説明

細胞検出装置

【課題】検出精度の高い細胞検出装置を提供すること。
【解決手段】第1金属パイプ10と、第1金属パイプ10と離間して配置された第2金属パイプ20と、第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20とともに流路50を構成し、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20とは電気的に絶縁された絶縁部30と、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間に電界を生じさせ、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスに基づいて被検出細胞を検出する検出回路40と、を含み、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lが、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全身の末梢血中を循環するミクロ単位の循環がん細胞(Circulating Tumor Cell;以下では「CTC」と記載する)の数に基づいて、がんの再発の有無を確認する循環がん細胞検出検査(CTC検査)が開発されている。
【0003】
CTC検査に用いる装置として、非特許文献1には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップに形成した流路内に2つの白金電極を対向するように形成し、白金電極間のインピーダンスの変化に基づいて、血液中に浮遊するCTCを検出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Andre A. Adams 他9名、「Highly Efficient Circulating Tumor Cell Isolation from Whole Blood and Label-Free Enumeration Using Polymer-Based Microfluidics with an Integrated Conductivity Sensor」、(米国)、Journal of the American Chemical Society、2008年7月9日、第130巻、第27号、p.8633−8641
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載されている装置では、MEMSチップに形成された流路に対して垂直方向にインレット及びアウトレットを設ける必要があるため、流路全体を直線的に製造することは難しい。このため、流路抵抗が大きくなったり、異物による流路詰まりが発生したりして、現実のCTC検査で用いる検出精度を確保することは難しかった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、検出精度の高い細胞検出装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本形態に係る細胞検出装置は、第1金属パイプと、前記第1金属パイプと離間して配置された第2金属パイプと、前記第1金属パイプ及び前記第2金属パイプとともに流路を構成し、前記第1金属パイプと前記第2金属パイプとは電気的に絶縁された絶縁部と、前記第1金属パイプと前記第2金属パイプとの間に電界を生じさせ、前記第1金属パイプと前記第2金属パイプとの間のインピーダンスに基づいて被検出細胞を検出する検出回路と、を含み、前記第1金属パイプと前記第2金属パイプとの最短距離を与える線が、前記流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差する。
【0008】
本形態によれば、第1金属パイプと第2金属パイプと絶縁部とを含んで流路を構成しているため、流路を直線的に形成することが容易になる。これにより、流路抵抗を小さくしたり、異物による流路詰まりを抑制したりできる。また、本形態によれば、第1金属パイプと第2金属パイプとの最短距離を与える線が、流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差するため、第1金属パイプと第2金属パイプとの間の電気力線が流路を横切る。これにより、被検出細胞が流路を通過した場合に電気力線を横切る可能性が高まるため、被検出細胞の検出精度が高まる。したがって、検出精度の高い細胞検出装置を実現できる。
【0009】
(2)この細胞検出装置は、前記第1金属パイプは、45度以上90度未満のカット角となる第1端部を有し、前記第2金属パイプは、45度以上90度未満のカット角となる第2端部を有し、前記第1端部と前記第2端部とが対向するように配置されていてもよい。
【0010】
カット角は、第1金属パイプ又は第2金属パイプに液体を流した場合に液体の流れる方向と垂直な面を基準面とした場合における基準面と切断面とのなす角である。
【0011】
これにより、金属パイプを切断するだけで第1金属パイプ及び第2金属パイプを製造することができる。また、第1端部及び第2端部を45度以上90度未満のカット角とすることで、第1金属パイプと第2金属パイプとの最短距離を与える線が、流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差するように容易に構成できる。
【0012】
(3)この細胞検出装置は、前記流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と垂直な面に投影した場合に、前記第1端部のうち、前記流路に液体を流した場合に液体の流れる方向の端点と、前記第2端部のうち、前記流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と逆方向の端点とが、異なる位置になるように前記第1金属パイプ及び前記第2金属パイプが構成されていてもよい。
【0013】
これにより、第1金属パイプと第2金属パイプとの最短距離を与える線が、流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差するように容易に構成できる。
【0014】
(4)この細胞検出装置は、前記第1端部と前記第2端部とが、点対称となる形状に構成されていてもよい。
【0015】
