説明

細胞壁結合セラミド様糖脂質による細菌ワクチンおよびその使用

本発明は、セラミド様糖脂質と物理的に結合された細菌細胞に関連する組成物および方法を目的とする。本発明は、細菌ワクチンで感染させた同じ細胞へのセラミド様糖脂質アジュバントの直接送達を可能にする。本発明の組成物および方法は疾患の予防および治療のために有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般には免疫学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
マイコバクテリウム(Mycobacterium)は哺乳動物において重篤な疾患、例えば、結核、ハンセン病、ライ病、結核に似た肺疾患、リンパ腺炎、皮膚疾患、または播種性疾患を引き起こすことが知られている。世界の人口の3分の1は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染しており、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)ワクチンが75年よりも長くにわたって利用可能であるにも関わらず、毎年2百万人が結核(TB)によって死亡する。Hoft DF, Lancet 372: 164-175 (2008)。結核は現在、世界中の感染症による死亡の原因として、HIV/AIDSに次ぐ第二位である。Young DB et al., Journal of Clinical Investigation 118: 1255-1265 (2008)。
【0003】
いくつかの試験が、結核菌感染の有効な制御にはMHCクラスIおよびクラスIIの両方により拘束されるT細胞が必要であることを示唆している。Mogues T et al., J Exp Med 193: 271-280 (2001)およびFlynn JL et al., Proc Natl Acad Sci USA 89: 12013-12017 (1992)。しかし、脂質-抗原提示分子であるCD1dが欠損しているマウスは、結核菌感染に対して野生型マウスよりも感受性が高いことはなく、CD1d拘束NKT細胞は防御免疫のために無条件に必要とされるわけではないことを示している。Behar SM et al., J Exp Med 189: 1973-1980 (1999)。ナチュラルキラーT(NKT)細胞はT細胞受容体およびNK細胞受容体の両方を発現するTリンパ球のサブセットであり、先天性免疫を適応免疫に橋渡しする役割を果たす。Kronenberg M and Gapin L, Nat Rev Immunol 2: 557-568 (2002)。活性化により、NKT細胞はリステリア菌(L. monocytogenes)、結核菌(M. tuberculosis)および大形リーシュマニア(Leishmania major)を含む、様々な病原体に対する早期および遅延免疫に対する顕著な影響を有しうる。Kronenberg (2002);Behar SM and Porcelli SA, Curr Top Microbiol Immunol 314: 215-250 (2007);Emoto M et al., Eur J Immunol 29: 650-659 (1999);Ishikawa H et al., Int Immunol 12: 1267-1274 (2000);およびRanson T et al., J Immunol 175: 1137-1144 (2005)。NKT細胞活性化はCD4およびCD8 T細胞応答の増強を引き起こし、樹状細胞の成熟を誘導することが報告されている。Nishimura T et al., Int Immunol 12: 987-994 (2000)およびSilk JD et al., J Clin Invest 114: 1800-1811 (2004)。
【0004】
MHC結合ペプチドを認識する通常のT細胞とは異なり、NKT細胞はMHCクラスI様タンパク質CD1dにより提示される脂質抗原に特異的である。CD1dにより提示されてNKT細胞を活性化しうる、自己由来および細菌由来糖脂質を含む、いくつかの糖脂質抗原がこれまでに同定されている。Tsuji M Cell Mol Life Sci 63: 1889-1898 (2006)。インバリアントなVα14-Jα18再構成を伴うT細胞受容体を有するNKT細胞(iNKT細胞)は、スフィンゴ糖脂質であるα-ガラクトシルセラミド(αGalCer)がCD1dによって提示されると、これに対する反応性を有する。Kronenberg M and Gapin L, Nat Rev Immunol 2: 557-568 (2002);Kronenberg M, Annu Rev Immunol 23: 877-900 (2005)。最近の試験は、プラスモディウム(Plasmodia)、ドノバン-リーシュマニア(Leishmania donovanii)、リステリア菌およびHIVに対するワクチンは、アジュバントとしてのαGalCerの同時投与によりiNKT細胞を活性化することで改善しうることを示している。Gonzalez-Aseguinolaza G et al., J Exp Med 195: 617-624 (2002);Dondji B et al., European Journal of Immunology 38: 706-719 (2008);Huang YX et al., Vaccine 26: 1807-1816 (2008);およびEnomoto N et al., FEMS Immunol Med Microbiol 51: 350-362 (2007)。
【0005】
治療薬として、αGalCerはマウスにおけるマラリア原虫量を減少させ、結核菌に感染したマウスの生存を延長することが明らかにされている。Gonzalez-Aseguinolaza G et al., Proc Natl Acad Sci USA 97: 8461-8466 (2000);Chackerian A et al., Infection and Immunity 70: 6302-6309 (2002)。したがって、CD1d拘束T細胞は最適な免疫のために無条件に必要とされるわけではないが、それらの特異的活性化は感染症に対する宿主の抵抗性を増強する。
【0006】
マウスにおけるαGalCerの単回注射は、血清中のサイトカインストームを誘導し、IFNγ、IL-12およびIL-4の分泌を引き起こす。Fujii S et al., Immunol Rev 220: 183-198 (2007)。CD1d拘束iNKT細胞のαGalCerによる刺激は、NK細胞、樹状細胞、B細胞、および通常のT細胞の急速な活性化も引き起こす。Nishimura T et al., Int Immunol 12: 987-994 (2000);Kitamura H et al., J Exp Med 189: 1121-1128 (1999);Fujii S et al., J Exp Med 198: 267-279 (2003)。iNKT細胞は大量のIFNγを産生し、この産生はCD40-CD40リガンド相互作用を通じてのiNKT細胞とDCとの間の直接の接触を必要とする。Nishimura T et al., Int Immunol 12: 987-994 (2000)。iNKT細胞によって産生されたIFNγは、マウス腫瘍モデルにおけるαGalCerの抗転移効果において重要な役割を有することが明らかにされている。Hayakawa Y et al., Eur J Immunol 31: 1720-1727 (2001);Smyth MJ et al., Blood 99: 1259-1266 (2002)。したがって、iNKT細胞の活性化は早期のサイトカイン環境に影響をおよぼすことにより適応免疫応答を調節しうることが提唱されている。
【0007】
最近、α-C-GalCerとして公知のαGalCerのC-グリコシド類縁体が、マウスにおいてαGalCerに比べて優れた抗腫瘍および抗マラリア活性を有する主なTh1偏向化合物として確立された。この化合物はマウスにおいて高いレベルのTh1サイトカインIL-12およびIFNγも誘導する。Schmieg J et al., Journal of Experimental Medicine 198: 1631-1641 (2003)。これら2つのサイトカインIL-12およびIFNγはマウスおよびヒトにおいてTBの制御のために必須であることが確立されている。Freidag BL et al., Infect Immun 68: 2948-2953 (2000)。
【0008】
結核に対するマウスモデルにおいて、BCGと併せてのアジュバントの使用についてはほとんど試験がなされていない。1つのそのような試験は、CpG ODNをBCGワクチン接種と共に用いた場合に、結核菌攻撃に対する防御の増強を報告した。Freidag BL et al., Infect Immun 68: 2948-2953 (2000)。様々な感染症に対するワクチンと併せてのαGalCerのアジュバント効果に対する初期の試験のほとんどは、そのアジュバント活性を利用するために、αGalCerのそれぞれのワクチンとの別々の同時投与を用いている。Gonzalez-Aseguinolaza G et al. (2002);Dondji B et al. (2008);Huang YX et al. (2008);およびEnomoto N et al. (2007)。したがって、細菌、例えば、マイコバクテリア抗原に対する免疫応答を増強するための有効な組成物およびワクチンがいまだに必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
本発明は、細菌細胞およびセラミド様糖脂質を含む改変細菌であって、セラミド様糖脂質が細菌細胞と物理的に結合された改変細菌を目的とする。さらなる態様において、セラミド様糖脂質はグリコシルセラミドもしくはα-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体を含む。
【0010】
一つの態様において、グリコシルセラミドまたはその類縁体は式Iを含む:

式中、R1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであるか;あるいはR1はC6-C27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)C6-C27アルカンもしくはアルケンはC5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されているか、または(ii)C6-C27アルカンもしくはアルケンは、C6-C27アルキルもしくはアルケニル鎖内に、C5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含み;
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数であり;
R4はα連結もしくはβ連結単糖であるか、またはR1が直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンである場合、R4は下記であり:

かつAはOまたは-CH2である。
【0011】
一つの態様において、α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体は式IIを含む:

式中
R1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであり;かつ
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数である。
【0012】
一つの態様において、α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体は式IIIを含む:

