説明

細胞治療用の細胞の延長された増殖及び生存のための卵胞液

血清及び卵胞液又は卵胞液の成分の存在下に細胞を培養することにより体細胞の老化及び死を防止する方法を提供する。in vitroで限定された寿命を有する体細胞は幹細胞の性質を獲得し、そして卵胞液又はその成分の連続した存在下にのみ連続的に継体されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
組織工学は、組織機能を回復、維持又は改良するための生物学的代替物の開発である。特に、組織工学は、新しい生きている組織を実験室で創生して、疾患に罹った組織又は傷つけられた組織を置き換える方法である。
【0002】
発明の背景
組織を再生するための1つのストラテジーは、特定の細胞を組織から単離し、単離された細胞をin vitroで増大させ(expand)、増大させた細胞を疾患に罹った組織又は傷つけられた組織に移植し、それにより移植した細胞はin vivoで増殖し、結局組織欠陥を置き換えるか又は修復する。この技術は、多様な細胞型及び組織欠陥に適用される。単離された細胞は、特定の組織からの分化した細胞又は未分化前駆細胞(幹細胞)であることができる。両方の場合に、細胞増大(cell expansion)のための適切な培養条件の確立は、構造的及び機能的組織同等物を再生するべき細胞の潜在力を維持又は改良するために極めて重要である。
【0003】
組織再生技術の開発のための特に焦点となる分野は、軟骨性組織(cartilaginous tissue)における欠陥の矯正である。他の組織と違って、軟骨は、外傷、疾患後に又は老齢の結果としてそれ自体を再生する能力が殆どない。これは、正常な関節軟骨の無血管の性質による。表面軟骨板(superficial chondral plate)への損傷は一般に治癒しないけれども、軟骨下の骨(subchondral bone)は血管が分布しており、それ故、この位置に対する損傷は、限られた程度に治癒する。損傷された関節軟骨の代わりに増殖する新規な軟骨は、繊維軟骨と呼ばれる。繊維軟骨は、元の硝子軟骨の耐久性及びより望ましい機械的性質に欠けている。故に関節損傷を受けたヒトは、その後関節炎変性(arthritic degeneration)にかかりやすい。
【0004】
軟骨シェイビング(chondral shaving)、軟骨下の穿孔(subchondral drilling)及び組織自己移植片/同種移植片を含むいくつかの異なるアプローチが軟骨組織を修復するために採用された。関節軟骨修復のための他の実験的アプローチは、軟骨生検(cartilage biopsy)から軟骨細胞を採取しそして軟骨細胞を三次元移植マトリックス材料上に播種し、次いで損傷された区域に移植片を移植することからなる。この技術は、一旦再生が完了すると高品質軟骨を生じるが、患者から採取されるべき大量の出発材料を必要とし、そのため患者の外傷を増大させる。
【0005】
他のアプローチでは、軟骨細胞を生検から単離し、十分な数の細胞が得られるまで単層培養において増大させ、そして損傷した組織の区域に移植する。これらの場合にも、移植は、細胞をゲルに埋め込むか又は生物分解性ポリマー骨格と会合させることを先ず必要とする。これらのマトリックスの三次元的性質は、移植片に構造的統合性を付与しそして軟骨細胞の軟骨組織への成長のための硬質支持体を与える。このシステムは出発物質としてより少ない細胞を必要とするという利点を有するけれども、この方法により得られた軟骨は、もし細胞が骨格的に成熟した供与者(成人)から採取されるか又は得られるならば、しばしば劣った性質を有する。
【0006】
組織工学における他の主要な問題は、生きている細胞を培養において保って成長及び増殖させるのに適切な技術である。細胞老化は、正常な二倍体哺乳動物細胞が培養において無限に成長する(増殖する)のを阻止するプロセスである。
【0007】
今日、大多数の変形性疾患(degenerative diseases)は、入手可能な患者に適合性の細胞又は組織、例えば、該組織が損傷した組織に置き換わることができるか又は与えられた疾患により誘発された外傷を修復することができる上記した方法の1つにより発生させた細胞又は組織の欠如により、薬剤又は対症治療により処置される。
【0008】
包含される他の最近の細胞をベースとする治療的アプローチは、ヒト胚性幹(ES)細胞に由来する同種細胞又はブタに由来する異種細胞である。パーキンソン病のためのこれらのアプローチの例は、分化したヒトニューロン(Geron)及びブタ胎児神経細胞(Diacrin/GenVec)である。これらのストラテジーは科学的有望性を保持するが、大きな制限を受ける。第一に、ヒトES細胞は、実質的な倫理的問題を提起する。何故ならば、ES細胞を発生させるためにヒト胚を破壊しなければならないからである。第二に、ブタ細胞の使用は、ブタ生まれの病原体のヒトへの伝達を包含する潜在的に未知の問題に悩まされる。第三に、これらのストラテジーの両方共、免疫抑制の使用を必要とする。
【0009】
現在、患者自身の体細胞から多能的幹様細胞(multi-potential stem-like cells)を誘導するのに有効な方法に対する要求がある。
【0010】
ますます、動物、特に家畜種は、体細胞から除核した卵母細胞への核の核移動によりクローニングされる。この方法は、低い効率に悩まされる。
【0011】
本発明の要約
本発明の目的は、1つのタイプの高度に特殊化された体細胞、例えば顆粒膜細胞(granulosa cells)の核機能を、新規な多能性中間体を経由して、他のタイプの核機能に変える技術である。本発明は、機能の変化を達成するために胚又は胎児組織を利用せずそして個々の患者のために彼ら自身の細胞を使用してデザインされうる。
【0012】
驚くべきことに、卵胞液(follicular fluid)又は卵胞液の成分を含有する血清の存在下の体細胞の培養は、細胞の老化を防止することが見出された。更に、該成分又は該卵胞液の存在下にin vitroで培養される限定された寿命を有する体細胞は、幹細胞のいくらかの性質を獲得しそして卵胞液又は卵胞液からの成分の連続した存在下においてのみ、連続的に継体されうる。
【0013】
本発明は、血清を含有し、そして更に卵胞液又はその成分を含有する培養培地又はその同等物中で体細胞を培養することを含む体細胞の老化及び死を防止する方法に関する。本発明は、血清を含有し、そして更に卵胞液又はその成分を含有する培養培地又はその同等物中で細胞を培養することを含む、細胞の成功した増殖及び細胞の分化能(differentiation potential)の維持をもたらす方式で細胞を脱分化させる方法に関する。
【0014】
特に、本発明は、
細胞を血清含有培地中で培養し、
培養培地に卵胞液又はその成分を導入し、そして
繰り返し継体培養において細胞の無限の増殖を可能とする、
工程を含む該方法に関する。
【0015】
血清含有培養培地は当該技術分野で広く使用されている。典型的には、血清は、ウシ胎仔血清である。体細胞のタイプに依存して、血清を含まないが十分に同等である培養培地を使用し、それにより完全には理解されていないウシ胎仔血清の副作用を回避することも可能である。このような同等な血清不含有培養培地も当該技術分野で周知であり、そして適切な濃度の無機塩の中に、通常成長ホルモン、例えば、ウシ成長ホルモン、又は他の成長支持生化学的因子及びホルモンを含有する。
【0016】
卵胞液は、卵巣から得られ、そして大量に容易に入手可能である。考慮される特定の卵胞液は、ブタ、ウシ、ヒツジ及びウマ卵胞液である。ブタ卵胞液が好ましい。
【0017】
卵胞液は、標準精製方法、例えば、遠心及び不活性フィルターでのろ過を使用して精製するか又は部分的に精製することができる。更なる精製は、低分子成分及び不純物を保持することが知られている活性炭(charcoal)でのろ過により達成することができる。成分は、分子質量及び/又は極性に従う分別により得ることができる。
【0018】
活性炭ろ過された卵胞液は、正常なヒト二倍体繊維芽細胞の寿命を延長するのに好ましく使用されるが、これに対して未処理卵胞液は、好ましくは、顆粒膜細胞系(granulosa cell lines)を確立及び維持するのに使用される。活性炭ろ過された卵胞液は、好ましくは約1対1の割合で未処理卵胞液と混合することができ、そして混合物は初代顆粒膜細胞系の確立及び初代顆粒膜細胞系の増殖で示されたとおり、未処理卵胞液よりも活性が優れている。未ろ過卵胞液と活性炭ろ過された卵胞液の約1対1混合物は本発明の方法において特に有効であり、それゆえ好ましい。
【0019】
本発明の方法における卵胞液の成分として更なる好ましいものは、>30kDaの分子サイズ画分並びに>50kDa及び<3kDaの組み合わせた分子サイズ画分である。好ましい高い分子サイズ画分は、ヒトα−2−マクログロブリン前駆体のアミノ酸配列及び他の種の相同体に対応するペプチドを含有し、そしてこれらは本発明の方法において好ましい。タンパク質のこのファミリーのメンバーは、ジスルフィド連結された鎖の2つの対からなるホモ四量体の形態にある。増殖促進活性及びマトリックス特性を有する卵胞液の高い分子質量成分は好ましい。同様に細胞生存活性を有する卵胞液の低分子質量成分は好ましい。
【0020】
老化及び死から救出されることができそして細胞の成功した増殖及び細胞の分化能の維持をもたらす方式で脱分化されることができる哺乳動物体細胞は、例えば、顆粒膜細胞(granulosa cells)、皮膚繊維芽細胞、ニューロン、角化細胞又は肝細胞、特に、顆粒膜細胞、皮膚繊維芽細胞及びニューロンである。しかしながら、本発明は、これらの特定の体細胞に限定されなくて、いかなるタイプの体細胞にも適用可能である。本発明に従えば、前駆体型(又は幹細胞様)細胞を発生させ、次いでこれを使用して新しい組織を発生させることができる。単離することができそして増大させることができるいかなる細胞型も、新しい組織を発生させるのに使用可能である。非限定的例は、内皮細胞、筋肉細胞、軟骨細胞及びメラノサイトも含む。
【0021】
体細胞の老化は、このような細胞が凍結され、貯蔵されそして後に培養のために使用されるとき、特に問題である。培養効率は、凍結及び貯蔵すると多くのタイプの体細胞において劇的に減少する。本発明の方法の有効性はこのような解凍した細胞に関して容易に証明することができる。
【0022】
本発明は、更に、体細胞の老化及び死を防止するため並びに 体細胞の成功した増殖及び体細胞の分化能の維持をもたらす方式で体細胞を脱分化させるための卵胞液又はその成分の使用に関する。
【0023】
該使用に基づいて、本発明は、成熟した体細胞の無限の増殖能を維持する新規な方法も提供する。これらの細胞は、「治療クローニング」による変形性疾患の処置のための医学的用途を有する分化性細胞の供給源として使用することができる。
【0024】
本発明は、多能性に向けて再プログラムされる無制限の量の細胞を提供することにより核移行の効率を増加させることもできる。
【0025】
体細胞の不死化は、テロメラーゼ酵素のための発現ベクターによる培養された細胞のトランスフェクションにより通常得られる。本発明は、無限の増殖のための適切な環境を細胞に与えることにより該トランスフェクション法を回避する。本発明の方法は可逆性であり、これは、本発明の方法で得られる無限の増殖能力を有する細胞が腫瘍細胞ではないことを意味する。
【0026】
本発明は、個体のすべての体細胞がいかなるタイプの細胞にもなるのに必要な遺伝子情報を含有し、そして促す環境(coducive environment)に置かれると、最終的に分化した細胞の運命は、多能性へと再指向されうるという事実を利用する。この事実は、非ヒト哺乳動物における体細胞核移行実験の成功により説明された。正常な発達が進行するにつれて、細胞の遺伝子発現プロフィルは制限され、そしてゲノムの領域は、正常な条件下で細胞が若返ることができないように安定に不活性化される。本発明は、核機能の変化を誘発し、その結果として細胞のアイデンティティーを変化させる方法を提供する。体細胞、例えば顆粒膜細胞は、卵胞液又はその成分で処理されるとき無限に増大されうるが、卵胞液が除去されると、たとえ血清含有培養培地の存在下においてさえそれらは死ぬであろう。
