説明

細胞及び作用物質を担持する微小粒子

【課題】組織修復又は遺伝子導入、あるいは予防接種のための細胞治療の範囲で有用な、生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子の提供
【解決手段】ポリエステルなどの生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子であって、その表面にランゲルハンス島、造血細胞や骨細胞などの、目的とする細胞又はその断片を含むこと、及び微小粒子の埋め込みの際に炎症誘発性サイトカインなどの前記細胞又はその環境に対しての作用物質を含む微小粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織修復又は遺伝子導入、あるいは予防接種のための細胞治療の範囲で有用な細胞の調製及び移植の分野に関する。特には、本発明は、目的とする細胞又はその断片、及び成長因子又はサイトカイン因子を含む、生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子を対象とする。
【背景技術】
【0002】
自己又は非自己細胞の移植による細胞治療は、今日、本質的に血液生物学(hematobiologie)で開発されているが、幹細胞及びそれらを筋肉から中枢神経系までの、大部分の組織中で識別することに関して得られた知識のために、他の専門に応用されるべき主要な治療ツールを構成している。サイトカイン及び成長因子の増大する識別及び特徴付けにより、これらの細胞の増殖及び分化を、試験管内及び/又は生体内で制御すること、及びそれらの組織環境(免疫拒絶現象、血管形成)を調節することの可能性を検討できるようになる。これらの細胞生物学の前進にもかかわらず、細胞移植の臨床学的発達は現在のところ、採集、保存、形質転換及び投与手順、又は(同種及び異種移植での)免疫拒絶、更には宿主組織中での組み込み欠如による、非特異的死亡率(壊死又はアポトーシスによる細胞死)に関連し得る、埋め込まれた細胞の低い生存率を特に理由として、限られたままである。
【0003】
この細胞死亡率を減少させるために、細胞が付着し、従って輸送体又は「マイクロキャリア」として役立つ非生分解性マイクロビード(microbilles)の使用が提案された。肝細胞の生存及び働きは、これらの細胞が、ガラス又はデキストラン(Cytodex(登録商標))のマイクロビードに付着して移植された時に、例えば改善された(デメトリウ(Demetriou)ら、1986年;テ・ヴェルデ(Te Velde)ら、1992年)。この戦略は、マイクロカプセル化肝細胞によるよりも、興味深い結果を得ることを可能にした。より最近、これらの同種のマイクロビードが、ヌードマウスにおいて皮膚カバーを復元するために、ヒトケラチノサイトを培養し、かつ移植するために使用された(フォイクト(Voigt)ら、1999年)。このアプローチは、パーキンソン病のマウスモデル中に神経クロム親和細胞又はドーパミン作動性胚性細胞を移植するためにも使用された。このモデルにおいて、線条体中に移植された細胞の生存率は、細胞がガラス又はデキストラン微小粒子に予め付着される時に非常に増加し、かつ動物の行動改善を可能にする(チャースキ(Cherskey)ら、1996年;サポータ(Saporta)ら、1997年、ボーロンガン(Borlongan)ら、1998年)。同様に、デキストランマイクロビードに付着されたヒト胎児細胞が、免疫抑制処理なしに少なくとも3ヶ月生存し、他方で微小粒子なしではこれらの細胞が急速に拒絶されることが観察された(サポータ(Saporta)ら、1997年)。
【0004】
より最近の、移植細胞の生存率を増大させることを可能にする、もう一つのアプローチは、成長因子の、移植と組み合わせた投与である。細胞の増殖、分化、活性化及び生存率に作用し得るこれらのタンパク質は、細胞移植の主要な提供物を構成する。ヒト組み換え成長因子を使うことは、今や可能であるが、これらのタンパク質が短い半減期を有し、かつある種の生物学的障壁をうまく横切らないので、その投与は困難さを示している。その上、それらは望ましくない副作用の効果の原因となり得る多面作用を有する。現在開発された投与方法のいずれも、完全に満足のゆくものでなく、かつ臨床に急速に応用できない。
【0005】
提案された第1の投与方法の一つは、成長因子を含む懸濁液中に細胞を移植することからなった。このアプローチは簡単であるとしても、細胞に長期間作用することを可能にしない。第2の投与方法は、選択された成長因子を生成するために識別された組織を同時移植することからなり、例えば末梢神経−クロム親和細胞同時移植(ダテ(Date)ら、1996年)、又は肝細胞−ランゲルハンス島同時移植(クネーザー(Kneser)ら、1999年)である。これらの同時移植の時折限られる生存率、及び成長因子の分量を制御することが不可能であることは、この戦略を著しく制限する。分子生物学の進歩は、成長因子を生成し、かつ同時移植で、又はいわゆる移植片として使用され得る遺伝子操作細胞を得ることを今や可能にしている(ムネー(Menei)ら、1998年;ウッド(Wood)及びプライアー(Prior)、2001年)。しかしながら、このアプローチは、倫理的問題、生物学的危険、及び放出分量の制御によって制限されたままである。このように、神経内分泌細胞PC12(ムネー(Menei)ら、1989年;ドゥオー(Dehaut)ら、1993年)、又は正常なシュワン、若しくは神経栄養因子を生成するために遺伝子操作された細胞(モントゥロ・ムネー(Montero−Menei)ら、1992年;ムネー(Menei)ら、1998年)のような神経細胞の移植が報告された。