式中、RはHまたは-C(O)R1であり、ここでR1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであるか;あるいはR1はC6-C27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)C6-C27アルカンもしくはアルケンはC5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されているか、または(ii)C6-C27アルカンもしくはアルケンは、C6-C27アルキルもしくはアルケニル鎖内に、C5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含むか;またはR1は-(CH2)nR5であり、ここでnは0〜5の範囲の整数であり、かつR5は-C(O)OC2H5、置換されていてもよいC5-C15シクロアルカン、置換されていてもよい芳香環、もしくはアラルキルであり、かつ
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数である。
【0013】
一つの態様において、セラミド様糖脂質を細菌細胞の細胞壁に取り込む。さらなる態様において、細菌細胞はマイコバクテリア細胞、リステリア(Listeria)細胞、サルモネラ(Salmonella)細胞、エルシニア(Yersinia)細胞、フランシセラ(Francisella)細胞、およびレジオネラ(Legionella)細胞からなる群より選択される。もう一つの態様において、細菌細胞は生菌、不活化菌、または弱毒菌細胞である。
【0014】
一つの態様において、改変細菌は抗原に対する抗原特異的CD8 T細胞応答を増強する。さらなる態様において、抗原はマイコバクテリア抗原である。
【0015】
一つの態様において、改変細菌は異種抗原を発現する。さらなる態様において、異種抗原はウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、または腫瘍特異性抗原である。もう一つの態様において、異種抗原は免疫原性ペプチドである。
【0016】
一つの態様において、細菌細胞は組換え細菌細胞である。
【0017】
本発明は、改変細菌および薬学的担体を含む組成物も目的とする。一つの態様において、薬学的担体は食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、およびその組み合わせからなる群より選択される。もう一つの態様において、組成物はアジュバントをさらに含む。もう一つの態様において、組成物はワクチン組成物である。
【0018】
本発明は、動物の疾患の治療法または予防法であって、治療または予防を必要としている動物に改変細菌を投与する段階を含む方法も目的とする。一つの態様において、改変細菌を疾患の進行を変化させるのに十分な量で投与する。もう一つの態様において、改変細菌を動物において疾患に対する免疫応答を誘導するのに十分な量で投与する。
【0019】
一つの態様において、免疫応答をセラミド様糖脂質と結合していない細菌細胞によって生じた免疫応答に比べて増強または改変する。一つの態様において、疾患はウイルス疾患、細菌疾患、真菌疾患、寄生虫疾患、および増殖性疾患からなる群より選択される。さらなる態様において、疾患は結核、結核に似た肺疾患、リンパ腺炎、皮膚疾患、播種性疾患、腺ペスト、肺ペスト、野兎病、レジオネラ病、炭疽、腸チフス熱、パラチフス熱、食物伝染病、リステリア症、マラリア、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザ、肝炎(HAV、HBV、およびHCV)、および癌からなる群より選択される。
【0020】
本発明は、動物において抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、動物に改変細菌を投与する段階を含む方法も目的とする。一つの態様において、改変細菌を、動物の抗原特異的CD8 T細胞応答を増強する、またはナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性を増強するのに十分な量で投与する。もう一つの態様において、免疫応答は抗体応答を含む。もう一つの態様において、免疫応答はCD8 T細胞応答を含む。もう一つの態様において、免疫応答はCD8 T細胞応答および抗体応答を含む。
【0021】
本発明は、動物においてBCGに対するCD8 T細胞応答を調節する方法であって、動物に改変細菌の有効量を投与する段階を含む方法も目的とする。
【0022】
一つの態様において、改変細菌を、筋肉内、静脈内、気管内、鼻内、経皮、皮内、皮下、眼内、膣、直腸、腹腔内、腸内、吸入、または前記経路の複数の組み合わせからなる群より選択される経路により投与する。
【0023】
本発明は、改変細菌を含むキットも目的とする。一つの態様において、改変細菌は凍結乾燥されている。さらなる態様において、キットは改変細菌を投与するための手段を含む。
【0024】
本発明は、セラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体の作成法であって、(a)培地中でマイコバクテリア細胞を培養する段階、および(b)セラミド様糖脂質を培地に、該セラミド様糖脂質が該マイコバクテリア細胞の細胞壁に結合する条件下で加える段階を含む方法も目的とする。
【0025】
一つの態様において、本発明は、抗原に対するワクチンを産生する方法であって:(a)セラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体を単離する段階、および(b)(a)の単離した複合体に薬学的担体を加える段階を含む方法も目的とする。
【0026】
本発明のこれらおよび他の局面を以下にさらに詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、αGalCerのウシ結核菌(M. bovis)BCG細胞壁への安定な取り込みを示す図である。(A)CHCl3+CH3OH(2:1)、リン酸緩衝食塩水(PBS)+0.05%トゥイーン80、または0.05%チロキサポール中の14C-αGalCerの溶解度を示すグラフ。(B)0.05%チロキサポールを含む無タンパク質Middlebrooks 7H9培地中、異なる濃度の14C-αGalCer存在下で培養した、ウシ結核菌BCGへの14C-αGalCerの取り込みを示すグラフ。(C)0.05%チロキサポールを含む無タンパク質Middlebrooks 7H9培地中、14C-αGalCer存在下で培養した、ウシ結核菌BCGから抽出した細胞壁脂質の薄層クロマトグラフィバンド、レーン1:クロロホルム-メタノール(2:1)に直接溶解した14C-αGalCer。レーン2:ウシ結核菌BCGから抽出した14C-αGalCer。
【図2】図2は、インビトロでウシ結核菌BCGに結合したαGalCerは生物活性であることを示す図である。(A)BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGに感染させた骨髄由来樹状細胞(BMDC)と共にインキュベートした場合の、NKT細胞ハイブリドーマDN3A4-1.2の活性化後の24時間のIL-2産生を示す用量反応曲線。(B)および(C)BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCG感染BMDCによるマウス脾細胞の活性化後の24時間の(B)IFNγおよび(C)IL-4産生を示す用量反応曲線。(D)、(E)および(F)BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGに感染させた単球由来ヒト樹状細胞によるヒトiNKT細胞クローンの活性化後の(D)IFNγ、(E)TNFα、および(F)IL-13産生を示す用量反応曲線。(G)および(H)BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCG感染BMDCと共にインキュベートした場合の、未処置C57BL/6マウスからの肝単核細胞の活性化後の(G)IFNγおよび(H)IL-4産生を示す用量反応曲線。
【図3】図3は、インビボでウシ結核菌BCGに結合したαGalCerは生物活性であることを示す図である。(A)、(B)、および(C)マウスに4.8nmolの媒体(Veh)、BCG、αGalCerまたはαGalCer/BCG(5×106CFU)を注射した1から50時間後の様々な時点での(A)IFN-γ、(B)IL-12p70、および(C)IL-4の血清レベル(ng/ml)を示すグラフ。
【図4】図4は、αGalCerおよびα-C-GalCerがウシ結核菌BCGと同時投与した場合に、DC成熟および共刺激マーカーの急速なアップレギュレーションを誘導することを示す図である。(A)および(B)(A)脾および(B)肝CD11c+樹状細胞における媒体、BCG、αGalCer/BCGおよびα-C-GalCer/BCGのIP注射20時間後のDC成熟マーカーのヒストグラム特性。MHC IIおよび共刺激分子:CD80、CD86、CD70、および41BBのアップレギュレーション。(C)および(D)(C)脾および(D)肝細胞におけるMHC II、CD80、CD86、CD70、および41BBレベルの増加倍率を示すグラフを、αGalCer/BCGおよびα-C-GalCer/BCGについて示す。
【図5】図5は、BCG-OVAおよびアジュバントとしてのαGalCerによるワクチン接種がマイコバクテリア抗原に対するCD8 T細胞応答を増強することを示す図である。(A)αGalCer/BCG-Ova、BCG-Ovaによる免疫化後、または非ワクチン接種(Unvac.)マウスの脾臓の3週間の時点での、OVAペプチド、SIINFEKL(配列番号:1)に特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定からの結果を示すグラフ。(B)αGalCer/BCG-Ova、α-C-GalCer/BCG-Ova、BCG-Ovaによる免疫化後、または非ワクチン接種マウスの脾臓の2ヶ月の時点での、SIINFEKLに特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定からの結果を示すグラフ。(C)αGalCer/BCG、BCG単独による免疫化後、または非ワクチン接種BALB/cマウスの2週間の時点での、Mtbペプチド、TB10.3/4 MHC-I(H-2Kd)エピトープGYAGTLQSL(配列番号:2)に特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定からの結果を示すグラフ。(D)CFSE標識Thy1.2+ OT-I脾細胞を注射し、αGalCer/BCG-Ova、α-C-GalCer/BCG-Ova、またはBCG-Ovaに感染させた代表的Thy1.1+ B6.PLマウスを示すドットプロット。(E)(D)に記載した細胞の非分裂細胞のパーセントを示すグラフ。
【図6】図6は、BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGでワクチン接種した後のマウスにおける毒性結核菌攻撃に対する防御免疫を示す図である。(A)および(B)未処置(Unvac.)またはワクチン接種(BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCG)したマウス7匹の群について、毒性結核菌H37Rv株による攻撃後3および6週間の時点での、C57BL/6マウスの(A)肺および(B)脾臓における結核菌の平均CFU(および標準偏差)を示すグラフ。(C)未処置(Unvac.)またはワクチン接種(BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCG)したマウス4匹の群について、毒性結核菌H37Rv株による攻撃後6週間の時点での、CD1d-KOマウスの肺および脾臓における結核菌の平均CFUを示すグラフ。(D)未処置(Unvac.)またはワクチン接種(BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCG)したマウス4匹の群について、攻撃後6週間の時点での、Jalpha-18KOマウスの肺および脾臓における結核菌の平均CFUを示すグラフ。*p<0.05;**p<0.007(一元配置ANOVA、ターキー(Turkey)事後検定)。
【図7】図7は、ワクチン接種し、毒性結核菌で攻撃したマウスの肺を攻撃後6週間の時点で組織検査した図である。(A)非ワクチン接種マウスにおける広範な肉芽腫性肺炎および硬化を伴う、より重度で、拡延性の肺病変の画像。(B)BCG、(C)αGalCer/BCG、または(D)α-C-GalCer/BCGでワクチン接種したマウスとの比較。元の倍率20×。
【図8】図8は、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGによるワクチン接種はBCGに比べて、マイコバクテリア抗原に対するCD4 T細胞応答を有意に増強しないことを示す図である。(A)BCG、αGalCer/BCG、α-C-GalCer/BCGによる免疫化後、または非ワクチン接種C57BL/6マウスの2ヶ月の時点での、Ag85Bのp25に特異的なIFN-γ産生脾CD4 T細胞についてのELISPOT検定を示すグラフ。(B)BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGによる免疫化後、2ヶ月の時点での、脾臓におけるIFNγ、IL-2およびTNFαを産生する多機能CD4 T細胞の頻度を示すグラフ。(C)および(D)BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGによるワクチン接種後、2ヶ月の時点での、C57BL/6マウスの(C)脾臓および(D)肺における調節T細胞の頻度を示すグラフ。(E)CFSE標識Thy1.2+ P25TCR-Tg脾細胞を注射し、BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGに感染させた代表的Thy1.1+ B6.PLマウスを示すドットプロット。(F)(E)に記載した細胞の非分裂細胞のパーセントを示すグラフ。
【図9】図9は、BCGに取り込んだαGalCer(Incorp)によるワクチン接種が、別々の投与(Sep=BCG-OVAおよびαGalCerを異なる部位に別々に注射)または混合(Mix=BCG-OVAおよびαGalCerを注射直前に同じシリンジ内で混合)に比べて、マイコバクテリア抗原に対するCD8 T細胞応答を増強することを示す図である。(A)および(B)BCG-OVA(マウス1匹あたり5×106BCG-OVA)、0.1μg αGalCer+BCG-OVA(Sep)、0.1μg αGalCer+BCG-OVA(Mix)、4μg αGalCer+BCG-OVA(Sep)、4μg αGalCer+BCG-OVA(Mix)、およびαGalCer/BCG(Incorp)の皮内注射による免疫化後、マウス(貯留した脾臓および鼠径リンパ節)の17日の時点での、(A)SIINFEKL(配列番号:1)または(B)TB10.4 MHCクラスI(H-2Kb)拘束エピトープQIMYNYPAM(配列番号:3)に特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定からの結果を示すグラフ。
【図10】図10は、BCGに取り込んだαGalCer(Incorp)によるワクチン接種が、別々の投与(Sep=BCG-OVAおよびαGalCerを異なる部位に別々に注射)または混合(Mix=BCG-OVAおよびαGalCerを注射直前に同じシリンジ内で混合)に比べて、マイコバクテリア抗原に対するCD8 T細胞応答を増強することを示す図である。(A)および(B)BCG-OVA(マウス1匹あたり5×106BCG-OVA)、0.1μg αGalCer+BCG-OVA(Sep)、0.1μg αGalCer+BCG-OVA(Mix)、およびαGalCer/BCG-OVA(Incorp)による免疫化後、マウスの(A)TB10.4 MHCクラスI(H-2Kb)拘束エピトープQIMYNYPAM(配列番号:3)または(B)SIINFEKL(配列番号:1)に特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定からの結果を示すグラフ。
【図11】図11は、iNKT細胞活性化糖脂質がマイコバクテリア生菌に直接取り込まれて、CD8 T細胞初回抗原刺激の最適な増強を得ることを示す図である。BCGに取り込まれたαGalCerまたはα-C-GalCer(Inc)によるワクチン接種は、非改変(BCG)、別の部位に注射した非改変BCGプラス0.1μgの糖脂質(表示のαGalCerまたはα-C-GalCer)(Sep)、または注射直前に混合し、同じ部位に注射した非改変BCGおよび0.1μgの糖脂質(表示のαGalCerまたはα-C-GalCer)によるワクチン接種に比べて、マイコバクテリア抗原に対するCD8 T細胞応答を有意に増強した。免疫化後3週間の時点のマウスからの脾細胞懸濁液中の、マイコバクテリア抗原のMHCクラスI提示ペプチド、TB10.4 MHCクラスI(H-2Kb)拘束エピトープQIMYNYPAM(配列番号:3)に特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定からの結果を示すグラフ***、p<0.01(ANOVA)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、免疫応答を増強、すなわち、誘発、刺激または増大するのに有用な、組成物、単離細胞、ワクチン、および方法を提供する。本明細書において、細菌細胞に物理的に結合されたセラミド様糖脂質、例えば、細菌細胞壁、例えば、マイコバクテリア細胞壁に安定に取り込まれたセラミド様糖脂質を含む改変細菌を記載する。本発明のセラミド様糖脂質/細菌複合体は、CD1d拘束ナチュラルキラーT(「NKT」)細胞の活性に影響をおよぼすことにより、免疫応答を増強することができる。特定の態様において、本発明の組成物、例えば、ワクチン組成物は、ウシ結核菌カルメット-ゲラン桿菌(BCG)の細胞壁に取り込まれたα-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体を含む。本明細書に記載するセラミド様糖脂質/細菌複合体は、所望の免疫応答、例えば、マイコバクテリア抗原に対する免疫応答を刺激するのに有用である。免疫応答は、細菌病原体、例えば、マイコバクテリア、例えば、ヒトにおいてTBの原因となる結核菌によって引き起こされる疾患を予防、治療、または改善するのに有用でありうる。
【0029】
本発明の利点には、細菌、例えば、弱毒生菌に感染した同じ細胞へのセラミド様糖脂質アジュバントの直接送達が、はるかに少ない用量の使用を可能にする様式でのアジュバントの集中を可能にすることも含まれる。それにより、局所および全身毒性を低減し、製造コストを下げる。加えて、物理的連結、例えば、直接取り込みは、特に送達および保存の問題がある第三世界の住民を標的とするワクチンのために、実用的な利点を有する。凍結乾燥し、次いで再構成する、セラミド様糖脂質に物理的に結合された、例えば、直接取り込まれた細菌は、アジュバント活性が完全なまま回収可能とすべきである。したがって、凍結乾燥ワクチンは投与の現場で再水和し、懸濁することができる。
【0030】
定義
「1つの(a)」または「1つの(an)」実体なる用語は、その実体の1つまたは複数を意味することに留意されるべきで;例えば、「ベクター(a vector)」は1つまたは複数のベクターを表すことが理解される。したがって、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」なる用語は、本明細書において交換可能に用いることができる。
【0031】
以下により詳細に論じるとおり、本発明は、細菌細胞に物理的に結合された、例えば、細菌細胞壁、例えば、マイコバクテリア細胞壁に取り込まれた、糖脂質、典型的にはセラミド様糖脂質、例えば、本明細書においてα-GalCerとも呼ぶα-ガラクトシルセラミド、またはα-C-GalCerなどのその類縁体を含む。特定の態様において、セラミド様糖脂質は非共有結合相互作用により物理的に結合される。本明細書において言及される「セラミド様糖脂質」には、α連結ガラクトースまたはグルコースを有する糖脂質が含まれる。セラミド様糖脂質の例は本明細書に記載しており、また、例えば、Porcelli、米国特許出願公開第2006/0052316号、Tsuji、米国特許出願公開第2006/0211856号、Jiang、米国特許出願公開第2006/0116331号、Hirokazu et al.、米国特許出願公開第2006/0074235号、Tsuji et al.、米国特許出願公開第2005/0192248号、Tsuji、米国特許出願第2004/0127429号、およびTsuji et al.、米国特許出願第2003/0157135号においても見いだすことができ、これらはすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0032】
ワクチン
「ワクチン」なる用語は、動物に投与した場合に、例えば、感染、例えば、マイコバクテリア感染に対する免疫応答を刺激する上で有用な組成物を意味する。本発明は、細菌細胞、例えば、マイコバクテリア細胞を含むワクチン組成物であって、ここで該細胞は不活化菌細胞、生菌細胞および/または弱毒菌細胞でありうるワクチン組成物、例えば、弱毒生菌ワクチンであるBCGに関する。細菌ワクチン、例えば、生菌ワクチン、不活化菌ワクチン、または弱毒菌ワクチンは当技術分野において公知であるか、または当業者には周知の方法により、日常的実験を用いて産生することができる。本発明の細菌ワクチンは組換え細菌、例えば、組換えマイコバクテリアも含むことができる。
【0033】
特定の態様において、細菌細胞およびセラミド様糖脂質を同時投与する。一つの態様において、細菌細胞を改変、例えば、「糖脂質改変」して、糖脂質を細菌細胞に物理的に連結する、例えば、セラミド様糖脂質を細菌細胞、例えば、マイコバクテリア細胞の細胞壁に取り込む。
【0034】
もう一つの態様において、本発明の糖脂質改変細菌細胞を、異種抗原、例えば、免疫原性ポリペプチドの送達のための担体として用いることができる。例えば、糖脂質改変細菌細胞、例えば、その細胞壁に取り込まれたセラミド様糖脂質を有する組換え細菌細胞を、別の病原体由来抗原(例えば、細菌(例えば、サルモネラ、リステリア、炭疽菌(Bacillus anthracis)、およびシゲラ(Shigella)抗原)、真菌、寄生虫(例えば、プラスモディウム(Plasmodium)由来マラリア抗原)、またはウイルス抗原(例えば、HIV、SIV、HPV、RSV、インフルエンザまたは肝炎(HAV、HBV、およびHCV)由来ウイルス抗原)または腫瘍特異性抗原の送達のための担体として用いることができる。
【0035】
一つの態様において、本発明の改変細菌には、α-GalCerが安定に非共有結合により取り込まれた、改変マイコバクテリア細胞、例えば、ウシ結核菌カルメット-ゲラン桿菌(BCG)細胞が含まれる。BCGは弱毒生菌ワクチンである。パスツール研究所のアルベール・カルメットおよびカミーユ・ゲランは、結核菌に密接に関連している、ウシ結核菌関連のマイコバクテリウムを弱毒化し、これを培地中で13年間培養することによってウシ結核菌カルメット-ゲラン桿菌(BCG)を生成し、この期間を通じて動物におけるその毒性の低下をモニターした。BCGは、安価かつ安全であり、すべてのワクチンの中でも最も広く用いられるものの1つとなった。しかし、BCGワクチンは開発途上国におけるTBの流行に対しては限られた効果しかなかった。Doherty T and Anderson P, Clinical Microbio Reviews 18(4):687-702 (2005)。もう一つの態様において、マイコバクテリア細胞はスメグマ菌(M. smegmatis)細胞であり、これは疾患を発症することなく哺乳動物に投与しうる、マイコバクテリアのもう1つの非病原性株である。
【0036】
改変マイコバクテリア細胞に加えて、本発明の他の改変細菌には、バチルス(Bacillus)属菌(例えば、炭疽の原因となる炭疽菌)、サルモネラ属菌(例えば、腸チフス熱、パラチフス熱、食物伝染病)、ブドウ球菌(Staphylococcus)属菌、連鎖球菌(Streptococcus)属菌、リステリア属菌(例えば、リステリア症の原因となる)、シゲラ属菌、エルシニア属菌(例えば、腺ペストおよび肺ペストの原因となる)、フランシセラ属菌(例えば、野兎病の原因となる)、およびレジオネラ属菌(例えば、レジオネラ病の原因となる)由来の糖脂質改変細菌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0037】
本明細書において用いられる「抗原」なる用語および「抗原性」なる関連用語は、抗体またはT細胞受容体に特異的に結合する物質を意味する。
【0038】
本明細書において用いられる「免疫原」なる用語および「免疫原性」なる関連用語は、動物、例えば、哺乳動物において抗体および/または細胞性免疫応答を含む、免疫応答を誘導する能力を意味する。免疫原は抗原性でもあるという可能性があるが、「抗原」は、そのサイズまたは高次構造のため、必ずしも「免疫原」でなくてもよい。「免疫原性組成物」は被験者における免疫応答、例えば、その「免疫原性組成物」に含まれる、1つまたは複数の抗原を特異的に認識する抗体を誘導する。
【0039】
「免疫応答]なる用語は、抗原または免疫原に応答しての、免疫系の細胞の活性を含むことになる。そのような活性には、抗体の産生、細胞障害性、リンパ球増殖、サイトカインの放出、炎症、食作用、抗原提示などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。所与の抗原または免疫原に対して高度に特異的な免疫応答、例えば、特異的抗体の産生または特異的Tリンパ球の産生は、本明細書において「適応免疫応答」と呼ぶ。所与の抗原に対して特異的でない免疫応答、例えば、NKおよびNKT細胞によるサイトカインの放出は、本明細書において「先天性免疫応答」と呼ぶ。免疫応答の例には、抗体応答または細胞性、例えば、細胞障害性T細胞応答が含まれる。
【0040】
「防御免疫応答」または「治療免疫応答]なる用語は、疾患の症状、副作用または進行を何とかして防止する、または少なくとも部分的に停止させる、免疫原に対する免疫応答を意味する。「防御的」とは、疾患に罹っていない被験者動物において免疫応答が誘導され、ここで免疫応答は動物が後にその疾患に罹るか、または罹りやすい、例えば、結核菌に曝露された場合に、疾患の症状を軽減、低減、緩和、またはいくつかの場合には、完全に防止することを意味する。「治療的」とは、疾患を有する被験者動物、例えば、結核を有するヒトにおいて免疫応答が誘導され、ここで免疫応答は疾患の症状を軽減、低減、緩和、またはいくつかの場合には、完全に除去することを意味する。
【0041】
「免疫応答を調節する」なる用語は、所与の免疫応答が組成物または治療によって、その組成物または治療なしの免疫応答に比べて増大、低減、または変化する、任意の様式を意味する。例えば、抗原に対する免疫応答を高めるためのアジュバントの使用は、その免疫応答の調節と考えられる。免疫応答の低減、例えば、自己免疫の防止も調節である。加えて、免疫応答の、例えば、一次TH2応答から一次TH1応答への変更は、免疫応答の調節である。本発明は、免疫応答を調節する方法であって、改変細菌、例えば、その細胞壁、例えば、マイコバクテリア細胞壁に取り込まれたセラミド様糖脂質を有する細菌細胞を含む組成物を動物に投与することによる方法を提供する。
【0042】
「アジュバント」なる用語は、(1)特定の抗原に対する免疫応答を変化もしくは増大する、または(2)薬理学的物質の効果を増大もしくは補助する能力を有する材料を意味する。特定の態様において、セラミド様糖脂質は細菌細胞、例えば、BCGと、例えば、セラミド様糖脂質がBCG細胞壁に取り込まれている場合、同時投与後にアジュバントとして機能する。もう一つの態様において、第二のアジュバントが含まれる。他の適当なアジュバントには、LPS誘導体(例えば、モノホスホリルリピドA(MPL))TLR9アゴニスト(例えば、CPG ODNS)、TLR7/8アゴニスト(例えば、イミキモド)、サイトカインおよび成長因子;細菌成分(例えば、内毒素、特に超抗原、外毒素および細胞壁成分);アルミニウム塩;カルシウム塩;シリカ;ポリヌクレオチド;類毒素;血清タンパク質、ウイルスおよびウイルス由来材料、毒物、毒液、イミダゾキニリン化合物、ポロキサマー、ならびにカチオン脂質が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0043】
多様な材料が、様々なメカニズムを通じてアジュバント活性を有することが明らかにされている。免疫原の発現、抗原性または免疫原性を高めうる任意の化合物は、アジュバントの可能性がある。本発明の他のアジュバントの可能性があるものには、糖脂質;ケモカイン;サイトカインおよびケモカインの産生を誘導する化合物;インターフェロン;ミョウバン、ベントナイト、ラテックス、およびアクリル粒子などの不活性担体;TiterMax(登録商標)(ブロックコポリマーCRL-8941、スクアレン(代謝可能油)および微小粒子シリカ安定剤)などのプルロニックブロックコポリマー;フロイントアジュバントなどのデポー形成剤;サポニン、リゾレシチン、レチナール、Quil A、リポソーム、およびプルロニックポリマー製剤などの界面活性材料;細菌リポ多糖などのマクロファージ刺激物質;インスリン、チモーゲン、内毒素、およびレバミゾールなどの交代経路補体活性化物質;非イオン性界面活性剤;ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)トリブロックコポリマー;mLT;MF59(商標);SAF;Ribi(商標)アジュバント系;トレハロースジミコレート(TDM);細胞壁骨格(CWS);Detox(商標);QS21;Stimulon(商標);完全フロイントアジュバント;不完全フロイントアジュバント;マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF);腫瘍壊死因子(TNF);3-O-脱アシル化MPL;CpGオリゴヌクレオチド;ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル、ならびに複数のアジュバントの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0044】
特定の態様において、アジュバントはサイトカインである。本発明の組成物は、1つまたは複数のサイトカイン、ケモカイン、またはサイトカインおよびケモカインの産生を誘導する化合物を含みうる。例には、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエチン(EPO)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン18(IL-18)、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ(IFNβ)、インターフェロンガンマ(IFNγ)、インターフェロンオメガ(IFNω)、インターフェロンタウ(IFNτ)、インターフェロンγ誘導因子I(IGIF)、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)、RANTES(活性後に調節され、正常T細胞が発現し、おそらく分泌する)、マクロファージ炎症性タンパク質(例えば、MIP-1アルファおよびMIP-1ベータ)、リーシュマニア(Leishmania)伸長開始因子(LEIF)、およびFlt‐3リガンドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0045】
特定の態様において、本発明の組成物は、もう1つの成分、例えば、免疫学的活性を有するポリペプチドをさらに含む。例えば、免疫学的活性を有するタンパク質は、toll様受容体(「TLR」)、B7.1またはB7.2などの共刺激分子である。「B7」は、B7.1またはB7.2のいずれかを一般的に意味するために本明細書において用いられる。T細胞およびNK細胞上のCD28と相互作用する共刺激分子、例えば、B7-1(CD80)またはB7-2(CD86)の細胞外ドメインを、本発明で用いる可溶性CD1d複合体の構造中に取り込まれたβ2-ミクログロブリンとのアミノ末端融合体として投与することができる。例えば、1999年12月16日公開の国際公開公報第9964597号を参照されたい。特定の態様において、本発明の組成物に、共刺激分子、例えばB7シグナル伝達分子を取り込むことにより、本発明のセラミド様糖脂質/細菌複合体によるNKT細胞のより有効かつ持続的な活性化が可能となる。
【0046】
他の態様において、本発明の方法の組成物は、追加のアジュバント成分、例えば、LPS誘導体(例えば、MPL)、TLR9アゴニスト(例えば、CPG ODNS)、TLR7/8アゴニスト(例えば、イミキモド)、サイトカインおよび成長因子;細菌成分(例えば、内毒素、特に超抗原、外毒素および細胞壁成分);アルミニウム塩;カルシウム塩;シリカ;ポリヌクレオチド;類毒素;血清タンパク質、ウイルスおよびウイルス由来材料、毒物、毒液、イミダゾキニリン化合物、ポロキサマー、カチオン脂質、ならびにToll様受容体(TLR)アゴニストなどの、前述の任意のアジュバントをさらに含む。有効でありうるTLRアゴニストアジュバントの例には、N-アセチルムラミル-L-アラニン-D-イソグルタミン(MDP)、リポ多糖(LPS)、遺伝子改変および/または分解されたLPS、ミョウバン、グルカン、コロニー刺激因子(例えば、EPO、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、PEG化G-CSF、SCF、IL-3、IL6、PIXY 321)、インターフェロン(例えば、γ-インターフェロン、α-インターフェロン)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18)、サポニン(例えば、QS21)、モノホスホリルリピドA(MPL)、3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA (3D-MPL)、非メチル化CpG配列、1-メチルトリプトファン、アルギナーゼ阻害剤、シクロホスファミド、免疫抑制機能を遮断する抗体(例えば、抗CTLA4抗体)、脂質(パルミチン酸残基など)、トリパルミトイル-S-グリセリルシステインリセリル-セリン(P3 CSS)、ならびにフロイントアジュバントが含まれるが、それらに限定されるわけではない。あるいは、またはさらに、本発明の組成物は、形質転換成長因子(TGF、例えば、TGFαおよびTGFβ)などの免疫細胞活性化を調節するリンホカインまたはサイトカイン;αインターフェロン(例えばIFNα);βインターフェロン(例えばIFNβ);γインターフェロン(例えばIFNγ)またはLFA-1もしくはLFA-3などのリンパ球機能関連タンパク質;あるいはICAM-1またはICAM-2などの細胞間接着分子をさらに含んでいてもよい。
【0047】
本発明の組成物は、免疫原性ポリペプチドをさらに含むことができる。特定の態様において、本発明の糖脂質改変組換え細菌細胞を、異種抗原または免疫原の送達のための担体として用いることができる。異種抗原または免疫原には免疫原性ポリペプチドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。一つの態様において、免疫原性ポリペプチドを本発明の糖脂質改変組換え細菌細胞によって発現することができ、例えば、セラミド様糖脂質がマイコバクテリア細胞壁に取り込まれた組換えマイコバクテリア細胞によって発現される異種病原体の免疫原性ポリペプチド。
【0048】
「免疫原性ポリペプチド」とは、抗原性または免疫原性ポリペプチド、例えば、エピトープまたはエピトープの組み合わせを有するポリアミノ酸材料を含むことになる。本明細書において用いられる免疫原性ポリペプチドは、脊椎動物に導入された場合に、脊椎動物の免疫系分子と反応する、すなわち抗原性である、および/または脊椎動物において免疫応答を誘導する、すなわち免疫原性であるポリペプチドである。免疫原性ポリペプチドは抗原性でもあるという可能性があるが、抗原性ポリペプチドは、そのサイズまたは高次構造のため、必ずしも免疫原性である必要はない。抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌などの感染性因子、ペットの鱗屑、植物、ほこり、および他の環境供給源由来のものなどのアレルゲン由来のポリペプチド、ならびに特定の自己ポリペプチド、例えば、腫瘍関連抗原が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0049】
本発明の抗原性および免疫原性ポリペプチドを用いて、ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫感染症を予防または治療する、例えば、治癒する、改善する、その重症度を軽減する、もしくはその伝染を予防もしくは低減する、ならびにアレルギーおよび癌などの増殖性疾患を治療することができる。
【0050】
加えて、本発明の抗原性および免疫原性ポリペプチドを用いて、口腔および咽頭(例えば、舌、口、咽頭)、消化器系(例えば、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肛門管、肛門直腸、肝臓、胆嚢、膵臓)、呼吸器系(例えば、喉頭、肺)、骨、関節、軟部組織(心臓を含む)、皮膚、黒色腫、乳房、生殖器官(例えば、子宮頸、子宮内膜、卵巣、外陰、膣、前立腺、精巣、陰茎)、泌尿器系(例えば、膀胱、腎臓、尿管、および他の泌尿器)、眼、脳、内分泌系(例えば、甲状腺および他の内分泌腺)の癌、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病)を含むが、それらに限定されるわけではない、癌を予防または治療する、例えば、治癒する、改善する、またはその重症度を軽減することができる。
【0051】
ウイルス抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリシウイルスポリペプチド、例えば、カリシウイルスカプシド抗原、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド、例えば、B型肝炎のコアまたは表面抗原、ヘルペスウイルスポリペプチド、例えば、単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質、免疫不全ウイルスポリペプチド、例えば、ヒト免疫不全ウイルスエンベロープまたはプロテアーゼ、感染性腹膜炎ウイルスポリペプチド、インフルエンザウイルスポリペプチド、例えば、A型インフルエンザの赤血球凝集素、ノイラミニダーゼまたは核タンパク質、白血病ウイルスポリペプチド、マールブルグウイルスポリペプチド、オルトミクソウイルスポリペプチド、パピローマウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド、例えば、赤血球凝集素/ノイラミニダーゼ、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド、例えば、ポリオウイルスカプシドポリペプチド、ポックスウイルスポリペプチド、例えば、ワクシニアウイルスポリペプチド、狂犬病ウイルスポリペプチド、例えば、狂犬病ウイルス糖タンパク質G、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、およびロタウイルスポリペプチドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0052】
細菌抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、アクチノマイセス(Actinomyces)ポリペプチド、バチルスポリペプチド、例えば、炭疽菌由来の免疫原性ポリペプチド、バクテロイデス(Bacteroides)ポリペプチド、ボルデテラ(Bordetella)ポリペプチド、バルトネラ(Bartonella)ポリペプチド、ボレリア(Borrelia)ポリペプチド、例えば、ライム病ボレリア(B. burgdorferi) OspA、ブルセラ(Brucella)ポリペプチド、カンピロバクター(Campylobacter)ポリペプチド、カプノシトファガ(Capnocytophaga)ポリペプチド、クラミジア(Chlamydia)ポリペプチド、クロストリジウム(Clostridium)ポリペプチド、コリネバクテリウム(Corynebacterium)ポリペプチド、コクシエラ(Coxiella)ポリペプチド、デルマトフィルス(Dermatophilus)ポリペプチド、エンテロコッカス(Enterococcus)ポリペプチド、エールリヒア(Ehrlichia)ポリペプチド、エシェリキア(Escherichia)ポリペプチド、フランシセラポリペプチド、フソバクテリウム(Fusobacterium)ポリペプチド、ヘモバルトネラ(Haemobartonella)ポリペプチド、ヘモフィルス(Haemophilus)ポリペプチド、例えば、インフルエンザ菌(H. influenzae) b型外膜タンパク質、ヘリコバクター(Helicobacter)ポリペプチド、クレブシエラ(Klebsiella)ポリペプチド、L型菌ポリペプチド、レプトスピラ(Leptospira)ポリペプチド、リステリアポリペプチド、マイコバクテリアポリペプチド、マイコプラズマ(Mycoplasma)ポリペプチド、ナイセリア(Neisseria)ポリペプチド、ネオリケッチア(Neorickettsia)ポリペプチド、ノカルジア(Nocardia)ポリペプチド、パスツレラ(Pasteurella)ポリペプチド、ペプトコッカス(Peptococcus)ポリペプチド、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)ポリペプチド、ニューモコッカス(Pneumococcus)ポリペプチド、プロテウス(Proteus)ポリペプチド、シュードモナス(Pseudomonas)ポリペプチド、リケッチア(Rickettsia)ポリペプチド、ロシャリメア(Rochalimaea)ポリペプチド、サルモネラポリペプチド、シゲラポリペプチド、ブドウ球菌ポリペプチド、連鎖球菌ポリペプチド、例えば、化膿連鎖球菌(S. pyogenes) Mタンパク質、トレポネーマ(Treponema)ポリペプチド、およびエルシニアポリペプチド、例えば、ペスト菌(Y. pestis) F1およびV抗原が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0053】
寄生虫抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、大腸バランチジウム(Balantidium coli)ポリペプチド、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)ポリペプチド、肝蛭(Fasciola hepatica)ポリペプチド、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)ポリペプチド、リーシュマニアポリペプチド、およびプラスモディウムポリペプチド(例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)ポリペプチド)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0054】
真菌抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、アスペルギルス(Aspergillus)ポリペプチド、カンジダ(Candida)ポリペプチド、コクシジオデス-イミチス(Coccidiodes immitis)またはC.ポサダシ(C. posadasii)ポリペプチド、クリプトコッカス(Cryptococcus)ポリペプチド、ヒストプラスマ(Histoplasma)ポリペプチド、ニューモシスティス(Pneumocystis)ポリペプチド、およびパラコクシジオイデス(Paracoccidiodes)ポリペプチドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0055】
腫瘍関連抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、腫瘍特異性免疫グロブリン可変領域、GM2、Tn、sTn、(トンプソン-フリーデンライヒ(Thompson-Friedenreich)抗原(TF)、Globo H、Le(y)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、癌胎児抗原、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ鎖(hCGベータ)、C35、HER2/neu、CD20、PSMA、EGFRvIII、KSA、PSA、PSCA、GP100、MAGE 1、MAGE 2、TRP 1、TRP 2、チロシナーゼ、MART-1、PAP、CEA、BAGE、MAGE、RAGE、および関連タンパク質が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0056】
本発明の組成物は、他の治療薬をさらに含むことができる。治療薬の例には、代謝拮抗剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、および抗有糸分裂剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。代謝拮抗剤には、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジンが含まれる。アルキル化剤には、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、ならびにシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチンが含まれる。アントラサイクリンには、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン(本明細書においてアドリアマイシンとも呼ぶ)が含まれる。さらなる例には、ミトザントロン(mitozantrone)およびビサントレンが含まれる。抗生物質には、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC)が含まれる。抗有糸分裂剤には、ビンクリスチンおよびビンブラスチン(これらは一般にビンカアルカロイドと呼ばれる)が含まれる。他の細胞障害性薬剤には、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P'-(DDD))、インターフェロンが含まれる。細胞障害性薬剤のさらなる例には、リシン、ドキソルビシン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エトポシド、テノポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、1-デヒドロテストステロン、およびグルココルチコイドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような治療薬の類縁体および相同体は、本発明によって包含される。
