプルを作製し、(2)この濃縮有核サンプルに、残留脱核赤血球、脱核網状赤血球、及び有核赤血球を母体有核白血球に対して選択的に溶解するためのマイクロ流体処理を行うことにより胎児細胞核を放出し、(3)サイズ分離デバイスによるマイクロ流体処理によって母体有核白血球から核を分離し、そして(4)市販の遺伝子分析ツールを使って胎児ゲノムの分析を行うためのものである。
【0249】
(b)この方法は、態様1のステップ1及び2をマイクロ流体デバイスによる一ステップとし、続けて下流デバイス又はより大型のデバイスの一構成部を使用してステップ3とするようなデザインにしてもよい(図88及び図89参照)。図88に、サイズ濃縮と溶解を同時に行うためのマイクロ流体デバイスの模式図を示す。このデバイスは、サンプルが導入されるデバイスの端部から溶解液を具える中央チャネルへ、より大型の細胞を偏向させる二つの障壁構造の領域を持つ(例えば本明細書記載の二重デバイス)。母体血液の場合は、母体脱核赤血球及び血小板がデバイスの端部に残り、一方胎児有核赤血球及びその他の有核細胞が中央チャネルへ偏向されるように障壁構造の領域を配置する。中央チャネルへ偏向されると、胎児赤血球(対象細胞)は溶解される。図89は、サイズに基づいて、溶解していない細胞から核(対象細胞由来成分)を分離するためのマイクロ流体デバイスを模式的に示す図である。このデバイスは、核をデバイス端部に保持する一方、大粒子を中央チャネルへ偏向するよう障壁構造が配置されている点を除けば、図88に示すデバイスと類似している。
【0250】
(c)マイクロ流体に基づいた母体血液サンプル中の胎児細胞核生成のための組み合わせ法に続く、母体細胞から胎児細胞核を分離するための密度勾配遠心分離等のバルク処理法(図90参照)。
【0251】
(d)方法及び原理検証
選択的溶解及び有核赤血球の分画
正期臍帯血をスパイクした提供者の血液サンプル中の混入赤血球を、低浸透圧溶解及び塩化アンモニウム溶解の二つの方法で溶解した。脱核赤血球は低浸透圧溶液中では有核細胞よりも速やかに溶解するため、混合細胞集団の低浸透圧溶液中での曝露時間を制御することにより、この時間に基づいた細胞集団の選択的溶解が可能となる。この方法では、細胞を沈殿させてペレット状とし、ペレットの上の血漿は吸引する。次に脱イオン水を添加してペレットを水と混合する。有核赤血球の溶解を最小限にして95%超の脱核赤血球を溶解するには15秒の曝露で十分であり、15秒から30秒では70%超の有核赤血球を溶解するのに十分であるがその他の有核細胞の溶解は15%未満であり、30秒を超えるとその他の有核細胞の溶解率が上昇する。所望の曝露時間の後10×HBSS(高浸透圧平衡塩類)溶液を加えて溶液を等張状態に戻す。標準濃度(例:0.15M等張液)の塩化アンモニウム溶解溶液へ曝露することにより、有核細胞への影響を最小限にして赤血球の大部分を溶解することができる。この溶解溶液のオスモル濃度を下げて低浸透圧塩化アンモニウム溶液を作れば、大部分の有核赤血球が成熟赤血球と共に溶解される。
【0252】
密度遠心分離法を使って濃縮されたリンパ球集団を得た。これらのリンパ球サンプルを等分したものを95%超の細胞が溶解するのに十分な時間低浸透圧塩化アンモニウム溶液に曝露した。これらの核を次に、特に二本鎖DNAのATリッチ領域に特異的な染料であるHoechst 33342(ビスベンズイミド H33342)で標識し、元のリンパ球集団に戻して90:10(細胞:核)の混合物を作製した。この混合物を、図89に示すようにサイズに基づいて核から細胞を分離するデバイスへ導入し、排液及び生成物分画を回収し、各分画に含まれる細胞:核の比を測定した。
【0253】
溶解した生成物の密度勾配遠心分離
選択的溶解ステップで処理した混合細胞懸濁液の溶解核は、ショ糖クッション溶液(sucrose cushion solution)を溶解液に加えることで濃縮することができる。そしてこの混合物を純粋なショ糖クッション溶液上に重層し、それから遠心分離にかけて濃縮核ペレットを形成する。溶解していない細胞やデブリは上澄みから吸引する。バッファー中で核ペレットを再懸濁し、スライドガラス上へサイトスピン(cytospin)する。
【0254】
酸アルコール全細胞溶解及び対象細胞識別のための核内RNA−FISH法
図89に示すようにサイズに基づいて細胞を分離するデバイスから得られた生成物を、氷上で酸アルコール溶液(容量比でメタノール:酢酸=3:1)に30分間曝露し、99%超の脱核細胞及び99.0%超の有核細胞を溶解した。酸アルコール溶解の前に、細胞を塩溶液(0.6%NaCl)に30分間曝露して核を膨潤させる低浸透圧処理を行ってもよい。放出された核はサイトスピンにより定量的にスライドガラス上へ付着させ、FISHを行うことができる(図95a及び図95b)。胎児有核赤血球等の対象細胞は、ゼータ、イプシロン、ガンマ−グロビン等のポジティブ選別用プローブ及びベータ−グロビン等のネガティブ選別用プローブによるRNA−FISH法を用いるか、又はテロメアの長さを分析することによって識別することができる。胎児細胞と非胎児細胞とを区別するその他の方法は、例えば米国特許第5,766,843号明細書に記載のように、本技術分野で公知である。
【0255】
実施例19.一段式サイズ分離デバイス
図91は、血液内の粒子を分離するよう最適化されたサイズ分離デバイスを示す。これは22μmの固定された幅の隙間を有する一段式デバイスで、サンプルの同時処理を行うための48個の多重化アレイを持つ。デバイスのパラメータは以下の通りである。
【0256】


【0257】
妊婦の志願提供者から血液を採取し、ダルベッコリン酸バッファー(カルシウム及びマグネシウムを含まない)(iDPBS)で1:1に希釈した。血液及び流動用バッファー(1%のBSA及び2mMのEDTAを具えるiDPBS)を0.8PSIの能動圧(active pressure)で、実施例20に示すマニホールドと連結されたデバイス中に供給した。血液は流動用バッファー中の有核細胞並びに流動用バッファー中の脱核細胞及び血漿タンパク質の二種類の成分に分離した。両成分を標準インピーダンス測定器で分析した。有核細胞を具える成分は標準ナジョット(Nageotte)計数チェンバーと組み合わせてヨウ化プロピジウム染色溶液を使って更に特徴付けを行い、全有核細胞損失を決定した。得られたデータを使い、血液処理量(mL)、血液処理速度(mL/hr)、RBC及び血小板除去率、並びに有核細胞保持率を算出した。以下の表に本デバイスを使った細胞濃縮の結果を示す。
【0258】


【0259】
実施例20.サイズ分離デバイスに使用するマニホールド
本発明のマイクロ流体デバイスが挿入される典型的なマニホールドを図92に示す。マニホールドは半分に分かれて二つの部分から成り、その間に本発明のマイクロ流体デバイスが配置される。マニホールドの片側半分には血液用とバッファー用の流入口が別々にあり、各々は対応する流体貯留部に接続されている。デバイス内のチャネルはデバイスの貫通穴を通して貯留部と接続されるよう配置されている。一般的には、デバイスは垂直に置かれ、処理された血液は生成物流出口から滴下する際に回収される。更に、マイクロ流体デバイスの生成物流出口の周囲の領域に形成される液滴のサイズを限定するために、例えば永久マーカー等により疎水性物質で印をつけてもよい。デバイスは更に二つの疎水性ベントフィルター、例えば0.2μmのPTFEフィルターを具える。このフィルターはデバイス中に入り込んだ気泡を水性溶液で置換するが、低圧下、例えば5psi未満においては液体は通さない。
【0260】
デバイスの予備運転のために、バッファー、例えば1%(重量/容量)のウシ血清アルブミン及び2mMのEDTAを具えるダルベッコPBSバッファーを減圧下で撹拌しながら5分から10分間脱気する。次に、バッファーをマニホールドのバッファー流入口からデバイス内に5psi未満の圧力で送液する。続いてバッファーを、疎水性ベントフィルターを通して空気を置換することでバッファー室内に満たし、更にマイクロ流体デバイス内のチャネル及び血液室を満たす。血液室に接続された疎水性ベントフィルターによって室内の空気を排除することができる。血液室を満たした後、バッファーを血液流入口へ送液する。ある態様においては、1psiの圧力による1分間の予備運転の後、血液流入口を閉め、圧力を3分間3psiへ上昇させる。
【0261】
実施例21.濃縮後の低浸透圧溶解
本明細書記載のいずれかのデバイスで濃縮された胎児nRBC集団に大容積の低イオン強度バッファー、例えば脱イオン水を加えることで低浸透圧ショックを与え、脱核RBC及びnRBCを選択的に溶解してそれらの核を放出させる。続いて同容積の高イオン強度バッファーを加えて低浸透圧ショックを停止する。放出された核は、続けてρ=1.32g/mLのイオジキサノール水溶液を通す等による勾配遠心分離によって回収してもよい。放出された核を分析する。
【0262】
図93に、母体nRBCに対する胎児nRBCの選択的溶解を、溶解条件への曝露時間の関数として示す。この選択的溶解手順は更に、胎児nRBC、母体nRBC、脱核胎児及び母体nRBC、並びに胎児及び母体白血球からなる細胞集団中の胎児nRBCを選択的に溶解するために用いることもできる。蒸留水を用いてある一定の時間低浸透圧ショックを与え、次に同容積のPBS等の10倍塩溶液を加えてショックを停止することにより、胎児nRBC及び母体nRBCを溶解した。その間に、溶解した(生存不能)胎児nRBCの数は10倍に増加し、一方溶解した母体nRBCの数はそれより少ない倍率での増加であった。任意の時点で溶解細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、勾配遠心分離で濃縮して母体nRBCに対する溶解胎児nRBCの比を求めた。胎児nRBCの核を選択的に濃縮するための最適時間を決定して適用することができる。
【0263】
実施例22.母体細胞の選択的溶解
本明細書記載のいずれのデバイスで濃縮された胎児nRBC集団でも母体赤血球の選択的溶解にかけることができる。
【0264】
脱核RBC及び母体有核RBCを選択的に溶解するために、胎児nRBCが濃縮されたサンプルを0.155MのNHCl、0.01MのKHCO、2mMのEDTA、アセタゾラミド(例:0.1mMから100mM)等の炭酸脱水酵素阻害剤を具える1%のBSA等のRBC溶解バッファーで処理し、続いて、10倍容積の1×PBS又は4,4’−ジイソチオシアノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(DIDS)等のイオン交換阻害剤を具える1×PBS等の平衡塩等、大容積の平衡塩バッファーを用いて溶解ステップを停止する。生存した胎児細胞は続いて更なる選別及び分析にかけてもよい。
【0265】
白血球に擬するためのK562細胞をHoechst及びカルセインAMにより室温で30分標識した(図94)。この標識K562細胞を血液検体に加え、更にバッファー(0.155MのNHCl、0.01MのKHCO、2mMのEDTA、1%のBSA、及び10mMのアセタゾラミド)を加えた(バッファーとスパイクされた血液との容積比は3:2)。スパイクされた血液検体は定期的にゆるやかに撹拌しながら室温で4時間インキュベートした。スパイクされた各検体における生細胞の分画を、610nmにおける緑色蛍光を複数時点で測定することにより定量した。処理後わずか3分で細胞の溶解が観察される(DIDS非存在下)。
【0266】
実施例23.遺伝子解析
例えば本明細書で議論されるいずれのデバイス又は方法によっても、胎児nRBCが濃縮されたサンプルは、溶解して遺伝的内容について解析を行うことができる。細胞溶解及び、所望の細胞又は細胞成分の単離に使うことができる方法としては、以下のようなものが挙げられる。
(a)胎児nRBCが濃縮されたサンプルは、細胞質を除去し核を単離するために全細胞溶解を行ってもよい。核はカルノア(Carnoy’s)固定液等の固定液で処理してスライドガラス上へ付着させることで固定化してもよい。胎児核は、核タンパク質及び転写因子の免疫染色により、又は胎児mRNA前駆体のディフェレンシャルハイブリダイゼーション(differential hybridization)若しくはRNA FISHにより、胎児に内在するターゲットの存在で識別することができる(Gribnauら、Mol.Cell、 p.377−386(2000)、Osborneら、Nat.Gene.、p.1065−1071(2004)、Wangら、Proc.Natl.Acad.Sci.、p.7391−7395(1991)、Alfonso−Pizarroら、Nucleic Acids Research、p.8363−8380(1984))。この胎児に内在するターゲットとしては、ゼータ−、イプシロン−、ガンマ−、デルタ−、ベータ−、アルファ−グロビン、及びI−分岐酵素(I−branching enzyme)(Yuら、Blood、Vol.101、p.2081、(2003))、N−アセチルグルコサミン転移酵素、又はIgnT等の非グロビンターゲットが挙げられる。RNA FISH法で用いられるオリゴヌクレオチドプローブは、イントロン−エクソン境界又はその他の領域に対するものであってよく、これにより、又はテロメア長さを分析することにより必要なターゲットが独自の方法で識別される。