これにより、第1金属パイプと第2金属パイプとの最短距離を与える線が、液体の流れる方向からみた流路の中心を通るため、被検出細胞の検出精度がさらに高まる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る細胞検出装置1を模式的に表したブロック図。
【図2】図2(A)は、検出部60の詳細な構成例を説明するための模式図、図2(B)は、図2(A)のA−A線における断面図。
【図3】図3(A)は、検出回路40の一例を説明するための回路図、図3(B)は、図3(A)に示される回路図における検出部60の等価回路図。
【図4】図4(A)は、検出回路40の他の例を説明するための回路図、図4(B)は、図4(A)に示される回路図における検出部60の等価回路図。
【図5】本実施形態に係る細胞検出装置1を用いた実験結果を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0018】
1.細胞検出装置の構成
図1は、本実施形態に係る細胞検出装置1を模式的に表したブロック図である。本実施形態に係る細胞検出装置1は、第1金属パイプ10と、第1金属パイプ10と離間して配置された第2金属パイプ20と、第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20とともに流路50を構成し、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20とは電気的に絶縁された絶縁部30と、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間に電界を生じさせ、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスに基づいて被検出細胞を検出する検出回路40と、を含み、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線が、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差する。
【0019】
第1金属パイプ10は、流路50の一部となる中空部分を有している。第1金属パイプ10は、検出回路40と接続された電極として機能する。第1金属パイプ10の材質は、例えば、金、ニッケル、これらの合金など、電極として機能できる限り限定されない。
【0020】
第2金属パイプ20は、流路50の一部となる中空部分を有している。第2金属パイプ20は、検出回路40と接続された電極として機能する。第2金属パイプ20の材質は、例えば、金、ニッケル、これらの合金など、電極として機能できる限り限定されない。
【0021】
また、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20とは、離間して配置されている。すなわち、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20とは、電気的に接続していない。
【0022】
絶縁部30は、第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20とともに流路50を構成する。すなわち、絶縁部30は、第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20と接続し、第1金属パイプ10の中空部分及び第2金属パイプ20の中空部分と連通して流路50の一部となる部分を有している。絶縁部30は、例えば、流路50の一部となる中空部分を有するパイプ状に構成されていてもよいし、流路50の一部となる貫通孔を有する直方体状に構成されていてもよい。
【0023】
絶縁部30は、第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20とは電気的に絶縁されている。したがって、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20とは、絶縁部30を介しても電気的に接続していない。絶縁部30の材質は、例えば、テフロン(登録商標)、ゴムなど、第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20との絶縁性を確保できる限り限定されない。
【0024】
流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向から見た流路50の形状は、例えば、円形、多角形など、被検出細胞を含む液体が通過し得る任意の形状及び大きさに構成できる。例えば、被検出細胞としてCTCを検出する場合には、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向から見た流路50の形状を、流路50の内径を30μm以上100μm以下の円形としてもよい。また、流路50は、流路抵抗が小さくなるように、液体の流れの中心線が直線的になるように構成されていることが好ましい。
【0025】
検出回路40は、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間に電界を生じさせ、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスに基づいて被検出細胞を検出する。検出回路40の具体例については後述される。
【0026】
なお、本実施形態においては、第1金属パイプ10、第2金属パイプ20及び絶縁部30で検出部60を構成する。被検液として被検出細胞を含む液体が検出部60の流路50に流れると、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間に被検出細胞が存在するタイミングで、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスが変化する。例えば、被検液が血液成分を含む液体であり、被検出細胞をCTCとする場合には、他の血液成分(血小板、赤血球、白血球など)と比較してCTCは大きいものが多いため、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間をCTCが通過するタイミングでインピーダンスが大きく変化する。したがって、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスに基づいて被検出細胞を検出することができる。検出部60のより詳細な構成例及び検出部60と検出回路40との具体的な関係については後述される。