【0006】
持続して、かつ制御されて向神経活性分子を放出する生分解性微小粒子が、同様に記載された(ムネー(Menei)ら、1997年;ブノワ(Benoit)ら、1999年)。これらのマイクロスフェアは、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)タイプのバイオポリマーから構成される。それらは、神経組織による生分解性であり、かつ数ヶ月で完全に分解される(ムネー(Menei)ら、1993年;1994年b;ヴェジエ(Veziers)ら、2000年)。それらの数十ミクロンの大きさは、細胞埋め込みと同じ微量注射器を使用して、薬理学的標的のレベルで、脳内での定位埋め込みを可能にする(ムネー(Menei)ら、1994年a)。それらは、脳腫瘍の組織内化学療法のための第I相臨床試験で成功裡に使用された(ムネー(Menei)ら、1999年)。
【0007】
タンパク質を放出するマイクロスフェア、特に成長因子及びサイトカインも、同様に開発された。「神経成長因子」(NGF)は、以前に特徴を有する中で、興味深い物質である。このように、少なくとも2ヶ月間、NGFを放出し得るマイクロスフェアが記載された(ペアン(Pean)ら、1998年;ペアン(Pean)ら、1999年)。その治療的有用性は、神経変性病の2匹の動物モデル:アルツハイマー病のマウスモデル(ペアン(Pean)ら、2000年)及びハンチントン舞踏病のマウスモデル(ムネー(Menei)ら、2000年)に対して証明された。
【0008】
腫瘍の範囲において、腫瘍内移植後の免疫刺激サイトカインを放出することが可能なPLGAのマイクロスフェアが作成された(マララッド(Mullerad)ら、2000年;ペティット(Pettit)ら、1997年)。抗腫瘍ワクチンの範囲内でサイトカインを放出するための、生分解性マイクロスフェアの使用は、このようにして提案された(ゴランベック(Golumbek)ら、1993年)が、この研究において、マイクロスフェアは、注射直前に細胞に単に混合される。同様に、細菌性抗原又は膜小胞で被覆されたマイクロスフェアで構成されるワクチンの調製は、すでに提案されたが、マイクロスフェアは、免疫刺激分子を放出できなかった(メッシャー(Mescher)及びロジャーズ(Rogers)、1996年、メッシャー(Mesher)及びサヴェリエヴァ(Savelieva)、1997年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、細胞治療の細胞移植又は予防接種のために、同じ微小粒子のレベルで、細胞(又は細胞分画)、及び成長因子又はサイトカインのような、細胞に対する作用物質の組み合わせを今、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らの能力により、成長因子を持続して、かつ制御されて放出する、以下で「MPA」とも指し示す、薬理活性マイクロキャリアを開発することができた。直径数十ミクロンのこれらの微小粒子は、ポリマーの固有の特性、又は生物活性であり得るコーティングのために、細胞又は細胞断片の付着を可能にする生分解性かつ生体適合性ポリマーから構成される。MPAは、生物学的危険を有さず、かつ以下の理由で注目すべきである:
−それらは、細胞(又はその断片)の培養用担体として役立ち得る。移植する細胞の微小粒子に対する好ましい付着により、それらを採集するために、明白な、衛生上の安全の理由で勧められない動物由来のタンパク質分解酵素を使用せずに、それらの調製、更にはそれらの試験管内形質転換が可能になる。
−それらは、移植細胞(又は細胞分画)への担体として役立ち、かつ埋め込み後に毒性なしに分解し得、移植細胞(又はその断片)の組み込みに干渉しない。
−それらは、プログラムされた期間に、かつ一定の分量で1つ又は幾つかの成長因子又はサイトカインを放出し得る。
−それらは、移植細胞の生存率及び分化を促進し、その微小環境、並びに宿主組織中へのそれらの組み込みを変更し得る。
【0011】
従って、本発明は、生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子であって、その表面に目的とする細胞又はその断片を含むこと、及び微小粒子の埋め込みの際に前記細胞又はその環境に対して少なくとも1つの作用物質の分子を含み、前記分子は、微小粒子によって、持続して、かつ制御されて放出されることを特徴とする微小粒子を対象とする。
【0012】
本発明は、少なくとも1つの作用物質の分子が、表面にあるか、かつ/又は微小粒子中に取り込まれるかに応じて、幾つかの実施態様を可能にする。
【0013】
活性分子の取り込みは、カプセル化プロセスの際に、及び/又は粒子形成後に行われ得る。操作条件に応じて、マトリックスは、多かれ少なかれ球状の形状を有し、多かれ少なかれ多孔質であり得る。
【0014】
微小粒子は、生体適合性かつ生分解性ポリマー又はコポリマーから構成される。かかるポリマー又はコポリマーは、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、例えばポリラクチド、ポリラクチドco−グリコリド、ポリエステル、例えばポリε−カプロラクトン(poly ε−coprolactones)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスホゼン)(poly(phosphozenes))、PLGA及びそれらの混合物を含む群から例えば選択される。本発明の好適な実施態様では、ポリマーはポリラクチドから選択される。
【0015】