(b)胎児nRBCが濃縮されたサンプルは、胎児細胞を単離するために実施例22に記載のバッファーとイオン交換阻害剤による処理を用いて選択的溶解を行ってもよい。生存胎児細胞は更に、グロビン及びI−分岐ベータ1,6−N−アセチルグルコサミン転移酵素等の細胞内マーカー又は抗原I等の表面マーカーの有無による選別にかけてもよい。別の態様においては、実施例22に記載のように濃縮胎児nRBCを選択的溶解にかけて脱核RBC及び母体nRBCの両方を除去し、続いてすべての有核白血球に存在する表面抗原CD45に対する抗体を用いた補体媒介細胞溶解を行ってもよい。得られた無傷胎児nRBCは他のどのような混入細胞も含んでいないはずである。
(c)胎児nRBCが濃縮されたサンプルは、胎児細胞核を単離するために実施例21に記載のように低浸透圧ショックによって溶解してもよい。核はカルノア固定液等の固定液で処理してスライドガラス上へ付着させることで固定化してもよい。
【0267】
単離後、所望の細胞又は細胞成分(核等)は、遺伝的内容についての解析を行ってもよい。13番及び18番染色体の欠損又は21番染色体トリソミー若しくはXXY等の他の染色体異常を同定するためにFISH法を用いてもよい。染色体異数性も、比較ゲノムハイブリダイゼーション等の方法で検出することができる。更に、識別された胎児細胞をマイクロダイセクションによって検査してもよい。抽出後、胎児細胞の核酸に対して一回以上のPCR若しくは全ゲノム増幅を行い、続いて比較ゲノムハイブリダイゼーション若しくは短いタンデムリピート(STR)の分析、又は一塩基点突然変異(SNP)、欠失、若しくは転座等の遺伝子突然変異分析を行ってもよい。
【0268】
実施例24.サイズ濃縮後の溶解
図89に示すデバイスから得られる、1×PBS中の赤血球3mLを具える生成物を、50mM亜硝酸ナトリウム/0.1mMアセタゾラミドで10分間処理する。次に細胞を0.155MのNHCl、0.01MのKHCO、2mMのEDTA、1%のBSA、及び0.1mMのアセタゾラミドから成る溶解バッファーと接触させ、そして4,4’−ジイソチオシアノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(DIDS)等のバンド3イオン交換体チャネル阻害剤(BAND 3 ion exchanger channel inhibitor)を含む反応停止剤に直接滴下することで溶解反応を停止する。脱核RBC及び有核RBCをライトギムザ染色の後に計数し、nRBCの計数にはFISH法を用いる。そして、結果の数値を非溶解のコントロールサンプルと比較する。以下にこのような実験の結果の一つを示す。
【0269】


【0270】
実施例25.アポトーシスDNAの濃縮
胎児有核RBCからのアポトーシスDNAの、カオトロピック塩又は界面活性剤媒介全溶解、及びオリゴヌクレオチド媒介濃縮
図89に示すデバイスから得られる生成物を、緩衝グアニジニウム塩酸塩溶液(少なくとも4.0M)、グアニジニウムチオシアネート(少なくとも4.0M)、又はSDS添加トリス緩衝溶液等の緩衝界面活性剤溶液等のカオトロピック塩溶液中に溶解する。次に10μlの50mg/mlプロテアーゼKと共に細胞溶解液を55℃で20分間インキュベートしてタンパク質を除去し、続いて95℃で5分間インキュベートしてプロテアーゼを失活させる。胎児nRBCは母体血液循環中に入るとアポトーシスを起こし、このアポトーシスのプロセスが胎児nRBCDNAのDNA断片化を引き起こす。胎児nRBCDNAのサイズ減少、及びオリゴヌクレオチド媒介濃縮によってより小さいDNA断片を無傷ゲノムDNAから分離する効率の高さを利用して、アポトーシス胎児nRBCDNAを、溶液中の、ビーズへ接着した、又はアレイ若しくはその他の表面に結合したオリゴヌクレオチドに対する短いタンデムリピート(STR)等の固有の分子マーカーを識別するためのハイブリダイゼーションによって選択的に濃縮することができる。ハイブリダイゼーションの後、不要な核酸又は他の不純物をpH7.5の10mMトリス塩酸中に150mM塩化ナトリウムを具える溶液等の高塩濃度バッファーで洗い流し、その後捕獲されたターゲットを、pH7.8の10mMトリスバッファー等のバッファー又は蒸留水中へ放出させる。このように濃縮されたアポトーシスDNAは次に、例えば実施例23に記載のような遺伝的内容の分析法を用いて分析される。
【0271】
実施例26.溶解の手順
図96は、母体血液サンプルに用いることができる溶解ステップのバリエーションの詳細を示すフローチャートである。濃縮生成物、例えば本明細書記載のデバイス及び方法で作製された生成物から始まるように図示されているが、このステップはどのような母体血液サンプルにも実施することができる。溶解ステップは、(i)必要な細胞(例:胎児細胞)を選択的に、(ii)必要な細胞及びその核を選択的に、(iii)すべての細胞を、(iv)すべての細胞及びその核を、(v)不要な細胞(例:母体RBC、WBC、血小板、又はこれらの組み合わせ)を、(vi)不要な細胞及びその核を、並びに(vii)すべての細胞及び不要細胞の核を選択的に、溶解するために用いてもよいということをチャートは示している。フローチャートは更に、放出された核(本発明のデバイス及び方法もまたこの目的に使用してよい)を単離する典型的な方法及び結果を解析する典型的な方法も示す。
【0272】
実施例27.全細胞溶解のタイトレーション(titration)
これはマイクロ流体環境内の全細胞溶解のタイトレーションの例である。本明細書に記載のサイズ分離法で濃縮された血液サンプルを同容積の四つのサンプルに分けた。細胞をデバイス内の定められた流路長の既定の第1媒体中へ輸送し、続いて既定の回収用第2媒体中へ輸送することができるマイクロ流体デバイスで、そのうち三つのサンプルを処理した。細胞懸濁液の容積流量を変化させて、既定の第2媒体に接触する前の既定の第1媒体中の定められた流路長内におけるインキュベーション時間を制御した。この例では既定の第1媒体として脱イオン水を用い、既定の第2媒体として2×PBSを用いた。細胞が2×PBSと混合されて等張液を生成する前の、脱イオン水中でのインキュベート時間が、10秒、20秒、又は30秒となるように流速を調節した。三つの処理サンプル及び一つの未処理サンプルにおける全細胞数を血球計数器で計数した。
【0273】


【0274】
実施例28.磁気濃縮デバイス
この実施例では、磁気カラムを用いて低い非特異的キャリーオーバーで磁性細胞を単離するための典型的なデバイスを提供する。対象細胞は磁気ビーズで標識されるか、又はNaNO等の化学試薬を用いて常磁性へ変換される。
【0275】
デバイスの図を図97に、写真を図98に示す。デバイスは磁気カラム、カラムの一方の端部に接続された流体貯留部、カラムの他方の端部における流体接続を制御するバルブ、流速制御デバイス、バッファー容器、及び排液容器を具える。
【0276】
デバイスは以下に示すように使用してもよい。
【0277】
1.細胞サンプルを貯留部へ投入する。
2.バルブを適切に使用して、磁気カラムを流速制御デバイスに接続する。カラムに磁界を印加する。流速制御デバイスによって貯留部内の細胞サンプルが制御された低流速でカラム内を通液される。磁気応答性の細胞はカラム内に保持される。
3.任意に、バッファーを貯留部へ供給してカラムを洗浄する(磁界下で)。
4.磁気カラムがバッファー容器と流体接続されるようにバルブの設定を変える。
5.任意に、カラムへの磁界の印加を停止する。
6.バッファー容器から貯留部へ向けてバッファーを高流速で逆流させてカラムの洗浄を行う。非特異的にカラム内に残留する細胞は貯留部へ洗い流される。
7.ステップ2から6を必要なだけ繰り返す。
8.対象細胞を高流速で貯留部へ向かって溶出させる。
9.又は、磁界から磁気カラムをはずし、貯留部を通して導入したバッファーでカラムを洗い流すことで対象細胞を溶出させる。
【0278】
実施例29.有核赤血球の磁気濃縮
以下の実施例では、母体血液からのnRBCの濃縮に関するデータを示す。
【0279】
サンプル調製:
8人の別々の同意提供者からそれぞれ血液20mLをKEDTA抗凝固チューブへ採取し、6時間以内に本明細書記載のサイズ分離デバイスで処理し、有核赤血球をバッファー中(iDPBS、1%のBSA、2mMのEDTA)へ回収した。
【0280】
磁気濃縮ステップ:
1.濃縮細胞サンプルを貯留部へ投入する。
2.バルブの設定として、磁気カラムを流速制御デバイスに接続する。1.4テスラの磁界をカラムに印加した。流速制御デバイスによって貯留部内の細胞サンプルが約0.3mm/sでカラム内を通液される。
3.バッファー3mLを貯留部へ供給してカラムを洗浄する(磁界下で)。
4.磁気カラムがバッファー容器と流体接続されるようにバルブの設定を変える。
5.バッファー容器から貯留部へ向けてバッファーを約60mm/sで逆流させてカラムの洗浄を行う。
6.ステップ2から5を二回繰り返す。
7.3mLのバッファーを用い60mm/sで対象細胞を貯留部へ戻して溶出させる。
8.代替として、磁界から磁気カラムをはずし、貯留部を通して導入したバッファーでカラムを洗い流すことで対象細胞を溶出させる。
【0281】
結果:
精製細胞はnRBCとWBCについて計数した。全体として、99.95%超のWBCがこの処理によって除去され、nRBCはすべてのケースにおいて全血1mL当たり2個のnRBCを超える頻度で回収される。
【0282】


【0283】
実施例30.磁気濃縮の収率
この実施例では、白血球(WBC)と赤血球(RBC)の混合物をサンプルとして使用し、ヘモグロビン含有細胞を磁気分離したときの収率を示す。RBCは濃縮する対象細胞であり、WBCは除去する細胞である。
【0284】
サンプル調製:
同意提供者から血液20mLをKEDTA抗凝固チューブへ採取し、6時間以内に本明細書記載のサイズ分離デバイスで処理し、有核赤血球及び一部RBCのキャリーオーバーをバッファー(iDPBS、1%のBSA、2mMのEDTA)3mL中へ回収した。サンプルはWBC数(1620万個)及びRBC数(760万個)について測定した。
【0285】
磁気濃縮ステップ:
1.細胞サンプルを貯留部へ投入する。
2.バルブの設定として、磁気カラムを流速制御デバイスに接続する。1.4テスラの磁界をカラムに印加した。流速制御デバイスによって貯留部内の細胞サンプルが流速約0.3mm/sでカラム内を通液される。
3.バッファー3mLを貯留部へ供給してカラムを洗浄する(磁界下で)。
4.磁気カラムがバッファー容器と流体接続されるようにバルブの設定を変える。
5.バッファー容器から貯留部へ向けてバッファーを約60mm/sで逆流させてカラムの洗浄を行う。
6.ステップ2から5を二回繰り返す。
7.3mLのバッファーを用い60mm/sで対象細胞を貯留部へ戻して溶出させる。
【0286】
結果:
精製細胞はRBCとWBCについて計数した。RBC数は750万個であり、WBC数は3200個であった。従って、対象細胞(RBC)の収率は98%超であり、99.98%の対象でない細胞(WBC)が除去された。
【0287】
実施例31.選択的溶解
この実施例では、RBCの選択的溶解により、低RBCキャリーオーバーで有核赤血球を精製する方法を提供する。選択的溶解は、磁気分離の前、最中、又は後に行うことができる。
【0288】
ステップ(磁気分離前の選択的溶解):
1.全血又は濃縮有核細胞から始め、NHCl等の化学試薬を使用して脱核赤血球を選択的に溶解する。
2.有核細胞をNaNO中(約50mM)で5分間処理する。
3.本明細書に記載の磁気分離デバイスを使って有核赤血球を他の有核細胞から分離する。
【0289】
ステップ(磁気分離後の選択的溶解):
1.全血又は濃縮有核細胞から始め、有核細胞をNaNO中(約50mM)で5分間処理する。
2.本明細書に記載の磁気分離デバイスを使って有核赤血球を他の有核細胞から分離する。
3.NHCl等の化学試薬を使用して脱核赤血球を選択的に溶解する。
【0290】
ステップ(磁気分離中の選択的溶解):
1.全血又は濃縮有核細胞から始め、有核細胞をNaNO中(約50mM)で5分間処理する。