【0027】
本実施形態に係る細胞検出装置1は、被検液用容器100、ポンプ110、チューブ120、チューブ130、データ解析手段140をさらに含んでいてもよい。チューブ120は、被検液用容器100と第1金属パイプ10とを接続し、被検液用容器100及び流路50と連通する。チューブ120は、第1金属パイプ10とは電気的に絶縁されている。チューブ130は、ポンプ110と第2金属パイプ20とを接続し、流路50と連通する。チューブ130は、第2金属パイプ20とは電気的に絶縁されている。データ解析手段140は、検出回路40による検出結果に基づいて、種々の解析を行う。データ解析手段140は、例えば、コンピューターで構成されていてもよい。
【0028】
被検液用容器100は、被検液を収容できる容器である。被検液用容器100に収容された被検液は、ポンプ110による吸引力により、チューブ120、流路50、チューブ130を順に介してポンプへと到達する。被検液は、あらかじめ、真空下において脱泡処理されていることが好ましい。これにより、誤検出の要因となる気泡の発生を抑制できる。
【0029】
図1に示される例では、ポンプ110は吸引ポンプとして構成されているが、ポンプ110は加圧ポンプとして構成されてもよい。被検液が加圧されることにより、誤検出の要因となる気泡の発生を抑制できる。
【0030】
図2(A)は、検出部60の詳細な構成例を説明するための模式図、図2(B)は、図2(A)のA−A線における断面図である。図2(A)及び図2(B)においては、流路50に液体を流した場合の流れの中心線の向きを第1方向210、第1方向と垂直な方向を第2方向220、第1方向210及び第2方向220と垂直な方向を第3方向230としている。
【0031】
本実施形態に係る細胞検出装置1では、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lが、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差する。このような構成の具体例の1つについて、図2(A)及び図2(B)を参照して説明する。図2(B)に示されるように、本実施形態に係る細胞検出装置1は、第1金属パイプ10、第2金属パイプ20及び絶縁部30は、円筒状に構成され、流路50の断面が円形に構成されている。
【0032】
本実施形態に係る細胞検出装置1は、第1金属パイプ20は、45度以上90度未満のカット角となる第1端部12を有し、第2金属パイプ20は、45度以上90度未満のカット角となる第2端部22を有し、第1端部12と第2端部22とが対向するように配置されていてもよい。カット角は、第1金属パイプ10又は第2金属パイプ20に液体を流した場合に液体の流れる方向と垂直な面を基準面とした場合における基準面と切断面とのなす角である。
【0033】
図2(A)に示される例では、第1金属パイプ10は、カット角θが60度となっている第1端部12を有している。また、第2金属パイプ20は、カット角θが60度となっている第2端部22を有している。なお、カット角θとカット角θとが同一になるように構成されていてもよいし、異なるように構成されていてもよい。第1金属パイプ10が第1端部12を、第2金属パイプ20が第2端部22を有することにより、金属パイプを切断するだけで第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20を製造することができる。特に、カット角θとカット角θとが同一になるように構成されている場合には、1本の金属パイプを切断するだけで第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20を製造することができる。
【0034】
本実施形態に係る細胞検出装置1は、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向(第1方向210)と垂直な面に投影した場合に、第1端部12のうち、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向(第1方向210)の端点と、第2端部22のうち、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向(第1方向210)と逆方向の端点とが、異なる位置になるように第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20が構成されていてもよい。図2(A)及び図2(B)に示される例では、第1端部12のうち第1方向210の最も正側(図2(A)における右側)の端点をX1、第2端部22のうち第1方向210の最も負側(図2(A)における左側)の端点をX2とし、第1方向210に垂直な面に投影した場合に端点X1と端点X2とが異なる位置になるように第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20が構成されている。
【0035】
換言すれば、端点X1と端点X2とは、第2方向220における位置座標及び第3方向230における位置座標のうち少なくとも一方が異なるように第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20が構成されていてもよい。図2(A)及び図2(B)に示される例では、端点X1と端点X2とは、第3方向230における位置座標が異なるように第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20が構成されている。
【0036】
また、図2(A)に示される例では、端点X1と端点X2とを結ぶ直線が、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lとなっている。すなわち、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lが、第1方向210と交差するように構成されている。
【0037】
このように、第1方向210に垂直な面に投影した場合に端点X1と端点X2とが異なる位置になるように第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20が構成されていることで、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lが、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向(第1方向210)と交差するように容易に構成できる。