微小粒子は、1〜500μm、かつ好適には10〜500μmの直径を有する。実際、MPAは、付着される細胞に応じて微小粒子の大きさを適応させ得るという利点を有する。
【0016】
微小粒子に対する細胞の付着は、ポリマーの固有の特質によって、又は細胞の付着を可能にし、かつ生物活性であり得る化合物又は化合物の混合物によるコーティングによって可能にされる。このようにして、本発明は、分子に対してRGD配列又はリジンが移植される、その物理化学特性によって細胞の付着を可能にする合成ポリマー、又は合成コポリマーの使用を検討する(ヴァラニ(Varani)ら、1993年)。細胞の付着を可能にする微小粒子のコーティング化合物の例として、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジン、ポリオルニチン、ポリエチレンアミン、又はその他のあらゆる合成、又は細胞外マトリックスに属さない分子、例えばフィブロネクチン様、又はそれらの混合物を含む群から選択されたものを挙げることができる。
【0017】
これらの微小粒子は、細胞、又は移植の際のこれらの細胞の環境に対する、少なくとも1つの作用物質の分子を含む。これらの分子のカプセル化方法は、多様であり、二重乳剤による方法、又はその他のあらゆる物理化学的、機械的又は化学的方法を挙げることができる。微小粒子表面に前記分子を固定するように、前記分子により微小粒子を簡単に吸収することであっても良い。微小粒子は、この物質の分子を持続して、かつ制御されて放出する。
【0018】
本発明の第1の実施形状によれば、MPAは、組織修復又は遺伝子導入のための細胞治療に有用な医薬組成物の調製に有用である。
【0019】
微小粒子表面に固定された目的とする細胞は、所望の移植片のタイプに応じて多様であり得、例えば成人自己細胞、胚性細胞、形質転換された、又はされない細胞系統、又は幹細胞であっても良い。これらの細胞は、細胞治療を必要とする様々な疾患に使用され得る。例えば、肝細胞及びランゲルハンス島移植が当てはまる。神経移植の場合、ドーパミンを分泌し、かつNGFのために「交感神経様」ニューロンに分化することが可能な細胞系統PC12のことであっても良い。例として、肝臓、心筋層、中枢神経系の修復のための細胞移植、糖尿病治療のためのランゲルハンス島、血友病における骨髄細胞、成人細胞、胚性細胞、形質転換された、又はされない細胞系統、幹細胞、遺伝子操作細胞、欠損組み換えウイルスを、それらの複製のために生成する細胞、肝細胞、ランゲルハンス島、神経細胞、筋細胞、造血細胞、骨細胞の移植を更に挙げることができる。従って、隣接宿主細胞を感染させる、欠損組み換えウイルスをそれらの複製のために生成する細胞の、導入遺伝子を含む細胞のように、生体内の遺伝子導入を可能にする細胞のことであっても良い。これらの細胞は、多くの場合動物系統から生じ、かつ異種免疫反応は、それらの生存、及びそれ故にそれらの機能を長期間妨げる。免疫調節剤及び/又はこれらの細胞の生存を促進する因子を放出するMPAの使用は、期間中にその機能を長引かせることを可能にする。逆に、MPAは、輸送された細胞の毒性分子を選択した時間に放出することができ、このようにしてその死及び除去をプログラムする。
【0020】
取り込まれた、又はMPA表面の物質の分子は、その場合好適には、成長因子、サイトカイン、ホルモン、輸送細胞に対する作用又は組織環境のために知られている細胞外マトリックス又は付着分子である。例として、成長因子、サイトカイン、免疫調節物質又は細胞分化に作用する因子、特にニュートロフィン、例えばNGF、BNDF、NT−3等、TGFβ、GDNFファミリー、FGF、EGF、PDGF、インターロイキン例えばIl−1、Il−2、ケモカイン、レチノイン酸、エリスロポイエチン等、又はそれらの混合物を含む群から選択されるものが挙げられる。
【0021】
単独の、又は細胞を付着するためのコーティング化合物と組み合わされた微小粒子により放出される分子は、細胞の生存、その機能を促進するか、又は幹細胞の分化を一定の表現型に向ける。それらは、免疫反応及び拒絶を減少させて、又は血管形成を増加させ、組み込みを促進して、組織環境を変更することもできる。これらの分子は、これらの分子に応答するプロモーターの制御下にありかつ、遺伝子操作細胞中に存在する遺伝子の発現を制御することに役立つことさえも可能である。
【0022】
従って本発明は、組織修復又は遺伝子導入のための医薬品組成物を調製するための、生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子の使用であって、前記微小粒子は、その表面に目的とする細胞を含み、かつ微小粒子の埋め込みの際に前記細胞又はその環境に対して少なくとも1つの作用物質の分子を含み、前記分子は、微小粒子によって、持続して、かつ制御されて放出される使用も対象とする。
【0023】
本発明の第2の実施形状によれば、MPAは、ワクチン調製、及び特には抗腫瘍予防接種にも有用である。がん治療におけるこの新規アプローチは、抗原源として患者の腫瘍の初代培養(primoculture)から得られる自己腫瘍細胞を使用する。これらの細胞は、炎症誘発性サイトカインを放出するために遺伝子操作され得る。MPAは、手順を引き延ばすトランスフェクション及び選択段階を通らずに、この役割を果たすことができる。
【0024】