2.磁気分離デバイス(nRBCを保持する磁気カラム)を使って有核赤血球を他の有核細胞から分離する。NHCl等の化学試薬をカラムに流して脱核赤血球を選択的に溶解する。不活性試薬をカラムに流して溶解反応を停止する。
3.nRBCをカラムから溶出させる。
【0291】
分離中の溶解により、溶解反応の時間を正確に調節することができる。
【0292】
実施例32.核調製のための溶解
この実施例では、磁気濃縮及び全血溶解を用いて血液から有核赤血球の核を単離するための方法を提供する。この方法には、磁気分離で得られた濃縮有核赤血球サンプルを提供すること、及びそのサンプルを酸アルコール(メタノール及び酢酸3:1)又はトリトン(Triton)溶液(iDPBS中0.2%のトリトン)等の化学試薬に接触させることを含んでもよい。
【0293】
その他の態様
上記の明細書において述べたすべての出版物、特許、及び特許出願は参照することにより本明細書に組み入れられる。記載された本発明の方法及びシステムの様々な変更及び変形は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない限りにおいて当業者にとって明らかであろう。本発明は特定の態様と関連付けて述べられているが、本発明は請求項にあるように、そのような特定の態様に過度に限定されないということは理解されるべきである。確かに、ここで述べた当業者にとって明らかである本発明を実施するための態様の様々な変更は本発明の範囲に含まれることを意図したものである。
【0294】
その他の態様は請求項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0295】
【図1A】図1Aから1Eは横方向への決定論的な移動に基づいて細胞を分離するアレイを模式的に表す図であり、(A)隣接する各列の横方向へのずれを表す、(B)隙間を流動する流体が隣接する列における障壁構造の周囲で不均等に分流される様子を表す、(C)臨界サイズを超える水力学的サイズを有する分析物が装置中で横方向へ移動させられる様子を表す、(D)円柱状の障壁構造によるアレイを表す、(E)楕円状の障壁構造によるアレイを表す図である。
【図1D】図1Aから1Eは横方向への決定論的な移動に基づいて細胞を分離するアレイを模式的に表す図であり、(A)隣接する各列の横方向へのずれを表す、(B)隙間を流動する流体が隣接する列における障壁構造の周囲で不均等に分流される様子を表す、(C)臨界サイズを超える水力学的サイズを有する分析物が装置中で横方向へ移動させられる様子を表す、(D)円柱状の障壁構造によるアレイを表す、(E)楕円状の障壁構造によるアレイを表す図である。
【図1E】図1Aから1Eは横方向への決定論的な移動に基づいて細胞を分離するアレイを模式的に表す図であり、(A)隣接する各列の横方向へのずれを表す、(B)隙間を流動する流体が隣接する列における障壁構造の周囲で不均等に分流される様子を表す、(C)臨界サイズを超える水力学的サイズを有する分析物が装置中で横方向へ移動させられる様子を表す、(D)円柱状の障壁構造によるアレイを表す、(E)楕円状の障壁構造によるアレイを表す図である。
【図2】図2は、隙間を流動する流体が隣接する列における障壁構造の周囲で不均等に分流される様子を模式的に表す図である。
【図3】図3は、臨界サイズが流動のプロファイル(この例では放物線状)にどのように影響されるかを模式的に表す図である。
【図4】図4は、形状がデバイス内の分析物の移動にいかに影響するかを示す図である。
【図5】図5は、変形能がデバイス内の分析物の移動にいかに影響するかを示す図である。
【図6】図6は、横方向への決定論的な移動を模式的に表す図である。臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい分析物はアレイの端部へ移動し、一方臨界サイズ未満の水力学的サイズを有する分析物は横方向への移動を伴うことなくデバイス内を通過する。
【図7】図7は、三段式の決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図8】図8は、図7のデバイスにおける最大サイズ及びカットオフサイズを模式的に表す図である。
【図9】図9は、バイパスチャネルを模式的に表す図である。
【図10】図10は、バイパスチャネルを模式的に表す図である。
【図11】図11は、共通バイパスチャネルを持つ三段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図12】図12は、共通バイパスチャネルを持つ三段式二重決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図13】図13は、共通バイパスチャネルを持ち、デバイス内の流量が実質的に一定である三段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図14】図14は、共通バイパスチャネルを持ち、デバイス内の流量が実質的に一定である三段式二重決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図15】図15は、共通バイパスチャネルを持ち、バイパスチャネル中及び隣接ステージ中の流体抵抗が実質的に一定である三段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図16】図16は、共通バイパスチャネルを持ち、バイパスチャネル中及び隣接ステージ中の流体抵抗が実質的に一定である三段式二重決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図17】図17は、二つの独立したバイパスチャネルを持つ三段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図18】図18は、任意の形状を有する二つの独立したバイパスチャネルを持つ三段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図19】図19は、三つの独立したバイパスチャネルを持つ三段式二重決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図20】図20は、二つの独立したバイパスチャネルを持ち、各ステージの流量が実質的に一定である三段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図21】図21は、三つの独立したバイパスチャネルを持ち、各ステージの流量が実質的に一定である三段式二重決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図22】図22は、流動抽出界面を模式的に表す図である。
【図23】図23は、流動供給界面を模式的に表す図である。
【図24】図24は、流動供給界面をバイパスチャネルを含めて模式的に表す図である。
【図25】図25は、中央バイパスチャネルに隣接する二つの流動供給界面を模式的に表す図である。
【図26】図26は、オンチップ流体抵抗器として作用する四つのチャネルを有するデバイスを模式的に表す図である。
【図27】図27は、デバイス内を流動する二つの流体の相対幅に対するオンチップ抵抗器の影響を模式的に表す図である。
【図28】図28は、デバイス内を流動する二つの流体の相対幅に対するオンチップ抵抗器の影響を模式的に表す図である。
【図29】図29は、二つの外部領域に対して一つの共通流入口を持つ二重デバイスを模式的に表す図である。
【図30A】図30Aは、デバイス上の複式のアレイを模式的に表す図である。
【図30B】図30Bは、デバイス上に共通の流入口と生成物流出口を有する複数のアレイを模式的に表す図である。
【図31】図31は、占有面積の小さい多段式デバイスを模式的に表す図である。
【図32】図32は、デバイス内を流れる血液を模式的に表す図である。
【図33】図33は、血球細胞の水力学的サイズ分布を示すグラフである。
【図34A】図34Aから図34Dは、一段式(A)、三段式(B)、二重(C)、三段式二重(D)決定論的デバイスにおいて、サンプルからバッファーへの分析物の移動を模式的に表す図である。
【図34B】図34Aから図34Dは、一段式(A)、三段式(B)、二重(C)、三段式二重(D)決定論的デバイスにおいて、サンプルからバッファーへの分析物の移動を模式的に表す図である。
【図34C】図34Aから図34Dは、一段式(A)、三段式(B)、二重(C)、三段式二重(D)決定論的デバイスにおいて、サンプルからバッファーへの分析物の移動を模式的に表す図である。
【図34D】図34Aから図34Dは、一段式(A)、三段式(B)、二重(C)、三段式二重(D)決定論的デバイスにおいて、サンプルからバッファーへの分析物の移動を模式的に表す図である。
【図35A】図35Aは、粒子を血液中からバッファーへ移動させて三つの生成物を得るために使用される二段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図35B】図35Bは、二つのステージの最大サイズとカットオフサイズを模式的に表すグラフである。
【図35C】図35Cは、三つの生成物の組成を模式的に表すグラフである。
【図36】図36は、各ステージがバイパスチャネルを有する変性のための二段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図37】図37は、デバイス内の二つのステージを接続するための流体チャネルの使用を模式的に表す図である。
【図38】図38は、デバイス内の二つのステージが占有面積の小さいアレイとして形成されている場合において、その二つのステージを接続するための流体チャネルの使用を模式的に表す図である。
【図39A】図39Aは、両ステージからの流出物を受けるバイパスチャネルを有する二段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図39B】図39Bは、本デバイスによって達成可能な生成物のサイズ範囲を模式的に表すグラフである。
【図40】図40は、各ステージに隣接し、同一の流出口へ流出するバイパスチャネルを有する、変性のための二段式決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図41】図41は、粒子の逐次移動と変性のための決定論的デバイスを模式的に表す図である。
【図42A】図42Aは、本発明のデバイスに組み込まれてもよい決定論的デバイスの写真である。
【図42B】図42B−42Eは、本発明に組み込まれてもよいデバイスの製造に用いられるマスクである。
【図42F】図42Fは、血液及びバッファーが入ったデバイスの写真一式である。
【図43】図43A−Fは、血液サンプル、並びに図42のデバイスによって得られた排液分画(バッファー、血漿、赤血球及び血小板)及び生成物分画(バッファー及び有核細胞)に関して血液分析デバイスによって得られた典型的なヒストグラムである。
【図44】図44A−44Dは、本発明のデバイスに組み込まれてもよい決定論的デバイスの製造に用いられるマスクである。
【図45】図45A−45Dは、本発明のデバイスに組み込まれてもよい決定論的デバイスの製造に用いられるマスクである。
【図46】図46Aは、胎児赤血球が濃縮されたサンプルの顕微鏡写真である。図46Bは、母体赤血球排液の顕微鏡写真である。
【図47】図47は、男性胎児細胞のポジティブ選別を示す一連の顕微鏡写真である(青は核、赤はX染色体、緑はY染色体を表す)。
【図48】図48は、性別、及び21番染色体トリソミーのポジティブ選別を示す一連の顕微鏡写真である。
【図49】図49A−49Dは、本発明のデバイスに組み込まれてもよい決定論的デバイスの製造に用いられるマスクである。
【図50A】図50A−50Gは、図49のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図50C】図50A−50Gは、図49のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図50E】図50A−50Gは、図49のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図50G】図50A−50Gは、図49のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図51】図51A−51Dは、本発明のデバイスに組み込まれてもよい決定論的デバイスの製造に用いられるマスクである。