【0057】
細菌細胞
本発明の改変細菌は、細菌細胞の天然型由来であってもよく、または組換え細菌細胞であってもよい。一つの態様において、本明細書に記載の任意の細菌細胞は改変されていなくてもよく、別のセラミド様糖脂質抗原と共に製剤することもできる。もう一つの態様において、本発明のセラミド様糖脂質は細菌細胞と物理的に結合され、例えば、細菌細胞壁に取り込まれ、例えば、細菌に対する免疫応答を増強するためのアジュバントとして用いられる。
【0058】
細菌はグラム陽性またはグラム陰性として記載されうる。Beveridge TJ, Biotech Histochem 76(3): 111-118 (2001);Gram HC, Fortschritte der Medizin 2: 185-189 (1884)。グラム陽性菌は、グラム染色によって暗青色または紫色に染色されるものである。グラム陽性菌は一般に、それらの細胞壁構造の一部としてペプチドグリカンならびに多糖および/またはテイコ酸を有することによって特徴付けられる。ペプチドグリカンは時にはムレインと呼ばれ、短いペプチドを通じて架橋されたグリカン鎖のヘテロポリマーである。グラム陰性菌は一般に、2つの膜で囲まれている。外側の膜はリポ多糖(LPS)およびポリンを含み、透過性障壁として機能する。マイコバクテリアはミコレートを多く含む厚い外被を生成し、これは有効な障壁として機能する。マイコバクテリアは好酸性に染色され、系統学的にグラム陽性菌に関連する。
【0059】
疾患または症状を引き起こしえ、本発明の改変細菌、または組成物、もしくはワクチン組成物により治療、予防、および/または診断しうる、細菌性または真菌性因子には以下のグラム陰性およびグラム陽性細菌と細菌科ならびに真菌が含まれるが、それらに限定されるわけではない:アシネトバクター(acinetobacter)、放線菌(Actinomycete)(例えば、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、マイコバクテリウム、ノカルジア(Norcardia))、クリプトコッカス-ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス、バチルス科(Bacillaceae)(例えば、炭疽菌)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ブラストミセス(Blastomyces)、ボルデテラ(Bordetella)、ブルセラ(Brucella)、カンジジア(Candidia)、カンピロバクター(Campylobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、コクシジオイデス(Coccidioides)、クリプトコッカス、皮膚真菌類(Dermatophytes)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(大腸菌(E. coli(例えば、毒素原性大腸菌および腸管出血性大腸菌)クレブシエラ、サルモネラ(例えば、腸チフス菌(Salmonella typhi)、およびパラチフス菌(Salmonella paratyphi))、セラチア(Serratia)、シゲラ、エルシニアなど)、エリジペロスリックス(Erysipelothrix)、フランシセラ、ヘリコバクター(Helicobacter)、レジオネラ科(Legionellaceae)、スピロヘータ科(Spirochaetaceae)(例えば、ボレリア(例えば、ライム病ボレリア))、レプトスピラ科(Leptospiraceae)、リステリア(Listeria)、マイコプラズマ目(Mycoplasmatales)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、ビブリオ科(Vibrionaceae(例えば、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)、ナイセリア科(Neisseriaceae)(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、ヘモフィルス(Haemophilus)(例えば、B型インフルエンザ菌(Haemophilus influenza type B)、パスツレラ(Pasteurella)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア科(Rickettsiaceae)、クラミジア科(Chlamydiaceae)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、スタフィロコッカス科(Staphylococcaceae)(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、およびストレプトコッカス科(Streptococcaceae)(例えば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)およびB群連鎖球菌(Group B Streptococcus)。
【0060】
これらの細菌科または真菌科は下記を含むが、それらに限定されるわけではない、以下の疾患または症状を引き起こしうる:菌血症、心内膜炎、眼感染症(結膜炎、結核、ブドウ膜炎)、歯肉炎、日和見感染症(例えば、AIDS関連感染症)、爪周囲炎、人工器官関連感染症、ライター病、百日咳または蓄膿などの気道感染症、敗血症、ライム病、ネコ引っ掻き病、赤痢、パラチフス熱、食中毒、腸チフス、肺炎、淋病、髄膜炎(例えば、A型およびB型髄膜炎)、クラミジア、梅毒、ジフテリア、ライ病、副結核、結核(TB)、ハンセン病、結核に似た肺疾患、リンパ腺炎、皮膚疾患、または播種性疾患、狼瘡、ボツリヌス中毒症、壊疽、破傷風、膿痂疹、リウマチ熱、猩紅熱、性感染症、皮膚疾患(例えば、蜂巣炎、皮膚真菌症)、毒素血症、尿路感染症、および創傷感染症。
【0061】
本発明の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物を用いて、任意のこれらの症状または疾患を治療、予防、および/または診断することができる。具体的態様において、本発明の組成物を用いて結核、結核に似た肺疾患、リンパ腺炎、皮膚疾患、播種性疾患、腺ペスト、肺ペスト、野兎病、レジオネラ病、炭疽、腸チフス熱、パラチフス熱、食物伝染病、リステリア症、マラリア、HIV、SIV、HPV、インフルエンザ、肝炎(HAV、HBV、およびHCV)、および癌を治療する。
【0062】
マイコバクテリア
マイコバクテリウム属は、例えば、結核およびライ病を含む、哺乳動物の重篤な疾患を引き起こすことが公知の病原体を含む。マイコバクテリウム(マイコバクテリアとも呼ぶ)は内生胞子または莢膜を含まず、通常はグラム陽性と考えられる。膜脂質中に見られる通常の脂肪酸に加えて、マイコバクテリアは多様な超長鎖飽和(C18-C32)および一不飽和(最大C26)n-脂肪酸を有する。α-アルキルβ-ヒドロキシ超長鎖脂肪酸、すなわち、ミコール酸の出現はマイコバクテリアおよび関連種の特徴である。マイコバクテリアのミコール酸は大きく(C70-C90)、大きいα-分枝(C20-C25)を有する。主鎖は1つまたは2つの二重結合、シクロプロパン環、エポキシ基、メトキシ基、ケト基またはメチル分枝を含む。そのような酸は細胞壁の主な成分で、アラビノガラクタンと呼ばれる主要な細胞壁多糖の末端ヘキサアラビノフラノシル単位上に4つのクラスターで大部分はエステル化されて出現する。これらはトレハロースの6位および6'位にエステル化して「コード因子」を形成することも知られている。少量のミコレートはグリセロールまたは培地中に存在する糖に依存してトレハロース、グルコースおよびフルクトースなどの糖にエステル化することも判明している。マイコバクテリアは多様なメチル分枝脂肪酸も含む。これらには10-メチルC18脂肪酸(ツベルクロステアリン酸、ホスファチジルイノシチドマンノシドにエステル化されることが判明)、トレハロース含有リポオリゴ糖中で見いだされる2,4-ジメチルC14酸ならびにモノ、ジ、およびトリメチル分枝C14からC25脂肪酸、フェノール糖脂質およびフチオセロールエステル中で見いだされるトリメチル不飽和C27酸(フチエン酸)、テトラメチル分枝C28-C32ファシー(faccy)酸(ミコセロシン酸)およびそれよりも短いホモログ、ならびに硫脂質中で見いだされるヘプタメチル分枝C37酸などの多メチル分枝フチオセラン酸および17-ヒドロキシ-2,4,6,8,10,12,14,16-オクタメチルC40酸などの酸素化多メチル分枝酸が含まれる。加えて、ミコセロシン酸および他の分枝酸はフチオセロールおよびフェノールフチオセロールならびにそれらの誘導体とエステル化する。Kolattukudy et al., Mol. Microbio. 24(2):263-270 (1997)。証拠からMtbの病因において特定の細胞エンベロープ脂質が関係するとされる。Rao, et al., J. Exp. Med., 201(4):535-543 (2005)。
【0063】
マイコバクテリウム属菌には、下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない:M.アブセサス(M. abscessus);M.アフリカナム(M. africanum);M.アグリ(M. agri);M.アイチエンス(M. aichiense);M.アルベイ(M. alvei);M.アルペンス(M. arupense);M.アジアティカム(M. asiaticum);M.オーバネンス(M. aubagnense);M.オーラム(M. aurum);M.オーストロアフリカーナム(M. austroafricanum);マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)(Mycobacterium avium complex);M.アビウム(M. avium);ヨーネ菌(M. avium paratuberculosis)、ヒトのクローン病およびヒツジのヨーネ病に関係するとされる;M.アビウムシルバティカム(M. avium silvaticum);M.アビウム「ホミニッスイス」(M. avium "hominissuis") ;M.コロンビエンス(M. colombiense);M.ボエニッキイ(M. boenickei);M.ボヘミカム(M. bohemicum);M.ボルレティイ(M. bolletii);M.ボトニエンス(M. botniense);ウシ結核菌;M.ブランデリ(M. branderi);M.ブリスベネンス(M. brisbanense);M.ブルマエ(M. brumae);M.カナリアセンス(M. canariasense);M.カプラエ(M. caprae);M.セラータム(M. celatum);M.ケロナエ(M. chelonae);M.キマエラ(M. chimaera);M.チタエ(M. chitae);M.クロロフェノリカム(M. chlorophenolicum);M.チュブエンス(M. chubuense);M.コンセプショネンス(M. conceptionense);M.コンフルエンティス(M. confluentis);M.コンスピキュウム(M. conspicuum);M.クッキイ(M. cookii);M.コスメティカム(M. cosmeticum);M.ディエルンホフェリ(M. diernhoferi);M.ドリカム(M. doricum);M.ドゥバリイ(M. duvalii);M.エレファンティス(M. elephantis);M.ファラックス(M. fallax);M.ファルシノゲネス(M. farcinogenes);M.フラベッセンス(M. flavescens);M.フロレンティナム(M. florentinum);M.フルオロアンテニボランス(M. fluoroanthenivorans);M.フォルトゥイタム(M. fortuitum);M.フォルトゥイタム亜種アセトアミドリティカム(M. fortuitum subsp. acetamidolyticum);M.フレデリクスバーゲンス(M. frederiksbergense);M.ガディウム(M. gadium);M.ガストリ(M. gastri);M.ゲナベンス(M. genavense);M.ギルバム(M. gilvum);M.グッディイ(M. goodii);M.ゴードナエ(M. gordonae);M.ヘモフィルム(M. haemophilum);M.ハシアカム(M. hassiacum);M.ヘッケスホルネンス(M. heckeshornense);M.ハイデルベルゲンス(M. heidelbergense);M.ヒベルニアエ(M. hiberniae);M.ホドレリ(M. hodleri);M.ホルサティカム(M. holsaticum);M.ヒューストネンス(M. houstonense);M.イムノゲナム(M. immunogenum);M.インタージェクタム(M. interjectum);M.インターメディウム(M. intermedium);M.イントラセルラー(M. intracellular);M.カンサシイ(M. kansasii);M.コモセンス(M. komossense);M.クビカエ(M. kubicae);M.クマモトネンス(M. kumamotonense);M.ラクス(M. lacus);M.レンティフラバム(M. lentiflavum);ライ菌、ライ病を引き起こす;鼠ライ菌(M. lepraemurium);M.マダガスカリエンス(M. madagascariense);M.マジェリテンス(M. mageritense);M.マルモエンス(M. malmoense);M.マリナム(M. marinum);M.マッシリエンス(M. massiliense);M.ミクロティ(M. microti);M.モナセンス(M. monacense);M.モンテフィオレンス(M. montefiorense);M.モリオカエンス(M. moriokaense);M.ムコゲニカム(M. mucogenicum);M.ムラーレ(M. murale);M.ネブラスケンス(M. nebraskense);M.ネオオーラム(M. neoaurum);M.ニューオルレアンセンス(M. neworleansense);M.ノンクロモゲニカム(M. nonchromogenicum);M.ノボカストレンス(M. novocastrense);M.オブエンス(M. obuense);M.パルストレ(M. palustre);M.パラフォルトゥイタム(M. parafortuitum);M.パラスクロフラセウム(M. parascrofulaceum);M.パルメンス(M. parmense);M.ペレグリナム(M. peregrinum);チモテ菌(M. phlei);M.フォカイクム(M. phocaicum);M.ピンニペディイ(M. pinnipedii);M.ポルシナム(M. porcinum);M.ポリフェラエ(M. poriferae);M.シュードショットシイ(M. pseudoshottsii);M.プルベリス(M. pulveris);M.サイクロトレランス(M. psychrotolerans);M.ピレニボランス(M. pyrenivorans);M.ローデシアエ(M. rhodesiae);M.サスカチェワネンス(M. saskatchewanense);M.スクロフラセウム(M. scrofulaceum);M.セネガレンス(M. senegalense);M.セオウレンス(M. seoulense);M.セプティカム(M. septicum);M.シモイデイ(M. shimoidei);M.ショットシイ(M. shottsii);M.シミアエ(M. simiae);スメグマ菌(M. smegmatis);M.スファグニ(M. sphagni);M.スルガイ(M. szulgai);M.テラエ(M. terrae);M.サーモレジスティバイル(M. thermoresistibile);M.トーカイエンス(M. tokaiense);M.トリプレックス(M. triplex);M.トリビアレ(M. triviale);結核菌群(Mycobacterium tuberculosis complex)(MTBC)、メンバーはヒトおよび動物の結核の原因菌である(結核菌、ヒト結核の主な原因;ウシ結核菌;ウシ結核菌BCG;M.アフリカナム;M.カネッティ(M. canetti);M.カプラエ;M.ピンニペディイ);M.トゥシアエ(M. tusciae);M.アルセランス(M. ulcerans)、「ブルーリ」、または「ベアンズデール潰瘍」を引き起こす;M.ワクカエ(M. vaccae);M.バンバアレニイ(M. vanbaalenii);M.ウォリンスキイ(M. wolinskyi);およびM.ゼノピ(M. xenopi)。
【0064】
マイコバクテリアは診断および治療の目的のためにいくつかの群、例えば、結核を引き起こしうる結核菌群(MTB):結核菌、M.アフリカナム、ウシ結核菌、ウシ結核菌BCG、M.カプラエ、M.ミクロティ、M.ピンニペディイ、ケープハイラックス桿菌、およびM.カネッティ(推奨名)(Somoskovi, et al., J. Clinical Microbio 45(2):595-599 (2007));ハンセン病またはライ病を引き起こすライ菌;非結核性マイコバクテリア(NTM)、ならびに結核に似た肺疾患、リンパ腺炎、皮膚疾患、または播種性疾患を引き起こしうるすべての他のマイコバクテリアに分類することができる。MTBメンバーは高度の遺伝的均一性を示す。Somoskovi (2007)。本発明のマイコバクテリアは組換えマイコバクテリアを含みうる。例えば、組換えマイコバクテリア細胞、例えば、組換えBCG細胞、例えば、rBCG30細胞。
【0065】
組換え細菌
本発明の改変細菌は組換え細菌細胞、例えば、組換えマイコバクテリア細胞を含みうる。組換え細菌細胞の非限定例はrBCG30で、これはBCGのワクチン株由来で、免疫優性抗原Ag85Bを過剰発現するよう遺伝子改変されている。Doherty and Anderson, Clinical Microbio Reviews 18(4): 687-702 (2005)参照。本発明の糖脂質改変細菌を産生するのに適した組換え細菌細胞の他の例には、BCG-HIV;BCG-SIV;BCG-HCV;rBCG/IL-2、およびHIVペプチドを発現する組換えスメグマ菌(例えば、Aldovini and Young, Nature 351: 479-482 (1994);Yasutomi et al., J. of Immunol. 150(7):3101-3107 (1993);Uno-Furuta et al., Vaccine 21(23): 3149-3156 (2003);Matsumoto et al., J. Exp. Med. 188(5): 845-854 (1998);Yamada et al., J. of Urology 164(2): 526-531 (2000);Cayabyab et al., J. of Virology 80(4): 1645-1652 (2006);Stover et al., Nature 351: 456-460 (1991);およびBloom et al.、米国特許第5,504,005号参照)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0066】
一つの態様において、改変細菌は非天然ポリヌクレオチド、例えば、BCG-HIVによってコードされるポリペプチドを発現するよう遺伝子操作された組換え細菌を含み、ここで組換え細菌細胞はセラミド様糖脂質と物理的に結合している。本発明はさらに、本発明の改変細菌を含む組成物またはワクチン組成物に関し、ここで細菌細胞は天然または組換え細胞である。
【0067】
本発明はさらに、組換え(遺伝子操作された)改変細菌、例えば、セラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体に関し、これは異種ポリペプチドをコードするDNAを発現する。DNAは、標準の遺伝子操作技術を用いて、細菌のゲノムに組み込むこともでき、または染色体外に存在することもできる。本発明の組換え細菌は、関心対象のDNA、例えば、異種抗原または免疫原をコードするDNAの細菌、例えば、マイコバクテリアへの導入のために、ベクターを用いて遺伝子操作することができる。
【0068】
本明細書において用いられる「ベクター」なる用語は、それが連結されているもう一つの核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。ベクターの1つの型は「プラスミド」で、その中に追加のDNAセグメントを連結しうる環状二本鎖DNAループを意味する。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自立複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター)。本発明のベクターは、それらが機能的に連結されているポリペプチド、例えば、免疫原性ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターはプラスミドの形であることが多い。
【0069】
ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターは、例えば、組換え細菌、例えば、糖脂質改変組換えマイコバクテリアからの免疫原性ポリペプチドの発現のために、本発明において有用でありうる。ベクターおよびそのような核酸が機能的に連結されている発現制御配列の選択は、望まれる機能的性質、例えば、タンパク質発現、および形質転換される宿主細胞に依存する。
【0070】
機能的に連結されたコード配列の発現を調節するのに有用な発現制御要素は当技術分野において公知である。例には、誘導性プロモーター、構成性プロモーター、分泌シグナル、および他の調節領域が含まれるが、それらに限定されるわけではない。誘導性プロモーターを用いる場合、例えば、宿主細胞培地の栄養状態の変化または温度の変化によって制御することができる。本発明のポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指令する、分泌またはシグナルペプチドをコードする追加のコード領域と結合しうる。
【0071】
一つの態様において、関心対象のポリヌクレオチドの細菌による発現は、染色体外、例えば、プラスミドから(例えば、エピソームにより)起こる。例えば、関心対象の遺伝子をプラスミド中にクローニングし、培養したマイコバクテリア細胞、例えば、BCGまたはスメグマ菌内に導入し、ここで関心対象遺伝子は関心対象ポリペプチド、例えば、免疫原性ポリペプチドをコードする。宿主細胞、例えば、マイコバクテリア宿主細胞と適合性の種由来の、レプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターを用いる。ベクターは複製部位、ならびに形質転換細胞において表現型選択を提供可能なマーキング配列を有しうる。
【0072】
本発明のベクターは、原核生物レプリコン、すなわち細菌宿主細胞において組換えDNA分子の自立複製および維持を染色体外で指令する能力を有するDNA配列を含みうるが、それらに限定されるわけではない。そのようなレプリコンは当技術分野において周知である。加えて、原核生物レプリコンを含むベクターは、その発現が薬物耐性などの検出可能なマーカーを付与する遺伝子も含みうる。細菌の薬物耐性遺伝子の非限定例は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対する耐性を付与するものである。
【0073】
原核生物レプリコンを含むベクターは、細菌宿主細胞においてコード遺伝子配列の発現を指令するための原核生物またはバクテリオファージプロモーターも含みうる。細菌宿主と適合性のプロモーター配列は、典型的には、発現されるDNAセグメント挿入のための好都合な制限部位を含むプラスミドベクターにおいて提供される。原核生物宿主細胞、例えば、マイコバクテリア宿主細胞における発現のために用いうるプロモーターの例には、熱ショックプロモーター、ストレスタンパク質プロモーター、pMTB30プロモーター、B-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)プロモーター、ラクトースプロモーター、カナマイシン耐性を発現するプロモーター、クロラムフェニコール耐性を発現するプロモーター、およびcIプロモーターが含まれるが、それらに限定されるわけではない(Sambrook et al.も参照されたい)。本発明において様々な原核生物クローニングベクターを用いることができる。そのようなプラスミドベクターの例には、pUC8、pUC9、pBR322およびpBR329(BioRad(登録商標) Laboratories)、pPL、pEMBLおよびpKK223(Pharmacia)が含まれるが、それらに限定されるわけではない(Sambrook et al.も参照されたい)。
【0074】
ベクターDNAを原核細胞に通常の形質転換または形質移入技術により導入することができる。本明細書において用いられる「形質転換」および「形質移入」なる用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介形質移入、リポフェクション、または電気穿孔法を含む、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞中に導入するための様々な当技術分野において認められた技術を指すことが意図される。宿主細胞を形質転換または形質移入するのに適した方法は、Sambrook et al. (MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)、および他の研究室マニュアル中に見いだすことができる。宿主細胞、例えば、マイコバクテリア細胞または糖脂質改変マイコバクテリア細胞などの細菌細胞の形質転換は、用いるベクターおよび宿主細胞に適した通常の方法により達成することができる。原核生物宿主細胞、例えば、マイコバクテリア細胞の形質転換のために、電気穿孔法および塩処理法(Cohen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:2110-14 (1972))、ならびに当技術分野において公知の他の技術を用いることができる。
【0075】
本明細書において用いられる「ポリペプチド」なる用語は、単数の「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を含むことが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても公知)により直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)からなる分子を意味する。「ポリペプチド]なる用語は、複数のアミノ酸の任意の1つまたは複数の鎖を意味し、特定の長さの生成物を指すことはない。したがって、複数のアミノ酸の1つまたは複数の鎖を指すために用いられる、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または任意の他の用語は「ポリペプチド」の定義の範囲内に含まれ、「ポリペプチド」なる用語は、これらの用語のいずれの代わりにも、またはこれらの用語のいずれとも交換可能に用いることができる。「ポリペプチド」なる用語は、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指すことも意図される。ポリペプチドは天然の生物学的供給源由来であってもよく、または組み換え技術によって産生されてもよいが、必ずしも指定の核酸配列から翻訳されることはない。ポリペプチドは化学合成を含む任意の様式で生成することができる。
【0076】
本発明のポリペプチドはアミノ酸約3以上、5以上、10以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、200以上、500以上、1000以上、または2000以上のサイズでありうる。
【0077】
「単離ポリペプチド」またはその断片、変異体、もしくは誘導体とは、その自然の環境にないポリペプチドを意図する。特定のレベルの精製が要求されることはない。例えば、単離ポリペプチドはその天然または自然の環境から取り出すことができる。宿主細胞中で、または組換え細菌ワクチンの成分として発現された組換え産生ポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適当な技術により分離され、分画され、または部分的にもしくは実質的に精製された天然または組換えポリペプチドと同様、本発明の目的のためには単離されたと考えられる。
【0078】
本発明のポリペプチドとして同様に含まれるのは、前述のポリペプチドの断片、誘導体、類縁体、または変異体、およびその任意の組み合わせである。「断片」、「変異体」、「誘導体」、および「類縁体」なる用語は、本発明のポリペプチドを指す場合、対応する天然のポリペプチドの少なくともいくらかの生物学的特性、抗原特性、または免疫原特性を保持している任意のポリペプチドを含む。
【0079】
「ポリヌクレオチド」なる用語は、単数の核酸ならびに複数の核酸を含むことが意図され、単離された核酸分子または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来RNA、またはプラスミドDNA(pDNA)を意味する。ポリヌクレオチドは通常のホスホジエステル結合または非通常の結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるものなどのアミド結合)を含むことができる。「核酸」なる用語は、ポリヌクレオチドに存在する任意の一つまたは複数の核酸セグメント、例えば、DNAまたはRNA断片を意味する。本発明のRNAは一本鎖でも二本鎖であってもよい。
【0080】
「単離された」核酸またはポリヌクレオチドとは、その天然の環境から取り出されている核酸分子、DNAまたはRNAを意図する。例えば、ベクターに含まれた治療用ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のためには単離されたと考えられる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞において維持される組換えポリヌクレオチド、例えば、組換え細菌細胞、または溶液中の(部分的または実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離されたRNA分子は、本発明のインビボまたはインビトロのRNA転写産物、ならびに本明細書において開示するペスチウイルスベクターのプラスおよびマイナス鎖型や、二本鎖型を含む。本発明による単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、合成により産生されたそのような分子をさらに含む。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターなどの調節要素であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0081】
本明細書において用いられる「異種ポリヌクレオチド」または「異種核酸」または「異種遺伝子」または「異種配列」または「外因性DNAセグメント」は、特定の宿主細胞にとって外来の供給源から生じるか、または同じ供給源からの場合は、その元の形から改変されている、ポリヌクレオチド、核酸またはDNAセグメントを意味する。宿主細胞における異種遺伝子には、特定の宿主細胞にとっては内因性であるが、改変されている遺伝子が含まれる。したがって、これらの用語は、細胞にとって外来もしくは異種であるか、または細胞にとって同種であるが、その要素が通常は見られない宿主細胞核酸内の位置にあるDNAセグメントを意味する。
【0082】
本明細書において用いられる「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の部分である。「停止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)はアミノ酸に翻訳されないものの、コード領域が存在する場合はその一部であると考えることができるが、任意の隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5'および3'非翻訳領域などはコード領域の一部ではない。本発明の複数のコード領域が単一のポリヌクレオチド構築物中に、例えば、単一のベクター上に、または別個のポリヌクレオチド構築物中に、例えば、別個の(異なる)ベクター上に存在することができる。さらに、いかなるベクターも単一のコード領域を含みえ、または複数のコード領域を含みうる。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、または核酸は、融合されているか、または融合されていないかのいずれかの、複数の異種コード領域をコードしうる。異種コード領域は、分泌シグナルペプチドまたは異種機能ドメインなどの、特化された要素またはモチーフを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0083】
特定の態様において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする、核酸を含むポリヌクレオチドは、通常は、一つまたは複数のコード領域と機能的に結合されたプロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳制御要素を含むことができる。機能的な結合は、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドのコード領域が、遺伝子産物の発現を調節配列の影響または制御下に置くような様式で、一つまたは複数の調節配列と結合される場合である。二つのDNA断片(ポリペプチドコード領域およびそれに結合しているプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導によって所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写が生じる場合、および二つのDNA断片の間の連結の性質が遺伝子産物の発現を指令する発現調節配列の能力を妨げないか、または転写されるDNA鋳型の能力を妨げない場合、「機能的に結合」されている。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写を行うことが可能である場合、ポリペプチドをコードする核酸と機能的に結合されていることになる。プロモーターは、所定の細胞においてのみDNAの実質的な転写を指令する細胞特異的なプロモーターでありうる。プロモーターに加え、他の転写制御要素、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写停止シグナルをポリヌクレオチドと機能的に結合して、細胞特異的な転写を指令することができる。
【0084】
「基準アミノ酸配列」とは、任意のアミノ酸置換の導入のない、特定の配列を意味する。当業者であれば理解するであろうとおり、置換がない場合、本発明の「単離ポリペプチド」は基準アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0085】
本明細書に記載のポリペプチドは、置換、挿入、または欠失などの様々な変化を有しうる。ポリペプチドにおいて置換されうる例示的アミノ酸には、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0086】
本明細書に記載のポリペプチドおよび基準ポリペプチドに、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一のポリペプチドの対応する断片も企図される。
【0087】
当技術分野において公知のとおり、二つのポリペプチドの間の「配列同一性」は、一つのポリペプチドのアミノ酸配列を第二のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。本明細書において論じる場合、任意の特定のポリペプチドがもう一つのポリペプチドに対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるかどうかは、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)などであるが、それに限定されるわけではない、当技術分野において公知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決定することができる。BESTFITでは、二つの配列の間で最良の相同性セグメントを見つけるために、Smith and Watermanの局所相同性アルゴリズム、Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)を用いる。BESTFITまたは任意の他の配列アライメントプログラムを用いて、特定の配列が、例えば、本発明による基準配列に対して95%同一であるかどうかを判定する場合、パラメータは、もちろん、同一性のパーセンテージが基準ポリペプチド配列の全長にわたって計算されるように、および基準配列中のアミノ酸の総数の最大5%までの相同性のギャップが許容されるように設定する。
【0088】
セラミド様糖脂質抗原
本発明において有用なセラミド様糖脂質抗原には、細菌細胞によって、例えば、細菌細胞の細胞壁へのセラミド様糖脂質の取り込みによって提示されると、動物において免疫反応を調節できるセラミド様糖脂質が含まれるが、それらに限定されるわけではない。抗原は、外来抗原に由来してもよく、または自己抗原に由来してもよい。さらに、セラミド様糖脂質抗原は合成物でありうる。適当な抗原は、例えば、Porcelli、米国特許出願公開第2006/0052316号、Tsuji、米国特許出願公開第2006/0211856号、Jiang、米国特許出願公開第2006/0116331号、Hirokazuら、米国特許出願公開第2006/0074235号、Tsujiら、米国特許出願公開第2005/0192248号、Tsuji、米国特許出願第2004/0127429号、およびTsujiら、米国特許出願第2003/0157135号に開示されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。特定の態様において、セラミド様糖脂質抗原はα-GalCerまたはその類縁体である。他の態様において、セラミド様糖脂質抗原はα-C-GalCerまたはその類縁体である。
【0089】
本明細書において用いられる「置換されていてもよい」なる用語は、無置換であるか、またはハロゲン(F、Cl、Br、I)、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、もしくはアルコキシを含む1つもしくは複数の置換基で置換されているかのいずれかを意味する。
【0090】
本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、それ自体または別の基の一部で、典型的には1から18個の炭素または指定の数の炭素を有する、直鎖または分枝飽和脂肪族炭化水素を意味する。一つのそのような態様において、アルキルはメチルである。非限定の例示的アルキル基には、エチル、n-プロピル、イソプロピルなどが含まれる。
【0091】
本明細書において用いられる「置換アルキル」なる用語は、1つまたは複数のハロゲン(F、Cl、Br、I)置換基を有する、上で定義したアルキルを意味する。
【0092】
本明細書において用いられる「複素環」なる用語は、最大4個のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和非芳香族、または芳香族のいずれかである、3から10員単環式または二環式複素環を意味する。ヘテロ原子はそれぞれ、4級化されていてもよい窒素;酸素;ならびにスルホキシドおよびスルホンを含む硫黄から独立に選択される。複素環は窒素、硫黄、または炭素原子を介して結合しうる。代表的複素環には、ピリジル、フリル、チオフェニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリンジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、キノリニル、-イソキノリニル、-クロモニル、-クマリニル、-インドリル、-インドリジニル、-ベンゾ[b]フラニル、-ベンゾ[b]チオフェニル、-インダゾリル、-プリニル、-4H-キノリジニル、-イソキノリル、-キノリル、-フタラジニル、-ナフチリジニル、-カルバゾリルなどが含まれる。複素環なる用語はヘテロアリールも含む。
【0093】
本明細書において用いられる「アリール」なる用語は、それ自体または別の基の一部で、フェニル、1-ナフチルなどの、典型的には6から14個の炭素原子を有する(すなわち、C6-C14アリール)、単環式および二環式芳香環系を意味する。
【0094】
本明細書において用いられる「置換アリール」なる用語は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)またはアルコキシを含む1つまたは複数の置換基を有する、上で定義したアリールを意味する。
【0095】
本明細書において用いられる「アラルキル」なる用語は、それ自体または別の基の一部で、1つまたは複数のアリール置換基を有する、上で定義したアルキルを意味する。非限定の例示的アラルキル基には、ベンジル、フェニルエチル、ジフェニルメチルなどが含まれる。
【0096】
本明細書において用いられる「アルコキシ」なる用語は、それ自体または別の基の一部で、末端酸素原子に結合されたアルキルを意味する。非限定の例示的アルコキシ基には、メトキシ、エトキシなどが含まれる。
【0097】
本明細書において用いられる「アルカン」なる用語は、直鎖または分枝非環式飽和炭化水素を意味する。代表的直鎖アルカンには、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、-n-ヘキシル、-n-ヘプチル、-n-オクチル、-n-ノニルおよび-n-デシルが含まれる。代表的分枝アルカンには、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、-ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルヘキシル、1,3-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルヘキシル、1,2-ジメチルヘプチル、1,3-ジメチルヘプチル、および3,3-ジメチルヘプチルが含まれる。
【0098】
本明細書において用いられる「アルケン」なる用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、直鎖または分枝非環式炭化水素を意味する。代表的直鎖および分枝アルケンには、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニル、-1-ヘキセニル、-2-ヘキセニル、-3-ヘキセニル、-1-ヘプテニル、-2-ヘプテニル、-3-ヘプテニル、-1-オクテニル、-2-オクテニル、-3-オクテニル、-1-ノネニル、-2-ノネニル、-3-ノネニル、-1-デセニル、-2-デセニル、-3-デセニルなどが含まれる。
【0099】
本明細書において用いられる「シクロアルカン」なる用語は、3から15個の炭素原子を有する、飽和環式炭化水素を意味する。代表的シクロアルカンはシクロプロピル、シクロペンチルなどである。
【0100】
本明細書において用いられる「アルキルシクロアルケン」なる用語は、それ自体または別の基の一部で、上で定義したシクロアルカンに結合された、上で定義したアルキルを意味する。
【0101】
本明細書において用いられる「シクロアルケン」なる用語は、環系内に少なくとも1つの炭素-炭素二重結合および5から15個の炭素原子を有する、単環式非芳香族炭化水素を意味する。代表的シクロアルケンには、-シクロペンテニル、-シクロペンタジエニル、-シクロヘキセニル、-シクロヘキサジエニル、-シクロヘプテニル、-シクロヘプタジエニル、-シクロヘプタトリエニル、-シクロオクテニル、-シクロオクタジエニル、-シクロオクタトリエニル、-シクロオクタテトラエニル、-シクロノネニル -シクロノナジエニル、-シクロデセニル、-シクロデカジエニルなどが含まれる。「シクロアルケン」なる用語はビシクロアルケンおよびトリシクロアルケンも含む。本明細書において用いられる「ビシクロアルケン」なる用語は、環の1つに少なくとも1つの炭素-炭素二重結合および8から15個の炭素原子を有する、二環式炭化水素環系を意味する。代表的ビシクロアルケンには、-インデニル、-ペンタレニル、-ナフタレニル、-アズレニル、-ヘプタレニル、-1,2,7,8-テトラヒドロナフタレニルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本明細書において用いられる「トリシクロアルケン」なる用語は、環の1つに少なくとも1つの炭素-炭素二重結合および8から15個の炭素原子を有する、三環式炭化水素環系を意味する。代表的トリシクロアルケンには、-アントラセニル、-フェナントレニル、-フェナレニルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0102】
本明細書において用いられる「芳香環」なる用語は、単環式、二環式および三環式環系のいずれも含む、5から14員芳香族炭素環を意味する。代表的芳香環はフェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリルである。
【0103】
本明細書において用いられる「オキソ」なる語句は、酸素への二重結合、すなわちC=Oを意味する。
【0104】
本明細書において用いられる「単糖」なる用語は、炭水化物の構築ブロックとして役立つ任意の単純糖を意味する。単糖の例には、グルコース、フコース、ガラクトース、およびマンノースが含まれる。
【0105】
本発明において用いるための他のセラミド様糖脂質には、表1のセラミド様糖脂質抗原が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0106】
(表1)