【0027】
本発明を実施する際に、いかなる種の胚又は胎児もこれまで創生又は使用されておらずそしてヒト及び非ヒトミトコンドリア又はゲノムDNAの混合はこれまで起こっていない。本発明のすべての方法は、in vitroで行なうことができる。若返り/再プログラミング卵胞液は、地方の食肉処理場から大量に容易に入手可能である。
【0028】
体細胞核移行の成功により示されたとおり、成熟した分化した体細胞のメモリーを消去しそしてそれをその長く忘れられていた胚のメモリーで置き換えることができる能力は、細胞内及び細胞外環境を操作することができる能力によってのみ限定される。成熟した細胞に卵胞液又はその成分を与えることにより、本発明は、核メモリーを変えそして多能性幹細胞において普通に観察される核変化を誘発する。本発明の利益及び利点は下記のこと、即ち、
倫理的問題を排除する(ヒト胚又は胎児組織の必要はなく、胚が使用され、創生され又は破壊される必要はない)、
ミトコンドリア不適合性がない(徐核された卵母細胞への核移行はない)、
ということを含む。
【0029】
本発明に従う方法は、成人組織から予め単離された細胞集団を提供し、該細胞を増大条件下に脱分化させる工程を含む。脱分化された後、細胞は種々の体細胞型に再分化するように誘導されうる。その目的で、本発明に従って発生させた細胞及び/又は組織は、細胞の再分化を誘導及び/又は加速及び/又は促進する少なくとも1種の因子の存在下に第2細胞培養培地において再分化させることができる。
【0030】
細胞の分化を増大させるいかなる多様な因子も細胞再分化の方法において使用することができる。再分化に使用することができる因子の非限定的例は、デキサメタゾン及び成長因子のような、追加のホルモン/コルチコイドを伴なうか又は伴わない、アラキドン酸、プロスタグランジンA、プロスタグランジンB、プロスタグランジンE、プロスタグランジンF及びヒスタミンである。
【0031】
当業者は、細胞増大及び脱分化の本発明の方法を適用することができる様々な細胞型を認識するであろう。組織工学技術は、無数の異なる細胞型を使用することにより欠陥を矯正するのに使用されてきた。組織工学は、硬質組織欠陥、例えば、疾患又は外傷から生じる軟骨又は骨の欠陥の矯正に適用することができる。組織工学は、軟質組織構造の矯正にも適用された。例として、最近の発明で使用された細胞は、代謝器官(肝臓又は膵臓)、表皮組織(例えば、火傷の被災者の組織)を再生するのに又は胸組織を再構成又は増強するのに使用することができる(例えば、乳癌に悩む婦人の胸、先天的欠陥又は外傷から生じる損傷を再構成するのに筋肉細胞を使用することができる。例えばUS PatentNo.5, 512, 600及びWO96/18424参照。これらの両方共参照により本明細書に組み込まれる)。更に、先天性欠陥、例えば、膀胱尿管逆流又は失禁は、尿の通過に対して必要な制御を与えるか又はその外に欠陥を矯正する筋肉区域を生じさせるのに有効な量の筋肉細胞を播種したゲル又は骨格マトリックスの移植により矯正することができる。(US Patent No.5, 667, 778、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0032】
本発明に従って脱分化した細胞及び上記したとおりに再分化した細胞を、適当な生物分解性ポリマーマトリックスと共に移植して新しい組織を形成することができる。使用することができる種々の形態のマトリックスがある。非限定的例は、細胞をその中に懸濁させたアルギネート、約100〜300μmの間質性空間(interstitial spacing)を有する繊維マトリックス及び三次元発泡体の如き材料から形成されたポリマーゲルを含む。マトリックスは、天然に存在するポリマー(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン等)又は合成ポリマー(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸等)又は両方に基づくことができる。ヒドロゲルポリマー溶液及びポリマーマトリックス及び他の移植の方法の詳細な説明については、US Patent5, 716, 404を参照されたい。代謝器官及び他の組織を再生させるのに生物分解性ポリマーを使用する他の方法については、Cima et al., Biotech.Bioeng., 38, 145-158, 1991;Langer et al., Biomaterials, 11, 738-745, 1990;Vacanti et al., J.Pediatr.Surg., 23, 3-9, 1988;and Vacarti et al., Arch.Surg., 123, 545-549, 1988.を参照されたい。
【0033】
ある態様では、細胞マトリックス構造体は組織エキスパンダー装置(tissue expander devices)と組み合わせて移植することができる。細胞マトリックスが移植されるにつれて、又は細胞が増殖しそして新しい組織を形成するにつれて、エキスパンダーサイズは、それを除去することができそして所望の再構成又は増強が得られるまで、減少する。
【0034】
本発明を今や下記の実施例により更に詳細に説明する。該実施例は本発明の範囲を限定することを意味しない。これらの実施例は図面を参照して説明される。
【0035】
好ましい態様の説明
A 卵胞液の調製
卵巣の収集
地方の食肉処理場において少なくとも4ヶ月齢の解体処理されたブタから卵巣を得る。卵巣を殺したばかりの動物から集めそして直ちにサーモボトル中の約39℃の温度の無菌の0.9%NaCl(重量/容積)中に入れる。それらは、回収から2時間以内に実験室に輸送する。到着時のコンテナーの温度は約33℃である。
【0036】
卵胞液の収集
卵巣を39℃で予め加温した70%エタノール中に10〜20秒間消毒し、次いで脂肪及び周囲の組織から切り離し、直ちに磁性攪拌機を有するサーモプレート上で39℃で平衡化された無菌のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS:0.2g/l KCl、0.2g/l KHPO、8g/l NaCl、1.15g/l NaHPO)中に入れる。
【0037】
卵胞液を、低真空下の吸引ポンプ及び18ゲージの針を使用して50mlの円錐形遠心管(Orange Scientific, Belgium)中の直径3〜8mmの末梢胞状卵胞(peripheral antral follicles)から吸引する。細胞集合体、卵丘細胞−卵母細胞−複合体(COC’s)及び細胞残がいを遠心力を加えることなく39℃で沈降させる。上澄液を集めそして更に進めるまで−20℃に冷凍保存する。ペレットを細胞培養のための顆粒膜細胞の供給源として使用する。
【0038】
細胞培養のための卵胞液の調製
−20℃で保存された卵胞液を解凍しそして室温で20分間1600×gで遠心する。透明な上澄液を除去しそして0.2μm細孔サイズフィルター(Sartorius, Germany, Cat. No 16534)に通すことにより無菌ろ過する。無菌の卵胞液を4℃又は−20℃で貯蔵する。
【0039】
細胞培養のための活性炭ろ過した卵胞液の調製
活性炭1g(30〜50メッシュASTM, Merck Cat.No.1.09631)をPolyPrep(登録商標)カラム10ml(BioRad, Cat. No.731-1550)に入れる。活性炭を0.2NHCl10ml、無水エタノール10ml、メタノール10ml及び0.2NNaOH10mlにより順次に洗浄する。各新しい溶液を適用する前に、活性炭を蒸留水で完全に洗浄する。
【0040】
1600×gで20分間遠心により清澄化された卵胞液を重力により活性炭カラムを4回通過させる。最後のフロースルー(flow-through)を、上記したとおりに無菌ろ過しそして4℃又は−20℃で貯蔵する。
【0041】
B ブタ顆粒膜細胞の培養
少なくとも1ヶ月齢の解体処理されたブタから卵巣胞状卵胞(ovarian antral follicules)(直径3〜8mm)を吸引することにより集められた顆粒膜細胞から初代細胞系を確立した。集めた細胞を遠心力をかけないで沈降させる。底部の細胞ペレットは、卵丘細胞−卵母細胞複合体を手で除去した後の顆粒膜細胞の供給源である。細胞集合体をPBS中で1回洗浄し、次いでそれらを顆粒膜細胞培地中に再懸濁させる。細胞懸濁液を直径15cmの組織培養皿に分配する(Orange Scientific, Belgium)。培養物を5%CO雰囲気中で39℃でインキュベーションする。培養物が集蜜状態(confluency)に達すると、細胞を下記するとおり継体する。
【0042】
顆粒膜細胞培地は、下記の成分:89%(容積/容積)DMEM(ダルベッコの修正イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle'medium)、低グルコース、BioConcept 1-25F50-1)、10%(容積/容積)FCS(ウシ胎仔血清、BioConcept 1-01F00-1)、0.1mM NEAA(非必須アミノ酸、BioConcept 5-13K00)、2.5ng/ml bFGF(塩基性繊維芽細胞成長因子、Sigma Product No. F0291, bFGFを欠く顆粒膜細胞培地1ml中に再構成された25μg、使用まで−20℃で凍結された)及び6μg/mlゲンタマイシン(BioConcept 4-07F00-H)からなる。
【0043】
継体培養
培養皿を室温で無菌PBSで2回洗浄する。PBS中の0.05%重量/容積トリプシン(BioConcept, Switzerland)及び0.02%重量/容積エチレンジニトリロ四酢酸四ナトリウム二水塩(Sigma E-611)を含む酵素溶液を使用して細胞を継体する。細胞を脱離させた後、FCS(2%最終濃度)の添加により酵素活性を停止させる。細胞を180×gで室温で5分間遠心する。細胞ペレットを適切な容積の培養培地中に再懸濁させる。計数のためにアリコートを採取する。
【0044】
細胞計数
細胞懸濁液のアリコートをPBS中の0.05%トリパンブルー(Bio Concept, Switzerland )中に希釈しそしてNeubauer血球計数器を使用して計数する。生きている細胞(トリパンブルー染料を排除する)を計数する。
【0045】
細胞培養物からの顆粒膜細胞の凍結保存(cryopreservation)
培養中の顆粒膜細胞をトリプシン処理しそして72%DMEM低グルコース(BioCobcept, Switzerland)、20%FCS及び8%DMSO(ジメチルスルホキシド、Sigma)を含有する培地中に懸濁させる。細胞を極低温バイアル(1ml)中に05〜3.0×10細胞/mlの濃度で分配する。それらを25分間位置3に(−18℃まで)、次いで10分間位置10に(−60℃まで)調節された制御された速度のフリーザー(Nicool LM, 10, France)中で凍結する。次いで極低温バイアルを液体窒素タンク中に直ちに移しそして貯蔵する。
【0046】
C 顆粒膜細胞の増殖老化及び卵胞液による救出
顆粒膜初代細胞系の確立
800個の卵丘細胞−卵母細胞複合体(cumulus-oocyte complexes)を集めそして0.1%(重量/容積)ヒアルロニダーゼ(Sigma製品No.H-3884)を含有するタイロード液をベースとする溶液0.4ml中に懸濁させる。卵丘細胞−卵母細胞複合体を、室温で1分間上下に穏やかにピペッティングすること(1mlチップ)により破壊する。細胞を遠心(180×gで5分間)によりペレット化しそしてタイロッド液をベースとする溶液2ml中に再懸濁させる。卵母細胞を、顕微鏡下に懸濁液からピペットで機械的に除去する。残りの細胞懸濁液を顆粒膜細胞培地10mlと共に混合し、直径10cmのプレートに入れそして5%COインキュベーター中で39℃でインキュベーションする。集密状態の単層(confluent monolayers)を継体し、細胞を各継体において計数しそして細胞の累積数を表1に記録する。
【0047】
【表1】