しかし、MPAの特殊な有用性は、その表面特性により、細胞だけでなく、好ましくは細胞質膜又はタンパク質抽出物で被覆された細胞断片も、又はmRNA若しくはDNAも輸送することも可能であることである。本発明は、かかる断片の例として、腫瘍の初代培養から得られるアポトーシス体、エキソソーム又は膜小胞を検討する。アポトーシス体は、酪酸ナトリウムの作用、細胞の熱処理とそれに続く紫外線Bの放射によって容易に得られる。膜小胞は、細胞断片化、次に二相系中での遠心分離による分離によって得られる。アポトーシス体、又は膜小胞の有用性は、腫瘍試料から多量に生成され得ることであり、他方で自己細胞は、治療を著しく遅らせる培養及び膨張段階を必要とする。
【0025】
この予防接種のための応用において、MPAは、樹状細胞の作用及びT抗腫瘍反応を刺激する、1つ又は幾つかの炎症誘発性サイトカイン又はアジュバントの分子をその表面に含むか、取り込む。かかる物質の例として、フロイントアジュバント、GM−CSF、IL12、IL4又はIL18を含む群から選択されるものを挙げることができる。
【0026】
ワクチンを調製するためのMPAの有用性は、その免疫原性質が、膜抗原及びサイトカインの持続する放出の組み合わせだけでなく、微小粒子系に対する抗原の提示からも生じるという意味において注目すべきである。これは、樹状細胞による抗原認識のための理想的な提示方法である。この非特異的免疫刺激又は微小粒子のアジュバントの役割は、久しい以前から証明されている(ナカオカ(Nakaoka)ら、1995年、シャイヒャー(Scheicher)ら、1995年a、1995年b、ヴェンカタプラサド(Venkataprasad)ら、1999年)。
【0027】
従って本発明は、ワクチン、特には抗腫瘍医薬品組成物を調製するための、生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子の使用であって、前記微小粒子は、その表面に目的とする細胞又はその断片を含み、かつ微小粒子の埋め込みの際に前記細胞又はその環境に対して少なくとも1つの作用物質の分子を含み、前記分子は、微小粒子によって、持続して、かつ制御されて放出される使用も対象とする。
【0028】
本発明のその他の利点及び特徴は、添付図面を参照する、神経移植の分野でのMPAの調製及び使用に関する、これに続く例から現れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のMPAの略図である。
【図2A】光学顕微鏡によって観察された、MPAに付着した細胞PC12を示す。
【図2B】走査型電子顕微鏡によって観察された、MPAに付着した細胞PC12を示す。
【図3】(NGFを放出する)MPAとの細胞PC12、(NGFを放出しない)白色微小粒子との細胞PC12、細胞PC12単独の埋め込み前及び後の、又は専ら培地の注射後の様々なグループのラットのアンフェタミンによって誘発される回転行動を表すヒストグラムである。
【図4】本発明による抗腫瘍予防接種用のMPAの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施例1:細胞移植用のMPAの一般的な提示
【0031】
以下の実施例は、神経移植(中枢神経系内への神経細胞の移植)の分野に関する。直径60μmの生分解性かつ生体適合性MPAが、調製された。それらは、PLGAから構成され、かつ合成付着分子(ポリ−D−リジン及び「フィブロネクチン様」)の薄層でコーティングされ、かつ連続して(少なくとも2週間)神経栄養因子、NGFを放出する。ドーパミンを分泌し、かつこの因子の影響下で「交感神経様」ニューロンに分化することが可能な、細胞系統PC12のようなNGFに応答する細胞が使用された。これらMPAの有効性は、パーキンソン病の動物モデルを使用して、生体内で成功裡に評価された。
【0032】
神経移植は、本質的にパーキンソン病の範囲で、80年代に臨床医学でスタートした(ムネー(Menei)ら、1991年a;1991年b)。それは、臨床研究の形で現在続けられ、かつ移植する細胞(胚性細胞)の入手可能性、及び埋め込み後のこれらの細胞の低い生存率(5〜10%)によって本質的に制限されたままである。最近の研究は、大部分のニューロンは、おそらく栄養担体、ニューロン接続の欠如、及び限定された血管新生のために、移植後の第1週で死ぬことを示している(エムガード(Emgard)ら、1999年;マハリク(Mahalik)ら、1994年;ザワダ(Zawada)ら、1998年)。移植細胞と並行して投与された神経栄養因子が、その生存率を改良し、その分化及びシナプス発達にも作用し、このようにしてその最良の組み込みに役立つことが証明された(マホーニー(Mahoney)ら、1999年;ソーター(Sautter)ら、1998年;ユーレック(Yurek)ら、1996年)。これらの因子は、炎症及び細胞反応を変更して、移植細胞の環境にも有利に作用することができる(ウェイ(Wei)ら、1999年)。
【0033】
1)成長因子の選択
【0034】
NGFが、神経移植の範囲で幾つかの有用性を有する栄養因子であるので、第1段階で選択された。それは、その神経栄養作用に加えて、移植細胞の早死率の原因である興奮毒性から非特異的に保護することができる(ストレイボス(Strijbos)及びロスウェル(Rothwell)、1995年;カールソン(Carlson)ら、1999年)。更にNGPは、移植片拒絶の範囲で、潜在的な有用性を有する。それは、拒絶を妨げること、又は局所「免疫寛容」を確立することを可能にする、中枢神経系でのT細胞の活性化のための必須免疫分子の、小グリア細胞に対する発現を減少させる(ノイマン(Neumann)ら、1998年;ウェイ(Wei)及びジョナカイト(Jonakait)、1999年、アロワジ(Aloisi)ら、2000年)
【0035】
2)細胞の選択
【0036】