【0107】
本発明の改変細菌において、セラミド様糖脂質抗原を細菌細胞と「物理的に結合」して「改変細菌」を生成する。「物理的に結合」とは、細菌細胞との直接相互作用、例えば、形質膜または細菌細胞壁、例えば、マイコバクテリア細胞壁の脂質を多く含む表面へのセラミド様糖脂質の、当業者には公知の標準の方法による挿入を意味する。特定の態様において、セラミド様糖脂質を細菌細胞壁と、非共有結合による手段で物理的に結合する。例えば、セラミド様糖脂質存在下で培養した細菌細胞は、セラミド様糖脂質をそれらの細胞壁中に取り込むことになる。本発明の一つの局面において、非共有結合の相互作用により細菌細胞に物理的に結合されたセラミド様糖脂質は、細菌細胞壁から抽出可能なままであり、セラミド様糖脂質は抽出後にその化学的構造および生物活性を保持している。細胞壁と物理的に結合されたセラミド様糖脂質の検出は、当業者には公知の方法によって達成することができる。セラミド様糖脂質抗原を細菌細胞壁に安定に結合することにより、セラミド様糖脂質/細菌複合体を作成することができる。特定の態様において、本発明の組成物はセラミド様糖脂質抗原および細菌細胞の同時投与、例えば、糖脂質改変マイコバクテリア細胞の抗原提示細胞への提示を可能にする。特定の態様において、セラミド様糖脂質をマイコバクテリア細胞壁に取り込む。細菌細胞、例えば、マイコバクテリア細胞は不活化菌細胞、生菌細胞および/または弱毒菌細胞でありうる。もう一つの態様において、細菌細胞は組換え細胞でありうる。
【0108】
本発明の改変細菌細胞は、単一のセラミド様糖脂質抗原を含むこともでき、またはセラミド様糖脂質抗原の不均質な混合物を含むこともできる。すなわち、細菌細胞集団を単一のセラミド様糖脂質抗原と物理的に結合することもでき、またはセラミド様糖脂質抗原の混合物と物理的に結合することもできる。
【0109】
本発明の改変細菌、例えば、本発明のセラミド様糖脂質/細菌複合体、またはこれを含む組成物もしくはワクチン組成物は、例えば、検出もしくは診断目的のために、直接検出可能なように標識することもでき、または化合物に特異的に結合する第二の標識免疫試薬と共に用いることもできる。関心対象の標識には、色素、酵素、化学発光物質、粒子、放射性同位体、または他の直接もしくは間接的に検出可能な物質が含まれうる。または、第二段階の標識、例えば、本発明の化合物の成分の1つに対する標識抗体を用いることもできる。
【0110】
適当な酵素標識の例には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれる。
【0111】
適当な放射性同位体標識の例には、3H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pdなどが含まれる。適当な非放射性同位体標識の例には、157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、および56Feが含まれる。
【0112】
適当な蛍光標識の例には、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、o-フタルアルデヒド標識、およびフルオレスカミン標識が含まれる。
【0113】
化学発光標識の例には、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、およびエクオリン標識が含まれる。
【0114】
核磁気共鳴造影剤の例には、Gd、Mn、およびFeなどの重金属核が含まれる。
【0115】
前述の標識を本発明のセラミド様糖脂質またはポリペプチドに結合するための典型的な技術は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1-31 (1976)、およびSchurs et al., Clin. Chim. Acta 81:1-40 (1977)により提供されている。後者で述べられているカップリング技術は、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸塩法、ジマレイミド法、m-マレイミドベンジル-N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル法であり、これらの方法はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0116】
特定の態様において、セラミド様糖脂質はグリコシルセラミドもしくはその類縁体またはα-ガラクトシルセラミドもしくはその類縁体を含む。さらなる態様において、グリコシルセラミドまたはその類縁体は式Iを含む:

式中、R1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであるか;あるいはR1はC6-C27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)C6-C27アルカンもしくはアルケンはC5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されているか、または(ii)C6-C27アルカンもしくはアルケンは、C6-C27アルキルもしくはアルケニル鎖内に、C5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含み;
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数であり;
R4はα連結もしくはβ連結単糖であるか、またはR1が直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンである場合、R4は下記であり:

かつ
AはOまたは-CH2である。
【0117】
もう一つの態様において、α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体は式IIを含む:

式中
R1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであり;かつ
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数である。
【0118】
もう一つの態様において、α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体は式IIIを含む:

式中、RはHまたは-C(O)R1であり、ここでR1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであるか;あるいはR1はC6-C27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)C6-C27アルカンもしくはアルケンはC5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されているか、または(ii)C6-C27アルカンもしくはアルケンは、C6-C27アルキルもしくはアルケニル鎖内に、C5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含むか;またはR1は-(CH2)nR5であり、ここでnは0〜5の範囲の整数であり、かつR5は-C(O)OC2H5、置換されていてもよいC5-C15シクロアルカン、置換されていてもよい芳香環、もしくはアラルキルであり、かつ
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数である。
【0119】
さらなる態様において、R1は下記からなる群より選択される



式中、( )はR1の式IIIの化合物への結合点を表す。
【0120】
もう一つの態様において、α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体は、(2S,3S,4R)-1-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3,4-オクタデカントリオール(KRN7000)または(2S,3S)-1-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3-オクタデカンジオール)を含む。
【0121】
もう一つの態様において、α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体は、(2S,3S,4R)-1-CH2-(α-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3,4-オクタデカントリオール(α-C-GalCer)を含む。
【0122】
セラミド様糖脂質の他の非限定例は、Tsujiら、米国特許第7,273,852号;Taniguchiら、米国特許第6,531,453号;およびHigaら、米国特許第5,936,076号に記載されており、これらはすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0123】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞
自然の免疫系は、外来病原体に対する非常に攻撃的な防御免疫応答と正常組織に対する寛容を維持する必要性との間の複雑なバランスをとっている。最近では、多くの異なる細胞型の間の相互作用がこのバランスの維持に寄与しているという認識が高まっている。そのような相互作用は、例えば、TH1型T細胞による炎症促進性サイトカイン(例えば、インターフェロン-ガンマ)の産生またはTH1活性を抑制するTH2型T細胞によるインターロイキン-4(IL-4)の産生のいずれかの偏った応答を引き起こしうる。いくつかの異なる動物モデルにおいて、TH1へのT細胞の偏向は腫瘍または感染性病原体に対する防御免疫に有利に働くことが明らかにされている一方で、TH2へのT細胞の偏向は細胞媒介性自己免疫疾患の発症の予防における重要な因子でありうる。免疫刺激が攻撃的な細胞媒介性免疫を引き起こすか、またはそのような反応のダウンレギュレーションを引き起こすかを決める条件は、組織はそれぞれ異なる免疫応答に有利に働くように相互作用する抗原提示細胞(APC)およびリンパ球系統の特有のセットから構成されるという意味で高度に局部的である。例えば、最適な条件下で、正常組織に局在する樹状細胞(DC)は主に、寛容原性の相互作用に有利に働き、かつ細胞媒介性自己免疫に対する障壁として役立つ系統および成熟段階でありうる一方で、腫瘍または感染部位は、強力な細胞媒介性免疫応答を刺激する成熟骨髄樹状細胞を誘引するであろう。
【0124】
CD1d拘束NKT細胞は、局所環境での免疫刺激の結果を明確にするうえで重要な役割を果たすように思われる独特なクラスの非通常のT細胞である。これらはT細胞系統およびナチュラルキラー(NK)細胞系統の両方のマーカーの発現を、さらに大きなクラスのNKT細胞と共有している。したがって、NKT細胞はNK細胞のように先天性免疫の一部と考えられ、ヒトにおいて健常個体でのその頻度は全Tリンパ球の2.0%にもなりうる(Gumperz et al., J Exp Med 195:625 (2002);Lee et al., J Exp Med 195:637 (2007))。
【0125】
CD1d拘束NKT細胞は、単形性MHCクラスIb分子、CD1dにより提示される脂質および糖脂質抗原に対するその特異性によって他のNKT細胞と区別される(Kawano et al., Science 278:1626-1629 (1997))。CD1dは、β2-ミクログロブリンと結合する非MHCコード分子であり、古典的MHCクラスI分子に構造的に関連する。CD1dは、脂質尾部または疎水性ペプチドの炭化水素鎖を結合するために特殊化された疎水性の抗原結合ポケットを有する(Zeng et al., Science 277: 339-345, (1997))。CD1dは海綿由来のα-グリコシル化スフィンゴ脂質、α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)、およびα-連結ガラクトースまたはグルコースを有するがマンノースを有しないセラミド様糖脂質抗原などの関連分子を結合することが知られている。Kawano et al., Science 278: 1626-1629 (1997);およびZeng et al., Science 277: 339-345 (1997)。本明細書において論じるとおり、抗原提示細胞のCD1dに結合されたα-GalCerまたは関連分子での刺激によってCD1d拘束NKT細胞を活性化する能力は、この非通常型のT細胞サブセットの機能解析を大いに促進している。炎症の非存在下で、CD1d拘束NKT細胞は胸腺、肝臓および骨髄のような、特定の組織に優先的に局在することが明らかにされており(Wilson et al., Trends Mol Med 8:225 (2002))、NKT細胞の抗腫瘍活性はマウス肝転移において主に調べられている。
【0126】
NKT細胞はTH1およびTH2サイトカインの両方を分泌する珍しい能力を有し、強力な細胞障害機能ならびに調節機能が炎症、自己免疫および腫瘍免疫で記録されている(Bendelac et al., Science 268:863 (1995);Chen and Paul. J Immunol 159:2240 (1997);およびExley et al., J Exp Med 186:109 (1997))。
【0127】
CD1d拘束NKT細胞のなかには、高度に保存されたαβT細胞受容体(TCR)を発現する、本明細書において「iNKT細胞」と呼ぶサブセットがある。ヒトにおいてこのインバリアントTCRはVβ11と結合したVα24Jα15から構成されるのに対し、マウスにおいてこの受容体は高度に相同性のVα14Jα18およびVβ8.2を含む。他のCD1d拘束NKT細胞は、より可変性のTCRを発現する。CD1d拘束T細胞のTCRインバリアントおよびTCRバリアントクラスはいずれも、α-GalCerを負荷したCD1d四量体の結合によって検出することができる(Benlagha et al., J Exp Med 191:1895-1903 (2000);Matsuda et al., J Exp Med 192:741-754 (2000);およびKaradimitris et al., Proc Natl Acad Sci USA 98:3294-3298 (2001))。本出願において定義する、CD1d拘束NKT細胞(CD1d拘束NKT)は、インバリアントまたはバリアントTCRのいずれかを発現し、α-GalCerまたは関連するセラミド様糖脂質抗原のいずれかを負荷したCD1dを結合する、またはそれによって活性化される細胞を含む。本出願において定義する、CD1d拘束NKT細胞(CD1d-NKT)は、インバリアントまたはバリアントTCRのいずれかを発現し、α-GalCerまたはα-GalCerとは短縮した長鎖スフィンゴシン塩基(C5対C14)およびアシル鎖(C24対C26)を有することによって異なる、OCHなどの分子を含むα連結ガラクトースもしくはグルコースを有する関連するスフィンゴ脂質(Miyamoto et al., Nature 413:531-4 (2001))のいずれかを負荷したCD1dを結合する、またはそれによって活性化される細胞を含む。
【0128】
CD1d拘束NKTは、CD1dを発現する標的に対する直接的な細胞障害活性を有することが明らかにされている。しかしながら、免疫応答におよぼすCD1d拘束NKTの効果は、直接的な相互作用または、おそらくさらに重要なことには、DCとの相互作用を通じての間接的な動員による、他のリンパ球の動員を通じて増幅される可能性がある。CD1d拘束NKTは、免疫応答早期に多量のIL-4およびIFN-γを分泌する独特の能力を有する。IFN-γの分泌は、インターロイキン-12(IL-12)を産生するDCの活性化を誘導する。IL-12は、NKT細胞によってIFN-γ分泌をさらに刺激し、より多くのIFN-γを分泌するNK細胞の活性化も引き起こす。
【0129】
CD1d拘束NKTは多量のIL-4およびIFN-γの両方を速やかに分泌することができるため、免疫応答の偏向は、炎症促進性IFN-γサイトカインの効果が優勢か、または抗炎症性IL-4サイトカインの効果が優勢かに依存することになる。これは、部分的には、CD1d拘束NKTの異なるサブセットの相対頻度に関連して機能することが報告されている。これらのサブセットには、(i)CD4およびCD8の両方について陰性であり、炎症促進性IFN-γおよびTNF-αの分泌を含む主にTH1型応答をもたらす、インバリアントCD1d拘束NKT集団、ならびに(ii) CD4+であり、抗炎症性Th2型サイトカインIL-4、IL-5、IL-10およびIL-13の分泌を含むTH1型およびTH2型応答の両方をもたらすCD1d拘束NKTの別個の集団を含む(Lee et al., J Exp Med 195:637-41 (2002);およびGumperz et al., J Exp Med 195:625-36 (2002))。加えて、NKT細胞活性は、CD1dに結合された特定のセラミド様糖脂質に依存することによって差別的に調節される(例えば、米国特許出願公開第2006/0052316号を参照されたい)。CD1d拘束NKTサブセットの活性化に影響をおよぼす局所因子には、サイトカイン環境および、重要なことに、その環境に動員されるDCが含まれる。
【0130】
セラミド様糖脂質のファミリー(すなわち、α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)および関連するα-グリコシルセラミド)は、マウスNKT細胞による強力なCD1d拘束応答を刺激することが明らかにされている(Kawano et al., 1997)。これらの化合物はα-アノマーのヘキソース糖(ガラクトースまたはグルコースはNKT細胞認識のために活性)を含み、β-アノマー糖だけを含む哺乳動物の組織においてよく出現するセラミドとそれらを区別している。これらの化合物は、それらが当初単離された原料である海綿において自然に出現することが知られており、α-GalCerを腫瘍を有するマウスに注射すると、免疫活性化の結果、劇的な腫瘍拒絶を誘導することが示されて、免疫学者らの関心を集めることになった(Kobayashi et al., Oncol.Res. 7:529-534 (1995))。続いて、この活性は、α-GalCerのCD1d依存性メカニズムによりNKT細胞を急速に活性化する能力に結びつけられた。今では、α-GalCerはCD1dに結合し、NKT細胞のTCRに測定可能な親和性を有する分子を生じることが明らかにされている(Naidenko et al., J Exp.Med. 190:1069-1080 (1999);Matsuda et al., J Exp.Med. 192:741 (2000);Benlagha et al., J Exp.Med. 191:1895-1903 (2000))。したがって、α-GalCerは、インビトロおよびインビボの両方でNKT細胞の大部分の活性化を可能にする強力な薬剤を提供する。
【0131】
最も大々的に研究されたNKT活性化α-GalCerは、文献ではKRN7000と呼ばれ、当初、齧歯類におけるそれらの抗癌活性に基づき海綿から単離されたα-GalCerの天然型に類似の構造を有する、合成分子である(Kawano et al., Science 278:1626-1629 (1997);Kobayashi et al., 1995;Iijima et al., Bioorg. Med. Chem. 6:1905-1910 (1998);Inoue et al., Exp. Hematol. 25:935-944 (1997);Kobayashi et al., Bioorg. Med. Chem. 4:615-619 (1996a)およびBiol. Pharm. Bull. 19:350-353 (1996b);Uchimura et al., Bioorg. Med. Chem. 5:2245-2249 (1997a);Uchimura et al., Bioorg. Med. Chem. 5:1447-1452 (1997b);Motoki et al., Biol. Pharm. Bull. 19:952-955 (1996a);Nakagawa et al., Oncol. Res. 10:561-568 (1998);Yamaguchi et al., Oncol. Res. 8:399-407 (1996))。KRN7000の切断スフィンゴシン塩基を有する1つの合成類縁体は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)のマウスモデルにおいて自己免疫を抑制する能力の増強を示した(Miyamoyo et al., Nature 413:531-534 (2001))。α-GalCerスフィンゴシン塩基で変化した他の変異体が米国特許第5,936,076号で同定されている。
【0132】
1997年11月から現在までに大量の文献が、KRN7000が哺乳動物の免疫系を活性化するメカニズムについて研究してきた(Kawano et al., Science 278:1626-1629 (1997);Benlagha et al., J Exp. Med. 191:1895-1903 (2000);Burdin et al., Eur. J Immunol. 29:2014-2025 (1999);Crowe et al., J. Immunol. 171:4020-4027 (2003);Naidenko et al., J Exp. Med. 190:1069-1080 (1999);Sidobre et al., J. Immunol. 169:1340-1348 (2002);Godfrey et al., Immunol. Today 21:573-583 (2000);Smyth and Godfrey, Nat. Immunol. 1:459-460 (2000))。これらの試験は一様に、KRN7000の効果の最も近いメカニズムは、ほとんどの造血細胞、ならびに一部の上皮および他の細胞系統において発現される、CD1dタンパク質へのこの化合物の結合であることを示している。KRN7000のCD1dへの結合は、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)と呼ばれるTリンパ球のサブセットのT細胞抗原受容体(TCR)によって高い親和性で認識される分子複合体を生じる。KRN7000/CD1d複合体の認識は、肝臓、腎臓および他のリンパ器官に存在し、場合によっては任意の組織に移動する可能性を有するNKT細胞の急速な活性化を引き起こす。活性化NKT細胞は、広範なケモカインおよび他のサイトカインを急速に分泌し、樹状細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞などの他の細胞型を活性化する能力も有する。KRN7000/CD1d複合体によるNKT細胞の活性化に続く一連の事象は、免疫系に対する多くの可能性のある下流の効果を有することが明らかにされている。例えば、特定の型の感染の状況において、これは、感染に対する適応免疫を追加免疫し、治癒を促進する、アジュバント効果をもたらすことができる。または、特定の型の自己免疫疾患の状況において、KRN7000によるNKT細胞の活性化は、組織の破壊を抑制し、疾患を改善する様式で自己免疫応答の経過を変えることができる。
【0133】
NKTリンパ球の機能は、完全には解決されないままであるが、様々な研究は、免疫応答の調節におけるこれらのT細胞について重要な役割を指摘している。NKT細胞の特徴は、それらのα-βTCRを通じての刺激による大量のIL-4およびIFN-γ両方の急速な産生である(Exley et al., J. Exp. Med. 186:109 (1997)。事実、おそらくは免疫活性化の間のIL-4の早期産生を担う主要な細胞としてのそれらの同定は、2型(Th2)T細胞応答偏向において重要な役割を果たしうることを示唆した。これに関し、NKT細胞が、マウスにおける様々な異なる病原体による感染の結果を判定する上で重要な役割を果たすと確認されていることは驚くことではない。
【0134】
いくつかの間接的なメカニズムがCD1d拘束NKT細胞の防御効果に寄与している。インビボでのα-GalCerの投与によるNKT細胞の活性化は、NK細胞の同時活性化を引き起こす(Eberl and MacDonald, Eur. J. Immunol. 30:985-992 (2000);およびCarnaud et al., J. Immunol. 163:4647-4650 (1999))。NKT細胞が欠損しているマウスでは、α-GalCerはNK細胞による細胞障害活性を誘導することができない。NKT細胞は古典的なMHCクラスI拘束細胞障害性T細胞の誘導も増強する(Nishimura et al., Int Immunol 12:987-94 (2000);およびStober et al., J Immunol 170:2540-8 (2003))。
【0135】
CD1d拘束NKT細胞を特異的に活性化するために利用できる、定義した抗原、例えば、α-GalCerおよび関連抗原の有効性により、様々な免疫応答におけるこれらの非通常型T細胞の役割を調べることが可能になった。
【0136】
アルファ-GalCer投与はネズミマラリア、真菌感染およびB型肝炎ウイルス感染における防御効果を含む、いくつかの異なる細菌感染に効果を有する。Kakimi et al., J Exp Med 192:921-930 (2000);Gonzalez-Aseguinolaza et al., Proc Natl Acad Sci USA 97:8461-8466 (2000);およびKawakami et al., Infect Immun 69:213-220 (2001))。α-GalCerの投与の劇的な効果は腫瘍免疫の動物モデルにおいても観察されている。例えば、α-GalCerによる刺激はNKT依存的に肺転移および肝転移を抑制する(Smyth et al., Blood 99:1259 (2002))。加えて、α-GalCerは、1型糖尿病および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE、多発性硬化症の周知のマウスモデル系)を含む、特定の自己免疫疾患に対する防御効果を有することが明らかにされている。Hong S et al. Nat. Med. 7:1052-1056 (2001)およびMiyamoto K. et al., Nature 413:531-534 (2001))。
【0137】
NKT活性検定
免疫応答を調節する本発明の組成物の能力は、インビトロ検定によって容易に判定することができる。検定で用いるNKT細胞には、形質転換されたNKT細胞株、または哺乳動物から、例えば、ヒトもしくはマウスなどの齧歯類から単離されるNKT細胞が含まれる。NKT細胞は、CD1d:α-GalCer四量体を結合する細胞を選別することにより哺乳動物から単離することができる。例えば、Benlagha et al., J Exp Med 191:1895-1903 (2000);Matsuda et al., J Exp Med 192:741-754 (2000);およびKaradimitris et al., Proc Natl Acad Sci USA 98:3294-3298 (2001)を参照されたい。本発明の化合物または組成物がNKT細胞の活性を調節できるかどうかを判定するのに適した検定は、NKT細胞および抗原提示細胞を共培養し、抗原提示細胞またはNKT細胞のいずれかを直接に標的とする関心対象の特定の化合物または組成物を培地に添加し、IL-4またはIFN-γ産生を測定することにより行う。本発明の化合物もしくは組成物非存在下、または非標的指向抗体を伴う本発明の化合物もしくは組成物存在下での、同じ細胞共培養の間のIL-4またはIFN-γ産生の顕著な増加または減少は、NKT細胞の刺激または阻害を示す。
【0138】
検定において用いるNKT細胞を、増殖に適した条件下でインキュベートする。例えば、NKT細胞ハイブリドーマを、完全培地(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミンおよび5×10-5M 2-メルカプトエタノールを補足したRPMI 1640)中にて、約37℃および5%CO2で適当にインキュベートする。化合物の連続希釈液をNKT細胞培地に添加することができる。NKT細胞に添加する化合物の適当な濃度は、典型的には、10-12から10-6Mの範囲内である。わずかに最大下のNKT細胞活性化を与える抗原用量およびAPC数の使用は、本発明の化合物によるNKT細胞応答の刺激または阻害を検出するのに用いることができる。
【0139】
または、NKT細胞活性化の調節は、IL-4またはIFN-γなどの発現タンパク質の測定よりも、当技術分野において認識されている放射標識技術によって測定される抗原依存性T細胞増殖の変化によって判定することができる。例えば、標識(例えば、トリチウム化)ヌクレオチドを検定培地に導入することができる。DNAへのそのようなタグ付ヌクレオチドの取り込みは、T細胞増殖の尺度として役立つ。この検定は、増殖のために抗原提示を必要としないNKT細胞、例えば、NKT細胞ハイブリドーマには適していない。本発明の化合物または組成物との接触後のT細胞増殖レベルの差異は、複合体がT細胞の活性を調節することを示す。例えば、NKT細胞増殖の減少は、本化合物または組成物が免疫応答を抑制しうることを示す。NKT細胞増殖の増大は、本化合物または組成物が免疫応答を刺激しうることを示す。
【0140】
加えて、51Cr放出検定を用いて、細胞障害活性を判定することができる。
【0141】
これらのインビトロ検定を利用して、免疫応答を適切に調節しうるセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体およびそれを含む組成物を選択および同定することができる。前述の検定、例えば、IL-4もしくはIFN-γ産生またはNKT細胞増殖の測定を用いて、化合物との接触がT細胞活性化を調節するかどうかを判定する。
【0142】
加えて、または代替法として、動物、例えば、マウス、ウサギ、非ヒト霊長類における免疫化攻撃実験を用いて、免疫応答を適切に調節することができ、ヒトの細菌疾患、例えば、結核の治療および/または予防に有効でありうる、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体およびそれを含む組成物を同定することができる。例えば、マウスをセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体、例えば、BCG/αGalCerまたはBCG/α-C-GalCer(例えば、5×106CFU/マウス)でワクチン接種し、感染性細菌、例えば、毒性株の結核菌H37Rvで攻撃することができる、。
【0143】
治療法
本発明の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物を疾患、例えば、ウイルス疾患、細菌疾患、真菌疾患、寄生虫疾患、アレルギー疾患、または増殖性疾患、例えば、癌を予防するため、および疾患を治療的に処置するための両方に用いることができる。疾患をすでに患っている個体において、本発明を用いて動物の免疫系をさらに刺激または調節し、したがってその疾患または障害に関連する症状を低減または除去する。本明細書において定義される「治療」とは、動物において所与の疾患症状の重症度を予防、治癒、遅延、もしくは低減するため、および/または疾患にすでにかかっており、したがって治療を必要としている動物において特定の期間にわたり疾患の悪化をもたらさないための、本発明の一つまたは複数の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物の使用を意味する。
【0144】
「予防」または「予防する」なる用語は、疾患にまだかかっていない動物において免疫を生じ、それによって動物が後にその疾患を発症する傾向があったとしても疾患症状を予防または低減するための、本発明の一つまたは複数の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物の使用を意味する。したがって、本発明の方法は、治療的方法または予防的(preventative or prophylactic)方法ということができる。本発明のいかなる改変細菌、組成物、またはワクチン組成物も、病因物質に対する完全な免疫を提供する、またはすべての疾患症状を完全に治癒もしくは除去する必要はない。
【0145】
本明細書において用いられる「治療的および/または予防的免疫を必要としている動物」とは、特定の疾患症状の重症度を治療する、すなわち、予防、治癒、遅延、もしくは低減する、および/または特定の期間にわたり疾患の悪化をもたらさないことが望ましい個体を意味する。
【0146】
「有効量」は、1回投与または一連の投与の一部のいずれかでの、個体へのその投与が治療および/または予防のために有効である量である。ある量は、例えば、その投与が、感染性結核菌による攻撃の約2週間後に判定して、未治療の個体に比べて結核菌に関連する疾患症状の発生率または重症度の低減をもたらす場合、有効である。この量は治療する個体の健康および身体状態、治療する個体の分類群(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系の応答能力、望まれる防御の程度、ワクチンの製剤、医学的状況の専門的評価、ならびに他の関連する因子に応じて変動する。有効量は、日常的試験を通じて判定しうる、比較的広い範囲に入ることが予想される。
【0147】
「脊椎動物」なる用語は、単数の「脊椎動物」ならびに複数の「脊椎動物」を含むことが意図され、哺乳動物および鳥類、ならびに魚類、爬虫類、および両生類を含む。
【0148】
「哺乳動物」なる用語は、単数の「哺乳動物」および複数の「哺乳動物」を含むことが意図され、ヒト;類人猿、サル(例えば、ヨザル、リスザル、オマキザル、アカゲザル、アフリカグリーンサル、パタスザル、カニクイザル、およびオナガザル)、オランウータン、ヒヒ、テナガザル、およびチンパンジーなどの霊長類;イヌおよびオオカミなどのイヌ科;ネコ、ライオン、およびトラなどのネコ科;ウマ、ロバ、およびシマウマなどのウマ科、ウシ、ブタおよびヒツジなどの食用動物;シカおよびキリンなどの有蹄類;クマなどのクマ科;ならびにウサギ、マウス、フェレット、アザラシ、クジラなどの他の動物を含むが、それらに限定されるわけではない。特に、哺乳動物はヒト被験者、食用動物またはコンパニオンアニマルでありうる。
【0149】
「鳥類」なる用語は、単数の「鳥」および複数の「鳥」を含むことが意図され、カモ、ガチョウ、アジサシ、ミズナギドリ、およびカモメなどの野生水鳥;ならびにシチメンチョウ、ニワトリ、ウズラ、キジ、ガチョウ、およびアヒルなどの家畜鳥類を含むが、それらに限定されるわけではない。「鳥類」なる用語は、ムクドリおよびセキセイインコなどのスズメ目の鳥類も包含する。
【0150】
本発明は、そのような治療または予防を必要としている動物の疾患の予防法または治療法であって、その疾患を有する、またはその疾患にかかりやすい動物に細菌細胞、例えば、マイコバクテリア細胞、およびセラミド様糖脂質抗原を含む組成物を投与する段階を含み、ここで該セラミド様糖脂質は本明細書に記載の細菌細胞の細胞壁に取り込まれている方法を提供する。さらなる態様において、細菌細胞を別の病原体由来の抗原または腫瘍特異性抗原の送達のための担体として用いることができる。
【0151】
本発明は、免疫応答を調節する、すなわち刺激または阻害する方法であって、動物に細菌細胞、例えば、マイコバクテリア細胞、およびセラミド様糖脂質を含む組成物を投与する段階を含み、ここで該セラミド様糖脂質は本明細書に記載の細菌細胞の細胞壁に取り込まれている方法も含む。
【0152】
特定の態様において、本発明の方法は、疾患、例えば、マイコバクテリア疾患を有する動物の疾患を治療する段階であって、その疾患を有する動物に、本発明の組成物、例えば、細菌、例えば、改変マイコバクテリウム、例えば、その細胞壁に非共有結合様式で取り込まれた、セラミド様糖脂質に物理的に結合された、例えば、BCG細胞を、該疾患の進行を変化させるのに十分な量で投与することによる段階を含む。
【0153】
他の態様において、本発明の方法は、疾患、例えば、マイコバクテリア疾患の予防を必要としている動物の疾患を予防する段階であって、それを必要としている動物に、本発明の組成物、例えば、改変マイコバクテリウム、例えば、その細胞壁に非共有結合様式で取り込まれた、セラミド様糖脂質に物理的に結合された、例えば、BCG細胞を、細菌または細菌によってコードされる抗原に対する免疫応答を、セラミド様糖脂質を欠く非改変細菌細胞の投与に比べて増強するのに十分な量で投与することによる段階を含む。
【0154】
さらなる態様において、治療中または予防中の疾患は、ウイルス、細菌、真菌、もしくは寄生虫感染症、アレルギー、または癌などの増殖性疾患でありうるが、それらに限定されるわけではない。より具体的には、疾患は、例えば、結核、ハンセン病、結核に似た肺疾患、リンパ腺炎、皮膚疾患、播種性疾患、腺ペスト、肺ペスト、野兎病、レジオネラ病、炭疽、腸チフス熱、パラチフス熱、食物伝染病、リステリア症、マラリア、HIV、SIV、HPV、RSV、インフルエンザ、肝炎(HAV、HBV、およびHCV)でありうる。
【0155】
もう一つの態様において、本発明の方法は、動物の細菌細胞、例えば、マイコバクテリア細胞に対する免疫応答を増強する段階であって、動物に、本発明の改変細菌、例えば、細菌細胞の細胞壁に取り込まれたセラミド様糖脂質を投与することを含み;ここで改変細菌を、該動物の抗原に対する抗原特異的CD8 T細胞応答を増強し、ナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性を増強するのに十分な量で投与する段階を含む。
【0156】
もう一つの態様において、本発明の方法は、セラミド様糖脂質アジュバントおよび細菌細胞、例えば、マイコバクテリア細胞の、抗原提示細胞への同時投与であって、セラミド様糖脂質アジュバントを細菌細胞の細胞壁に安定に結合してセラミド様糖脂質/細菌複合体を作成し;次いでセラミド様糖脂質/細菌複合体を抗原提示細胞に投与することによる同時投与を含む。
【0157】
本明細書において用いられる「それを必要としている被験者」とは、疾患、例えば、細菌感染症の症状の重症度を治療する、すなわち、予防、治癒、遅延、もしくは低減する、および/または特定の期間にわたり疾患の悪化をもたらさないことが望ましい個体を意味する。