【図52A】図52A−52Fは、図51のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図52C】図52A−52Fは、図51のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図52E】図52A−52Fは、図51のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図53A】図53A−53Fは、図45のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図53B】図53A−53Fは、図45のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図53D】図53A−53Fは、図45のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図53F】図53A−53Fは、図45のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図54】図54A−54Dは、本発明のデバイスに組み込まれてもよい決定論的デバイスの製造に用いられるマスクである。
【図55A】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55B】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55D】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55F】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55H】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55J】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55L】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55M】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55O】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55Q】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図55S】図55A−55Sは、図54のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図56A】図56A−56Cは、図44のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図56C】図56A−56Cは、図44のデバイスの電子顕微鏡写真である。
【図57A】図57Aは、本発明のデバイスに組み込まれてもよい決定論的デバイス及びその動作を示す模式図である。
【図57B】図57Bは、図57Aのデバイスの図及びこのデバイスを更に模式的に表した図である。
【図58A】図58A及び58Bは、二つ決定論的デバイスを互いに連結させるための二つの異なる配列を示した図である。図58Aは、一方のデバイスの流出口1が第2のデバイスのサンプル流入口に連結されるカスケード(cascade)型を示す。
【図58B】図58A及び58Bは、二つ決定論的デバイスを互いに連結させるための二つの異なる配列を示した図である。図58Bは、一方のデバイスの流出口2が第2のデバイスのサンプル流入口に連結されるバンドパス(bandpass)型を示す。
【図59】図59は、対象細胞が免疫親和性ビーズで標識される改良サイズ分離法を示す図である。
【図60】図60は、本発明に組み込まれてもよいデバイスを用いて、サイズ分画を行う方法、及び例えば抗体等の遊離標識試薬を、結合した標識試薬と分離する方法を示す図である。
【図61】図61は、図60の方法を示す図である。この場合、非対象細胞は対象細胞と同時精製してもよいが、この対象でない細胞は対象細胞の定量に干渉しない。
【図62】図62は、混合物から大型細胞を分離してこれらの細胞の濃縮サンプルを作製する方法を示す図である。
【図63】図63は、本発明のデバイス内部において細胞を溶解しオルガネラ及びその他の細胞由来成分から全細胞を分離する方法を示す図である。
【図64】図64は、カスケード型に配置され、サイズ分画及び結合した標識試薬からの遊離標識試薬の分離を本発明のデバイスを用いて行うために用いられる二つのデバイスを示す図である。
【図65】図65は、カスケード型に配置され、サイズ分画及び結合した標識試薬からの遊離標識試薬の分離を本発明のデバイス用いて行うために用いられる二つのデバイスを示す図である。この図では、結合及び検出には、抗体ではなくファージが用いられている。
【図66】図66は、バンドパス型に配置された二つのデバイスを示す図である。
【図67】図67は、正常全血のマイクロ流体分離における水力学的細胞径に対する細胞数のグラフである。
【図68】図68は、臨床血液分析デバイス「Coulter A−T diff」で得られた注入サンプル、生成サンプル、及び排液サンプルのヒストグラム一式である。x軸はフェムトモルで表した細胞量である。
【図69】図69は、有核細胞と赤血球の明確な分離を示す細胞濃縮モジュールで処理された胎児血液の生成物流及び排液流の代表的顕微鏡写真一組である。
【図70】図70は、パラホルムアルデヒドによって細胞濃縮モジュール上に固定され、蛍光顕微鏡で観察された細胞の像である。対象細胞は捕獲モジュールの障壁構造及び床部に結合されている。
【図71A】図71Aは、正常全血のマイクロ流体分離における水力学的細胞径に対する細胞数のグラフである。
【図71B】図71Bは、循環腫瘍細胞集団を具える全血のマイクロ流体分離における水力学的細胞径に対する細胞数のグラフである。
【図71C】図71Cは、図71Bのグラフに、ほとんどの天然の血球細胞を除外するカットオフサイズを更に示したグラフである。
【図71D】図71Dは、図71Cのグラフに、カットオフサイズを超えるサイズの細胞集団に内皮細胞、子宮内膜細胞、又は疾患状態を示す栄養芽細胞が含まれている可能性があることを更に示したグラフである。
【図72】図72は、細胞由来サンプル中の大型細胞の単離及び計数、並びにそれに続く大型細胞の亜集団の更なる分析に関する方法の模式図である。ここで大型細胞の細胞数は患者の疾患状態を示す。
【図73A】図73Aは、本発明に組み込まれてもよい好適な決定論的デバイスの設計を示す図である。
【図73B】図73Bは、図73Aに対応する設計パラメータの表である。
【図74】図74は、本発明のデバイスに有用な磁気分離デバイス断面図、並びにそれに関連する本発明に従う細胞単離及びそれに続くオフライン分析のためのステップを示す図である。
【図75】図75は、磁気分離デバイスの製造及び機能付与を模式的に表した図である。磁化された柱状部により、実装後にデバイスを調節することができる。
【図76】図76は、トランスフェリン(CD71)受容体に対するモノクローナル抗体を用いて血液等の複雑な混合物中からCD71+細胞を捕獲及び放出するための磁気分離デバイスの適用を模式的に示す図である。
【図77】図77は、ホロトランスフェリンを用いて血液等の複雑な混合物中からCD71+細胞を捕獲及び放出するための磁気分離デバイスの適用を模式的に示す図である。ホロトランスフェリンは鉄の含有量が高く、市販されており、対応するモノクローナル抗体に比べて親和定数及びCD71受容体との相互作用の特異性が高い。
【図78】図78は、急勾配磁石の模式図である。この磁石は1.2テスラの磁界及び約3テスラ/mmの磁場勾配を発生する。
【図79】図79Aは、図78の磁石に隣接して配置されたキャピラリーの模式図である。図79Bは、キャピラリーの位置に対する磁石による磁界強度を示すグラフである。図79Cは、磁界中で10分間後に別々の領域へ集まった赤血球の写真である。
【図80】図80は、男性臍帯血から調製した有核赤血球(ポジティブ分画)のペレット及び白血球(ネガティブ分画)のペレットの写真である。有核細胞は決定論的横型分離デバイスを用いてまず血液から抽出され、50Mの亜硝酸ナトリウムで10分間処理される。有核細胞は続いて磁気カラムを通され、有核赤血球がカラム内に保持される。カラム内の磁界強度は約1テスラ、磁場勾配は約3000テスラ/m、そして流速は約0.4mm/sec.である。白血球は、1%のBSA及び2mMのEDTAを具えるダルベッコPBSバッファーによってカラム外へ洗い流され、ネガティブ分画として回収される。有核赤血球は同じバッファーによって流速4mm/sでカラムから溶出され、ポジティブ分画として回収される。
【図81】図81は、図80に示す方法を用いて母体血液から単離した有核赤血球の蛍光イメージである。細胞は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法によって染色される。X染色体はアルファサテライト領域に対する藍緑色標識プローブで識別され、一方Y染色体についてはアルファサテライト領域及びサテライトIII領域に対するそれぞれ赤色染色及び緑色染色によって識別される。核はDAPI(青色)で対比染色される。
【図82】図82は、図80に示す方法を用いて母体血液から単離した、異なる成熟段階の有核赤血球を示す図である。細胞はライトギムザ染色によって染色される。
【図83】図83A及び83Bは、抗CD71抗体(A)及び図80に示す方法(B)を用いた濃縮結果を示す顕微鏡写真である。Aのサンプルには血液1mLから得られた200,000超の有核細胞が含まれていた一方で、Bのサンプルには血液1mL当たり約100から500の有核細胞が含まれていた。図80に示す方法で得られた有核赤血球の純度は抗体を用いた濃縮法に比べて約1000倍良好である。
【図84】図84は、本発明の三つの方法を模式的に示す図である。
【図85】図85は、本発明の一体化されたデバイスを模式的に示す図である。
【図86】図86は、胎児赤血球核の単離を説明するフローチャートである。
【図87】図87は、母体血液サンプル中における細胞の溶解の様子を模式的に示すグラフである。
【図88】図88は、対象細胞を濃縮し、好ましくはその対象細胞を濃縮サンプル中で溶解するマイクロ流体法を模式的に示す図である。サンプルはまず、サイズに基づいて対象細胞を好ましいチャネルへ誘導することによって濃縮され、対象細胞はその後溶解液中の滞留時間を制御することによって選択的に溶解される。
【図89】図89は、サイズに基づき、溶解していない非対象全細胞から溶解した対象細胞の核を単離するためのマイクロ流体法を模式的に示す図である。非対象細胞は排液へ誘導され、核は所望の生成物流中に保持される。
【図90】図90は、母体白血球から胎児細胞核を分離する別の方法を示すフローチャートである。
【図91】図91は、実質的に一定の隙間幅、流動供給界面、及び流動抽出界面を取り入れた本発明のデバイスの模式図である。
【図92a】図92aは、本発明のマニホールドの模式図である。
【図92b】図92bは、本発明のマニホールドの写真である。
【図93】図93は、低浸透圧溶解液中での時間に対する生細胞の割合を示すグラフである。
【図94】図94は、溶解バッファー中の時間に対する全血における溶血を示すグラフである。
【図95a】図95aは、本明細書記載のカルノア固定液全細胞溶解法を用いたサイトスピン後の核の収率を示す表である。
【図95b】図95bは、カルノア固定液媒介全細胞溶解法を用いた核のFISH法による結果の例を示す蛍光顕微鏡写真である。核はX(藍緑色)、Y(緑色)、及びY(赤色)に対してFISH処理され、DAPIで対比染色されている。
【図96】図96は、細胞及び核の溶解の様々なオプションの詳細を示すフローチャートである。
【図97】図97は、典型的な磁気濃縮デバイスの模式図である。
【図98】図98は、典型的な磁気濃縮デバイスの写真である。
【図99】図99は、本発明の方法を用いて得られた赤血球細胞の顕微鏡写真である。
【図100】図100は、RBCを内部に取り入れた単球の顕微鏡写真である。
【図101】図101は、本発明の方法を用いて濃縮された21番染色体トリソミーである胎児細胞の顕微鏡写真である。
【0296】
各図の縮尺は必ずしも一定ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の細胞又はその成分が第2の成分に対して濃縮したサンプルを作製するためのデバイスにおいて、前記デバイスが、
(a)前記第1の細胞又は成分が貫流するチャネルと;