副腎髄質のクロム親和細胞は、伝統的にパーキンソン病の範囲で細胞移植に使用された。従って、培養することがかなり簡単である系統PC12の細胞が使用された。実際、これらの細胞は,ドーパミンを合成し、かつ放出する。更に、NGFの作用で、それらは、増殖することをやめ、かつ「交感神経様」ニューロンに分化する。細胞PC12は、天然の付着特性を有さず、かつ付着を促進する分子で被覆された表面にしか付着しないので、「マイクロキャリア」生成の条件を決定するための良好なモデルも構成する。
【0037】
胚性細胞移植の臨床的発達は、倫理的問題によって制限されたままである。従って、神経幹細胞又は骨髄の間葉幹細胞(CSM)のような他の細胞源を今からすでに検討せねばならない。これらは、ヒトにおいて容易に採取可能であり、骨芽細胞、軟骨細胞、ミオサイト、脂肪細胞又は神経幹細胞に、培養条件に従って、試験管内で分化することができる。このように、塩基性FGFによって神経幹細胞に分化したCSMは、NGFの高親和性受容体(trkA)を発現させ、本発明の範囲内で使用され得る。
【0038】
3)MPAの選択
【0039】
この応用での最適な大きさは、約60μmである。実際、小さい寸法は、許容できる数の細胞の付着を可能にするために不十分な面積を有する。しかしながら、マイクロスフェアは、過度の困難さなしに吸収され、かつ針を通して容易に投与され得るために、過度に大きな直径を有するべきでない。
【0040】
細胞付着に関して、PLGAの微小粒子は、「フィブロネクチン様」及びポリ−D−リジンによってコーティングされた。合成かつ動物由来でない分子の使用は、将来の臨床応用を検討し得るために必要不可欠である。これらのコーティングされたマイクロスフェアは、少なくとも2週間、NGFの連続放出を、試験管内で可能にする。薬理活性「マイクロキャリア」の効果を生体内で研究するために、それらは、神経毒による完全ドーパミン作動性除神経後に、ラットの線状体に埋め込まれた(パーキンソン病ラット)。埋め込み後、細胞PC12は、(作用物質のない)白色、又はNGFを放出する微小粒子に付着されたままになる。NGFを放出する「マイクロキャリア」によって治療された動物に対して、PC12は、分化し、かつおそらくNGF放出に応答して、伸長部分を有した。この分化は、行動効果(回転テスト)を伴った。
【0041】
細胞PC12は、この研究で、MPAを開発するためにのみ使用されたが、他の細胞も用いられ得る。胚由来の細胞移植は、神経変性病の動物モデルにおいて非常に研究された。その上、これらの研究は、パーキンソン病及びハンチントン舞踏病での臨床試験の実施に至らせた。しかしながら、移植細胞の高い死亡率に結び付いた、これらの移植のささやかな効果は、方法論を再考するに至らせる(リンドヴァル(Lindvall)、1997年)。パーキンソン病及びドーパミン作動性胚性ニューロンの移植の範囲で、研究により、これらの細胞をGDNFに露出すること(テーンクヴィスト(Tornqvist)ら、2000年)、又は「マイクロキャリア」の使用(サポータ(Saporta)ら、1997年)が、その生存率を増加させることが示された。GDNFを放出する微小粒子も、ドーパミン作動性胚性ニューロンの移植を促進し、かつラットにおけるその有効性を研究するために、調製され得る。
【0042】
実施例2:MPA PC12/NGPの調製
【0043】
1)微小粒子の調製
【0044】
微小粒子は、二重乳剤(H/L/H)溶剤蒸発/抽出方法によって得られる。
【0045】
水相は、60μlのクエン酸緩衝液(16mM、pH6)、2.5mgのHSA、(又は界面活性力を有するその他の分子)90μlのPEG400及び100μgのNGFから構成される。50mg〜150mgのPLGA37.5/25(ポリD,L−ラクチド−co−グリコリド、Mw 21000Da、I=1.7)又はその他の生分解性かつ生体適合性ポリマーが、75%のジクロロメタン及び25%のアセトンから構成される2mlの有機溶液中に溶解する。初乳剤は、0〜4℃で音波処理(15s、5〜6W)によるこれら2つの相から作られる。この初乳剤は、10%(P/V)のNaClを含み、0〜2%のジクロロメタンを含む、30〜150mlのポリビニルアルコール溶液(0.8〜4.5%、4〜8℃)に機械攪拌下で(200tpm)添加される。攪拌は、1〜7分間維持され、次に二次乳剤は、磁気攪拌下で(25〜50min)10%のNaClを有する400mlの水溶液中に注入される。抽出水相は、二次乳剤に部分的に添加され得る。次に微小粒子は、ろ過され、(0.45μm、HVLP、ミリポア)、100mlの蒸留水で5回洗浄され、次に凍結乾燥され、かつ+4℃で保存される。
【0046】
カプセル化の収率は、約85%であるが、製造条件により97%に達し得る(ペアン(Pean)ら、1998年)。
【0047】
2)微小粒子のコーティング
【0048】
ポリ−D−リジン(12μg/mL)との「フィブロネクチン様」(16μg/mL)の組み合わせによる微小粒子のコーティングは、細胞PC12の付着性及び最適な分化を有することを可能にする条件を構成する。
【0049】
微小粒子のコーティング条件(攪拌速度及び時間)は、「フィブロネクチン様」及びポリ−D−リジンの存在下で、マイクロスフェア懸濁液の攪拌によって完成された。様々な試験の後、我々は、毎分15回転(tpm)の攪拌速度及び37℃で2時間のコーティング時間を選択した。
【0050】
3)微小粒子に対する細胞の付着
【0051】
「マイクロキャリア」に対する細胞の付着条件を完成させるために、微小粒子の存在下での様々な細胞攪拌速度及び時間が、テストされた。従って細胞PC12の付着は、5%のCOを有するインキュベータ中、37℃、4時間、3tpmでの攪拌に対して最大であった。
【0052】