【0158】
これらの方法に従い、本発明の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物を、疾患の進行を変化させるのに十分な量で投与することができる。
【0159】
「免疫化」(ワクチンの投与)は、一般的かつ広く用いられる手順で、用いる本発明のワクチンは本質的に、毒性株の不活化菌および弱毒株の生菌を含むが、それらに限定されるわけではない、活発な免疫学的予防を意図する任意の製剤でありうる。Stedman's Illustrated Medical Dictionary (24th edition), Williams & Wilkins, Baltimore, p. 1526 (1982)。いくつかの場合には、ワクチンは有効な防御を誘導するために複数回投与しなければならず;例えば、公知の抗毒素ワクチンは複数用量で投与しなければならない。
【0160】
本明細書において用いられる「初回抗原刺激」または「初回抗原刺激の」および「追加免疫する」または「追加免疫」なる用語は、それぞれ、すなわち、これらの用語が免疫学において通常有する定義に従い、最初の、および後続の免疫化を意味する。しかし、特定の態様において、例えば、初回抗原刺激成分および追加免疫成分が1つの製剤中にある場合、「初回抗原刺激」および「追加免疫」組成物が同時に投与されるため、最初の、および後続の免疫化は必要でないこともある。McShane H, Curr Opin Mol Ther 4(1):13-4 (2002)およびXing Z and Charters TJ, Expert Rev Vaccines 6(4):539-46 (2007)も参照されたく、いずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0161】
他の態様において、本発明の1つまたは複数の組成物を「プライムブースト」法で用いる。これらの態様において、本発明の1つまたは複数のワクチン組成物を脊椎動物に送達し、それにより脊椎動物の細菌抗原、例えば、マイコバクテリア抗原に対する免疫応答を初回抗原刺激し、次いで第二の免疫原性組成物を追加免疫ワクチン接種として用いる。本発明の1つまたは複数のワクチン組成物を用いて免疫を初回抗原刺激し、次いで第二の免疫原性組成物、例えば、組換え細菌ワクチンを抗細菌免疫応答を追加免疫するために用いる。ワクチン組成物は、本明細書に記載の免疫原性ポリペプチドをコードする、1つまたは複数の遺伝子発現のための1つまたは複数のベクターを含みうる。
【0162】
本発明は、脊椎動物における病原体、例えば、細菌、真菌、ウイルス、もしくは寄生虫病原体、または腫瘍抗原に対する防御および/または治療免疫応答を生成、増強、または調節する方法であって、治療および/または防御免疫を必要としている脊椎動物に、本明細書に記載の1つまたは複数の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物を投与する段階を含む方法をさらに提供する。この方法において、組成物は、その細胞壁に取り込まれたセラミド様糖脂質を含む改変細菌、例えば、マイコバクテリウムを含む。
【0163】
特定の態様において、本発明の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物、例えば、BCG/αGalCerまたはBCG/α-C-GalCerを用いて、ワクチンに対する好ましい応答を得るのに必要な用量を低減することができる。これは、局所および全身毒性を低減し、したがってワクチンの安全性を高める潜在的利点を有すると考えられる。加えて、これは生産のコスト低減を可能にする利点も有しうる。
【0164】
本発明の特定の態様は、それ自体で投与され、したがって細菌細胞壁と関連してNKT細胞に提示されるセラミド様糖脂質抗原の複数回投与に対するNKT細胞のアネルギー反応を低減または除去する方法を含む。それ自体で投与したα-GalCerの複数回投与は、NKT細胞を長期間にわたって不応性とすることが明らかにされている。α-GalCerなどの糖脂質をセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体の一部として投与する本発明は、抗原に応答してのアネルギーからNKT細胞を防御し、複数回の投与による持続的応答を可能にする。したがって、本発明のセラミド様糖脂質抗原を負荷したセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体での刺激に応答してNKT細胞を活性化し、さらに、本発明のセラミド様糖脂質抗原を負荷したセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体による再刺激に応答してNKT細胞を再活性化することができる。
【0165】
本発明の方法に従い、本明細書に記載の細菌細胞およびセラミド様糖脂質抗原を含む組成物を、動物、例えば、脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトにおいて免疫応答を調節するために投与する。特定の態様において、本発明の方法は、例えば、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体の前、後、または同時に送達される免疫原に対する免疫応答の増強をもたらす。本発明のセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体を、例えば、免疫原とともに投与することで、典型的には、免疫細胞、例えば、NKT細胞またはNK細胞からのサイトカインの放出をもたらしうる。本発明の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物の投与に応答して放出されるサイトカインは、TH1型の免疫応答と関連するもの、例えば、インターフェロンガンマおよびTNF-アルファでありうる。あるいは、または加えて、本発明の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物の投与は、TH2型の免疫応答と関連するサイトカイン、例えば、IL-4、IL-5、IL-10、またはIL-13の放出をもたらすこともある。あるいは、または加えて、本発明の改変細菌、組成物、またはワクチン組成物の投与は、他のサイトカイン、例えば、IL-2、IL-1β、IL-12、IL-17、IL-23、TNF-β/LT、MCP-2、オンコスタチン-M、およびRANTESの放出をもたらすこともある。放出されるサイトカインのタイプを調節する方法は、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体のセラミド様糖脂質抗原を変化させることを含む。様々なセラミド様糖脂質抗原を、NKTまたは他の免疫細胞からのサイトカイン放出におよぼすそれらの効果について選択および試験することは、本明細書の他の部分、およびPorcelli、米国特許出願公開第2006/0052316号に記載されているインビトロ検定を用いて、ならびに当業者には周知のさらなる方法によって行うことができる。本発明のセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体およびそれを含むワクチン組成物の投与は、NKT細胞の増殖を誘導することにより、および同様にNK細胞、CTL、他のTリンパ球、例えば、CD8+またはCD4+ Tリンパ球、樹状細胞、Bリンパ球などを含むが、それらに限定されるわけではない、他の免疫細胞の動員およびまたは活性化を誘導することにより、免疫応答をさらに調節しうる。
【0166】
特定の態様において、本発明のセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体およびそれを含む組成物の投与は、細胞増殖、1つもしくは複数のサイトカインの産生、またはNK細胞、CTL、他のTリンパ球、例えば、CD8+もしくはCD4+ Tリンパ球、樹状細胞、Bリンパ球などを含むが、それらに限定されるわけではない、NKT以外の免疫系細胞の動員および/もしくは活性化などであるが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数のNKT細胞活性に影響を及ぼす。
【0167】
本発明の特定の態様は、細菌細胞/セラミド様糖脂質複合体によって発現される免疫原、例えば、病原体抗原または腫瘍抗原に対する免疫応答を調節するために用いる組換えワクチンとしての、本発明のセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体の使用を含む。したがって、本発明は、動物において免疫原に対する免疫応答を誘導する方法であって、それを必要としている動物に、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体中に存在する免疫原を含む組成物を投与する段階を含む方法を提供する。この態様に従い、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体を、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体なしでの免疫原の投与に比べて、免疫原、例えば、細菌病原体または組換え細菌によって発現される免疫原に対する免疫応答を誘導するのに十分な量で投与する。ワクチンとして用いるためのセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体は、特定の態様において、組換え抗原を提示する組換え細菌細胞でありうる。他の態様において、免疫応答はセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体の細菌細胞に対する。他の態様において、ワクチンとして用いるためのセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体は、例えば、Brunoら、米国特許出願公開第2006/0269540号に記載される、特定の臓器、組織、細胞または細胞表面マーカーを標的としうる。
【0168】
特定の態様において、本発明のセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体およびそれを含む組成物を、例えば、結核などの疾患をすでに患っている動物に治療ワクチンとして投与する。これらの方法に従い、本発明の改変細菌によって誘発される免疫応答は、疾患の症状を低減する、または疾患の重症度を緩和することによって、治療する、例えば、疾患の転帰に影響をおよぼすのに有効であり、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体を、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体の非存在下での免疫原投与に比べて、免疫原に対する免疫応答を調節するのに十分な量で投与する。または、本発明のセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体およびそれを含む組成物を、動物が将来かかりうる感染症などの疾患に対する予防ワクチンとして、すなわち症状を予防または低減するために投与する。これらの方法に従い、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体によって誘発される免疫応答は、疾患の症状を低減する、または疾患の重症度を緩和することによって、予防する、例えば、疾患の転帰に影響をおよぼすのに有効であり、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体を、セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体の非存在下での免疫原投与に比べて、免疫原に対する免疫応答を調節するのに十分な量で投与する。
【0169】
本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体組成物も提供する。そのような組成物は、本明細書の他の部分に記載する細菌細胞およびセラミド様糖脂質を含む。例えば、本発明のセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体組成物は、セラミド様糖脂質/マイコバクテリア細胞複合体、例えば、αGalCer/BCGおよびα-C-GalCer/BCGを含むことができる。
【0170】
本明細書において記載する方法、改変細菌、組成物、またはワクチン組成物は、感染因子、例えば、複合体の細菌細胞が異種抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、または寄生虫抗原を発現するセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体に対する免疫応答を上昇させるのにも有用である。本発明の方法、改変細菌、組成物、またはワクチン組成物によって治療しうる疾患または症状を引き起こしうる感染因子には、ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫因子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。ウイルスの例には、以下のDNAおよびRNAウイルス科が含まれるが、それらに限定されるわけではない:アルボウイルス(Arbovirus)、アデノウイルス科(Adenoviridae)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、アルテリウイルス(Arterivirus)、ビルナウイルス科(Birnaviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、カリチウイルス科(Caliciviridae)、サーコウイルス科(Circoviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae )(肝炎)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae )(サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、単純ヘルペス(Herpes Simplex)、帯状ヘルペス(Herpes Zoster)など)、モノネガウイルス(Mononegavirus) (例えば、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、モルビリウイルス(Morbillivirus)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae))、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae )(例えば、インフルエンザ(Influenza))、パポーバウイルス科(Papovaviridae)、パルボウイルス科(Parvoviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae )(痘瘡(Smallpox )またはワクシニア(Vaccinia)など)、レオウイルス科(Reoviridae )(例えば、ロタウイルス(Rotavirus))、レトロウイルス科(Retroviridae )(HTLV-I、HTLV-II、レンチウイルス(Lentivirus)など)、およびトガウイルス科(Togaviridae )(例えば、ルビウイルス(Rubivirus))。これらの科に入るウイルスは下記を含むが、それらに限定されるわけではない、様々な疾患または症状を引き起こしうる:関節炎、細気管支炎、脳炎、眼感染症(例えば、結膜炎、角膜炎)、慢性疲労症候群、肝炎(A型、B型、C型、E型、慢性活動性、デルタ)、髄膜炎、日和見感染症(例えば、AIDS)、肺炎、バーキットリンパ腫、水痘、出血熱、麻疹、流行性耳下腺炎、パラインフルエンザ、狂犬病、感冒、ポリオ、白血病、風疹、性感染症、皮膚病(例えば、カポジ肉腫、いぼ)、およびウイルス血症。
【0171】
同様に、疾患または症状を引き起こしうる細菌または真菌因子を、本発明の方法、改変細菌、組成物、またはワクチン組成物によって治療または予防することもできる。これらには以下のグラム陰性およびグラム陽性細菌科および真菌が含まれるが、それらに限定されるわけではない:放線菌目(Actinomycetales)(例えば、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ノカルジア(Norcardia))、アスペルギルス症(Aspergillosis)、バチルス科(Bacillaceae)(例えば、炭疽菌(Anthrax)、クロストリジウム(Clostridium))、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、ブラストミセス症(Blastomycosis)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、ブルセラ病(Brucellosis)、カンジダ症(Candidiasis)、カンピロバクター(Campylobacter)、コクシジオイデス症(Coccidioidomycosis)、クリプトコッカス症(Cryptococcosis)、皮膚真菌症(Dermatocycoses)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(クレブシエラ(Klebsiella)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、エルシニア(Yersinia))、エリジペロスリックス(Erysipelothrix)、ヘリコバクター(Helicobacter)、レジオネラ症(Legionellosis)、レプトスピラ症(Leptospirosis)、リステリア(Listeria)、マイコプラズマ目(Mycoplasmatales)、ナイセリア科(Neisseriaceae)(例えば、アシネトバクター(Acinetobacter)、淋病(Gonorrhea)、髄膜炎菌(Menigococcal))、パスツレラ科感染症(Pasteurellacea Infections)(例えば、アクチノバチルス(Actinobacillus)、ヘモフィルス(Heamophilus)、パスツレラ(Pasteurella))、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア科(Rickettsiaceae)、クラミジア科(Chlamydiaceae)、梅毒(Syphilis)、およびブドウ球菌(Staphylococcal)。これらの細菌科または真菌科は下記を含むが、それらに限定されるわけではない、以下の疾患または症状を引き起こしうる:菌血症、心内膜炎、眼感染症(結膜炎、結核、ブドウ膜炎)、歯肉炎、日和見感染症(例えば、AIDS関連感染症)、爪周囲炎、人工器官関連感染症、ライター病、百日咳または蓄膿症などの気道感染症、敗血症、ライム病、ネコ引っ掻き病、赤痢、パラチフス熱、食中毒、腸チフス、肺炎、淋病、髄膜炎、クラミジア、梅毒、ジフテリア、ライ病、副結核、結核、ハンセン病、結核に似た肺疾患、リンパ腺炎、皮膚疾患、播種性疾患、狼瘡、ボツリヌス中毒症、壊疽、破傷風、膿痂疹、リウマチ熱、猩紅熱、性感染症、皮膚疾患(例えば、蜂巣炎、皮膚真菌症)、毒素血症、尿路感染症、創傷感染症。
【0172】
さらに、本発明の方法、改変細菌、組成物、またはワクチン組成物を用いて、寄生中因子により引き起こされる疾患を治療または予防することもできる。本発明の化合物によって治療しうるものには以下の群が含まれるが、それらに限定されるわけではない:アメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、二核アメーバ症、媾疫、外部寄生虫症、ランブル鞭毛虫症、蠕虫症、リーシュマニア症、タイレリア症、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症、およびトリコモナス症。
【0173】
開示した方法に従い、本発明の方法において用いるための改変細菌、組成物、またはワクチン組成物は、例えば、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、または肺内経路により投与することができる。他の適当な投与経路には、気管内、経皮、眼内、鼻内、吸入、腔内、管内(例えば、膵臓への)、および実質内(すなわち、任意の組織への)投与が含まれるが、それらに限定されるわけではない。経皮送達には、皮内(例えば、真皮または表皮への)、経皮(例えば、経皮的)および経粘膜(すなわち、皮膚または粘膜組織への、または経由の)投与が含まれるが、それらに限定されるわけではない。腔内投与には、口、膣、直腸、鼻、腹膜、または腸腔への投与、ならびにくも膜下腔内(すなわち、脊柱管への)、脳室または心室内(すなわち、脳室または心室への)、心房内(すなわち、心房への)およびくも膜下(すなわち、脳のくも膜下腔への)投与が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0174】
本発明の組成物は、適当な担体をさらに含む。そのような組成物は治療上有効な量のセラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。そのような担体には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。製剤は投与の様式に適しているべきである。
【0175】
薬学的組成物
「薬学的に許容される」なる用語は、正しい医学的判断の範囲内で、妥当な損益比に釣り合う、過度の毒性または他の合併症なしにヒトおよび動物の組織と接触するのに適した組成物を意味する。いくつかの態様において、本発明の組成物およびワクチンは薬学的に許容される。
【0176】
本発明のセラミド様糖脂質/細菌細胞複合体は、一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせて、薬学的組成物、例えば、ワクチン組成物中で投与することができる。ヒト患者に投与する場合、本発明の薬学的組成物の1回または1日の全使用量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されよう。任意の特定の患者に対する具体的な治療上有効な用量レベルは、達成される応答のタイプおよび程度;もしあれば、用いる別の薬剤の具体的組成;患者の年齢、体重、全般的健康、性別、および食事;投与の時間、投与の経路、および組成物の排泄速度;治療期間;特定の組成物と組み合わせてまたは同時に使用する薬物(化学療法剤など);ならびに医療分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存することになる。当技術分野において公知の適当な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (latest edition), Mack Publishing Company, Easton, PAにおいて見出すことができる。
【0177】
所与の予防または治療処置において使用する組成物は、個々の患者の臨床状態(特に化合物単独での予防または治療の副作用)、化合物の送達の部位、投与の方法、投与の計画、および開業医には公知の他の因子を考慮に入れて、適正な医療行為に一致した様式で製剤化し、投薬することになる。したがって、本明細書における目的のための本発明の化合物の「有効量」は、そのような考慮によって決定される。
【0178】
患者に投与する本発明の組成物、例えば、ワクチン組成物の適当な用量は、医師が決定することになる。しかし、指標として、本発明の適当な量は、0.05から0.1mlの免疫学的に不活性な担体、例えば、薬学的担体に懸濁して、1回の投与につき約101から1012CFUの間、例えば、101、102、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、または1012CFUでありうる。一つの態様において、本明細書に記載の疾患を予防または治療する、例えば、治癒、改善、その重症度を軽減、または予防もしくは低減するのに十分な免疫を誘導するための、本発明のワクチンの有効量は、体重1kgあたり約103から約107コロニー形成単位(CFU)である。本発明の組成物は、1回投与または複数回投与で投与することができる。本発明のワクチン製剤は、経口投与用のカプセル剤、液剤、懸濁剤、もしくはエリキシル剤などの剤形で、または、例えば、非経口、鼻内もしくは局所投与用の液剤もしくは懸濁剤などの製剤のための無菌の液体で用いることができる。
【0179】
本発明の組成物は、経口、静脈内、直腸、非経口、大槽内、皮内、腟内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、ゲル、クリーム、滴剤もしくは経皮パッチのように)、口腔、または経口もしくは鼻噴霧で投与することができる。本明細書において用いられる「非経口」なる用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内注射および注入を含む投与の様式を意味する。
【0180】
本発明の組成物、例えば、ワクチン組成物は、公知の方法に従って製剤することができる。適当な調製法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition, A. Osol, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1980)、およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, A.R. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1995)に記載されており、これらはいずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。組成物は水溶液として投与することができるが、乳剤、ゲル、液剤、懸濁剤、凍結乾燥型、または当技術分野において公知の任意の他の型で投与することもできる。加えて、組成物は、例えば、希釈剤、結合剤、安定剤、および保存剤を含む、薬学的に許容される添加物を含むことができる。いったん製剤すれば、本発明の組成物を被験者に直接投与することができる。治療する被験者は動物でありえ;特に、ヒト被験者を治療することができる。
【0181】
特定の態様において、本発明のポリペプチド、例えば、免疫原性ポリペプチドを発現するベクターを有する、宿主細胞、例えば、細菌細胞を組成物に組み込む。本発明の組成物中の本発明のポリペプチドの濃度は大きく、すなわち、約0.1重量%未満、通常は約2重量%または少なくとも約2重量%から多くは20重量%〜50重量%以上まで変動しえ、主に選択した特定の投与様式に従い、液体の量、粘性などによって選択することになる。
【0182】
本発明の組成物は、通常、水溶液として、または再構成のために凍結乾燥製剤として、単位用量または複数回用量の容器、例えば、密封したアンプルまたはバイアルに保存することになる。直接取り込まれた糖脂質アジュバントを有するマイコバクテリア組成物を凍結乾燥することができ、組成物を注射のために再水和および懸濁すると、アジュバント活性は完全なまま回復する。凍結乾燥製剤の一例として、10mlのバイアルに5mlの滅菌ろ過1%(w/v)水溶液を満たし、得られた混合物を凍結乾燥する。注入溶液は、凍結乾燥組成物を水、例えば、静菌性の注射用水を用いて再構成することにより調製する。
【0183】
本発明の組成物は、任意の動物、例えば、哺乳動物(類人猿、ウシ、ウマ、ブタ、イノシシ、ヒツジ、齧歯類、ヤギ、イヌ、ネコ、ニワトリ、サル、ウサギ、フェレット、クジラ、およびイルカなど)、およびヒトへの投与のために有用である。
【0184】
ヒト疾患と良好な相関性を示すことが判明している動物モデルには、モルモットおよび非ヒト霊長類が含まれるが、それらに限定されるわけではない(例えば、Balasubramanian V et al., Immunobiology 191(4-5):395-401 (1994)およびBarclay WR et al., Infect. Immun. 2(5):574-582 (1970)を参照されたく、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0185】
本発明は、本発明の薬学的組成物の成分の1つまたは複数で満たされた1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたはキットも提供する。そのような容器に付随するのは、医用薬剤または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制している政府機関によって定められた形式の通知であってもよく、この通知はヒトへの投与のための製造、使用、または販売に関する政府機関による承認を反映する。加えて、本発明の組成物は、他の治療的組成物と共に用いることもできる。
【0186】
そのようなワクチンの適当な製剤には、液剤または懸濁液のいずれかとしての注射剤が含まれるが、それらに限定されるわけではなく;注射の前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体型を調製することもできる。この製剤は、乳化してもよく、またはリポソームに封入したポリペプチドであってもよい。活性な免疫原性成分は、多くの場合、薬学的に許容され、かつ活性成分と適合する賦形剤と混合する。適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロールなど、およびその組み合わせである。加えて、必要があれば、ワクチン製剤は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの有効性を増強するアジュバントなどの、少量の補助物質を含むこともできる。
【0187】
セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体を含む本発明の組成物は、追加のアジュバントをさらに含むことができる。有効でありうるアジュバントの例は前述しており、下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない:水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン、GM-CSF、QS-21(試験研究薬、Progenics Pharmaceuticals,Inc.)、DETOX(試験研究薬、Ribi Pharmaceuticals)、BCG、およびCpGを多く含むオリゴヌクレオチド。
【0188】
セラミド様糖脂質/細菌細胞複合体を含む本発明の組成物は、Toll様受容体(TLR)アゴニストでもある追加のアジュバントをさらに含むことができる。有効でありうるTLRアゴニストアジュバントの例には、下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない:N-アセチルムラミル-L-アラニン-D-イソグルタミン(MDP)、リポ多糖(LPS)、遺伝子操作された、および/または分解されたLPS、ミョウバン、グルカン、コロニー刺激因子(例えば、EPO、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、PEG化G-CSF、SCF、IL-3、IL6、PIXY 321)、インターフェロン(例えば、γ-インターフェロン、α-インターフェロン)、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18)、サポニン(例えば、QS21)、モノホスホリルリピドA(MPL)、3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)、非メチル化CpG配列、1-メチルトリプトファン、アルギナーゼ阻害剤、シクロホスファミド、免疫抑制機能を遮断する抗体(例えば、抗CTLA4抗体)、脂質(パルミチン酸残基など)、トリパルミトイル-S-グリセリルシステインリセリル-セリン(P3 CSS)、ならびにフロイントアジュバント。他のアジュバントの例には、イサトリビンおよびその誘導体(Anadys Pharmaceuticals)またはイミキモドおよびレシキモドなどのイミダゾキノリンアミン(Dockrell & Kinghom, J. Antimicrob. Chemother., 48:751-755 (2001)およびHemmi et al., Nat. Immunol., 3:196-200 (2002))、C8-置換またはN7,C-8-二置換グアニンリボヌクレオシドなどのグアニンリボヌクレオシド(Lee et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100:6646-6651 (2003)および特許公開番号JP-2005-089,334;国際公開公報第99/32122号;国際公開公報第98/01448号 国際公開公報第05/092893号;および国際公開公報第05/092892号に開示されている化合物、ならびにLee et al., Proc Natl Acad Sci USA, 103(6):1828-1833 (2006)に開示されているTLR-7アゴニストSM360320(9-ベンジル-8-ヒドロキシ-2-(2-メトキシ-エトキシ)アデニン)などの化合物が含まれる。
【0189】
イサトリビンに加えて、他のTLRアゴニストアジュバントには、9-ベンジル-8-ヒドロキシ-2-(2-メトキシエトキシ)アデニン(SM360320)、Actilon(商標)(Coley Pharmaceutical Group, Inc.)、およびSumitmo Pharmaceutical Co, Ltd.による以下の化合物が含まれる。