(b)前記チャネル内に0.05テスラから5.0テスラの間の磁界、及び100テスラ/mから1,000,000テスラ/mの間の磁気勾配を発生させる磁石と;
を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞又は成分が前記チャネル内に保持され、前記第2の成分が前記チャネル内に保持されないことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞又は成分が前記チャネル内に保持されず、前記第2の成分が前記チャネル内に保持されることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記チャネルが第1及び第2の流出口を具え、前記第1の細胞又はその成分が前記第1の流出口へ誘導され、一方で、前記第2の成分が前記第2の流出口へ誘導されることを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスが、サイズ、形状、変形能、又は親和性に基づいて、前記第1の細胞又は成分を濃縮する分析モジュールを更に具えることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイスにおいて、前記分析モジュールが、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に平行ではない方向へ決定論的に偏向させる該構造を具える第1のチャネルを具え、前記粒子が前記第1の細胞若しくは成分、又は前記第2の成分である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のデバイスが、前記サンプルの前記第1の細胞若しくは成分、又は前記第2の成分の磁気的性質を変化させることが可能な試薬を更に具えることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のデバイスにおいて、前記試薬が前記第1の細胞若しくは成分、又は前記第2の成分の中に存在するタンパク質の磁気的性質を変化させることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項8に記載のデバイスにおいて、前記タンパク質が鉄を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスにおいて、前記タンパク質が胎児ヘモグロビン、成人ヘモグロビン、メトヘモグロビン、ミオグロビン、又はシトクロムであることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項8に記載のデバイスにおいて、前記試薬が亜硝酸ナトリウム、二酸化炭素、酸素、一酸化炭素、又は窒素を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞が血球細胞であることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞が有核細胞であることを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞が除核細胞であることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞が成人有核赤血球であることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞が胎児有核赤血球であることを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項16に記載のデバイスにおいて、前記胎児有核赤血球が10週未満の胎児からのものであることを特徴とするデバイス。
【請求項18】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞が、哺乳類、鳥類、爬虫類、又は両生類のものであることを特徴とするデバイス。
【請求項19】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1の細胞の成分が、核、核周辺区画、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、細胞膜、脂質、多糖類、タンパク質、核酸、ウィルス粒子、又はリボソームから成る群より選択される少なくとも一つであることを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項7に記載のデバイスにおいて、前記試薬が、前記第1の細胞若しくは成分、又は前記第2の成分の中で、磁性タンパク質の発現又は過剰発現を引き起こすことを特徴とするデバイス。
【請求項21】
請求項20に記載のデバイスにおいて、前記試薬が、前記第1の細胞又は前記第2の成分に磁気応答性タンパク質をトランスフェクトすることができることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
請求項7に記載のデバイスにおいて、前記試薬が、前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分と結合するか、又は前記第1の細胞内に取り込まれる磁性粒子を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項23】
請求項1に記載のデバイスにおいて、一秒当たり50,000個超の細胞又はその成分を前記チャネルへ流入させる流速を発生させることができるポンプを更に具えることを特徴とするデバイス。
【請求項24】
請求項1に記載のデバイスにおいて、少なくとも90%の前記第1の細胞又は成分が前記デバイス内に保持され、少なくとも90%の前記第2の成分が前記デバイス内に保持されないことを特徴とするデバイス。
【請求項25】
第1の細胞又はその成分が第2の成分に対して濃縮したサンプルを作製するための方法において、前記方法が:
(a)前記第1の細胞又は成分を具えるサンプルを請求項1に記載のデバイスへ導入するステップと;
(b)前記サンプル内の前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分の進路を、他方の進路に対して磁気的性質に基づいて変化させ、それによって前記第1の細胞又は成分が濃縮された前記サンプルを作製するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、ステップ(a)で、前記デバイスへ導入された前記サンプルが、第3の成分に対して前記第1の細胞又は成分が濃縮されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、ステップ(a)の前に、前記第1の細胞又は成分を前記第3の成分に対してサイズ、形状、変形能、又は親和性に基づいて濃縮する分析モジュールと前記サンプルとを接触させることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、前記分析モジュールが、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に平行でない方向へ決定論的に偏向させる前記構造を具える第1のチャネルを具え、前記粒子が前記サンプル中の前記第1の細胞若しくは成分又は前記第3の成分であることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞又は成分が濃縮された前記サンプルが、前記サンプル中に存在する前記第1の細胞又は成分の少なくとも70%を保持することを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞又は成分が濃縮された前記サンプルが、100倍の比率で濃縮されていることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞が濃縮された前記サンプルは少なくとも1000倍の比率で濃縮されており、前記第1の細胞が有核赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項25に記載の方法が、ステップ(b)の前に、前記サンプルを、前記第1の細胞若しくは成分又は第2の成分の磁気的性質を変化させることが可能な試薬と接触させるステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、前記試薬が前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分の中に存在するタンパク質の磁気的性質を変化させることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、前記タンパク質が胎児ヘモグロビン、成人ヘモグロビン、メトヘモグロビン、ミオグロビン、又はシトクロムであることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法において、前記試薬が亜硝酸ナトリウム、二酸化炭素、又は窒素を具えることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞が血球細胞であることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞が有核細胞であることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞が除核細胞であることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項36に記載の方法において、前記血球細胞が成人有核赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記成人有核赤血球が、赤白血病、重症型βサラセミア、バート(Bart’s)ヘモグロビン、又は免疫溶血性貧血の診断又は治療の監視に使用されることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項36に記載の方法において、前記血球細胞が胎児有核赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法において、前記胎児有核赤血球が10週未満の胎児からのものであることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞が、哺乳類、鳥類、爬虫類、又は両生類のものであることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞の成分が、核、核周辺区画、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、細胞膜、脂質、多糖類、タンパク質、核酸、ウィルス粒子、又はリボソームであることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項32に記載の方法において、前記試薬が、前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分の中で、磁性タンパク質の発現又は過剰発現を引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項32に記載の方法において、前記試薬が、前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分と結合するか、又は前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分内に取り込まれる磁性粒子を具えることを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項25に記載の方法において、前記第1の細胞又は成分が濃縮された前記サンプルが、ステップ(a)で導入された前記サンプル中の前記第1の細胞又は成分の少なくとも90%、並びにステップ(a)で導入された前記サンプル中の前記第2の成分の10%未満を具えることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項25に記載の方法において、一秒当たり50,000個超の細胞又はその成分が前記チャネルへ流入することを特徴とする方法。
【請求項49】
第1の細胞又はその成分が第2の成分に対して濃縮されたサンプルを作製する方法において、前記方法が:
(a)前記第1の細胞又は成分を具えるサンプルを、前記サンプル中の前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分の中で発現したタンパク質の磁気的性質を変化させる試薬と接触させて変性サンプルを作製するステップと;
(b)前記変性サンプルを、磁石がチャネルに対して配置されて前記サンプル内の前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分の進路を他方の進路に対して変化させることができる磁界及び磁気勾配を発生させるチャネルと接触させ、それによって前記第1の細胞又は成分が濃縮された前記サンプルを作製するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞又は成分を具える前記サンプルが、ステップ(a)の前又は後に、第3の成分に対して前記第1の細胞又は成分が濃縮されることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法において、ステップ(a)の前に、前記サンプルが、前記第1の細胞又は成分を前記第3の成分に対してサイズ、形状、変形能、又は親和性に基づいて濃縮する分析モジュールを接触することを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法において、前記分析モジュールが、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に平行でない方向へ決定論的に偏向させる前記構造を具える第1のチャネルを具え、前記粒子が前記サンプル中の前記第1の細胞若しくは成分又は前記第3の成分であることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞又は成分が濃縮された前記サンプルは、前記サンプル中に存在する前記第1の細胞又は成分の少なくとも70%を保持することを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞又は成分が濃縮された前記サンプルが、100倍の比率で濃縮されていることを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞が濃縮された前記サンプルが少なくとも1000倍の比率で濃縮されており、前記第1の細胞が有核赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項49に記載の方法において、前記試薬が前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分の中に存在するタンパク質の磁気的性質を変化させることを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法において、前記タンパク質が胎児ヘモグロビン、成人ヘモグロビン、メトヘモグロビン、ミオグロビン、又はシトクロムであることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法において、前記試薬が亜硝酸ナトリウム、二酸化炭素、又は窒素を具えることを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞が血球細胞であることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞が有核細胞であることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞が除核細胞であることを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項59に記載の方法において、前記血球細胞が成人有核赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、前記成人有核赤血球が、赤白血病、重症型βサラセミア、バート(Bart’s)ヘモグロビン、又は免疫溶血性貧血の診断又は治療の監視に使用されることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項59に記載の方法において、前記血球細胞が胎児有核赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法において、前記胎児有核赤血球が10週未満の胎児からのものであることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞が、哺乳類、鳥類、爬虫類、又は両生類のものであることを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞の成分が、核、核周辺区画、核膜、ミトコンドリア、葉緑体、細胞膜、脂質、多糖類、タンパク質、核酸、ウィルス粒子、又はリボソームであることを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項49に記載の方法において、前記試薬が、前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分の中で、磁性タンパク質の発現又は過剰発現を引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項69】
請求項49に記載の方法において、前記試薬が、前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分と結合するか、又は前記第1の細胞若しくは成分又は前記第2の成分内に取り込まれる磁性粒子を具えることを特徴とする方法。
【請求項70】
請求項49に記載の方法において、前記第1の細胞又は成分が濃縮された前記サンプルが、ステップ(a)で接触された前記サンプル中の前記第1の細胞又は成分の少なくとも90%、並びにステップ(a)で接触された前記サンプル中の前記第2の成分の10%未満を具えることを特徴とする方法。
【請求項71】
請求項49に記載の方法において、磁石が、前記チャネル内に0.05テスラから5.0テスラの間の磁界、及び100テスラ/mから1,000,000テスラ/mの間の磁気勾配を発生させることを特徴とする方法。
【請求項72】
請求項49に記載の方法において、一秒当たり50,000個超の細胞又はその成分が前記チャネルへ流入することを特徴とする方法。
【請求項73】
第1の分析物を具える流体サンプルから、前記サンプル中の第2及び第3の分析物に対して前記第1の分析物を濃縮する方法において、前記方法が:
(a)前記第1の分析物を第1の方向へ、前記第2の分析物を第2の方向へ偏向させる複数の障壁構造を用いて、水力学的サイズに基づいて前記流体サンプルから前記第1の分析物を濃縮する第1の濃縮ステップを行うステップと;
(b)前記第1の、又は第3の分析物の固有の又は外的な磁気的性質に基づいて前記流体サンプルから前記第1の分析物を濃縮する第2の濃縮ステップを行うステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項74】
請求項73に記載の方法において、前記流体サンプルが血液サンプルであることを特徴とする方法。
【請求項75】
請求項73に記載の方法において、前記流体サンプルが母体血液サンプルであることを特徴とする方法。
【請求項76】
請求項73に記載の方法において、一つ又はそれ以上の前記分析物が赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項77】
請求項73に記載の方法において、一つ又はそれ以上の前記分析物が胎児有核赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項78】
請求項73に記載の方法において、一つ又はそれ以上の前記分析物がそれぞれ胎児ヘモグロビン、成人ヘモグロビン、メトヘモグロビン、ミオグロビン、又はシトクロムを具えることを特徴とする方法。
【請求項79】
請求項73に記載の方法において、前記第2の濃縮ステップが前記第1の濃縮ステップの生成物に磁界を印加するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項80】
請求項79に記載の方法において、前記磁界が第1の、又は第3の分析物を引きつけることを特徴とする方法。
【請求項81】
請求項79に記載の方法において、前記磁界が第1の、又は第3の分析物を反発することを特徴とする方法。
【請求項82】
請求項79に記載の方法において、前記磁界が第1の分析物の進路を第3の分析物に対して変化させることを特徴とする方法。
【請求項83】
請求項79に記載の方法において、前記磁界が0.5テスラから5.0テスラの間であることを特徴とする方法。
【請求項84】
請求項79に記載の方法において、前記第2の濃縮ステップが、100テスラ/mから1,000,000テスラ/mの間の磁気勾配を印加するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項85】
請求項73に記載の方法が、前記第1の濃縮ステップの生成物の脱酸素を行うステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法において、前記脱酸素ステップが、前記第1の濃縮ステップの生成物をCO、CO、N,又はNaNOと接触させることを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項73に記載の方法が、前記第1の、又は第3の分析物を常磁性化するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項88】
請求項73に記載の方法が、前記第1の、又は第3の分析物を反磁性化するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項89】
請求項73に記載の方法において、前記第1の濃縮ステップ及び第2の濃縮ステップが連続して行われることを特徴とする方法。
【請求項90】
請求項73に記載の方法において、前記第1の濃縮ステップが、互いに連続して行われる水力学的サイズに基づいた複数の濃縮ステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項91】
請求項73に記載の方法において、前記第1の濃縮ステップが、互いに平行して行われる水力学的サイズに基づいた複数の濃縮ステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項92】
請求項73に記載の方法において、前記第2の濃縮ステップが、互いに平行して行われる複数の濃縮ステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項93】
請求項73に記載の方法において、前記第1の濃縮ステップがサンプルを通流させる間に行われることを特徴とする方法。
【請求項94】
請求項73に記載の方法において、前記第2の濃縮ステップがサンプルを通流させる間に行われることを特徴とする方法。
【請求項95】
請求項73に記載の方法において、前記第2の濃縮ステップが固有の磁気的性質に基づいていることを特徴とする方法。
【請求項96】
請求項73に記載の方法において、前記第2の濃縮ステップが外的な磁気的性質に基づいていることを特徴とする方法。
【請求項97】
請求項73に記載の方法において、一秒当たり50,000個超の分析物が濃縮にかけられることを特徴とする方法。
【請求項98】
(a)臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい一つ又はそれ以上の第1の分析物を第1の流出口へ向かう第1の方向へ、前記臨界サイズよりも水力学的サイズが小さい一つ又はそれ以上の第2の分析物を第2の流出口へ向かう第2の方向へ選択的に偏向する障壁構造のアレイを具える第1のモジュールと;
(b)一つ又はそれ以上の前記第1の分析物を前記第1の流出口から受けるチャネルを具える第2のモジュールと;
(c)一つ又はそれ以上の前記第1の分析物の進路を変化させるために前記チャネル内に磁界及び磁気勾配を発生させる磁石と;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項99】
請求項98に記載のシステムにおいて、一つ又はそれ以上の前記第2の分析物が除核赤血球を具えることを特徴とするシステム。
【請求項100】
請求項98に記載のシステムにおいて、一つ又はそれ以上の前記第1の分析物が有核赤血球を具えることを特徴とするシステム。
【請求項101】