【0038】
本実施形態に係る細胞検出装置1は、第1端部12と第2端部22とが、点対称となる形状に構成されていてもよい。図2(A)に示される例では、第1端部12と第2端部22とは、流路50内の仮想点Xを対称点として点対称となる形状に構成されている。これにより、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lが、液体の流れる方向(第1方向210)からみた流路50の中心を通るため、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間の電気力線が液体の流れる方向(第1方向210)からみた流路50の中心を通る。これにより、被検出細胞が流路50を通過した場合に電気力線を横切る可能性が高まるため、被検出細胞の検出精度がさらに高まる。
【0039】
図2(A)及び図2(B)に示されるように、カット角θとカット角θとが45度以上90度未満の同一の角度θであり、第1端部12と第2端部22とが、点対称となる形状に構成されている場合に、端点X1と端点X2とを結ぶ直線が第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lとなるためには、以下に示される数式(1)を満たせばよい。
【0040】
g≧2d/sin2θ ・・・(1)
【0041】
数式(1)において、dは第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20の外径、gは第1方向210における第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との距離である。このように、第1端部12及び第2端部22を45度以上90度未満のカット角とすることで、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lが、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向(第1方向210)と交差するように容易に構成できる。また、第1端部12と第2端部22とが、点対称となる形状に構成されていない場合においても、第1方向210における第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との距離gを適宜設定することにより、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lが、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向(第1方向210)と交差するように容易に構成できる。
【0042】
本実施形態に係る細胞検出装置1よれば、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20と絶縁部30とを含んで流路50を構成しているため、流路50を直線的に形成することが容易になる。これにより、流路抵抗を小さくしたり、異物による流路詰まりを抑制したりできる。また、本実施形態に係る細胞検出装置1によれば、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との最短距離を与える線Lが、流路50に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差するため、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間の電気力線が流路50を横切る。これにより、被検出細胞が流路50を通過した場合に電気力線を横切るため、被検出細胞の検出感度が高まる。したがって、検出精度の高い細胞検出装置を実現できる。
【0043】
次に、検出部60と検出回路40との具体的な関係について説明する。図3(A)は、検出回路40の一例を説明するための回路図、図3(B)は、図3(A)に示される回路図における検出部60の等価回路図である。
【0044】
図3(A)に示される例では、発振器400の出力信号が可変減衰器402とバッファー回路404を介して交流電圧信号として電流源406に入力される。電流源406は、入力された電圧に比例した交流電流を、可変インダクター408と検出部60とで構成される共振回路に供給する。
【0045】
ここで、検出部60は、図3(B)に示される等価回路図のように、可変容量として機能する。例えば、被検出細胞が流路50の第1金属パイプ10と第2金属パイプ20の間に被検出細胞が存在する場合と存在しない場合とで検出部60の容量が異なる。したがって、被検出細胞を含まない被検液を流路50に流した場合(すなわち、被検出細胞が流路50の第1金属パイプ10と第2金属パイプ20の間に被検出細胞が存在しない場合)に共振回路の共振点となるように可変インダクター408を調整しておくと、被検出細胞が流路50の第1金属パイプ10と第2金属パイプ20の間に被検出細胞が存在する場合には可変容量が変化して共振点がずれるため、バッファー回路410に入力される電圧信号が小さくなる。
【0046】
発振器400の出力信号をバッファー回路424と可変移相器426とを介した信号と、バッファー回路410の出力信号とを乗算器412で乗算した後、ローパスフィルター414で直流電圧に変換する。ローパスフィルター414の出力信号は、可変電圧源428と減算器416とでオフセット調整され、増幅器418及び増幅器420で増幅された後にADコンバーター422に入力される。ADコンバーター422でAD変換されたデータは、データ解析手段140へ出力される。
【0047】
このように、図3(A)に示される検出回路40では、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスの変化を検出部60の容量の変化として検出することができる。これにより、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスに基づいて被検出細胞の有無を検出することができる。
【0048】
図4(A)は、検出回路40の他の例を説明するための回路図、図4(B)は、図4(A)に示される回路図における検出部60の等価回路図である。
【0049】
図4(A)に示される例では、直流電圧源450の出力電圧がバッファー回路452を介して直流電圧信号として電流源454に入力される。電流源454は、入力された電圧に比例した直流電流を、検出部60に供給する。