【0190】
本発明の組成物と併せて使用できる他のアジュバントは、PCT国際公開公報第2005/000348号、米国特許出願公開第2007/0292418号、および米国特許出願公開第2007/0287664号に開示されている。
【0191】
組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、または散剤でありうる。経口製剤は、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、標準の担体を含むことができる。
【0192】
本発明の組成物は、免疫応答を調節する他の化合物、例えば、サイトカインをさらに含むことができる。「サイトカイン」なる用語は、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、およびIL-18)、αインターフェロン(例えば、IFN-α)、βインターフェロン(IFN-β)、γインターフェロン(例えば、IFN-γ)、コロニー刺激因子(CSF、例えば、CSF-1、CSF-2、およびCSF-3)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、形質転換成長因子(TGF、例えば、TGFαおよびTGFβ)、およびインスリン様成長因子(IGF、例えば、IGF-IおよびIGF-II)を含むが、それらに限定されるわけではない、ポリペプチドを意味する。
【0193】
本発明の実施は、特に記載がない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、形質転換生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の通常の技術を利用し、これらは当技術分野の技術の範囲内である。そのような技術は文献において詳細に説明されている。例えば、

を参照されたい。
【0194】
抗体工学の一般的な原理は、Antibody Engineering, 2nd edition, C.A.K. Borrebaeck, Ed., Oxford Univ. Press (1995)に記載されている。タンパク質工学の一般的な原理は、Protein Engineering, A Practical Approach, Rickwood, D., et al., Eds., IRL Press at Oxford Univ. Press, Oxford, Eng. (1995)に記載されている。抗体および抗体-ハプテン結合の一般的な原理は、Nisonoff, A., Molecular Immunology, 2nd ed., Sinauer Associates, Sunderland, MA (1984);およびSteward, M.W., Antibodies, Their Structure and Function, Chapman and Hall, New York, NY (1984)に記載されている。加えて、当技術分野において公知の、および明記されていない免疫学の標準の方法は、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Stites et al. (eds), Basic and Clinical -Immunology (8th ed.), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)およびMishell and Shiigi (eds), Selected Methods in Cellular Immunology, W.H. Freeman and Co., New York (1980)におけるとおり、概ね理解される。
【0195】
免疫学の一般的な原理を記載している標準的な参考資料には、

が含まれる。
【0196】
上記に引用する参考文献のすべて、ならびに本明細書において引用するすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0197】
材料および方法
マウス
6から8週齢の雌野生型C57BL/6およびBALB/cマウスをJackson Laboratories(Bar Harbor, Maine)から入手した。CDId-/-マウスはM. ExleyおよびS. Balk(Beth Israel-Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston)による提供を受けた。V14i NKT細胞欠損Jα18-/-マウスはM. TaniguchiおよびT. Nakayama(Chiba University, Chiba, Japan)からの贈与であった。すべてのマウスを生物学的研究における安全性レベル3の施設に、特定病原体除去の条件下で収容し、施設で承認されたプロトコルで用いた。
【0198】
細胞および細胞株
C57BL/6およびBALB/cマウスからの骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、発表されたプロトコルに基づいて調製した。Lutz MB, et al., J Immunol Methods 223: 77-92 (1999)。簡単に言うと、骨髄細胞を大腿骨および脛骨から得、細菌学的ペトリ皿に2×106細胞/プレートで播種した。細胞をGM-CSF培地中で10日間インキュベートした後、非接着樹状細胞をLutzらに記載のとおりに回収した。Vα14i NKTハイブリドーマDN3A4-1.2はM. Kronenberg(La Jolla Institute for Allergy and Immunology, La Jolla, CA)により提供された。細胞を、5%CO2、37℃の加湿インキュベーター内、10%熱不活化FCS(Gemini Biological Products, Calabasas, CA)、10mM HEPES、2mM L-グルタミン、0.1mM可欠アミノ酸、55μM 2-メルカプトエタノール、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(GIBCO)を補足したRPMI-1640培地(GIBCO)中で培養した。脾細胞を、シリンジプランジャーでつぶし、70μM細胞ろ過器を通して調製した。赤血球溶解を赤血球溶解緩衝液(SIGMA)で実施した。肝単核細胞を以下の手順を用いて単離した。肝臓を0.014 Wunsch単位/mlのリベラーゼ(Roche)で30分間処理した。ホモジネートを70μM細胞ろ過器を通し、単核細胞をペレットから45%、67.5%パーコール勾配を用いて単離した。
【0199】
糖脂質
αGalCerを発表された方法に従って合成し(Yu, K.O.A. et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 102:3383 (2005))、α-C-GalCerをNIH Tetramer Core Facility(www.niaid.nih.gov/reposit/tetramer/genguide.html)から入手した。糖脂質を-20℃で乾燥保存した。貯蔵物から一定量を、インビトロ作業用にDMSO中100μMまたはインビボ試験用に0.5%トゥイーン-20/PBS中500μMのいずれかに再構成した。
【0200】
細菌株
ウシ結核菌BCG(Danish)はStatens Seaim Institute, Denmarkから入手し、組換えBCG-Ova(Pasteur株)はSubash Sad, National Research Council-Institute for Biological Sciences, Ottawa, Ontario, Canadaから親切にも贈与された(Dudani R et al., J. Immunol. 168(11): 5737-45 (2002)参照)。これらの株を0.05%チロキサポールおよび20μg/mlのαGalCerまたはα-C-GalCerのいずれかを含む無タンパク質Middlebrook 7H9培地(Difco)中で培養した。毒性結核菌株H37Rv(Trudeau Instituteから入手)をオレイン酸-アルブミン-デキストロース複合体(Difco)を補足したMiddlebrook 7H9培地中で培養した。
【0201】
14C標識αGalCerのBCG生菌への取り込み
ウシ結核菌BCGを0.05%チロキサポールおよび20μg/mlの14C-標識αGalCerをOD 0.5から1.0まで含む無タンパク質Middlebrook 7H9培地中で培養した。細菌を十分に洗浄し、乾燥し、脂質取り込みをβ-シンチレーション計数により評価した。乾燥した細菌を用いて細胞壁脂質を抽出し、これをTLC検定に用いた。
【0202】
BCGに取り込まれたαGalCerおよびα-C-GalCer(それぞれαGalCer-BCGおよびα-C-GalCer-BCG)のインビトロ活性
NKTハイブリドーマ検定のために、BMDCをBCG、αGalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGにより、MOI 10:1で感染させ、Vα14i NKTハイブリドーマ細胞(50,000細胞)を加えて12時間置いた。上清のIL-12をELISAで検定した。脾細胞または肝細胞刺激のために、BCG、αGalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGに感染したC57BL/6 BMDCを含む96穴平底組織培養プレートに、プレートごとにバルク脾細胞を500,000細胞または肝単核細胞を400,000細胞播種した。脾細胞活性化のために、感染したBMDCを25,000細胞/ウェルから出発して3,125細胞/ウェルまで4倍希釈した細胞数で用いた。肝細胞をウェルごとに105の感染BMDCで刺激した。37℃で48時間後、サイトカイン測定のために150μlの上清を取り出した。IL-4およびIFNγの上清レベルをELISAで、捕捉およびビオチン化検出抗体対(BD PharMingen)ならびにストレプトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Zymed)をTMB-Turbo基質(Pierce)と共に用いて測定した。
【0203】
ヒトNKT細胞クローン活性化
ヒト単球由来樹状細胞をMOI 5:1で感染させ、NKT細胞クローン(50,000細胞)と共に24時間インキュベートし、上清をIFNγおよびIL-13について検定した。
【0204】
BCGに取り込まれたαGalCerのインビボ活性
マウスに0.2mlのPBSプラス0.05%チロキサポールまたは媒体単独中のαGalCer-BCGを腹腔内(i.p.)注射した。血清を採取し、IL-4、IL-12p70、およびIFNγについて、Yu KO et al., Proc Natl Acad Sci USA 102: 3383-3388 (2005)に記載の捕捉ELISAにより試験した。
【0205】
αGalCer-BCG腹腔内注射後のインビトロ樹状細胞成熟検定
C57BL/6マウスまたはCD1d-/-マウスにαGalCer-BCGをi.p.注射し、脾細胞および肝単核細胞を20時間後および40時間後に回収した。細胞をCD11c、CD80、CD86、MHC-II(IA/IE)、CD70、41BBおよびOX40に対する蛍光色素標識した抗体で染色した。試料をLSR IIフローサイトメーターで分析した。
【0206】
T細胞IFN-γ ELISPOT検定
インビトロでELISPOTを用いて、OVA 257-264ペプチド(SIINFEKL(配列番号:1))、TB10.3/4 MHC-I(H-2Kd)拘束ペプチド(GYAGTLQSL(配列番号:2))またはTB10.3/4 MHC-I(H-2Kb)拘束ペプチド(QIMYNPAM(配列番号:3))による刺激後の感染マウスからの個々のCD8+ T細胞によるIFNγ分泌を検出した。ELISPOTプレート(Millipore)をIFNγ捕捉抗体(BD Biosciences)により室温(RT)で16時間コーティングした。プレートを洗浄し、1%BSAによりRTで2時間ブロックした。RBC溶解緩衝液(Sigma-Aldrich)による処理後、T細胞をDynal Mouse T Cell Negative Isolation Kit(Invitrogen)を用いて分離した。分離したT細胞を未処置マウスからの脾細胞およびペプチド(5μg/ml)と共に37℃で24時間培養した。細胞を除去した後、プレートをPBSと続いて0.05%トゥイーン20を含むPBS(PBST)で洗浄した。ビオチン化抗IFNγ検出抗体(BD Biosciences)を加えて37℃で2時間置き、続いてPBSTで洗浄した。ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(Sigma-Aldrich)をプレートに加えて1時間(37℃)置き、続いて洗浄し、BCIP/NBT基質(Sigma-Aldrich)を加えた。ウェルを水で洗浄して反応を停止しELISPOT読み取り器(Autoimmun Diagnostika)を用いてスポットを計数した。結核菌Ag85Bのアミノ酸240から254のペプチド-25

(5μg/ml)に対するCD4+ T細胞応答も評価した。
【0207】
インビボ抗原提示検定
供与体脾細胞をRag1欠損OT-1 TCR-トランスジェニックマウス(Taconic/National Institute of Allergy and Infectious Diseases [NIAID])から単離した。RBC溶解後、細胞をPBSプラス0.1%BSA中5×107細胞/mlの濃度で10μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)によりRTで5分間標識した。細胞をPBSプラス0.1%BSAで1回とPBSで2回洗浄した後、B6.PL(Thy1.1+)受容体マウス(The Jackson Laboratory)に注射した。マウスに5×106または1×107いずれかの標識細胞を側方尾静脈から注射し、次いで5×106 CFUのBCG-OVA/αGalCer、BCG-OVAまたはBCGで皮下にワクチン接種した。脾細胞を5〜7日後に回収し、抗Thy1.2、抗CD8および抗B220抗体(BD Biosciences)で染色し、フローサイトメトリーで分析した。移入した集団(Thy1.2+)でゲーティングし、この集団内の非分裂(CFSEhigh)細胞のパーセンテージを測定することにより、増殖を定量した。
【0208】
ワクチン接種および攻撃試験
すべての動物試験はAlbert Einstein College of Medicineの施設動物ケアおよび使用委員会により承認された。C57BL/6マウスに、BCG単独または糖脂質の1つと共に培養したBCGのいずれかで皮内にワクチン接種した(5x106 CFU/マウス)。吸入性攻撃を2ヶ月後にGlas-Col吸入チャンバーを用いて行い、動物ごとに50〜100 CFUの毒性株結核菌H37Rvを送達した。マウスを攻撃の3および6週間後に屠殺した。個々のマウスの肺および脾臓を無菌的に摘出し、Seward Stomacher 80ブレンダー(Tekmar)を用い、5mlの生理食塩水プラス0.05%トゥイーン80中で別々にホモジナイズした。ホモジネートを連続希釈し、ハイグロマイシン(50μg/ml)を含むMiddlebrook 7H10寒天上に播種した。肺組織を、標準のパラフィン固定、切断およびH&E染色を用いて、組織病理学検査用に処理した。
【0209】
実施例1
αGalCerのマイコバクテリア生菌細胞壁への安定な取り込み
【0210】
本実施例は、例示的なセラミド様糖脂質、αGalCerのマイコバクテリウム細胞壁への安定な取り込みを示す。マイコバクテリア細胞、ウシ結核菌BCGは弱毒生菌ワクチンで、APCにより活発に摂取され、抗原提示のために処理される。14C-標識αGalCerの(1)ポリソルベートトゥイーン80(0.05%)および(2)チロキサポール(0.05%)中の溶解性を試験した。14C-標識αGalCerのチロキサポールによる溶解性は、トゥイーン80における溶解性よりも大きかった(図1A)。BCG細胞を無タンパク質Middlebrook 7H9培地中、14C-標識αGalCerおよびチロキサポール(0.05%)存在下で培養した。次いで、細胞をPBS-チロキサポール(0.05%)で十分に洗浄し、シンチレーション計数は放射性標識したαGalCerがBCG細胞壁と結合していることを示した(図1B)。
【0211】
細胞壁脂質を14C-標識αGalCer存在下で培養したBCGから抽出し、薄層クロマトグラフィにかけた。脂質抽出物からの放射性標識した脂質は遊離14C-標識αGalCerと同様の移動性を有し、このセラミド様糖脂質が細胞壁に安定に結合しており、化学的に無傷であることを示していた(図1C)。TLCバンドの定量により、放射性標識したセラミド様糖脂質の約21.4%が細菌細胞壁に取り込まれたことが判明した。したがって、セラミド様糖脂質、αGalCerは、マイコバクテリア細胞壁に安定に取り込まれ、糖脂質アジュバントおよびBCGワクチンの両方の同時投与が可能となった。
【0212】
実施例2
マウスおよびヒト検定において、BCG細胞壁に結合したαGalCerまたはα-C-GalCerはインビトロで生物活性である
【0213】
本実施例は、マイコバクテリア細胞壁に取り込まれたセラミド様糖脂質(セラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体)は生物活性であることを示す。αGalCerおよびその類縁体はインビトロでNKT細胞を活性化することが知られている。この生物活性を試験して、マイコバクテリア細胞壁に取り込まれたセラミド様糖脂質がインビトロでNKT細胞を活性化する能力を保持しているかどうかを判定した。α-GalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGで感染させたマウスBMDCをNKT細胞ハイブリドーマと共にインキュベートした。IL-2は上清中に用量依存的様式で容易に検出可能であり、BCG細胞壁に結合したセラミド様糖脂質それぞれによるインビトロでの非常に効率的なNKT細胞活性化が示された(図2A)。図2の値はすべて三つ組培養によって示している。
【0214】
図2Bおよび図2Cに示すとおり、αGalCer-BCG感染BMDCによるマウス脾細胞の活性化は、IFNγおよびIL-4産生を誘導した。αGalCer-BCG感染BMDCによる肝単核細胞刺激は、IFNγおよびIL-4を誘導した(それぞれ図2Gおよび2H)一方で、α-C-GalCer-BCG感染BMDCは肝単核細胞からIFNγは誘導したが、検出可能なIL-4は誘導されなかった(図2Gおよび2H)。α-GalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGの活性を、感染単球由来ヒト樹状細胞でNKT細胞クローンを刺激することにより、ヒト系でも試験した。α-GalCer-BCG複合体はIFNγ、TNFαおよびIL-13を用量依存的様式で強力に誘導し、セラミド様糖脂質アジュバントをワクチン細胞の細胞壁に取り込む戦略はヒトにも適用可能であることを示していた(それぞれ図2D、2Eおよび2F)。
【0215】
αGalCer-BCG感染ヒト単球由来樹状細胞のヒトNKT細胞クローンを活性化する能力は、このワクチン戦略が結核に対するヒトのワクチン接種に適用可能であることを示している。
【0216】
実施例3
αGalCer-BCGはインビボで検出可能なサイトカイン応答を誘導する
【0217】
本実施例は、セラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体がインビボ活性を保持していることを示す。αGalCerのマウスへの投与は、血清サイトカイン応答を誘導する。セラミド様糖脂質に結合したBCG細胞のインビボ活性を試験した。αGalCer-BCG細胞(5×106)をC57BL/6マウスに腹腔内注射し、血清のサイトカインを様々な時点で調べた。αGalCer/BCG複合体はIFNγ、IL-12およびIL-4の顕著な血清レベルを誘導し(図3A、3Bおよび3C)、動力学は遊離糖脂質で見られたものと同様であった。したがって、αGalCer/BCG複合体は、インビボで活性であることが判明した。血清サイトカインは、αGalCer/BCGを注射したCD1d KOまたはJα18 KOマウス(いずれもNKT欠損)では検出されず(データは示していない)、αGalCer/BCG複合体によるサイトカイン誘導はCD1dとの結合を通じてであり、NKT細胞活性化に関与していることが示された。
【0218】
実施例4
α-GalCerはインビボで樹状細胞上で共刺激分子を活発に誘導する
【0219】
本実施例は、セラミド様糖脂質/マイコバクテリウム複合体がCD11c+樹状細胞(DC)上で共刺激分子の発現を誘導する能力を保持していることを示す。αGalCerおよびα-C-GalCerは単独でCD11c+樹状細胞上で共刺激分子の発現を誘導しうることが知られている。C57BL/6マウスにαGalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGをi.p注射した。脾臓および肝臓におけるCD11c+ DC上のMHC-IIおよび共刺激分子の発現レベルを試験した。両方のセラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体は、BCG単独に比べて、脾臓および肝臓における共刺激分子CD80、CD86、CD70および4-1BBのアップレギュレーションを誘導した(図4Aおよび4B)。MHC-IIおよび共刺激分子の増加倍率を図4Cおよび4Dに示す。取り込まれたα-C-GalCerアジュバントは肝臓においてCD86、CD70および41BB分子のより明白なアップレギュレーションを誘導した(図4D)。MHC IIアップレギュレーションは脾臓および肝臓においてBCGにより誘導されたものと同様であった。遺伝的にCD1dを欠損しているマウスを試験することにより、これらの効果はインバリアントNKT細胞活性化に依存することも確認された(データは示していない)。
【0220】
これらの結果は、セラミド様糖脂質の生物活性はBCG細胞壁への取り込み後に無傷であることを示している。特に、αGalCer-BCGおよびα-C-GalCer-BCGは、DC上のCD80およびCD86、ならびにMHCクラスII分子を含む共刺激分子の発現増大により判定して、DCの完全な成熟を誘導する。成熟および共刺激マーカーのアップレギュレーションは、BCGワクチン単独を投与したマウスではセラミド様糖脂質-複合BCGに比べて遅延し、後者はおそらくマイコバクテリア抗原に対するT細胞応答の改善に寄与する。したがって、セラミド様糖脂質-取り込みBCG細胞を注射したマウスは、BCG細胞単独に比べて改善されたワクチン効果を有していた。
【0221】
実施例5
セラミド様糖脂質アジュバントの同時投与による抗原特異的CD8 T細胞初回抗原刺激の増強
【0222】
本実施例は、その細胞壁にαGalCerおよびα-C-GalCerが安定に取り込まれたマイコバクテリアは、BCGにより発現されたマイコバクテリア抗原に対して改善されたCD8 T細胞応答を示す。C57BL/6マウスにBCG-OVAと複合したα-GalCerまたはBCG-OVAと複合したα-C-GalCerをワクチン接種し、IFNγ ELISPOTにより脾臓におけるSIINFEKL(配列番号:1)OVAペプチド応答性CD8 T細胞について分析した。BCG-OVAワクチンと複合した糖脂質を投与したマウスでは、BCG-OVA単独でワクチン接種したマウスと比べて、3週間または2ヶ月のいずれの時点でも、SIINFEKL特異的CD8 T細胞の有意に増強された初回抗原刺激が観察された(それぞれ図5Aおよび5B)。内因性マイコバクテリア抗原TB10.4のMHC-IエピトープGYAGTLQSL(配列番号:2)に対するCD8 T細胞初回抗原刺激を増強する、BCGと複合したαGalCerのアジュバント効果を、IFNγ ELISPOTによりワクチン接種したBALB/cマウスで分析した。CD8+ T細胞活性化をカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)希釈により感染の5〜7日後に評価した。αGalCer複合BCGワクチンを投与したマウスは、非ワクチン接種またはBCG単独によるワクチン接種に比べて、GYAGTLQSL(配列番号:2)特異的CD8 T細胞応答の増大を示した(図5C)。これらの結果は、マイコバクテリア抗原特異的CD8 T細胞応答は、セラミド様糖脂質およびBCG-OVAによる免疫化中にNKT細胞を活性化することにより増強されることを示している。
【0223】
SIINFEKL/H-2Kb-反応性TCR-トランスジェニックOT-IマウスからのCFSE標識未処置T細胞の養子移入を用いて、ワクチン接種に関連してSIINFEKLと反応性のMHCクラスI拘束CD8+ T細胞初回抗原刺激が示された。Hinchey J, et al., J Clin Invest 117: 2279-2288 (2007)。Thy1.1+ B6.PLマウスにOT-IマウスからのCFSE標識Thy1.2+脾細胞を注射し、続いてBCG-OVA単独、αGalCer/BCG-OVA複合体またはα-C-GalCer/BCG-OVA複合体のいずれかをワクチン接種した。CD8+ T細胞活性化および増殖を、注射の5〜7日後に移入集団におけるCFSEの希釈により評価した(図5D)。移入したOT-I T細胞の部分増殖が、BCG-OVAで感染させたマウスで観察された(非分裂細胞のパーセンテージで示す)。これとは対照的に、αGalCer/BCG-OVAまたはα-C-GalCer/BCG-OVA感染は移入T細胞の増殖において有意な増大を誘導した(図5E)。
【0224】
実施例6
NKT細胞活性化セラミド様糖脂質の細胞壁取り込みはウシ結核菌BCGワクチンにより誘導される防御免疫を増強する
【0225】
免疫化および攻撃試験を用いて、本実施例は、マウスにαGalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGのいずれかでワクチン接種した場合に観察されるT細胞初回抗原刺激の増強は、BCGワクチンの防御効果も改善することを示す。
【0226】
未処置(食塩水)または5×106生菌BCG(Danish)、αGalCer-BCGもしくはα-C-GalCer-BCGCで皮内経路により2ヶ月前に免疫化したC57BL/6マウスを、毒性結核菌H37Rvの低用量(50〜100 CFU)エアロゾル感染により攻撃した。未処置マウスでは、攻撃の3および6週間後に肺における実質的増殖および脾臓への播種が検出された。しかし、BCG(Danish)、αGalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGによるワクチン接種は、エアロゾル攻撃したマウスの肺および脾臓の両方で、未処置対照に比べて結核菌の細菌量をかなり低減した(図6Aおよび6B)。α-C-GalCer-BCGワクチン接種は肺および脾臓の両方において、3週間の時点でBCGよりも有意に良好に防御した。α-C-GalCer-BCGによる免疫化は、攻撃の6週間後に両臓器におけるCFUの低下によって示されるとおり、BCG免疫化に比べて、結核菌感染の制御においてより長期の効果も示した。C-グリコシドは肺および脾臓の両方でBCGの防御効果を改善するため、αGalCerよりも優れており、おそらくこの類縁体は明白なTh1サイトカイン応答を誘導するためであろう。αGalCer-BCGおよびα-C-GalCer-BCG免疫化により誘発される防御は、肺および脾臓において6週間の時点でBCGにより得られるものよりも有意に強力であった。
【0227】
BCG、αGalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGのいずれかで免疫化したマウスからの肺の組織検査により、広範で、器質化が不良の、肉芽腫性病変を有する未処置マウスに比べて、小さく緻密なリンパ球を多く含む肉芽腫を伴う比較的軽度の炎症が示された(図7A、7B、7C、および7D)。αGalCer/BCGでワクチン接種したマウスでは、BCGワクチン接種したマウスで見られる組織球およびリンパ球の混合浸潤に比べて、主にリンパ球浸潤が観察された。
【0228】
したがって、αGalCerまたはα-C-GalCer取り込みBCGによる1回の皮内免疫化は、結核菌株H37Rvによるエアロゾル攻撃に対する防御免疫の有意な増強をもたらした。
【0229】
実施例7
【0230】
取り込まれたセラミド様糖脂質のアジュバント活性はCD1dを必要とし、NKT細胞活性化特異的である
【0231】
本実施例は、取り込まれたセラミド様糖脂質によって提供されるアジュバント活性はNKT細胞の特異的活性化によることを示している。いずれも糖脂質によって活性化されるインバリアントNKT細胞を欠損している、CD1dノックアウト(KO)マウスまたはJα18 KOマウスによる免疫化および攻撃実験を用いた。BCG免疫化および糖脂質複合BCG免疫化CD1d KOマウス(図6C)およびJα18 KOマウス(図6D)の間で、防御の差異は観察されなかった。したがって、インバリアントNKT細胞の存在は、マイコバクテリア細胞壁に取り込まれたセラミド様糖脂質により野生型マウスで提供される防御の増強にとって重要である。
【0232】
実施例8
セラミド様糖脂質アジュバントによる抗原特異的CD4 T細胞初回抗原刺激
【0233】
本実施例は、αGalCer-BCGおよびα-C-GalCer-BCGがAg85Bマイコバクテリア抗原のp25に対するCD4 T細胞応答を増強しないことを示す。C57BL/6マウスにαGalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGでワクチン接種し、IFNγ ELISPOTにより脾臓におけるマイコバクテリア抗原-85Bのp25ペプチドに対するCD4 T細胞応答について分析した。糖脂質複合BCGワクチンを受けたマウスと、BCG単独でワクチン接種したマウスとを比べて、これらのCD4 T細胞の初回抗原刺激において差異は観察されなかった(図8A、8Bおよび8C)。CD4+ T細胞活性化をCFSE希釈により感染の7日後に評価した。BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGによるワクチン接種の2ヶ月後に、C57BL/6マウスの肺におけるリンパ球のパーセンテージはαGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGによる有意な増強を示さなかった(図8D)。
【0234】
ワクチン接種に関連して、抗原85Bのp25に反応性のMHCクラスII拘束CD4 T細胞の初回抗原刺激が観察された。p25反応性TCRトランスジェニックマウスからのCFSE標識未処置T細胞の養子移入を用いた。Wolf AJ et al., J. Immunol. 179(4):2509-19 (2007)。Thy1.1+ B6.PLマウスにp25マウスからのCFSE標識Thy1.2+脾細胞を注射し、続いてBCG単独、αGalCer-BCGまたはα-C-GalCer-BCGのいずれかでワクチン接種した。移入集団において、感染の7日後に、CD4+ T細胞活性化および増殖をCFSEの希釈により評価した(図8E)。BCG、αGalCer/BCGまたはα-C-GalCer/BCGを感染させたマウスにおいて、移入p25 T細胞の有意な増殖は観察されなかった(図8F)。BCG単独またはBCGおよびセラミド様糖脂質アジュバントのいずれかで免疫化したマウスの間で、p25 CD4 T細胞の活性化および増殖は同様であった。
【0235】
したがって、糖脂質アジュバントはCD4 T細胞応答に対して影響を有していないようであった。
【0236】
実施例9
BCGに取り込まれたセラミド様糖脂質の投与による抗原特異的CD8 T細胞初回抗原刺激の、別々の投与またはBCG単独に比べての増強
【0237】
本実施例は、BCG細胞壁に取り込まれたセラミド様糖脂質によるワクチン接種は、BCG-OVA+αGalCerの別々の投与(異なる部位で別々に注射)、BCG-OVA+αGalCerの混合投与(注射の直前に同じシリンジ内で混合)またはBCG-OVA単独に比べて、マイコバクテリア抗原に対するCD8 T細胞応答の増強を引き起こすことを示す。投与は皮内注射によって行った。1群あたり3匹のマウスを免疫化した。別々、混合または細胞壁取り込みαGalCerおよびBCGによる免疫化の17日後のマウスにおける、OVAペプチドのSIINFEKL(配列番号:1)残基に特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定により、BCG細胞壁に取り込まれたαGalCerによるT細胞初回抗原刺激の増強が示された(図9A)。αGalCer-BCGによる免疫化後のマウスにおけるTB10.3/4 MtbペプチドのGYAGTLQSL(配列番号:2)残基に特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定でも、別々または混合投与に比べて活性の増強が示された(図9B)。αGalCer/BCGによる免疫化後のマウスにおけるTB10.4に特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定およびαGalCer+BCG-OVA(別々または混合しての投与)による免疫化後のマウスにおけるSIINFEKLに特異的なIFNγ産生CD8 T細胞についてのELISPOT検定により、取り込まれたセラミド様糖脂質は、別々または混合投与に比べて活性を増強することが示されている(図10Aおよび10B)。同様の結果が、αGalCerの代わりにα-C-GalCerを用いて得られた(図11)。したがって、物理的に結合されたセラミド様糖脂質アジュバントおよびマイコバクテリア細胞は、BCGなどのマイコバクテリアワクチンのアジュバント効果の基礎と考えられる、CD8 T細胞の改善された増強を示す。
【0238】
これらの結果は、アジュバントをマイコバクテリウムに感染した同じ細胞に直接送達することにより、セラミド様糖脂質アジュバントは増強された効果を有することを示している。したがって、取り込まれたアジュバントは、用いるワクチンの用量を低減し、同時に局所および全身毒性を低減し、かつワクチン製造のコストを低下させうると予想される。
【0239】
本明細書において引用するすべての出版物(特許、特許出願、学術誌の記事、実験マニュアル、書籍、または他の文書を含む)の全開示は、参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌細胞およびセラミド様糖脂質を含む改変細菌であって、該セラミド様糖脂質が該細菌細胞と物理的に結合された改変細菌。
【請求項2】
前記セラミド様糖脂質がグリコシルセラミドまたはその類縁体を含む、請求項1記載の改変細菌。
【請求項3】
前記グリコシルセラミドまたはその類縁体が式Iを含む、請求項2記載の改変細菌:

式中、R1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであるか;あるいはR1はC6-C27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)C6-C27アルカンもしくはアルケンはC5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されているか、または(ii)C6-C27アルカンもしくはアルケンは、C6-C27アルキルもしくはアルケニル鎖内に、C5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含み;
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数であり;
R4はα連結もしくはβ連結単糖であるか、またはR1が直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンである場合、R4は下記であり:

かつ
AはOまたは-CH2である。
【請求項4】
R1が-(CH2)22CH3または-(CH2)24CH3である、請求項3記載の改変細菌。
【請求項5】
R2が-CH(OH)-(CH2)13CH3である、請求項3記載の改変細菌。
【請求項6】
R4がガラクトシル、マンノシル、フコシルまたはグルコシルである、請求項3記載の改変細菌。
【請求項7】
前記セラミド様糖脂質がα-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体を含む、請求項1記載の改変細菌。
【請求項8】
前記α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体が式IIを含む、請求項7記載の改変細菌:

式中
R1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであり;かつ
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数である。
【請求項9】
R2が-CH(OH)(CH2)XCH3であり、ここでXは4〜13の範囲の整数である、請求項8記載の改変細菌。
【請求項10】
R1が(CH2)9CH=CH-CH2-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)8CH=CH-CH2-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)7CH=CH-CH2-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)3CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-(CH2)4CH3、(CH2)3CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2CH3、(CH2)7CH=CH-CH2-CH=CH=(CH2)4CH3、(CH2)7CH=CH-CH=CH(CH2)5CH3、(CH2)8CH=CH-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)9CH=CH-CH=CH(CH2)5CH3、(CH2)6CH=CH-CH=CH-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)6CH=CH-CH=CH-CH=CH(CH2)4CH3および(CH2)7CH=CH-CH=CH-CH=CH(CH2)3CH3からなる群より選択される、請求項8記載の改変細菌。
【請求項11】
二重結合がシスまたはトランスである、請求項10記載の改変細菌。
【請求項12】
前記α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体が式IIIを含む、請求項7記載の改変細菌:

式中、RはHまたは-C(O)R1であり、ここでR1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであるか;あるいはR1はC6-C27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)C6-C27アルカンもしくはアルケンはC5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されているか、または(ii)C6-C27アルカンもしくはアルケンは、C6-C27アルキルもしくはアルケニル鎖内に、C5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含むか;またはR1は-(CH2)nR5であり、ここでnは0〜5の範囲の整数であり、かつR5は-C(O)OC2H5、置換されていてもよいC5-C15シクロアルカン、置換されていてもよい芳香環、もしくはアラルキルであり、かつ
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数である。
【請求項13】
R1がオキソ;ヒドロキシ;ハロゲン;フェニル;-OC(O)R6;-OR6;-C(O)R6;またはN(R6)2で置換されており、
ここでR6はそれぞれ独立に水素、C1-C6アルキル、またはハロゲン;ヒドロキシ;-OC(O)R7;-OR7;-C(O)R7もしくはN(R7)2で置換されていてもよい芳香環であり、かつ
ここでR7はそれぞれ独立に水素またはC1-C6アルキルである、請求項12記載の改変細菌。
【請求項14】
R1が下記からなる群より選択される、請求項12記載の改変細菌



式中、( )はR1の式IIIの化合物への結合点を表す。
【請求項15】
前記α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体が、(2S,3S,4R)-1-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3,4-オクタデカントリオール(KRN7000)または(2S,3S)-1-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3-オクタデカンジオール)を含む、請求項7記載の改変細菌。
【請求項16】
前記α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体が、(2S,3S,4R)-1-CH2-(α-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3,4-オクタデカントリオール(α-C-GalCer)を含む、請求項7記載の改変細菌。
【請求項17】
前記セラミド様糖脂質が前記細菌細胞の細胞壁に取り込まれている、請求項1から16のいずれか一項記載の改変細菌。
【請求項18】
前記細菌細胞がマイコバクテリア細胞、リステリア(Listeria)細胞、サルモネラ(Salmonella)細胞、エルシニア(Yersinia)細胞、フランシセラ(Francisella)細胞、およびレジオネラ(Legionella)細胞からなる群より選択される、請求項1から17のいずれか一項記載の改変細菌。
【請求項19】
前記細菌細胞がマイコバクテリア細胞である、請求項18記載の改変細菌。
【請求項20】
前記マイコバクテリア細胞が結核菌(M. tuberculosis)複合体(MTBC)細胞および非結核性マイコバクテリア(NTM)細胞からなる群より選択される、請求項19記載の改変細菌。
【請求項21】
前記マイコバクテリア細胞がMTBC細胞である、請求項20記載の改変細菌。
【請求項22】
前記MTBC細胞が結核菌細胞、ウシ結核菌(M. bovis)細胞、ウシ結核菌カルメット-ゲラン桿菌(BCG)細胞、M.アフリカナム(M. africanum)細胞、M.カネッティ(M. canetti)細胞、M.カプラエ(M. caprae)細胞、およびM.ピンニペディイ(M. pinnipedii')細胞からなる群より選択される、請求項21記載の改変細菌。
【請求項23】
前記MTBC細胞が結核菌細胞である、請求項22記載の改変細菌。
【請求項24】
前記MTBC細胞がBCG細胞である、請求項22記載の改変細菌。
【請求項25】
前記マイコバクテリア細胞がNTM細胞である、請求項20記載の改変細菌。
【請求項26】
前記NTM細胞がスメグマ菌(M. smegmatis)細胞である、請求項25記載の改変細菌。
【請求項27】
前記細菌細胞が生菌、不活化菌、または弱毒菌細胞である、請求項1から26のいずれか一項記載の改変細菌。
【請求項28】
前記細菌細胞が生菌細胞である、請求項27記載の改変細菌。
【請求項29】
前記細菌細胞が不活化菌細胞である、請求項27記載の改変細菌。
【請求項30】
前記細菌細胞が弱毒菌細胞である、請求項27または28記載の改変細菌。
【請求項31】
抗原に対する抗原特異的CD8 T細胞応答を増強する、請求項1から30のいずれか一項記載の改変細菌。
【請求項32】
前記抗原がマイコバクテリア抗原である、請求項31記載の改変細菌。
【請求項33】
異種抗原を発現する、請求項1から31のいずれか一項記載の改変細菌。
【請求項34】
前記異種抗原がウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、または腫瘍特異性的抗原である、請求項33記載の改変細菌。
【請求項35】
前記異種抗原が免疫原性ペプチドである、請求項33記載の改変細菌。
【請求項36】
前記細菌細胞が組換え細菌細胞である、請求項1から35のいずれか一項記載の改変細菌。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項記載の改変細菌、および薬学的担体を含む組成物。
【請求項38】
前記薬学的担体が食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
アジュバントをさらに含む、請求項37記載の組成物。
【請求項40】
前記アジュバントが糖脂質、サイトカイン、ケモカイン、サイトカインおよびケモカインの産生を誘導する化合物、成長因子、インターフェロン、細菌成分、アルミニウム塩、カルシウム塩、シリカ、ポリヌクレオチド、類毒素、血清タンパク質、ウイルス、ウイルス由来材料、毒物、毒液、イミダゾキニリン化合物、TLR9アゴニスト(例えば、CPG ODNS)、TLR7/8アゴニスト(例えば、イミキモド)、ポロキサマー、カチオン脂質、不活性担体、プルロニックブロックコポリマー、デポー形成剤、界面活性材料、マクロファージ刺激物質、交代経路補体活性化物質、非イオン性界面活性剤、mLT、MF59(商標)、SAF、Ribi(商標)アジュバント系、LPS誘導体(例えば、モノホスホリルリピドA(MPL))、トレハロースジミコレート(TDM)、細胞壁骨格(CWS)、Detox(商標)、QS21、Stimulon(商標)、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、3-O-脱アシル化MPL、CpGオリゴヌクレオチド、サポニン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル、ならびに複数の第二のアジュバントの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
請求項1から35のいずれか一項記載の改変細菌または請求項35から40のいずれか一項記載の組成物を含むワクチン組成物。
【請求項42】
動物の疾患の治療法であって、該治療を必要としている動物に請求項1から35のいずれか一項記載の改変細菌、請求項35から40のいずれか一項記載の組成物、または請求項41記載のワクチン組成物を投与する段階を含み、ここで該改変細菌は該疾患の進行を変化させるのに十分な量で投与する方法。
【請求項43】
動物の疾患の予防法であって、該予防を必要としている動物に請求項1から35のいずれか一項記載の改変細菌、請求項35から40のいずれか一項記載の組成物、または請求項41記載のワクチン組成物を投与する段階を含み、ここで該改変細菌は該動物において該疾患に対する免疫応答を誘導するのに十分な量で投与する方法。
【請求項44】
免疫応答を前記セラミド様糖脂質と結合していない細菌細胞によって生成される免疫応答に比べて増強または改変する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記疾患がウイルス疾患、細菌疾患、真菌疾患、寄生虫疾患、および増殖性疾患からなる群より選択される、請求項42から44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記疾患が細菌疾患である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記疾患がマイコバクテリア疾患である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記疾患が結核、結核に似た肺疾患、リンパ腺炎、皮膚疾患、播種性疾患、腺ペスト、肺ペスト、野兎病、レジオネラ病、炭疽、腸チフス熱、パラチフス熱、食物伝染病、リステリア症、マラリア、HIV、SIV、HPV、RSV、インフルエンザ、肝炎(HAV、HBV、およびHCV)、および癌からなる群より選択される、請求項42から46のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
前記マイコバクテリア疾患が結核である、請求項47記載の方法。
【請求項50】
動物において抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、該動物に請求項1から35のいずれか一項記載の改変細菌、請求項35から40のいずれか一項記載の組成物、または請求項41記載のワクチン組成物を投与する段階を含む方法。
【請求項51】
前記改変細菌を前記動物の抗原特異的CD8 T細胞応答を増強する、またはナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性を増強するのに十分な量で投与する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記免疫応答が抗体応答を含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記免疫応答がCD8 T細胞応答を含む、請求項50記載の方法。
【請求項54】
前記免疫応答がCD8 T細胞応答および抗体応答を含む、請求項50記載の方法。
【請求項55】
動物においてBCGに対するCD8 T細胞応答を調節する方法であって、該動物に請求項1から35のいずれか一項記載の改変細菌、請求項35から40のいずれか一項記載の組成物、または請求項41記載のワクチン組成物の有効量を投与する段階を含み、ここで該細菌細胞はBCG細胞である方法。
【請求項56】
前記投与が筋肉内、静脈内、気管内、鼻内、経皮、皮内、皮下、眼内、膣、直腸、腹腔内、腸内、吸入、または該経路の複数の組み合わせからなる群より選択される経路による、請求項42から55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記投与が皮内投与である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
請求項1から35のいずれか一項記載の改変細菌、請求項35から40のいずれか一項記載の組成物、または請求項41記載のワクチン組成物を含むキット。
【請求項59】
前記改変細菌が凍結乾燥されている、請求項60記載のキット。
【請求項60】
前記改変細菌を投与するための手段をさらに含む、請求項58または59記載のキット。
【請求項61】
セラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体の作成法であって、(a)培地中でマイコバクテリア細胞を培養する段階、および(b)セラミド様糖脂質を培地に、該セラミド様糖脂質が該マイコバクテリア細胞の細胞壁に結合する条件下で加える段階を含む方法。
【請求項62】
抗原に対するワクチンを産生する方法であって:(a)請求項61記載のセラミド様糖脂質/マイコバクテリア複合体を単離する段階、および(b)(a)の単離した複合体に薬学的担体を加える段階を含む方法。
【請求項63】
前記マイコバクテリア細胞が結核菌複合体(MTBC)細胞および非結核性マイコバクテリア(NTM)細胞からなる群より選択される、請求項61または62記載の方法。
【請求項64】
前記NTM細胞がスメグマ菌細胞である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記MTBC細胞が結核菌細胞、ウシ結核菌細胞、BCG細胞、M.アフリカナム細胞、M.カネッティ細胞、M.カプラエ細胞、およびM.ピンニペディイ細胞からなる群より選択される、請求項63記載の方法。
【請求項66】
前記MTBC細胞が結核菌細胞である、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記MTBC細胞がウシ結核菌細胞である、請求項65記載の方法。
【請求項68】
前記MTBC細胞がBCG細胞である、請求項65記載の方法。
【請求項69】
前記細菌細胞が生菌、不活化菌、または弱毒菌細胞である、請求項61から68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
前記セラミド様糖脂質がグリコシルセラミドまたはその類縁体を含む、請求項61〜69のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
前記グリコシルセラミドまたはその類縁体が式Iを含む、請求項70記載の方法:

式中、R1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであるか;あるいはR1はC6-C27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)C6-C27アルカンもしくはアルケンはC5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されているか、または(ii)C6-C27アルカンもしくはアルケンは、C6-C27アルキルもしくはアルケニル鎖内に、C5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含み;
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数であり;
R4はα連結もしくはβ連結単糖であるか、またはR1が直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンである場合、R4は下記であり:

かつ
AはOまたは-CH2である。
【請求項72】
R1が-(CH2)22CH3または-(CH2)24CH3である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
R2が-CH(OH)-(CH2)13CH3である、請求項71記載の方法。
【請求項74】
R4がガラクトシル、マンノシル、フコシルまたはグルコシルである、請求項71記載の方法。
【請求項75】
前記セラミド様糖脂質がα-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体を含む、請求項61〜69のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
前記α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体が式IIを含む、請求項75記載の方法:

式中
R1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであり;かつ
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数である。
【請求項77】
R2が-CH(OH)(CH2)XCH3であり、ここでXは4〜13の範囲の整数である、請求項76記載の方法。
【請求項78】
R1が(CH2)9CH=CH-CH2-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)8CH=CH-CH2-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)7CH=CH-CH2-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)3CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-(CH2)4CH3、(CH2)3CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2-CH=CH-CH2CH3、(CH2)7CH=CH-CH2-CH=CH=(CH2)4CH3、(CH2)7CH=CH-CH=CH(CH2)5CH3、(CH2)8CH=CH-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)9CH=CH-CH=CH(CH2)5CH3、(CH2)6CH=CH-CH=CH-CH=CH(CH2)4CH3、(CH2)6CH=CH-CH=CH-CH=CH(CH2)4CH3および(CH2)7CH=CH-CH=CH-CH=CH(CH2)3CH3からなる群より選択される、請求項76記載の方法。
【請求項79】
二重結合がシスまたはトランスである、請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体が式IIIを含む、請求項79記載の方法:

式中、RはHまたは-C(O)R1であり、ここでR1は直鎖もしくは分枝C1-C27アルカンもしくはC2-C27アルケンであるか;またはR1は-C(OH)-R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分枝C1-C26アルカンもしくはC2-C26アルケンであるか;あるいはR1はC6-C27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)C6-C27アルカンもしくはアルケンはC5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されているか、または(ii)C6-C27アルカンもしくはアルケンは、C6-C27アルキルもしくはアルケニル鎖内に、C5-C15シクロアルカン、C5-C15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含むか;またはR1は-(CH2)nR5であり、ここでnは0〜5の範囲の整数であり、かつR5は-C(O)OC2H5、置換されていてもよいC5-C15シクロアルカン、置換されていてもよい芳香環、もしくはアラルキルであり、かつ
R2は以下の(a)〜(e)の1つであり:
(a)-CH2(CH2)XCH3
(b)-CH(OH)(CH2)XCH3
(c)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)2
(d)-CH=CH(CH2)XCH3
(e)-CH(OH)(CH2)XCH(CH3)CH2CH3
ここでXは4〜17の範囲の整数である。
【請求項81】
R1がオキソ;ヒドロキシ;ハロゲン;フェニル;-OC(O)R6;-OR6;-C(O)R6;またはN(RO)2で置換されており、
ここでR6はそれぞれ独立に水素、C1-C6アルキル、またはハロゲン;ヒドロキシ;-OC(O)R7;-OR7;-C(O)R7もしくはN(R7)2で置換されていてもよい芳香環であり、かつ
ここでR7はそれぞれ独立に水素またはC1-C6アルキルである、請求項75記載の方法。
【請求項82】
R1が下記からなる群より選択される、請求項81記載の方法



式中、( )はR1の式IIIの化合物への結合点を表す。
【請求項83】
前記α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体が、(2S,3S,4R)-1-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3,4-オクタデカントリオール(KRN7000)または(2S,3S)-1-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3-オクタデカンジオール)を含む、請求項75記載の方法。
【請求項84】
前記α-ガラクトシルセラミドまたはその類縁体が、(2S,3S,4R)-1-CH2-(α-ガラクトピラノシル)-N-ヘキサコサノイル-2-アミノ-1,3,4-オクタデカントリオール(α-C-GalCer)を含む、請求項75記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−514476(P2012−514476A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545467(P2011−545467)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/020531
【国際公開番号】WO2010/081026
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(506120688)アルバート アインシュタイン カレッジ オブ メディシン オブ イェシバ ユニバーシティ,ア ディビジョン オブ イェシバ ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】