【0048】
この代表的実験において、顆粒膜初代細胞系は、in vitroで4〜5継体の後増殖老化に入る有限の寿命を有する。
【0049】
卵胞液は老化から救出する
0.0557×10個の顆粒膜細胞を継体5から採取し、直径10cmの培養皿において卵胞液(5%容積/容積)を補充された顆粒膜細胞培地10ml中で培養する。老化性顆粒膜細胞に対する卵胞液の救出効果(resquing effect)を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
卵胞液は、増殖老化性細胞を救出し、該細胞はその後約1.5日の集団倍加時間(population doubling time)で増殖する。この顆粒膜細胞系はin vitroで50継体後も依然として増殖している(150より大きい集団倍加(population doubling))。
【0052】
救出効果の可逆性
1.07×10個の顆粒膜細胞を継体7から採取し、そして、直径10cmの培養皿において、卵胞液なしの顆粒膜細胞培地10ml又は卵胞液を補充した(5%容積/容積)顆粒膜細胞培地10ml中で培養する。卵胞液の効果の可逆性を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
卵胞液の救出効果は可逆性である。何故ならば、卵胞液が除去されると細胞系は増殖を停止しそして細胞は死ぬからである。これは、顆粒膜細胞系が腫瘍細胞系の性質を獲得してもいなければウイルス感染等により不死化されてもいないことを意味する。
【0055】
卵胞液を使用して確立されそして維持された顆粒膜細胞系の特徴付け
卵胞液を使用して顆粒膜細胞に由来する細胞系のいくつかの特徴は、迅速に分裂するけれども、細胞は顆粒膜細胞のいくらかの特徴を保持していることを示す。
形態:種々のサイズの微絨毛(microvilli)又はブレブ(blebs)に富んだ細胞が二次培養、早期継体(培養における10継体未満)及び後期継体(培養における70継体より多い)において観察される。この特徴は、顆粒膜細胞について記載されている(Motta P et al., 2003. Int. Rev. Cytology 223:178-288)。
【0056】
ステロイド合成活性:顆粒膜細胞分化の進行は、プロゲステロンの産生を伴なう(Motta P et al., loc. cit)。顆粒膜細胞系によるプロゲステロンの産生は低い(表4)。細胞分化の早期段階で細胞は脱分化されそして停止されるようである。
【0057】
【表4】