【0050】
ここで、検出部60は、図4(B)に示される等価回路図のように、可変抵抗として機能する。例えば、被検出細胞が流路50の第1金属パイプ10と第2金属パイプ20の間に被検出細胞が存在する場合と存在しない場合とで検出部60の抵抗が異なる。したがって、被検出細胞が流路50の第1金属パイプ10と第2金属パイプ20の間に被検出細胞が存在する場合と存在しない場合とで、バッファー回路456に入力される電圧信号が異なる。
【0051】
バッファー回路456の出力信号は、ローパスフィルター458で雑音除去された後、可変電圧源468と減算器460とでオフセット調整され、増幅器462及び増幅器464で増幅された後にADコンバーター466に入力される。ADコンバーター466でAD変換されたデータは、データ解析手段140へ出力される。
【0052】
このように、図4(A)に示される検出回路40では、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスの変化を検出部60の抵抗の変化として検出することができる。これにより、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間のインピーダンスに基づいて被検出細胞の有無を検出することができる。
【0053】
2.実験例
次に、本実施形態に係る細胞検出装置1を用いた実験例について説明する。
【0054】
第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20は、材質を金とニッケルとの合金とし、内径を65μm、外径を85μm、カット角を60度とし、ほぼ点対称となるように対向して配置された。液体の流れる方向における第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との距離は約200μmとした。絶縁部30は、材質をテフロン(登録商標)とし、内径を100μm、外径を200μmとし、第1金属パイプ10及び第2金属パイプ20との間で液漏れが発生しないように加工された。
【0055】
被検液としては、アルセバー液で2倍に希釈された羊の血液を用いた。アルセバー液は、血液を保存するための液体であり、抗凝固作用を有する。ポンプ110は10μl/分で被検液を吸引した。検出回路40としては、図3(A)に示される回路を用いた。
【0056】
図5は、本実施形態に係る細胞検出装置1を用いた実験結果を表すグラフである。横軸は時間、縦軸は解析値を表す。なお、解析値の変化は、ADコンバーター422の入力電圧の変化に比例するようにデータ処理されている。
【0057】
図5に示されるように、第1金属パイプ10と第2金属パイプ20との間をCTCが通過した場合には解析値の変動が大きくなった。したがって、図5に示される例では、解析値のスレショルドを0.06に設定することにより、CTCを検出できた。
【0058】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0060】
1 細胞検出装置、10 第1金属パイプ、11 第1端部、20 第2金属パイプ、22 第2端部、30 絶縁部、40 検出回路、50 流路、60 検出部、100 被検液用容器、110 ポンプ、120 チューブ、130 チューブ、140 データ解析手段、210 第1方向、220 第2方向、230 第3方向、400 発振器、402 可変減衰器、404 バッファー回路、406 電流源、408 可変インダクター、410 バッファー回路、412 乗算器、414 ローパスフィルター、416 減算器、418 増幅器、420 増幅器、422 ADコンバーター、424 バッファー回路、426 可変移相器、428 可変電圧源、450 直流電源、452 バッファー回路、454 電流源、456 バッファー回路、458 ローパスフィルター、460 減算器、462 増幅器、464 増幅器、466 ADコンバーター、468 可変電圧源、X 対称点、X1 端点、X2 端点、L 最短距離を与える線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属パイプと、
前記第1金属パイプと離間して配置された第2金属パイプと、
前記第1金属パイプ及び前記第2金属パイプとともに流路を構成し、前記第1金属パイプと前記第2金属パイプとは電気的に絶縁された絶縁部と、
前記第1金属パイプと前記第2金属パイプとの間に電界を生じさせ、前記第1金属パイプと前記第2金属パイプとの間のインピーダンスに基づいて被検出細胞を検出する検出回路と、
を含み、
前記第1金属パイプと前記第2金属パイプとの最短距離を与える線が、前記流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と交差する、細胞検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞検出装置において、
前記第1金属パイプは、45度以上90度未満のカット角となる第1端部を有し、
前記第2金属パイプは、45度以上90度未満のカット角となる第2端部を有し、
前記第1端部と前記第2端部とが対向するように配置された、細胞検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の細胞検出装置において、
前記流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と垂直な面に投影した場合に、
前記第1端部のうち、前記流路に液体を流した場合に液体の流れる方向の端点と、前記第2端部のうち、前記流路に液体を流した場合に液体の流れる方向と逆方向の端点とが、異なる位置になるように前記第1金属パイプ及び前記第2金属パイプが構成されている、細胞検出装置。
【請求項4】
請求項2及び請求項3のいずれか1項に記載の細胞検出装置において、
前記第1端部と前記第2端部とが、点対称となる形状に構成された、細胞検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−117949(P2012−117949A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269064(P2010−269064)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】