請求項98に記載のシステムにおいて、一つ又はそれ以上の前記第1の分析物が胎児有核赤血球を具えることを特徴とするシステム。
【請求項102】
請求項98に記載のシステムにおいて、一つ又はそれ以上の前記第1の分析物が胎児ヘモグロビン、成人ヘモグロビン、メトヘモグロビン、ミオグロビン、又はシトクロムを具えることを特徴とするシステム。
【請求項103】
請求項98に記載のシステムが、前記障壁構造のアレイ又は前記チャネルと結合する脱酸素剤を含むリザーバーを更に具えることを特徴とするシステム。
【請求項104】
請求項98に記載のシステムが、一つ又はそれ以上の前記第1の分析物若しくはその成分を特異的に結合するためのプローブを含むリザーバーを更に具えることを特徴とするシステム。
【請求項105】
請求項104に記載のシステムにおいて、前記プローブが核酸プローブ又は抗体プローブであることを特徴とするシステム。
【請求項106】
請求項98に記載のシステムにおいて、前記磁界が0.5テスラから5.0テスラの間であることを特徴とするシステム。
【請求項107】
請求項98に記載のシステムにおいて、前記磁気勾配が100テスラ/mから1,000,000テスラ/mの間であることを特徴とするシステム。
【請求項108】
請求項98に記載のシステムにおいて、一つ又はそれ以上の前記第1の分析物の進路が固有の磁気的性質に基づいて変化することを特徴とするシステム。
【請求項109】
(a)臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい一つ又はそれ以上の第1の分析物を第1の流出口へ向かう第1の方向へ、臨界サイズよりも水力学的サイズが小さい一つ又はそれ以上の第2の分析物を第2の流出口へ向かう第2の方向へ選択的に偏向する障壁構造の二次元アレイを具える通流チャネルと;(b)一つ又はそれ以上の前記第1の分析物の進路を変化させるために磁界及び磁気勾配を発生させる磁石と;を具えることを特徴とするシステム。
【請求項110】
請求項109に記載のシステムにおいて、一つ又はそれ以上の前記第1の分析物が胎児有核赤血球であることを特徴とするシステム。
【請求項111】
請求項109に記載のシステムにおいて、一つ又はそれ以上の前記第1の分析物の進路がヘモグロビンの存在に基づいて変化することを特徴とするシステム。
【請求項112】
請求項109に記載のシステムにおいて、前記磁界が0.5テスラから5.0テスラの間であることを特徴とするシステム。
【請求項113】
請求項109に記載のシステムにおいて、前記磁気勾配が100テスラ/mから1,000,000テスラ/mの間であることを特徴とするシステム。
【請求項114】
分析物が濃縮されたサンプルを作製するためのデバイスにおいて、前記デバイスが:
(a)臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に平行でない方向へ決定論的に偏向させる前記構造を具える第1のチャネルであって、前記粒子が前記サンプルの分析物粒子又は非分析物粒子である第1のチャネルと;
(b)前記分析物が通過してリザーバーへ流れ込む前記第1のチャネルの流出物と流体的に接続されている前記リザーバーであって、前記リザーバーが前記分析物の磁気的性質を変化させる試薬を具えるリザーバーと;
を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項115】
請求項114に記載のデバイスにおいて、前記第1のチャネルがマイクロ流体チャネルであることを特徴とするデバイス。
【請求項116】
請求項114に記載のデバイスにおいて、前記構造が隙間のネットワークを形成する障壁構造のアレイを具え、前記隙間を通流する流体が、主流束の平均流動方向が前記チャネル内の平均流動方向と平行にならないよう主流束及び副流束に不均等に分流されることを特徴とするデバイス。
【請求項117】
請求項116に記載のデバイスにおいて、障壁構造のアレイが第1及び第2の列を具え、第1の列の隙間を流れる流体が第2の列の二つの隙間へ不均等に分流されるように、前記第2の列が前記第1の列に対して横方向にずれていることを特徴とするデバイス。
【請求項118】
請求項114に記載のデバイスにおいて、前記分析物が前記臨界サイズよりも水力学的サイズが大きいことを特徴とするデバイス。
【請求項119】
請求項114に記載のデバイスにおいて、前記分析物が前記臨界サイズよりも水力学的サイズが小さいことを特徴とするデバイス。
【請求項120】
請求項114に記載のデバイスが、磁界を発生させることができる磁石を更に具えることを特徴とするデバイス。
【請求項121】
請求項120に記載のデバイスにおいて、前記磁石が第2のチャネルに配置された磁性障壁構造の領域を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項122】
請求項121に記載のデバイスにおいて、少なくとも前記磁性障壁構造の一部が永久磁石を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項123】
請求項121に記載のデバイスにおいて、少なくとも前記磁性障壁構造の一部が非永久磁石を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項124】
請求項121に記載のデバイスにおいて、前記障壁構造が二次元アレイ状に配列されていることを特徴とするデバイス。
【請求項125】
請求項121に記載のデバイスにおいて、前記第2のチャネルがマイクロ流体チャネルであることを特徴とするデバイス。
【請求項126】
請求項114に記載のデバイスにおいて、前記リザーバーが磁石を具える第2のチャネルを更に具えることを特徴とするデバイス。
【請求項127】
請求項114に記載のデバイスにおいて、前記試薬が一つ又はそれ以上の前記分析物の固有の磁気的性質を変化させることを特徴とするデバイス。
【請求項128】
請求項127に記載のデバイスにおいて、前記試薬が亜硝酸ナトリウムを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項129】
請求項114に記載のデバイスにおいて、前記試薬が一つ又はそれ以上の前記分析物と結合することを特徴とするデバイス。
【請求項130】
請求項129に記載のデバイスにおいて、前記試薬が磁性粒子を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項131】
請求項130に記載のデバイスにおいて、前記磁性粒子が抗体又はその抗原結合性断片を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項132】
請求項131に記載のデバイスにおいて、前記抗体が抗CD71、抗CD36、抗CD45、抗GPA、抗抗原i、抗CD34、又は抗胎児ヘモグロビンであることを特徴とするデバイス。
【請求項133】
請求項129に記載のデバイスにおいて、前記試薬がホロトランスフェリンを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項134】
第1の分析物が第2の分析物に対して濃縮されたサンプルを作製する方法において、前記方法が:
(a)前記サンプルの少なくとも一部を、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に平行でない方向へ決定論的に偏向させる前記構造を具えるデバイスへ適用し、それによって前記第1の分析物が濃縮され、前記第2の分析物を具える第2のサンプルを作製するステップと;
(b)前記第2のサンプルを、前記第1の分析物の磁気的性質を変化させる試薬と合わせ、変性された第1の分析物を作製するステップと;
(c)前記第2のサンプルに磁界を印加し、ここで前記磁界が前記変性された第1の分析物を前記第2の分析物から物理的に分離するための差動力(differential force)を発生させ、それによって前記第1の分析物が濃縮されたサンプルを作製するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項135】
請求項134に記載の方法において、前記試薬が前記第1の分析物と結合することを特徴とする方法。
【請求項136】
請求項134に記載の方法において、前記試薬が前記第1の分析物の固有の磁気的性質を変化させることを特徴とする方法。
【請求項137】
請求項136に記載の方法において、前記試薬が亜硝酸ナトリウムを具えることを特徴とする方法。
【請求項138】
請求項134に記載の方法において、前記試薬が前記第1の分析物と結合するか、又は前記第1の分析物中に取り込まれる磁性粒子を具えることを特徴とする方法。
【請求項139】
請求項138に記載の方法において、前記磁性粒子が抗体又はその抗原結合性断片を具えることを特徴とする方法。
【請求項140】
請求項139に記載の方法において、前記抗体が抗CD71、抗GPA、抗抗原i、抗CD45、抗CD34、又は抗胎児ヘモグロビンであることを特徴とする方法。
【請求項141】
請求項134に記載の方法において、前記分析物が前記臨界サイズよりも水力学的サイズが大きいことを特徴とする方法。
【請求項142】
請求項134に記載の方法において、前記分析物が前記臨界サイズよりも水力学的サイズが小さいことを特徴とする方法。
【請求項143】
請求項134に記載の方法において、前記サンプルが母体血液サンプルを具えることを特徴とする方法。
【請求項144】
請求項134に記載の方法において、前記第1の分析物が細胞、小器官、又はウィルスであることを特徴とする方法。
【請求項145】
請求項144に記載の方法において、前記細胞がバクテリア細胞、胎児細胞、又は血球細胞であることを特徴とする方法。
【請求項146】
請求項145に記載の方法において、前記血球細胞が胎児赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項147】
請求項144に記載の方法において、前記小器官が核であることを特徴とする方法。
【請求項148】
第2の血液成分に対して赤血球が濃縮されたサンプルを作製する方法でにおいて、前記方法が:
(a)赤血球を具えるサンプルを、鉄を酸化する試薬と接触させて酸化ヘモグロビンを作製するステップと;
(b)前記サンプルに磁界を印加し、ここで酸化ヘモグロビンを有する前記赤血球が前記第2の血液成分よりも強く前記磁界に引き付けられ、それによって前記赤血球が濃縮された前記サンプルを作製するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項149】
請求項148に記載の方法において、前記赤血球が胎児赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項150】
請求項149に記載の方法において、前記第2の血液成分が母体血球細胞であることを特徴とする方法。
【請求項151】
請求項148に記載の方法において、前記ステップ(a)の前に、前記サンプルが前記赤血球について濃縮されることを特徴とする方法。
【請求項152】
請求項151に記載の方法において、前記濃縮が、前記サンプルの少なくとも一部を、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に平行でない方向へ決定論的に偏向させる前記構造を具えるデバイスへ適用することによって行われることを特徴とする方法。
【請求項153】
請求項152に記載の方法において、胎児赤血球が母体赤血球に対して濃縮されることを特徴とする方法。
【請求項154】
赤血球が濃縮されたサンプルを作製するためのデバイスにおいて、前記デバイスが:
(a)前記赤血球をサイズ、形状、変形能、又は親和性に基づいて濃縮する分析デバイスと;
(b)鉄を酸化する試薬を具えるリザーバーであって、ここで前記試薬が前記赤血球の磁気応答性を高めるものであるリザーバーと;
を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項155】
請求項154に記載のデバイスにおいて、前記分析デバイスが、臨界サイズよりも水力学的サイズが大きい粒子を構造中の平均流動方向に平行でない方向へ決定論的に偏向させる前記構造を具える第1のチャネルを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項156】
請求項154に記載のデバイスにおいて、前記試薬が亜硝酸ナトリウムであることを特徴とするデバイス。
【請求項157】
赤血球細胞の亜集団を濃縮するための方法において、前記方法が:
(a)赤血球細胞を具えるサンプルをカラムに導入し、前記カラムに磁界を印加するステップと;