【0058】
アポトーシス細胞死:アポトーシス細胞死に特徴的な核凝縮細胞(picnotic cells)の急速な蓄積及びDNA断片化の自発的開始が、血清欠如(serum deprivation)後24時間以内に、顆粒膜細胞系において起こる。血清除去は、顆粒膜細胞の初代培養において起こるアポトーシス細胞死の自発的開始を促進することが示された。(Hu C-L et al., 2001. Biol Reprod 64:518-526)。
【0059】
接触阻止:in vivoと同様に、確立された細胞系からの顆粒膜細胞は、接触阻止なしにin vitroで分裂する。それらは交差パターン(criss-cross pattern)において細胞と多層を形成する。
【0060】
D 凍結保存後の卵胞液による顆粒膜細胞系の救出
初代顆粒膜細胞系は有限回数継体させることができ、次いでそれらは不可逆的に停止した成長及び死の状態に入る。停止した成長は顆粒膜細胞系の凍結保存により促進される。下記の実験は、卵胞液は凍結保存及び解凍後の顆粒膜細胞を救出することを示す。
【0061】
ブタ顆粒膜細胞の初代培養物を、直径15cmの培養皿において増殖させて集密状態とする。細胞をトリプシン/EDTA処理により脱離させ、計数しそして凍結保存のために培地1ml当り2.2×10個の細胞の濃度で懸濁させる(「B ブタ顆粒膜細胞の培養」参照)。
【0062】
次いで、顆粒膜細胞を解凍しそして0.6×10個の細胞の2つのアリコートを、顆粒膜細胞のための普通の培地(regular medium)10mlを含有する直径10cmの培養皿中に分配する。1つの皿は卵胞液10%(容積/容積)を補充される。両方の皿をCOインキュベーターにおいて37℃でインキュベーションする。培養7日後に、細胞を計数しそして同じ培養条件を保ちながら、新しい更に継体培養する。細胞を培養8日の追加の期間後に計数する(表5)。
【0063】
【表5】

【0064】
細胞培養培地への補充として加えた卵胞液は、解凍した顆粒膜細胞が正常に成長し、そして卵胞液を補充されなかった顆粒膜細胞培地で観察された停止した成長及び死を防止することを可能とする。
【0065】
E 卵胞液は血清の代替物ではない
卵胞液4%を補充した顆粒膜細胞培地において11継体維持された初代顆粒膜細胞系を2つの直径15cmの培養皿中に継体培養する。各皿に顆粒膜培養培地30ml中の5×10個の細胞を播種し、1つの皿には卵胞液4%(容積/容積)を補充する。COインキュベーター中37℃で3日間のインキュベーションの後に、細胞をトリプシン処理しそして計数する。
【0066】
培養培地に卵胞液を補充しない場合:0.2集団倍加/日に相当する総計7.4×10個の細胞。これらの細胞は「老化性」と呼ばれる。
培養培地に卵胞液4%(容積/容積)を補充した場合:0.5集団倍加/日に相当する総計14.5×10個の細胞。これらの細胞は「救出された」と呼ばれる。
【0067】
両タイプの細胞集団(「老化性」及び「救出された」)を、血清を含まない顆粒膜細胞培中に0.04×10個/mlの細胞の濃度で懸濁させそして24ウエルプレートのウエル(ウエル当り0.75ml、ウエル当り30’000個の細胞)又は12ウエルプレートのウエル(ウエル当り2ml、ウエル当り80’000個の細胞)に分配する。付着の90分後に、血清を含まない培地を除去しそしてそれぞれ、表6に示されたとおりに構成された培地成分0.75ml及び2mlで置き換える。
【0068】
プレートをCOインキュベーター中で37℃で7日間インキュベーションする。細胞を計数するためには12ウエルプレートを使用し、結果を表に示す。クリスタルバイオレットで染色するためには24ウエルプレートを使用し、そして「救出された」細胞についての結果を下表6に示す。
【0069】
細胞培養物のクリスタルバイオレット染色
培地を吸引し、細胞層をPBSで1回洗浄し、そしてクリスタルバイオレット0.5%(重量/容積)(エタノール30%(容積/容積)及びグルタルアルデヒド0.5%(容積/容積中の)により約10分間染色する。クリスタルバイオレット溶液をデカンテーションした後、プレートを水道水ですすぎ、次いで空気中で乾燥する。
【0070】
【表6】