微小粒子に付着した細胞の細胞単独の分離テストは、10秒間、135gで微小粒子/細胞懸濁液を遠心分離するに至らせた。この処理、並びに移植用に使用される、10μLのハミルトン注射器中をペレット(culot)が通過することは、表面に細胞を有する微小粒子の数の減少を生じさせない。これらの条件において、かつ微小粒子/細胞懸濁液の顕微鏡での計算後、表面に付着細胞を有する約90%の微小粒子を得ることができた。平均して、「マイクロキャリア」当たり8から10の細胞が見出される。逆に、マイクロスフェアがコーティングされていない時、その中の5%のみが、表面に密着した細胞を有する。従って、フィブロネクチン様及びポリ−D−リジンの組み合わせによる微小粒子のコーティングは、そこに付着する細胞にとっては、必要不可欠である。この付着は、走査型電子顕微鏡の写真によって確認された(図2)。
【0053】
4)試験管内での特徴付け
【0054】
コーティングは、原子間力顕微鏡を特徴とし、かつこのコーティングが、粒子に対して均質に堆積し、かつその表面の多孔性を減少させることを示している。前述のコーティング条件で、コーティングの厚さは、20nmである。凍結乾燥後、コーティングは元のままに留まり、かつ試験管内の付着テストで、その付着及び分化効率を維持する。
【0055】
前述の付着条件で、1.5×10の細胞が、MPAの存在下に置かれる時、平均して5×10の細胞が、各MPAに対して付着する。
【0056】
実施例3:動物モデルに対するMPA NGF/PC12の結果
【0057】
MPAは、NGFを持続して、かつ制御されて放出する。実際、試験管内の放出の第1の動態結果は、カプセル化された200μgのNGFに関して、15%が、最初の2週間に連続して放出されることを示している。このように、0.5mgのMPAの埋め込みは、1日当たり5〜10ngのNGFの放出に至らせ、これは、細胞に対するNGFの作用に必要な量と一致する。
【0058】
「パーキンソン病ラット」の除神経線条体中への埋め込み後、細胞PC12は、微小粒子に対して良好に付着されたままでいる。輸送された細胞は、チロシンヒドロキシラーゼをなおも発現させ、かつそれ故にドーパミンを生成することが可能である。埋め込み後2週間で、微小粒子は、なおも分解されておらず、かつまだ細胞への担体として役立っている。実際、それらは、まだ球状であり、かつ液胞化の孔がなく、かなり平滑な外観を有している。一般的に、NGFを有する又は有さない微小粒子に付着した細胞は、線条体中で単独に移植された細胞に対して分化した外観を有する。これらの細胞を高倍率で観察すると、NGFを放出する微小粒子に対して、伸長部分は、より長く、細胞体の大きさのおよそ2〜3倍になることに気が付く(図2B)。行動レベルでは、アンフェタミンによって誘発される回転テストの第1の結果は、NGFを放出する微小粒子により細胞を受け取ったラットのみが、改善されたことを示している(図3)。結果の中で、NGFを放出しない微小粒子に付着した細胞PC12は、増殖することを停止したように見える。
【0059】
動物モデルに対する結果
【0060】
「パーキンソン病」ラットの線状体中へのマイクロスフェアの埋め込みの2週間後に、NGFの活性部位を認識する抗体による免疫マーキングは、NGFが生物活性形状で、十分に放出されることを示している。2週間で、NGFはMPA中でなおも検出され、かつ周囲全体に、かつ少なくとも40_mの距離に対して均質的に放出される。NGFを放出するPAMの周囲の幾つかの場所で、神経突起網が同じく観察され、細胞PC12分化をこのように刺激する成長因子の放出を十分に証明している。
【0061】
他の細胞系統のように細胞PC12は、又は幹細胞さえも、埋め込み後に腫瘍を形成し得る。増殖マーカーは、PAMに付着した細胞PC12の移植において、増殖する細胞数の減少があることを示している。この効果は、NGFを放出するPAMにより、更に明らかである。
【0062】
アポトーシスによる細胞死も、NGFを放出するか、放出しないPAMに付着した細胞PC12の移植において減少した。
【0063】
行動レベルで、アンフェタミンによって誘発される回転テストは、NGFを放出するPAMにより細胞を受けたラットのみが、改善され、このモデルでのPAMの有効性を確認している。
【0064】
実施例4:ドーパミン作動性胚性(E−dopa)細胞を輸送するGDNFを放出するMPAの調製
【0065】
最低1時間、毎分6回転の回転周期で、細胞による、ポリ−D−リジンによってコーティングされたMPAのインキュベーション後に、E−dopa細胞は、70%〜90%のMPAの表面に付着する。付着した細胞の数は、かなり可変であり、MPA当たり5〜30位の細胞である。
【0066】
実施例5:抗腫瘍予防接種に関するMPAの一般的な提示
【0067】
抗腫瘍予防接種での我々の臨床実験並びに文献中で公にされた結果は、腫瘍細胞の培養は、このタイプのアプローチにおいて、限定的なステップであることを確認している。収率は低く、かつ必要な細胞数を得るための期間は、多くの場合腫瘍の進行速度と相容れない。自己細胞は現在、試験管内樹状細胞の装填用であろうと、皮下予防接種用であろうと、腫瘍特異抗原(AST)の最も適当な源のままであり、多数の腫瘍抗原及び樹状細胞へのアジュバントを有すること可能な、わずかな細胞から急速に調製され得る系を開発することは、有用である。
【0068】