(b)磁気的性質に基づいて、前記サンプル中の第1の種類の赤血球細胞の進路を第2の種類の赤血球細胞に対して変化させ、ここで前記第1の種類の赤血球細胞が前記第2の種類よりも強く前記磁界に引き付けられ、それによって前記赤血球細胞の亜集団を濃縮するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項158】
請求項157に記載の方法において、前記第1の種類の赤血球細胞が正染性正赤芽球であることを特徴とする方法。
【請求項159】
請求項157に記載の方法において、前記第1の種類の赤血球細胞が成熟赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項160】
請求項157に記載の方法において、前記第2の種類の赤血球細胞が多染性正赤芽球であることを特徴とする方法。
【請求項161】
請求項157に記載の方法において、前記第2の種類の赤血球細胞が正染性正赤芽球であることを特徴とする方法。
【請求項162】
磁気の影響を受けやすい粒子を内在する細胞の集団を濃縮するための方法において、前記方法が:
(a)細胞を具えるサンプルをカラムに導入し、前記カラムに磁界を印加するステップと;
(b)磁気的性質に基づいて、前記サンプル中の磁気の影響を受けやすい粒子を内在する細胞の進路を前記サンプル中の第2の種類の細胞に対して変化させ、それによって前記細胞集団を濃縮するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項163】
請求項162に記載の方法において、前記磁気の影響を受けやすい粒子が赤血球であることを特徴とする方法。
【請求項164】
請求項162に記載の方法において、前記磁気の影響を受けやすい粒子が走磁性バクテリアであることを特徴とする方法。
【請求項165】
請求項162に記載の方法において、前記磁気の影響を受けやすい粒子がマグネタイト又はグレイジャイトを具えることを特徴とする方法。
【請求項166】
請求項162に記載の方法において、前記磁気の影響を受けやすい粒子を内在する細胞が単球又はマクロファージであることを特徴とする方法。
【請求項167】
請求項162に記載の方法において、前記磁気の影響を受けやすい粒子を内在する細胞が、家族性血球貪食性組織球症、急性単球性白血病、又はリンパ腫の診断又はその治療の監視に用いられることを特徴とする方法。
【請求項168】
血液サンプルの赤血球及び白血球を除去させるための方法において、前記方法が:
(a)血球細胞を具えるサンプルをカラムに導入し、前記カラムに磁界を印加するステップと;
(b)ステップ(a)の前、最中、又は後に、白血球と結合する磁気の影響を受けやすい粒子と前記サンプルとを接触させるステップと;
(c)磁気的性質に基づいて、前記サンプル中の赤血球及び白血球の進路を第3の種類の細胞に対して変化させ、それによって前記サンプルの赤血球及び白血球を除去させるステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項169】
請求項168に記載の方法において、前記第3の種類の細胞が幹細胞を具えることを特徴とする方法。
【請求項170】
請求項168に記載の方法において、前記血液サンプルが臍帯血サンプルであることを特徴とする方法。
【請求項171】
請求項168に記載の方法において、前記磁気の影響を受けやすい試薬が抗CD45又は抗CD15抗体を具えることを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図34C】
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【図34D】
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【図35A】
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【図35B】
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【図35C】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39A】
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【図39B】
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【図40】
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【図41】
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【図42A】
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【図42B】
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【図42F】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50A】
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【図50C】
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【図50E】
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【図50G】
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【図51】
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【図52A】
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【図52C】
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【図52E】
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【図53A】
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【図53B】
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【図53D】
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【図53F】
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【図54】
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【図55A】
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【図55B】
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【図55D】
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【図55F】
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【図55H】
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【図55J】
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【図55L】
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【図55M】
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【図55O】
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【図55Q】
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【図55S】
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【図56A】
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【図56C】
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【図57A】
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【図57B】
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【図58A】
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【図58B】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71A】
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【図71B】
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【図71C】
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【図71D】
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【図72】
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【図73A】
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【図73B】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92a】
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【図92b】
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【図93】
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【図94】
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【図95a】
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【図95b】
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【図96】
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【図97】
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【図98】
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【図99】
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【図100】
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【図101】
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【公表番号】特表2009−511001(P2009−511001A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531362(P2008−531362)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/036061
【国際公開番号】WO2007/035498
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508074804)アルテミス ヘルス,インク. (1)
【出願人】(503046334)ザ・ゼネラル・ホスピタル・コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】