【0071】
FCS、好ましくは10%(容積/容積)は、初代顆粒膜細胞系の増殖停止及び死を阻止するのに必要であるが十分ではない。卵胞液は、初代顆粒膜細胞系の増殖停止及び死を阻止するのに必要であるが十分ではない。卵胞液(1種又は複数)は、初代顆粒膜細胞系の生存に必要なそしてFCS中には存在しない因子(1種又は複数)を含有する。
【0072】
F 顆粒膜細胞の増殖及び維持に対する活性炭ろ過した卵胞液の効果
顆粒膜細胞系を、7継体の間卵胞液4%を補充された顆粒膜細胞培地中に維持する。0.4×10個の細胞を継体7から採取しそして、直径10cmの培養皿において、卵胞液4%を補充された顆粒膜細胞培地10ml若しくは活性炭ろ過された卵胞液4%を補充された顆粒膜細胞培地10ml又は卵胞液を欠いた顆粒膜細胞培地10ml中で培養する。各週に細胞を計数し、そして同じ培養条件を保ちながら、新しい皿に継体培養する。細胞の累積数を表7に示す。
【0073】
【表7】

【0074】
活性炭ろ過した卵胞液は、長期間の時間顆粒膜細胞の増殖を支えることができない。
【0075】
卵胞液及び活性炭ろ過した卵胞液を含有する混合物は、卵胞液単独よりも生物学的活性が優れている:凍結保存された細胞
ブタ顆粒膜細胞の初代培養からの細胞を凍結保存する。それらを使用して、卵胞液の効果を、1容積の卵胞液及び1容積の活性炭ろ過された卵胞液からなる混合物の効果と比較する。1.3×10個の解凍した細胞を、直径10cmの培養皿において、卵胞液4%を補充された顆粒膜細胞培地10ml若しくは上記した卵胞液1:1混合物4%を補充された顆粒膜細胞培養培地10ml又は卵胞液なしの顆粒膜細胞培地10ml中で培養する。各継体において細胞を計数し、そして同じ培養条件を保ちながら新しい皿に播種する。細胞の累積数を表8に示す。
【0076】
【表8】

【0077】
大多数の凍結保存された顆粒膜細胞は、試験したすべての培養条件において、解凍後速やかに死ぬ。卵胞液と活性炭ろ過された卵胞液の1:1混合物は、卵胞液が欠けている場合に救出しなければ死ぬ顆粒膜細胞を培養において救出するという点で、卵胞液単独よりは優れている。老化からの救出はより早く起こる。
【0078】
卵胞液と活性炭ろ過された卵胞液を含有する混合物は、卵胞液単独よりも生物学的活性において優れている:顆粒膜細胞系の増殖及び成長。
顆粒膜細胞系を、卵胞液4%を補充された顆粒膜細胞培地中に8継体の間維持する。
0.4×10個の細胞を継体8から採取し、そして直径10cmの培養皿において、卵胞液4%を補充された顆粒膜細胞培地10ml若しくは卵胞液と活性炭ろ過した卵胞液の1:1混合物4%を補充された顆粒膜細胞培地10ml、又は卵胞液を欠いた顆粒膜細胞培地10ml中で培養する。培養物が集密状態になると、細胞を計数し、そして同じ培養条件を保ちながら新しい皿に継体培養する。細胞の累積数を表9に示す。
【0079】
【表9】

【0080】
結果は、顆粒膜細胞系が、卵胞液単独を含有する培地中よりも卵胞液と活性炭ろ過した卵胞液の1:1混合物を補充した培地中でより速く増殖することを示す。この実験では、各継体において細胞数の25%の平均増加がある。
【0081】
G 卵胞液は培養における初代ヒト繊維芽細胞の寿命を延長させる。
正常な体細胞は、有限の数の分裂の後、必ず、不可逆的に増殖が停止した状態及び機能が変化した状態に入る。このプロセスは複製老化と呼ばれる。繊維芽細胞は、年代学的時間によるよりもむしろ集団倍加(PDs)数により決定される限定されたin vitro寿命を示す。外植の後、細胞は初期の期間の速い分裂を経、その後増殖活性が遅くなる(老化前状態)。次いで、細胞は、形態の変化、例えば、サイズの増加及び不規則な形状により特徴付けられる老化の状態に達し、そしてそれらは、多数か月間生きているが増殖はしない状態のままである(Cristofalo VJ and Pignolo RJ , 1993. Physiol. Reviews 73:617-638)。
【0082】
卵胞液を補充された培養培地は、老化の開始を遅延させそして細胞が15〜20PDs過剰に分裂することを保つことを可能とし、それは正常よりも50%の増加を表す。
【0083】
卵胞液の添加を伴なうか又は伴なわない正常なヒト皮膚繊維芽(NHDF)細胞の老化関連β−ガラクトシダーゼ染色
pH6で組織学的に検出可能なβ−ガラクトシダーゼは、培養における老化性ヒト繊維芽細胞を同定する生物マーカーである(Dimini et al., 1995.Proc. Nat Acad. Sci. 92-9363-9367)。包皮に由来する正常なヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF, Cat. No. C-10351, PromoCell GmbH, Heiderberg, Germany)を、PromoCell Fibroblast増殖培地(Cat. No. C-23010)中で増殖させる。PromoCell Supplement Mix/Fibroblast増殖培地(cat. No. C-39315)を加えた後、完全培地中の成長因子の濃度は下記のとおりである:インシュリン5μg/ml、塩基性繊維芽細胞因子1ng/ml、アムホテリシンB50ng/ml、ゲンタマイシン50μg/ml。PromoCell Fibroblast増殖培地は、繊維芽細胞を培養するための無菌液体培養培地であり、そして血清を含まない。支持細胞層(feeder-layer)、マトリックス基材又は他の物質は必要ではない。培養及び新しい培養容器への継体培養を、製造者の指示に従って行なう。
【0084】
PromoCell Fibroblast増殖培地を使用する5継体の後の13’500NHDF細胞を、24ウエルプレートの1つのウエルにおいて培地0.75ml中に播種する。卵胞液4%(容積/容積)を補充されたPromoCell Fibroblast増殖培地を使用する6継体後の13’500NHDF細胞を、24ウエルプレートの他のウエルにおいて卵胞液を補充された培地0.75ml中に播種する。37℃でCOインキュベーターにおける3日のインキュベーションの後、細胞を固定しそして老化関連β−ガラクトシダーゼ活性について染色する。
【0085】
細胞の老化関連β−ガラクトシダーゼ染色
培地を吸引しそして細胞をPBSで1回洗浄し、次いで室温でPBS中の0.5%グルタルアルデヒド(25%溶液、Sigma)で処理する。5分後、細胞を、PBS中の1mM MgCl、pH7.2で洗浄する。細胞を、1mg/mlX−gal(4%しもとらストック溶液からの、Fermentas No.R04019)、0.12mM KFe(CN)3HO、0.12mM KFe(CN)、PBSpH6.0(酢酸の添加によりpH6.0に調節されたPBS)中の1mM MgClを含有する溶液中で染色する。細胞を室温又は37℃でインキュベーションし、HOで1回洗浄し、次いで4℃でHO中に貯蔵する。
【0086】
卵胞液の不存在下に維持されたすべての繊維芽細胞は老化前又は老化状態にある。卵胞液を補充した培地中に維持された繊維芽細胞の10%未満は老化前又は老化状態にある。
【0087】
正常なヒト皮膚繊維芽細胞の培養
包皮に由来する正常なヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF, Cat.-No.:-C-10351, PromoCell GmbH, Heiderberg, Germany)をNHDF培地(89%(容積/容積)DMEM、10%(容積/容積)FCS、0.1mM NEAA及び6μg/mlゲンタマイシン)中で培養する。培養皿を無菌のPBSにより室温で2回洗浄する。PBS中の0.05%重量/容積トリプシン及び0.02%重量/容積エチレンジニトリロ四酢酸四ナトリウム二水塩を含む酵素溶液を使用して細胞を継体する。細胞を脱離させた後、FCS(2%最終濃度)の添加により酵素活性を停止させる。細胞を180×gで室温で5分間遠心する。細胞ペレットを適切な容積の培養培地中に再懸濁させる。アリコートを採取して計数する。
【0088】
細胞を計数しそして顆粒膜細胞について記載のとおりに(ブタ顆粒膜細胞のB培養物)凍結保存する。
【0089】
卵胞液はNHDFの寿命を延長する
各継体において培養により達成される集団倍加数を、式
集団倍加=(logNt−logNo)/log2.0
(式中、Nt=時間tにおける採取において回収された細胞の数であり、そしてNo=最初に平板培養された細胞の数である)
から計算する。
【0090】
10%血清を含有する培地又は血清10%及び卵胞液4%を含有する培地中で培養されたNHDF細胞の集団倍加(PDs)を比較した。結果を図4に示す。これらの細胞の増殖寿命は、それらの片方のそれと比較して約15〜20倍集団倍加延長される(通常を越えて集団倍加で50%の増加)。10%の代わりに培養培地中の5%血清濃度で、同様な結果が得られる。
【0091】
卵胞液の効果の可逆性
4%卵胞液を含有するNHDF培地中で連続的に増殖させた細胞0.45×10個のNHDF細胞を継体21(35集団倍加)で採取し、そして直径10cmの培養皿において、卵胞液なしのNHDF培地10ml又は卵胞液(4%容積/容積)を補充したNHDF培地10ml又は活性炭ろ過された卵胞液(4%容積/容積)を補充した培養培地10ml中で培養する。卵胞液の効果は表10に示されたとおりに可逆性である。
【0092】
【表10】