我々はそのために、薬理活性マイクロキャリア(MPA)の概念に立脚し、INSERM ERIT−M 0104中で開発された生物人工粒子を作成する。(ポリ(乳酸−co−グリコール酸)又はPLGAのように)生体適合性かつ生分解性コポリマーから構成され、(GM−CSF、IL2、IL12又はIL18のような)炎症誘発性サイトカインのようにアジュバントを持続して、かつ制御されて放出し得る、直径(約)5〜30μmのマイクロスフェアのことである。その表面特性(合成細胞付着分子によるストリッピング)により、これらの微小粒子は、その表面に自己腫瘍細胞(膜小胞、アポトーシス体、エキソソーム、タンパク質抽出物、mRNA、DNA)から調製された腫瘍抗原を担持し得る。
【0069】
表面に腫瘍抗原を担持し、かつサイトカインのようにアジュバントを制御されて放出するこれらのMPAは:
−(血液幹細胞から生じた樹状細胞による予防接種の範囲で)試験管内で樹状細胞と接触させられるためであるか、
−皮下、真皮内、又は筋肉内から患者の直接投与されるためである。
【0070】
MPAの免疫原性質は、腫瘍抗原及びサイトカインの持続した放出の組み合わせのみにによるだけでなく、微小粒子系に対する抗原の提示にもよる。これは、樹状細胞による抗原の認識に理想的な提示方法である。この非特異的免疫刺激、又は微小粒子のアジュバントの役割は、久しい以前から証明されている、(メッシャー(Mescher)及びロジャーズ(Rogers)、1996年、メッシャー(Mesher)及びサヴェリエヴァ(Savelieva)、1997年;ナカオカ(Nakaoka)ら、1995年、ロジャーズ(Rogers)及びメッシャー(Mescher)1992年、シャイヒャー(Scheicher)ら、1995年a、1995年b、ヴェンカタプラサド(Venkataprasad)ら、1999年)。
【0071】
PLGAのマイクロスフェアは、免疫刺激及び/又は抗腫瘍サイトカインを放出し得るとしてすでに記載され(ゴランベック(Golumbek)ら、1993年;マララッド(Mullerad)ら、2000年;ペティット(Pettit)ら、1997年)、かつ我々は、抗腫瘍剤又は組み換えタンパク質を放出するマイクロスフェアを開発する、実験室における我々の能力をすでに示した(ムネー(Menei)ら、1996年、1999年、2000年;ペアン(Pean)ら、2000年)。
【0072】
実施例6:抗膠腫予防接種において血漿膜を担持するMPA
【0073】
(活性化サイトカイン、GM−CSF無しで、又は有りで)使用されたPLGAのマイクロスフェアは、前記のような溶剤蒸発技術によって製造された(ムネー(Menei)ら、1993年、ムネー(Menei)ら、96年;ペアン(Pean)ら、2000年)。ろ過により、小さい寸法(直径5〜30μm)のマイクロスフェアを選択することが可能になった。
【0074】
細胞GS−9Lの外膜の精製は、30ゲージの注射器中で、約50回の通過を行って低張性緩衝液(KCl 42mM、Hepes 10mM pH7、MgCl 4.5mM及び1%のプロテアーゼ抑制因子)中に、4℃で、15分間、1.5×10の細胞をインキュベートして実施された。このように破断した細胞は、ペレットに集められた非溶解細胞及び核から、上清中の膜を分離するために遠心分離された(250g;10分;4℃)。その場合、膜は超遠心分離ステップ(100000g;90分;4℃)後に回収された。それらは、次に48時間前に、安定したポリエチレングリコール(PEG8000)/デキストランT500二相系中に置かれ、遠心分離される(3000g;15分;4℃)。外膜は、その場合、2つの相の親和力によって二相系の中間相に配置される。回収後、0.25Mのショ糖、1MのトリスHCl緩衝液中で2回の洗浄が行われた(100000g;30分;4℃)。膜は、その使用まで−80℃で、この同じ緩衝液中で保存された。テストされた吸着及び作成手順の中で、最も有効であるように見えるものは、pH6.8のトリス緩衝液中で予めのコーティングなしに膜及びマイクロスフェアを直面させている。その他のタンパク質分画、膜小胞、アポトーシス体及びエキソソームの最適吸着手順は、仕上げの最中である。これらの手順は、共焦点顕微鏡の膜マーカーの直接免疫蛍光法によるI125によるタンパク質分画の放射マーキング(radiomarquage)、次に吸着された構造の酵素力の分析によって有効にされる。
【0075】
PLGAのマイクロスフェアに対する細胞GS−9Lの外膜の吸着例:精製された外膜の調製は、膜小胞の凝集体の大きさを減少させるために30秒間音波処理を受けた。10μgの膜タンパク質当量が、その場合20000のPLGAマイクロスフェアの存在下に置かれる。集合を、4℃で一晩中、回転(60tpm)させた。回収された膜タンパク質の量を決定するために、ローリーテストを実施する分量決定が、行われた。(0.2〜1μg/μLの)BSAの基準範囲を使用して、試料のタンパク質濃度を計算することができた。精製開始時に(溶解の直後に)採取され、かつ細胞のタンパク質の集合を含む、初期アリコート(Ai)と呼ばれるアリコートは、7000〜10000μg/μLのタンパク質濃度を示した。それに反して、濃縮終了時には、200〜300μg/μLのタンパク質濃度が得られる。従って我々は、タンパク質全体の3%を回収した。
【0076】
単離タンパク質のプロフィールは、細胞溶解物の可溶性及び不溶性分画プロフィールの中間移動プロフィールを示すポリアクリルアミドのゲルに対する移動によって分析された。膜タンパク質を大部分含むのは、不溶性分画である。ウェスタンブロットによるFasリガンド(Fas−liguant)及び5’−ヌクレオチダーゼの特異活性の分量決定は、これらの膜タンパク質を濃縮する方向に向けられ、濃縮材料の膜の性質を示す。共焦点顕微鏡の膜マーカー(5’−ヌクレオチダーゼ、インテグリン、ICAM−1)の直接免疫蛍光法は、微小粒子に対する膜タンパク質の固定を確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性物質を担持する、生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子であって、その表面に目的とする細胞又はその断片を含むこと、及び微小粒子の埋め込みの際に前記細胞又はその環境に対して少なくとも1つの作用物質の分子を含み、前記分子は、微小粒子によって、持続して、かつ制御されて放出されることを特徴とする微小粒子。