【0093】
卵胞液の存在下に連続的に増殖させたNHDFからの卵胞液の取り出しは、細胞を老化性にする。活性炭ろ過された卵胞液は、NHDF細胞の老化を防止するという点で未処理卵胞液より優れている。
【0094】
老化前NHDF細胞に対する卵胞液の若返り効果
卵胞液は、老化前状態に達する成熟した(aged)NHDF細胞培養に添加した後、それらの増殖能力を回復させることができる。
【0095】
卵胞液の不存在下に26PD’sにわたって継体されたNHDF細胞を、補充物として卵胞液4%を含有するNHDF培地中で更に継体する。同様に、卵胞液の不存在下の28PD’sにわたって継体されたNHDF細胞を、活性炭ろ過された卵胞液4%を含有する培地中で更に継体する。NHDF細胞を各継体で計数する。結果を図5に示す。
【0096】
老化は卵胞液の添加により遅らされる。活性炭ろ過した卵胞液はこの効果を誘発するという点で未処理卵胞液よりも優れている。
【0097】
H 卵胞液は初代培養における脳ニューロンを細胞死から保護する
胚ラット大脳皮質からの初代ニューロンの調製
胚(18日)ラット大脳からの皮質を切り取りそして総計30分間パパイン溶液で処理する。トリプシン阻害剤を加えた後、皮質ニューロンをピペットによる穏やかな粉砕により解離させる。次いで初代ニューロンを計数しそしてポリ−Dリシンでコーティングされた標準組織倍養プレートで平板培養する。
【0098】
初代ニューロンの培養
初代ニューロンの2時間の平板培養の後、平板培養培地を卵胞液4%を伴なう又は伴なわない5%FCS/DMEM(高グルコース4500mg/ml)からなる増殖培地により置き換える。初代ニューロン培養をCOインキュベーター中で37℃に24〜48時間維持しそして光学顕微鏡を使用して検査する。
【0099】
卵胞液の不存在下に培養された初代ニューロン培養物は神経突起伸長(neurite extension)をほとんど又は全然伴なわずに広範な細胞死を受ける。卵胞液の存在下に維持された初代ニューロン培養物は、既に24時間のインキュベーションの後に、広範な神経突起成長を伴なうニューロンの生存を示す。
【0100】
卵胞液は、神経細胞死に対する保護作用を与え、in vitro条件において初代ニューロン細胞を変性から救出し、そして神経突起の成長を促進しそして神経ネットワークの広範な形成を可能とする。
【0101】
I 卵胞液成分は初代培養における肝細胞を細胞死から保護する
胚ラット肝臓からの肝細胞の調製
ラット胚(18日)からの肝臓を切り離しそして肝細胞をピペットによる穏やかな粉砕により解離させる。初代肝細胞を標準組織培養プレートで平板培養する。増殖培地は、活性炭ろ過された卵胞液4%又は卵胞液と活性炭ろ過された卵胞液の1:1混合物4%を伴なうか若しくは伴なわない5%FCS/DMEMからなる。
【0102】
初代肝細胞の培養
初代肝細胞培養物をCOインキュベーター中で37℃に維持しそして光学顕微鏡を使用して検査する。単層が集密状態になると、PBS中の0.05%重量/容積トリプシン(BioConcept, Switzerland)及び0.02%重量/容積エチレンジニトリロ四酢酸四ナトリウム二水塩(Sigma E-611)を含む酵素溶液を使用して細胞を継体する。細胞を脱離させた後、FCS(2%最終濃度)の添加により酵素活性を停止させる。細胞を180×gで室温で5分間遠心する。細胞ペレットを適切な容積の培養培地中に再懸濁させる。アリコートを採取して計数する。卵胞液成分の効果を表11に示す。
【0103】
【表11】

【0104】
卵胞液成分の不存在下に培養された初代胚肝細胞培養物は、長期間の時間は生存しない。卵胞液と活性炭ろ過された卵胞液の1:1混合物は、肝細胞の細胞死に対する保護作用を与えそしてin vitro条件において初代肝細胞を変性から救出する。
【0105】
J卵胞液の分別
CENTRIPREP(登録商標)遠心ろ過装置YM−3(CENTRIPREP R Centrifugal Filter Devices YM-3)(公称分子量限界3’000)、YM−10(MW 10’000)、YM−30(MW 30’000)及びYM−50(50’000)(Millipore Corporation, 製品番号、それぞれ、4320、4321,4322及び4323)を、生物学的サンプルを精製、濃縮及び脱塩するための限外ろ過装置として使用する。ろ過プロセス自体は、穏やかであり、サンプル変性及び緩衝剤塩の濃縮の如き潜在的問題を回避する。清澄化した卵胞液32mlをスイングバケットロータ(swinging-bucket rotor) 中で室温で1500×gで遠心する。分子サイズ画分のPBSによる濃縮及び透析を製造者の指示に従って行なう。CENTRIPREP(登録商標)YM−50装置で出発して、卵胞液を順次に分別しそして濃縮する。
【0106】
卵胞液からの画分の生物活性
24ウエルプレートのウエル当り顆粒膜細胞培地0.75ml中の0.03×10個の老化性顆粒膜細胞(継体11)を播種する。最初の4%容積/容積の卵胞液を回復するように計算された容積を、個々のウエルに加える。1つのウエルは補充を受けない(ネガティブコントロール)。1つのウエルは原液の卵胞液30μlを受け取る(ポジティブコントロール)。
【0107】
37℃でCOインキュベーター中でのインキュベーション8日後の顕微鏡検査の結果を表12に示す。
【0108】
【表12】

【0109】
画分<3kDa及び>50kDa間の相乗性及びコーティング後の画分>50kDaの活性の試験
24ウエルプレートのウエル当り顆粒膜細胞培地0.75ml中の0.03×10個の老化性顆粒膜細胞(継体15の期間中卵胞液を欠如させた、継体16)を播種する。最初の4%容積/容積の各画分の卵胞液を回復するように計算された)容積を、個々のウエルに加える。1つのウエルは補充を受けない(ネガティブコントロール)。1つのウエルは原液の卵胞液30μlを受け取る(ポジティブコントロール)。
【0110】
コーティングは下記の方法で行なう:PBS中の濃縮された画分>50kDaの1%(容積/容積)溶液350μlをコーティングされるべき空のウエルに加え、37℃で1時間インキュベーションする。水による速い洗浄の後、ウエルを乾燥する。
【0111】
37℃でCOインキュベーター中でのインキュベーション8日後の顕微鏡検査の結果を表13に与えそして図1に示す。
【0112】
【表13】

【0113】
K 卵胞液の高分子量因子の精製
サイズクロマトグラフィー
卵胞液からの画分>50kDa(タンパク質濃度約100mg/ml)0.5mlを120滴/画分(6〜7mlに相当する)のPBS緩衝液を使用して長さ1m及び直径26mmのカラムにおいてSephadex(登録商標)G200 super fineを通すゲルろ過によりクロマトグラフィーにかける。
【0114】
図2は、集めた画分(水平軸)の280nmにおける光学濃度(鉛直軸)のグラフを示す。3つの主ピークを分離する。画分を下記のとおり生物学的活性及びタンパク質特性について試験する。
【0115】
バイオアッセイ
24ウエルプレートのウエル当り顆粒膜培養培地750μl中の0.02×10個の顆粒膜老化性細胞(継体30)を播種する。平板培養の6時間後、培地350μlを除去しそして、試験されるべき画分100μl並びに、20%FCS、0.2mM NEAA及び12μg/mlゲンタマイシンを含有するDMEM100μlからなる混合物200μlにより置き換える。ポジティブコントロール:最初のウエルにおいて、培地350μlを除去しそして、PBS100μl、20%FCS、0.2mM NEAA及び12μg/mlゲンタマイシンを含有するDMEM100μl 並びに卵胞液30μlからなる混合物230μlにより置き換える。COインキュベーター中で37℃で4日間のインキュベーションの後、プレートをクリスタルバイオレットで染色する。
【0116】
結果を図3に示す。この図において、上部左ウエルはポジテイブコントロールである。右の次のウエルは画分22〜44である。
【0117】
顆粒膜細胞を救出するための活性を画分23、24及び25において検出する。活性はクロマトグラフィーにおける最も高いサイズのピークに対応する。
【0118】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によるタンパク質分析
プレキャストポリアクリルアミドゲル4〜12%Bis−Tris Gel、1.0mm×12ウエル(Invitrogen Cat No.NP0322)及びNuPAGE(登録商標)MES SDSランニング緩衝液(Invitrogen Cat No.NP0002)を使用して、ミニゲル(Invitrogen Cat Nos:EI0001、EI00020、EI0002)の電気泳動のためのXCell SureLock(登録商標)Mini-Cellで、製造者の指示書に従ってNuPAGE(登録商標)Novex Bis-TrisGelシステムを使用して、分析を行った。
【0119】
5μl NuPAGE(登録商標)LDSサンプル緩衝液(4X)及び場合により2μlNuPAGE(登録商標)還元剤(10X)を、分析されるべき画分の15μlサンプルに加え、それぞれ、全容積20μl及び22μlを得る。サンプルを70℃で10分間加熱する。電気泳動の後、ゲルをCoomassie Blue(Coomassie(登録商標)Brillant Blue R250, Fluka Cat.No.27816)0.125%(重量/容積)、メタノール50%及び酢酸10%の溶液で振とう機上で15分間染色する。ゲルをメタノール5%及び酢酸7%中で脱染色する。
【0120】
画分23〜25の主要タンパク質成分は、変性、非還元条件下に>>220kDaの見かけのMW並びに変性及び還元条件下に約170kDaの見かけのMWを有する。それは、ジスルフィド橋(1つ又は複数)により連結された2つの160kDaサブユニットの二量体からなるらしい。画分30〜32のタンパク質及び画分38〜41のタンパク質は、それぞれ、免疫グロブリン及びアルブミンに対応する。
【0121】
カチオン交換クロマトグラフィー
サイズクロマトグラフィーからの画分23〜25のプールをCENTREPREP(登録商標)上で濃縮しそしてNaN0.02%を含有する25mM酢酸塩緩衝液pH5.0に対して透析する。NaN0.02%を含有する25mM酢酸塩pH5.0の出発緩衝液を使用して0.5mlの床容積上でのCMセルロースイオン交換体によりクロマトグラフィーを行う。集めた画分を表14に示す。
【0122】
【表14】