【請求項2】
少なくとも1つの作用物質の分子が、表面にあり、かつ/又は微小粒子中に取り込まれることを特徴とする請求項1に記載の微小粒子。
【請求項3】
生体適合性かつ生分解性材料は、ポリマー又はコポリマーであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項4】
ポリマー又はコポリマーは、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、例えばポリラクチド、ポリラクチドco−グリコリド、ポリエステル、例えばポリε−カプロラクトン(poly ε−coprolactones)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスホゼン)(poly(phosphozenes))、PLGA及びそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項5】
約1〜500μm、かつ好適には10〜500μmの直径を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項6】
生体適合性かつ生分解性材料は、目的とする細胞又はその断片の付着を可能にするか、又は細胞の付着を可能にする化合物でコーティングされ、前記化合物は、その上前記細胞又はその断片に対して場合により活性であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項7】
微小粒子表面の、目的とする細胞は:成人細胞、胚性細胞、形質転換された、又はされない細胞系統、幹細胞、遺伝子操作細胞、欠損組み換えウイルスを、それらの複製のために生成する細胞、肝細胞、ランゲルハンス島、神経細胞、筋細胞、造血細胞、骨細胞を含む群から選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項8】
微小粒子中に取り込まれた分子は、免疫調節物質、細胞の生存を促進する因子、細胞の毒剤、免疫反応及び拒絶を減少させて、又は血管形成を増加させ、組み込みを促進して組織環境に作用する因子、遺伝子操作細胞中に存在する遺伝子の発現を制御する因子を含む群から選択される少なくとも1つの作用物質のそれであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項9】
微小粒子中に取り込まれた分子は、成長因子、ホルモン、サイトカインを含む群から選択される少なくとも1つの作用物質のそれであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項10】
微小粒子表面の目的とする細胞は、抗原源として患者の腫瘍の初代培養から得られる自己腫瘍細胞であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項11】
微小粒子表面の細胞断片は、腫瘍の初代培養から得られるアポトーシス体又は膜小胞であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項12】
微小粒子中に取り込まれる分子は、炎症誘発性サイトカイン又はアジュバントを含む群から選択される少なくとも1つの作用物質のそれであることを特徴とする請求項10又は11のいずれかに記載の微小粒子。
【請求項13】
組織修復又は遺伝子導入のための医薬品組成物を調製するための、生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子の使用であって、前記微小粒子は、その表面に目的とする細胞を含み、かつ微小粒子の埋め込みの際に前記細胞又はその環境に対して少なくとも1つの作用物質の分子を含み、前記分子は、微小粒子によって、持続して、かつ制御されて放出される使用。
【請求項14】
ワクチン、特には抗腫瘍医薬品組成物を調製するための、生体適合性かつ生分解性材料を主成分とする微小粒子の使用であって、前記微小粒子は、その表面に目的とする細胞又はその断片を含み、かつ微小粒子の埋め込みの際に前記細胞又はその環境に対して少なくとも1つの作用物質の分子を含み、前記分子は、微小粒子によって、持続して、かつ制御されて放出される使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−153143(P2011−153143A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40940(P2011−40940)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【分割の表示】特願2004−500842(P2004−500842)の分割
【原出願日】平成15年5月2日(2003.5.2)
【出願人】(502343425)
【氏名又は名称原語表記】INSERM
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac,F−75654 Paris Cedex 13,France
【Fターム(参考)】