【0123】
バイオアッセイ:サンプルはNaN(生きている細胞にとって毒性の)0.02%を含有するので、活性はウエルへの成分のコーティングの後に試験する。CMカラムからのサンプル100μl(画分番号1、3及び5)をPBS100μlと混合しそして全容積を24ウエルプレートのウエルに移す。プレートを37℃で2時間インキュベーションし、次いで4℃で一夜インキュベーションする。サンプルを除去する。ウエルを無菌水で洗浄しそして乾燥する。
【0124】
0.02×10個の老化性顆粒膜細胞を顆粒膜細胞用の培地0.75ml中に各ウエルに播種する。ポジティブコントロール:コーティングなし、培養培地への卵胞液30μlの添加。ネガティブコントロール:コーティングなし、添加なし。COインキュベーター中での37℃の4日間のインキュベーションの後、プレートをクリスタルバイオレットで染色する。
【0125】
タンパク質のバルク及び活性因子はカチオン交換クロマトグラフィーの「フロースルー」画分内にある。
【0126】
ペプチド質量フィンガープリンティングによるタンパク質同定
「フロースルー」画分のアリコートをポリアクリルアミド電気泳動により分離し、1つのサンプルは還元条件下に変性されそして1つのサンプルは非還元条件下に変性された。
【0127】
ゲルを、高純度水中、0.15%(重量/容積)のCoomassie Blue G-250、酢酸0.5%(容積/容積)及びメタノール10%中で振とう機上で室温で3分間染色する。次いでゲルをタンパク質バンドが見られるまで、高純度水中の酢酸0.5%(容積/容積)及びメタノール10%(容積/容積)中で振とう機上で室温で脱染色する。
【0128】
非還元条件下に相対的MW>220kDaを有するバンド及び還元条件下のバンド160kDaを切り取り、そして別々の0.5mlセーフロック管(safe-lock tubes)に移す。高純度水200μlを加えそしてサンプルを質量分光法のために使用するまで−20℃で凍結する。
【0129】
ヒトα−2−マクログロブリン前駆体のアミノ酸配列[A2MG_ヒト;P01023;質量(平均)163278]及び他の種(モルモット及びマウス)の相同体に対応する8つのペプチドを検出する。ブタタンパク質は、SwissProt/Tremblデータベースにはない。サンプルは、α−2−マクログロブリン前駆体のファミリーに属する新規なブタタンパク質を含有する。
【0130】
検出されたペプチドは、
【表15】


である。
【0131】
このタンパク質のファミリーのメンバーは、ジスルフィド連結された鎖の2つの対からなるホモ四量体の形態にある。この性質は、ブタタンパク質のSDS−PAGE分析に合致する。
【0132】
核型分析(karyotyping)
有糸分裂スプレッド(mitotic spreads)の調製
Colcemid(登録商標)(Fluka Cat.No.27645、蒸留水中のストック溶液5μg/ml、−20℃で貯蔵された)を増殖している細胞の6cmプレートに0.05μg/mlの最終濃度となるように加える。細胞を37℃で2.5時間インキュベーションする。細胞をトリプシン処理しそして0.56%(蒸留/容積)KCl溶液10ml中に再懸濁させる。細胞を総計20分間(以下の遠心時間を含めて)室温で放置する。細胞を穏やかな遠心(500rpm、5分)によりペレット化する。できるだけ多くのKCl溶液を吸引する。Carnoyの固定剤(3:1容積/容積無水メタノール/氷酢酸)1mlを加える。室温で5分の後、細胞をペレット化しそして固定剤を変える。これを1回繰り返し、そして細胞をCarnoyの固定剤1ml中に懸濁させる。細胞懸濁液の小さな1滴を予め洗浄化したガラス顕微鏡スライド上にのせる。スライドをPBS中の300nMDAPI(4,6−ジアミノ−2−フェニルインドール、Sigma-Aldrich)ストック溶液で30分間染色し、次いでPBS中で洗浄する。蛍光顕微鏡を使用して写真を撮り、そして染色体を写真上で計数する。
【0133】
卵胞液中に長期の時間維持された細胞は、正常な相補体の染色体を有する。各調製物におけるいくつかの有糸分裂スプレッドを計数した結果を表15に示す。
【0134】
【表16】

【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】卵胞液分子サイズ画分の存在下に37℃でのCOインキュベーターにおける8日間のインキュベーションの後の顆粒膜細胞の顕微鏡検査の結果を示す(表12、実施例J、卵胞液の分別)。数はウエルの番号を示す。 1:>50kDa、2:30〜50kDa、3:10〜30kDa、4:3〜10kDa:5:<3kDa、6:完全な卵胞液、7:卵胞液なし、8:>50及び<3kDa、9:>50kDaでコーティングされたウエル、10:>50及び<3kDaでコーティングされたウエル。
【図2】Sephadex(登録商標)G200 super fineを通す卵胞液からの画分>50kDaのサイズクロマトグラフィーの集められた画分(水平軸)の番号に対する280nmにおける光学濃度(OD)(鉛直軸)のグラフを示す(実施例K、卵胞液の高分子量因子の精製)。
【図3】顆粒膜老化性細胞における図2のサイズクロマトグラフィー画分のバイオアッセイの結果を示す(実施例K、卵胞液の高分子量因子の精製)。CO:ポジティブコントロール。画分23、24及び25のみが活性な物質を含有する。
【図4】ウシ胎仔血清10%を含有する培地(A)又はウシ胎仔血清10%及び卵胞液4%含有する培地(B)で培養されたNHDF細胞の培養日数(d)の関数としての集団倍加数(number of population doublings)(n)を示す。これらの細胞の増殖寿命は、卵胞液により約15〜20集団倍加延長される(実施例G、卵胞液は培養における初代ヒト繊維芽細胞の寿命を延長する)。
【図5】ウシ胎仔血清10%を含有する培地(A)、ウシ胎仔血清10%及び卵胞液4%を含有する培地(B)並びにウシ胎仔血清10%及び活性炭ろ過された卵胞液4%を含有する培地(C)中で培養されたNHDF細胞の関数としての集団倍加数(n)を比較する。活性炭ろ過した卵胞液は、老化を遅らせるという点で未処理卵胞液より優れている(実施例G、卵胞液は培養における初代ヒト繊維芽細胞の寿命を延長する)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清を含有し、そして更に卵胞液又はその成分を含有する培養培地又はその同等物中で体細胞を培養することを含む体細胞の老化及び死を防止する方法。
【請求項2】
血清を含有し、そして更に卵胞液又はその成分を含有する培養培地又はその同等物中で細胞を培養することを含む、細胞の成功した増殖及び細胞の分化能の維持をもたらす方式で細胞を脱分化させる方法。
【請求項3】
細胞を血清含有培地中で培養する工程、
培養培地に卵胞液又はその成分を導入する工程、そして
繰り返し継体培養において細胞の無限の増殖を可能とする工程、
を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
卵胞液を部分的に精製する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
卵胞液を活性炭ろ過する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
卵胞液が、ろ過されていない卵胞液と活性炭ろ過された卵胞液との約1:1混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
卵胞液の成分が、>30kDaの分子サイズ画分である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
卵胞液の成分が、>50kDa及び<3kDaの組み合わせた分子サイズ画分である、請求項1又は2に記載の方法
【請求項9】
卵胞液の成分が、ヒトα−2−マクログロブリン前駆体のアミノ酸配列及び他の種の相同体に相当するペプチドである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
卵胞液が、ブタ、ウシ、ヒツジ及びウマ卵胞液の群より選ばれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
卵胞液がブタ卵胞液である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞が、顆粒膜細胞、皮膚繊維芽細胞、ニューロン、角化細胞又は肝細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
細胞が、顆粒膜細胞、皮膚繊維芽細胞、ニューロン又は肝細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
卵胞液を精製し、そして増殖促進活性及びマトリックス特性を有する高分子質量の画分を単離することを含む、組織工学で使用するための卵胞液を提供する方法。
【請求項15】
卵胞液を精製し、そして細胞生存活性を有する低分子質量の画分を単離することを含む、組織工学で使用するための卵胞液を提供する方法。
【請求項16】
卵胞液がブタ卵胞液である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
体細胞の老化及び死を防止するため並びに、体細胞の成功した増殖及び体細胞の分化能の維持をもたらす方式で体細胞を脱分化させるための卵胞液又はその成分の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−503821(P2007−503821A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525020(P2006−525020)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000520
【国際公開番号】WO2005/021737
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506071612)アイフォーゲン・アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】AIVOGEN AG
【Fターム(参考)】